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仕掛けられた空間 - SAWADA LAB
木曜3限 建築史 j02025 第一回レポート 小倉 正士 仕掛けられた空間 ∼茶室から大仏まで∼ (京都 高桐院) 1.取り上げた背景 授業中に学んだ日本的手法のなかで、「仕掛けられた空間」、という話が自分にとっ て特に印象深かった。それは、茶室を例にした話であったが、自分なりに仕掛けられ た空間と思われるものについても、本当にそうであるのか知りたいと思い、調べてみ ることにした。そこで、1.茶室、躙口(にじりぐち) 仏殿 2.飛び石 3.鳥居 4.大 の4つについて分析することにする。 (東大寺 大仏) 2.推測&分析 1.茶室、躙口(にじりぐち) (躙口) 推測:茶室の躙口が狭くなっているのは、内部空間と外部空間とをできるだけ 切り離したものにしようという仕掛けではないだろうか? 分析:躙口、つまり小さな入り口をくぐり抜けるということは、茶の世界へ入 るということを強く意識させるものである。また、縁側から入るとい う古い形式から、躙口より入る形式になったことによって、武士とい えども刀を置いて茶室に入らざるを得なくなった。つまり、躙口が茶 室の内部空間に、武士も町人も百姓もない、平等な世界を生み出した。 また、それまでの非常に開放的な構造であった住宅の伝統とはかなり 違った構造を、茶室は持っている。四方がすべて壁になっている。せ いぜい、小さな窓がついているだけのほとんど密室ともいえる特異な 空間を作り出すために、躙口をより小さなものにしたと考えられる。 2.飛び石 (拾翠亭) 推測:茶室と外の世界とを結びつける空間において、そこを通る人の視線を 飛び石に向けさせることによって、空間の変化を劇的なものに感じさ せる仕掛けがあるのではないか? 分析:飛び石のある露地空間は、「俗」なる世界から「聖」なる世界に身をお くための空間であり、飛び石をたどって進む時間は変身のための時間な のである。そこで、飛び石は、客人に奥行きを感じさせる(長い距離を 進んでいると思わせるように巧みに配置する)ことで、精神的変身を助 けているのである。 3.鳥居 (稲荷大社) 推測:機能的に働きのない鳥居は、これからの空間が神聖な空間であると通 る人に印象付ける、精神的働きを意図したものではないだろうか? 分析:鳥居というのは、鎌倉時代に神社がお寺の影響を強く受けた名残で、 ここからは`清浄な地´と分けたのが始まりである。鳥居の下をくぐ っていると、厳格・神聖な気持ちになると多くの人が感じているよう だ。やはり、鳥居というのは精神的働きを意図したものといえる。ま た、昔話には、鳥居を大神と同じように敬っていたということも述べ られており、鳥居が大きな存在であったことをうかがい知ることがで きる。 4.大仏殿 (鎌倉の大仏) (東大寺大仏殿) 推測:奈良の大仏には大仏殿があるのに、鎌倉の大仏には大仏殿がないのは、 何か仕掛けがあるのではないだろうか?大仏殿があることで、その中に ある大仏をより大きなものに感じさせる効果があるのではないだろ うか? 分析:実は、鎌倉の大仏には大仏殿があったのだそうだ。初めから外にあっ たのではなく、1495年、大仏殿が洪水で壊れたという記録があるそ うだ。よって、奈良と鎌倉の大仏に大仏殿があるかないかは、誰かが その違いに何かを仕掛けたものではないことが分かった。がしかし、 大仏殿は大仏を風雨から守るだけでなく、内部から見たときに大仏の 窮屈そうな感じから、大仏の大きさを印象付けるものであることにか わりはない。 3.まとめ 4つのことについて調べてみたが、推測どおり本当に仕掛けのある空間と仕 掛けられたとはいえない空間が出てきた。大仏殿が、奈良の大仏にあって鎌倉 の大仏にないことから、なにか興味深い発見ができるのではないかと思ってい たのだが、あっけない結末に拍子抜けしてしまった。この4つ以外にも、まだ まだ日本建築には仕掛けられた空間というものがあると思うので、これからも 注意深く鑑賞していきたい。 出典: 「茶室空間入門」 船越徹 熊倉功夫 「建築鑑賞入門」 w.w.コ−ディル他著 「日本の空間構造」吉村貞司 中村利則 鹿島出版会 http://www.nipponhyojun.co.jp http://www.kasama-kasama-j.ed.jp 西和夫 鹿島出版会 彰国社