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INTERVIEW
型技術協会新会長/本田技研工業㈱ 四輪事業本部 生産統括部 生産企画統括部 設備金型企画推進室 室長 田岡秀樹氏 Hideki Taoka 型技術協会副会長/慶應義塾大学 理工学部システムデザイン工学科 教授 青山英樹氏 Hideki Aoyama ブランド力を高め、金型の未来に向けた 強いキーワードを発信できる型技術協会へ 時代のニーズに合わせた改革を進める! 青山 6 月 17 日に開催された型技術協会総会で新役 員が承認され、その直後に開催された理事会で代表理 事すなわち型技術協会の新会長に本田技研工業㈱の田 「Design 1 : 1」 にするためには 高度な金型が必要 岡秀樹さんの就任が決定しました。今回は、田岡さん 田岡 1980 年に慶應義塾大学工学部機械工学科を卒 のご経歴から自動車における金型づくりの動向、そし 業後、いすゞ自動車㈱に就職しました。それから約 10 て型技術協会のこれからの方向性などについて、お話 年後にホンダエンジニアリング㈱に転職し、プレス金 をうかがいたいと思います。 型設計、新機種の先行技術開発、プレス部門の新機種 まずは、読者の皆様への紹介も兼ねて、大学卒業後 のご経歴から簡単にお話しください。 プロジェクトリーダーとして北米、欧州モデルの車体 量産化計画のプロジェクトリーダーを担当しました。 型技術 第 29 巻 第 8 号 2014 年 8 月号 001 PROFILE 田岡 秀樹(たおか ひでき) 1957 年 10 月 10 日生まれ 1980 年 3 月 慶應義塾大学工学部機械工学科卒業 同年 4 月 いすゞ自動車㈱入社 1990 年 1 月 ホンダエンジニアリング㈱入社、プレス金型設計、新機種の先行 技術開発、プレス部門の新機種プロジェクトリーダーとして、北米、欧州モデル の車体量産化計画を担当。車体塑型研究開発部長、新機種 DE 業務室長などを経 て、2010 年に車体領域の執行役員に就任。2013 年 4 月より本田技研工業㈱の四 輪事業本部に異動。現在、設備金型企画推進室室長として世界のホンダの金型戦 略や企画推進役を担当。 2005 年に車体塑型研究開発部長、新機種 DE 業務室 青山 近年、田岡さんはハイブリッドスポーツカー 長などを経て、2010 年に車体領域の執行役員に就任 「CR−Z」のように、デザインと機能を両立させたクル しました。2013 年 4 月より本田技研工業㈱の四輪事 マの実現に尽力されていますね。 業本部に異動し、現在は新設部署の設備金型企画推進 田岡 2010 年に車体領域の執行役員に就任した際に、 室室長として世界のホンダの金型戦略や企画推進役を 「Design 1 : 1」というコンセプトのもと、デザイナー 担当しています。 の意志どおりのクルマを生産技術で実現するという取 青山 いすゞ自動車で田岡さんの金型人生が始まった 組みで、さらにそれを世界最速で顧客に提供すること のですね。また、ホンダエンジニアリングに転職した を推進してきました。どの自動車メーカーでも同じ状 きっかけは何だったのでしょうか。 況だと思いますが、結局、ボディサイドの金型準備に 田岡 いすゞ自動車に入社後、なぜかプレス生産技術 一番時間がかかりますので、それをいかに早くつくる 部に配属されました。これについては後でわかったの かが大きなテーマになっています。その間、リードタ ですが、当時の課長がやはり慶應出身だったのです。 イム削減のために組織間の壁を破って、一気にデザイ 入社 2 年目には「ピアッツァ」のマイナーモデルチ ンから金型設計を完了する技術、 「N−BOX」に採用し ェンジで北米輸出仕様の金型の企画を一式任されまし たテーラードブランクサイドパネルアウター金型、ホ た。当時 3 億円ぐらいのプロジェクトでしたが、工 ットプレスライン、北米や寄居プレス工場に導入した 程設計や成形性の検討から金型製作までを担当し、こ 最高速サーボプレスラインの開発などを実現しました。 の頃からデザインがいい車を生産するためには高度な 金型が必要で、その重要性に惚れ込みました(笑) 。 グローバルな金型調達と技術戦略を担う いすゞ自動車に在籍していた 1980 年代、ホンダは 青山 設備金型企画推進室について、先ほど、世界の 北米に生産工場を設立し、 「シビック」や「アコード」 ホンダの金型戦略や企画の推進役とおっしゃいました の世界同時立ち上げを実現したり、先進的なデザイン が、具体的にはどのような業務を担っていますか。 の車をつくったりと、外から見ていて技術者として非 田岡 まずは背景から説明します。自動車のグローバ 常に魅力的なことをいくつも行っていました。また、 ル市場を見ると、今後も中国市場の拡大は継続し、米 外部の技術研究会では、ホンダの若い技術者が堂々と 国市場の回復は堅調です。さらに欧州市場の回復と新 発表していて、あのような人たちと一緒に仕事をして 興国の成長軌道の継続により、全世界での自動車の総 みたいとも思いました。ホンダで働きたいとの気持ち 販売台数は現在の約 7, 500 万台から、2017 年前後に が日増しに強くなっていき、転職を決意したのです。 は 1 億台に近づくことが確実視されています。しか 当時は、自動車メーカーに限らず転職は一般的ではあ し、ここで自動車メーカーにとって大きな課題が発生 りませんでしたが、ホンダは例外で、意欲のある人材 しています。例えば私の理解では、リーマン・ショッ を積極的に中途採用していたことも幸いでした。 クにより大打撃を受けたデトロイトスリーは完全復活 002