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論文要旨 1、研究の背景と目的 大手町・丸の内・有楽町地区(大丸有
論文 要 旨 1、研 究の 背景 と目 的 大手 町・ 丸 の内 ・有 楽 町地 区( 大 丸有 地区 と 称す る) で は東 京駅 周 辺を はじ め として、 まち づく り が進 んで い る。 この ま ちづ くり は 1980 年 代の 停滞 期 をへ て、1990 年 代か らは じま った 公 民協 調の ま ちづ くり 推 進方 策に よ って 始動 し たも ので あ る。 今日 、 国の 都市再 生政 策に よ り、 市街 地 再開 発事 業 が多 く見 ら れる よう に なり 、今 後 ます ます 活 発に なるま ちづ くり 活 動の 取り 組 みに 役立 て るた めに 、 大手 町・ 丸 の内 ・有 楽 町地 区の ま ちづ くりの プロ セス を 解明 し、 新 たな 時代 に 対応 でき る 、公 民協 調 型ま ちづ く り推 進方 策 の提 案を行 うこ とを 目 的と した 研 究で ある 。 主に 大手 町 ・丸 の内 ・ 有楽 町地 区 での まち づ くり の実践 活動 の経 験 と行 政施 策 資料 、協 議 会資 料、 委 員会 資料 等 に基 づき 、 分析 、考 察 し、 今後の 公民 協調 型 まち づく り 推進 方策 の 検討 を行 っ た。 2、大 丸有 地区 再開 発 のた めの 3 つの 課題 「 分散 施策」「容 積率」「都 市美 」 大丸 有地 区 では 1980 年代 後半 か ら経 済の 国 際化 や旧 国 鉄本 社跡 地 処分 など に より再開 発の 機運 が 高ま って い た。 国土 庁 など 4省 庁 によ る東 京 駅周 辺再 開 発調 査が あ り、 三菱地 所か らも 「 丸の 内再 開 発計 画」 が 提案 され た 。し かし 再 開発 をす す める ため に は都 心への 業務 機能 の 集積 を抑 制 する 業務 分 散施 策が 国 、東 京都 に より 採ら れ てい たこ と に対 する対 応と 、そ の 結果 容積 率 上限 が抑 え られ てお り 、再 開発 が 進ま ない 状 況に あっ た 。ま た大丸 有地 区は 美 観地 区に 指 定さ れて い たこ とと 、 東京 駅と 皇 居の 水と 緑 に隣 接し 、 歴史 的建造 物と とも に 、日 本の 表 玄関 とし て の景 観を 形 成し てお り 、ス カイ ラ イン を中 心 とし た都市 美の 課題 が あっ た。大 丸有 地区 再 開発 には こ れら 都心 か らの 業務 機 能の「分 散 施策」 「容積 率」「 都市 美」 の 3 つ の課 題を 解 決す るこ と が必 要で あ った 。 3、大 丸有 協議 会と 大 丸有 懇談 会 の設 立 こ れら の 課題 に対 応 する ため に は個 々ば ら ばら では 対 応で きな い こと から 、 大丸 有地区 では はじ め てと なる 大 手町・丸 の 内・有楽 町 地区 再開 発 計画 推進 協 議会 を 1988 年に 設立し た。 手探 り の状 態で 地 権者 が集 ま り、 内部 で の検 討に 加 え、 学会 、 学識 者、 専 門家 による 調査 報告 、 提言 をも と に、 まち づ くり の方 向 性を すべ て の地 権者 が 共有 する た めの 「まち づく り基 本 協定 」を 1994 年 締結 し た。一方 東 京都 の都 心 政策 も業 務 商業 マス タ ープ ランな どに より 都 心抑 制型 か ら育 成型 へ 転換 する 時 期で あっ た 。こ の時 期 1996 年 に行 政と まちづ くり の共 同 研究 の模 索 をし なが ら 、大丸 有ま ちづ くり 懇 談会 を設 立 した。懇談 会は 東京 都、 千代 田区 、 JR 東日 本 、大 丸有 協 議会 によ り 構成 され た 。 4、ま ちづ くり ガイ ド ライ ンと 東 京駅 周辺 都 市基 盤施 設 整備 誘導 方 針に よる ま ちづ くり 懇 談会 で はま ちづ く りを 誘導 規 制す るた め のル ール と して 「ま ち づく りガ イ ドラ イン」 を策 定し た 。将 来像 を 共有 化し 、 実現 のた め の方 策に つ いて 検討 を おこ なっ た 。将 来像と して は、 「 時代 をリ ー ドす る国 際 的な ビジ ネ スの まち」 「人 々が 集 まり 賑わ い ある まち」 「情 報化 時代 に 対応 した 情 報交 流・ 発 信の まち」「風 格と 活 力が 調和 す るま ち」「 便利 で快 適に ある ける ま ち」 「 環境 と共 生す る まち」 「安 心・安全 な まち」 「地 域、行政 、来街 者が 協 力し てそ だて る まち 」の 8 つを 掲げ て いる 。そ れ らを 実現 す るた めに 特 色あ るま ち づく り方針 とし て、 「 ゾー ン」 「 軸」 「 拠点」によ るま ち づく りを 進 める とし て いる。機能 集積 やス カ イ ライ ン、 街 なみ 形成 も これ らゾ ー ン、 軸、 拠 点に そっ て 計画 実現 さ れて いる 。 実現 手段と して 法制 度 につ いて 、 容積 移転 制 度、 街な み 形成 、用 途 の入 れ替 え と集 積に つ いて 示して いる 。 東京 駅周 辺 の空 間整 備 につ いて は ガイ ドラ イ ンと 東京 駅 周辺 都市 基 盤施 設整 備 誘導 方針 が一 体に な った 整備 方 針を 示し て いる 。東 京 駅前 地上 と 地下 の広 場 整備 、行 幸 通り 整備 東京 駅赤 煉 瓦駅 舎復 元 の方 針が 示 され てい る 。 5、「 分散 施 策」「 容積 率」「 都市 美」 の課 題 の解 決 国 、東 京 都の 「分 散 施策 」は 大 手町 合同 庁 舎の さい た ま新 都心 へ の移 転、 東 京都 庁舎の 新宿 移転 に より 跡地 利 用の 段階 に なり、有楽 町に 国際 フ ォー ラム が でき、交流 拠点 とし て、 まち の複 合 機能 化の 契 機と なっ て いる 。大 手 町で は跡 地 を活 用し 、 次々 と連 鎖 して いく広 域ま ちづ く りの 契機 と なっ てい る 。東 京都 の 都心 政策 に つい ても 区 部中 心部 整 備指 針によ る都 心機 能 更新 策へ の 転換 、さ ら に危 機突 破 戦略 プラ ン に赤 煉瓦 駅 舎復 元を 含 めた 東京駅 前空 間整 備 が戦 略の 苗 とし て位 置 づけ られ る など 、積 極 的な 誘導 策 が講 じら れ てい る。国 の都 市再 生 法の 動向 と あわ せて 、 集積 と分 散 の施 策が 大 丸有 地区 ま ちづ くり の 契機 となっ てい る。 こ れら の動 向 の中 で「 容 積率 」に つ いて も、 容 積移 転制 度 、都 市計 画 法改 正によ る 1300% 指 定、都市 再 生特 別措 置 法に よる 特 区制 度な ど 多様 な制 度 が用 意さ れ るよ うにな った。「都 市美 」に つ いて はガ イ ドラ イン で スカ イラ イ ンを 定め て いる 。31m,100m の歴史 的な スカ イ ライ ンを 尊 重し つつ 新 たな 時代 へ 対応 する た め概 ね 150m 程 度の ス カイ ライン を可 能と し 、拠 点に つ いて は概 ね 200m 程度 ま でを 可能 と する と定 め てい る。街 なみ につい ても 歴史 的 な壁 面の 連 続、 軒線 の 連な りを 維 持、 発展 さ せる ため 方 針を 定め 、 都市 計画諸 制度 へ反 映 され てい る 。 この よう に 「分 散施 策 」「容 積」「 都市 美」 の 3 つ の課 題 が公 民協 調 の取 組み に より解決 され た。 6、ま ちづ くり の実 現 2000 年 代 にな りガ イ ドラ イン に もと づく ま ちづ くり が 積極 的に 行 われ てい る 。集 積施策 を契 機と し た旧 国鉄 用 地処 分に も とづ くオ ア ゾ、 日本 生 命街 区、 丸 の内 トラ ス トタ ワー、 等、八十 島 委員 会の 東 京駅 周辺 再 開発 構想 に 関連 する JR 等に よる グラ ント ウ キョ ウ、民間 の集 積施 策 提案 に関 連 する 丸ビ ル 、新 丸ビ ル など の民 間 ビル の建 替 えが 行わ れ てい る。さ らに 明治 安 田生 命ビ ル 、日 本工 業 倶楽 部会 館 ・三 菱 UFJ 信託 銀行 本 店な どの 歴 史的 建造物 の保 全、 活 用も 行わ れ てい る。 こ れら に加 え 、東 京駅 前 地下 広場 整 備や 行幸 通 り整 備、仲 通整 備、な ど公 的空 間 整備 が公 民 協調 で行 わ れて いる 。さら に 2002 年 に NPO 大丸 有エ リア マネ ジメ ン ト協 会が 設 立さ れ、 市 民参 加型 の 街の 活性 化 活動 が行 わ れて いる 。 企業 と行政 に市 民も 参 加し たま ち づく りを 目 指し てい る 。 7、考 察と 評価 1980 年代 か ら今 日に い たる 大丸 有 地区 のま ち づく り活 動 は、はじ め は個 別企 業 の活動で あっ たが 、 模索 しな が ら協 議会 を 設立 し、 ま ちづ くり 基 本協 定締 結 を経 て、 行 政と のまち づく り懇 談 会に 到達 し た。 そし て 懇談 会は ガ イド ライ ン イを 策定 し 、都 市政 策 や都 市計画 諸制 度と 関 連付 けな が ら、 大丸 有 地区 が国 際 化、 情報 化 した 時代 に 対応 した 複 合機 能型の まち へ機 能 更新 する よ うに 誘導 し た。 特に 東 京駅 前地 下 広場 整備 な どの 公的 空 間整 備や街 並み 形成 型 のま ちづ く りは 、公 民 協調 型ま ち づく り推 進 方策 なし に は実 現で き なか ったと いえ る。 ガ イド ライ ン 策定 にと ど まら ず、 都 市計 画諸 制 度の 改正 や 、公 的空 間 整備 事業へ の関 与な ど のプ ロセ ス にお いて 、 懇談 会が 果 たし た役 割 は、 まち 全 体と 個別 事 業を 結びつ け積 極的 に 推進 した と いう 点で 都 市プ ロデ ュ ーサ ーの 役 割を 果た し たと する こ とが できる。 これ らを 総 合的 に評 価 して 、大 丸 有地 区で 実 践さ れた 公 民協 調型 ま ちづ くり 推 進方 策は大 規模 で複 雑 な市 街地 再 開発 に有 効 なま ちづ く り推 進方 策 であ ると す るこ とが で きる 。 8、新 たな 公民 協調 型 まち づく り 推進 方策 の 提案 1)新 たな 公民 協調 型 まち づく り の主 体 大丸 有地 区 で実 践さ れ た公 民協 調 型ま ちづ く り推 進方 策 は協 議会 方 式と 懇談 会 方式の組 み合 わせ に 発展 的に NPO 大丸 有 エリ アマ ネ ジメ ント 協 会が 加わ っ た形 であ る とす ること がで きる 。 協議 会と 懇 談会 の主 体 は民 間企 業 など の事 業 主体 と東 京 都、 千代 田 区の 行政で あっ た。 今 後の まち づ くり にお い ては 、環 境 問題 、少 子 高齢 化時 代 への 対応 な ど新 たな課 題へ の対 応 と市 民の ニ ーズ にあ っ たま ちづ く りが 必要 と なる ため 、 公民 協調 型 まち づくり へ取 り組 む 主体 も初 期 の段 階か ら 幅広 く市 民 、学 識者 、 専門 家等 の 参加 が必 要 とな る。 2)公 民協 調型 まち づ くり 主体 の もつ 誘導 規 制手 段と 役 割 大 丸有 地 区で 実践 さ れた ガイ ド ライ ンは ま ちを 誘導 規 制す る手 段 とし て有 効 であ った。 また 全体 と 個別 を長 期 にわ たっ て 誘導 する た めに は、 個 別事 業へ の 積極 的な 関 与、 参加が 必要 であ り 、都 市プ ロ デュ ーサ ー の役 割を 果 たす 必要 が ある 。 3)社 会状 況の 変化 を まち づく り へフ ィー ド バッ クす る シス テム 社会 状況 に 応じ て、 ま ちの 将来 像 を共 有化 し なが らま ち づく りを 進 める 。そ の ためには 課題 があ り 、そ の課 題 を解 決し 実 現に 結び つ け、 さら に 実現 し活 性 化し たま ち の成 果をそ のプ ロセ ス とと もに 評 価し 、次 の まち づく り へフ ィー ド バッ クす る こと が必 要 であ る。そ のフ ィー ド バッ クシ ス テム を長 期 にわ たり 責 任を 持っ て 実現 する こ とが でき る のが 新たな 公民 協調 型 まち づく り 推進 方策 で ある 。 9、今 後の 研究 課題 1)地 球環 境問 題と 少 子高 齢化 時 代へ の対 応 2)公 民協 調型 まち づ くり 推進 方 策の 展開 3)都 市プ ロデ ュー サ ーの 具体 的 展開