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一般の部(PDF形式:298KB)
3 手 紙・メール部門 最優秀賞 一般の部 「パワースポット?」 奈良県 「あーあ、パワースポット行きたいわ」と私が言う と、夫と長女がすかさず「ここやん」と我が家とい うジェスチャーをした。それなら私のパワーが吸い 取られているんだなと、お出かけしたい気分まで吸 い取られてその日は家で過ごした。我が家がパワー スポット? 私は一人っ子で、両親共働き。また高3の時両 親は離婚した。中3で大阪から奈良に引越し、その 頃から両親共家に戻らない日が多くなった。大阪 の学校だったのもあり近所に知り合いもおらず、広 い家に一人きりだった。私にとって家は大きな箱な だけで安心したり寛いだりする場所ではなかった。 実家はいいモデルじゃないなと思いながら家族を 辻川 朱利さん 41歳 持ち、不安が強かったこと、最近結婚16年にして やっと夫にぶつけることができた。「もうわかったか ら泣くな」「泣くなって言うな! 泣かせろー」不安 であることをぶちまけられる夫が、実はずっとそばに いてくれたことに気づき、家族に初めて甘えること ができた。悪い思い出も優しい経験に塗り替えるこ とができた。 夫も私も不器用だけどどうにか格好をつけて子ど もたちにとっていい家 族でありたいと思っていた。 でもみっともなくても家に居続ける姿を見せることっ て難しいけど大切だなと思った。 どうやら私にも我が家はパワースポットだったよ うだ。 審査員のコメント ●まずは、出だしのすかさず「ここやん!」で、あったかさ満点の家族が伝わります。不器用どころかご主人の優しさ、包容力に脱帽です。ま さにパワースポットです。(橋本先生) ●両親がいない広い家で寂しく過ごした子供時代。でも結婚して子供が生まれ、「みっともなくても家に 居続ける姿を見せることって難しいけど大切」に気づいた筆者。パワースポットの我が家、家族がいるからこそ、「悪い思い出も優しい経験に 塗り替えることができた」のですね。読む者をぐいぐい惹きつける魅力を持った文章です。(内田先生) 優秀賞 「娘よ!ありがとう」 沖縄県 丸山 さい子さん 59歳 今年、我が家に母の日に二つのカーネーショ を把握し、大好きな祖母へ対する娘の心遣いが へ行った娘からだ。昨年は、新生活に慣れるの 近くも水を変えたり、場所を変えたりして、娘の ンの盛花が届いた。昨年進学のために千葉県 に大変だったのか、メールの一つもなかった娘 嬉しかった。私たち二人はそれぞれに、1か月 花が1日でも長く持つように、小さな努力を重ね に、つい愚痴ったことを思い出した。一つは私 るのが日課になった。1か月が過ぎてとうとう全 以上に娘をかわいがり、自分の生きがいは孫だ が悪く、枯れた花を愛おしく鑑賞したのはこれが は燃えるような赤いカーネーション、母へは品の 離れていても、私と母にとって、希望の光で に、もう一つは娘からしたら祖 母になるが、私 と言ってはばからない実家の母宛である。私へ あるピンクのカーネーションだった。二人の好み 体の花が枯れてしまったが、私も母もあきらめ 初めてだった。 ある娘よ! ありがとう。 審査員のコメント ●母と祖母、それぞれの好みに配慮して赤とピンクのカーネーションが母の日に届いた。簡潔で引き締まった文章に、母と祖母の嬉しさ・幸 せを思いっきり詰め込んで、読む者の心を温かくしてくれる文章です。1 か月近くも大事に世話して花を眺め、娘、孫の優しさを味わったという、 お二人は本当にお幸せですね。(内田先生)●娘に対する祖母と母の強い愛情が生き生きと描かれている。母だけでなく、祖母も登場すること が作品の印象を豊かにしている。(坂元先生) 15 優秀賞 「 3 人の子どもの育児と夫婦の絆について」 山田 勝久さん 42歳 三重県 妻へ 夫婦になって、お互いの生活習慣の違いから何 度もケンカしたね。 風呂を洗うタイミングや洗濯物の干し方、食べも のの好き嫌いまで。 それがいつの間にかからかうことはあっても、極 端に言い争いになることは無くなった。 理 由は簡 単で、子どもの 数が 増えるにつれて、 とてもではないけれど夫婦でケンカする余裕なんて なくなったからだ。 君が深夜、子どもたちの相手をするから、どうし ても僕が早く起きる。君が起きてくる30分の間に昨 晩の食器の洗い物をして、お茶を淹れて、雨戸を 開けて。 僕が休日に庭の草むしりをして屋内に戻ると、君 が僕のワイシャツをアイロン掛けして、食事を作って、 子どもたちを起こして。 どちらかが一つの行動をすると、もう一人はフォ ローに回る。 たぶんそんな何気ない気遣いが子どもを育てると いう難事には絶対必要だと分かったからだろう。 そんな僕にとって悩みなのは、可愛いはずの子ど もたちがときおり、ひどく厄介でうとましいと思えて しまうことだ。 だから君に願う。君が怒る時、僕は子どもたちを 庇おう。僕が憤激する時は、君が庇ってあげてほし い。 あと15年は頼むよ。 審査員のコメント ●3人の子育てで喧嘩するゆとりもないほど忙しい。「どちらかが一つの行動をすると、もう一人はフォローに回る」連携プレイも板についたご 夫婦の日常がほほえましく思える素敵な文章です。(内田先生)●子育てをする夫婦のほとんど一体となっていると言えるほどの絆の強さを、 読み応えのある文章で描いている。(坂元先生) 優秀賞 「娘の素敵な贈り物」 兵庫県 齋藤 恒義さん 66歳 「お父さん、赤ちゃんできたよ」 悪戦苦闘して介護福祉士に。特養老人施設 娘から嬉しい報告。生後三ヶ月に川崎病で入 で働いて十年以上。途中腰を痛めたが、黙々と 院。高 熱の影 響か、娘は物 覚えが 遅い。それ 「わたしアホやからコツコツやるしかないの」 院した娘。四 十 度 近い高 熱が 続きひと月の 入 でも、どんなに成績が悪くても娘は皆勤。私は 喜んだ。元気で前向きであればいい。 娘は福祉を勉強。自分で選んだ道だった。 「お年寄りに何かをしてあげたいの」 (まさか、ここまで成長したとは)妻と喜び合っ た。生きる道を切り開こうとしている! 仕事に打ち込んでいる。結婚してからも。 娘の笑顔が輝いていた。もう心配はない。 「ありがとう、お母さん、お父さんみたいな素 敵な生き方をします。」 結婚式での娘の言葉は最高の贈り物だった。 そして、また娘はわたしと妻にそれ以上の素 晴らしい贈り物をしてくれた。有難う! 審査員のコメント ●スローテンポだが、コツコツまじめに努力し、しっかりと仕事をしている娘さんの姿がよく浮かび上がっています。結婚式での娘さんの親へ の感謝の言葉が最高の贈りものになっています。(明石先生) ●子供の成長を見守り、見届けていくことの大きな喜びが伝わってくる。作者に 対して祝福したくなる。(坂元先生) 16 3 手 紙・メール部門 優秀賞 一般の部 「選んでくれてありがとう。 」 神奈川県 住吉 国和さん 44歳 「早く起きなさい!」 「このうちが良かったから・・・」 「早く着替えなさい!」 この言葉を聞いた瞬間、今までの子育ての苦労 「早く、ごはん食べなさい!」 我が家の朝はいつも「早く、しなさい!」という 言葉から始まる。 息子が 5 歳の時、言う事をなかなか聞かない のを見かねて、半分冗談で聞いてみた。 「他にもお家はいっぱいあるのに、キーちゃん は何で、このうちに来たの?」 首をかしげ、しばらく考え込んだ息子は、 は全て吹き飛んだ。そして子供への接し方を妻 と二人で痛烈に反省した。 「我が家族の一員になってくれてありがとう。」 我が子への熱い思いがこんこんと体の内側から 湧いてきた。 「こんなパパとママでごめんね。」 そう心の中で少し思いながら。 この家族を選んでくれて本当にありがとう。 審査員のコメント ●「早く」という言葉は日本人の親のしつけの定番です。発想変えて「A をさせたいなら B といえ」という原則を使って、子供の心の内を発見 できた様子がうまくかけています。(明石先生) ●「このうちが良かったから・・・」親冥利につきる、最高の賛辞 ! 時々思い出して、この一 瞬一瞬を大切にしたいですね。(松田先生) 優秀賞 「上司の背中」 東京都 村上 奈津美さん 38歳 新しい上司は、バリバリ仕事をする、カッコい きっと別世界なのだろう。そして、そこには、パ まった課長には、歩きながら報告することや、深 「仕事と子育ての両立」は、簡単なものでは い女 性だった。朝から晩まで予 定がぎっしりつ ワーを補充する、とっておきの魔法があるらしい。 夜の打ち合わせになることも。そんな職場では ないと思う。限られた時間の中、何かを選択し、 一体いつ休むのだろう、よくあんなにパワフルに 長はいつも前向きで生き生きしている。きっと、 あるが、課長は子育て中だ。一人暮らしの私は、 動いていられるな、と不 思 議に思う。でも、楽 しそうに娘さんの話をする課長を見ると、力の源 を垣間見る気がする。どんなに疲れて帰っても、 娘さんとともに「お姫様」となって過ごす世界は、 何かを諦めることもあるに違いない。だけど、課 娘さんも、その背中を見ているだろう。 「仕事と子育ての両立」は一人でできるもので はない。「孤軍奮闘」と感じることもあるかもし れないけど、その背中、私たちも応援をしている。 審査員のコメント ●「子は親の背中を見て育つ」と言われるが、家庭でも会社でも、背中だけでなく、しっかり面と向かい合っていることも伝わってきます。上司 と貴女にも乾杯です。(橋本先生)●上司を温かく応援するお気持ちを、ぜひ課長さんに言葉にしてあげてくださいね。最強のチームになれる はず!!!(松田先生) 17