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氏名 松永寿入 上(医 学位の種類博 f 宇 佐記番号 学) 第3 6 4 4 号 学{立綬与年月け 平成 1 1 年 3月2 4け 学位授与の要件 学位規則第 4条第 2項該当者 学位論文名 P e r s o n a l i t yD i s o r d e r si nP a t i e n t sw i t hE a t i n gD i s o r d e r si nJ a p a n (日本における摂食障害患者の人格障害について〉 論文審査委員 主査教授山上 柴 露J r 主査教授一色 玄 副主査教授荻田幸雄 論文内容の要旨 【討的】摂食障害に合併する人格障害,こついては,欧米では詳細な検討がなされ,両者の相関が指摘され ている。我が同においてはこの様な研究は未だなされていないn 人格障害の診断に文化的背畏因子の影響 が述べられていることから,両者の関係に欧米との相違があるかどうかは未だ明らかではなし、我々は日 本の摂食障害患者が合併する人格障害について,国際的に標準化された構造化商接法により評価し欧米 の報告と比較・検討したので,その結果を報告する。 【方法】対象は.大阪市立大学院学部附属病院神経精神科を受診し本研究の参加に同意が得られた 1 0 8 例 の摂食障害患者である。その内訳はD S M )I lR の分類 l こ従いa n o r e x i an c r v o s a 患者3 6 例 ( A N 群). a n o r e x i a u li m i an e r v o s aを合併した患者3 0 例 ( A N + B N 群 ) , b u l i m a an e r v o s a 患者4 2 例 C B N 群〉であっ n e r V Q s aにb たc 各患者には, S t u r c t u r e dC l i n i c a ll n t e r v i e wf o rD S M ) ) I RP e r s o n a l i t yD i s o r d e r s C S C I D II)を行 い人格障害を診断した。また,同時に,摂食障害に閲する精神州理,抑うつ,不安,および強迫症状につ いて,それぞれ日記式の質問紙法により評価した。 【結果】全症例 1 0 8 例中5 5 ( 5 1 % )が何らかの人格障害と診断された。全体では.回避性,境界性,依存性. 強迫件.人格障害の頻度が高く,特に境界性などの c L u s t e rBの人格障害は, A N 群に比べ, A N + B N 群と B N 群 とがより高か勺た。また人格障害を合併する患者は,合併しない患者と比べ,過食や摂食障害に関する精 神病理.および抑うつ,不安,強迫などの諸症状がより重症であり.社会適応が不良であった。さらに人 栴障害を合併しない患者に比べ入院回数や伺殺企図が有意に高頻度に認められた u 【考案】これらの結果より.我が国においても摂食障害で人格障害を有する患者が高率に見られ,人格障 害を有する患者は,有さない患者に比べて,より重症な精神病像を呈することが判明した。また過食,日係 吐を有する A N + B N 群やB N 群の患者は,それらを台さない A N 群の患者に比べ,境界性人格障害などのc lu s t e r Bの人格障害とより強い相関を示すなど欧米の報告と同様の傾向がみられた。これらの結果は,人格障害 と摂食障害との聞の相関が.文化的江差異に関与しないことを示唆するものである。 論文審査の結果の要旨 欧米では摂食障害と人倍障害との間に密接な相闘が指摘されている c しかしこれまでのところ,本邦で はこの種の釧究は行われていない。元来,人格障害は文化的な背去をに大きく依存するところがある。摂食 障害と人格障害との相関についても,本邦と欧米との間で.どの様な差異があるのか問題視されるところ である。従って本研究では,国際的に標準化された構造化由接法を用いて.本邦での結果を従米の欧米の 結果と比較した。 -361- 対象は,大阪市マー大学医学部附属病院神経精神科を受診し本研究の参加に同意が得られた 1 0 8 例の摂食 i a g n o s t i ca n dS t a t i s t i c a lM a n u a lo f蜘 n t a lD i s o r d e r s3 r dc dR e v i s e d ( D 障害患者で,その内訳はU n o r e x i an c r v o s a 患者 3 6 例 ( A N 群 ) , a n o r e x i an c r v o sにb u l i m i an e r v o s aを合併 S M -s l R )の分類に従い, a した患者3 0 { 7 I J ( A N+B N 群 ) , b u l i m i an e r v o s a 患者4 2 例C B N )群で・あったのおのおのの患者には, S t r u c t u r e d C l i o i c a lI n t e r v i e wf o rD S M m RP e r s o n a l i t yD i s o r d e r s ( S Cl D l l ) に某づき,人格障害を診断し分額 した。また同時に.自記式の質問紙法により,照食障害に関する精神病理,抑うつ,イミ安,および強迫症 状を評価した。 0 8 例中5 5 例 ( 5 1 % )であった。全体では,回避性,境界 伺らかの人路障害と診断されたものは.全症例 1 性,依存性.強迫性人格障害の頻度が高く,特に境界性などの c l u s t e rB の人格障害は, A N 群に比べ, A N + 群と B N 群とでより多かった。また人格障害を有する患者は,有さない患者と比べ,過食や摂食障害に関 B N する精神病理.抑うつ,不安,強迫なと、の諸症状がより重症で.社会適応も不良であり.入院凶数や自殺 企図が台意に多かった。 これらの結果より.日本においても人格障害を有する摂食障害患者が多く見られ,人格障害を有する患 者は.有さない患者に比べて,より重症な精神病像を呈することが明らかとなった。また過食,噸吐を有 する A N + B N 群やB N 群の患者は,それらを有さないA N 群の患者に比べ,境界性,反社会性,演技性,及び自 l u s t e rBの人格障害とより強い相闘を示し欧米の報告と類似した傾向がみ 己愛性人格障害などいわゆる c られた。これらの結果は,人格障害と摂食障害との相関が,文化的な差異に関与しないことを示唆するも のであり,精神医学における摂食障害の診断や治療に大きく貢献するものと考えられる。よって,著者は 博士(医学)の学位を授与されるに値するものと判定された。 -362-