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勉強会概要1(PDF形式:540KB)
第1回勉強会 キックオフ・森里川海のつながり再生 森を豊かにすることで海も豊かに 畠山 重篤 氏(NPO法人森は海の恋人理事長、京都大学フィールド科学教育研究センター社会連携教授) 牡蠣の養殖をしている。山を豊かにすることで海も豊かに なると思い、山に植林するところから始めている。10年前に、 京都大学から3人の博士(林学、河川学、水産学)が来られ、新 海が豊かになることで、 米の消費が増える しい学問「森里海連環学」を作りたいが統合的に見られる専 門家がいない、というのでお手伝いすることになった。 海を豊かにすることが米の消費にもつながる。海が豊かに なりシジミが半値になれば、シジミの味噌汁を週3回つくる 森は海の恋人 という話もある。味噌汁の回数が増えればお米の消費も増 震災で海が破壊されたと思っていたが、震災後のほうが、 える。500 円の寿司の内訳は、しゃりが20 円で残りがネタ。 海の環境は良くなった。53年前のチリ地震による津波があっ ネタは汽水域でとれるので、汽水域を豊かにすれば寿司の た際は、牡蠣が倍くらい成長したと父から聞いた。これは震 値段は低くなり、米の消費 災で海の中が攪乱された影響で、窒素やリンが出てきたこと も増える。そう考えると、 「寿 による。 司を半値にするため」とい 森は川を通じて、海に鉄分を供給している。鉄分が窒素とリ うテーマでやれば、縦割り ンと合わさることで、海のプランクトンが増え、牡蠣の餌とな が強い省庁も協力して知恵 る珪藻類が増える。三陸沖を世界三大漁場とたらしめている を出し合えるのではないか。 のは、暖流寒流がぶつかる場であること以外に、ロシアと中 この国は、きちんとやれば 国の国境を流れるアムール川を通して、日本の5倍の森林か 食べるものに困らない国。 ら出る鉄分が供給されるから。魚を考えると流域だけでなく、 流域を保全する活動から意識を変える 国際目線も持つことが必要。ロシアや中国に胸をはって「森や 川の環境を守っていただきたい」と言える取組が日本にも必要。 これまで、この国の形のグランドデザインは誰が考えてい くのか、ずっと疑問に思っている。この国は様々な便利なもの でできていて、高速道路や新幹線等の整備には多くのお金 が使われている。ただ、35,000ほどある日本の大小の川の うち、1つなりとも、きちんと保全されている川はないのでは ないかと思う。何故これをおかしいと考えないのか、この国 はそれが意味することを知らないでいる。森と海は1つの流 域で捉えることが重要。ダム1つとっても、森林・川の生物の 専門家、土木の専門家等が連携し、技術的な解決を目指して ほしいし、全国植樹祭と全国豊かな海づくり大会を一緒にす ることで、みんなの意識を変えられるのではないか。 震災の海に蘇る生き物たち 「森は海の恋人」の活動について 古くから近海、遠洋漁業の拠点として有名な気仙沼湾で は、昭和40~50年代にかけてその環境が悪化し、その結果、 赤潮プランクトンで真っ赤になったカキが「血ガキ」と呼ば れて売れなくなりました。 牡蠣の漁場は、川が海に注ぐ汽水域に形成されています が、これは、川が運ぶ森の養分がカキの餌となる植物プラン クトンを育んでいるからです。そこで、湾に流れ込む川の上流 である室根山に落葉広葉樹の森を創ろうという「森は海の 恋人」の運動が地域の有志により開始され、平成元年から 植樹祭が続けられています。現在、このような概念は全国各 地にも広がっており、平成17年には京都大学により「森里 海連環学」という新しい学問も生まれています。 3 震災直後の第 23 回植樹祭