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途上国の移民政策と移民の経済的効果 ―南アフリカ
途上国の移民政策と移民の経済的効果 ―南アフリカのケーススタディ― 東京外国語大学 外国語学部 欧米第一課程英語専攻 宇野ゼミ 3年 深谷春奈 2 Introduction 国際移住とは • 人、または人の集団による国際的な移動。距 離・構成・原因に関わらずあらゆる人口移動を 指す。 • グローバル化の進展で増加 推定 150 million (IOM, 2000) 推定 214 million (IOM, 2012) • 移民の3分の1は途上国から途上国へ。 3 途上国から途上国への移民の問題点 • 医療問題 • 教育問題 • 治安問題 ⇒大部分の国は外国の移民を制限 ⇒非正規移民の発生・流入 ⇒さらなる移民規制 ⇒非正規移民の発生・流入 受入国での反外国人感情(ゼノフォビア) 2008年南アフリカ ヨハネスブルグでの暴力事件 (網中, 2011) 4 南アフリカの問題 アパルトヘイト撤廃後の民主化(1994年)以降ア フリカ大陸内からの移民流入が増加 ⇒南アフリカ国民と移民との間の対立 • • • • 1995~1999年:移民に対する市民権の付与 1996年条例:書類審査の強化 2002年移民法:摘発の強化 2004年追加条項:熟練移民を優先 ⇒規制の強化により非正規移民が増加 ⇒非正規移民はインフォーマル部門に従事 5 多くの途上国にはフォーマル部門とインフォーマ ル部門が存在している。非正規移民は歴史的、文 化的、技術能力的な理由からインフォーマル部門 がその受け入れ先となりやすい。 (顧, 2002) 南アフリカでのインフォーマル部門の雇用増加率 はフォーマル部門の雇用増加率を上回る。 (牧野, 2006) 6 目的 • 非正規移民の存在するインフォーマル部門が南 アフリカ経済に影響を及ぼすことを検証する。 仮説 • 南アフリカのインフォーマル経済には非正規 移民が従事する。 • 南アフリカでは非正規移民が存在するイン フォーマル部門の拡大が国家の経済に及ぼす影 響が大きい。 7 Model and Method 1 ハリス・トダロモデル • 都市にインフォーマル部門が存在し、このイン フォーマル部門に外国不法移民を受け入れるタ イプのハリス・トダロモデル (顧, 2002) 1 − 𝜌 𝑤𝑖 + 𝜌 𝑤 − 𝑍 > w Wi→南アフリカインフォーマルセクターの賃金率 ρ→不法移民が摘発される確率 Z→摘発された移民に課する罰金 W→移民元の賃金率 非正規入国から摘発までのスパンを考慮する。 8 Model and Method 2 𝑌𝑡 = 𝛼 + 𝛽1 𝑋𝑎𝑡 + 𝛽2 𝑋𝑚𝑡 + 𝛽3 𝑋𝑖𝑡 + 𝛽4 𝑤𝑖 𝐿 + 𝛽5 𝐷 𝑄 − 𝑇 + 𝜀 (顧, 2002を参考に作成) 被説明変数:GDP 説明変数: 𝑋𝑎 : 農業部門労働人口 𝑋𝑚 : 都市製造工業労働人口 𝑋𝑖𝑠 : 南アフリカ人のインフォーマル部門労働人口 𝑋𝑖𝑚 : 移民のインフォーマル部門労働人口 𝑤𝑖 :インフォーマル部門賃金率 𝐿: 移民に成功した労働者数 Q: 政府の罰金収入 係数ダミー T: 摘発費用 南アフリカ経済と移民規制政策、インフォーマル部門 の成長との因果関係を時系列データから検証する。 9 Data World Bank →南アフリカと周辺国の最低賃金 南アフリカの年次別データ(1994年以降) Statistics South Africa GDP Fact Sheet Quarterly Employment Statistics Quarterly Labor Force Survey アフリカ内務省 →移民政策、移民摘発数 IOM South Africa →移民統計 10 Analysis • GDP Fact Sheetから農業部門、工業部門、イン フォーマル部門のそれぞれの生産量を算出。 • QES, LFSと部門別生産高から南アフリカのイン フォーマル部門の賃金率を算出。 • ボーダーコントロールのデータから不法移民の 摘発率を算出。 • 1994年以降のデータを用いて時系列データ分析。 11 Expected Results Concluding Remarks • 南アフリカのインフォーマル部門には南アフリ カ国民だけではなく周辺諸国からの非正規移民 が従事している。 • アパルトヘイト廃止以降の移民規制政策よりも インフォーマル部門の拡大が南アフリカの国家 経済の発展に及ぼす効果が大きい。 • 移民の存在とインフォーマル部門の重要性に注 目すべきではないか。 12 References ICHRP. (2010). Irregular Migration, Migrant Smuggling and Human Rights: Towards Coherence. http://www.ichrp.org/files/reports/56/122_report_en .pdf Harris, J., Todaro, M., (1970). Migration, Unemployment and Development: A TwoSector Analysis. The America Economic Review, vol. 60, Issue 1(1970), 126-142 IOM, World Migration Report 2011, http://www.publications.iom.int OECD, (2009) . International Migration 2009, http://www.oecd.org/insights/43568670.pdf United Nations Department of Economic and Social Affairs. (2008). Trends in International Migrant Stock: The 2008 Revision, http://esa.un.org/migration/index.asp?panel=1 網中昭代『南アフリカにおける移民政策と国家・国民形成』 牧野久美子・佐藤千鶴子編『ポスト移行期南アフリカの変容』 調査研究報告書, アジア経済研究所, 2011年 顧巍『途上国における失業と不法移民の経済分析』 オイコノミカ 第39巻 第1号, 2002年, pp.65-80 下川雅嗣『小規模事業部門としての発展途上国都市インフォーマルセ クター』1999年 http://kamome.lib.ynu.ac.jp/dspace/bitstream/10131/6936/1/106618 27.pdf 牧野久美子『南アフリカの雇用・労働市場と社会生活』宇佐美・牧野編『新興工業国に おける雇用と社会生活:資料 編』調査研究報告書, アジア経済研究所, 2006年 吉田栄一『南アフリカの路商と移民の参入 ジョハネスバーグの事 例』アフリカレ ポート, アジア経済研究所, 2000年