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うっ帯性皮膚炎の治療(120711)

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うっ帯性皮膚炎の治療(120711)
ROCKY NOTE
http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html
うっ帯性皮膚炎の治療(120711)
10 年前の膝の術後から静脈のうっ帯が増悪しているが、なかなか良くならないという高齢女性。
下肢を挙上したり、弾性ストッキングなども使用したり、整形外科で指示された治療は続けている。
潰瘍は認めない。
基礎的な部分の改善はなかなか難しいが、対症的になにか出来ることは無いだろうか。基本的
な部分からお勉強。

うっ帯性皮膚炎は静脈の機能不全や慢性浮腫に伴い二次的に発症する下腿の皮膚炎であ
る。1)

初期には掻痒を伴う落屑性紅斑を呈する。1)

症状が進行すると慢性の赤血球滲出による皮膚のヘモシデリン沈着のため次第に色素沈
着をきたす。1)

慢性うっ帯性皮膚炎は、臨床的には硬性浮腫として認識され、真皮の繊維化を伴う。

下腿の下 1/3、とくに内外顆上方に浮腫性紅斑が生じ、次第に暗紅褐色の落屑性湿疹局面
や色素沈着をきたす。4)

慢性化すると白色調の萎縮性局面や皮膚硬化(硬化性脂肪織炎)を呈する。4)

うっ帯性皮膚炎は、二次感染や接触皮膚炎を併発しやすく、重症の場合は、うっ帯性潰瘍へ
と伸展する。1)

軽微な外傷で容易に潰瘍を形成し、さらには使用した消毒薬や外用薬によって接触性皮膚
炎を合併し得る。このとき漿液性丘疹が集簇し、しばしば自家感作性皮膚炎に移行する。4)

治療で重要なことは原因となる静脈潅流不全を治療すること。2)

治療には下肢挙上と少なくとも 30~40mmHg の圧勾配のある弾性ストッキングが非常に有
用である。塞栓予防用の圧迫力の弱いストッキングは代用にならない。1)

皮膚軟化剤単独か strong クラスのステロイド外用薬の併用、外的刺激の除去もうっ帯性皮
膚炎の治療に有効である。1)

皮膚乾燥と掻痒感などの初期治療として皮膚軟化剤などが推奨される。2)

掻破を含む外傷から下肢を保護すること、および慢性浮腫のコントロールは下腿潰瘍の予防
に重要である。1)

皮膚軟化剤などで改善を認めない紅斑、炎症、掻痒感、小水疱の患者ではステロイドの外用
薬(High- or mid-potency)が推奨される。2)
ROCKY NOTE
http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html
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うっ帯性潰瘍の治療は困難であり、局所の消炎には時間がかかる。可能な限り患側下肢の
挙上を励行することが非常に重要。治癒を遅延させるので、ステロイドは使用しない。1)

治療を始める前に、凝固能亢進や血管炎などの治療可能な原因を除外しなければならない。
1)

ステロイドの外用薬で十分に症状が改善しない場合、短期間のステロイド内服治療が推奨さ
れる。(プレドニゾン 20~30mg/日 5~7 日間)2)

細菌感染の徴候のある場合には、ムピロシンが推奨される。(バシトラシン、ネオマイシン、ア
ミノグリコシド系は接触感作 (?) を認めるため避けるべき。)2)

湿疹病変に対してはステロイド外用。潰瘍を形成した場合は洗浄や創傷被覆材などを用いる
ことがあるが、薬剤による接触皮膚炎に注意を払う。また、本症の進展阻止や予防のために
慢性静脈不全に対する治療が不可欠となる。弾性包帯や弾性靴下による圧迫を基本として、
安静、下肢挙上、長時間の立ち仕事の回避につとめる。静脈瘤が高度である場合は外科的
治療も考慮され、硬化療法、結紮術、静脈抜去術などを行う。4)
ステロイド外用薬の RCT があったので読んでみることにした。本文が入手できないため抄録だけ
確認。
●PECO
P:19 subjects, mean age of 73, with mild to moderate bilateral stasis dermatitis.
E:Twice-daily application of betamethasone valerate 0.12% foam to bilateral randomly assigned
lower legs for 28 days with follow-up to day 42.
C:Twice-daily application of vehicle foam to bilateral randomly assigned lower legs for 28 days
with follow-up to day 42.
O:The primary clinical endpoints were the mean change in erythema, scale, swelling, petechiae,
post-inflammatory hyperpigmentation, and self-reported pruritus, assessed on a 5-point Likert
scale (0 = clear, 1 = almost clear, 2 = mild, 3 = moderate, 4 = severe). Secondary endpoints were
changes in health related quality of life (HRQL) using the EuroQol-5D (EQ-5D) utility score and
visual analog scale (VAS) and the Dermatology Life Quality Index (DLQI).
軽度から中等度のうっ帯性皮膚炎の患者に対して、1 日 2 回の betamethasone valerate 0.12%を
塗布すると、プラセボの軟膏と比較して、各種所見や掻痒などの症状が改善するかどうかを検討
している。
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http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html
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●妥当か
抄録からは 42-day randomized, double-blinded, vehicle-controlled, pilot study などのキーワード
が拾えるが、ITT かどうかは本文が無いので読みとれない。少人数のパイロットスタディなので、あ
まり厳しいことを言わずに読み進める。
●結果
全体では治療群とプラセボ群には差が無いものの、紅斑や出血などでは治療群で良好だったよ
うだ。ベースラインと比較すると治療群でよかったという記載は目立つが、プラセボと比べてあまり
差があるというわけではないので、その効果は意外と限定的なのかもしれない。
Although there was no overall difference between the foam and vehicle-treated leg at days 14 and
28, the steroid-treated leg, but not the vehicle-treated leg, showed statistical improvement over
baseline. Improvement in the steroid-treated leg was statistically better than vehicle at days 14
and 28 in terms of erythema (P < .05) and petechiae (P < .05). Improvement in VAS was notable at
days 14 (7.1%), 28 (9.7%), and 42 (9.6%) (P < .001). Similarly, there was a statistically significant
improvement in the DLQI compared to baseline on visit days 14 (188.9%) and 28 (126.1%) (P < .001).
うっ帯性皮膚炎に対する治療は、静脈瘤などの原因がはっきりしていればそちらの治療が優先
されると思うが、原因がはっきりしない場合や高齢で積極的な治療を希望しない場合には、なかな
か治療は難しいと思う。
治療はそう簡単にはいかないけれど、経過が長い疾患だからこそ専門医と協力しながらプライ
マリ・ケア医として治療に参加できればと思う。
参考文献
1.
福井 次矢ら(監訳).ハリソン内科学 第 2 版.東京,MEDSI,2006.
2.
Stasis dermatitis. UpToDate last updated: 10 4, 2011.
3.
Weiss SC, Nguyen J, Chon S, Kimball AB. A randomized controlled clinical trial assessing the
ROCKY NOTE
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effect of betamethasone valerate 0.12% foam on the short-term treatment of stasis
dermatitis. J Drugs Dermatol. 2005 May-Jun;4(3):339-45. PubMed PMID: 15898290.
4.
清水 宏. うっ帯性皮膚炎.新しい皮膚科学
http://www.derm-hokudai.jp/textbook/index.html
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