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連の平和維持能強化に する一考察

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連の平和維持能強化に する一考察
136
国連 の平和維 持機 能 強 化 に関 す る一 考察
中
は じめ に
山
雅
司
国連 の平和 維 持 シ ステ ム
「平 和 」 の概 念 の定 義 ほ ど多様 かつ 困難 な もの は ない が ,少 な くと も紛 争 の
な い 状 態 を平 和 の重 要 な条 件 とす る な ら ば,「 法 に よ る平 和 をめ ざ した 法 体
系 」1)として の 国際 法 は紛 争 の 防止 お よび解 決 に い か に貢 献 し うる ので あ ろ う
か 。国 際法 と しての戦 争へ の取 り組 み は,戦 争観 の変 遷 に伴 って移 り変 わ って
きてい るが,二 度 にわ た る世界 的規模 の戦 争 を経験 した人 類 は 「戦 争 の惨 害 か
ら将 来 の世代 を救 う」(国 連 憲 章前 文)た
め に 「世 界 的平 和 保 障機 構 」2)として
の国 際連合 を創 設 した 。 そ して 同 じ国際組 織 と して の国 際連 盟 が ,戦 争 防止 に
十分 な役 割 を果 た しえ なか った反省 の上 に立 って,国 際連 合 は よ り徹底 した平
和 維 持 シス テム を採 用 し,国 連憲 章 に規 定 した。 国連 を確 固 た る平和 保 障機 構
た ら しめ よう とす る その思 い は,国 連 の 目的 を規 定 した憲章 第1条 が そ の第 一
番 目に 「国際 の 平和 及 び安 全 を維持 す る こ と」(1項)を
掲 げ て い る こ とに端
的 に表 わ れ てい る。 そ の意 味で 「平和 の維 持 は今 日の 国 際社 会 の最 大 の 関心事
で あ り,今 日の 国際 組 織 の 第一 次 的 な 目的 で あ る」・)とい う こ とが で きる 。 そ
して 憲章 は第2条3項
におい て 「すべ ての加 盟 国 は ,そ の 国際 紛 争 を平和 的手
段 に よって 国際 の平和 及 び安 全 並 び に正義 を危 く しな い よ うに解 決 しな けれ ば
な らな い」 と し,更 に4項 で 「すべ ての加 盟 国 は,そ の 国際 関係 に おい て ,武
力 に よ る威 嚇又 は武 力 の行 使 を,い か なる国 の領 土 保全 又 は政 治 的独 立 に対 す
る もの も,ま た国際 連合 の 目的 と両 立 しない他 のい か な る方 法 に よ る もの も慎
まなけれ ばな らな い」 と して武 力行 使 の違 法化 を はか った。 そ して その原 則 の
下 で紛争 の平和 的 処理 につ い て は第6章
で,ま た い わゆ る集 団安 全 保 障体 制 に
国連の平和維持機能強化に関す る一考察137
基づ く強力 的処 理 につ いて は第7章 で 詳細 な規 定 を設 けて い る。 また国 際 の平
和 と安 全 の維持 に関 す る第 一次 的責 任 は安 全 保 障 理事 会(以 下,安 保 理)が 負
う と共 に(第24条1項),安
保 理 が 第7章
に基 づ い て とる集 団 的措 置 につ い て
の 「決 定 」 は加盟 国 に対 し拘 束 力 を有 す る(第25条)。
この よ うに国 際連 合 にお け る平和 維 持,紛 争 処 理 システ ム は,連 盟 の それ に
比 して よ り充 実 し,し か も集権 的 な もの とな って い る。 そ して そ れが そ の通 り
機 能 を発 揮す れ ば,平 和 維 持 に関 しか な りの 成果 が 期待 で きる はず で あ った。
しか し憲 章 の予 定 した この よ うな体 制,な か ん ず く安保 理 に よ る軍事 的 強制行
動 が 五大 国の拒 否権 とい う壁 に阻 まれ,本 来 の 国連 軍 の登 場 をみ な い ま ま機 能
麻 痺 に陥 って しまった こ とは周 知 の通 りで あ る。1950年,朝
鮮 戦争 の際,総 会
に よ り採 択 され た いわ ゆ る 「平和 の ため の結 集 」 決議 はそ の よ うな安保 理 の機
能麻 痺 を総 会 に よ り補 強 しよ う とす る試 み で あ ったが,総 会 決 議 に基 づ く軍事
的 強制 行動 の勧 告 やそ の ため の軍 隊 の提供 は行 な われ てい な い ま まで あ る。 そ
の ような 中,強 制 行 動 を 目的 とす るの で な く,紛 争 当事 国 の 同意 の下 で紛 争 の
監視 等 に当 た りそ の拡 大 を防 ぐ,い わゆ る予 防 的防止 的 な平和 維 持 活動 が,本
来 の国連 軍 に代 わ って 国 際 の平和 と安全 の維 持 に重 要 な役 割 を果 た して きた こ
とは十分 に評価 され て よいで あ ろ う。 しか しなが ら現 時点 にお い て は,国 連 が
平和 維持 に果 たす機 能 に依 然 と して一定 の限界 が あ る こ と も同 時 に認 め なけ れ
ば な らな い。
本 稿 で は以上 の ような経 緯 をふ まえ た上 で,国
際 の平和 と安全 の維持 とい う
広 い意 味 にお い て国連 の平和 維持 機 能 をい か にす れ ば強化 しうるか につ い て考
えて みた い。 そ の ため にそ れ に関 し,ま ず どの よ うな検 討,諸 提 案 が これ まで
に国連 内外 で な され て きたか につ い て その い くつ か を取 り上 げ,そ の後 に現 在
の段 階 で 国連 の平 和維 持 機 能 を強化 しうる最 も現 実 的か つ可 能 な方法 は何 か に
つ い て若干 の 考察 を行 な うこ とにす る。
1.国
連 内 に お け る検 討 過 程
さて 国連 の平和 維持 機 能 強化 の方 法 を考 え るに あた って,国 連 内 にお いて こ
れ まで に とられて きた改革 の経 緯 につ い て まず み てみ た い。 そ れ は大 き く二 つ
138
の時期 に分 け る こ とが で きる。 一つ は国連 発足 か ら1960年 代 まで の時期 で ,大
国 の拒 否 権利 度 の見 直 しを中心 に,憲 章改 正,再 審 議 を求 め る提 案 が繰 り返 さ
れ た に もか か わ らず,ほ
とん ど実 質 的成 果 が み られ なか った時 期 で あ る。 も う
一 つ は1969年 の 第24回 総 会 以来 今 日までの時 期 で
,第6委
員 会 にお け る特 別 委
員会 を中心 に憲章体 制 を強化 す るた め の検 討 が重 ね られ る時期 で あ る。 そ の意
味 で は後 半 の 時期 が こ こで は よ り重 要 とな る。 そ して更 に後半 の時 期 は便 宜 的
に三 つ の時期 に分 け て考 え る こ とが で きる。 第..目
は第24回 総 会 か ら第29回
総 会 まで で,憲 章 再 審 議 に関 す る提 案 が 長期 の沈黙 を破 って提 出 され,そ の た
め の ア ドホ ック委 員会 設 置 が な され る まで の時期 で あ る。 第 二番 目は その憲 章
再 審 議 と1973年 にル0マ ニ ア主導 の下 で成 立 した 「国 際連 合 の役 割 強化 」 に関
す る決議 とが第30回 総 会 で一体 とな って特 別委 員 会 が設 置 され検 討 を重 ね る時
期,そ
して第 三番 目は別 個 に行 な われ て いた 「紛 争 の平和 的解 決 」 に関す る審
議 も先 の特 別 委員 会 と一 括 して行 な うこ とに な った第35回 総 会 以 降 の時期 で あ
る。 で は以 上 の よ うな流 れ に沿 って,国 連 内 にお け る検 討 過 程 を概 観 す る こ と
にす る。
(1)前期
国 際 の平和 と安 全 の維 持 に関 す る憲章 体 制 につ いて は,先 述 の よ うに武 力行
使違 法化 の徹底 をはか る と共 に,第6章
お よび第7章 で詳 細 な規定 を設 け る こ
とに よ り,安 保 理 の 第一次 的責任 の下 に紛 争 の平 和 的 ない し強力 的処 理 が な さ
れ る ことが予定 され た。 しか し同時 に国連 発足 当初 か らそ の よ うな紛争 処 理 体
制 が い くつ か の問題 点 を は らみ,か つ そ の問題 点 が現 実 の もの と して憲 章体 制
を機 能麻 痺 に陥 らせ る まで に はそ れ ほ ど時 間 を要 しなか った 。特 に安 保 理 の構
成 と五 大 国 の拒 否権 とい う表 決手 続 の 問題 は,集 団安 全保 障体 制 の発 動 を骨 抜
きにす る もので あ り,こ の よ うな大 国 中心 の憲 章体 制 に対 し小 国 の 間 に反対,
不満 が 生 じる こ とは十分 予想 され た 。憲章 は第108条4)で 改正 を,第109条
再 審 議,変 更 を規 定 してい るが,そ
・)で
の意味 で 「憲 章 再審 議 の規 定 は それ らの小
国 に対 す る ア ピー ズ メ ン トと して の構 想 で あ った 」6)とい うこ とが で きる。 し
か し憲章 改正,再
審議 の試 み は若 干 の場 合 を除 いて は実 際 にほ とん どみ るべ き
成果 をあ げなか った とい って よい。 第108条 に もとつ く改 正 につ い て は1946年,
国連の平和維持機能強化 に関する一考察139
総会 第1会 期 に提 出 された安 保 理 の投 票手 続 に関す る フ ィリ ピ ンの提案 な ど,
拒 否権 行使 の制 限 をはか ろ う とす る試 みが な され た が,い ず れ も憲章 改 正 には
至 らなか った。 わず か に安保 理 お よび経 済社 会 理 事 会(以 下,経 社 理)の 理事
国 の数 を増加 すべ きとの要 求 に こた えて1963年,第18回
非 常 任 理 事 国 を6力 国か ら10力 国 に増加 し(第23条)7),ま
18力 国 か ら27力 国 に増 加 す る(第61条)8)憲
総 会 にお い て安 保 理 の
た経 社 理 の理 事 国 を
章 の一 部 改 正 が な され た。 また第
109条 に基 づ く再 審 議 につ い て は第10回 総 会 まで に全 体 会 議 が 開催 され なか っ
た ため,第109条3項
に よ り全 体 会 議 召 集 の提 案 が 第10回 総 会 の議 題 に加 え ら
れ た。 しか し全体 会 議 の召 集 を直 ち に行 な うこ とにつ い て は反対 の意見9)が あ
った ため,妥 協 案o)と して全体 会 議 開催 の時期,場
所等 を検 討 す るため の準備
委員 会 が設 立 され る こ とにな った。 しか し準 備委 員会 は同会 の存 続 を総会 に報
告す る こ とを くり返 した ままで,第22回
総 会 で途 絶 える こ とに な って しま った。
(2)後期
さて以 上述 べ た よ うにほ とん ど実 質 的 な審議 の ない ま ま立 ち消 え とな って い
た憲 章再 審 議 問題 は,国 連創 設25周 年 を契 機 に再 び取 り上 げ られ る こ とにな っ
た。1969年 の第24回 総 会 で コロ ンビアが提 出 した 「国連憲 章 再 審議 に関 す る諸
提 案 検討 の必要 性 」 と題 す る議 題 が そ れで あ る。 コ ロ ン ビアは総 会一 般 討論 演
説 にお い て,憲 章 第109条 に よる憲 章 再 審議 の た め の全 体 会 議 を開催 す べ き旨
の発 言 を行 な っ てい た が,11月21日
に総 会 議 長 に対 し,「 国 連 憲 章 改 正 の ため
の諸提 案 を審 議 す るため の特 別委 員 会 の設 置 」 と題 す る追 加議 題 を総会 議 題 と
す る よう要 請 した。 そ して特 別委 員 会 に対 して は,憲 章改 正 に関す る諸 提 案 に
つ いて の報 告書 を第25回 総 会 に提 出すべ き旨 を要 請 す る とい う もの であ った。
一般 委員 会 は この コ ロ ン ビア提案 を検 討 した結果 ,表 題 を先 に述 べ た よ うに「国
連憲 章 再審 議 に関す る諸提 案 検 討 の必 要性 」 との抽 象 的 な表 現 に変 更 した 上 で
追加 議 題 と して採 択 す る こ と,そ して 同議題 を第6委 員会 で検 討 す る こ とを総
会 に勧 告 す る旨 を可 決 した。 そ の後 コロ ンビア の提 出 した議 題 は第6委 員 会 お
よび総 会 本会 議 で審 議 され たが 時 間切 れ とな り,翌 年 の第25回 総 会 に持 ち越 さ
れ た。 しか し第25回 総 会 で は憲章 再 審 議問 題 は はか どらず,か
ろ う じて加 盟 国
は憲 章 再審 議 問題 に関す る意 見 を事 務 総長 に提 出す る こ と,そ
して事務 総 長 は
140
これ を2年 後 の第27回 総 会 に報告 す る こ と を決 め ,審 議 は その年 まで持 ち越 さ
れ た。 第27回 総 会 で は各 国 の意見 を列記 した事 務 総 長報 告11)が提 出 され たが ,
意 見 を提 出 した国 の数 が少 なか った ため再 び2年 後 の第29回 総 会 まで審 議 が持
ち越 され た。 この よ うに第24回 総 会 におい て コロ ンビア提 案 が 議題 と して取 り
上 げ られ た もの の,そ れ以 降憲 章再 審 議 につ いて い ま一つ 盛 り上 が りを欠 い た
背景 に は,中 国 を除 く常任 理 事 国 の 消極 的 な態 度 が あ った とい う こ とが で き
る12)。しか し第29回 総 会 で は憲章 再 審 議 につ い て積 極 的 な勢 力 が 消極 的 な勢力
を上 回 り,42力 国 か らなる 「憲 章 に関す る ア ドホ ック委 員 会」 設 置 の決 議 が成
立 す るに至 った13)。とこ ろで第27回 総 会 に際 して ル ーマ ニ ア は 「国 際 の平 和 安
全 の維持 確保,諸
国民 間の協 力発 展 及 び国家 関係 にお ける国 際 法規 の促 進 に関
す る国連 の役 割 の強化 」 と題 す る議 題 を総 会議 題 と して追加 す るこ とを要 請 す
る 旨の書 簡 を事 務 総 長 に提 出 した14)。そ れ に関 す るル ーマ ニ アの説 明 は次 の よ
うな もの であ った。(1)国連 は創 設 時 の理想 か ら離 れ て平和 安 全 維持 確 保 の点 で
種 々欠 陥 を露呈 して お り,国 連 決議 の多 くは未 だ実 施 され てい ないか ,部 分 的
に しか実 施 されて い な い,(2)国 連 の行動 能 力及 び能 率 を増 強 す るため ,諸 国民
の和 解 及 び緊張緩 和 の促 進,国 連 憲 章及 び国 際法 規 の あ らゆ る国家 に よる遵 守 ,
諸 国家 の基 本 的権 利 及 び義務 の促 進 と尊 重,軍 備競 争 の停 止,新
旧植 民 地 主義
の終 熔,す べ て の国 家 間の協 力 強化,開 発 途 上 国 の経 済 的社 会 的 進歩 及 び工 業
国 との格 差 の 除去 を確 保 すべ く速 や か に措 置 が とられ る こ とが 必要 で あ る,(3)
今 日の新 た な現 実 が よ りよ く反 映 され る よ う国連 諸 機 関 がすべ て の加盟 国 に よ
り適切 に代表 され うる こ とが望 ま しい。 この ル ーマ ニ ア提 出の議 題 は本 会 議 で
審 議 され る こ とに な り,ル0マ
ニ アが本 会議 で 自国提 出 の決議 案15)の趣 旨説 明
を行 な ったの を受 けて 審議 が 行 なわ れ,そ の後 決 議 案 が採 択 された16)。その決
議案 は,国 連 強化 の努力 は まず 国際平和 及 び安 全保 障の維 持 及 び強化 に対 す る
国連 の貢献 の 増加 に向 けて な され るべ きこ とや,事 務 総 長 は各 国 か ら提 出 され
る意 見 につ い て第28回 総 会 に報 告 を提 出す る こ と等 の内容 を含 む もので あ った。
第28回 総 会 お よび 第29回 総 会 で は同 決 議iを更 に敷 術 した 内容 の 決議 が採 択 さ
れ17),ま たそ れぞ れ の総 会 に対 して その年 の総 会 決 議 に基 づ き各 国 の見 解 取 り
ま とめ を付 した事 務 総 長報 告18)が提 出 された。
国連の平和維持機能強化 に関す る一考察141
ところで これ まで 述べ た憲章 再 審議 問題及 び国 連 の役割 強化 問 題 に関す る議
題 は,第29回
総 会決 議19)によ り第30回 総 会仮 議 題 に別個 に掲 上 されて い たが,
第30回 総 会 第6委 員 会 の 審議過 程 で この二 つ の議 題 を合 体 した上 で憲章 再 審 議
の ため の ア ドホ ック委 員 会 を 「憲章 及 び国連 の役 割 強化 に 関す る特 別委 員 会 」
(以 下,憲 章 特 別 委 員 会)20)と して再 開催 す る との決 議案 が 出 され,同 決 議 は
本会 議 にお い て投 票 に付 され る こ とな くコ ンセ ンサ ス で採 択 された21>。この こ
とに よ り憲章 再審 議 問題 と国連 の役 割 強化 の 問題 は第31回 総 会 以 降,一 つ の 問
題 と して 上記特 別委 員会 にお い て検 討 されて い くこ とに な った。
さて憲 章特 別 委員 会 第1会 期(1976年),及
び第2会 期(1977年)は
事務 総 長 の
分 析 研 究22)を基 礎 に審 議 が 行 な わ れ た。 す な わ ち事 務 総 長 は第30回 総 会 決 議i
3499に 基 づ き,従 来 よ り各 国が行 な った意 図表 明及 び提 出 した政府 見解 を ま と
め た分 析 研 究 を特 別委 員 会 に提 出 した 。 そ れ は全 体 で144パ ラ グ ラ フか らな っ
てお り,0般
的性 質 の見解 と国連機 能 の諸側 面 に関 し表 明 され た見解 の二 部 に
分 か れ て いる。 そ して更 に前者 は,(1)今 日の世 界 にお け る国連 の役 割,(2)国 連
の役 割 強 化 か らな り,後 者 は(1)国際 の平 和 と安 全 の維持,(2)紛 争 の平和 的解 決
の手段,方 法 及 び手続,(3>経 済 ・社 会 問題,(4)非 植 民地 化,(5)現 行 手 続 の の合
理化,(6)国 連機 能 の行 政 的,財 政 的及 びそ の他 の側 面,(7)そ の他 の項 目か らな
る もので あ る。 そ して憲 章特 別 委員 会 第1会 期(1976年)で
第42パ ラ グ ラフ まで を検 討,第2会
(1978年)並
び に第4会 期(1979年)で
期(1977年)で
第4パ
ラ グラ フか ら
一読 を終 えた。続 く第3会 期
は 「紛 争 の平 和 的解 決 」 の 分 野 にお け る
改 善及 び改正 に関す る諸 提 案 につ いて検 討 が行 な われ た。 第3会 期 で は その諸
提 案 を51に 整 理 す る作 業 を行 ない,第4会
期 で は それ を更 に21項 目に編 集 した
最 終 リス トを完 成 した。 なお第34回 総 会 にお い て は フ ィ リ ピ ン,日 本等 の決 議
案23)と リビア決 議案24)の両者 が提 出 され たが,結 局 リビア決 議 案 は投 票 に付 さ
れず,フ
ィリピ ン,日 本 等 の決 議案 が採択 され た25)。
とこ ろで1979年7月16日,ル
ーマ ニ アの ア ン ドレイ外 相 は,国 家 間の 紛争 の
平和 的手段 に よる解 決 の問題 を第34回 総 会 で議 題 と して と りあ げ る こ とを要 請
す る書 簡 を国連事 務 総長 宛 に送 った。 同書簡 で は,国 連 の 有 す る紛 争 の平和 的
解 決 の ため の諸手 段 を再検 討 し,最 新 かつ完 全 な もの にす る こ とが 紛争 解 決 の
142
ため の国 連 の役割 強化 の ため に必 要 で あ る こ と,ま た最 近 憲章 特 別委 員 会 で ,
紛 争 の平和 的解決 に関 す る総会 宣 言 の作 成 につ い て合 意 が成 立 した こ とに留 意
すべ きで あ る こ とが述 べ られ て いた。 これ を受 けて第34回 総 会 で は,こ の 「国
家 間 の紛 争 の平 和 的解 決 」 の問 題 を第 一委 員 会付 託 議題 と して採 択 した 。 ル ー
マ ニ アは第1委 員会 にお い て国家 間の紛 争 の 平和 的 手段 に よ る解 決 と題 す る作
業 文書26)を総 会宣 言作 成 の基 礎 と して提 出,ま た コ ロ ン ビア に よ り提 出 され た
紛 争 の平和 的解 決 の原 則 遵 守 を各 国 に呼 びか け る決議 案27)が,本 会議 で コ ンセ
ンサ スで採 択 された28)。
さて憲 章特 別 委員 会 第5会 期(1980年)で
は,ル ーマ ニ ア,フ
ィ リピ ン,エ ジ
プ ト等10力 国 か ら提 出 され た,紛 争 の平 和 的解 決 に関す る総 会宣 言 案(い
るマ ニ ラ宣言 案)の 検 討,お
わゆ
よび 「国際 の平 和 と安全 の維 持 」 に関 す る各 国提
案 の審 議 が行 なわ れた 。 そ して第6委 員 会 は憲 章及 び国連 の役 割 強化 に関 す る
議 題 と,今 述 べ た 「紛 争 の平和 的解 決 」 に関す る議 題(第34回
員 会 で審 議 され たが,第35回
総 会 で は第1委
総 会 で は第6委 員会 に付 託 され た)を 一括 して審
議 す る こ とを決 定 した。憲 章特 別 委 員会 第6会 期(1981年)に
お い て は 「国際 の
平和 及 び安 全 の維 持 」 に関す る合 意 の有 無 の認 定作 業が 開 始 され る と共 に ,紛
争 の平 和 的解 決 に関す るマニ ラ宣 言案 の審議 が継 続 され た が,い ず れ も作 業 を
完 了す る に至 らなか った。 また第6委 員 会 で はマ ニ ラ宣 言案 を作成 す るた め の
オー プ ンエ ン ドの作 業部 会 を設 置 す るこ とが 決定 された 。
とこ ろで1982年 は二 つ の意 義 あ る成果 を残 す年 とな った。 一 つ は憲 章特 別 委
員 会 第7会 期 にお い て,紛 争 の平 和 的解 決 に関す るマ ニ ラ宣言 案 の起 草 が 完 了
し,第37回 総 会 にお いて採 択 され た こ とで あ り,も う一 つ は国連 の 平和 維 持機
能 強化 につ いて の デ クエ ヤル事 務 総 長提 案 が な され た こ とで あ る。後 者 は第37
回総 会 に対 す る事 務総 長年次 報 告29)で提 案 され た もので あ るが,従 来 の報告 と
異 な り特 に国 際 の平和 及 び安 全 の維 持 の た め の国連 機 能 の強 化 に絞 った具体 的
提 案 で あ り,同 総 会 に おい て 強 い支 持 を受 け,「 国 際連 合 の 活動 に関す る事 務
総 長 報告 」 と題 す る支 持 決議30)が コ ンセ ンサ ス で成 立 した。 そ れ ぞ れの 内容 に
つ いて は後 で詳 し く述べ る こ とにす る。
憲 章特 別委 員 会 第8会 期(1983年)は
これ とい った成 果 をあ げず に終 わ ったが,
国連の平和維持機能強化に関す る一考察143
第9会 期(1984年)に お い て 「国際 の平 和 と安 全 の維 持 」 の分 野 で,我 が 国 を は
じめ とす る西 側6力 国 に よ って 「紛 争 の予 防 」作 業文 書 が提 出 され た こ とは注
目に価 す る。 内容 につ いて は後述 す る。 また 「国連 の既 存 手 続 の合 理化 」 の分
野 につ い て は12項 目か らな る勧 告 が ま とめ られ,「 紛 争 の 平和 的解 決」 の分 野
で は 「紛争 の平和 的解 決 に関す るハ ン ドブ ック」 の作 成 が決 定 され た。 これ ら
に関す る審議 はそ の後 継続 され現 在 に至 って い る31)。
1.具
体 的提案
これ まで 国連 の平和 維 持機 能 強化 を考 え るに際 し,国 連 内 に お け る動 きは ど
うで あ ったの か を憲 章特 別 委 員会 で の審 議 の経 緯 を中心 にみ て きたが,以 下 で
は平和 維 持機 能 強化 につ い て な され た具体 的提 案 を取 り上 げ る こ とにす る。 も
ち ろん国連 の平 和 維持 機 能強 化 に関 して は国連 内外 に おい て様 々 な研 究 が な さ
れ,ま た諸 提 案 もな され て きて い る。 しか しここで は特 に国連 側 か ら出 され た
もの と して第37回 総 会 にお け るデ クエ ヤ ル事務 総 長提 案 を,ま た 国連 の外 か ら
国 家 の 立 場 に お い て 国 連 に 提 出 され た もの と して 憲 章 特 別 委 員 会 第5会
(1980年)及 び第9会 期(1984年)に 我 が 国が行 な った二 つ の提 案 を,そ
期
して最 後
に個 人 の資格 にお いて 参加 した メ ンバ ーで編 成 され る独 立 の委 員 会 に よる提 案
と して,1982年
の 第2回 国連 軍縮 特 別総 会 にあ た って 国連 事務 総 長 に提 出 され
た,い わ ゆ るパ ル メ委 員会 報 告 を取 り上 げ る こ とにす る・
(1)デ
クエ ヤ ル事務 総 長提 案
先 に述 べ た よ うにデ クエヤ ル事 務総 長 は第37回 総会 に対 し,国 連 の平和 維持
機 能 の 強化 に関す る諸提 案 を盛 り込 んだ年 次報 告32)を提 出 した。 同報告 は様 々
な国際危 機 に対 し,国 連 が憲 章 の予 定 した役 割 を十 分 に果 たせ なか った とい う
これ まで の経緯 に基づ き,そ の原 因 と改善 の ため の対 策 につ いて の提 案 が な さ
れ て い る。す なわ ち現 在 の国連 は各 国 の武 力 行使 に対 し安 保 理 は有効 な行 動 を
とれ ず,そ の決 定 は実施 され て い ない。 また紛 争 の平 和 的解 決 の プ ロセ ス は無
視 され,国 際社 会 は無 政府 状 態 に近 い。 この こ とは憲 章規 定 と実 際 が遊 離 して
い る とい うこ とで あ る・
・)。レバ ノ ンの 悲劇,中 東 問題
イ ラ ン ・イ ラ ク戦争,
r44
ア フガニ ス タ ン政権,中 米 の激 動 ,カ ンボ ジア問 題
西 サ ハ ラ,ア フ リカの角
等 の 問題 は,い ず れ も紛 争 の平 和 的解 決 の シス テム に よ り解 決 され るべ きで あ
る34)。そ れが長 期 的 にみ て全 当事 者 の利益 にな る。 紛争 の防 止 ,そ の解 決 の た
め に新 し く想 像力 に富 む方 法 で 国連 を強化 す る行 動 が緊急 に と られ る必 要 が あ
る。 そ して当 面 の 目標 は憲章 の平和 と安全 の ため の集 団行 動 の概 念 の再構 築 で
あ る とす る35)。そ の ため に まず 第一 に安保 理 の組織 的 かつ 早 い段 階 で の活 用 が
必 要 で あ り,そ の際 に常 任 理事 国 間の協 力 が不 可 欠 で あ って ,常 任理 事 国 はそ
の認 識 を新 た にすべ きで あ る とす る36)。第 二 に事 務 総 長 の役 割 の重 要性 を指 摘
す る37>。す な わ ち安保 理 の介 入 の遅 延 を避 ける た め に,事 務 総 長 が 第99条 に基
づ い て潜在 的 に危 険 な情 勢 につ い て安 保 理 の注 意 を促 すべ きか も知 れず
,自 分
は安 保理 を調整 しつつ 第99条 の下 で潜在 的 な危 険地域 で の事 実調 査 機 能 を よ り
広 く組 織 的 な もの に発展 させ るつ も りで あ る と してい る 。 しか しその た め に は
加盟 国の協 力 と支 持 が不 可 欠 で あ る と述べ て い る。 また安 保 理 自身 に対 して も
仲 介使 節 団,軍 事,民
間 オブザ ーバ ーの派 遣 等 につ いて よ り迅 速 に反応 しうる
手 続 きを検 討 す る こ とが可 能 で あ る と考 え る と して努力 を促 して い る 。 第三 に
国 連 平和 維持 活動(PKO)の
限界 につ いて の 理解 が 十 分 で な い と した上 で
盟 国並 びに安保 理 メ ンバ ー国 に対 しPKO強
化 の方 法 を研 究 す る よ う勧 告 して
い る38)。そ して そ の方 法 と して 軍事 力 の強化 お よびPKOの
る こ とを含 む保 障措 置 に よ り ,PKOの
,加
支 援 活動 を保 障 す
権 威 を支 持 す る こ との 二つ をあ げて い
る。 また交 渉 の場 と しての安 保 理 の 可能性 につ いて理解 が不 足 して お り十分 に
活用 され て い ない と述 べ て い る39)。そ して各 国政 府 に集 団 的安 全 保 障 の機 構 の
強化 の ため に真剣 な努力 をなす こ とを訴 え る と共 に ,首 脳 安保 理 を開催 して 上
記 の諸 措 置 につ い て検討 す る よ う示唆 して い る40)。
さて以上 の事 務 総 長報 告 に よる提 案 を受 け て,そ れ を支持 す る決議 案 が作 成
され た。 「国際 連 合 の 活動 に関す る事 務 総 長報 告 」 と題 す る ,わ が 国,ユ
ーゴ
他 に よる共 同提 案 は,二 度 の修 正 を経 て総 会 に提 出 され コ ンセ ンサ ス で採 択 さ
れ た41)。次 にそ の内容 をみ る こ とにす る。
決 議 は まず最 初 に諸 問題 を抱 え る国際情 勢 の現 状 認 識 か ら始 まって い る。 す
な わ ち国 際 関係 の継 続 的 な悪化,頻
繁 な武 力 に よる威 嚇 や使 用 ,特 に核 に お け
国連の平和維持機能強化 に関する一考察145
る軍備 競 争 の更 な る拡 大,ま
た種 々 の根 本 的 国 際危機 とその 悪化 の解決 にお け
る継 続 的 な行 き詰 ま りとい う現状 の 中で,特
に国連 内 にお いて も多 数 国 間交 渉
や協 力 の面 にお け る危 機 が存 在 す る こ とを懸 念 して い る。 そ して国連 の集 団安
全保 障体制 が 有効 に利 用 され て い ない とい う重 大性 に注 目 し,国 際 の平 和 と安
全 の維 持 お よび憲 章 の 目的 と原則 に従 った国 際 問題 の解 決 にお い て,憲 章 規 定
の厳格 な尊 重 と国連 の役割 強化 が急 務 で あ る と して い る。 また諸 国家 間 の友 好
関係 お よび協 力 に関 す る国際法 原 則 宣 言42),国 際紛 争 の平 和 的解 決 に関 す るマ
ニ ラ宣 言 を想起 し,総 会 第37会 期 中 に加 盟 国 に よって 出 され た意 見 を15に 留 め
た上 で,次 の8項
目か らな る決 議 を行 な って い る。 第一 に国連 の活 動 に 関す る
事 務総 長 報告 に注 目す る とい うこ とで あ る。 これ は事 務 総 長報 告 を受 けた決議
と して 当然 の こ ととい え る。 第 二 に世界 に お け る真 の安 定 した平 和 と安 全 は 国
連憲 章 の 目的 お よび原 則 と国際 法 を厳 格 に守 る こ とに よって達 成 され る こ と,
そ してすべ ての加 盟 国 はそれ に基 づ く義務 を誠 実 に果 たすべ きで あ る こ と,第
三 に国際 の平和 と安 全 の維 持,国 際 紛争 お よび危 機 の平和 的手 段 に よる解 決,
主権 平 等 に基 づ く国際協 力 の強化,経
済的社 会 的発展 お よび人権 の助長 に とっ
て不 可 欠 であ る 国連 の役 割 と実効 性 の強化 が 緊急 にな され るべ きで あ る こ と,
第 四 に国連 のす べ て の機 関 に憲 章 に従 って十 分 かつ 実 効 的 に責任 を果 たす こ と
を呼 びか け,す べ て の加 盟 国 にそ の 目的 の た め に積 極 的 に貢 献 す る よ う呼 びか
け る こ と,第 五 に安保 理 は国際 の 平和 と安 全 の維持 の ため に第 一 次 的責任 を果
た し,ま た事務 総 長 の 報告 に十 分 な考 慮 を払 うこ と,第 六 に事 務 総長 は憲章 の
下 で 自 らの責 任 を果 たす にあた って国連 の能力 を強化 す るた め の努 力 を続 け る
こ と,第 七 に総 会 第37会 期 中 に加 盟 国 に よって 出 され た意 見 を考 慮 に入 れ て,
この 目的へ の努 力 が続 け られ る こ と,そ
して 第八 に事務 総 長 は この決議 の履 行
につ い て総 会が 知 らされ る よ うにす る こ と,以 上 の 内容 とな って い る。
(2)我が 国 の提 案
日本 は国連発 足 以 来一 貫 して 国連支 持 の立 場 を と り,国 連 の役割 強化 の た め
の様 々 な諸提 案 を これ まで に行 な って きた 。 第41回 国連総 会 に お いて倉 成外 務
大 臣(当 時)は,日
本 政府 及 び国民 は過 去 の苦 い経験 を踏 ま え,国 際協 調 を外
交 の重要 な柱 として,一 貫 して 国連 を重視 し協 力 す る外 交 方針 を と って きた 旨
146
を述べ て い る43)。また昭和62年 版 外 交青 書 は 「我 が外 交 の基 本課 題 」 と題 す る
中 で,「86年 に国 連加 盟30周 年 を迎 えた我 が 国 は本 年 よ り2年 間 ,国 連 安 全 保
障理事 会 の非 常任 理 事 国 を務 め て い るが,国 連 にお け る責任 を よ り積 極 的 に果
た してい くこ とが 重要 で あ る」44)と
述 べ て い るが ,こ れ らは国 連 に対 す る 日本
の考 え方 を示 す もの で あ る。 日本 が行 な った国連 の平和 維 持機 能 強化 に関 す る
提 案 と して は1972年,国
連 事務 総 長 の求 め に よ って提 出 され た ,国 連 改 造 に関
す る 日本 の公 式見 解45)をは じめ,先
に述べ た 第37回 総 会 にお け る国連 事 務総 長
年 次 報告 の 中で,事 務 総 長 が国 連 の平和 維 持機 能 強化へ の各 加盟 国の協 力 を要
請 した の を受 け て作 られた,我 が 国民 間 の学者,報
道 関係 者等 か らな る非 公 式
研 究 会 が ま とめ た 「国連 の平 和 維 持 機 能 強化 に関 す る提 言 」46)
,ま た毎 回 の 国
連総 会 にお け る一 般討 論,演 説47)等,数 多 くの ものが あ る 。 更 に最 近 で は国連
創 立40周 年 を記念 して,安 倍外 務 大 臣(当 時)と 中 曽根 首 相(当 時)が 国連 総 会 で
行 な った演説 にお いて 「国 連効 率 化 の ため の賢 人 会議 」 の設 置 を提 案 ,こ れ を
受 け た 日本 政府 が 「国連 賢 人会 議 」設 置 決議 案 の提 出 を はか り,コ ンセ ンサ ス
で採 択 され た48)。しか しここで は特 に憲 章特 別 委 員 会 第5会 期(1980年)に
行
な っ た,「 国連 の事 実 調 査機 能 強化 」 に関す る提 案 ,及 び第9会 期(1984年)
に我 が 国 を含 む6力 国 が提 出 した 「紛 争 の予 防宣 言案 」 を取 り上 げ るこ とにす
る。
(イ)「
国連 の事 実調 査機 能 の強化 」 に関す る提 案49>
この提 案 は今述 べ た よ うに特 別 委 員会 第5会 期 に提 出 され た もの で あ るが
全 体 は前 文50),お よび,1.事
務総 長51),2.安
全 保 障 理事 会52),3.国
,
連 の他 の
現 行 組織53)か ら成 って い る。 まず前 文 は最 初 に今 日の世 界 にお ける国連 の役 割
か ら始 まる。 す なわ ち現 在 の 国連 は普遍 的 な フ ォー ラム と して 国際社 会 が抱 え
る現 実 の課題 の把 握 を助 け,判 断材 料 を提 供 した り国際 世論 に訴 え るこ とに よ
って・ 関係 諸 国 に 自制 を働 かせ 紛争 解 決 の便 宜 を はか って い る とい う点 で ,国
際 の平和 と安 全 の維 持 に重 要 な役 割 を果 た して い る と述 べ る。 そ して そ の役 割
を十分 果 たす ため に事 態 の事 実 を調査 す る機 能 の強化 が必 要 とす る。 その た め
に は特 に安 保理,国 連 事 務総 長,総 会 の もつ 事 実調 査機 能 強 化 の方法 と手段 が
考 慮 され るべ きとす る。 また具体 的 に は これ ら機 関 の下で 事 実調 査 の ため の補
国連の平和維持機能強化に関す る一考 察147
助 機 関 を設 置 し,国 連 を代表 して重 大 な紛 争 地域 や 国際摩 擦 や国 際紛 争 を引 き
起 こす事 態が 存在 す る地域 に,常 置 あ るい は適 宜 派遣 す る こ と とな って い る。
そ して そ の派遣 に は受 け入 れ国 の 同意 が要 求 され る こ とが仮 定 され,ま た加 盟
国 は その使 節 の任務 遂 行 に最 大 限協 力 すべ き と して い る。 以 上 の前 文 に続 きそ
の履 行 の実例 的手段 が述 べ られ る。
まず 事 務総 長 に関 して は次 の よ うにな って い る。 す な わ ち総 会,安 保 理 は事
務 総 長 が憲章 第99条 で 規 定 され た 自 らの機瀧 の遂 行 の必 要 条件 と して有 す る権
限 の下 で,一 ・
定 期 間関係 地域 に代 表 を置 い た り,事 態 の事 実 調査 や報 告 を させ
る こ とにつ いて是 認 すべ きで あ る。 また加 盟 国 は事務 総 長 の任 務 遂行 に最 大 限
協 力 すべ きで あ る。
次 に安 保理 に関 して は三点 か らな って い る。(1)まず 憲章 第34条 に基 づ く安 保
理 の事 実調査 権 限 の行 使 につ い て最 大 の妨 げ とな る拒 否権 の問 題 につ いて は次
の よ うに述べ てい る。 す な わち調査 権 限 を十分 行使 す る ため に,常 任 理 事 国 の
全 会 一致 の原則 は事 実 調査 団の 設置 と派遣 に関 して は適 用 され るべ きで はな く,
そ の ため に この問 題 を手 続 的問 題 と して扱 うか,規 定 又 は決 議 に よ って合 意 す
る こ とが望 ま しい とす る。(2)次に安 保 理 と事 務 総 長 の関係 につ いて理 解 と協 力
が 大切 で あ る こ とを強調 して い る。 す な わち安 保 理 は事 実調 査 機 能 の行 使 にあ
た って事 務総 長 に対 し,第99条
で認 め られた権 限 に偏 見 を抱 くこ とな くそ れ ら
を利 用 すべ きで あ る と して,例
えば安 保理 は第98条 に基 づ き決 議 に よって事 務
総長 に対 し,事 実 調査 機 能 を行 使 しその結 果 を安保 理 に報 告 す る一般 的性 質 の
マ ンデ ー トを与 えるべ きで あ る と して い る。 そ して安 保 理 はそ の報告 を受 けて
そ れ を検 討 す るた めの 会合 を行 な うこ と とす る。 また マ ンデ ー トを与 え る にあ
た って事 務総 長 に事 実 調査 の具体 的方 法 を指示 して もよい し,裁 量 を与 え て も
よい と してい る。(3)そ して安 保 理 の補助 機 関 の設 置 と派遣 につ い て ガ イ ドライ
ンが設 け られ る こ とが望 ま しい とな ってい る。
最後 に国連 の他 の現 行 組織 につ い て は総会 決 議 に よ って設 定 され た現 行 の事
実 調査 機 能 が利 用 され るべ きで あ る と して,調 査,調 停 団(総 会 決議268(D)(皿)),
平 和 監視 委員 会(総 会 決議377B(V))等
(ロ)「 紛 争 の予 防宣言 案 」54)
をあげ て い る。
148
「紛争 の予 防 宣言 案 」 は1984年 の憲章 特 別委 員 会 第9会 期 に お いて 「国際 の平
和 と安全 の維 持 」 に関 し,我 が 国 を含 む6力 国55)が提 出 した作 業文 書 で あ る
。
そ の正 式 名称 は 「紛 争,国 際 的摩擦 に導 き又 は紛 争 を発 生 させ る虞 の あ る事 態
,
及 び国際 の平和 と安全 の維持 を危 くす る虞 のあ る事 項 の 国連 に よ る予 防及 び 除
去 に関す る宣 言 案」56)であ る。 「この文書 は紛争 の発生 を未 然 に防 ぎ
,そ の脅威
を除去 す る 目的 で,憲 章 の枠 内で 国連 諸機 関が 果 た し得 る役 割 を体 系 化 し
,国
連 全体 と して の平和 維 持機 能 を最 大 限 に発揮 せ しめ よ う とす る もの」57)で
,「 紛
争 の解 決 のみ な らず,そ
の未然 防止 の分 野 にお いて 国連諸 機 関 の役 割 を体系 的
に関連 付 け よ う とす る試 み」58)とい え る。1986年 の第41回 総 会 決議 は1987年 の
憲 章特 別 委員 会 に対 して,特
に国 際 の平和 と安 全 の維 持 の 問題 に優 先度 を置 き
,
「紛 争 の予 防文 書 」 に基 づ い て紛争 の予 防問 題 に作 業 を集 中す る こ とを要 請 し
て い る59)。そ して 「87年2月 に開催 され た 同特 別 委員 会 第12会 期 にお いて は
,
そ の大部 分 につ き暫定 的合 意 が得 られ ,早 け れ ば88年 に も採 択 され得 る との見
通 し」60)で
あ る。 しか し最終 的 に国連 総 会 の 宣 言 と して採 択 され る に は至
お らず,ま
だ検 討 の途 上で あ る とい う点 か ら
,こ こで は一応87年2月
別 委 員会 で の審 議 も参 考 に しなが ら宣 言案 を概 観 す る に と どめ た い
宣 言 案 は全 体 が7項
って
の憲章 特
。
目か らな る前 文 及 び21項 か らな る主 文 で 構 成 され て い
る61)。まず 前 文 は宣 言 にあ た って最初 に友 好 関係 法 原則 宣言 及 び マ ニ ラ宣 言 の
再 確 認 を前提 と して,紛 争,国
事 態(以 下 ・事態),及
際的 摩擦 に導 き又 は紛争 を発生 させ る虞 の あ る
び国 際 の平和 と安全 の維持 を危 くす る虞 の あ る事項(以
下,事 項)の 予 防 及 び除去 に関す る国家 の基 本 的責 任 と,国 連 及 び 国連諸 機 関
の果 た し得 る役 割 を承 認 す る と して い る62>。友 好 関係 法原 則 宣 言 は国連25周 年
記 念総 会(1970年)で の総 会 決議 と して採択 され た宣言 であ り,マ ニ ラ宣 言 は第
37回 総会(1982年)に
お いて採 択 され た紛争 の平和 的解 決 に関 す る総 会宣 言 で あ
る。 そ して この予 防宣 言案 の 意義 につ い て 「国連 のか か る役 割 を強 化す る こ と
は,国 際 の平和 と安全 の維持 につ い て の諸 問題 を扱 い
,及 び紛 争 の平 和 的解 決
を促 進 す る上 で国 連 の実効 性 を高 め る もので あ る」 と して い る 。 また国家 は他
国 との 関係 を国 際法 及 び国連 の 目的 と原 則 に従 って律 す る こ と
,関 連す る国連
諸機 関 と協 力 しかつ行 動 を支 持 す る義務 を負 って い る と した上 で
,国 際 の平 和
国連の平和維持機能強化に関す る一考察149
と安 全 の 維 持 に 関 して は安 保 理 が 主 要 な責 任 を負 って い る こ とを確 認 して い
る63)。この こ とは 国連憲 章 の立 場 に沿 う もの とい え る。
次 に主 文 は紛争,事
態,事 項 の予 防及 び除去 に関 す る役割 を国家 及 び 国連 の
三つ の機 関,す なわ ち安保 理,総 会,事 務 総 長 に分 けて宣 言 して い る。 この う
ち条 項 の最 も多 くを割 りい て い るの は安保 理 に関 してで あ るが,事 務 総 長 に関
して は総 会以 上 に多 くが割 か れ て い る。
まず 国家 につ い て は国連 との連 携 を強調 す る。 す なわ ち国 家 は紛 争,事 態,
事項 に対 処 す るため の予 防手 段 に関す る示 唆 を得 るため,関 連 す る国連諸 機 関
に ア プロ ーチ す る こ とを検討 す べ きで あ り(1項),直
接 関係 国 は特 に安保 理会
合 の要 請 を考 え る場 合 は安 保 理 に対 して ア プ ロー チ を行 な うべ きで あ る(2項)
と してい る64)。
安 保 理 に関 して は次 の ような内容 とな って い る。 国際情 勢 を レビ ューす るた
め,定 期 的会 合 又 は協 議 の開催 を検 討 すべ き(3項)で
あ り,ま た特 定 の紛 争,
事 態,事 項 の予 防及 び除去 の準 備 の ため事 務総 長 を特 定 問 題 の ラポ ル トゥール
に任 命 し,及 び仮 手続 規 則上 利用 可 能 な他 の手段 を用 い る こ とを検 討 すべ きで
あ る(4項)と
す る65)。次 に特 定 の紛 争,事 態,事 項 につ き注 意 を喚 起 され た場
合 に事 実 関係 を検 討 し,レ ビュ0を 継 続 す るた め協 議 を行 な うこ と(5項),ま
た その協 議 にお け る安 保理 議 長 に よる秘 密裡 の接 触 や非 公 式 の方 法 の利 用 を検
討 す べ き(6項)と
した上 で,関 係 国 に対 し(a)憲章上 の義 務 履行 を要 請 す る こ と,
(b)紛争,事 態,事 項 の悪 化 につ なが る虞 の あ る一切 の行 動 を慎 む よ うア ピー ル
す る こ と,(c)紛 争,事 態,事 項 の悪化 防止 に資 す る行 動 を とる よ うア ピールす
る こ とを検討 すべ き と して い る(7項)66)。 更 に事実 調 査 団や 周 旋 ミ ッシ ョンの
派遣,又
は監 視 団,平 和 維 持 活動 を含 む国連 プ レゼ ンス の設 置 の検 討(8項),
紛争 予 防 の ため の地域 レベ ルで の努 力 の 奨励,支 持 の検 討(9項),直
接 関係 国
に対 し付 託 され た紛争,事 態,事 項 を調 整す る適 当 な手続 又 は方 法 を勧 告 し,
適 当 と認 め る解 決 の条件 を勧 告 す る こ との検 討 を掲 げ てい る(10項)67)。
総 会 につ い て は,紛 争,事 態,事 項 を討議 す るため に憲 章規 定 を活用 す べ き
こ と,憲 章 第12条 の枠 内 で勧 告 を行 な う こ と を検 討 す べ き とな って い る(12
項)68)。また事 実 調 査 権 限 の活 用 お よび地 域 レベ ル で の努 力 の奨励,支
持 に関
150
す る検討 につ い て は,安 保 理 の項 で もみ られ た もので あ る(13項 ,14項)69)。 な
お安 保 理又 は総会 は,法 律 問題 につ い てICJの
勧 告 的 意見 を要 請す る可 能性
を活 用 す るこ とにつ い て検 討 すべ きと して い る(11項)・・)。
最 後 に事務 総 長 に関 して は,紛 争,事 態 ,事 項 の直接 関係 国 か らの アプ ロ ー
チ に対 し,右 関係 国 にそれ らが選 ぶ平 和 的手 段 に よる解 決又 は調整 を模 索 す る
よ う要 請 し,ま た事 務 総 長 が適 当 と認 め る周 旋 そ の他適 当 な手 段 を提 供 すべ き
で あ る こ と(15項)71),ま た 自 ら直 接 関係 国 に対 しア プロ ーチ す る こ とを検 討 す
べ きで あ る と して い る(16項) 。 そ して事務 総 長 の項 で も事 実 調 査権 限 の十分 な
活用(17項)72),地 域 レベ ルで の 努力 の奨励 が掲 げ られて い る(18項) 。更 に安 保
理 との連 携 につ いて 自 らの得 た情 報 を安 保 理 の要 請 又 は 自 らの イニ シ アテ ィヴ
に よ り安保 理 に対 して 送付 すべ きで あ り,適 当 な場 合 に は総 会 に対 して もそ う
す る こ と と して い る(19項)73)。 また安 保 理 の注 意 を促 す権 利 を行 使 すべ きで あ
り(20項),憲
章 第99条 の範 囲 内 で,事 項 につ い て の安保 理 会合 を要 請す るこ と
の検 討 を奨励 され る とな って い る(21条)74)。
以 上 が 宣言 案 の概 要 で あ る。 この宣 言案 は さ ほ ど遠 くな い将 来 に採 択 され る
もの と思 われ るが,第41回
総 会 にお いて倉 成外 務 大 臣(当 時)は ,国 連加 盟 国が
平和 の重 要性 と国連 の存 在 意 義 に対 す る各 々 の コ ミッ トメ ン トを今 一度 高 らか
に表現 す るため に も,同 作 業文 書 が で きる限 り早 い時 期 に総 会 の宣言 と して採
択 され る こ とを希望 す る 旨述 べ て い る75)。
(3)パル メ委 員 会報 告
具体 的提案 の最後 と して いわ ゆ るパ ル メ委員 会 に よる提 案 をみ る こ とにす る。
パ ル メ委員 会 はス ウ ェ ーデ ン首 相 オ ロフ ・パ ル メ氏 が 主宰 した
,い か な る既 存
の組 織 に も属 さない独 立 委員 会76)であ り,そ の正 式 名称 は 「軍縮 と安全 保 障問
題 に関 す る独 立 委員 会 」 で あ る。 この 報告 はそ のパ ル メ委 員会 に お いて1980年
か ら82年 にか けて討 議 され た もの を ま とめ た もの で,1982年
の第2回
特 別総 会 にあ た って 国連 事 務 総 長 に提 出 され た。 「共 通 の 安 全 保 障
へ の 道標
」77)と
題 す る この報 告 書 は
,第6章
国連 軍縮
核軍縮
「
勧 告 と提 案 」 の 中で 国 連 の
安 全保 障 シス テ ムの強 化 に関す る提 案 を行 な って い る。 以 下 そ れ につ い てみ て
みた い。
国連 の平和維持機能強化に関す る一考察151
「我 々 は国連 が安 全保 障 に対 して果 たす役 割 を強化 す る こ との必 要性 を確 信 す
る もので あ る」78)と
の言 葉 で始 ま る全 体 は,5つ
の項 目に分 か れ て い る。 第 一
が 「安 保 理 と国連 事 務 総長 の よ り効 果 的 な利 用 」,第2が
「集 団安 全保 障
そ の第 一歩 」,第3が
「平和 維 持 能 力 の向
上 」,第5が
「集 団安 全 保 障実 施 の条 件 」,第4が
「適 切 な 自動 的資 金 調 達 機構 」 で あ る。 これ をみ て もわ か る よ う
に国連 の安全 保 障 シ ステ ムの 強化 につ いて 多角 的 な提 案 が な され てい る。
まず 「安保 理 と事 務 総 長 の よ り効 果 的 な利用 」 で は,国 連 にお いて 国際 の平
和 と安 全 の維持 に関 す る第0次 的責 任 が安 保 理 にあ る に もかか わ らず,各
国は
紛争 発 生 の ぎ りぎ りの段 階か,場 合 に よって は既 に発 生 して しまった後 で,最
後 の手 段 と して安保 理 に頼 る とい う傾 向が あ る こ とか ら,安 保 理 が 十分 に その
機 能 を発揮 してい な い こ とを指 摘 す る79)。これ を解 決 す るた め に は各 国 の努 力
と同時 に安 保 理 自体 も紛 争抑 止 能 力 を強化 す る必要 が あ る と し,特 に常任 理 事
国が相 互 に理 解 と協 力 を して,国 連 事務 総長 が 憲 章 第99条 に基 づ いて とる行 動
を助 け るべ きで あ る と して い るas)。従 って安 保 理 は,平 和 へ の潜在 的脅 威 に対
して事務 総 長 が直 ち に同理事 会 の注 意 を喚 起 す る よ う求 め た決 議 を採択 しな け
れ ばな らない とす る8')。また事 務 総 長 に対 して,安 保 理 で 国 際 関係 の年 次 報 告
を行 な うこ とが望 ま しい と し,そ の報 告 は公 開 の会 議 に も伝 え られ るべ きで あ
り,ま た安保 理 の メ ンバ ーで あ る外相 に よって そ の内容 に関す る非公 式 の討 議
が行 な われ な けれ ばな らな い と して,安 保 理 と事 務 総 長 の協 力 を訴 えて い る82)・
そ して安 保 理 が折 にふ れて 国連 本部 の外 で会 合 を持 つ こ と も有益 で あ り,こ の
こ とは特 定 地域 の 問題 につ い て さ らに集 中 した討議 と審議 を可 能 にす るで あ ろ
う と してい る83)。
次 に 「集 団安全 保 障
その 第0歩 」 にお い て は特 に安保 理 の常任 理 事 国 間
の一 致 の重要 性 を強調 す る。 これ まで常 任 理 事 国 に よる拒 否権 の前 に どれ ほ ど
集 団 的措 置 の発 動 が妨 げ られ たか を考 えれ ば 「常 任 理事 国 の一 致 は世界 の平和
と安 全 を維 持 す る上 で,国 連 が 効果 的 に機 能 す る ため の前 提 条 件 で あ る」84)と
い って よい。 こ こで は国連 憲章 の集 団安全 保 障 の考 え方 を更 に進 めた共 通安 全
保 障構 想 を提 案 し,そ の基 盤 を安 保 理 の常 任 理事 国 と第三 世界 の 国々 に よる政
治 的協 定 とパ ー トナ ー シ ップで あ る とす る85)。そ して常 任 理 事 国 の間 で集 団安
152
全 保 障 の行動 を支持 す るか,少
な くと もそ れ に反 対投 票 しな い とい う合 意一
「
協 定 」 は強力 な支 え とな る と述べ て い る86)。また 「集 団 安全 保 障 は予 見 ,予
防,お
よび強 制 的要 素 を もつ 」87)として,予 見 お よび予 防 の レベ ル で 国連 活 動
に必 要 な三 つ の局 面 を次 の よ うに掲 げ る。 第 一 に対 立 して い る国 の うち少 な く
と も一 力国が 紛争 の起 こ る危 険性 を警告 した際 に ,事 務総 長 は事 実 究 明 の ため
の調 査 団 を組織 し情勢 を報告 させ る こ と,第 二 に事 実 が確 か め られ,ま た対 立
してい る国 の うち少 な くとも一 力国 の同意 が あ れ ば事務 総 長 は安 保 理 の 許可 を
得 て,状 況 を軍事 面 か ら判 断 す る ため に軍事 査 察 団 を要 請 国 に派 遣 し
,安 保 理
の重 大 な懸 念 を表 明 す るこ と,第 三 に情勢 を軍事 査 察 団 の報 告 に照 ら し合 わせ,
対 立 国 中 の一 力国 の要 請 に応 じて適 切 な国 連 軍 の介 入 を許 可 す る こ と,そ
して
この軍 隊 は要 請 国 の領 内 で戦 闘 の起 こ りそ うな地 帯 に配備 され る こ とに よ り
,
潜 在 的 な侵 略 者 に対 し目に見 える抑 止 力 とな ろ う と して い る88)。が 「これ ら三
つ の局 面 は全 て安 保 理 の常任 理 事 国 の 問の 政 治協 定 に基 づ く」89)として い る
。
また この よ うな国連 軍 の性格 につ いて効果 的 な防止 措 置 の機 先 を制 す る早 さで
領 土 侵 犯 が起 こ った場 合 に は,制 限 つ きの強 制措 置 が必 要 とな る と してい るgo)
。
そ して この強制行 動 は直 ち に実現 す る見 通 しはな い と しつ つ も 「国際社 会 が め
ざす べ き 目標 で あ る こ とに変 わ りは ない 」91)として い る。 但 し現 在 の段 階 で は
侵 略 行為 拡 大 を防 ぐた め に,停 戦 の提 唱 は 国境線 へ の撤 退要 求 と共 に な され る
べ き と して い る92)。
続 く 「集 団 安 全 保 障 実 施 の 条 件 」 にお い て は そ の不 可 欠 な要 素 と して(,)
第 三 世 界 の 支持,(・i)拒
否権 行使 国 間の政 治協 定 ,㊥
国連 予 備 軍 の機 能 構
造 をあげ て い る。 そ の 中で 国連予 備 軍 に関 して 国連 と加盟 国 の 問 の合 意 を意 図
した第43条 の 目的 に沿 って,軍 事 参 謀委 員 会 の再 開 と強化 が な され な けれ ば な
らない と して い る93)。また国連 に よる強制 行 動 が 強 国 に よる干 渉 の媒 体 とな ら
ない ため に予備 軍 は安 保 理 の常任 理 事 国 に片 寄 る こ とな く,第 三 世界 が そ の潜
在構 成 国 とな る こ とが 重要 で あ る と述 べ る・
・)。
そ して 「地 域 的組織 機 構 は差 し
迫 った平和 へ の脅 威 とい う危 険 に対 して安保 理 と事務 総 長 に警 告 し,平 和 維持
へ の 国連 の努 力 を補 い なが ら重 要 な役 割 を果 たす こ とが で きる」95)と
の認 識 の
上 か ら,こ の予備 軍構成 も地域 を基 盤 とす る こ とが 期待 されて い る96)。
国連 の平和維持機能強化 に関す る一考察153
更 に 「平和 維 持 能力 の向上 」 にお いて は,集 団安 全保 障 に対 す る提 案 が全 て
の紛 争 状 況 に適用 す るわ け に はいか ない こ とか ら,継 続 的 な平 和 維持 活 動 が必
要 となろ う とす る97)。そ して任 意 で は あるが 平 和 維持 活 動 へ の よ り幅広 い参与
を奨励 し,次 の よ うな段 階的措 置 を提 案 して い る。
(a)平和 維持 軍 の合 同訓練 を,国 連 事務 局 の標 準 訓 練 マ ニ ュア ル に基 づ き,各
国軍 隊 の基礎 訓 練 コ ースの一 部 と して行 な う よ う各 国 に要 請 す る国連 総 会 の決
言
義。
(b)第三 世界各 国 か らの軍 隊 の訓 練 と装 備 を援 助 す るため,平 和 維持 軍 で 経験
のあ る国 々 と適切 な 国連機 関 と合 同作 業 を行 な う。
(c)待機 基地 で平和 維 持任 務 につ く部 隊 を助成 す る地域 的手 配 を行 な う。
(d)常時必要 と され る特 定 の種類 の装備 や物 資 を貯 蔵 して お く。 具体 的 に は主
要大 国 は輸 送機 と兵姑 や送信 の ため の特 別 の装 置 の寄付 を,他 の諸 国 は野 戦病
院 を含 む医療 サ ー ビス の器 具 の設 置 を求 め る とい う内容 の もの で あ る98)。
最後 の 「適 切 な 自動 的資 金調 達 機構 」で は,今
まで述 べ た諸 提 案 を実 現 す る
ため の経 済 的基 盤 につ いて の提 案 を行 な って い る。 す なわ ち これ ら資金 は独 立
した財 源 か ら調 達 す る必 要が あ る と して,国 際 共 同体全 て に幅 広 くかつ公 平 に
負 担 させ る 自動 的 な経 済 手段 を とる こ とを提 案 してい る99>。但 しそ れ まで の過
渡 的措 置 と して,全 加 盟 国 が通 常経 費 の分 担 金 の 一定 割合 の追 加 金 を支 払 うこ
とに同意 すべ きこ とを国連総 会 が勧 告 す る こ と と して い る100)。
結 び一
平和 維持機能強化 の意義 と方 向性
これ まで 国連 の 平和 維持 機 能 の強 化 に関 し,憲 章特 別委 員 会 を中心 とす る 国
連 内 にお け る検 討過 程,お
よびい くつ か の具体 的提 案 をみ て きた 。 しか しここ
で取 り上 げた の はそ の ほ んの一 部 で あ って,研 究,提 案,宣 言 等 に よる国連 強
化 へ の試 み は政府 レベ ル,民 間 レベ ル を通 じて国連 内外 にお い て これ まで に数
多 くな されて きて い る し,ま た現在 検 討 中の もの も含 め て今 後 も種 々 の試 み が
な されて い くもの と思 わ れ る。 しか もここで取 り上 げ た もの はそれ らを代 表 す
る とい う性 質 の もので はな く,あ くまで先 に述 べ た筆者 の観 点 か ら選 ん だ もの
にす ぎな い。従 って これ らの提案 か ら国連 の役 割 強 化 につ い ての何 らか の結 論
rs4
が 直 ち に導 かれ る もの で はな い し,ま た こ こで新 た な提案 を行 なお う とす るわ
けで もない。 しか し少 な くと もこ こで取 り上 げた提 案 に関す る限 り,そ こに は
何 らか の共 通す る ものが あ る よ うに思 わ れ る。 また その共 通項 は こ こに取 り上
げ なか った他 の もの に も含 まれ て い る こ とが わ か る。 同 じ国連 につ いて そ の平
和維 持 機 能 の強化 を分析 した もので あ る ので あ るか ら,そ こに類 似性 が み られ
るの は当然 とい え ば当然 で はあ るが,逆
にそ れ ら諸提 案 は全 体 と して現在 の 国
連 の平和 維 持機 能 の弱 点 を映 し出 す もの とい え,同 時 にそ こに はそ の改 善,強
化 に 向け ての一 つ の共 通 の認 識 と方 向性 が あ る よ うに思 わ れ る。
創 設 以 来42年 を経 た国 連 は 「財 政 危 機iと行 政 改 革 に忙 殺 され」101),また ア メ
リカ,イ ギ リス等 のユ ネス コか らの脱 退 にみ られ る国連離 れ な どを きっか け と
して 国連 の存在 そ の もの に対 して疑 問 を投 げ か け る声 も決 して少 な くは ない。
そ の意 味 で 「国連 は40年 の齢 を重 ね一 つ の大 きな節 目に直面 して い る」102)と
い
って もよい。特 に国際 の平 和 と安 全 の維 持 に関 して は他 の分 野 に比 べ,こ
れま
で 国連 は憲 章が 当初 予 定 した機 能 を十分 に発 揮 して きた とはい えず ,中 で も大
国 の利 害 が 直接 絡 む紛 争 に至 って は国連 と して何 ら実 質的 な行 動 も とれ な い ま
まの場 合 が ほ とん どで あ る。 そ れが安 保 理 に よる決定 を除 い て は国連 決 議 は勧
告 的性格 しか もたず,ま
た法 的拘 束力 を もつ 安保 理 の決定 に よる集 団的 措置 は
五大 国の拒 否権 に阻 まれて発 動 され な い こ とに よ る こ とは あ らた め て い うまで
もな い。 そ の意 味 で 「国際 の平和 と安全 の維 持 」 とい う国連 の 第 一 の使 命 は発
足 当初 の理 想 か らはか な り隔絶 して い る。 しか しそ の よ うな国連 の実体 へ の失
望 か ら国連 無用 論 の よ うな極 端 な結 論 を導 き出す こ とが正 し くな い ことは明 ら
かで あ る。 そ れ は国連 が本 来 「主 権 国家 の 集合 体 以上 の もの で は な く,超 国 家
的 主 権 を もって い な い」103)と
い うそ の基 本 的性 格 をふ ま えず,国
連 に過剰 期 待
を抱 くところか ら生 じる もの で あ る。 また拒 否 権 につ いて は確 か に問題 点 は多
い が,「安保 理仮 手 続 規則30に お いて拒 否権 行 使 を封ず る手段 が 用 意 され てお り,
実際 の拒否 権行 使 は この ような諸 々 のバ ラ ンスの 上 に立 って行 な われ てい る こ
とに改 め て留意 す べ き」104)で
あ り,「 拒 否権 が 認 め られて い れ ば こそ米 ソ両 国 は
国連 の 中 に とど まって い るので あ り,国 連存 続 の ため の い わ ば安 全 弁 」zas)とも
み る こ とが で きる。 その よ うな認 識 を もつ な らば これ まで に国連 が 行 な って き
国連の平和維持機能強化 に関す る一考察155
た平和 維 持 活 動(PKO)等
を含 め,「 現 行 の機 構 を前 提 とす る限 り,従 来 の平 和
維 持 上 の成 果 は高 い評価 を受 け て も よい」'06)と
い え る。 いず れ にせ よ 「あ らゆ
る国 の運 命 が ます ます 密接 につ なが って くるのが確 実 な世 界 にお いて は,国 際
の平和 と安全 を維持 し世界 的 な問題 を協 力 して処 理 して い くに は,国 際連 合 に
と って代 わ る有効 な多 国 間体 制 とい うの は考 え られ ない」107)と
い え る。 問 題 は
国連 の あ り方 であ り,国 際 の平和 と安全 の維持 に向 けて 国連 の役 割 と機 能 を ど
の よ うに強化 して い くかで あ る。
国連 は国際 の平和 と安全 の維持 につ いて紛 争 の 平和 的処 理 お よび強力 的処 理
両面 にわた り憲章 に詳細 な規 定 を設 け,そ の徹 底 度 にお い て は これ まで に ない
平和 維持 機構 と して発 足 した。 しか し主 権平 等 原 則 に よる一 国一 票,多 数 決制
の採 用 と同時 に,連 合 国 のヘ ゲ モニ ー体 制 の継 承 とい う二律 背 反 す る理 念 を当
初 か ら内包 させ た複 合秩 序 で あ った こ とか ら,五 大 国 の足並 み の乱 れ が安 保 理
の機 能麻 痺 を導 くとい うこ と も十分 予想 され た こ とで あ っ た。 そ してそ の よ う
な不都 合 を是正 す る最 も端 的 な方法 と して考 え られ るの は憲 章改 正,お
よび再
審議 で あ る。特 に憲章 再 審議 に関す る規定 をお い た背 景 に,安 保 理 の構成 と表
決手 続 が主権 平 等 の原 則 に反 す る とい う小 国か らの批 判 をな だめ る意 図 が あ っ
た こ とにつ いて は先 に述 べ た。 しか しこれ まで に改正 が な された の は安保 理,
経社 理 の理 事 国数 の増 加 な どほ んの一 部 で あ り,今 後 も中 国 を除 く常 任 理事 国
を中心 とす る改 正 反対,消 極 派 の勢 力 か らみ て改正 に よ る是 正 お よ び機 能 強化
は実 現 の可 能性 が乏 しい とい わ ざる をえ ない。 第25回 総 会 を契機 に憲 章 改正 論
議 が再 び盛 り上 が り,当 初 そ の方 向 で 出発 した憲 章 に関す るア ドホ ック委 員会
が,そ の後 国連 の役 割強 化 問題 と合 体 して特 別 委 員会 とな り,憲 章改 正 よ りも
憲 章 の枠 内 で提 案,宣 言 等 の積 み 重 ね の上 に国連 の平 和 維持 機 能 の強化 を はか
ろ うと して い る一連 の経 緯 はそ の こ とを裏付 け る もの とい って よい。
さて現 体制 の 中で実現 可 能 な国連 の平和 維 持 機 能 強化 の 方 向性 を先 の具 体 的
提 案 を も とに考 え る時,ど
の よ うな像 が浮 か ん で くるであ ろ うか。 まず 何 よ り
も大 前提 となるの は加 盟 国 に よ る国連憲 章 の 目的 お よび原 則,そ
して国 際法 の
価 値 の尊 重 で あ る。 なぜ な ら国連 憲 章 には真 の平 和 ら しい平和 を達 成 す る上 で
守 るべ き原則 が 打 ち出 され て お り,こ れ ら原則 はい まなお そ の妥 当 に して正 当
156
な特 質 を失 な って い ない か らで あ る108)。
その上 で加盟 国 はそ れ らに基 づ く義務
を誠 実 に履 行 す る こ とで あ る。 そ して 「国 連憲 章 の原 則 の価 値 は不 変 で あ り,
かつ 国連 を強化 す る こ とに よ り未 来 に よ りよ く対 応 させ る こ とが 出来 る との認
識 で は明 らか に合 意 」109>は
既 に加 盟 国 の 間 に存 在 してい る とい って よい。 国連
の役 割 と実効 性の 強化 はそ の合 意 の上 に築 か れ る もの で あ る。
国 連 の強化 につ い て は次 の 二点 が重 要 と思 わ れ る。第 一 にすべ ての機 関が憲
章 に従 い十分 かつ 実 効 的 に責任 を果 たす こ とで あ り,第 二 にそ れ らが別 個独 立
に行 動 す るので は な く,互 い の連携 と協力 の下 で よ り合 体 と しての機 能 を発 揮
す る こ とがで きる ので あ って,そ の ため に各 々の役 割 を有 機 的,体 系 的 に関連
づ け る こ とで あ る。 まず 第一 の点 に関 して は何 とい って も安保 理 が 第 一次 的責
任 を果 たすべ きこ とに変 わ りはな く,集 団 的措 置 が 十分 に発 動 しえ ない現状 に
おい て は紛争 の平 和 的解 決 の機 能 強化 が必要 で あ り,そ の意 味 で手続 的側 面 を
重視 したい わ ゆるマ ニ ラ宣言 の もつ意 義 は小 さ くない。 また6章 半 とい われ ,
安 保 理 の集 団 的措 置 に代 わ って これ まで重 要 な役 割 を果 た して きた平和 維 持 活
動(PKO)に
つ い て,軍 隊 の編 成,同
意 原 則,財
政 的支 援 の 問 題 を含 め 強化 が
方 途 につ いて検 討 を重 ねて い くこ とが必 要 と思 わ れ る。安 保 理 と並 んで今 後 ま
す ます比 重 を増 して い くと思 われ るの は事務 総 長 の役 割 で あ る。 これ まで に も
事務 総長 が そ の 中立 的 立場 を利 用 して静 か な る外 交 を展 開 し紛 争 を解 決 した例
は数 多 いが,そ の仲 介,調 停 権 限の 有権 性 を確 認 し,ま た理 解 と支援 を行 な っ
て い くこ とが 望 まれ る。 デ クエ ヤ ル事務 総 長 も,「 あ らゆ る状 況 にお い て事 務
総長 は加盟 国 と協 調 してい か ね ば な らず,そ
れ だ け に加 盟 国 だ けが効 果 的 に活
動 す る上 で必 要 な政 治 的支 援 と権 威 を事 務 総 長 に提 供 で きるの で あ る」110)と
述
べ て い る。 そ して安 保 理,事 務 総長 ,総 会 す べ て に とって必 要 な こ とは事 実 調
査 機 能 の強化 及 び組 織 化 で あ る。正確 な事 実 の把 握 な く して適切 な判 断 と対 応
は行 なえ ない か らで あ る。安保 理 につ い て はそ の ため の補 助機 能 を設 け る こ と
や,表 決 手続 を どうす るか につ い て の検 討 が 必要 で あ る。 また事 務 総長 は第99
条 に基 く事実 調査 機 能 を よ り強化 してい くべ きで あ る。 そ して この よ うに各機
関 が十 分 に機 能 す る上 で第 二 の点,す
な わち相 互 の 連携 が重 要 とな って くる。
特 に今 後安 保 理 と事 務総 長 の 問 の理解 と協 力 が 一層 望 まれ る。 事務 総 長 は第99
国連 の平 和維持機 能強化 に関す る一 考察157
条 に基 づ く安 保 理 の 注 意 を促 す 権 利 を利 用 す べ き で あ り,ま
た 安 保 理 に情 報 提
供 や 報 告 を行 な って い くこ と は有 益 で あ る 。 そ して 安 保 理 は 調 停 権 限 も含 め て
事 務 総 長 の 役 割 に対 し理 解 と支 持 を与 え て い く必 要 が あ る 。 更 に 国 連 が 地 域 的
安 全 保 障 との 連 携 を ど の よ う に は か って い くか は,憲
章 の 予 定 す る地 域 主 義 の
上 か ら も検 討 を要 す る課 題 で あ る 。
以 上 述 べ た 諸 方 策 は い ず れ を と っ て も今 後 具 体 化 の た め の 検 討 を 必 要 とす る
が,こ
れ ら を通 じて 国 際 の 平 和 と安 全 の 維 持 に お け る 国 連 の 機 能 強 化 が は か ら
れ る こ とが 望 まれ る。 なぜ な らそ の 過 程 の 中 に しか 人 類 の 明 る い 未 来 は な い と
考 え る か らで あ る。 「す べ て の 国 家 に と っ て 国 連 を建 設 的 に 支 援 し,賢
用 す る こ と,そ
して 国 連 憲 章 の 規 定 を 普 遍 的 に 尊 重 す る こ と は,来
明 に活
た るべ く
2000年 代 の 世 紀 へ 安 全 か つ 調 和 の う ち に移 行 して い く上 で 最 も重 要 な こ とで あ
る と私 は信 じ る の で あ る」"1)と の デ クエ ヤ ル 事 務 総 長 の 言 葉 は こ の こ と を端 的
に 表 わ して い る 。 しか し主 権 国 家 が 並 存 す る現 在 の 国 際 社 会 に お い て は そ の 鍵
を握 る の は あ くま で 加 盟 国 で あ る。 そ の こ と を も う一 度 確 認 して 本 稿 を終 わ り
た い。
注
1)田
畑 茂 二郎 「差別 戦争観 と無 差 別戦 争観一
平和学H平
法 に よる平和 をめ ざ して
和 へ の思想 』(早 稲 田大学 出版会,1984年)137頁
2)神
谷 龍男 『国際連合 の安 全保 障』(有 斐 閣,1967年)53頁
3)高
野雄一 『国際組織法(新 版)』(有 斐 閣,1975年)46頁
4>第108条(改
正)こ
」 『講座
。
。
。
の憲章 の改 正 は,総 会 の構 成 国 の三分 の二 の多数 で採択 され,
且 つ,安 全保 障理事 会のすべ ての常任 理事 国 を含 む国際連合加 盟 国の三分 の二 に よっ
て各 自の憲法 上の手続 に従 って批 准 され た時 に,す べ て の国際連合加 盟 国に対 して効
力 を生ず る。
5)第109条(全
体 会議)1.こ
の憲章 を再審議 す るための 国際連合加 盟 国の全 体会 議 は,
総 会 の構 成国の三分 の二 の多 数及 び安 全保 障理事会 の九理事 国 の投 票 に よって決 定 さ
れ る 日及 び場 所 で開催す るこ とが で きる。各 国際連 合加盟 国 は,こ の会議 にお いて一
個 の投 票権 を有す る。
2.全
体 会議 の三 分の二 の多数 に よって勧告 され るこの憲 章 の変 更 は,安 全保 障理事
会 のすべ ての常任 理事 国 を含 む国際連合加 盟国 の三分 の二 に よって各 自の憲法 上 の手
続 に従 って批准 され た時 に効力 を生ず る。
3.こ
の憲章 の効力発 生後の総会 の第十 回年次会 期 まで に全体会 議が 開催 され なか っ
た場 合 には,こ れ を招 集す る提 案 を総 会の第十 回年次 会期の議 事 日程 に加 え なけれ ば
IS8
な ら ず,全
体 会 議 は,総
会 の 構 成 国 の過 半 数 及 び 安 全 保 障 理 事 会 の 七 理 事 国 の投 票 に
よ っ て 決 定 さ れ た と き に 開 催 しな け れ ば な ら な い 。
6)斎
藤鎮 男
『国 際 連 合 論 』(新
7)発
効 は 米 国 が 批 准 書 を 寄 託 し た1965年8月31日
8)1971年,第26回
総 会 に お い て,経
発 効 は1973年9月24日
9)反
有 堂,1986年)256頁
。
。
社 理 の 理 事 国 数 は 更 に 倍 の54力
国 に増 大 さ れ た 。
。
対 の 立 場 を と っ た の は ソ 連 圏 を 中 心 と す る 国 で,憲
映 し た 十 分 満 足 の い く 文 書 で あ る こ と か ら,再
章 は 諸 国 民 の 利 益 と抱 負 を 反
検 討 会 議 の 必 要 は な い とい う もの で あ
った。
10)GARes.992(X)。
再 検 討 会 議 の 必 要 性 は 認 め つ つ も 時 期 尚 早 と い う こ と か ら ,会
議
召 集 の 具 体 的 日時 を 決 め る こ と は 差 し控 え ら れ た 。
11)A/8746.
12)米,英,仏,ソ
の4力
国 は憲 章 の 再 検 討 自体 に反 対 で あ っ た が
,中
国 は再 検 討 に積
極 的 で は な か っ た も の の 中 小 国 の 憲 章 改 正 に 対 す る 意 欲 に 理 解 を示 し た 。
13)GARes.3349(XXIX).
14)A/8792.
15)A/L684.
16)GARes.2925(XXVII}.
17)GARes.3073(XXVIII},3283(XXIX}.
18)A/9128,A/9695.
19}GARes.3282(XXIX}.
20)ア
ド ・ホ ッ ク 委 員 会 の42力
国 か ら47力
国 に 拡 大 さ れ た 。 原 題 名 はSpecialCommit。
teeontheCharteroftheUnitedNationsandontheStrengtheningoftheRoleofthe
Organization.
21}GARes.3499(XXX}.
22)AnalyticalStudy,A/AC.182/1.2.
23}L.10JRev.1.
24)L.S/Rev.1.
25)GARes.34/147.
26)A/C.1/34/L.49.
27)A/C.1/34/L.45.
28}GARes.34/102.
29)A/37/1,正
式 名 はReportoftheSecretary-GeneralontheWorkoftheOrganiza-
tion.
30)GARes.37/67.
31)GARes.41/83で
は 特 別 委 員 会 第12会 期(1987年)に
対 す る 要 請 と して 国 連,特
に 安 保 理 の 役 割 を 強 化 し,憲 章 の 下 で そ の 責 任 を 十 分 果 た す こ とが で き る よ う,国
際
の 平 和 と 安 全 の 維 持 の 問 題 に 優 先 度 を 置 く こ と と し,「 紛 争 の 予 防 」 問 題 へ の 作 業 集
中 と,国
際 の 平 和 と安 全 の 維 持 に 関 す る 国 家 及 び 国 連 の 役 割 に 関 す る作 業 文 書 を 引 き
続 き検 討 す る こ と を あ げ て い る 。
国連 の平和 維持機 能強化 に関す る一考 察159
32)ReportoftheSecretary-GeneralontheWork《
ゾ 疏eOrganization,oft『icialRecords(ゾ
theGeneralAssembly,ThirtyseventhSession,SupplmentNo.1(A/37/1}.
33)Id.at1.
34)Id.at2.
35)Id.at2.
36}Id.at2.
37)Id.at3.
38)1d.at3.
39}Id.at4.
40)Id.at4.
41)GARes.37/67.
42)正
式 名 は 国 際 連 合 憲 章 に 従 っ た 諸 国 間 の 友 好 関 係 及 び 協 力 に つ い て の 国 際 法 の 原 則
に 関 す る 宣 言 。
43)外
332頁
44)外
務 省 編
『わ が 外 交 の 近 況 一 外 交 青 書 一(昭
務 省 編
『同 書 』5頁
藤
蔵 省 印 刷 局,1987年)
。
『前 掲 書 』(注6)270-5,6頁
し く は 斎 藤 鎮 男
250-257頁
藤
参 照 。
『国 際 連 合 の 新
し い 潮 流(改
訂 増 補 版)』(新
有 堂,1984年)
参 照 。
47)1970年,第25回
48)斎
版)』(大
。
45)A/8746,斎
46)詳
和62年
総 会 に お い て 愛 知 外 相 が 行 な っ た 一 般 討 論 演 説 は そ の 一 つ で あ る 。
『前 掲 書 』(注6)270-9,10頁
参 照 。
49)A/AC.182/WG/44/Rev.1,原
題 名 はStrengtheningofthefact-findingfunctions
oftheUnitedNations.
50}Id.at26-27.
51)Id.at27.
52)Id.at27-28.
53)∫
と
ムat28.
54}A/AC.182/L.38/Rev.3,0fficialRecords,FortsecondSession,SupplementNo.33
(A/42/33),13-16.
55)ベ
ル ギ ー,西
ド イ ツ,イ
タ リ ア,日
本,ニ
ュ ー ジ ー ラ ン ド,ス
56)原
題 名 はDraftdeclarationonthepreventionandremovalbytheUnitedNationsof
ペ イ ン の6力
国 ・
disputes,situationswhichmayleadtointernationalfrictionorgiverisetoadispute
andmatterswhichmaythreatenthemaintenanceofpeaceandsecurity.尚,宣
日本 語 訳 に つ い て は 山 本 条 太
き 一 」 『国 際 法 外 交 雑 誌 』 第86巻
57)外
務 省 編
58)山
本
『前 掲 書 』330頁
「前 掲 論 文 」57頁
言 案 の
「武 力 不 行 使 原 則 の 実 効 性 強 化 一 国 連 に お け る 最 近 の 動
第3号,63頁
一65頁
に 基 づ い て い る 。
。
。
59)GARes.41/83.
60)山
本
「前 掲 論 文 」57頁
。
61)中
国 は 作 業 文 書 に 新 た に 条 項 を 付 け 加 え る 提 案
を 行 な っ て い る(A/AC.182/L54)。
160
62)憲
章 特 別 委 員 会 第12会 期 に お い て ,作
業 文 書 は 国 連 の 機i能 に つ い て 述 べ て お り,加
盟 国 の 行 動 を 扱 う と 焦 点 が ぼ や け る と 指 摘 し た 国 も あ っ た 。Seesupranote54
,at
16.
63)前
文 に 憲 章 の 前 文 か ら借 り た 言 葉 や 「国 連 は 共 通 の 目 的 の 達 成 に 国 家 の 行 動 を 調 和
す る た め の 中 心 と な る べ き で あ る 」 と の 文 言,「 加 盟 国 に 対 し,国 連 に 十 分 協 力 し,
国 連 が 紛 争,事 態,事 項 の 予 防 に 関 し憲 章 に 従 っ て と る 行 動 を 支 援 す る こ と を 喚 起 す
る 」 と の 文 言 等 を 加 え る べ き と の 提 案 が あ っ た 。See ,supranote54,atI6-17.
64)「 直 接 関 係 国 」 の 文 言 は,そ れ が 最 初 に 用 い ら れ る 場 合 に は も っ と 正 確 に 表 現 す べ
き と して 「紛 争 に 参 加 す る 国 家,事
態 や 事 項 に 直 接 関 係 す る 国 家 は(以
降 ,直 接 関 係
国 とす る)」 と す べ き と の 提 案 が な さ れ た 。See,supranote54
,at19.
の 「定 期 的 会 合 」,「 国 際 情 勢 」 の 文 言 等 に つ い て 検 討 が 必 要 で あ る と の 意 見 が
65)4項
述 べ られ た が,結
局 検 討 は 裾 置 か れ る こ と に な っ た 。 ま た4項
に つ い て も手 が 加 え ら
れ た 。See,supra,note54,at20-21.
66)5項
に つ い て は 「特 定(specific)」
の 文 言 を 「特 別(particular)」
とし
,ま た 「事
務 総 長 の 援 助 を得 て 」 の 文 言 の 前 に 「必 要 な ら ば 」 と い う 文 言 を 入 れ る こ と,ま た 「発
出(issued)」
や 「平 等 の 機 会 」 の 文 言 を検 討 す べ き と の 提 案 が な さ れ た 。6項 に つ
い て は 「後 刻 の 勧 告 ・決 定 を 害 す る こ と な く」 の 文 言 の 削 除 が 提 案 さ れ た
い て は(a)の 「義 務 履 行 」 を 「義 務 尊 重 」 に
。7項
,「 要 請 す る 」 を 「想 起 させ る 」 に 修 正 す
る こ と,(b)に つ い て 紛 争 の 悪 化 の み で な く紛 争 を起 こ す 行 動 に も考 慮 を払 う こ と
を 紛 争,事
態,事
項 の 除 去,継
につ
続 ・悪 化 の 防 止 と す る こ と が 提 案 さ れ た 。See
,(c)
,supra,
note54,at21-22.
67)8項
に つ い て は 種 々 の 意 見 が あ っ た が 検 討 は 裾 え 置 か れ た 。9項
に つ い て は 「地 域
レ ベ ル で の 努 力 」 を 引 き 受 け る 当 事 者 を 明 記 す る こ と が 提 案 さ れ た 。 ま た10項 の 「付
託 さ れ た 」 の 文 言 を 「注 意 を 惹 く」 に,「 解 決 の 条 件 」 を 「調 整 の 条 件 」 に す る こ と
が 提 案 さ れ た 。See,supranote54,at22-24.
68)12項
に つ い て は 憲 章11条
も 含 め る こ と な ど が 提 案 さ れ た 。See ,supranote54,at
24.
69)13項
に つ い て は 「努 力 を奨 励 し,適
当 な 場 合 に は 支 持 」 を 「努 力 を 適 当 な 場 合 に は
支 援 」 とす る こ とが 提 案 さ れ た 。14項 に つ い て は 事 実 調 査 権 限 に つ い て は 削 除 し,11
項 の 内 容 を 特 に 総 会 に つ い て あ ら た め て こ こ で 規 定 す べ き と さ れ た 。See,supranote
54,at24-25.
70)11項
に つ い て は 「早 期 に か つ 十 分 に 」 の 表 現 が 不 適 切 で あ る こ と
,安
保 理 と総 会 を
同 じ項 で 扱 わ な い 方 が よ い 等 の 提 案 が な さ れ た 。See,supranote54,at24.
71)15項
に つ い て は 「関 係 国 に 対 し要 請 し」 を 「こ れ ら 関 係 国 に 対 し要 請 し」 と変 え ,
ま た 「選 ぶ 」 の 言 葉 の 前 に 「憲 章 下 で 」 を 挿 入 す べ き と の 提 案 が な さ れ た 。See ,supranote54,at25--2fi.
72)17項
に つ い て は,事
実 調 査 団 の 派 遣 に は あ ら か じ め 用 意 が 必 要 で あ る との 考 え を含
め る べ き と の 提 案 が な さ れ た 。See,supranote54
73)19項
,at26.
につ い て は 削 除 が提 案 さ れ た 。
74)20項,21項
に つ い て は 一 つ に ま と め る 提 案 が な さ れ た 。See
,supranote54,at26.
国連の平和 維持機 能強化 に関す る一考 察161
75)外
76)メ
務 省 編
『前 掲 書 』330頁
ン バ ー は ス ウ ェ ー デ ン,ソ
カ ナ ダ,メ
キ シ コ,日
イ ン ド ネ シ ア,オ
77)原
。
本,イ
ラ ン ダ,ア
連,西
ン ド,ナ
ド イ ッ,ノ
ル ウ ェ ー,ポ
イ ジ ェ リ ア,イ
ー ラ ン ド,フ
ギ リ ス,ガ
イ ア ナ,タ
ラ ン ス,
ン ザ ニ ア,
メ リ カ の 各 代 表 で あ る 。
題 名 はCommonSecurity-AProgrammeforDisarmament-
78)Common8ec%7甜)昇
一ABIueprintforSurvivdl-一,161.
79}Id.at161-62.
80)Id.at162.
81)Id.at162.
82)Id.at162.
83)Id.atlfi2.
84}Id.at163.
85)Id.at162.
86)Id.at163.
87}Id.atlfi3.
88}Id.at163.
89)Id.atlfi3.
90)Id.at164.
91}Id.atlfi4.
92}Id.at164.
93)Id.at165.
94)Id.at165.
95)Id.at166.
96)安
全 保 障 に 関 す る地 域 的 ア プ ロ ー チ に つ い て は 別 項 を 設 け て 諸 提 案 を 行 な っ て い る 。
See,supranote77,at166.
97)supranote77,at166.
98)Id.at166.
99)Id.at167.
100)Id.atlfi7.
101)Report(ゾtheSecretary--GeneralontheWorkof疏eOrganization,September1987,
4.
102)斎
藤 鎮 男
国 際 政 治
「日 本 に と っ て の 国 際 連 合 一 国 連 の 可 能 性
・戦 略 と 平 和 』194頁
103)斎
藤
『前 掲 書 』(注6)250頁
104)山
本
「前 掲 論 文 」47頁
105)中
川 融
106)斎
藤
。
。
。
「国 際 連 合 の 存 在 意 義 」 『国 際 問 題 』 第292号,6頁
『前 掲 書 』(注6)253頁
。
107)ReportoftheSecretary-GeneralontheWorkoftheOrganization,SeptemberX986,
4
108}supranote101,at22.
と 限 界 」 『法 学 セ ミ ナ ー 増 刊/
。
162
109)supranote107,at1.
llO)Id.at21.
111)Id.at22.
(創価大 学比較 文化 研究 所助手 ・国 際法)
1987年1工月1日 脱 稿
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