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カリフォルニア・レーズン協会 健康栄養アドバイザー 栢野新市 氏 講演

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カリフォルニア・レーズン協会 健康栄養アドバイザー 栢野新市 氏 講演
カリフォルニア・レーズン協会 健康栄養アドバイザー
栢野新市 氏
【プロフィール】
かや の
しんいち
栢野 新市 氏
畿央大学 健康科学部 健康栄養学科 教授/管理栄養士
1985 年に大阪市立大学生活科学部食物学科を卒業後、企業研究所に所属し、栄養機能食品や特定
保健用食品等「機能性食品」に関する研究開発に携わる。大阪市立大学大学院 生活科学研究科にて、
2003 年 7 月より客員研究員、2007 年 10 月より 2 年間、客員助教授を務めた。2004 年 10 月より畿央大
学健康科学部栄養学科に所属し、2009 年 4 月より現職。
専門領域:
食品機能化学、有機化学
研究テーマ: 食品中の機能性成分の化学構造解析および機能性の評価に関する研究
主な著書:
「色から見た食品のサイエンス」(共著)、 (株)サイエンスフォーラム 2004 年
「食品学実験」(共著)、(株)光生館 2007 年
「栄養・食糧学用語辞典」(共著)、㈱建帛社 2007 年
所属学会:
日本農芸化学会、日本栄養・食糧学会、日本栄養改善学会、日本食品化学学会
講演「カリフォルニア・レーズンの健康と栄養に関する研究」 要約
カリフォルニア・レーズン協会米国本部が行っているリサーチ・研究の分類
① 抗酸化物質の働き: レーズン中に豊富に含まれる抗酸化物質、主にポリフェノールの健康維持に
おける働きについての研究
② 食品の保存性向上: ポフェノール等のレーズン中の成分が、食品の保存、腐敗や酸化を抑制する
働きという面から見た研究
③ 食物繊維の働き: カリフォルニア・レーズンに含まれる豊富な食物繊維の働きに関する研究
④ エネルギーの供給源としての利用: エネルギー源としてのレーズン摂取、またスポーツ等の場面に
おいてレーズンを摂取することによる有用性、優位性における研究
■ 抗酸化物質の働き(1〜8)
1. 12週間、毎食前約30gのレーズン摂取により血糖値や血圧が改善(健常者)
12 週間、毎食前約 30g レーズンを食べたグループと、レーズンと同等のカロリーのスナック食品を食べた
グループとの比較調査。レーズンを食べたグループは、血糖値、血圧が低下したという結果。血糖値や
血圧は、心疾患との関連が指摘されており、心疾患のリスクの低減下が期待できる。
2. ウォーキングとレーズン摂取の組み合わせが血圧とコレステロールを低減化(中高年)
50〜70 歳の男性および女性 17 名を、レーズンを 1 日 1 カップ(約 170g)摂取するグループ、レーズンを
摂取しウォーキングをするグループ、そしてウォーキングのみの3つのグループに分けて比較。レーズン
摂取のグループに、心臓疾患に関係のある血圧とコレステロールの低下が認められ、ウォーキングを加え
た場合、中性脂肪の低下も認められた。レーズン摂取のみでも効果はあるが、ウォーキングを加えるとさら
なる効果が期待できるという、スポーツ栄養との関連も示唆される結果。
3. レーズンは簡便に摂取できる抗酸化性の高い食品である(USDA/米国農務省)
USDA が発表している抗酸化性が非常に高い食品のリストの中で、レーズンはトップクラスにランクされて
いる。簡便性の面から言うと、場所を選ばず、持ち運びも便利で、安価に摂取できるということで、非常に
利用しやすい抗酸化性の高い食品である。
4. レーズンに含まれるカテキンが結腸癌のリスクを減少させる(動物実験)
お茶に多く含まれることが知られているカテキンは、レーズンにも含まれているポリフェノールの一種。
癌を移植した動物にカテキンを投与すると、癌細胞が約 70%消滅したというデータがあり、これはあくまで
も動物実験で人への応用となると現時点では同じことが言えるわけではないが、レーズンの摂取が、特に
消化器系の癌のリスク低減化に有効であるということが示唆される実験結果となった。
5. 4週間、一日130gのレーズン摂取により血液の抗酸化性が上昇(健常者)
レーズンを 1 日 130g、4 週間摂取し続けた結果、血液の抗酸化性が上がったという実験。血液の抗酸化
性の上昇は、さまざまな病気の原因になる酸化(体の中のさび)を抑制する力が強くなることを意味する。
動脈硬化は血中の LDL コレステロールが酸化することで起こると言われているが、血液の抗酸化性が
上がると LDL コレステロールの酸化を抑制できるので、動脈硬化のリスク低減が期待できるという結果に。
6. レーズンに含まれるポリフェノールが酸化ストレスや炎症を抑制する(肥満者)
肥満、あるいは日常的に高脂肪食を多く摂取している人は、血液中の炎症を示すマーカーが高いことは
知られている。このマーカーの値が高いと炎症が進んでさまざまな病気の原因となるが、レーズンを摂取
することで、マーカーの値が改善。つまり炎症が抑えられる、という結果が見られた。血管の健康維持、
動脈硬化等の予防が期待できる。
7. レーズンに含まれる糖は虫歯菌に利用されにくく、また虫歯菌の生育を抑制する物質を含む
(試験管内実験)
虫歯ができる原因は主として糖分だが、レーズンの中に含まれる食物繊維が虫歯菌の働きを阻害してい
るようで、レーズンに含まれる糖は虫歯菌に利用されにくい。また、ポリフェノールの働きによって虫歯菌
自体の生育を抑え、虫歯菌が糖から酸を作りにくくしている。以上から、レーズンは虫歯になりにくい食品
であるということが示唆されている。
8. レーズンに含まれるオレアノール酸は虫歯菌の生育を阻害し、プラークの生成を抑制する
(試験管内実験)
オレアノール酸は生のぶどうの表面に付いている白い粉に含まれていて、ぶどうが外敵から実を守るため
に果皮の外側に分泌している。当然、さまざまな菌も抑えるということになり、レーズンに含まれるオレア
ノール酸等の化合物が虫歯菌の生育を妨げる効果もあるという実験結果。本実験はオレアノール酸に
着目した実験。ぶどうは一般的に皮を向いて食されるので、オレアノール酸は皮と一緒に捨てられてしま
う。しかし、レーズンはオレアノール酸を一緒に摂取できるので、この実験はレーズンと生のぶどうの差別
化につながるのではないかと、着目している。
■ 食品の保存性向上(9〜11)
9. レーズンに含まれるポリフェノール類は食品を汚染する細菌類の生育を抑制する
食品の汚染菌に着目した実験。クロロゲン酸や、カテキンなどのポリフェノールは、リステリア菌や 0-157、
大腸菌等の食品の汚染菌の生育を阻害するという結果が得られた。レーズンを添加することにより、添加
された食品の保存性が向上することが期待される。
10. レーズン(ペースト、エキス)の添加が食肉加工品の脂質の酸化を抑制し、保存性を向上させる
レーズンの抗酸化性によるもので、本研究が強調しているのは、風味に影響はないということ。例えば
ハンバーグのパテにレーズンを 1〜2%添加することで、脂質の酸化が抑えられ保存性が上がり、なおか
つ風味に影響がなく、おいしい状態を保てる。
11. レーズンは食肉加工品を汚染する細菌類の生育を阻害するため、硝酸塩(食品添加物)の代替物
として使用できる
食肉加工品を汚染する細菌類の生育阻害に関する研究。食肉加工品には食品添加物として硝酸塩を
使用することが多いが、レーズンを添加することで硝酸塩添加の必要がなくなる。つまりレーズンを硝酸
塩の代替品として使うことができる。風味への影響がなく、食品添加物の使用を抑えることができる。また、
硝酸塩においては、体内で変異源物質(癌の原因になってしまうような物質)に変化する危険性が以前
から言われているため、硝酸塩の添加を避ければ、そのようなリスクも避けることができる。硝酸塩は、
ナトリウム(塩)を含んでいるので、ナトリウムの摂取を気にする人にとり、硝酸塩摂取の削減は非常に
メリットがある。加えて、レーズンを硝酸塩の代替品として使用することは、レーズン由来の栄養素である
さまざまなビタミン、ミネラル、ポリフェノールなどを強化した食肉製品にすることができるメリットもある。
■ 食物繊維のはたらき(12〜15)
12. レーズンに含まれる食物繊維は胆汁酸の排泄を促進し、血中コレステロールを低下させる
レーズンの摂取により、レーズンに含まれる食物繊維が胆汁酸の排出を促進し、血中コレステロールを
低下させる。肝臓でコレステロールが作られ、コレステロールが胆汁酸に変換され消化管に放出される
が、 胆汁酸には摂取した食品の脂質を水に溶かす性質があり、脂質が水に溶けると脂質の吸収性
が上がり体内に入ってくるようになる。胆汁酸は脂質と共に再吸収されるので、体内に戻った胆汁酸から
またコレステロールが作られる。胆汁酸の排泄促進とは、胆汁酸の再吸収の抑制を意味し、食物繊維が
胆汁酸をからめ取るため、再吸収を防ぐ。結果、体内で作られるコレステロールの総量を減らすことがで
き、コレステ ロールの低減につながる。
13. レーズン1/4カップ(約40g)には1.5gのイヌリンが含まれ、コレステロール低下や腸内環境の改善
が期待できる
レーズンに含まれる食物繊維の一種、イヌリンは以前からコレステロールを低下させる働きがあることで
知られている。また、イヌリンは、腸の中のビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌を増殖する因子となる。
つまり、イヌリンがビフィズス菌などの餌になり、腸内の善玉菌が増えることで、腸内環境の改善が期待
できる。
14. レーズンに含まれる酒石酸と食物繊維は結腸癌のリスクを低減化する
ぶどうの酸味の元となる酒石酸は、食物繊維との組み合わせで結腸がんのリスクを低減する。そのメカ
ニズムは、まず食物繊維が便の量を増やし、便の腸内通過時間を早くする。その際、食物繊維が発癌
物質などの悪い物質をからめとり排泄することで、癌のリスクが低減する。腸内は酸性環境で善玉菌が
増えやすく、アルカリ性環境で悪玉菌が増えやすくなるが、酒石酸は腸内環境を酸性に保ち、悪玉菌
の増加を抑え、善玉菌を増やす。悪玉菌はさまざまな発癌等の物質を作り出すことも指摘されているが、
腸内を酸性に保つことで、悪玉菌による発癌物質などの生成も抑制される。このように 2 つの面から結腸
癌のリスク低減ということが言われている。
15. レーズンなどのドライフルーツを日常的に多く消費する人は、食物繊維、ビタミン、ミネラルの摂取
量が多く、体重、BMI、腹囲が低い傾向であった(13,292人の調査)
13,292人の食事に関する調査結果。全体の約7%がドライフルーツを多く摂取しており、そうでない93%
と比較したところ、ドライフルーツを摂取している7%は、栄養素として食物繊維、ビタミン、ミネラルの摂取
量が多く、さらに体重 BMI、腹囲が低いという傾向が認められた。これらの数値の違いに、ドライフルーツ
の摂取が関与しているのではないかと示唆される調査結果。
■ エネルギー供給源としての利用
16. レーズンの摂取はランニングの競技者にスポーツ食品と同等のパフォーマンスを発揮させる
11名の女性競技者を、レーズン、スポーツ食品(スポーツをする人に向けて設計された食品)、水だけ
を摂った3つのグループに分け、運動後の結果を比較。運動を続けるためには程良い血糖値が長時間
維持されることが重要で、その目的で設計されているスポーツ食品を摂取したグループと、レーズンを摂
取したグループの結果は全く遜色がなく、レーズンがスポーツ食品と同様の効果を発揮し、機能として
ほぼ同等であることが確かめられた。
17. サッカー競技の前にレーズンを含んだバーを摂取すると、シリアルのバー摂取よりも疲れを感じに
くい傾向
115人の子供を、レーズンを含んだバーを食べるグループと、普通のシリアルバーを食べるグループに
分け、サッカーをした後の調査。血液成分等に関しては特に差はなかったが、アンケート調査では、
レーズンを含んだバーを摂取した子供たちの方が疲れを感じにくいということが認められた。本結果は、
あくまで傾向としてではあるが、レーズンがスポーツに向いているということが示唆されるデータとなっ
た。
18. レーズンを含むドライフルーツの多い食事(低GI食)により体重、BMI、腹囲が減少
(Ⅱ型糖尿病患者109名)
糖尿病患者とり、血糖値の急上昇は好ましくないことである。レーズンを含むドライフルーツを、血糖値
の上がりにくい低 GI 食品として、糖尿病患者が普段より多く摂取した結果、体重、BMI、腹囲の減少が
認められた。
19. スポーツ前のレーズン摂取はバー食品と同等に血糖値を穏やかに上昇させ、インスリンの上昇は
バーよりも低かった(運動者22名)
3つのグループに、同じカロリーのレーズン、エネルギーバー食品、グルコース(ブドウ糖)液を与えたと
ころ、レーズン、エネルギーバー食品のグループに共に GI 値の低い結果が出た。この実験で使用され
たエネルギーバー食品は、運動者用に血糖値が急激に上昇・降下することなく程よい値を長時間保つ
ようにつくられたバーだが、レーズンにもほぼ同等の効果が見られたことから、レーズンがスポーツ時の
摂取に適していると言える。さらに、血糖値の上昇とともに、体内では血糖値を下げるインスリンという
ホルモンが放出されるが、そのインスリンの上昇が、レーズンの方がエネルギーバー食品よりも低かった
ことから、本実験ではスポーツ時の補給食としてエネルギーバーよりもレーズンの方が優れているという
結果になった。
20. デスクワーク従事者(10人)、糖尿病予備軍(10人)、持久競技者(11人)でレーズンのGI(グリセ
ミックインデックス)、II(インスリンインデックス)を検討。カリフォルニア・レーズンは血糖値上昇が
穏やかな食品である
デスクワーク従事者、糖尿病予備軍、持久競技者の GI と II を比較した結果、いずれのグループにおい
ても、レーズン摂取後の GI と II が低い結果になった。レーズンがスポーツをする人と糖尿病の人の両方
に適していることを実際に示した研究。
21. 自転車競技(8人)においてレーズンとスポーツジェルを比較。パフォーマンスに差はないが、レー
ズンは脂質代謝を亢進する
レーズンと運動者用に開発されたジェルを摂取し、競技後に比較したところ、いずれも運動パフォーマ
ンスに与える影響に差がなかったと同時に、レーズンを摂取したグループの方が脂質代謝を亢進してい
た。体内の中性脂肪を利用して燃焼させエネルギーに変える効果が、レーズンの方が強かったことが
認められた。
22. サッカー競技(10~12歳)においてレーズン/ピーナッツ/水摂取とベーグル/レモネード摂取を
比較。レーズン投与群は血糖値の上昇が穏やかで運動に適していた。
10〜12 歳の子供に対し、サッカー競技の前に、レーズンとピーナッツ、水を組み合わせて与えた場合と、
ベーグルとレモネードの組み合わせを与えた場合を比較したところ、レーズン摂取グループの方が血糖
値の上昇が穏やかであった。ベーグル、レモネードの摂取グループと比べて適度な血糖値を長時間保
つということで、やはりレーズンが運動に適しているということが言える。
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