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資料3-2 被害が潜在化しやすい被害者への支援について(PDF形式

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資料3-2 被害が潜在化しやすい被害者への支援について(PDF形式
資料 3-2
被害が潜在化しやすい被害者への支援について
1
被害を潜在化させないための取組
(1)アメリカにおける取組について
児童、女性に対する取組については、資料3-1参照。
その他の取組については、以下のとおり。
ア
ヘイトクライムについて
ヘイトクライムは、マイノリティに対する犯罪であり、潜在化しやすい
犯罪である。アメリカでは、同性愛者がカップルで襲われるなどターゲッ
トになることが多く、被害者は自身が同性愛者であるということを告白し
なければならないため被害届を出しにくい。
ヘイトクライムはエスカレートする危険性があるため、警察においても
放置しないようにポスターを張ったり、ホットラインを設けるなど対応し
ている。また、様々な行政や民間のマイノリティ団体、マイノリティの支
援団体も独自にそれぞれホットラインを持つなど、被害者が訴え易いよう
相談窓口を設けているようである。
イ
外国人に対する犯罪について
外国人もマイノリティであり、言葉が通じにくいため声を上げにくい。
アメリカでは不法滞在の外国人が犯罪に巻き込まれる率が非常に高く
警察に行くことによって不法滞在が発覚することをおそれるため、警察へ
の届出率は非常に低い。このため、犯罪被害に遭い相談があった場合には、
その犯罪の捜査は行うけれども、その被害者が不法滞在であっても移民局
に通報しないことが約束されている。
なお、市民の認識として、マイノリティ団体や支援センターにおいて、
警察の届出への有無に限らず、手当やカウンセリング等の被害者のケアを
民間の団体で提供してもらえるという認識がある。このため、警察には行
かないが、マイノリティ団体や支援センターには事情も含めて相談するこ
とはよくあると思われる。
ウ
チェスター郡の被害者センターにおける取組について
(ア)民間の犯罪被害者センターの認知度について
犯罪被害者センターの認知度については分からないが、レイプクライシ
資料3-2 P1
スセンター(Rape Crisis Center)の認知度は高いと思われる(チェスタ
ー郡の場合、犯罪被害者センターは、もともとレイプクライシスセンター
として設立され、その後、性犯罪以外の犯罪にも対象を広げたものであ
る。)。警察の911のようなフリーダイヤル3桁ではないものの、イエロ
ーページ(電話帳)の1ページ目に電話番号が掲載されており、市民にと
って、性犯罪に遭った場合はレイプクライシスセンターがあるという認識
があると思われる。
ただし、アメリカは格差社会であり、中間層以上の場合は、レイプクラ
イシスセンターのような町の社会資源をよく知っていると思われるが、そ
の層ではそのような犯罪に遭う機会が少ない。圧倒的に犯罪被害に遭うの
は、犯罪多発地域に住んでおり、イエローページだけでなく、家に電話も
あるか分からない低所得層であるため、アウトリーチが必要である。なお、
中間層以上は、高校、大学等の教育現場において知識として知ることにな
るのだと思われる。
(イ)学校などの教育機関への働きかけ
チェスター郡の被害者センターには、教育・啓発部門があり、専属のス
タッフが、地域内の学校や幼稚園、警察などの公共機関や民間企業に、犯
罪被害者に関する講演を行っている。
出張先の約80%が学校などの教育機関であり、小学校の低学年には、
視覚的に分かりやすいようにビデオを観せたり、小学校高学年から中・高
校生に対しては、ディスカッション形式で講演を実施している。
講演は、犯罪予防を目的としているが、センターの存在を知ってもらう
ことも重要な目的のひとつであり、被害に遭ったときの対処方法、センタ
ーにおいて受けることができるサービスの内容なども知らせている。また、
将来、教師になろうとしている学生に、児童虐待(child abuse)につい
ての知識を提供するため、大学へ講演にいくこともある。
(ウ)モバイル・カウンセリングについて
センターにおいて、最近、
「モバイル・カウンセリング」を始めている。
これまでは、被害者センターまで被害者に来てもらい無料でカウンセリン
グを提供していたのだが、アメリカの特徴として、犯罪被害者の多くは、
犯罪多発地域に住んでおり、センターまでの交通手段がない場合がある。
このため、センターのスタッフが、その地域まで出向き、公民館や地元の
学校のカフェテリア等を借りて、カウンセリング等を実施している。同時
に、防犯も含めた啓発教育活動も行っており、虐待問題等の掘り起こしも
資料3-2 P2
行っている。
(エ)バイリンガル・カウンセラーについて
被害者センターには、外国人や移民など、英語を母国語としない被害
者のための「バイリンガル・カウンセラー」によるサービスがある。
アメリカは、農業生産物の収穫期になると、主にアメリカ周辺の中央・
南アメリカの国々を対象として、数か月間の季節労働ビザを発行している。
ペンシルベニア州でも、特産のマッシュルームの収穫作業が、ほとんどメ
キシコ系の季節労働者によってまかなわれており、特にマッシュルーム・
ハウスの近辺には、メキシカンやプエルトリカンなどラテン系のコミュニ
ティが多数存在している。
彼らは、アメリカの銀行制度を信用しておらず、財産をすべて家のクロ
ーゼットで保管したり、買物に行くときに多額の現金を持ち歩くため、犯
罪者の格好のターゲットとなり、強盗・空き巣・ひったくり等の犯罪被害
に遭うことが多い。
このような状況を憂慮した犯罪被害者センターは、郡内のメキシコ系コ
ミュニティの防犯対策と、メキシカンの被害者へのサービスを開始するこ
とにし、スペイン語を母国語とするバイリンガルのメキシコ系の女性を一
人採用し、被害者支援を個別に行うとともに、空き巣や強盗の予防対策講
座等を開催している。
また、コミュニティ内では、両親による子どもへの性的虐待や、DVが
深刻となっている。季節労働ビザで入国後、メキシコ人同士で結婚した者
は、英語がほとんど話せず、夫の収入に依存しているのが実状であり、家
庭内暴力により、夫が逮捕されたり、または本国に送還されると、被害者
は生活に困ることになるため、たとえ生命の危険を感じるほどの暴力を夫
から受けたとしても、被害者が警察に通報することはほとんどない。
バイリンガル・スタッフは、あまり条件のよくない職場で働いているメ
キシコ系労働者に対して、昼休みを利用して相談を行ったり、ボランティ
アで行われている無料の英語教室の紹介や、GED(高校卒業資格)スク
ールの受講を勧めるなど、就職口を探す援助を行っている。
(2)ドイツにおける取組
連邦政府において、被害を潜在化させないための取組は、積極的には行わ
れていないと思われる。ドイツ人の基本的な考え方として、自分の権利を実
現するためには主張しなくてはならないという考え方が強く、被害を受けた
ら被害を申告することが一般的である。
資料3-2 P3
白い環において、被害者が被害申告をためらったりする場合には、証人保
護制度を念頭に申告を促すなどの取組を行っていると思われる。特に、ドイ
ツの被害者補償制度の申請に当たっては、捜査機関に被害を申告することが、
原則、条件となっている。理由はいくつか考えられるが、被害を受けても、
それが客観的に証拠化されていなければ、給付を受けることはできないとい
う前提条件があり、被害者が給付を受けられるよう、白い環も被害申告を促
している。
しかし、例えば、児童ポルノを視聴した者に対して不正請求が行われる
事例や、教会において少年が性被害に遭った事例など、被害を受けたこと
が社会に明るみに出たら被害者の方が困るような場合など、被害申告がた
めらわれる事例はよくある。特に、後者の事例については、ドイツにおい
て社会問題にもなっているが、有効な対策は取られていない様子である。
ただし、白い環は、犯罪予防に力を入れている。例えば、子供が、いじめ
の場面を録音・録画して、インターネット、ソーシャル・ネットワーク・サ
ービスに掲載して自慢する最近の「サイバーいじめ(Cyber Mobbing)」の問
題については、刑法で処罰される旨を記載した広告、パンフレットの作成等
を行って、生徒に注意喚起をしている。
2
中長期的な支援のための取組
(1)アメリカにおける取組について
児童虐待の場合、ケース・バイ・ケースではあるが、中長期的な支援が必
要である。
DVや虐待を受けて、加害者から逃れて生活をする場合に、資料3-1記
載のシェルターは、基本的には緊急避難的に入るところであるため、最長2
年間滞在できるステップハウスを郡(カウンティ)が設けている。
ステップハウスは、敷地内の全てがセキュリティで囲われた施設であり、
タウンハウスという日本の長屋のようなところで、被害者は子供と生活しな
がら自立を目指すことになる。
DVや虐待事案では、多くの場合、被害者はパートナー、または父親とは
同居できないため生計を立てられず、再就職や経済的に自立することが必要
になる。このため、この施設に入所するに当たっては、職業指導等のプログ
ラムを受講することになっている。
被害者センターにおいては、基本的には、刑事司法手続への付添の他に、
子供や家族へのカウンセリングを定期的にしており、子供に精神障害が疑わ
れる場合には専門の病院等を紹介するなどして見守っている。
資料3-2 P4
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