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資料3 中心市街地活性化を考えるに当たっての論点(PDF

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資料3 中心市街地活性化を考えるに当たっての論点(PDF
資料3
中心市街地活性化を考えるに当たっての論点
1.基本的な考え方
(1)本格的な人口減少社会を迎え、全国的に急速な高齢化が進む中で、地域の経済・社会の
疲弊は深刻な状況にある。また、日常の買い物や通院に不便を感じる高齢者は増加傾向にあ
る。
(2)地方都市の人口集中地区は緩やかな拡大基調にあり、結果として人口密度が低下してき
ている結果、住民一人あたりのインフラの維持・更新に要するコストが増加傾向にある。こ
のまま放置すると、今後の人口減少・高齢化の中で、地方自治体の行財政の持続可能性が失
われる可能性がある。
(3)以上のように、地域においてまちが置かれている状況は放置できない実態にあり、地域
の生活者・住まい手の置かれた状況に対応し、また、地域の経済・社会の持続可能性を確保
するためには、既存の都市機能の集積を活用した「コンパクトシティ」の形成が重要な鍵と
なるものと考えられる。これに向けた取組を進める必要性を今一度確認する必要があるので
はないか。
(4)コンパクトシティ形成において要となる制度が「中心市街地活性化法」をはじめとする
いわゆるまちづくり三法である。平成18年の改正により、商機能を軸とした活性化から商
機能のみならず公共・公益的機能や住機能が集約された空間の形成へと政策を転換し、また、
内閣総理大臣による基本計画の認定制度が導入され、中心市街地活性化協議会が制度化され
るなど、政策の体系にも相当の変更が加えられた。この結果、
① 中心市街地が「地域における社会的、経済的、文化的活動の拠点となるにふさわしい
もの」と基本理念において位置づけられたように、商機能のみに偏しない多面的・総合
的な取組が各地で進められた、
② 認定中心市街地について中心市街地エリア内の居住人口が増加傾向にあるほか、行政
機関・福祉施設数が増加したまちもみられる、
③ 全国的に小売販売額が落ち込む中、中心市街地活性化に取り組む都市の小売販売額は落
ち込み幅が小さくとどまった、
④ 小規模都市(人口10万人未満)の中でも中心市街地活性化に取り組む都市は事業所
数・従業者数の疲弊度合いが小さく、活力を相対的に維持している、
等の成果が見られる。
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他方、
① 基本計画において掲げた目標の達成率は平成23年度末に計画期間が終了した14市
(14計画)についてみると3割強、策定時の基準値よりも好転したものも6割程度に
とどまっている、
② 同じく14市についてみると中心市街地の年間小売販売額、事業所数、従業者数は中
心市街外と比べると減少率が大きく、産業・商業の郊外立地に歯止めがかかっていない、
③ たとえば医療施設や福祉施設の新規立地をみても(中心市街地への立地が進んでいる
とはいえ)依然として中心市街地外の立地割合が大きい、
④ 平成18年改正前に策定された基本計画は671市区町村(690区域)1について存
在したのに対し、改正法に基づいて認定を受けた中心市街地は、115市(118区域)
にとどまっている、
等の課題が明らかになってきている。
すなわち、居住人口や公共・公益施設数をはじめとして数値が改善したり、減少幅が縮小
したりしているものの、郊外や中心市街地外との関係において中心市街地の求心力が十分に
回復しているとはいえず、コンパクトシティ形成が道半ばであることを窺わせる。
また、改正法は、商機能のみならず居住や公共施設を含む都市機能の強化に総合的に取り
組む市町村について、国が強力に支援することにより、モデルとなるような成功例をつくり、
これを全国に広げようとする効果を狙った面があったと考えられるが、確かに、支援策を集
中投入することにより一定の成果が出ているまちがあるものの、そこでの取組がうねりとな
って全国に伝播し、全国各地で独自の取組が進展するというには迫力を欠き、改正法施行を
契機に中心市街地活性化の認定にチャレンジする自治体の数が大きく減ったことの穴を十
分に埋め切れていないのではないかと考えられる。
(5)こうした状況を踏まえ、地域の生活者・住まい手、地域の経済・社会のために、再度、
中心市街地の活性化を通じたコンパクトシティの形成を加速する必要があるのではないか。
そして、コンパクトシティの形成は、個々のまちが対応すべき課題であるとともに、高齢化
や人口減少が進む我が国において国全体で取り組むべき課題でもあり、また、現在の地域経
済の状況、地方自治体の財政の状況等を踏まえると、まちの整備、まちへの投資促進に向け
て国による支援が必要な状況は続いているのではないか。したがって、この機会に、中心市
街地活性化政策の在り方を抜本的に見直すべきではないか。なお、その際、
① 中心市街地活性化を何のために行うのかを改めて確認しつつ、目的の達成にとって合理
的な政策手法を検討すること、
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市町村合併によって消滅した自治体を含む。なお、基礎自治体(市区町村)の数は、平成11
年3月に3255あり、
その後の平成の大合併によって平成18年4月には1843まで減少した。
仮に平成11年当時の自治体数で基本計画の策定を行った自治体との比を求めると20.6%、平
成18年当時とでは36.4%となる。なお、平成25年1月現在で基礎自治体は1742あり、
単純計算では基本計画の認定自治体比率は6.6%となる。
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② 中心市街地活性化の主役はまずは自治体、そして地域の住まい手であることに鑑み、地
域に「やる気」があることが前提となり、また、「やる気」を引き出すように政策が組み
立てられること、
③ 抑制的な措置が講じられる場合には、その措置自体の合理性とともに、それによって得
られる効用ともたらされる弊害(たとえば郊外住民の利便性の喪失)との利益衡量を適切
に行うべきこと、
を念頭に置くべきではないか。
2.めざすべきまちのイメージ
(1)歩いて暮らせるまちの実現
① 「歩いて暮らせるまち」の重要性の再確認
現在の地方都市の状況をみると、多くのまちで日常の買い物や通院に困難を抱えると答
える住まい手が増加している。今後、高齢化が進む中でますます増加し、あるいは深刻化
するとみられるいわば「生活弱者」とも呼ぶべき住まい手に対し、適切なクオリティ・オ
ブ・ライフを提供するために、「歩いて暮らせるまち」づくりの重要性を、すべての自治
体・地域において再確認すべきではないか。
② 「歩いて暮らせる」範囲のイメージの共有
「歩いて暮らせる」範囲というのは、どのように観念すべきか。高齢化社会の中での徒
歩圏として、100ha程度を一つの目安として考えることは妥当か2。
③ 「歩いて暮らせる」範囲に集積すべき都市機能
「歩いて暮らせる」範囲内に商機能がないと生活が困難であるように、一定の都市機能
が集約されていることが住まい手の利便性を高める観点から有益であるが、とくに高齢
者・歩行者の目線から、また、人口規模に応じ、どのような機能の集積が図られるべきか。
商機能、病院をはじめとする公共・公益機能、住機能、あるいはサービス付き高齢者向け
住宅や老人福祉施設等の高齢者向け都市機能ごとに、それぞれどう考えるか。
④ 周辺の住まい手への裨益
現実に「歩いて暮らせる」住まい手の数は、まちなかの100haにおける居住人口を
仮に4000~5000人程度だとすると、全国で設定される数にもよるが我が国の人口
のごく一部しか直接的にはカバーできないと考えられる3。したがって、現にその圏域内に
2
徒歩圏には明確な定義がないが、抵抗なく歩ける距離として400mとするもの、公共交通指
向型開発の分析として半径800mを想定するもの等がある。
(今川珠美・小川雄司「コンパクトシ
ティから見た地方都市の都市施設の分布と地域持続性の関連性」
、竹田理恵ほか「商業開発を考慮し
た公共交通指向型開発の提案」参照。
)
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DID(人口密集地区)は、市区町村の区域内で人口密度が4000人/㎢以上の基本単位区
が互いに隣接して人口が5000人以上となる地域に設定される。我が国の平成22年におけるD
ID人口は8612万人(人口比で67.3%)となっている。なお、市部の人口は11616万
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住んでいるわけではない住まい手が「歩いて暮らせるまち」から裨益することが重要であ
り、このためには公共交通のネットワーク、インフラ等に関しどのような基盤が「歩いて
暮らせるまち」に関連して整っているべきか。(さらに、「歩いて暮らせるまち」づくり
政策の網にかからない生活弱者への対策として、市街地政策の範疇に必ずしも属さない買
い物弱者等の対策を並行的に充実させる必要はないか。)
(2)にぎわいあふれるまちの実現
① 雇用・創業等の機能
中心市街地は住まい手にとって生活の基盤であると同時に、雇用を支える場、商業やサ
ービス業が交錯する中で新たな事業を生み出す場としての機能を有するものとされてきて
いるが、今日でもこうした位置づけに変化はないか。
② まちの個性に応じた取組の必要性
人口規模や、産業集積の状況、観光資源の賦存状況等といったまちの個性によって、
「に
ぎわい」に関して中心市街地の果たしうる機能は違ってくるが、まずは、こうした個性を
生かしたまちづくりを基本とすべきではないか。
③ 地域資源や地域のライフスタイルを生かすまちづくりと魅力の発信
歴史、文化、風土に合った個性的なまちづくりを中心市街地を起点として行っていくこ
とで、にぎわいあふれる中心市街地がショーケースとなって、地域資源や地域のライフス
タイルのブランド化をもたらし、また、これを発信することにつながり、周辺部を含む地
域経済全体にとって好循環を起こすのではないか。また、外需を含めた国全体にとっての
意義も大きいのではないか。
④ 他の地域政策・産業政策との連携
中心市街地がにぎわいを取り戻し、魅力を発信するために、中心市街地活性化政策以外
のまちづくり、地域おこし、産業おこしとの連携がどのように図られるべきか。
人(人口比で90.7%)である。
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3.具体的政策の方向性
以上のような「歩いて暮らせるまち」「にぎわいあふれるまち」の実現に向けては、中心市
街地活性化法の認定の有無にかかわらず全国の自治体等が取り組むべきであるが、これを支え
る具体的政策の方向性はいかにあるべきか。
(1)まちなかへの投資の活性化・円滑化
① アイデアの発掘
ア) 各方面からのアイデアの発掘
まずは、「自分たちのまちをどうしたいのか」について、自治体のみならず住まい
手や事業者の様々な層からアイデアが出てくることが望まれる。こうした状況を、どの
ようにすれば作ることができるか。自治体の取組が不十分と考えられる場合に、事業者
や住まい手が自主的にまちづくりについて声を上げ、意見を集約していくことを可能と
すべきとの指摘があるが、これに対応した制度枠組みとしてどのようなことが考えられ
るか。まずは、市町村は中心市街地活性化協議会の意見をよく踏まえ、また、中心市街
地活性化協議会が市町村に対して意見を述べたときはこれをしっかりと聞くことが肝
要ではないか。
イ) 中心市街地活性化協議会の機能強化・メンバー拡大
中心市街地活性化協議会は、基本計画の策定段階において重要な役割が与えられて
いるが、多くで基本計画の認定をとることが自己目的化し、様々な議論を活発に戦わせ
意見を集約していく場としてはかなり形骸化しているとの指摘があるところ、より多様
な声を反映し、かつ、責任ある決定を行うような組織に脱皮することが必要ではないか。
その後の事業展開を踏まえると地権者、NPO、さらには事業を実際に行い、またこれ
を支える者へのメンバーシップの拡大が望ましいと考えられる場合、こうした呼びかけ
を円滑に行えるような方策があるか。
② フィールドの整備
ア) 中心市街地の圏域設定
認定中心市街地の区域の面積は平均で161.1haであり4、広いところでは数百
haという圏域設定も見られるが、住まい手の立場に立った「歩いて暮らせるまち」の
実現とあわせて、投資の集中、プロジェクトのマネジメント等の観点からも、圏域の広
さに一定の上限を定めることが有効ではないか。
イ) 空き店舗・未利用地の活用による不動産の流動化
中心市街地に空き店舗・未利用地が増大している傾向の中で、活性化に資する事業・
プロジェクトを行う上で前提となる土地・建物を確保するため、不動産の流動化をいっ
4
平成18年改正前の中心市街地の区域の面積の平均は123.5haであった。改正法では人
口規模の小さなまちの認定が相対的に少ないことが、
平均面積が拡大した一因であると考えられる。
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そう進めるべきではないか。このため、中心市街地に事業用資産を有する者の受益と負
担の関係にも配意しつつ、適切な賃料相場の形成、プロジェクトや創業・新陳代謝に対
する地権者の理解の促進を図るべきではないか。このためには、後述のまちづくり会社
によって、地権者と入居希望者のマッチングを強力に進めるべきではないか。また、市
街地再開発の仕組みは有用であるが、これを効果的に活用するために必要な条件整備は
何か。さらに、定期借地権を活用した所有と利用の分離、及び空間デザインコードの統
一が新たな事業展開にとって有効であるところ、これらを円滑化するためにいかなる環
境整備が有効か。権利者に対し不動産流動化を促すような税制上の措置をはじめとする
インセンティブ、ディスインセンティブを付与することをどう考えるか。なお、自治体
によっては賃料の助成や改修・解体の補助を行っているところがあるが、こうした取組
は有効か。
ウ) 郊外投資
まちなかが投資先として相対的に魅力を増すためには、郊外投資を抑制する必要があ
るのではないかとの指摘があるが、どう考えるべきか。前提として、郊外への投資の拡
大・流出は今後も趨勢として続くことが想定されるか。また、インターネット通販が拡
大していること、コンビニエンスストア、ドラッグストア等の業態がまちなかあるいは
幹線道路沿いに展開していることをどう考えるか。抑制が必要と判断される場合に、都
市計画制度等によって土地利用については自治体の裁量で相当の措置が可能となって
いるともいいうるが、どのように考えるべきか。現に郊外に商機能をはじめとして活力
がある場合、この活力をどのようにすればまちなかにも取り込むことができるか。
エ) その他の環境整備
中心市街地の衰退は市役所や公立病院の郊外への移転が契機になるといった指摘も
あるところ、こうした施設の中心市街地における整備や、さらには道路整備等を含めた
まちなかにおける公共投資の在り方についてはどう考えるか。また、まちなか投資のた
めの基盤づくりとして、都市に関連する規制制度について何らかの柔軟化等を図るべき
ものはあるか。
③ 担い手の強化
ア) 市町村
市町村は、中心市街地活性化政策が広義のまちづくりの一環であることを踏まえ、ま
ちに必要な機能を適切に選定した上で、都市政策や産業政策における既存ツール(市町
村マスタープラン、用途地域、開発許可等、及び企業誘致、商業活性化等)を駆使して
まちなか投資を呼び込むべきではないか。
イ) まちづくり会社
まちづくり会社が現実のまちづくりにおいて果たしている(果たすべき)役割はきわ
めて大きいが、活動基盤の弱さも指摘されている。まちづくり会社に法的位置づけを付
与することでステイタス向上が図られるとの指摘をどう考えるか。実質的にまちづくり
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会社が空き店舗・未利用地の活用等の局面で機能するように、これらをめぐる権利調整
等についてある種の権能を与えるべきとの指摘があるが、どう考えるか。不動産管理や
建築等の専門家で外部機関を構成しこれがまちづくり会社をサポートする体制を構築
すべきではないか。なお、自治体や中心市街地活性化協議会との連携、役割分担はいか
にあるべきか。
ウ) 商工会議所・商工会等
商工会議所、商工会、あるいはディベロッパーをはじめとする個々の事業者が、行政
に過度に依存することなく自発的にまちづくりを進めていくためには、何らかの環境整
備が適切か。
エ) 大型店等
まちなかにおいて大型店は利便性を提供するとともに雇用を生み、にぎわいの核とな
ることで当該店舗の周辺に存在する都市機能との相乗効果も期待できるとの指摘があ
る。その活力をまちづくりに生かす観点から、大型店の中心市街地への誘致について中
心市街地活性化法に特例措置があるが、インセンティブとして十分か。他方、大型店の
地域貢献への取組の現状をどのように評価し、今後何を求めるか。現に郊外に存在する
大型店がまちなかに対して貢献できることはないか。現在業界団体で取り組まれている
対応はアウトサイダーには及ばないが、この点にどのように対処すべきか。また、まち
なかから大型店が退店する場合の措置として、情報提供、後継店の確保、従業員の雇用
等への要望が強い。まちなかへの出店をかえって抑制しないようにバランスをとりつ
つ、どのような対応が望まれるか。こうした課題は、大型店のみならずフランチャイズ
チェーン等にも見られるが、こうした店舗の地域貢献等についてはどう考えるべきか。
オ) 商店街
商機能は、まず住まい手が集まるところに需要が生まれることで自ずと集約されてく
るべきものであるが、こうした大きな流れを前提に、商店街がまちなかにおける商機能
の担い手であるほか、地域における雇用・創業の現場ともなり、また、安全・安心や子
育てといったコミュニティの担い手として重要であるとの認識のもと、こうした機能の
増進について支援すべきではないか。また、大型店等との競争の中でも独自の付加価値
をもって輝く個店の形成は、まちの魅力の向上、対外的な魅力の発信にもつながること
から、このために必要な新陳代謝等を図る必要があるのではないか。
カ) まちづくりを担う存在としての住まい手
最終的にまちの主役であり、まちづくりの受益者であり、また負担者でもある住まい
手が、まちの在り方について主体的に発想し、実現していくためにはどのような能力が
必要か。住まい手の中からのまちづくり人材の発掘・育成、スキルの向上、子育て支援
をはじめとするNPO等の活動サポート等の取組が必要ではないか。
キ) まちなか居住における住まい手
住まい手に関し、まちなか居住は「歩いて暮らせるまち」を実現する近道であるが、
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現状をどう評価するか。高齢化が進む住まい手が高いクオリティ・オブ・ライフを持続
可能な状態で維持するために必要な生活利便施設(サービス付き高齢者住宅、老人保健
施設、ケアマネジメントセンター、コミュニティ空間等)について、その整備・集約を
どう考えるべきか。
ク) 人材の組織化等
様々なアイデアが実際のまちづくりに結実するためには、自治体はもとより、タウン
マネージャー、まちづくり会社、市民団体その他に一定のスキルが蓄積されている必要
があるが、現実にはスキルを持った人材は少ない。必要なスキルを持つ人材をストック
し、必要に応じて自治体等に代わって担うような仕組みは考えられないか。
④ 資金供給の円滑化
ア) 基本としての融資
まちなかに民間資金を呼び込むためのファイナンス手法として、何が適切か。やる気
のある地域がリスクをとって行う取組を支援することを前提にすると、最終的には返済
を求める融資のような形態が基本であるべきか。
イ) 出資・ファンドの可能性
土地の現物出資などを通じて地権者を始め多様な主体が参画し、長期的に事業管理で
きるようなファンドによる支援が有効との指摘があるが、どう考えるべきか。地域金融
機関のファンドへの出資実績は低いが、どうすれば活性化できるのか。
ウ) 資金の受け手としてのまちづくり会社
まちづくりにおいてはまちづくり会社が多様な資金を調達できることが必要である
が、このために必要なまちづくり会社の運営体制・財政基盤の強化を実現する方策はど
うあるべきか。まちづくり会社設立時からの経営のプロによるサポート、地元企業の巻
き込みと経営への参画、事業構想段階からの金融機関の関与、収益事業を通じた自主財
源の確保など、財政・運営基盤の確立について必要な取組は何か。
エ) 補助金の役割
中心市街地活性化として取り組まれる事業は投資回収期間が長く、金融機関にとって
リスクが高いことから、補助金による支援が一定程度必要と考えられるが、補助金のス
キームとしてはどのような形態が適切か。資金的支援への過度な依存構造から脱却する
ことを前提に、支援の根拠(公共性・外部性、リスクの高さ)を明確にしつつ、支援す
べきまちの規模・特徴を踏まえて事業主体、事業内容を柔軟に設計でき、資金支援期間
が切れた際に円滑に離陸できるような支援メニューが必要ではないか。
オ) ハード施設整備についての考え方
ハード施設を整備する場合、それ単体の集客を目的にするのではなく、地域の経済循
環、さらには働く場の創出といった視点から、適切なソフト事業と組み合わせて整備す
べきとの指摘があるが、どう考えるべきか。
カ) まちづくりのための独自財源の確保
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自治体がまちづくり会社の財務基盤の強化その他によりまちづくりを進めるための
財源を確保するため、地方債の発行、法定外目的税の創設等に、工夫しつつ取り組むこ
とをどう考えるか。
(2)地域の実情に合った機能の集約
① 「准中心市街地」の必要性
ア)小さなまちの身の丈に合った取組
(1)に掲げた課題は、現行法が想定する中心市街地を主として念頭に置いて記述
したものであるが、実際には、現行法が想定しないところで、ある機能に特化して集約
を試みるような取組も、広くあり得るところである。とくに人口規模の小さなまちでは、
まずは住まい手の生活を直接支えるような機能(商機能であれば最寄品の需要を満たす
機能)が重要であり、また、これの整備で足りる場合も多いと考えられる。しかし、現
行法は、原則として、「市街地の整備改善」「都市福利施設の整備」「居住環境の改善」
「商業の活性化」の4つすべてに取り組むことを前提としており、小さなまちにおいて
はこれらに取り組むことが難しいと感じられることも多いのではないか。もとより小さ
なまちであっても、フルセットの中心市街地活性化に全力で取り組む過程でスキルが磨
かれ、まちづくりの求心力が高まるという効用があり、このチャレンジを阻害しないよ
うに配慮する必要はあるが、小さなまちがその特徴を生かし、身の丈に合ったまちづく
りを行おうとする場合、取り組む対象を取捨選択することを、中心市街地活性化法の枠
組みにおいてより弾力的に認めることが適切ではないか。
イ)まちに応じた目標設定
とくに小さなまちの場合は、目標設定におけるハードルが高すぎると中心市街地活性
化へのチャレンジに二の足を踏むことになりかねないことから、量的拡大ではなく住ま
い手の満足度等によって評価される質的向上を目標に据える等、多様な目標設定を認め
るべきではないか。
ウ) まちの各エリアにおける機能別の取組
大きなまちにおいても機能を集積すべきエリアはまち全体の中で一つとは限らず、ま
ち全体を鳥瞰してそれぞれのエリアがもつべき機能が配分され、かつ、それぞれのエリ
アが相互補完的に機能するのであれば、高度集積拠点と日常生活型拠点等の複数の拠点
があってもよいのではないか。むしろ、様々な機能を無理に盛り込もうとする結果とし
て広大な認定エリアが設定され、集積の効果が拡散してしまっているのではないか。ま
た、合併によって誕生した市のように人口密度が必ずしも高くない広大なエリアに複数
の日常生活型拠点がある場合も、相互の拠点が連携することを念頭に、それぞれの拠点
に対して一定の位置づけを与えることもあり得るのではないか。
エ)「准中心市街地」(仮称)の制度化
以上のような、フルセットでないまちづくりの取組を、現在の認定中心市街地の仕組
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みに加えていわば「准中心市街地」として体系の中に位置づけ、それぞれの地域の実情
に応じた一定の役割を担わせるべきではないか。このことにより、従来の認定中心市街
地の意義がまち全体の住まい手に対して理解されやすくなり、コンパクトシティの形成
が進むのではないか。
② 「准中心市街地」への支援
○ 「准中心市街地」について、身の丈に合った支援策とはいかなるものか。現行の中心
市街地のような内閣総理大臣の認定スキームは、准中心市街地についてはハードルとし
て高すぎるのではないか。中心市街地活性化協議会や、まちづくり会社の役割について
も、より簡素なものでよいのではないか。また、資金供給面では、補助等の直接的助成
のほか、税制上の優遇措置、地方交付税等についてはどのように考えるべきか。
③ 計画期間
○ 現在、計画期間は原則5年程度となっているが、まちづくりの成果が現れるためには
10年程度が必要との指摘がある。従来の中心市街地及び准中心市街地について、計画
期間の柔軟な設定を認めるべきではないか
(3)まちづくりを支える基盤の整備
① 広域的な視野からのまちづくり
ア) まち相互間の広域的な連携の必要性
まちづくりに当たっては広域的な連携が重要との指摘が多い。一つのまちにすべての
機能を集中するのではなく、機能を補完的に分散させ、相互に依存しあうことが、とく
に人口減少下にある小さなまちにとっては有効な場合が多いと考えられるが、こうした
取組は一の市町村の範囲を超えることとなる。まちづくりの原点は各市町村の自主性で
あり、広域の連携を強いることで各市町村の主体的な取組を阻害することは避けなけれ
ばならないが、各自治体が自らの意思に基づき緩やかに連携できるような制度的手当が
あってもよいのではないか。(たとえば、定住自立圏構想の連携枠組みを参照。)
イ) 都道府県の役割
現行中活法は市町村と国が認定を通じて直接にリンクしており、都道府県は認定基本
計画の写しが送付されるだけであるが、今後は都道府県が、広域的な視野から市町村の
個別の取組についてガイダンスを与え、相互の連携を呼びかけるなどの役割を状況に応
じて適切に担うことが有効ではないか。さらに、市町村の側から都道府県に広域連携の
媒介を要望したり、都道府県の都市計画決定や条例等に対してまちづくりの観点から意
見を具申したりするスキームについてはどう考えるべきか。
ウ) 都市計画の運用・都市計画との整合性
中心市街地活性化の基本計画は都市計画と整合のとれたものである必要があり、そも
そもまちづくりのプランニング、実行に当たっては、まち全体を鳥瞰した上で個々のエ
リアを有機的に位置づけることが必要であるから、都市計画手法のいっそうの活用が有
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効ではないか。他方で、都道府県のマスタープラン、都市計画決定と中心市街地活性化
のプランが必ずしも整合的でなく、中心市街地活性化の取組にとって障碍になっている
場合があるとの指摘もある。都市計画制度がもつまち全体や地域全体の在り方を中長期
的に規定する枠組みとしての効用を阻害しないことを前提としつつ、状況の変化に応じ
た見直しを適時適切に行うことで、計画相互間の整合性を柔軟に確保すべきではない
か。
エ) まち相互間の公共交通ネットワーク
複数のまちが機能を分担する場合、歩いて暮らせるまちづくりを前提に考えると、ま
ち相互間の公共交通のネットワークが充実することが有益ではないか。
② まちづくり人材の充実
ア) タウンマネージャーの養成
中心市街地活性化のためにはまちのプランニング、ゾーニング、デザインコードの設
定、権利者間の調整、空き地・空き店舗のマッチング、さらにはまちの広告塔としての
機能といった、多面的なエリアマネジメントが必要だが、各地域にはこうした人材が少
なく、タウンマネージャーを設置している協議会やまちづくり会社は多くない。このた
めまちづくりのノウハウを有したタウンマネージャーを養成し、職業としてタウンマネ
ージャーを選択できるような仕組みを構築するとともに、そのスキルの向上を図る必要
があるが、このためにさらに行うべき施策は何か。また、地域のニーズとタウンマネー
ジャーのマッチングは円滑に行われているか。
イ) まちなか創業を支援する組織
まちを元気にする原動力は起業家精神と自由な競争に支えられた民間の力であるが、
創業には精度の高いアドバイスのできるプロフェッショナルがいる中小企業支援セン
ターのような組織が有用であることも事実である。一般的な創業支援を超えて、まちな
か創業について固有の支援が必要か。
③ 成功事例の共有
まちづくりは時間のかかる取組であり、政策メニューがすべて整うまで待つ必要はな
く、取り組めるところから順次取り組むことで成果を早く刈り取り、成功例、または成
功・失敗に至った経緯・因果関係等を横展開することが有用ではないか。なお、この場
合も、単純な模倣を推奨するのではなく、それぞれの地域の実情に合わせてカスタマイ
ズすることが基本であるべきではないか。
以 上
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