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塩谷 一紗・海老塚 広子
平成27年 2月 1日 発行 (毎 月1回 1日 発行)違巻358号 躍fl162年 12月 3日 第二種郵便物警 I l‐ iSSN 0911-2236 00DEN:GFKttX た′ 五 RcLμ ′ J力 zttα J θ%F♭ θごCλ η `解 “ . ・ 蝙m、 ・ 簾竜 ハラー ル市 場 と 実 践 農 綽絣鰺・ ザ 特焦 2 ^ 瓦 ・ ・ 一 鋒 暫 軒 . ´ 還 元水 あめ の有 効活 用 特焦 3 ヒマワリレシチ ンの市 場 開 拓 二頷 &ε あθttJε αな ノ ロ ´黎 香ばしく仕上げるキシロースの有用性 食品においしそうな焼き色を付与し、 ・ケミカル エーザイフード … '総 寧籠黎翡ぽ警撃 爾 アレルギー食品の閾値 最新 のEFSA助 言 シッフズジャバ ン ― 颯 辣 雄 蝙 鵬 A‐ 五 %・ 驚 ● 的なチ‐ズ中の臨 い成 塩谷 ― 紗 Kazusa Shbtaゴ 東京家政大学 期限付助教 鑽 海老 塚広 子 Hiroko Ebizuka 東京家政大学 講 師 を見 直 しなが らチ ーズ 造 りは継続 して い る。 1.チ ー ズ の温 故 知 新 日本 では,牛 は農耕 のための役畜 と して認識 チ ー ズ は,牧 畜酪農国 の 代表的 な伝続 食品 で あ り,栄 養 価 の 高 い 食 品 と して評価 され , され,乳 を利用 す る発想が なか った。テ ーズ 造 りは明治 維新 の北海道 ・樺太 開拓事業 を契 嗜好 ,生 体調節機能 の面 か らも注 目されて い る。 テ ーズ の 歴 史 は約 1万 年 前 の動物 の家 畜 機 として本格化 した。その後 ,消 費 の増大 と 化 か ら始 ま り,人 類 に とって最 も古 くか らあ 本 の気候風 土や国民 性 に合致 したチ ーズ 文化 る食品 の一 つ で あ る とと もに古代 の 人 々の知 の発展が期待 されて い る。 恵 が 反映 された食品 として現代 で も親 しまれ て い る。テ ーズ の起源 には諸説 あ り特定 され 現 在 ,世 界 で は 約 1169万 t(1996年 ),日 本 で は約3万 4000t(1997年 )の ナチ ュ ラルチ ー て い ないが ,現 在 で は科学的 に説明 が な され ズが生 産 されて い る。 わが 国 にお けるテ ーズ てお り, レンネ ッ トに よる乳 の凝 固 に よって 起 こるカー ドとホエー の分離 が 日常生活 の 中 の総消費量 は約22万 3000t(1997年 す るテ ーズ の 半分 が プ ロ セステ ーズ で あ る。 で偶然 に発見 された こ とは確 実 で あ る。 世界 各 国 の ナチ ュ ラルチーズ とプ ロセスチ ー チ ー ズ造 りが 開始 された古代 以降,中 世 の 修 道 院 で の生 産技術 改 良 に伴 う新種 の 開発 , 20世 紀 の工 業化 を経 て,現 代 で は従来 の製法 。 と もに工 場 の大型化 ,合 理化が進 め られ, 日 )で ,消 費 ズ の消費割合 をみ る と,国 土が広 くテ ル ド流 通が 難 しい ロ シア,ア メ リカ,オ ース トラリ アな どではプ ロセスチーズの比率が比較 的高 日本 0 4 0 3 アメリカ合 衆 国 0 2 │ オーストラリア ∫ン ニ ー ー ユ ジ ラ メ │ 0 1 プ ロセ ステーズ の割合 ︵ %︶ ◆ ロシア │〔 :サ :′ ;Iシ ン ス スィス 7rラ ウ イスラエル▲ オランダ テン アイスランド 5 5三 `:```:│::/ラ 25 ^υ 図・ti十 一 10 15 20 一 年間 人あた りのチーズの消費量 (kg/年 ) 30 各国の年間一 人当た りのチーズの消費量 とその 中に占めるプロセステ ーズの割合 (参 考 :The wond mal・ ketfor cheese 1995-2004) 月刊 フー ドケ ミカル 2015-2 隷義耗義¨犠静酸素揃議長繭 撼1鑢 姜銀鷺 学 ロジェク ト」 の 32課 題 よ り食品関連 の青it t■ ■ ・ プ=活 ― 「温故知新 い られて い る硬 さ と熟成法 を組 み合 わせ た分 く,テ ーズの伝統 国で あ る フランス, ドイッ ス イス などでは非常 に低 くなつている (図 1)。 , 類 と代 表的 なチ ーズ を表 1に 示す。 この歴 史 の 中で消費者 の 求 めるチ ーズヘ の 3.ナ チ ュ ラ ル チ ー ズ の 香 気 成 分 期待 は「 お い し く食 べ る 1こ とか ら「 職 乾 "お い しく食べ る」 こ 性 を十分 に発 揮 させ て チ ーズ の香気 成分 は原 料乳か ら移行 した成 とへ と変化 して い ることが うかが える。 分 と熟成 中に タ ンパ ク質,乳 糖 ,乳 脂肪分が 2.チ ーズ の分 類 酵素 や乳酸菌 をは じめ と した種 々の微生物 の 作用 に よ り生 じた成分 で あ る。テ ーズ の香 り チ ーズ はナチ ュ ラ ルチ ー ズ とプ ロセスチー ズ に大 別 され,プ ロセ ステ ー ズ は1種 類 以上 は主 と して後者 の 成分が圧倒 的 に多 く,そ れ がチ ーズ の特徴 となって い る。主 な香気 成分 の ナチ ユ ラ ルチー ズ をお 辞 し,加 熱溶解 して と して は,脂 肪酸 ,ア ル コー ルや カルボ エ ル 孝L化 ,成 型 した もので あ る=ナ チ ュ ラルチ ー ズ は,熟 成過 程 にお い て チーズ の主 要成分 で 化合物 ,含 硫化合物 ,含 窒素化合物 な どが あ あ る タ ンパ ク質 カゼ イ ンや 1旨 肪 の 分解 に よっ て風 味や組織 が形 成 され る.ま た,そ の種類 ミノ反応 に よ リケ ト酸 ,ア ミン,揮 発性脂肪 酸 ,揮 発性 含硫化合物 ,ア ル コー ル,ア ルデ は800種 以上 と も言 われ てお り, さまざまな ヒ ド,ケ トン類 が生 成す る。 脂 肪 酸 か らは 分類が行 われて い る=そ の 中 で,一 般的 に用 メチ ル ケ トン,第 2級 ア ル コー ル, ラク トン り,熟 成 中 のア ミノ酸 か らは,脱 炭酸 ,脱 ア , 表 1 チ ー ズの 分類 と代 表的 チ ーズ チ ー ズの タイブ 代表的なチ ーズ 熟 成法 軟質 非熟 成 カ ビ熟 成 半硬 質 網菌熟 成 細菌 ・表面熟 戒 カ ビ熟 成 カ ッテ ー ジ,ク リーム カマ ンベ ール,ブ リ サ ン・ ポ ー ラ ン,ポ ー ル・ ド・サ リュ リンブル ガー,チ ル ジ ッ ト ブ ル ー 、 ロ ッ ク フ ォー ル 細菌熟 成 硬質 細菌熟 成 チ ー ズア イあ 1) 超硬 質 細菌熟成 チ ェ ダー, ゴー ダ エ メ ンター ル,グ リュエ ー ル パ ル メJヴ ン (参 考 :現 代 チ ー ズ学 ) 表2 青 カビチーズの香気成分 成 分 名 ε錫 ε鮨 2-Pentanone O.5-2.1 2-Nonanone 15.7∼ 44.1 Buサ riC acid l.4∼ 3.9 Ethyl decanoate Ethyl butyrate O.3∼ 0.6 Memブ 。 ctanoate 2-Hexanone O.1∼ Ethyl octanoate ヤ4 O.3´ ‐ Nonen-2-one l.5-2.4 Ethyl penね 0.4 nOate O.2∼ 0.3 2-Heptanone 9.1∼ 14.7 Methyl hexanoate 2.7∼ 4.4 Etllyl h∝ anoate O.3∼ 3.9 Pentano1 0.2∼ 0.4 AcetophenOne O.4∼ 0.7 0,9∼ 、ヽ . ヽ . 、 一カ 一■一 月 1刊 . 一 ケ 一 ド ¨ ・ 一︸ T ..一一 フ ・ ・ 2-Heptanol _ 3.4 Heptano1 0.2∼ 2-Decanone 2-Nonano1 O,3∼ 0.4 0.6-5.2 Nonen-2-o1 0.3^-0.4 0.7 N/1ethyl decano7ate l.6∼ 10.1 2-UndecanOne 2015-2 齢名'8錫 O.51■ 6.6 Unsaturattd O.2∼ 1.3 成分名 Hexanolc acld O.7-5.6 Undecanol O.2∼ 1.1 2-Penね decanone methyl ester い ヽ〓 一 ■ 〓 ● へ 活 ´ 成 筋 ,11-1= 11ヽ ■ │.1ヽ ヽ ■ Ethyl tetradecanoale Nonano1 0.4-1.8 Octanoic acid 2-Dodecanone 2-Undecano1 O.2-0.7 01-0.3 MetllyI pentadecanoate ‐ δ‐ Hexalactone 02^ψ O.2 Decanolc acld l.=ヽ │■ 1 Methyl dod∝ anoate O.2∼ 1.3 Dodecanolc acld l.1・ 1, 2 Tridecanone O.1-0.5 Tetradecanoic acid l11 11 1■ 類 な どが生 成す る。 これ らの成分 のバ ラ ンス 1.4 は熟成期 間 の長短や熟成 に利用す る微 生 物 に よって大 き く異 な り,熟 成期 間 の長 い もの や 1.2 カ ビが作 用 した ものの 方が 香 気 が強 くな る。 1 0.8 0.6 表 2に は,青 カ ビチ ーズ の香 気 成分 と して検 0.4 出 された化合物 を示す。 0.2 0 4.調 理 に よ るチ ーズ の 嗜 好性 の 変 化 200℃ 250℃ 熱 カロ ―◆ …2-Heptanone― ●-2-Nonanone― ▲-2-Heptanol リ カロ ト 勲、 ナチ ュ ラルチ ーズ の 中で も熟 成 に青 カ ビを 使用す る青 カ ビチーズ には,世 界 三 大 ブル ー 150℃ 図 2 青 カビチ ーズ主要 香 気 成分 変化 (ゴ ルゴンゾーラ) テ ーズ と呼 ばれ る ゴル ゴ ンゾー ラ,ス テ イル トン,ロ ックフ ォー ルが ある。 いずれ も高脂 フ ォー ル を150℃ ,200℃ ,250℃ で10分 加 熱 肪 乳 を原 料 と して製 造 され るが ,ゴ ル ゴ ン ゾー ラ,ス テ イル トンは牛 生乳 ,ロ ックフォー した 後 ,香 気 お よび香 気 成 分 を分析 し,そ の 変 化 に つ い て検 討 した。 香 気 は い ず れ の ル はめ ん 羊 乳 を原料 とす る。 青 カ ビテ ー ズ は,独 特 の香 りを有す るため,欧 米人 に比 べ チ ーズ にお い て も加熱 に よって変化 が 見 られ て 日本 人 にはあ ま り好 まれ な い傾 向が 強 い。 よびGC/MSを 用 い て 分析 し,そ の 結 果 ,青 カ ビテ ーズ の 主 要香 気 成 分 で ケ トン類 に分 しか し,加 熱調理 を行 うこ とで青 カ ビテ ーズ 独特 の香 りが 緩和 され,食 べ やす くな る と言 われて い る。 さらに,チ ーズ を好 まな い 人に た。 さ らに香 気 成 分 は 固相 マ イ ク ロ抽 出お 類 され る2-Heptanone,ア ル コー ル に分類 さ れ る2-Heptanolが い ず れのチ ーズ にお い て も 対す る有効 的 な調 理法 と して燻煙法が 挙 げ ら れ る。燻煙法 は煙 に含 まれ る殺菌 ・防腐 成分 200℃ 加 熱 で 顕 著 に減 少す る結 果 と な った。 を食材 に浸透 させ る食 品加 工 技 法 であ り,食 したが って 減 少 した (図 2)。 この こ とか ら 200℃ の 加 熱温 度 が チ ーズ の風 味 を維 持 しな 品 の長期保存 のため に利用 されて い る。燻煙 材 としては,サ クラ,ナ ラ,ブ ナ, リ ンゴな どが一 般 的 に利 用 されて い る。 燻煙 中 の400 種類 に も上 る成 分 の うち,代 表 的 な成 分 はカ ルボ エ ル化合物 ,フ ェノール化合物 ,有 機酸 また,2-Nonanoneで は加 熱温 度 が 上 が る に が ら青 カ ビチ ーズ独特 の香 りを緩和 させ るだ めの カギ となるこ とが 明 らか となった。 6.プ ロセ ス チ ーズ の 燻 製 によ る香 気 の 変化 , アルデ ヒ ドであ り,そ れぞれが 保存性 の 向上 や燻製独 自の色艶 ,香 りの付加 に関与 して い る。 この ことか ら,最 近 で は保存性 の 向上に 加 えて,燻 製食品特有 の香 りを楽 しむ ものへ と変化 して い る。 5.青 カ ビチ ー ズ の加 熱 に よ る香 気 ・ 香 気 成 分 の 変化 ゴル ゴ シ ブ ー ラ,ス テ イル トン,ロ ック 70 11 : ││ , サ クラ,ナ ラ, リ ンゴ,ウ イス キ ー オー ク の4種 類 の 燻煙 材 を用 い て,プ ロ セスチ ーズ ■ を熱燻 法 に よって燻製 し,に おい識 号1装置 キ よる分析 を行 い,香 気 の変化 につい て検討 し た。この結果 は硫化水 素,硫 黄系 ,ア ンモ ニ ア , 芳香族系 ,炭 化水 素系 ,エ ス テ ル系 ,ア ルデ ヒ ド系 ,有 機酸系 ,ア ミ ン系 の9種 類 を比 較 して香気 の類似度 を算 出 した。燻製 を行 って い ない チ ーズ と燻 製 を行 ったチ ーズ を比 較 し 月刊 フー ドケ ミカル 2015-2 本議燕蛹軸にⅢIIで ,ま,軽 議議漱洋生翻 酸期麟期研究緩告: No.37(2014)に 掲載されていますのでご覧ください。 10分 燻製 硫資系 炭化水 素系 / 7.に お い 成 分 の 改 善 硫 化水薫 青 カ ビチ ーズ にお い ては,青 カ ビテ ーズ が 好 まれ ない理 由 とな り得 る主 要香気成分 がカロ \ / アンモ ニ ア 芳香 族 系 熱 に よつて減少 した。 さらにプ ロセスチ ーズ にお い ては,燻 煙法 によつて燻煙 由来 の香 り ア ミ ン系 エ ス テ ル系 が付加 した こ とが 明 らか となった。以上の こ とか ら,加 熱 ,燻 製 とい つた調理が チ ーズ に アルデ ヒ ト 20分 燻製 対す る嗜好性 に変化 を与 える要 因 として有効 で あ る と考 え られ る。チ ーズ は前述 の通 り古 硫化水素 代 の人 々の知恵 に よ り生 み出 された食 品 で あ る とともに,栄 養価 の高 い食 品で あ る ことか 硫黄系 炭化水素系 ら非常 に価値 がある と考 え られ る。 さらに現 在 ,抗 高 血圧 作 用 を持 つ ペ プチ ドや共役 リ ア ンモ ニ ア 芳香族系 ノール酸 ,抗 う蝕作 用 に注 目した機 能性 チ ー ズ の研 究 。 開発 が期待 されて い る。そのため エス テ ル系 , ア ルデ ヒ 非燻 製 人 々の嗜好性 に影響 を与 えるにお い成分 を改 善す る こ とはお い しく食 べ る とともに,生 体 硫化水素 炭化水素X 調節 の観点 か ら機能性 を十分 に発 揮 させ る上 黄系 で 有効 で あ る と考 える。 アンモ ニ ア 芳香族系 参 エ ス テル系 考 文 献 1)Jim law・ 亀和田俊 一 :Making Al・ tisan Cheese(2010, ア ミ ン系 アールアイシー出版) アルデ ヒ ド系 有機酸系 2)齋 藤忠夫・堂迫俊 一・井越敬司 :現 代 チ ーズ学 図3 9種 ガスを基にした燻製によるチ ーズの 香気 の変化 (燻 煙材 :ナ ラ) (2010, 食品資材研究会) 3)酪 農経済年鑑 1999年 度版 (1998,酪 農経済i重 信社 ), た結果 ,い ず れ の燻製 チ ーズ にお い て もエ ス p.142,580 テ ル系 ,炭 化水素系 ,ア ルデ ヒ ド系 ,芳 香族 系 ,有 機酸系 にお い て違 い が見 られた (図 3)。 4)栃 倉辰 六郎 ・ 山田秀明 ・別府輝 彦 ・左右 田健次 これ らは,燻 煙 中に代 表的 に含 まれ るカルボ ニ ル化合物 , フェノー ル系化合物 ,ア ルデ ヒ 5)日 本香料協会 :[食 べ物]香 り百科事典 (2007,朝 倉 ド,有 機酸 に相 当す るため,燻 煙 由来 の香 り がチ ーズ に付加 された ことが示 唆 され た。 こ 6)吉 沢淑・石川雄章・蓼沼誠 。長澤道太郎・永見憲三 のことから,燻 煙由来の成分が浸透 し,テ ー ズの風味の幅を広げたと考えられる。しかし 7)食 品保存 と生 活研究会 :食 品保存 の 科学 , 燻煙竹 木拳有差異は認められなかった。 月 刊;二'FIる す ガ 5-2 ` .ヽ "12∝ : 発酵 ハ ン ドブ ック (2001,共 立出版) 書店) 醸造 ・発酵食品の辞典 普及版 (2010,朝 倉書店) 日刊 工業新聞社 ) (2012, :