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8020推進財団 指定研究事業報告

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8020推進財団 指定研究事業報告
◆ 8020 推進財団 指定研究事業報告◆
8020 推進財団指定研究事業報告
1
指定研究事業報告
歯科医師を対象とした歯と全身の健康、
栄養との関連に関する研究
名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学 若井 建志
*
(執筆代表者)
名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学 内藤真理子
京都大学保健管理センター 川村 孝
福岡歯科大学 高齢者歯科 内藤 徹
愛知県歯科医師会 小島 正彰
愛知学院大学歯学部 口腔衛生学 中垣 晴男
愛知三の丸病院 歯科口腔外科 梅村 長生
九州歯科大学 歯周病制御再建学分野 横田 誠
鶴見大学歯学部 探索歯学 花田 信弘
歯の健康と全身の健康の関連を検討するため、都道府県歯科医師会員を対象としたコホート研究を
全国で実施しています。21,146 名の平均 6 年強にわたる追跡による分析結果からは、喪失歯数が増
えるほど死亡危険度が上昇していました。この関係は、歯の噛み合わせの残りぐあいの条件を一定に
してもみられました。
わたって追跡することが必要です。
1. 歯の健康と全身の健康
~歯科医師コホート研究~
しかし地域住民を対象とした場合、大規模なコホー
ト研究には、歯科検診や追跡調査に膨大な費用と労
力が必要になります。そこで私たちは、調査票(ア
歯の健康が全身の健康につながるとする「8020
ンケート)によってもかなり正確な口腔状態のデー
運動」のテーゼを証明するためには、口腔状態が良
タが得られ、かつ歯科医師会を通じた追跡調査が可
い者では、実際に寿命が長く、心筋梗塞、脳卒中な
能な歯科医師を対象にコホート研究を実施してきま
どの重大疾病への罹患が少ないかどうかを追跡調査
した 1、2)。この研究は、口腔保健の重要性について
(コホート研究)により検討することが望まれます(図
の情報を歯科医師自らが発信する貴重な機会になり、
1)
。しかも死亡や全身疾患の発生などは多くはない
ため、1 万人単位の集団を数年から十数年の長期に
「8020 運動」の推進にも有用と考えています 3)。
本研究は都道府県歯科医師会のご協力の下、歯科
医師会の会員を対象に県単位で実施しています。調
査開始時点の基礎情報の収集は「歯科医師健康白書」
PROFILE
*わかい・けんじ
名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学准教授、医師、
博士(医学)、1990 年名古屋大学医学部卒業、94 年名
古屋大学大学院医学研究科修了、同年名古屋大学大学院医
学研究科助手、2000 年同講師、03 年愛知県がんセンター
研究所主任研究員、04 年同・がん予防研究室長、06 年
10 月より現職、1965 年 11 月生まれ、岐阜県岐阜市出身、
主研究テーマ:歯と全身の健康との関係、栄養疫学、がん
の疫学
96
8020 No.10 2011-1
調査 4) として、アンケートにより行いました。収集
した情報は、年齢、既往歴・家族歴、口腔状態、生
活習慣、心理要因などです。
研究参加者の追跡調査には、書面による同意を得
た上で、歯科医師共済制度などの関係で都道府県歯
科医師会に提出される死亡診断書、診断書などを利
◆ 8020 推進財団 指定研究事業報告◆
研究参加者
追跡調査
喪失歯数が
多いグループ
ア
グン
ルケ
ーー
プト
分調
け査
で
喪失歯数が
少ないグループ
疾病罹患者
図 1 コホート研究の流れ(喪失歯数が少ないグループは多いグループよりも疾病に罹患しに
くいかどうかを検討する例)
用しています。個人情報保護のため、「歯科医師健康
〜 9、10 〜 14、15 〜 19、20 〜 24、25 本 以 上
白書」調査では、署名のある調査同意書は各都道府
のグループの死亡危険度は、それぞれ 1.06、1.27、
県歯科医師会、匿名の調査票は調査事務局でそれぞ
1.42、1.54、1.30 であり、25 本以上で若干低下
れ厳重に保管し、追跡調査は両者に共通の整理番号
しましたが、ほぼ喪失歯数が増えるとともに死亡リ
を用いて実施しています。
スクが上昇していました(図 2)。歯が多く残ってい
ることは、他の関連要因を考慮してもなお、長寿と
2.喪失歯数と死亡危険度
-喪失歯数が増えるほど死亡リスクが上昇-
2001 年 2 月 か ら 2006 年 7 月 ま で に、 全 国 で
21,272 名の先生に研究にご参加いただきました。
今回、喪失歯数と死亡危険度の関連について、追跡
期間を延長してさらに検討いたしました。
何らかの関連があると考えられます。死亡危険度 1.5
は、現在喫煙者の死亡リスクにほぼ相当しています。
3.歯の噛み合わせの残りぐあい
(咬合支持域数)と死亡危険度
これまでの追跡調査により、喪失歯数が増えるほ
分析対象者は研究参加者のうち、喪失歯数の回答
ど死亡リスクが上昇することが示されましたが、歯
があった 21,146 名です(平均年齢±標準偏差は
の本数だけでなく、噛み合わせの状況も考慮すべき
52.3 ± 12.2 歳、 女 性 1,691 名 )。2010 年 6 月
だとのご意見をよくいただきます。そこで今回、歯
までの平均 6.1 年間の追跡期間中に、821 名の死亡
の噛み合わせの残りぐあいと死亡危険度との関連に
が確認されました。データ分析では、調査参加者を
ついても、上記 2 と同様に分析を試みました。噛み
喪失歯数(智歯を除く)の回答によってグループに
合わせが重要とされる奥歯を左右前後で 4 つの部分
分け、
喪失歯数のもっとも少ないグループを 1(基準)
(左右の大臼歯および小臼歯)に分け、上下で対と
とした各グループの死亡の危険度(ハザード比)を
なる歯が 1 対でも残っている部分の数(咬合支持域
求めました。危険度は、性と年齢の影響を考慮した
数−アイヒナー分類に準じたもの)を、噛み合わせ
ものと、性、年齢に加え、死亡のリスクに影響する
の残りぐあいの目安としました。分析対象者は「歯
可能性のある要因(喫煙、飲酒、肥満度 [BMI]、精
科医師健康白書」調査参加者のうち、歯式に準じて
神的健康度、激しい運動の有無、睡眠時間、糖尿病、
歯の状態をご回答いただいた、31 県歯科医師会の
高脂血症、高血圧)を考慮したものの 2 通り計算し
11,421 名です。追跡期間中の死亡者は 351 名でし
ました。
た。
その結果、性、年齢、他の関連要因を考慮した場
その結果、性、年齢、他の関連要因を考慮した場
合、喪失歯数が 0 〜 4 本のグループを 1 とした、5
合、噛み合わせが 4 つの部分すべてで残るグループ
8020 No.10 2011-1
97
◆ 8020 推進財団 指定研究事業報告◆
2.0
性、
年齢を考慮
(trend P<0.001)
死亡危険度
他の関連要因も考慮
(trend P=0.006)
2.06**
2.5
1.5
死
亡
危 1.0
険
度
2.0
1.5
1.46
1.61
2.03♯
0.98
0.97 1.2
1.14
1.38 0.58
1.62*
1.62**
*
1.00
1.0
0.5
0.5
0-1
0.0
0.0
0-4
5-9
10-14
15-19
20-24
0-4
25-28
喪失歯数
図 2 喪失歯数と死亡危険度(ハザード比)の関係
*
**
( P<0.05、 P<0.01)
2.0
性、
年齢を考慮
5-9
2
10-14
3 噛み合わせが
15-19
喪失歯数
20-24
4
25-28
残る部分の数
(咬合支持域数)
図 4 喪失歯数と噛み合わせが残る部分の数(咬合支持
域数)の組み合わせと死亡危険度(ハザード比)
♯
*
**
の関係 ( P<0.10、 P<0.05、 P<0.01)
(trend P=0.004)
他の関連要因も考慮
(喪失歯数
は含めず)
(trend P=0.071)
長寿との間をつなぐと考えられる動脈硬化や体力な
1.5
どは、噛み合わせ状態以上に、残っている歯の本数
死
亡
危 1.0
険
度
自体が強く関係している可能性もあります。
本研究では今後も死亡状況に加え、疾病罹患状況
についても追跡調査を続けることにより、口腔の健
0.5
康状態が長期にわたって全身に及ぼす影響を検討し、
0.0
4
3
2
0-1
噛み合わせが残る部分の数
(咬合支持域数)
図 3 噛み合わせが残る部分の数(咬合支持域数)と
死亡危険度(ハザード比)の関係
♯
**
( P<0.10、 P<0.01)
得られた成果を日本の歯科医師発の情報として内外
に発信していきたいと考えております。
< 謝辞 >
最後になりましたが、多大なご協力を賜っております都道
府県歯科医師会、8020 推進財団の関係者、ならびに調査に
ご参加いただいております歯科医師会会員の先生に深謝申し
を 1 とした、残る部分が 3、2、0 か 1 のグループの
死亡危険度は、それぞれ 1.17、1.28、1.35 となり、
噛み合わせが残る部分が少なくなるほど死亡リスク
が上昇する傾向はみられました(図 3)
。
また、咬合支持域の喪失の程度と喪失歯数を組み
合わせて検討した場合も、噛み合わせが残る部分の
数が同等であっても、喪失歯数が多くなるにしたがっ
て死亡危険度は上昇する傾向が認められました(と
くに咬合支持域の残った数がないか 1 か所のみの場
合− trend P = 0.022、図 4)
。
ただし、喪失歯数を一定とすると、噛み合わせが
上げます。
参考文献
1)Wakai, K., Naito, M., Naito, T., Nakagaki, H., Umemura,
O., Yokota, M., Hanada, N., Kawamura, T.: Longitudinal
Evaluation of Multi-phasic, Odontological and
Nutritional Associations in Dentists (LEMONADE
Study): study design and profiles of nationwide cohort
participants at baseline. J. Epidemiol., 19: 72-80,
2009.
2)Wakai, K., Naito, M., Naito, T., Kojima, M., Nakagaki,
H., Umemura, O., Yokota, M., Hanada, N., Kawamura,
T.: Tooth loss and intakes of nutrients and foods: a
nationwide survey of Japanese dentists. Community
Dent. Oral Epidemiol., 38: 43-49, 2010.
残っている部分が少ないほど死亡のリスクが高くな
3)若井建志,川村 孝,内藤真理子,内藤 徹,小島正彰,中垣
る傾向はみられず、喪失歯数が 5 〜 9 本の場合には
晴男,梅村長生,横田 誠,花田信弘:歯科医師を対象とした
むしろ噛み合わせが残る部分が少ないほどリスクは
低いという結果でした(trend P = 0.032)。これは、
研究参加者が歯科医師だけに、数歯の欠損に対して
は、適切な補綴処置によって口腔の機能を十分補う
ことができるためかもしれません。また歯の健康と
98
8020 No.10 2011-1
歯と全身の健康,栄養との関連に関するコホート研究−歯科医
師自身からのエビデンス発信をめざして−,日本歯科医師会雑
誌,58:865-873,2005.
4)歯科医師を対象とした歯と全身の健康 , 栄養との関連に関する
研究−これまでの研究成果と「歯科医師健康白書」調査集計結
果−,名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学 / 医学推計・判
断学,名古屋,2008.
◆ 8020 推進財団 指定研究事業報告◆
2
8020 推進財団指定研究事業報告
指定研究事業報告
質問票調査による咀嚼能力評価の
妥当性について
東京医科歯科大学大学院健康推進歯学分野 川口 陽子
「自分の歯または入れ歯で、左右の奥歯をかみしめることができますか ?」という質問を 40 〜 75
歳の地域住民に行い、実際の咀嚼能力との関連について分析しました。その結果、咀嚼能力の自己評
価と、山本式咀嚼能力テスト、現在歯数、臼歯数、FTU との間に関連があることが明らかになり、質
問票により咀嚼能力のスクリーニングを行う妥当性が確認されました。
歯をかみしめることができますか ?」という質問に対
1.はじめに
して、「両方できる」と回答した者は「良好」、「片方
咀嚼能力は、全身の健康状態、精神身体機能、栄
きない」と回答した者は「不良」と、3 つに分類し
養摂取量などと関係していることが報告されていま
ました。また、15 種類の食品による山本式咀嚼能力
す
テストも合わせて行いました。
だけできる」と回答した者は「普通」、「どちらもで
。したがって、良好な咀嚼能力を維持すること
1-3)
は、精神的かつ身体的健康を維持するために重要で
さらに、口腔内診査(第三大臼歯は除外)を行
す。これまで、咀嚼能力は歯科医師が対象者の口腔
い、 現 在 歯 数、 臼 歯 数、FTU(Functional Tooth
内を一人ひとり診査して、その結果に基づき評価し
Units:機能歯ユニット)を算出しました。FTU は、
てきました。本研究では、歯科健診が実施できない
通常、すべての機能歯をまとめて臼歯部の咬合状況
状況において、質問票調査によって咀嚼能力のスク
を示す指標として表しますが、本研究では、FTU を
リーニングができるか否かを検討するために、咀嚼
構成している機能歯を以下の 3 つに分類して検討を
能力の自己評価と、実際の咀嚼能力の評価との関連
行いました。
について分析を行いました 。
4)
① 現 在 歯(natural teeth) の み で 算 出 し
た n-FTU、 ② 現 在 歯 と 固 定 式 補 綴 物(natural,
2.方 法
implanted and fixed prosthetic teeth) を 合 わ
対象は、2005 〜 2006 年に成人歯科健診を受診
よび可撤性補綴物、すなわち通常のすべての機能歯
した秋田県横手市の 40 〜 75 歳の住民 2,668 名(男
せて算出した nif-FTU、③現在歯と固定式補綴物お
(total)をまとめて算出した total-FTU。
性 1,091 名、女性 1,577 名)です。自記式の質問
性別、年齢階級別に、質問票による咀嚼能力の自
票調査を行い、
「自分の歯または入れ歯で、左右の奥
己評価の分類結果と山本式咀嚼能力テスト、現在歯
数、臼歯数、FTU との関連について検討を行いました。
PROFILE
かわぐち・ようこ
東京医科歯科大学大学院健康推進歯学分野教授、歯学博士。
1979 年東京医科歯科大学歯学部卒業、79 年同・歯学部
予防歯科学講座助手、94 年オーストラリアメルボルン大
学歯学部客員研究員、東京医科歯科大学歯学部国際交流室
講師、文部省在外研究員(米国、デンマーク)等を経て、
2000 年より現職。1955 年 1 月生まれ、神奈川県横浜
市出身。研究テーマ:口腔疾患の予防と疫学に関する研究、
オーラルヘルスプロモーションに関する研究、国際歯科保
健に関する研究、ほか
3.結 果
1)質問票による咀嚼能力の自己評価
質問票による咀嚼能力の自己評価は、「良好」が
2,021 名(75.7%)、
「普通」が 447 名(16.8%)、
「不良」が 200 名(7.5%)でした。「良好」群は、
「普
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99
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男性
現在歯数
女性
男性
臼歯数
女性
40-49
50-59
60-69
70-75
40-49
50-59
60-69
70-75
40-49
50-59
60-69
70-75
40-49
50-59
60-69
70-75
0
5
10
15
20
6
8
25
30 本
図 1 年齢階級別、男女別の現在歯数と臼歯数
男性
n-FUT
女性
男性
nif-FUT
女性
男性
total-FUT
女性
40-49
50-59
60-69
70-75
40-49
50-59
60-69
70-75
40-49
50-59
60-69
70-75
40-49
50-59
60-69
70-75
40-49
50-59
60-69
70-75
40-49
50-59
60-69
70-75
0
2
4
10
12
図 2 年齢階級別、男女別の n-FTU、nif-FTU、total-FTU
通」群や「不良」群に比べて平均年齢が若い傾向が
いました。一方、咀嚼能力の自己評価の「不良」群では、
認められました。
柔らかい食品については咀嚼可能でしたが、ピーナッ
ツ、煎餅、スルメ、フランスパンなど硬い食品に関
2)年 齢 階 級 別 の 現 在 歯 数、 臼 歯 数、n-FTU、
nif-FTU、total-FTU
しては、約 50% の者が「咀嚼できない」と回答し
ていました。
現在歯数、臼歯数、n-FTU、nif-FTU の平均値を
年齢階級別に比較したところ、男女共に年齢が高く
なると値が低くなる傾向が認められました。一方、
total-FTU では男女共に年齢による差は認められま
せんでした(図 1、図 2)
。
4)咀 嚼 能 力 の 自 己 評 価 と 現 在 歯 数、 臼 歯 数、
n-FTU、nif-FTU、total-FTU との関連
質問票の結果と現在歯数、臼歯数、n-FTU、nifFTU、total-FTU との関連を分析したところ、すべて
の年齢階級において、咀嚼能力の自己評価の「良好」
3)咀嚼能力の自己評価と山本式咀嚼能力テスト
との関連
群は、「普通」群および「不良」群と比較してすべて
の指標が高い数値を示していました。またすべての
質問票の結果と山本式咀嚼能力テストの結果を比
指標において、咀嚼能力が「良好」→「普通」→「不
較したところ、咀嚼能力の自己評価が「良好」群お
良」となるのにしたがい、値が減少する傾向が認め
よび「普通」群は、
「不良」群と比較して、有意に高
られました(図 3、図 4)。
い割合でほとんどの食品を「咀嚼可能」と回答して
100
8020 No.10 2011-1
◆ 8020 推進財団 指定研究事業報告◆
は n-FTU が 2.6、nif-FTU が 3.0
で、一部の食品、特に硬い食品は
40-49
現在歯数
咀嚼できないことがわかりました。
50-59
60-69
歯を維持すること、また歯が喪
70-75
良好
普通
不良
40-49
臼歯数
50-59
60-69
失した場合には補綴処置をして咀
嚼能力を維持していくことは大切
です。この咀嚼能力の状況を簡便
70-75
0
5
10
15
20
25
30 本
に評価するために、「自分の歯また
は入れ歯で、左右の奥歯をかみし
図 3 咀嚼能力の自己評価と現在歯数、臼歯数との関連
めることができますか ?」という質
問項目は、臼歯の咬合状況を示す
40-49
n-FUT
良好
普通
不良
50-59
60-69
70-75
nif-FUT
関連が認められ、妥当性があると
考えられました。多くの住民を対
40-49
象とした疫学調査を行う場合には、
50-59
すべての対象者の歯科健診を実施
60-69
することは不可能です。歯科医師
70-75
が口腔内診査を実施できない状況
40-49
total-FUT
FTU や実際の食品の咀嚼状況との
において、本研究で使用した質問
50-59
60-69
票による咀嚼能力のスクリーニン
70-75
グ法は簡便で有用であると考えら
0
2
4
6
8
10
12
れました。
図 4 咀嚼能力の自己評価と n-FTU、nif-FTU、total-FTU との関連
4.結 果
本研究の結果、質問票による咀嚼能力の自己評
価と、山本式咀嚼能力テストや現在歯数、臼歯数、
FTU との間に関連があることが確認されました。特
に、咀嚼能力が「良好」と自己評価した群は、
「普通」
群および「不良」群と比較して、すべての指標が高
い数値を示していました。
これまでの研究で、n-FTU が 7.6、nif-FTU が 8.6
参考文献
1)
Hildebrandt, .GH., Loesche, W.J., Lin, C.F. et al.:
Comparison of the number and type of dental
functional units in geriatric populations with diverse
medical backgrounds. J. Prosthet. Dent., 73:253-261,
1995.
2) Walls, A.W., Steele, J.G., Sheiham, A. et al.: Oral health
and nutrition in older people. J. Public Health Dent.,
60: 304-307, 2000.
3)
Sheiham, A., Steele, J.G., Marcenes, W. et al.: The
relationship among dental status, nutrient intake, and
以上であると、山本式咀嚼能力テストの 15 食品をほ
nutritional status in older people. J. Dent. Res., 80:
とんど咀嚼することができるが、n-FTU が 4.0、nif-
408-413, 2001.
FTU が 4.7 以下であると、咀嚼できない食品がある
ことが報告されています 5)。本研究においても、咀嚼
能力が「良好」と自己評価した群では n-FTU が 7.2、
4) Yanagisawa, T., Ueno, M., Shinada, K. et al.: Validity
of Self-reported Masticatory Function in a Japanese
Population. J. Dent. Hlth.,: 60: 214-223, 2010.
5)
Ueno, M., Yanagisawa, T., Shinada, K. et al.:
nif-FTU が 8.1 であり、ほとんどすべての食品を咀
Masticatory ability and functional tooth units in
嚼できると回答していましたが、
「不良」とした群で
Japanese adults. J. Oral Rehabil., 35: 337-344, 2008.
8020 No.10 2011-1
101
◆ 8020 推進財団 指定研究事業報告◆
3
8020 推進財団指定研究事業報告
指定研究事業報告
入院患者に対する包括的口腔管理
システムの構築に関する研究
東京医科歯科大学歯学部口腔保健学科 寺岡 加代
入院患者さんへの口腔ケアが病棟の日常業務として定着するためには、その効果をアピールするた
めの検証をさらに積み重ねることが必要です。そこで、脳卒中患者さんを対象に、歯科とリハビリテー
ション科合同で行った摂食嚥下回診ならびに歯科衛生士による口腔ケアの効果についての調査を行い
ました。その結果、実施以前と比較して、入院中の肺炎の発生率の低下ならびに在院日数の減少が認
められました。
開始されたことです。さらに口腔ケアが認知される
1.はじめに
ためには、今後も介入効果に関するエビデンスの集
積が必要であると考えます。
8020 を達成するためには、生涯にわたり切れ目
そこで本稿では、都内総合病院において実施され
のない口腔管理体制を整備する必要があると考えま
た脳卒中患者さんに対する歯科とリハビリテーショ
す。そこで、いかなる環境のもとでも口腔ケアサー
ン科合同の摂食嚥下回診ならびに歯科衛生士による
ビスが享受できるシステムづくりを目標に、本研究
口腔ケアの効果について調査しましたので、その結
はスタートしました。
果を報告します。
歯科専門職のマンパワーの不足する環境の一つに
「病棟」があります。入院するまでは、良好な口腔状
2.方 法
態を維持していたにもかかわらず、病棟での口腔ケ
アが疎かであったため、口腔内環境が一挙に劣悪に
1)対象者
なった事例を筆者も多々経験しています。このよう
摂食嚥下回診ならびに歯科衛生士による口腔ケア
な事態を避けるために、研究班では病棟での口腔ケ
が実施される以前(2007 年 4 月〜 2008 年 3 月)
アを普及・標準化する作業から始まり、最終年は地
の患者さんを対照群、以降(2008 年 4 月〜 2009
域連携の事例紹介と連携モデルについて提案しまし
年 3 月)の患者さんを介入群としました。対照群は
た。この 4 年間で、口腔ケアに対する医科の評価は
89 名、介入群は 97 名です。
大いに高まりました。その一例として特筆すべきは、
日本歯科医師会と国立がんセンターとの連携事業が
看護師の日常業務としての口腔ケアをベースライ
PROFILE
てらおか・かよ
東京医科歯科大学歯学部口腔保健学科教授。1978 年大
阪大学大学院歯学研究科博士課程修了、85 年ノースカロ
ライナ大学(アメリカ)留学、2000 年東京医科歯科大
学大学院・医歯学総合研究科医療経済学分野講師、04 年
より現職。研究テーマ : 高齢者の歯科保健、ヘルスプロモー
ション。著書 : 老人保健活動の展開(医学書院)、オーラル
ヘルスプロモーション(口腔保健協会)、高齢者の保健と
医療(早稲田大学出版部)
102
2)介入プログラム
8020 No.10 2011-1
ンとし、以下の介入プログラムを追加しました。な
お介入は、経口摂取が可能となった時点で終了しま
した。
①歯科医師、リハビリテーション医師:週 1 回の
合同回診により口腔状態や嚥下機能を評価しま
した。
◆ 8020 推進財団 指定研究事業報告◆
表 1 肺炎発症のリスク因子
B
標準誤差
Wald
自由度
有意確率
Exp (B)
性 別
0.185
0.614
0.091
1
0.763
1.203
年 齢
0.054
0.025
4.534
1
0.033
1.056
病 名
0.050
0.256
0.038
1
0.846
1.051
病 巣
− 0.017
0.493
0.001
1
0.972
0.983
GCS
− 0.205
0.081
6.353
1
0.012
0.815
定 数
− 3.232
2.234
2.092
1
0.148
0.039
②歯科衛生士:合同回診での評価にもとづき、入
45
院時より経口摂取不能な患者に対し口腔清掃を
ました。
3)調査項目
診療録より、患者属性、経口摂取の可否、入院中
35
肺
炎
発
症
数
30
25
15
10
5
外による発熱および発熱期間、抗生剤の点滴投与日
0
いて調査しました。
肺炎の診断基準は日本呼吸器学会の成人院内肺
ケア介入群
20
の肺炎の発症の有無、肺炎による発熱期間、肺炎以
数、経口摂取可能になった時期、平均在院日数につ
非介入群
40
含む摂食機能訓練を 1 日 30 分、週 5 日施行し
1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31
脳卒中発症後日数
図 1 肺炎発症数の累積曲線の比較
炎診療ガイドライン 2002 の診断基準である「胸
部レントゲンで異常陰影の出現(増悪)に加えて、
あり、介入群では 97 名中 64 名(66.0%)で、介
① 38℃以上の発熱、②白血球数異常(増加または
入群で有意に増加しました(p<0.05、χ 2 検定)。
低下)、③膿性分泌物のうち 2 項目を満たす症例」
平均在院日数についても、53.3 日から 43.4 日とな
に準じました。
り介入群で有意に減少しました(p<0.05、T 検定)。
3.結 果
4.考 察
患者さんの属性のうち、肺炎発症のリスク因子と
当該病院 ICU では、以下の 3 つの基準を満たす患
なる項目を分析した結果、年齢と意識レベル(GCS)
者に対して、看護師による口腔清掃が行われます。
であることが示されました(表 1)
。そこで、対照群
①気管内挿管がある
と介入群で年齢、意識レベル(GCS)について比較
②セルフケアができない
した結果、両群で有意差は認められませんでした。
③経口摂取ができない
入院中の肺炎の発症率は、対照群では 89 名中 40
そこへ 2008 年度より、看護師による口腔清掃に
名 で 44.9%、 介 入 群 で は 97 名 中 24 名 で 23.3%
加えて、摂食嚥下回診および歯科衛生士による口腔
であり、介入群で有意に減少しました(p<0.004、
ケアが実施されました。肺炎発症のリスク因子であ
2
(図 1)
。
χ 検定)
る年齢と意識レベルを介入群と非介入群で比較した
脳卒中発症後 14 日以内に経口摂取可能になった
結果、有意差は認められませんでした。したがって、
患者数は、対照群では 89 名中 44 名(49.4%)で
介入群における肺炎の減少は、嚥下回診での評価に
8020 No.10 2011-1
103
◆ 8020 推進財団 指定研究事業報告◆
従来の会計方式
薬(投薬・注射料)
DPC 会計方式
薬(投薬・注射料)
検 査 料
検 査 料
出
来
高
評
価
レントゲン料
入院基本料
レントゲン料
包
括
評
価
入院基本料
リハビリ料
リハビリ料
手 術 料
手 術 料
出
来
高
評
価
図 2 DPC(Diagnosis Procedure Combination)
入院患者の病名や症状をもとに手術などの診療行為の有無に応じて、厚生労働省が定めた 1 日当たりの
診断群分類点数をもとに医療費を計算する定額払いの会計方式。
基づく歯科衛生士による口腔ケアの効果であると考
善から機能の回復にまでおよぶことを考えますと、
えられます。
多職種の関与は必然的です。さらに今後、看護師、
肺炎の発症率以外に、口腔ケア介入前と後で統計
的に有意な差が認められた項目は、在院日数でした。
言語聴覚士、栄養士さん等も加わった口腔ケアの展
開が期待されます。
また脳卒中発症後 14 日以内に経口摂取可能になっ
一方、地域(施設・在宅)に戻ってからの食支援
た患者さんの数は、対照群では約 5 割であるのに対
の中心的役割は歯科医師・歯科衛生士に担うことに
し、介入群では 7 割近くになりました。在院日数の
なります。病棟との大きな違いは、ケアの担い手と
減少は医療経済的効果を生むとともに、DPC を導入
して介護職や家族が加わることです。したがって、
している病院にとっては経営的メリットをもたらし
歯科医師・歯科衛生士の目線も、対象者を病や障害
ます(図 2)
。また経口摂取の開始時期が早まること
を抱えた“患者さん”から地域(家庭)での“生活
は、栄養の改善から体力の回復、さらには早期離床
者”と捉え、医療提供から自立支援への切り換えが
につながり、患者さんの QOL 向上にも貢献すると考
必要となります。
えられます。
参考文献
5.おわりに
病棟での口腔ケアは、単一職種に委ねるのではな
く、チームで取り組む時代に入ったと思われます。
当該病院の注目すべき点も、口腔衛生と嚥下機能の
回復に焦点をあて、歯科口腔外科とリハビリテーショ
ン科のスタッフが合同で回診を始めたところにある
と考えます。口腔ケアの効果が口腔の衛生状態の改
104
8020 No.10 2011-1
1)M o r i , H . , H i r a s a w a , H . , O d a , S . , S h i g a , H . ,
Matsuda,K.,Nakamura, M.:Oral Care Reduces
Incidence of Ventilator-Associated Pneumonia in
ICU Populations.Intensive Care Med., 32:230-236,
2006.
2) 山 口 敏 行, 前 崎 繁 文: 人 工 呼 吸 器 関 連 の 肺 炎 防 止,
EBnursing,5(3):64-68,2005.
3)Longhorne, P. et al.:Medical complication after stroke:
a multicenter study.Stroke,6(31):1223-1229,
2000.
◆ 8020 推進財団 指定研究事業報告◆
4
8020 推進財団指定研究事業報告
指定研究事業報告
唾液検査標準化に関する研究
鶴見大学歯学部探索歯学講座 花田 信弘*
(執筆代表者)
鶴見大学歯学部探索歯学講座 野村 義明
日本歯科大学 東京短期大学 佐藤 勉
わが国では CPI と問診アンケートをスクリーニングの指数として用いています。しかし、効果的な
歯周病のスクリーニングでは疾病発見の手法 (CPI, 問診アンケート ) ではなくリスク発見の手法 ( 唾液
検査 ) が必要です。唾液検査の精度を保つためには唾液採取から検査実施までのプロセスの迅速化を図
ることが求められます。
1.はじめに
2.CPI の意義と問題点
地域住民の長寿を維持しながら医療費を抑制する
これまでの歯周病検診で用いられてきた地域歯周
方法は、住民自身が健康づくりに励み元気に暮らす
疾患指数
(CPI、
Community Periodontal Index)
は、
ことです。これまでは、健康に暮らす期間を延伸す
歯周病(歯周疾患)に関する地域監視、すなわちサー
るために健康日本 21 が示すように集団アプローチ
ベイランスの手法です。
による生活習慣の改善を中心に健康づくりが図られ
てきました。この方式は一定の効果を上げてきまし
たが、同時に高リスクアプローチの理論に基づき早
期に医療介入をすることも重要です。
二次予防は疾病の早期発見、早期治療と、リスク
の早期発見、早期治療に分けられます。これまで二
次予防といえば疾病発見と疾病治療だけでした。地
域住民の長寿を維持しながら医療費を抑制するため
にはリスク発見とリスクに対する治療のシステムが
必要です。
歯科にとって唾液検査はリスクの早期発見、早期
治療に不可欠のツールです。唾液検査を口腔保健と
歯科医療に導入することによって初めて病態・病因
の発生や進行のメカニズムにあわせて、予見的に医
療介入することが可能になります。
歯周病検診の普及とともにわが国では CPI をスク
リーニングの指数として用いるようになりました。
表 1 に CPI と唾液検査の比較を示します。
表 1 CPI と唾液の生化学検査の比較
現状の歯周疾患検診
唾液検査
方 法
CPI
唾液の生化学分析 *
手 順
歯科医のプロービング
咀嚼刺激唾液の採取
分 類
二次予防(疾病発見)
二次予防(リスク発見)
目 的
疾病判定
リスク判定
見ているもの 疾病の有無・重症度
リスクの有無
侵襲性
あり;出血・疼痛・感染 なし
担当者
歯科専門家のみ
制限なし
効率性
悪い(対象人数制限)
良い(対象人数制限なし)
* 唾液中の遊離ヘモグロビンおよび乳酸脱水酵素(LD)濃度
CPI は プ ロ ー ビ ン グ に よ る 疾 病 発 見(Case
Finding) の 手 法 で す か ら リ ス ク 発 見(Risk
Finding)の目的で行うスクリーニングには CPI 以
PROFILE
* はなだ・のぶひろ
鶴見大学歯学部探索歯学講座教授、歯学博士、歯科医師。
九州歯科大学卒業後、ノースウェスタン大学微生物・免疫
学研究室に留学。1990 年岩手医科大学助教授、93 年国
立予防衛生研究所 ( 現国立感染症研究所 ) 口腔科学部長、
02 年国立保健医療科学院口腔保健部長などを経て、08
年から現職。1953 年 6 月生まれ、福岡県出身。研究テー
マ : ミュータンスレンサ球菌の分子生物学
外の方法を選択しなければなりません。
CPI のもう 1 つの問題点は対象者が制限されるこ
とです。CPI は集団から抽出された少人数を対象と
するサーベイランスの指数であるために診査者と対
象者が 1 対 1 で診査を行う方式をとっています。こ
れでは大きな集団全体のスクリーニングは困難です。
診査者と対象者が 1 対 1 で向き合い疾病発見を行
8020 No.10 2011-1
105
◆ 8020 推進財団 指定研究事業報告◆
う方式は学校歯科検診でも同様です。この方式はサー
4.唾液検査と問診アンケートの違い
ベイランスの手法ですから今後改善が求められるで
しょう。
コスト面を考慮した廉価な簡便法として歯周病検
3.サーベイランスとスクリーニングの違い
診に問診アンケートが採用されることがあります。
しかし、問診アンケートは自覚症状を識別する手法
1)サーベイランスの定義
ですから、スクリーニングの目的である「無自覚の
サーベイランス(surveillance)は、「疾病の発生
疾病異常または欠陥」を暫定的に識別することはで
状況やその推移などを継続的に監視すること」(米国
きません。
疾病予防管理センター:CDC)とされています。そ
高リスク者を早期発見して、リスクに対する治療
のため母集団から定められた方法で少数のサンプリ
を実施する予防歯科の実現には唾液検査を導入した
ングを行い、限定された対象者に対して十分な訓練
発症前の治療的介入方法の確立が必須です。
を受けた少数の診査者が調査を実施します。歯科分
5.唾液検査の標準化
野では歯科疾患実態調査で CPI を用いることがサー
ベイランスです。
歯周病の唾液検査にはさまざまな方法があるため
2)スクリーニングの定義
その標準化は容易ではありませんが、実際に歯科診
スクリーニングは無自覚の疾病異常または欠陥を
療所や行政が検査委託することのできる施設は限定
暫定的に識別することです。したがって母集団全体
されており、その試薬の販売元も限られています。
からの識別を行います。通常は対象集団全体を調査
歯周病の唾液検査では、ヘモグロビンと乳酸脱水素
するために簡便なバイオマーカーを指標とする生化
酵素(LD、または LDH)の濃度の測定を行っていま
学検査の手法がとられます。
すが、唾液検査に用いる試薬は体外検査薬として厚
スクリーニングはコスト面を考慮した廉価な簡便
生労働省の承認を受けることが原則です。この条件
法なので、スクリーニング検査だけでは発症前診断
をクリアしているのは、栄研とアルフレッサの 2 社
を確定できません。バイオマーカーで高リスク群を
であり、検査会社はどちらかの会社の試薬を使用す
絞った上で高感度な精密検査を実施し、正確な発症
るためそれぞれの試薬間の相違について検定を行う
前診断を行います。
必要があります。
歯周病は歯面に付着したバイオ
フィルムの病原性により歯周組織
LD(LDH)濃度による比較
500U
1.4
37H2O
25H2O
4H2O
1.2
1
0.8
37H2O
25H2O
4H2O
1
0.8
0.4
0.4
0.2
0.2
0day
1day
2day
3day
0
0day
1day
2day
37H2O
25H2O
4H2O
1
0.8
0.6
0.5
0.6
0.4
液は本来ヘモグロビンを含まない
ます。遊離ヘモグロビンが血管の
炎症と破壊を表しているのに対し、
乳酸脱水素酵素 LD は細胞の炎症
37H2O
25H2O
4H2O
0.7
0.8
と破壊を反映するバイオマーカー
にかっています。
6.唾液の安定性研究
0.3
0.4
0.2
0.2
わが国における唾液検査の問題
0.1
0day
1day
2day
3day
0
0day
1day
2day
図 1 検体中の乳酸脱水素酵素(LD)の濃度による安定性の違い。
縦軸の単位は U/ml
106
3day
0.9
1.2
が検出されるようになります。唾
歯周組織の炎症状態を反映してい
0.5U
1.4
果混合唾液中に遊離ヘモグロビン
ので、唾液ヘモグロビンの多寡は
5U
0
し、重症化する疾患です。その結
1.2
0.6
0.6
0
の血管が炎症を引き起こして破綻
50U
8020 No.10 2011-1
3day
点は、全国的な普及を図るために
北海道から沖縄までのすべての歯
科医院で使用できる環境を整える
◆ 8020 推進財団 指定研究事業報告◆
H2O
37℃
8
7
6
5
4
3
2
1
0
8
7
6
5
4
3
2
1
0
室温
(25℃)
1/10
1/100
1/1000
1/10000
1/100000
4℃
1/10
1/100
1/1000
1/10000
1/100000
7
6
5
4
8
6
3
4
2
2
1
1day
2day
0
3day
1/10
1/100
1/1000
1/10000
1/100000
1day
2day
3day
1/10
1/100
1/1000
1/10000
1/100000
10
1day
2day
0
3day
1day
2day
3day
8
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
1/10
1/100
1/1000
1/10000
1/100000
1/10
1/100
1/1000
1/10000
1/100000
7
6
5
4
3
2
1
1day
2day
0
3day
1day
2day
3day
図 2 乳酸脱水素酵素(LD)の濃度と温度による安定性の違い。縦軸の単位はU/ml
9.00
LD(LDH)保存温度による比較
6
5
in
a
tin
N
ro
-2
Ap
ED
TA
SC
on
oc
id
Pe
fa
bl
tin
ta
os
ph
or
am
tin
ps
tin
ep
Pe
up
Le
E-
ta
3day
C
2day
in
tro
1day
tip
0
on
3day
An
2day
C
1day
64
0.00
in
1
os
1
1.00
at
2
l
2
0
2.00
3
3
4.00
3.00
4
4
5.00
m
5
6.00
37H2O
25H2O
4H2O
hy
6
7
e-
37H2O
25H2O
4H2O
7
Saliva
8
st
8
唾液
7.00
Be
H2 O
9
H2O
8.00
図 4 各種タンパク質阻害剤の効果。縦軸の単位は U/ml
必要があります。そのために、検体の乳酸脱水素酵
パク質阻害剤を見つけることはできませんでした。
素について安定性について調べることを目的として
研究を行いました。
市販の乳酸脱水素酵素を水または唾液中に溶解し、
Ph
図 3 乳酸脱水素酵素(LD)の溶媒(水と唾液)による
安定性の違い。縦軸の単位は U/ml
7.おわりに
段階希釈を行いました。異なる温度で 3 日間放置し
異なる温度で 3 日間放置して酵素反応の変化を観
て酵素反応の変化を観察したのが図 1 〜図 3 です。
察しましたが、いずれも 3 日後には酵素活性が低下
検体中の乳酸脱水素酵素(LD)の濃度による安定
しました。唾液中のタンパク質分解酵素が乳酸脱水
性の違い(図 1)
、乳酸脱水素酵素(LD)の濃度と
素酵素(LD)の酵素活性を失活させないように各種
温度による安定性の違い(図 2)、乳酸脱水素酵素
タンパク質阻害剤を添加しましたが、効果的なタン
(LD)の溶媒(水と唾液)による安定性の違い(図 3)
パク質阻害剤を見つけることはできませんでした。
を調べましたが、いずれも 3 日後には酵素活性が低
このことから、検体を迅速に検査施設に輸送するか、
下しました。
全国の検査所に分散して検査委託を行うことが必要
唾液中のタンパク質分解酵素が乳酸脱水素酵素
であることがわかりました。唾液採取から検査実施
(LD)の酵素活性を失活させないように各種タンパ
までのプロセスの迅速化を図ることが唾液検査の精
ク質阻害剤を添加しました。その結果を図 4 に示し
度を保つための重要課題だと考えられます。
ます。しかし、LD の失活を防ぐために効果的なタン
8020 No.10 2011-1
107
地域における歯科保健活動
地域における歯科保健活動
1
禁煙支援歯科医療従事者
指導講習会
北海道歯科医師会
社団法人北海道歯科医師会 理事 魚津修司
バランス良い食事と適度な運動が健康づくりの基本であることは、長寿の国日本では世の常識にも
なりつつありますが、国の健康づくり指針を見ますと、この 2 つに加えてタバコという言葉があります。
歯科には、歯周病を予防し改善させ全身の健康を維持させるという使命がありますので、北海道歯科
医師会として今年度はまず 2 日間の講義と実習を経て、禁煙支援と歯周病のメインテナンスをしなが
ら患者リコール率を高めましょう、という姿勢を会員へ打ち出しました。
1.第 1 日目の講義とオープンカウ
ンセリングおよび実習
大阪府立健康科学センター健康生活推進部長の
中村正和先生に「喫煙者にやさしい気持ちで接する
禁煙治療の秘訣」と題した講義と、実演およびロー
ルプレイの指導をしていただきました。講義では、
タバコの害に関する最新の知見(図 1、図 2)
、診療
場面でできる短時間の禁煙支援の方法(図 3)、保険
による禁煙治療(今のところ医科のみですが)の内
容と効果、禁煙後の体重増加とその予防についてお
非喫煙者
喫煙者
1.00
(基準)
喫煙者
1.10
(0.79-1.53)
0.1-20.0
1.22
(0.89-1.67)
20.1-30.0
1.57
(1.16-2.11)
30.1-40.0
1.55
(1.06-2.26)
40.0以上
1.73
(1.15-2.60)
0.0
0.2
0.4
短時間でできる禁煙支援
Ask 喫煙状況の把握
0.6 0.8 1.0 1.2
相対危険度
(多変量補正)
1.4
1.6
1.8
Uchimoto et al. Diabet Med, 1999;16
(11)
: 951-955, 1999
相
対
危 2.0
険
度
1.0
0.0
脳梗塞
3.0**
* **
:p<0.05
:p<0.001
2.5**
1.9*
1.0
1.0
MS (−)(+)(−)(+)
非喫煙者
喫煙者
1.0
1.4
1.0
MS (−)(+)(−)(+)
非喫煙者
喫煙者
※日本人男女9,087例
(6地域)
を対象とした18年間の追跡調査成績
多変量解析
(性、
年齢、
地域、
SBP、
BMI、
TC、
飲酒、
糖尿病を補正)
Iso H, et al. Stroke 38: 2007
(in press)
☆メタボリック・シンドロームの定義はNCEP/ATPⅢによる
図 2 メタボリックシンドローム(MS)と動脈硬化-喫煙の影響
108
8020 No.10 2011-1
簡易なアドバイス
禁煙実行の支援
虚血性心疾患
3.0
Brief advice
Cessation support
図 1 糖尿病の発症と喫煙習慣
4.0
話しいただきました。
その後、2 人の喫煙者(1 人は禁煙することに関心
はあるが、今から 6 か月以内に禁煙するつもりは特
になく、もう 1 人は全く禁煙するつもりがない)を
相手に、事前に記入してもらった喫煙評価質問表(図
4)を基にしてそれぞれ短時間の禁煙支援を実演し
ていただきました。中村先生は話術巧みに相手を引
きつけ、聴いている方も思わずうなずいてしまう魅
力的なカウンセリングを行っていらっしゃいました。
次に、参加者が 2 人ずつペアとなって、1 人が喫煙者、
1 人が指導者になりきるロールプレイを実習しまし
た。自分が実際に指導者になってみると、決まりきっ
た言葉しか出てこず、頭で考えるよりもはるかにむ
ずかしいという感想もありました。
禁煙に関する情報提供
Brief advice(簡易なアドバイス)
1.禁煙の重要性を伝える
※禁煙すべきであることを
「はっきり」
と伝える
※禁煙が「重要かつ優先順位が高い健康課題である」
ことを強調する
※喫煙の健康影響、禁煙の効果について「個別的に」情報提供する
2.楽に禁煙できる有効な方法があることを伝える
※喫煙習慣の本質はニコチン依存症という
「脳の病気」
※自力で禁煙するよりも禁煙の薬剤を使ったり、専門家による支援や治
療を受けた方が禁煙できる可能性が2∼3倍程度高まる
図 3 診療場面でできる短時間の禁煙支援の方法
地域における歯科保健活動
(mm)
(kaldahi 1996)
1.5
喫煙評価質問表(本人記入用)
ア
タ
ッ 1.0
チ
メ
ン
ト 0.5
レ
ベ
ル
お願い 以下の質問にお答えください。
氏名 回答日 年 月 日
Q1. タバコを吸いますか?
□吸う(沿い始め 歳)
□やめた( 年前/ ヵ月前)
□吸わない
○以下の質問は、Q1. で「吸う」と答えた方のみお答えください。
0
Q2. 1 日に平均して何本くらいタバコを吸いますか?( 本)
治
療
前
Q3. 朝目覚めてからどのくらいたって 1 本目のタバコを吸いますか?
□5 分以内 □6∼30 分 □31∼60 分 □61 分以上
Q4. あなたは禁煙することにどのくらい関心がありますか?
□関心がない
□関心があるが、今後 6 ヵ月以内に禁煙しようとは考えていない
□今後 6 ヵ月以内に禁煙しようと考えているが、この 1 ヵ月以内に
禁煙する考えはない
□この 1 ヵ月以内に禁煙しようと考えている
Q5. 今までタバコをやめたことがありますか?
□ある( 回、最長 年間/ ヵ月間)
□なし
Q6. もし 2 週間以内に完全に禁煙すると決心したとして、どのくらい
禁煙に成功する自信がありますか?
□ほとんどない □少しだけある □かなりある
個人番号
図 4 禁煙評価質問表
2.第 2 日目の講義
北海道大学大学院歯学研究科准教授の菅谷勉先生
に「禁煙で高まる歯周病とインプラントの治療成績」
と題して講演していただきました。喫煙者と禁煙者
の歯周病治療の反応性と予後について興味あるデー
タと写真を示していただき、臨床に即応用できる内
容でした(図 5、図 6)
。特に、歯肉の色と歯周治療
の予後との関連について、熟練者ならではの見解を
示されました。喫煙が歯周組織に害があることにつ
いて、また歯周病が生活習慣病であることについて
の世間の認知度は、残念ながらほとんどないに等し
いとのことでした。
続いて、大阪市で開業し、NPO 法人関西ウェルビー
イングクラブ監事である文元基宝先生に「歯科診療
所の禁煙支援アプローチ」と題して講演していただ
きました。3 か月ごとの定期健診の患者さんが月の
件数の 6 〜 7 割を占めるという高リコール率を誇る
医院では、患者さんに日常生活全般における自信度
を自己採点してもらう(図 7)
、などの独創的な方法
を取り入れながら禁煙支援を実施しているそうです。
3.考 察
これからの歯科医療従事者に求められるものは何
といっても保健指導力でしょう。とりわけ歯周病に
関しては、プラークコントロールや禁煙といった患
者さん自身の努力で、歯の寿命が大きく伸び全身の
健康を維持できることを親身になって指導し続ける
ことは、地域の確実な支持を得ることでしょう。国
の健康づくりの指針が「食生活・運動・タバコの害
についての生活習慣の改善」となっていることから
もわかるとおり、患者さんを全人的に診ながら医療
に携わる者は常にこれらのことを念頭に置かなけれ
ばなりません。歯科医療も、ただ歯を作ればよい時
代はとうに過ぎ去り、歯と口を通していかに全身の
健康を維持・向上させるか、ということがすでに課
題となってきています。
今や、タバコを止めましょう、と明るく言って、
Non smoker
Past smoker
light smoker
Heavy smoker
基
本
治
療
後
歯
周
外
科
後
1 2 3 4 5 6 7
サポーティブセラピー
(年)
図 5 喫煙が歯周治療に及ぼす影響
1.喫煙者は歯周病、インプラントの治療成績が悪い
2.禁煙は治療成績を向上させる
3.とくに歯肉色の悪い患者は歯周病の重症度に関わらず禁煙した方
が良い
4.禁煙はメンテナンス期になっても勧める
図 6 まとめ
次にあげる行動について、あなたは実行できる自信はありますか。全然自信
がないを0点、絶対自信があるを10点とし、以下の尺度で、あなたは実行できる
自信が何点くらいありますか?
1
海外へ旅行したとき、生水を飲まない
0点
2
4点
6点
8点
10 点
6点
8点
10 点
6点
8点
10 点
6点
8点
10 点
食事の前には必ず手を洗う
0点
3
2点
2点
4点
毎冬、インフルエンザの予防接種を受ける
0点
2点
4点
□ 年1回定期的に健診を受ける
0点
5
4点
1週間に最低2回以上、20分以上の運動やウォーキングをする
0点
6
2点
2点
4点
6点
8点
10 点
飲酒は週3回以内とし、飲む際には飲みすぎないよう酒量をコントロールできる
0点
2点
4点
6点
8点
10 点
4点
6点
8点
10 点
4点
6点
8点
10 点
6点
8点
10 点
□ たばこを吸わない
0点
2点
□ 毎日必ず朝食を食べる
0点
2点
□ 間食をしない、または控える
0点
2点
4点
□ 毎日、歯と歯の間をフロス、糸ようじ、歯間ブラシなどで清掃する
0点
2点
4点
6点
8点
10 点
図 7 日常生活全般における自信度の自己採点表 患者さんが気を悪くする時代ではないでしょう。近
年、心の底では禁煙のきっかけを求めている喫煙者
も多く、「お医者さんといっしょに禁煙しよう」が、
もうひとつ進んで「歯医者さんといっしょに禁煙し
よう」という時代がそこまで来ていることと思われ
ます。どうしてもという場合は医科の禁煙外来へ紹
介しながら、定期的な歯面清掃や歯石除去の機会に
支援を続けていくということは、禁煙と歯周治療に
よって口腔と全身の健康を応援する歯科にしかでき
ない方法です。
「禁煙支援」とは、ただ禁煙支援だけのことではな
いと思われます。効果的な保健指導力を身につけ、
常により良い生活習慣の実践へと導いてくれる歯科
医院は、必ずや、歯・口を通して全身の健康を志向
するリコール患者さんを増やすことでしょう。 8020 No.10 2011-1
109
地域における歯科保健活動
地域における歯科保健活動
2
高齢者における口腔機能向上を目指した
セルフケアプログラムの開発および評価
埼玉県歯科医師会
社団法人埼玉県歯科医師会 地域保健部員 河村康二
地域保健部長 深井穫博
埼玉県歯科医師会は、早稲田大学応用健康科学研究室と共同で高齢者が口腔機能の向上を自宅で継
続して実践できることを目指し、事前調査から、高齢者が口腔機能を向上させる行動実施を妨げてい
る要因、促進させている要因を収集して、行動変容理論・モデルの内容を盛り込んだ口腔機能セルフ
ケア行動を促進するための自助冊子を作成しました。
1.はじめに
あると考えられます。それらの参加した高齢者が日
従来までの高齢者への口腔機能向上を目的とした
て自宅で口腔機能の向上を自ら行うことが重要です
アプローチは、主に指示型、知識伝達型が中心で、
が、多くは集団の場を離れてしまうと継続すること
高齢者が行動変容して日常生活の場で実践するには
が難しくなります。
限界があるように思われます。
常的に行う居宅でのセルフケアプログラムを策定し
そこで、日常の場で維持、継続できる実行可能な
そこで埼玉県歯科医師会は、高齢者が口腔機能の
行動に繋がるような自助冊子を開発し、具体的な内
向上を自宅等で継続実践できることを目指し、所沢
容を提示していけるよう考慮しました。同時に集団
市にある早稲田大学応用健康科学研究室と共同で、
の場での口腔機能の向上の事業にも活用できるよう
高齢者を対象とした口腔機能セルフケア行動を促進
に配慮しました。
するための自助冊子の開発を行い、日々の健康行動
に寄与できるよう企画しました。
2.本事業の概要
本事業では、行動科学を専門とする早稲田大学応
用健康科学研究室と共同で高齢者に事前調査を行い
(半構造化面接とフォーカスグループインタビューを
3.自助冊子の構成
自助冊子は「お口の健康作り」の本編と付録「お
口の健康行動を記録する 生活習慣の記録票」から構
成されています。具体的な構成は下記の通りです。
1)本編
● 1 部 実践編:
用いたフォーマティブ・リサーチを、埼玉県内の概
対象者の口の問題を明らかにし、日常生活において、
ね 65 歳以上、約 171 名を対象に実施)、口腔機能
どのようなことに気をつけていったらよいかを考え
を向上させる行動の実践を妨げている要因、および
ていきます。そして、具体的に実行できる計画を立
促進させている要因を収集しました。これらの情報
てます。
を基に行動変容理論・モデルの内容を盛り込んだ自
1 章 あなたに今、必要なことは何 ?
助冊子を作成し、どのような場面、状況の中で適用
2 章 行動計画をたてましょう
可能であるかを考察しました。
● 2 部 解説編:
市町村において介護予防の口腔機能向上サービス
口の健康を守るために必要な内容を詳しく述べてい
を一次予防(一般高齢者)、二次予防(特定高齢者)
きます。1 部実践編とあわせて活用します。高齢者
を対象に地域支援事業として行った場合、あるいは
および関係者が共に活用できるように配慮して作成
通所介護・通所リハビリテーション施設において予
しました。
防給付要支援Ⅰ・Ⅱの方を対象に実施した場合など、
3 章 お口の中をきれいにする
集団での実施に参加する高齢者は一般的に積極的で
4 章 お口の働き(飲んだり、食べたりするため
110
8020 No.10 2011-1
地域における歯科保健活動
の機能)を高める
5 章 定期検診のススメ
2)付録
「お口の健康行動を記録する 生活習慣の記録
票」
高齢者と関係者が情報をやりとりするための
ツールです。
4.自助冊子を用いた
ケアプランの作成
本冊子は、高齢者と関係者との関わりが単に
指示型、知識伝達型にとどまらず、高齢者の
行動変容が起こるように意図しています。特に
対象者の行動変容を導きやすくするために、行
図 1 Step1「現状把握」
図 2 Step2「本人意欲」
図 3 Step5 目標設定
図 4 Step6「 定 期 検 診 の ス
テージ」
動変容ステージや多変数によるセグメント化を
行って情報をグループ別に差別化し、加えてセ
ルフモニタリングシートを挿入して高齢者の方
が自宅での行動実施を促進できるように試みま
した。具体的には、以下のように行います。
指導者と対象者は、1 対 1 あるいは数人で横
に並び、自助冊子「お口の健康作り」を共に見
てわかりにくい所は説明しながら進めていきま
す。
①大項目の決定
Step1「現状把握」
(図 1)、Step2「本
人意欲」
(図 2)、Step3「日常生活で意識
すべきこと」を決めます。
②小項目の決定
大項目を基に step4「あなたが行う課題」
(図
3)について確認し、Step5 で小項目を決定し
ます。
③ケアプランの決定
Step6「定期検診のステージ」
(図 4)につい
て確認し、決定したステージからお口のケアプ
ランを決定します。
5.まとめ
本事業および作成した自助冊子は、高齢者の口腔
機能向上プログラムがより普及していくこと、その
ために高齢者自身の行動変容を支援していくことが
ねらいです。成人期はもとより、高齢期においても
歯科専門職の保健指導が、「指示」から「支援」へと
パラダイムシフトしていくことを期待します。本冊
子を使用したいとお考えの方は、埼玉県歯科医師会
事業課(電話 048-829-2323)まで連絡してくだ
さい。
なお、本事業は財団法人 8020 推進財団 平成 21
年度歯科保健活動助成事業にて行われました。
参考文献・参考図書
1)厚生労働省:口腔機能向上マニュアル,2008.
2)日本顎口腔機能学会:よくわかる顎口腔機能,咀嚼・嚥下・発
音を診査・診断する,医歯薬出版,2005.
3)菊 谷 武, 米 山 武 義, 手 嶋 登 志 子 ほ か: 口 腔 機 能 訓 練 と 食
支 援 が 高 齢 者 の 栄 養 改 善 に 与 え る 効 果, 老 年 歯 学,20:
208-213,2005.
4)米 山武義,菊谷 武,大田仁史:健康な心と身体は口腔から
口腔機能向上と高齢者の低栄養の予防,日本歯科医学会誌,
25:14-20,2006.
5)大岡貴史,拝野俊之,弘中祥司,向井美惠:日常的に行う口腔
機能訓練による高齢者の口腔機能向上への効果,口腔衛生会誌,
58:88-94,2008.
6)大岡貴史,弘中祥司,向井美惠:地域における「お口の健康教
室」の実践と口腔機能向上への効果に関する研究,口腔衛生会
誌,57(4):553,2007.
7)小 関真理子,種市浩志,杉原直樹,眞木吉信:相模原市で実
施す る 口 腔 機 能 向 上 教 室 の 効 果 に つ い て, 口 腔 衛 生 会 誌,
58(4):356,2008.
8)佐々木好幸:口腔ケアに必要なエビデンス,クリニカルプラク
ティス,26(2):140-143,2007.
9)竹中晃二:研究開始にあたって,平成 13 年度日本体育協会ス
ポーツ医・科学研究報告,NO. Ⅱ,中高年の多様なニーズに対
応したスポーツ活動のあり方に関する研究「身体活動・運動ア
ドヒアランス強化に関する心理・行動科学的研究」−第 1 報−,
4-14,2001.
10)竹中晃二:行動変容 健康行動の開始・継続を促すしかけづく
り,財団法人 健康・体力づくり事業財団,2008.
8020 No.10 2011-1
111
地域における歯科保健活動
地域における歯科保健活動
3
心と身体の健康づくりのための
機能型健康評価の活用推進事業
東京都歯科医師会
社団法人東京都歯科医師会 公衆衛生担当理事 髙野直久
東京都歯科医師会成人保健医療常任委員会が中心となり、スクリーニング検査機能を有しかつ階層
化された保健指導の提供が可能な問題指向型歯科健診「おいしく食べるためのお口の健診」を考案し
ました。21 年度事業所歯科健診に本健診を応用したところ、これからの健診として有効であると考え
られましたので紹介させていただきます。
1.はじめに
が少ないばかりでなく、階層化された保健指導を提
供していくことが可能で、受診者の健康問題に主眼
ライフステージにおいて、歯科保健の一番普及し
をおいた歯科健診の開発に着手し、東京都歯科医師
ていないのは、成人の時期であり、とくに職域にお
会では平成 19 年度および 20 年度の歯科保健事業結
いては、法的整備がなされていないこと、予算化の
果を解析し、スクリーニング検査機能を有し、階層
難しさ、歯科疾患は個人の問題という認識があるこ
化された保健指導の提供が可能な問題指向型歯科健
となどが主な理由としてあげられ、ほとんどの事業
診「おいしく食べるためのお口の健診」を考案しま
所において歯科健康診査も行われていない状況です。
した。
もちろん、これらの理由とともに、歯科健康診査
この健診の検査項目および質問項目から口腔保健
(歯科健診)の内容と方法についての問題点も同時に
状況と関連ある項目の抽出を行い、各項目に対して
指摘されています。①歯科健診は一人当たりの診査
重み付けポイントを付与するとともにそのカットオ
に要する時間がかかるため時間的労働損失が生じる
フポイントを設定し、開発した健診のスクリーニン
こと、②マンパワーの確保や配置、一般健康診査(健
グ精度について解析を重ねてきました。
診)との合同での開催が難しいことなども理由に挙
げられています。
さらに、これまで職域で実施されてきた歯科検診
は、
「むし歯」や「歯周病」の発見を目的とした疾病
指向型(Disease Oriented)の診査であり、検診
内容がスクリーニング検査としての機能に欠けてお
り、受診者や事業所のニーズに即していないことも
要因にあげられています。
そこで、平成 20 年度からは労働安全衛生法に基
そこで、21 年度事業として事業所歯科健診に「お
いしく食べるためのお口の健診」を応用し、この健
診法のスクリーニング精度の検証および活用法につ
いて検討しました。
2.
「おいしく食べるためのお口の健診」
この健診は問診、唾液潜血反応試験(潜血試験)、
ガム混合能力検査および口腔診査で構成されている
ものです(図 1)。まず質問票に記入してもらった
づく事業所での健診が、特定健診・特定保健指導に
のち、唾液潜血反応検査とガム混合能力検査を行い、
準じた診査項目となり、必要に応じ階層化された保
次いで口腔診査と保健指導を行うものです。
健指導を提供していくことや、保健指導の基本的な
考え方がプロセス重視から、結果を出す保健指導が
求められるようになった社会の変化もあり、職域で
の歯科検診を歯科健診にすべく検討を行いました。
そして、事業者・就労者にとって時間的労働損失
112
8020 No.10 2011-1
(1)質問項目
質問項目は、「現在のご自分の歯や口の状態に
つ い て 」3 項 目、「 こ の 1 年 間 で、 歯 や 口 が 原
因で困ったことや気になったことがありますか」
地域における歯科保健活動
質 問 票
唾液潜血反応試験
ガム混合能力検査
口 腔 診 査
保健指導
図 1 健診の流れ
図 2 事業所健診会場の様子
5 項目、「歯みがきや間食、健康習慣について」7
項目、
「歯科への通院について」7 項目です。
また、歯科衛生士による食育・保健衛生・生活指
導を充実させる試みも加えて実施しました。
21 年度は都内 4 か所の事業所歯科健診に、開発
(2)唾液潜血反応試験
した歯科健診を応用しました(図 2)。具体的には、
潜血反応試験はペリオスクリーン(サンスター
昨年度と同様に、質問票による口腔保健検査に、2
社製)を通法に従って行い 3 段階(− , ± ,+)で
色ガムによる混合能力検査とペリオスクリーンによ
評価しました。
る唾液潜血反応試験を組み合わせた歯科健診を実施
しました。
(3)ガム混合能力検査
混合能力検査は、赤・青 2 色の粒ガム(ロッ
なお、近年の生活習慣病への関心の高まりや、糖
尿病の合併症に歯周病が加えられたこと等を受け、
テ社製)を規定回数(30 回)咀嚼後の色の混合
口腔内の歯科保健指導の他に、生活習慣の見直しを
状態を①原色が残る、②点状に残る、③一様に紫
含めた保健指導を歯科衛生士や管理栄養士が行う方
色の 3 段階に分け評価しました。また、ガム咀
法で実施しました。
嚼時の口腔内に関しても質問票に記入してもらい
4.おわりに
ました。
保健指導の中で受診者の生活習慣病への関心の高
(4)口腔診査
さがうかがえ、今までの歯科衛生士による歯科保健
口 腔 診 査 は WHO の 口 腔 診 査 4 に 準 じ て 行
指導だけではなく、管理栄養士等の多職種を含めた
い、 歯 周 疾 患 に つ い て は CPI(Community
生活習慣改善を図れるトータル的な保健指導を行う
Periodontal Index)によって行い、口腔診査票
ことの重要性が見出されました。受診者の健康問題
に記入しました。なお、口腔診査は、事前に口腔
に主眼をおいた問題指向型健康診査、および低コス
診査だけでなく唾液潜血反応試験とガム混合能力
ト・短期間で行えるスクリーニング試験および問題
検査についてもキャリブレーションを行った歯科
発見型支援として、この歯科健診は有効なものだと
医師のみによって行いました。
考えられました。
3.事業概要
この健診法がより広く活用されるようになるため
には、今後もさらなるデータの収集とスクリーニン
8020 の実現を目指した健康づくり実践のため、
グ項目の抽出と組み合わせの検討が必要となること
生涯にわたる歯と口腔の健康保持・増進を図るため、
が推測されました。さらにこの健診の事後の対処と
歯科健診の機会を利用した気づきを行う健診を目指
して歯科保健指導内容の充実と歯科保健指導担当者
しました。特に成人期における歯周疾患の早期発見
のスキルアップ、歯科診療所での 2 次診査(精密診
と、歯周病が引き起こす全身疾患へのリスクを広く
査)の受け入れ態勢の整備など、課題も多くありま
周知し、歯科健診を受けやすい環境づくりを行うこ
すので、今後も引き続き東京都歯科医師会としては、
とに考慮しました。
委員会において検討していきたいと考えております。
8020 No.10 2011-1
113
地域における歯科保健活動
地域における歯科保健活動
4
糖尿病医科歯科連携システムの確立
岡山県歯科医師会
社団法人岡山県歯科医師会 会長 酒井昭則
公衆衛生部理事 平岩 弘
平成 20 年の医療法の改正に伴い 4 疾患に関する医療連携が各地で開始されるようになってきまし
た。岡山県では、4 疾患のうち糖尿病については行政が主体となり岡山県糖尿病医療連携体制検討会
議を立ち上げ、医療機関が互いに連携し、糖尿病患者の治療にあたることとなりました。
1.はじめに
岡山県では、県内統一の糖尿病治療計画書を用い
医療機関が互いに連携を取りながら糖尿病患者の治
療にあたることとなり、合併症の一つである歯周病
について県歯科医師会が協力することとなりました。
2.事業の概要と目的
岡山県糖尿病医療連携体制検討会議の中で県内統
し県内統一の糖尿病治療計画書を委員会で作成する
とともに、歯科においては、専用の診療情報提供書、
歯周病セルフチェック票(図 2)、糖尿病管理記録用
紙を本会で作成しました。
全体説明会(2 回)、病院協会説明会(1 回)、歯
科向け説明会(1 回)の後、平成 21 年 5 月より県
行政への届け出が開始されました。岡山県糖尿病医
療連携届出医療機関数(平成 21 年 12 月 7 日時点)
は、専門治療:22、急性増悪時治療:15、初期安
一の糖尿病治療計画書を用い糖尿病治療専門医と初
定期治療:184、慢性合併症治療(歯周病):359、
期安定期治療医(かかりつけ医)、合併症治療専門医、
慢性合併症治療(その他):87 医療機関が届け出し
急性増悪時治療医が互いに連携を取りながら糖尿病
登録されました。なお、歯科医師会会員へは、糖尿
治療にあたることが決まりました。歯科領域では、
病に関する研修会(2 回)を開催しました。
合併症治療項目の一つに歯周病が入り、本会が作成
平成 22 年 1 月には、県下すべての歯科医療機関
した歯周病セルフチェック票を用い糖尿病患者が歯
に対し、医療連携開始から平成 21 年 12 月末時点で
周病に罹患しているかどうかを医療機関が判定し歯
の医科歯科連携による紹介患者数を調査しました。
周病の疑いがある患者を歯科医療機関に紹介し診断・
治療にあたることで医科歯科が連携を取りながら糖
尿病患者の治療にあたることとなりました。
4.事業実施後の評価と課題
調査の結果、医療機関より紹介のあった患者総数
さらに本事業では、約半年後における医科歯科連
は 75 名(アンケート回収率 36.2%)と予想を下回
携の状況を県下すべての歯科医療機関を対象に追跡
る結果となりました。この結果は、今回の医科歯科
調査し、より実用的な糖尿病医科歯科連携システム
連携では、専門治療医療機関を中心とした連携で、
を確立することを目的とし実施しました。
初期安定期治療医療機関で対応できない教育入院が
3.事業内容
糖尿病医療連携の流れは(図 1)に示しています。
必要な中等度・重度糖尿病患者が対象となっており、
このような患者の多くが歯周病に罹患しているため、
すでに歯科医療機関を受診し定期的な管理を受けて
糖尿病医療連携を開始するにあたり、県内統一の糖
いる者も多く、また医療機関で受診を勧められたに
尿病治療計画書、糖尿病手帳(市販のもの)、診療
もかかわらず受診しなかった可能性などが考えられ
情報提供書の 3 種類の書類を用い共通認識のもとに
ます。
糖尿病患者の治療にあたることが検討委員会で決定
114
8020 No.10 2011-1
医科歯科連携では、治療を行う多くの医療機関の
地域における歯科保健活動
歯周病のセルフチェック票
初期安定期治療 届出医療機関
(かかりつけ医)
専門治療届出
医療機関
糖尿病医療連携
治療計画書
糖尿病手帳への
記載
診療情報提供書
急性増悪時届出
治療医療機関
歯周病管理用紙添付
(糖尿病手帳)
診療情報提供書
慢性合併症治療届出医療機関
(歯周病・網膜症・腎症
動脈硬化性疾患・神経障害)
主たる連携
可能性のある連携
図 1 岡山県糖尿病医療連携の流れ
歯周病にかかると、歯周病菌の持つ毒素が血管を通じて全身に運ばれ、さまざまな影
響を及ぼします。なかでも血糖値コントロールに影響するとの報告があります。
次の 11 項目について歯周病のセルフチェックをしてみましょう。
セルフチェック項目
朝起きたときに口の中がネバネバする
口臭があると言われたことがある
食事の後、歯と歯の間に物がはさまりやすい
歯みがきのとき歯ぐきから出血することがある
歯ぐきがはれることがある
ぐらつく歯がある
あまり歯みがきをしない
タバコをよく吸う
歯科医院には歯が痛いときしか行かない
ストレスを感じることが多い
骨密度が低いといわれたことがある
合 計
✓を付けた項目の合計は何点でしたか。下の表で確認しましょう。
気になるところがあれば歯科を受診してみましょう。
✓
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
点数
1
1
2
3
4
5
1
1
1
1
1
0点
今は歯周病の心配はありません。しかし、歯周病のごく初期には自覚症
青信号
状が少ないので、歯科医院などで定期的に検査を受けてみましょう。
1〜4点
歯周病になっているか、なりやすい要因を持っています。ていねいな歯
青〜黄色信号 みがきと定期的な歯科検診を受けましょう。
5〜9点
歯周病にかかっている可能性大。歯科を受診してみて下さい。
黄色信号
専門的な指導を受けて歯みがきもしっかり行いましょう。
10 点以上
歯周病がかなり進行している可能性があります。必ず歯科を受診し、進
赤信号
行しないよう毎食後ていねいに歯をみがいて下さい。
日本歯科医師会発行『歯周病と糖尿病(パワーポイントによる資料集)』より一部改変
図 2 歯周病セルフチェック票
図 3 リーフレット(『歯周病と糖尿病』日歯提供を一部改変)
理解・協力が不可欠です。医科の届け出要件には、
【糖
化を図り、より効率的に歯周病のチェックをしてい
尿病治療ガイドラインに即した治療、および歯周病
ただけるようにすべての届出医療機関に配布し、さ
に関する連携・指導が可能であること】との条件が
らなる充実に努めています。
あるため、重度糖尿病だけでなく軽度・中等度糖尿
会員に対する定期的な研修会を開催するとともに、
病患者を治療する初期安定期医療機関との医科歯科
現在、専門治療医療機関を中心としたシステムから
連携も期待しましたが、十分な協力を得ることがで
初期安定期治療医療機関がより積極的に関与できる
きませんでした。
ような連携システムへの変更を検討中です。
この結果を踏まえ、医療機関に配布している「歯
さらに、平成 22 年 10 月には、医師会主催の糖尿
周病セルフチェック票」を少しでも有効に活用して
病県民公開講座シンポジストとして本会より講師を
いただくことを目的に、糖尿病治療ガイドラインの
派遣するなど、行政・関連団体等と協力しながら岡
歯に関する項目のみをピックアップしたリーフレッ
山県における糖尿病医療連携システムのさらなる充
ト(図 3)
を作成しました。このリーフレットをチェッ
実・推進に今後とも努めていきたいと思っています。
ク票とともに用いることで医療機関での説明の簡素
8020 No.10 2011-1
115
地域における歯科保健活動
地域における歯科保健活動
5
特別養護老人ホームにおける摂食嚥下機能障害の実態調査
および集団的摂食嚥下機能回復訓練の指導
佐世保市歯科医師会
社団法人佐世保市歯科医師会 医療福祉委員会 寺崎俊憲
長崎県佐世保市は、人口約 26 万人で、日本本土最西端に位置しています。当市においても高齢化
が急激に進んでいて、佐世保市歯科医師会は、高齢者の方々の QOL の向上をめざして活動しています。
1.はじめに
口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防に効果的であること
は、広く周知され実行されるようになってきていま
すが、誤嚥性肺炎の直接的原因である摂食嚥下機能
障害に関しては、障害のある患者の実態や摂食嚥下
機能回復訓練の効果について、未だ十分な調査・解
明がなされていません。
そこで今回、摂食嚥下機能障害のある入所者が比
較的多いと思われる特別養護老人ホームにおいて、
摂食嚥下機能障害の実態調査と摂食嚥下機能回復訓
練を実施し、訓練の効果について検証しました。
2.事業の概要
長崎県佐世保市内の本事業について理解と協力を
得られた特別養護老人ホーム 4 施設の入所者(各 50
名、計 200 名)を対象に、まず予備調査を行いまし
た。予備調査票を施設に配布し、施設職員に調査し
てもらいました。そして予備調査に基づき、機能回
復訓練(お口の健康体操)が可能と思われる 38 名
を抽出し、歯科医師による口腔内診査を行いました。
施設職員には、健康体操ポスターおよび健康体操
DVD を用いて説明を行い、施設職員の指導により、
入所者に対し、1 日 3 回毎食前に 10 分程度、4 か月
間の健康体操を実施しました。実施期間中は 1 か月
ごとに施設職員による口腔機能評価を行い、期間終
了後、再度歯科医師による口腔内診査を行いました
(図 1)
。
3.対象者の内訳
性別は、男性 6 名、女性 32 名でした。年齢構成は、
70 〜 79 歳 6 名、80 〜 89 歳 21 名、90 〜 99 歳
10 名、100 歳〜 1 名、最年少 70 歳、最高齢 103
116
8020 No.10 2011-1
歳でした。
基礎疾患を有する方の割合は 100% で、罹患者
の多い疾患は、認知症:35 名、脳血管障害後遺症:
20 名、 高 血 圧 症:16 名、 心 疾 患:16 名 で し た。
その他の基礎疾患は、パーキンソン病:4 名、糖尿病:
4 名、喘息:3 名、リュウマチ:2 名、貧血:2 名、
メニエル病:2 名、甲状腺疾患 2 名、膀胱炎 2 名等
でした。
要介護度は、要介護度 1:1 名、要介護度 2:2 名、
要介護度 3:13 名、要介護度 4:16 名、要介護度 5:
6 名でした。
ADL は、A1:3 名、A2:13 名、B1:11 名、
B2:9 名、C1:2 名でした。
4.実施後の評価
口腔機能の総合評価(施設職員による聞き取り)
において、事業終了後、食事がおいしくなった方:
1 名、薄味がわかるようになった方:2 名、むせが減っ
た方 1 名、口の渇きが減った方:1 名、食事時間が
短くなった方:2 名、薬がのみやすくなった方:1 名、
口の中に食物が残らなくなった方:1 名、話しやす
くなった方:2 名、口臭が減った方:2 名、会話が
増えた方:5 名、起きている時間が増えた方:5 名、
元気になった方:3 名、その他(食欲が出てきた)
の方:1 名、変化なし:17 名でした(図 2)。
半数以上の方が、何らかの改善効果を感じていま
す。これは、体操による活動性の向上と考えられ、
特に食前に行うことで、しっかりとした覚醒をもた
らし、食事への集中力が高まったものと思われます。
食形態には、変化が見られませんでした。これは、
実施期間が 4 か月と短かったためと思われます。
38 度以上の発熱の有無も、変化は見られません
でした。これは、実施期間が 11 月から 3 月と、高
地域における歯科保健活動
予備調査票の配布
事業内容の説明と受諾
歯科健診
・対象者の歯科健診(歯科医師会)
・職員への健康体操の指導(歯科医
師会から職員)
歯科健診
・対象者の歯科健診(3か月後の職
員による評価から1か月後、歯科
医師会が行う)
予備調査票の回収
・施設職員による調査票の記入
・対象者の決定(歯科医師会)
(認知症・健康体操ができない者を
除く)
健康体操の実施
口腔内評価表の記入
・1日3回食前に行う(10分程度)
・職員から対象者へ指導(DVD参
照)
・体操開始から1か月後、2か月
後、3か月後に行う
・同一対象者には同一の職員が審査
評 価
・資料の回収・評価(歯科医師会)
・施設への報告(歯科医師会)
図 1 事業の流れ
変化なし
食欲が出てきた
元気になった
起きている時間が増えた
会話が増えた
口臭が減った
話しやすくなった
口の中に食べ物が残らなくなった
薬が飲みやすくなった
食事時間が短くなった
口の渇きが減った
むせが減った
薄味がわかるようになった
食事がおいしくなった
1
1
1
1
1
1
0
摂食嚥下機能訓練後
摂食嚥下機能訓練前
17
1
1
流涎
3
5
5
2
2
8
会話
9
むせ
5
歯みがき
7
1
口の渇き
6
5
飲み込み
5
10
15
変化を認めた人数(名)
20
図 2 摂食嚥下機能訓練後の変化
8
5
かむ
0
11
8
0
口臭
2
10
8
食べこぼし
2
9
2
4
9
6
8
10
12
図 3 摂食嚥下機能訓練前後の問題点
齢者にとって体調管理が困難な時期であったためと
思われます。
口腔内診査では、
「咬筋の緊張度」
、
「オーラルディ
であり、健康体操への理解や協力を得るのはかなり
困難な状況でした。また、ADL や要介護度の状態か
ら、自力での体操が困難で施設職員の補助を必要と
アドコキネシス」、「ブクブクうがい」にはあまり変
する方も見られました。しかし、各施設の現状では
化が見られませんでしたが、
「歯や義歯の汚れ」や「舌
の汚れ」に特に改善が見られました。
「舌の汚れ」に
改善がみられたのは、日頃意識して動かすことの少
ない舌を健康体操で運動させることにより、自浄作
用が高まったためと思われます。
十分な職員数の確保は難しく、対象者全員に効果的
な体操を施行することは不可能でした。
摂食嚥下機能訓練前後の問題点の比較(図 3)では、
「食べこぼし」
、
「歯磨き」
、
「口臭」
、
「口の渇き」
、「飲
み込み」
、
「かむ」など、ほとんどの項目で改善がみ
られました。特に「口臭」、「口の渇き」は大幅に減
少しており、これは、唾液腺マッサージの効果によ
るものと思われます。
口腔清掃状態は、期間を通じて良好でしたが、こ
れは、歯科医師が口腔を診るということで、施設側
の口腔清掃に対する意識が高まったためと思われま
す。
今回対象となった 38 名の方のほとんどが認知症
5.考 察
特別養護老人ホームの入所者には、認知症や脳血
管障害後遺症のある方が多く、摂食嚥下障害のある
方も多いことがわかりました。また、摂食嚥下機能
の維持、改善に、お口の健康体操が、比較的簡単で
有効な手段であることが認識されました。
今後は、さらに長期間にわたり、健康体操の効果
について追跡調査を行う必要があると思われます。
また、歯科医師や歯科衛生士による定期的、専門的
な口腔ケアを行うことで、相乗的な効果が期待でき
ます。そのためには、施設において歯科医療従事者
のマンパワーと時間を確保するなどの環境整備を行
うことが、今後必要と思われます。
8020 No.10 2011-1
117
地域における歯科保健活動
地域における歯科保健活動
6
「磨いている」から「磨けている」をめざした
幼児の集団歯口刷掃指導事業
財団法人サンスター歯科保健振興財団
財団法人サンスター歯科保健振興財団 主任歯科衛生士 高稲浩実
前専務理事 山本洋一
幼稚園児を対象として、紙芝居と顎模型を用いた従来の集団歯磨き指導と絵カードを用いたもの、
および DVD を用いたものの 3 種類の指導法について、園児の歯磨きスキルの習得と歯の清掃効果を比
較検討しました。その結果、DVD を用いた指導法が最もすぐれていました。
1.はじめに
平成 17 年の歯科疾患実態調査によると、4、5
歳の年代においては約 95% が毎日少なくとも 1 回
は歯を磨いているにもかかわらず、約半分は乳歯う
蝕を持っています。このことから、当財団で保育園
があたっているかどうかを歯科衛生士と保護者それ
ぞれが目視で判定しました。歯の汚れについては歯
科衛生士が OHI-S を用いて評価しました。
3.結 果
1)歯磨きスキルの習得効果について
児や幼稚園児を対象に長年行ってきた集団歯磨き指
歯磨きスキルについては、3 園とも指導前に比べ
導の目的についても、歯磨きの習慣づけ(「磨いてい
指導後は改善が見られましたが、中でも DVD を用
る」
)から歯垢を確実に除去する歯磨きスキルの習得
いた園での効果がすぐれていました。
(
「磨けている」
)へと工夫する必要があると考え、絵
保護者による評価と歯科衛生士による評価を比べ
カードや DVD を取り入れた指導法の効果を従来の
ると傾向は似ていましたが、保護者のほうがより甘
方法と比較しました。
く点をつけるようでした(図 1)。
2.事業の内容
1)対象者と指導法
2)歯口清掃効果について
歯口清掃効果についても、3 園とも指導前に比べ
約 50 名の 4、5 歳児が在籍する 3 つの幼稚園を
指導後は歯の汚れが減少していました。また歯磨き
対象とし、A 園では従来どおり紙芝居と顎模型を用
スキル習得効果と同様、DVD を用いた園での効果が
い、B 園では絵カードを用い、C 園では DVD を用い
最もすぐれていました(図 2)。
て集団歯磨き指導を行いました。絵カードと DVD
については集団指導後も家庭に持ち帰って毎日の歯
磨き時に使用してもらいました。
3)歯磨きスキル評価と歯の汚れ評価との相関性に
ついて
歯ブラシがあたっているかどうかを歯科衛生士が
2)効果の評価
集団指導前と 4 日後に歯磨きスキルと歯の汚れに
ついて評価を行いました。
歯磨きスキルの評価は、口腔を 12 ブロックに分
け、幼児が歯磨きを行う際ブロックごとに歯ブラシ
118
8020 No.10 2011-1
判定したブロックと、対応する歯の汚れの有無につ
いての関係を調べたところ強い相関があることから、
歯ブラシが確実にあたっていれば、その部分の汚れ
も少ないことがわかりました。
地域における歯科保健活動
歯ブラシがあったブロック数
12
0.7
10
○DVD
△絵カード
8
□紙芝居
6
●DVD
▲絵カード
4
■紙芝居
OHI値
0.6
保護者
0.5
評価
歯科衛生士
評価
0.4
●DVD
0.3
■紙芝居
▲絵カード
0.2
2
0.1
0
指導前
0
指導後
図 1 歯磨きスキルの習得効果
DVD を用いた指導法が最もすぐれていた。保護者の判定
のほうが歯科衛生士の判定より甘い傾向がみられた。
指導前
指導後
図 2 歯口清掃効果
スキル習得と同様、歯口清掃効果についても DVD を用
いた場合が最もすぐれていた。
表 1 歯科衛生士と保護者による歯磨きスキル判定の部位別一致率
3 方法とも指導後の一致率は向上する傾向が見られたが、
特に絵カードと DVD を用いた場合に顕著であった。保護者が幼児の「前
歯の裏側」に歯ブラシがあたっているかどうかを判定する難しさがうかがわれた。
咬合面
下顎
DVD
絵カード
紙芝居
舌口蓋側面
上顎
下顎
唇頬側面
上顎
左側
右側
左側
右側
指導前
71.0%
66.1%
58.1%
59.7%
45.9%
指導後
91.9%
91.9%
83.9%
88.7%
45.9%
指導前
82.5%
76.2%
58.7%
55.6%
指導後
92.1%
93.7%
87.3%
87.3%
指導前
91.1%
88.9%
55.6%
指導後
84.4%
84.4%
66.7%
下顎
前歯
上顎
全顎
左側
前歯
右側
左側
前歯
右側
49.2%
40.3%
44.3%
32.3%
38.7%
31.1%
40.3%
48.1%
71.2%
83.6%
93.4%
83.9%
87.1%
88.5%
85.5%
83.0%
63.5%
58.7%
60.3%
68.3%
54.0%
57.1%
44.4%
54.0%
61.1%
65.1%
73.0%
79.4%
93.7%
77.8%
81.0%
96.8%
66.7%
82.8%
57.8%
62.2%
62.2%
44.4%
57.8%
48.9%
53.3%
44.4%
51.1%
59.8%
64.4%
55.6%
66.7%
53.3%
68.9%
57.8%
60.0%
55.6%
51.1%
64.1%
4)歯科衛生士と保護者による歯磨きスキル評価の
一致性について
減少に最も効果的でした。
この理由として、① DVD が絵カードよりすぐれて
幼児の口腔のブロックごとに歯ブラシがあたって
いる点としては、絵カードではブラッシングの流れ
いるかどうかについて、歯科衛生士の判定と保護者
はわかるが DVD ではさらにブラッシングの動きも
の判定の一致率を示したのが表 1 です。
わかること、② DVD が歯科衛生士による紙芝居と
3 園とも指導前より指導後のほうが一致率が向上
顎模型を用いた指導法よりすぐれている点としては、
する傾向がみられ、その傾向は特に絵カードや DVD
家庭に持ち帰って繰り返し学習ができることが考え
を用いた園で明らかでした。しかしその場合でも、
られます。
咬合面や唇頬側面に比べ前歯の舌口蓋側面では一致
今回の事業を行ってみて、従来紙芝居と顎模型に
率は相対的に低いことから、保護者は幼児の「前歯
よる説明に時間が取られていた歯科衛生士が DVD
の裏側」に歯ブラシがあたっているかどうかを判定
を用いることによって手が空き、そのぶんブラッシ
するのは難しいことがうかがわれました。
ングスキルの習得が苦手な幼児に対してきめ細かな
4.結論と考察
個別指導ができることに気づきました。また、DVD
や絵カードを家庭に持ち帰ってもらうと保護者も幼
紙芝居と顎模型を用いた指導、絵カードを用いた
児の歯口清掃に関心を持ち、さらに保護者自身が歯
もの、DVD を用いたものの中では、DVD を用いた
磨きスキルの評価に参加することで幼児のスキル習
指導法が、幼児の歯磨きスキルの向上と歯の汚れの
得に良い影響を与えたのではないかと考えます。
8020 No.10 2011-1
119
地域における歯科保健活動
地域における歯科保健活動
7
吉川市における
水道水フロリデーション普及啓発活動
吉川市役所
吉川市フロリデーション推進協議会 埼玉県吉川市健康福祉部健康増進課
吉川市は昭和 55 年から、幼児を対象にフッ化物歯面塗布と保健指導を行い、むし歯予防対策を実
施してきました。平成 12 年、市民グループを結成した開業歯科医が水道課長・各党市議団に、すべ
ての市民の歯科保健対策として水道水フロリデーションを提案、市議会で取り上げられたことがきっ
かけで検討が始まりました。平成 19 年度から具体的な普及啓発活動を開始し、吉川歯科医師会や市
民グループ、自治会等と協働して水道水フロリデーションの実現を目指した事業を展開しています。
1.水道水フロリデーション
普及啓発活動に至る経緯
平成 12 年 4 月市内の開業歯科医が市民グループ
を結成し、水道課長や各党市議団に水道水フロリデー
科保健向上に資することを目的に、翌 18 年 2 月庁
内組織として健康福祉部・政策室職員からなる吉川
市フッ化物応用研究会が発足しました。1 年後、WF
実施の政策決定が必要との報告書を市長に提出しま
した。
ション(以下 WF)の実施を提案しました。12 月市
一方、市議会においては引き続き平成 18 年 9 月
議会で自民党最古参の女性議員が一般質問したこと
一般質問で、19 年 3 月には代表質問および一般質
を契機に、吉川市長は平成 13 年度施政方針で WF
問で WF が取り上げられ、吉川歯科医師会は平成 18
検討部会の設置を表明しました。第 4 次吉川市総合
年 10 月、日本歯科医師会 WF 見解を基に専門団体
振興計画(平成 14 年度から平成 23 年度)にも WF
としてあらゆるフッ化物応用を支援すると表明しま
を調査研究するとの文言を盛り込みました。
した。
平成 13 年 12 月水道課長は、水道水にフッ化物
を添加することに関しあらゆる調査研究を行うため、
2.WF 普及啓発活動の実際
吉川市水道運営委員会に吉川市水道水フッ化物添加
健康増進課は平成 19 年度から、吉川市健康増進
検討部会を設置しました。専門家による研修を踏ま
計画(健康よしかわ 21)に WF 啓発を位置づけ具体
えて、市内公募および専門団体推薦委員の計 20 名
的な活動を開始しました。「まちづくり出前講座」や
が審議を重ね、平成 15 年 7 月「現段階として実施
講演会の開催、市ホームページや広報よしかわへの
は時期尚早」との結論で検討部会が終了しました。
掲載、公共施設等にポスターや DVD(厚生労働科研
平成 16 年 6 月市議会、17 年 9 月および 12 月市
班編)を配布しました。市民まつりや魚つかみ取り
議会と相次いで WF が一般質問で取り上げられまし
大会といったイベントでは、フロリデーション水麦
た。そこで、公衆衛生向上のために有効なフッ化物
茶の試飲とリーフレット配布、意識調査を実施しま
の応用を保健衛生の視点から調査研究し、市民の歯
した。
120
8020 No.10 2011-1
地域における歯科保健活動
図 1 保健センターで F 水試飲開始
平成 20 年 12 月市議会の一般質問で再び WF が取
り上げられ、早期実施の要望を受けました。そこで、
平成 21 年度から保健センター内で給水器によるフ
ロリデーション水の試飲体験コーナーを設置し、6
図 2 市役所玄関前で
3.意識調査結果から見える
今後の課題
平成 22 年 6 月 2 日、3 日に実施した市職員 169
月 4 日歯の衛生週間に披露しました(図 1)
。同時に、
名と 7 月 31 日ネオポリス自治会花火大会に参加し
市内の協力歯科医院 4 か所でも試飲体験と意識調査
た市民 95 名の意識調査を比較すると、フロリデー
ができる体制を整えました。
ションを知らないと回答した市職員は 36% に対し
同年 7 月には吉川歯科医師会支援の下、市民グルー
て市民は 53% でした。飲んだり利用したりしたい
プや自治会、一般市民や市議らからなる吉川市フロ
かという質問には、「とても・多少・少し」思うと答
リデーション推進協議会が発足しました。8020 推
えた市職員は 86%、市民は 90% でした。フロリデー
進財団からの平成 21 年度歯科保健活動事業助成交
ションを取り入れることへの意見の度合い(5 〜 1:
付申請、日本口腔衛生学会および日本大学松戸歯学
大きい数字ほど肯定的)は、「5・4」合わせて市職
部からの学術・技術支援を得て、推進協議会員の研
員は 65%、市民は 74% でした。
修や新ポスターとリーフレットの製作と全戸配布、
フロリデーション水を試飲して、特別な味も匂い
「まちづくり出前講座」の開催、フロリデーション寸
もせず、普段の水道水のままだと実感することに意
劇の公開、市民まつりや魚つかみ取り大会、町会夏
義があり、集計結果や寄せられた意見からも好意的
祭りへの参加と一層充実した普及啓発活動を行いま
な傾向がうかがえました。しかし、市民のフロリデー
した。
ション認知度はまだ低く、昨年末に行ったリーフレッ
そして平成 22 年度は、市職員へのフロリデーショ
ト全戸配布の効果は限られているようでした。一方、
ン水試飲とリーフレット配布、意識調査を実施しま
市職員は概ね認知している様子ですが、市民に的確
した(図 2)
。ネオポリス自治会花火大会や、なまず
な情報を提供できるほどではなく、公衆衛生特性を
の里「逸品朝市」実行委員会が主催する「逸品夕市」
支持しない意見も聞かれました。
にも初めて参加しました。今後は、新たに賛同を得
フロリデーションの実現には、何よりも市民の皆
られた自治会の体育祭や小学校 PTA 主催バザーへの
さんの理解が必要です。今後も機会あるごとに市民
参加、リーフレット No.2 やフロリデーション問答
啓発に努めていきたいと思います。
集吉川版の製作等が予定されています。
8020 No.10 2011-1
121
●●● 8020 推 進 財 団 の 幅 広 い 研 究 活 動 を ご 紹 介 し ま す ●● ●
8020 推進財団の幅広い
研究活動をご紹介します
8020 研究事業公募課題の概要報告
1
5 年間の縦断的研究による
高齢者の口腔内の変化と QOL との関係
研究テーマ:加齢による歯と口腔機能の変化と QOL との関係
〜 5 年間の追跡調査〜
大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座(歯科補綴学第二教室)
榎木香織、池邉一典、枦山智博、松田謙一、吉田 実、前田芳信
私たちは、歯の数や口腔の機能、QOL がどのように変化するのか、またそれらの変化に関連はある
のかを分析するために、高齢者を対象に 5 年間にわたる縦断的研究 ( 同一の調査対象を継続的な調査に
基づく研究 ) を行いました。その結果、5 年間で約 40% の人で歯が喪失し、口腔内の QOL が有意に
低下していましたが、口腔機能の低下はみられませんでした。
1.はじめに
近年の高齢社会において、単なる生命機能の維持
や延命だけではなく、より質の高い生活を送ること
つまり Quality of Life(QOL)を一層重視すること
が必要になってきています。
特に高齢者では、加齢とともに歯の数が減少し、
口腔機能が低下することが多くみられます。これま
で、歯や口腔の健康状態と QOL との間に関連がある
ことがさまざまな国から報告されています。我々も、
唾液の分泌や咀嚼能率などの口腔機能が、高齢者の
QOL に関連があることを横断的研究によって明らか
にしてきました 1 〜 3)。
しかし、歯の数や口腔機能の変化があった場合に
QOL が変化するかどうかについて、長期的な観察を
行った研究はこれまでみられません。個人の価値観
によって QOL の評価は大きく影響を受けることか
ら、同一人物の口腔内状況や口腔機能と QOL の両方
の変化を同時に観察する縦断的研究が、両者の関係
を検討する上でより望ましいと考えられます。
そこで今回は、65 歳以上の大阪府老人大学講座
の受講生を対象に 5 年間の縦断的研究を行い、歯や
口腔機能ならびに QOL の変化と、歯や口腔機能の変
化が QOL に及ぼす影響について検討を行いました。
2.方 法
対象者は、2004 年に歯の状態と咬合力、咀嚼能
率などを測定し、データが保管されている大阪府老
人大学講座の元受講生の中で、縦断的研究への参加
を呼びかけ、研究へ同意の得られた者 108 名(男性
58 名、女性 50 名、平均年齢 71.1 ± 4.3 歳)とし
122
8020 No.10 2011-1
ました。対象者は自立的な生活を送っている比較的
健康な高齢者です。
調査項目は残存歯数、咬合力(デンタルプレスケー
ル 50H、R タイプ、富士写真フィルム社、を用い、
咬みしめ時の最大咬合力(N)を測定)4)、咀嚼能率(検
査用グミゼリーを咀嚼させたのち、流出したグルコー
ス濃度から算出)5)、日本語版 Oral Health Impact
Profile(OHIP)-14 による口腔関連 QOL(表 1)6)、
ならびに全身の健康状態に対する自己評価としまし
た。
3.結果と考察
1)残存歯数と口腔関連 QOL
図 1 は 2004 年 の 残 存 歯 数 と 口 腔 関 連 QOL の
OHIP-14 スコアの関係を表し、図 2 は 2009 年の
関係を表しています。どちらの年も右肩下がりのグ
ラフを示し、統計学的にも残存歯数と OHIP-14 スコ
アの間に有意な相関を認めました(2004 年:rs=
− 0.233、P=0.018、2009 年:rs= − 0.313、
P=0.001)。つまり、歯が多く残っている人は口腔
関連 QOL が高く、逆に少ない人は QOL が低い傾向
を示しました。
2)5 年間の変化
5 年間で歯を喪失した人は全体の約 40%(42 名)
で、その中で一人平均喪失歯数は 1.98 本でした。全
体の残存歯数は平均 25.1 本から 24.3 本に減少しま
した。次に、口腔関連 QOL の OHIP-14 スコアの平
均は 10.1 から 12.3 と有意に増加しました。これは
QOL が低下したことを示しています(P=0.002)。
特に、5 年前 OHIP-14 スコアが低かった群(スコ
ア:0-4)、すなわち口腔関連 QOL が高かった群で
8020 研究事業公募課題の概要報告 ●
表 1 日本語版 Oral Health Impact Profile(OHIP)-14 の質問票
(点)35
OHP-14 スコア
過去 1 年間に歯や口または義歯の不調のため、以下のことを経験しましたか ?
◆機能の制限
1. 会話をする(発音する)のに困ったことがありますか ?
2. 味覚が低下したと感じたことはありますか ?
◆身体的疼痛
3. 口の中に痛みを感じたことはありますか ?
4. 食べることに不自由を感じたことがありますか ?
◆心理的不快
5. 他人の目を気にしたことがありますか ?
6. ストレスを感じたことがありますか ?
◆身体的障害
7. 食事が満足にできなかったことはありますか ?
8. 食事を中断しなければならなかったことがありますか ?
◆心理的障害
9. リラックスしにくかったことがありますか ?
10. 恥ずかしい思いをしたことがありますか ?
◆社会的障害
11. 他人に対して短気になったことがありますか ?
12. いつもこなしている仕事に支障をきたすことがありますか ?
◆ハンディーキャップ
13. 日常生活が思うようにいかないと感じたことがありますか ?
14. 何もかも手につかなかったことがありますか ?
30
25
20
15
10
5
0
本研究の結果より、自立的な生活を送っている比
較的健康な平均年齢 71 歳の高齢者において、5 年
間で約 40% の人が歯を失い、口腔関連 QOL が低下
することが明らかとなりました。一方で口腔機能の
10 15 20 25 30 35
(本)
残存歯数
(rs= − 0.233、P=0.018)
OHP-14 スコア
(点)35
30
25
20
15
10
5
0
4.まとめ
5
図 1 残存歯数と OHIP-14 スコアとの関係(2004 年)
以上 14 項目の質問に対して、回答に①全くない(=0 点)
、②ほとん
どない(=1 点)、③ときどきある(=2 点)、④よくある(=3 点)
、⑤非
常によくある(=4 点)を付与し、スコアの合計を OHIP-14 スコアと
しました。各質問項目の OHIP-14 スコアの最低点は 0 点,最高点は
56 点で、スコアが高いほど口腔関連 QOL が低いことを示しています。
有意にスコアが増加しました(P <0.001)
。スコ
アが高かった群(スコア:16-32)すなわち QOL
が低かった群では有意な変化はみられませんでした。
したがって、QOL の低下は、主に元々 QOL の高かっ
た人が低下したことによるものであると推測されま
す。
また、健康状態に対する自己評価も有意に低下し
ました(P=0.005)
。しかし、口腔機能を客観的に
評価した咬合力や咀嚼能率に有意な変化はみられま
せんでした。
3)口腔内や全身の変化と QOL の変化
次に、口腔関連 QOL の変化にはどのような因子が
関連しているのかを調べました。しかし、5 年間で
口腔関連 QOL や全身健康の評価は低下したものの、
今回はそれらの変化と歯数の変化、ならびに咬合力
や咀嚼能率の変化との間に有意な関連は認められま
せんでした。
この理由として、まず残存歯数の変化が少なかっ
たことが考えられます。また、義歯などの補綴処置
前後で QOL は向上する 7)との報告もあるので、新た
な喪失に対して適切な補綴処置を受けると QOL は向
上する可能性があると考えられます。それゆえ、咬
合力や咀嚼能率はいずれも 5 年間における著しい変
化がみられず、口腔機能の変化が QOL に及ぼす影響
までは検討できなかったと考えられます。
0
0
5
10 15 20 25 30 35
(本)
残存歯数
図 2 残存歯数と OHIP-14 スコアとの関係(2009 年)
(rs= − 0.313、P=0.001)
変化は認めませんでした。また、残存歯数や口腔機
能の変化と、この QOL の低下との有意な関連は示さ
れませんでした。
今後、対象者を増やし、さらに長期間追跡した研
究を進めていく予定です。
参考文献
1)Ikebe, K., Watkins, C.A., Ettinger, R.L., Sajima, H.,
Nokubi, T.: Application of short-form oral health impact
profile on elderly Japanese. Gerodontology, 21:
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2)Ikebe, K., Matsuda, K., Morii, K., Wada, M., Hazeyama,
T., Nokubi, T., Ettinger, R.L.: Impact of dry mouth and
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elderly Japanese. Oral Surg. Oral Med. Oral Pathol. Oral
Rad and Endodont., 103: 216-222, 2006.
3)Ikebe, K., Hazeyama, T., Morii, K., Matsuda, K., Maeda, Y.,
Nokubi, T..: Impact of masticatory performance on oral
health related quality of life for elderly Japanese. Int. J.
Prosthodont., 20: 478-485, 2007.
4)Ikebe, K., Nokubi, T., Morii, K., Kashiwagi, J., Furuya,
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performance using test gummy jelly. Prosthodont. Res.
Pract., 4: 9-15, 2005.
6)野首孝祠,池邉一典,佐嶌英則,森居研太郎,柏木淳平 :8020
運動と高齢者の咀嚼機能ならびに QOL との関係.平成 14 年度
8020 公募研究事業研究報告書,119-124,8020 推進財団 .
7)John, M.T., Slade, G.D., Szentpétery, A., Setz, J.M.:
Oral health-related quality of life in patients treated
with fixed, removable, and complete dentures 1
month and 6 to 12 months after treatment. Int. J.
Prosthodont.,17:503-511, 2004.
8020 No.10 2011-1
123
2
●●● 8020 推 進 財 団 の 幅 広 い 研 究 活 動 を ご 紹 介 し ま す ●● ●
高齢者の咀嚼能力と大脳の働きとの
関連性について
研究テーマ:地域自立高齢者の咀嚼力と高次脳機能との関連性
研究代表者:国立保健医療科学院口腔保健部 三浦宏子
分担研究者:国立保健医療科学院口腔保健部 守屋信吾
北海道大学大学院歯学研究科口腔診断内科学教室 山崎 裕
高齢者がいきいきとした日常生活を送るためには、大脳の働きを保つことが重要です。本研究にて、
地域の高齢者における咀嚼と大脳の働きとの関連性を調べたところ、良好な咀嚼機能を有する高齢者
では、大脳の働きを調べる神経心理検査の結果がより良好であったという結果が得られました。これ
らのことより、咀嚼が大脳の働きに関連する因子である可能性が示されました。
1.はじめに
これまでも、咀嚼能力や歯の本数が認知機能と関
連することが報告されていますが 1、2)、本研究では、
いくつかの神経心理検査を用いて、地域の高齢者の
方々における咀嚼と大脳の働きとの関連性について
調べました。
2.対象と方法
調査は、平成 21 年 11 月から 12 月にかけて、北
海道余市町において地域歯科医師会と行政との協力
のもと実施されました。自立した生活を送り、認
知症の診断を受けていない 70 歳から 74 歳までの
また、奥歯のかみ合わせについては、アイヒナーの
分類 A が 28.4%、B が 35.5%、C が 36.1% でし
た。
Raven 色彩マトリックス検査、積木模様課題、言
語性対連合学習Ⅰの点数は、図 1 に示すように咀嚼
能力の自己評価が低下する者ほど低下していました。
視覚性対連合Ⅰでは、有意差はみられませんでした。
一方、積木模様課題の点数は、アイヒナー分類 A で
39.1 ± 11.8、B で 32.7 ± 11.3、C で 32.0 ±
11.4 であり、奥歯のかみ合わせが少ないほど、低い
値を示していました(P<0.01)。他の神経心理学的
検査では、有意差はみられませんでした。
なお、これらの関連性については、年齢、性別、
208 名の高齢者を対象としました。
咀嚼に関する評価は、咀嚼についての自己評価 「
[ 何
でも噛める(良好群)、少し固い物なら噛める(概良
群)
、軟らかい物しか噛めない(不良群)の 3 段階に
より評価 ] と奥歯のかみ合わせの状態(アイヒナーの
教育年数、社会活動性、全身疾患の有無といった背
景要因の影響を除いた後でも同様な傾向を示してい
ました。
分類)[ アイヒナー A(大臼歯および小臼歯のかみ合
わせがある)
、アイヒナー B(部分的にかみ合わせが
本研究において、咀嚼能力が空間的思考や推理、
言語性短期記憶、空間的認識や構成能力といった大
ある)
、
アイヒナー C(自分の歯のかみ合わせがない)]
の 2 つの方法で行いました。
一方、大脳の働きは、神経心理学的検査である
Raven 色彩マトリックス検査(空間的な思考・推理:
脳の諸機能に関連していることが明らかになりまし
た。また、奥歯のかみ合わせの状態が、空間的認識
や構成能力と関連していることもわかりました。こ
の結果は、咀嚼能力・歯数と認知機能との関連性を
示した今までの研究 1、2) を裏付けるだけでなく、さ
らに広範な大脳の働きとの関連性を示していました。
36 点)
、積木模様課題(空間認識・構成能力:68 点)、
言語性対連合Ⅰ(言語性短期記憶:24 点)
、視覚性
対連合Ⅰ(視覚性短期記憶:18 点)を用いて行い
ました。
3.結 果
咀 嚼 能 力 に 関 す る 自 己 評 価 の 結 果、 良 好 群 が
63.5%、概良群が 26.9%、不良群が 9.6% でした。
124
8020 No.10 2011-1
4.考 察
大脳がうまく働く場合では、情報を収集・分析す
ることにより、適切な行動を行うことができるため、
健康を保つ行動もうまくとれる傾向があります。す
なわち、自身の口腔の状況を的確に把握し、状況に
見合った歯科保健行動を取ることが可能となり、そ
の結果として歯を喪失しにくいとも考えられます。
8020 研究事業公募課題の概要報告 ●
Raven 色彩マトリックス検査
良好
概良
不良
言語性対連合学習Ⅰ
良好
概良
不良
積木課題検査
良好
概良
不良
視覚性対連合学習Ⅰ
良好
概良
不良
図 1 自己評価咀嚼能力と脳の働きとの関連性(70 歳から 74 歳の 208 名)
※統計学的検定は、Kruskal Wallis 検定により行いました。P<0.05 を有意差ありと判定します。
したがって、大脳の働きが良好であることが、咀嚼
能力や歯の状態を良好に維持することに有利に働く
可能性があります。
一方、咀嚼や残存歯の状態は、栄養状態、体力、
ADL(日常生活の活動性)
、QOL(生活の質)など
の全身の健康状態と密接に関連することから、何ら
かのメカニズムで、咀嚼機能の良否が大脳の働きに
直接影響を及ぼすことも考えられます。画像診断の
手法により、咀嚼が大脳の働きを活性化すること 3)
や、咀嚼が認知機能や記憶のメカニズムに良い影響
を及ぼす可能性 4)が報告されています。
また、動物実験では、咀嚼がストレスの緩和をも
たらすことを介して、学習や記憶に重要な役割を果
たす海馬の機能に影響を及ぼす可能性が報告されて
います 5、6)。この因果関係の立証には、今後さらな
る研究が必要となりますが、咀嚼能力の良否が大脳
の働きに影響を及ぼす可能性があります。
大脳の良好な働きは、いきいきと質の高い人生を
送るために不可欠な機能であり、介護予防の視点か
らも大変重要です。本研究では、咀嚼や奥歯のか
み合わせの状態が、大脳の働きに関連することがわ
かりましたが、この成果は「80 歳になっても自分
の歯を 20 本以上保つことで豊かな人生を」という
8020 運動の基本理念を支持する結果でした。
参考文献
1)Miura, H., et al.: Relationship between cognitive
function and mastication in elderly females. J. Oral
Rehabil., 30: 808-811, 2003.
2)Takata,Y. et al.: Cognitive function and number of teeth
in a community-dwelling elderly population without
dementia. J. Oral Rehabil., 36: 808-813, 2009.
3)Onozuka, M. et al.: Mapping brain region activity during
chewing: a functional magnetic resonance imaging
study. J. Dent. Res., 81: 743-746, 2002.
4)Hirano, Y. et al.: Effects of chewing in working memory
processing. Neurosci. Lett., 436: 189-192, 2008.
5)Ono, Y. et al.: Occlusion and brain function: mastication
as a prevention of cognitive dysfunction. J. Oral
Rehabil., 37: 624-640, 2010.
6)Hori, N. et al.: Biting suppresses stress-induced
expression of corticotropin-releasing factor(CRF)in
the rat hypothalamus. J. Dent. Res., 83: 124-128,
2004.
8020 No.10 2011-1
125
3
●●● 8020 推 進 財 団 の 幅 広 い 研 究 活 動 を ご 紹 介 し ま す ●● ●
介護予防グミの開発
研究テーマ:介護予防食品の開発に関する研究
東北大学大学院歯学研究科口腔保健発育学講座国際歯科保健学分野
1)
せんだんの丘 2)
小坂 健 、相田 潤 、若栗真太郎 、若生利津子
1)
1)
1)
1,2)
誤嚥性肺炎による高齢者の死亡率が高くなっています。そこで、不顕性誤嚥の予防効果が期待され
るカプサイシン、メンソール、黒コショウを日常的に効率よく摂取できる介護予防食品を開発し、そ
の効果を評価した結果、嚥下機能および主観的健康状態の改善傾向がみられました。
しているにすぎず、日常的に摂取し続けることは難
1.はじめに
しいでしょう。
加齢に伴う高齢者の肺炎による死亡率の上昇が問
そこで今回、カプサイシン、メンソール、黒コショ
題になっています 1)。高齢者肺炎の増加の背景には、
ウを効率よく摂取するための介護予防食品の開発を
さまざまな基礎疾患の影響や、免疫力の低下が考え
行い、その効果を検討しました。
られ 2)、さらに脳血管障害、脳変性疾患、認知症に
罹患している患者が自覚のない誤嚥(不顕性誤嚥)
をしやすくなっている 3 〜 5) ことも、高齢者肺炎増加
の重要な要因のひとつと考えられます。
不顕性誤嚥は誤嚥性肺炎の要因のひとつですが、
2.方 法
介護予防食品は、寒天をベースとし、カプサイシ
ン、メンソール、黒コショウを配合したグミを試作し、
硬さ、大きさ、味を検討し、パイナップル味、グレー
脳血管障害から嚥下障害を経て肺炎に至るまでの機
プ味、グレープフルーツ味、ゆず味のグミが完成し
序は、脳血管障害患者のドーパミン代謝が低下し、
ました(図 1)。
舌咽および迷走神経の知覚枝のサブスタンス P が減
グミの効果は、無作為割り付け介入研究で評価し
少することによって嚥下反射および咳反射が低下し、
ました。対象者は、2010 年 2 月から 3 月までの間
と考えられています。
に介護老人保健施設 A の通所サービスを利用してい
不顕性誤嚥を生じやすくなる
3)
これに対し、赤唐辛子に多く含まれているカプサ
る要支援認定高齢者(図 2)とし、研究の主旨の説明、
イシンはサブスタンス P の放出を促進させる物質で
グミの試食後、同意が得られた者のみを研究参加者
あり、嚥下反射を正常化させ誤嚥性肺炎を予防する
としました。この研究は、東北大学大学院歯学研究
可能性が期待されています 6)。
科研究倫理専門委員会の承認を得て行われました。
また、不顕性誤嚥を含む、摂食嚥下障害を温度感
介入前後の 30ml 水飲みテストによる嚥下機能、
受性受容体刺激によって改善させる方法として、メ
口腔内の様子、咀嚼能力判定ガム XYLITOL® を用い
ンソールを用いた涼冷刺激受容体活性化による嚥下
た 2 分間の咀嚼能力、キソウェットによる口腔の湿
反射の短縮が報告されています 。さらに、ADL、
潤度を診査すると同時に、主観的な全身健康状態、
意識レベルが悪く、経口による温度感受性受容体刺
口腔健康状態、口渇感の有無、口腔清掃習慣、過去
激が困難な高齢者に対する摂食嚥下改善法として、
3 年間の歯科受診経験、口腔機能の状況、口腔に関
黒コショウを用いた嗅覚刺激による嚥下反射の改善
連した包括的な健康関連 QOL を面接形式のアンケー
が報告されています 。
トにて調査しました。
7)
8)
以上のように、カプサイシン、メンソール、黒コショ
得られた結果は介入前後の差の群間比較に Mann-
ウが嚥下機能改善に効果的であることが示唆されて
Whitney 検定、介入前後の同群内比較に McNemar
いますが、私たちはこれらを香辛料として少量使用
検定をそれぞれ用いて評価しました。
126
8020 No.10 2011-1
8020 研究事業公募課題の概要報告 ●
水飲みテスト(スコア)
介入前
介入後
1.87点
2.07点
呼吸変化
3名(20%)
湿性嗄声
4名(26.7%)
改善
0名(0%)
2名(13.3%)
図 1 介護予防グミ
咀嚼能力(スコア)
4.73点
維持
4.73点
図 3 介入前後の嚥下能力変化と咀嚼能力変化
4.考 察
無作為割り付け介入研究の結果、グミによる介入
群の嚥下機能向上者の割合が大きい傾向がみられま
した。
摂食嚥下機能の向上および機能低下の予防は高齢
図 2 要支援認定高齢者の通所サービス風景
者保健を考えるうえで重要なプログラムです。摂食
嚥下機能の改善は誤嚥性肺炎の予防法として注目さ
れていますが、食事レベルが低下し、好きな料理を
3.結 果
73 名の通所サービス利用者のうち、27 名(男性
11 名、女性 16 名)が研究に参加し、無作為割り付
けを行った結果、
介入群 15 名(男性 6 名、女性 9 名)、
自由に食べることができない高齢者の QOL を向上さ
せる効果も期待できます。誤嚥性肺炎の有無にかか
わらず、多くの恩恵が期待される摂食嚥下機能の向
上と低下予防は重要な課題なのです。
今回の研究の結果、グミによる介入群の複数の調
対照群 12 名(男性 5 名、女性 7 名)と割り付けら
査項目で改善傾向、維持傾向がみられましたが、今
れました。
後は、長期のグミの摂取が摂食嚥下機能にどのよう
介入前後で、水飲みテストのスコアが改善した者
が 2 名、スコアを維持できた者が 10 名、呼吸変化
の改善が 3 名、湿性嗄声の改善が 2 名に認められま
した。咀嚼能力は介入前後で変化がみられず、口腔
湿潤度は介入・対照群において下降が認められまし
た(図 3)
。
主観的な全身健康状態は 4 名の改善、口腔健康状
態は 2 名の改善が認められました。口渇感は 4 名に
改善が認められました。口腔清掃習慣、清掃補助器
具の使用、歯肉からの出血に対する改善は認められ
ませんでした。
介入前後における口腔関連 QOL で「口の中の調子
が悪いせいで、食べ物の種類や食べる量をひかえる
ことがありましたか」、「口や口のまわりの不快感の
ために、薬を使うことがありましたか」、「口の中の
調子の悪さが、気になることがありましたか」のス
コアが改善を示しました。これらの改善は対照群と
の比較では統計学的有意差はみられませんでした。
な影響を与えるかを調査する必要があると考えられ
ます。
参考文献
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2)Nakayama, K. et al: Tuberculin responses and risk of
pneumonia in immobile elderly patients. Thorax, 55:
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42: 932-940, 2003.
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Am. J. Respi. Crit. Care Med., 150: 251-253, 1994.
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dysphagia. Br. J. Clin. Pharmacol., 62: 369-371,
2006.
8)Ebihara, T. et al: A randomized trial of olfactory
stimulation using black pepper oil in older people
with swallowing dysfunction. J. Am. Geriatr. Soc., 54:
1401-1406, 2006.
8020 No.10 2011-1
127
4
●●● 8020 推 進 財 団 の 幅 広 い 研 究 活 動 を ご 紹 介 し ま す ●● ●
摂食・嚥下における歯科・医科連携と
医療費に関する研究
研究テーマ:摂食・嚥下における歯科・医科連携と医療費に関する研究
東京医科歯科大学大学院医療経済学分野教授 川渕孝一
本研究では歯科医師と医師が連携して専門的な口腔機能や嚥下機能を行った時の医療費削減効果を
算出しました。その結果、脳血管障害を基礎疾患とし、経管栄養を実施している患者は 58,500 人か
ら 1,864,300 人に達すると推計されました。さらにそのうちの 8.3% が離脱可能と仮定すると、喉
頭ファイバーを用いた嚥下機能評価に係るコストや歯科衛生士による嚥下訓練に係るコストを控除し
ても、年間 26 億〜 1,340 億円の医療費が削減可能なこともわかりました。
1.はじめに
平成 20 年の診療報酬改定で「在宅療養支援歯科
診療所」が新設されました。これは「在宅または社
会福祉施設等における療養を歯科医療面から支援す
る歯科診療所の整備を図る」ことを目的としたもの
です。その施設要件は、①所定の研修を受講した常
勤の歯科医師が 1 人以上配置されている、②歯科衛
生士が 1 人以上配置されている、③必要に応じて、
患者または家族、在宅医療を担う医師、介護・福祉
関係者等に情報提供できる体制を整えている、④在
宅歯科診療に係る後方支援の機能を有する別の保険
医療機関との連携体制が確保されていることなどで
す。
実際、嚥下造影や喉頭ファイバーを用いた嚥下機
能評価を行う歯科医師が増加してきています。これ
は、通院困難な在宅患者の嚥下機能評価を自宅や介
護施設で行うことが可能になってきているからです。
将来的には、在宅患者に対して嚥下機能評価、嚥下
訓練を行うことができる歯科医師と、全身管理を行っ
ている一般医師が連携することで、在宅患者のケア
の質の向上および医療費適正化の同時達成が期待さ
れます。
そこで本研究では、歯科と医科の密接な連携が医
療費に与える経済的評価をラフに推計しました。
2.方 法
対象は、平成 20 年 4 月から平成 21 年 12 月まで
に医療法人拓海会大阪北ホームケアクリニックで訪
問診療を行い、経管栄養を行っている在宅患者 74
人(神経難病 58 人、脳血管障害 12 人、その他 4 人)
です。
具体的には、改訂水飲みテストによる簡易な嚥下
機能評価を行い、その評価が良好(スコア 4 〜 5)
であった 5 名を対象に喉頭ファイバーを実施しまし
た。ここで改訂水飲みテストとは、患者に少量の水
を飲んでもらい、嚥下反射の有無、むせ、呼吸変化
を評価する検査です。冷水 3mL を口腔庭に注ぎ、嚥
下してもらうもので、評価は図 1 のように 5 段階で
行われ、3 以下の場合は誤嚥が疑われます。
128
8020 No.10 2011-1
なお、本研究では改訂水飲みテストのスコアは 3
だったが、本人・家族の強い希望があった 1 名に対
しても喉頭ファイバーを実施しています。喉頭ファ
イバー実施にあたっては「NPO 法人 摂食介護支援
プログラム」(DHP)(http://npo-dhp.org/)の指
導の下、在宅医が喉頭ファイバーを実施し、嚥下評
価を実施しています。さらに、経口摂取可能である
と判断した症例には、家族に対する嚥下訓練を実施
し経口摂取を試みることとしました。
3.結 果
喉頭ファイバーによる嚥下評価は都合 6 名に対し
て実施しました。
患者のプロフィールは表 1 に示す通りです。実施
した患者の基礎疾患はいずれも脳血管障害であり、
認知症の程度は軽度でした。症例 C・E はこの他、運
動性失語症(言語理解は良好であるが、言語のよる
意思表出が困難)を合併していました。なお、神経
難病患者、およびその他の疾患の患者は改訂水飲み
テストのスコアは 3 以下であり、喉頭ファイバーに
よる嚥下評価は行っていません。
また、6 名は皆、嚥下障害のため脳血管障害発症
後、いずれも 3 か月以内に経管栄養が開始されてい
ます。特に症例 C は胃癌のため胃瘻造設が行えなかっ
たために経鼻胃管による経管栄養を受けていました。
他方、症例 A は胃瘻造設を行わずに経鼻胃管による
経管栄養を行っていましたが、その理由は不明です。
食事開始当初は誤嚥傾向を認めていなかったのが、
約 1 時間かけた食事終了前には誤嚥傾向を認めたた
め、検査は食事開始から終了まで行うようにしまし
た。これに対して B、D、E、F の 4 名は、定期的に
歯科衛生士が訪問し、一定の嚥下訓練・家族指導を
受けています。
ちなみに、発症から喉頭ファイバー実施までの期
間は 2 〜 3 年で、経口摂取再開後に、誤嚥性肺炎を
疑う発熱や喀痰量増加のために治療を要した症例は
ありません。
なお、経口摂取再開の準備のために入院した症例
(図 2)は A と C であり、それぞれの入院費用は 41
万円、168 万円でした。
8020 研究事業公募課題の概要報告 ●
患者に少量の水を飲んでもらい、嚥下反射の有無、
むせ、呼吸変化を評価する検査。
方法
・冷水 3mL を口腔庭に注ぎ、
嚥下してもらう。
評価
・次に示したように 5 段
階評価。
3 以下の場合は誤嚥が
疑われる。
1:嚥下なし、むせる、(and/or)呼吸切迫
2:嚥下あり、呼吸切迫(不顕性誤嚥の疑い)
3:嚥下あり、呼吸良好、むせる、(and/or)湿性嗄性
4:嚥下あり、呼吸良好、むせない
5: 4 に加えて、空嚥下が 30 秒以内に 2 回以上
図 1 改訂水飲みテストの概要
表 1 6 症例のプロフィール
A
B
C
D
E
F
年齢
性別
基礎疾患
認知症
経管栄養
の方法
80 歳代
70 歳代
80 歳代
60 歳代
60 歳代
50 歳代
女性
男性
男性
男性
女性
男性
脳出血、脳梗塞
多発性脳梗塞
多発性脳梗塞
脳梗塞
脳梗塞
脳出血
軽度
軽度
軽度 ( 失語症 )
軽度
軽度
軽度 ( 失語症 )
経鼻胃管
胃瘻
経鼻胃管
胃瘻
胃瘻
胃瘻
検査時間
評価
80 分
65 分
60 分
60 分
60 分
60 分
経口摂取可能
経口摂取可能
経口摂取一部可能
経口摂取一部可能
経口摂取一部可能
経口摂取一部可能
A
B
C
D
E
F
評価直後
全量
一部
一部
一部
一部
一部
経口摂取再開
最終評価
最終評価までの期間
全量
18 か月後
全量
6 か月後
一部
9 か月後
一部
4 か月後
一部
3 か月後
なし
3 か月後
②検査依頼
患者の選定
(医師)
①患者・家族の意志の確認
簡便なテストでの評価
④嚥下訓練指示
咽頭全摘出術
気管食道吻合術
図 2 気道食道分離術のイメージ図
4.考 察
これまでの歯科医師と医師との連携は、齲歯をは
じめとする医師の手が出ない領域を歯科医師に依頼
し、その結果のみを聞くという連携にすぎませんで
した。しかし、嚥下評価・訓練というオーバーラッ
プする領域を一緒に診療することで、患者にとって
より効果的な連携が期待されます。
というのは在宅患者における歯科医師と医師の連
携、あるいは入院患者・高齢者施設患者における歯
科医師と医師の連携を通して、経口摂取再開が可能
となるからです。経管栄養から離脱することができ
れば経管栄養関連の診療報酬が不要になり、医療費
削減にも繋がると考えられます。
そこで本研究では、一定の前提を置いてその削減
効果を算出しました。まず、当該患者数ですが、脳
血管障害を基礎疾患とし、経管栄養(経鼻胃管お
よび胃瘻)を実施している患者は 58,500 人から
1,864,300 人に達すると推計されました。そのう
ちの 8.3% が離脱可能と仮定すると、喉頭ファイバー
を用いた嚥下機能評価に係るコストや歯科衛生士に
よる嚥下訓練に係るコストを控除しても、年間 26
億〜 1,340 億円の医療費が削減可能なことがわかり
ました。
しかし、歯科医師・医師連携のこの新モデル構築
(図 3)には、克服すべき都合 7 つの課題(喉頭ファ
イバーによる嚥下評価を実施する歯科医師の養成や
嚥下訓練を実施する歯科衛生士の育成など)も見え
⑤報告
嚥下訓練
(歯科衛生士)
発症から
改訂水飲
検査まで
みテスト
の期間
3年
4
2年
4
2年
3
2年
4
2年
4
3年
4
患者
③報告
③検査時合併症
の治療
咽頭ファイバーによる嚥下評価
(歯科医師)
⑤報告
④嚥下訓練指示
図 3 経管栄養からの嚥下評価・訓練モデル
てきました。歯科医師と在宅医師との連携で浮いた
医療費の一部を新モデル構築に向けた財源に活用す
れば、保険者との共存も実現するのではないでしょ
うか。
参考文献
1)会田薫子,宮田裕章ほか(東大大学院医学系研究科公共健康医
学専攻老年社会科学分野):平成 20 年実施調査「療養病床にお
ける経管栄養法の施行実態と、その関連要因に関する調査・報
告書」,2008.
2)山中 崇,石井雅之:遷延性意識障害患者の残存嚥下機能調
査,日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌,8(2):
26-30,2004.
3)小川太郎:嚥下反射改善作用を有する薬剤による経管栄養中の
呼吸器感染予防,日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌,
13(1):26-30,2009.
4)安元真希子,有田桂子ら:当院で胃瘻造設術を施行した 114
症例の検討,栄養−評価と治療,24(2):212,2007.
5)井手 昇,渡邉英夫:胃瘻造設患者の長期管理に伴う合併
症 の 検 討,Journal of Clinical Rehabilitation,17(6):
611-614,2008.
6)尾原知行,芦原 英ほか:当院における経皮内視鏡的胃瘻造設
術(PEG)の有用性と問題点に関する検討,京都医学会雑誌,
48(1):91-94,2001.
7)金沢郁夫,豊田章宏:当院における胃瘻(PEG)の現況,リハ
ビリテーション医学,36(12):966-967,1999.
8)小野博美,大滝秀穂ほか:経皮内視鏡的胃瘻造設術における
合併症の検討,Endoscopic Forum for digestive disease,
14(2):233,1998.
9)蟹江治郎,河野 勤ほか:経皮内視鏡的胃瘻造設術術後,経管栄
養を離脱し得た症例に対しての検討,在宅治療と内視鏡治療,
14(1):13-17,2000. 8020 No.10 2011-1
129
5
●●● 8020 推 進 財 団 の 幅 広 い 研 究 活 動 を ご 紹 介 し ま す ●● ●
がん終末期の患者に起こる口腔の問題
研究テーマ:がん終末期における口腔内環境と口腔内合併症の縦断的観察研究ならび
に口腔ケア介入による経口摂取支援の可能性に関する研究
静岡県立静岡がんセンター歯科口腔外科部長 大田洋二郎
がんの終末期には、さまざまな口腔トラブルが起こるため、歯科との連携が必須になります。しか
し、このような連携は、残念ながらがん治療を行うすべての病院で行われているわけではありません。
今回、当院で緩和医療を受けている患者さんに対して、口腔に起こる問題を調査して、緩和医療にお
ける歯科の果たす役割、その重要性を見いだす研究を行いました。
1.研究のデザイン
2002 年 9 月の静岡県立静岡がんセンター開院か
ら 2008 年 3 月までに緩和医療科(がんの積極的な
医療は行わず、痛みや精神的苦痛を和らげる治療を
行う診療科)から歯科へ診察の依頼があり、歯科治
療や口腔ケアを行った 209 名を調査しました。
診療依頼があった患者の男女の内訳は、男性 113
名、女性 96 名でした。年齢の幅は 34 〜 94 歳で、
平均年齢は 68.3 歳でした。年齢分布は 70 歳代に
ピークがあり、これは一般的ながんの好発年齢が 60
歳〜 70 歳ですのでそれに似た分布だと言えます(図
1)
。
2.研究結果
< 結果 1>
患者さんは、どのような問題があり、歯科を受診
するのか、その動機について調査を行いました。歯
科を受診した理由を、次の 4 つに分類しました。①
口の中が不衛生になり清掃をしてほしいという理由
で行うう口腔ケア、②歯科を受診する機会がなく使
用している義歯が合わなくなった理由で行う義歯の
調整、③治療中、歯が痛くなったり、歯茎がはれた
りしたことによる歯科の治療、そして、④口に腫瘍
ができたり、口の粘膜に潰瘍や感染が起こり、何ら
かの歯科的処置を行った場合を、その他に分類しま
した。その結果、4 割が口腔ケアの依頼、3 割が、
義歯の調整、2 割がむし歯や歯周病を治す歯科治療、
残りの 1 割はその他に分類されました。
口腔ケアの依頼があり歯科を受診する患者さんの典
型的な口腔の様子を示します(図 2)
。がん終末期は、
患者さん自身で口の中を清掃することができなくな
り、一気に口の中が不潔な状態になります。口の中が
カラカラに乾燥して、舌の粘膜の成分が付着します。
130
8020 No.10 2011-1
< 結果 2>
次は、がん終末期の患者さんが歯科を受診した際
に、口の中に現れていた症状を調査した結果です。
①カンジダ菌による感染
歯科を受診したすべての患者さんの 13% の
口腔内にカビの一種であるカンジダ菌が増えた
カンジダ性口内炎という症状が確認されました。
この細菌は、健康な人の口の中にも認める菌で
普段は問題になりません。しかし、がん終末期は、
全身的体力が次第に低下していくこと、そして
さまざまな身体的症状を改善するために、ステ
ロイド投与も多く行われます。これらは、双方
とも免疫的な抵抗力の低下を起こしますので、
カンジダ菌が増殖します。カンジダ性口内炎は、
口の粘膜には白い粉チーズのようなものが付着
し、ピリピリ、チクチクといった弱い痛みを起
こします。
口腔ケアを目的に歯科受診した患者さんに
限ってみれば 4 人にひとりが、このカンジダ性
口内炎の症状でした。これは医療者が、カンジ
ダ菌が口腔内に増殖した状態を、食べたものや
汚れがついて取れない状態と、見逃してしまっ
たことが原因にあったと私は推測しています。
性別・年齢別・患者分布
人
80
平均 68.4歳
男
女
70
60
50
46
40
28
14
30
16
20
10
0
2
1
5
5
30歳代
40歳代
25
50歳代
24
60歳代
26
70歳代
14
2
1
80歳代
90歳代
図 1 歯科治療や口腔ケアを行った 209 名を調査
8020 研究事業公募課題の概要報告 ●
図 2 がん終末期の患者さんの口の様子
カラカラに乾いて、舌の上に白い皮のようなも
のが付着する
図 3 がん終末期の患者さんの喉の奥に白いも
のが付着
カンジダ菌が口からのどに拡がっている
図 3 は、がん終末期の患者さんによく見られ
るカンジダ菌の増殖した状態の写真です。私た
私たちの施設でも、看護師が患者さんの口腔ケア
を 1 日 3 回行っていても、口の症状が改善しない場
ちは、医師や看護師、その他の職種の方々にも、
講習会や学会で、こうした病気の存在を啓発し
ていかなくてはならないでしょう。
合や、歯科的な治療が必要になることがしばしばあ
ります。今回の調査では、口が渇く、義歯が合わない、
そして歯の治療を受けたいという患者さんが毎年 40
②口が渇く症状
歯科受診時に、口の中が極端に乾いた症状が
あった患者さんは約 4 割に認められました(図
2)
。この口が渇くというのは、がんの終末期に
特徴的な病状です。病状が少しずつ悪くなると
食事の量も減ります。次第に日常の行動も少し
ずつ制限されるようになります。その結果、体
重も減り、併せて体の中の水分も減り、少し脱
水状態に近い状態になるので口が渇きやすくな
ります。また精神的にも不安定な状況をほとん
どの患者さんが経験されます。その場合に使用
される精神安定剤や睡眠剤のような薬の服用が、
唾液の分泌を抑制する働きがあるので、口はよ
り渇きやすい状況になるのです。
口を湿らす方法で最も一般的な方法は、少量
の水を飲んだり、口に含んだりすることです。
しかし、これでは長時間潤った状態を保つこと
はできないので、市販の保湿剤の使用を勧める
ことがよくあります。現在のところ、点滴をし
て体の中に水分を補っても、口の乾燥は改善し
ないことが報告されていますので、こうした方
法に頼らなくてはならないのです。
3.がん終末期医療に果たす
歯科の役割とは
がん終末期の患者さんには、口の乾燥、カンジダ
菌の感染、口臭、味覚の障害などがあります。患者
さんにとって大変つらいもので、がんによる疼痛や
精神的な苦痛などに加えて、こうした口の症状が出
ることは、患者さんの治療中の生活の質、場合によっ
て人としての尊厳までを著しく低下させてしまいま
す。
名ほどいました。この数字は、歯科が行う治療やケ
アが、がん治療の重要な支持療法であるという認識
が病院内に浸透し、緩和医療病棟の患者さんに口腔
ケア介入を広く受け入れられた結果だと思います。
しかし 4 割の患者の口が乾燥し、13% にカンジダ
性口内炎が見逃されている現状をみると、医療者間
の情報の共有を図り、口腔の問題に対する理解を深
めるための努力がまだ足りないと反省をしています。
もしかしたら、医科と歯科の連携が取れていない施
設では、これより厳しい状況があるかもしれません。
日本国民の死因のトップががんであり、毎年 34 万
がなくなるという現実をみると、病院ばかりでなく
在宅の現場も含め、医科と連携した歯科のサポート
が受けられる体制づくりが今後は重要になるでしょ
う。
参考文献
1)がんの統計
http://ganjoho.ncc.go.jp/public/statistics/
backnumber/2009_jp.html
2)Brown, J.O., Hoffman, L.A.:The dental hygienist as
hospice care provider. The American Journal Hospice
& Palliative Care, March/April,31-35:1990.
3)Gillan, J. L., Gillan, D.G.:The assesment and
implementation of mouth care in palliative care: a
review. J.R. Soc. Promot. Health,126(1):33-37,
2006.
4)Sweeney, M. P., Bagg, J., Baxter, W. P., Aitchison, T.
C.:Oral disease in terminally ill cancer patients with
xerostomia. Oral Oncology,34:123-126,1998.
5)Ellershaw, J. E., Sutcliffe, J.M., aSaunders, G. M.:
Dehydration and the Dying Patient. Journal of Pain and
Symptom Management,10(3):192-197,1995.
6)Aldred, M.J., Addy, M.MSc, Bagg, J. et al.: Oral health
in terminally ill:a cross-sectional pilot survey. Special
Care in Dentistry,11(2):59-62,1991.
8020 No.10 2011-1
131
■ブック紹介コーナー
Essay ちょっとひと息
ブック紹介コーナー
再生医療生物学というものに興味を持ち、本をさがしていると 2 冊の本に出会えました。1 冊は、プラナ
リアという生物を題材にした小学高学年を対象にしたと思われる「切っても 切っても プラナリア」という絵
本形式の本。もう一冊は、生物の再生能力のメカニズムと医療への応用を解説した専門分野への入門書でした。
今回は「再生能力」にスポットを当てた一般書と専門書の 2 冊をご紹介します。
(会誌「8020」編集委員会委員・池田保之)
『切っても 切っても
プラナリア』
著者:阿形 清和 文
土橋とし子 絵
発行:岩波書店
定価:本体 1,800 円 + 税
「ドラゴンボール」というアニメで、戦って腕を切
られても、すぐに元通りになってしまうナメック星
人が登場しますが、地球にはもっとすごい動物がい
るのをご存知でしょうか。体をズタズタに切られて
も、死ぬどころかどれもがもとと同じからだになっ
てしまい、数がふえてしまう。それがプラナリアと
いう生き物です。
一匹を 10 個に切られても、それぞれが一匹になっ
て 10 匹に増えてしまう恐るべき能力の持ち主なので
現代生物科学入門 7
『再生医療生物学』
著者:阿形清和、中内啓光、山中伸弥
岡野栄之、大和雅之
発行:岩波書店
定価:本体 2,800 円 + 税
再生現象には大きく分けてふたつあります。ひと
つは生理的再生であり、もう一つは損傷からの再生
です。本書の主題である再生医療生物学は、主とし
て外から人為的に損傷を受けたり、遺伝性疾患をもっ
て生まれたりしたときに、薬では治らない損傷を修
復するために、細胞療法によって治そうとするもの
です。このような細胞による損傷修復のモデル実験
す。プラナリアは意外と日本のどこに
でもいます。きれいな水があれば、水
の中にある石や枯れ葉をめくると見つ
けることができます。プラナリアのエ
サは水生昆虫なので、農薬をあまり
使っていない田んぼの用水路がねらい
めです。
『切っても 切っても プラナリア』
という本は絵本形式のプラナリアのマ
ニュアル本といってもいいでしょう。この不思議な
生物プラナリアを見つけて、飼って、実験するまで
の方法が図解されています。お子さんたちは、再生
を観察して、再生のルールがわかってきます。そし
てそのしくみを勉強することができるわけです。自
由研究の題材としては最適です。
ぜひ、小学生のお子さんのいる家庭でご利用いた
だきたい本としておすすめします。
中内氏が解説。
また、iPS 細胞の発見は、再生医療
の研究を加速させました。その第一人
者である山中氏が、その発見にいたる
経緯も含め、要点を解説しています。
第 4 章では、ES 細胞や iPS 細胞の
研究を通して、医療への応用について
概要と発展性のある分野を選んで岡野
氏が解説しています。
第 5 章では、これらとむすびついて、実際にも応
用の進んでいる細胞工学の研究の入門的な解説を
大和氏が執筆しています。
基礎生物学の発展と相まって、細胞シートの作成
技術の開発などにより、難病といわれた脊髄損傷、
心筋梗塞、血管障害、また遺伝子の欠損による先天
的なインスリン欠乏症なども克服されようとしてい
は、1744 年にはヒドラ、またプラナリアの再生も非
常によく研究されてきました。
第 1 章では阿形氏が進化と結び付けて解説してい
ます。これからのこの分野は、大きく発展し、また
注目を浴びることになるでしょう。再生科学、再生
医療の生物学に関心のある方には、学習の一助とな
ます。
第 2 章では、幹細胞研究と医療応用の基礎知識を
る本としておすすめします。
132
8020 No.10 2011-1
8020 推進財団からの報告
8020推進財団からの報告
財団法人 8020 推進財団
財 産 目 録
平成 22 年 3 月 31 日現在
科 目
Ⅰ 資産の部
1. 流動資産
普通預金
普通預金(ロゴマーク収益口座)
財団法人 8020 推進財団
流動資産合計
2. 固定資産
平成 21 年度一般会計収支決算
(1) 基本財産
平成 21 年 4 月 1 日から平成 22 年 3 月 31 日まで
(円)
基本財産合計
決算額
科 目
(2) 特定資産
①運営基金積立資産
Ⅰ 事業活動収支の部
運営基金積立資産合計
1.事業活動収入
②退職給付引当資産
退職給付引当資産合計
①基本財産運用収入
2,749,237
③事務所移転準備積立資産
②特定資産運用収入
2,591,880
事務所移転準備積立資産合計
④公募研究助成基金積立資産
③会費収入
109,753,000
公募研究助成基金積立資産合計
④事業収入
2,994,792
特定資産合計
(3) その他固定資産
⑤寄付金収入
0
その他固定資産合計
⑥雑収入
403,445
固定資産合計
資産合計
事業活動収入計
118,492,354
Ⅱ 負債の部
1.事業活動支出
1. 流動負債
預り金
①事業費支出
79,660,954
流動負債合計
②管理費支出
29,388,737
2. 固定負債
退職給付引当金
事業活動支出計
109,049,691
固定負債合計
事業活動収支差額
9,442,663
負債合計
正味財産
1.平成 21 年度一般会計収支決算
Ⅱ 投資活動収支の部
①基本財産取崩収入
0
②特定資産取崩収入
264,977,832
投資活動収入計
264,977,832
2.投資活動支出
①基本財産取得支出
0
②特定資産取得支出
267,101,966
退職給付引当資産取得支出
事務所移転準備積立資産取得支出
公募研究助成基金積立資産取得支出
③固定資産取得支出
55,297
2,057,530
11,307
264,977,832
0
什器備品取得支出
0
投資活動支出計
267,101,966
投資活動収支差額
△ 2,124,134
Ⅲ 財務活動収支の部
1.財務活動収入
財務活動収入計
0
2.財務活動支出
財務活動支出計
0
財務活動収支差額
0
Ⅳ 予備費支出
当期収支差額
50,432,791
4,099,976
54,532,767
387,000,063
387,000,063
869,419
869,419
12,238,037
12,238,037
168,051
168,051
264,988,657
264,988,657
278,264,164
434,807
434,807
665,699,034
720,231,801
87,530
87,530
12,238,037
12,238,037
12,325,567
707,906,234
財団法人 8020 推進財団
1.投資活動収入
運用基金積立金取得支出
(円)
金 額
0
7,318,529
前期繰越収支差額
47,126,708
次期繰越収支差額
54,445,237
正味財産増減計算書
平成 21 年 4 月 1 日から平成 22 年 3 月 31 日まで
科 目
Ⅰ 一般正味財産増減の部
1. 経常増減の部
(1) 経常収益
①基本財産運用益
②特定資産運用益
③受取会費
A 会員受取会費
B 会員受取会費
C 会員受取会費
④受取事業収益
⑤受取寄付金
⑥雑収益
経常収益計
(2) 経常費用
①事業費
②管理費
経常費用計
当期経常増減額
2. 経常外増減の部
(1) 経常外収益
経常外収益計
(2) 経常外費用
退職給付費用会計基準変更時差異
経常外費用計
当期経常外増減額
当期一般正味財産増減額
一般正味財産期首残高
一般正味財産期末残高
Ⅱ 指定正味財産増減の部
当期指定正味財産増減額
指定正味財産期首残高
指定正味財産期末残高
Ⅲ 正味財産期末残高
(円)
金 額
2,749,237
2,602,705
109,753,000
38,980,000
68,800,000
1,973,000
2,994,792
0
403,445
118,503,179
80,087,674
31,047,503
111,135,177
7,368,002
0
0
0
0
7,368,002
316,538,232
323,906,234
0
384,000,000
384,000,000
707,906,234
8020 No.10 2011-1
133
8020 推進財団からの報告
2.役 員
(任期:平成 22 年3月 31 日まで)
理 事 長 大久保満男 (社)日本歯科医師会会長
法人申請に向けた定款変更案、賛助会員規則改正案、
役員及び評議員の報酬等並びに費用に関する規程案、
平成 22 年度正味財産増減計算書(予算案)の各議案が
了承された。
副理事長 濱田 和生 サンスター(株)代表取締役社長
これを受けて、本財団では内閣府公益認定等委員会
副理事長 山科 透 (社)日本歯科医師会副会長
に申請するべく 9 〜 10 月に書類を整え、11 月 19 日(金)
専務理事 新井誠四郎 元(社)日本歯科医師会専務理事
に申請を行った。今後は内閣府の審査結果を待つこと
常務理事 池主 憲夫 (社)日本歯科医師会常務理事
となる。
常務理事 小谷田 宏 (社)日本歯科医師会常務理事
常務理事 河合 克美 (株)ロッテ取締役
(3)第 8 回フォーラム 8020 の開催
常務理事 宇山 徹 (財)サンスター歯科保健振興財団専務理事
10 月 2 日(土)午後 1 時から愛知県歯科医師会館 4
理 事 坂井 剛 元(社)日本歯科医師会常務理事
階ホールにおいて、学術集会第 8 回フォーラム 8020 を
理 事 山﨑 芳昭 (社)日本歯科医師会常務理事
開催した。「生きる力を支える歯科医療〜住民の視点に
理 事 小林健二郎 ライオン(株)上席執行役員/国際事業本部長
立った医療連携の在り方〜 」をテーマに講演及びシン
理 事 滝口 俊男 (株)ロッテ中央研究所所長
ポジウムを行った。
理 事 西原 直也 パナソニック電工(株)上席執行役員/電器事業本部長
基調講演では、独立行政法人国立長寿医療研究セン
理 事 牧野 晋也 サンスター(株)広報室室長
ター総長・大島伸一氏「多職種協働による医療連携の
理 事 金澤 紀子 (社)日本歯科衛生士会会長
取り組み」、次いで講演では、前厚生労働省医政局歯科
理 事 中尾 眞 (社)日本歯科商工協会会長
保健課長日髙勝美氏より、
「歯科保健医療対策の動向〜
理 事 江藤 一洋 日本歯科医学会会長
医療連携について考える〜」
、また愛知県歯科医師会理
理 事 井上 栄 大妻女子大学家政学部教授
事・佐藤理之氏より「愛知県での 8020 社会を目指した
理 事 井上 修二 桐生大学医療保健学部副学長兼医療保健学部長
医療連携」が報告された。引き続き、シンポジウムでは、
理 事 小野塚 実 神奈川歯科大学歯学部教授
五 十里明氏(愛知県健康福祉部健康担当局長)、志村
理 事 鴨井 久一 日本歯科大学名誉教授
清一氏(中日新聞社編集局長)
、角町正勝氏(日本歯科
常務監事 柳川 忠廣 (社)日本歯科医師会常務理事
医師会理事)、池山豊子氏(愛知県歯科衛生士会会長)
監 事 末髙 武彦 日本歯科大学新潟生命歯学部教授
より、それぞれの各報告の後、基調講演者全員が登壇
3.平成 21 年度の活動状況
(1)第 1 回理事会・第 27 回評議員会の開催について
い
か
り
つのまち
され、テーマに基づき座長・宮村一弘愛知県歯科医師
会長の進行により行われた。参加者は 284 名となった。
●プログラム
平成 22 年 6 月 30 日(水)第 1 回理事会・第 27 回評議
員会を開催した。午後 2 時から第 1 回理事会を歯科医師
総合司会:社団法人愛知県歯科医師会専務理事
会館 8 階会議室において、第 1 号議案から第 8 号議案の
須賀 均
全議案が承認された。
□開会のことば 社団法人愛知県歯科医師会副会長 同 3 時から、東京都歯科医師会 3 階会議室において、
渡辺 正臣
第 27 回評議員会を開催。同じく第 1 号議案から第 7 号
挨 拶 財団法人 8020 推進財団理事長
議案の全議案を可決承認した。
大久保満男
平成 21 年度事業報告及び収支決算報告並びに監査報
社団法人愛知県歯科医師会会長
告の議案の他に、公益財団認定申請に向けた「定款変
宮村 一弘
更案」「賛助会員規則改正案」
「役員及び評議員の報酬
□基調講演 「多職種協働による医療連携の取り組み」
等並びに費用に関する規程案」
「平成 22 年度正味財産
独 立 行 政 法 人 国 立 長 寿 医 療 研 究 セ ン
増減計算書(予算書)
」の議案について審議を行い全議
案が了承された。
ター総長 大島 伸一
□講 演 「歯科保健医療対策の動向〜医療連携に
ついて考える〜」
(2)公益財団法人の申請について
6 月 30 日(水)開催の第 1 回理事会及び第 27 回評議
員会において、平成 21 年度決算議案のほか、公益財団
134
8020 No.10 2011-1
前厚生労働省医政局歯科保健課課長
日髙 勝美
□報 告 「愛知県での 8020 社会を目指した医療
8020 推進財団からの報告
各委員より積極的な意見が出され、12 月中に完成
連携」
社団法人愛知県歯科医師会理事
し賛助会員はじめ各関係方面に送付した。
佐藤 理之
□休 憩
□シンポジウム 「生きる力を支える歯科医療〜住民の
視点に立った医療連携の在り方〜」
講 演 「愛知県における医科と歯科の連携につ
いて〜歯周病と糖尿病の連携(あいち
モデル)を目指して〜」
愛知県健康福祉部健康担当局局長
い
か
り
五十里 明
講 演 「これからの歯科医療のあり方」
中日新聞社編集局局長 志村 清一
講 演 「超高齢社会の中で尊厳を支える歯科機能
〜そのために求められる医療連携の仕
(5)調査・研究
<調査・研究の報告書作成>
組み〜」
社団法人日本歯科医師会理事
つのまち
角町 正勝
講 演 「すべての人に優しさと豊かさを〜口腔
①「平成 21 年度 8020 公募研究報告書・同報告書抄録」
を作成し、昨年 7 月に賛助会員はじめ関係方面に
配布した。
ケアの可能性〜」
社団法人愛知県歯科衛生士会会長
池山 豊子
□ シンポジウム
座 長/社団法人愛知県歯科医師会会長
宮村 一弘
●独立行政法人国立長寿医療研究センター総長
大島 伸一
●前厚生労働省医政局歯科保健課課長
日髙 勝美
●愛知県健康福祉部健康担当局局長
五十里 明
志村 清一
②「平成 21 年度 8020 推進財団歯科保健活動事業助
●社団法人日本歯科医師会理事 角町 正勝
成交付報告書」を作成し、昨年 7 月に賛助会員は
●社団法人愛知県歯科衛生士会会長
じめ関係方面に配布した。
●中日新聞社編集局局長
池山 豊子
●社団法人愛知県歯科医師会理事 佐藤 理之
□閉会のことば 社団法人愛知県歯科医師会副会長
渡辺 剛
(4)国民向け小冊子等の発行
○「歯を大切にしてスポーツを楽しく〜歯とお口が運
動能力アップの鍵〜」( 小冊子 )
22 年度の小冊子作成について、昨年 11 月 11 日 ( 木 )
午後 4 時、
「歯を大切にしてスポーツを楽しく〜歯と
お口が運動能力アップの鍵〜」について、広報委員
会 ( 委員長:三澤正文 ) を開催し小冊子の内容につい
て協議した。
8020 No.10 2011-1
135
8020 推進財団からの報告
<調査・研究の実施>
(6)平成 22 年度 8020 公募研究事業
平成 17 年度より本財団は、指定研究事業として
9 月 3 日 ( 金 ) 午後 3 時より 8020 調査研究委員会を開
8020 研究事業の振興を一層推進するため指定した研
催し、7 月 31 日の締切までに応募のあった 70 題の公募
究題目について研究を依頼している。平成 22 年度は、
研究申請について審査を行った。引き続き、同日開催
下記の 4 つの指定研究を選定した。
した第二次審査において総合的評価を経たのち、下記
①歯科医師を対象とした歯と全身の健康、栄養と
の 13 題の採択を決定し、採択者宛に連絡した。
< 公募研究課題 >
の関連に関する研究
研究者名:若井 建志(名古屋大学大学院医学系
研究科予防医学 / 医学推計・判断学 准教授)
②多目的コホート研究(JPHC study)における口
1.口腔保健に関する疫学調査
2.8020 と QOL・ADL および介護・終末期医療に関
する研究
3.高齢者の摂食・嚥下機能および口腔ケアに関する
腔と全身の健康に関する研究
研究者名:川口 陽子(東京医科歯科大学大学院
研究
4.オーラルヘルスプロモーションおよび歯の保存、
健康推進歯学分野教授)
抜歯に関する研究
③だ液検査標準化に関する研究
研究者名:花田 信弘(鶴見大学歯学部探索歯学
5. 自由研究課題
講座教授)
④学童期フッ化物配合歯磨剤利用状況調査
研究者名:平田 幸夫(神奈川歯科大学社会歯科
学講座歯科医療社会学分野教授)
採択申請者
所 属 施 設
職 名
江國 大輔
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
予防歯科分野
助 教
生活習慣病予防対策としての食育に関する歯科的介入
八木 稔
新潟大学大学院医歯学総合研究科
准教授
新しい「成人歯科健診・指導プログラム」による行動変容の評価
服部 佳功
東北大学大学院歯学研究科
加齢歯科学分野
准教授
メタ解析による大規模縦断研究を前提とした新しい疫学研究戦略
−口腔状態と精神機能との関連解明に向けて−
萩原 芳幸
日本大学歯学部歯科補綴学教室 III 講
座歯科インプラント科
藤本 篤士
戸原 玄
⻆ 保徳
医療法人渓仁会札幌西円山病院
(歯科診療部)
日本大学歯学部摂食機能療法学講座
准教授(インプ
ラント科科長)
歯科診療部長
准教授
国立長寿医療研究センター
歯科口腔外科
(先端機能回復診療部歯科口腔外科) 医長
インプラント治療が施されている要介護者の実態調査と口腔ケアに
おける問題点の抽出
終末期における歯科医療の在り方に関する検討
“開口”を用いた新しい摂食・嚥下機能訓練の開発とその効果の
検証
口腔ケア介入による高齢者の認知機能や ADL の維持・改善効果に
関する研究
総合的な口腔機能向上プログラムの介入による認知機能の改善に
関する研究
石川 正夫
財団法人ライオン歯科衛生研究所
北村 正博
大阪大学大学院歯学研究科
准教授
歯周病罹患歯の保存可能期間の推定
埴岡 隆
福岡歯科大学
教 授
欠損補綴患者の地域連携禁煙クリティカルパスの標準化に関する
行動科学的調査研究
武井 典子
財団法人ライオン歯科衛生研究所
山本 龍生
神奈川歯科大学社会歯科学
准教授
関東 7 都県の市区町における 3 歳児う蝕の地域集積性
永田 俊彦
徳島大学大学院
ヘルスバイオサイエンス研究部
教 授
高齢者を対象とした歯周病と糖尿病の関連性の検討
−新規バイオマーカーの検索を中心に−
136
8020 No.10 2011-1
副主任研究員
研 究 課 題 名
研究部主任
食べ方を育てる学童期の食育「噛ミング 30」
〜意志決定スキルを適用した咀嚼法の開発と食べ方支援〜
8020 推進財団からの報告
び第二次審査を行い、下記の 29 題を採択し、各事業に対
(7)歯科保健活動事業助成交付
平成 22 年度の歯科保健活動事業助成交付申請は、6 月
して助成交付を行った。
30 日の締切までに 54 題の応募があり、第一次審査会およ
機 関
事業名と申請団体名は次のとおり。
事 業 名
実 施 組 織
社団法人 北海道歯科医師会
禁煙支援歯科医療従事者養成講習
北海道歯科医師会、北海道、北海道歯科衛生士会
社団法人 千葉県歯科医師会
保健医療介護職種への事業所歯科健診事業
事業主体:千葉県歯科医師会地域保健医療委員会 事業協力団体:
(予定)千葉県介護保険関係団体、千葉県民間病院
協会、千葉県歯科病診連携連絡協議会、千葉県歯科衛生士会
社団法人 埼玉県歯科医師会
日本歯科医師会「標準的な成人歯科健診プログラ
ム・保健指導マニュアル」を用いた歯科診療室に
おける保健指導の普及定着事業
埼玉県歯科医師会
社団法人 東京都歯科医師会
歯周病と糖尿病の係わりに関する普及啓発事業
東京都歯科医師会成人保健医療常任委員会
社団法人 長野県歯科医師会
食育と歯の健康を中心とした健康づくり支援事業
長野県歯科医師会 食育と歯の健康を中心とした健康づくりを推進
する会賛者
社団法人 新潟県歯科医師会
新 潟 県歯 科 医 師 会 が 事 業 主体となり、住 民 活 動 支 援 組 織である
NPO との協働による住民参加型歯科保健推進事 「NPO 法人まちづくり学校」、県福祉保健部、新潟市保健所、新潟
大学、青年会議所、自治体等を加えた企画運営組織(通称:は〜も
業(はーもにープロジェクト)
に〜プロジェクト)を形成し事業を実施
社団法人 静岡県歯科医師会
住民歯科会議設置推進・運営活性化モデル事業
8020 健康静岡 21推進会議
社団法人 愛知県歯科医師会
愛知県がんセンターとの医療 連携推進委員会な
らびに、同センターとの医療連携研修会事業
愛知県歯科医師会
社団法人 空知歯科医師会
北海道におけるフッ化物洗口による、むし歯有病
者率減少の取り組み
空知歯科医師会
社団法人 小樽市歯科医師会
学童期キャリア教育に於ける歯科啓発活動
小樽市歯科医師会、北海道歯科衛生士会、北海道歯科技工士会
社団法人 仙台歯科医師会
介護療養型病院とのシームレスな口腔ケアネット
ワークの構築
仙台歯科医師会、介護療養型病院
社団法人 富岡甘楽歯科医師会
フロリデーション(水道水フッ化物濃度調整)に
ついての啓発活動
富岡甘楽歯科医師会、富岡市、下仁田町、南牧村、甘楽町、下仁
田町健康づくり推進協議会、下仁田町保健推進員協議会、下仁田
町フロリデーション推進会議、住民組織等、厚生労働科学研究「フッ
化物応用の総合的研究班」、日本口腔衛生学会(学術支援)
印旛郡市歯科医師会
デイサービスにおける口腔機能向上プログラム実
施支援事業
実施主体:印旛郡市歯科医師会 協力団体:千葉県歯科衛生士会
対象者:デイサービス職員、ケアマネージャー、高齢者施設関係者
社団法人 千葉市歯科医師会
千葉 市における 8020 長 生きよい歯のコンクー
ル受賞者のその後 5 年間の口腔内実態調査と統
計学的考察
千葉市歯科医師会
社団法人 横浜市歯科医師会
横 浜市における歯 科保 健ニーズの調査と保 健 活
動の実践
横浜市歯科医師会、鶴見大学歯学部予防歯科学講座
社団法人 厚木歯科医師会
厚木地区における口腔ガン検診 3 年間の報告
厚木歯科医師会
神奈川区歯科医師会
進行する高齢社会において高齢者の尊厳を維持
し、生涯現役で暮らすことを目標にした地域歯科
医師会および、地 域ケアプラザ 連 携による地 域
包括 介護予防システムの構築とその効果に関す
る検討
神奈川区歯科医師会地域医療委員会、新子安ケアプラザ、反町ケ
アプラザ、羽沢ケアプラザ、神之木ケアプラザ、片倉三枚ケアプラザ、
菅田ケアプラザ
「食」と「健康」にかかわる多職種の連携・協働
による食育推進事業
甲府市歯科医師会、山梨県栄養士会、山梨県調理師会、中北保健所、
昭和大学歯学部口腔衛生学教室
社団法人 甲府市歯科医師会
社団法人 島田市歯科医師会
地域診断結果と 8020 住民歯科会議の融合
島田市歯科医師会
社団法人 豊田加茂歯科医師会
学童期食育支援研究事業
豊田市教育委員会、愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座、豊田加
茂歯科医師会
京都府歯科医師会上京支部
糖尿病に関する「地域拠点病院 - 歯科診療所」連
携の試み
京都府歯科医師会上京支部公衆衛生委員会、京都第二赤十字病院・
歯科・口腔外科、代謝・内分泌科、地域連携室
邑智(おおち)郡歯科医師会(島
根県)
第二回邑智郡要介護者残存歯数調査
主催:邑智郡歯科医師会 後援:島根県県央保健所、邑智郡総合事
務組合介護保険課
社団法人 佐世保市歯科医師会
特別養護 老人ホームにおける入 所者の食 形態と
咀嚼回数の実態調査
佐世保市歯科医師会
8020 No.10 2011-1
137
8020 推進財団からの報告
機 関
事 業 名
実 施 組 織
財団法人 ライオン歯科衛生研
究所
墨田区 お口の健康運動から 健康な地域づくりII
財団法人ライオン歯科衛生研究所、東京都向島歯科医師会、東京
都本所歯科医師会、墨田区福祉保健部保健衛生担当、すみだ食育
good ネット、住民組織 他
財団法人 ライオン歯科衛生研
究所
小中学生の歯科保健推進による自律的健康生活
習慣の育成
財団法人ライオン歯科衛生研究所、愛知県歯科医師会、名古屋学
芸大学、東海 LS 研究会、神戸大学
社団法人 日本歯科衛生士会
介護予防における口腔機能向上・維持管理の
推進を目指して〜都道府県歯科衛生士会モデ
ル事業の効果の検討と推進
日本歯科衛生士会、神奈川県歯科衛生士会(毎年、課題解決
型で実施都道府県を変えて実施)
県立広島大学保健福祉学部
唾 液 検 査をもちいた中学 生に対 する歯肉炎
対策と実践
三原市歯科医師会、岡山大学医歯薬学総合研究科行動小児歯
科学分野、岩手県予防医学協会、県立広島大学保健福祉学部、
三原市保健センター
吉川市役所
吉川市水道水フロリデーション普及啓発活動
事業
吉川市、吉川歯科医師会、吉川市母子愛育会、吉川市コミュニ
ティ協議会、吉川市栄町三区町会、フッ素利用をすすめる女性
の会、日本大学松戸歯学部(学術・技術支援)
、日本口腔衛生
学会(学術支援)
福岡・釜山健康づくり交流
事業実行委員会
−福岡・釜山健康トライアル−「健康で いく
つになっても元気ったい !」事業
主催:福岡・釜山健康づくり交流事業実行委員会 協力:福岡
市歯科医師会、福岡歯科大学口腔保健学講座、九州大学歯学
部口腔保健推進学講座
(8)8020 推進財団理事長賞
とを目的に「8020 ポスター」の募集を行っているが、
8020 運動の積極的な普及啓発を目的に、8020 を達
成しているお年寄りに対して 8020 推進財団理事長賞を
贈呈した。被表彰者の推薦は、都道府県歯科医師会会
昨年 9 月 30 日に締切り、10 月 20 日(水)に審査会を
開催した。
236 件という多数の応募の中、厳正な審査が行われ、
したら
めぐみ
長が 10 名以内を推薦し、表彰は都道府県歯科医師会が
設楽 萌さんら 5 人の方々の作品が選出された。委員に
行っている表彰事業の際に行っている。
は武蔵野美術大学教授柳澤紀子氏および同教授丸山直
平成 22 年度(平成 22 年 11 月 29 日現在)は、北海道、
文氏らの専門委員が加わり審査が行われた。
青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県、
茨城県、栃木県、千葉県、埼玉県、山梨県、長野県、
<最優秀賞>
<優秀賞>
新潟県、静岡県、愛知県、三重県、岐阜県、富山県、
石川県、福井県、滋賀県、奈良県、京都府、大阪府、
鳥取県、広島県、島根県、山口県、徳島県、香川県、
高知県、福岡県、長崎県、熊本県、宮崎県、沖縄県の
37 道府県より申請があり賞状を授与した。
(9)8020 運動ポスターの募集
財団では、
「8020 運動をより一層国民の方々に知っ
ていただき、歯の健康について理解していただく」こ
<入選>
したら
めぐみ
しばた
設楽 萌 さん
<入選>
あおき ま
り
え
青木真理絵 さん
138
8020 No.10 2011-1
たかの
く
み
高野 公美 さん
りょう
柴田 良 さん
<入選>
のざき
め
い
野崎 芽衣 さん
8020 推進財団からの報告
(10)
「噛むカムチェックガム」について
平成 22 年 4 月より、噛むカムチェックガムについて
(13)会誌「8020」の発行
会誌「8020」第 10 号を平成 23 年 1 月に発刊した。
申込み受付(オーラルケア社)をしたところ 22 年度分
の 10 万セットは 4 月末日までにすべて配送ずみとなっ
た。22 年度の状況を踏まえ対応を検討するとともに、
23 年度の製作もロッテ社のご協力をお願いしている。
(11)8020 運動・プレゼント・アンケートキャンペーン
平成 22 年 11 月 15 日(月)から平成 23 年 2 月 14 日 ( 月 )
までの 3 か月間、当財団のホームページにおいて 8020
アンケートを募集する。一般の方よりアンケートを求
め、抽選で 100 名様にサンスター社の協力商品をプレ
ゼントする。今回は、その第一弾として実施した。
(12)啓発用ポスターの作成
かねてより企画中であった財団の普及啓発用ポス
ターを作成した。第 1 回目のポスターは「歯の健康と
からだの健康の関係について」をテーマに 2,000 枚を
(14)会員レターの発行
5 月と 12 月(第 8 号・第 9 号)を発行し、関係方面
に配布した。
作成(A3 判サイズ、カラー)した。昨年 8 月 17 日に都
道府県歯科医師会、郡市区歯科医師会(賛助会員)、個
(15)賛助会員証の発行
人会員、団体会員、県庁、保健所、関係団体などに送
付した。
8020 No.10 2011-1
139
8020 推進財団からの報告
賛助会員を募集しています
あげます。
◆どなたでも入会できます
財団法人 8020 推進財団では、広く賛助会員の呼びか
◆賛助会員・賛助会費
賛助会員:A会員(歯科医師会)
、B会員(歯科医師会以
けを行っています。
どなたでも入会できますが、歯科医師会、歯科医師、
外の団体・会社)、C会員(個人)制度を設けています。
歯科に関係ある団体・企業の皆さまには、ぜひとも賛助
賛助会費:賛助会員籍のある間、毎年会費(4 月〜翌年 3 月)
会員としてご入会いただけることを、心よりお願い申し
を納めていただきます。
賛 助 会 員
賛 助 会 員
A 会員 ( 歯科医師会 )
イ . 日本歯科医師会
ロ . 都道府県歯科医師会
ハ . 郡市区歯科医師会
B 会員 ( 団体・企業 )
歯科医師会以外の団体・企業
5 万円 /1 口
C 会員 ( 個人 )
イ . 歯科医師
ロ . 歯科衛生士、歯科技工士、一般国民等どなたでも
1 万円 /1 口
1 千円 /1 口
◆入会の手続きは簡単です
・入会をご希望の方は、所定の申込書に必要事項をご記
入のうえ、当財団事務局までお申し込みください。
100 万円 /1 口
50 万円 /1 口
2 万円 /1 口
1 口以上
◆退 会
賛助会員は、退会届(様式は定めていません)を提出
して、任意に退会することができます。
・賛助会費は、下記の金融機関にお振り込みください。
◆住所が変更された場合
財団法人 8020 推進財団
〒 102-0073
転居・住所表示が変更となったときは、必ず当財団事
務局にご連絡ください。
東京都千代田区九段北 4-1-20 歯科医師会館
TEL(03)3512-8020 FAX(03)3511-7088
◆賛助会員へのサービス
取引金融機関 三菱東京 UFJ 銀行市ヶ谷支店
普通 1078253
①小冊子・パンフレット等の配布
口座名 財団法人ハチマルニイマル推進財団
②会誌の配布
③ 8020 デ−タ、調査研究等の情報提供
④その他、本財団が行う諸事業の利用
140
8020 No.10 2011-1
8020 推進財団からの報告
財団法人8020推進財団
賛助会員の申込みについて
下記の申込書に直接ご記入のうえ、FAXまたは郵送でご送付ください。
後日、納入依頼書を郵送させていただきます。
財団FAX番号:03-3511-7088
キリトリ線
財団法人8020推進財団
団体賛助会員(A会員・B会員)申込書
平成 年 月 日、賛助会員となることを申し込みます。
フ
リ
団
フ
ガ
体
リ
ナ
名
ガ
ナ
代 表 者( 担 当 者 )
役 職 ・ご 氏 名
( 団 体 / 会 社の場 合 )
〒 −
ご
住
都道
府県
所
電
市区
郡
話
F
A
X
口 円
賛 助 会 費 口 数
キリトリ線
財団法人8020推進財団
個人賛助会員(C会員)申込書
平成 年 月 日、賛助会員となることを申し込みます。
フ
リ
ご
フ
ガ
氏
リ
ナ
名
ガ
ナ
ご
職
業
ご
住
所
〒 −
電
F
都道
府県
市区
郡
話
A
X
賛 助 会 費 口 数
口 円
8020 No.10 2011-1
141
第 10 号
平成 23 年 1 月 31 日発行
No.10
編集後記
財団法人 8020 推進財団・会誌第 10 号をお届けします。
歯科医師を目指そうとする受験生の著しい減少に、私立
の歯科大学・歯学部がその対策に大変苦慮しています。先
進国の中でこのような状態はわが国だけの現象です。なぜ、
若者が歯科医師を目指そうとしないのでしょうか ? その理
由はいくつか挙げられていますが、歯科医療や歯科保健活
動が国民の健康状態や QOL 向上にいかに関わっているか
をさまざまな媒体を通じて十分に伝えていないことにある
と思います。第 10 号の内容をみると歯科医療に魅力がな
いと感じる箇所はどこにもありません。“8020 達成社会”
などむしろ魅力的に感じます。
8020 運動は、すでに多くの国民に認知され、歯科保健
に関する条例が、この 2 年間で 13 道県で制定され、地域社
財団法人 8020 推進財団
会誌編集委員会
委 員 長 梅村 長生
副委員長 松久保 隆
委 員 花田 信弘
佐々木 昇
村松 守
池田 保之
(担当役員)
専務理事 新井誠四郎
常務理事 小谷田 宏
理 事 江藤 一洋
■編 集 財団法人 8020 推進財団会誌編集委員会
会での歯科保健の推進の重要性が認識されてきています。
■発行人 大久保満男
歯科保健医療が、若年者の齲蝕有病の著しい減少と成人の
■発 行 財団法人 8020 推進財団
現在歯数の著しい増加として現れ、国民の口腔の機能の
〒 102-0073
維持増進に寄与していることは明らかな事実です。本誌
東京都千代田区九段北 4-1-20
「8020」は、この 10 年間にこの課題に関する多くのエビデ
ンスをさまざまな方面の方々の協力を得て掲載してきまし
た。今こそ歯科保健医療が国民の健康状態や QOL の向上
に大きく貢献していることを歯科医師を含め、本誌の読者
の皆様が、さまざまな方面の方々に伝えることに役立てて
TEL 03-3512-8020
FAX 03-3511-7088
ホームページ
http://www.8020zaidan.or.jp/
■印刷所 一世印刷株式会社
東京都新宿区下落合 2-6-22
ください。
今後とも読者の皆様のますますのご協力とご助言をよろ
しくお願いします。
会誌編集委員会副委員長 松久保 隆
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8020 No.10 2011-1
禁 無断転載 ©2011 財団法人 8020 推進財団
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