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土づくり通信 1 号で「JA みどりの管内」の園芸土壌の「メタボ化」の進行と
平成 25 年 8 月 21 日発行 文責:美里農業改良普及センター 先進技術班 土づくり通信 1 号で「JA みどりの管内」の園芸土壌の「メタボ化」の進行と土壌診断の重要性 について紹介しました。今回は、普及センターで平成 24 年に分析した 537 点の園芸土壌の傾向 を主要項目ごとに解析してみたいと思います。 まず、EC ですが、作付後の段階で 0.8mS/cm を超えていると一般的には残肥が多いと言えま す。概ね半数以上は EC が高いと判断され、作物の生育状況によっては除塩が必要なほ場が約半数 を占めています(図1)。除塩の具体的な手法は次ページを参照願います。 リン酸については概ね8割が 100mg/100g を超えており、リン酸無施用が可能です(図2)。 さらに塩基飽和度(石灰、苦土、カリの総量)については 9 割が上限値の 90%以上となっています (図3)。このようなほ場では EC が適正値であっても、3 要素を含んだ高度化成は必要なく、表1 のような窒素単肥による施肥でコストを下げられます。窒素単肥の展示ほではきゅうり(3号で紹 介)、こねぎ、トマトで十分な収量が得られています。いきなりの単肥が丌安な場合は、リン酸や カリ成分が低い化成の選択から始めてみてください(タマゴ化成 15-8-8 等)。 図1 管内分析土壌における EC の分布 40% 60% EC (mS/cm) 40% 適正 20% 不足 メタボ! 30% メタボ! メタボ 予備軍 20% 10% 0% メタボ 予備軍 不足 適正 0% 20以下 20~100 100~200 200以上 0.2以下 0.2~0.8 0.8~1.5 1.5以上 図3 管内分析土壌における塩基飽和度の分布 60% 40% メタボ 予備軍 30% 20% メタボ! 適正 不足 0% 70以下 表1 代表的な窒素肥料 種類 塩基飽和度 (%) 50% 10% リン酸 (mg/100g) 50% 30% 10% 図2 管内分析土壌におけるリン酸の分布 70~90 90~140 140以上 尿素 N % 46% 用途・特徴 硝安 34% 硫安 21% LPコート 40% 30~270日までタイプあり,施設栽 培の基肥として有効 ハイパーCDU 31% 微生物分解,短・中・長期あり IB 32~33% 加水分解,期間で2タイプあり (グッド・スーパー) 主に露地栽培で使用,安価 生育期間の短い作物や一般的な 追肥用として使用 主に露地で使用,硫酸根蓄積によ るpH低下に注意 ほ場の塩類は、水で洗い流すか植物に吸収させることで除去できます。洗い流し方法には多量の 水が必要ですが、短い期間で効率よく除塩できます。ここでは、この洗い流し除塩の方法やポイン トについて、実際のデータを交えてご紹介します。 ①排水性の確保 多くの園芸施設では、地下 20-30cm に耕盤が形成されてい ます(右図参照)。こうした圃場では洗い出された塩類が流出せず、 除塩の効率が悪くなります。深耕ロータリーやサブソイラー、ソ イルリフターにより耕盤を破砕して、排水性を改善しましょう。 施設圃場の耕盤(地下 20cm) ②かけ流す水の量 効果的な除塩を行うためには、200-300mm の水をかけ流す 必要があります。かけ流しを数回に分けても構いませんが、合計 200mm 以上は必要ですので、必ず守って下さい。60 坪ハウス の場合、200mm の水は約 40t に相当します。 作土の EC が 2mS/cm に対し耕 盤の EC は 0.2mS/cm であり、 耕盤の土には水と肥料がほぼ浸 透していないことが分かります。 ○作業工程 ①.ソイルリフターにより耕盤を破砕 (6 月 27 日) ②.耕うん (6 月 28 日) ③. 100 坪に 70t(200mm 相当)を灌水 ソイルリフターによる心土破砕 1 回目(20t):6 月 28 日 ハウスの縦方向に 7 列の破砕処理を行った。 2 回目(15t):6 月 29 日 左図は処理後の破砕跡、右図はソイルリフターの一例。 3 回目(25t):6 月 30 日 4 回目(10t):7 月 1 日 ④.自然に排水するまで待つ(7 月 23 日まで) ○結果 右の図の通り、EC が 1.9mS/cm から 0.6mS/cm、 硝酸態窒素が 51kg/10a から 2kg/10a に低下しました。 また、硝酸態窒素や硫酸根(イオン)が除去されたため、pH が 5.5 から 6.4 へと大幅に上昇しました。 ※硫酸根の数値は簡易測定の結果です このように、洗い流し除塩は塩類の除去に絶大な効果 を発揮します。作目にもよりますが、 土壌の EC が 1.0mS/cm 以上で生育障害が現れる圃場では、除塩の実 施をお勧めします。