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最近の米国経済について

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最近の米国経済について
情 報 報 告
シカゴ
●最近の米国経済について
○オバマ大統領が再選、激戦州を制す-米大統領選-
11 月 6 日に行われた大統領選挙でオバマ大統領が再選を果たした。当初優勢とみられていたオ
バマ候補がロムニー共和党候補の猛追を受けて、両者の支持率は選挙直前まで拮抗したが、激戦
州を確実に制したオバマ候補が勝利をものにした。性別、人種、世代、所得階層などの有権者の
社会的属性が、前回に比べて、投票行動により色濃く反映されたもようだ。
<予想以上の選挙人獲得も得票数ではほぼ拮抗>
オバマ候補は、勝敗のカギとなると予想されていた激戦州のうち、ニューハンプシャー、バー
ジニア、アイオワ、ウィスコンシン、コロラド、オハイオの各州で確実に票を伸ばし、6 日深夜
の段階で勝利を確実なものとした。一夜明けた米国東部時間 7 日 18 時時点の CNN の報道による
と、選挙人数(全 538 人)のうちフロリダ州を除く各州の結果が出そろい、オバマ候補が 303 人、
ロムニー候補が 206 人をそれぞれ獲得し、オバマ候補は過半(270 人)を大きく上回った。得票
数合計は、オバマ候補は 6,046 万票に対し、ロムニー候補は 5,765 万票と報じられている。
選挙戦序盤はオバマ候補の優勢が伝えられていたが、10 月 3 日のテレビ公開討論会を境にロム
ニー候補の支持率が上昇し、いったんは逆転されるなど、支持率は選挙直前まで拮抗する展開が
続いた。投票日の 11 月 6 日時点で、政治専門サイトのリアル・クリア・ポリティックスは、獲得
選挙人見込みとして、オバマ大統領 201 人、ロムニー候補 191 人、いずれもが獲得する可能性が
あるのは 11 州 146 人と予想。このため、支持率が拮抗する激戦州の結果が勝敗を分けるとの見
方が大勢を占める中、これらの州でオバマ候補が着実に勝利を収めたことが、最終的な大差につ
ながった。
中でも注目されたのが、それぞれ 18 人、13 人の選挙人を擁するオハイオ州とバージニア州。
ロムニー候補の勝利には、両州での勝利が計算上不可欠とみられたためだ。過去にオハイオ州で
負けて当選した共和党候補がいないこともあり、ロムニー候補は直前まで激しい追い上げを図っ
たが、僅差でオバマ候補が制した。オハイオ州の失業率は 7.0%(2012 年 9 月)で、全米平均の
7.9%(10 月)に比べて 1 ポイント近く低かったことが、雇用が最大の争点とされる今回の選挙
で、オバマ候補に吉と出たかもしれない。
<分断国家の現状を表す>
今回の選挙では、性別、人種、世代、所得階層などの有権者の属性が投票行動に色濃く反映し
たもようだ。オバマ候補は、「女性」「アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系」「若年者」「低所
得層」といったコアな支持層を維持する一方、
「男性」「白人系」「高齢者」「高所得層」などを中
心に支持離れが選挙戦前半から次第に明らかになっていった。過去 4 年間の経済政策に対する疑
問が支持離れの最大の原因だった。
そこでオバマ陣営は、元経営者として経済面の強みを強調するロムニー候補の民間投資家時代
の業績を批判するネガティブキャンペーンを展開するとともに、激戦州におけるコア支持層の投
票確保を重視する戦略を選択した。選挙結果はこうしたオバマ陣営の取り組みが奏功したことを
示す。ロムニー陣営とすれば、選挙中のロムニー陣営の不用意な発言などもあって、オバマ支持
層に少なからず潜んでいたといわれるオバマ離れの流れを十分につかめなかったことが敗因の 1
つとなったといえよう。無党派の有権者数が、前回選挙に比べて 10%近く増加したバージニア州
で敗れたことがそれを象徴している。
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調査報告 シカゴ
<優先課題の成果は 1 期目の前半に集中>
オバマ大統領が鮮烈な全米デビューを果たしたのは、2004 年 7 月の民主党全国大会で行った演
説である。歴史に残るフレーズ「リベラルな米国というものも、保守の米国というのもない、あ
るのはアメリカ合衆国だ」
「黒人の米国、白人の米国、ラティーノの米国、アジア人の米国という
のはない、あるのはアメリカ合衆国だ」と国民の統合を唱え、会場を沸かせた。上院議員に当選
後は、ブッシュ共和党政権が推進する包括エネルギー法への賛成や、所属した外交委員会の共和
党重鎮リチャード・ルーガー議員との世界の核問題をめぐる協力、これに類まれな弁舌の力もあ
り、超党派で行動する政治家像を国民に印象付けた。2008 年の前回大統領選挙に勝利し、政権発
足時点の支持率は各社世論調査で 6 割を超えていた。
しかし、第 2 次世界大戦後最長となる 18 ヵ月の景気後退、その後の景気回復の緩やかなペース、
高止まりする失業率、2009 会計年度以降 4 年連続で続く 1 兆ドル以上の財政赤字など、経済・財
政をめぐる不満は、大統領の支持率に影響していった。11 年半ばには各社世論調査で不支持が 5
割を超えることもあった。
就任直後から優先的に取り組んだ大型政策課題の多くは実現した。2009 年 2 月の 80 兆円規模
の景気対策である米国再生・再投資法の成立、2009 年前半に相次いだゼネラルモーターズとクラ
イスラーの救済、2010 年 3 月の医療保険制度(ヘルスケア)改革関連法の成立、そして 2010 年
7 月の金融規制改革法の成立などだ。しかし、これらの成果を挙げられたのは、ひとえに議会上
下両院の多数を民主党議員がおさえていたためだ。議会民主党の全面的な支持を得る一方、共和
党からの支持を得ることはなく、超党派の協力には至らなかった。2010 年中間選挙で国民が出し
た答えは共和党の躍進。上院は辛うじて民主党系が多数を維持したものの 59 議席から 53 議席へ
減らし、下院では共和党が多数党の地位を奪還した。
2011 年以降は議会が上院を民主党が、下院を共和党が支配するねじれ状態となり、あらゆる政
策課題が議会審議のこう着状態により前進しなくなった。連邦債務上限の引き上げ問題をめぐっ
ては、徹底した歳出削減を迫る共和党と、歳出削減と富裕層向け増税を組み合わせようとする民
主党が対立し、2011 年に政府機関の閉鎖が危ぶまれる事態にも発展した。
国内ではガソリン価格の上昇、失業率の高止まり、外的要因では欧州債務危機やアジアなど新
興市場の成長率の陰りなど世界経済の先行き不透明感が強まる中、オバマ大統領は 2011 年 9 月、
給与税減税や求職者の就職支援などを柱とする 35 兆円規模の雇用法案を提案した。しかし、激化
する党派対立により、その実現には至らなかった。
2012 年半ば以降のピューリサーチセンターによる世論調査では、オバマ大統領はロムニー候補
と比べて外交や医療保険制度、社会問題などで優れた仕事をするとみられていたが、雇用、財政
など経済対策ではロムニー候補の後塵を拝する傾向にあった。経済の現状に対する不満が、オバ
マ大統領の苦戦の最大の要因となっていた。
<「財政の崖」回避は難航か>
今回の大統領選で争点の 1 つとなった財政政策を含めた経済政策が、2 期目に向けたオバマ政
権の最大の課題だ。選挙後、議会が再開するや否や「財政の崖」の問題が待ち受ける。今回同時
に実施された上院・下院選挙では、上院で民主党、下院で共和党が多数派を維持した結果、
「ねじ
れ議会」が継続するため、議会運営は引き続き難航を極めることが予想される。オバマ氏は選挙
直後から歳出削減措置、一部減税措置の延長などからなる、包括的な財政赤字・債務削減プラン
の実施に向けた暫定法案作りを進めているとの報道もある。しかし、選挙の争点ともなった富裕
層向け減税見直し(実質的な増税)は再選公約である以上、オバマ氏としても安易な妥協はでき
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調査報告 シカゴ
ないと予想されており、早期の法案成立については懐疑的な声が多い。このほか、選挙前に改善
傾向を示した雇用状況の改善についても、内外の経済環境をみれば楽観視はできない。底打ち反
転の兆しがみえる住宅市場の回復状況とともに、今後の景況感を占う要素として、引き続き注視
が必要だ。
合衆国憲法修正 22 条は、大統領の 3 選を禁止している。再選を果たしたオバマ大統領は 8 年
間の大統領職の折り返し地点に立つ。強い経済を取り戻すため、今回の選挙のスローガン「前へ
(FORWARD)」を実現できるか。オバマ大統領の 2 期目は 2013 年 1 月 20 日に始まる。
○8 月の輸出は前月比 1.0%減、貿易赤字が拡大
商務省は 11 月 8 日、2012 年 9 月の貿易統計(国際収支ベース、季節調整済み)を発表した。
輸出は前月比 3.1%増(前年同月比 3.5%増)の 1,870 億ドルと、2 ヵ月連続のマイナスの後プラ
スに転じ、単月としては過去最高の伸びとなった(6 月前月比 1.2%増の 1,852 億ドル、7 月 1.1%
減の 1,832 億ドル、8 月 1.0%減の 1,814 億ドル)。輸入は前月比 1.5%増(前年同月比 1.5%増)
の 2,285 億ドルとなった。貿易赤字は前月比 5.1%減(前年同月比 6.6%減)の 415 億ドルとなっ
た。
輸出は、自動車・同部品などを除く全ての部門で増加した。食料品・飲料が前月比 9.7%増(前
年同月比 23.8%増)の 129 億ドル、石油製品などの工業用原材料が 8.8%増(4.2%減)の 424 億
ドルと伸びた。一方、自動車・同部品などが 2.4%減(4.5%増)の 119 億ドルと前月から減少し
た。食料品・飲料の中では、最大輸出品目の大豆が 31.8%増(2.18 倍)の 36 億 1,000 万ドル、
トウモロコシが 36.6%増(11.5%減)の 9 億 7,000 万ドルと前月から大きく伸びた。また、工業
用原材料の中では石油製品が 37.0%増(15.9%減)の 56 億 9,000 万ドルと増加が目立った。
輸入は、消費財が前月比 6.4%増(前年同月比 4.6%増)の 443 億ドルとなった。消費財の中で
は携帯電話などが 24.2%増(32.1%増)の 79 億 3,000 万ドルと大幅に伸びた。一方、自動車・
同部品などが 3.4%減(9.3%増)の 245 億ドルとなった。最大輸入品目の原油は 2.0%増(14.0%
減)の 242 億ドルと前月から増加した。9 月の原油 1 バレル当たりの輸入平均単価(課税価格か
ら計算)は 98.88 ドルと、8 月(94.36 ドル)から 4.52 ドル上昇した。
輸出を主要地域別でみると、OPEC 向けの輸出は前年同月比 19.9%増の 71 億ドル、北米は 1.5%
増の 416 億ドルとなった。中南米(メキシコを除く)は前年同期比 12.7%増の 162 億ドルと過去
最高だった。アジア NIES 向けの輸出は前年同月比 16.1%減の 108 億ドル、EU 向けは 8.0%減
の 213 億ドルと、両地域とも 3 ヵ月連続で減少した。アジア NIES 向けは、4 国・地域(香港、
韓国、シンガポール、台湾)全てで減少したが、最も減少幅が大きかったのは香港で、33.1%減
の 31 億ドルと 3 ヵ月連続での減少となった。また EU の主要輸出相手国では、英国が 14.3%減
の 45 億ドルと 6 ヵ月連続で減少した。
最大輸入相手国の中国との貿易赤字は前年同月比 3.6%増の 291 億ドル、輸出は 5.0%増の 88
億ドル、輸入は 3.9%増の 379 億ドルとなった。輸出では、輸出主要品目 2 位の各種の種および
果実などが 2.7 倍の 9 億 9,000 万ドルと大幅に伸びた。輸入では、輸入品目 1 位の電気機器およ
びその部分品などが 24.2%増の 106 億 2,000 万ドルと大きく伸びた。
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