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その1(PDF形式:584KB)
世界経済の潮流
2007 年秋
サブプライム住宅ローン問題の背景と影響
地球温暖化に取り組む各国の対応
(説明資料)
平成 19 年 12 月
内閣府
政策統括官室(経済財政分析担当)
第1章 サブプライム住宅ローン問題の背景と影響
1.サブプライム住宅ローン問題の背景
● サブプライム住宅ローンの急速な普及
アメリカでは、2004 年以降、サブプライム住宅ローンの貸出しが急速に増加した。
サブプライム住宅ローンは預金機能を持たないモーゲージカンパニーによって貸し出
され、その後証券化されるものが大半を占めた。金利構造の特徴として、貸出し当初
は市場金利よりも低い固定金利が適用され、2~3年後にプレミアムを上乗せした変
動金利へ移行(金利リセット)するハイブリッド変動金利が主流となっている。
第 1-1-2 図 サブプライム住宅ローンの貸出しの推移
25
(10億ドル)
700
(%)
600
20
500
15
住宅ローン新規貸出額に占める
サブプライム住宅ローンの割合
400
300
10
5
0
200
サブプライム
住宅ローン
新規貸出額
(右目盛)
100
証券化額
2001
02
03
04
0
06 (年)
05
(備考)アメリカ両院合同経済委員会(2007)より作成。
● 普及の背景(1) 住宅ブームにおける住宅価格上昇と持ち家層の広がり
2000 年代の住宅ブームにおいて住宅価格が急速に上昇した。
IT バブル崩壊後の低金
利政策や人口・世帯数の増加などに加え、04 年以降は住宅資産への期待キャピタルゲ
インの高まりが住宅ブームを支えた。同時期に中低所得層へ持ち家層が広がる中、将
来の住宅価格上昇を期待して、借入れ当初の金利を低く抑えたサブプライム住宅ロー
ンへの需要が高まったものと示唆される。
第 1-1-7 図 実質住宅価格の推移
第 1-1-12 図 持ち家率の推移
(90年Q1=100)
所得階層別持ち家率
(%)
200
85
180
ケース・シラー指数(主要10都市)
160
140
120
OFHEO指数
100
中位所得以上の世帯
54
83
53
82
52
81
51
中位所得未満の世帯(右目盛)
79
60
1975
80
85
90
95
2000
05
(年)
(備考)アメリカ商務省、OFHEO、Standard & Poor’s
より作成。
55
84
80
80
(%)
50
49
78
1995
96
97
98
99
2000
01
02
(備考)アメリカ商務省より作成。
03
04
05
48
06(年)
● 普及の背景(2) 証券化の進展
アメリカでは、住宅ローンの証券化は公的機関の主導で進められたが、90 年代以降
民間機関によるRMBS発行が普及し始め近年ではその動きが加速している。証券化
によって、
多数の投資家の間で借手の信用リスクを効率的に分散させることを通じて、
サブプライム住宅ローンのリスクプレミアムが低下した可能性が示唆される。
(注)RMBS(Residential Mortgage Backed Securities) とは、住宅ローンを担保に証券化された住宅ローン債務担保証券。
第 1-1-15 図 RMBS発行額
(兆ドル)
(%)
4.0
7
第 1-1-17 図 証券化によるリスク
プレミアムの低下効果
3.5
6
証券化率を80年代前半で
固定した場合のスプレッド
民間発行体によるRMBS
3.0
5
2.5
4
証券化による
スプレッドの低下
2.0
政府機関またはGSEによるRMBS
3
1.5
1.0
2
実際のスプレッド
(住宅ローン金利-国債金利:30 年)
0.5
1
0
1985 87
89
91
93
95
97
99
01
03
05
07(年)
0.0
80年代前半
(80-84)
80年代後半
(85-90)
90年代前半
(90-94)
90年代後半
(95-99)
2000年代
(00-07)
(備考)FRB、フレディ・マック、全米抵当銀行協会、
ブルームバーグより作成.
(備考)FRBより作成.
一方で、証券化によって、貸付機関は発行した住宅ローンをセカンダリー市場へ売
却する方法(Originate-to-distribute model)をとるため、住宅ローンの信用リスクを保
有し続ける必要がなくなり貸出し時の融資審査が甘くなる環境がもたらされた。また、
投資家も証券化商品(RMBS、CDO)の価格評価において格付機関の格付け情報
への依存度を高めたが、格付け情報がリスクを十分に評価していない可能性もあった。
(注)CDO(Collateralized Debt Obligation)とはRMBSやその他様々な種類の債権を組み合わせて再証券化した債務担保証券。
● 普及の背景(3) 住宅ローン市場への資金流入を支えた国際金融環境
金融市場では低金利や十分な流動性といった良好な金融環境を背景に、金融機関、
投資家、ヘッジファンドなどの高リスク高リターン投資の動きが活発になった。
第 1-1-20 図 主要国の金利動向
(%)
8
政策金利
8
長期金利(10 年物国債)
イタリア
7
7
6
英国
英国
6
5
4
(%)
5
フランス
3
2
4
ドイツ
ユーロ圏
アメリカ
1
0
1997 98
99 2000 01
02
(備考)各国統計より作成。
03
04
05
06
アメリカ
3
2
07
1997 98
(年)
99 2000 01
02
03
ドイツ
04
(備考)ブルームバーグより作成。
05
06
07
(年)
また、アメリカの大幅な経常赤字と新興アジア、中東諸国を中心とする海外の過剰貯
蓄というインバランスを背景に生まれた海外からの資本流入は、米国債購入による長
期金利の低下に加え、RMBS・CDOへの需要増を通して、サブプライム住宅ロー
ン市場の活性化に寄与した。
第 1-1-23 図 経常収支の不均衡
(10億ドル)
800
アジア
中東諸国
ロシア 日本
400
0
ラテンアメリカ
ユーロ圏 英国
-400
アメリカ
-800
-1200
1990
92
94
96
98
2000
02
04
06
(備考)IMF “World Economic Outlook”(October, 2007)より作成.
08 (年)
第1-1-27図 海外諸国によるアメリカABSの保有額
(10億ドル)
(1)海外諸国によるABS
及びMBSの保有
(2)国別にみたMBSの
保有シェア(2006年)
(%)
14
1,200
企業発行のMBS以外のABS
1,000
証券に占める
ABSの割合
(右目盛)
企業発行の
MBS
12
800
10
企業発行の
ABS
600
政府機関発行の
ABS
8
400
6
200
0
2003
2004
2005
その他
18%
4
2006 (年)
ルクセン
オランダ ブルク
8%
7% ドイツ
7%
ベルギー
5%
カナダ
2%
ユーロ圏
33%
中国
3%
スイス
4%
アイルランド
3%
フランス
3%
日本
6%
英国
13%
(備考)アメリカ財務省“Report on Foreign Portfolio Holdings of U.S.Securities”より作成。
その他ユーロ
圏
1%
ケイマン諸島
20%
2.サブプライム住宅ローン問題の発生とその影響
● サブプライム住宅ローンの延滞率の急上昇
2006 年後半以降、住宅価格の上昇率が減速し始め、サブプライム住宅ローンの延滞
率は急速に高まった。05~06 年に貸付機関の融資基準が弛緩し、高リスクな貸出しが
増加したことも寄与した(2006 年ビンテージローンは顕著)
。今後、07~09 年にかけ
て金利のリセット時期を迎えるものが多く、延滞率がさらに上昇する可能性がある。
第 1-2-1 図 住宅ローン延滞率の推移
(%)
18
サブプライム
(ARM)16.95%
16
サブプライム
14.82%
14
12
10
8
合計 5.12%
6
プライム
4
(ARM)4.15%
2
プライム 2.73%
0
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2
(期)
1998
99
2000
01
02
03
04
05
06
07 (年)
(備考)全米抵当銀行協会より作成.
第 1-2-2 図 ビンテージ別のサブプライム
住宅ローン延滞率
(%)
16
14
06年
12
05年
10
01年
8
2000年
6
4
02年 04年
2
03年
0
1 5 9 13 17 21 25 29 33 37 41 45 49 53 57 61 65 69 73 77 81 85
(ローン契約後月数)
(備考)IMF(2007)より作成.
第 1-2-3 図 ハイブリッド変動金利型ローンの金利リセット
(10億ドル)
45
FHA・VAローン
+プライムローン
40
オプションARM
35
サブプライム
30
25
Alt-A
20
15
10
5
0
2007
08
09
(備考)IMF(2007)より作成.
10
11
12
(年)
● 証券化商品への需要急減と金融資本市場の動揺
RMBS・CDOは、格付けの大幅な引下げを受け需要が急減した結果、スプレッ
ドが急拡大した。証券化によってリスクが拡散されたことやコンデュィット・SIV
を活用したオフバランス取引の進展によって損失の所在・規模が不透明となったため、
金融資本市場で流動性不足や信用収縮が発生し、その動揺は国境を越えて波及した。
(注)コンデュイット(導管体)・SIV(Structured Investment Vehicle)とは金融機関等の非連結の投資事業体で、
運用資産であるRMBS・CDOを担保に資金を調達し運用益の獲得を図るもの。
第 1-2-4 図 サブプライム住宅ローン関連の証券化商品のスプレッド
RMBSのCDSスプレッド
(bps)
メザニン格ABS CDO
( bps)
2,000
7,000
BBB-
6,000
1,600
5,000
BBB
4,000
A
BBB
A
1,200
AA
AA
3,000
AAA
800
AAA
2,000
400
1,000
0
0
8
9
10
11
12
1
2
3
4
5
6
2006
(備考)IMF(2007)より作成.
7
8
9
8
(月)
(年)
10
07
9
10
11
12
1
2
3
4
5
2006
6
7
8
9
10
(月)
(年)
07
(注)CDSスプレッドとは、RMBSのデフォルトに対する保証契約取引(デフォルトスワップ)の際に、買手
が売手に対し支払うプレミアム(対LIBOR)。
(10億ドル) 第 1-2-6 図 ABCP発行残高
1,300
2.5
1,200
2.0
1,100
1.5
1,000
1.0
900
0.5
800
0.0
700
-0.5
9 11 1 3
2005
5
7 9 11
06
1 3 5
7
07
(月)
9 11
第 1-1-22 図 社債スプレッド
7
BB
B
6
AAA
BBB
4
3
2
1
0
1997
98
99
2000
01
02
06
07(年)
第 1-2-8 図 米大手金融機関の株価
8
5
1997 98 99 2000 01 02 03 04 05
(備考)ブルームバーグより作成.
(年)
(注)ABCP(Asset Backed Commercial Paper)とは、コンデュイット、SIV
が発行する資産(RMBS、CDO)を担保とした短期CP。
(備考)FRBより作成.
(%)
9
第 1-1-21 図 ユーロドルスプレッド
(3か月)
03
(備考)ブルームバーグより作成.
04
05
06
07 (年)
(07年初=100)
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
1
2 3
SP500総合
貯蓄・住宅抵当金融機関
総合金融サービス機関
投資銀行
商業銀行
4
5
6 7
8
9
2007
(備考)ブルームバーグより作成.
10
11 (月)
(年)
● 住宅市場の調整の長期化・深刻化のおそれ
サブプライム住宅ローンの延滞によって、住宅の差押えの増加や金融機関の融資態
度の厳格化等が住宅部門の調整を長期化・深刻化させる可能性がある。
第 1-2-10 図 住宅販売と在庫(中古)
(在庫(月))
11
(年率換算、100万件)
7.5
第 1-2-10 図 銀行の住宅ローン
融資基準
(%)
60
サブプライム
50
7.0
9
販売件数
40
プライム
30
6.5
7
10
在庫/販売比率
6.0
厳格化
20
(右目盛)
5
5.5
0
-10
5.0
2000
01
02
03
04
05
3
07 (年)
06
緩和
-20
2000
01
02
03
04
05
06
(年)
07
(備考)FRBより作成。
(備考)全米不動産業者協会より作成。
● MEWの進展により個人消費への逆資産効果が強まる可能性も
住宅価格の下落は逆資産効果を通して個人消費を減少させるおそれがあるが、特に
アメリカではMEWが普及しているため、住宅価格の下落は信用制約の引締めをもた
らし逆資産効果を強めることが懸念される。
(注)MEW(Mortgage Equity Withdrawal)=住宅担保借入れの純増―住宅資産の純取得
第 1-2-16 図 家計純資産(可処分所得比)
640
600
第 1-2-13 図 住宅価格の見通し
(%)
140
(%)
家計純資産額
130
560
(2000年1月=100)
230
220
(見通し)
120
ケース・シラー住宅価格指数
210
520
(主要10都市)
110
480
200
純住宅資産額
(右目盛)
2010年5月
186.6
07年9月
212.7
100
440
190
90
400
180
360
1995 96
97
98
99 2000 01
02
03
04
05
06
80
07(年)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 11 2 5 8 11 2 5
2006
07
08
09
11
5
11 (月)
11
10
11
(年)
ケース・シラー指数(20 都市)の民間予想(11 月)
07 年 12 月 前年比▲6.3% 08 年 12 月
同▲5.7%
(備考)FRBより作成。
(備考)Standard & Poor’s、 シカゴ商業取引所、ブルー
チップより作成。
第 1-2-7 図 MEWと個人消費の増加
(10億ドル)
(1)MEWの調達手段
(10億ドル)
1,000
1,000
(2)MEWの使途
800
800
ホーム
エクイティ
ローン
600
(%)
2.5
2.0
MEWによる消費増加額の
個人消費全体に対する割合(右目盛)
消 費
600
1.5
400
1.0
キャッシュアウト
リファイナンス
400
資産等の
取得
債務返済
(除く住宅
関連)
200
0.5
200
住宅改修
住宅売却
0
199192 93 94 95 96 97 98 99200001 02 03 04 05 06
(備考)Greenspan and Kennedy (2007)より作成.
(年)
0
1991 92
93 94 95
96 97
98 99 2000 01
02 03 04
0.0
05 06 (年)
3.主要国の住宅ブームの動向とリスク
● アメリカ以外の国でも住宅価格の調整リスクが存在
アメリカ以外の国でも、2000 年代に住宅価格の上昇が加速した国が多くみられる。
スペイン、アイルランド、英国、オランダ、オーストラリア等では、アメリカ以上に
過去のトレンドからの乖離が大きく今後の調整リスクに留意が必要である。
第1-3-1図 主要国の実質住宅価格
2000年~06年の実質住宅価格の平均上昇率
(%)
20
06年
15
2000年~06年平均
10
5
0
-5
日本
ドイツ
スイス
韓国
フィンランド
オランダ
アメリカ
カナダ
イタリア
ノルウェー
オーストラリア
スウェーデン
デンマーク
ニュージーランド
アイルランド
フランス
英国
スペイン
-10
(備考)OECD "Economic Outlook 81 database"より作成。
第1-3-4図 実質住宅価格に係るファンダメンタルズ指標
(1)実質住宅価格と住宅価格/賃貸料比率
(2000~06年平均)
(実質住宅価格伸び率、%)
(実質住宅価格伸び率、%)
15
ニュージーランド
スウェーデン
10
デンマーク
イタリア
5
アメリカ
スイス
(2)実質住宅価格と住宅価格/可処分所得比率
(2000~06年平均)
15
ノルウェー
フランス
英国
ニュージーランド
スペイン
アイルランド
オーストラリア
カナダ
オランダ
フィンランド
韓国
10
5
0
英国
ノルウェー
スウェーデン
イタリア
カナダ
フィンランド
アメリカ
▲ 10
60
アイルランド
オーストラリア
オランダ
韓国
ドイツ
▲ 5
フランス
デンマーク
スペイン
スイス
0
日本
80
y = 0.13 x - 10.07
R2 = 0.69
100
120
140
160
180
(住宅価格/賃貸料比率、長期平均=100)
(備考)OECD“Economic Outlook 81 database”より作成。
ドイツ
日本
▲ 5
60
80
y = 0.12 x - 7.53
R2 = 0.54
100
120
140
160
180
(住宅価格/可処分所得比率、長期平均=100)
● 住宅ローン市場の発達が家計の借入れリスクを高めた可能性も
主要国の住宅ブームの背景のひとつに、規制緩和や技術革新の下での住宅ローン市
場の変化も挙げられる。ハイブリッド型変動金利やLTVの高い住宅ローン等によっ
て幅広い層の住宅ローン借入れが可能となる一方、家計は金利変動の影響を受けやす
くなったり、返済可能額以上の借入れを行う可能性も生み出した。
(注)LTV(Loan to Value)とは不動産価値に対する住宅ローン借入額の比率。
第1-3-5表 主要国の住宅ローン市場の概要
住宅ローン債務
変 動 金 利 の 割 合 比率(可処分所
得比)
LTV
国 名
%
60~70
75~95
80
75~80
78
80~100
70~100
80
80
56.4
(最高70)
87
(最高125)
70
70~80
80~95
最高80
70
85
オーストラリア
カナダ
デンマーク
フィンランド
フランス
ドイツ
アイルランド
イタリア
日本
韓国
オランダ
ニュージーランド
ノルウェー
スペイン
スウェーデン
スイス
英国
アメリカ
証 券 化 の 普 及 Mortgage Equity
度
合
い
Withdrawal
(MEW)の普及
度合い
%
84
29
30
93
32
16
85
78
22
%
120
77
188
71
40
83
106(05年)
20
58
◎
◎
○
△
△
△
△
×
△
○
○
×
○
-
×
△
-
-
△
○
36
208
◎
○
33
93
50
35
35
129
24(02年)
67
98
105
78
×
○
△
△
○
◎
×
○
×
○
○
(備考)OECD(2007)、BIS(2006)による。
● MEWの普及や住宅ローン債務比率の高まりによる個人消費の下振れリスク
主要国では住宅部門の調整により住宅投資の減少や逆資産効果等を通した個人消費
の減少のおそれがある。特に、アメリカと同様、MEWが広く行われている国や住宅
ローン債務比率が高まっている国などでは、住宅価格や金利の動向に対して家計のバ
ランスシートが変動しやすいと考えられるため留意が必要である。
第1-3-8図 主要国の住宅ローン債務残高(GDP比)
(住宅ローン債務残高/GDP、%)
100
80
1995年
60
2005年
40
20
イタ リア
フィ ンランド
日本
フランス
スウェーデン
カナダ
(備考)OECD "Economic Outlook 80"より作成。
スペ イン
ドイツ
アイルランド
オーストラリア
アメ リカ
デンマーク
英国
ニュ ージーランド
オラ ンダ
0
● サブプライム住宅ローン類似の市場が存在する主要国では証券化が普及
サブプライム住宅ローン類似の市場が存在する英国、オーストラリア、カナダにお
いては、
アメリカと比べて、
住宅調整や経済全般に与える影響は限定的と考えられる。
ただ広く証券化が行われており、デフォルトが多数発生する場合には、金融資本市場
の信用不安を高めるリスクは必ずしも排除できない。
第1-3-6表 各国のサブプライム住宅ローン類似の市場比較
アメリカ
信用履歴に問題のある者
サブプライムの クレジットスコアの低い者
範囲
債務所得比・LTVが高い者
など
新規貸出に占め
る規模(06年)
証券化の割合
英国
信用履歴に問題のある者
オーストラリア
信用履歴に問題のある者
収入・貯蓄パターンが不規則な者
自己申告に基づく収入である者
移民、臨時滞在者、高齢者
など
20%以上
5~6%
4%
約55%
過半数
約100%
カナダ
信用履歴に問題のある者
クレジットスコアの低い者
債務負担率が高い者
(第三者の収入証明が得られない者)
など
5~8%
(ニアプライムを含む)
証券化はニアプライム住宅
ローンが中心
主要なサブプラ
イム住宅ローン
商品
・固定金利が中心
ハイブリッド変動金利が中心 ・初期に低金利が設定
される商品は多くない
貸付機関の監督
連邦政府レベルと州レベルの 全て金融サービス機構(FS 金融規制当局(APRA)の
-
監督下に分かれる
A)の監督下
監督外
初期に低金利が設定される商 初期に低金利が設定される商
品は多くない
品は多くない
(備考)各種資料より作成。
まとめ
1. 今回のサブプライム住宅ローン問題の背景は、住宅価格の上昇に対する過剰な
期待が貸手・借手双方のリスク評価の緩みをもたらしたことにある。
⇒ 住宅市場の調整はアメリカ経済の先行きに不透明感をもたらしている。特
に個人消費への影響は、先行研究に基づくと、仮に 10%程度住宅価格が下落
すると逆資産効果により 0.4~1.5%程度の押下げとなるが、住宅担保借入の
減少を加味すると、その上限近くもしくはそれを超える押下げとなる可能性
もあり留意が必要。
2. 証券化は効率的なリスク分散や貸付機関における資産債務の期間ミスマッチの
解消をもたらすとともに、住宅ローン市場全体の安定性を高めたと考えられる。
しかし、その反面、貸付機関や投資家のリスク評価の緩みを助長させるとともに、
損失の所在・規模を不透明にすることで金融資本市場の変動の原因ともなった。
⇒ 発生しうる損失は国際機関等の推計で 1,500~3,000 億ドルと大手米金融
機関の自己資本額(8000 億ドル)と比べても小さくないが、今後の証券化市
場の動向次第では更なる損失発生の可能性もある。
⇒ 証券化は信用創造力を高める重要な金融技術であるが、適切な運用のため
には、金融機関の情報開示やリスク評価・管理の在り方、それに対するモニ
タリング、規制・監督の体制、格付けの手法等について改善が必要。
3. アメリカの経常赤字と海外の過剰貯蓄というグローバルインバランスを背景に
生まれた海外からの資本流入は、長期金利の低下等を通してサブプライム住宅ロ
ーン市場の活性化を支えたが、問題発生後に生じた高リスク投資への再評価の過
程では、対米証券投資が減少するなど資金の流れに変動がみられている。
⇒ この状況が長期化すれば実体経済への影響が懸念されるとともに、場合に
よっては、アメリカ経済の一層の減速とさらなるドル安の進行によるインバ
ランスの急速な調整局面をもたらすおそれもある。
第 1-2-9 図 海外からの対アメリカ証券投資(ネット)
(10億ドル)
500
対アメリカ証券投資額合計
400
政府部門投資額
300
民間部門投資額
200
100
0
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 (期)
(年)
2003
04
05
06
07
(備考)アメリカ財務省より作成。
4. アメリカ以外の国において、2000 年代の住宅ブームでアメリカ以上に住宅価格
が過大評価されていた可能性がある。
⇒ 他の主要国でも住宅ローン市場が発達する中で、家計にリスクが蓄積され
ており、今後、住宅投資や個人消費への影響には留意が必要。
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