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都市施設の復旧と復興(PDF形式:1532KB)

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都市施設の復旧と復興(PDF形式:1532KB)
第 3 部
復 興 事 業
1. 都市施設の復旧と復興
2. 住宅の再建
3. 都市計画
4. 経済復興
5. 生活再建
6. 安全都市づくり
第 1 章 都市施設の復旧と復興
1 各ライフライン施設の復旧概要
各ライフライン施設の復旧は、各施設の管理者(事業者)により行われた。その概要は下記のと
おりである。その後、復興事業あるいは今後の施設整備に向けて、それぞれの専門分野で耐震工法
などの基準改訂が実施され、応援などのソフト的枠組みの整備も進んでいった。
1.1 電力
送電系統の切り替えが行われた結果、断線さえしていなければ数時間で復旧し、断線している場
合でも1週間ですべての家庭で電気が使えるようになった。
1.2 通信
「輻輳」を避けるため、伝言ダイヤル(117)を創設し、被災地域への通信需要の集中をさけるよ
うにした。
1.3 水道
施設の耐震化と大都市間、県内都市間などの相互応援の枠組みが整理され、災害時に応援するこ
とが文化として根付いていった。
1.4 下水道
処理場を相互利用するためのネットワーク化が行われた。
1.5 ガス
被害の多かったネジ切り鋼管からポリエチレン管への移行が進められた。
また、各ライフラインがとりあえずの復旧をした時期について下表に示す。
このように概括的にみると、各施設の被害のポイントが見えてくるが、ここではさらに各都市施
設において「本格的な復興にあたり考慮された事項は何か?」を見ていくこととしたい。
表1 ライフラインの復旧時期
施設名
復旧時期
電力(関西電力)
1995年 1 月23日
通信(NTT)
1995年 1 月31日
ガス(大阪ガス)
1995年 4 月11日
水道(神戸市水道局)
1995年 4 月17日
下水道(神戸市下水道局)
1995年 4 月20日
2 ライフライン復旧・復興の共通した考え方
ライフラインは概ね土木施設、電気・機械設備などハードなものを運営するソフト的な管理技術
からなる。土木施設については、橋梁、盛土、擁壁、コンクリートなど共通する部分が多く、土木
学会が1995年 5 月の一次提言、1996年 7 月の二次提言において、土木構造物については 2 段階の地
震動を考慮することが定められた。
91
① 構造物の供用期間内に 1 ~ 2 度発生する地震動(L1)
② 大規模なプレート境界地震や内陸型地震のように供用期間内に発生する確率は低いが大規模
な地震動(L2)
これに基づき、「道路橋示方書」が改訂され、水道や下水道の耐震工法指針が改訂になった。構
造物はより一層の耐震性の強化が図られることになった。
今回、初動体制には多くの問題を残した。ライフライン関係者の多くが同時に被災者であるこ
と、対策本部となる建築物が被災し資料が失われることがあること、コンピュータなどのバック
アップ、など普段からの地震への備えが重要であることが改めて認識された。このような教訓を得
て、多くの企業体でマニュアルの整備が行われた。
さらに各事業者とも多くの応援を得て復旧することができた。この応援受け入れまたは支援隊の
派遣についてノウハウが必要で、阪神淡路大震災からルール化が行われた。
電気・通信・水道などは、施設そのものを耐震化するだけでなく、ループ化やバックアップによ
り地震被害を軽減することができる。施設的な被害に対して、機能低下を最小限に抑えるため、こ
のような計画的な施設配置が重要である。
地中構造物は街路など街づくりと密接に関係するため、各自治体との連携を強め、災害に強い街
づくりに合わせた施設配置を計画する必要がある。
共同溝などが利用できる場合は、メリットを勘案しながらこれに参画することも一つの方策であ
る。
3 電力
電力システムは 1 月23日に応急送電を完了して以降は本格的な復旧・復興が行われた。その基本
的な考え方としては、①早期復旧が必要な施設は現行基準に基づいて復旧する、②耐震面で補強の
必要が生じた場合はその時点で補強をおこなう、③地域の復興計画との協調を図る、である。
さらに復旧活動のソフト面についても、「迅速な復旧」のために以下のような課題が提起されて
いる。
① 初期対応体制の見直し・・・国、自治体との情報連絡
② 資機材・要員の確保・・・他社からの応援受け入れに伴うシステム確立
③ 送電再開時の安全確保対策・・・家屋・ビル等の被害が認められる地域での安全確認に対す
る対応方針の周知
④ 平常時の防災訓練・教育・・・他のライフラインや道路交通途絶を考慮した訓練
4 通信
4.1 復興の方針
NTT西日本では、通信システムに関する阪神淡路大震災の復興方針として、①マルチメディア時
代を展望したアクセス網の光化、②災害に強い通信ネットワークを目指した地下化の推進、③通信
センターの分散、を掲げ、5 ヵ年計画で進めることになった。
4.1.1 各都市の復興とあわせてビジネスエリア、住宅エリアそれぞれについてマルチメディアイ
ンフラの構築を全国に先駆けて進めることとした。
4.1.2については、今回の地震で地下施設に被害が少なかったことから、今後、積極的に地下化を
92
進めていくことにしたものである。
4.1.3については、社員自身が被災者になったため、緊急対応に少なからぬ影響があった。従っ
て、大都市エリアでは交換ポイントをAセンター。Bセンターの 2 ヶ所に分散し、かつ予備交換機
を備えることで、異常となったセンターの重要加入者(警察、消防、行政、学校など)の通信を他
のセンターの予備交換機に切り替え、被害を最小化する。
また、公衆電話をA、Bに振り分けることでリスクの分散を図り、加入者回線は光ケーブルでと
う道内をループ化することで信頼性を確保する。
4.2 今後の防災対策
通信システムは、地震の被害を免れることはできず、サービスの中断、アクセス系について被災
状況の把握に長時間を要するなど課題を残したが、通信建物が堅牢であったこと、装置の固定など
耐震対策が機能したこと、中継伝送路のループ化など冗長設計が機能したこと、設備の遠隔オペ
レーションが機能したことなど、ネットワーク全体としては機能を確保することができた。
しかし、長期にわたり「輻輳」が継続したこと、避難した被災者が必要とする情報が既存メディ
アでは行き渡らないこと、から次のような対策を講じることとしている。
4.2.1 輻輳対策
輻輳の原因となる通話の集中を避けるため、ボイスメールシステム(災害用伝言ダイヤル171:
イナイ)を導入する。また、中断後の空きを待って接続を確保する待時通話、通話時間を制限する
制限通話なども組み合わせて輻輳緩和を図る。
4.2.2 通信衛星システムの多角的利用
通信衛星システムは極めて災害に強く、今回も「ポータブル衛星通信システム」を用いた特設公
衆電話を設置した。今後、通信衛星を利用し、多様な手段によりバックアップ回線を設定してい
く。
4.2.3 公衆電話の利用開放
公衆電話は被災地における通信手段として使命を果たしているが、被災地では大規模な停電によ
りテレホンカードが使用できず硬貨でしか使えなかった。このため、被災地域で停電になった場
合、交換機からのコマンドで通話の無料化をおこなう。
4.2.4 被災地の情報流通支援
被災地における情報流通は電話だけでは不十分であり、インターネットなどマルチメディア時代に
対応した「被災地情報ネットワーク」を自治体と連携して導入する。また、これを活用していくため
にマルチメディアに対応できる技術をもった人材を育成し、被災地での情報流通支援をおこなう。
5 ガス
5.1 ガスの復旧
ガスは爆発や火災を引き起こす可能性があるため、供給を停止しないと復旧作業ができない。供
給区域は「セクター(ブロック)」と呼ばれ、その単位で供給停止することになる。セクター内す
べてで復旧が終われば、一斉にガスを充填する。また、地震発生と同時に各家庭のマイコンメータ
93
図1 ガスの復旧曲線
(出典:大阪ガスHP>復旧活動の記録)
で供給を止めているので、一軒一軒の屋内のガス漏れを確認したあと、マイコンメータを復帰させ
てガスを供給する。
今回は、供給停止した 5 つのミドルブロックに合計220余りの復旧セクターを設けた。釧路沖地
震の経験から、1 セクターに 4 ~ 5 日の復旧期間を想定していたが、結果として 1 週間以上かかる
セクターもあった。この原因として、管内に充満している水(地下水、下水、水道水)の排除に時
間がかかることが最大の障害であり、1 トン以上の水を排出した現場もあった。神戸地区では最終
の復旧完了日は 4 月11日であった。
この作業には、日本ガス協会(JGA)から全国155の事業者、約3,700人の応援を得て行われた。
5.2 復興プランへの提案
大阪ガスでは、兵庫地区の復興に「兵庫復興本部」を設けるとともに、全社的な災害復興につい
て「震災復興推進室」を設置して次のような考え方をベースにした。
① 災害に強いシステム
② 多様な災害への対応
③ 日常性・非日常性の調和
④ 環境向上への配慮
⑤ 省エネルギーの推進
⑥ 高齢者、身障者への配慮
これに基づいて、4 つの分野の復興についてそれぞれ具体的な方策を提案している。
①災害拠点への提案
溶接鋼管にはほとんど被害がなかったため、防災拠点や病院に対しては中圧のストレート供給を
積極的に提案する。またオンサイトでのLNG(液化天然ガス)、CNG(圧縮天然ガス)、プロパン
エアーなどによる代替臨時供給が可能になるようにする。また、コージェネレーションシステムは
総合効率が極めて高いため、採用を勧めていくことで高い防災性を実現できる。
②街づくりへの提案
災害に強いガス供給システムとするため、街づくりに合わせて中圧導管を活用できるようにシス
テムを構成する。一方、地域内の低圧導管にはポリエチレン管を積極的に導入し、ネジ鋼管は計画
的に交換していく。エネルギー効率を高めるため、コージェネレーション、地域冷暖房、未利用エ
ネルギーの利用などを進めていく。
94
③住宅復興への提案
低圧の地中配管にはポリエチレン管、伸縮継手を使用するとともにマイコンメーターにより自動
的に家庭内への供給を停止し、火災発生を未然に防止できるようにする。
④災害に強いライフラインへの提案
復旧の迅速化を図るために、使用材料を鋼管、ダクタイル管、ポリエチレン管とし、道路管理者
の理解を得て浅層埋設により復旧時の掘削量を低減する。行政の防災道路計画や幹線共同溝・電線
共同溝に随伴して都市ガスインフラを計画的に配置し、復興街づくりに整合した強固なネットワー
クとする。
5.3 今後の地震対策
通商産業省、資源エネルギー庁では、「ガス地震対策検討委員会」を設置し、緊急対策・復旧対
策、支援対策のあり方について検討をおこなった。
①供給停止の判断基準
SI値が60カイン以上を記録するか、製造所またはガスホルダーの送出量の大変動、主要整圧器等
の圧力の大変動により供給継続が困難な場合、即時にガス供給を停止する。このために遠隔遮断ま
たは感震自動遮断システムの整備をはかる。
②当面の対策
・設備対策計画の立案
・体制の整備、マニュアル等規程の整備
・マイコンメータ設置の法的な義務付け
③中期的対策
・中圧の溶接鋼管化
・緊急措置ブロックの形成推進
④長期的対策
・低圧ネジ鋼管の取替え
・中圧バルブの継手の緩み漏れ対策
・即時供給停止を行うためのシステム整備
その他、初動体制の強化、情報収集機能の強化、緊急時の通信・指令システムの強化などが図ら
れている。
6 水道
6.1 水道の応急復旧
6.1.1 地理的な復旧状況
当初、復旧作業は火災や家屋倒壊などで被害の大きかった低層配水区域から始められた。しか
し、この区域は管路被害の多い地区でもあり、いくら漏水箇所を修理しても新たな漏水が見つかる
という「もぐらたたき」の状態であった。このため管網全体の水圧がなかなか上昇しない結果と
なった。そこで比較的強固な地盤で被害も少ないと想定される山麓部についても復旧に着手し、こ
れらは短期間に通常給水が回復したため、通水完了日だけでみると、概ね山麓部から海岸部に向
かって復旧が進められたようにみえる。
95
6.1.2 時間的な復旧状況
実際の神戸水道の復旧率を図 3 に示す。一時は全市的に断水したが、1 月末には58.8%、2 月末
には93.6%、3 月末には99.9%がそれぞれ復旧し、4 月17日に当面の仮復旧を終了した。
図2
地域別の復旧状況
図2 地域別の復旧状況
図 2 地域別の復旧状況
80
90
70
60
80
給水の復旧率
給水の復旧率
(%)
100
(%)
90 100 B
50
40
30
B
A
1995 Kobe
1995 Kobe
A
70
60
50
40
30
10
0 20
20
17 24
31
7
14
21
28
7
14
21
28
10
1月
2 月 (1995)
3月
0
17 24 31
7 14 21 28
7 14 21
) 3月
復旧曲線(実際と理想
1月 図 3 2 月
(1995)
6.1.3 水道の復旧方法
28
図3 復旧曲線(実際と理想)
図 3 復旧曲線(実際と理想)
①一旦、配水池からの給水を止め、再度少しずつ水を入れて水圧をかける。
6.1.3 水道の復旧方法
→漏水があれば圧力が低下する。
6.1.3 水道の復旧方法
②漏水箇所を探しだし、管を切断して修理する。→改めて水圧をかける。
①一旦、配水池からの給水を止め、再度少しずつ水を入れて水圧をかける。
①一旦、配水池からの給水を止め、再度少しずつ水を入れて水圧をかける。
③漏水箇所の復旧を水圧低下しないことで確認する。
→漏水があれば圧力が低下する。
→漏水があれば圧力が低下する。
水道の復旧は、①②③を一箇所ずつ繰り返すことで少しずつ進んでいく。修理箇所数
②漏水箇所を探しだし、管を切断して修理する。→改めて水圧をかける。
②漏水箇所を探しだし、管を切断して修理する。→改めて水圧をかける。
は最初の段階では把握することができないため、当初は推定するしかない。このため、
③漏水箇所の復旧を水圧低下しないことで確認する。
③漏水箇所の復旧を水圧低下しないことで確認する。
マスコミ等に不正確な情報を流す結果になり、推定どおりに復旧できなかったときは見
水道の復旧は、①②③を一箇所ずつ繰り返すことで少しずつ進んでいく。修理箇所数は最初の段
水道の復旧は、①②③を一箇所ずつ繰り返すことで少しずつ進んでいく。修理箇所数
通しの甘さについて批判を受けることになる。
階では把握することができないため、当初は推定するしかない。このため、マスコミ等に不正確な
は最初の段階では把握することができないため、当初は推定するしかない。このため、
地震力の大きさや地盤状態等から簡易に被害件数を推定するシステムの実用化が期待
情報を流す結果になり、推定どおりに復旧できなかったときは見通しの甘さについて批判を受ける
マスコミ等に不正確な情報を流す結果になり、推定どおりに復旧できなかったときは見
されるところである。
ことになる。
通しの甘さについて批判を受けることになる。
地震力の大きさや地盤状態等から簡易に被害件数を推定するシステムの実用化が期待されるとこ
地震力の大きさや地盤状態等から簡易に被害件数を推定するシステムの実用化が期待
ろである。
されるところである。
6.2 水道に関する震災の教訓
神戸市水道の被害と復旧の経験から、問題となった点をリストアップしてみた。これらを以下に
96
示す。
①神戸市の全市的な被害であった
以前の地震対策は、全市的に被害を受けることを想定しておらず、被害のない事業所が被害を受
けた事業所を応援する体制が取られていた。また、被害把握が困難で復旧見通しを立てられなかっ
た。また作業従事者も「終わりが見えない」状態だった。
②復旧が長期にわたった
復旧が長期化すると、飲料水だけでなく生活用水の需要が急増し、その供給はきわめて困難にな
る。また、復旧できない家庭では不満が急速に高まり、対応が難しくなる。
③応急給水についてタンク車は限界がある
生活用水は日数とともに必要量が増大し、タンク車での給水は限界にある。早期に管路による応
急給水体制(水量・時間に制約なし)に移行することが必要である。
④復旧の本拠地が被災
復旧の本拠(本庁、その他庁舎)となる建物が被災して復旧に必要な資料が入手できず、計画立
案などの支障となった。
⑤情報システムの有効性が示された
神戸市が採用していたテレメータテレコントロールシステム、緊急遮断弁システム、水質モニ
ターシステムなど各種情報システムは各地の状況をデータで送信し、監視センター等で総合的に状
況を把握することができ有効であった。
⑥交通渋滞
神戸の場合、東西に長い地形から交通渋滞がひどく、資材運搬や応急給水には一部海上輸送も利
用された。都市の形状、周辺都市との連絡道路、川・海との接続など都市が持つ特性を活かした復
旧が求められる。
⑦災害の発生時期
災害発生が夏であれば、衛生状態を清潔に保つための必要水量が増加し、伝染病等の心配もあっ
た。冬であったため、風呂も多少はがまんできた。
⑧応援隊の有効な活用
水道の給水や修繕に応援申し出が殺到したが、被災都市である神戸市は「応援」をコントロール
できなかった。被災都市の状況を冷静に判断し、応援部隊を適切に動かす部署が必要であり、震災
後、大都市間の相互応援協定により、「応援幹事都市」の制度ができた。神戸の場合、大阪市と広
島市が幹事となり、神戸市と調整しながら応援部隊を配置・指揮する。
6.3 水道の復興計画
6.3.1 耐震化計画の策定
震災復旧が完了していない1995年 3 月に水道の有識者と学識経験者からなる復興計画検討委員会
を立ち上げて審議を重ね、6 月に「神戸市水道耐震化指針」を得て、7 月に「神戸市水道施設耐震
化基本計画」を策定した。
以降、水道の復興事業はこの基本計画に基づいて実施されており、その骨子は次に掲げる 3 つの
主要プロジェクトを中心に構成されている。
①緊急貯留システム(緊急時に新鮮な水を確保)
②配水管の耐震化(水道管の破損による漏水件数の減少)
③大容量送水管(水源・送水路の確保)
緊急貯留システムは、配水池に設置した緊急遮断弁システムと耐震性貯水槽で構成されており、
97
本計画」を策定した。
度末では 35 箇所が稼動している。(図 4)
配水管の耐震化は、500m の幹線網・200m の支線網のメッシ
業はこの基本計画に基づいて実施されており、その骨子は次に掲
とするもので、地震時の管路事故(漏水)を減少させるととも
ェクトを中心に構成されている。
は市民の水の運搬距離を短縮し、生活用水の需要増加に対応
(緊急時に新鮮な水を確保)
市内47箇所で緊急時に新鮮な水を貯留しようとするものである。平成17年度末では35箇所が稼動し
ている。(図 4 ) (図 5)現在、配水管の耐震化率は震災当時の約6%から 29%
水道管の破損による漏水件数の減少)
配水管の耐震化は、500mの幹線網・200mの支線網のメッシュ状に耐震化を進めようとするもの
大容量送水管は水源に乏しい神戸の状況を改善するため、既
で、地震時の管路事故(漏水)を減少させるとともに、応急給水にあたっては市民の水の運搬距離
源・送水路の確保)
を短縮し、生活用水の需要増加に対応しようとするものである。
(図 5 )現在、配水管の耐震化率
とまったく違った市街地地下を通過する新たな送水トンネルで
、配水池に設置した緊急遮断弁システムと耐震性貯水槽で構成さ
は震災当時の約 6 %から29%まで向上している。
散し、合わせて既設トンネルの更生を可能にしようとするもの
大容量送水管は水源に乏しい神戸の状況を改善するため、既設の
2 本の送水トンネルとまったく
所で緊急時に新鮮な水を貯留しようとするものである。平成
17 年
違った市街地地下を通過する新たな送水トンネルで、送水停止のリスクを分散し、合わせて既設ト
在、阪神水道から引継ぎ芦屋市境から住吉川までの約 4km が供
動している。
(図 4)
ンネルの更生を可能にしようとするものである。平成17年度末現在、阪神水道から引継ぎ芦屋市境
から住吉川までの約
4kmが供用開始され、住吉川から生田川付近までの区間を工事中である。今
生田川付近までの区間を工事中である。今後、奥平野浄水場ま
500m の幹線網・200m
の支線網のメッシュ状に耐震化を進めよう
後、奥平野浄水場までの区間も大深度地下を利用して着工される予定であり、平成24年度末の完成
利用して着工される予定であり、平成
24 年度末の完成をめざ
をめざしている。(図
6)
の管路事故(漏水)を減少させるとともに、応急給水にあたって
離を短縮し、生活用水の需要増加に対応しようとするものである。
の耐震化率は震災当時の約6%から 29%まで向上している。
に乏しい神戸の状況を改善するため、既設の 2 本の送水トンネル
地地下を通過する新たな送水トンネルで、送水停止のリスクを分
ンネルの更生を可能にしようとするものである。平成 17 年度末現
ぎ芦屋市境から住吉川までの約 4km が供用開始され、住吉川から
を工事中である。今後、奥平野浄水場までの区間も大深度地下を
図 4 緊急貯留システムの概念図
図4 緊急貯留システムの概念図
定であり、平成 24 年度末の完成をめざしている。
(図 6)
テムの概念図
98
図4
図5 配水管の耐震化概念図
配水管の耐震化概念図
図4
配水
既設送水トンネル
大容量送水管
図6 大容量送水管のルート
図 6 大容量送水管のルート
6.3.26.3.2
期待される応急給水システム
期待される応急給水システム
阪神・淡路大震災で得た教訓のうち、復旧が長期化する場合の生活用水の供給は非常に重要な問
阪神・淡路大震災で得た教訓のうち、復旧が長期化する場合の生活用水の供給は非常
題である。地震発生時から水道の復旧状態を勘案しながら最も効果的な応急給水をおこない、生活
に重要な問題である。地震発生時から水道の復旧状態を勘案しながら最も効果的な応急
用水の需要増に対処しなければならない。
給水をおこない、生活用水の需要増に対処しなければならない。
図 7 には、復旧率の状況と対応した応急給水のシステムを示した。これらの資産を最大限に活か
図 7 には、復旧率の状況と対応した応急給水のシステムを示した。これらの資産を最
して市民の視点で求められる応急給水をしていく必要がある。
大限に活かして市民の視点で求められる応急給水をしていく必要がある。
写真 1 と 2 には、タンク車に行列をつくる状態から、「いつでも、いくらでも水が手に入る」状
写真 1 と 2 には、タンク車に行列をつくる状態から、
「いつでも、いくらでも水が手に
態への早期移行を実現するために、通水が再開されたパイプを利用した給水に移行することを示し
た。 入る」状態への早期移行を実現するために、通水が再開されたパイプを利用した給水に
移行することを示した。
6.4 水道の耐震化基準と相互応援
6.4.16.4
耐震工法指針の改訂(水道)
水道の耐震化基準と相互応援
日本水道協会では、水道の耐震化を進めるため「耐震工法指針」の改訂をおこなった。
6.4.1 耐震工法指針の改訂(水道)
この中では、地震動に関しレベル
1、レベル 2 のランクに分け、施設の重要度についてもランク
日本水道協会では、水道の耐震化を進めるため「耐震工法指針」の改訂をおこなった。
A、ランクBに分け、それぞれの組み合わせで適切な設計ができるようにした。また、個々の施設
この中では、地震動に関しレベル1、レベル2のランクに分け、施設の重要度につい
が耐震性を持つだけでなく、水道システム全体でも対応するように柔軟な考え方を導入し、バック
てもランク A、ランク B に分け、それぞれの組み合わせで適切な設計ができるようにし
アップやリダンダンシーなどの概念も取り入れた。
た。また、個々の施設が耐震性を持つだけでなく、水道システム全体でも対応するよう
この指針は、震災後に設計するすべての水道施設に適用され、全国レベルで耐震化が考慮された
に柔軟な考え方を導入し、バックアップやリダンダンシーなどの概念も取り入れた。
施設が増加してきている。
この指針は、震災後に設計するすべての水道施設に適用され、全国レベルで耐震化が
考慮された施設が増加してきている。
6.4.2 相互応援協定の締結(全国的な応援ルールの整備)
耐震化については、施設についてだけでは不十分であり、地震発生時に人的な応援体制を整備し
ておく必要がある。神戸市に関しては、まず大都市間相互の応援協定があり、幹事都市となる大阪
市・広島市と相互に訪問して共同訓練を実施するとともに、日本水道協会兵庫県支部においても市
町間の相互応援協定を締結しており、これまで数回の出動をして実地に応援をしている。
さらに近隣都市間でも水道を含む包括的な相互応援協定を締結しており、緊急時の人的なバック
アップが可能になっている。
99
幹事都市となる大阪市・広島市と相互に訪問して共同訓練を実施するとともに、日本水
幹事都市となる大阪市・広島市と相互に訪問して共同訓練を実施するとともに、日本水
道協会兵庫県支部においても市町間の相互応援協定を締結しており、これまで数回の出
道協会兵庫県支部においても市町間の相互応援協定を締結しており、これまで数回の出
動をして実地に応援をしている。
動をして実地に応援をしている。
さらに近隣都市間でも水道を含む包括的な相互応援協定を締結しており、緊急時の人
さらに近隣都市間でも水道を含む包括的な相互応援協定を締結しており、緊急時の人
的なバックアップが可能になっている。
的なバックアップが可能になっている。
図7
復旧率と対応する応急給水の方法
図 7 復旧率と対応する応急給水の方法
図7 復旧率と対応する応急給水の方法
写真1と2 タンク車から消火栓給水への早期移行
写真 1 と 2 タンク車から消火栓給水への早期移行
写真 1 と 2
タンク車から消火栓給水への早期移行
6.5 水道復興のまとめ
ここでは、上水道を取り上げてライフラインの地震被害の特徴から、市民生活への影響を考察し
てきた。現代の都市社会においては日常生活に対するライフラインの役割は非常に重要である。最
近、流通による飲料水の提供も増え、水道が唯一の供給手段ではなくなっている。しかし、一方で
生活用水としての水道には代わるものがなく、「わが家で風呂に入る」という日常の行為が、実は
震災という非日常からの回帰、すなわち水道システムとガス・電力システムの復旧を、身をもって
実感できる事象といえるのではないだろうか。
インターネットや携帯電話など新しいインフラが登場し、水道・ガス・電気など旧来からあるイ
ンフラに加えて「ライフライン」の数が増え、機能停止すると「困る」状態が作り出されている。
いずれにせよ、ライフラインは正常に機能し続けてこそ、存在価値がある。各ライフライン事業者
は、適切な維持管理とゆとりを持ったシステム構成によって、柔軟性を維持しつつ機能し続けるラ
イフラインをめざす必要がある。
7 下水道
下水の分野では、処理場間の連絡により相互に処理をバックアップするネットワーク化を進めて
100
おり、防災拠点にはマンホールを利用した簡易トイレなども設備されてきている。
7.1 下水道の復旧方法
下水道の管渠は地下に埋設されており、水道・ガスを違っていつも流れているわけではないた
め、故障箇所を特定するには特殊な道具や手法が必要である。調査方法の手順は以下のようなもの
である。
①一次調査(目視調査)
市内全般について下水の溢れ、道路の陥没などを調査する。これには自転車やオートバイの
利用が有効である。
②簡易カメラ調査
一次調査では、「簡易カメラ」を利用することが有効である。伸縮可能な棹の先にライトと
カメラがついており、手元画面で深さ 5 m程度までの下水道管を奥行10m程度調査することが
できる。
③ 2 次調査(TVカメラ調査・人孔調査)
さらに管渠の被害が予想される区間は、自走式の小型カメラを通して、スパンごとに内部の
被災を調査する。ただ、この作業は膨大な作業量となり大変労力を要するものであることを認
識しておく必要がある。
④災害査定と災害復旧
災害査定は、国が災害復旧費を補助するために適正な被害額を把握するためにおこなうもの
である。査定は国の査定官が行うが、査定に際してはカメラ調査の記録、写真など被害状況を
確認するための書類が必要である。また、工事設計書を作成する必要があり、これに多大な労
力を要する。
7.2 災害復旧の支援受け入れ
災害復旧にあたっては、他都市からの支援を受けて被災調査や復旧工事などを進める必要があ
る。被災都市でないとできないこともあり、誰にでもできることはお願いするなど役割分担を決め
て全体として円滑な事業執行をすすめる必要がある。
7.3 災害支援での教訓
①下水道台帳のバックアップ
下水道の被災調査には台帳が不可欠であり、データおよびシステムなどのバックアップを
とっておく必要がある。阪神・淡路大震災では、メンテナンス会社が所有しているデータを利
用し、名古屋市のシステムにより出力をおこなった。
②調査マニュアルの整備
1967年の降雨災害以降、下水道に関する災害はなく、国から災害復旧費をもらって復旧した
経験はない。そのため、災害調査や災害査定については手探りでの試行錯誤が続いた。今後の
大規模災害に備えて、災害復旧マニュアルの策定が必要である。
③災害支援について
災害支援については遠慮なく他都市の支援を受けることが重要であり、そのための受け入れ
条件などをあらかじめ決めておくことが必要である。
101
7.4 下水道の復興計画
阪神・淡路大震災から得た教訓をもとに、下水道の復興が進められているが、以下に留意すべき
点を列挙する。
①ネットワーク化
市内の主要処理場を大深度の幹線管渠で接続し、どこかで被災して機能低下が生じても他の
処理場で下水処理が可能となるようにする。なお、平常時にあっては、汚水発生量に応じて処
理場間で処理量を平準化することができる。
②施設の耐震化(処理場、ポンプ場、管渠)
処理場・ポンプ場などの施設は、大きな被害を受けた東灘処理場を護岸から造り替えたが、
その他の施設については老朽化による改築を待って耐震設計された施設に造り変えていくこと
にしている。
管渠については、塩ビ管・プラスチック管が主流になっており、液状化などにより蛇行する
こともあるが、周辺の地盤を考慮しつつこれらの管による布設替えをおこなっていく。
③災害対応仮設トイレ
市内の小中学校など60か所には、校庭に汚水管を敷設し、300基の災害対応仮設トイレを設
置できるようにしている。仮設トイレは倉庫などに格納されており、災害時に設置できるよう
日頃から訓練を行っている。
④雨水貯留
上記のトイレ流すには「水」が必要であり、プールの水や雨水貯留が行われている。
⑤せせらぎ
震災後、鈴蘭台下水処理場の処理水を高度処理し、兵庫区の松本通りの「せせらぎ」に流し
ている。これは、この地区の80%が全半焼し、地元住民から防火用水の確保を要望されたため
できたものである。
⑥処理場の防災拠点化
下水処理場には覆蓋があるため、上部は公園やスポーツ施設として利用されている。しか
し、災害時にはヘリポートや緊急資材の運搬中継基地として利用することができる。
⑦その他
下水道の幹線に海水を引きこんで消火用水に使用する試みや、雨水を消火用にする雨水貯留
施設の整備、降雨レーダー情報の提供(インターネット、携帯電話)など、「災害時に役立つ
下水道」を目指している。
8 道路
8.1 一般道路
・一般の平面道路については、地下埋設物の修復、建築物の撤去などが終わった箇所から復旧を
進めていった。また、埋立地を結ぶ橋梁などは、迂回路を確保しながらの工事となった。
・当時、ポートアイランドは神戸大橋だけしかアクセスできるルートがなく、複数のルートを確
保することの重要性が強く感じられた。(当時、港島トンネルが建設中はあった。)
・復興にあたっては、ユニバーサル社会をめざした段差解消、広幅員歩道など「人にやさしい道
路」の復旧。環境に配慮した「騒音防止」「透水性」などの舗装工法の採用
・地域のまちづくりに合わせた道路計画、狭幅員・行き止まりなどの解消、代替道路網の整備
102
表2 一般道路の復旧時期
道路名
国道 2 号
区 間
復旧時期
岩屋高架橋
1996年 2 月19日
浜手バイパス
1996年 5 月 2 日
備 考
8.2 高速道路
・基軸となる阪神高速道路を中心に、それを補完する高規格道路網が必要であり、山陽自動車
道、明石海峡大橋と関連道路、新神戸トンネル延伸などの整備促進が図られた。
表3 高速道路の復旧時期
道路名
区 間
復旧時期
備 考
1995年11月20日
全線開通
阪神高速道路 湾岸線
浜手バイパス
1995年 4 月10日
全線開通
阪神高速道路 神戸線
摩耶~京橋
1996年 2 月19日
京橋~月見山
8 月31日
摩耶~深江
9 月10日
深江~西宮
9 月20日
六甲~高羽
1995年 9 月28日
高羽~摩耶
11月 1 日
摩耶~ポートアイランド
1996年 8 月24日
名神高速道路
ハーバーハイウェー
全線開通
全線開通
8.3 設計基準等の改訂
建設省では、道路橋が甚大な被害を受けたことから、1 月20日には対策委員会を設けて検討に入
り、取り壊された道路橋の復旧作業に必要な仕様を定めた。その後、阪神淡路大震災など直下型地
震を考慮に入れた「道路橋示方書」の改訂をおこなった。
また、阪神高速道路公団では、道路施設の耐震性向上対策として次のような方策をとることにし
ている。
①橋脚の補強
橋脚の粘りを増すために、橋脚に鋼板巻き立て、エポキシ樹脂注入とし、根元部分はコンク
リート根巻きを行う。
②上部構造の耐震対策
落橋防止装置の改良や免震支承への取替えをおこなう。
③液状化対策
④地震時の応急対策
地震の発生など緊急の場合には、警戒体制、緊急体制、非常体制をとり、段階に応じて必要
な対策を講じる。特に通行規制などの交通管理、施設の保全管理を行い、情報を速やかに関係
機関に通報する。
103
地震の発生など緊急の場合には、警戒体制、緊急体制、非常体制をとり、段階に応
じて必要な対策を講じる。特に通行規制などの交通管理、施設の保全管理を行い、情報
を速やかに関係機関に通報する。
9
9.1
図8 鉄筋コンクリート橋脚の耐震補強例
鉄道
復旧状況
・ 震災前の機能回復が最優先され、橋梁などの土木施設が昼夜施工で回復された。別
9表に各区間の復旧日を、また、下表には各路線において復旧の経過を示すが、やは
鉄道
り鉄道は全線開通して本来の機能を発揮するものであることがよくわかる。
9.1
復旧状況
・震災前の機能回復が最優先され、橋梁などの土木施設が昼夜施工で回復された。別表に各区間
・ 特に、神戸高速鉄道では大開駅が破壊したため、この復旧にかかる期間が長く、列
の復旧日を、また、下表には各路線において復旧の経過を示すが、やはり鉄道は全線開通し
車を通過させながら駅舎の復旧がおこなわれ、1年後に駅の業務が再開された。
て本来の機能を発揮するものであることがよくわかる。
・ その後の復興では、エレベータの導入、プラットホームの拡幅などユニバーサル化
・特に、神戸高速鉄道では大開駅が破壊したため、この復旧にかかる期間が長く、列車を通過さ
などを意識した駅の改築がおこなわれた。
せながら駅舎の復旧がおこなわれ、1 年後に駅の業務が再開された。
・その後の復興では、エレベータの導入、プラットホームの拡幅などユニバーサル化などを意識
表 4 鉄道の復旧時期
した駅の改築がおこなわれた。
鉄道名
区間
復旧時期
JR 神戸線
JR 新幹線
表4 鉄道の復旧時期
1995
年4月1日
灘~住吉
鉄道名
JR神戸線
新大阪~姫路
区間
復旧時期
4月8日
1995年 4 月 1 日
灘~住吉
阪急神戸線
1995 年 6 月 12 日 4月8日
JR新幹線 夙川~西宮北口
新大阪~姫路
阪神電鉄 阪急神戸線 西灘~御影 夙川~西宮北口
1995 年 6 月 261995年
日 6 月12日
阪神電鉄
神戸市営地下鉄
西灘~御影
板宿~新神戸
神戸市営地下鉄
ポートライナー
1995年 6 月26日
1995 年 2 月 18 日
板宿~新神戸
ポートライナー
1995年 2 月18日
1995 年 7 月 31 日
1995年 7 月31日
神戸高速鉄道
神戸高速鉄道
1996 年 1 月 171996年
日 1大開駅
月17日
山陽電鉄 山陽電鉄
1995 年 8 月 131995年
日 8 月13日
大開駅
9.2 新しい耐震設計基準への対応
土木学会の提言に対応して、L1地震動、L2地震動および盛土構造について鉄道構造物が備える
べき耐震性能が検討され、今後はこれに基づいて動的解析などを取り入れた設計が行われるように
なる。また、鉄道に多い盛土などの基礎構造の耐震性は重要であることから、液状化地盤・軟弱地
盤ついて地盤の評価方法が検討された。
104
10 都市施設の復興に関するその他の課題
10.1 ライフライン間の相互関係
ライフラインは相互に依存しており、一つのライフラインが他のライフラインに影響を与える。
特に、都市では、ライフラインと諸活動が密接に関係している。表 5には、阪神・淡路大震災時に
観測された「水道を中心にみたライフライン間の相互関係」を示した。
表5 水道と他のライフラインの相互関係
ライフライン
事象
水道に与えた影響
電気
停電
送水停止、浄水停止、電話・FAX使用不可
電話
断線、輻輳
情報収集の遅れ、指示の不徹底
ガス
復旧工事の遅れ
下水
水道からの影響
水の流入(水道復旧)
汚染の危険(今回事例なし)
中水
原水となる下水なし
バックアップで機能回復
交通(道路)
道路閉鎖・交通渋滞
応急給水・復旧工事の遅れ
交通(鉄道)
早期に復旧したこと
市民生活の正常化・応急給水量の増大
ゴミ処理
焼却炉の停止
冷却水不足
10.2 水道とガスの復旧比較
水道とガスはともに管路に被害を受けたため、復旧についても共通する部分がある。また一方
で、ライフラインの特性から復旧において異なる点もみられる。
・共通点:まず地下施設(管路)を復旧する。破損箇所を探し出すのが困難。
・相違点:ガス管内には地下水・下水・水道水が入っており、これらを排除することが必要。水
道は接続して、水を流して洗浄する。供給される水が水質検査に合格すればOK.
10.3 その後の災害への応用
神戸市水道局は、阪神・淡路大震災以降、2002年 6 月には篠山市における水源汚染事故、11月に
は氷上町での井戸停止による断水事故、2004年には台風23号による洲本・豊岡の水害に対して災害
出動し、現地で応急給水や復旧支援を実施している。また、2004年の新潟中越地震においても応急
給水・復旧支援をおこなっている。
これらの支援においては、
・被災都市の立場に立ったアドバイス
・実際の応援行動(対策本部の立ち上げ、現地調査、応急給水、復旧計画)
・国、県、その他団体との関係調整
などをおこない、被災事業体の負担軽減と市民の皆さんの生活レベル低下の防止に努めている。
応急給水については、20Lポリタンクは使われなくなり、6Lと10Lで災害用に資材として常備し、
神戸市における防災訓練でも使用している。
10.4 海外との協力関係
アメリカ西海岸は太平洋をはさんで日本の対岸であり、同様に太平洋プレートが大陸の下部に入
り込んでいるため地震多発地帯となっている。過去にも1906年の有名なサンフランシスコ大地震、
1971年のサンフェルナンド地震、1989年のロマプリエタ地震(サンフランシスコの南)、1994年の
ノースリッジ地震(ロサンゼルス北部)などが発生しており水道にも被害が出ている。
105
AWWA(アメリカ水道協会)と日本水道協会では、1999年以降、共同で地震対策ワークショッ
プを 2 年おきを目処に開催してきており、地震対策の成果を交換している。
アメリカ側は当初、基幹施設のみを耐震化することで地震対策としてきたが、最近の傾向として
配水管の地震対策に重要性を見出すようになり、FEMAの資金援助を得て、求められる性能に対応
した管路の設計法が提案されている。
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