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開発パートナーシップ

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開発パートナーシップ
活動報告◦さまざまな事業の取り組み
開発パートナーシップ
世界の援助機関と協調し、開発課題のアジェンダセッティングに貢献
●近年の課題
これまで、
日本をはじめ各国ドナーおよび国際機関(以
下、ドナー)は、2015年を達成期限としたミレニアム
開発目標
(MDGs)
の枠組みの下、貧困削減への取り組み
を強化してきました。一部に未達成の課題(例:5歳未
満児や妊産婦の死亡率削減)が残る一方、多くの開発途
上国が、貧困人口比率の削減等、貧困削減や人間開発指
数において目覚ましい進捗を遂げてきました。
この取り組みを踏まえ、2015年9月、国連サミット
において「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が
採択されました。同アジェンダは、貧困撲滅や持続可能
な開発を2030年までに実現するための指針として「持
続可能な開発目標(SDGs)」を定めており、MDGsの未
2015年11月、JICA本部で会談したヘレン・クラークUNDP総裁(左)と北岡伸一理
事長
達成の課題への取り組みとともに、拡大する格差や気候
変動、自然災害など、MDGsが対象としていなかった
パートナーシップを構築しており、開発援助の現場では
新たな課題に対する取り組みを求めています。
これらドナーと協調融資や技術協力の連携などを実施し
また、途上国だけでなく先進国を含むすべての国の取
ています。特にSDGs達成には、資金規模の確保やその
り組みを求めるとともに、民間企業や市民社会の高まる
効率的な活用が求められています。また、開発規模が大
役割を背景に、あらゆる関係者が連携することの重要性
きい案件、ドナーごとに得意な分野・技術に特化する場
を強調しています。さらに、気候変動などの新たな課題
合、また単独では対応が難しい課題に対しては、協調す
が加わり多様化した開発課題に対応するためには、
ることで、より効果的・効率的な支援が可能になります。
MDGs時代の数十億ドル規模ではなく数兆ドル規模の
さらに、国際的な開発援助の議論に参画し、JICAの経験・
資金が必要です。同アジェンダは、ODAだけでなく多
知見を発信することは、世界の開発の取り組みの質的な
様な資金やリソースが持続可能な開発に貢献する形に仕
向上と、日本の経験・アプローチやODAのあり方に対
向けられることを必要としています。
する理解や評価を高めることにつながります。
こうした状況を背景に、より多く、より質の高い開発
JICAは、世界銀行グループ(WBG)、アジア開発銀行
資金を動員する観点から、OECD DACでは約40年ぶ
(ADB)、米州開発銀行(IDB)、アフリカ開発銀行(AfDB)
、
りにODAや開発資金の定義のあり方が検討されていま
欧州復興開発銀行(EBRD)などの年次総会に積極的に参
す。また、2000年代前半に始まった援助効果向上に関
画し、またドナー幹部との相互訪問を通じて、開発課題
する検討は、2011年に韓国・釜山で開かれた「第4回効
や地域別・国別の援助戦略の共有など包括的な協議を実
果的な開発協力に向けたグローバル・パートナーシップ」
施しています。
ハイレベル会合を経て、市民社会、民間セクターおよび
2015年度は、WBG・国際通貨基金(IMF)春季会合
(4
南南協力も動員した、より広範な開発協力において効果
月)・年次総会(10月)、ADB年次総会(5月)、AfDB年
を高めることを主眼に議論がなされています。
次総会(5月)、第3回開発資金国際会議(7月)、国連気候
援助を取り巻く世界的な環境の変化を把握し、国際的
変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)
(12月)等の
な議論への発信を強化して貢献すること、また他のド
多くの会合・セミナーにおいて、JICA役員ほかがキー
ナーや開発協力主体と事業連携を進めることは、開発援
ノート・スピーカーやパネリストとして登壇し、JICA
助を効果的かつ効率的に進めるうえでとても重要です。
の考えや取り組み実績・方針を積極的に発信しました。
また、田中明彦理事長(当時)は、9月の国連サミットに
122
●開発課題におけるドナー連携
おいて、人間の安全保障、国際保健、防災等の会合に参
JICAは以前から欧州や米国、国際開発機関と緊密な
加して、JICAの知見を基に発信し議論に貢献していま
JICA年次報告書 2016
活動報告◦さまざまな事業の取り組み 開発パートナーシップ
す
[➡ 下事例を参照ください]
。
強化を通じ、より質の高い支援を実現していきます。
南南協力・三角協力分野に関しては、2015年度は国
近年、中国、韓国、タイ、インドネシア、ブラジル、
国連主催「南南協力に係るハイレベル・マルチ・ステー
トルコなどの新興国は援助提供国としての姿勢を明らか
クホルダー戦略フォーラム」等の国際会議の機会をとら
にしてきています。長くアジア唯一のDACドナーであっ
えて知見・経験や優良事例を国際社会に発信しました。
た日本の援助国としての経験を背景に、JICAは新興国
一部のドナーとは戦略的開発パートナーとして、連携
との対話を通じ、援助アプローチや開発課題への取り組
に向けた定期協議を行っています。2015年度は、世銀
みの共有を進めています。
とトップ同士が協議を行うハイレベル対話の第2回目を
特に、アジアの開発経験を「アジアの声」として発信し
実施し、保健やアジア・アフリカ地域についての戦略レ
ていくために、JICAはアジア開発フォーラムの開催を
ベルの議論をしたほか、ADB、国連開発計画(UNDP)、
リードしてきています。新興国を含めたアジア諸国と国
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)といった国際(地
際機関が一堂に会し、包摂的成長やSDGsなどの取り組
域)機関と定期協議を行いました。また、二国間援助機
みや知見を共有しています。
関のフランス開発庁(AFD)とはアフリカ、気候変動対
また、中国については中国輸出入銀行と、韓国につい
策、持続可能な都市等について協議を実施しました。
ては韓国国際協力団(KOICA)および韓国輸出入銀行対
そのほかビル&メリンダ・ゲイツ財団、アガ・ハーン
外経済協力基金(EDCF)との定期協議のほか、JICA、中
財団、アジア財団のような非伝統的ドナーとのパート
国輸出入銀行、EDCFの3者にタイの周辺諸国経済開発
ナーシップや、アラブドナー10機関が所属するアラブ・
協力機構(NEDA)を加えた、アジアの開発金融機関間で
コーディネーション・グループ等との相互補完的な連携
の4者協議も実施しています。
さまざまな事業の取り組み
事例
課題別取り組み
ダにおける南南協力・三角協力ハイレベルイベント」、
地域別取り組み
●新興国とのパートナーシップ
活動報告
連関係者が多く参加する「ポスト2015年開発アジェン
国連サミット関連会合で発信
「2030アジェンダ」重要課題等に関する議論に貢献
JICAは2015年9月の国連持続可能な開発サミットにおいて、複数の
パートナーと連携し、翌年の重要会議も見据えた各種会合を共催しまし
た。理事長は基調講演者等として登壇し、JICAの考えを発信しました。
UHC推進やアフリカ開発等への
取り組みやメッセージ
アフリカ開発のための新パー
JICAは、日本を含む5カ国と世界保健
連開発計画(UNDP)、世界銀
機関(WHO)、世界銀行、グローバルファ
行、コロンビア大学等とサイ
ンド共催による国際保健のサイドイベン
ドイベントを共催しました。
トに出席。会合を通じて、健康は「2030
JICAは、 構造転換促進と強
アジェンダ」の中核であり、ユニバーサ
靭性強化への取り組みとして
※
ル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
はさま
の産業開発の必要性、アジア
ざまな健康問題の解決に効果的であるこ
の経験のアフリカへの応用の
とがメッセージとして打ち出されました。
可能性、エチオピアにおける産業政策対
ローチが必要であること、民間セクター
JICAからは、JICAの目指すUHCとして、
話とカイゼンの実績などを紹介しました。
を含む革新的ファイナンスへの期待等に
母親や子どもの健康にも配慮しケアでき
アフリカにおける産業開発の重要性は、
ついて議論されました。JICAからは、
る体制を整えること、エボラ出血熱など
他登壇者からも意見が相次ぎ、TICAD
統合的アプローチのためにも、危機発生
の突発的流行への対応等の感染症対策も
Ⅵのテーマとしても注目されました。
段階から人道分野と開発分野の機関が議
含むとの考えを説明しました。また、政
さらに、2016年5月の人道サミット
論に参加できる仕組みが必要との点を強
府や援助機関など関係者間の連携が重要
を見据えて、人道支援と開発援助の資金
調しました。
であることに言及しました。
に関するサイドイベントが開催されまし
また、2016年8月の第6回アフリカ開
た。この会合では、人道危機は増大・長
発会議(TICAD Ⅵ)を見据えたイベント
期化の傾向にあり、貧困撲滅との関連が
として、JICA主導により、 日本政府、
深く、 人道支援と開発の統合的なアプ
トナーシップ(NEPAD)、国
サイドイベントで、人道支援と開発の一体的な実施や「Build Back
Better(より良い復興)」の重要性を強調する田中理事長(当時)
※ 「すべての人が、健康増進・予防・治療・機能
回復にかかる基礎的な保健サービスを、必要なとき
に負担可能な費用で受けられること」を示す概念。
JICA年次報告書 2016
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