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アフリカ - JICA

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アフリカ - JICA
第3章
ヴカ
ェー
ルボ
デ
●
アフリカ地域
モーリタニア
マリ
セネガル
ガンビア
ギ
ニ
ア
ビ
サ
ウ
エリトリア
チャド
ギニア
シ
エ
ラ
レ
オ
ネ
ニジェール
ブルキナ
ファソ
ジブチ
ベ
ナ ナイジェリア
ガ
コート
ン
ー
ジボワ−ル ナ ト
リ
ー
中央アフリカ
ベ
ゴ
リ
カメルーン
ア
サントメ・
プリンシペ
赤
コンゴ
道 ガボン
共和国
ギ
ニ
コンゴ民主
ア
共和国
エチオピア
ソマリア
ウガンダ
ケニア
第
2
部
ルワンダ
ブルンジ
セーシェル
タンザニア
コモロ
第
3
章
アンゴラ
モザンビーク
ザンビア
マラウイ マダガスカル
ジンバブエ
アフリカ
ナミビア
A f r i c a
援助の柱
スワジランド
南アフリカ
共和国
モ
ー
リ
シ
ャ
ス
レソト
究極の目標は「貧困削減」
東西冷戦構造の解消後、日本は1993年より国連などの国際機関との共
■各国への協力実績(2003年度)
ブルンジ 13,813
チャド 17,961
ルワンダ 31,376
セーシェル 31,397
トーゴ 33,977
モーリシャス 42,506
アンゴラ 54,500
エリトリア 67,213
カーボヴェルデ 74,459
ナミビア 77,150
ガボン 83,108
レソト 127,451
コートジボワール
131,416
ベナン 135,361
カメルーン
154,080
ギニア 162,601
ナイジェリア
170,874
マリ 184,321
ジブチ
189,672
スワジランド
222,875
ガンビア
228,178
モザンビーク
280,035
ボツワナ 283,096
ジンバブエ 490,944
モーリタニア 503,415
マダガスカル 556,501
ウガンダ 609,140
ニジェール 663,777
ボツワナ
ア
フ
リ
カ
地
域
コンゴ民主共和国 11,146
ギニアビサウ 6,873
サントメ・プリンシペ 4,747
赤道ギニア 2,974
コンゴ共和国 2,088
中央アフリカ 1,056
シエラレオネ 652
催によって「アフリカ開発会議(TICAD)」を開催し、アフリカ開発に対す
る国際社会の関心を喚起してきました。2003年のTICAD IIIでは、日本は
対アフリカ支援の3本柱として「人間中心の開発」「経済成長を通じた貧
困削減」
「平和の定着」を掲げ、国際社会やアフリカ諸国とともにアフリカ
の開発に貢献していくことを表明しました。
*
な
JICAは、日本の対アフリカ援助方針とミレニアム開発目標(MDGs)
ケニア
2,831,458
どの国際社会の共通目標をふまえて、アフリカ開発の究極の目的を人間
の安全保障の概念に基づく「貧困削減」と明確に位置づけ、以下の方針で
取り組んでいきます。
タンザニア
2,280,708
合計
(単位:千円)
1. ミレニアム開発目標への貢献(貧困削減、社会開発指標の改善に資す
る協力)
19,755,081
セネガル
1,768,187
ザンビア
1,619,482
2.「人間の安全保障」の視点を取り入れた事業の展開(脆弱層とコミュニ
ティへの支援の強化)
3. ポスト紛争国における復興支援のタイムリーな実施
4. TICAD IIIのフォロー(人間中心の開発、経済成長を通じた貧困削減、
平和の定着)とNEPADとの連携
*
などを通じたアフリカ各国の政策プロセス
5. 貧困削減戦略文書(PRSP)
ガーナ 1,464,135
マラウイ 1,446,066
エチオピア 1,150,654
ブルキナファソ 684,344
南アフリカ共和国 670,867
への支援と援助協調への取り組みの強化
また、実施にあたっては、地域拠点を核としたアフリカ域内協力やアジ
アにおける開発経験を生かした南南協力を推進していきます。
JICA 2004 ●
69
開発の現況
人口の4割が1日1ドル以下の生活
変革のなかのアフリカ支援
アフリカ地域
(サハラ以南アフリカ地域。スーダン
1990年代以降、アフリカ諸国は、政治、経済、社
は中東地域に区分)は、面積2125万km の広大な地
2
会の面で大きな変革の時期にあります。
域であり、砂漠のような乾燥地帯や高温多湿の熱帯
アフリカ地域は80年代から一貫してODAの最大の
雨林地帯など多様な気候が広がり、47カ国に6億人
受け取り地域ですが、90年代には欧米諸国の援助疲
を超える人々が暮らしています。
れから、ODA受取り額は92年の195億ドルをピーク
アフリカ諸国の多くは1960年代に独立し、当時は
に、2001年には139億ドルまで低下しました。
輸出向け一次産品の国際価格の安定など国際経済環
しかし、今世紀に入り、2000年の九州沖縄サミッ
境に恵まれ、順調な成長を遂げました。しかし、植
トでのアフリカ問題に関する議論をはじめとして、
民地時代の影響もあり、特定の一次産品生産を経済
2002年3月のモントレー国連開発資金国際会議やカ
基盤とするモノカルチャー経済を脱することができ
ナナスキス・サミットでの「G8アフリカ行動計画」
ず、70年代は、一次産品価格の長期的な下落、経済
の採択に見られるように、欧米諸国は対アフリカ援
運営の失敗、不安定な政治基盤、旱ばつ・洪水など
助への増額を表明してきています。
の気候変動のために、経済成長は停滞してしまいま
この間、アフリカ諸国においては、セネガル
(2000
した。80年代には、多くのアフリカ諸国が「失われ
年)、ケニア
(2002年)で平和的に政権交代が行われ
た10年」といわれるほどの深刻な経済危機に直面し、
るなど、民主化の進展が見られています。2001年10
開発資金のみならず、経常的な行政サービスの財源
月には、アフリカ諸国自らのオーナーシップ*によっ
不足に直面することとなりました。
て開発イニシアティブ「アフリカの開発のための新
こうしたアフリカ地域の停滞の最大の原因は、国
パートナーシップ
(NEPAD)」が表明され、各国の
内紛争を含む不安定な政治・社会体制、脆弱な国家
民主化の動向を相互監視する制度(African Peer
機能にあります。90年代に、多くのアフリカ諸国は、
Review Mechanism)が導入されるにいたりました。
複数政党制や選挙制度の導入を果たし、民主的な政
2002年7月には、それまでの「アフリカ統一機構」
治システムの確立に向けて努力してきました。しか
(O A U 、1 9 6 3 年5月に設立)が「アフリカ連合」
し、90年代以降に紛争を経験した国は19カ国にもの
(Africa Union)へと発展的に改組され、アフリカ大
ぼり、世界の3分の1にあたる400万人もの難民が発
陸53カ国・地域が加盟する機関として、地域の政治
生しています。
的・経済的統合の実現と紛争の予防・解決に向けた
世界で50カ国とされる後発開発途上国
(LDC)のう
取り組みが強化されています。平和の定着とグッド
ち35カ国がアフリカ諸国であり、長期にわたる経済
*
ガバナンス
(良い統治)
が開発の前提であると認識さ
の低迷により、人口1人当たりの所得水準は1960年
れ、その確保にアフリカ諸国自らが取り組もうとし
代よりも低い状態にとどまっています。アフリカ地
ている潮流を、より強固なものにすることが重要と
域の人口の約4割が、1日1ドル以下で生活する絶
なっています。
対的貧困レベルに置かれています。
また、1990年代後半から、30カ国近いアフリカ諸
また、近年は、HIV/AIDS、マラリア、結核など
国で、貧困削減戦略の策定やセクターワイドアプロ
の感染症が蔓延し、世界経済からも貿易・投資面、
ーチの実践が行われています。経済の自由化、財
情報面で取り残される傾向にあり、アフリカの貧困
政・国際収支バランスの回復をめざした自由主義的
をより深刻なものにしています。保健や教育などの
な経済政策へと転換がはかられ、この市場メカニズ
社会開発指標を組み合わせた人間開発指数は、下位
ムに基づく経済政策の推進とともに、貧困層への配
24カ国がアフリカ諸国となっています。
慮
(保健・教育などの公的サービスの再建、すそ野の
広い経済成長)
が求められています。
70
●
JICA 2004
重点課題と取り組み
アフリカ開発会議(TICAD)をふまえて
アティブ」を発表しました。このなかで、日本は
JICAはアフリカ地域に対して、2003年度に約198
TICADプロセスを通じたNEPAD支援を基本方針と
億円の技術協力を実施しました。無償資金協力実績
するとともに、アフリカ開発には人間の安全保障の
(交換公文ベース)を加えると、日本は578億円を超
える援助を行っており、アフリカに対しても主要援
視点が重要であることを表明しています。
JICAは、TICADの成果をふまえ、アフリカ開発
の究極の目標が貧困削減であるという認識に基づき、
助国の地位を占めています。
日本は、1993年に国連開発計画
(UNDP)などとの
共催で第1回アフリカ開発東京会議(TICAD I)を
以下に掲げるアプローチと重点課題に対して、積極
的に取り組んでいきます。
第
2
部
開催して以来、1998年にTICAD II、2003年には
TICAD IIIを開催し、アフリカ開発の重要性を世界
に訴えてきました。このTICADプロセスの10年間
に、日本は総額約120億ドルの二国間政府開発援助
アフリカ向けの開発アプローチ
1.人間の安全保障
アフリカの多数の人々は、脆弱な国家機能により、
を通じて、学校建設など約260万人の子どもに対す
本来は受けられるべき国家による国民の保護を受け
る教育機会の提供、ワクチン接種など約2億4000万
られない状態に置かれています。また、HIV/AIDS
人に対する保健医療サービスの提供、約300万人の
や小型武器の流入、国境を越えた民族紛争などに代
人々への安全な水の供給などを行いました。
表される国家の枠を超えた脅威にもさらされていま
また、2003年のTICAD IIIでは、日本は「人間中
す。「人間の安全保障」は、従来の国家の安全保障
心の開発」「経済成長を通じた貧困削減」「平和の定
の概念にはおさまらない広範な脅威から人々を守る
着」を3本柱とする「日本の対アフリカ協力イニシ
ために、人々の保護と能力強化をめざす考え方です
ジブチ
●
第
3
章
ア
フ
リ
カ
地
域
「世界の笑顔のために」プログラム
個人所有の機材を途上国に供与する
個人の善意を直接現場へ
所有し不要となった機材などを直接現
場に送ることとなり、 現場との親密感
協力隊員の活動を支援するプログラ
も大きくなると思われます。2003年
ムとして「世界の笑顔のために」が試
度から始まったこのプログラムで、柔
行的に行われています。いままでは隊
道着などのスポーツ用品や楽器、文房
員の申請により活動に必要な機材を
具など多数が途上国に送られており、
JICAが供与してきましたが、このプ
隊員を通じて各地から喜びの声が届い
ログラムでは機材の調達方法がまった
ています。
く違います。それは、隊員から要請の
あった機材を日本の一般市民に提示
青年海外協力隊
ジブチへ工具を送る
日本から送られてきた工具一式
し、個人が所有している機材などを日
ジブチでは設備運輸省車輌整備場に
本から現地に送ってもらうという方法
派遣されている協力隊員が工具を申請
ばあります。工具は到着したばかりで、
です。
し、隊員の地元の人たちからの支援を
工具をどのように現場で管理していく
何十倍もの時間を要することもしばし
援助事業は日本国民の税金で行われ
受けました。この車輌整備場には無償
かを、 隊員を中心に検討しています。
ていますが、納税者の個人個人がそれ
資金協力で建設機械が供与され、さら
時間はかかるでしょうが、きちんとし
を認識し、国際協力事業に参加してい
に整備場の職員も日本で研修を受けて
た管理体制が築かれ、善意で送られて
るということを実感するのはなかなか
います。しかし、大型建設機械を修理
きた工具が有効に機能することが期待
むずかしいでしょう。新しいこのプロ
するための一般工具、専用工具ともに
されます。
グラムでは、JICAを通して、個人が
不足しており、ひとつの作業に日本の
(ジブチ・ボランティア調整員)
JICA 2004 ●
71
る貧困削減戦略の枠組みにそって支援していくこと
が求められています。1990年代後半から、こうした
PRSPアプローチが多くの国で実践されています。
PRSPは国家の貧困問題を包括的にとらえ、市民
社会を含む開発アクターの参加によって策定され、
中期的な財政支出計画をもった貧困削減のための開
発戦略です。JICAは、アフリカ側のオーナーシップ
の醸成を重視しつつ、その策定プロセスと実施に対
して、継続的、積極的に参画していきます。
ガーナ感染症対策プロジェクトで活動する専門家
PRSP実施のモニタリング(調査)については、各
が、アフリカで、JICAが「人間の安全保障」の考
国の貧困削減戦略文書のなかで具体的な達成度を測
えにそった協力を展開していく場合、大きく2つの
るための指標が設定されており、その指標に基づい
方向性が考えられます。
た検証が毎年、行われています。しかしながら、ア
ひとつは、紛争後の荒廃した国家の再建と人々の
フリカ諸国の中央政府、末端の地方政府は、人材不
保護、能力強化です。エリトリアやアンゴラなど、
足や予算不足のために、国民の生活指標データを十
和平合意が成立して復興段階にある国では、除隊兵
分に整備できておらず、貧困削減の達成度を正確に
士に対する職業訓練や国内避難民、難民、受入地域
把握することが困難な状況にあります。JICAは、貧
の住民を対象とした農村コミュニティの開発への協
困モニタリングの改善のために、2003年からタンザ
力を通じて、社会の安定化や復興に向けた支援を行
ニア統計局への協力を開始し、PRSPの効果的な実
っていきます。
施に貢献しています。
もうひとつは、慢性的な貧困状況から人々を救うた
セクタープログラム*(SP)アプローチは、PRSP
めの国家機能の強化と人々の能力強化です。たとえ
プロセスを各セクター
(分野)の開発から押し進める
ば、HIV/AIDS感染拡大の防止のためには、途上国
ものであり、教育、保健などの分野を中心に推進さ
政府の能力強化による保健行政の改善、保健サービ
れています。JICAは、SPアプローチのもとでの協
スの拡大の支援と同時に、人々に対する直接的な予
力効果やSPとPRSPとの整合性に留意しながら、セ
防啓発活動を行って、HIV/AIDSに対する基礎知識
クター戦略の策定を支援しています。今後は、途上
の向上や性行動の変容を促していくことが重要です。
国政府側の行政コストを軽減するための手続きの共
JICAは、
「人間の安全保障」の考え方を重視し、
通化や、中期財政支出計画を通じた援助の予測性の
人々の保護の基盤となる国家機能の回復と強化、
向上といった課題にも取り組んでいきます。
*
人々自らの問題解決能力の育成
(エンパワーメント )
を重要課題とした協力を行っていきます。
3.南南協力の推進
アフリカ地域は多様な国家、社会の集合体ですが、
*
2.PRSP への取り組み
アフリカ諸国の少ない開発予算やドナー諸国の限
りある援助資金のなかで、効果的で効率的な開発を
72
複数の国が共同して取り組むことで成果を達成でき
る課題、他国の類似する経験が問題解決の参考とな
る課題も存在します。
通じて貧困問題を解決していくには、開発に関与す
アフリカ人自身による開発、アフリカ諸国の相互
るすべての援助活動者が開発目標や戦略、開発プロ
協力を促進するため、JICAはケニア、タンザニア、
グラムを共有し、協働して貧困削減に取り組んでい
ウガンダの東アフリカ3カ国の高等教育機関を支援
くことが必要です。貧困削減戦略は、途上国政府が
するAICAD(African Institute for Capacity
オーナーシップ*をもって策定し、実施に移していく
Development)や、タンザニアのソコイネ農業大学
ことが重要であり、ドナー諸国は、途上国の推進す
地域開発センタープロジェクトを実施し、アフリカ
●
JICA 2004
固有の知恵・知識を尊重した、アフリカ人自身によ
助手法といえます。このアジア・アフリカ協力は、
る開発のイニシアティブを支援しています。
TICADプロセスから生まれた援助の手法であり、
特にAICADは、アフリカの高等教育機関を、実
JICAは、アジア側の協力とアフリカ側のニーズのマ
践的な貧困削減の活動にいっそう積極的に関与させ
ッチングをはかりつつ、両地域間の協力関係の強化
るためのユニークな協力事業です。コミュニティレ
に努めていきます。2004年3月からは、アフリカ諸
ベルのニーズに即した研究開発への支援、知見の普
国の開発担当者をアジア諸国に招いて「アジア・ア
及のための研修・ワークショップやコミュニティを
フリカ知識共創セミナー」を実施しています。
対象としたセミナーの開催を通じて、ほかのさまざ
まな組織・機関と連携したネットワークを構築しな
がら、事業を進めています。アフリカ諸国が「貧困」
を自らの問題としてとらえ、その削減をめざした具
重点課題への対応
1.貧困削減を最終目標にすえて
体的な行動計画の策定を進めており、開発の現場に
基礎教育などの社会開発セクターが重要であること
おける実務をになう人材の育成を行うものとして期
は議論の余地がありません。アフリカの人口の4割
待されています。
が絶対的貧困レベルに置かれている現状において、
アフリカ域内での協力のほか、アジアの開発経験
の共有は、アジア諸国、なかでも東南アジアの成功
事例や先行事例から教訓を学ぶという点で有効な援
タンザニア
●
尊厳を重視した援助は何よりも重要です。
協力隊員による青少年活動支援
青年海外協力隊
社会。小学校卒業程度の学歴ではフォ
ーマルな職につくことはできません。
タンザニア第1の都市ダルエスサラ
多くの若者たちは、こういった現状の
なかで「自分は社会的敗者である」と
で、教育レベルも低く、ダルエスサラ
思い込み、12、13歳で夢や希望をな
ームでも貧困度の高い地域であり、若
くして犯罪などに手を染めていきま
者の間ではドラッグや犯罪などの問題
す。OYAのメンバーたちも全員が小学
が深刻化しています。このような状況
校しか出ていません。しかし、彼らは
にあるテメケ地区に、タンザニア伝統
夢に向かって、隊員とともに歩んでき
芸能ンゴマをこよなく愛し、世界的に
ました。
いる若者たちがいます。 ンゴマとは、
数々の大会で優勝をおさめたOYA THEATRE GROUP
勝ち取った優勝と夢の実現
競い合い、見事に優勝を勝ち取ったの
太鼓や木琴などのタンザニアの伝統的
2 0 0 3 年にはメンバーもほぼ定着
です。こうして、彼らは晴れて2004
楽器を使って、歌って踊るタンザニア
し、彼ら自身の芸術スタイルも確立し
年8月に開催されるスウェーデンでの
ンダンスのことです。彼らのグループ
ました。2003年4月にはダルエスサ
世界大会への参加と、ヨーロッパ巡回
名 は OYA THEATRE GROUP。
ラームユース芸術祭で優勝、 ついで、
公演というビッグプライズを手にしま
2000年5月にテメケ地区に青少年活
タンザニア唯一の芸術大学で毎年行わ
した。この優勝は、グループの夢のひ
動分野で派遣されていた協力隊員(青
れるバガモヨ芸術祭にて優秀グループ
とつ「タンザニア伝統芸能ンゴマを世
少年活動)が協力し、「この地区の若
に選ばれました。 2 0 0 4 年1 月には
界に広める」 がかなった瞬間でした。
者たちのモデルとなるように」と立ち
MUSIC CROSS ROADという海外ド
そして、苦労を重ねても、夢をあきら
上げられたグループです。現在、2代
ナー主催の芸術祭のダルエスサラーム
めずに努力を続ければ、夢をつかむチ
目の隊員がグループとともに活動して
大会で優勝、次いでタンザニア大会で
ャンスはあるということを、メンバー
います。
優勝。さらにはザンビア、ジンバブエ、
自身が確信した瞬間でもありました。
タンザニアの社会は日本以上の学歴
ア
フ
リ
カ
地
域
一方、アフリカ諸国が持続的に中長期にわたって
ーム、そのなかのテメケ地区は低所得
もその存在を知らしめようと努力して
第
3
章
「人間の安全保障」の視点から人々の生存、生活、
伝統芸能ンゴマを世界に広める
貧困地区の青少年を支える
第
2
部
アフリカの厳しい貧困状況を見れば、保健・医療、
マラウイ、モザンビーク各国の代表と
(タンザニア事務所)
JICA 2004 ●
73
貧困削減を進めていくには、経済成長の観点からの
力向上や衛生教育の拡充のため、技術者だけでなく、
開発が不可欠です。アフリカでは人口の7割が農村
水管理組合の住民組織も対象とした技術協力をエチ
部に居住し、その多くが貧困層であるため、アフリカ
オピア、セネガルなどで実施しています。
の経済成長の鍵は、農村部の開発にあるといえます。
*
なお、アフリカの家庭では、女性が家事や育児の
JICAは、人々のエンパワーメント のための初等
ほかに、農業など、経済・生産活動にも重要な役割
教育の拡充やHIV/AIDS対策、水供給などの緊急課
をになっている一方、教育などの社会サービスへの
題に積極的に協力していくだけでなく、経済成長を
機会が限られ、結果として社会的に脆弱な立場に陥
支える農業・農村開発、中等教育や職業訓練、所得
っているという状況があります。JICAは、その協力
の向上のための起業家育成、地方道路や地方電化な
にあたって、女性にも社会サービスなどが適切に配
どの基礎的なインフラ整備にも取り組んでいきます。
分されるように配慮しています。また、開発の初期
段階から受益者である住民の参加を得て、事業の改
善やオーナーシップの育成を行うように、住民参加
2.人間中心の開発
基礎教育分野では、無償資金協力による校舎建設
型開発手法を導入するよう努めています。
に加え、初等教育の充足とのバランスをとりながら、
ケニア、ガーナ、南アフリカなどで中等理数科教育
の質の向上に積極的に取り組んでいます。また、近
国民の過半数が農業に従事し、その多くが小規模
年は、行政能力向上(学校現況調査、地方教育行政
な経営で自給目的の食糧生産を行っているアフリカ
における計画策定能力の向上、学校長に対する研修
では、小規模農家の生産性向上や現金収入源の多角
など)、父兄やコミュニティの学校運営への参加促進
化などを通じて、農村地域の貧困削減に貢献してい
にも取り組んでいます。地方分権化の進行するエチ
くことが重要です。
オピアでは、JICAは住民参加型により、地方政府の
アフリカでは、農業生産性、特に土地生産性を上
教育計画の策定、情報システムの改善などのキャパ
げて農業所得を向上させることが最も重要な課題と
*
シティビルディング に対する支援を行っています。
なっています。アフリカでは、灌漑施設の整備があ
保健医療分野では、プライマリーヘルスケアの強化
まり進んでおらず、整備されているのは全耕作面積
を中心に、アフリカで深刻な問題である感染症の予
1万5800万haのうち517万ha(全耕作面積の3.3%)に
防・早期治療の能力の向上に取り組んでおり、保健医
すぎません。この状況を考慮し、農民にとってより
療行政の組織や制度の整備に協力するとともに、現
アクセスが可能な技術の開発、普及に取り組んでい
場の医療従事者の育成を重点課題としています。特
きます。JICAは、タンザニア、ケニア、ガーナなど
に緊急課題となっているHIV/AIDSについては、エ
で小規模農家向けの農業技術の技術開発・普及に協
イズケアと治療の初期段階としてVCT(Voluntary
力するとともに、農民参加型によるネリカ米*(アジ
Counseling and Testing:自発的カウンセリング検
アとアフリカの品種をかけ合わせた新しい米)の普及
査)を重視し、検査キットの供与とともにVCTを支
にも努めていきます。
援しています。また、寄生虫などの感染症に関して
また、プロジェクト対象地域外へのインパクトと
は、ケニア、ガーナ、ザンビアなどで実施中のプロジ
いう視点から、全国規模とセクターレベルでの取り
ェクトで、研究所や検査ラボなどの能力向上に協力
組みのため、タンザニアの農業セクタープログラム
するとともに、ボランティア事業や現地NGOとの連
開発調査のような政策支援型の協力、効率的な普及
携による教育・啓発活動に対しても協力しています。
システムの構築・能力開発、研究活動の支援、実際
水供給分野では、TICAD I以来精力的に行ってき
に普及可能なコストによるパイロット事業など、よ
た地方給水事業
(深井戸の整備など)をさらに拡充し、
74
3.経済成長を通じた貧困削減
り広い効果を重視した援助を展開していきます。
貧困層、女性、社会的弱者に配慮した協力を優先的
他方、アフリカでは、インフラが十分整備されて
に実施していきます。さらに給水施設の維持管理能
いないために、流通に関する障害が農産物の競争力
●
JICA 2004
を弱める大きな制約要因となっています。JICAは、
能力の向上のための人材養成を行っています。
ウガンダでパイロット事業の実施とともに、収穫後
処理と流通システム改善に関する具体的な開発計画
の策定を支援しています。
4.平和の定着
平和の定着は、すべての開発を進めるうえでの前
さらに、アフリカ全体の経済システムが変容を遂
提条件としてきわめて重要です。アフリカ諸国の歴
げるなか、市場経済システムの整備と強化、貿易投
史的・文化的特質に留意しつつ、法治主義、民主
資促進、中小企業育成など民間セクター開発も重要
化、基本的人権の保障という基本原則を定着させ、
な課題となっていることから、これらの分野につい
行政の透明性、効率性を向上させることが必要です。
ても、人材育成を中心に協力を展開していきます。
また、紛争の再燃防止のためには、民主主義やグッ
JICAは、アフリカ諸国を対象とした投資分野のワー
*
ドガバナンス
(良い統治)
に基づいた社会・経済の着
クショップを、WTO(世界貿易機関)やエジプト政
実な再建が必要不可欠です。JICAは、紛争後の復
府との共催で開催しました。これらの活動によりワ
興開発やガバナンスの向上について、支援を行って
ークショップ参加国の貿易運用能力の向上が期待さ
いきます。これらの分野への協力実績はまだ多くは
れています。
ありませんが、タンザニアでの難民受入地域の開発、
道路・橋梁、放送・通信などのインフラの整備につ
いては、無償資金協力による支援を中心に行ってい
第
2
部
第
3
章
エリトリアでの除隊兵士や避難民の再統合支援など
の協力を実施しています。
ア
フ
リ
カ
地
域
ますが、ケニアやエチオピアでは、建設後の維持管理
筑波
●
南アフリカ共和国農業農村開発研修
虹の国造りを支援する
アパルトヘイトを乗り越えて
研修員受入
る南アフリカの農業普及員を対象に、
農村開発全般に関する講義、実例の視
南アフリカ共和国の人々はとても陽
察などの研修を行っています。研修旅
気で笑顔が素敵です。しかし、人々は
行では長崎方面を訪れ、県庁での講義
アパルトヘイト( 人種隔離政策)とい
や生活改善グループとの交流を通じ
う重い過去を背負っています。黒人は
て、研修員たちは「農民への指導内容
白人と同様のサービスが受けられなか
を議論する前に、自分たち普及員自身
ったり、黒人の自由を唱えると逮捕さ
の考え方を変えることが先だ」と感じ
れたりと、多くの制限を受けていまし
たようです。自然条件、社会条件が異
た。輸出用のプランテーション栽培は
なる日本での研修ですが、「考える農
一部の白人の手で管理され、貧しい黒
民」による成功例と「考える農民」を
これらの協力は南アフリカの農村が
人農民は一部の居住区での居住を強制
サポートする行政体制の紹介は有効な
抱える深い闇のような負の歴史を考え
され、貧富の格差は拡大し、農村部は
参考例となっています。
ると、 小さな取り組みにすぎません。
疲弊しました。
1994年にアパルトヘイトが撤廃さ
農村開発の成功例を示す
長崎県外海町の起業家グループによるパン作り実習
しかしながら、研修と現地でのプロジ
ェクトを効果的に組み合わせ、農村開
れ、農村部の貧困黒人層に対する農業
現在、JICAは南アフリカ共和国リン
発の成功例を示すことにより、マンデ
普及サービスの向上は重点課題に掲げ
ポポ州において、
「スククネ郡スクノー
ラ元大統領の就任演説のなかで打ち出
られてきました。しかしながら、人材
ド地域農村総合開発計画調査」を実施
された、多様な人種により構成される
不足、少雨、土壌劣化も重なり、思う
中です。2004年3月に帰国した研修
「虹の国」を支える農村づくりに貢献
ような成果は出ていません。
員は、5月より現地で開始されるパイ
JICA 筑波ではこのような状況にあ
ロットプロジェクトに携わっています。
していきたいと考えています。
(JICA筑波)
JICA 2004 ●
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