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平成28年度宮城県卓越技能者
整
理
No
職
種
名
氏
名
性別・年齢
居住市町村
みやぎ
まさとし
宮城 正年
男・56歳
1
刀
工
白石市
従
事
年
数
技能・功績の概要
昭和55年に父親であり宮城県無形文化財指定者である宮城昭守刀匠に入門以
来,36年にわたり日本刀を製作してきた。文化庁で承認している刀匠は,県内で
は氏を含め4名であり,世界に類いのない伝統的技法を保存・伝承する貴重な職人
である。
日本刀製作における鋼の鍛錬と焼入れ技術に卓越しており,日本美術刀剣保存
協会が実施する日本刀新作コンクールにおいては4度優秀賞を受賞するなど,全
国的に高い評価を得ている。歴史にも造詣が深く,各地で開催される刀剣鑑定会
では常に天位を受賞。刀剣の作者を究める鑑識学は抜群である。
36 現在も独自に鍛造技術を研究し,日本刀の黄金期と呼ばれる鎌倉時代の名刀を
目標に研鑽を続けている。製作本数は年間15本から20本。また,豊富な経験を基
に文化財関連施設や学校教育の場において普及指導活動を継続的に実施してお
り,文化財の保全・普及に大きく貢献している。
(美術刀剣類製作承認)
2
数
値
制
御
金
属
工
作
機
械
工
すずき
こうじ
鈴木 浩二
男・54歳
大崎市
金型製作に長年従事しており,数値制御放電加工の技能に卓越している。数値
制御は,動作プログラムの設計及びパラメータの設定が製品の良否を支配する。
氏は,加工時の放電の様子から判断して,電極の摩耗を最小限に抑制し,加工時
のスラッジ(加工かす)の排出を促し高精度・高品質加工ができるパラメータを
設定できる。その技能を応用し,プラスチックレンズ金型において,これまで不
可能とされていた1μm以下での管理を可能にするなど,パーツ加工の超高精度加
工改善・コスト削減改善に大きく寄与した。
また,金型製造は,複数の工程(金型設計,電極設計,電極加工,放電加工,
35 測定,金型組立て)を経るため,多くの技能者は単能工として従事するが,氏は
金型製造全般に対して内容を判断し指示できる幅広い知識と経験を有している。
後進の指導育成にも熱心であり,社内で多くの技能検定合格者を輩出してい
る。また,中国天津工場立ち上げの際は,長期出張し従業員に放電加工のノウハ
ウを伝授するなど,海外においても高度技能の伝承に貢献した。
(1級数値制御形彫り放電技能士)
かつお
ゆたか
勝尾 豊
3
ア
ー
ク
溶
接
工
男・72歳
塩竈市
高強度鋼管(パイプ)を主とした大型鉄塔製作の第一人者である。パイプ溶接
は,接着部分の鋼材条件が異なると,それぞれのパーツの膨張の仕方が異なり割
れが生じる。そこで氏は,外気温と溶接部分の温度差に着目し,溶接時の急激な
温度差を防ぐことで割れの発生を克服した。材料によって見極めるその温度数値
は,勝尾氏の長年の経験と研究によるものであり,現在会社の作業標準になって
いる。
また,鉄塔は風雨に曝されることから防錆処理として亜鉛めっき加工を施す。
その際溶接部分は最も割れやすいとされるが,勝尾氏は試行錯誤を重ね,溶接部
52 分の形状と肉厚を変化させることで克服している。
後進の育成にも尽力しており,第4回宮城県高校生溶接技術競技大会において
は,指導する白石工業高校の生徒を個人の部で最優秀賞,団体の部でも同校を優
勝に導いた。
(技能検定該当職種なし)
やまき
ひでお
八巻 秀夫
4
染
色
仕
上
げ
工
男・57歳
丸森町
平成5年に徳島県にて「天然灰汁発酵建て」による藍染技能を習得後,平成7
年に丸森町に藍染工房野風を設立し,以降21年の長きにわたり技能の研究発展
に取り組んできた。
「天然灰汁発酵建て」による藍染とは,天然藍を木灰で発酵させて染める日本
古来の伝統技法である。薬品による藍染に比べ発色は各段に良い一方で,化学原
料を一切使用しないため染色品質管理(藍甕の管理)に高度な技能を必要とす
る。そのため職人は全国的に少ないが,八巻氏は独学で研究を重ね,暖簾やタペ
ストリーなどの多様な品種の製品化を実現した数少ない職人である。
21 藍染で生地に模様を付ける方法として,氏は「絞り」技法に卓越している。藍
による絞り染めは,刷毛などで線を引くことができない漬染めのため,事前に模
様を想定する必要があるが,八巻氏は長年の経験と勘による手のさばき方等に
よって,様々な模様を実現させる。
また,藍染技能の普及啓蒙に尽力し,県内外からの藍染体験希望者や地域の小
中学生などを対象に体験会を実施するなど地域の伝統産業教育にも大きく貢献し
ている。
作業風景・作品等
整
理
No
職
種
名
氏
名
性別・年齢
居住市町村
めぐろ
よしかず
目黒 義和
男・44歳
5
配
管
工
仙台市若林区
従
事
年
数
技能・功績の概要
平成元年に入職以降一貫して管工事業に従事し,主に機械設備(給水・給湯・
排水設備等)の施工を担当し長年にわたって技能の研鑽に精励してきた。
目黒氏の卓越した技能は,配管作業におけるネジ切り(鉄の配管のパイプを切
削し刃の調整をする作業)である。ここ10年は塩ビ管が一般化したためネジの配
管が減少し,近年では用いられることが少なくなったが,改修・交換時において
依然として必要とされている高度な技能である。
また,複雑な作業環境における工程改善においても優れた技能を発揮する。事
前に適切な配管位置や工具を見極め工期を早める段取り力は,県内の配管工の中で
27 も随一であり,建築業者及び施主から厚い信頼を得ている。
社内で配管技能士の取得を推進するため,目黒氏が講師を務め多数の技能士を
輩出するなど,後進の指導には人一倍熱心である。現場においても,図面の読み
方から実地作業まできめ細かく指導するその姿勢は,社内のみならず業界全体か
ら高く評価されている。
(1級配管技能士)
ひしぬま
しげお
菱沼 繁夫
6
造
園
工
等
男・66歳
仙台市太白区
昭和49年に家業である菱沼農園に造園工として入園以降,42年間この道一
筋に技能の研鑽に努めてきた。造園における石組みや植栽を,森林や源泉,池等
に見立てて物語性を持たせた庭造りを得意としている。
代表的な施工実績は,大和町宮床の法楽寺の散骨堂である。背景の山を活かす
ためのまとまり良い石の配置,極楽浄土へ向かう神聖さを表現するための枯山水
のアプローチに創意工夫を重ねた作品は,業界から非常に高い評価を得ている。
施主からも信頼が厚く長年の常連客が多い。高級飲食店の屋内庭園の作庭につ
いては20年以上にわたり担当している。狭いスペースで立地条件・施工条件と
42 もに厳しい料亭などにおいても,日本の季節の移ろいを縮景として見事に表現す
る技能は,造園工として卓越したものがある。
後進の育成にも熱心であり,造園協会分会会長として講習会を継続して行うな
ど,業界全体の技術向上に多大な貢献している。
(1級造園技能士,1級造園施工管理技士)
おおさか
せいいちろう
大坂 清一郎
7
刀
剣
白
鞘
拵
師
男・77歳
仙台市泉区
昭和47年に大坂屋刀装具拵処を開業以降,44年にわたり終始日本刀の白鞘
の調製をはじめ外装全般の修復業務に従事し,伝統的技能の研鑽に努めてきた。
現在は総合的に外装調製ができる職人が減少しており,県内では唯一の職人と
なっている。
刀装具文化の知識が大変豊富であり,継続して博物館や教育委員会,美術商か
らの依頼を受け鞘の復元や修理を行っている。いずれも機械ではできない非常に
細かい修理が必要とされるが,大坂氏は長年の研究により培った貴重な調製技能
により,多くの文化財を救い出してきた。また,東日本大震災で流された蔵から
44 発見された未登録の刀剣等について助言を行っている。
代表的な実績は,伊勢神宮御下賜御人宝銅黒造御太刀(20年に1度の神宮式
年遷宮において竹駒神社に納められた刀)の白鞘・拵え調製,鹽竃神社大太刀白
鞘の製作などがある。県内に同業者はおらず後継者育成が必須の状況であるが,
刀職関係者への指導助言に努め文化財の保全に大きく貢献している。
(技能検定該当職種なし)
おおむら
はちろう
大村 八郎
8
木
製
建
具
製
造
工
男・68歳
富谷市
昭和38年に入職以降,53年にわたり建具一筋に研鑽努力を重ね,一般住宅のリ
フォームから神社仏閣の改修まで建具のすべてに精通する高度な知識と技能を体
得した。
大村氏の卓越した技能は,建具の最終工程である現場納めである。建具は作業
場で作った完成品を現場に持ち込むため,幾分の隙間や膨らみが発生する場合が
ある。大村氏は,長年の経験と勘で緻密な微調整を行い,短時間で寸分の狂いも
なくぴたっと納めることができるため,同業者の目標となっている。
従来の建具の概念にとらわれず,技術とデザインを融合させた創作的な作品の
53 考案を得意としている。変形組子を用いた新しいデザインの建具や,ステンドグ
ラスを活かすための建具は,宮城県優良建具・木工展示会においても観覧者の目
を奪い入選するなど,高い評価を得ている。
(1級建具製作技能士)
作業風景・作品等
整
理
No
職
種
名
氏
名
性別・年齢
居住市町村
ごとう
ひでとし
後藤 秀敏
9
味
そ
製
造
工
男・48歳
石巻市
従
事
年
数
技能・功績の概要
「天然醸造」による高付加価値味噌の製造技能に卓越している。天然醸造にお
いては機械による温度管理が一切できず,製造は非常に困難とされるが,後藤氏
は全工程を管理し高付加価値商品としての差別化を実現。その結果として,仙台
味噌鑑評会において連続13年間優良技術者表彰を受賞。長きにわたって高い評価
を受けている。
仙台味噌は,製法の特徴として大豆を圧力で長時間蒸すため,着色が進み黒く
なりやすく外観上不利になる。そこで後藤氏は,熱水を散布し大豆のアク成分を
洗い流しながら蒸す撒水蒸熟法を導入し,味噌の色調を明るく,滑らかな組成へ
29 と改善した。さらに大豆の一部を麹化して配合する手法を取り入れ,華やかな冴
えた赤色を醸出し,仙台味噌の商品価値を向上させた。
また,衛生管理方法の改善により製品中の雑菌数を1/10000レベルまで減少させ
たほか,自身が会得した製造方法や衛生管理方法のマニュアルを整備し技術の標
準化を行うなど,品質向上に多大な貢献をしている。
(1級みそ製造技能士,公認醤油官能検査員)
とうかいりん
日
本
料
10 理
調
理
人
つよし
東海林 剛
男・52歳
塩竈市
昭和57年に日本料理人として就業以来,日本料理の技能及び婚礼料理を学び,
現代に通じる日本料理の調理技能向上に尽力してきた。特に日本料理の基本であ
る五味(生・煮・焼・揚・蒸)五色(赤・白・黄・黒・青)を組合せた多様性に富む
会席料理は,業界の第一人者と言われている。
東海林氏の卓越した技能は,素早く緻密な包丁技術である。会席料理等で多人
数に提供する刺身や野菜を切る際に,寸法・角度・分量を同じく手早く切ること
が出来,切り口も鮮やかで盛りつけのセンスに定評がある。また,地産地消のバ
34 ランスある献立開発にも優れており,第35回日本料理全国大会(郷土料理部門)
においては文部科学大臣賞を受賞するなど,その技能は全国でも随一とされる。
日本料理の技術を伝承するため,本流の四條流包丁儀式保存委員会に就任し,
奉納包丁儀式にて技能を実演するほか,後輩に技術指導を継続して行っている。
(調理技能士,日本料理専門調理師)
あだち
きよし
安達 清
男・67歳
表
11 具
師
仙台市青葉区
表装における「表具」と「壁装」は異なる技能を必要とするが,安達氏は表装
全般において卓越した技能を有している。全国技能グランプリでは,県代表とし
て表具・壁装二部門で推薦を受け,計6度出場,第3位入賞を果たした県内唯一
の表装技能士である。
特に,表具作業における古書画の修復技能には定評があり,全国の仏閣や美術
館,博物館の文化財保存に寄与してきた。日本古来の古糊と手すき和紙を使用
し,百年後の修復時期を見据えた伝統工法による修復技能は他の追随を許さず,
県内外を問わず業界から高く評価されている。
42 宮城県表具内装業連合会の会員として,「表具」「襖」「壁装」の3部会を兼
任し,率先して講師を務めるなど若手技能者の育成にも尽力している。近年は壁
装のみ手掛ける単能工がほとんどであるが,壁装でも表具の知識を必要とする厳
しい施工条件がある。安達氏は,表装全般の幅広い知識を駆使し,そのような条
件に対応できる若手育成に取り組む貴重な職人である。
(1級表装技能士)
くさか
つねこ
日下 恒子
フ
ラ
ワ
12 ー
装
飾
士
女・68歳
仙台市若林区
21歳で家業の生花店に就職するとともに,東京のフラワーデザインスクールや
一流ホテルの装飾部門に籍を置き,最先端の技術を学んだ他,英国,ドイツの専
修学校で欧風デザインを修得した。それらの技能を基に,当時の仙台ホテルを中
心にブライダル装飾を幅広く手掛けた功績は,県内でも随一のものとされてい
る。
平成12年以降は検定委員として試験運営に貢献した他,受験者向け技術講習会
の開催と講習内容の策定も中心となって実行。講習会無しでは合格の難しい試験
内容ながら,宮城県では多数の合格者を輩出できている。
47 技能検定のみならず,(公社)日本フラワーデザイナー協会講師資格の他多数の
講師資格を取得し,現在に至るまで県内外の生花店の多数の従業員や後継者を指
導してきた。現在,ブーケは吸水性スポンジを使ったブーケホルダーに花を挿す
方法が一般的になり,難易度の高いワイヤリングのブーケが避けられているが,
日下氏はワイヤリングを非常に重要な基礎技術として積極的に継承するなど,県
内当業界の技術レベルを大きく進歩させている。
(1級フラワー装飾技能士,職業訓練指導員)
作業風景・作品等
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