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第5回 地域景観ワークショップ通信

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第5回 地域景観ワークショップ通信
第5回 地域景観ワークショップ通信
地域景観ワークショップ in 周南(鹿野地域)
新芽の緑がすがすがしい4月の午後、第5回
地域景観ワークショップ in 周南(鹿野地域)
を開催しました。当日ご参加くださった皆様、 色見本を持って
お忙しいなか会場まで足を運んでくださり、
測色調査
ありがとうございました。
過去4回のワークショップでは、鹿野らしい
をしよう!
景観を探すためのまち歩き、景観資源を季節や
時間軸から探し出す景観歳時記作り、それらを
体系的に表す曼陀羅図作り、そして景観を守り
育てるための方策の検討を行いました。
今回は、色見本を持ってまちにくり出し、鹿
野らしい色とはどのような色なのかを調べて
壁新聞にまとめ、発表していただきました。
いつも全体的に眺めていたまちなみを、石垣
や屋根、壁の色は何だろう?というピンポイン
トな視野で眺めてみると、そこにあるひとつひ
とつのものすべてが、鹿野の景観を構成する大
切な要素であることに気がつきました。
このワークショップ通信をご覧になって、皆
様がこころの中でもう一度鹿野の景観につい
て何か思っていただけると幸いです。
似ている
色は
どれ?
ワークショップの内容
鹿野稲荷神社の鳥居を
測色をしています。
1番
開催日
平成 19 年4月 14 日(土)
場所
周南市鹿野総合支所
参加人数
45人(7グループ)
1. 13:00 開会
2. 13:05 グループ別自己紹介(自己紹介カードを使って)
3. 13:15 前回までのワークショップ振り返り
4. 13:45 「色彩」についてのセミナー
日陰にある?日向にある?
山口県産業技術センター 水沼 信さん
色は全く変わります。
プログラム
5. 14:15 色彩ワークショップ
山口県景観アドバイザー 村越千幸子さん
・色見本を持って鹿野らしい色を探してまち歩き
・色彩壁新聞づくり
・各班発表(各班5分程度)
山代街道のブロック塀を測色中です。
6. 17:00 閉会
1
このたびのワークショップの目的と作業の流れ
【目的】
このたびのワークショップ(以下 WS)は、これまでの WS とは少し視点を変えて景観を眺め、鹿野
らしい色とはどのような色なのかを把握するために行いました。色彩は、景観を構成する重要な要素で
す。周囲との関連性を無視した色を使うと、地域の景観を壊してしまいます。鹿野らしい色を把握し、
今後に生かしたいと思います。
【作業概要】
班分けと、まち歩き(測色調査)は次のように行いました。
コース
1班
内容(調査ポイント)
天神山から見える眺望景観を調査 : 全体の屋根、山並み、田園風景、空
遠景コース
2班
その他の部分的なエリアの調査 : 鹿野稲荷神社、病院、ふれあい広場
古い建物の屋根を調査 : 岩崎家、青木酒造等
屋根コース
3班
新しい建物の屋根を調査 : お店、新しい住宅等
樹種ごとに調査 : スギ、クス、大銀杏、しだれ桜、モミなど
巨木コース
4班
(一本の樹木の調査では、幹の色、葉の色、苔の色、花の色を調べる)
屋根の色を調査
団地コース
5班
壁の色を調査
道路の種別ごとに調査 : アスファルトの道、参道の石畳、土の道、清流通り等
道コース
6班
(車道と歩道の色や水に濡れているところとそうでないところも調査してみる)
古い建物、新しい建物の壁を調査 : 岩
壁コース
7班
家、青木酒造、お店、新しい住宅等
壁の種類ごとに調査 : 白壁、土壁、崩れたところ、板壁等
古い石垣、新しい石垣を調査 : 漢陽寺の石垣、龍雲寺の石垣、擬石による石垣等
石垣コース
(コケ、水が掛かったところとそうでないところなどにも注意して調査)
グループでまちを歩き、各ポイントの測色調査をしたのち、色分布図と色彩壁新聞をつくり、調査の
結果を発表しました。
【作業1.まち歩き−測色調査−】
◆手順
1)測色調査の役割分担を決めます。(測色係、記録係、写真係)
2)各コースに指定してある調査ポイントを参考にして測色を行います。測色は、測りたいもの
に出来るだけ色見本を近付けて、一番似ている色を選びます。
3)1箇所につき5色以上測色し、記録表にその色のマンセル記号(色相 明度/彩度)を記入
します。まち歩きマップには測定場所を記入します。
4)ポラロイドカメラで、調査箇所をなるべく至近距離で撮影します。
【作業2.色分布図作り】
測色した結果を分析するために、色分布図を作ります。これを作ることによって測色した箇所の色
の傾向、コース全体の色の傾向などをつかむことができます。
2
◆手順
1)色分布図(色相−彩度)は、測色したマンセ
縦軸:彩度
色相−彩度
ル記号の色相を横軸、彩度を縦軸として、交わ
る位置に丸ポチシールを貼ります。
2)測色した対象物ごとに線で囲んで傾向を読み
取ります。
3)色分布図(色相−明度)も同様に行います。
【作業3.色彩壁新聞作り】
まち歩きした成果や、色分布図から読み取れる傾
向などを壁新聞にまとめます。
色相−明度
縦軸:明度
◆手順
1)鹿野まち歩きマップに、測色した場所を示す
丸ポチシールを貼ります。
2)撮影した写真を貼り合わせ、カラーパレット
を作成します。
3)色分布図、カラーパレット、まち歩きなどか
横軸:色相
ら感じた鹿野らしい色の特徴を、文章としてま
とめます。
色分布図の例
4)鹿野らしい色を、配色カードから5つ選んでカラーパレットを作ります。
5)最後に、壁新聞のタイトルをつけて完成です。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【マンセル表色系について】
色は、色相(H)、明度(V)、彩度(C)の3要素によって表します。
色相
色味のことで R(赤)、Y(黄)
、G(緑)、B(青)
、P(紫)の
5つに、中間色相の YR、GY、BG、PB、RP を加えた 10 色相
に分けられます。色相のさらに細かい度合いは、2.5YR、5YR、
7.5YR、10YR というように数値を記号の前につけて表します。
明度
明るさのことで、完全無色 0 から完全白色 10 に分類されます。
彩度
鮮やかさのことで、無彩色0∼14 に分類されます。
マンセル色相環
●マンセル表色系による色の表示方法●
有彩色の場合は、色相 H、明度 V、彩度 C の順に、明度と彩度の間にはスラッシュを入れて「HV/C」
と表記します。また無彩色の場合は色相と彩度を持たないため明度のみで表わし、明度数値の前に「N」
を表記します。測色したマンセル記号が「5YR8/3」であれば、色相は5黄赤、明度は8、彩度は3
という意味です。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
3
鹿野まちあるきマップ
漢陽寺
県下一のモミの木
巨木群
鹿野稲荷神社
清流通り
女子道社
天神山
しだれ桜
天神山公園
新興団地
タバコ屋
旧家の家並み
ふれあいひろば
岩崎家
青木酒造
市恵比寿
山代街道
病院
4
各班の壁新聞と発表
1班
遠景コース
天神山から眺める景色を測色しました。山の色、空の色、
街並みの屋根の色、様々な要素が景観を作っていました。
測色調査の結果を色分布図に表すと・・・
●測色ポイント●
・全体の屋根
・山並み
・鹿野稲荷神社鳥居
・田園風景
・病院
・空の色
・ふれあい広場
色相―彩度
14
●色分布図の考察●
神社
・色相は対象物ごとに異なり、屋根と鳥居が R(赤)
、田
10
が Y(黄)、山が GY(黄緑)、空が PB(青紫)に分類
6
屋根
できる。病院やふれあい広場の体育館の色相はこれらと
は違う色相となっている。
1
・明度は3∼9と散らばっている。
色相―明度
・彩度は1∼6で低いが、神社の鳥居は 10∼14 と高い。
赤茶色の屋根瓦
も、景観
9
3
を構成する大事な要素だね!
ふれあい広場
壁新聞完成!
テーマ
「天神山からの眺め」
まとめ
●鹿野全体の色は、屋根の赤茶色・自然の緑色・空の青
色
の3色で表現でき、調和がとれている。
●ふれあい広場の体育館のカラフルな色や、病院の水色
の壁が目立ち、鹿野全体の風景にマッチしていない。
●神社の鳥居だけ彩度が高いが、さほど違和感はなく、
アクセントカラーとなっているように感じられる。
鹿野らしい遠景の色は屋根の赤茶色
作業風景
5
2班
屋根コース
山代通りの屋根を測色して歩きました。屋根とは距離が
あるため、色見本をかざしてなるべく近い色を探しました。
測色調査の結果を色分布図に表すと・・・
●測色ポイント●
・岩崎家
・青木酒造
・市恵比寿
・商店
・新しい家
・古い家
・たばこ屋
色相―彩度
●色分布図の考察●
古い家
・色相は R(赤)∼YR(黄赤)と N(無彩色)が大半を
6
占める。
・明度は2∼7(古い家が3∼7、新しい家が2∼5)
1
色相―明度
と散らばっている。
・彩度は1∼6(古い家が1∼6、新しい家が2∼5)
7
で比較的低い。
新しい家
2
壁新聞完成!
テーマ
「鹿野の屋根」
まとめ
●古い家はまだらな茶系色(昔鹿野地区で生産されてい
た瓦)が多く、新しい家は無彩色の黒・灰色が多い。
●新しい家は、古い家に比べて明度、彩度ともにやや
低い。
●商店のテントには、青や緑が使われており、まとまり
がないように感じられる。
鹿野らしい屋根の色は赤茶色
作業風景
6
3班
巨木コース
3班は、鹿野の巨木群の測色を行いました。 総
合支所前のしだれ桜を念入りに調査しています。
測色調査の結果を色分布図に表すと・・・
●測色ポイント●
・スギ ・クスの木
色相―彩度
・大銀杏
・しだれ桜 ・モミ
●色分布図の考察●
・色相は、葉は GY(黄緑)が多く、幹は YR(黄赤)が
しだれ桜
多い。
4
・明度は3∼9と散らばっている。
2
・彩度は2∼4に集中し比較的低いが、しだれ桜はやや
色相―明度
高い。
9
クスの木
3
壁新聞完成!
テーマ
「時を越えて 巨木 がみつめる『やさしさ』!」
まとめ
●巨木の色を表現すると、葉は緑、幹はこげ茶、コケも
緑である。
●特に二所山田神社の樹木の色は、周辺の自然に溶け込
み、歴史の長い流れを感じる。
鹿野らしい巨木の色は葉の緑色
作業風景
7
4班
団地コース
各班自己紹介の時間には、好きな色や鹿野と言
ったら思い浮かぶことなどを1人1人発表し、距
離を縮めたところでまち歩きに出掛けました。
測色調査の結果を色分布図に表すと・・・
●測色ポイント●
新興団地の屋根と壁
●色分布図の考察●
色相―彩度
・ 色相は、屋根が N(無彩色)
、R(赤)
、YR(黄赤)が
一部の壁
多く、壁は R(赤)
、YR(黄赤)
、Y(黄)が多い。
・ 明度は屋根が2∼6で比較的低く、壁は4∼9でやや
6
4
高い。
・ 彩度は屋根が0∼4、壁が0∼6と比較的低い。
0
色相―明度
9
6
2
一部の屋根
壁新聞完成!
テーマ
「新興団地の色」
まとめ
●屋根はスレートが多く、色はグレイ・黒・濃い茶が多い。
1軒緑の屋根もある。
●壁はサイディングが多く、色はアースカラーが多い。1
軒青い壁もある。
●想像していたよりも派手な色の家は少なく、景観に与
える影響も小さいと感じられる。
鹿野らしい新興団地の色は
壁のアースカラー
作業風景
8
※サイディング=建物の外壁に使われる壁板
※アースカラー = 土の茶色や葉の緑といった自然のもの
5班
道コース
道の色を測色して歩きました。一見グレイ一色に見
える道でも、調べてみると意外な結果となりました。
測色調査の結果を色分布図に表すと・・・
●測色ポイント●
・漢陽寺の参道石畳
・アスファルトの道
・土の道
・清流通りの道
色相―彩度
● 色分布図の考察●
・
色相は様々である。
・
明度は3∼9に散らばっている、清流通りは6∼9と高い。
・
彩度は0∼4で低い層に集中している、清流通りは0∼2と特
4
に低い。
0
4種類が重なる部分
色相―明度
9
3
R と PB に多い
壁新聞完成!
テーマ
「道の秘密∼清流通りを歩いて∼」
まとめ
●道全体の色相は、様々な色相の素材が集まって構成さ
れている。(赤や青がまばらにありながら、全体とし
て灰色に見えている)
●清流通りの青みがかったグレイは、特に彩度が低くさ
わやかな感じで周囲にマッチしている。
鹿野らしい道の色は
清流通りの青みがかった灰色
作業風景
9
6班
壁コース
山代街道沿いの建物を測色しました。分析しやすいように素材
ごとに分類した色分布図は、見応えのあるものになりました。
測色調査の結果を色分布図に表すと・・・
●測色ポイント●
・岩崎家 ・青木酒造 ・旧宅
・新家
・商店
●色相分布図の考察●
・
色相―彩度
色相は素材によってバラつきがあるが、木と土壁は
木目調の壁
YR(黄赤)が多い。
・ 明度は全体的に 3∼9と高いが、天然の木の壁だけは
6
天然の木の壁
3∼4と比較的低い。
・ 彩度は0∼6と低いなかでも、天然の木の壁は、0∼
0
9
1と特に低い。
色相―明度
5
木目調の壁
天然の木の壁
壁新聞完成!
テーマ
「鹿野の壁」
まとめ
●比較的新築の家も、すごく古い家も、バランスの取れた
配色となっている。
●天然の木の壁は木目調の壁に比べ、明度・彩度とも低い。
●おすすめしたい素材は黄や土壁が映える灰色の石やブ
ロックなど。
鹿野らしい壁の色は木の壁の色
作業風景
10
7班
石垣コース
漢陽寺、龍雲寺、古い石垣、新しい石垣という分類で測色して歩きま
した。歴史を感じさせてくれるコケが、石垣の味を出していました。
測色調査の結果を色分布図に表すと・・・
●測色ポイント●
・漢陽寺
・龍雲寺
・古い石垣
・新しい石垣
・その他の石垣
色相―彩度
●色分布図の考察●
新しい石垣
・ 色相は、新しい石垣は YR(黄赤)と N(無彩色)に
古い石垣
偏っており、古い石垣はコケがついているため色相が
4
幅広い。
・ 明度は3∼9に散らばっている、古い石垣と新しい石
0
垣との差はあまりない。
色相―明度
・ 彩度は、0∼4と比較的低い。
9
新しい石垣
3
古い石垣
壁新聞完成!
テーマ
「鹿野の 石垣 の色」
まとめ
●コケには緑・黒・黄色といろいろな色がある。
●コケのついた石垣には歴史が感じられる。
鹿野らしい石垣の色は
石垣のコケの色
11
質問・意見交換タイム
周南市は市民が一体にな
ってまちづくりできてい
ることがいいなと思った。
ワークショップ後に質問タイムを設け、自由に発言していただきまし
た。鹿野が元気になるようなアドバイスはありませんかという問いかけ
に対して、若者よりも 50 代のくらいの人を対象に鹿野に来てもらうよ
うに工夫する、人々が元気に活動できる場所を作る、特色ある清流通り
などの資源を活用していくなど、活発に意見が飛び出し、充実したひと
ときになりました。
一般に新興団地では施主の好き勝手な色で家が建っているケースが多いです。鹿野の新興
団地のみなさんは、センスがあるといいますか気をつけて建てていると感じました。皆さ
んがこのセンスや、周囲を思いやる気持ちを、これからも持ち続けていくことが大切だと
思います。他の地域のようなことが鹿野で起きないためのルールを事務局で作って、みな
さんに検討していただこうと思いますので、次回もぜひ参加してください。
色彩セミナー講師
山口県産業技術センター
専門研究員
水沼信さん
講評
カラーパレットを見て、鹿野の色は、全体的にはシックな感じでまとまっているな
と思いました。後から家が建ったときにいつも思うのですが、色を決めるときには、
自分の家が建った風景画を思い浮かべて、風景画に色を足していくような感じで選
ぶと、そんなに変な色は選ばないものだと思います。そうすれば、まちの雰囲気に
合った色が選べるのではないかと思っています。
ワークショップ進行
終わりに
山口県景観アドバイザー
村越千幸子さん
今回も、長時間お付き合いいただきありがとうございました。
当日は天候にも恵まれ、気持ちよくまち歩きできたのではない
でしょうか。鹿野地域で4年に渡って開催してきたワークショ
ップも、次回で最終回です。スタッフ一同またお会いできます
よう楽しみにしておりますので、ぜひお越しください。
お問い合わせ:周南市 都市開発部 都市計画課 TEL:0834-22-8426
FAX:0834-22-3707
*周南市の景観行政に関することは
市のホームページの
12
都市計画課 「周南市景観ポータルサイト」 に掲載しています。
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