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新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナー シップ(ADP)年次

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新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナー シップ(ADP)年次
新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナー
シップ(ADP)年次報告書 要旨
結核(TB)、マラリア、顧みられない熱帯病(NTDs)が人間開発にもたらしてきた負の影響を軽視す
ることはできません。2013年には、世界中で150万人が結核により死亡したと見られています。
マラリアによる死者は58万4000人と見られ、その多くはサハラ以南アフリカに住む5歳未満の幼児で
した。NTDsは1日1.25米ドル以下で暮らす14億人の貧困層、いわゆる「最底辺の10億人」に不均衡な
影響を及ぼしています。
日本政府と国連開発計画(UNDP)は、結核(TB)、マラリア、顧みられない熱帯病(NTDs)のため
の医療技術の研究開発とアクセスと提供を促進する戦略的パートナーシップを築いています。この革新
的なパートナーシップは、グローバルヘルス技術振興(GHIT)基金と新規医療技術のアクセスと提供
に関するパートナーシップ(ADP)からなる、相互補完的なプロジェクトです。ADPはUNDP、世界保
健機関(WHO)内に本部を置く熱帯病医学特別研究訓練プログラム(TDR)、イノベーションによる
国際保健を推進する非営利団体「PATH」が協業して実施しているプロジェクトです。ADPは低中所得
国で、結核、マラリア、NTDsのための新規医療技術の効果的なアクセスにおいて起きる能力格差の問
題を念頭に、重点国がそれらの問題に自ら取り組むことができるようになるための能力強化活動を支援
しています。
日本政府への年次報告書はADP第2フェーズ(2014/7/1~2015/5/15)1年目の完了を報告するもので
す。第1フェーズでは重点国の政府関係者やプロジェクト推進者たちとの強力なパートナーシップを築
き、確たる証拠となる土台を築き上げました。その成果をもって、第2フェーズ1年目では意義深い能
力強化に従事しました。また、南南協力の観点から、ADPは地域レベルでのネットワークや各国間の知
識交換の場を構築することを大切にしてきました。ADPはプロジェクト重点国であるガーナ、インドネ
シア、タンザニア、そしてテクニカルパートナーであるタイとの連携を通して、このプロジェクト期間
に期待された成果をあげています。また、モニタリング評価システムと広報計画の策定を通し、プロ
ジェクト管理をさらに強化しました。
ADPのプロジェクト・パートナーは、研究活動、幅広い分野のステークホルダーとの協議、ワーク
ショップ及び研修の実施、また、ツールの開発と使用など、様々な能力強化活動を支援してきました。
これらの支援は新規医療技術のアクセスと提供における様々な問題について、多分野の関係者が意思決
定に関わることを可能にし、能力強化に貢献しました。ADPの主要な成果は、それぞれの重点国におい
て融合した一貫性のある政策立案プロセスを実現したことです。
ガーナでは、ADPは国内製造業と公衆衛生に関わる多部門の提携と一貫性のある政策立案を促進しま
した。この取り組みはアフリカ連合のアフリカ薬剤製造計画(Pharmaceutical Manufacturing Plan
for Africa)の実施における政府の政策目標を基に行われました。ADPは法務省と連携し、イノベー
ション・公衆衛生・医療技術へのアクセスの観点から、現行の政策と法律の枠組みの評価を実施しま
した。またADPは、保健省及び国家薬事政策(NMP)の改定を目的としたテクニカル・ワーキング・
グループと共に協働し、新しいNMPの効果的な実施に向けた重要な取り組みも支援しました。さら
にADPは、新規医療技術への効果的なアクセスと提供のための能力強化において、ガーナ保健サービ
ス(GHS)の地域保健調査センターが持つ既存のネットワークをうまく活用しました。
インドネシアでの主な成果は、新規医療技術へのアクセスと提供に関する問題に取り組む多分野融合ア
プローチ発展のため、国の多様な関係者と積極的に協業したことです。ADPは法務・人権省と協働しな
がら、公衆衛生の観点を様々な政策と法律の枠組みに融合するため、医療技術へのアクセス向上や国内
研究開発、生産など多様な領域の政府責任者と連携しました。ADPはまた、インドネシアの国家優先目
標であるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)計画の実現達成に貢献できる能力があるというこ
とも示しました。保健省は医療技術評価(HTA)アプローチを既に採用していましたが、ADPの支援に
より、HTAを行う部署の能力強化案をさらに発展させることができ、そのおかげで国の需要と費用対効
果の高い資源配分を基本とした新規医療技術導入評価の実施が可能となったのです。
タンザニアでは、全てのレベルにおける保健専門家達が、保健介入・戦略・政策の効果的な実施におけ
る障壁について体系的に見極め、その障壁に取り組む訓練をしてきました。地方政府とその他のパート
ナーと連携し、ADPは国家保健政策・実施に関する研究アジェンダとそれらに関連する調査手順・研究
計画の策定に貢献してきました。研究アジェンダの策定は国内調査を実施する上で今後必要となるイニ
シアティブ形成の重要なリソースとなるはずです。また、ADPは公衆衛生分野の取り組みにおける女性
の参加促進にも成功しており、ADPの活動の参加者に占める女性の割合は35%を越えています。その他
の成果は、顧みられない熱帯病(NTDs)の予防目的の化学療法に使用される薬の調達と配送のためのガ
イドラインを作成したことです。このガイドラインは薬剤集団投与前・投与中・投与後に実施されるべ
きサプライチェーン活動を3つのステップによる方式で記述しています。このガイドラインは、薬剤師
や前線で働く医療関係者がNTDsの薬剤のサプライチェーン管理で直面しうる様々な事例を扱っており、
2015年後期にタンザニアで予定されているNTDsの薬剤集団投与を支援するものです。
重点国での活動に加え、ADPはアジアとアフリカの地域活動を通して、南南学習の機会を作りました。
ADPはタイとADP重点国の間でユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の設立と保健ガバナンスに
関するタイの政策関係者の知見を生かす機会も作り出しました。タイとインドネシアの医療技術評価
(HTA)に関する技術交換の成功は、公共衛生の観点を法と政策に反映させる事例を含む、その他の南
南学習の機会も創出しています。た。
プロジェクト実施においては、医療技術のアクセスと供給に関する複雑な問題とプロセスを連携させる
ことが課題でした。ADPのプロジェクト・パートナーは様々な関係者と綿密な連絡を取り、協議するた
めに特定のステップを踏みました。また、各重点国でプロジェクトの進み具合は異なることもわかりま
した。プロジェクト実施を支援する上で特に重要だったことは、重点国政府の国家政策目標を含む各国
省庁の優先事項と権限に沿った形で、ADPの戦略的な着手ポイントを見極めることでした。
ADPはこれまでの2年間で得た重要な教訓と成果を糧にプロジェクトを続けていきます。アドバイザ
リー・グループの助言のもと、ADPはプロジェクトの効果を倍増させるため、他国の知見とツールの共
有を行いながら重点国での活動を中心に今後も展開していきます。ADPは今後も国レベルでの持続可能
な能力強化活動に従事していく次第です。
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