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わたしの好きな昔話( 15 ) 田村 政和 学生と図書館

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わたしの好きな昔話( 15 ) 田村 政和 学生と図書館
学生と図書館
わたしの好きな昔話( 15 )
(ちりめん本)
田村 政和
今回、私が取り上げるちりめん本は『四十七
り、亡き主君の墓に仇討を報告すると、幕府の
士』です。現在では「赤穂浪士」や「忠臣蔵」
命令に従って切腹した。》(京都外国語大学図書
という名称で語り継がれています。テレビや
館ホームページより)
映画、小説などでも取り上げられる仇討物語で
そして、この本から分かる日本人が大切にし
す。江戸時代の武士や浪士にあこがれを持つ人
ている価値は「義理」と「復讐心」です。お世
にとっては英雄物語として日本の代表的な歴史
話になった主君のためなら命も投げ出し、その
物語となっているでしょう。外国の日本研究者
無念を叶えるという強い意志は「義理」を象徴
にとって重要な資料として重宝され、「武士道」
する典型的な日本人の行動です。もう一つは、
を海外の人々に強く印象付けた物語としても扱
恥をこうむったからには殺してでも名誉を取り
われています。あらすじは以下の通りです。
返すという強い「復讐心」です。
《18世紀初頭、徳川幕府の高家の地位にある
現代の日本人にもこの心の動きは根付いてい
きらこうずけのすけ
吉良上野介から侮辱的な冷遇を受けた赤穂の大
あさのたくみのかみ
名浅野内匠頭は、吉良に斬りつけ傷を負わせた。
にんじょうざた
ると考えられます。良い意味でも悪い意味でも
この心的な動きが日本人を日本人足らしめてい
吉良は助かったが、幕府は殿中での刃傷沙汰の
ると海外でも評価されています。英雄物語とし
かどで浅野に切腹と改易を命じた。残された家
てだけでなく、「日本文化」、「日本人像」を垣
来は浪人となり各地に散ったが、浅野家筆頭家
間見ることの出来るとても奥の深い書物となっ
おおいしくらのすけ
老大石内蔵助は吉良を殺し主君の仇を討つ忠義
ています。
な家来を捜し集め、酒に溺れる振りをして敵を
油断させ、味方を潜り込ませて情報を得た。寒
い冬の夜、彼らは吉良邸を襲撃して仇を打ち取
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たむら まさかず(イタリア語学科4年次生)
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