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Title 尿素, 石灰岩骨材および高濃度シラン系表面含浸材を用い た高耐久

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Title 尿素, 石灰岩骨材および高濃度シラン系表面含浸材を用い た高耐久
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尿素, 石灰岩骨材および高濃度シラン系表面含浸材を用い
た高耐久コンクリートに関する研究( Abstract_要旨 )
田中, 博一
Kyoto University (京都大学)
2012-03-26
http://hdl.handle.net/2433/157518
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
京都大学
論文題目
博士(工学)
氏名
田中 博一
尿素,石灰岩骨材および高濃度シラン系表面含浸材を用いた
高耐久コンクリートに関する研究
(論文内容の要旨)
本論文は,コンクリート構造物の耐久性を向上させるために,ひび割れ低減および
かぶりコンクリートの物質透過抵抗性の向上に着目し,まず,尿素と石灰岩骨材によ
る乾燥収縮低減のメカニズムの推定と,実構造物におけるひび割れ低減効果の実証的
な検討を行い,次いで,高濃度シラン系表面含浸材による吸水防止性,塩化物イオン
浸透に対する抵抗性の向上について検討し,さらに,尿素と石灰岩骨材を併用したコ
ンクリートに高濃度シラン系表面含浸材を塗布した高耐久コンクリートについて基礎
的な検討を行った結果をまとめたものであって,全7章からなっている。
第1章「序論」では,コンクリートに発生するひび割れの現状とかぶりコンクリー
トの物質透過抵抗性の向上方法について概説し,目的と本論文の構成を示している。
第2章「既往の研究」では,コンクリートの収縮およびシラン系表面含浸工法に関
する既往の研究を整理し,主な課題と本研究における取り組みを示している。
第3章「石灰岩を用いたコンクリートの収縮特性に関する研究」では,骨材の種類
がコンクリートの諸性状に与える影響を定量的に把握し,石灰岩骨材によるコンクリ
ートの乾燥収縮低減メカニズムについて検討している。さらに,骨材特性を考慮した
複合モデルを用いてコンクリートの乾燥収縮ひずみの予測手法を検討している。主な
結果は以下のとおりである。
① 骨 材 の 種 類 が コ ン ク リ ー ト の 乾 燥 収 縮 ひ ず み に 与 え る 影 響 は 大 き く ,石 灰 岩 骨 材 を
用 い た 場 合 , 乾 燥 収 縮 ひ ず み が 約 400×10 - 6 と な り , レ デ ィ ー ミ ク ス ト コ ン ク リ ー
ト の 全 国 平 均 値 と 比 較 し て 約 40% 小 さ く な る こ と が 示 さ れ た 。
② 石 灰 岩 骨 材 に よ る コ ン ク リ ー ト の 乾 燥 収 縮 低 減 メ カ ニ ズ ム は ,石 灰 岩 骨 材 の 乾 燥 収
縮 ひ ず み が 著 し く 小 さ い た め で あ り ,骨 材 の 乾 燥 収 縮 ひ ず み を 評 価 す る こ と で コ ン
クリートの乾燥収縮ひずみを評価できる可能性があることが示された。
③ 粗骨材の気乾含水率と粗骨材の乾燥収縮ひずみとの関係から得られた回帰式を用
いて骨材の気乾含水率から細骨材および粗骨材の乾燥収縮ひずみを簡便に評価す
る実用的な手法が提案された。
④ 骨 材 特 性 を 考 慮 し た 複 合 モ デ ル に よ り ,本 研 究 か ら 得 ら れ た 骨 材 の 気 乾 含 水 率 と 骨
材 の 乾 燥 収 縮 ひ ず み と の 関 係 を 用 い て ,コ ン ク リ ー ト の 乾 燥 収 縮 ひ ず み を 簡 便 に 推
定できる手法が提案された。
第4章「尿素を用いたコンクリートの収縮特性に関する研究」では,尿素がコンク
リートの諸性状に与える影響を定量的に把握し,尿素によるコンクリートの乾燥収縮
低減メカニズムについて検討している。さらに,尿素コンクリートのひび割れ低減効
果を実構造物において実証的に検討している。主な結果は以下のとおりである。
① 尿 素 コ ン ク リ ー ト の 中 性 化 の 進 行 は ,表 面 透 気 指 数 が 小 さ く な る た め に 普 通 コ ン ク
リートと比較して著しく抑制される可能性が示された。
② 尿 素 と 石 灰 岩 骨 材 を 併 用 し た 場 合 の 乾 燥 収 縮 ひ ず み は ,著 し く 小 さ く な り ,石 灰 岩
骨材による乾燥収縮低減効果と尿素による乾燥収縮低減効果をほぼ重ね合わせた
結果が得られることが示された。
京都大学
博士(工学)
氏名
田中 博一
③ 尿 素 に よ る コ ン ク リ ー ト の 乾 燥 収 縮 低 減 メ カ ニ ズ ム は ,尿 素 が 非 揮 発 性 で あ る こ と
に よ る コ ン ク リ ー ト 中 の 水 分 の 逸 散 抑 制 効 果 お よ び コ ン ク リ ー ト の 直 径 3nm 程 度
の細孔容積の低減効果が複合的に作用している可能性が示された。
④ 尿 素 に よ る セ メ ン ト ペ ー ス ト の 乾 燥 収 縮 低 減 係 数 を 用 い た 複 合 モ デ ル に よ り ,尿 素
を用いたコンクリートの乾燥収縮ひずみを簡便に推定できる手法が提案された。
⑤ ダ ム 骨 材 貯 蔵 設 備 お よ び RC ラ ー メ ン 高 架 橋 に 尿 素 コ ン ク リ ー ト を 適 用 し た 結 果 ,
尿 素 コ ン ク リ ー ト を 用 い た 場 合 ,実 構 造 物 に お い て 温 度 ひ び 割 れ お よ び 乾 燥 収 縮 ひ
び割れが著しく低減されることが実証された。
第5章「高濃度シラン系表面含浸材を用いたコンクリートの耐久性に関する研究」
では,高濃度シラン系表面含浸材を用いたコンクリートの吸水防止性,中性化に対す
る抵抗性,塩化物イオン浸透に対する抵抗性および実構造物におけるシラン系表面含
浸材の現場評価試験について検討している。主な結果は以下のとおりである。
① 高 濃 度 シ ラ ン 系 表 面 含 浸 材 を 用 い た 場 合 の 吸 水 比 は ,水 頭 高 さ 250mm の 場 合 ,含 浸
材 の 種 類 に よ ら ず , 0.05 以 下 と な り 優 れ た 吸 水 防 止 効 果 が あ る こ と が 示 さ れ た 。
② 高濃度シラン系表面含浸材の種類が中性化に対する抵抗性に与える影響は小さく,
顕著な中性化低減効果は期待できないことが示された。
③ 高 濃 度 シ ラ ン 系 表 面 含 浸 材 を 用 い た 場 合 ,塩 化 物 イ オ ン の 見 掛 け の 拡 散 係 数 お よ び
表 面 塩 化 物 イ オ ン 量 が 低 減 さ れ ,優 れ た 塩 化 物 イ オ ン 浸 透 に 対 す る 抵 抗 性 が あ る こ
とが示された。
④ シラン系表面含浸材を用いた場合のコンクリートの塩化物イオン浸透予測手法と
し て ,シ ラ ン 系 表 面 含 浸 材 が 含 浸 し て い る 箇 所 と 含 浸 し て い な い 箇 所 の コ ン ク リ ー
ト の 拡 散 係 数 を 個 別 に 設 定 し た 2 層 の 材 料 と し て 評 価 し ,シ ラ ン 系 表 面 含 浸 材 に よ
る表面塩化物量低減効果を考慮した手法が提案された。
⑤ 表 面 吸 水 量 あ る い は 表 面 水 分 率 を 測 定 す る こ と に よ り ,シ ラ ン 系 表 面 含 浸 材 の 吸 水
防止効果を現場で評価できる可能性が示された。
第6章「尿素,石灰岩骨材および高濃度シラン系表面含浸材を用いた高耐久コンク
リートの検討」では,尿素と石灰岩骨材を用いることでコンクリートのひび割れを抑
制した上で,高濃度シラン系表面含浸材を塗布したコンクリートに対して,乾燥収縮
ひずみ,吸水防止性,中性化に対する抵抗性,塩化物イオン浸透に対する抵抗性を定
量的に把握し,尿素,石灰岩骨材および高濃度シラン系表面含浸材を用いた高耐久コ
ンクリートの基礎的な検討をしている。主な結果は以下のとおりである。
① 尿 素 の み を 用 い た 場 合 と 比 較 し て ,高 濃 度 シ ラ ン 系 表 面 含 浸 材 を 併 用 す る こ と で 吸
水量が小さくなり,吸水防止効果が向上することが示された。
② 尿 素 ,石 灰 岩 骨 材 お よ び 高 濃 度 シ ラ ン 系 表 面 含 浸 材 を 組 み 合 わ せ た 場 合 の 乾 燥 収 縮
ひ ず み は , 約 46%低 減 す る こ と が 示 さ れ た 。
③ 中性化低減効果が期待できない高濃度シラン系表面含浸材に尿素を組み合わせる
ことで,中性化低減効果が得られることが示された。
④ 塩化物イオン浸透低減効果が期待できない尿素に高濃度シラン含浸材を組み合わ
せることで,塩化物イオン抑制効果が得られることが示された。
第7章「結論」では,各章で得られた結論を総括するとともに,各章で得られた知
見からコンクリート構造物の長寿命化対策技術に関する提言を述べている。
氏
名
田 中 博 一
(論文審査の結果の要旨)
本 論 文 は ,ひ び 割 れ 低 減 お よ び か ぶ り コ ン ク リ ー ト の 物 質 透 過 抵 抗 性 の 向 上 に 着 目
し た 高 耐 久 コ ン ク リ ー ト の 提 案 を 目 的 と し ,尿 素 ,石 灰 岩 骨 材 お よ び 高 濃 度 シ ラ ン 系
表 面 含 浸 材 を 用 い た コ ン ク リ ー ト に つ い て 研 究 し た 成 果 を ま と め た も の で あ り ,得 ら
れた主な成果は次のとおりである。
1. 石 灰 岩 骨 材 に よ る 乾 燥 収 縮 低 減 メ カ ニ ズ ム は , 石 灰 岩 骨 材 の 乾 燥 収 縮 ひ ず み が 著
しく小さいためであることを示し,骨材特性を考慮した複合モデルにより,本研
究から得られた骨材の気乾含水率と骨材の乾燥収縮ひずみとの関係を用いて,コ
ンクリートの乾燥収縮ひずみを簡便に推定できる手法を提案した。
2. 尿 素 に よ る 乾 燥 収 縮 低 減 メ カ ニ ズ ム は , 尿 素 が 非 揮 発 性 で あ る こ と に よ る コ ン ク
リ ー ト 中 の 水 分 の 逸 散 抑 制 効 果 お よ び コ ン ク リ ー ト 中 の 直 径 3nm 程 度 の 細 孔 容 積
の低減効果が複合的に作用している可能性を示し,尿素によるセメントペースト
の乾燥収縮低減係数を用いた複合モデルにより,尿素を用いたコンクリートの乾
燥収縮ひずみを簡便に推定できる手法を提案した。
3. 尿 素 と 石 灰 岩 骨 材 を 併 用 し た 場 合 の 乾 燥 収 縮 ひ ず み は , 石 灰 岩 骨 材 に よ る 乾 燥 収
縮低減効果と尿素による乾燥収縮低減効果をほぼ重ね合わせた結果が得られるこ
とを示した。
4. ダ ム 骨 材 貯 蔵 設 備 お よ び RC ラ ー メ ン 高 架 橋 に 尿 素 コ ン ク リ ー ト を 適 用 し た 結 果 ,
尿素コンクリートを用いた場合,実構造物において温度ひび割れおよび乾燥収縮
ひび割れが著しく低減されることを実証した。
5. 高 濃 度 シ ラ ン 系 表 面 含 浸 材 を 用 い た 場 合 , 優 れ た 吸 水 防 止 性 , 塩 化 物 イ オ ン 浸 透
に対する抵抗性が得られるが,中性化に対する抵抗性の向上については期待でき
ないことを示した。
6. 高 濃 度 シ ラ ン 系 表 面 含 浸 材 を 用 い た 場 合 , コ ン ク リ ー ト の 拡 散 係 数 を 個 別 に 設 定
した 2 層の材料として評価し,シラン系表面含浸材による表面塩化物量低減効果
を考慮する塩化物イオン浸透予測手法を提案した。
7. シ ラ ン 系 表 面 含 浸 材 の 現 場 評 価 試 験 と し て , 表 面 吸 水 量 と 表 面 水 分 率 の 評 価 手 法
を提案した。
8. 尿 素 と 石 灰 岩 骨 材 を 用 い た コ ン ク リ ー ト に 高 濃 度 シ ラ ン 系 表 面 含 浸 材 を 塗 布 す る
こ と で ,乾 燥 収 縮 低 減 効 果 ,中 性 化 低 減 効 果 ,吸 水 防 止 効 果 ,塩 化 物 イ オ ン 浸 透 低
減効果が期待できる高耐久コンクリートが実現できることを示した。
本 論 文 は ,コ ン ク リ ー ト 構 造 物 の 耐 久 性 を 向 上 さ せ る 上 で 有 益 な 結 果 が 得 ら れ て お
り ,学 術 上 ,実 際 上 寄 与 す る と こ ろ が 少 な く な い 。よ っ て ,本 論 文 は 博 士( 工 学 )の 学
位 論 文 と し て 価 値 あ る も の と 認 め る 。ま た ,平 成 24 年 1 月 25 日 ,論 文 内 容 と そ れ に 関
連 し た 事 項 に つ い て 試 問 を 行 っ て ,申 請 者 が 博 士 後 期 課 程 学 位 取 得 基 準 を 満 た し て い る
ことを確認し,合格と認めた。
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