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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
Title Author(s) Citation Issue Date URL Viability and function of autologous and allogeneic fibroblasts seeded in dermal substitutes after implantation( Abstract_要旨 ) Morimoto, Naoki Kyoto University (京都大学) 2005-05-23 http://hdl.handle.net/2433/144461 Right Type Textversion Thesis or Dissertation none Kyoto University 【779】 もり 氏 名 もと なお き 森 本 尚 樹 学位(専攻分野) 博 士(医 学) 学位記番号 論 医 博 第1881号 学位授与の日付 平成17年 5 月 23 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 2 項該当 学位論文題目 Viabilityand functionofautologous andallogeneicfibroblasts seeded in dermalsubstitutes afterimplantation (培養真皮に播種された自家,同種線推芽細胞の移植後の生者及び役割) (主 査) 論文調査委員 数 授 戸口田淳也 教 授 宮 地 良樹 教 授 田 畑 泰彦 論 文 内 容 の 要 旨 ブタ腱由来のコラーゲンを凍結乾燥させ作製したコラーゲンスポンジとシリコーンシー トから構成される,人工真皮を開 発,臨床応用してきた。人工真皮は骨,臆露出部など皮膚仝層欠損創に貼付すると,周囲より線維芽細胞が侵入,血管新生 がおこり真皮様組織が2−3週間で形成される。この期間を短縮すると共に,創傷治癒促進効果をもたせるため,皮膚線維 芽細胞を組み込んだ培養真皮も開発した。培養真皮には自家細胞を用いた自家培養真皮と同種細胞を用いた同種培養真皮が あるが,臨床応用されているのはほとんど同種培養真皮である。臨床的には同種細胞でも拒絶されずに生着し,創傷治癒を 促進するとされている。創傷治癒に与える,自家,及び同種培養真皮の影響を比較し,自家,同種線維芽細胞が移植後生着 し,増殖しているかどうか検討した報告はない。今回,モルモットを用いてこれらのことを検討する実験を行った。 5週齢雄ハートレ一系モルモット(18匹)の腹部より皮膚を採取し,それぞれの自家線維芽細胞を分離,培養した。同種 線維芽細胞としてストレイン2系モルモットの皮膚より分離,培養した線維芽細胞を用いた。3週間程度培養して得られた 線推芽細胞を1.5cmXl.5cmのコラーゲンスポンジに1平方センチメートルあたり1.0×106個ずつ播種,一晩培養し,同 種および自家培養真皮を作製した。播種前に蛍光色素PKH26で線推芽細胞を染色した。モルモット背部に3ケ所1.5cm Xl.5cmの仝層皮膚欠損創を作成し,コラーゲンスポンジ,自家培養真皮,同種培養真皮を移植,縫合した。移植する場 所は順番に入れ替え,移植部位による創傷治癒への影響がでないようにした。1,2,3週後に6匹ずつ安楽死させ,移植 真皮を周囲の皮膚と共に採取した。創の写真から, 開し,凍結切片を作成した。切片中央500FLmの範囲にある,PKH陽性細胞数を計測した。切片上で創縁の距離を測定し, 拘縮の程度を評価した。コラーゲンスポンジに村する免疫組織染色を行い,残存量を評価した。 上皮化面積は,自家培養真皮を移植した創で,1,2週後に同種培養真皮を移植した創よりも有意に広かった。自家細胞, 同種細胞共に移植2週後まで増殖した。自家細胞は減少しなかったが,同種細胞数はその後減少した。移植3週後の創の拘 縮は同種培養真皮を移植した創で自家培養真皮を移植した創より有意に高度であった。足場であるコラーゲンスポンジは同 種培養真皮を移植した創で吸収が遅れ,移植2週後では自家培養真皮を移植した創より有意に多く残存していた。また,へ マトキシリンエオジン染色切片では,同種培養真皮を移植した部分で炎症細胞が多くみられた。 自家線維芽細胞は移植後も生着,増殖していた。一方同種線維芽細胞は生着するものの,炎症反応を惹起し,拒絶させて いる可能性があると考えられた。移植3週までで比較すると,自家培養真皮の方が無細胞の人工真皮,同種培養真皮よりも 上皮化を促進し,拘縮も少なく,創傷治癒を促進していると考えられた。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 コラーゲンスポンジ等の足場に,同種の線維芽細胞を播種した同種培養真皮は,創傷治癒促進効果があるとされ,臨床使 用されているが,自家培養真皮と比較した報告はない。創傷治癒における両者の効果の違いを明らかにする目的で本研究を 行った。 柵1885− コラーゲンスポンジにハートレ一系モルモットの自家皮膚線推芽細胞を播種した自家培養真皮,ストレイン2系モルモッ トの皮膚線椎芽細胞を播種した同種培養真皮をそれぞれ作製した。線椎芽細胞はあらかじめ蛍光染色した。ハートレ一系モ ルモットの仝層皮膚欠損創に,コラーゲンスポンジ,自家培養真皮,同種培養真皮を移植した。1,2,3過後に組織採取 し,上皮化面積,移植細胞数,創の拘縮の程度,コラーゲンスポンジの残存量を比較した。 自家培養真皮を移植した創は,同種培養真皮を移植した創よりも上皮化が促進された。播種した線維芽細胞は自家,同種 共に移植2週後まで増殖が認められたが,自家線維芽細胞の増殖が有意に優っていた。同種培養真皮を移植した創では収縮 が高度であり,コラーゲンスポンジの吸収が遅れ,炎症細胞が多くみられた。 これらの結果,自家培養真皮の方が,同種真皮よりも,創傷治癒促進効果が大きいと考えられた。 以上の研究は同種,自家培養真皮が創傷治癒に与える効果の解明に貢献し,培養真皮の臨床応用に寄与するところが多い。 したがって,本論文は博士(医学)の学位論文として価値あるものと認める。 なお,本学位授与申請者は,平成17年4月4日実施の論文内容とそれに関連した研究分野並びに学識確認のための試問を 受け,合格と認められたものである。 ー1886−