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Title 低品位炭の自然発火機構の解明および自然発火抑制法の 検討

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Title 低品位炭の自然発火機構の解明および自然発火抑制法の 検討
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Issue Date
低品位炭の自然発火機構の解明および自然発火抑制法の
検討( Abstract_要旨 )
藤墳, 大裕
Kyoto University (京都大学)
2014-03-24
URL
https://doi.org/10.14989/doctor.k18309
Right
許諾条件により本文は2015-03-23に公開
Type
Thesis or Dissertation
Textversion
ETD
Kyoto University
京都大学
論文題目
博士(工学)
氏名
藤墳 大裕
低品位炭の自然発火機構の解明および自然発火抑制法の検討
(論文内容の要旨)
本論文は、今後より重要な資源となる低品位炭の有効利用をめざし、そのなかでも大きな問題とな
っている低品位炭の高い自然発火性を抑制することを目的に、自然発火機構の解明と自然発火抑制法
の開発、自然発火の予測・評価指標の確立に関する研究をまとめたもので、緒論と本文4章、総論よ
り成り立つものである。
緒論では、石炭の自然発火について反応機構と反応速度を併せた自然発火性の把握が重要であるが
十分に検討されていないという現状の問題点を指摘し、低温酸化機構の解明とともにその変化を定量
的に解析することで反応の機構と速度を共に考慮した自然発火機構を把握すること、およびその自然
発火機構に基づき自然発火抑制法を検討すること、自然発火機構に基づいて低温酸化の反応速度解析
を行うことが本論文の主目的であることを明確にしている。
第1章では、2種類の褐炭と1種類の亜瀝青炭の低温酸化挙動を昇温過程における固体重量変化、
ガス生成速度、固体生成物の構造変化および発熱速度をその場測定することで、低温酸化機構が脂肪
族炭素への酸素吸着、官能基部分の酸化による含酸素官能基の生成、および石炭骨格の酸化の3段階
からなることを明らかにしている。また、200 °C 以下の反応初期での酸素消費量から酸化反応性を、
酸素消費量と発熱量から求めた石炭の断熱温度上昇から低温酸化性を定量的に評価し、もっとも質の
低い褐炭がもっとも自然発火性が高いことを見いだしている。また、すべての石炭の断熱温度上昇が
180 °C を超えており、200 °C 以下の反応で自然発火が十分起こり得ることを示し、自然発火には脂肪
族炭素上への酸素吸着とカルボキシル基が生成するような反応の寄与が大きく、自然発火抑制法とし
て脂肪族炭素や含酸素官能基を取り除く処理が有効である可能性を示している。
第2章では、脂肪族炭素や含酸素官能基を取り除くことができる熱分解処理および溶剤処理に着目
し、これらの処理炭の低温酸化挙動および低温酸化性を評価し、これらの処理の自然発火抑制法とし
ての適用可能性を検討している。いずれの処理でも脂肪族炭素が減少するとともに含酸素官能基が分
解除去されており、低温酸化の初期反応は脂肪族炭素上の酸素吸着のみとなり、その発熱は H2O が生
成するような酸化反応の発熱よりも大きいことを明らかにした。熱分解処理炭では細孔表面積が増加
したため、低温における酸素との反応性は原炭よりも大きくなったが、溶剤処理炭は細孔表面積が小
京都大学
博士(工学)
氏名
藤墳 大裕
さいために低温酸化性が抑制されることを明らかにし、溶剤処理法の自然発火抑制法としての可能性
を示している。
第3章では、低品位炭素資源の有効利用のための前処理として、溶剤処理法が自然発火抑制だけで
なく脱水・改質にも効果があるかどうかを検証した。本研究で用いた処理条件(1-メチルナフタレン中、
350 °C、1 時間処理)が亜瀝青炭より質の悪い原料に対して有効であることを見いだしている。調製し
た溶剤処理試料は完全に脱水されており、亜瀝青炭と同程度の発熱量を有し、褐炭を処理した場合は
原料基準の発熱量が原料よりも大きくなることを明らかにし、溶剤処理法が自然発火性の抑制だけで
なく、脱水、改質による発熱量向上にも有効なエネルギー効率の高い処理であり、低品位炭素資源、
とりわけ褐炭の有効利用のための前処理として有用であることを示している。また、褐炭から調製し
た試料の酸素吸着挙動を観察し、処理炭中の溶剤可溶成分は軟化溶融性を有しており、溶剤処理の際
に溶剤可溶成分が石炭の細孔に浸入して細孔表面積が小さくなり酸素のアクセスが抑制される結果、
処理炭の酸素との反応性が抑制されることを明らかにしている。
第4章では、低温酸化の反応速度を並列一次反応モデル(Distributed Activation Energy Model; DAEM)
を用いて定式化し、酸化の進行に伴い起こる反応が変化していく低温酸化機構を反応の進行に伴う速
度パラメーターの変化によって表現することに成功している。得られた活性化エネルギーは 100 ~ 180
kJ/mol、みかけの頻度因子は 106 ~ 1014 min−1 に分布しており、重量減少挙動を良好に再現した。褐炭
の初期に起こる反応の速度は褐炭の後期の反応速度よりも約 1000 倍、亜瀝青炭の初期に起こる反応
の速度の約 500 倍大きいことを明らかにしている。また、断熱条件下での石炭の酸化による温度上昇
を数値計算し、褐炭の自然発火現象の表現に成功している。もっとも自然発火しやすい条件での数値
計算によって急激な温度上昇が起こるときの褐炭の反応率が 6.0×10−4 であり非常に初期の反応によっ
て自然発火が起こることを明らかにするとともに、求まる温度上昇の値が石炭管理における安全ガイ
ドの指標となりうることを提案している。
最後に総論では、本研究で得られた成果を整理し、低品位炭の有効利用法としての溶剤処理法の適
用可能性を述べている。
氏
名
藤墳 大裕
(論文審査の結果の要旨)
本 論 文 は 、今 後 よ り 重 要 な 資 源 と な る 低 品 位 炭 の 有 効 利 用 を め ざ し 、そ の 大 き な 妨 げ
と な っ て い る 低 品 位 炭 の 高 い 自 然 発 火 性 を 抑 制 す る こ と を 目 的 に 、自 然 発 火 機 構 の 解 明
と 自 然 発 火 抑 制 法 の 開 発 、自 然 発 火 の 予 測・評 価 指 標 の 確 立 に 関 し て 研 究 し た 成 果 を ま
とめたものであり、得られた主な成果は次のとおりである。
1 . 低 品 位 炭 の 酸 化 機 構 は 、(1)脂 肪 族 炭 素 上 へ の 酸 素 の 吸 着 、(2)含 酸 素 官 能 基 の 生
成 、 (3)石 炭 骨 格 の 酸 化 の 3 段 階 か ら な る こ と を 明 ら か に し 、 そ の う ち 脂 肪 族 炭
素上への酸素吸着およびカルボキシル基の生成反応が自然発火に大きく寄与す
ることを明らかにした。
2 . 低 品 位 炭 を 無 極 性 溶 媒 中 、 穏 和 な 条 件 (350 °C、 1 時 間 )に お い て 処 理 す る こ と で
調 製 し た 溶 剤 処 理 炭 は 、脂 肪 族 炭 素 の 一 部 や 含 酸 素 官 能 基 が 分 解・除 去 さ れ た た
め に 低 温 で 酸 素 と の 反 応 性 が 高 い 部 分 が 減 少 し た こ と に 加 え 、細 孔 表 面 積 が 減 少
したために酸素のアクセスが抑制されたことにより自然発火性が抑制されたこ
と を 示 し た 。ま た 、細 孔 表 面 積 の 減 少 は 、溶 剤 処 理 炭 中 の 軟 化 溶 融 性 を 有 す る 溶
剤可溶成分が石炭の細孔内に浸入し閉塞したことに起因することを見いだした。
3 . 上 述 の 溶 剤 処 理 は バ イ オ マ ス 、泥 炭 お よ び 褐 炭 と い っ た 低 品 位 炭 素 資 源 を 完 全 に
脱水できるとともに処理によって発熱量を亜瀝青炭程度にまで向上させうるこ
と を 確 認 し 、溶 剤 処 理 は 脱 水 、改 質 、自 然 発 火 性 抑 制 を 同 時 に 実 現 で き 、低 品 位
炭 素 資 源 の 前 処 理 と し て 有 用 で あ る こ と を 示 し た 。さ ら に 、褐 炭 を 原 料 と し た 場
合 、溶 剤 処 理 炭 の 原 料 基 準 の 発 熱 量 が 原 料 の 発 熱 量 を 上 回 り 、エ ネ ル ギ ー 効 率 の
高い処理であることを示した。
4 . 石 炭 酸 化 反 応 に 対 し て 並 列 1 次 反 応 モ デ ル を 適 用 す る こ と で 酸化の進行に伴い起
こる反応が変化していく低温酸化機構を反応の進行に伴う速度パラメーターの変化によっ
て表現することに 成 功 し た 。 ま た 、 得 ら れ た パ ラ メ ー タ ー を 用 い て 、 断 熱 条 件 に
お け る 石 炭 温 度 上 昇 の 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 い 、褐 炭 の 自 然 発 火 挙 動 の 表 現
に成功するとともに、石炭管理における安全ガイドを示した。
以 上 、本 論 文 は 、低 品 位 炭 の 自 然 発 火 に 対 し て 、低 温 酸 化 機 構 と 自 然 発 火 と の 相 関 を
定 量 的 に 明 ら か に し 、溶 剤 処 理 法 が 低 品 位 炭 の 有 効 利 用 の た め の 前 処 理 と し て 有 用 で あ
る こ と を 見 い だ し 、低 温 酸 化 機 構 に 基 づ く 反 応 速 度 解 析 を 行 い 自 然 発 火 挙 動 の 表 現 に 成
功 す る な ど 、学 術 上 、実 際 上 寄 与 す る と こ ろ が 少 な く な い 。よ っ て 、本 論 文 は 博 士( 工
学 )の 学 位 論 文 と し て 価 値 あ る も の と 認 め る 。ま た 、平 成 2 6 年 2 月 2 5 日 、論 文 内 容
と そ れ に 関 連 し た 事 項 に つ い て 試 問 を 行 っ て 、申 請 者 が 博 士 後 期 課 程 学 位 取 得 基 準 を 満
たしていることを確認し、合格と認めた。
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