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真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re
真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re ウルヴァリン タテ書き小説ネット Byヒナプロジェクト http://pdfnovels.net/ 注意事項 このPDFファイルは﹁小説家になろう﹂で掲載中の小説を﹁タ テ書き小説ネット﹂のシステムが自動的にPDF化させたものです。 この小説の著作権は小説の作者にあります。そのため、作者また は﹁小説家になろう﹂および﹁タテ書き小説ネット﹂を運営するヒ ナプロジェクトに無断でこのPDFファイル及び小説を、引用の範 囲を超える形で転載、改変、再配布、販売することを一切禁止致し ます。小説の紹介や個人用途での印刷および保存はご自由にどうぞ。 ︻小説タイトル︼ 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re ︻Nコード︼ N8199BH ︻作者名︼ ウルヴァリン ︻あらすじ︼ 2018年、狼の名前を持つ部隊が核で消滅した。しかし世界の 江東の小覇王 と出会う。 狭間で出会った戦乙女からの依頼で彼等は女性ばかりの三国志の世 界に降臨する。群雄割拠の中で主人公は 1 第1話:核︵前書き︶ 優勢に進める海兵隊。しかし彼等を冷酷な運命が襲う。 2 第1話:核 2018年8月の中国。長年の共産主義を終わらせ民主化を目指す 中国新政府軍と共産主義復活を掲げる中国超国家主義者達による内 戦は熾烈を極めていた。 開戦当初は超国家主義者達が優勢だったが、米軍を主体とした連合 軍の介入で形勢は逆転。超国家主義者達は中国首都の北京に追い込 まれた。 内戦を終結させる為、連合軍は北京に進軍。その先頭には歴戦の兵 ウルフパック の姿があった。 士、ライル・L・ブレイド中佐率いる米海兵隊第31海兵遠征隊指 揮下独立機動大隊 ﹁奴等を釘付けにしろ!!逃がすなよ!!﹂ ﹃了解!!﹄ 俺達は最前戦で接敵していた。部下達はM4A1アサルトカービン Master Key やM16A4アサルトライフル、M249PARA軽機関銃で敵部 隊に銃撃を加える。俺もM4A1+KAC で敵を仕留めて行く。 Tech551ホログラフサ 超国家主義者達はQBZ95で反撃するがキャリングハンドルの上 にマウントベースに取り付けたEO イトを乗せているが、銃口とサイトが異様に離れており、命中率は かなり低い。 ﹁11時方向にRPG部隊!!厄介になる前に片付けろ軍曹!!﹂ ﹁了解!!・・・吹っ飛びやがれ!!﹂ 近くにいた軍曹がM16A4に取り付けたM203A2からM44 3 1 40mm高性能炸薬弾︵HE弾︶を敵部隊に撃ち込み、敵部隊 は着弾の際の爆発で吹き飛ばされて、俺達の脅威は取り除かれた。 ﹁よし、このまま奴等を殲滅する!!海兵隊魂を奴等に見せつけて やれ!!﹂ ﹃了解!!﹄ 敵は俺達の攻勢に怖気づいたようで反撃もままならない状態だ。そ んな状態に俺達は殲滅していく。 他エリアでも戦闘が継続されている中、俺達の担当エリアの制圧が 完了した。 ﹁こちらウルフパック指揮官、周辺エリアの制圧完了。負傷者17 名。戦死者はなし。回収を要請﹂ <こちらHQ、確認した。直ちに回収部隊を急行させる。現在地で 待機せよ> ﹁了解だ、out﹂ 自分の無線機でHQに状況報告するとすぐに周辺を警戒する。いつ 敵の増援が来るか分からないからだ。 ﹁負傷者を一箇所に集めろ、何処から敵が現れるか分からんぞ﹂ ﹁了解です﹂ ﹁曹長、ビルの屋上にスカウトスナイパー︵前哨狙撃兵︶を配備だ。 お前が指揮しろ﹂ ﹁了解﹂ ﹁捕らえた捕虜は何か吐いたか?﹂ ﹁今は聴取中です﹁中佐!!﹂・・・なんだ?﹂ 声がした方角を見ると捕虜を尋問していた軍曹が慌てて駆け寄って 4 来た。 ﹁どうした?﹂ ﹁さっき捕虜の尋問が終わったんですが・・・・・・﹂ ﹁何があった?﹂ ﹁敵が核の起爆を進めていると!?﹂ ﹁何だと!?場所と時刻は!?﹂ ﹁中佐!!GHQから緊急連絡!!SEALsが核を発見!!全部 隊は安全なエリアまで退避・・・・・・﹂ 部下が報告している矢先、俺達の意識は真っ白になった。爆風と高 熱、市街地の中央から発生した巨大なきのこ雲によって・・・・・・ ・・・ 5 第1話:核︵後書き︶ とある世界 の異変を調べるために部下共々降臨す 超国家主義者達による戦術核起爆で命を落としたライルは時空の狭 間で戦乙女に る。 次回﹁戦乙女からの依頼﹂ 乱世に狼の雄叫びが木霊する・・・・・・ 6 第2話:戦乙女からの依頼︵前書き︶ 核の起爆に巻き込まれたライル。彼は死後の世界に向かいはずだっ たが、目の前に広がっていたのは・・・・・・。 7 第2話:戦乙女からの依頼 戦術核の起爆に巻き込まれた俺達。核の起爆に巻き込まれて助かる はずは無い。実際に俺の目の前が漆黒の闇に包まれている。 ︵・・・暗い・・・・・・何も無い︶ 本当に何も無い。周りには何も無く、何も聞こえない。死んだとい うことで全ての感覚が機能を停止したのだろう。別に死んだという ことには拘らない。生きる者全ていつかは死ぬのだし、それが早く なっただけの話。 ﹁・・・・・・て・・・・・・・・・い﹂ 何やら幻聴が聞こえて来た。死んでも幻聴がきこえるのか? ﹁お・・・・・・くだ・・・い﹂ 死人に口無し とい 少しずつだが幻聴が大きくなっていき、何やら話しかけているよう にも聞こえる。だが俺は死んだ人間関係だ。 う言葉通り答えない方がいいだろう。 ﹁おき・・・よ・・・・・・おき・・・てば﹂ そろそろ鬱陶しく感じられてきた。死んだらこういう幻聴がいつま でも聞こえるのか? そう思っていると耳の中から鐘が鳴り響くことになる。 8 ﹁起きなさいって言ってるでしょ!!!!﹂ ﹁うわぁ!?﹂ いきなりの大声を思わず飛び上がってしまう。すると目の前が黒か ら白にかわるが、相変わらず何も無い。どうやら先ほどの黒い空間 は目を瞑っていたからだろう。 ﹁やっと起きた・・・もう!!﹂ ﹁うぅぅ・・・起こすならもっと優しく起こし・・・・・・て・・・ ﹂ 俺は振り向いた方角を見ると言葉を失った。何しろ目の前にいたのは 天使 だ。 ブロンドのロングヘアに幼さが残る顔、豊満なバスト、極め付けは 背中に生えた純白の羽。その姿はまさしく ﹁て・・・・・・天使・・・だと﹂ 天使ちゃん アホ なんて言ってもね ﹁もう!!そんなこと言っても許さないもん!!起きたら目の前に すっごく可愛くてスタイル抜群の !!﹂ 誰もそこまで言っていない。俺から見て彼女の第1印象は だ。そう考えていると先程の少女が顔を覗き込んで来た。 ﹁いますっごく失礼なこと考えてたでしょ!?﹂ ﹁い・・・いや・・・・・・別に・・・﹂ そして感が鋭い。まあ、確かに可愛いがそれをいえばどうなるか解 らないし、何よりも嫌な予感しかしない。だが彼女は頬を膨らまし ながら腕を組む。 9 ﹁全く・・・目の前に可愛い女の子がいるんだから少しは驚いてよ ね﹂ ﹁いやいや・・・・・・これでもかなり驚いているんだぞ、目の前 に御伽噺でしか知らない天使がいるんだからな・・・﹂ ﹁ふ∼ん・・・・・・そういうものなの?﹂ ﹁そういうものだ・・・・・・だがここは何処なんだ?﹂ そういうとおれは改めて周囲を伺う。改めて周囲を見渡すとやはり 世界の狭間 と呼ばれて 何も無い。どこまでも真っ白な空間が広がっている。ここまで何も 無いとなんだか清々しい気分になる。 ﹁ここはこの世とあの世の間にある空間 る空間よ。現世で死んだ人間はここを通ってあの世に向かうのよ﹂ ﹁・・・ということは俺は確かに死んだをだな・・・・・・で、君 が俺の案内係か何かか?﹂ ﹁ちょっと違うわね﹂ ﹁?﹂ ﹁私の名前はジーン。宮廷ヴァルハラに仕える天界一可愛い天使ち ゃんよ♪﹂ ラグナロク に備えて日夜鍛錬に励む場 俺は耳を疑った。ヴァルハラといえば現世で死んだ優秀な戦士達が 集い、来るべき運命の日 所だ。だがそれよりも気になることがある。 ﹁・・・・・・可愛い?﹂ ﹁驚くところが違うでしょぉ!!﹂ ﹁いってぇぇ!?﹂ 叫びながら彼女はどこからか取り出した巨大なハンマーを取り出し て俺の頭をフルスイングした。 10 その後も彼女からの説明が続く。何でも俺達の世界から見て過去の 世界の人間が誤って別次元の世界に飛ばされ、それ自体なら稀にあ るということで放置していたが、その人間が降臨した世界から妙な 気配が感じられるらしい。 そこで彼女の上司にあたる大天使が俺達にその世界に赴き、原因の 究明と可能であれば救済を依頼したいらしい。 もちろん全面協力として武器弾薬、装備、兵器、資材の無償提供は 惜しまないらしい。資金面も当初はあったが最初の資金面だけ受け 取り、その後は緊急事態以外は自分達で稼ぐことで可決した。 ﹁それでどうする?﹂ ﹁断る理由がないし条件も俺達にとって凄い好条件だからな。引き 受けよう﹂ ﹁ありがとう!!﹂ ﹁それで、俺達が向かう世界はどんな場所なんだ?﹂ ﹁ああ、そうだったわね・・・・・・えい!!﹂ 彼女が指を鳴らすと俺の目の前に地球儀のような球体が姿を現した。 ﹁あなた達が向かう場所は古代中国、約1800年前の時代で三國 志の時代。後漢末期といえば分かるかしら?﹂ ﹁ああ、その時代なら俺の好きな時代だからな。問題ない。すまな いが早速向かうとしよう﹂ ﹁分かったわ。それで装備はどうする?﹂ ﹁装備に関しては死んだ直前のものを頼む。銃火器はこういう風に してくれ﹂ そういうと俺は紙とペンを取り出して装備リストを書き込み、書き 終わるとジーンに渡した。 11 ﹁分かったわ。着いたら装備している状態にしておくわ。それと時 代はまさに群雄割拠よ。武術の実力を底上げしておくからあとで確 認してね﹂ ﹁了解だ、向かうとする﹂ ﹁お願いね。あなた達ウルフパックに神のご加護があらんことを・・ ・・・・﹂ 彼女が祈りを始めると俺の身体が小さな粒子になっていき、地球儀 に吸い込まれる様に消えて行く。 俺達の第二の人生の始まりである・・・・・・。 12 第2話:戦乙女からの依頼︵後書き︶ 次回予告 ジーンからの依頼を引き受けた俺達は三國志の世界に到着するが、 そこは知っている三國志とは少し違う世界だ。 2人の武将 そして俺達の前に2人の人物が現れる。 次回の海兵隊の誇り まさかあの2人が・・・・・・・・・。 13 第3話:2人の武将︵前書き︶ 後漢末期に降臨したウルフパック。情報収集に専念しているある日、 ライル達の前にある武将が現れる。 14 第3話:2人の武将 ジーンからの依頼を受けて俺が率いるウルフパック総数427名は 約1800年前の後漢末期に降臨した。 現在は司州北西部に位置する河東の山岳部に野営陣地を構築して諜 報活動に従事している。幸いにも近くに集落があり、情報をもらい に赴いた際には盗賊団に間違えられたが、俺達が遥か西の羅馬から 北に進んだ小国からやって来た傭兵団と説明すればすんなり情報を 提示してくれた。 今のところで入手できた情報は二つ。一つは洛陽からの情報だ。時 乱世に蔓延る悪鬼 仲穎だが、この世界の董卓は圧政を敷いておらず、 系列から考えてた今の洛陽を納めているのは と称された董卓 本初が諸侯に 帝を手 むしろ民の安全と生活を第一に考える慈悲に満ちた当主らしい。 しかし現在、豫州を納める袁家当主の袁紹 という轍文を送 駒として洛陽に暮らす民を苦しめる巨悪の根源、董卓を打ち滅ぼし、 苦しむ民と我等の帝を救い出して大平の世を!! っている。 次の情報がその袁紹に関する情報だ。この世界の袁紹は自分が名族 という理由だけで他の将より優れていると勘違いしており、権力の 横暴、私腹を肥やすために民に対して圧政に続く圧政。噂では既に 多数の餓死者が出ている。 この世界に君臨して一ヶ月。ひとまず入手した情報を纏めるために 野営陣地内部の指揮所に俺を含めたウルフパック部隊長クラスの兵 が集まっていた。 ﹁・・・・・・・・・以上が我々が入手した情報であります﹂ ﹁ご苦労、座ってくれ﹂ 15 ピクセルグリーンデジタル 報告を終わらせた少尉は自分の椅子に座る。俺達の服装は米海兵隊 の正式採用迷彩服であるMARPAT 迷彩服。主力ハンドガンのM45が入ったCQCホルスターを取り 付けたピストルベルト。ピクセルグリーンの野戦帽やウルフパック の部隊章が入ったブラックベレー帽を頭に嵌めている。 ﹁次は各勢力に関する情報だが、アレックス。頼む﹂ ﹁分かった﹂ 指名するとウルフパックの副官を務めるアレックス・ヴォード少佐 が立ち上がる。彼は俺の相棒であり、同時に2人で幾度の激戦区を 潜り抜けて来た歴戦の猛者でもある。 江東の虎 と称された英雄孫堅 ﹁俺の部隊が入手した情報は2つ。時系列的に考えると荊州東部に ある長沙で太守をしていたのは 文台だが・・・・・・﹂ ﹁どうかしたのか?﹂ ﹁孫堅は既に戦死しているんだ、劉表との戦で・・・・・・﹂ その言葉に三國志に詳しい部下と俺は驚愕した。確かに孫堅は劉表 討伐の際に襄陽で黄祖の伏兵によって射殺されたとされているが、 伯符が継いで劉表を討伐したが荊州軍を抑え それはあくまで陽人の乱が終結した後の話である。 ﹁孫堅戦死後、孫策 切れずに撤退。今は袁術の客将をしている﹂ 翼徳の2人と 桃園の誓 ﹁流れそのものは合っているが発生するタイミングが早まっている ということか・・・・・・・・・他には?﹂ 雲長と張飛 ﹁まだある。次は劉備義勇軍に関する情報だ﹂ 玄徳。関羽 ﹁劉備とはあの劉備か?﹂ ﹁ああ、劉備 16 い を立てた蜀の初代皇帝になる仁徳の王だ﹂ 恐らくではあるが三國志の中で最も有名なのが劉備達による桃園の 誓いだろう。 我ら三人、生まれし日、時は違えども兄弟の契りを結びしからは、 心を同じくして助け合い、困窮する者たちを救わん。上は国家に報 い、下は民を安んずることを誓う。同年、同月、同日に生まれるこ とを得ずとも、同年、同月、同日に死せん事を願わん 俺達の前世でもかなり有名な話であり、俺自身も好きな句でもある。 ﹁少佐、確かに劉備の存在は有名ですが、 それがどうかしたのですか?﹂ 黒天を切り裂いて、天より飛来する一筋 ﹁それを話す前に手元の情報に目を通してくれ﹂ ﹁なになに・・・・・・ の流星。それは輝く純白の衣を身に纏い、光り輝く二筋の刃を手に ・・・・・・なんだこれ?﹂ 取る勇敢なる英雄を乗せ、乱世を鎮静す。そのものは天の御遣いな り ﹁黄巾の乱より前に大陸中に広まった予言だ。管路という予言者が 広めて、その天の御遣いが劉備義勇軍と行動を共にしているらしい。 この時代には不釣り合いの剣術と戦術を用いてな﹂ そういうと俺も情報に目をやる。それによると御遣いが現れたのは 黄巾の乱が発生する少し前で、名前は不明だが現代戦術や結果が分 かっていたような行動をするらしい。 ジーンから聞かされている情報と合致しているが、まだ情報が不足 している。 ﹁確かに気になるな・・・・・・﹂ 陽人の乱 だ。俺達も戦に参加 ﹁ああ、だが情報が欠如しているな・・・・・・今後の方針は?﹂ ﹁もうすぐ開戦になる戦は確実に 17 しようと思うが問題はどちらの陣営に組するかだ﹂ 確かに今後の情報を得る為には陽人の乱への参加は必然。しかし今 までの情報を統合すれば、董卓は他者からの妬みをかわされただけ で、連合そのものが悪になる。特に袁紹は解放など考えていない筈 で、奴の狙いは洛陽を手に入れて権力の中枢を獲得すること。 そんな奴に協力する気などさらさらないが、董卓軍に協力するとし ても情報があまりにも少なすぎる。 方針を話し合っているとテントの中に部下の伍長が飛び込んで来た。 ﹁会議中に失礼します!!﹂ ﹁どうした?﹂ ﹁ハッ!!偵察斑より報告!!東から騎馬部隊が接近しています! !﹂ その報告を受けて全員が表情を強張らせる。報告だけでは勢力が不 明だが敵の可能性だってある。 ﹁中佐!!﹂ ﹁会議は中止だ!!部隊に戻って指揮を執れ!!﹂ ﹃了解!!﹄ そういうと全員がテントから飛び出して行く。俺も急いでHK41 漆黒の華旗 だろ?﹂ 6+M320A1を手に取って最前戦に駆け寄る。双眼鏡を取り出 に すと騎馬部隊が接近している方角を見る。 紺碧の張旗 ﹁・・・・・・ライル﹂ ﹁見えてるさ・・・ ﹁そうだ、そしてここから東の勢力で牙門旗に張と華が入る武将と いえば・・・・・・﹂ 18 猛将 華雄だろ?﹂ 張遼と ﹁董卓軍所属の 文遠と華雄。特に張遼とい 神槍 接近している部隊は董卓軍配下の張遼 えば後に魏軍に参加して曹操が信頼を寄せた武将とされる。 ﹁どうする?﹂ ﹁ひとまずは様子を伺う。だが両方とも騎馬戦術のスペシャリスト だ。戦闘になると突破力は計り知れないぞ﹂ ﹁いえてるな・・・・・・・・・単騎掛けで2人来るぞ﹂ 双眼鏡を覗き込むと確かに騎馬部隊から先行する2人が確認できた。 部下達がそれに気付き武器を構えるが、無線で待機続行を指示する。 ﹁武器を収めよ!!こちらに交戦の意思は無い!!﹂ 接近中の傍が大声で叫ぶ。それを示すかの様に、確かに武器は見当 たらない。だがそれだけで警戒を解除する訳にはいかない。 ひとまずは俺とアレックスが出迎える為に歩み寄る。 ﹁馬上から失礼する!!羅馬より北の小国から来た傭兵団とは貴様 達か!?﹂ 馬でやってきたのは2人の女性で、1人は後ろ髪を束ねた紫色の髪 で、胸をさらしで巻き、袴を羽織った女性で、もう1人は俺と同じ 大胆な服装の美女 だ。 銀髪で胸元とヘソを出し、蝶柄と銀の装飾を施した目線が鋭い女性 だ。 2人の共通点とすれば ﹁そうだが・・・・・・すまないが姓名と所属を教えてくれないか ?﹂ 19 ﹁私は董 だ!!﹂ 文遠や!!しっかり覚えて 仲穎様が家臣!!都尉をしている第4師団師団長の華雄 ﹁うちは騎都尉しとる第3師団長の張 や!!﹂ 俺とアレックスは彼女達の名前を聞いて驚愕する。何しろ目の前に いる2人が神槍と猛将なのだから・・・・・・。 20 第3話:2人の武将︵後書き︶ 次回予告 ライル達の前に現れた張遼と華雄。しかし2人が女性であるという ことに驚愕する。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り.Re[進路を洛陽へ] そして彼女達の目的は・・・・・・。 次回 狼達が行動に移る。 ※次回は本編ではなく、主人公のライルと副官のアレックスを紹介 いたします。 21 第4話:キャラクター紹介1︵前書き︶ 本編とは一切関係ありませんのでご注意ください。 22 第4話:キャラクター紹介1 今回はライルとアレックスの紹介をします。本編とは無関係ですの で、お気軽にご覧ください。 ライル=ローガン・ブレイド 生年月日:1988年5月18日 年齢:30歳↓24歳︵後漢末期君臨後︶ 血液型:O型 身長:184cm 体重:78kg︵外見では分からないが、かなりがっちりした筋肉 を有している︶ 髪:銀髪 瞳:オッドアイ︵右目が琥珀色、左目が赤色︶ 人種:ドイツ系アメリカ人 特徴:左目に傷︵視力に問題なし︶ 所属:ウルフパック 階級:中佐 役職:ウルフパック指揮官、特殊作戦グループ隊長 コードネーム:ウルヴァリン 神をも斬り裂く狼 ︶] 愛用武器:折畳式鉤爪搭載手甲[神斬狼︵しんきろう:名前の意味 は 本作の主人公でウルフパック指揮官を務める海兵隊中佐。前世では 銀狼 という異名を与えられている。 海兵隊屈指の実力を有した海兵隊員で、これまでに数多くの実戦を 潜り抜けて友軍からは 射撃や格闘技、剣術に長けており、特にCQCの実力は部隊で最強 23 とされる。 性格は冷静沈着で普段は温厚。仲間や家族を大事にする。義侠心が あり友人や親しい人間、仲間を傷つける者には容赦がなく、悪人や 敵に対しては殺すこともいとわない。 文武両道才色兼備で弱点が無さそうに見えるが酒に物凄く弱く、小 ビールグラス半分も飲めない。 アレックス・ヴォード 生年月日:1988年11月7日 年齢:30歳↓24歳︵後漢末期君臨後︶ 血液型:AB型 身長:187cm 体重:80kg 髪:ライトブラウン 瞳:灰色 人種:アメリカ人の父とロシア人の母のハーフ 特徴:右肩から腰に掛けて手榴弾の破片を受けた傷跡 所属:ウルフパック 階級:少佐 役職:ウルフパック副官、機械化歩兵部隊隊長 コードネーム:アイアンマン 愛用武器:戦闘用大鎌[髑髏︵名前の由来:装飾で彫られている髑 髏から︶] 鋼鉄 と呼ばれてい ライルの副官を務める海兵隊少佐。ライルと同様に数多くの激戦区 を潜り抜けて来た歴戦の猛者で、友軍からは 24 る。 戦闘時は軽機関銃を好んで使用し、扱い慣れた影響で再装填のスピ ードが最も早い。 性格は陽気で部隊のムードメーカーを担う。しかし与えられた任務 を確実に遂行する忠誠心も兼ね備え、高い状況判断力を有している。 かつて両親をテロで殺されたトラウマの影響で、仲間や家族を傷付 ける敵や賊は徹底的に殲滅させるほどの凶暴な性格に変貌する。 25 第4話:キャラクター紹介1︵後書き︶ 次回から本編に戻ります。 26 第5話:針路を洛陽へ︵前書き︶ 俺達の前に現れたのは女性の張遼と華雄。やってきた目的は予想で きていた・・・ 27 第5話:針路を洛陽へ 俺達の前に現れた武将の張遼と華雄。別にそのこと自体では驚かな いが、2人が女性でしかも中々の美女ということには驚かされた。 名前を聞いて驚愕した俺達に張遼が恐る恐る話しかけてきた。 ﹁な・・・なあ・・・・・・うちら名乗ったんやから、自分等も早 よぅ名乗ってえな・・・﹂ ﹁えっ・・・・・・ああ・・・失礼した﹂ ウルフパック の指揮官を務めるライル・L・ ようやく正常に戻った2人はすぐに踵を鳴らして直立不動の姿勢を 執り、敬礼をする。 ﹁自分はこの傭兵団 ブレイドだ﹂ ﹁自分はウルフパック副官を務めるアレックス・ヴォード﹂ 今度は俺達も名乗るが、なにやら彼女達は困惑した表情をしている。 ﹁雷・・・・・・なんだと?﹂ ﹁ライルだ。文化も名前の特徴もまったく違うからな。気兼ねなく ライルと呼んでくれ﹂ ﹁ふ∼ん・・・変な名前やな。それに自分等が着とる服装の柄、な んやシミみたいやな♪﹂ 恐らくは俺達が着ているデジタル迷彩服のことだろう。迷彩服の発 祥は狩の時代から存在するが、それは偽装というよりも保護色とい う意味合いが強い。 28 その為、迷彩服を知らない彼女達から見て迷彩服はシミで汚れた服 にしか見えないだろう。 ﹁それで、俺達に何の用だ?﹂ ﹁ああ、洛陽に来た商人から貴様達の噂を聞いてな、異国の傭兵団 がここ河東に駐留しているといっていたからやって来たのだ﹂ ﹁ほんでな、そいつがいうには何や自分等、結構強いらしいやん﹂ 強いかどうかは分からない。確かにジーンから武術が武将級にまで 強化されていると聞かされているが、実をいうと俺達自身も実際は どうなのか分からない。何しろこれまでに交戦したのは哨戒中に出 会した6人の賊から旅商人を救い出しただけである。 恐らくはその商人から聞いたのだろう。 ﹁そんであんた等にちょっと聞きたいねんけど、自分等ってどっか と契約しとる?﹂ ﹁いや、この国に来てまだ日が浅いから何処とも契約を結んではい ないが・・・・・・﹂ ﹁それなら話が早い。ライルとアレックス。貴様等も董卓様に仕え ないか?﹂ 大体の予測はしていたが、内心でその言葉に驚かされる。何しろ名 高い張遼と華雄からスカウトされているのだから。 ﹁張遼と華雄。一つ聞きたい。なぜ我等を?﹂ ﹁貴様等は袁紹が諸国に配布した轍文を知っているか?﹂ ﹁君達の主が洛陽に暮らす民を苦しめているから倒そうというやつ か?﹂ ﹁せや、あのアホんだらのせいで連合組まれよるし、月・・・やな かった。董卓はんの信頼ガタ落ちやねん﹂ 29 ﹁うむ。このままでは民にまで戦火が飛ぶ恐れがあってな。董卓様 はそれを凄く恐れておいでだ。だから我々は武に覚えがある者を司 州各地から集めているのだ﹂ 彼女達からの話では素晴らしいことにも聞こえるが、民を守るのに 民を戦わせるという矛盾になりかねない。何気に気になったので俺 は聞いて見ることにした。 ﹁一つ聞きたい。君達は司州各地から兵を集めているといったな?﹂ ﹁せやで﹂ ﹁それは志願制か?それとも徴兵制か?﹂ これが俺が気になったことだ。彼女達の答えがもし徴兵制だったら 即座に追い出す。例外を除いて民を守るのに民を戦わせるやり方を していたら今までの情報が誤りということになる。 ﹁・・・・・・あんた、まさかうち等が無理やり戦わせてると思っ とるんか?﹂ ﹁ということは志願制か?﹂ ﹁当たり前や!!うち等は袁紹みたいに無理やり戦わせたりせえへ ん!!﹂ ﹁董卓様は民の意見を尊重している!!戦いたいものだけを迎え入 れ、戦いたく無いものは誘わない!!﹂ 俺の質問に対して彼女達は声を張り上げて否定する。しかしその否 定が董卓に関する情報が真実だと物語っている。 ﹁失礼した、だが悪気があって質問した訳では無いのだ。分かって くれ﹂ ﹁いや・・・うちもついカッとなってしもうた。すんまへん﹂ 30 ﹁・・・・・・悪かった﹂ 俺と彼女達は気まずそうに謝る。だがこのままではいつまで経って も平行線のままだ。ひとまずは俺たちから歩み寄ることにした。 ﹁このままでは纏まらない。ひとまずは董卓殿への謁見を頼む。協 力するかはその後で構わないか?﹂ ﹁うち等はそれで構わんで﹂ ﹁うむ、貴様等も董卓様を見られたら挙手して参加したくなるはず だ!!﹂ ﹁なら少し待ってくれ。野営地の撤去が完了したらすぐに隊列に加 わろう﹂ そういうと俺達は野営地を直ぐに撤去して、張遼達の隊列に加わっ て移動を開始する。俺たちの次の目的地は帝都洛陽・・・・・・ 31 第5話:針路を洛陽へ︵後書き︶ 海兵隊の誇り,Re 張遼と華雄の案内で洛陽に向かうライル達。その洛陽でライルは彼 真・恋姫無双 女達と出会う。 次回 第6話:董卓 心優しい少女がライルを動かす。 32 第6話:董卓と賈 ︵前書き︶ 洛陽に到着したライルは洛陽城の玉座の間で董卓に出会う。 33 第6話:董卓と賈 董卓軍武将の張遼と華雄の案内で俺達は帝都 洛陽 へと向かう。 後漢・曹魏・西晋・北魏・隋・後唐などにおいて都城が設置されて いる。また長安を都とした王朝でも、洛陽を副都とした王朝が多い。 加えて洛陽から東には堅牢な泗水関と虎牢関、西には俺達が通過し 。まさに難攻不落という言葉が相応し た函谷関、北に邙山、南に伏牛山という自然の要塞に手を加えた 守るに適し、攻めるに困難 い。 河東を出発して5日後、道中に黄巾党の残党に遭遇するハプニング 真 があったが、俺達は無事に洛陽に到着。その間に張遼と華雄からこ の存在を知った。 の国の文化を聞き、名前とは別に本人の真意を表す神聖な名前 名 真名を持つ相手の許可無く口にすると殺されても文句が言えないほ どに大切なものらしい。 洛陽郊外でアレックスに駐留場所の設置と食料調達の指揮を任せる と俺は張遼と華雄に連れられて洛陽城にいた。 ﹁なあライル、洛陽見てどう思った?﹂ ﹁あの轍文が嘘そのものだと改めて実感した。活気に満ち溢れて笑 顔も明るい。いい街だよ﹂ ﹁当然だ!!董卓様が納められる街なのだからな!!﹂ そういうと華雄は胸を張って威張る。しかし街そのものに活気が満 ち溢れており、子供達の笑顔も非常に明るい。そんな街を攻め入ろ うとする袁紹の考えが理解できないししたくも無い。恐らくだが本 34 人が目の前にいると即座に射殺しているだろう。 そう考えていると彼女達が大きな扉の前に立ち止まる。そこには槍 を掲げて直立不動の姿勢で見張をする兵士がいて、恐らくここが玉 座の間だろう。 ﹁張遼将軍、華雄将軍!!お帰りなさいませ!!﹂ ﹁たっだいま∼♪﹂ ﹁うむ、いま帰った。董卓様はこちらか?﹂ ﹁ハッ!!暫くお待ち下さい!!﹂ そういうと衛兵の1人が報告する為に室内に報告しに入る。 ﹁2人共、武器はどうすればいい?流石に携行したままだと不味い だろ?﹂ ﹁う∼ん・・・・・・月っちやったら別に気にせえへんやろうけど・ ・・・・・﹂ ﹁心配するなライル。暫くは衛兵が預かる﹂ ﹁そうか、すまないが預けたぞ﹂ ﹁ハッ!!﹂ 衛兵に俺が携行しているHK416とM45、OKC−3S、CI 神斬狼 を預ける。 RASアーマーベスト、MICH2001ヘルメットなど全ての装 備品に加えて俺専用の武器折畳式鉤爪搭載手甲 武装解除したと同時に先ほど中に入っていった衛兵が戻ってきた。 ﹁お待たせしました、董卓様がお会いになられるそうです﹂ ﹁よっしゃ、ほんなら行こか﹂ ﹁ああ、その前に大丈夫だと思うがくれぐれも粗相のないようにな ?﹂ ﹁分かっている﹂ 35 そういうと俺は彼女達のすぐ後ろを歩く。玉座の間は相当な広さで、 一番奥には1人の大人しそうで、俺と同じ銀髪の少女が鎮座してい て、その隣に気が強そうな緑色の髪に眼鏡を掛けた少女もいる。 仲穎。 恐らくだが鎮座している少女が三國志・・・中国史でも類を見ない 暴虐を行ったとされる董卓 そして隣にいるのが時系列的に考えると、董卓の軍師をしていた賈 超 が付くほどの美少女で、特に董卓 文和だろうが俺は2人の容姿を見て驚愕した。 何しろ2人共、言葉の上に に関しては伝えられた中肉中背の髭を生やした中年男と全然違うし、 何よりも独裁のどの字も似合わない穏やかな雰囲気を醸し出してい る。 心配になったのか董卓殿が俺に声を掛けてきた。 ﹁あ・・・・・・あのぅ・・・どうかなさいましたか?﹂ ﹁えっ・・・・・・あ・・・失礼しました﹂ それに気づくと俺は踵を鳴らして董卓殿に敬礼をする。何をしてい 殿は平然としていた。 るか董卓殿は分からないようだが、敬礼の存在を知っている張遼と 華雄、更に軍師の直感で大体は感じ取った賈 指揮官を務めさせて頂いておりますライル・L・ ﹁張遼将軍、華雄将軍両名からの紹介で馳せ参じ致しました傭兵団 ウルフパック ブレイドであります。この度は謁見に応じて頂き、誠に感謝致しま す﹂ 一応は相国であるので口調は物凄く丁寧でならなければならない。 36 挨拶をすると董卓殿は優しい笑顔で話し掛けてくれた。 仲穎です﹂ ﹁ライルさんですね、お話は伺っております。私はこの洛陽を納め させております董卓 ﹁あんたね、最近噂になってる外国の傭兵団の団長って、私は賈 文和よ。う・・・・・・うる・・・なんとか?﹂ ﹁ウルフパックです。まあこちらは近々、部隊名を改名致しますが・ ・・・・・﹂ えい ﹁そう、だったら早速本題に入るわね。あんた達はなんでこの国に ?﹂ ゆえ ﹁ダメだよ詠ちゃん・・・唐突過ぎてライルさんが困っちゃうよ・・ ・﹂ といえば臥龍孔明 殿の眼を見て悟った。 殿の言い分は最もであり、彼女達からす ﹁ダメよ月、一応は不法入国になってるんだし、それだけはしっか り聞いておかなきゃ﹂ 別に困ってはいない。賈 れば俺達は不法入国者になる。しかし賈 俺を試している 鋭い視線の中に見通す感覚を感知したのだ。賈 孟徳と息 子桓に仕えた奇策を得意とした軍師と伝えられている。 や美周郎公瑾までとはいかないものの、後に魏軍の曹操 子の曹丕 ﹁どうなの?﹂ ﹁・・・・・・理由としては単純だ。俺の国は平和そのもの。俺達 殿は咎めよう の価値を売れる場所を求めてやって来た・・・・・・そう答えてお こう﹂ いつのまにか口調が元に戻っているが、その事を賈 37 とはしない。 ﹁ふ∼ん・・・・・・まあ、そういうことにしておくわ。もう一つ 聞くけど、あんた達の強さは?﹂ ﹁この国に来てからは大規模戦闘を経験しておりませんので判りか ねる。祖国にいた頃は最前戦を受け持っていたがな・・・・・・﹂ ﹁そう、なら力を見せてくれる?﹂ 殿は気にした表情を見せずに話を続ける。 思わず困惑してしまった。何しろいきなり力を見せろというのだか ら当然だ。しかし賈 ﹁霞︵しあ/張遼の真名︶、嵐︵あらし/華雄の真名︶、頼むわ﹂ ﹁よっしゃ!!前からいっぺんライルと闘って見たかったんや!!﹂ ﹁うむ!!腕がなるぞ!!﹂ ﹁へぅ∼∼・・・・・・みんな駄目だよぅ、ライルさんが困っちゃ うよぅ・・・﹂ rig ﹁ええっと・・・・・・俺の意見は・・・﹁﹁﹁ある訳無い︵やん ♪︶︵だろう︶︵でしょ!!︶﹂﹂﹂﹂・・・・・・Oh ht﹂ こいしてライルの意見を聞かずに張遼と華雄との仕合が決まって、 中庭に移動していく・・・・・・・・・。 38 ︵後書き︶ と出会う。 海兵隊の誇り,Re 飛将軍 殿の提案で張遼と華雄と仕合をすることになったライル。初戦 第6話:董卓と賈 賈 真・恋姫無双 の相手は華雄。そこでライルは 次回 ﹁狼VS猛将﹂ 降臨後の初戦が始まる。 39 第7話:狼VS猛将︵前書き︶ 華雄。 ライルの実力を見定める為に仕合をする事になった。最初の相手は 猛将 40 殿の提案で俺の実力を測る為、張遼と華雄との仕合を行なうこ 第7話:狼VS猛将 賈 とになった。会場となる洛陽城の中庭は内部に小さいながらも河が 流れており、その隣には桃の木が植えられており、春の満開には絶 景だろう。 俺達は木が傷つかないように少し離れた場所で対峙している。設け られている長椅子には董卓殿達が座り、張遼は審判を務める。それ だけならまだいいが、どういう訳か知らないが噂を聞きつけた董卓 軍武官や文官、更には侍女達も観戦しに来た。 別に休憩中ということで文句はないが、本音を言うと気を使って欲 しい。 ﹁・・・・・・ハァ・・・﹂ ﹁なんや、どないしたんやライル?﹂ ﹁私との仕合前だというのに随分と余裕だな!!﹂ 俺が溜息を吐くと張遼が尋ねて、華雄が声を挙げて抗議する。 ﹁それより用意はええな?﹂ ﹁私はいいぞ!!﹂ ﹁・・・仕方がない、お手柔らかにな﹂ 金剛爆斧 を構える。準備完了を確認した張遼は右手 そういうと俺は神斬狼の刃を起動させて構え、華雄も自分の得物で ある両手斧 を挙げる。 ﹁準備出来たっちゅうことで用意・・・・・・始め!!﹂ 41 張遼の合図と同時に華雄が先手を仕掛けて来た。 ﹁はぁああああ!!﹂ 華雄は金剛爆斧を右に薙ぎ払って攻撃するが俺はそれを低く構えて 回避。しかし続けて左に掬い上げるように振り上げるが後方に小さ く飛んで回避。 ﹁でやぁ!!﹂ 反撃の隙を与えないつもりか、華雄は力を込めて振り下ろすが、俺 は横に転がる様に回避する。 しかし先ほどまで自分がいた場所を見て驚愕する。何しろ約3mの クレーターが出来上がっているのだ。かなりの力を秘めている。だ が攻撃パターンは正面からの攻撃を想定している様で、その影響で 行動も単純だ。 ﹁貴様!!逃げてばかりではないか!!いい加減打ち合え!﹂ 中々仕掛けて来ない俺を見て苛立つ華雄は挑発の如く連撃で攻撃す るが、その攻撃も全て回避する。 ﹁貴様!!私を愚弄する気か!?﹂ ﹁分からないのか?﹂ 苛立つ俺の発言が癪に触ったようで、華雄は渾身の力を込めて俺を 潰しに掛かって来た。 ﹁舐めるなぁぁ!!﹂ 42 金剛爆斧が俺を捉えようとした瞬間、俺は身体を横に逸らして紙一 重で避け、回避に成功した瞬間に神斬狼に金剛爆斧の柄を挟み込ん だ。 ﹁くっ!?﹂ ﹁力と勇猛さは褒めるが・・・・・・・・・攻撃そのものが単純だ !!﹂ すると俺は左足に力を込めて華雄の右横腹から彼女を蹴り飛ばした。 地面に倒れた華雄に素早く駆け寄り、立ち上がろうとしていた華雄 が手にしている金剛爆斧を踏み押さえ、神斬狼の切先を突き付けた。 ﹁そ・・・・・・それまでや!!﹂ 張遼の合図で仕合終了が告げられ、周囲から歓声が挙がる。神斬狼 の刃を収容すると倒れたままの華雄に手を差し伸べた。 ﹁立てるか?﹂ ﹁あっ・・・ああ・・・・・・﹂ 華雄が手を掴むと勢いをつけて引っ張って彼女を立ち上がらせる。 その際に女性特有の甘い香りが俺の鼻をくすぐる。 ﹁ライル、なぜあまり攻撃を仕掛けて来なかった?﹂ ﹁あれも作戦だ。相手に仕掛けるだけ仕掛けさせ、一瞬の隙を突い て相手を倒す。君は面白い位に引っかかってくれたな華雄﹂ ﹁うっ・・・・・・﹂ バツが悪そうに華雄が沈黙する。彼女の実力は決して低くない。む 43 しろ高いほうだが、武人として致命的となる精神面の低さと単調な 攻撃が能力を相殺している。 ﹁董卓様、負けてすみません・・・﹂ ﹁嵐、怪我が無くてよかったです﹂ ﹁あんたも中々じゃないライル﹂ ﹁ありがとう、それより気になる事があるんだが・・・・・・﹂ そういうと俺は右に視線を送る。 ﹁︵ジィー︶﹂ ライルの隣にいたのは赤髪に頭頂部から毛が二本、虫の触角のよう になっている不思議な雰囲気を存分に醸し出している赤い瞳の少女 が見上げていた。 ﹁えっと・・・・・・董卓殿、この子は?﹂ ﹁恋、何時の間に帰って来たの?﹂ ﹁月、詠・・・ただいま﹂ ウルフパック 指揮 殿を真名で呼ぶということは関係者であろう。その少 ﹁お帰りなさい、恋さん﹂ 董卓殿と賈 女が再び俺に歩みよって来た。 ﹁︵ジィー︶﹂ ﹁えっと・・・自己紹介するよ。俺は傭兵団 官をしているライル・L・ブレイドだ。君は?﹂ 奉先﹂ 奉先・・・・・・えぇええ!?﹂ ﹁・・・恋は呂布 ﹁そうか、呂布 44 として名高い 少女の名前を聞いて思わず声を挙げて驚愕する。何しろ目の前にい 飛将軍 奉先というのだから当然だ。 る一見大人しそうな少女が三國志の中でも 最強の武を誇ったとされる呂布 ﹁えっと・・・呂布。聞いてみたいんだが・・・・・・﹂ ﹁・・・恋でいい﹂ ﹁えっ?﹂ ﹁恋の真名・・・預ける﹂ ﹁いやいやいやいや・・・出会った途端に真名を預けたら不味いだ ろ?﹂ ﹁・・・恋﹂ つぶらな瞳で俺の顔を見上げてくる。無垢な表情をされたら断ろう にも断れない。 ﹁はぁ・・・わかったよ恋。俺の国には真名は無いから気兼ね無く ライルと読んでくれ﹂ ﹁・・・うん﹂ 飛龍偃月刀 を肩に背 ﹁なあなあ、仲ええところ悪いんやけどな、早よう仕合しようなぁ﹂ 振り向くと張遼が自分の得物である偃月刀 負って待っていた。どうやら早く闘いたいようで、身体が疼いてい る。 ﹁恋、ちょっと失礼するよ﹂ ﹁・・・︵コクリ︶﹂ そういうと俺も神斬狼を構える。 ﹁うちは嵐みたいに単調やないで!!舐めとったら痛い目に遭うで 45 !!﹂ ﹁・・・みたいだな﹂ こんどは華雄が審判を務めるようだ。華雄は片手を高く挙げて合図 を出す。 ﹁用意はいいな?・・・・・・・・・始め!!﹂ 合図と同時に互いが距離を詰めてぶつかり合う。狼と神槍との仕合 がいま始まった・・・・・・・・・。 46 第7話:狼VS猛将︵後書き︶ 華雄との仕合で勝ち星を挙げたライルはすぐに張遼との仕合に挑む。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 神槍との異名を持つ素早い攻撃にライルは悪戦苦闘する。 次回 第8話:神槍 閃光の槍使いが舞い踊る。 47 第8話:神槍︵前書き︶ 遂に始まったライルと張遼の仕合。神槍の異名を持つ張遼に悪戦苦 闘する。 48 第8話:神槍 華雄の合図で始まった俺と張遼による仕合。華雄の時と同じ戦術は 使えないと判断して開始と同時に仕掛ける。だが張遼も得意の機動 戦で俺に駆け寄り、間もなく二人の刃が鳴り響く。 ﹁ハッ!!﹂ ﹁でりゃあ!!﹂ 俺が舞い踊るように斬りかかると張遼は防いだ瞬間に攻撃。俺はそ れらを回避したら攻撃。その繰り返しだ。 張遼の武はまさに神槍で、力そのものは華雄と比べても劣るが素早 さの中に冷静な判断力や決断力。しかも的確に俺の攻撃に反応して 防ぎ、素早く反撃する。どれをとっても幾多もの実戦を経験しなけ れば身に付かない。 久しぶりに自分と渡り合える俺の武術に張遼は喜んでいる。 ﹁やっぱ強いやん!!うちの動きに着いて来れたん恋だけやで!!﹂ 文遠の槍捌き!!とくとその目に拝ませた ﹁褒めてありがとう・・・・・・な!!﹂ ﹁神槍として名高い張 るわ!!﹂ 張遼は先程の動きが遅く見える程にいきなり連撃の素早さを高め、 閃光の如く素早い攻撃に俺は対象するだけで精一杯だ。だが一瞬で あるが張遼の姿が消えた。よく見ると飛龍偃月刀を回転させながら 彼女は飛び上がって斬りかかろうとしていた。 ﹁でりゃあああああ!!!!﹂ 49 ﹁ちぃ!?﹂ 張遼の攻撃に俺は神斬狼を交差させて受け止めるが、完全には耐え 切れず少し後方に飛ばされてしまう。張遼は着地したと同時に矛先 を俺に向ける。 ﹁どや!!飛龍偃月刀の一撃!!﹂ さすがは神槍の張遼。俺の予想を超えた実力を有した武将だ。恐ら く今の戦術では勝てないだろう。何しろ相手との速度差がありすぎ る。俺が彼女に勝つには機動力を奪う必要があるが、手段そのもの はあることはあるが賭けになる。 俺は神斬狼の刃を収容すると手甲に変えて構える。 ﹁・・・なんのつもりや?﹂ ﹁先に言っておくが馬鹿にしてる訳じゃないぞ。こいつは刃を出し た状態と閉まった状態で戦い方を変えられる﹂ ﹁まあええわ・・・・・・後で負けた言い訳にせんといてやぁ!!﹂ そう叫ぶと一気に勝負に出て来た。飛龍偃月刀を水平にして刺突を 仕掛けて、俺を捉えようとした瞬間に身体を低くして少し身体を逸 らしながら彼女の足下を払う。 予想をしていなかった張遼はそのまま地面に倒れこみ、彼女から飛 龍偃月刀を奪い取ると切先を彼女に向ける。 ﹁そ・・・それまで!!﹂ 一瞬だけ呆気に取られていた審判の華雄だったがすぐに思考を元に 戻して仕合終了を言い渡す。その瞬間に周囲から歓声が飛び交う。 倒れたままの張遼に手を差し伸べる。 50 ﹁大丈夫か?﹂ ﹁いたたた・・・・・・やっぱライルは強いな♪うちを倒したん恋 だけやねんで﹂ そういうと俺も恋がいる方角をみるが、どういう訳か恋は自分の得 物である方天画戟を肩に担いでこちらを見ていた。 ﹁え・・・・・・えっと・・・恋?﹂ ﹁・・・なに?﹂ ﹁何で方天画戟を?﹂ ﹁・・・霞と嵐ばかりずるい・・・・・・恋もライルと闘いたい﹂ 奉先なら納得な理由だ。 どうやら先程の仕合で己の闘争心に火がついたのだろう。天下の呂 布 ﹁・・・・・・ダメ?﹂ 恋は純粋な目で俺を見上げてくる。本当に頼むからそんな目で見な いで欲しい。断れなくなる。だが流石に名高い武将2人との仕合後 との仕合はきつい。 ﹁はぁ・・・・・・いいよ。だけど流石に疲れたから明日にしよう。 だから今日は我慢してね?﹂ ﹁・・・︵コクリ︶﹂ 納得してくれた恋はその後、彼女の軍師である陳宮と合流するが、 真名を読んだ俺を見つけて飛び蹴りを仕掛けて来たというのは別の 話し・・・・・・。 51 第8話:神槍︵後書き︶ 張遼との仕合に勝利したライルは天下無双こと呂布と仕合をする。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 漢最強の武を誇る彼女の前に苦戦する。 次回 飛将軍 真紅の呂布が舞い踊る。 52 第9話:飛将軍︵前書き︶ 仕合の最終戦。ライルVS恋との仕合が幕を下ろす。 53 第9話:飛将軍 華雄と張遼との仕合に勝利した俺は出会った呂布こと恋との仕合を 応援に行く と言うのだが、面白半分。特にアレックスの場合 する事になった。駐屯地に戻ってそろことをアレックス達に話した ら は絶対に個人的に尊敬している恋と会いたいがためだろう。そして 恋との仕合が行なわれる次の日。 ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁ライル、どうした?﹂ もはや言葉が出ない。というよりも完全に呆れてしまう。何しろ俺 が今いる場所から右を見れば・・・・・・。 ﹁恋どのぉぉ!!そんな優男なんてやっちゃえなのですぞ!!﹂ ﹁あぅぁ・・・ら・・・ライルさんも恋さんも怪我の無いように・・ ・﹂ ﹁なあなあ嵐、どっちが勝つと思う?﹂ ﹁ライルの強さは明らかに私達を超えているが、相手は呂布だ。流 石に敵わないだろう﹂ 董卓軍の面子と将兵、侍女が観戦に来ている。ここまでは昨日と同 じだ。だが次に左を見ると・・・ ﹁中佐!!頑張って下さい!!﹂ ﹁中佐の実力を呂布ちゃんに見せてやって下さい!!﹂ ウルフパックの面子が観戦している。流石に部隊を洛陽城にぞろぞ 54 殿が使いを出して来たのだ。 ろと入城させる訳にはいかないので、ライル達の駐屯地で仕合を執 り行うことになったと賈 ﹁アレックス・・・・・・﹂ ﹁まあ、いいんじゃないか?親睦を深めるってことでな。しっかし・ ・・・・・目の前にいる女の子があの呂布とはな・・・﹂ ﹁それを言ったら董卓殿もだろ?﹂ ﹁三國志の知識が自信なくなってくるな・・・・・・﹂ 確かにここまでイメージが覆されると、幾ら三國志に精通していて も自信がなくなる。しかし当の恋はこちらを不思議そうな表情でこ ちらを伺う。 ﹁ライルに恋、そろそろ始めるけど準備はいい?﹂ ﹁︵コクリ︶﹂ 奉先が愛用したことでも有 殿に返事する。恋も担いでいた方天画戟を構 ﹁・・・・・・いつでもいいですよ﹂ ほぼ諦めた表情で賈 える。方天画戟は三國志演技でも呂布 名であり、かつて黄巾党の親衛隊3万を単騎で壊滅させた際にも使 用していたとされている。 俺も神斬狼の刃を出して臨戦態勢を執る。方天画戟と神斬狼の攻撃 範囲には決定的に方天画戟が有利。一応は神斬狼は乱戦に有効だが 相手は呂布奉先。そう簡単に勝てるとは思えない。 殿の号令と同時に先手必勝として俺が仕掛けるが、数歩手前で ﹁準備はいいわね・・・・・・・・・それじゃ、始め!!﹂ 賈 恋がそれを阻止するように戟を振るうが素早く反応して直ぐに後方 に小さく飛んで回避。着地したら勢いよく斬りかかるが、恋も回転 55 しながら右の神斬狼を弾き、そのまま回転しながら俺を攻撃するが、 俺もすぐに左の神斬狼で受け止める。 予想した通り、華雄と張遼と比べても凄い強さを誇っている。恋に しか持たない野生の勘と華雄の力、張遼の素早さが一つになってい る感じだ。それを俺は何とか追いついている状況だ。 しかし一番驚いているのは董卓軍の方だ。最速を誇る張遼でも恋に は敵わなかったのに、俺は対応できている。 ﹁・・・・・・すごいわね・・・﹂ ﹁恋どのぉぉ!!やっちゃえなのです!!﹂ ﹁へぅぅぅ∼・・・け・・・怪我しないかな?﹂ ﹁・・・ライルって何者なんや?﹂ 殿と武将の2人は俺の実力に改めて驚き、董卓殿は怪我 ﹁あいつが強いことは知っているが、まさかこれ程とは・・・﹂ 軍師の賈 をしないかどうか心配になり、陳宮殿こと音々音︵ねねね/陳宮の 真名。通称ネネ︶は愛する恋にのみ応援する。 一方で自分達の上官である俺をウルフパックの海兵隊員は俺に応援 する。 ﹁ハァッ!!﹂ ﹁!!﹂ 俺の神斬狼が彼女を捉えたと思ったが、恋はすんでのところで飛び 上がり、凄まじい勢いで戟を振り下ろす。それを何とか防いだが、 着地と同時に少しだけ態勢を崩した俺に戟を振るう。 流石に避けきれないと判断した俺は後方に飛び上がりつつ神斬狼を 重ねることで攻撃の威力を相殺したが、それでも吹き飛ばされる。 ﹁恋どのぉぉ!!好機なのです!!﹂ 56 ネネの言う通り、誰もが恋の勝利を確信した。だが俺は神斬狼の刃 を収容しながら一回転して着地。同時に恋の懐に飛び込み方天画戟 の柄を掴んで右肘で彼女の顔に一撃。 そのまま無意識に引き戻す彼女の力を逆に利用して押し倒し、再び 起動させた神斬を彼女の喉元に突きつける。 ﹁そ・・・・・・それまで!!勝者はライル!!﹂ その瞬間、海兵隊員を中心にギャラリーから大歓声が浴びせられる。 あの天下無双と呼ばれた呂布に勝利したのだ。 ﹁恋、大丈夫か?﹂ ﹁・・・・・・うん、大丈夫﹂ そう言うと恋は表情を変えずに答える。無表情というのは武人にと って必要なのかも知れないが、恋の場合はある種の病気だ。 ﹁よかった﹂ そう言いながら俺は思わず恋の頭を撫でていた。恋はまるで小動物 のように気持ち良さそうに顔を綻ばさせる。もちろんその直後にネ ネから飛び蹴りが飛んで来たが。 殿から真名を預けられた。 その後、恋に勝利した俺は董卓軍に客将として雇われることになり、 張遼と華雄、董卓殿、賈 董卓軍に協力する狼の群れ。後の戦で存在を有名にすることになる・ ・・・・・。 57 第9話:飛将軍︵後書き︶ 恋との仕合に勝利して、はれて董卓軍の客将になったライル。すぐ 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re に洛陽で有名になり、董卓軍の一員として民からも慕われる。 次回 第10話:警邏の様子 ひと時の平和に心を安らがせる。 ※次回から2話連続でウルフパックの詳細と使用する銃火器のリス トを公開致します。 58 第10話:ウルフパックの詳細︵改正︶︵前書き︶ 本編とは関わりがありません。 59 第10話:ウルフパックの詳細︵改正︶ ウルフパック 正式名:米海兵隊第3海兵遠征軍第31海兵遠征隊指揮下第0独立 機動大隊 総人数:427名 大隊長:ライル・L・ブレイド中佐 副大隊長:アレックス・ヴォード少佐 ライルが創設した独立機動大隊。試験的運用ということで部隊番号 が0になっており、前世で表向きでは存在しないことになっていた。 60名︵一個分隊6名︶ 部隊の特性で海兵隊の中で最も速い迅速性を有しており、最前戦を 受け持つことも多々ある。 内訳 歩兵中隊:180名 ソードブレイカー 60名 60名 24名 ハルバート エストック 機械化歩兵部隊 軽歩兵部隊 空中強襲歩兵部隊 機甲中隊:66名 ウォーランス ウォーピック 戦車部隊 歩兵戦闘車部隊 ウォーアックス 8名 24名 18名 自走榴弾砲部隊 グレイブ 飛行中隊:34名 対地ヘリ部隊 ファルシオン 8名 輸送ヘリ部隊 60 汎用ヘリ部隊 スコーピオン 後方支援中隊:131名 補給兼整備部隊36名 基地守備隊42名 輸送部隊21名 工兵部隊:32名 本部直属特殊作戦群:16名 実行部隊12名 支援航空チーム4名 :18名 基本編成はこうなるが、全員が高い戦闘力を有しているので必要に 応じて一時的編入や転属がある。 また、総戦力が歩兵として機能する場合は3個中隊139名ずつに 分けられ、10名は軽迫撃砲部隊として組み込まれる。 61 第10話:ウルフパックの詳細︵改正︶︵後書き︶ 次回はウルフパックで採用されている銃火器リストを投稿します。 62 第11話:ウルフパック採用火器︵前書き︶ 巻数二桁突入でウルフパックの火器を簡単に紹介します。 63 第11話:ウルフパック採用火器 ハンドガン M45A1 ウルフパックにて採用されている標準サイドアームでM1911A 1の海兵隊仕様。 MARSOC用新型CQBピストルとして採用されており、コルト 社最新のタクティカル.45として名高い。 コルトレールガン という 部隊の標準サイドアームとして携行されており、高い性能とフレー ムに設けられたレールシステムから 愛称で知られている。 サブマシンガン MP7A1 4.6×30mm弾を使用するサブマシンガン。高い威力と命中精 度、重量1.2kgと軽量で、警邏任務や偵察のメインアーム、狙 撃兵のサイドアーム、機甲中隊や航空中隊の自衛用火器として運用 される。 アサルトカービン HK416 ウルフパックで最も多く運用されているアサルトカービン。使用す る弾薬は5.56×45mmNATO弾。当初は従来のM4A1が 採用される筈だったが、現代より自然の猛威が脅威になり兼ねない ということで採用された。 操作性向上としてチャージングハンドルが交換されボルトフォワー 64 ドの大型化、アンビマガジンリリーススイッチへの交換という操作 性向上と左利きの兵士が運用し易いようになっている。 HK417 HK416の中口径仕様。7.62×51mmNATO弾を使用す るので威力が高いが、弾数は20発に抑えられている。 HK416に施された改良も同様にされている。 DMR マークスマンライフル HK417 正式名称はG28。HK417のマークスマンライフル仕様で、フ ルオート機能が取り除かれている代わりにバレルを交換することで HK417 DMRの固定ストックモデル。全体的な軽量化で市街 DMRⅡ スナイパーライフル並の命中精度を誇る。 HK417 地における対応力が高くなっているが、基本性能は変わらない。 BASS スナイパーライフル M40A5 スナイパーライフルの傑作であるレミントンM40シリーズの最新 モデル。サプレッサーのアタッチメントやレイルシステムの搭載、 WPSASS マガジン方式への変更など、より実践向きに改良されている。 SR−25M M16をベースに中口径の7.62×51mmNATO弾を使用す るセミオートマチックスナイパーライフル。市街地に対応できるよ うにストックがスライド式に変更され、フラッシュハイダーもSP Rモデルに変更されている。もちろん左利きにも対応している。 65 SASS Sniper また、WPSASSとは Auto M107A1 Wolf Semi− の略である。 Pack's System バレットM82の改良モデル。本体の素材を変更することで軽量化 を図り、特徴的だったハイダーも変更してサプレッサーが装着可能 Mod1 になり、長距離狙撃での隠密性が向上している。 軽機関銃 Mk46 ウルフパックの主力軽機関銃。M249をベースに特殊作戦や全体 的な軽量化とレイルシステムの標準化でより実戦的な仕様になって いる。 Mk48 Mod1の7.62mm弾仕様。弾数は減るが威力が不 Mod0 アレックスが最も好んで運用している。 Mk46 足していたMk46と比べても高い威力と連射速度を有している。 Mk46が一般部隊向けに対してこちらは主に特殊作戦群で使用さ れている。 重機関銃 M2−QCB 12.7×99mmを連射する大口径重機関銃。開発されて70年 以上経過しているが高い火力や信頼性は当時から高い水準を誇る。 ウルフパックでも車両搭載用や拠点防御、歩兵部隊支援で多用され ている。 66 ガトリングガン M134D 電動式の6銃身式7.62mmガトリングガン。通称 無痛ガン 。 毎分3000発を誇るガトリングガンで後漢末期において最も有効 な兵器とされる。 車載や航空機にM2やMk19と併合して使用されている。 ショットガン MKA1919A1 トルコで開発された12ゲージセミオートマチックショットガン。 扱い方や外観がまさにM16のショットガン仕様ということで採用 MASS され、ドアブリーチングや室内制圧で威力を発揮する。 M26 HK416とHK417の採用に合わせて採用されたアンダーマウ Mastet Keyと比べてマガジン方式やグリップの ント搭載式12ゲージショットガン。 KAC 搭載で操作性が高くなっており、任務内容によれば単体でも使用さ れる。 グレネードランチャー M320A1 HK416とHK417の採用に合わせて採用された40mmグレ ネードランチャー。M203よりも高い操作性とバレルを横にスラ イドさせることで使用出来る弾頭も増加した。 専用アタッチメントで単体としても使用可能。 67 Mk19 Mod3 車両やヘリの搭載用として開発された40×53mmグレネードマ シンガン。操作方法はM2重機関銃と同様で、搭載用としてだけで はなく拠点防御や支援などでも効果を発揮する。 SMAW−NE ロケットランチャー Mk153 海兵隊で採用されている81mm肩撃ち多目的強襲兵器。海兵隊の 特性である敵前上陸の影響であまり高い火力支援が取れない海兵隊 で頼りになる兵器とされる。 ミサイルランチャー FGM−148B 多用途タンデム成型炸薬弾を搭載したミサイルランチャーで名称は ジャベリン。発射の際に発生するバックブラストを抑えられており、 従来のミサイルランチャーでは不可能だった室内からの射撃が可能 になっている。 ウルフパックでは主に攻城兵器や城壁、 城門破壊で使用される。性能は高いが発射機が4つしかないという のが欠点。 グレネード M67 破片手榴弾。起爆すると最大で15m圏内にいる敵に被害を与える ことが可能になる。ウルフパックでは各兵士に最低2つは装備させ ている。 68 Mk3A2 攻勢衝撃手榴弾。有効範囲は2mと短いが、味方の誤爆を防ぐと同 ナインバンカー 。殺傷能力はな 時に室内制圧や閉鎖空間での使用で威力が発揮される。 M84 非致死閃光音響手榴弾で通称 いが凄まじい閃光と大音量を瞬間的に与えるので、人質救出や室内 突入の第一撃で多用される。 M18 非致死発煙手榴弾。文字通り発煙を起こす手榴弾で航空支援の際の マーカーや撤退の際の目隠しで使用される。 ナイフ OKC−3S 海兵隊の標準装備の一つ。本来はバヨネットナイフだがカスタマイ ズされたHK416の採用でコンバットナイフとして運用されてい る。 69 第11話:ウルフパック採用火器︵後書き︶ 次回作から本編に復帰します。 70 第12話:食事︵前書き︶ 董卓軍に雇われたライル。警邏の後に食事をする。 71 第12話:食事 俺達が董卓軍に雇われて3ヶ月が経過。季節的にはもうすぐで冬に 入るだろう。既に洛陽に住む民達は冬支度を開始しており、食堂で は冬に合わせて辛い匂いがくすぐる。 董卓軍に参加した俺達の待遇であるが、基本的には俺が指揮する部 隊はウルフパックのみで、他部隊の指揮はその部隊の指揮官が負傷 若しくは戦死した場合のみ。 見返りとして洛陽の警邏能力向上に知識を流用することになった。 更に前々から何気に問題になっていた新しい部隊名への改名。流石 にこの時代で横文字は読みにくいらしい。だが新しい部隊名など、 海兵隊 として運用することになった。 そう簡単に出てくるものではない。そこで新しい部隊名が出てくる までの間、 部隊名を新しくした俺はその日の朝議で公表して、終了すると午前 の警邏に赴いた。 ﹁それじゃ、午後の警邏を任せたからな﹂ ﹁ハッ‼﹂ 待ち合わせ場所で交代に来た董卓軍警邏部隊に引き継ぎを済ませる と俺は城に戻るが、腹が小さく空腹だと告げる。幸いにも俺がいる 場所は繁華街で、至る店から旨そうな匂いが立ち込めている。 ﹁時間もまだあるし、腹ごしらえを先にしていくか・・・﹂ 考えに至ると繁華街を歩き出す。 洛陽では既に俺達の存在は有名であり、俺の今の格好はいつものデ 72 ジタル迷彩服に野戦帽、防弾能力がない黒色のタクティカルベスト。 警邏任務向けに採用しているMP7A1小口径サブマシンガンと俺 専用にカスタマイズしたMk45A1Aを装備しているからか、周 囲の民から珍しい目で見られている。更に女性からの視線が多く、 挨拶代わりに微笑むと顔を真っ赤にして俯いてしまう。 寒くなって来ているから風邪でも引いたのだろうと判断した俺は気 にせずに歩く。 手頃な店を探していると近くの店で見覚えのある人を見つけた。 真紅の鬼神 で恐れられている呂布こと 白黒の別れた服に触角を思わせる2本の髪が立った赤い髪。 董卓軍第1師団師団長で 恋だ。どうやら恋も食事をしているようだ。俺も店の入り口をくぐ り恋に話しかける。 ﹁やあ恋﹂ ﹁モキュモキュ・・・・・・ライル﹂ 奇妙な音を出して、リスなどの小動物みたいに食べ物を溜め込み、 つぶらな瞳で反則とも思える位に可愛らしく食べる恋は、食べ物を 飲み込むと俺に気付く。 ﹁珍しいな、恋が1人で食事なんて・・・・・・ねねはどうした?﹂ ﹁・・・ねねは家でお仕事・・・だから1人でご飯、食べに来た﹂ そういえば城から帰る際にねねの悲鳴に近い声がした気がしていた が、恐らくは大量の書類整理で悲鳴を上げているのだろう。 ひとまずは恋と同じ席に座ると店員がお茶が入った湯飲みを持って 来た。 73 ﹁いらっしゃいませライル将軍。ご注文は?﹂ ﹁炸醤麺と白米、それから餃子を二人前頼む﹂ ﹁畏まりました﹂ 店員は一礼をすると厨房に注文を伝えに行く。視線を恋に戻すと自 然に彼女が平らげた料理の皿が眼に飛び込んでくる。 ﹁・・・相変わらずよく食べるな・・・・・・どれだけ食べたんだ ?﹂ ﹁・・・まだお腹一杯じゃない﹂ しかしどう考えても20人前以上は平らげている。 見ていてこっちが満腹になりそうだが、1つ気になった。 いつもはネネと一緒に食べて会計はネネ。そして財布はネネがいつ も持っている。 だが今ネネは城で仕事をしている。何故か知らないが嫌な予感がし たので、聞いてみる事にした。 ﹁・・・・・・えっと・・・恋?﹂ ﹁モキュモキュ・・・・・・?﹂ ﹁野暮な質問だが・・・・・・財布は持って来てるよな?﹂ そう言うと恋は自分のポケットを調べ、一通り調べると何時もの表 情で予想通りの言葉を言った。 ﹁・・・忘れた﹂ その言葉で思いっきり転けた。俺は頭を摩りながら呆れる。 74 ﹁わ・・・・・・忘れたって・・・﹂ ﹁︵ジィー︶﹂ ﹁え・・・・・・えっと・・・れ・・・恋さん?﹂ ﹁︵ジィー︶﹂ 何時もの犯罪級にすごく可愛い無垢な表情でこちらを見る恋。あか らさまに何かを訴え掛けているが、それが何なのかすぐに理解した。 ﹁︵ジィー︶﹂ ﹁・・・・・・・・・ハァ・・・・・・分かったよ・・・俺の奢り だ﹂ ﹁︵コクリコクリ︶﹂ 嬉しそうな表情をすると再び食べ始める。こうなると確実に満腹に なるまで食べるだろう。 幸いにもジーンから貰っていた資金でなんとかなるが、店側にとっ ては災難だろう。何しろ店の食材がなくなるのだから店の運営がで きなくなる。 暫くすると俺が注文した炸醤麺と白米、餃子2人前をお盆に乗せて 持ってきた。 ﹁お待たせしました﹂ ﹁ありがとう﹂ そういうと店員は新たな客を接客するために小走りをする。 箸を手にして食べようとした瞬間、いきなり視線を感じる。そして 視線の先には・・・・・・。 ﹁︵ジィー︶﹂ 75 目線の先にあるのは出来たての餃子。試しに左右に振ってみると面 白いように付いて行く。 ﹁食べるか?﹂ ﹁︵コクリコクリ‼︶﹂ 首か取れるのではないかと思う位に首を縦に振る。それを小皿に分 けようとした瞬間、箸から餃子が消えた。恋が取り分ける前に食ら いついたのだ。 ﹁モキュモキュ・・・﹂ ﹁・・・旨いか?﹂ ﹁モキュモキュ・・・・・・ゴクン・・・・・・・・・美味しい﹂ 本音をいったら本気で可愛すぎる。というよりも本当にこの子は別 次元の雰囲気を醸し出している。餃子を一口放り込むと恋が焼売を 箸に刺して俺に差し出して来た。 ﹁・・・・・・・・・俺に食べさせてくれるのか?﹂ ﹁・・・恋、ライルの餃子たべた。だからライルも恋の焼売、食べ る﹂ そういいながら恋は少し顔を赤くしながら食べさせようとする。そ の表情も破壊力抜群だが、仕方がないので俺は恋の差し出した焼売 を頬張る。 ﹁・・・美味しい?﹂ ﹁あ・・・ああ・・・・・・﹂ 76 が飛ん その後も追加した料理を恋が食べさせようとしたねはいうまでもな ちんきゅうキック く、嬉しかったがそれ以上に恥ずかしかった。 更に一緒に城に戻るとネネによる必殺 で来て俺がそれを避けるとネネが思いっきり壁に激突したのは別の 話・・・・・・・・・。 77 第12話:食事︵後書き︶ 天の御遣い と が束ねる劉備義勇軍にも袁紹からの轍文は届いていた。 ライル達が董卓軍に参加して暫く、平原にいる 仁徳の王 海兵隊の誇り,Re しかし御遣いと臥龍と鳳雛は始めから仕組まれたことを悟るが、決 真・恋姫無双 断に迫られる。 次回 ﹁天の御遣いの決断﹂ 天の御遣いが動き出す。 78 第13話:天の御遣いの決断︵前書き︶ 袁紹が各勢力に流した董卓討伐の轍文。それは劉備義勇軍にも届い ていた。 79 第13話:天の御遣いの決断 ライル達が董卓軍に参加して暫くしたある日の幽州にある桃花村。 こと北郷 一 ここには小さいながらも桃花城という城がある。そこに駐留してい 天の御遣い 玄徳が率いる劉備義勇軍が駐留してい で名を挙げた こと劉備 黄巾の乱 仁徳の王 るのは先の 刀と た。 ﹁・・・・・・これが袁紹から届いた轍文の内容なんだけど・・・﹂ 聖フランチェスカ学院 の制服を着 そう言いながら河北を納める袁紹からの届いた轍文を皆に回す白い 一刀。 ポリエステルで出来た名門校 た青年、北郷 ﹁桃香はこの呼びかけにどうするべきだと考えてる?﹂ ﹁当然参戦だよ‼董卓さんって長安と洛陽の人に重税を課してるっ 雲長が鉄槌を て噂を聞くし、そんな人を天子様の側に置いておくなんて許せない よ‼﹂ ﹁姉上の仰る通りです‼力無き民に代わってこの関 下してみせます‼﹂ ﹁悪い奴は鈴々がぶっ飛ばしてやるのだ‼﹂ 翼徳の3人は 玄徳、サイドテール 雲長、赤髪のオカッパ頭の張飛 劉備軍の桃色の髪をしたのほほんとした劉備 の黒髪をした関羽 轍文の内容を読み、即座に参戦の意志をみせる。 だがそれとは対照的に首を傾げる素振りを見せる、もう一方の三人 がいた。 80 ﹁そっちの三人はどう思う?﹂ ﹁ふむ。⋮⋮桃香様や愛紗達が言うことも尤もだとは思うのですが・ ・・・・・﹂ ﹁なんだ。星は反対とでも言うのか?﹂ ﹁そうは言わん。ただ・・・・・・﹂ ﹁この手紙の内容が気になっているんですね?﹂ ﹁軍師殿も同じか・・・・・・﹂ ﹁はい。敵対勢力について書かれているとは言え、あまりにも一方 的過ぎるかと・・・﹂ その言葉に張飛が質問する。 ﹁一方的?・・・どういうことなのだお兄ちゃん?﹂ ﹁うん、一言でいえば董卓は悪人だから倒す。そういうことになる けどこれを出したのはあの袁紹だ。多分、嫉妬に駆られた本人若し くはその一派が絡んでると俺は思うんだ﹂ 自分の考えを伝える。袁紹の人格は既に入手しているからの判断と 自分の知識だ。袁家という理由だけで高飛車かつ傲慢、自分の風評 しか考えない一昔前の偽英雄。 黄巾の乱でも一定の活躍はしたがそれは兵力に頼り切ったもの。戦 十常侍 筆頭の張譲とも繋がりがあったという不確定の 術もクソもない人海戦術だ。しかも記憶では袁紹と悪政の元凶であ った宦官 噂もある。 ﹁う∼ん・・・そんなに複雑に考えなくちゃならないことなのかな ぁ?董卓さんに苦しめられている人たちが居るってことだけ分かれ ば充分だと思うんだけど・・・﹂ ﹁本当にそう?﹂ ﹁え、どういうことご主人様?﹂ 81 ﹁確かにこの轍文が本当のことだったら、今すぐにでも俺たちは向 かうべきだけど・・・﹂ ﹁だけど・・・・・・?﹂ ﹁その内容がもし嘘だったとしたら。民を苦しめるのは俺たち連合 軍側ってことになるんだよ?﹂ 劉備は一刀からの言葉で気付く。確かに董卓が圧政を敷いている情 報はそこにはない。あるのはあまりにも一方的な轍文の内容だけだ。 人と人が手を取り合う というプロパガンダが崩れ もしこの情報が偽りだったら連合に参加した勢力が悪になる。 劉備が掲げる る。 ﹁桃香は最初からこの書簡を信じていたけど、それでいいの?俺は もっと桃香に考えるということをしてもらいたい。人を信じるって いうのが桃香のいいところだけど、誤った判断だと俺達だけじゃな く民にも影響が出る﹂ ﹁・・・・・・うん﹂ 少し落ち込む劉備に一刀は優しく問いかける。 ﹁じゃあもう一回桃香に訊こうか、ただし・・・﹂ ﹁?﹂ ﹁今の俺たちは弱小ながらも少しは名前の売れている勢力である事。 漢王朝という名の大木が無くなった今、未来の事も考えながら行動 しないとすぐに潰されちゃうってことを考慮したうえで答えてね﹂ ﹁う∼∼∼∼ん・・・・・・﹂ 一刀の言葉に真剣に考える劉備。そして暫く考えると答えを導き出 した。 82 ﹁それでもやっぱり参戦しようよ。だって少しでも可能性があるん だったら・・・・・・それにもし違うんだったら皆でなんとか董卓 さんを助けなきゃ‼﹂ そんな劉備の答えに一刀はため息をつくが顔は笑っていた 孔明が言いにくそう ﹁ははっ・・・・・・桃香らしい答えだ。皆もそれで大丈夫だね?﹂ ﹁でもですね・・・・・・﹂ そこにベレー帽を被った金髪の少女、諸葛亮 に話に入ってくる。 ﹁どうしたのだ?﹂ ﹁はい、実は最近董卓軍に新しい部隊が加わったらしいんです﹂ 士元が質問に答 子龍が尋ねるが、諸葛亮の代わりに ﹁新しい部隊?どういう部隊だ軍師殿?﹂ 白い服に水色の髪をした趙雲 同じく水色の髪に魔女の帽子を被った少女、鳳統 える。 ﹁噂では遥か遠くの羅馬から更に北に進んだ異国の傭兵隊みたいな んですが、かなりの強さを持ってるらしいです﹂ ﹁ああ、その噂なら私も流れて来た商人から聞いたことがある。な んでも全員が見たこともない緑色の斑模様の服に砂色の奇妙な鎧、 更には黒い筒のようなものを身につけているらしい﹂ 鳳統に続いて関羽が口を開く。しかし1人だけ違う反応を示す。一 刀だ。 遥か未来から来た彼はその傭兵隊の特徴に覚えがある。斑模様の服 は迷彩服で砂色の鎧はボディアーマー、更に黒い筒は銃火器。 83 自分も元の世界で何度か見たことがある。海兵隊だ。しかしこの時 代に海兵隊が存在する訳がないだろう。 ﹁・・・・・・まさか・・・ね・・・﹂ ﹁ご主人様、いかがなさいましたか?﹂ ﹁ああ、大丈夫だよ愛紗。早速だけどすぐに準備しないと・・・朱 里は使者への返文の作成。桃香と愛紗と鈴々は兵力の準備。雛里は 兵糧の確保。星は武器の調達をして﹂ ﹃御意﹄ 一刀が全員を指示するとすぐに行動を開始する。一刀も自分の考え が気のせいであると判断して自らも仕事に掛かる。しかし今から一 ヶ月後、彼の予感が的中してしまう・・・・・・・・・。 84 第13話:天の御遣いの決断︵後書き︶ 反董卓連合軍への参加を決意した劉備義勇軍。一方で董卓軍で密か 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re に動きがあった。凶報が届いたウルフパックは準備に入る。 次回 ﹁大戦前﹂ 陽人の戦いが始まろうとする。 85 第14話:大戦前︵前書き︶ 遂に動き出した反董卓連合軍。それに対応する為にライル達も最前 戦となる泗水関に急行する。 86 第14話:大戦前 12月、洛陽に雪が降り積もるある日、俺達の動きは活発になり始 める。詠殿が放っておいた密偵からの報告で袁紹が動き出したのだ。 しかも既に袁紹は東部に位置する防衛ラインとなる泗水関近郊に軍 勢を進軍させる準備を始めたらしい。 玉座の間で執り行われた軍議で泗水関と虎牢関で防衛ラインを構築 することになった。 配備としては俺達と霞、嵐が率いる第3師団と第4師団の5万人が 泗水関。恋率いる第1師団3万とねねが虎牢関。洛陽守備軍2万の 指揮を詠殿が指揮を執る。 そして俺達と霞と嵐の部隊から派遣された緊急展開部隊2.500 名が泗水関へその日の昼に出発して、夜には到着した。防衛態勢を 構築するとあてがわれた一室に部隊長クラスの兵士が集められた。 ﹁気を付け‼﹂ 俺とアレックスが入室すると中にいた一番上の階級の部下が号令を 出し、続いて全員が立ち上がって敬礼をする。 ﹁全員いるな?早速だが部隊の報告と現状確認を行なう﹂ そういうと全員が情報を記した書類に目を通す。 純白の孫旗 、 烈火の孫旗 、 と 蒼天の馬旗 金色の袁旗 ﹁董卓軍の斥候からの報告によると連合軍本陣はこの泗水関から東 、 北に約3km進んだ高台だ。確認出来た牙門旗は 銀色の袁旗 の5種類。袁紹、袁術、公孫瓚、孫策、馬騰の勢力だろう﹂ 87 ﹁更にレイヴンによる上空偵察によれば後方にも接近している部隊 を確認した。方角と兵力からすると曹操と思われる。まだまだ増え ると予想される﹂ 到着して直ぐに俺達は敵本陣とその周辺の状況を把握すべく、小型 UAVのRQ−11B[レイヴン]を飛ばし、夜間偵察を敢行。そ のおかげで敵兵力と陣営を把握出来た。 ﹁董卓軍は戦の準備中だ。明日の昼頃には張遼将軍率いる第3師団 軍師 と華雄将軍率いる第4師団の5万人が到着する。後方の虎牢関には 呂布将軍と陳宮軍師率いる第1師団3万、洛陽の守備には賈 率いる第2師団が守備を固める。だが判明している兵力差で我々が 勝つことは不可能。民を巻き込む可能性がある。そこで我々の役割 は民の避難が完了するまでの時間を稼ぐ﹂ 確かに反董卓連合軍と董卓軍の兵力差は歴然。何とか10万の兵力 をかき集められたが、敵の兵力は20万を超えるとされる。 ﹁つまり状況としては最悪だが、周辺地形を利用した籠城、敵軍へ の一撃離脱戦法で時間を稼ぐぞ﹂ ﹃了解﹄ ﹁次に部隊配備状況を確認するが、最初はC中隊。レオン大尉﹂ ﹁了解﹂ そういうと部隊のNo.3であるレオン・キャメロン大尉が立ち上 がる。前世で海兵隊タンククルーだった彼はもともと機甲部隊の隊 長だが、今回は3つに分けた中隊の1つを指揮する。 ﹁我が中隊は予定通り関の右翼に展開。銃座にはM2重機関銃を配 備。丘の上にはスカウトスナイパーを配備させています﹂ 88 ﹁了解だ。次はアレックス﹂ ﹁俺の隊も左翼に展開中だ。敵の攻城部隊に備えてSMAWとジャ ベリンを配備。いつでも攻撃が可能だ﹂ ﹁最後は俺だ。A中隊も関の中央に布陣。城壁には狙撃部隊と機関 銃チーム。各隊員はいつでも打って出れるぞ﹂ 俺たちが執る手段は入り組んだ渓谷が続く泗水関の地形を利用して、 ウルフパックの兵力を3つに分けて広範囲を攻撃するものだ。いざ となれば敵本陣を攻撃できる。 ﹁中佐、民の退避が完了したらその後はどうするのですか?﹂ ﹁民の退避が完了次第、我々は董卓軍の指揮下から離れて脱出する﹂ その言葉に全員がどよめく。しかし俺とアレックスは表情を変えず に説明を続ける。 仕上げ が完了したらだ﹂ ﹁落ち着け、これは董卓殿達から容認は受けているし、脱出するの も ﹁仕上げとは?﹂ ﹁連合軍に情報を流している奴を見つけ出し、始末する﹂ これは俺の提案で詠殿が容認した作戦だ。何しろ連合の動きが俊敏 過ぎる。恐らくではあるが董卓軍内部に連合軍と結託している裏切 り者がいる。 そいつを見つけ出して排除。更にその死体を利用するというのが作 戦の大まかな流れだ。一応は洛陽に10名ほど残している。何かあ れば無線で知らせてくる。 ﹁脱出地点は南、荊州にある南陽という場所だ。タイミングを見計 らって少しずつ脱出していく。質問は?﹂ 89 促すが誰も手を上げない。心配はないだろう。 ﹁ではこれで解散とする。各員は所定のポジションで待機、指揮だ。 各員の健闘を祈る﹂ ﹃はっ‼﹄ 部下達の敬礼を返すと俺とアレックスはブラックベレー帽を頭には 陽人の乱 が開幕する・・・・・・ め込んで退室する。外では雪が降り積もる。まるで戦場となる場所 を染め上げる様に。間もなくで ・・・。 90 第14話:大戦前︵後書き︶ 遂に戦いの幕が切って落とされた。時間を稼ぐ為に泗水関で籠城す 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re るが、嵐が挑発に乗ってしまい勝手に出陣する。 次回 [海兵隊出陣] 一人の勝手がみんなを殺す。 91 第15話:ウルフパック出撃︵前書き︶ 泗水関で時間を稼ぐために籠城するウルフパックと董卓軍。だが劉 備義勇軍が出現したことで問題が発生する。 92 第15話:ウルフパック出撃 泗水関で防御線を構築して2日、その間に俺達は偵察隊を送ったり、 レイヴンを飛ばして上空偵察を実施したりして情報を集めた。 こと劉備 こと曹操 孟徳率いる魏 玄徳率いる劉備義勇軍だ。 乱世の奸雄 予想通りあれから大小様々な勢力が合流。その中でも偵察写真で注 目の勢力を2つ見つけた。 仁徳の王 深紫の曹旗に明緑の劉旗、 軍と 俺はアレックスと共に端末でその様子を伺っている。 ﹁本当に名高い武将が集まったな・・・・・・﹂ ﹁ああ、今朝方から曹操軍と劉備軍も到着した。敵の総戦力はこれ で20万を超えた計算になるぞ﹂ ﹁だがその中で脅威なのは孫策、劉備、曹操の3つだろう。見る限 りだと統制も取れているし、全体的な指揮も高い﹂ ﹁反対に袁家・・・・・・特に袁紹の軍勢は数に頼り切っている。 それに何なんだ、この派手で仕方がない金ピカの鎧は・・・・・・﹂ 映像を見る限りでも袁紹軍兵士の装備は理解しがたい。自分達の威 厳を誇張するかの如く派手な金色の鎧。 俺たちからすれば何のタクティカルアドバンテージ︵戦略的優位性︶ お荷物 だろう。 も存在しない。実用と観賞用は違う。完全に無駄な装備で連合から すれば凄い ﹁そして・・・・・・一番気になるのが・・・﹂ アレックスはそういうと映像を次のものに変える。そこに映し出さ れたのは1人の青年と牙門旗。 93 ﹁白い学生服を着た男か・・・﹂ だ﹂ ﹁それにこの牙門旗、部下に確かめさせたら日本の武将が使ってい 天の御遣い た旗印らしい。確か島津一族の家紋って言っていたな﹂ ﹁・・・てことは、この少年が・・・・・・﹂ ﹁ジーンが言っていた俺達と同じ別世界からきた この世界に来て約3ヶ月。ようやく見つけ出せた。これが味方同士 関の牙門 なら文句無しだったのだが、生憎と今は敵同士。下手に接触するわ けにもいかないだろう。それに今後のこともある。 。 考えていると無線機に通信が入った。俺が出ると内容は 旗を掲げた一段が急速接近 玄徳様に仕える義の刃、関羽だ‼敵将華雄よ‼門 俺は警戒態勢発令と待機命令を指示すると城壁から外を見る。 ﹁我が名は劉備 を開けて私と勝負しろ‼﹂ 関羽と名乗る黒髪の少女を見て俺達は内心驚かされた。確かに手に ある武器は青龍偃月刀で間違いないなさそうだが、目の前にいる関 羽は髭ではなく髪が美しい美少女。 まさしく美髭公ならぬ美髪公と呼ぶに相応しい。 ﹁どうした華雄⁉言われてばかりではないか‼噂に聞いた猛将も廃 れたと見える‼そのような臆病者は一生そうやって引きこもってい るのがお似合いだな‼﹂ 94 あからさまな挑発に俺達は城壁で失笑しながら聞いている。 ﹁よくもまぁあんなに・・・・・・﹂ ﹁挑発して誘い込もうとしているのがバレバレだな。馬鹿らしさを 通り越して感心するよ﹂ ﹁しかし何で対象が華雄なんだ?﹂ ﹁さあな・・・・・・なあ・・・何か忘れてる気がするんだが・・・ ﹂ ﹁お前もか・・・俺は何だか嫌な予感がしていてな・・・・・・﹂ 2人が何か引っ掛かると思って必死に思い出そうとした矢先、いき なり関に銅鑼が鳴り響いた。それもこのリズムは確実に出陣のもの だ。 ﹁なんだ⁉﹂ ﹁出陣の合図⁉誰が指示した⁉﹂ いきなり鳴り響いた銅鑼に戸惑っていると泗水関の城門がいきなり 開いき、関羽軍は方向転換して退却していく。俺が見下ろしてみる と華雄が部隊を率いて出陣し始めた。 ﹁お・・・おい‼マジかよ⁉﹂ ﹁どうした⁉﹂ ﹁あの馬鹿・・・・・・・・・部隊を連れて出陣しやがった⁉﹂ ﹁なんだと⁉﹂ ﹁嵐‼戻って来い‼罠だ‼﹂ 大声で必死に戻るように促すが暴走状態の彼女には届かなかった。 そしてようやく思い出した。正史で華雄を討ち取ったのは孫堅だが、 三国志演義によれば華雄は関羽に討ち取られている。今回と状況が 95 全く同じだ。 その直後に霞が慌てて駆け寄ってきた。 ﹁大変やライル、アレックス‼嵐が挑発されて勝手に行きよった‼﹂ ﹁分かってる‼・・・・・・あの馬鹿が・・・・・・・・・あんな 安っぽい挑発に乗せられやがって⁉﹂ ﹁どないしよ⁉こんなん予定にないで⁉﹂ 霞が慌てている様子を横目に俺は相棒に視線を合わせる。すると意 図を理解したのか、アレックスは小さく頷く。 ﹁霞、関の防衛を任せる。俺達であの馬鹿を救い出す﹂ ﹁大丈夫なん⁉﹂ ﹁分からない・・・・・・だが俺達は仲間を見捨てたりはしない・・ ・・・・ウルヴァリンからA中隊各員へ‼A中隊は完全装備で城門 前に集合せよ‼﹂ 無線で指示を下すと俺もフォアグリップとC−MOREオープンド ットサイトを取り付けたHK416をCIRASアーマーベストの スリングに取り付けて城壁を降りる。 DMR、M Mod1などを装備したA中隊全員が整列していた。 城門前に着くとHK416、HK417、HK417 k46 俺もMICH2001を被ると彼等に視線を向ける。 ﹁これより出撃する‼我らA中隊は先行した華雄将軍を救出‼遅滞 yes sir!!﹄ 攻撃を行ないながら関に帰還だ‼﹂ ﹃Sir ﹁アレックスとレオンの隊は引き続き警戒維持‼退却の際にはA中 sir!!﹂﹂ 隊を援護しろ‼﹂ ﹁﹁Yes 96 ﹁銅鑼を鳴らせ‼城門を開けろ‼﹂ そういうと城門の警備にあたっていた董卓軍兵士が扉を開け、銅鑼 牙を剝いたフェンリル が待ち焦がれていた・・・・・ を高々と鳴らす。そしてその出撃を腕に貼り付けられたウルフパッ クの部隊章 ・・・・。 97 第15話:ウルフパック出撃︵後書き︶ 独断で出陣した華雄を救い出すために出陣するライル率いるA中隊。 この世界で初の実戦の相手は劉備義勇軍。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re そして華雄に追い付くとライルは天の御遣いと遭遇する。 次回 [サーチ&レスキュー] 戦場で狼と御遣いが対峙する。 98 第16話:サーチ&レスキュー︵前書き︶ 嵐を助ける為に出撃するライル率いるA中隊。その戦場でライルは 天の御遣いと出会う。 99 第16話:サーチ&レスキュー 関羽の挑発に乗せられて独断で出陣した嵐を救い出す為に俺が指揮 するA中隊が出撃することになる。 出陣を表す銅鑼が鳴り響いたことで劉備義勇軍に悟られたが、そん なことにこだわっている場合ではない。 城門が開き切ったら大声で出陣を言い渡す。 ﹁A中隊‼行くぞぉ‼﹂ ﹃おぉおおおおお‼‼﹄ そして俺を先頭にA中隊が一気に城外に飛び出す。それに気付いた 敵兵は即座に嵐との合流を阻止するかのように槍兵を前に出す。動 きと手段は中々であり、これに大盾も共に配備していたら文句無し の実力だが、それはこの世界の戦術だ。俺はすかさずHK416を 構えて照準を合わせる。 ﹁射撃を許可する‼撃て‼﹂ 射撃命令を出すと一斉に銃口から銃弾が放たれた。聞いたこともな い銃声に、響き渡ると同時に仲間が倒れていく劉備軍兵士。 そのおかげで混乱が生じているようだ。 ﹁ぐはぁっ⁉﹂ ﹁なっ・・・なんなんだあいつら⁉﹂ ﹁なんだあの黒い筒は・・・がはぁっ⁉﹂ ﹁あぐぅ⁉﹂ 100 次々と劉備軍兵士が銃弾の餌食になって倒れていく。ある程度の敵 を排除したらマガジンを新しものに交換。そして乱戦に備えて神斬 狼を構えて敵集団に肉薄する。 ﹁でぁああああ‼﹂ 敵の集団に飛び込むと敵槍兵を次々に仕留めていく。槍兵は懐に飛 び込まれた状態なので反撃もままならない状態で力尽きていく。 部下達も同じ様に近接戦に持ち込み次々と敵を駆逐していった。 ﹁こちらウルヴァリン‼レイヴンで華雄将軍の現在地を割り出せる か⁉﹂ <こちらレイヴンオペレーター。華雄将軍は劉備軍武将らしき敵と 交戦中。位置はそこから北東に約500。しかし退路を封じられ苦 戦中のようです> ﹁了解だ‼退路を確保しながら前進する‼連携を重視して離れるな よ‼﹂ ﹃了解‼﹄ 俺達は退路を確保する為に要所要所に10名ずつ残して周囲を警戒 させる。 DMRの照 射撃を加えながら前進していると目の前に嫌な部隊を確認。弓兵部 隊だ。しかし俺は落ち着いて部下に命令する。 ﹁1時方向に弓兵‼誰か排除しろ‼﹂ ﹁了解‼・・・・・・食らえ‼﹂ 近くにいたスカウトスナイパーがすかさずHK417 準を合わせて発砲。ミドルレンジでの狙撃に適したDMRはハンド ガードにレイルサイドマウントを取り付けてあり、そこに搭載して 101 いるダットサイトで近距離の敵にも対応できる。 <レイヴンオペレーターからウルヴァリンへ。東側から敵の増援を 確認> ﹁了解した‼第1分隊は着いて来い‼残りは敵を足止め‼狙撃部隊 も狙い撃て‼﹂ ﹃了解‼﹄ 指示通りに第1分隊10名が俺と共に前進を開始。敵もその動きに 勘付いたが味方の援護と城壁で待機していたスナイパーのSR−2 5Mを用いた狙撃で倒される。 俺もHK416で攻撃しながら進むとようやく嵐を見つけたが、左 腕を負傷したようであり、膝を地面につけている。その嵐を討ち取 玄徳が義の刃、関 雲長が討ち取った‼﹂ るため、関羽と思われる少女が青龍偃月刀を構えていた。 ﹁敵将華雄‼劉 まだチェックメイトには早い。俺は姿勢を低くしながら敵兵の間を 縫う様に駆け出し、振り下ろされる寸前で受け止めた。 ﹁なっ⁉﹂ 関羽は突然の出現で後方に飛び上がって距離を置く。 ﹁貴様‼何者だ⁉﹂ ﹁ラ・・・・・・ライル⁉なぜここに⁉﹂ ﹁お前を助けにきたんだよ・・・・・・早く関に戻れ‼ここは俺が 食い止める‼﹂ ﹁見くびるな・・・この程度の傷など・・・・・・・・・くっ⁉﹂ 102 強がりのつもりか、嵐は金剛爆斧を手にしようとするが、痛みによ ってすぐに地面に落とす。 ﹁その傷では戦闘続行は不可能だ‼分かったら早く退け‼﹂ ﹁くっ・・・すまない・・・・・・﹂ ﹁中佐‼﹂ わかっている。俺はすぐに神斬狼を掲げてその攻撃を受け止めたが 天の御遣い 関羽ではない。白い上着を身につけ、両手には双剣と思われる2本 の日本刀が光で反射して、見る者によればまさしく だ。 ﹁愛紗‼無事か⁉﹂ ﹁ご・・・ご主人様⁉どうしてこちらに⁉﹂ ﹁嫌な予感がしたから急いで駆けつけたんだ‼それよりも・・・・・ ・﹂ ﹁気をつけて下さいご主人様、この者・・・・・・かなりの手練れ です・・・・・・﹂ そういうと2人はそれぞれの得物を俺に向ける。俺も神斬狼を構え て切っ先を2人に向ける・・・・・・・・・。 103 第16話:サーチ&レスキュー︵後書き︶ 遂に対峙したライルと一刀。2人の実力は劉備軍の武将達が集まり 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 出す中、ライルは嵐の為に時間を稼ぐ。 次回 [作戦成功] 天の御遣い、狼と出会う。 104 第17話:作戦成功︵前書き︶ 嵐の確保に成功したライル。しかし関羽と一刀が立ちふさがる。 105 第17話:作戦成功 嵐をなんとか確保した俺は劉備軍を足止めする為に劉備軍武将の関 羽と天の御遣いこと一刀の2人と対峙していた。 ﹁貴様・・・・・・何者だ‼﹂ 関羽 ﹁相手の名前を聞く時はまず自分から名乗るものだと思うが・・・﹂ 玄徳様が義の刃 仲穎殿率いる官 玄徳が懐刀、北郷一刀‼﹂ ﹁くっ・・・私は劉備義勇軍総大将、劉備 雲長‼﹂ ﹁俺は劉備軍総大将、劉備 ﹁北郷・・・一刀か・・・・・・俺は相国、董卓 軍が客将、傭兵部隊指揮官のライル・L・ブレイドだ﹂ ﹁傭兵部隊・・・・・・ならば貴様等が噂になっている遥か遠方の 異国から渡り歩いてきた傭兵部隊か⁉﹂ ﹁どんな噂は知らないが、確かに俺が傭兵部隊の指揮官だ﹂ ﹁ライルさん‼あなた達はもしかして・・・﹁おしゃべりはそこま でにして頂きたい、それよりも来ないのか?﹂くっ・・・・・・﹂ 恐らく俺達が未来から来たというのを確信したのだろう。それを聞 こうとしたが俺が神斬狼で軽く挑発すると黙り込んだ。しかし主を 馬鹿にされたと感じた関羽は物凄い勢いで駆け出した。 ﹁ご主人様を侮辱するなぁ‼﹂ ﹁愛紗‼﹂ 一刀の静止を聞かず、俺に素早く中々重い一撃を加えてくる関羽。 確かに彼女の太刀筋は洗練された動きで、扱いが難しいとされる偃 月刀を使いこなしている。 106 だが霞ほどの素早さも無ければ恋ほどの武もない。実力でいえば中 の上というところだろう。 それに嵐を連れ帰った部隊は既に泗水関に到着したころだろう。し かもどうやら敵の増援も接近しているようだし、包囲される前に離 脱する必要がある。 ﹁太刀筋は見事。だが・・・・・・甘い‼﹂ ﹁なっ⁉﹂ 一瞬の隙を突いて俺は関羽の腹に蹴りをいれて吹き飛ばした。飛ば された彼女は地面を何回か転がって動かなくなった。どうやら気を 失ったようだ。 ﹁愛紗⁉﹂ ﹁大丈夫だ、殺しはしない・・・・・・俺達の目的は達成したから な。退かせてもらう﹂ ﹁なっ⁉﹂ ﹁それに・・・怪我はしていないだろうが、一応は衛生兵の診察は 受けさせてやれ、分かったらさっさと行け﹂ ﹁・・・・・・感謝します﹂ 一言、礼を言うと彼は気絶した関羽を抱えて退却を開始。俺も第1 分隊を引き連れてB、C中隊の援護を受けながら泗水関に退却した。 A中隊には死者も負傷者も出ていない。完璧な勝利だ。 なお、独断で出陣した嵐には俺からの鉄拳制裁と3日間の牢屋入り で反省させた。しかし俺の心には気になることが新たにできた。そ れは劉備義勇軍の北郷一刀。城壁で一息いれる俺は劉備義勇軍の陣 営を眺めていた・・・・・・・・・。 107 第17話:作戦成功︵後書き︶ 泗水関攻防戦が開始されて2日後、息抜きをするために外に出て来 と運命の出会いを果たす。 海兵隊の誇り,Re 小覇王 真・恋姫無双 たライルは遂に 次回 [小覇王との出会い] 月夜に2人の英雄が合いまみえる。 *アンケート結果の報告があります。 108 第18話:小覇王との出会い︵前書き︶ 膠着状態に陥った泗水関の夜空に2人の英雄が対峙する。 109 第18話:小覇王との出会い 劉備義勇軍による第1次泗水関攻撃が失敗した。俺達の電撃的な作 天の御遣い こと北郷 一刀とも接触できた。 戦行動で嵐を救出することができ、更にはジーンが話していた迷い 込んだ人間である ジーンに報告すると引き続き調査を続行するように指示される。 Tech551、M300 LEDフラッシュライ 報告を済ませると息抜き目的で泗水関の外に出るべく、俺はサプレ ッサーとEO トを取り付けたMP7A1を手にするとスリングを肩にかけて城門 へと歩き出す。 ﹁ライル将軍、どちらへ?﹂ ﹁息抜きだ。少し外の空気を吸ってくる﹂ ﹁分かりました・・・・・・門を少し開けろ﹂ ﹁応﹂ 城門守備の指揮官が指示すると他の兵士が城門を人1人通れるだけ 開ける。確認したらそこから外に出る。 そこから暫く歩いて劉備義勇軍との戦闘があった場所に到着する。 死体はこの時代だとそのまま放置されるのかと思ったが、実際はし っかりと回収されている。 まあ、戦ったのがあの劉備軍だからだろう。もしこれが袁紹軍なら 死体は確実に放置さるただろう。 ﹁はぁ・・・流石に冷えるな・・・﹂ 冷たい風に思わず身震いする。季節は真冬で今は止んでいるが地面 110 には雪が積もっている。冬用迷彩服などをいずれは用意する必要が あるとくだらないことを考えていると、連合軍の陣地がある方角か ら何かが聞こえて来た。馬が駆ける際の音だ。数から判断して単騎 掛け。 俺はMP7A1に初弾を装填して振り向くとやはり1人だった。そ れも女性だ。 ﹁あら、先客がいたの?﹂ 江東の小覇王 こと孫策 かなり大胆なデザインをしたチャイナ服に桃色のロングヘアをした 女性。外見的特徴から、孫策軍大将の 伯符と思われる。 伯符殿とお見受けする﹂ しかし確信は持てていないので警戒を解かずに尋ねて見る。 ﹁・・・袁術軍客将、孫策軍大将の孫策 ﹁何処かで会ったことが?﹂ ﹁直接はありません。聞かされていた外見的特徴と一致していまし たから、もしやと・・・・・・﹂ ﹁そうよね、だってあなたみたいないい男、会ったことがあったら 絶対に忘れないもの♪﹂ 笑みを見せながらからかっているのか本心なのか分からないことを いう孫策。どうもこの手の人物は考えが読めないから苦手だ。 何しろ軍事作戦とは相手の動きを予測して実行するものだが、相手 の考えが読めないということは危険極まりない。 ﹁それで・・・素敵なあなたの名前は?﹂ ﹁・・・答える必要が?﹂ ﹁ブーブー、いいじゃない。教えてくれたって・・・・・・じゃあ 当ててあげましょうか?﹂ 111 そういうと子供みたいに人差し指を指して俺を示して来た。 ﹁あなた・・・・・・ライルでしょ?董卓軍に雇われてる傭兵部隊 の隊長をしてる﹂ ﹁・・・・・・ご名答です﹂ ﹁やった♪やっぱり私の勘は当たるわね♪﹂ 勘って・・・・・・・・・。仮にも一指導者が勘に頼るか普通・・・ ・・・。 ﹁それにしてもあなた達って強くて厄介ね、たった100人足らず の兵力で御遣い君を追い返しちゃうんだから♪﹂ ﹁はあ・・・・・・私からすればあなた達も充分に厄介ですよ﹂ と称し、 ﹁分かるの?﹂ ﹁ええ。我等が厄介としている勢力は3つ。自らを 孟徳率 覇王 文武両道で時には自らも最前戦に切り込むこともある曹操 いる曹操軍。 という異名で知られ、民や兵士達を自分の 一刀の加護を受けた 数こそは少ないものの、優れた武将と軍師を多数保有し、一般兵も 江東の小覇王 玄徳率いる劉備義勇軍。 高い団結力で結ばれ、天の御遣いという北郷 劉備 そして 伯符率いる孫策軍の3つ。それに比べても他勢力は有象 家族のように慕い、家族にあだなす敵に無慈悲の攻撃を与えるあな た、孫策 無象。特に袁紹の軍勢は数以外は全く脅威にならない雑兵の集まり でしかない﹂ ﹁嬉しいこといってくれるわね♪﹂ ﹁そりゃどうも﹂ 彼女が微笑むと俺も軽く笑みをを浮かべる。俺が孫策にいったこと 112 はこれまで入手した情報に基づいた結論だ。しかし言わなかったが 俺自身が最も厄介と判断しているのは孫策そのものだ。情報しかな いが彼女の実力は連合の中でも最強とされる。 ﹁まあ、俺はこれで失礼させてもらいますよ﹂ ﹁あら、このまま帰すと思う?﹂ そういうと孫策は身につけている剣の柄に手を掛ける。それと同時 に彼女の雰囲気が変わった。先程までの彼女は子供みたいに無邪気 小覇王 と呼ぶに相応し さが見えたが、柄を手にした瞬間に彼女から凄まじく強烈な闘気と 覇気、殺気が溢れ出す。その姿はまさに いですものだ。 俺はMP7A1を構えるが、暫く睨み合っていると彼女から先程の 雰囲気が四散した。 ﹁や∼めた♪﹂ ﹁?﹂ ﹁だって勝てる気がしないんだもん♪﹂ 彼女が片目を瞑って舌をだして答える。不覚にも可愛いと思ってし まい、少し赤くした顔を反らす。 ﹁行っていいわ。だって私もここに来たのって夜風に当たりたかっ ただけだから﹂ ﹁そうですか、それでは戻らせて頂きます。ああ、それと・・・・・ ・・・・﹂ ﹁なに?﹂ ﹁泗水関の戦いは3日後に終わるかも知れませんよ。劉備義勇軍と 共に一番乗り出来たらいいですね?﹂ 113 意味あり気に言い放つ俺に彼女も意図を理解したのか、先程の笑み を浮かべて来る。 ﹁そうね、確かに一番乗り出来たら気持ちいいもんね♪﹂ ﹁それでは・・・﹂ ﹁ええ、次は戦場じゃない場所で会いたいわね♪﹂ そういうと俺達は互いの陣営に戻って行く。それから3日後、当初 の予定通り俺達は泗水関を放棄して虎牢関に撤退。無人となった泗 水関を劉備義勇軍と同行を申し出た孫策軍により無血開城される。 なお、俺がなぜ孫策に独り言みたいな情報提供をしたのかその時は 分からなかった。しかしそれは後々になって分かることになる。 114 第18話:小覇王との出会い︵後書き︶ 徹底的に時間を稼ぐライル達。完全に甘く見ている袁紹軍が4度目 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re の進軍で信じられないことをやらかしてしまう。 次回 [戦士に対する愚弄] 難攻不落の虎牢関に狼の怒声が鳴り響く。 *前話の予告通り、一刀の武器を記載します。 心龍双牙 天 と柄が青色の 地 の2本で一 北郷流二刀心眼術の使い手である一刀が使用する特殊な日本刀。 刀身120cmで柄が赤色の 本という刀で、柄頭に接続部が設けられて、組み合わせることで双 刀の薙刀としても使用できる。切れ味は巨大な岩をも破片を出さず に文字通り一刀両断に出来る。 115 第19話:戦士に対する愚弄︵前書き︶ 虎牢関に攻撃を開始した袁紹軍だが、3度にも渡って駆逐される。 そんな状況に対して袁紹は取り返しのつかないことをやらかしてし まう。 116 第19話:戦士に対する愚弄 泗水関での時間稼ぎが十分だと判断した俺達は関を放棄。後方に位 置する恋率いる第1師団が守備を固める虎牢関に退却した。 虎牢関は正史でもその地形が攻を奏して守るに容易く、攻めるに困 難という強固な守備力を誇る。しかも泗水関を守っていた第3師団 と第4師団もほぼ無傷の状態で合流を果たしたので総戦力は8万。 しかも董卓軍兵士の練度は高い水準を誇り、防御力は屈指とされる。 という世間知らずにも程 ブ男が指揮する雑魚集団の劉備軍と田舎者の孫策 泗水関を制圧した連合軍では次の虎牢関攻略が話し合われていたが、 総大将の袁紹が 軍に退却した董卓軍はメチャクチャ弱い がある発言と総大将という形だけの地位で虎牢関攻略の第一陣をす るといいだした。 そして制圧から3日後、袁紹軍は第1次攻略を開始したが失敗。第 2次攻撃も全く同じ地形を無視した人海戦術を使用して失敗作。 SMAWを用いた攻撃で近 第3次攻撃は流石に戦術を変更して攻城兵器の衝車を繰り出したが、 俺達のFGM−148BとMk153 付かれる前に殲滅した。 袁紹軍陣地では自分の思った通りにことが進まないことで袁紹は部 隊長の兵士に八つ当たりしていた。 ﹁貴方達は何をされていますの⁉あんな関1つ陥落させるのに何を 手こずっていますの⁉﹂ 無能 の男をおくのは嫌なので ﹃も・・・・・・申し訳有りません・・・﹄ ﹁全く・・・これだから私の軍に すわ・・・・・・無駄に損害が大きくなるだけですわ‼﹂ 117 その場にいた全員が心の中で同時に叫んだ。 と。 どっちが無能だ・・・ 確かに一番損害を受けたのは第1次攻撃の際に袁紹が指揮する部隊 だからだ。何しろ攻城兵器も持ち要らないただ単の突撃なのだから。 ﹁もうよろしいですわ‼明日の攻撃の指揮は私が執りますわ。しか しどうやって虫けらを屈服させましょうか・・・・・・﹂ ﹁袁紹様、こんな手段は如何でしょうか?﹂ かなり肥えた武官と思う男が袁紹に耳打ちすると、袁紹は不快な高 笑いをする。 ﹁お∼ほほほほ‼素晴らしい手段ですわ‼これで袁家の名前を全土 に轟かせて見せますわよ‼﹂ 後で後悔することとなる。 と・・・・・・。 ここで止めておけばあんな事にはなら そういうと袁紹軍は明日の攻撃に備えて準備をする。そして全員が なかったかも知れなかった それ で驚きを隠せな 翌日、虎牢関前に現れた袁紹軍。しかし今日はいつもと容姿が違う。 俺達が様子を伺っていると目の前に現れた かった。 ﹁なんなんや・・・あれ・・・・・・なんなんやあれは⁉﹂ 霞が大声で叫んでしまった。目の前に現れたのは柱に縛られた霞や 嵐、恋、ねねの部下達6名の死体。これまで行なわれた3回の攻防 戦で戦死した兵士だ。恐らくはこの愚弄を行なう為に袁紹軍が確保 したのだろう。 118 その光景を見て全員が怒りを露わにする。 ﹁あれは・・・私達の部下⁉﹂ ﹁あいつらあれでも人間か!どっちが悪やっちゅうねん!﹂ ﹁あいつら⋮コロス﹂ ﹁やつら、人じゃないです‼﹂ 霞達は自分達の部下があんな晒し者にされて怒りを露わにする。こ の時代では戦死した兵士の遺体とは敵味方関係無く慎重に埋葬しな ければならないのに、奴らがやらかした愚策はもっての他だ。 しかしそんな状態で最前線で聞いているだけで火に油を注ぐ。 の皆さん‼早く門を開けて降伏しないと のようになりますわよ‼・・・やっておしまい 愚民共 生ゴミ ﹁虎牢関にいる こちらの ‼﹂ ﹃応‼﹄ 袁紹の指示で武官が剣を取り出してその死体の両腕と両脚、更には 首を斬り落とした。 ﹃!!!!﹄ ﹁こうなりたくなかったらさっさと降伏なさいな‼お∼ほほほほ‼﹂ 高笑いをしながら袁紹は後方に戻って行く。しかし袁紹軍に対する 怒りは頂点に達していた。それは俺達も我慢の限界に達していた。 ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁・・・ライル﹂ ﹁・・・中佐﹂ ﹁分かっている・・・アレックス少佐‼レオン大尉‼﹂ 119 物凄い怒気を込めた声で俺が名前を呼ぶと2人も踵を鳴らして直立 不動の姿勢をする。その表情も俺と同様に怒りに満ちていた。 ﹁全部隊に通達‼奴等を攻撃するぞ‼あのクソッタレ共を皆殺しに しろ‼一切の情けを掛けるな‼負傷した奴、降伏する奴、怯む奴、 sir!!!!﹂﹂ 逃げ出す奴、一切関係ない‼奴等の返り血で雪を染め上げてやれ‼﹂ yes Mod1と髑髏、レオン ﹁﹁Sir 大声で返答するとアレックスはMk46 龍舌 を背中に背負う。 はHK417と彼専用の得物である大剣 ﹁霞‼恋‼嵐‼ねね‼奴等を皆殺しにするぞ‼﹂ ﹁よっしゃ‼やったるで‼﹂ ﹁部下の無念‼代わりに晴らして見せる‼﹂ ﹁恋・・・袁紹、殺す‼﹂ ﹁あんなケダモノ連中‼絶対に許せないのですぞ‼﹂ そういうと霞達はそれぞれの得物を手にして、ねねは全体の指揮を MASSをス するために持ち場につく。彼女達の表情も怒りに満ちている。 俺はMICH2001を被ってHK416+M26 リングに繋げ、神斬狼を腕に装着すると城壁から飛び降りる。 ﹁銅鑼を鳴らせ‼あのクソッタレ共にも聞こえる位に鳴らせ‼﹂ そういうと城門にいた兵士が銅鑼を力強く鳴らす。彼らの表情にも 怒りが感じ取られる。 そして城門が開放されると俺を先頭に敵陣に突撃する。 ﹁来たぞ‼・・・・・・な・・・なんだ・・・・・・?﹂ 120 ﹁お・・・狼・・・・・・﹂ 血に餓えた狼の 無能な袁紹軍兵士でも俺達の怒気がはっきりと伝わる。そこにいた がいた・・・・・・・・・。 のは悪鬼も怯み、鬼人も逃げ出す神すらも恐れる 群れ 121 第19話:戦士に対する愚弄︵後書き︶ ライル達の怒りに触れた袁紹。しかしそれは連合軍内部でも同様だ った。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 袁紹の下種としかいいようのない行動に一刀と孫策が問い詰める。 次回 [二人の英雄と一人の屑] 二大英雄が愚者に問い詰める。 122 第20話:2人の英雄と1人の屑︵前書き︶ 董卓軍に対して非道な手段を用いた袁紹。各陣営はそんなやり方が 我慢出来ずにいた。 特に一刀と孫策の怒りは限界に近かった。 123 第20話:2人の英雄と1人の屑 袁紹軍が董卓軍兵士6人の死体を晒し者にした丁度そろ頃。泗水関 でもその残忍な行動が確認出来た。 そして後方から移した連合軍本陣には各勢力の武将達は怒りを覚え ていた。 ﹁なにやってんのよあれは⁉﹂ ﹁あれが我らの正義⋮なのか!?﹂ ﹁こんなの酷すぎるのじゃ‼﹂ そんな中、最前戦から戻ってきた袁紹に1人の少女が問いつめる。 金髪のツインサイドロールテールの少女、曹操だ。 下郎共 に返しただけはありませんか?﹂ 汚い ﹁麗羽︵れいは/袁紹の真名︶!!あれはどういうこと!!﹂ ﹁なにがです、華琳︵かりん/曹操の真名︶さん?﹂ ﹁あなた、自分が何をしたのか分かってるの⁉﹂ を ﹁あら、華淋さんもおかしなことを仰いますわね。私はただ ゴミ 曹操の問いかけに対して袁紹は董卓軍兵士を侮辱し続ける。そこに 他勢力の指導者達が駆け込んで来た。 ﹁袁紹‼あれはなんのつもりだ‼﹂ ﹁死体をあんな風にしやがって⁉﹂ 寿成と公孫瓚軍大将の公孫 ﹁麗羽‼いくらなんでも酷すぎるのじゃ‼﹂ 中に入って来たのは馬騰軍大将の馬騰 124 瓚 伯圭。袁紹の従姉妹で袁術軍大将の袁術 る張勲。 公路と、側近を務め 4人共曹操と同じく袁紹の行ないに対して怒りを覚えていた。 ﹁本当に忌々しい事をしてくれたわね﹂ ﹁ああ、解せないな﹂ 全員が声をした方向を見ると、同じく怒り爆発一歩手前の雰囲気を 醸し出す孫策と一刀が立っていた。その雰囲気に曹操すらも息を呑 んだ。 ﹁張勲、袁術ちゃんを連れて外に出てて・・・・・・流石に見せら れないわ﹂ 孫策の気配りで張勲は袁術を連れて外に出る。それを見送ると再び 怒りを込めた目線で袁紹を睨みつける。 ﹁あんたが最低の人間だってことは知ってたけど、ここまで腐り切 ってたなんてね・・・・・・﹂ ﹁民や兵を食い物にするだけじゃなく、人としての尊厳までも奪い やがって・・・・・・呆れてものもいえないな‼﹂ この2人とライルには共通する点がある。 家族や仲間、民の為に戦う それ故に2人からしても袁紹の行動が許されるものではない。対し て袁紹は明らかに震えているが、両腕を組んで尚も威張ろうとする。 ﹁ふ・・・・・・ふん‼田舎者とブ男の分際でこの可憐な私に指図 するおつもりですの⁉それによれしいではありませんの‼相手はゴ ミなのですから・・・﹁﹁黙れこの外道が‼﹂﹂ひぃ⁉﹂ 125 ﹁貴様の行動などただ無駄に死者を増やし、民に何も思わない貴様 が指導者だと⁉反吐が出る‼﹂ ﹁お前は彼等をゴミ呼ばわりしているが、俺から見て貴様がゴミだ ‼﹂ 2人からの凄まじい覇気を前にして袁紹は体を震わすしかできなか った。しかし丁度そこに袁紹軍の伝令が走り込んで来た。 ﹁伝令‼虎牢関開門‼﹂ その言葉に袁紹が勝ち誇った表情で言い放つ。 ﹁ふん‼そらみなさいな、敵は私の素晴らしい策でひれ伏し﹁報告 致します‼敵が大規模攻勢に出ました‼﹂なっ・・・なんですって ぇ⁉﹂ 続けて駆け付けた伝令の報告を受けて先程とは打って変わって信じ られないような表情を見せる。 耳を澄ますと、聞こえてくるのは袁紹軍兵士の悲鳴。更に董卓軍の 怒声の中に混じった銃声と爆発音。 ﹁こちらの兵は何をしてますの⁉、さっさとゴミを蹴散らしてしま いなさい⁉﹂ ﹁だ・・・ダメです‼敵は先程の見せしめで完全に頭に来たようで、 破竹の勢いで我が軍を攻撃しております‼﹂ ﹁むっき∼‼こうしてはおれませんわ‼皆さん‼直ぐに向かって・・ ・・・・ど・・・何処に行きますの⁉﹂ 袁紹が何処かの陣営に命じる前に、大将達は本陣を後にし始める。 もちろん、一刀と孫策も同様だ。 126 ﹁袁紹、今回の戦で私達は後方に下がるわ。自分の始末は自分でつ けなさい﹂ ﹁俺達も協力を拒む‼無理に行かせようとすれば遠慮無くお前の首 を斬り落としてやる‼﹂ そう言い放つと2人も外に出る。外には曹操達がいたが、2人は声 を掛けることなく陣営に戻って行く。彼女達から見て2人の後ろ姿 と・・・・・・・・・。 は一緒の事を考えていた。 英雄 127 第20話:2人の英雄と1人の屑︵後書き︶ 袁紹軍による残虐な手段に対して怒りに火がついたライル達。彼等 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re は圧倒的火力と武を用いて袁紹軍に襲い掛かる。 次回 [狼達の怒り] 元凶の愚軍に狼達が襲い掛かる。 128 第21話:狼達の怒り︵前書き︶ ライル達による袁紹軍殲滅。虎牢関で報復が開始された。 129 第21話:狼達の怒り 袁紹軍による非人道的行動に怒りを爆発させた俺達と董卓軍。その 勢いは尋常では無い。 ﹁この野郎‼よくも仲間を‼﹂ ﹁千倍にして返してやるぞ‼﹂ ﹁くたばりやがれ‼クソッタレ‼﹂ 一般将兵達も仲間の仇を討つ為に全力を尽くしていた。そして董卓 軍の最前列では董卓軍三武将が暴れまわっていた。 ﹁あんたら絶対に許さへんで‼覚悟しぃや‼﹂ 霞は敵集団に飛び込むと舞い踊るかのように敵を切り刻む。敵はあ まりの速さに防御が追いつかず、次々と命を散らして行く。 ﹁部下達の無念‼貴様等の命で償わせてやる‼﹂ 速度で霞に劣る嵐は金剛爆斧を縦横無尽に振り回し、敵の身体を次 々と叩き潰す。 猛将にて良将。 董卓軍の中で誰よりも自分の部下を大事に思い、それでいて部下達 も彼女を信頼する。 その部下があのような仕打ちにされたのだ。許される訳が無い。 ﹁お前達・・・・・・恋を本気で怒らせた‼﹂ 130 眼 。 鬼神 の名に恥じぬ動きだ。 で敵を睨みつけると、動けな 普段は表情を変えない恋でさえも、今回は別だ。全身から凄まじい 殺気を発生させ、その凄まじい 真紅の呂布 くなった敵の身体を細切れにしていく。 その光景はまさに ﹁A中隊は中央‼B中隊は右翼‼C中隊は左翼から回り込め‼半包 sir!!﹄ 囲状態で敵を追い込め‼﹂ ﹃Yes 俺達も袁紹軍に対して凄まじい程の銃撃を加えていって次々と仕留 める。戦闘開始から10分しか経過していないが、見る限りでは袁 紹軍は確実に数を減らしている。 規模からして数は10万を超えているだろうが、虎牢関の地形では 思うように動けない。 対して俺達は董卓軍と合わせても5000人弱だが、地の利も奏し て次々と敵の命を刈り取る。 降伏してきた敵には即座に頭を撃ち抜き、負傷して動けなくなった 敵には頭を踏み潰した。 そんな連中を見て練度や士気で大きく劣る袁紹軍は恐れていた。 ﹁ひっ・・・ひぃいいい‼﹂ ﹁化け物‼化け物だぁ‼﹂ 袁紹軍は恐怖に駆られて1人が逃げ出すと、そこから周囲に感染し ていき、やがては全員に感染した。 ﹁ライル‼あのボケ共が逃げ出したで‼﹂ ﹁分かっている‼逃がしはしない‼﹂ そういうと無線に手を掛けると直ぐに通信を行なう。 131 ﹁ウルヴァリンからウォーハンマー‼グリット1−7−3、3−0 −9に砲撃を要請‼目標は退却中の袁紹軍‼クソッタレ野郎共を吹 き飛ばせ‼﹂ 60mm軽 <ウルヴァリン、こちらウォーハンマー‼了解です‼1−7−3、 3−0−9‼効力射‼砲撃開始‼> 交信した相手は虎牢関の後方に待機していたM224 迫撃砲を運用する部隊だ。 この迫撃砲は他の迫撃砲と比べても威力が小さい上に、平均が5k mから8kmに比べても3.5kmと短い。 しかし重量が二脚装着時でも21kgしかなく、かなりの軽量化が 施されている上に、緊急時には1人でも運用出来るように設計され 60mm榴弾はしっかりと敵の後方に弾着 ている。海兵隊にとって頼もしい近接砲撃になる。 撃ち出されたM888 して、爆発と同時に敵が次々と吹っ飛んでいく。 やがて董卓軍も回り込むことに成功して、袁紹軍は完全に退路を絶 たれた形となった。 その袁紹軍は武器を構えていたが、完全に怯んでいた。 ﹁お・・・・・・おい⁉完全に囲まれたぞ⁉﹂ ﹁うるせぇ⁉そんなの分かってる⁉﹂ ﹁逃げられない上に降伏しても殺される・・・・・・一体どうすり ゃいいんだよ⁉﹂ ﹁うるせぇって言ってるだろうが‼自分で考えろ‼﹂ 袁紹軍兵士は互いに責任をなすりつける。すると1人の兵士が手に していた槍を捨てて、予備の短剣を取り出して、自分の喉元に突き つける。 132 ﹁そうかよ・・・・・・董卓の兵を・・・否・・・・・・袁紹みた いな愚者に付いた時点で俺達の命運は尽きてたんだな・・・だった ら好きにさせてもらう‼﹂ そう叫ぶとその兵士は自分の喉を切り裂いて自決した。それを見た 他の兵士達も同様に自分の喉を切り裂いたり、自分の身体に突き刺 して次々と自決した。 この判断はある意味で正しい。何しろ自決しなかったとしても待ち 構えているのは、修羅のような連中からの惨劇。 ならば幾分かはマシな地獄に向かった方がいいという判断だ。 やがて数分も経たない内に残ったのはさきほど死体を切断した武官 6名。こんな奴等に部下を動かす必要はない。俺達はそれぞれの柄 物を手にして突撃する。 ﹁これで最後や‼死に晒せボケェ‼﹂ 霞は一気に懐に飛び込むと右腕を斬り落とすとそのまま一回転しな がら首を刎ねた。 ﹁地獄で部下達に苦しめられろ‼﹂ 嵐は金剛爆斧を回転させながら両腕を斬り落とし、敵を空高く舞い 上がらせ、落ちて来たところを、渾身の一撃で叩き潰した。 ﹁弱い奴・・・・・・死ね﹂ 恋も目に見えない動きで両腕両脚を切断して、地面に落ちる前に胴 体を切り捨て、最後に鼻より上を斬り落とす。 ﹁獣には・・・無様な死に方が似合いだ‼﹂ 133 レオンは龍舌を縦に振り下ろし、文字通り一刀両断にして、返り血 を浴びながら仕留める。 ﹁地獄に落ちやがれ‼﹂ son of bitch!!︵くたばれ という名前に相応しい。 a 死神 アレックスも髑髏を構えながら飛び込み、身体を回転させながら首 you を刎ねた。その光景はまさに ﹁Die クソッタレ‼︶﹂ 思わず英語で叫びながら神斬狼を額と腹に突き刺して、そのままこ じ開けるように敵の身体を切り裂いた。 俺達の足下にはおびただしい血が流れ、身体中にも返り血がこびり ついて、見る者によればその姿は阿修羅とも思える。 殲滅を確認した俺達は武器を空高く掲げて部下を見る。 ﹁﹁﹁﹁﹁﹁勝鬨を挙げろ‼‼﹂﹂﹂﹂﹂﹂ ﹃うぉおおおおおおおお‼‼‼﹄ 勝利した俺達は地面が揺れる程の勝鬨を挙げた。その声は連合軍最 後尾や洛陽にまで響いたとされる。 袁紹軍がやらかした愚策は後に[虎牢関の悲劇]と称され、袁家滅 亡を加速させるキッカケとなる。更に連合軍でも指示した袁紹のた だでさえ少かった信頼は地に落ち、もはや袁紹に従う陣営は無かっ た・・・・・・・・・。 134 第21話:狼達の怒り︵後書き︶ 海兵隊の誇り,Re 袁紹軍を完膚無きまでに殲滅したライル達。そして洛陽でもようや 真・恋姫無双 く動きがあった。 次回 [灯台下暗し] 裏の首謀者、尻尾を表す。 135 第22話:灯台下暗し︵前書き︶ 虎牢関での報復攻撃があったその日の晩。洛陽でも進展があった。 136 第22話:灯台下暗し ライル達が袁紹軍を虎牢関で殲滅したその日の晩。洛陽では既に民 の退避が完了。 市街地は静寂に包まれていた。そして洛陽城でも詠殿達が準備を進 めていた。 ﹁兵の配備状況は?﹂ 武久大尉。ウルフパック ﹁既に全員が配備に着いています。市街地の巡回を頻繁に行ない、 細作の侵入に備えています﹂ 詠殿と共に状況を確認しているのは南郷 の中で3人しかいない日本人海兵隊員で、組織では飛行中隊の指揮 官を務める隊員だ。今回の任務は洛陽に残り、連合軍に情報を流し ている裏切り者の特定及び拘束もしくは排除となる。 ﹁そちらに何か情報は?﹂ ﹁ある程度は絞れたわ。泗水関が陥落して連合は虎牢関に取り付き つつある。動きを見せるとしたらもうすぐな筈よ﹂ ﹁虎牢関にある兵糧の数は大体で5日分。泗水関にあったものを足 しても7日分ですから、必ず何か動きを見せる・・・・・・姑息な 連中なら尚更という訳ですね?﹂ そういうと詠殿は頷く。中佐が提案した時間稼ぎにはこういった策 も含まれている。彼女によると袁紹は確実に実権を手にすることが 目的だが、実行犯はそれと逸脱した行動を見せている。 137 ﹁ところで、月殿は?﹂ ﹁寝かせたわ。月には無理させたくない﹂ ﹁案内はいつも詠殿が?﹂ ﹁いつもは私が連れて行ってるんだけど、今日は流石に侍女に任せ たわ﹂ 確かに月殿は自分が出来る事は、自分で出来るだけしたいというこ とで、少し無理をしていた。 まあ、夜食で月殿が手作りの差し入れを持って来たという役得もあ ったが・・・・・・。 ﹁しかし・・・・・・狙うとしてもどうやって・・・・・・﹂ 俺は必死に頭を巡らせる。行動しようにも月殿の行動パターンを把 握する必要があるし、いつも身の回りの世話は詠殿がしている。 身の回り・・・行動・・・把握・・・。暫く考えて俺は思わず大声 を出してしまった。 ﹁ああ⁉﹂ 殿‼お送りした時、賈 殿が命じたのですか⁉﹂ ﹁ちょ・・・・・・どうしたの⁉﹂ ﹁賈 ﹁いっ・・・いいえ・・・・・・侍女が月を送るって自分から・・・ ・・・﹂ ﹁まずい⁉﹂ そういうと俺は机に置いていたMP7A1を手にして、初弾を装填 すると急いで外に出る。 ﹁ちょっと‼どうしたのよ⁉﹂ 138 ﹁賈 殿以外で月殿の行動を把握出来るのは侍女だけです‼﹂ ﹁ま・・・まさか⁉﹂ ﹁月殿が危ない‼﹂ よくよく考えると簡単なことだ。月殿に近付けて、尚且つ1人にな れる機会を伺えるのは詠殿以外では、侍女だけである。 そして月殿の寝室では寝息を立て眠っている月殿の他に人がいた。 そして物音を立てずに月殿にゆっくりと歩み寄っていた。 ﹁・・・・・・・・・・・・・・・﹂ その者は手にした短剣を手にして構えると、少し間を置いて振り下 ろそうとした瞬間、扉が凄い勢いで蹴破られる。 ﹁月殿‼﹂ ﹁月‼﹂ ﹁‼??﹂ いきなり踏み込まれたので、その人影はすかさず短剣を投げ付けた が、すぐに俺はMP7A1で撃ち落とした。 ﹁きゃあ⁉﹂ ﹁月殿⁉﹂ ﹁月⁉月を放しなさいよ⁉﹂ 敵はすかさず寝台から月殿を引きずりだし、喉元に短剣を突きつけ た。 139 ﹁動くな‼少しでも動けば、白い肌が赤く染まるわよ﹂ ﹁へぅ⁉﹂ ﹁くっ⁉﹂ ﹁そこの男、武器を遠くに捨てなさい﹂ この状態では無闇に刺激するわけにはいかない。俺はMP7A1を 部屋の隅に投げた。 ﹁それでいいわ。次は壁に背を向けて道を開けなさい﹂ 仕方なく壁にゆっくりと歩くが、気付かれないように首に付けられ た隊内無線のインカムを操作する。 ︵こちらサイクロプス、聞こえるか?︶ <こちらジュリエット34、位置に付いています。殺しても?> ︵いや・・・ナイフを弾き飛ばせ。奴が窓に差し掛かった処がチャ ンスだ。一発で決めろ︶ <了解> 通信を終了させるとゆっくりと壁の前で立ち止まり、それを確認し た敵は月殿を盾にしながら扉へと向かう。 そして窓に差し掛かった瞬間、銃声と共に女が手にしていた短剣が 弾き飛ばされた。 ﹁なっ⁉﹂ ﹁今だ‼﹂ 弾き飛んだ瞬間、俺は一気に駆け寄って女の腕を掴むと地面にねじ り伏せ、M45A1をホルスターから抜いて、後頭部に銃口を突き 140 つけた。 ﹁動くな‼﹂ ﹁くっ・・・・・・放せ‼﹂ 銃口を向けながら女の手首に拘束バンドを取り付けて動きを封じる。 その直後、銃声を聞きつけた衛兵と部下達が駆けつけて来た。 ﹁大尉‼﹂ ﹁少尉、この女を連行しろ。背後にいる奴を吐かせるんだ﹂ ﹁了解です﹂ ﹁さぁ、歩け‼﹂ 僅かに抵抗するが、海兵隊員が相手な上に両手を封じられているの で、女はそのまま連行されていった。 ﹁月‼大丈夫だった⁉﹂ ﹁う・・・うん・・・・・・大丈夫だよ詠ちゃん・・・ちょっと怖 かったけど・・・﹂ ﹁よかったぁ・・・・・・心配したんだからね・・・本当に・・・ 心配したんだからぁ・・・﹂ 殿、部屋の前に兵を2名配置させておきます。俺はあの女を 無事だった月殿を確認すると彼女は泣きながらしっかりと抱きしめ る。 ﹁賈 尋問して背後関係を・・・・・・﹂ そういうと詠殿は確かに頷き、目線で軍曹と伍長に指示すると自分 は、尋問を行う為に部屋を後にした・・・・・・・・・。 141 第22話:灯台下暗し︵後書き︶ 連合軍による虎牢関攻略作戦が再開された。相手は と合間見える。 魏 乱世の奸雄 が指揮する曹操軍。敵の最精鋭部隊に苦戦しながら、ライルは の刃 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 次回 [魏の刃] 虎牢関に刃が君臨する。 142 第23話:魏の刃︵前書き︶ 連合軍による虎牢関への総攻撃が開始された。ライル達の相手は曹 操軍。精鋭部隊を相手に苦戦する。 143 第23話:魏の刃 虎牢関での戦闘が開始されてから5日が経過。流石に戦力の大半を 失ったことで、袁紹軍は後方に撤退していくが、レイヴンからの偵 察写真によると、交代に曹操軍、馬騰軍、そして劉備義勇軍と公孫 瓚軍が前に出てきた。 予想よりも早い攻撃開始に戸惑いつつも、防衛を開始する。 しかし実をいうと、既に俺達の準備は完了している。本当なら別に 防衛に出る必要はないが、相手は突破力に長けている。ここで下手 打って出る という案を利用して、一度だけ打って に退却しても追いつかれる可能性がある。 そこで恋達が 出てから怯んだ隙に退却することにした。 恋とアレックスには劉備義勇軍の相手を任せ、嵐と霞とレオンには 馬騰軍、そして俺達は曹操軍を攻めるべく、最前戦右翼で戦闘を繰 り広げていた。 ﹁撃ち続けろ‼敵を近付かせるな‼﹂ ﹁こいつ等‼かなりやるぞ‼﹂ ﹁くそっ⁉やられた⁉﹂ ﹁負傷者を退がらせろ‼﹂ 曹操軍の猛攻に俺達は苦戦しながらもなんとか持ち堪える。しかし いま相手にしている曹操軍兵士の装備が他と違う。 黒一色の鎧に青色の手甲と青色のマント、猛禽類を思わせる兜、顔 がばれないように配慮されたと思われる黒の覆面だ。 黒騎兵 と呼ばれる部隊がある。恐らくはこいつらだろう。 事前情報では、曹操軍は練度の高い精鋭部隊から更に厳選した最精 鋭部隊 144 敵の装備は 盾牌剣 と呼ばれる片手剣と盾を装備した西洋風の編 成で、全体的にバランスが取れている。 ﹁負傷者は後方に退かせろ‼敵を侮るな‼油断すると殺られるぞ‼﹂ ﹁中佐‼上です‼﹂ MASSを構えるが逆光で眩し過ぎる。 部下に言われて見上げると、俺に斬りかかろうとする敵の姿があっ た。HK416+M26 素早く横に回転しながら回避すると、俺がいた場所には1人の女性 がいた。赤いチャイナ服に黒いロングヘア、右肩に髑髏の肩当てを 元譲だ‼貴様が傭兵隊の長 取り付けている、目力が凄まじい女性だ。 孟徳様が刃‼夏侯惇 元譲と叫ぶと大剣の切っ先を俺に向ける。夏侯惇と ﹁我は魏王、曹 か⁉﹂ 自らを夏侯惇 いえば正史で曹操が最も信頼したとされる武将で、曹操が亡くなっ て暫くしてから後を追うように亡くなったとされる猛者だ。 ﹁・・・・・・そうだ。海兵隊指揮官のライルだ。俺に何か用事か ?﹂ ﹁華淋様が貴様に用事があられる‼私と来てもらうぞ‼﹂ その言葉に俺は表情を変えずに驚く。個人的に武将として尊敬して いる曹操が、俺に興味を示して連れてくるように仕向けたのだ。 しかし今はそんな場合ではないし、そんな気も毛頭無い。 ﹁それは無理な相談だ・・・俺達は董卓軍に雇われている身だ。一 方的な契約破棄はしたくない。どうしても連れて行きたいんだった ら・・・・・・﹂ 145 そう言うと俺はHK416をスリングから取り外し、部下に預ける と神斬狼を構える。 ﹁この俺を倒してからにしろ‼‼﹂ ﹁ふんっ‼いいだろう‼我が七星餓狼の前にひれ伏させてやる‼﹂ そう叫ぶと夏侯惇は凄まじい勢いで、俺に斬りかかって来た。それ を受け止めるが予想以上に力が強力で、受けた反動を流すべく後方 に飛び上がった。 ﹁中佐‼・・・・・・・・・ぐっ⁉﹂ 部下の何人かが援護しようとしていたが、足に弓矢が突き刺さって 撃てなかった。 ﹁姉者の邪魔はさせない﹂ 妙才だろう。正 弓を射たのは夏侯惇とは色違いの青色のチャイナ服に水色の髪、左 肩に髑髏の肩当てを取り付けた少女だ。 夏侯惇を姉者と呼ぶなら、恐らくは彼女が夏侯淵 漢升に討ち取られた。 史で夏侯淵ていえば夏侯惇と共に曹操を支えた弓の名手だが、定軍 山での戦いで蜀軍の黄忠 ﹁はぁああああああああ‼‼﹂ ﹁くっ⁉﹂ 夏侯惇は俺に凄まじい斬撃を仕掛けてくる。魏の大剣とも呼ばれ る彼女の剣術は一撃が重く、尚且つ素早い。例えるなら恋の実力の 一歩手前。 146 だが確実に霞や嵐よりは実力が上だろう。しかし俺も負けてはない。 力 なら俺の武は 素早さ を基準にする。そして互いの 神斬狼でこちらも機動力を活かした素早い攻撃を仕掛ける。夏侯惇 の武が 刃がぶつかり合う。 ﹁ふん‼なかなかやるじゃないか‼﹂ ﹁・・・貴様もな﹂ 夏侯惇の攻撃で俺も若干のコンバットハイになっていたその時、そ のテンションはいきなり低下させられる。 いきなり何処からか一本の弓矢が飛来して、それが夏侯惇の左目に 突き刺さったのだ。 ﹁ぐっ・・・・・・ぐぅううう⁉﹂ ﹁姉者⁉﹂ ﹁ちぃ⁉誰だ邪魔しやがったのは⁉﹂ 弓矢が飛来した方角を見ると、そこには弓を構えた金色の鎧を身に 纏った敵を見つけた。袁紹の兵だ。 恐らくは俺を仕留めようとして、もしくは袁紹本人の差し金だろう。 しかし一騎打ちを邪魔されたといいのには変わらない。 ﹁クソ野郎が‼あのクソ野郎を殺せ‼﹂ 蜂の巣 となり、最後の一撃で 俺がM45を構えて命令を下すと、部下達が一斉に発砲する。凄ま じい弾幕で袁紹軍兵士は文字通り 撃ち出された40mm弾の斉射で木っ端微塵となる。 ﹁か・・・夏侯惇将軍が⁉﹂ ﹁夏侯惇将軍が倒れた⁉﹂ 147 ﹁やられたのか⁉﹂ いきなりの出来事に敵は動揺を隠せずにいた。しかしその状況に1 番不味いと判断しているのは夏侯惇本人だ。 優秀な将軍である彼女なら、動揺による士気の低下がどれだけ不味 いことか、よく理解している。 自分の姉が負傷したことで夏侯淵が血相を変えて駆け寄る。 ﹁大丈夫か⁉姉者﹁来るな秋蘭︵しゅうらん/夏侯淵の真名︶‼‼﹂ えっ・・・?﹂ 大声で妹を静止すると、ふらつきながらも何とか立ち上がって曹操 軍将兵に振り向く。 ﹁聞け‼我が勇敢なる魏の精兵達よ‼これしきのこと、この夏侯惇 の武を恥ずからしめるもなではない‼ この身に受けた傷などで我が猛った心が怯むことは無い‼ 私はただ、名を傷つける事をいとおおう‼ 魏の将兵達よ‼見よ‼我が猛勇を‼そして感じよ‼魏武の思いを‼﹂ 魏兵に演説をしながら左目に突き刺さった矢を握り締めると、全員 が驚愕した。 彼女は自ら突き刺さった目と共に矢を引き抜いたのだ。 ﹁身体髪膚‼これ父母にうく‼たとえ片眼を失ったとて、我が武の 猛りは未だ冷めず‼ 心中渦巻くは敵を叩き伏せんが為の炎‼ 将よ見よ‼ 兵よ見よ‼ 我が眼と共に、その身の惰弱を飲み干して、魏の妙門を天に高々と 148 名乗りあげよ‼ 天は我等と共にあり‼我が片眼は天への供物と心得るがいい‼‼﹂ 盲夏侯 だ。 そういうと俺達は思わず息を呑んだ。彼女は自らの片眼を飲み込ん だのだ。後に有名となる 自分の片眼を飲み込むと、息を荒くしながらも再び叫ぶ。 と心得よ‼ ﹁ハァ・・・ハァ・・・供物は捧げられた‼これよりは、我が身を 天兵 立よ将‼ 立よ兵‼ 虎牢関を突破し、いざとく行かん‼帝都洛陽へ‼﹂ ﹁おお‼流石は夏侯惇将軍だ‼﹂ ﹁戦うぞ‼俺達はまだ戦える‼﹂ ﹁俺達には天兵の夏侯惇将軍がいる‼俺達は勝てるぞ‼﹂ 夏侯惇の凄まじい演説で士気が低下していた曹操軍兵士が息を吹き 返して来た。 しかしそれは俺達も気分が高まった。これほど勇猛で、誇りに満ち た敵は見た事が無い。 ﹁ならば立て‼剣を取れ‼弓を構えよ‼虎牢関を突破し、目の前に いる敵兵を・・・・目の前にいる精兵の傭兵共を・・・殲滅せよ‼﹂ ﹃応‼‼﹄ ﹁全軍整列‼鋒矢の陣のまま、城塞内部に突撃せよ‼魏武の強さを 天に見せ付けてやろうぞ‼‼﹂ ﹃うぉおおおおおおおお‼‼﹄ 士気をこれまでになく高めた曹操軍は矢の形をした正面突破に特化 した陣形[鋒矢の陣]で突撃を開始する。 149 しかし我に帰った俺達はすかさず銃撃を行なうが、敵は怯むどころ かこちらに向かって来た。 ﹁中佐‼これ以上は‼﹂ ﹁これまでか・・・A中隊は退却だ‼全部隊に通達‼魏の大攻勢だ ‼直ちに戦闘を中止して退却しろ‼﹂ ﹁了解‼﹂ 元譲‼貴様の誇りは見事だ‼だが消耗しきった状態では ﹁待て‼逃げるのか⁉﹂ ﹁夏侯惇 戦えまい‼決着は次にお預けだ‼﹂ 夏侯惇の静止に耳を貸さず、俺達は銃撃を加えながら虎牢関に退却 を開始する。 ﹁ウルヴァリンからウォーハンマー‼敵が大攻勢に出た‼直ちに阻 止砲撃を実行しろ‼適当で構わない‼とにかく撃ちまくれ‼﹂ <了解‼退却を援護します‼> ウォーハンマーによる援護砲撃で魏兵は若干だが速度を落とし、そ の隙に俺達は退却した。 城門を固く閉ざすとすぐに虎牢関を放棄して退却を開始。 ウルフパックに戦死者は出なかったが負傷者は87名。先にB、C 中隊と共に合流地点である荊州の南陽へと向かわせた。 董卓軍の被害は甚大で戦死者は5万に及ぶ。しかし何とか霞達は俺 達と合流を果たし、僅かな部隊と共に洛陽へと向かう・・・・・・・ ・・・・・。 150 第23話:魏の刃︵後書き︶ 何とか時間を稼ぎ、無事に洛陽に帰還しらライル達。しかしそこで 問題が生じた。 董卓軍の一部隊による反乱。 兵力の大半を南陽に向かわせたことで苦戦するが、ライル達の前に 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 御遣いと小覇王が駆けつける。 次回 [三英雄] 3人の英雄が少女を救う。 ※オリジナルキャラクターに付いて報告があります。 151 第24話:三英雄︵前書き︶ 注意:かなりぶっつけ作品で、急遽考案した作品です。 やはり直感で考えた作品は・・・・・・。 152 第24話:三英雄 虎牢関が連合軍により陥落。この戦いで連合軍も董卓軍も総戦力の 半数を失う甚大な被害を被った。 そして俺達も負傷者を含めてA中隊の第1分隊を除いてB中隊とC 中隊を先に部隊の合流地点である荊州の南陽へと向かわせた。 不要になった董卓軍を解体して、霞達と共に急いで洛陽城へと向か う。 ﹁民の退避は完了した様だな﹂ ﹁せやな、せやけどこんだけ静かやと何か不気味やな﹂ ﹁・・・何か寂しい﹂ ﹁ねねは恋殿と一緒だから寂しくないですぞ‼﹂ ﹁しかし・・・妙だな﹂ ﹁嵐、どうした?﹂ 民の気配が完全に消えた光景に嵐は何だか腑に落ちない様だ。 ﹁うむ・・・確かに静かなんだが・・・・・・静か過ぎる﹂ 嵐の言葉に俺も不信に思った。確かに静か過ぎる。確か南郷からの 報告では城下町には敵の細作に備えて巡回部隊を配備していた筈だ。 それが帰還してから一度も見かけていないのだ。そこで無線を取り 出して南郷の部隊に通信を行う事にした。 ﹁ウルヴァリンからサイクロプス。状況を報告せよ﹂ <中佐⁉よかった‼こちらは大変なことに‼> ﹁何だと・・・詳細を報告せよ﹂ 153 <第2師団の連中が反乱を起こして洛陽城を乗っ取りやがったので す‼> 報告の内容を聞いて驚かされる。1個師団の兵力が反乱を起こした と言われたら、誰でも驚く。 それを表わすかのように気配が急に増えた。それも敵意と共にだ。 辺りを見渡すと剣や槍、遠くでは弓を構えた董卓軍兵士が、俺達を 囲んでいたのだ。 ﹁ちょ・・・あんたら何のつもりや⁉﹂ ﹁すみませんねぇ、張遼将軍。時間がねぇ、から手短に言いますと、 あんた等の頸がほしいんですよ﹂ ﹁頸だと⁉﹂ ﹁えぇ、どうしますか?素直に頸を寄越せば楽に死なせてやります よ。最も、断っても頸は貰いますがね・・・・・・﹂ 反乱を起こした第2師団の男は下品な笑い方をして、連動するかの ように他の反乱兵達も笑い出す。 ﹁さて・・・とっとと武器を捨てて頸を・・・・・・・・・﹂ これ以上この男の声を聞くのはウンザリだ。すかさず俺はHK41 6を構えてヘッドショットをお見舞いする。 銃弾は貫通して後ろにいた反乱兵の頭部でようやく停止。二人同時 に音を立てながら絶命した。 ﹁時間が無い‼突破するぞ‼﹂ 今は時間が無い。俺達は正面突破を敢行して、月殿達の下に向かう。 しかし一個分隊6名に加えて俺、恋、霞、嵐を含めて10名のみだ。 154 対して敵の規模は1個師団の約2万。恐らくは全員では無いだろう が、共感出来ない者は殺害された。そう考えるのが妥当だろう。 ﹁ウルヴァリンからサイクロプス‼何処にいる⁉﹂ <洛陽東側にある廃墟です‼・・・くそ⁉見つかった‼> 通信の途中で同じ方角から銃声が聞こえて来た。銃声からしてMP 7A1だ。 俺達は出現する敵を仕留めながら合流地点へと向かう。 ﹁月‼詠‼待っとりや‼いま行くで‼﹂ ﹁董卓様‼どうかご無事で‼﹂ ﹁・・・月、詠・・・恋が助ける﹂ ﹁南郷‼こちらは11名で向かっている‼合流が完了するまで持ち 堪えろ‼﹂ <了解です中佐‼> 通信を簡単に済ませると、俺達は急いで東側にある廃墟へ向かった。 それから数分後、銃声を聞きつけてようやく廃墟が見える場所まで 到着した。辺りには既に射殺された反乱兵の死体が転がっており、 中には矢を受けた死体もある。 しかし目標の廃墟には敵が群がっており、数が違いすぎる。しかし 俺達はそれぞれの武器を構えた。 ﹁恋‼嵐‼霞‼一気に突っ込むぞ‼﹂ ﹁分かったで‼﹂ ﹁私と呂布が先に突っ込む‼征くぞ‼﹂ 155 ﹁︵コクリ︶﹂ そういうと嵐と恋が金剛爆斧と方天画戟を手にして背後から反乱兵 に突撃隊を仕掛ける。 一点突破を狙うのなら、精度は多少落ちても破壊力に特化した者を 先頭に繰り出させる。その点なら2人が最適だろう。 俺達は2人が仕留め損なった敵を確実に仕留め、活路を切り抜けた ら一気に廃墟に飛び込んだ。 ﹁董卓様‼﹂ ﹁嵐‼霞‼恋‼ライル‼無事だったのね‼﹂ ﹁中佐‼﹂ ﹁大尉‼残存戦力は⁉﹂ ﹁自分の隊に負傷者は無し‼しかし同行した董卓軍兵士の大半がや られました‼戦闘可能は7名‼﹂ 厄介にも程がある。向こうは何人いるのか分からない上に、こちら の戦力は南郷の部隊と月殿に付いた少数の兵士のみ。しかも洛陽に 向かうまでに弾薬を予想以上に消費してしまったから、あまり長い 間の戦闘は不可能。 更に連合軍も接近しているので、時間的猶予は無い。 ﹁詠、奴らは何者だ?﹂ ﹁迂闊だったわ・・・・・・まさか十常侍が裏で息を潜めてたなん て・・・﹂ ﹁十常侍とは・・・漢王朝腐敗の元凶だった、あの?﹂ ﹁ええ、この洛陽や小さな集落に暮らす民を苦しめてた一派よ﹂ ﹁そんで帝様も手駒にして好き放題しとったカス共や﹂ ﹁そして帝様と民を助ける為に我等が奴等を討ち果たしたのだが・・ ・・・・9人は確実に仕留めた﹂ 156 嵐の言葉で全ての糸を繋げた。黄巾の乱、大将軍何進暗殺、そして 月殿に恨みを持つ人物で当て嵌まるのは1人しかいない。 かつて私腹を肥やす為に民の怒りをかった十常侍筆頭の張譲。 その十常侍を潰されて、野心を邪魔した月殿達は奴から見て恨みの 根源だ。 ﹁中佐‼奴等が動き出しました‼﹂ ﹁霞達は月殿と詠に付いていてくれ‼奴等の相手は俺達でやる‼﹂ 外を見るとそこら中から反乱兵が突撃を開始した。俺達もそれぞれ の得物を構えて敵を減らす。 政宗 、部 ﹁敵を近づかせるな‼二人一組になって背後を取らせるな‼﹂ ﹃了解‼﹄ ﹁外道野郎が‼侍の子孫の力を見やがれ‼﹂ 敵が近過ぎるということで俺は神斬狼、南郷は日本刀 下達もそれぞれの得物で敵を仕留めて行く。 敵は確実に減っているが、それでも劣勢から脱することが出来ない。 敵側でも指揮官と思われる敵が大声で命令を下していた。 ﹁なにしてやがる‼数で押し潰せ‼﹂ 痺れを切らしたのか、俺達1人に対して10人以上が同時に襲いか かって来た。しかし冷静に仕留めていくが、マズイ状態になる。月 殿達に2人抜けられた。 ﹁月殿⁉﹂ 157 俺が向かおうとするが、敵に阻まれて動けない。霞達も同じ状況だ。 ﹁きゃあ⁉﹂ ﹁月⁉﹂ 敵が月殿目掛けて剣を振り下ろそうとするが、それが届くことはな かった。 ﹁ぎゃああああ⁉﹂ 剣を振り下ろそうとしていた敵の腕が斬り落とされ、月殿と詠の前 には剣を手にした女性だ。 ﹁か弱い女の子を寄って集って手に掛けようだなんて、最低な連中 ね﹂ ﹁孫策殿⁉﹂ 全員が驚いている矢先、少し離れた場所にいた敵が次々と血しぶき を発しながら倒れて行く。そこにいたのは両手に日本刀を持ち、白 い服を着た青年、一刀がいた。 ﹁ライルさん‼﹂ ﹁北郷君⁉﹂ 俺は突然の加勢で驚きを隠せなかったが、2人は俺に歩み寄って来 た。 ﹁二人とも・・・・・・なぜ助太刀を?﹂ ﹁俺の斥候が妙な部隊がライルさん達と戦闘してると聞いて掛け付 けたんです。それで来て見たら女の子が襲われてたから・・・﹂ 158 ﹁私は勘よ♪ライルに味方した方が面白いって感じたから♪﹂ ﹁勘ってね・・・・・・まあ、助太刀は感謝する﹂ ﹁ぶ∼ぶ∼、せっかくこんな美人が助けに来たんだから少しは喜ん でよね﹂ 3人に敵が一斉に襲いかかろうとしていたが、瞬時に反応して10 人以上を吹き飛ばす。その攻撃に敵は完全に怯んだようだ。 ﹁詳しい話はこいつ等を片付けた後で・・・・・・﹂ ﹁まあ、そうね♪﹂ ﹁確かに詳細は・・・邪魔な連中を始末したあとがいいですね﹂ そういうと3人は同時に敵の懐に飛び込んで行った。連合で最強と される孫策と一刀、更に俺も加わったことで敵はなす術なく倒され ていき、やがては関羽達も駆け付けて奴等は壊滅。首謀者も拘束さ れて、俺達の危機は見事に回避された・・・・・・・・・。 159 第24話:三英雄︵後書き︶ 一刀と孫策に助けられたライル達は、2人に真実を伝える。 この戦そのものが茶番劇であること。 裏で袁紹と張譲が絡んでいたということ。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 真実を聞かされた2人の英雄は最良の選択を選ぶ。 次回 第1章最終回 [任務完了] 3人の英雄が正義を貫く。 160 第25話:任務完了︵前書き︶ 第1章:陽人の乱、これで最終回。 161 第25話:任務完了 死の臭い が立ち込め 一刀と孫策の助太刀によって窮地を脱した俺達。周囲には反乱を犯 した一味の死体の山。そこから発せられる て来ているが、俺は気にせず2人と対峙している。 ﹁北郷君、孫策殿。改めてご助力に感謝いたします﹂ 助太刀してくれた事に対して、俺は踵を鳴らして敬礼をしながら感 謝する。 ﹁それでライルさん、こいつ等は?﹂ ﹁反乱を犯した第2師団の連中だ。こいつ等は董卓殿への忠義を簡 単に裏切り、姑息な十常侍の残党に寝返ったクソ野郎だよ﹂ ﹁そして、その生き残りが・・・・・・﹂ ﹁ええい‼縄を解け‼わしを敵に回して只で済むと思っているのか ⁉﹂ そういうと縛られた髭を生やして、かなり肥えた中年男を横目で見 る。 この男こそが民を苦しめ、無用な戦を引き起こして漢王朝の失墜を 引き起こした張本人、十常侍筆頭の張譲だ。追い込まれて溺れ死ん だと思われていたが、実際は息を潜め、月殿への復讐の機会を伺っ ていた。 ﹁それで、そこにいる可愛らしい女の子が董卓ちゃんね?﹂ 孫策は次に月殿を見るが、2人の間に詠が割り込んで来た。 162 ﹁違うわ‼私が董卓よ‼捕まえるなり処断するなり好きにしなさい よ‼﹂ ﹁詠ちゃん⁉﹂ ﹁・・・・・・いや・・・その銀髪の少女が董卓だな?﹂ 自分が董卓だといって月殿を庇う詠。だが嘘であるとすぐに見抜い た一刀に問われて呆気に取られる。 ﹁ち・・・違わないわよ‼大体、何処にそんな根拠があるのよ⁉﹂ ﹁理由ならある。君は名乗ってからまばたきの回数が異様に多い。 更にさっきから指が必要以上に動かされている。君が嘘をついてい る証拠だ。加えて君の発言からして後ろにいる女の子が董卓。そう 推理したまでだよ﹂ 詠は的確な推理で言い当てられて、視線を逸らして沈黙してしまう。 この行為が真実だと認めてしまっている。 ﹁私も一刀と同じ意見よ。うちにあなたを一回だけ見た事がある子 仲穎です﹂ がいてね、その子から特徴を聞いてたのよ。董卓ちゃんは大人しそ うな銀髪の女の子だって♪﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁・・・あなたの言うとおり、私が董卓 ⁉﹂ 一刀﹂ 嘘は通用しないと判断して、月殿は自ら董卓と名乗る。 天の御遣い ﹁俺は劉備義勇軍所属の北郷 ﹁あんたが ﹁へぅ∼、御遣い様ですか?﹂ 163 一刀が御遣いだと聞いて2人は驚愕する。しかし聞かされている噂 から事実と悟ったようで、落ち着きを取り戻した。 ﹁それで北郷君、孫策殿・・・・・・洛陽をご覧になった感想は?﹂ ﹁俺の思った通り、圧政が強いられた形跡は全く無い。それどころ か凄くいい街だよ﹂ ﹁民がいないのが気になるけど、昔みたいに荒れ果てた印象がある 洛陽とは思えないわね﹂ ﹁それでライルさん、街の人達は?﹂ ﹁ここから西に進んだ避難場所にいる。民を巻き込みたくは無かっ たからな・・・そこにいるクソッタレと違ってな﹂ ﹁黙れ‼おい小僧に孫策‼貴様等は反董卓連合だろうが⁉早いとこ その男と董卓を殺せ‼﹂ 張譲は尚も一刀と孫策に命令しようとするが、南郷が蹴り、霞が鉄 拳をお見舞いして黙らせた。 ﹁君達には話しておいた方がいいだろう・・・薄々は気づいている と思うが、今回の戦そのものが袁紹と張譲が結託した茶番劇だ﹂ 俺からの説明に2人は耳を傾ける。 ﹁袁紹の狙いはこちらの董卓殿を亡き者にして王室の中枢に入るこ と。それらの条件の見返りに漢王朝で再び私腹を肥やすという張譲 は情報を流す﹂ ﹁ねえ、だったら何でこの男は董卓ちゃんの印象を袁紹に流さなか ったの?あの女が知ってたとはとても思えないんだけど・・・﹂ ﹁恐らくは自分が討ち取ることで、より良い条件を要求するつもり だったのだろう﹂ 164 それなら納得できる。この時代で将、特に指導者を討ち取れば、か なりの褒美がもらえる。まあ、袁紹がそんな太っ腹なことをするは ずが無い。 ﹁俺達は誰かが情報を流していると薄々気付き、内面的に調べてい たという訳だ。更に折角だからその裏切り者を利用してしまおうと 考えたという訳だ﹂ ﹁あら、どう利用するの?﹂ 孫策殿が尋ねてくると俺は口元を笑わせて張譲を睨み付ける。 ﹁幸いにも袁紹やその一派には董卓殿の素顔は知られていない・・・ ・・・ここまでくればもう分かるだろ?﹂ そういうと南郷が背中に背負っていた政宗を抜刀して俺に渡す。そ れをしっかりと受け取ると刃を張譲に近づける。 俺の仕上げとは裏切り者の頸を董卓殿とすること。死体があるのな ら信憑性が高いし、周囲には反乱兵の死体だらけ。更に月殿の素顔 は知られていないから、誰が証明しようとしてもその頸が董卓とな ってしまう。 ﹁まっ・・・待て⁉た・・・頼む‼命だけは・・・そ、そうだ‼一 緒に王朝の座を目指そう‼ソナタ等の力があれば簡単に実現するぞ ‼﹂ 俺は張譲の命乞いに対して俺は溜息をついてしまう。 ﹁なっ・・・何だったら金もやる‼一生遊んで暮らせるぞ‼﹂ ﹁・・・・・・うるせぇんだよ・・・虫が・・・﹂ ﹁まっ・・・﹂ 165 小さく殺気を込めて俺は政宗を振り下ろした。頭を失った体は切断 董卓の頸 をお願いします﹂ 面から大量の血が吹き出し、斬り落とした頸を孫策殿に手渡した。 ﹁孫策殿、この ﹁いいの?﹂ ﹁はい、それから北郷君には皆の保護を・・・・・・﹂ ﹁はい、もちろん喜んで保護します。それで、ライルさん達はどう するんですか?﹂ ﹁部下が合流地点で待っている。すぐに離れるよ﹂ ﹁ライルさん・・・・・・﹂ 振り向くと寂しそうな表情をしながら見上げてくる月殿だ。 ﹁・・・では、機会があればまた﹂ ﹁ライルさん・・・本当に一緒に来ないのですか?﹂ ﹁・・・・・・残念ですが、俺達は袁紹やその一派に目をつけられ た・・・そんな奴等がいけば・・・﹂ 俺達が董卓軍から離れる理由はまさしくこれが理由だ。せっかく彼 女達の安全を確保出来たのに、俺達がついて行ったら確実に袁紹は それを理由に戦を広めるだろう。それを防ぐ為の措置だ。 ﹁そう・・・・・・ですか・・・﹂ ﹁申し訳ない・・・それと・・・・・・﹂ そういうと一歩だけ下がり、踵を鳴らして直立不動の姿勢を執り、 最敬礼を行なう。 ﹁短い間でしたが、あなた様のような素晴らしいお方と行動を共に 166 出来て、光栄でした﹂ 一言礼を言うと、霞達に歩み寄る。 ﹁詠、霞、嵐、恋、ねね。月殿をしっかり頼むぞ﹂ ﹁分かってるわ﹂ ﹁任せとき‼うちらがライルの分までしっかり守ったるさかいな‼﹂ ある ﹁ライル、お前には助けられた借りがある。それを返すまで死ぬな よ﹂ ﹁・・・ライル、また会う﹂ ﹁ふっ・・・ふん‼言われるまでもないです‼﹂ が握られている。 一言ずつ礼を言うと俺は再び孫策に話しかける。その手には 物 ﹁孫策殿、何も言わずにこれを・・・﹂ ﹁あら、恋文かしら♪﹂ からかい半分の表情で俺を見るが、渡された物を見て表情が真面目 になる。 ﹁これは・・・・・・・・・﹂ ﹁決して間違った使い方をしないように・・・﹂ そういうと俺は撤退を開始する為に準備を開始する。部下達が脱出 手段を取りに向かう。 それから数分後、その手段が来た。 ﹁な・・・なんや⁉﹂ ﹁物の怪か⁉﹂ 167 ﹁・・・・・・・・・﹂ 一刀以外の人間は驚きを隠せずにはいなかった。それもそうだ。俺 7.62mm6銃身ガト 達が脱出手段として用意したのはNATO3色森林迷彩の[光と影 ]を施し、ガンターレットにM134D リングガンを取り付けた4輪駆動軽汎用車両のM1114[ハンヴ ィー]だからだ。 が必要となったと判断した結果だ。 これまでの俺たちの移動手段が徒歩で、流石に遠距離を移動する 足 到着した3両のハンヴィーに部下達が乗り込み、俺も乗り込もうと しながら一刀に振り向く。 ﹁北郷君‼皆を任せたからな‼﹂ ﹁はい‼ライルさん達もお元気で‼﹂ 改めて月殿達を彼に任せると、俺はハンヴィーに乗り込み、全員が 乗り込むと移動を開始。洛陽の南西門から南にある合流地点の南陽 に向かった。 この後、無人の洛陽を連合軍が占領したことで陽人の乱は終結した。 戦いの後、劉備義勇軍は恋達を保護したことで屈指の戦闘力を誇る ようになり、更に復興活動や民の心を癒すという戦後処理で活躍し たことが表彰され、徐州の州牧に襲名。 孫策は戦での活躍は無かったが、董卓とした張譲の頸を討ち取った ことで、討逆将軍に任命。独自の軍備を持つ権限が与えられた。 その他勢力も活躍に応じてそれ相応の褒美が齎されたが、虎牢関で の非人道的行為に加えて、敵と通じていたということで袁紹のみは 大幅な降格、1年以内の権限剥奪が言い渡された。 168 ・・・・・・。 これで俺達の任務は完了した。次に俺達が向かう場所は 戦場 新たなる 169 第25話:任務完了︵後書き︶ 陽人の乱が終結して一月。俺達は次の戦場へと舞い戻る。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re そして独立を目指す孫策軍がライル達の前に現れる。 次回 [孫策との契約] 英雄同士、対話が始まる。 ※アンケート第2段実施中。詳しくは活動報告まで。 170 第26話:キャラクター紹介2︵前書き︶ 第1と同様にキャラクターを紹介します。 171 第26話:キャラクター紹介2 今回はレオンと南郷の紹介をします。本編とは無関係ですので、お 気軽にご覧ください。 レオン・キャメロン 生年月日:1991年7月22日 のタトゥー 年齢:27歳↓21歳︵後漢末期降臨時︶ 血液型:A型 身長:177cm 体重:63kg 髪:ブロンド 瞳:ブルー 忠義 人種:イギリス人 特徴:右腕に 所属:ウルフパック 階級:大尉 役職:機甲中隊中隊長 コードネーム:パニッシャー 愛用武器:大剣[龍舌] ウルフパックの機甲中隊を任されている戦車兵。元々はイギリスの 生まれで7歳の頃に父親の仕事の影響でアメリカに移住。 高校卒業と同時に家を飛び出して海兵隊に志願した。 性格は年相応の好青年であり、女性に対してはジョーク混じりのナ ンパをよく仕掛けている。 しかしライルやアレックス達仲間を大事にする心と、戦闘時に的確 172 な状況判断能力を有して、高い任務遂行率を誇る。 武久 同じ大尉である南郷とは親友同士。 南郷 生年月日:1992年1月1日 のタトゥー 年齢:27歳↓21歳︵後漢末期君臨後︶ 血液型:A型 身長:165cm 武人 体重:57kg 髪:ブラック 瞳:ヘーゼル 人種:日本人 特徴:左腕に 所属:ウルフパック 階級:大尉 役職:飛行中隊中隊長 コードネーム:サイクロプス 愛用武器:日本刀[政宗] ウルフパックに所属している日本人海兵隊員の1人。父親は南郷流 単刀心眼術の師範代で、母親は代々続く呉服屋の生まれ。 現代の侍と呼ばれる武道に精通した海兵隊員で、特に日本刀の扱い に関しては模擬戦でアレックスを負かす程。 海兵隊には武者修行として参加したが、ヘリの才能をライルに見出 だされて対地攻撃ヘリのパイロットに選ばれ、高い戦果を発揮させ た。 性格は真っ直ぐで、罪の無い人達に手を挙げる外道には容赦しない。 日本文化を大事にする和の心も兼ね揃え、材料さえあれば和服すら 173 も制作出来る。 一刀とは親戚︵父親 武仁。一刀の父親の従兄弟︶。 同じ大尉であるレオンとは親友同士で、北郷 の名前が南郷 174 第26話:キャラクター紹介2︵後書き︶ 次回は本作に復帰します。 175 第27話:孫策︵前書き︶ 第2章:群雄割拠。 陽人の乱よりやく一月。ライル達は彼女と再会する。 176 第27話:孫策 陽人の乱が終結して一ヶ月が経過した。洛陽を脱出してから、俺達 は無事に合流地点である南陽に辿り着き、再編成が完了するとすぐ に移動。後継者争いが続いている荊州から東に向かい、今は予州に ある汝南という場所にいる。 ここから北西に移動すると、曹操が治める許昌があり、更に西に進 めば袁術の領土である寿春が存在する。 現在駐屯している山中の近くにある集落から当面の間だけ居座る見 返りに出没する賊討伐を無料で引き受け、俺達は討伐を行なってい た。 ﹁中佐、突入部隊から報告。タンゴリーダーダウン。残敵も制圧完 了との報告です﹂ ﹁タンゴリーダーの頸は?﹂ ﹁確保したとのことです﹂ ﹁分かった。タンゴベース爆破後に帰還する﹂ ﹁了解﹂ A中隊所属の曹長は命令を実行する為に向かう。俺達139名に対 して敵の数は約3000人程だったが、練度は袁紹軍兵士よりほん の少しだけ優れている程度。 一言でいえば俺達の敵では無かった。まずは30名の強襲部隊で山 頂を根城としていた敵に襲撃を仕掛け、SMAWと60mm軽迫撃 砲による先制。不意を突かれた敵は蜘蛛の子を散らすように逃げ出 し、山の尾根で包囲していた部隊が各個撃破、最後に締め付けてい くように円を閉じる。 ベトナム戦争で韓国派遣軍が実施したゲリラ掃討作戦[スレッジハ 177 ンマー]の縮小版である。 ﹁中佐、爆破準備が整いました﹂ ﹁分かった、部隊をセーフティエリアに退避させろ﹂ ﹁了解です﹂ 敵拠点の爆破準備を済ませた部下が知らせて、俺はすぐに退避命令 を発令して同じ様に安全な場所に退避する。 敵の拠点は鉱山跡地を利用したもので、かなり大きい物だ。ここを 残していたら再び別の盗賊が使用する可能性がある。 それを防ぐ為に爆破して崩落させるのだ。部隊の退避を確認した曹 長は、内部に仕掛けたTNT爆薬のスイッチを押した。 それと同時に坑道の奥からばくはつおんが鳴り響き、やがては入り 口から爆風と爆炎が吐き出され、坑道そのものが激しく音を起てて 崩落していった。 ﹁爆破完了を確認﹂ ﹁よし、任務完了だ。帰還する・・・少し待て﹂ 帰還命令をだそうとした瞬間、通信があったのでインカムを使って 応える。 ﹁こちらウルヴァリン、感度良好。どうした?﹂ <中佐、東南方向から大規模な騎馬隊を確認> 周囲で警戒に当たっていた部隊からの方角をみると確かに砂塵が舞 っている。結構な数の騎馬がこちらに向かって来ていたのだ。 前にも似た状況があったような感覚に襲われるが、双眼鏡を取り出 してその馬群を見る。幸いにも賊では無さそうだ。更に牙門旗も確 認できたが、確認したら思わず溜息を吐いてしまった。 178 ﹁はぁ・・・・・・﹂ ﹁中佐、指示を﹂ 小覇王 が接近してい ﹁俺達を討伐しに来たんじゃないだろうが、そのまま警戒を維持だ﹂ ﹁了解です・・・単騎掛けで誰か来ます﹂ ﹁言わなくてもわかる・・・全隊に連絡。 るが、攻撃は禁ずる﹂ ﹁了解、伝えます﹂ そういうと周辺で警戒している部隊に連絡する為、曹長は移動して いく。その直後に馬に跨った1人の人物がやって来た。 桃色のロングヘアに赤色の大胆なチャイナ服・・・・・・孫策だ。 ﹁やっほ∼♪一月ぶりねライル♪﹂ ﹁・・・・・・お久しぶりですな、孫策殿﹂ ﹁ぶ∼ぶ∼‼ちょっとは嬉しそうにしてよね﹂ ﹁あのね・・・・・・賊の討伐完了直後に現れたら誰だって同じ反 応をしますよ・・・﹂ ﹁そういうものなの?﹂ ﹁そういうものです・・・で・・・何かご用で?﹂ ﹁う∼ん・・・・・・なんとなく♪﹂ ﹁・・・・・・帰りますよ﹂ ﹁ちょっと⁉冗談よ冗談‼ちゃんと話があるから⁉﹂ 細やかな仕返しは成功して、孫策は見事に慌てた。 ﹁まあ、ここでなんだから、取り敢えずは私達の陣に来ない?ここ から5里くらい行った所にあるんだけど・・・﹂ ﹁ここでは駄目なのですか?﹂ ﹁私はいいんだけど・・・・・・﹂ 179 そういうと彼女は空を見上げる。上空には雲が覆いかぶさっており、 湿気の臭いもする。少ししたら大雨が降ってくるだろう。 俺達は別に構わないのだが、女性を雨の中にいさせるのは流石に忍 びない。そう考えたら彼女の陣に向かった方がいいだろう。 ﹁分かりました、では私が陣に送り届けさせて頂きます﹂ ﹁お願いね♪あっ‼それとこの前のカラクリってあるの?﹂ ﹁カラクリ?﹂ ﹁ほら、洛陽で別れた時に乗って行った・・・﹂ そう言われて記憶を掘り起こす。するとなんて事はない。あの時に 見せたカラクリといえばハンヴィーしかない。 ﹁はい、ここに来る際にも乗りましたが・・・・・・﹂ ﹁︵ワクワク・・・ワクワク︶﹂ 彼女は目を輝かせながらこちらを見つめてくる。あからさまに何か を望んでいる。それに気が付いた俺は溜息を大きく吐き出す。 ﹁はぁ・・・・・・乗りますか?﹂ ﹁うん‼乗る乗る‼﹂ まるで子供のように孫策は両手を挙げて、その場に飛び跳ねる。そ れも洛陽で出会った本人なのか、疑問に思うほどにだ。 ﹁曹長、聞いての通りだ。俺は孫策軍の陣地に送り届ける。お前た ちは先に駐屯地に帰還しろ﹂ ﹁了解﹂ 180 曹長に命令すると、俺は孫策を連れてハンヴィーに乗り込み、孫策 軍の野営陣地へと向かって行った・・・・・・・・・。 181 第27話:孫策︵後書き︶ 海兵隊の誇り,Re 孫策の案内で彼女の軍野営地に到着しらライル。そこで名高い武将 真・恋姫無双 達と出会う。 次回 [孫策] 内乱の準備、確実に進む。 182 第28話:孫策軍︵前書き︶ 孫策を送り届けるライル。既に疲労困憊の状態で彼女達と出会う。 183 第28話:孫策軍 俺達の駐屯地から5里くらい進んだ平原。ここには孫策軍の陣営が 敷かれていた。賊討伐完了直後に現れた孫策を送り届けたが、その 道中が大変だった。 好奇心旺盛な彼女が車内に取り付けてある戦術情報端末を弄ったり、 操縦したいといいだして抱きついて来たり、更にはガンターレット のM134Dで誤って同行している彼女の部下達に発砲しかけたり と散々な目にあった。 警護 は初めてだからどう対処すればいいのか全 これなら下手な戦場の方がまだ楽だ。なにしろ軍に入隊してからこ んなドタバタな く分からない。 そしてその疲れる要因はというと・・・・・・。 ﹁雪蓮︵しぇれん/孫策の真名︶‼勝手に出向くなと言った筈だが ‼﹂ ﹁だって∼面白そうだったんだも∼ん♪﹂ 黒髪のロングヘアで眼鏡を掛けた女性に叱られていた。全身から知 的な大人の女性の雰囲気を醸し出し、天女とも思える美女だ。 ﹁これ周瑜よ。策殿を叱るのも後にしたらどうだ?客人が呆気に取 られておるぞ﹂ ﹁むぅ・・・変な所を見せてしまったな﹂ ﹁ライル∼♪冥淋︵めいりん/周瑜の真名︶がいじめるぅ∼♪﹂ そういいながら孫策は俺に抱きつこうとするが、先程の女性に阻止 された。そして先程から隣にいる銀髪で不敵な笑みを浮かべる女性 184 が話しかけて来た。 ﹁すまぬな客人よ﹂ ﹁いっ・・・・・・いえ・・・結構です・・・それより自己紹介を させて頂きます﹂ それだけ言うと、俺は踵を鳴らして天幕にいる彼女達に敬礼をする。 ﹁恐らくはご存知かとは思いですが、自分はウルフパック指揮官を しておりますライル・L・ブレイドと申します﹂ 公覆じゃ。見知りおけぃ﹂ ﹁ほう・・・策殿から聞かされてはいたが、本当に変わった名前じ ゃな。儂は先代様より仕えておる黄蓋 ﹁挨拶が遅れたな、私は軍師の周瑜。字は公瑾だ﹂ 姉御 だ。 苦肉の策 文台から孫呉に仕えている歴戦を誇る宿 名前を聞いても最早驚かなくなった。 黄蓋といえば先代の孫堅 もしくは 将で、一番有名なのが赤壁の戦いで行なわれた偽の降伏 母 と称される孫呉きって 公瑾も孫策を語るには欠かせない存在と言える。幼少の頃に だろう。印象的には 周瑜 断禁の仲 と呼ばれていたが、彼女を という処だろう。 美周郎 孫策と出会い、彼を支え続けた の軍師。 美周嬢 正史の周瑜はその美しさから 呼ぶとすれば ﹁いきなり連れて来てすまんな。道中はこの子が大変だったであろ う?﹂ ﹁ちょっと冥淋⁉それじゃまるで私が困らせたようじゃないの⁉﹂ ﹁だったらなぜライル殿が疲れた顔をしているのだ?﹂ ﹁ぎくっ・・・・・・・・・﹂ ﹁はっはっはっ、相変わらず策殿は公瑾には形無しじゃのぅ﹂ 185 ﹁ブーブー、祭︵さい/黄蓋の真名︶まで私をいじめるぅ∼﹂ ﹁お取り込みの最中に申し訳無いが、なぜ貴女達がここにいて、俺 を連れて来たのか説明して頂けないか?﹂ なかなか本題に入ってくれないので、仕方なく強制に戻す。 ﹁すまないな、実は袁術の命令でこの周辺を根城としていた賊の討 伐に赴いたのだがな﹂ ﹁先に向かった斥候から伝令があってのぅ。お主等が既に壊滅させ ておったのじゃ﹂ ﹁それで折角だからね、少し話がしたかったのよ﹂ 孫策の最後の言葉が気になる。まあ、大体の内容は検討できる。 ﹁そこで聞きたい。ライル殿、貴君等の部隊も共に我等孫呉に仕え ないか?﹂ やはりだ。この土地に来てから既に曹操軍と荊州軍から勧誘を受け ている。特に曹操軍からはご丁寧に曹操自らの直筆の手紙が添えら れていたが、俺は曹操の使者に断りと誘いに対する感謝の手紙を預 けた。 袁紹軍からも使者は来たが、あまりにも脅迫じみたしつこい勧誘だ ったので、3人いた使者の内の1人を射殺して追い返した。 ﹁1つ聞いてもよろしいか?﹂ ﹁いいわ﹂ ﹁なぜ我等を?﹂ ﹁私達が袁術の客将になっているのは知っているわね?﹂ 尋ねられると俺は小さく頷く。 186 ﹁母様が亡くなって数年、今まで苦渋を舐めてきたわ。民を守る為 に止む無しと何度思ったことか・・・・・・﹂ ﹁ええ・・・袁術の側近達は民を食い物にするしか脳がない愚者。 奴等のせいで既に幾多もの民が犠牲になった﹂ ﹁儂等は父祖から受け継がれてきた土地を取り返し、民を救わなき ゃならん・・・それが先代様の願いじゃった・・・﹂ そういうと3人は重い表情をする。確かに実際の孫堅も名声や新た な領土には興味を示さず、家族や民の身近な平和を守ったとされる 偉大な人物だ。 と仰いましたか?﹂ だが彼女達の言葉に気になることがあった。袁術の側近といったが 袁術の側近 袁術本人とは言っていない。 ﹁すみません、先程 ﹁そうだ﹂ ﹁ということは・・・・・・﹂ ﹁悟ったようじゃのぅ。そういうことじゃ﹂ ﹁それで、お願いライル。せめて今だけでもいい。私達に力を貸し て﹂ そういうと孫策は俺の手を握って力を貸してくれと頼む。じっと見 てくる瞳に思わず引き込まれそうだったが、彼女達の表情からは確 かに俺達を必要としている。それも野心や野望の為ではない。真剣 に民や家族を守りたい一心だ。 ﹁・・・・・・いいでしょう﹂ ﹁本当に⁉﹂ ﹁ええ、俺としても興味が湧いてきました。仕官するかは別ですが・ ・・・・・﹂ 187 ﹁えぇ∼⁉そのまま一緒にいようよ∼♪何だったら私のこと好きに してもいいからぁ∼♪﹂ ﹁だぁ‼いちいちくっつかないでください‼﹂ 頼むから孫策よ。いちいち抱きついて来て、その豊満な胸を押し付 けないで頂きたい。というよりも絶対に分かってやっているだろう。 何とか引き離して、3日後に改めて軍議を行なうことになり、俺は 部下達に伝える為、駐屯地にて行く・・・・・・・・・。 188 第28話:孫策軍︵後書き︶ 孫呉独立に力を貸すことになったウルフパック。再び訪れた孫策軍 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 本陣で軍議をする中、新たな武将と顔を合わせる。 次回 [軍議] 虎と狼。集う。 189 第29話:軍議︵前書き︶ 再び訪れた孫策軍陣営、そこで新たに2人と出会う。 190 第29話:軍議 協力を容認してから3日後、俺はアレックス、レオン、南郷を連れ て再び孫策軍本陣に訪れた。 ﹁海兵隊指揮官のライルと部隊長級士官3名だ。軍議参加の為に参 上した﹂ ﹁お待ちしておりました。孫策様と皆様が本幕でお待ちです﹂ 本陣の警備に当たっていた衛兵に報告すると、すぐに本陣内部に入 る。その途端に周囲から孫策軍将兵からの視線が集まる。俺達の格 好だが今までの迷彩服ではない。 グリーンのジャケットにグリーンのズボン、グリーンのベルト、カ ーキのシャツ・カーキのネクタイをあわせて頭にはカーキの制帽、 A サービスドレスだ。 ジャケットの肩には金属の肩章を付け、カーキシャツの襟には小型 の金属の階級章を付けたクラス ﹁中佐、孫策殿の印象はどんな感じですか?﹂ 覇気 が感じられるが・・・・・・﹂ ﹁あぁ、性格は子供っぽいところがあって明るい。だが一指導者の 貫禄や英雄の名に相応しい ﹁なんだよライル、その間は?﹂ ﹁何を考えているか分からない、あんな人間が一番厄介だ・・・・・ ・﹂ ﹁本能のままに突き進むですか?﹂ ﹁そういうことだ。後は何が起こっても驚くな﹂ ﹁中佐・・・何ですか最後のは?﹂ ﹁はぁ・・・直ぐに分かる﹂ 191 そう言いながら本幕の前に到着した。入り口にいた衛兵に報告する と、その衛兵は本幕に入り、入幕許可が出ると中に入って行く。 ﹁失礼しま﹁ラ∼イル♪待ってたわよ♪﹂うわっ⁉﹂ 俺が中に入るなり、いきなり孫策が抱きついて来た。いきなりの事 だったのでアレックス達は唖然としてしまう。そして俺が言った意 味を理解した。 ︹こう言う意味か・・・・・・︺ ﹁ちょっと⁉孫策殿‼いちいち抱き付かないでと言っているでしょ う⁉﹂ ﹁えぇ∼⁉だって普通じゃつまらないんだもん♪それに胸が当たっ て嬉しいでしょ?﹂ そういいながら孫策は胸を俺の右腕に押し付けてくる。必死に部下 達に視線で助けを求めるが、誰1人として助けなかった。というよ りも助けられないが正しいだろう。 ﹁ほら⁉俺の部下が唖然としているでしょ⁉それに今から軍議をす るんだったら早く離れて下さい‼始められないでしょ⁉﹂ ﹁えぇ∼、いいじゃない♪それよりも私と一緒にお酒飲み﹁やめん か馬鹿者‼﹂きゃん⁉﹂ なかなか離れない孫策を周瑜がチョップを食らわして引き離してく れた。ようやく解放された俺は部下達に振り向くが、アレックス以 外のレオンと南郷達は視線を反らした。 なお、この時のアレックスの表情は面白がっていた。後で仕返しし てやる・・・・・・。 192 ﹁さて、馬鹿がやっと離れた処で軍議を始めるが、その前に紹介さ せて貰うぞ﹂ 周瑜は彼女のそばに居た2人に視線を向ける。1人は黄緑色の髪に 孫策や周瑜以上に大胆極まりない服装をしたのほほんとした雰囲気 の女性。 伯 もう1人は先程からこちらを鋭い視線で見ていて、赤いミニスカー トのようなチャイナ服を来た濃紫色の髪をした女性だ。 ﹁はぃ∼。私は冥淋様の下で軍師としての勉強をしている陸遜 言といいますぅ﹂ ﹁・・・甘寧、字は興覇だ﹂ 何度もいうが最早驚かない。 ﹁次はこちらが・・・・・・自分はアレックス・ヴォード。海兵隊 副官をしております﹂ 武久であります﹂ ﹁自分は部隊長のレオン・キャメロン﹂ ﹁同じく部隊長の南郷 レオンと南郷も敬礼をしながら自己紹介をする。本当なら細かい所 属も名乗らなければならないが、絶対に理解できない筈だ。 ﹁その3人がライル達の中でも偉いのね?﹂ ﹁はい、他にも部隊長はいますが上位的になるとこの3人が指揮を 担います﹂ ﹁あのぅ∼、いいですか?﹂ ﹁何でしょう?﹂ ﹁皆さんの服装は制服か何かですかぁ?冥淋様から聞かされてた服 193 装と違いますぅ﹂ ﹁あっ‼それ私も気になってた♪﹂ 確かにこのサービスドレスはこの世界に来てから初めて着用してい る。 しかし話を元に戻したい周瑜が手を叩いてくれた。 ﹁その話はまた今度だ。軍議を始めるぞ﹂ そういうと俺達は適当な空いている席に座り、聞こうとしていた孫 策と陸遜も渋々だが席につく。 ﹁さて、時間が無いから簡潔に話すぞ。今朝方、袁術からの使者が やってきた。何でも反乱を起こした農民軍が寿春城に接近している らしい。我等はそれを迎え撃てというらしい﹂ ﹁まっ、実際に命令してるのって袁術ちゃんの武官や文官でしょう けどね♪﹂ それはいえている。3日前から気になっていた情報を集めていたが、 寿春城に関する情報が入手出来た。 それによるとこの世界の袁術はまだ幼い女の子で、子供だから知識 も乏しい。しかし寿春城の城下町では一般の民が苦しみ、袁術軍の 武官や文官と繋がりがある規模が大きい商人が栄えているらしい。 と判断できる。 情報からして恐らくであるが袁術本人は関わっていないだろう。 の現在位置は?﹂ 袁術は利用されている 反乱軍 状況からして ﹁その ﹁寿春城から西に80里︵中国の距離測定で約40km︶ですぅ。 袁術軍は全て我等に押し付けるみたいで、向こうからは一兵も派兵 していません﹂ 194 ﹁ここから急行するとしてもギリギリになります。何しろ の動きが素早いのですから・・・・・・﹂ 彼女達と合わせて反乱軍という言葉を強調する。 ﹁ライル殿、そちらが動かせる兵力は?﹂ ﹁我等4名を含めて総数427名。全員が導入可能です﹂ ﹁いつ動ける?﹂ ﹁準備が整い次第、すぐにでも・・・﹂ 反乱軍 ﹁そうか・・・・・・我等は寿春城の常備軍と挟撃する形が妥当。 貴殿の隊はどう動くか?﹂ 周瑜は地図を指しながら迎撃の案を練る。寿春城の北側と東側には 長江、黄河に続く中国3大大河の一つである淮河が流れ、南には大 別山が聳え立つ。反乱軍を挟撃すれば退路を遮断出来る形となる。 ﹁質問があります。寿春城のすぐ北側はどうなっていますか?﹂ ﹁緩やかな河岸が広がっているが、水軍の攻撃に備えて高い城壁が 聳え立つ。しかもその間には何の遮蔽物も無い﹂ ﹁あと対岸は草原が広がってるわ﹂ それを聞いて俺はニヤリと笑った。その言葉で作戦内容が決定した のだ。 ﹁でしたら我等は北側から向かいます。危険ですが敵も予想すらし 敵の虚を突く ・・・ということか?﹂ ていないでしょう﹂ ﹁ ﹁その通りです。第1攻撃は我等が担いますが、くれぐれも北側に は兵を回さないで下さい。かなり危険ですので・・・・・・﹂ 195 そういうと彼女達も様々な表情を見せる。 ﹁そうか・・・なら任せよう。派手に暴れて敵の注意を逸らしてく れ。その隙に我等が大攻勢に出るとしよう﹂ その後も俺達は反乱軍鎮圧という名前の任務を遂行する為に軍議を 真価 続けた。そして全ての打ち合わせが完了すると、俺達は作戦に備え て準備を開始する。行動開始は4日後、間もなくで俺達の を発揮させられる・・・・・・・・・。 196 第29話:軍議︵後書き︶ 海兵隊の誇り,Re 彼等の本気 30 が見られた。 運命の4日後がやって来た。孫策軍の独立支援をする為にライル達 真・恋姫無双 は行動を開始する。そこには 次回 [海兵隊の真髄] 乱世の戦場に獣達が暴れ出す。 ウェポンライブラリー MP7A1 口径:4.6mm 銃身長:180mm x ライフリング:4条右回り 使用弾薬4.6mm 装弾数:40発 作動方式:ショートストロークピストン式マイクロ・ロッキング・ ラグ回転ボルト閉鎖 全長:340mm︵ストック展開時541mm︶ 重量:1.2kg 発射速度:850発/分 銃口初速:750m/s 有効射程:200m 197 P90に対抗 P90を意識し H&K社で開発された小口径サブマシンガン。FN して開発されたMP5の後継で、発表当初はFN たPDWという名称だったが、のちにPDWは一般名詞となり、こ の銃は短機関銃︵MP:Maschinenpistole︶を指 すMP7の名前が冠された。 7mm×33弾の開発データを元に開発した4.6mm×30専用 弾薬を使用する。公式発表では、P90の5.7mm×28弾より も威力があるとアナウンスされているが真偽不明である。 ウルフパックでも軽量かつ高火力を誇ることから警邏任務や偵察、 狙撃手のメインアームとしてだけではなく、車両や航空機の自衛用 火器としても使用されている。 198 第30話:海兵隊の真髄︵前書き︶ 寿春城攻略、この戦闘で海兵隊が本気を出す。 199 第30話:海兵隊の真髄 寿春城、淮河の南岸に位置される古い街で南北交通の要衝であり、 古来より兵家必争の地であった。 仲謀が指揮をする農民兵に扮した正規軍 いまその寿春城に反乱を起こした農民軍が接近していた。しかしこ れは孫策の妹である孫権 だ。そしてその後方には敵を挟撃する名目で布陣した孫策軍が準備 を整えていた。 ﹁いよいよね・・・﹂ ﹁ええ・・・これでようやく祈願を果たせる﹂ ﹁向こうの動きは?﹂ ﹁はいぃ∼、袁術軍の軍師皆さんはお馬鹿さんばかりですから、気 付く筈はないですぅ﹂ 確かに袁術軍に動きが無い。籠城の準備をしているかに思えるが、 向こうは袁家の武官と文官だ。優秀な奴がいる筈が無い。 いるとすれば袁術の側近であり、姉替わりの張勲だけだ。 ﹁公瑾よ、あの者達はまだ動かんのか?﹂ ﹁まだのようです。ライルはこちらに伝令を送るといっていました が・・・・・・来たようです﹂ 周瑜が指差した方角を見ると二台のハンヴィーがこちらに向かって いたが、一台は普通のハンヴィーでは無い。車内に統合端末攻撃統 制機能を満載したM1145だ。ウルフパックでは実質上の戦闘指 揮車両になる。 200 孫策軍兵士は何事かと警戒したが、ライル達だと知ると警戒を解い た。そして彼女達の前で停車すると次々と海兵隊員が降車して、1 人が孫策達に歩み寄る。ウルフパックでも何人かいる女性隊員だ。 ﹁失礼致します。孫策様でありますか?﹂ ﹁私が孫策よ﹂ ﹁お初にお目に掛かります。本官はウルフパックより派遣されまし た前線攻撃管制官のイリーナ・レインフォード中尉であります﹂ ﹁えっと・・・・・・﹂ ﹁気兼ねなくイリーナとお呼び下さい﹂ ﹁そう、分かったわイリーナちゃん♪﹂ ﹁それでイリーナとやら・・・最後の中尉やら前線・・・何たらは 役職か何かか?﹂ ﹁はい、中尉は階級・・・・・・兵卒や兵長の指揮官級とお考え下 さい。そして前線攻撃管制官は要するに軍師のようなものです﹂ イリーナは簡単に階級と前線攻撃管制官について説明する。かなり 砕いた説明だったので、彼女達も理解できたようだ。 ﹁ライル中佐からの命令でこちらに戦闘指揮所を設置するように言 われております。許可を・・・・・・﹂ ﹁構わない、それでライル殿は他に何か言っていなかったか?﹂ ﹁はい、間もなくでこちらも攻撃を開始すると仰っていました﹂ ﹁どうやって攻撃するんですかぁ?﹂ ﹁それは見た方がよろしいかと・・・・・・﹂ 何やら陸遜の雰囲気が興奮気味だったので、危険になる前に回避し た。 やがて設営の準備が完了した部下が報告すると、イリーナも所定の 201 位置に就く。 ﹁こちらストーム。設営完了しました。いつでも観測可能です﹂ <こちらウルヴァリン。了解した。北側の敵状況を報告せよ> ﹁予定地点に敵影無し。しかし城壁周辺に敵兵を幾分かを確認。座 標は0−8−3、0−4−0﹂ out> <了解した。30秒後に攻撃を開始する。孫策殿達に備える様に伝 えてくれ。ウルヴァリン 簡単に伝えると再び孫策達に歩み寄る。 ﹁孫策様、間もなくで攻撃が始まります。出陣の用意を・・・﹂ ﹁分かったわ、・・・・・・祭?﹂ ﹁応‼任せておかれよ‼﹂ ﹁しかし・・・ライル殿達の姿が見えないようだが・・・・・・・・ ・何だ⁉﹂ 周瑜が北側を覗いていた瞬間、寿春城の北側が突然爆発した。それ も複数だ。 立て続けに爆発が起こってその場にいた袁術軍兵士はもちろん、孫 策軍兵士も驚きを隠せなかった。 この攻撃の元は北に4kmの位置にあった。 155mm自走榴弾砲[ 平原にある高台に並ぶ6台の鉄の塊・・・・・・・・・ウルフパッ クで使用されているM109A6PIM パラディン]からの砲撃だ。 だがライル達の攻撃はこれだけでは無い。 ﹁ちょ・・・・・・今の爆発は⁉﹂ ﹁策殿‼﹂ ﹁どうしたの⁉・・・・・・・・‼⁉﹂ 202 ﹁なんだ・・・・・・あれは・・・・・・﹂ 彼女達は更に驚かされる事になる。それもそうだ。河岸に向かうよ うに突き進む小型船のような装甲車と水上を轟音を鳴らしながら突 き進む3つの巨体。 そしてそれらが上陸すると全体の姿を現した。ウルフパックの5両 の水陸両用遠征戦闘車[EFV]にホバークラフト型強襲揚陸艇[ LCAC−2]、更にそこから現れた2両ものM1A2[エイブラ ムス]と180名の海兵隊員だ。 ﹁何なの・・・あの車は・・・・・・﹂ ﹁なんというカラクリだ・・・﹂ 見た事も聞いた事も無い兵器を前に全軍が驚愕するが、もちろんこ れだけでは無い。とどめと思わす上空から飛来した複数の物体。 20mm3銃身ガトリング。両翼にLAU−61 2.75in19連装空対地ロケットランチャー[ハイド 機首にM197 D/A ラ70]2門。 8発のAGM−114M空対地セミアクティブレーザー誘導式ミサ Mod3 40mmグレネードマシンガンを イル[ヘルファイアⅡ]を搭載したAH−1Z[ヴァイパー]4機。 機体側面にMk19 搭載した2機のCH−53K[スーパーシースタリオン]だ。 CH−53Kが着陸すると120名もの別の海兵隊員が降下して、 袁術軍に対して攻撃を開始する。 陸上と上空からこの時代にはまさに最強の攻撃を行なうウルフパッ ク。ライル達が最も得意とする敵前強襲上陸作戦である。 203 対して猛攻を受ける袁術軍兵士達は恐怖に駆られて逃げ出すが、互 いが邪魔しあって逃げようにも逃げられず、次々と仕留められる。 その圧倒的な火力と戦闘力を前に孫策達はあぜんとしていた。 ﹁すごい・・・・・・﹂ 天の軍隊 ・・・・・・﹂ ﹁なんという・・・・・・攻撃だ・・・・・・﹂ ﹁これが・・・・・・ ﹁雪蓮・・・・・・﹂ ﹁ええ・・・敵はライル達の攻撃で士気が無くなったわ、今がまさ に好機・・・ライル達には負けてられないわね﹂ 南海覇王 を抜刀して、切っ先を寿春城に向ける。その表 そういうと孫策は馬に跨り、腰に身に付けていた孫家に受け継がれ る宝刀 英雄 情はライル達に見せた明るい子供のような表情ではなく、指導者と して、武将として、更に呉に暮らす民を守る守護者としての の名に相応しい顔立ちだ。 ﹁孫呉の民よ‼呉の同胞達よ‼幾多もの苦渋を味わい、待ちに待っ た時は今来た‼ 天の軍隊 と共に‼再び我等の手に取り 我が宿敵袁術を討ち滅ぼし、呉の栄光を‼父祖より受け継がれて来 たこの土地を‼ 我等に力を貸してくれた 戻すのだ‼ これより孫呉の大号令を発す‼ 勇敢なる呉の将兵よ‼その命を燃やし尽くし、呉の為に死ね‼﹂ ﹃応‼﹄ 勇ましい演説をしながら孫策は南海覇王を高く掲げ、それを力強く 振り下ろした。 204 ﹁全軍‼出陣せよぉ‼‼﹂ ﹃うぉおおおおおおおおおお‼‼‼﹄ 兵士の大地を揺さぶる鬨と共に孫策を先頭に全軍が袁術軍に突撃す る。西からは孫策軍本隊、南には回り込んだ孫策軍先遣軍、北には ウルフパックの猛攻。袁術軍に勝機は完全に無くなり、残るは東側 陽動 で、本命は東側にいる だけだが、袁術軍を含めて孫策軍も気付いていなかった。 ウルフパックの攻撃全てが、壮絶な ということを・・・・・・・・・・・・。 205 第30話:海兵隊の真髄︵後書き︶ 孫策軍とウルフパックの猛攻を受ける袁術軍。既に勝敗は喫してい たがライル達にはまだ手段があった。 ]だ。 海兵隊の誇り,Re ライトニング 寿春城内部への強襲。袁術という少女を救い出す。これがライル達 真・恋姫無双 の作戦[オペレーション 次回 [ライトニング] 孫呉の宿願、ついに叶う。 206 第31話:ライトニング︵前書き︶ 注意:今作は迅速な作戦展開を重視していますので、セリフが少な めです。 207 第31話:ライトニング 勝敗は既に喫していた。北からはウルフパック、西からは孫策軍本 隊、南からは孫権軍による猛攻で袁術軍兵士は投降するか、逃げ出 すしか手段が残されていなかった。 ﹁は・・・早く門を開けろ‼﹂ ﹁天罰だ・・・天罰が食らった・・・﹂ ﹁早く逃げろ‼逃げるんだ‼﹂ 袁術軍兵士はいち早く逃げ出す為に残された東門を開門するが、彼 等が逃げ出せることはない。 ﹁開いたぞ‼早く逃げ・・・・・・﹂ 内開きの城門が開いた瞬間、逃げ出そうとした兵士が次々と倒され ていった。城門を出てすぐ傍に仕掛けられたM18A1指向性対人 地雷[クレイモア]によって爆死させられた。 そして左右の城壁には・・・・・・・・・。 ﹁こちらウルヴァリン‼城内への突入開始‼﹂ 3方向の攻撃に気を取られている隙に、俺達は東側に回り込んでい た。 袁術軍が動揺してくれたことで嬉しい誤算があった。敵は城壁から 逃げ出してくれたお陰で、東側を見張る敵が一人もいなかったのだ。 開かなかった場合に携行していたC4プラスチック爆薬は無駄にな ったが・・・。 208 城内に突入した俺達は分隊毎に互いを援護しながら突き進む。 ﹁予定通りに行動しろ‼第1分隊は俺と来い‼第2分隊は北、第3 分隊は南、第4分隊は西の城門の確保‼残りは残敵を掃討だ‼﹂ ﹃了解‼﹄ 俺達はそれぞれの役目を全うする為に行動する。寿春城の城門は破 壊してはならない。 制圧完了後に自分達の拠点にする為だという理由で周瑜から言われ ている。 袁術の確保と首謀者の抹殺 だ。 ならば俺達強襲部隊が先行して城内に突入して、中から開門すれば 解決できる。 そして俺達の役目はただ一つ。 袁術がいるとされる場所は大体は見当がつく。中央エリアにある玉 座の間だろうが、その周辺も調べる必要はある。 ポイントマンを務める俺は12ゲージセミオートショットガンのM KA1919A1を構えながら、出現する敵を次々と仕留めていく。 ひとまず近くの部屋の前に取り付くと、左右に分かれる。 ﹁フラッシュバン‼﹂ 俺が僅かに扉を開けると同行している伍長が、その隙間から内部に M84非致死閃光手榴弾を投げ込み、起爆すると一気に室内に突入。 中には武装した敵兵数名と文官と思わしき敵がいたが、直ぐに袁術 がいないということを確認して、サイドアームのMk45A1Aの 照準を合わして発砲する。 数秒もしない内に制圧は完了。内部に突入すると死体に蹴りをいれ て確かめるが反応が無い。確実に死んでいる証拠だ。 209 ﹁室内クリア‼次だ‼﹂ ﹃了解‼﹄ 室内を制圧すると次の部屋の制圧に向かう。その途中で何度か敵と 鉢合わせしたが、素早く神斬狼で確実に仕留める。やはり敵の練度 は、袁紹軍兵士よりはマシだが、それでも他勢力と比べてもかなり 低い。 仕留めるには対して苦労しない。俺は部隊に停止命令を出して装備 を点検させる。異常が無いと確認したらインカムで状況確認を行な う。 ﹁ウルヴァリンから各部隊へ、現状を報告せよ﹂ <こちら第2分隊、北側城門を確保‼外の部隊と合流しました‼> <第3分隊からウルヴァリン‼南門を押さえました‼敵は降伏を始 めました‼> <第4分隊から報告‼開門に成功‼孫策軍が突入を開始しました‼> <第5分隊からウルヴァリンへ‼城内にいた敵が降伏‼他の部隊か らも同じ報告‼> 全部隊は確実に任務を消化して行っている。完全制圧は目前だ。し かし俺達も急いだ方がいい。 もし俺達の予想通り、袁術は利用されているだけなのだったら、利 用している一派が何をしでかすか分かったものではない。 MKA1919A1に新しいマガジンを挿入すると、担当エリアで 1番大きい扉の左右に張り付く。だが扉の向こう側には複数の気配 が感じられる。扉を少しでも開けたら確実に串刺しだろう。 ﹁中佐﹂ ﹁分かってる・・・入り口を作るぞ﹂ 210 そう指示するとC4爆薬を取り出して、円形状に設置していく。こ うすることで壁に人が通れる程度の穴を開け、爆発で動揺した敵を 突入して仕留められる。 設置が完了すると少し離れて、点火器のスイッチを押して、その直 後に仕掛けたC4が爆発して、そこに大穴が開いた。 ﹁Move!!Move!!﹂ 俺を再び先頭に一気に第1分隊が突入。やはり扉の前には敵が待ち 構えていたが、すかさずMKA1919A1で攻撃。一度の攻撃で 複数のターゲットを仕留めた。 ﹁なっ・・・・・・なんだてめえ等⁉﹂ 片手剣を持った大男が動揺しながら状況を理解しようとしていた。 その傍には金髪でツインロールをした髪型で、豪華なドレスを身に 付けた少女と青い髪にキャビンアテンダントのような格好をした女 性がいる。 ﹁動くな‼武器を捨てて床に伏せろ‼﹂ ﹁チィ⁉﹂ 自分が首 暫く警戒したが、剣を持った大男が何を考えたのか、近くにいた少 女を羽交い締めにして剣を突きつけた。 ﹁お嬢様⁉﹂ ﹁な・・・七乃⁉﹂ ﹁動くな‼動いたらこのガキの命はねえ・・・・・・﹂ 完全に馬鹿な奴だ。こんな状況でそんなことをすると、 211 謀者です と言っているようなものだ。 俺はややこしくなる前にすかさずMk45A1AをCQCホルスタ ーから抜き、照準を合わせるとその男の額に45,ACP弾を撃ち 込んだ。 ﹁お嬢様‼﹂ 先程の女性が人質にされた少女に駆け寄り、男の腕から抜け出した 少女をしっかりと抱きしめた。 ﹁七乃∼‼怖かった・・・・・・怖かったのじゃ⁉﹂ ﹁よかった・・・・・・﹂ さっきの状況が怖かったのか、泣きじゃくる少女を抱きしめながら 髪を撫でて落ち着かせる女性。 敵意は全く感じられないが、一応はMk45A1Aを構えながら歩 み寄る。 ﹁・・・・・・袁術軍総大将の袁術と、側近の張勲だな?﹂ 事前情報と孫策から聞かされていた特徴から、この2人が袁術と張 勲だと確信する。しかし見れば見る程、本当に子供だ。こんな少女 が総大将とはとても思えない・・・・・・。 尋ねられた2人はすぐこちらに振り向き、張勲と思われる女性が、 袁術と思われる少女を隠すように立ち塞がる。 ひとまずは落ち着かせる為に、Mk45A1Aをホルスターに戻す。 ﹁大丈夫だ。俺はあんた達を保護しにきた﹂ ﹁・・・・・・保護・・・ですか?﹂ ﹁ああ、ひとまずは降伏してくれ。身柄の安全は保証する﹂ 212 ﹁ほ・・・・・・本当ですか?﹂ ﹁本当だ。孫策殿達も理解してくれる筈だ﹂ ﹁ひぃ⁉孫策とな⁉﹂ どうやら若干の恐怖を抱いているようだ。俺は溜息を吐くと、優し く微笑んで見せて袁術の頭を優しく撫でる。 ﹁大丈夫だ。孫策達は君が悪人じゃないことを知ってる。だから怖 がらなくてもいいよ・・・・・・な?﹂ ﹁ほ・・・本当かえ?﹂ そう言われるとすぐを頷く。そうしたら安心したようで、袁術は張 勲の手を握りながら立ち上がる。 その後、突入してきた孫策達が袁術を保護したことで、袁術軍の残 存戦力は完全に降伏。寿春城を完全に制圧した。 この戦いの後、孫策軍は祈願の独立を遂に勝ち取り、揚州一帯を平 定。孫呉は漢王朝の中でも屈指の規模にまで拡大。それに手を貸し た俺達も瞬く間に大陸全土に広がった・・・・・・・・・・・・。 213 第31話:ライトニング︵後書き︶ 袁術と張勲を無事に保護して、遂に念願の独立を勝ち取った孫策軍。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 彼女達の大義や正義を目の当たりにしたライルは遂に決断を下す。 次回 [虎に降る狼] 群狼、遂に家を見つける。 214 第32話:虎に降る群狼︵前書き︶ 独立を勝ち取った孫呉。ライル達は決断を下す。 215 第32話:虎に降る群狼 寿春城を制圧して、孫呉の独立が成されて8日が経過した。この短 期間で揚州各地に置いて袁家に組みしていた豪族が次々と降伏もし くは壊滅させられた。 勿論これ等は俺達による物だ。孫策軍は寿春城に暮らす民達への炊 き出しや復興作業に力を注いでいる。次の統治者は以前とは違うと いうことをアピールすることが目的だ。 俺達も新たにジーンから受領したMH−60S[ナイトホーク]に 搭乗して、呉の首都である建業︵現在の南京︶に向かっていた。 火急速やかに建業城玉座に出頭せよ ひとまずは合肥に駐留していた俺達に、先に戻っていた孫策からの 使者が来たからだ。内容は という出頭命令だ。 そして建業城に到着すると、城門にいた兵士の案内で玉座の間に向 かう。 ﹁ライル﹂ ﹁なんだ?﹂ ﹁決まったんだな?﹂ ﹁・・・・・・あぁ﹂ ﹁そうか・・・・・・悔いはないな?﹂ ﹁あるわけがない・・・﹂ ﹁ふっ・・・・・・まあ、俺やレオン達もお前の決定には従うさ・・ ・俺はお前の相棒だからな﹂ ﹁・・・・・・・・・ありがとう﹂ 最後に小声で礼を言うと、案内をしてくれていた衛兵が立ち止まり、 俺達に振り向く。 216 ﹁こちらで孫策様と皆様がお待ちです。申し訳ありませんが武器の 提出をお願いします﹂ ﹁分かった、預かっていてくれ﹂ ﹁壊すなよ?﹂ そういうと俺とアレックスはホルスターからM45を取り出して、 衛兵に渡す。 B ブルードレスだ。 俺達が着ている服装は迷彩服やサービスドレスではない。海兵隊で 主に式典等で着られるクラス 真っ黒の立て襟、襟元には海兵隊のシンボルとカラーが付き、肩に は金属の階級章を取り付けられ、白の制帽を被っている。 俺とアレックスの着ている物は似ているが、相棒が将校用の青いズ ボンを履いているに対して、俺は将官用の黒を履いている。 ﹁お待たせしました。孫策様がお会いになられます﹂ そういうと制帽を左脇で挟み、玉座の間に入って行く。するとその 直後に視線が俺達に集中する。中央奥の階段の先にある椅子には孫 策、その傍には周瑜。 階段の前には黄蓋、甘寧、陸遜の他に孫策とよく似た少女が2人に 片眼鏡を掛けた少女に、忍装束のような服装を来た少女。恐らくは 孫呉の中でも重鎮クラスの人物達だろう。 俺達は階段前まで歩み寄ると、踵を鳴らして最敬礼の姿勢をする。 踵を鳴らした音が部屋中に鳴り響いている。 ﹁孫策殿、招集に応じ参上致しました﹂ ﹁待ってたわ2人とも。ごめんなさいね、忙しい時に呼び出しちゃ って・・・・・・﹂ ﹁構いません。戦後処理でしたら部下達だけでも充分に可能です﹂ 217 孫呉に ﹁そう・・・・・・早速で悪いんだけど、この間の返事を聞かせて くれない?﹂ 俺達は寿春城制圧後、駐屯地に再び孫策達が訪れて来て、 といっていた。 と言われている。それを 中佐の決定に従う 参加するか否か、よく話し合って欲しい 部下達全員に話した処 俺は相棒に目を配ると、片膝を地面に着けて、右手を背中に回して 前屈みになる。 ﹁・・・我らウルフパック総数427名は、海兵隊の誇りと狼の名 に誓い、孫呉軍人としての忠誠を誓います﹂ 孫呉に降る ・・・。 これが俺が導き出した答えだ。 ・・・ 部下達に帰る家を与えてやりたい気持ちに、孫呉が俺達と同じ志を 持っていると判断したからだ。その答えを聞くと孫策殿は僅かに微 笑んで立ち上がる。 ﹁ライルにアレックス。性は孫、名は策、字は伯符。真名を雪蓮。 この真名を貴方達に預けると共に孫呉は貴方達を歓迎する﹂ ﹁確かに預かりました。こちらも改めて名乗らせて頂きます。米海 兵隊第3海兵遠征軍第31海兵遠征隊指揮下第0独立機動大隊[ウ ルフパック大隊]大隊長のライル・ローガン・ブレイド海兵隊中佐 であります﹂ ﹁でしたら自分も・・・。米海兵隊第3海兵遠征軍第31海兵遠征 隊指揮下第0独立機動大隊[ウルフパック]副大隊長のアレックス・ ヴォード海兵隊少佐であります﹂ ﹁今後も私達の新しい家族としてよろしくお願いするわ。皆も異存 218 は無いわね?﹂ 雪蓮殿が異存が無いか促す。皆が賛同の表情をする中、1人だけ違 う反応を見せていた。 ﹁・・・・・・私は反対です﹂ ﹁蓮華︵れんふぁ/孫権の真名︶?﹂ ﹁姉様‼私は反対です‼この者達は雇われていたとはいえ、一度は 我等の敵だったのですよ⁉そのよいな危険分子など即刻つまみ出す べきです‼﹂ 異議を唱えて来たのは雪蓮殿を生真面目にしたような性格をした少 女だ。雪蓮殿の事を姉様と呼ぶのだから、恐らくは次女の孫権と思 われる。 その孫権殿は俺を睨みつけるが、本音を言うと怖くも何ともない。 ﹁落ち着きなさい蓮華。確かにライル達は董卓連合で私達と敵対し たけど、彼が私達に謀反はしないはずよ﹂ ﹁なぜですか⁉なぜそのような事が分かるのです⁉﹂ ﹁勘よ♪﹂ その言葉で全員が呆気に取られる。しかしどういうわけか雪蓮殿が よく言う勘は外れた事が一度も無いらしい。まあ、俺達も忠誠を誓 った以上は裏切る気などさらさら無いが・・・。 すると見かねたのか、周瑜殿が彼女の視界から俺達を隠すように歩 み寄って来た。 ﹁雪蓮が名乗ったのだから私も改めて名乗らせてもらうそ。我が性 は周、名は瑜。字を公瑾。真名は冥淋だ。この真名をお前達に預け よう﹂ 219 ﹁じゃあ次はシャオね♪シャオは孫 しゃおれん 尚香で真名は小蓮♪シャオっ 尚香といえば孫堅の末の女性で、あまり記録は残されていない て呼んでね♪﹂ 孫 が赤壁の戦いの後に劉備と政略結婚されたとされる。 しかしこの世界の人物達全員が性転換している訳じゃないようだ。 ﹁よろしくお願いします。シャオ殿﹂ ﹁うん♪よろしくしてあげる∼♪﹂ ﹁儂も名乗っておくぞ。儂の真名は祭じゃ。今後もよろしく頼むぞ﹂ ﹁それじゃあ次は私ですね∼。私の真名は穏︵のん/陸遜の真名︶ と言います∼﹂ 黄蓋こと祭殿と陸遜こと穏がいつもの調子で真名を教えてくれた。 みんめい ﹁あの⁉私は性は周、名は泰。字は幼平‼真名は明命といいます‼﹂ 忍装束のような格好をして長い黒髪。目尻が上がった赤い瞳の元気 一杯少女が周泰が丁寧に挨拶をする。 周泰で有名なのが宣城の戦いだろう。まだ孫策が在命中だった頃、 宣城の守備を任されていた孫権に山越が襲い掛かり、全身に12箇 所もの怪我を負いながら、命懸けで孫権を守り通した逸話がある。 ﹁よろしく頼む。明命﹂ ﹁はい‼お願いしますです‼﹂ 非常に眩しい笑顔で返事をする明命。すると次にキョンシーのよう 子犬 とすればこの子は な裾が長い茶色の服装で片眼鏡を右目に掛けた少女が恥ずかしそう みたいな小動物だろう。 に話しかけて来た。印象的には明命が リス 220 あーしぇ ﹁あ・・・あの・・・・・・せ・・・性は呂、名は蒙。あ・・・字 は子明。真名は亞莎。こ・・・この真名を・・・・・・貴方にあ・・ ・預けます‼﹂ 所々で詰まりながらも自己紹介をする。しかしこの子があの呂蒙と は・・・・・・。 呂蒙といえば唯の猛将から猛勉強して文武両道の良将になったとさ という言葉を残し れる人物で、一番有名なのが関羽を討ち取ったとされる。 士別れて三日、即ち更に刮目して相待すべし ているが、関羽を崇拝している人達からすれば憎まれる存在だが、 興覇。すまないが真名はまだ預けられない﹂ どう考えてもそんな印象は微塵も感じられない。 ﹁・・・我が名は甘寧 ﹁大丈夫だ甘寧。信頼に値すると判断した時で構わない。よろしく な﹂ ﹁よろしくするかは蓮華様次第だがな・・・・・・﹂ そういうと甘寧は孫権を見る。するとあからさまに不機嫌の雰囲気 を醸し出している孫権がいた。見かねた雪蓮殿が促す。 仲謀だ﹂ ﹁蓮華、あなたも名乗りなさい﹂ ﹁・・・・・・孫権 冷たく名乗ると、雪蓮殿に軽く礼をすると早々と玉座の間から出て いった。隣にいた甘寧も礼をすると後を追う。それを雪蓮殿は溜息 を吐きながら飽きれる。 ﹁ごめんなさいね2人とも。あの子には後で言っておくから・・・﹂ ﹁大丈夫です。別に気にしてはいません﹂ 221 ﹁いきなり信頼しろという方が無理なもの。誇り高き故でしょう﹂ ﹁そう言ってくれると助かるわ﹂ 代わりに謝る雪蓮殿。この後に俺達の待遇が決まった。 ・活動拠点の提供 ・兵員の異動や兵器の提供は無し ・袁紹が動き出した場合、独自行動権の容認 以上が俺が提案した条件で、冥淋殿からは ・建業の警邏活動と鍛錬の指揮 ・天の知識を可能な限り、呉繁栄に提供 ・ライルを建業城で生活させる ・ライルを含めた指揮官級兵士の将軍職に就かせる ・孫家、呉の武将を口説きまぐわう 5つが義務付けられた。これらを互いに容認したことで俺達は正式 に孫呉軍の正規部隊に組み込まれた。 海兵隊 を手に入れたのだから・・・・・ この事実は瞬く間に諸侯に知れ渡ることになる。なぜなら孫呉はこ の世界で最強の力を誇る ・・・・・・・。 222 第32話:虎に降る群狼︵後書き︶ 孫呉に降ったライル達。その事実は瞬く間に諸侯に知れ渡る。ある 勢力は納得して、ある勢力は強敵出現に闘志を燃やし、またある勢 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 力は愚策を練ろうとする。 次回 [諸侯の反応] 海兵隊の名が知れ渡る。 223 第33話:エイブラムスとガビアルの紹介︵前書き︶ ひと段落しましたので、二種類の装甲戦闘車を簡単に紹介致します。 224 第33話:エイブラムスとガビアルの紹介 [戦闘車] エイブラムス 44口径120mm滑腔砲 型式番号:M1A2 主武装:M256 副武装1:M240砲塔同軸7.62mm機関銃 副武装2:M2主砲同軸12.7mm重機関銃 副武装3:M134D戦車長用7.62mm6銃身ガトリングガン 副武装4:M2装填手用12.7mm重機関銃 乗員:4名︵戦車長、砲手、装填手、操縦手︶ 安定 ウルフパックの主力戦車。後漢末期における人海戦術に対応する為、 対人・対拠点を重視する配慮が施されており、M829A3 多目的対 対人榴散弾を多く積載している。 翼装弾筒付徹甲弾を最小限までに減らし、M830A1 戦車榴弾とM1028 車体カラーリングもNATO3色迷彩をベースとした光と影迷彩が ウォーランス によって6輌が運用さ 施され、森林が多い呉に適した車体となっている。 ウルフパックでは戦車部隊 れ、地上部隊の主戦力となっている。 なお、隊長のレオンが搭乗する車両は007号車であり、第二次世 界大戦で活躍したミハエル・ヴィットマン大尉を尊敬して砲身に撃 破マークまで描いている。 ガビアル 型式番号:EFV8A1 225 30mmチェーンガン 12.7mm砲塔同軸重機関銃 主武装:Mk44 副武装:M2 乗員:3名︵指揮官、砲手、操縦手︶+12名 砂漠のキツネ という ウルフパックで使用されている遠征戦闘車。こちらも同じ迷彩処置 が施され、車両内部には第二次世界大戦で によって 異名を持ったエルヴィン・ヨハネス・オイゲン・ロンメル元帥の写 ウォーピック 真を尊敬している人物として飾られている。 歩兵戦闘車として5輌が歩兵戦闘車部隊 運用されている。 因みに名称のガビアルとはインドガビアルのことである。 226 第33話:エイブラムスとガビアルの紹介︵後書き︶ 次は航空機です。 227 第34話:三羽の鳥の紹介︵前書き︶ 立て続けに航空機3種を紹介致します。 228 第34話:三羽の鳥の紹介 ヴァイパー 型式番号:AH−1Z 20mm機関砲 種類:対地攻撃ヘリコプター 固定武装:M197 ヘルファイア ハイドラ70LAU−61D/A BGM−114 ウルフパックで運用されている対地攻撃ヘリの最新機種。海兵隊カ ラーではなく陸上自衛隊のアパッチなどで見られる森林迷彩が施さ レイピア で4機が運用されており、パイロットの れており、特に隊長の南郷が搭乗する機体にはシャークマウスが描 かれている。 対地攻撃部隊 実力も加わって高い対地攻撃能力が実現している。 ナイトホーク 型式番号:MH−60S 7.62mm6銃身ガトリングガン 機体種類:中型汎用ヘリコプター 固定武装:無し 武装:M134D ウルフパックで運用されている中型汎用ヘリコプター。 によって5機 こちらにもヴァイパーと同じ迷彩処置が施されており、地上に駐機 グラディウス していても高いカモフラージュ率を誇る。 ウルフパックでも航空機部隊の一つ が運用されており、空中強襲部隊の支援から救出作戦という幅広い 229 作戦で多用されている。 スーパーシースタリオン 型式番号:CH−53K Mod3 機体種類:大型輸送ヘリコプター 固定武装:無し 武装:Mk19 ウルフパックで運用されている大型輸送ヘリコプター。ヴァイパー ファルシオン で2機が運用 やナイトホークと同じく迷彩処置が施されているのが特徴である。 ウルフパックでも航空機部隊の一つ されており、大規模作戦の下準備や強襲部隊の支援などで活動して いる。 230 第34話:三羽の鳥の紹介︵後書き︶ 次回より本編に戻ります。 231 第35話:諸侯の反応︵前書き︶ ライル達が呉に降る。その事実は瞬く間に広まる。 232 第35話:諸侯の反応 孫呉が天の軍隊を配下に納める。この事件は瞬く間に各諸侯に知れ 城の玉座では劉備軍の重鎮達が集ま 渡った。その情報は一刀と劉備が治める徐州にも齎されていた。 そして徐州の中心地である下 っていた。 ﹁・・・呉からの情報は以上になります﹂ ﹁やっぱり・・・ライルさん達は呉に入ったんだね?﹂ ﹁ご主人様は薄々勘付かれておられたのですか?﹂ ﹁うん、まあ・・・何となくだけどね﹂ 関羽からの問いに対して一刀は簡単に答える。玉座にいるのは一刀 と劉備、関羽、張飛、孔明。他に霞、嵐、恋、ねねの8人だ。 趙雲と鳳統は兵の鍛練で徐州北部にある東海で、表向きには死んだ ことにされている月は専属侍女長として詠と共に仕事をこなしてい る。 ﹁朱里ちゃん。他に何かないかな?﹂ ﹁はい、実は袁術軍に加勢した時に新しい兵器を使ったらしいんで すが・・・・・・﹂ ﹁なあ朱里、どんな兵器なん?﹂ ﹁はい・・・信じられないんですけど・・・・・・細作によります と、全身が鋼鉄で出来た火を吐く車に水から出て来て、陸に上がる と中から兵士が現れる車。それと剣を振るった音を出す空を飛ぶカ ラクリらしいんです﹂ ﹁物の怪かなんかだしよったんかいな・・・ライルは?﹂ ﹁一刀様は何かご存知なのではありませんか?﹂ 233 ﹁今ので分かったよ嵐﹂ その言葉で全員・・・・・・立ちながら居眠りをしている恋と見と れているねねを除いてだが。 ﹁ライルさん達が使ったのは戦車と戦闘車、それにヘリコプターっ ていう兵器だ﹂ ﹁お兄ちゃん、それは何なのだ?﹂ はわわ軍師 ﹁判りやすく話すと俺の世界の兵器だよ。軍隊では必ず見掛けるん だ﹂ ﹁はわわ・・・天の国の兵器でしゅか⁉﹂ 天の国の兵器と聞いて孔明は台詞を噛みやすくなる となってしまう。そんな彼女は確かに可愛く、和み役にもなる。 ﹁はいはい、落ち着こうな朱里﹂ ﹁はぅあ∼﹂ 自分の主に頭を撫でられて喜ぶ孔明。周囲から撫でて欲しいという 視線が一刀に集中するが、咳払いをして場を戻す。すると霞と嵐が 妙に輝いた表情をし始める。 ﹁ま、ライル等がうち等の仲間にならんかったんはしゃあないけど、 それやったらもう一片だけライルと闘いたなってきたで‼﹂ ﹁うむ‼ライルとは本気の一戦を交えたいものだ‼﹂ 武人としての誇りが疼いたのか、2人の背後には真っ赤な炎が燃え ているように見えた。すると何時の間にか目を覚ました恋が2人の 裾を引っ張って注目させる。 234 ﹁なんや恋、起きとったんかいな?﹂ ﹁・・・霞と嵐、ライルと闘うの、ダメ﹂ ﹁呂布?﹂ ﹁・・・ライルは恋の大事な家族・・・霞と嵐も恋の家族。家族は 仲良くしなきゃダメ﹂ いかにも恋らしいことを言いながら2人を見る恋。その純粋な瞳は 破壊力抜群で、その状態でお願いをされると、いつもこちらが折ら れざる得なくなる。 ﹁はぁ∼、確かにせやな。本音ゆうたら勝てるとは思えへんからな ぁ﹂ ﹁うむ・・・・・・﹂ こと曹操が最 ﹁しかし・・・当面は呉の動きには注意を払う必要があるのは事実。 細作には優秀な者を向かわせましょう﹂ ﹁任せるよ愛紗﹂ 乱世の奸雄 そういうと隣国である呉の対応を話し合う。 一方で予州西部にある許昌。この街は 初に魏の首都に定めたことで有名で、実際にこの世界の曹操もこの 街を中心地としている。 を そして許昌城のとある一室。2人の女性がいた。1人はツインテー ルにウェーブを掛けた金髪をした少女。そして全身から 孟徳だ。 覇気 醸し出している。彼女こそが魏王とも覇王と称される曹操 ﹁そう・・・あの部隊は呉に降ったのね?﹂ ﹁ああ、今朝方呉から帰還した細作からの報告だ﹂ 235 ﹁その者に十分な報酬を用意しておいて、出来るだけ奮発を﹂ ﹁わかっているさ、華琳︵かりん/曹操の真名︶﹂ 曹操のことを真名で、なおかつタメ口で話している長身の女性が報 酬を容認する。 曹操と同じく金髪だが、膝まで伸びる髪を束ねて、黒いノースリー 子考。 ブのハイネックシャツと紫紺の服を身に纏った大人の女性。彼女の 名前は曹仁 魏の大盾 の異名を持 魏では攻撃よりも守備や防衛を得意とされ、今の今まで彼女の防衛 を破られたことがない。そのスタイルから つ。 ﹁だけど・・・この鉄の車はともかく、空を飛ぶカラクリはにわか に信じ難いわね・・・﹂ ﹁だが実際に壊滅した袁術軍はこれらの兵器に甚大な損害を受けた らしい。しかもあの男の部隊には損害無し。孫策軍にも被害は最小 限に抑えられたみたいだ﹂ ﹁季琳︵きりん/曹仁の真名︶、呉への細作には優秀な者を向かわ せて。可能ならその兵器の設計図を・・・・・・﹂ ﹁分かった。早速選別をしにいく﹂ ﹁任せたわ。それよりも今夜・・・﹂ ﹁私にそんな趣味はないと何時も言っているだろ?﹂ そういうと曹仁は曹操の執務室から退出する。暫く見送ると曹操は 微かに笑っていた。 ﹁面白くなって来たわね・・・私の誘いを断って呉に組する。・・・ ・・・ライル・L・ブレイド・・・・・・いつか必ず私の前にひれ 伏せさせて見せるわ﹂ 236 強敵出現に闘志を燃やす曹操。自らの覇道を成就させる為に必要な のは野心。曹操は窓から魏の牙門旗を眺めるのであった・・・・・・ ・・・。 237 第35話:諸侯の反応︵後書き︶ 海兵隊の誇り,Re 魏の大盾 という異名を持つ防衛の 孫呉の一員として迎え入れられたライル率いるウルフパック。活動 真・恋姫無双 拠点構築中に1人の人物が派遣される。 次 [群狼の巣] 新たな仲間が加わる。 子考 キャラクター設定 曹仁 曹操を支える武将の1人で、 スペシャリスト。 魏の中では珍しく百合属性を持たず、曹操からの誘いを軽く断る。 天 あまつ 性格は冷静で、余程の事でも無い限りは怒りに任せることはない。 愛用する得物は斬馬刀 238 第36話:群狼の巣︵前書き︶ 自分達の基地を建設中にライル達に新たな仲間が訪れる。 239 第36話:群狼の巣 俺達が孫呉に降って2週間が経過した。俺達は現在、建業と浦口を 挟んだ長江の真ん中に点在する潜州島にいる。 ここには孫策水軍の拠点の一つである潜州水城がある。元は水軍の 活動拠点の一つだったが、部隊が寿春城に転属となったので、冥淋 殿が俺達に提供したのだ。 もちろん過半数は参道してくれていたが文官・・・特に初老の連中 が反対していた。 そこを好きに手を加えてよいというお墨付きも貰ったので、現在は 城の補修作業と施設の建築及び解体、防衛体制の強化に励んでいる。 ﹁司令部の監視装置の設置はどうなった?﹂ ﹁警報装置の接地は完了です。網膜スキャンと監視カメラも保安室 に接続しました﹂ ﹁了解だ。大体の作業は完了だな・・・昼休憩の後にアラートの試 運転を行なう。伝達が完了したら昼食にしよう﹂ ﹁了解しました﹂ 部下に指示を出すと部下は伝達する為に駆け出す。作業を3つに分 けており、俺が指揮するA中隊は主に警備設備の設営だ。 アレックスのB中隊は設備の構築と防御兵器の接地。 レオンのC中隊は雪蓮殿がよこしてくれた職人達と共に内部にある 港設備の改良と水門と城壁の強化。 全体的な作業が完了が完了したら、最後に城外にトラップを設置し ていく。これが全体的な作業の流れだ。 ﹁お∼い、ライル﹂ 240 振り向くとホットドッグを頬張るアレックスがこちらに歩み寄って いた。 ﹁よう、そっちも昼休憩か?﹂ ﹁ああ。ヘリポートと格納庫の設置は完了だ。休憩が終わったら訓 練設備を建築する。そっちは?﹂ ﹁こっちは概ね完了だ。作業が遅れている所に人を回すよ﹂ ﹁助かる。レオンの方も明日までに完了するらしい。車両を搬入さ せるか?﹂ ﹁そうたな・・・一先ずはヘリを先に駐機させよう。水上輸送部隊 に伝達しておく﹂ ﹁あいよ。それより今日だったよな?﹂ ﹁何がだ?﹂ ﹁あのな・・・冥琳殿から軍師が派遣されるだろ?﹂ アレックスがそういうと数日前に行なわれた打ち合わせの内容を思 い出す。 確か俺達の孫呉参加に反対している雪蓮殿の祖母である孫静が筆頭 としている、保守派連中を納得させる為の処置らしい。表向きでは 監視だが、実際は保守派連中の情報を俺達に中継する為の架け橋だ。 ﹁失礼します。ライル将軍とアレックス将軍ですか?﹂ 呉 の漢字が入った赤色のベレー 名前を呼ばれて振り向くと、青年が1人いた。 金髪のショートウルフカットに 帽。黒の内着の上に金色のラインが入った赤色の袖無しロングコー ト。白一色のズボンに騎馬用ブーツと思われる履物を身につけ、背 中には僧がよく持っている錫杖と槍が合わさったような得物を背負 っている顔立ちが整った好青年の印象が強い。 241 ﹁君は?﹂ ﹁はい、周瑜様の命を受けてライル様の下に派遣されました性は諸 葛、名は瑾。字を子瑜と申します﹂ 諸葛瑾と名乗る青年は揖礼の姿勢をして挨拶をする。 ﹁君が冥琳殿が言っていた軍師か。俺が部隊を率いているライル・ L・ブレイドだ﹂ ﹁副官のアレックス・ヴォードだ。貴官の就任を歓迎する﹂ 孔 ﹁はい。それと今後はご遠慮なく私の事を千里︵せんり/諸葛瑾の 真名︶とお呼びください﹂ ﹁はい。宜しくお願い致します﹂ なかなか礼儀正しい青年だ。 ﹁一つ聞きたいのだが、もしかして徐州の劉備軍にいる諸葛亮 明の兄か?﹂ ﹁はい、孔明は私の妹です。ご存知なのですか?﹂ ﹁直接は会ったことはないがな・・・どんな子なんだ?﹂ ﹁はい、とても出来がいい妹で料理も上手いし頭もいい。しかも可 愛らしい上に慌てた時の反応なんかはそれはもう・・・・・・﹂ 妹の事になった瞬間に彼は自慢話を始めた。妹思いのいい兄とも思 えるが、少しだけ引いてしまう。 ﹁そ・・・・・・そうか・・・そんな立派な妹が配下にいるんだか ら・・・天の御遣いも幸せだろう・・・・・・・・・な?﹂ 一刀の話になった瞬間に彼の反応が急に変わった。それも自慢話が 242 パタリと止んで、彼は俯いている。 ﹁・・・そうなんですよね・・・・・・天の御遣いって吹いている 何処ぞの男に仕えてるんですよ・・・・・・しかも妹は可愛いから・ ・・﹂ 何やら彼の背後に黒い炎が見える気がした。 ﹁・・・朱里はとっても可愛いから、性欲に駆られたケダモノ状態 の野郎が・・・あんなことや・・・こんなこと・・・まさかそんな ことまで・・・・・・﹂ ﹁あ・・・あの・・・・・・千里君?﹂ ドン引きの状態で何とか俺が話しかけるが、その瞬間に彼は上を見 上げる。それも物凄い殺気を込めてだ。 ﹁だぁあああああああああ‼‼こうしちゃいられねえ‼朱里が魔の 手に掛かる前に助けださねぇと‼﹂ ﹁﹁‼⁉﹂﹂ 翡翠杖 を手にして徐州がある方 いきなり口調が凶暴になって俺とアレックスは空いた口が塞がらな かった。すれと彼は背中の錫杖 向を見て走り出した。 ﹁お・・・おい⁉何処に行くんだ⁉﹂ ﹁決まってらぁ‼可愛い妹をクソッタレから救い出すんだよぉ‼﹂ ﹁ちょ・・・⁉おま・・・⁉﹂ ﹁しゅりぃいいいいいいいい‼いまお兄ちゃんが助けにいくぞぉお おおおおお‼‼﹂ ﹁﹁とにかく落ち着けぇええ‼⁉﹂﹂ 243 その後、バーサーカー状態に突入した千里を気絶させて場を納めた。 だと・・・・・・・・・。 そして2人からの印象は合致した。 超極度の妹バカ 244 第36話:群狼の巣︵後書き︶ 業務の一つである訓練を行なう南郷と訓練担当官達。そこに雪蓮殿 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 達が強烈な助っ人を連れて来た。 次回 [女性版ハートマン軍曹] 鍛練に珍事件が起こる。 子瑜 キャラクター設定 諸葛瑾 冥淋殿に仕えている将来が有望視された軍師。文武両道に加えて才 色兼備の持ち主で、性格も紳士的なので性別を問わず人気が高い。 軍人としての使命感も厚く、雪蓮殿達からの信頼も厚いが妹である 孔明のことになるとあり得ない位に暴走して口調も凶暴化する。 245 武久大尉。そんな彼等の前に1人の少 第37話:女性版ハートマン軍曹︵前書き︶ 必要用務の1つである南郷 女が現れる。 246 第37話:女性版ハートマン軍曹 ライル達が潜州城を改修している頃、建業郊外にある鍛練場では、 ウルフパックの業務の一つである訓練の指導が行なわれていた。 ﹁もっと機敏に動きやがれ‼そんな亀みてぇな腰抜け動きで戦場に Yes Sir‼‼﹄ 出れると思ってんのか⁉分かったらそのくせぇケツを引き締めやが れ‼‼﹂ ﹃Sir ﹁ここはクソガキ共の遊び場じゃねえんだぞ‼気合もぶらさがって No Sir‼!!﹄ るゴミも小せえ野郎はとっとと母ちゃんとこに帰りやがれ‼﹂ ﹃Sir Yes Sir!!!!﹄ ﹁分かったら走りやがれ‼糞虫みてぇに這いずり回りやがれ‼﹂ ﹃Sir ハートマン軍曹式海兵隊 南郷はリクルート共︵新兵︶に罵声を浴びせながら用意した障害物 コースをひたすらに走らせる。 。 俺達が訓練方式として採用したのは通称 新兵訓練 まず徹底的に娑婆ッ気を捨 前世で海兵隊員全員が通過して来た試練で、その過酷さは4軍の中 で最も厳しいとされる。 ブーツ・キャンプに到着した新兵は、 てさせられ、全員が軍人になりきることを要求される。 一緒に風呂に入り、同じ軍服を着る。 全員丸坊主のクルーカットに一人大体、約20秒で刈り上げられる。 ともに裸で身体検査を受け、 ゼロからの人間形成である。 小隊の指導は一切DIが仕切る。 247 彼は隊内を絶えず歩き回り、 どんな小さなミスも見逃さない。見 つばをとばし罵声 入隊1日目から文字 つけたらDIは新兵と顔と顔とをつきあわせ、 。 彼等に新しい知識を DIは新人に対して人間性を を浴びせる。各人はドッグタグをぶら下げ、 通り犬以下の扱いを受ける。 自由を奪われ、地獄をもらう 学歴も家柄も人種も一切関係ない。 欠いたサディストのごとく振る舞いつつも、 叩き込む。 小学生の と思える程に酷かった。人海戦術を主とするこの時代はチ 鍛練の様子を見せて貰ったことがあるが、俺達から見て 運動会 ームとしての連携は皆無だ。 個々の能力を重視していらしいが、そんな訓練は実戦では何の役に たたない。雪蓮殿達のような強さを誇る奴もいることはいるが、そ んな奴は全軍の中では非常に稀だ。 どんなに強い奴でも数と地形に任せた戦術の前には無力となる。 そうならないようにこの訓練で連携の重要性を認識させ、軍人とし センパーファイ を認識させるのだ。 ての忠誠心を徹底的に植え付けさせる。 海兵隊のモットー 少しだけ部下の下士官達に指導を任せると、南郷はテントに向かっ て、自分が持ってきた緑茶と抹茶羊羹を口にする。 ﹁はぁ・・・﹂ ﹁どうしましたか南郷大尉?﹂ ﹁いや・・・随分と減ったと思ってね・・・・・・﹂ ﹁自分は食べてませんよ?・・・栗羊羹なんて食べてないですよ?﹂ 248 ﹁羊羹じゃない、ルーキーのことだ。てか、お前か俺の羊羹つまみ 食いしてたのは・・・・・・﹂ ﹁ギクッ・・・・・・﹂ そういえば持って来た羊羹の数が減っていると思ったら、二等軍曹 か・・・犯人は。 後で何かしらの仕返しを考えていると不意に背後を振り向いた。 ﹁ヤッホー♪武久♪﹂ 振り向いた先にいたのはライルと南郷の実質的主の雪蓮殿と上官に あたる祭殿がいた。 椅子に座っていた南郷はすぐに立ち上がり、二等軍曹と共に敬礼を して挨拶する。 ﹁相変わらず凄く厳しいわね﹂ ﹁孫策様、黄蓋様。確かこの時間帯は業務の最中では?﹂ ﹁ブーブー、武久も冥琳と同じこと言う∼。ちょ∼っと息抜きする くらいいいじゃない♪﹂ 息抜き をしていたような・・・・ ﹁そうじゃ‼男が細かいことを気にするでないわい‼﹂ 確かこの前もそういって丸一日 。しかも酒を飲みながら・・・。 ﹁・・・・・・周瑜様に怒られますよ?﹂ ﹁いいも∼ん♪冥琳なんて怖くないし♪﹂ その反応に失笑してしまうが、さっきから気になることがある。祭 殿に誰かいるのだ。顔を少しだけ出して、こちらが見るとすぐに隠 れる。 249 ﹁ええっと・・・黄蓋様?﹂ ﹁なんじゃ?﹂ ﹁さっきから気になっていたのですが・・・後ろにいるのは誰です か?﹂ ﹁おお⁉そうじゃった‼今日はお主等に合わせてやろうと思ってな・ ・・・・・ほれ、早ようでてこんかい‼﹂ そういうと祭殿は後ろにいた人物を前に出す。 ヨーロッパ人形 のような可愛らしい 紫色の髪を三つ編みで束ね、白色のゴスロリ風チャイナ服を身に付 けた茶色の瞳をしたまるで 少女。寝るときにテディベアを抱き締めながら寝そうだ。 ﹁えっと・・・この子は?﹂ ﹁私達の家族よ、ほら﹂ ﹁はっ・・・・・・は・・・初めみゃして・・・‼せ・・・性は太 史、名は慈。あじゃなは子義‼まにゃ・・・真名は美花︵めいふぁ 子義。南郷はその名前 /太史慈の真名︶でしゅ‼・・・・・・ぐずっ・・・﹂ 全体的に噛みまくりの少女の名前は太史慈 を聞いて驚愕してしまうが、自己紹介も恥ずかしいあまり言えなか ったことで、今にも泣きそうな美花に南郷は少し慌てながら話しか ける。 ﹁わ・・・だ・・・・・・大丈夫‼気にしてないから‼気にしてな いから泣かないでくれ‼﹂ ﹁ぐずっ・・・本当でしゅか?﹂ ・・・・・・やばい・・・本気で可愛すぎる・・・・・・。 250 ﹁そ・・・それで、美花ちゃんを連れて来てどうなさったのですか ?﹂ ﹁うん♪実はね・・・祭、あとお願い♪﹂ 何を言っている ﹁御意じゃ。実はのう、お主等の鍛練の指南役にこ奴もやらせよう と思ったのじゃ﹂ ﹁﹁・・・・・・・・・はい?﹂﹂ と思ってしまった。 南郷と二等軍曹は素っ頓狂な声を出してしまい、 んだ、この熟女は? しかしよく見ると2人とも何かを企んでいる表情で笑っている。絶 対に何かある。そう考えて、一応は上官の頼みなので断る訳にもい かない。 ﹁・・・・・・まあ、孫策様と黄蓋様の指示でしたら断る訳にも行 きませんね・・・軍曹﹂ ﹁了解です・・・・・・・・・訓練中断‼全員集合‼﹂ 軍曹が拡声器を使用してルーキー共に命令すると、奴等は全速力で 整列していく。その素早さは15秒も掛かっていないだろう。 Sir!!﹄ ﹁全員傾注‼これよりこちらの太史慈殿も貴様等の指導を行なわれ Yes る‼心して描かれ‼﹂ ﹃S・・・Sir Yes Sir‼‼﹄ ﹁声が小さいぞオカマ野郎共‼﹂ ﹃Sir 何やら新兵の様子がおかしい。最初の頃と比べたら声の大きさで怒 鳴られるのは久しぶりなのだ。更に奴等の額からは冷や汗が流れて いる。 251 ﹁では・・・お願いします﹂ ﹁は・・・ひゃい‼﹂ 噛みながらも返事を返したら美花はオドオドしながら前にでる。今 にも泣き出しそうだ。 心配になってきた南郷が話し出そうとした直前、祭殿が何かを思い 出して美花に話しかける。 ﹁ほれ美花よ。これを忘れておるぞ♪﹂ ﹁あ・・・し・・・しゅみましぇん﹂ ﹃‼‼????﹄ 祭殿が取り出したのは美花の背丈よりも長い弓だ。確かに弓の名手 である太史慈ならおかしくは無い。 恐怖 によるものだ。 しかし弓を受け取った瞬間にルーキー共の顔が引き攣った。それも それは分かり易いくらいの なぜそんな反応を見せているのか考えている中、彼女が俯きながら 足幅を肩幅にまて広げて、大きく息を吸い込み・・・・・・。 ﹁てめえ等なぁにしけたツラしてんだクソ野郎が‼ぶっ殺されてぇ のか‼ああぁん⁉﹂ ﹃‼‼????﹄ ﹁・・・・・・・・・﹂ 物凄い怒気を秘めながら罵声を浴びせ始める。その状況にルーキー 共は顔を真っ青にして、南郷達は空いた口が塞がらなかった。 ﹁返事はどうした⁉その臭っせえ息吐くしかねえクソ口は飾りか⁉ 分かったらさっさと返事しやがれ‼ぶっ殺すぞ‼﹂ 252 ﹃S・・・Sir Yes Sir‼‼﹄ 誰かこの状況を説明して欲しい。先程までの可愛らしい表情の面影 は無く、南郷達以上の罵声を浴びせる修羅のような表情が、今の彼 女だ。 Yes Sir‼‼﹄ ﹁分かったらとっとと建業の周りを走ってきやがれぇ‼‼﹂ ﹃S・・・Sir 彼女がそういうとルーキーは全速力で建業の外に走り出す・・・・・ ・否、正確には全力疾走で逃げ出す。それもそうだ。 彼等の最後尾からは阿修羅をも凌駕する恐ろしい表情をしながら、 弓矢を連発する美花が追いかけて来ていたのだ。 ﹁うぉらぁ‼あたいに追い付かれたクソは弓を打ち込んで殺してや る‼嫌だったら死ぬ気で走りやがれぇぇぇ‼‼﹂ どっちにしても死ぬ。呆気に取られながら南郷達は突っ立っている。 ﹁・・・・・・南郷大尉?﹂ ﹁・・・何だったんだ・・・・・・今のは?﹂ ﹃・・・さぁ・・・﹄ 俺達はあの状況に反応に反応しきれずにいた。その直後に雪蓮殿達 に聞いたのだが、彼女は三重人格者らしく、弓を持つとああいう風 訓練 という暴走から帰って来たのはその日の深夜で、 に凶暴になり、双斧を手にすると甘寧みたいに無口になるらしい。 彼女による 新兵は魂が抜けたような表情をしていた。それでも一切疲れていな い美花は尚も走らせようとするが、南郷が弓を預かると元にもどっ 253 た。 。これが決まりとなった。 そして俺達訓練担当官達に暗黙の了解が可決した。 この子に鍛錬中は弓を渡すな 254 第37話:女性版ハートマン軍曹︵後書き︶ 何処の世界にも孤児がいる。イリーナ中尉が慣れない土地での警邏 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re を1人の武将がサポートする。 次回 [心優しい龍] 子供達の笑顔が満ちる。 子義 キャラクター設定 太史慈 孫呉に仕える武将の1人で、可愛らしい少女。極度なまでの恥ずか しがり屋で、上手く人と接せないでいる。 しかし弓を手にすると真逆に正確が反転して、ライル達も真っ青の 凶暴な性格になる。 255 第38話:心優しい龍︵前書き︶ ライル達の基地が完成した次の日、イリーナが初の警邏に出る。 256 第38話:心優しい龍 ライル達が孫呉に降ってから一ヶ月が経過した。その間にウルフパ キャンプ・ヴェアウルフ と名付けた。 ックの本部が完成。孫策軍では潜州城のままだが、ウルフパックで はこの基地の事を 基地の完成祝いと称して酒盛りが行われたが、これが災難だった。 酒に凄く弱いライルが雪蓮殿と祭殿に酔い潰されたからだ。 仕方が無いので酷い二日酔いのライルが完治するまでの間、アレッ クスが指揮を引き継いで、今日は警邏任務が初となるイリーナが行 う事になった。 ﹁・・・では気をつけてくださいね?﹂ ﹁はい、ご迷惑をお掛けしました﹂ 繁華街で客引きをしていた亭主に警告すると、イリーナは移動する。 何でも売り上げを伸ばしたい一心で、客を無理に引き入れようとし たらしい。 割れ窓理論 まあ、初犯ということもあったので今回は注意だけで済ませた。警 邏任務を任されたライル達が警邏に取り入れたのは を取り入れた。治安低下には決まった流れがある。 誰も当該地域に対 というサインとなり、犯罪を起こしやすい 建物の窓が壊れているのを放置すると、それが し関心を払っていない 環境を作り出す。 ゴミのポイ捨てなどの軽犯罪が起きるようになる。 住民のモラルが低下して、地域の振興、安全確保に協力しなくなる。 それがさらに環境を悪化させる。 257 凶悪犯罪を含めた犯罪が多発するようになる。 これ等を未然に防ぐ為にはどんな小さな犯罪でも取り締まり、それ でも従わない場合には厳しくても逮捕する。 今はこれだけだが、功績が認められて予算が下りれば次の段階に入 る予定だ。保守派の連中が何を言うか分からないが・・・・・・。 ﹁ふぅ・・・・・・﹂ ﹁どうかされましたか?﹂ ﹁大丈夫です。警邏が結構大変と思って・・・・・・﹂ 溜息を吐いて隣にいた同行者が声を掛けて来た。 GEARを思わせる 2m近くもある引き締まった長身に千里が来ていた袖無しロングコ ートに袖を取り付け、鉛で出来たALICE ベルトとY型サスペンダーを身に付けて、太腿まである銀のライン の異 で斬り込むらしい。 牙門旗狩り 承淵。真名は優龍︵ゆうろん/丁奉の真名︶。 が入ったロングブーツを履いたスキンヘッドの男性だ。 彼の名前は丁奉 鬼神双鉞 普段は警邏任務に就いているが、戦場に出ると 名が示す通り、手にした双鉞 ﹁それよりもイリーナ殿。この街には慣れられましたか?﹂ ﹁実を言うとまだ・・・﹂ ﹁そうですか、この国に暮らす民は皆、よい人達ばかりです。だか らイリーナ殿もすぐに慣れられます﹂ ﹁ありがとうございます・・・・・・あら?﹂ ﹁何か?﹂ ﹁あそこの子供・・・・・・﹂ 258 イリーナが方角を示すと、座り込んで泣いている子供がいた。物陰 にいるのでよく見ないと見つからない場所だから、通行人は声を掛 けられないみたいだ。 すぐにイリーナと優龍はその子供に歩み寄る。 ﹁どうかした?﹂ ﹁ひっく・・・ひっく・・・・・・﹂ ﹁ねえお嬢ちゃん、何で泣いてるの?お父さんかお母さんは?﹂ ﹁ひっく・・・・・・あのね・・・お母さん・・・ひっく・・・・・ ・いなくなっちゃった・・・﹂ どうやら迷子のようだ。少女は不安なのか、完全に泣き弱んでいる。 ﹁お嬢ちゃんのお母さんとは何処で逸れた?﹂ ﹁うぇ・・・・・・わかんない・・・﹂ ﹁じゃあお家は?ここから遠いの?﹂ ﹁ううん・・・・・・わかんない・・・お母さん・・・・・・どこ・ ・・・・・・・・う・・・うぇえええええん‼﹂ 寂しさのあまり、遂に大泣きをしてしまった。その泣き声で通行人 も何事か足を止めてこちらを見る。流石に騒ぎになり出すと問題だ と判断した優龍は女の子を抱きかかえると肩車をする。 ﹁ふぇ・・・・・・﹂ ﹁これでよく見える。某も一緒に母君を探そう﹂ 確かに190cmもあれば少女の視線は2m少しの高さになるから、 遠くまで見渡せるだろう。最初は戸惑った少女だったが、見た事無 い視線でピタリと泣き止んだ。 259 ﹁イリーナ殿、某は母君を探します故、申し訳ござらんが警邏を・・ ・﹁私も一緒に探します﹂イリーナ殿?﹂ ﹁だって1人よりも2人、2人よりも3人ですからね。人手は多い ほうがいい。でしょ?﹂ ウィンクしながらそういうイリーナ。優龍は少し考えたが、軽く微 笑んで答えた。 ﹁御意です。お願いします﹂ ﹁はい・・・それでお嬢ちゃん。どっちから歩いて来たか覚えてる ?﹂ ﹁う∼んとね・・・・・・あっち‼﹂ 方角は市場が集中する区画だ。もし遠くから来たのだったらこの子 の親は商人か何かだろう。 ﹁よし、それでは参ろうか?﹂ ﹁うん‼おじちゃん‼﹂ ﹁がっはっはっはっはっ‼元気の方が子供らしく可愛いものよ‼﹂ 大声で笑いながら優龍は少女を肩車しながら歩き出す。後ろから見 ると本当の親子のようだ。 イリーナはその光景に微笑みながら後をついて行く。母親を見つけ る迄の道中に少女に団子をご馳走したり、道中にいた旅芸人のパフ ォーマンスを見たりと、本当の親子のような捜索が続き、少しして から母親を見つけた。 警邏は殆ど出来なかったが、迷子になった少女な母親捜索と報告し たらお咎めなしに終わる。 まあ、代わりに明日も埋め合わせで警邏をさせられる羽目になった が・・・。 260 だったらしい・・・・・・・・・・・・。 イリーナからの優龍に対する印象は・・・・・・ 子供好きの龍 261 第38話:心優しい龍︵後書き︶ ライル達が孫呉に馴染み、少しが経過した。冥琳殿に呼ばれたライ 真・恋姫無双 の異名を持つ叩き上げの軍人 海兵隊の誇り,Re ル達は、全く新しい部隊の創設を命じられ、新たな補佐役が着任し た。 次回 [部隊創設の足掛かり] 牙門旗狩り 孫呉の軍勢に新勢力が登場。 承淵 キャラクター設定 丁奉 孫呉水軍出身の武将。 であり、これ迄に何度も負傷しながらも、それを上回る功績を叩き 出している。 豪快な性格だが軍人としての責任感が強く、任務には忠実。強面の 顔に似合わず大の子供好きであり、自分の給金をよく孤児院に回す 事めしばしば。 262 第39話:部隊創設の足掛かり︵前書き︶ 二日酔いが完治して職務に復帰したライルは、冥琳殿に呼ばれて軍 議室にいた。 263 第39話:部隊創設の足掛かり 俺達が孫呉に降って二ヶ月。俺達が提供した知識で軍の実力と建業 の治安は格段に向上した。治安が良ければ貿易が円滑に進み、他国 からやって来る商人が呉に利益を齎す。 その影響で孫策軍に志願を希望する希望者が急増したらしい。そし て俺は冥琳殿に呼び出されて、今は軍議室に赴いていた。 ﹁・・・・・・新兵の増加ですか?﹂ ﹁そうだ、この一月で呉軍への志願者が急増してな、その対処に追 われているのだ﹂ ﹁急増の理由は?﹂ ﹁分からないか?﹂ ﹁うむ・・・・・・独立を果たした事でしょうか?・・・それとも 英雄孫策の影響ですか?﹂ 自分の予測を言うと、冥琳殿は溜息を吐きながら眼鏡のブリッジを 押さえて、眼鏡を元に戻す。 ﹁はぁ・・・・・・志願の理由に確かにあったが・・・・・・一番 の要因はお前達だ﹂ ﹁・・・・・・えっ?﹂ ﹁そんな素っ頓狂な声を出すな。実は初めは徴兵の宣伝文句でお前 達を利用したんだが、自分達から志願する志願者が後を絶たなくな った﹂ ﹁何時の間にそんなことを・・・・・・?﹂ ﹁断りもなくすまないな。しかしまさかお前達の名声がこれ程のも のとは・・・・・・正直に言うと予想外だよ﹂ 264 まあ、分からなくはない。自分でいうのもなんだが、俺達の力はこ の時代ではまさに異色のものだ。 僅かな人数で強襲を仕掛けたり、戦車や戦闘車、航空機を運用して 敵を圧倒する。 もし俺が最初からこの世界の住人だったら、徴兵される前に自分か ら志願しているだろう。 ﹁はぁ・・・それで志願兵の数は?﹂ 尋ねると冥琳殿は親指、人差し指、中指を立てた。 ﹁3,000名ですか?﹂ ﹁桁が一つ足りない﹂ 冥琳殿がそういうと顔を引き攣ってしまう。志願兵の数は30,0 00名。アメリカでも一度にそこまで志願者が集まることはない。 ﹁それで・・・・・・俺は何をすれば?﹂ ﹁うむ、だがその前に・・・・・・いいぞ。入って来なさい﹂ 冥琳殿がそういうと不意に扉が開けられて、部屋に1人の女性が入 って来た。グレーのショートヘアに額の右側から左目の下まで続く 切り傷。目線が鋭く実戦経験者を示す戦士を思わせる女性だ。 ﹁彼女は?﹂ 公績。真名は 百合︵ゆり/凌統の真名︶ です﹂ ﹁新しい部隊を創設する為に連れて来たお前達の補佐役だ﹂ ﹁・・・凌統 この忠犬みたいで忠誠心の塊みたいな女性が凌統とは・・・・・・。 265 ﹁百合は我等の水軍で部隊長をしている。補佐役には最良の人材だ ろう﹂ ﹁しかし、よろしいのですか?水軍も増強中だと聞きましたが・・・ ・・・﹂ ﹁任務でありましたら構いません。従うまでです﹂ 任務や主に忠実。無表情だが志しは見事だ。更に様子からしても将 軍職で、文武両道の将と思われる。海兵隊にピッタリな女性だ。 ﹁それとライル、編成の際に必要な条件はあるか?﹂ ﹁条件ですか?﹂ ﹁ああ、例えば祭殿の部隊は弓兵が多い。それ故に弓や弩の扱いに 長けてないと務まらんし、私の部隊は主に諜報や偵察に長けるよう に、その将軍の特性にあった編成になるのだ﹂ つまりは編成に必要な特性と、配備される新兵がそれらの条件に似 合った素質の有無を見分ける必要があるということだ。 確かに潜入が得意なのに弓兵隊に配備されたら、その兵士の真価を 発揮出来ない。しかし問題はその条件だ。俺は少し考えると、メモ とペンを取り出して条件を書いて行く。 ﹁こんな感じです﹂ 冥琳殿は中身に目を配ると、その内容に驚愕する。 ﹁・・・・・・随分と無茶な条件だな・・・大半が脱落するぞ﹂ ﹁俺の考えている部隊編成は前にいた世界で、俺達が所属していた 軍隊の流用です。それらが成り立たなければ不可能です﹂ 266 俺が書いた条件とは・・・・・・。 1:弓術、剣術の他にもう一つ長けている 2:国家に対して絶対的な忠誠心を持つ 3:ウルフパックの訓練を3ヶ月間、耐え抜ける 4:船酔いしない 5:個々の能力よりも隊の連携を実行出来る 以上の5つだ。この時代においてこれ等の条件はまさに無茶苦茶で あり、孫呉では部隊長クラスの兵士に当たるらしい。 ﹁ライル将軍、定員数は如何様に?﹂ ﹁我等を除いて指揮官を含めて4,000名を。志願者は各地の城 で振り分け、内容に当てはまった志願者のみを編成地に送って下さ い﹂ ﹁条件に1つでも当てはまらなかった者はどうする?﹂ ﹁通常部隊への派遣か断りを・・・﹂ ﹁いいだろう。ならばこの件は全てお前に一任する。百合もしっか りと支えてくれ﹂ ﹁﹁御意﹂﹂ と呼ばれる部隊を作り上 そういうと俺と百合は軍議室から退出していく。俺が創設すること 殴り込み部隊 になった全く新しい部隊の創設。 前世でも4軍の中で通称 げる。完成したら孫呉軍で屈強の部隊になるであろう・・・・・・・ ・・。 267 第39話:部隊創設の足掛かり︵後書き︶ ある部隊 の 陽人の乱が終結して3ヶ月あまり、戦火の狼煙は急に広がる。袁紹 海兵隊の誇り,Re 軍による幽州侵略。要人達を集まった中でライルは 真・恋姫無双 出動を決める。 次回 [加速する時代] 公積 積年の恨みを晴らすべく、出陣。 凌統 孫呉水軍に所属する1000人隊の指揮をしていた武将。軍人とし 飛翔剣 ての誇りが人一倍強く、与えられた任務は確実に遂行する。 孫呉でも扱える者が極端に少ない6本の剣を同時に扱う の使い手で、乱戦を最も得意とする。 対テロ戦争 で亡くな 性格は忠実で忠犬のようだが、お化けや妖の類が大の苦手。 ※活動報告にも記しましたが、この作品を られた全ての方々に捧げます。 268 第40話:加速する時代︵前書き︶ 孫呉に齎された情報で動き出すライル。 269 第40話:加速する時代 俺たちによる部隊創設の選抜試験実行を二ヶ月後に決定。試験内容 や基準値の選定をしていた3日後の昼。雪蓮殿から部隊長の緊急招 集が命じられ、何かあったと判断した俺は急いで無線でアレックス とレオン、南郷を呼び出して軍議室に向かった。 ﹁雪蓮。アレックス、レオン、南郷の3名を連れて到着しました﹂ ﹁もう⁉遅いわよ4人共∼⁉﹂ ﹁申し訳ありません。何しろ潜州城で執務をしていましたので・・・ ・・・﹂ ﹁まあ気にするな。それよりも席に付いてくれ﹂ そういうと直ぐに空いている席に座った。室内には俺達と雪蓮殿、 冥琳殿の他に孫権殿、祭殿、穏、亞莎、甘寧、千里の他に見慣れな い文官がいる。 青い文官の服装を身につけ、肩まで伸ばした茶髪を束ねた俺と比べ ても年上と思わせる人物だ。 ﹁姉様、皆を集めて何があったのですか?﹂ ﹁そうなのよ蓮華。冥琳、詳しい説明をお願い﹂ ﹁ああ・・・・・・実は冀州に忍び込んでいる明命の部下が先ほど 帰還して、入手した情報を報告した﹂ 冀州という名前に俺達は表情を少しだけ強張らせる。何しろあそこ を納めているのは不倶戴天の敵である袁紹だからだ。 ﹁ライル、気持ちは分かるけど今は我慢してね♪﹂ 270 表情を読まれたのか、雪蓮殿が宥めてくる 。よく見ると周囲からも視線が集中していて、特に亞莎に関しては 震えている。 恐らくは無意識に怒気を出していたのだろうが、何もそこまで怖が らなくてもいいと思ってしまう。 ﹁失礼しました雪蓮殿。それと怖がらせたな亞莎?﹂ ﹁えっ⁉いえ・・・・・・大丈夫でしゅ⁉﹂ 思わず呼ばれて焦ったのか、最後の方で噛んでしまった亞莎。しか しそれのお陰で空気が少しだけ和んだ。 ﹁話を戻すぞ。報告によると袁紹が北に軍を進めたらしい﹂ ﹁北というと公・・・・・・なんとかさんの幽州がありますね∼﹂ ﹁穏様・・・・・・公孫瓚ですよ﹂ ﹁そうでしたぁ∼﹂ 相変わらずのんびりとした口調だ。 ﹁報告によると袁紹は大規模な軍勢を北進させ、幽州を瞬く間に制 圧。公孫瓚軍は壊滅したらしい﹂ 全員が表情を驚かせる。確かに正史でも公孫瓚は袁紹に壊滅させら れたらしいが、時期的にかなり早いのだ。 ﹁こちらが予測していた速度よりもかなり速い速度で進軍して、公 孫瓚は真面な反撃が出来なかったらしい﹂ ﹁恐らく袁紹は補給や兵の消耗を無視して、公孫瓚軍が反撃に転じ る前に攻め込んだのでしょう﹂ 271 白馬長史 として恐 千里も僅かな情報で推理する。確か公孫瓚は常に白馬に乗り、騎馬 戦術を基礎とした機動戦を得意とした事から れられた。 ﹁宣戦布告も無しに攻め込むなど・・・・・・やはり袁家は腐って いる‼﹂ ﹁落ち着きなさい蓮華﹂ 誇り高い孫権殿が怒りを露わにするが、雪蓮殿が彼女、宥める。し かし彼女の表情も袁紹に対して怒りを覚えている。 ﹁蓮華の気持ちも分かるわ・・・・・・私も報告聞いて我慢ならな かった程よ﹂ ﹁ほぅ・・・策殿がそこまでなるとは・・・・・・何があったと見 ようぞ﹂ ﹁伝令によると袁紹は幽州城を攻め落とした後・・・・・・・・・ 残った民もろとも町と城を焼き払ったのよ。捕虜も全員・・・﹂ ﹃‼‼‼﹄ その言葉を聞いて全員が驚愕する。他国への宣戦布告も無い一方的 な侵略に加えて捕虜虐殺、非戦闘員に対する殺人。 どれを取っても俺達がいた世界であからさまな戦争犯罪だ。俺は思 わず立ち上がって机を思いっきり殴る。俺が殴った箇所は見事なま でに粉砕して、周囲に破片が散らばった。 あまりにもいきなりだったので、全員が騒然としてしまう。 ﹁ちょ⁉ライル⁉﹂ ﹁・・・・・・なんだ?﹂ 272 で見せた感情よりも更 怒りのあまり口調が乱暴になっていることに気が付かず、話しかけ 虎牢関の悲劇 て来た雪蓮殿を睨み付けてしまった。 その表情は怒りそのもの。 に強大になった雰囲気。 その怒気に孫権殿、甘寧は得物に思わず手を掛けている程だ。 現状を理解した俺は深呼吸をして落ち着きを取り戻す。 ﹁・・・・・・ご無礼をお許し下さい﹂ 袁紹が動きだした ﹁構わないわ。気持ちは分かるし・・・・・・それよりライル?﹂ ﹁何でしょうか?﹂ ﹁動くのね?﹂ そう言われると俺は小さく頷く。 ﹁姉様、何の話です?﹂ ていうね﹂ ﹁ライル達が呉に降る時に密約を結んだのよ。 ら、独自行動の容認 ﹁なっ⁉・・・貴様‼何を勝手なことを‼﹂ ﹁お言葉ですが孫権殿。この密約はしっかりと容認されています。 いくら貴女でも口答えは無用です﹂ ﹁なんだと⁉﹂ ﹁やめなさい‼﹂ 孫権殿が突っかかって来たので反論すると、雪蓮殿が喝を入れた。 ﹁蓮華、この事は確かに私と冥琳で認めたのよ。それにライル達は 私達が出した条件をしっかりと守ってるわ﹂ ﹁しかし⁉﹂ それでも尚反論しようとする孫権殿を雪蓮殿が睨みつける。それを 273 目の当たりにした彼女は無言のまま席に付く。 ﹁ライル、独自行動は容認する。しかし1つだけ頼まれてくれない か?﹂ ﹁・・・構いません。何でしょうか?﹂ ﹁部隊の一部を隣国の徐州に回してほしい。袁紹の性格からすると 一刀への仕返しですか?﹂ 次は徐州に攻め入る筈だ﹂ ﹁北郷 ﹁ええ。一刀と私は袁紹を徹底的に否定した。それを踏まえても確 実に攻め入る筈よ﹂ ﹁それと千里と魯粛を連れて行ってくれ頼めるか?﹂ ﹁承知しました﹂ ﹁お任せ下さい﹂ 先ほどの男性の名前は魯粛と分かった。 ﹁ライル殿、申し遅れた。私は魯粛、字を子敬だ﹂ ﹁こちらこそよろしく頼む﹂ ﹁2人には劉備への使者として赴いてもらう。これを劉備と北郷に・ ・・﹂ そういうと冥琳殿は何処からか竹簡を取り出して千里に渡す。 ﹁それは?﹂ ﹁よく聞いて頂戴。我ら呉と劉備軍には同じ志を持っている。だか ら我等は劉備と同盟を結ぶ。これは上意よ。反論は許さないわよ﹂ 反論を許さない上意命令。 劉備との同盟 274 本当に歴史の流れ方が早い。確かに劉備と孫呉は同盟を締結したが、 それは赤壁の戦い前だ。しかし今からでも同盟を締結しておけば、 色々とこちらに有利だろう。ならば後1つ何かしておいた方がいい だろう。 ﹁冥琳殿、1つ質問があります﹂ ﹁なんだ?﹂ ﹁公孫瓚はどうなりましたか?﹂ ﹁報告によると、公孫瓚は捕らえられて今は桃花城に監禁されてい る。以前は劉備が治めていた城よ﹂ ﹁了解です。では明日の朝一番に本隊を徐州に派遣します。千里と 魯粛殿も急いで準備を・・・・・・﹂ ﹁分かりましたライル様﹂ ﹁承知した﹂ ﹁アレックス、本隊の指揮を任せる。レオンは残ってヴェアウルフ の守備。南郷はグレイブ隊とファルシオン隊を指揮してくれ﹂ Sir﹂﹂﹂ Yes ﹁﹁﹁Sir 狩人出動 だ。隊員は完全装備。2時間後 ﹁それと本部に通達。 に出撃する。詳細はブリーフィングで伝える﹂ ﹁了解だ。すぐに伝える﹂ そういうとアレックス達は雪蓮殿達に敬礼をして退出する。 ﹁では、我々はすぐに向かいます。詳しい話は帰還後の報告でお伝 えします﹂ ﹁そう・・・・・・それでライル﹂ ﹁何でしょう?﹂ ﹁・・・必ず帰って来てね﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ 275 ﹁貴方の帰る家はここよ。私達家族が待ってることだけは忘れない で・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・勿論です﹂ そういいながら俺は彼女達に敬礼をして直ぐに準備に取り掛かる。 孫呉による袁紹対策。そしてこの準軍事作戦でウルフパック最強の 部隊が活動を開始する・・・・・・・・・。 276 第40話:加速する時代︵後書き︶ 狩人 海兵隊の誇り,Re を動かし、公孫瓚救出の為に幽州の桃花城へと向 遂に動き出した袁紹軍。アレックスが本隊を徐州に向かわせる中、 ライルは 真・恋姫無双 かう。 次回 [ハンターキラー] ウルフパック最強部隊が動き出す。 子敬 キャラクター設定 魯粛 当初は袁術に仕えていた軍師だったが、裏で彼女を救い出してくれ た孫呉に恩を返すべく仕えた軍師。 軍師というよりも外交官としての能力が高く、主に劉備軍への交渉 役を担当している。 性格は威厳漂う感じだが、美羽と七乃のことを妹のように思ってい る。 277 狩人を狩る狩人 第41話:ハンターキラー︵前書き︶ 袁紹軍への対抗策として、ライルは る。 *セリフの一部に元ネタあり。 を出動させ 278 第41話:ハンターキラー 袁紹軍による幽州侵略の報告を受けて、俺達は早速行動を開始した。 冥琳殿の予測では次に侵略するのは徐州。俺達の予測も同様だった ので、本隊である歩兵中隊総数180名とグレイブ対地攻撃ヘリ部 隊とファルシオン大型輸送ヘリ部隊が徐州特別派遣部隊[オーバー ロード]として一刀と劉備が治める徐州へと向かう準備を進める中、 俺はある部隊を率いて高度20,000ft︵約6,000m︶を 飛行していた。 占領された幽州へと向かう一機の航空機。一見すると両翼に大型ロ ーターを搭載したレシプロ機にも見えるがちがう。 回転翼の角度が変更できるティルトローター方式の垂直離着陸機で あるMV−22B[オスプレイ]である。そしてその機内には俺を 含めた12人の海兵隊員が待機していた。 <中佐、リリースポイントまで残り5分> ﹁了解だ。もう一度だけ作戦内容を確認する﹂ そういうと部下達が注目する。彼等が身に付けている装備は他の隊 員とは違う。TRU−SPECピクセルブラックデジタル迷彩服に 黒色のMICH2001、HALO降下︵高高度降下低高度開開︶ 用装備を身に付けた特殊部隊[ハンターキラー]の隊員だ。 彼等は特殊偵察部隊[フォースリーコン]や海兵特殊作戦部隊[M ARSOC]等、アメリカ海兵隊特殊作戦コマンド出身者のみで構 成されたウルフパックで屈指の戦闘力を誇る。 279 ﹁袁紹軍によって捕らえられている公孫瓚は報告によると幽州の桃 花城に監禁されており、状態はよろしくない。可能性としては見せ しめとして公開処刑にするのだろう﹂ ﹁周辺の状況は?﹂ ﹁敵は既に略奪によって一般市民の財産を奪い尽くし、周辺に残っ ているのは焦土と化した街に殺された一般人と公孫瓚軍兵士の死体 だらけ、地獄のような光景だったようだ﹂ 隊員達はそれを聞いて無言だが怒りを露わにする。黒のフェイスマ スク越しだから表情は分からないが、それでも分かる。なにしろ思 い出しただけで俺も腹が立ってくる。 ﹁我々は桃花城の南10km地点にある荒野にHALO降下を実施。 そこから一望できる場所まで移動して敵の様子を監視。0100時 になるのを待ち、潜入。パッケージを確保した後に回収地点まで撤 退して脱出する﹂ ﹁敵に見つかった場合は?﹂ ﹁可能な限りは交戦を避けろ。いくら雑兵連中とはいえ、数では勝 ち目が無い﹂ 確かに12対万単位では火を見るより明らかだ。 <降下地点まで2分> ﹁よし、酸素マスク装着﹂ 指示すると全員が立ち上がって酸素マスクを装着。2人一組になっ てしっかり固定されているか確認するが、以上は無いようだ。 ﹁機長。ハッチを開けろ﹂ <了解です> 280 すぐにオスプレイの後部ハッチが独特な機械音を出しながらゆっく りと開いて行く。そこから非常に冷たい冷気が入り込んでくるが、 凍傷の心配は今のところは無い。 <降下まで30秒> 発動‼感覚を思い出せ‼任務完了後に ﹁よし‼この世界で初のHALOだ‼気合を入れていくぞ‼﹂ トロイ ﹃Hooah!!﹄ ﹁オペレーション 俺の奢りで一杯やろう‼﹂ ﹃Hooah!!﹄ ﹁Retreat⁉﹂ Killer!!﹂ ﹃Hell!!﹄ ﹁Hunter ﹃Hooah!!!!﹄ 叫ぶと俺達は一斉にオスプレイから飛び出て重力に身を任せる。雲 に入ると同時に安定して身体を水平に持っていく。高度は瞬く間に 地上に近づいて行き、間も無くで開傘高度の300mに差し掛かる。 ﹁600・・・500・・・450・・・パラシュート展開‼﹂ 高度300mに到達すると俺達は一気にパラシュートを展開させる。 落下速度を相殺する際の衝撃を身体で感じながら、ゆっくりと地上 に着地していく。 地上に到着するとHALO降下用装備を地中に埋めて廃棄。代わり に各種兵装のポーチを接続したチェストリグを身に付け、MICH 2001には暗視装置のAN/PVS−18を装着。 DMR、 Mod0に初弾を装填して、スナイパーは 各種オプションパーツを装着したHK416とHK417 MP7A1、Mk48 281 SR−25Mと50口径セミオートスナイパーライフルのM107 A1を収容したガンケースを背負うと円陣を組む。 ﹁目標地点は北に10kmだ。尾根に沿って移動するぞ﹂ ﹃了解﹄ トロイ の発動である・・・・・・。 簡単に指示を下すと互いをカバーしながら目標地点へと移動してい く。公孫瓚救出作戦 282 第41話:ハンターキラー︵後書き︶ ハンターキラーによる公孫瓚救出作戦。廃墟と化した街を闇に紛れ 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re てパッケージを見つけ出すが、そこには弓使いの血縁者もいた。 次回 [トロイ] 白馬と鎧武者が現れる。 Retreat!?Hell!! 第1次大戦で派遣された海兵隊士官︵名前は不明︶が退却命令を受 けた際に発した名言です。 283 トロイ 発動。 第42話:トロイ︵前書き︶ 公孫瓚救出作戦 284 第42話:トロイ オスプレイからのHALO降下で無事に幽州へと潜入出来た俺達は 影から影へと移動して、敵に気取られないように移動する。 少数による敵地潜入では敵に発見される前に倒すか、やり過ごすし か無い。交戦も緊急時では可能だが、それはかなり高い確率で作戦 失敗を意味している。何しろ俺達の装備は動き易さを重視して予備 マガジンの数は少ないし、12人しかいないので真面な戦闘など不 可能だ。 だから見つかる訳にはいかないのだ。幸いにも敵は勝利したことに より完全に油断しきっており、近付くにつれて哨戒部隊の数も増え て行っているが、中には居眠りをしている見張りもいたので、簡単 に桃花城近郊に居座っている袁紹軍野営地が一望できる一帯に到着。 そこに広がっていた光景はまさに地獄だ。村は完全に廃墟と化して おり、城に関しては面影すら残っていない。ここに来る道中には袁 紹軍兵士が殺したと見られる民間人の死体が山のように重ねられて いた。 その光景に対して怒りを沸かせるが、何とか抑え込むと深夜になる のを待ち、時刻に近づくと配置に着く。 ﹁ハンター2、ハンター3。無線をチェックしろ﹂ <こちらハンター2。感度良好。所定の位置に到着> <ハンター3からハンター1へ。狙撃位置に配置完了> 作戦はこうだ。パッケージの位置は把握している。何処かに移され るようで今は桃花城の側に停められている移動式の牢に閉じ込めら れている。何を考えているのか理解し難いが、これは返って好都合 285 だ。なにしろもしこれが城内だったら潜入する手間が省けたのだか ら。 俺が指揮するハンター1が公孫瓚を確保する。ハンター2は兵糧庫 と武器庫にC4を設置。ハンター3は見通しがいい丘の上から狙撃 による援護だ。 ﹁これより行動開始する。作戦通りに行動しろ﹂ <こちらハンター2了解> <ハンター3了解です> そうすると俺達は雨が降る中、側にある河に入り、音を立てずに慎 重に移動していく。 河からなら陸路よりも見つかる可能性は低い。まあ、見つかったら 泳いで逃げるしかないが・・・・・・。 自生している水草に隠れながら移動していると、目の前に敵の姿。 数は1。一応は見張りのつもりだろうがかなり眠そうだ。 SEALs PUPナイ 俺はチームに握り拳を目線の高さで顔のすぐ横まで持って来る。ハ ンドサインの一つで停止命令だ。 チェストリグに取り付けてあるM37K フを取り出し、大きく息を吸い込むとその場で水中に潜る。 そのまま敵のすぐ側まで泳ぐと一気に飛び上がり、鎧を掴むと水中 に引き摺り込む。敵はいきなりの事態に混乱していたが、そのまま 俺は喉元を深く切断して敵を仕留めた。 ﹁正面クリア、前進しろ﹂ <こちらハンター1−2。合流します> 死体をそのままにしておいてチームに集合を掛ける。3人が合流す 286 ると再び移動を再開する。 単独の場合なら水中に引き摺り込み、複数の場合は同時にヘッドシ ョットで仕留める。敵野営地のすぐ側まで辿り着くと辺りを警戒し ながら上陸。天幕へは匍匐前進を行ないながら近付く。 天幕の側にある大き目の木箱に隠れながら前進していると通信が入 った。 <ハンター1、敵兵がそちらに接近> 通信内容は敵の接近だ。俺はすぐにハンドサインで物陰に隠れるよ うに指示を出す。その直後に敵兵が姿を現す。数は2名だ。 ﹁ハンター3、狙えるか?﹂ <了解です。どいつを狙いますか?> ﹁背の低い奴を仕留めろ。俺はもう一人を殺る﹂ <了解、合図を待ちます> ハンター3のM107A1を構えて照準を合わせたスナイパーとタ イミングを合わせる。そして俺も同様にナイトビジョンと併用して 照準を敵の頭に合わせる。 ﹁3・・・2・・・1・・・やれ﹂ 合図と同時に俺は5.56mm弾を敵の頭に撃ち込み、弾丸はこめ かみに命中。もう一方はM107A1から発射された12.7mm ×99NATO弾で敵の頭を木っ端微塵に吹き飛ばす。 実戦で約1.8km先にいた敵兵の身体を真っ二つにした程の威力 だ。サプレッサーを装着して威力が落ちているとはいえ、頭部を吹 き飛ばすことくらいは容易い。 287 仕留めた敵兵の死体を物陰に隠すと再び前進を開始。道中も同じ様 に頭を撃ち抜いたり、背後から忍び寄って喉を掻っ切ったりしなが らパッケージを探す。 out> <ハンター2−1からハンター1。兵糧庫と武器庫にC4を設置> ﹁了解した。ハンター3と合流して待機せよ﹂ <了解です中佐。支援準備に入ります。ハンター2−1 C4を仕掛け終わったハンター2にハンター3との合流を命じて、 引き続き目標ポイントへと向かう。 潜入開始さら20分後、俺達はようやく公孫瓚が捕らえられている 牢屋の近くまでに到達したが、問題が生じた。 パッケージの周辺には見張りの兵士が多く、下手をすれば仕留めて DMRを構えて準備する。 いる隙に大声を出されるかもしれない。人数は9名。俺達はHK4 16とHK417 ﹁ハンター1−1からハンター3﹂ <こちはハンター3−1> ﹁俺達の位置は確認できるか?﹂ <確認しました。ターゲットはその先ですか?> ﹁そうだ、射撃のタイミングは任せる。一発で二人を倒せるか?﹂ <了解。バレットを使います> ﹁左側の4人は任せろ。そっちは右側の5人だ﹂ <了解です> ACOGを覗き込み、敵の頭部 通信を完了させると再び左側にいる敵兵へ照準を合わせる。俺もH K416のAN/PVQ−31B に照準を合わせた。 288 <3・・・2・・・1・・・0> ハンター3−1のタイミングで同時にトリガーを引き、9人いた敵 をほぼ同時に仕留めた。その内の2人は頭が吹き飛ばされる。 ﹁クリアだ。これより接触する﹂ <了解、周辺を警戒します> <こちらハンター2−1。回収機を要請しておきます> ﹁頼む﹂ 周囲を警戒しながら目標に向かう。牢屋を見るとポニーテールの赤 が醸し出されている。その隅にはもう1人いるようだがよ い髪をした少女が閉じ込められており、何故か知らないが全身から 普通 く見えない。 ﹁公孫瓚か?﹂ ﹁・・・あんたは?﹂ ﹁心配するな、俺達は敵じゃない﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ そういうが彼女は信じていないようだ。取り敢えずは扉を開けて彼 女に歩み寄る。 ﹁・・・あんた達は・・・・・・虎牢関の⁉﹂ 俺達の装備を見て悟ったようで、思わず大声を出してしまいそうだ ったが、おれが素早く反応して彼女の口を抑える。 ﹁今は叫ばないでくれ。こんなところで血まみれにはなりたく無い。 君を助けにきたというのは本当だ。だから俺に従ってくれ。いいな 289 ?﹂ ﹁・・・︵コクリコクリ︶﹂ 状況を理解したのか、彼女は口を抑えられたままの状態で頷く。 ﹁それで・・・・・・君は?﹂ ﹁あっ・・・ああ・・・・・・こいつは私の処で客将をしてた・・・ ﹂ ﹁・・・俺の名前は夏侯覇、字を仲権ってんだ﹂ 彼の名前を聞いて言葉が出て来なかった。それもそうだ。どう考え ても目の前にいる少年は16か17歳くらいの少年で、虎牢関で見 掛けた夏侯淵の息子とはとても思えない。 一先ずは気になったので聞いてみる事にした。 ﹁えっと・・・・・・夏侯覇殿?﹂ ﹁なに?﹂ ﹁ちょっと聞いて見たいんだが・・・・・・知り合いに曹操の処で 将をしている夏侯淵を知ってるか?﹂ ﹁あっ・・・ああ、秋蘭なら俺の従兄妹だけど・・・・・・どうか したか?﹂ ﹁従兄妹⁉﹂ ますます分からなくなってきた。実際の夏侯覇も男で性転換はして いないが、時系列的に考えても彼がこの幽州にいることはおかしい。 しかも夏侯淵とは親子ではなく従兄妹。 俺が思考の海に溺れていると、少し呆気に取られていた公孫瓚が話 しかけて来た。 290 ﹁お・・・おい・・・・・・大丈夫か?﹂ ﹁え・・・・・・あ・・・ああ・・・・・・すまない、それで君達 を安全な場所に避難させる。よろしいか?﹂ ﹁ああ、助かったよ・・・﹂ ﹁助かったぜ﹂ ﹁それで他の生存者は?﹂ ﹁・・・・・・私達以外の兵は全員・・・﹂ そういうと彼女は悲痛な表情を浮かべて、拳を強く握りしめている。 ﹁すまない・・・・・・﹂ ﹁いいんだ・・・だけど袁紹には必ず償わせてやる﹂ ﹁分かった。だがひとまずは・・・少し待ってくれ﹂ そういうとインカムに手を差し伸べる。 ﹁こちらハンター1−1、どうした?﹂ <中佐、敵が潜入に気付いたようです> 耳を澄ますと周囲が騒がしくなって来た。恐らく死体を発見したの だろう。そのことを確認すると2人に振り向く。 ﹁2人とも、少し派手になるかもしれない。俺達から離れないよう にしっかり付いて来てくれ﹂ ﹁分かったよ﹂ ﹁しっかりついて行くぜ﹂ そういいながら2人に敵から奪った槍を2人に渡す。夏侯覇はどう か分からないが騎馬戦術を得意とする公孫瓚は問題無いだろう。 そうして俺達は2人を守りながらハンター2とハンター3の処へと 291 移動をする。しかしそう簡単には行かないようだ。 ﹁いたぞ⁉﹂ 後方から大声で叫ばれてしまい、最後尾にいたハンター1−4が素 早くHK416の照準を合わせて発砲する。撃ち込んだ銃弾はしっ かりと敵の額に命中して倒したが、一足遅かった。 ﹁向こうだ⁉向こうにいるぞ‼﹂ ﹁銅鑼を鳴らせ‼絶対に逃がすな‼﹂ 位置を悟られてしまい、周辺から発見を知らせる銅鑼が鳴り響く。 ﹁くそ・・・探知された‼総員構えろ‼﹂ ﹃了解‼﹄ ﹁2人を守れ‼脱出を最優先に行なえ‼﹂ そういうと俺もHK416を構えてついて行く敵の攻撃に備える・・ ・・・・・・・・・・。 292 第42話:トロイ︵後書き︶ 捕らえられていた公孫瓚と夏侯覇を救い出したライル達だが、その 直後に発見される。 徐々に包囲されながら、ライル達は自分勝手で戦争を行なっている 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 袁紹が皆の前に現れる。 次回 [狼とクズ] オペレーショントロイ、佳境に入る。 293 トロイ 。佳境に突入。 第43話:狼とクズ︵前書き︶ オペレーション 294 第43話:狼とクズ 公孫瓚と夏侯覇を救出した直後、潜入を袁紹軍に悟られてしまい、 既に追手が迫っている。 ﹁交互支援を行なえ‼敵の接近を許すな‼﹂ ﹃了解‼﹄ ﹁2曹‼2人の護衛に付け‼絶対に死なすなよ‼﹂ ﹁了解‼﹂ 俺達は接近してくる袁紹軍兵士にセミオートで敵を確実に仕留めな がら後退する。撤退先に展開しているハンター2とハンター3も援 護射撃で敵を攻撃する。 ﹁手榴弾‼﹂ 敵が固まっている場所にM67対人破片手榴弾を投げ込み、何も知 らない敵を爆風、もしくは飛び交う破片で一網打尽にする。 Mod0で攻撃する曹長も同様にM67を投擲。 しかしやはり数で圧倒的に不利な状況なのは変わらない。隣でMk 48 <こちらハンター3‼敵の増援が接近‼> ﹁くそっ⁉数が違いすぎる‼﹂ ﹁スモークグレネードを投げろ‼その隙に撤退だ‼﹂ ﹃了解‼﹄ 295 俺達は敵の速度を少しでも削るべく、ありったけのM18発煙手榴 弾を投げつけ、周辺に白い煙がたちこもる。その煙に巻かれて敵は 思うように前進できなくなっている。 ﹁よし‼ハンター1から全隊員‼直ちに着陸地点まで後退しろ‼急 げ‼﹂ ﹁2人とも‼こちらへ早く‼ 今がチャンスだ。そう判断した俺達は急いで回収機の着陸地点へと 走り出す。俺も煙の中にM67を放り込むとすぐに後を追う。着陸 地点地点は当初は6km先だったが、この追撃では不可能。 緊急回収として敵陣地の近くで強行着陸させるしかない。1kmほ ど走って川まで到着するとすぐに通信を行なう。 ﹁こちらハンターリーダー‼敵の追撃を受けている為、緊急回収を 要請する‼座標はフォックスロットタンゴ−0611‼﹂ <こちらオーディン‼了解ハンターリーダー‼緊急回収要請確認‼ 指定座標到着まで3分‼> out‼﹂ ﹁了解したオーディン‼IRビーコンでマーキングする‼ハンター リーダー 指定座標を指示するとすぐに敵がいる方角に銃口を向けるが何か様 子がおかしい。数では向こうが圧倒的になのに攻めて来ないのだ。 そう考えていると一角が道を開け始め、そこから誰かが出てきた。 ﹁侵入者の皆さん‼もう逃げ道はありませんことですわ‼﹂ 金髪の女がそう叫ぶ。その声は忘れようが無い。自分の欲望の為に 無駄な戦争を勃発させ、冀州に住む民に圧政に続く圧政を敷き、幽 州に対して一方的に攻め込んで民や捕虜を虐殺した張本人、袁家当 296 主の袁紹 本初だ。 正史でも無能で知られ、名門出身という理由だけで成り上がった愚 か者である。 声を聞くだけでも腹ただしい。本当ならすぐに撃ち殺してやりたい の分際で私の華麗な名前を呼ぶとは・ 本初と身請けする﹂ ところだが、冷静をキープして警戒しながら一歩前に出る。 ブ男 ﹁・・・袁紹軍総大将の袁紹 ﹁あら、顔も出せない 本初ですわ﹂ ・・まあよろしいですわ。私がこの漢王朝で華麗で優雅、いずれは 頂点に立つ最も有能な未来の漢王朝の袁 こいつを産んだクソッタレの顔を見てみたい。もはや頭のネジが緩 クソッタレ以下 だ。 を引き渡し 本初。命だけは 貧乏人 んでいるではなく、ネジの大半が紛失しているだろう。印象からし てこの野郎は ﹁・・・それで、何の用だ?﹂ ﹁単刀直入に仰いますわ。今すぐそこにいる て私にひれ伏しなさい。そうすればこの心広い袁 お助けしますわ﹂ ・・・・・・本当に殺してやりたい。俺だけではなく部下達も必死 にトリガーを引くのを抑えている。だがこれ以上戯言を言われると 我慢出来る自身は無い。 ﹁・・・・・・我等を傘下にいれてどうする気だ?﹂ ﹁あら?お分かりになりませんの?この私に仕えることが出来るの 天の軍隊 を持 ですよ。これ程名誉なことはありませんことよ。それに私の事をバ カにする孫策のような田舎者と野蛮で下品な呉が つなんて、宝の持ち腐れです﹁ふざけた事を抜かすなクソッタレ野 郎‼‼﹂なっ⁉﹂ 297 俺のことを馬鹿にするならまだしも、仲間や雪蓮殿と呉のことを侮 辱されるのは我慢ならない。 ﹁無意味な戦争を起こしている貴様が何を抜かしやがる‼貴様に仕 えることが名誉⁉雪蓮殿と母国孫呉には宝の持ち腐れ⁉寝言は寝て から言いやがれ‼貴様のようなクソ虫に仕える位なら死んだ方が遥 かにマシだ‼﹂ 俺は感情のままに怒鳴り散らす。その怒気を前にして袁紹を含めた 敵兵は恐怖に震える。だが無駄にプライドが高い袁紹は、地団駄を 踏みながら奇声を出す。 ﹁きぃいいいい‼なんて無礼な‼よく分かりましたわ‼部下の皆さ ん‼そんな無能な輩を殺して私に﹃うるせぇ‼﹄な・・・⁉﹂ ﹁中佐のことを馬鹿にするんじゃねえ‼﹂ ﹁貴様に仕えるなんてまっぴら御免だ‼誰が仕えるかってんだ‼﹂ 部下達も俺のことを侮辱したことで怒りを露わにする。彼等にとっ て俺という存在は上官としてだけではなく、ウルフパックという家 族を纏める存在だ。 自分の思い通りに行かないことが人一倍嫌いな袁紹は我慢の限界に 達していた。 ﹁・・・・・・よく分かりましたわ・・・そんなに仰るのでしたら・ ・・皆殺しにして差し上げますわ‼やっておしまい‼﹂ ﹃応‼﹄ 袁紹が指示を下すと一斉に走り出す。俺達もそれぞれの得物を構え て備えるが、敵はその場で立ち止まる。 298 ﹁な・・・なんだよありゃ⁉﹂ ﹁り・・・龍⁉﹂ ﹁俺達の軍紳様のご到着だよ‼﹂ 袁紹軍兵士はもちろん、夏侯覇や公孫瓚も驚愕する。上空にはホバ リング状態で滞空しながら降下しているオスプレイがいた。潜入の 後に燃料補給で一旦キャンプ・ヴェアウルフに帰還して、予備タン クに燃料を満タンにして戻って来たのだ。 <こちらオーディン‼お待たせしました‼> 12. ﹁よく来たオーディン‼機体を横に向けながら着陸しろ‼クソッタ レ共にガトリングガンを見舞ってやれ‼﹂ <了解‼ガナー、制圧射撃始め‼> オスプレイの機体右側面に搭載されているGAU−19/A である。 の遺命を持ち、敵は 慈悲深い兵器 無痛ガン 7mm3銃身式ガトリングガンが敵に対して攻撃を開始する。 毎分1000発を誇るこの兵器は 痛みを感じる前に死んでいる。ある意味で ガトリングガンを発砲しながら着陸したオスプレイに俺達は公孫瓚 と夏侯覇を守りながら駆け出す。 ﹁公孫瓚殿‼夏侯覇君‼早く乗るんだ‼﹂ ﹁こっ・・・これに乗るの⁉﹂ ﹁もたもたするな‼急げ‼﹂ 俺達の援護射撃でハンター3が2人を連れて乗り込む。続けてハン ター2が乗り込み、ハンター1も最後に残った俺の肩を軽く叩くと すぐに乗り込んだ。 299 ﹁全員搭乗‼﹂ <了解‼離陸します‼> 機長が後部ハッチを閉鎖すると、オスプレイは攻撃を加えながら急 いで離陸していく。 ﹁何をしてらっしゃいます⁉早く追い掛けなさい‼﹂ ﹁無理です袁紹様‼﹂ ﹁むっきーー‼‼守備隊長さん‼今回は全部あなたの責任ですわ‼﹂ 自分の失態をやはり部下に押し付けている。俺は蒸れたMICH2 001を取り、大きく息を吐いた。 ﹁ふぅ∼・・・もう大丈夫だ。安全は確保された・・・・・・﹂ ﹁こ・・・ここここれは夢だ・・・わ・・・・・・私は悪い夢を見 てるんだ・・・﹂ ﹁すっげー‼飛んでるぜ‼俺、空飛んでるぜ‼﹂ この状況に完全に混乱している公孫瓚は夢であると言い聞かせ、夏 侯覇は窓から外を見てはしゃいでいる。 俺は溜息を吐きながら公孫瓚に話しかける。 ﹁公孫瓚殿﹂ ﹁夢だ・・・夢だ・・・はっ⁉な・・・なんだ?﹂ ﹁落ち着いたか?﹂ ﹁はぁ・・・ああ・・・・・・なんとかな・・・﹂ ﹁これから劉備軍の徐州に向かいます。そこで2人の保護を・・・﹂ ﹁桃香のところ?﹂ ﹁そうだ公孫瓚殿﹁白蓮︵ぱいれん/公孫瓚の真名︶だ﹂え?﹂ 300 ﹁助けてくれた礼だ。あんたに真名を預けたい﹂ ﹁おっ⁉だったら俺の真名も託すぜ‼俺の真名は露蘭︵ろらん/夏 侯覇の真名︶ってんだ‼﹂ ﹁なあ、そういえばあんたの名前を聞いてないんだが・・・﹂ そう言われると確かに自己紹介が済んでいなかった。俺は考えると フェイスマスクを取る。 特殊部隊で素顔を明かすのはご法度だが、 今見せなくても劉備軍と合流すれば、嫌でも素顔を晒すことになる。 要するに俺に対してなら何の問題も無い。 ⁉﹂ 伯符率いる孫呉軍指揮下群狼隊指揮官だ﹂ 銀狼 ﹁俺はライル。孫策 ﹁あんたがあの ﹁あんたが銀狼かぁ・・・よろしくな‼ライルの兄貴‼﹂ 2人の真名を預かり、俺も2人に名前を教えた。そして俺達を乗せ たオスプレイは進路を劉備軍が治める徐州へと向かう・・・・・・。 301 第43話:狼とクズ︵後書き︶ 白蓮と露蘭を救出した頃、徐州では袁紹軍による侵略に備えて軍議 が行なわれた後、一刀と劉備は2人っきりで話をしている。 海兵隊の誇り,Re そしてライル達を乗せたオスプレイが到着して英雄同士が再び対峙 真・恋姫無双 する。 次回 [仁徳と天の武人] 袁紹を撃退するべく、行動を開始する。 仲権 キャラクター設定 夏侯覇 魏の名門である夏侯一族の1人で夏侯淵の従兄妹。自由気ままな性 格で、百合属性が多いことと規律があまりにも厳しいことで所属し ていた黒騎兵隊を辞め、傭兵として公孫瓚に雇われていたところを 袁紹軍に攻撃されて捕虜になったところをライル達に救出されて、 そろまま保護先の劉備軍に参加する。 性格は年相応の明るい好少年であり、誰とでもすぐに打ち解けられ る。 を使いこなすことから自称 煌めく騎士 と名乗る 武将としての能力は関羽並に高く、西洋風の甲冑に加えて盾牌剣 絶守盾風雷剣 に恥ない実力である。 302 第44話:仁徳と天の武人︵前書き︶ 今回はもう1人の主人公である一刀視線です。 303 第44話:仁徳と天の武人 城。 ライル率いるハンターキラーが無事に袁紹から公孫瓚こと白蓮と夏 侯覇こと露蘭を救い出して少し後の徐州の下 劉備軍は盟友だった公孫瓚軍が袁紹に攻められたという情報をいち 早く手に入れ、日夜軍議が行なわれていた。この日も遅くまで軍議 が続き、指導者である俺と劉備こと桃香もようやく体を休められた。 深夜になって眠っていた俺が目を覚まして、寝ぼけ眼で自分の寝台 に目をやる。 ﹁すー・・・すー・・・﹂ 隣には可愛らしい寝息をたてながら気持ち良さそうに眠っている桃 香がいた。 また自分はやらかしたのかと思ったが、着用している和風の寝間着 と思って微笑んでしま はしっかりと着られ、彼女自身も寝間着は着ている。 相変わらずだな ﹁はぁ・・・・・・ふふっ﹂ 俺は溜息を吐きながらも う。恐らくだが、寝ぼけて自分の部屋と間違えたのか、それとも純 粋に一緒に眠りたかったのかのどちらかだろう。 彼女は甘えん坊だ。だからたまにこうやって俺の寝台に潜り込んで くることがあり、それが縁となって何度も身体を重ねている。 今や彼女達は俺にとって何物にも替え難い存在だ。 この世界にいきなり飛ばされ、いく宛も無かった俺を何の疑いも持 304 守ってあげたい と たずに仲間に加えてくれ、今は袁紹に陥落された桃花村の桃園で兄 妹の契りを交わし、彼女達の優しさに触れて 人と人が互いに手を取り合い、笑っ を共に作りたいと決意させた。 決意して、どんなに困難でも て暮らせる国 マオタイシュウ 俺は湯飲みに茅台酒を少し注ぎ、それを飲む。茅台酒は清の時代か らのアルコール度数35∼65%ほどの中国酒で、何でこの時代に あるのか理解し難い。 飲みすぎても二日酔いせず、むしろ適度の飲用は健康に良いとされ て、かつて周恩来は風邪を引いても薬は飲まず、茅台酒を飲んで治 したという記録が残っている。 ﹁う∼ん・・・・・・﹂ 外を見ながら茅台酒を飲んでいると桃香が目を覚ましたようだ。振 り返ると寝間着が少し崩れて胸がかなり強調されている。 髪も乱れて寝癖が付いており、目はまだ眠そうだ。 ﹁ごめん、起こしたみたいだね?﹂ ﹁う∼・・・ご主人様ぁ∼・・・・・・ふわぁ∼﹂ 俺は湯飲みを机の上に置くと今にも眠りそうな桃香の隣に腰掛け、 彼女の肩に手を置いて寄せると、桃香は自分の頭を俺の肩に乗せて 来た。 ﹁桃香、何でまた俺の寝台に?﹂ ﹁う∼ん・・・確か愛紗ちゃんと鈴々ちゃんと一緒にお風呂に入っ て・・・それでご主人様の部屋に間違って・・・・・・それでご主 人様の寝顔見てたら眠たくなっちゃって・・・・・・﹂ 305 ﹁それで俺の寝台に?﹂ ﹁︵コクリ︶﹂ 俺の寝顔を見たから眠たくなったって・・・・・・いかにも桃香ら しい理由だ。 普段の俺なら寝ている時でも気配を察知できるが、それは悪意や邪 気を持った人間に限定される。 桃香達からはそういったマイナスエネルギーは一切感じられないの で、対処のしようが無いのだ。 ﹁桃香、大丈夫?﹂ ﹁・・・・・・白蓮ちゃんのこと?﹂ ﹁白蓮だけじゃない・・・俺達が契りを交わした時に飲んだ酒をく れたおばさんや街のみんな・・・・・・﹂ ﹁・・・正直・・・・・・まだ信じられないよ・・・﹂ そういうと彼女は俺から頭を離して、俯くと両手を強く握り締める。 ﹁・・・・・・白蓮ちゃんもおばさんも・・・街のみんなもすっご くいい人達ばっかりだったのに・・・みんな・・・死んじゃっただ なんて・・・・・・﹂ ﹁桃香・・・・・・﹂ 俺は彼女の手と肩に自分の手を置くと、顔を覗き込む。 ﹁私達があのまま幽州に残ってたら・・・白蓮ちゃん達も・・・死 ななかったかもしれなかったのに・・・﹂ ﹁桃香・・・・・・﹂ 俺の手の甲に水滴が落ちる。それは彼女の瞳から零れ落ちた涙だ。 306 彼女は優し過ぎる。この乱世には不釣り合いの底が知らない 仁徳 故の優しさだ。それが彼女の長所でもあると同時に最大の短所で もある。 桃香の泣いている姿を見て、辛くなった俺は彼女を抱き寄せて、少 し間を置くと落ち着かせるために彼女の唇と俺の唇を重ねた。 ﹁んっ・・・・・・んんっ・・・﹂ ﹁んん・・・はぁ﹂ きっかり5秒ほど経ったら、自然的に唇が離れた。俺と桃香は顔を 少し赤く染める。 ﹁落ち着いた?﹂ ﹁・・・ご主人様・・・・・・﹂ ﹁白蓮やみんなが死んでしまったって聞いた時に、俺も信じられな かった。もし桃香達がいなかったら、1人でも袁紹を討ち取りにあ ってた筈だよ﹂ そういうと俺は自分の額を彼女の額にくっ付ける。彼女の息が鼻を くすぐる。 ﹁だけど・・・俺達は生きなきゃならない・・・・・・桃香の夢を 実現するために・・・死んで行ったみんなの為にもね﹂ ﹁ご主人様・・・﹂ ﹁だから・・・必ず叶えよう。俺達の想いを・・・一緒に歩んで行 こう﹂ ﹁・・・・・・うん♪﹂ そういうと桃香は何時もの明るい笑顔で返して来た。ようやく彼女 の笑顔を見れて俺も嬉しくなり、右手を彼女の後頭部に、左手を腰 307 に持って行ってさらに寄せると、必然的に唇と唇が重なった。 暫く彼女とのキスを堪能していると、何やら外の様子がおかしい。 ﹁ご主人様?﹂ 唇が離れて桃香が心配そうに尋ねるが、俺は気にせずに耳を澄ます。 なにやら規則正しい機械音みたいだが、同時に剣を振るった際にな る空気の音にも似ている。それもそれはこちらに徐々にではあるが 近づいて来ている。 ﹁何の音かな∼?﹂ ﹁この音・・・・・・まさか⁉﹂ 音の正体を悟った俺は壁に掛けられていた心龍双牙を帯に通して部 屋を出る。 ﹁ご主人様⁉﹂ ﹁桃香‼急いでみんなを起こして来て‼集まったらドラを鳴らして 召集を‼急いで‼﹂ ﹁えっ⁉あっ・・・うん‼﹂ あまりにも凄い勢いで桃は返答すると俺は中庭へと急ぐ。そして全 員が揃った直後に銅鑼が鳴り響き、夜の空から一機の軍用機が着陸 したのであった・・・・・・。 308 第44話:仁徳と天の武人︵後書き︶ 一刀達の城にオスプレイでやって来たライル達。死んだ筈だった公 孫瓚の姿を見て彼女達は喜びに包まれた。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re そして一刀はライルの力を借りれることになる。 次回 [仁徳王と白馬の再会] 異世界の英雄。白馬を送り届ける。 309 第45話:仁徳王と白馬の再会︵前書き︶ 一刀達の前に飛来したオスプレイ。そこから現れた人物に驚かされ る。 310 第45話:仁徳王と白馬の再会 桃香と一緒にいた時に聞こえて来た奇妙な音。この時代にはあから さまに不釣り合いな機械音・・・ローター音に感知して、俺は白い 寝間着のままで帯に神龍双牙を差し、急いで城の中庭に向かった。 ﹁ご主人様‼何事ですか⁉﹂ ﹁敵なのかお兄ちゃん⁉﹂ 桃香に呼びつけられて愛紗や鈴々、星、朱里、雛里、恋、霞、嵐、 ネネ、月、詠という劉備軍重鎮達も駆けつけて来て、敵襲を知らせ る銅鑼も鳴り響いた。 そして全員が夜空を見上げると、信じられない光景が広がっていた。 ﹁なんやなんや⁉あのでっかい鳥みたいなんは⁉﹂ ﹁物の怪か⁉﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁どんな奴でも恋殿の敵ではないのですぞ‼﹂ ﹁へぅううう∼・・・詠ちゃん・・・﹂ ﹁大丈夫‼月は守るんだから‼﹂ 全員が見上げた空にあったのは漆黒のカラーリングにローターを上 に向けてヘリコプターのように滞空している軍用機、オスプレイだ。 ﹁ご主人様‼あれなんなの⁉﹂ ﹁姉上はお下がりください‼危険です‼﹂ ﹁はわわ・・・ご主人しゃま⁉﹂ ﹁あわわ・・・鉄の鳥でしゅ⁉﹂ 311 ﹁みんな落ち着いて‼敵じゃなさそうだ‼﹂ そういうとオスプレイはゆっくりと中庭に着陸して、独特のエンジ ン音が小さくなるとやがてローターが回転を停止した。 全員がそれぞれの得物を手にして警戒し、俺も両手に神龍双牙を手 にしてゆっくりと歩みよる。 ﹁中にいる人‼すぐに出てくるんだ‼﹂ そういうとオスプレイの後部ハッチがゆっくりと音をたてて開いて 行く。 ﹁一刀‼下がるんや‼﹂ ﹁ご主人様⁉﹂ ﹁みんな待って‼﹂ 俺が制止するとハッチが完全に開き、周辺から焚かれている松明の 明るさで人影が映し出される。 そしてそこにいたのは洛陽で別れた俺と同じく異世界から来た海兵 隊員だ。 ﹁北郷君‼﹂ ﹁やっぱりライルさん‼﹂ ﹁ライルやて⁉﹂ ﹁ライル⁉﹂ ﹁・・・ライル﹂ ﹁あいつですと⁉﹂ ﹁へぅう、ライルさん⁉﹂ ﹁あいつが何でここに⁉﹂ 312 俺も含めて全員が驚愕する。なにしろ目の前に孫策軍に参加したラ イルさん達が軍用機に乗ってやって来たのだ。 ライルさんはゆっくり歩み寄ると俺に踵を鳴らして敬礼をして来た。 俺も敬礼で返すとけいを解いた。 ﹁夜分遅くにすまない。火急の任務が有ってな﹂ ﹁任務ですか?﹂ ﹁そうだ、話したいんだが・・・すまないがまず全員に武器を降ろ させてくれないか?﹂ そう言われて皆を見ると、愛紗達が武器を構えたままだった。特に 愛紗に関しては警戒心が強く感じられる。 ﹁愛紗、ひとまずは武器を下げてくれない?﹂ ﹁・・・・・・ライル殿、なぜ貴様がここにいる?﹂ ﹁それは話させて頂くが、まずは偃月刀を降ろしてくれ。話そうに も話せない﹂ ライルさんから敵意が無いと悟ったのか、愛紗は警戒しながらも偃 月刀を降ろした。 ﹁これで降ろしました。けれども何でライルさん達はここに?﹂ ﹁実は君達にまた保護して欲しい人物がいる﹂ ﹁なっ⁉そんなことでこんな夜分に来たのか⁉無礼にも程があるぞ ‼﹂ ﹁落ち着いて愛紗・・・それでその保護して欲しい人は?﹂ ﹁直接会った方がいいだろう・・・・・・出て来て大丈夫だ‼﹂ ライルさんが叫ぶと同じ装備を身に付けた部下の人達に守られなが ら、出て来た女性に俺達は驚きを隠せなかった。 313 ﹁まさか⁉﹂ ﹁北郷・・・・・・﹂ 死んだと思われていた白蓮が現れたのだから。そして彼女の姿をみ て桃香は涙を流しながら駆け寄って来た。 ﹁白蓮ちゃん⁉﹂ ﹁桃香・・・﹂ ﹁白蓮ちゃ∼∼ん‼‼﹂ 白蓮の名を叫びながら桃香は彼女の胸に飛び込んで行く。白蓮もそ れに少し戸惑いながらしっかりと受け止めた。 ﹁うぐっ・・・・・・ひく・・・よかったぁ・・・・・・白蓮ちゃ ん・・・生きてた・・・・・・死んじゃったって聞いてたから・・・ ひっく・・・﹂ ﹁桃香・・・ああ・・・ライル達が助けてくれてなかったら今頃は 袁紹に殺されてた・・・﹂ ﹁ライルさん・・・これは一体・・・・・・﹂ ﹁孫策軍の細作が彼女が捕らえられているという情報を掴んでな・・ ・・・・民や捕虜に対して大虐殺したというのも・・・﹂ ﹁それは聞いてます・・・・・・あの女には必ず罪を償わせてやる﹂ ﹁俺達も同じ意見だ。詳しい話は中でいいか?﹂ ﹁はい、玉座に案内します﹂ ﹁頼む。それともう1人頼めるか?﹂ ﹁もう1人?﹂ ﹁そうだ・・・露蘭﹂ そういうとライルさんは露蘭っていう人を呼んで、俺の前に駆け寄 314 って来た。俺と少し年上という感じがする人だ。 ﹁なんだ、ライルの兄貴?﹂ ﹁君の事を紹介しようと思ってな・・・その前に北郷君に言ってお くが、くれぐれも驚くなよ?﹂ ﹁驚く?﹂ と呼ばれている北郷 一刀です﹂ 天の御遣い 仲権ってんだ。 一刀殿だ﹂ ﹁すぐに分かる・・・・・・露蘭。この少年が劉備軍を纏めている 1人で、 ﹁初めまして、北郷 ﹁あんたが噂の御遣いかぁ・・・・・・俺は夏侯覇 よろしくな♪﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・はい?﹂ 予想通りの反応を見せて俺は固まってしまう。なにしろ時系列的に も存在がおかしい夏侯覇がいるのだ。当の夏侯覇は何故固まってい るのか理解出来ずに頭をかしげている。 そんな状況から何とか脱出して、兵達を宿舎に戻すと俺達はライル さんを連れて玉座に向かった・・・・・・・・・。 315 第45話:仁徳王と白馬の再会︵後書き︶ 劉備軍に白蓮と露蘭を保護させたライル達。そのすぐにライル達は 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 行動の理由を説明する。 次回 [緑に降る騎士] 魏の名門出身者。仁徳王に降る。 316 第46話:緑に降る騎士︵前書き︶ 深夜に送り届けられた露蘭。彼は提案に乗る。 317 第46話:緑に降る騎士 白蓮と露蘭を送り届け、俺は一刀達に事情を説明する為、城の玉座 に案内される。 ﹁久しぶりやなぁ∼ライル♪﹂ ﹁しかしお前達が呉に降るとは・・・﹂ ﹁ライル・・・また会えて恋、嬉しい﹂ ﹁ふっ・・・ふん‼ネネは別に久しぶりに会えて嬉しいわけじゃな いですぞ‼﹂ ﹁へぅ・・・ライルさん・・・﹂ ﹁ま・・・まあ・・・・・・元気そうじゃないの﹂ 元董卓軍のメンツが久しぶりの再会にそれぞれのリアクションを見 せる。特にネネと詠殿は素直ではない。 ﹁初めて会う方もいるようだから、名乗らせてもらう。俺は孫策軍 配下ウルフパック指揮官のライル・L・ブレイド。見知りおきを﹂ ひとまずは霞達の歓迎を置いてもらい、踵を鳴らして敬礼をする。 翼徳なのだ‼﹂ 劉備軍の中であった事があるのは一刀と関羽のみだ。 ﹁鈴々は張飛 これには流石に驚かされた。張飛といえば劉備を兄と慕った歴戦の と大 猛者で、張飛は二十騎の部下と共に川に拠って長坂橋を切り落とし 燕人張飛、これにあり‼俺と雌雄を決したい奴はいるか‼ 声でよばわると、曹操軍の数千の軍兵は敢えて先に進もうとはせず、 318 このために劉備は無事に落ち延びることができたという記録が残さ れている。 確かに前向きで大胆極まりない行動をしそうだが、外見は元気活発 少女だ。 ﹁我は性は趙、名は雲、字を子龍という﹂ 趙雲が何か企てていそうな笑みを浮かべながら自己紹介する。 だろう。 三国志演義で絶大な人気を誇る趙雲で最も有名なのが張飛と同じく 長坂橋の戦い 劉備が曹操の大軍に追われて逃走した時、荊州の当陽県長坂で、趙 雲は劉備の息子阿斗︵後の劉禅︶を自ら抱え、また甘夫人︵劉備夫 人︶を保護したとされる。 雲 だろう。 この世界の趙雲はなにを考えているのか読めない癖のある雰囲気だ が、印象からすれば ﹁あわわ・・・初めみゃして‼性は諸葛、名は亮、字は孔明でしゅ ‼﹂ ﹁あわわ・・・龐統・・・字は士元でしゅ‼﹂ ﹁﹁はうっ︵あうっ︶・・・噛んじゃった・・・・・・﹂﹂ ・・・・・・なんだ?・・・この小動物みたいな子達は・・・・・・ 。 慌てん坊 で士元が 恥 孔明と士元といえば劉備に仕えた二大軍師であり、それぞれ[臥龍 ]と[鳳雛]という異名を持っている。 この2人の印象を例えるのなら、孔明が 319 ずかしがり屋 噛む属性 がデフォル だろう。実際に孔明は噛んだことで少し慌てている し、士元は一刀の後ろに隠れている。 どうでもいいが、この世界のロリッ子には トで備わっているのか? 玄徳といいます‼﹂ ﹁そして・・・そちらの桃色の髪をした御仁が劉備殿ですか?﹂ ﹁はっ・・・はい‼劉備 のようなイメージを持つ少女が いきなり指名されて慌ててお辞儀をしながら挨拶する劉備。劉備の 超天然少女 逸話は言わずものだろう。 しかし目の前にいる 劉備・・・・・・確かに一緒にいるだけで暖かい気持ちになりそう だ。 ﹁それでライルさん・・・白蓮ちゃんを助けてくれて・・・本当に ありがとうございます‼﹂ ﹁俺からも礼を言わせて下さい。本当にありがとうございます﹂ ﹁俺も袁紹のクソッタレがやったことが許せなかっただけだ。礼な ど必要はないよ﹂ ﹁それでもありがとうございます。白蓮は俺達にとって掛け替えの ない仲間なんですから・・・﹂ 仲間と言われて白蓮は嬉しいのだろう。照れ隠しのように頬を書き ながら顔を背ける。 ﹁それはさておき、何でライルさんはここに?﹂ ﹁ああ、明日に本命が到着するんだが、白蓮と露蘭を先に救出した 俺達が先遣隊として先行してな・・・明日には分かるが先に言って おく。我等孫呉は劉備軍との同盟締結を提案する﹂ 320 同盟締結という言葉に全員が驚愕する。 ﹁詳しくは明日に俺の隊と共に周瑜殿からの使者が到着する。孔明 殿、君のお兄さんだよ﹂ ﹁はわわ・・・千里お兄さんでしゅか⁉﹂ ﹁それと魯肅という文官だ。明日に到着するから、詳しい内容はそ の時に・・・・・・﹂ ﹁分かりました。今はひとまずおいといて・・・夏侯覇さん﹂ ﹁んっ?なんだい?﹂ ﹁夏侯覇さんはこれからどうしますか?よかったら曹操軍にまで送 り届けますが・・・﹂ ﹁冗談はよしてくれよ。今更戻ったって華琳が何て言うかわかんね えしな・・・﹂ ﹁それは以下用か?﹂ ﹁俺って昔は華琳の親衛隊にいたんだけど・・・やたらに規律が厳 しすぎるし、百合百合しいのは苦手なんだよなぁ・・・﹂ そういいながら露蘭は表情を苦々しくする。親衛隊なら規律が厳し すぎるのは分かる。けれども百合百合しいのは俺も苦手だ。 彼は性格的に自由を愛しそうだから、過度に縛られるというのは我 慢出来ないだろう。 ﹁なら私達の仲間にならない?﹂ ﹁姉上⁉﹂ ﹁俺を・・・仲間に?﹂ ﹁うん♪﹂ そういいながら劉備はまぶしすぎる位に無垢な笑顔をして答える。 配下としてではなく仲間とは・・・。 321 ﹁俺も桃香に賛成だ﹂ ﹁鈴々もなのだ‼﹂ ﹁夏侯覇殿は武にも長けていると見た・・・私個人としても興味が ありますな﹂ ﹁私も賛成です。今は少しでも力を蓄えないといけないから、夏侯 覇さんが加わって頂けると大助かりです﹂ ﹁︵コクリコクリ︶﹂ 劉備達は関羽を除いて賛成みたいだ。 ﹁霞達はどう?﹂ ﹁うちも構えへんで、それにうちとえらい気が合いそうやしな♪﹂ ﹁桃香様や一刀様が望まれるのでしたら従うまでです﹂ ﹁・・・恋も構わない。家族、また増えて嬉しい﹂ ﹁恋殿が仰るのでしたら構わないですぞ‼﹂ ﹁私も構いません・・・ねえ、詠ちゃん?﹂ ﹁月がこう言ってるんだし、私も戦力が加わるんだったら構わない わよ﹂ 霞達も賛成の意向だ。それを聞くと一刀は関羽に話しかける。 ﹁愛紗はどう?﹂ ﹁わ・・・私は皆がそういうのでしたら構いませんが・・・﹂ ﹁じぁあ決まりだね♪﹂ どうもこの世界の関羽は見る視野が少し狭いようだ。まあ、まだ1 6歳かそこらと考えれば納得の理由ではあるが・・・・・・。 ﹁それでどうかな?﹂ 322 ﹁う∼ん・・・・・・あんた等は悪い奴等じゃ無いみたいだし・・・ ・・・・・・分かったぜ、あんた等の仲間に加わるぜ‼﹂ ﹁うん♪それと私のことは桃香って読んでね?﹂ ﹁分かった♪だったら俺もあんた等に真名を預けるよ。真名は露蘭 っていうんだ。よろしくな♪﹂ これで夏侯覇こと露蘭の劉備軍入りが決定した。その後も簡単な打 ち合わせが行なわれて、詳しい軍議は明日に持ち越されることにな った。 俺も劉備からあてがわれた客室に案内され、本隊の到着まで待機す る事になった・・・・・・・・・・・・。 323 第46話:緑に降る騎士︵後書き︶ 白蓮と露蘭が劉備軍の仲間に加わる事になった次の日。ようやくア レックスが指揮するウルフパック本隊が到着した。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 同盟締結が進められる中、不釣り合いの空気が流れる。 次回 [同盟締結] 色んな意味で苦戦する。 324 第47話:同盟締結︵前書き︶ 劉備軍との同盟締結。その後で珍事件が起こる。 325 第47話:同盟締結 俺達が城に到着した次の日の昼頃。下 城から5kmほど離れた支 城にいた。理由は同盟締結と同時に俺達は袁紹軍を撃退する迄の間 だけ劉備軍の指揮下に加わる。 使者である千里と魯肅はアレックス達の護衛を受けてスーパーシー スタリオンで到着したが、到着早々に妹である孔明に兄の千里が抱 という名前のバックドロップで・・・・・・ き付き、共にいた一刀に攻撃を仕掛けたのはいう迄も無い。しかも 諸葛瑾流地獄落とし 。 俺達は袁紹軍の攻撃に備えて支城の城壁にいた。最初の到着した機 械化歩兵部隊[ソードブレイカー]及び空中強襲歩兵部隊[ハルバ ート]120名と共にだ。残りの軽歩兵部隊[エストック]60名 は必要な物資と共にあと1時間程で到着する予定だ。 その間に城壁で双眼鏡を手に国境の方角を見る。 ﹁敵の位置は?﹂ ﹁まだ国境を超えてない。流石に増強をしてるようだぜ﹂ ﹁奴等にしては予想外だな・・・てっきり補給やクソ野郎共のエサ の時間も省いて来やがると思ったんだが・・・﹂ ﹁エサの時間って・・・・・・大概だな﹂ ﹁当たってるだろ?﹂ ﹁まっ、否定はしないな♪﹂ 隣にいるアレックスと共にくだらない会話をしながら様子を伺う。 既に国境付近に暮らす民の避難と駐留部隊の退避は完了している。 劉備軍将兵の実力は関羽や張飛、霞、嵐たちが指南役をしているこ 326 とで練度はかなり高い。 漢の中で最も練度が低い袁紹軍の雑兵共程度なら簡単に勝てるが、 流石に数の暴力では勝てない。ならば戦略的撤退を実施して敵を目 の前に広がる平原におびき寄せる。 後は策を練って撃退させれば簡単だ。因みに俺の身につけている装 備や服装は着替えてある。 MARPATピクセルグリーンデジタル迷彩服に今迄使用していた CIRASアーマーベストからより拡張性と防護性が高いコヨーテ ブラウンカラーのMTVアーマーベスト、ピクセルグリーンデジタ ル迷彩カバーを取り付けたLWHヘルメットだ。 今迄の装備でも十分に対応できていたが、乱戦になると少しでも防 御力が高い方がいいという理由で、装備品の一新を行なったのだ。 機動力が必要なハンターキラーではそのまま使用しているが・・・。 ﹁交渉の方はうまくいったかな?﹂ ﹁多分な、だが千里の奴・・・・・・後でお仕置きだな﹂ ﹁どんな?﹂ ﹁宙吊りにして目の前にあいつ宛の孔明直筆の手紙か生写真を置い ておくか﹂ ﹁・・・・・・ある意味で残酷だな・・・﹂ ﹁ふふふふ・・・・・・﹂ 確かに超壮絶妹バカの千里にとってこれ以上無い程に辛いお仕置き だ。その様子を想像すると不敵に笑ってしまう。そして不意に右を 見てみると、その千里と魯肅が歩いて来た。しかし千里は魯肅に引 きずられながらだ。 327 ﹁ライル将軍、アレックス将軍﹂ ﹁よう魯肅。交渉は?﹂ ﹁滞りなく終わりました。これでわが軍と劉備軍は同盟関係になり ました﹂ ﹁ご苦労だったな魯肅。しかし・・・・・・それどうした?﹂ ﹁このバカですか?﹂ ﹁うぅうううう・・・・・・朱里ぃ・・・・・・﹂ 魯肅に引きずられながらやって来た千里は魂が抜けかけた表情をし ながら孔明の真名を読んでいる。 ﹁・・・説明がいりますか?﹂ ﹁﹁いや・・・・・・もう分かったからいい・・・﹂﹂ 完全に呆れてしまう。 ﹁私は建業に帰還します。孫策様になにかお伝えすることは?﹂ ﹁ああ、俺達は袁紹軍討伐完了まで帰れないということだけ伝えて くれ﹂ ﹁分かりました﹂ ﹁﹁後はそのバカも連れて帰ってくれ﹂﹂ ﹁分かってます・・・・・・おっ﹂ 魯肅が何かに気がついて振り向くと、一刀と孔明がこちらに来てい た。 ﹁ライルさん、アレックスさん﹂ ﹁よう北郷君。それに孔明ちゃんも・・・どうかしたか?﹂ ﹁はい、実は孫策さんに親書を届けてもらおうかと﹁しゅりぃいい いい‼‼﹂はわわ∼お・・・お兄さん⁉﹂ 328 彼女の姿を見た瞬間に復活した千里が孔明に抱き付いて頬ずりをす る。 その孔明は両手をバタつかせながら抜け出そうとしているが、ホー ルドされているので抜け出せずにいた。 ﹁もう‼ほっんとうにかわいいなぁ‼﹂ ﹁はわわ⁉も・・・もうお兄ちゃん⁉やめて下さい‼そんなことば かりしてると・・・・・・プンプンしちゃいますよ‼﹂ 何とか抜け出した孔明は頬を膨らましながらそっぽ向いてしまう。 というより孔明よ・・・・・・その子供っぽいリアクションがなぜ 千里への促進剤になるというのに気がつかない? そしてとうの千里はというと・・・・・・。 ﹁ひゅわわわ‼‼か・・・可愛すぎて・・・お兄ちゃん・・・・・・ ガクッ﹂ 孔明のリアクションに耐えきれず、満足に満ちた表情をしながらそ の場で気を失った千里。帰ったらさっきのお仕置き実行決定だな・・ ・。 ひとまず孔明から親書を受け取って、魯肅に渡す。 ﹁確かに受け取ったよ。それとすまないな孔明ちゃん。うちのバカ が・・・﹂ ﹁いえ・・・千里お兄ちゃんはいつもこんな調子でしゅから・・・ また噛んじゃった・・・﹂ だからなぜそこで噛む? 329 ﹁ははは・・・それよりライルさん、実は昼飯の準備が出来たから 呼びに来たんですよ。一緒にどうですか?﹂ ﹁おっ・・・いいな♪﹂ ﹁月と詠が作ったんですよ﹂ ﹁ちょうど腹も減って来たから呼ばれるとしよう﹂ ﹁分かりました、だったら一緒に・・・ん?﹂ 一刀は袖を引っ張られたので見てみると、何時の間にか恋がいた。 ﹁恋、どうかしたの?﹂ ﹁うん・・・ご主人様とライルとアレックス、迎えに来た﹂ どうやら空腹だから迎えに来たのだろう。 ﹁ははは・・・だったら行こうか、恋。朱里﹂ ﹁︵ニコニコ︶﹂ ﹁はわわ∼ナデナデされましたぁ∼﹂ 2人の頭を同時に撫でてあげる一刀に、それに喜ぶ朱里と恋。これ だけ見ると慎ましい光景だが、それもすぐに終わる。城壁の向こう から凄まじい砂煙を舞いあげながらこちらに向かってくる人影だ。 ﹁ちんきゅぅうう・・・・・・﹂ 恋命のネネが血相を掻いて特攻を仕掛けて、少し手前に差し掛かる とジャンプする。 ﹁きぃいいいっく‼‼﹂ ﹁ぐほぉ⁉﹂ 330 後頭部からまともに彼女の必殺技 ちんきゅうキック を食らう一 刀。そのまま倒れると思ったが、そうはならなかった。 ﹁・・・・・・テメェ・・・ナニイモウトヲタブラカシトルンジャ ワレェ‼‼﹂ ﹁しょ・・・諸葛瑾さん⁉﹂ ‼‼﹂ 彼の背後に何時の間にか復活した千里が回り込んで、そのまま両腕 諸葛瑾流地獄落とし で一刀をホールドしている。 ﹁シニサラセボケェエエ‼ ﹁がはっ⁉﹂ そのまま千里は身体を反らして一刀を持ち上げ、彼を頭から地面に 打ち付ける。バックドロップの完成だ。 そんなハチャメチャな出来事に俺達はため息を吐くしか出来ず、酷 い目にあった一刀を連れて食堂に向かうのであった・・・・・・・・ ・。 331 第47話:同盟締結︵後書き︶ ライル達が徐州で戦闘準備を進めている頃、キャンプ・ヴェアウル フを任されているレオンは建業で警邏任務に就いていた。そして郊 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 外に明命の姿があった。 次回 猫 猫の世界が広がる。 332 第48話:猫︵前書き︶ 建業で警邏任務に就いていたレオン。そこで珍事件に巻き込まれる。 333 第48話:猫 ライル達が劉備軍との同盟を締結させ、魯肅と千里が建業に帰還し 始める調度そのころ、留守を任されたレオンは建業市街地の警邏を 行なっていた。 ﹁今日も異常なしっと・・・﹂ ﹁ええ、平和そのものです﹂ 大半の仕事を終わらせ、共に警邏に出ていた孫策軍警邏部隊の兵士 と一緒に平和を感じる。 警邏に導入した割れ窓理論のおかげで、その治安維持能力を認めら れたライル達に予算が増やされ、次の段階に移行できた。 その段階とは、建業を合計11箇所の区画に区分けして、その区画 毎に常駐の警邏隊の詰め所を大き目の空き家で作る。今で言う処の 分署だ。 今までの警邏では事件が起こったとしても、本部がある建業城に知 らせるか、警邏中の隊員を見つけなければならず、その間に事件が 解決、もしくは最悪の事態に起こりかねない。 実際にライル達が警邏隊の指揮を任された当初に何度もそういうこ とがあった。 そのおかげでレオンが建業に来てから行きつけの酒屋の亭主が、黄 巾党の残党に殺害されかけた。 しかし分署を設けたことで通報までの時間が短縮され、建業全体の 治安はかなり改善されている。しかも民の意見も円滑に聞き取れる 334 ようになり、よい街づくりを行なえるようになった。 ﹁しかし最近は本当に何も起こらなくなったな﹂ ﹁レオン将軍やライル様達が来てから本当によりいい街になりまし た。全ては将軍達のお陰です﹂ ﹁よせって・・・俺や中佐達が向こうにいた頃の警察・・・・・・ 警邏隊の組織図と知識を利用しただけだ。後はお前達の実力だよ﹂ ﹁しかしきっかけをくれたのは将軍達です。皆、将軍達に感謝して います﹂ ﹁そ・・・・・・そうか・・・﹂ レオンは流石に恥ずかしくなって、頬を掻きながら顔を背ける。す ると少し先に行った辺りで見覚えのある人影を見つけた。 幼平こと明命だ。 黒い長髪に人形のように目尻が上がった大きな目、忍者の忍装束の ような格好をした少女・・・・・・周泰 彼女は何かを探すように周りを見渡し、石段をトテトテと駆け上が って行った。 ﹁今のは周泰様ですね・・・どうしたのでしょう?﹂ ﹁分からない・・・・・・何か探してたようだが・・・﹂ ﹁様子を見に行きますか?﹂ ﹁そうだな、すまないが先に行っててくれ。俺が行ってくる﹂ ﹁御意﹂ ひとまずは彼には先に詰め所に戻ってもらい、レオンは明命の後を 追うことにした。幸いにも彼女はすぐに見つかった。石畳の道から 離れて草むら辺りでやはり何かを探していた。 ﹁どこなのですか∼?﹂ 335 草むらを掻き分けて何かを探す明命。レオンは反対側の草むらに隠 れて様子を伺う。しかしつい癖で泥を顔に塗ってカモフラージュし てしまったのはお約束だ。 気配を消して様子を見ていると、何やら別に動きがあった。 ニャー 草むらからひょっこり現れたのは白い毛並みに黒模様が混ざった猫 だ。それ自体なら珍しくない。しかし驚愕したのは明命の方だ。 ﹁はぅああ∼‼お猫様ぁ∼‼﹂ ニャ? 猫を見つけた瞬間、表情を更に輝かせて猫に歩み寄る。一瞬何が起 こったのか理解出来なかったが、そういえば少し前に彼女が極度の 猫好きだと、彼女の親友である亞莎から聞かされている。 ﹁お猫様ぁ∼・・・今日もお変わりなくお綺麗な毛並みですぅ∼﹂ ニャー? ﹁はぅ⁉私の膝に乗られるのですか⁉﹂ ニャー ﹁はぅ∼・・・モフモフですぅ∼﹂ 自分の足に乗って寛ぎ始める猫を明命は幸せそうに撫で始める。 ﹁ニへへ∼・・・幸せですぅ∼﹂ 本当に幸せそうだが、彼女は一つ忘れている。猫という生き物は気 まぐれの代名詞だ。せっかく寛いでいたのに、しつこく撫でられて いると・・・・・・。 336 ニャー‼ ﹁あうっ⁉﹂ 手の甲に必殺 猫パンチ を食らい、下りた猫はそのままトコトコ と立ち去って行った。対して明命はこの世の終わりみたいな表情を しながら立ち去る猫を見る。 ﹁あぅあ∼・・・・・・お猫様ぁ∼・・・﹂ ︵ぶ・・・・・・くくく・・・お・・・面白過ぎる・・・︶ そんな光景にレオンは必死に笑いを堪えている。 すると足下に気配を感じたので視線を落とすと、別の猫がレオンに 身体を擦り付けて匂いを付けていた。 ︵お・・・おい‼あっちに行け‼︶ ニャー♪ 嫌だ というが如く鳴き、それを聞いた 何とか追い払おうとするが、あくまで匂いを付けているだけなので 本気を出せず、代わりに 明命は髪に猫耳を出したような感じを出し、目を輝かせながらこち らに駆け寄って来た。 ﹁おーねーこーさーまー‼‼﹂ ﹁ぎゃふ⁉﹂ 一歩手前に到着すると明命は飛び上がり、俺に飛び込んで来た。 ﹁はぅあ∼、こちらのお猫様は大きいですぅ∼♪まるで人みたいな 感じ・・・あれ?﹂ 337 ﹁み・・・・・・明命・・・俺なんだが・・・﹂ 何かおかしいと悟った明命は見上げると、レオンとしっかりと目線 が合ってしまう。そして少しだけ時間が経過して、状況を理解した 明命は顔を真っ赤にしながら慌てて離れた。 ﹁はぅあああ⁉れ・・・れれれレオンしゃま⁉わわわわわ・・・私 ⁉レオン様に抱き付いてレオン様の身体に頬ズリして・・・あぅあ ぅあぅあぅ‼‼????﹂ ﹁お・・・・・・落ち着け明命⁉猫が驚く‼俺の上で暴れるな‼そ していろんな意味でキャラ被るから落ち着けぇえええ‼﹂ レオンも若干混乱しているようだ。その後、なんとか落ち着かせた レオンは明命と共に城に帰ったが、二人とも顔を赤くしていたとい うのはいうまでもない・・・・・・・・・。 338 第48話:猫︵後書き︶ 準備は整った。袁紹軍による徐州侵略に備え、ライルと一刀は支城 海兵隊の誇り,Re で話をしていた。今後の流れ、時代の流れ。そしてライルはあるこ 真・恋姫無双 とに気がつく。 次回 [未来の父] 英雄同士の会話に衝撃が走る。 339 第49話:未来の父︵前書き︶ 対袁紹軍態勢を構築中して、ひと段落するライルと一刀。一刀から めでたい話が聞けた。 340 第49話:未来の父 劉備軍との同盟を締結させ、使者である魯粛と千里は物資運搬で到 着したスーパーシースタリオンに乗り込んで、建業へと帰還してい く。妹との別れを嫌がった千里は気絶しながらだが・・・。 国境付近には既にハンターキラーを偵察と監視で派遣している。既 に国境付近には袁紹軍が集結していて、いずれ侵略が開始されるら しい。 予想外だが敵の侵攻速度は遅く、今は兵士の休息と補給を行なって いるようだ。しかし、こちらもその分だけ防御態勢構築に時間を掛 けられる。 俺は一刀と共に支城の城壁に設けたM2の機関銃座で寛いでいた。 ﹁くぅ∼‼やっぱりコーラうまい‼﹂ ﹁ははは、喜んでくれて幸いだよ﹂ 俺は持って来ていたコーラを一刀と共に飲む。彼にとっては本当に 懐かしい味と刺激であり、既にペットボトルを2つ空にしている。 人が飲むようなものではない と言い放った。 劉備達も飲んでみたが刺激が強すぎたみたいで、特に関羽に関して は ﹁しかし意外でしたよ﹂ ﹁何がだ?﹂ ﹁ライルさんが酒を飲めないってことですよ。印象的には強そうな のに・・・﹂ ﹁誰にだって弱点はあるものだ。呉では色々と苦労するがな・・・﹂ ﹁苦労?﹂ 341 ﹁うちの大将達は酒が強いんだよ・・・しかも相当な飲兵衛でな・・ ・・・・俺達の基地が完成した際の打ち上げパーティーには酷い目 に合わされた﹂ 俺がそういうと一刀は失笑してしまう。思い出すだけで頭が痛くな ってしまいそうだ。 ﹁しかし・・・・・・奴等の侵攻速度が予想よりも遅いな・・・﹂ ﹁あの馬鹿女にしては意外でしたね・・・・・・兵士に補給する為 に停止するなんて・・・﹂ ﹁恐らくは誰かが進言したんだろう。袁紹がそんなことを指示する 訳がない﹂ ﹁ええ・・・虎牢関であんなことを仕出かした悪党ですから・・・﹂ ﹁ああ・・・・・・一刀君﹂ ﹁何ですか?﹂ ﹁君はこの世界と流れをどう思ってる?﹂ 俺がそういう風に尋ねると、彼の表情が変わった。 ﹁この世界は俺達の知っている三国志の世界に似た世界だ。流れそ のものは合致しているが、時期が早すぎる﹂ ﹁・・・それは俺も思ってました。陽人の乱でも呉軍を指揮したの は孫策さんじゃなく孫堅。朱里・・・・・・孔明も劉備軍に加わる のは長板橋の戦いより少し前・・・新野城の戦いの後です﹂ ﹁孫策殿の母親である先代の孫堅殿もだ。しかも演義の世界も混ざ ってやがる﹂ 確かにそうだ。この世界はどう考えても俺達の知っている三国志で はなく、三国志演義が混ざった世界だ。 それを表すかのように関羽は偃月刀、呂布が方点画戟を使っている 342 が、それらの得物が登場するするのは10世紀、栄の時代にようや く登場する得物で、後漢末期や三国時代には登場していない。 ・・・それだけはな ﹁いずれ袁紹は滅び、青州と西涼、更に幽州を奪った曹操は破竹の 力での天下 勢いで南下を開始するだろうな﹂ ﹁ええ・・・曹操の覇道による んとしても阻止しないと俺達の世界の二の舞になる﹂ ﹁400年以上も大乱が繰り返された挙句、英雄達の願いは都合の いいように書き換えられた﹂ ﹁俺達の知らない世界だからこそ、何が起こるか分からない。だか ら俺達で平和な世を作る﹂ ﹁・・・・・・そうだな﹂ 別世界 ならば何が起こっても不思議ではない。 一刀の言うとおり、この世界が俺達が知っている三国志の世界とよ く似た 正直にいうと、彼等の理想は理解し難い。人と人が手を取り合って 分かり合えるなどは夢物語でしかなく、人が人である限り争いが無 くなることはまずない。 そんな現実を見て行動を起こしたのが曹操だ。 力による支配は確かに一時的な平和を生む。しかし支配者が死ぬと 後継者争いが起こり、やがては再び戦火が広がる。 だが信じるものを持つことで力を得るというのもまた事実。その志 こそが人に力を与えるのだろう。 俺も彼と同じ様にコーラを胃に流し込んでいると、ある事を思い出 した。 ﹁そういえば一刀君。実は気になってたことがあるんだが・・・・・ ・﹂ ﹁何です?﹂ 343 ﹁劉備殿のことだ﹂ ﹁桃香ですか?﹂ ﹁ああ、初めて会った時から気になっててな・・・どういえばいい か分からないから単刀直入に聞くが・・・・・・・・・﹂ 俺からの質問に彼はコーラを飲みながら耳を傾ける。 ﹁俺の間違いだったらすまないが、もしかして彼女・・・・・・妊 娠してるのか?﹂ ﹁ブッ⁉﹂ 俺の言葉が予想すらしていなかったのか、一刀は飲んでいたコーラ を思いっきり吹き出してしまった。 ﹁大丈夫か?﹂ ﹁げほ⁉げほ⁉・・・・・・だ・・・大丈夫・・・大丈夫ですけど・ ・・いきなり何を⁉﹂ ﹁いやだって・・・初対面の時から腹をさすっていたし、調子が悪 いにしたら顔はすっきりしているし、なによりも妊娠特有の穏やか な表情をしてたからな・・・﹂ 俺の推理に彼は顔を赤く染めながら視線を背けてしまった。これは 確実に図星だろう。 ﹁で・・・どうなんだ?﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・ええ﹂ ﹁今日で何ヶ月だ?﹂ ﹁・・・7日前で・・・・・・丁度3ヶ月らしいです﹂ ということは妊娠したのは陽人の乱より少し前ということになる。 344 阿 しかし17歳ほどで父親になるとは・・・・・・。俺はコーラが入 った湯飲みを置いて彼の背中を叩いた。 ﹁ははははは‼めでたいじゃないか‼﹂ ﹁ちょ・・・ライルさ∼ん﹂ にするのか?﹂ ﹁ははは・・・すまんすまん。それで、名前はやっぱり幼名は 斗 ﹁は・・・・・・はい・・・一応は・・・﹂ ﹁だったら祝いに何か用意しないとな﹂ ﹁ええっ⁉そ・・・いいですよ⁉﹂ ﹁気にするな、俺からの些細なプレゼントだ。用意が出来たらすぐ に渡すよ﹂ ﹁す・・・・・・すみません﹂ ﹁今はコーラしかないが、ひとまずは乾杯だ♪﹂ が生まれてくる。俺達もい そういうと、俺と一刀は湯飲みに新しいコーラを注ぎ、掲げると互 天の血が入った子供 いの湯飲みの底で乾杯をする。 劉備軍では既に ずれは考えなければならないが、ひとまずは袁紹軍との戦に備える のであった・・・・・・・・・。 345 第49話:未来の父︵後書き︶ 袁紹軍による徐州侵略が開始された。数では圧倒されているが、ラ 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re イル達と劉備軍の有能な将達が策を持って構える。 次回 [一歩前へ] 御遣いと海兵隊員の戦い方が見られる。 346 第50話:一歩前へ︵前書き︶ 対袁紹軍対策、それが軍議室で話し合われる 。 347 第50話:一歩前へ 俺達が劉備軍の指揮下に一時的に加わって4日後、遂に袁紹軍が徐 州に攻め入って来た。 奴等は怒涛の勢いで国境付近の関所や支城を次々と制圧していった が、戦略的撤退を完了させた劉備軍には一切の損害は無く、奴等は 其れすら気付いていなかった。 俺達は現在、袁紹軍を撃退する為に城内にある軍議室に集められて いた。 室内には俺とアレックスと南郷の3人に加えて劉備軍の首脳陣が集 結していた。 ﹁皆が知ってる通り、袁紹軍が国境を越えて侵略行為を始めた。敵 の数はこちらの偵察隊と無人機によると約10万、大半が歩兵を占 めている﹂ ﹁よくこんだけの人数が揃ったものだな・・・他に職場が無かった のか?﹂ ﹁あの袁紹よ。徴兵で徹底的に掻き集めたのよ。拒否した人達は皆 殺しにされたそうよ﹂ 俺達の掴んだ情報の疑問点を詠が答える。確かにこの世界で兵を集 める大半の方法は徴兵制度による。 孫呉軍でも徴兵制度を採用して兵力拡大を行なっている。俺が考え ている部隊では完全志願制だが・・・本音を言えば徴兵制度は賛同 出来ない。 ﹁孔明殿、そちらの状況は?﹂ 348 ﹁こちらは準備万端です。袁紹軍が国境で進軍を停止してくれたお かげで、迎え撃つ準備が整えられました﹂ ﹁後は袁紹軍を上手くこちらに誘き寄せるだけだな?﹂ ﹁︵コクリコクリ︶﹂ ﹁そんで陣形はどうするんや?﹂ ﹁決まってるです‼恋殿が大活躍すれば袁紹は逃げ出すです‼﹂ ﹁だったら鈴々も暴れてやるのだ‼﹂ ﹁張飛や呂布が行くのであれば私もだ‼﹂ ﹁はいはい、元気なのはいいけど程々にね﹂ ネネによる一言で武人としての血が騒いだのか、張飛と嵐が志願し 出す。それを一刀が手を叩いて場を納める。 ﹁ライルさん、何か有効な戦術はありますか?﹂ ﹁いいのかい?俺達は客将だぞ?﹂ ﹁違うよライルさん﹂ ﹁違う?﹂ ﹁うん♪ライルさん達はもう私達の友達だよ♪﹂ しかしな そういうと劉備殿は無垢な微笑みを見せる。しかし客将ではなく友 とは・・・・・・どれだけ器が広いんだ? 突撃 一刀からの問い掛けで全員の視線が俺に集中する。 ﹁・・・俺の解釈だが、袁紹軍の戦術は基本的に い筈だ﹂ ﹁はい、袁紹軍は数に頼り切った人海戦術しか行なっていません﹂ ﹁そちらが動員出来る兵数は?﹂ ﹁掻き集めてようやく3万です﹂ 実質上は約2倍の兵力を相手にすることになる。しかし兵一人一人 349 の実力を考えるとその差は埋まってくる。 ﹁奴等が何も考えず、無謀に真正面から攻撃してくるなら、地の利 に加えて待ち構えているこちらが有利になる。あのクソ野郎に優秀 な人材はいない上に、奴自身もこの国で最も無能。対してこちらは 名高い優秀な武将や軍師が揃っている﹂ ﹁にゃはは∼、褒められたのだ♪﹂ ﹁さっすがライルや♪分かってるやん♪﹂ ﹁そこでだ・・・・・・敵をこの城の前に誘き出すには誰かが引き 付ける必要がある﹂ ﹁ほぅ、つまりは囮ということかな、ライル殿?﹂ ﹁その通りだ趙雲殿。一度だけ真正面から敵にぶつかって退却。袁 紹の性格からして確実に全軍をその一点に集中させる筈だ。陽動部 隊が退避完了したら、俺達が敵の数を減らす﹂ ﹁しかしライル、どうやって減らすんだ?﹂ 嵐がそういうと俺は腰に身につけてあるM45を軽く叩く。嵐はそ の動作を見て納得したようだ。 ﹁敵の数を減らしたら次は君達の出番だ。怯んだ隙を突いて一刀君、 関羽殿、張飛殿、趙雲殿、嵐、露蘭の6人を主力とした迎撃部隊で 畳み掛ける﹂ ﹁なあなあライル、うちは?﹂ ﹁・・・恋も﹂ ﹁それをいったら私もだぞ﹂ ﹁心配するな、3人にも役割はある・・・劉備殿﹂ ﹁ほぇ?﹂ ﹁ほぇって・・・・・・劉備殿の軍に騎馬部隊は?﹂ ﹁ええっと・・・ご主人様ぁ∼﹂ ﹁はぁ・・・・・・全部で2000あります﹂ 350 相変わらず超天然の劉備殿。それを一刀が呆れながら答える。 ﹁3人には騎馬部隊の指揮を任せたい。振り分けは恋と霞が500 ずつ。白蓮は1000。ここまでくれば分かるだろ?﹂ ﹁ええっと・・・騎馬隊による速さを重視した敵の分断ですか?﹂ ﹁そうだ。分断に成功したら3人の騎兵隊を中心にして、城寄りの 敵部隊は包囲殲滅。それより後方の部隊は士気が挫かれて逃げ出す 筈。追い討ちとして俺達の航空戦力と地上部隊120名がこれを殲 滅、敵の戦闘力を完膚なきまでに粉砕する﹂ 作戦の流れはこうだ。 袁紹の性格を逆手に取り、陽動兼誘導を行なう隊が城に退却。 退却完了と同時に俺達が城壁や城の前に設けてある塹壕で待機して いるウルフパックが攻撃を開始して敵の数を削ぐ。 数と士気が低下したら劉備軍が反撃を開始。それと足並みを揃えた 霞、恋、白蓮率いる騎兵隊が退路を分断。 それより後方を俺達が航空戦力を用いて、グレイブ隊による対地攻 撃、ファルシオン隊に輸送されたソードブレイカー隊とハルバート 隊が更に奥へと回り込んで敵戦力の大半を撃滅する。 袁紹の性格と敵兵の低い能力を逆手に取って、二手三手先を読んだ 計算された作戦だ。敵は確実に食いつくだろう。しかし一つだけ問 題がある。 ﹁しかしライル殿、問題はこの囮ではないのか?﹂ ﹁ああ、敵はかずが多く、些細な囮は歯牙にも欠けぬ。だから敵を 確実に食い付かせるには・・・・・・・・・一刀君が最適だろう﹂ 351 そういうと全員が驚愕する。特に関羽殿は表情を強張らせる。 ﹁なっ⁉ご主人様を囮だと⁉﹂ ﹁そうだ。この中で袁紹に恨みを最も多く買っているのは一刀君だ。 袁紹に頭に来そうな挑発をしてやれば確実に食い付く﹂ ﹁ご主人様にそのような危険な役回りをさせる訳には行かない‼貴 様、それが分かっているのか⁉﹂ ﹁百も承知だ。だがな関羽﹂ ﹁なんだ⁉﹂ ﹁君は自分の主が信じられないのか?﹂ そういうと彼女は言葉を詰まらせる。 ﹁君は袁紹如きの軍勢に一刀君が殺られるとでも?﹂ ・・・ですか?・・・ライルさん?﹂ ﹁何を言う‼ご主人様があのような輩に負ける筈がない‼﹂ ﹁それが君の答えだろ?﹂ 危険を冒す者が勝利する ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁ ﹁そうだ﹂ 危険を冒す者が勝利する。 イギリス軍特殊部隊[SAS]のモットーだ。ただ待って勝利を掴 むなど、それは敗北でしかない。本当に勝ちたいのなら自分から危 険に飛び込む必要があるという意味だろう。 ﹁ただ勝利を待つだけではダメだ。君達の願いは劉備殿の目指す世 界を現実のモノにするのだろ?﹂ ﹁えぇ﹂ ﹁現実させるなら、それ相応の危険も付き纏う。それを避けていた 352 りしたら、夢は夢のままで終わってしまう・・・﹂ ﹃・・・・・・・・・・・・﹄ ﹁夢を実現したいなら覚悟を決めろ・・・﹂ ﹁・・・・・・分かりました﹂ ﹁ご主人様⁉﹂ ﹁愛紗がそんなに心配してくれて、それだくで嬉しいよ。だけでラ イルさんのいう通りだ﹂ 一刀は心配し続ける関羽の肩に手を載せる。彼女は顔を覗き込まれ ると、赤く染めて背けてしまう。 ﹁楽な道なんて存在しない・・・だけどどれだけ困難な道だろうと、 みんなが信じてくれたら俺は・・・・・・みんなのところに必ず帰 ってくるよ﹂ ﹁ご主人様・・・・・・・・・・・・分かりました﹂ 一刀の説得でようやく関羽が折れた。 ﹁けれども約束してください・・・必ず帰ってくるって・・・・・・ ﹂ ﹁あぁ・・・必ず帰ってくるよ﹂ そういうと室内に甘酸っぱい雰囲気が蔓延するが、全員の視線︵何 人かは嫉妬︶が集中して、2人は顔を真っ赤にしながら互いに離れ る。そして対袁紹軍の策は俺の策で進めることになった。 徐州攻防戦・・・この戦いで俺達は歴史の分岐点に関わることにな る・・・・・・。 353 第50話:一歩前へ︵後書き︶ 遂に袁紹軍が攻撃を開始した。しかし一刀の挑発に乗せられ、袁紹 軍は罠に掛かった。 そして袁紹軍が次々と駆逐される中、前衛と後衛を分断する役割を 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 任された恋達も行動を開始する。 次回 [深紅と紺碧と純白] 徐州の蒼天に3つの牙門旗が靡く。 354 第51話:深紅と紺碧と純白︵前書き︶ 徐州の地に3種の牙門旗が風に靡く。 355 第51話:深紅と紺碧と純白 劉備軍と袁紹軍による徐州攻防戦は切って落とされた。一刀が単身 で袁紹を挑発して奴等全軍を引き込ませることに成功。 奴等は何も疑わず追撃を行ない、やがて奴等の方からアレックス率 いるソードブレイカー隊の攻撃範囲に飛び込んで来た。 剥き出し状態の袁紹軍に対してアレックス達は城壁や塹壕から身を 隠しながら攻撃を仕掛け、奴等は次々と命を散らして行く。 それに追い討ちをかけるように一刀達が激しく銅鑼を鳴らし、続々 と出陣して行く。 一刀。 雲長。 こと北郷 こと関羽 翼徳。 天の御遣い 軍神 こと張飛 子龍。 燕人 こと趙雲 こと露蘭。 こと嵐。 昇り龍 猛将 白騎士 漢の中でも屈指の実力者が揃う劉備軍相手に雑兵の袁紹軍兵士が敵 う筈もなく、前衛の兵士は次々と駆逐されていく。 そしてライル達の読み通り、袁紹軍の中軍より後方部隊が制止する 部隊長の命令を無視して逃げ始める。 その様子を恋とネネと霞と白蓮は騎乗したままで伺っていた。 ﹁うっひゃ∼、ほんまに逃げ出しよったで・・・ライルと一刀のゆ うた通りやな﹂ ﹁・・・︵コクリコクリ︶﹂ 356 ﹁袁紹の兵達は何の策も講じて無かったからですぞ‼﹂ ﹁ああ・・・・・・﹂ 恐ろしく予想通りの展開に霞は飛龍偃月刀を担ぎながら見下ろす。 彼女達がいる場所は丘の上。その後方では2000の騎馬隊が待機 していた。 白蓮は前と同じ様に白馬に跨り、ライルが用意してくれた彼女の新 しい得物である[馬雪]を担ぎながら、出番に備える。 ﹁そんでアレックスの合図はまだかいな・・・・・・早よう戦いた くってウズウズするで﹂ ﹁早くしないと部下達の仇が逃げるぞ・・・﹂ ﹁・・・霞、白蓮、焦っちゃダメ﹂ ﹁そうですぞ﹂ ﹁そりゃ分かっとるけどなぁ∼・・・・・・・・・おっ‼﹂ 霞が何かに気が付き、恋とネネも同じ方角を見る。見えたのは支城 攻撃許可 だ。 から打ち上げられた一発の緑の信号弾。前もって打ち合わせてあっ た霞達の ﹁やっと来たで・・・あいつら蹴散らしたるでぇ‼﹂ ﹁恋・・・ご主人様の為、ライルの為、家族の為に頑張る﹂ ﹁みんな・・・・・・今お前達を殺した仇を送ってやるからな‼﹂ ﹁お待たせしたです恋殿‼銅鑼を鳴らすです‼﹂ ﹁御意‼﹂ 3人が武器を構え、ネネは銅鑼を手にした兵士に鳴らす様に指示す る。周辺に攻撃開始の銅鑼が鳴り響き、袁紹軍兵士達は立ち止まっ てしまう。 357 ﹁よっしゃ‼恋、ネネ。いつもの頼むで‼﹂ ﹁︵コクリ︶・・・ネネ﹂ ﹁はいですぞ‼﹂ ﹁・・・旗を﹂ ﹁御意ぃ‼﹂ そういうとネネは何処からか恋の牙門旗を取り出し、それを天に向 かう様に掲げた。 ﹁遠からん者は音にも聞け‼近くば寄って目にも見よぉっ‼蒼天に 劉 悪鬼はひれ伏し、鬼神も逃げる、飛将軍呂奉先 翻るは、血で染め抜いた深紅の呂旗‼天下にその名を響かせる 備軍が一番槍!! に 純白の孫旗 が揚 は黄巾党に取って恐怖の象徴を通り越し を見た袁紹軍の中から悲鳴が上がる。 が旗なり‼天に唾する悪党どもよ‼その目でとくと仰ぎ見るが良い 深紅の呂旗 のです‼‼﹂ 上がった 深紅の呂旗 ﹁深紅の・・・・・・﹂ ﹁呂旗⁉﹂ 面前に翻る 紺碧の張旗 た死そのものとして語られていた。 そして立て続けに掲げられた がったことで袁紹軍兵士達は蜘蛛の子を散らすように逃げるが、奴 等は既に死んだ様なものだ。 ﹁よっしゃ‼突撃ぃ‼我が紺碧の張旗に続けぇ‼﹂ ﹁遅れを取るな‼我らも突っ込むぞ‼﹂ ﹁・・・我ら使命は敵の殲滅・・・・・・遠慮はいらない・・・掛 かってこい﹂ 358 神槍 の異名通り、美 彼女達を先頭に2000もの騎馬隊が袁紹軍に突撃を敢行。瞬く間 に敵を飲み込んでいく。 ﹁うおっしゃあ‼いてこましたる‼﹂ 霞は敵の懐に突っ込むと馬から飛び降り、 しく舞う一輪の花びらのように飛龍偃月刀を振るい、次々と袁紹軍 兵士の命を散らせる。 ﹁弱い奴・・・死ね﹂ 、 飛将軍 という異名に恥ない武 恋も負けずと敵を10人以上纏めて仕留めて行き、周辺や彼女の身 深紅の鬼人 体に敵兵の返り血が付着する。 その姿はまさに だ。 ﹁部下達の仇‼ここで晴らしてやるぞ袁紹軍‼﹂ 部下達を奴等に殺された白蓮も敵討ちで騎乗のままで敵を次々と仕 留める。 彼女の実力は良くもなければ悪くもない。つまりは普通。 しかしそれは周囲に名高い武将や軍師が多いだけで、彼女の実力は どちらかというと高い方だ。 今まで活躍の場が無かった白馬長史は、水を得た魚のように騎馬戦 術を駆使して、袁紹軍の退路を確実に遮断する。 騎馬戦術のエキスパートである3人を前に袁紹軍の前軍と中軍は退 路を絶たれた形になり、正面衝突からは一刀率いる劉備軍とアレッ クスが指揮するソードブレイカー隊。 359 もはや奴等に勝機は無くなり、後軍も逃げ出し始めるが、それも叶 わないだろう。なぜなら、上空から6機の航空機が高度を落としな がら袁紹軍後軍と本陣に向かっていた・・・・・・・。 360 第51話:深紅と紺碧と純白︵後書き︶ 袁紹軍はもはや敗北目前だ。袁紹軍の前軍は次々と仕留められ、壊 滅も時間の問題だ。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re そしてライル達は次の段階に移行して部隊を後軍に差し向けた。 次回 [エアストライク] 雑兵部隊を空から精鋭が噛み付く。 361 第52話:エアストライク︵前書き︶ 袁紹軍の後軍に回り込んだライル達。空から敵に食らい付く。 362 第52話:エアストライク 徐州攻防戦は既に佳境へと入っていた。練度で圧倒的に劣る袁紹軍 は猛者達が揃う劉備軍に敵う筈がなく、各地点で確実に駆逐されて いく。 袁紹の後軍は逃げ出す部隊が相次いでいたが、その部隊をライル達 が見逃す筈が無かった。袁紹軍から見て左翼の上空からウルフパッ クの航空部隊が接近していた。 ﹁グレイブ1から全機。敵部隊との接敵まで30秒だ。交戦に備え ろ﹂ <了解しましたグレイブ1> <グレイブ3了解> <ファルシオン隊了解> 航空部隊の指揮官を任されている南郷のヴァイパーが低空で飛行す る。残りの機体も同じ高度で彼に随伴する。 ﹁グレイブ1から全機へ、高度を下げながら低空飛行を保て。敵に はこちらに攻撃は不可能。絶好の狩場だ﹂ 無線で指示すると南郷のヴァイパーは編隊の先頭に就いた。 ﹁我々の任務は降下地点の確保と、中佐達の援護だ。周辺には袁紹 軍しかいない。奴等を片っ端から片付けるぞ﹂ <ラジャー。攻撃を開始します> <ガナー、制圧射撃始め‼> 363 Mod3で地上で戸惑っている袁 編成の真ん中を飛行しているファルシオン隊のスーパーシースタリ オンが搭載されているMk19 紹軍に攻撃を開始する。 降り注ぐ40mm高性能炸薬弾が地上に落着すると同時に爆発が相 次ぎ、その爆発が発生する度に袁紹軍兵士が吹き飛ばされる。 ﹁よし、まずは左の敵から片付けるぞ。ダンテ、低空から接近しろ﹂ ﹁了解です大尉﹂ ﹁グレイブ2、一緒に来い。グレイブ3は右翼を攻撃。4は側面を 援護だ。了解か?﹂ <こちらグレイブ3、了解しました大尉> <こちらグレイブ4、3に続きます> グレイブ隊各機が役割を遂行する為に散開。南郷の機体も高度を落 として攻撃態勢に入った。 ﹁グレイブ1、攻撃開始‼﹂ 3銃身式 20mm焼夷榴弾を地上に撃ち込 南郷はトリガーを引き、機首に搭載されているM197 20mm機関砲からM56A4 む。 焼夷榴弾が着弾したことで一部から出火し始め、その影響で直撃を 免れた敵兵の体に火が付き、その場でのたうちまわる。 ﹁旋回してもう一度だ‼﹂ ﹁了解﹂ 2.75in高爆発威力弾頭 ダンテは指示に従い、機体を右に旋回させ、敵の上空を飛行しなが らLAU−61D/AからM151 364 を広範囲に撃ち込む。 1発で半径50mの殺傷力を誇る上に、袁紹軍は固まっていたこと で広範囲を攻撃したことによりかなりの数を一度に仕留めれた。 その攻撃した地点には跡形もなく吹き飛ばされた敵の残骸に身体の 一部を失なって、苦し悶える敵兵の姿がある。 <グレイブ3からグレイブリーダー。着陸予定地点に敵兵が集結> ﹁確認した。全機、集結しろ。奴等を一網打尽にしてやれ﹂ ≪了解≫ ライル達の着陸予定地点は小高い丘だが、今その付近に敵が逃げ込 んで来ていた。流石に着陸予定地点に敵兵を残しておく訳にはいか ないので、その周辺は完全に制圧する必要がある。 南郷は全ての機体を集結させて、機首を敵兵に向けさせる。 ﹁全機、一斉攻撃‼﹂ 全てのヴァイパーが一斉にハイドラ70で攻撃を仕掛け、敵を纏め て吹き飛ばすと、瞬く間に着陸予定地点を確保した。 ﹁着陸予定地点確保‼ファルシオン隊は着陸して中佐達を降下させ ろ‼﹂ <こちらファルシオン1‼着陸します‼> <ファルシオン1から2‼降下完了後に続けて着陸します‼> 着陸地点を確保したら、ファルシオン1が着陸して、後部ランプが 解放されると同時にライル率いるハルバート隊が一気に飛び出して 見えた敵兵を攻撃する。 <ウルヴァリンからグレイブリーダー> 365 ﹁こちらグレイブリーダー‼﹂ <ハルバート隊は降下完了。これより行動を開始する。グレイブ隊 は引き続き航空支援を実施せよ> ﹁了解です中佐‼﹂ ライル達を乗せていたファルシオン1は全員を降ろすと再び離陸し て、上空からハルバート隊の援護に加わる。 ファルシオン2もエストック隊を降下させると彼等の直衛に就く。 ここでのライル達の役割は2つ。退却を図ろうとする袁紹軍の後軍 を国境まで追撃、中軍と前軍の逃亡阻止だ。 うまくいけば袁紹をこの戦で捕縛、もしくは抹殺できるかもしれな い。袁紹が死ぬのは官渡の戦いから数年後だが、あのクソ野郎が今 の時代に生きていても害あるだけ。 ならばさっさと退場して頂く。これがライル達が出した結論だ。 なんとか利用出来るとしたら、袁家の莫大な財産だろうが、袁家の 財産の一部は七乃の計らいもあって確保出来ている。 つまりライル達や孫呉にとって袁紹は討伐対象でしかない。南郷も 考えながらヴァイパーで敵を次々と仕留めていく。 <こちらウルヴァリン‼敵の数が多すぎる‼空から攻撃しろ‼> ﹁了解です中佐。目標の指示を﹂ <スモークでマーキングした‼遠慮なく吹き飛ばしてやれ‼> ﹁ラジャー。攻撃します‼﹂ ライルからの支援要請を受けてすぐに急行する。ライルが指示した 通り、赤いスモークの周辺に敵が仕掛けようてしていたが、煙の影 響で思うように動けないようだ。 366 目標を捉えると、ヴァイパーのハイドラ70を斉射をすぐに行なう。 放った弾頭は赤いスモークに吸い込まれるように落着していき、そ の地点にいた敵集団を纏めて細切れにする。 <いいぞグレイブリーダー‼支援に感謝する‼> ﹁了解‼支援を続行します‼﹂ その後もライル達は航空支援を受けながら袁紹軍の残存戦力を次々 と仕留めていく。 袁紹軍はライル達の攻撃を前になす術なく次々と倒されていき、奴 等の戦力は大半が駆逐されていた。 そして劉備軍と袁紹軍の最前戦でも決着が着こうとしていた・・・・ ・・・・・。 367 第52話:エアストライク︵後書き︶ 劉備軍の反撃で袁紹軍前軍は壊滅寸前だ。一刀も神龍双牙で次々と 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 仕留めていく中、彼は袁紹軍で唯一の良心と出会う。 次回 [決着] 北郷流の真髄、ここにあり。 368 第53話:決着︵前書き︶ 北郷流二刀心眼術の真髄、ここにあり。 369 第53話:決着 ライルさん達が袁紹の後軍を攻撃している丁度その頃、俺達が相手 をしている袁紹の前軍は壊滅寸前に陥っていた。 ﹁劉備軍の有志達‼あと一息だ‼いま一度我等の強さを雑兵共に見 せつけろ‼﹂ 愛紗が偃月刀を掲げ、兵達に鼓舞すると自らも再び切り込む。豪の 中に柔が見られる武で、舞うように袁紹軍兵士を斬りつける。 ﹁うりゃうりゃあぁぁ‼突撃‼粉砕‼勝利なのだぁ‼﹂ 俺達の特攻隊長とも思える鈴々も小柄に似合わず豪快に丈八蛇矛を 振り回し、次々と敵を文字通り吹き飛ばしていく。 ﹁我が名は趙雲‼この戦局でもまだ向かって来るならば、我が命を 奪ってみせよ‼﹂ 星も敵を挑発しながら愛槍の龍牙で敵の身体を次々と貫いていく。 その動きは霞に匹敵するほどの動きで、敵は気付いた頃には既に死 んでいるだろう。 ﹁我が主を救って頂いた一刀様や劉備様に仇なす下郎共が‼退かぬ のならば地獄に叩き落としてくれる‼﹂ 華雄こと嵐は持ち前のタフさで縦横無尽に暴れ回る。 彼女の武は力と破壊力を重視したもので、敵の身体を舞いあげると 370 そのままフルスイングで吹っ飛ばした。 仲権こと露蘭もライルさんが用 ﹁よっしゃあぁぁ‼まだまだやれるぜぇ‼﹂ 新たな劉備軍武将となった夏侯覇 北欧天龍 を手にして戦いを繰り広げる。 西欧 意してくれた右肩に3本の棘が付けられた白と緑に塗装された西洋 と円形状の盾 風の甲冑を身に纏いながら、同じく用意した彼専用の片手剣 海龍 しかしライルさんはあの装備を何処から用意したんだ? 西欧海龍は緩やかな湾曲の片刃で、幅が広く切先が鋭い西ヨーロッ パのバデレールと呼ばれる片手剣で、北欧天龍も表面の彫刻以外は まさしくアキレウスの盾だ。そんなことを思いながらも、俺も同様 に敵を倒していく。 ﹁死にたくなかったら大人しく降伏しろ‼民や仲間に仇なすってい うなら容赦しない‼﹂ 俺は愛刀の心龍双牙を繋げた薙刀モードで縦横無尽に、降伏せず闇 雲に向かって来る敵を斬る。俺の流派である北郷流二刀心眼術特有 の剣技だ。 俺が向かって来る敵を倒していくと、いきなり大剣を装備した敵が 斬りかかって来た。それに素早く反応した俺は心龍双牙を2つに分 けて攻撃を受け止めた。 相手は黄緑色の髪に動き易さを重視したと思われる胸当てと左肩当 てという軽装の活発そうな少女・・・・・・袁紹の腹心の1人であ る文醜だ。 ﹁文醜かっ⁉﹂ ﹁へへっ‼悪いけど相手してもらうぜ・・・兄ちゃん‼﹂ 371 そういいながら文醜は大剣を力一杯振り下ろして斬りかかるが、流 石に受け止められないと判断した俺は、素早く後ろに飛んで回避す る。 するとその直後、背後から別の気配。これにも反応してすぐ横に転 がって回避すると大槌 を構えたボブカットの黒髪に重装兵と思える鎧を身に纏った少女。 文醜と同じく腹心の顔良だ。 ﹁もぅっ⁉文ちゃん‼私たち囲まれちゃってるんだから1人で動い ちゃダメだよ‼﹂ ﹁囲まれてるんだったら総大将を倒したらいいと思ってさぁ∼﹂ ﹁総大将って・・・・・・わぁ⁉ほ・・・北郷さん⁉﹂ 俺にようやく気が付いた顔良は驚きながらも大槌を構え直す。 ﹁へへっ・・・悪いんだけどあたし達も負けたくないからな・・・ あたしと斗詩︵とし/顔良の真名︶の力、見せてやるよ‼﹂ ﹁ごめんなさい北郷さん・・・こっちが悪いのは分かってるんです けど、文ちゃんのいう通り、私達も負ける訳にはいかないんです‼﹂ 2人はほぼ同時におれに仕掛けて来た。文醜が大剣を横に振って来 た攻撃を弾きながら回避して、顔良の大槌の振り下ろしにも後方に 飛んで回避。 二人とも武器が大きく重いということで大振りになっているが、そ れを連携でカバーしている。 正史の文醜と顔良も袁紹軍では同格の地位と強さを誇った武将で、 義兄弟の契りを結んだともされる。それを表すかのように2人は互 いの動きを把握して適した動きで仕掛けて来ている。 372 こういう敵が厄介だ。実力のある敵を同時に相手にしているだけで はなく、連携もしっかりとれている。 2人の連携攻撃を弾き返し、距離を置くと心龍双牙を鞘に戻し、腰 だめの姿勢で身構える。 ﹁なんだ?﹂ ﹁北郷さん・・・なんのつもりですか?﹂ ﹁悪いがこれ以上、付き合ってられないんでね・・・・・・一瞬で 決めさせてもらうよ﹂ そういいながら俺は全身から剣気を発して彼女達に当てる。凄まじ い剣気を前にして2人は思わず怯み、近くにいた袁紹軍兵士はそれ だけで気を失うか、戦意を失なって降伏していく。 しかし彼女達は武将だ。それに怯みながらも武器を抱えて俺に仕掛 けて来た。 ﹁くっ・・・あんたが賭けに出るんだったら・・・・・・あたしも その賭けに乗ってやる‼ハァアアアアア‼﹂ ﹁負けない・・・ええええええい‼‼﹂ 2人は身構えている俺に対してほぼ同時に仕掛ける。しかし勝負は 一瞬で決まった。2本の刀を鞘に戻した音と共に・・・・・・。 ﹁ぐっ・・・・・・と・・・斗詩ぃ・・・﹂ ﹁ぶ・・・文・・・・・・ちゃん・・・﹂ 朧月 という ほんの少しだけ視線を後方に向けるとそこにあったのは地面に倒れ た文醜と顔良と2人の得物の残骸。 俺が使ったのは北郷流二刀心眼術における一の太刀 抜刀術だ。 373 鉄も切断する心龍双牙の居合い抜きで相手の武器を切断して、すれ 一刀が捕虜 を抜刀して切先を天高く掲げた。 違いざまに柄頭で相手の後頭部に一撃を加えて意識を奪う。まさに 捕縛に適した技である。 天 玄徳が天の懐刀・・・北郷 決着を付けた俺は心龍双牙 ﹁敵将文醜及び顔良‼劉 にした‼﹂ 俺の勝鬨で劉備軍兵士も声高く勝鬨を上げ、反対に残っていた袁紹 軍兵士達は戦意を完全に失なって降伏していき、ライルさん達も敵 後軍を壊滅させて戻ってきた。予想以上に敵が多かったようで、本 陣を制圧した時には既に袁紹は僅かな部隊を連れて逃げ出したよう だ。 文醜と顔良、更にかなりの捕虜を捕らえたことで徐州攻防戦は劉備 軍の圧倒的勝利で幕を下ろす。更にライルさん達は次の作戦に備え て準備を始めるのであった・・・・・・・・・・・・。 374 第53話:決着︵後書き︶ 徐州攻防戦は劉備軍の圧倒的勝利で幕を下ろした。捕虜になった文 醜と顔良はライルが捕らえた捕虜から衝撃事実を聞かされ、思い悩 む。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re そしてその日の晩に行なわれた戦勝打ち上げで一時の寛ぎを取る。 次回 [打ち上げ] 銀狼、劉備軍からの信頼を勝ち取る。 375 第54話:打ち上げ︵前書き︶ 徐州攻防戦後の打ち上げ。ライルもそれに参加する。 376 第54話:打ち上げ 徐州攻防戦が劉備軍の圧勝で終結したその日の晩の支城内部にある 中庭が騒がしかった。 ﹁にゃははは∼♪もっと飲もうなぁ∼♪﹂ ﹁わだしはよってないじょ∼♪﹂ ﹁ははははは‼もっと酒ぇ∼♪﹂ ﹁おっ‼いい飲みっぷりじゃねえか♪﹂ 一角では手に酒が入った壺を片手に完全に出来上がっている霞と嵐 と白蓮と露蘭が次々と酒を飲み込んでいく。特に嵐は舌が回らなく なっている程に出来上がっているようだ。 ﹁詠ちゃ∼ん・・・あのねぇ・・・・・・ご主人様もぉ・・・ライ ルさんもぉ・・・私のものだと思うのぉ∼・・・・・・しょれにゃ のに・・・他の女の子と仲良しなんだよぉ∼﹂ ﹁ちょっと誰よ月にお酒飲ませたの⁉月はすっごく酒癖悪いんだか ら‼﹂ こちらでは酔っ払ってなんだかとんでもない爆弾発言をしている月 殿に詠が絡まれていた。 月殿が酔っ払っている姿なんか、妙にレアな気がするが・・・・・・ 。 ﹁ハグハグ・・・モグモグ・・・おかわりなのだ‼﹂ ﹁︵モキュモキュ︶・・・・・・おかわり﹂ ﹁れ・・・恋よ・・・・・・こ・・・これも食べてみないか?﹂ 377 ﹁恋殿ぉおお‼おかわりなのですぞぉおお‼﹂ ﹁はわわ・・・鈴々ちゃんも落ち着いて食べてくだしゃい‼﹂ ﹁あわわ・・・ま・・・まだたくしゃんありましゅから‼﹂ 更にもう一角では張飛殿が凄い勢いで次々と食べ物を平らげ、孔明 殿と士元殿がはわわ軍師とあわわ軍師になって制止し、恋の無垢な 食事を前に関羽殿とネネがほおけていた。 俺は植えられている木にもたれかかりながら手にしているホットコ ーヒーを口にする。なお、終戦後にこんな出来事があった。 と・・・・・・。 捕らえた捕虜の中に申し出があったのだ。 袁紹が文醜と顔良を捨て駒にした 俺はすぐにその捕虜と共に2人に伝えるが、互いを解放するように 詰め寄られ、捕虜の話を聞いて最初は信じられないと言い返して来 たが、自分だけ真っ先に逃げ出した袁紹の話をして、それが真実だ と悟った2人は呆気に取られた。 一刀の判断で2人は被害者という位置づけになり、今は見張りが常 時監視しながらも客間で気持ちを落ち着かせている。 そのまま劉備軍に降るのも良し。身分を捨てて2人の故郷でもある ここ徐州で暮らすのも良し。後は2人が決めることだ。 そんな事を考えていると不意に人の気配。振り向いてみると一刀と 劉備殿が歩み寄って来た。 ﹁こんなところでどうしたんですか?﹂ ﹁やあ一刀君。それに劉備殿も・・・﹂ ﹁ライルさんも一緒にたのしもうよぉ♪今日はライルさんも主役な んだから♪﹂ 378 劉備殿はそういいながら俺の迷彩服の裾を掴んで彼女達のところに 引っ張っていく。それに戸惑いながらも、コーヒーをこぼさずに後 に付いて行く。 ﹁みんなぁ∼、ライルさん連れて来たよぉ∼♪﹂ ﹁はぅあ∼・・・・・・はっ⁉・・・ご主人様⁉姉上⁉﹂ ﹁にゃはぁ∼♪ライルのおじちゃんなのだ‼﹂ ﹁ようやく来られましたか、ライル殿﹂ ﹁はわ・・・ライルしゃん﹂ ﹁ち・・・ちあ・・・・・・﹂ ﹁やっときたかぁ・・・まあまあ飲め﹂ 最初にほうけていた関羽殿が正気に戻り、続けて張飛殿、趙雲殿、 孔明殿、士元殿、白蓮の順で挨拶してきた。 しかし張飛殿・・・・・・確かに前の世界では30歳だったが、こ の世界ではまだ24歳だ。おじちゃんは勘弁願いたい・・・。 ﹁ライルぅ∼♪一緒に飲もうなぁ∼♪﹂ ﹁ひっく・・・ライルぅ﹂ 仕方なく いれ ﹁︵モキュモキュ︶・・・ライル、みんなで一緒にご飯、食べる﹂ ﹁兄貴‼こっちで一緒に飲もうぜ‼﹂ ﹁恋殿がどぉおおおおしてもというのですから、 てやるです‼﹂ ﹁ライルしゃ∼ん・・・﹂ ﹁早く来なさいよね‼﹂ 続いて霞、嵐、恋、露蘭、ネネ、月殿、詠が歩み寄って来た。とい うか最初の2人は完全に出来上がっているし、恋は肉まんを片手に、 酒癖が悪い月殿に至っては俺に抱きついて、上目遣いで見上げて来 379 た。 恋もそうだが、こんな月殿の表情も破壊力絶大で可愛すぎる。 俺は彼女達に連れていかれながら腰掛ける。 ﹁なあなあライルぅ∼そんなん飲まんとうち等と酒飲もうなぁ∼﹂ ﹁霞・・・俺が酒を飲めないのは知ってるだろ?﹂ ﹁知っとるで♪﹂ ﹁ふふっ・・・霞はライル殿に夢中のようだな﹂ ﹁なっ⁉・・・ち・・・・・・趙雲殿⁉﹂ ﹁にゃに⁉ライルは誰にも渡しゃんじょ‼﹂ ﹁ライルは恋のもの﹂ 霞のじゃれあいを見て趙雲殿がからかって来て、何故か知らないが 嵐と恋が俺の背中に抱きついて来てとんでもない爆弾発言を言い放 つ。 しかも無意識だろうが俺の背中に2人の胸が当たっているので、正 直に言うと恥ずかしすぎる。 ﹁にゃははぁ∼おじちゃんは人気者なのだぁ♪﹂ ﹁張飛殿・・・一応は言っておくが・・・・・・﹂ ﹁にゃ?﹂ ﹁俺はまだ24歳だよ﹂ ﹃えぇえええええええ⁉﹄ 俺の年齢を聞いた全員が驚愕した。その反応に俺は呆気に取られな がら少し落ち込む。 ﹁ライルさんってまだ24だったんですか⁉﹂ ﹁一刀君・・・それはどういう意味なのかな?﹂ ﹁うっ⁉いえ・・・・・・ライルさんが年上なのは予想で来てたし・ 380 ・・なによりも落ち着いた雰囲気だから・・・﹂ ﹁つまり老けていると?﹂ 俺は笑顔で一刀に話しかける。 ﹁いえ・・・・・・いやいやいや‼むしろ落ち着いた雰囲気ですか らかっこいいですし、男としても憧れますよ‼﹂ ﹁ふっ・・・そういうことにしておくよ﹂ ささやかな仕返しを成功させ、俺は近くにあった焼売を頬張る。中 々美味だ。 ﹁ふふっ・・・それでライルさん﹂ ﹁なんでしょうか?﹂ ﹁改めてなんだけど、力を貸してくれて本当にありがとう﹂ いきなり劉備殿に礼を言われて少し困惑してしまう。 確かに彼女達にとって、俺達の徐州救援は感謝されることだが、俺 達の目的は袁紹を蹴散らして、上手くことが運べば奴を地獄に叩き 落とすことだ。 最も、戦後処理が完了したら一旦補給と休息と報告の為に呉に帰還 するが・・・。 ﹁それでね。お礼に私達の真名を預かってほしいの﹂ ﹁真名を・・・・・・よろしいのですか?﹂ ﹁うん♪﹂ そう言われると彼女達を見渡す。みな賛成の表情をしており、関羽 殿も反対ではなさそうだ。 381 ﹁・・・分かりました。喜んで預からせて頂きます﹂ ﹁うん♪私は桃香っていうよ♪﹂ ﹁ライル殿・・・私は貴殿を誤解していた。だから謝罪の意味も込 めて我が真名・・・愛砂を預けたい﹂ ﹁鈴々は鈴々なのだ‼おじちゃん‼﹂ ﹁我が真名は星。この真名をそなたに託す。ライル殿﹂ ﹁あ・・・あの‼わ・・・私は朱里でしゅ‼・・・はぅあ・・・噛 んじゃった﹂ ﹁あわわ・・・ひ・・・雛里でしゅ‼﹂ 劉備殿を始め、重鎮達からそれぞれの真名を預けられた俺。素直に 嬉しいものだ。 ﹁ふっ・・・ライル・ローガン・ブレイド。確かに皆さんの真名を 預からせて頂きました﹂ そういうとコーヒーが入ったカップを掲げて、それをいっきに飲み 干した。 ﹁それと桃香殿﹂ ﹁はい?﹂ ﹁一刀君から聞きました。おめでとうございます﹂ ﹁えへへ∼♪早く生まれないか楽しみになんだよ♪﹂ ﹁戦後処理が完了しましたら、我らは呉に帰還しますが、お子さん が産まれましたらすぐに伺わさせて頂きます﹂ ﹁うん♪﹂ そういうと桃香殿は満面の笑顔で答えて来た。俺もいつかは自分の 子供と共に食事を取りたいものだ。そんなことを考えながら、カッ プに新しいコーヒーを注ぎ、再び胃に流し込んだ・・・・・・・・・ 382 。 383 第54話:打ち上げ︵後書き︶ 徐州攻防戦が行なわれていたその頃、イリーナは保護を受けている 軍師の七乃に頼まれて美羽の面倒を任されていた。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re そこにシャオも加わり、イリーナは久々にあるものを作ることにし た。 次回 [蜂蜜好きな少女達] 天の知識を披露する。 384 第55話:蜂蜜好きな少女達︵前書き︶ 蜂蜜料理の定番。2人にご馳走。 385 第55話:蜂蜜好きな少女達 中佐率いるオーバーロードが徐州で袁紹軍と交戦して圧倒的な勝利 を掴んだ丁度その頃、建業城の厨房では・・・・・・。 ﹁イリーナ∼‼まだなのかのぅ?﹂ ﹁まだ∼?﹂ サービスドレスの上にフリルが付いた可愛らしい ﹁はいはい、もうすぐで出来上がりますから、もうちょっと待って C 下さいね?﹂ 私はクラス エプロンを身に付けて料理をしている。 そして食堂では私が作る料理を楽しみにしているシャオちゃんと美 羽ちゃんがいた。 なぜこんな状況になったかというと、全ては30分前に遡る。 ﹁はぁあ∼・・・・・・ようやく警邏が終わったぁ∼﹂ ﹁なんだ?疲れたのか?﹂ ﹁だって普段は基地の事務作業をしてるのよ。あんまり慣れてない のよ百合﹂ ﹁しかし警邏も重要な任務だ。怠るわけにはいかない。それは分か ってる筈だが・・・?﹂ 公積こと百合ちゃんとタッグを組んだ警邏で、 ﹁はいはい、相変わらず真面目ね。百合ちゃんは♪﹂ 今日は珍しく凌統 386 今は詰め所での勤務を引き継いで建業城内部にある中佐の執務室︵ 今はレオン大尉が代理でいる︶に向かっていた。 私の百合ちゃんに対する印象は真面目でいい子。スタイルも中々で 胸は・・・・・・言うと悲しくなる。 ︵なんで呉の女子は胸が大きい子が多いのよ⁉︶ 孫策様や孫権様、黄蓋様、周瑜様、穏さんは言うまでもなく、思春 さんと百合ちゃんも5人ほどではないけれど胸は大きめ。 ︵あの5人組と比べたら・・・・・・はぁ∼・・・︶ 心の中で思いっきり溜息を吐いてしまう。言いたくは無いけれど、 私のバストのサイズってAなのよね・・・・・・。 おかげでよく男に間違えられるし、今日に関しては小さい子供にお じちゃんって言われた。 ・・・思い出しただけで涙が出てくる。 ﹁イリーナ、どうかしたのか?﹂ ﹁いえ・・・・・・なんでも無いわ・・・﹂ 少し落ち込みながら廊下を歩いていると、角から見覚えのある女性 がいた。 青いセミロングの髪にスチュワーデスのような服を来た女の子・・・ 張勲こと七乃だ。 彼女と美羽ちゃんは袁家の呪縛から解放されて、表向きで死んだこ とになりながら、孫呉軍からの保護を受ける代わりに七乃は攻撃主 体の軍師として力を貸している。 387 一言に軍師と言ってもそのスタイルには特徴がある。七乃の軍師と しての能力は守備や諜報ではなく、攻城戦で真価を発揮させられる。 董卓軍にいた頃も詠ちゃんは守備を重視した策が得意で、ネネちゃ んも攻撃主体。 実力者となると周瑜様や穏さんみたいなオールラウンダーもいるけ ど・・・・・・。 ﹁七乃﹂ ﹁あら、イリーナさん。それに凌統さんも・・・警邏の帰りですか ?﹂ ﹁ああ、今からレオン将軍の処に報告しに行くところだ﹂ ﹁それよりどうしたの七乃、何か考え事をしてたみたいだけど・・・ ・・・﹂ ﹁はい、実は今からお嬢様のオヤツを用意するんですけど・・・・・ ・﹂ ﹁美羽ちゃんの?﹂ ﹁そうなのですが・・・実は冥琳さんから急な仕事を頼まれて、す ぐに北門に竹簡を届けなきゃいけないんです﹂ そういうと何処からか周瑜様から預かったとされる竹簡を取り出し た。 ﹁だけどお嬢様を待たせたりは出来ませんから困ってたんですよ﹂ ﹁ふ∼ん・・・だったら私が美羽ちゃんを見てようか?﹂ ﹁いいんですか?﹂ ﹁イリーナ。報告がまだ残ってるだろ?﹂ ﹁大丈夫よ。報告って言っても百合ちゃんがいれば十分だし、それ に美羽ちゃんって私達から見たら妹みたいな存在だから、大尉も分 かってくれるわ﹂ ﹁しかしだな・・・・・・﹂ 388 ﹁あっれ∼・・・いいんだそんな意地張っちゃって∼﹂ ﹁な・・・・・・なんだ?﹂ ﹁だって∼、私知ってるんだよ♪百合ちゃんってお化けがこ﹁そう だな。報告だけなら私だけで十分だろう﹂・・・早っ⁉﹂ お化けが大の苦手 だ。 彼女の弱点を言おうとした瞬間、阻止するがの如く素早い切り替わ りを見せた百合。 余談だが、彼女の弱点とは ﹁それじゃ、百合ちゃんも承認してくれたし、美羽ちゃんはどこ?﹂ ﹁はい、先に食堂にいると思います。厨房に蜂蜜を置いて貰ってま すから、それで蜂蜜水でも作ってあげてくださいね﹂ ﹁分かったわ﹂ 蜂蜜にピッタリなあれ を作ってあげることにな そんな流れがあった。最初は美羽ちゃんだけだったけれど、丁度材 料もあったから った直後にシャオちゃんもやって来たのだ。 ﹁それにしても二人って本当に仲良しよね﹂ ﹁うむ♪シャオは妾の親友なのじゃ♪﹂ ﹁そうだよ∼♪美羽と一緒にいると楽しいんだよ♪﹂ 美羽ちゃんが保護されてから、すぐにシャオちゃんと意気投合して、 今では本当に仲良しになっている。素晴らしいことだ。 そうこうしている内に作っている料理が焼き上がり、あとは皿に盛 り付けて上から蜂蜜をたっぷりと垂らして、2人に持っていった。 ﹁はい、出来たわよ﹂ 389 ﹁蜂蜜なのじゃ♪﹂ ﹁すっごく美味しそう‼でもイリーナ、これってなに?﹂ ﹁これはホットケーキっていうお菓子よ﹂ ﹁勃斗・・・なんなのじゃ?﹂ ﹁ホットケーキよ。私の故郷でも定番のオヤツなのよ﹂ ﹁じゃあ、天の国のお菓子なの?﹂ ﹁そういうことになるわ﹂ どういうわけか知らないけど、厨房にバターが少しだけあったので、 卵、牛乳、砂糖、薄力粉を使って、ホットケーキを焼いたのだ。本 当ならバニラエッセンスも入れたかったが、流石にそこまではなか ったようだ。 ﹁ほほ∼・・・・・・なんだかすっごく美味しそうな匂いなのじゃ ♪﹂ ﹁さっ、熱い内に召し上がれ♪﹂ ﹁うん‼﹂ ﹁分かったのじゃ♪ではでは・・・﹂ ﹁﹁いっただっきま∼す‼︵なのじゃ‼︶﹂﹂ 2人は箸でホットケーキを小さくして、口にいれる。そしてよく味 わうと驚いた表情をした。 ﹁う・・・うまいのじゃあ‼‼﹂ ﹁本当に美味しい‼﹂ ﹁喜んでくれた?﹂ ﹁﹁うん♪﹂﹂ ﹁ふふっ、ありがとう。まだまだ一杯あるから、たくさん食べてね ♪﹂ 390 私はこうなることを予測して大量に焼いておいたのだが、予想以上 に喜んでくれた。料理を作る者にとって食べた時に表してくれる笑 顔は掛け替えのない報酬だ。 その後も彼女達は焼いていたホットケーキを全て平らげてくれた。 喜んでくれてなによりだったが、薄力粉や砂糖が少なくなったこと がばれて、周瑜様にこっぴどく怒られたのは言うまでもなく、更に 美羽ちゃん経由で孫策様達にも知られてしまい、次の日のオヤツ時 に用意させられたのも言うまでもない・・・・・・・・・。 391 第55話:蜂蜜好きな少女達︵後書き︶ 戦後処理が行なわれている徐州。朱里と雛里は一刀の進めでライル 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re の兵法を教えて貰っている。 次回 [銀狼による臥龍と鳳雛の個人授業] 軍師。それは好奇心の塊。 392 第56話:結果発表︵前書き︶ 今回は以前ありましたアンケート結果の公表になります。本編とは 一切関係なく、投票内容も決して性格ではありません。 ご了承の上でご覧ください。 393 第56話:結果発表 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 目を開けるとそこは理解出来なかった。 ﹁第1回 投票、結果発表‼﹂ ﹃わあぁああああ‼‼﹄ 人気キャラクター 明かりが付いたと同時に前から溢れんばかりの歓声が上がり、俺が 立っている場所の隣で本当に久々の登場であるジーンがマイクを手 にしていた。 ﹁さあ始まりました、人気キャラクター投票結果発表。司会は私、 天界一可愛いと巷で評判のジーンちゃんと我らがウルフパック大隊 大隊長で、顔はいいが呉の中でもずば抜けた朴念仁のライル中佐が お送り致します‼﹂ ﹁ちょっと待った、ジーン﹂ ﹁なに?﹂ ﹁色々とツッコミを入れたい箇所が満載だが、要点だけをいえば・・ ・・・・ここ何処だ?﹂ 俺がいる場所は何処かの某豪華ホテル内にある大広間みたいな場所 で、ステージの前には蜀、呉、魏、董、南蛮、漢、黄、袁、他と書 かれたテーブルに、そこに各陣営の人物達が座っていた。 ﹁何処って・・・私が創った空間よ﹂ ﹁創ったってねぇ・・・・・・皆の記憶には影響しないのか?﹂ ﹁大丈夫よ♪だってこの話は本編に一切関係の無い番外編なんだも 394 ん♪﹂ ﹁すごいぶっちゃけやがった・・・﹂ ﹁さぁ、ライルへの説明が終わった処で、早速10位から見てみま しょうか♪﹂ 説明をされた記憶は無いが、俺達の後ろにある巨大モニターの文字 がルーレットのように動き出す。 ﹁記念すべき一人目は・・・・・・この人‼﹂ ジーンが指をさしたら文字が止まり、全員が息を呑んだ。 ﹁第10位は・・・蜀のお母さん的存在‼黄忠こと紫苑さんです‼﹂ そういうと照明が蜀の席にいる紫苑に当てられた。 ﹁あら。私ですか?﹂ ﹁ランクインの理由は主にこんな感じだな﹂ ・理想的なお母さん ・是非とも甘えたい ・普段から綺麗だが、酒を飲んでほろ酔いの状態も色っぽい ・あの爆乳に溺れてみたい ﹁あらあら・・・うふっ。ファンの皆さん。応援ありがとうござい ます﹂ ﹁流石は黄忠殿だ。淑やかさで人気を博したか﹂ ﹁さて‼次は第9位‼誰が出てくるか・・・ルーレットスタート‼﹂ 再びルーレットが回り、暫くしたら名前が出て来た。 395 ﹁次はこの方‼本作オリジナルキャラクターで呉一のごっついシス コン‼諸葛瑾こと千里‼﹂ ﹁私ですか?﹂ 第9位の千里にライトが当てられ、座りながらも礼をする。 ﹁はい、投稿理由はこんな感じだよ♪﹂ ・普段と朱里に対するギャップが面白い ・シスコンで笑いを連れて来てくれる ・一刀との絡みをもっと見たい ﹁ていうか千里・・・投稿理由の大半がこんな感じだぞ﹂ ﹁いやいや‼俺は只の妹思いであってシスコンではありませんよ⁉ ですよねアレックス様⁉﹂ ﹁相棒、ジーン。続けてくれ﹂ ﹁アレックス様⁉﹂ ﹁よし、馬鹿は無視して続けるぞジーン﹂ ﹁将軍⁉﹂ ﹁はい、じゃあルーレットスタート‼﹂ ﹁なお、時間が無いから2人同時に行くぞ﹂ 俺がそういうと第8位と第7位が同時に出て来た。出て来た名前は・ ・・・・・。 ﹁第8位はへうの伝道師である董卓こと月ちゃん‼﹂ ﹁へう⁉わ・・・私ですか⁉﹂ ﹁第7位は・・・我ら呉の猫大好き元気活発少女の明命だな﹂ ﹁はぅあ⁉お猫様‼私やりました‼﹂ 396 月は両手を頬に置きながら照れて、明命は何処からか取り出した猫 のぬいぐるみにモフモフし始める。 ﹁月ちゃんはこんな感じよ﹂ ・照れた時の独特なリアクションがドツボ ・何気に強そう ・恋姫作品中、最強の癒し系美少女 ﹁明命はこんな感じだぞ﹂ and 尻尾付きでの猫化状態、持ち帰りし ・猫をモフモフしている時の表情が可愛すぎる ・原作で見せた猫耳 たい ・明命ちゃんも纏めてモフモフしたい ﹁予想通りの理由だな。月殿は確かに究極の癒し系だし、明命の猫 好きは定評がある。納得だ﹂ ﹁へぅ∼////﹂ ﹁はぅあ∼・・・お猫様ぁ∼﹂ ﹁・・・・・・聞いてないわね﹂ ﹁まあ、仕方がない。時間が無いから進めるぞ。ルーレットスター トだ﹂ 代わりに俺がルーレットスタートを指示して、再び一定の回転をし たら停止した。 ﹁第6位は2名‼しかも来たぁあああ‼蜀の不思議少女で汚れを知 らない純粋少女の呂布こと恋ちゃん‼﹂ 397 ﹁︵モキュモキュ︶・・・・・・?﹂ ﹁もう1人は魏からだ‼普段は猛将だが酔っ払うと借りてきた猫の ように甘えん坊になる夏侯惇こと春蘭さん‼﹂ ﹁なに⁉私がか⁉﹂ ﹁そして第5位も2人。こちらは両方とも呉からだな・・・1人は 亞莎﹂ ﹁えぇええええ⁉そそそそそんな私なんかがですか⁉﹂ ﹁もう1人は雪蓮殿の妹君である孫権殿です﹂ ﹁なっ⁉わ・・・私なのか⁉﹂ 立て続けに恋、夏侯惇、亞莎、孫権殿にスポットに当てられる。 ﹁ちょっと時間が掛かりすぎるから、理由内容は一つずつにしてお くぞ﹂ ﹁分かったわ。応募理由の中から注目した理由よ♪﹂ 恋:純粋無垢な処と食べている時の顔が可愛すぎる 夏侯惇:普段は猛将だが、素直ではないリアクションがGood 亞莎:放っておけない雰囲気で保護欲に駆られる。守ってあげたい 孫権殿:俺の嫁 投稿理由を聞いて下から3にんはそれぞれの照れ隠しをして、恋だ けはもくもくと食事を続けている。 ﹁さて、次はいよいよ第4位と第3位♪張り切って行ってみよう‼﹂ そうすると︵以下省略︶ ﹁第4位も2名‼1人目は董から‼自由奔放だが面倒見がよくて実 は純粋‼董一の飲兵衛の張遼こと霞‼﹂ 398 ﹁あっちゃ∼・・・4位なんかいな﹂ ﹁2人目は蜀からよ‼蜀の偃月刀と呼ばれ、蜀一の嫉妬神‼関羽こ と愛紗‼﹂ ﹁なっ⁉私が・・・私が4位なのか⁉﹂ ﹁次は第3位。これは1人だけだな・・・・・・こちらも蜀からだ。 普段は不敵な笑みを浮かべて考えが読めないが、愛する者の為なら 命も捨てる勇敢な意志も兼ね揃えた趙雲こと星だ﹂ ﹁ふむ・・・まずまずだな﹂ 霞:普段から笑顔で人懐っこい性格で、時折みせる乙女の顔に惚れた 愛紗:一刀が他の女の子と仲良くしてる時にみせるヤキモチが反則 的に可愛すぎる 星:頑張れ華蝶仮面。悪を蹴散らしてくれ ﹁そうかそうか∼♪うちに惚れてもうたんかいな∼♪﹂ ﹁私がご主人様や姉上を差し置いてだなどと・・・・・・﹂ ﹁はて?華蝶仮面とは何のことかな?﹂ ﹁・・・・・・つっこんでいいか?﹂ ﹁さてさて、次は第2位よ‼第2位は・・・・・・この人‼﹂ 再びルーレットが回りだし、そして止まった。 ﹁来た来た来たぁあああ‼本作の中でズバ抜けたカリスマ性、その 孟徳こと華琳さんだぁ‼﹂ 中に秘める野心‼百合の象徴でもあり我らがドSクイーン‼乱世の 奸雄曹操 ﹁あら、私が2位。上々の結果ね﹂ ﹁投稿理由で最も印象的だったのが・・・これだな﹂ 曹操:百合最高‼私も閨で華琳様に虐められたい‼ 399 ﹁ちなみにこれ投稿したのって女の子らしいわ♪﹂ ﹁そうなの?・・・・・・じゃあ、選んでくれたお礼に相手をして あげるわよ♪﹂ 何処かで女性の歓声が挙がったと同時に倒れた気がしたが、気にせ ず進めた。 ﹁さてライル。残るのも1位のみになったけれど、今の心境は?﹂ ﹁なぜ俺に聞くんだ?﹂ ﹁だってライルはこの小説の主人公なんだし、まだランクインして ないのよ﹂ ﹁ランクなど興味は無い。それより1位は2名いるんだろ?早く終 わらせて任務に戻りたいんだが・・・・・・﹂ ﹁だ∼め♪ライルにはまだ仕事があるんだからね♪﹂ ﹁仕事?﹂ ﹁それは1位が出てからのお楽しみ♪・・・・・・さあお待たせし ました‼初代人気者の栄冠に輝くのは・・・・・・この2人だ‼﹂ そういうとルーレットが回りだして、今までと比べて長い間、回っ て、ようやく止まった。 ﹁遂に出ました‼この作品のメインヒロインでもあり、戦場では鬼 神の如く暴れ回り、普段は人懐っこい猫みたいに自由気まま‼時折 見せる無垢な表情でファンの心を鷲掴み‼呉の小覇王‼我らが孫策 伯符こと雪蓮様‼﹂ ライトが彼女に集中した。 ﹁やったぁあ‼めいり∼ん‼私が1位になっちゃった♪﹂ ﹁よかったな雪蓮﹂ 400 ﹁雪蓮殿。おめでとうございます﹂ ﹁ラ∼イル♪記念に私と・・・・・・﹂ ﹁はいは∼い。投稿理由でこれが印象的だったわ﹂ 雪蓮:戦場と普段のギャップがいい‼みんなの可愛いお姉さん‼ ﹁そして記念すべきもう1人は・・・この人‼﹂ 最後の1人が遂に公表された。 ﹁出ました‼幾多もの戦場を仲間達と共に潜り抜け、戦場では高い 能力と冷静さで幾万もの活躍を見せ、有事には人間臭さでみんなか ら絶大な信頼を寄せる誇り高き海兵隊員‼我らが主人公のライル・ L・ブレイドだぁあああ‼﹂ ﹃わぁあああああ‼﹄ ﹁・・・・・・・・・俺?﹂ ﹁うん♪﹂ ﹁他の連中じゃなくて?﹂ ﹁そうよ。因みに投稿理由はこんなのがあったわよ﹂ ・普段は冷静だが、仲間が傷付けられた時の感情がかっこいい ・軍人だけれど、人間臭さが見られるところが好印象 ・これぞ主人公‼ ﹁それじゃ‼1位の2人には特典を与えま∼す‼﹂ ﹁なになに?お酒?﹂ ﹁・・・なんだか嫌な予感しかしないんだがな・・・﹂ ﹁なんと‼優勝者同士で熱い口づけをしてもらいます‼﹂ それを聞いた俺はチーターも真っ青になるほどの速度で逃げ出した。 401 海兵隊の誇り,Re 人 ﹁あーっ‼待ちなさいライル‼規定なんだから私と口づけしなさ∼ い‼﹂ 真・恋姫無双 雪蓮殿も全速力で俺の後を追撃を仕掛けてきた。 ﹁はい、これにて第1回 気キャラクターランキングはお終い‼またこういう場面があったら 読者のみんな、応援よろしくね∼♪﹂ そういいながらジーンは手を振りつつお開きにした。 402 第56話:結果発表︵後書き︶ 次回は本編に復帰致します。 投票の大半がメールによる直接的でありましたが、投票された皆様、 誠にありがとうございました。 また次の投票はテーマを決めた物に致しますので、それまで応援よ ろしくお願いします。 403 第57話:銀狼による臥龍と鳳雛の個人授業︵前書き︶ 軍師。それは好奇心の塊。 *申し訳ありません。無理矢理感があります。 404 第57話:銀狼による臥龍と鳳雛の個人授業 袁紹軍を撃退して2日、劉備軍による戦後処理は俺達の手伝いもあ って順調に進んでいた。 損害といっても支城や集落跡に目立った損害はなく、財産分与も開 戦前に退避させていたので略奪されずに済んだ。 戦死者も乱戦の際に発生した少数を除いて出ておらず、むしろ降伏 した袁紹軍兵士の処理に手を焼いている。 袁紹軍捕虜の大半は奴が敷いた過度な徴兵制により無理矢理駆り出 された農民で、年齢が一桁の子供もいればとても戦えるとは思えな い老人もいた。 孫呉でも徴兵制だが、社会貢献や余程の事情、徴兵対象者が15歳 以上で40歳以下以外なら兵役に就くことはない。希望があれば特 例として就けるが・・・・・・。 俺は部隊の野営陣地で朱里ちゃんと雛里ちゃんから頼まれてある事 を実施していた。 ﹁はわわ・・・・・・それで、他には⁉﹂ ﹁あわわ・・・・・・お・・・教えて下しゃいでしゅ⁉﹂ 戦術の講義 だ。本来ならたとえ同盟関係に ﹁まあ、少し落ち着け。教えるからさ﹂ 彼女達の頼み事とは あっても特例でも無い限りは戦術は教えてはならない。 もし同盟が突如として白紙に戻され、教えた戦術の改良版を使われ たらまさに本末転倒だ。 405 それ等を考えて最初は断ったのだが、2人は両腕を掴んで頼み込み、 それでも断ると少し半泣き状態で見上げてきた。 そんな反則的な可愛らしさをされると、こちらが折れざる得なくな る。 仕方が無いので対抗策が充分に揃っている戦術のみを伝授すること にした。 ﹁はわわ・・・ライルさんって、やっぱり凄いでしゅ﹂ ﹁︵コクリコクリ︶﹂ ﹁俺が?・・・なんで?﹂ ﹁だってライルさんは将軍としても優秀なのに軍師としても凄いで す﹂ ﹁あわわ・・・で・・・ですから兵士としても将軍としても軍師と しても出来るし、孫呉の皆さんからも頼られてます・・・﹂ ﹁過大評価だよ。俺は孫呉に忠誠を誓った海兵隊員だ。兵士てして の責務を果たしてるだけだ﹂ ﹁あの・・・ライルさん達がよく言う海兵隊っていうのは天の軍隊 の名称ですか?﹂ ﹁海兵隊か?﹂ 尋ね返すと2人は可愛らしく頷く。ハタから見たら本当に可愛らし い光景だ。 俺はシスコンでもなければロリコンでもないが、千里の気持ちも分 かるような気がする。 アメリカ軍 といってな、前世・・・・ ﹁海兵隊っていうのは、俺達が所属していた軍隊の一組織だよ﹂ ﹁一組織・・・ですか?﹂ ﹁ああ、俺達がいた軍隊は ・・天界では世界最強の軍隊とも呼ばれてたよ﹂ 406 ﹁あわっ⁉せ・・・世界最強でしゅか⁉﹂ ﹁そうだ。恐らくはこの国の人間が束になっても勝てないだろうな﹂ ﹁はわわ⁉﹂ 当然だろう。この世界の兵器で最大射程の兵器といえば投石機位だ。 確かな戦術と充実した装備があれば一個遠征打撃群でも勝利するこ とが出来る。 ﹁因みに、海兵隊はアメリカ軍全体の中で2番目に小さい組織だ﹂ ﹁﹁しょうなんでしゅか⁉・・・噛んじゃった﹂﹂ 本当になんだ?・・・・・・この可愛らしい小動物は・・・・・・。 ﹁まっ・・・・・・まあ・・・アメリカ軍には海兵隊を含めて合計 5つの組織があってな。海兵隊の総兵力は予備役も含めて24万と 言われてたよ﹂ ﹁はわわ⁉小さくても24万⁉﹂ ﹁驚いたか?﹂ ﹁しゅごいでしゅ‼﹂ ﹁あっ・・・あの・・・・・・なんだかすごい予感しかしないんで すけれど・・・全体はどれ位でしょうか?﹂ ﹁全体かぁ・・・・・・ざっと200万かな?﹂ その数を聞いて二人は開いた口が塞がらなかった。恐らくは俺達み たいな兵士が200万もいる姿を想像したのだろう。 俺達なら別に複数の国家が合併すれば実現可能なへいりょくだが、 この世界にとったら漢王朝始まって以来の脅威になる兵力だ。 ﹁そうだ、2人に渡す物があったの忘れてたよ﹂ 407 を取り出して二人に渡す。 あることを思い出し、俺はデジタル迷彩服の腕ポケットから 物 2人はそれを受け取って広げてみると、驚愕してしまった。 ﹁はわわ⁉こ・・・・・・これは⁉﹂ ﹁しゅごいでしゅ⁉この国の地図でしゅ‼﹂ ある 俺が渡したのはこの漢王朝の地図だ。前々から思っていたことだが、 この世界の地図はお粗末極まりない。だから俺達はジーンから地図 の原稿を全体と各州の地図を送ってもらい、食物繊維で出来た紙で コピーしていった。 ﹁あ・・・あの‼こっここれ・・・貰ってもいいんですか⁉﹂ ﹁構わないよ﹂ 2人は本当に嬉しそうに地図を大事そうに丸める。 ﹁さて・・・すまないが俺も仕事に戻らないと・・・﹂ ﹁はわわ・・・﹂ ﹁あわわ・・・﹂ 俺が席を外そうとした瞬間に2人は物足りない雰囲気を醸し出しな がらこちらを見上げてくる。 頼むからそんな目で見ないで欲しい。俺は溜息を吐きながら2人の 頭を撫でてやる。 ﹁すまないな、この続きはまた今度な?﹂ ﹁あぅあ∼・・・ナデナデされましたぁ∼﹂ ﹁︵コクリコクリ︶﹂ 408 気持ち良さそうに顔を綻ばす2人。それを堪能したいという気持ち に駆られそうになったが、俺は一息ついてテントから出ていった。 409 第57話:銀狼による臥龍と鳳雛の個人授業︵後書き︶ キャンプ・ヴェアウルフ内に設けられている室内射撃場。 レオンと基地守備隊の一部が訓練で使用していた。狭い室内に何処 海兵隊の誇り,Re から出るか分からない標的。それらをターゲットにひたすら射撃訓 真・恋姫無双 練を行なう。 次回 [ファイアトレーニング] 銃弾が降り注ぐ。 410 第58話:ファイアトレーニング︵前書き︶ 海兵隊での日常。それは射撃にあり。 411 第58話:ファイアトレーニング キャンプ・ヴェアウルフ内部にある室内射撃場。留守を任されてい る守備隊と機甲中隊の海兵隊員の一部が射撃訓練を行なっていた。 ﹁よし‼ヘッドショット‼﹂ ﹁甘い甘い‼素早くヘッドショット連発してみな‼﹂ 海兵隊員はそれぞれ1番から10番で射撃訓練を行なっていた。い くらキャンプ・ヴェアウルフの守備や装甲車の運用が主任務であっ ても状況に合わせて歩兵隊への転属もある。 さらに海兵隊は全員が射撃の名手でなければならない。それを表す かのように、先程から命中している箇所が頭部や心臓などという急 所だけだ。 各隊員はそれぞれHK416、HK417を構えてターゲットを倒 して行く。 そして全員が一通り射撃を終わらせると、反対側にある長机で射撃 直後のメンテナンスを行っている。 ﹁そういえば曹長、中佐達はいつ帰ってくるんでしたっけ?﹂ ﹁ああ、徐州に攻め込んだ袁紹を撃退したって通信が入ったからな。 戦後処理が完了したら帰還するらしい﹂ ﹁予定よりも随分と早いですね﹂ ﹁それほど袁紹軍が雑魚だってことだ﹂ ここにいる全員が董卓軍にいた頃に袁紹軍と交戦したことがあり、 412 あんな簡単に仕留められる敵は初めて だ。 近接戦で1人あたり平均100人以上は確実に仕留めている。 中佐達曰く 会話をしながらも榴弾砲部隊所属のアーヴィン・パーキンス曹長が 最初にHK417を組み立て終わった。 ﹁よし、終わった﹂ ﹁相変わらず早いですね、曹長は・・・﹂ ﹁さすがガンスミス﹂ ﹁やかましい・・・・・・そういえばお前等、今晩は出掛けるのか ?﹂ ﹁はい、久々に外出許可が明日一日出ましたから遊びに行こうかと・ ・・﹂ ﹁なんですか曹長、奢って頂けるのですか?﹂ ﹁さっすが曹長‼太っ腹‼﹂ ﹁まだなにもいってないが・・・ちょっとした勝負しないか?﹂ 勝負という言葉に全員が耳を傾ける。 ﹁確か中佐達が前々から新規導入しようとしてるライフルが届いて たよな?﹂ ﹁M27ですか?﹂ ﹁そうだ。性能テストを兼ねてな・・・すまないが持ってきてくれ﹂ ﹁了解﹂ IARを手に戻っ 指示を下すと兵長が指定した火器を隣接している武器保管室に向か った。一分もしない内に指定した火器のM27 てきた。 この世界に来てからも機関銃手の被攻撃回数が他と比べて多い。 そこで部隊の主力火器であるHK416をベースとしたM27をM 413 k46と並行して運用する計画が持ち上がった。 ﹁M27持って来てどうするんですか?﹂ ﹁簡単だ。通常分解した状態から素早く組み立てて、そこから的を 10個をヘッドショットで仕留めて行く﹂ ﹁それで?﹂ ﹁それで1番早かった奴は明日の飲み代はタダで、1番遅かった奴 がそいつの酒代を払うんだ﹂ ﹁そいつはいいなぁ‼﹂ ﹁よしっ‼乗った‼﹂ ﹁きまりだな・・・ちなみにダットサイトは無しだ。サイトシステ ムもな﹂ そこそこ難易度が高い設定だ。なにしろ照準に必要なものがないの で、射撃手の実力が大きく出る。 M27を分解し終わると少しだけ離れた。 ﹁よし、まずは誰がやる?﹂ ﹁だったら自分が・・・﹂ ﹁よし﹂ そういうと兵長が構えて、合図と同時に取り掛かった。 それから15分後、結果が決まった。 ﹁・・・・・・・・・・・・ハァ﹂ ﹁ええっと・・・・・・なんかすみません曹長﹂ 414 ﹁いや・・・最初に言い出したのは俺だからな・・・﹂ 結果は兵長が1番早いタイムを叩き出し、アーヴィンが最も遅かっ た。 ガンスミスであるアーヴィンは組み立ての段階ではよかったのだが、 射撃時に最後の一発を放つ直前、派手にクシャミをしてしまい、放 った弾丸が的から外れたのだ。 その結果、アーヴィンだけが命中数が9発で残りの9人が全弾命中。 自動的にアーヴィンが最下位になってしまったのだ。 ﹁仕方ない・・・・・・それよりこいつの感想は?﹂ ﹁撃ちやすいですね。やっぱり﹂ ﹁操作性も416や417と同じですから、誰でもすぐにガナーに なれますね﹂ アーヴィンはポケットからメモ帳を取り出し、全員の意見を書き足 して行く。 ﹁よし、あとは環境下でのテストだけだな﹂ ﹁いつですか?﹂ ﹁ひとまずは中佐達が帰って来てからだ。実行許可書に中佐のサイ ンがいるからな﹂ ﹁アーヴィン曹長﹂ 声を掛けられたので振り向くと、守備隊所属の二等軍曹がいた。 ﹁どうした?﹂ ﹁はっ、レオン大尉がお呼びです。至急建業の警邏隊本部に出頭せ よ﹂ 415 ﹁了解だ。すぐに向かう﹂ 敬礼をすると二等軍曹も同じ様に敬礼を返し、そのまま射撃場をあ とにする。 ﹁というわけだ。悪いが行ってくる。建業城の城門前で待ち合わせ だ﹂ ﹁了解です﹂ 軽く敬礼をすると、アーヴィンは射撃場を後にしてヘリポートで待 機していたナイトホークに乗り込むと建業へと向かった。 余談ではあるが、二日後に財布の中身を見ながら落ち込むアーヴィ ンの姿が目撃されたらしい・・・・・・・・・。 416 第58話:ファイアトレーニング︵後書き︶ 久々の休みで建業の繁華街を散策するイリーナと同じく休みだった 呂蒙こと亞莎。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 小腹が空いたことで近くの茶菓子屋へと足を伸ばす。 次回 [ゴマ団子] 亞莎の好物の原点。ここから始まる。 417 第59話:ゴマ団子︵前書き︶ 亞莎の好物。きっかけはここから。 418 第59話:ゴマ団子 建業にある繁華街。 中佐が提案した割れ窓理論のお陰で治安が飛躍的によくなり、最近 では犯罪と呼ばれる事件は聞かなくなった。 建業に齎されたのはそれだけではない。治安がよくなったことで他 国から商人が来るようになり、珍しい物や貴重な品が安く手に入る ようになって、経済面で呉の繁栄に大きく関わっている。 そして繁華街を歩いている女性はというと・・・・・・。 ﹁ふぅ∼♪満喫した♪﹂ 両手に紙袋を抱えながら買い物を満喫したイリーナの姿があった。 いくら精鋭揃いの海兵隊といっても、適度な息抜きもしなければ戦 闘に支障が出てしまう。 だから部隊では定期的に1週間の休暇が与えられる。今週はイリー ナの指揮する部隊が休暇を満喫しているということだ。 ﹁それにしてもごめんね亞莎ちゃん。買い物に付き合わせちゃって・ ・・﹂ 子明こと亞莎ちゃん ﹁いえ・・・その・・・・・・私も今日は休みを頂いてましたから・ ・・﹂ イリーナの隣には同じ様に紙袋を抱える呂蒙 だ。 何でも彼女も周瑜様から今日一日休むように言われたらしく、それ で新しい兵法書を探しに本屋を覗いていたら私に会ったという。 419 既に彼女の手には私が買ってあげた兵法書があり、亞莎ちゃんは申 し訳無さそうな表情でこちらをみている。 ﹁あっ・・・あの・・・・・・イリーナ様・・・﹂ ﹁もう、亞莎ちゃん。様付けはやめてっていってるでしょ?別に上 官部下っていう関係じゃないんだから﹂ ﹁いえっ⁉・・・その・・・やっぱりイリーナ様は私なんかよりも ずっと位が高いですから・・・﹂ 確かに私の孫呉軍における役職は将軍級で、亞莎ちゃんは軍師とい ってもまだ見習い。しかも孫策様直属だから普通の将軍よりも権限 がある。 ﹁う∼ん・・・確かにそうなんだけど・・・・・・私達としては堅 苦しいのは苦手なのよね﹂ ﹁うぅううう・・・だ・・・・・・だったらせめてイリーナさんと・ ・・﹂ ﹁本当はタメ口でもいいんだけどな∼﹂ 恐らく謙虚な彼女にはそれが精一杯だろう。亞莎ちゃんのいいとこ ろはそこなんだが、同時に短所でもある。無駄に謙虚すぎて自己主 張が乏しいのだ。 軍師になるなら相手に自分の考えを悟らせないというのは必要なこ とだが、せめてプライベートのときは忘れて欲しい物だ。 ﹁イリーナさん・・・本当にありがとうございます・・・・・・﹂ ﹁気にしなくてもいいわよ。亞莎ちゃんにもお世話になってるんだ から、ほんのお礼よ♪﹂ ﹁い・・・いえ⁉お世話になってるだなんて・・・﹂ 420 亞莎ちゃんが何かを言おうとした瞬間、彼女のお腹が可愛らしく鳴 いた。本人は顔を赤く染めながら裾で口もとを隠す。彼女なりの照 れ隠しだ。 その光景は本当に可愛らしく、思わず保護欲に駆られそうになった が何とか抑え込み、話しかけようとした瞬間に私のお腹も鳴いた。 ﹁ははは∼・・・・・・小腹空いちゃったわね﹂ ﹁はぅ・・・﹂ ﹁仕方ないわ、向こうのお店でお茶にしましょ?﹂ 小腹を満たす為に近くにあった茶菓子屋に入って行く。この店は建 業の老舗で老夫婦が営んでいる結構有名な店だ。イリーナもたまに 買いに来ているほどにうまい。 ﹁こんにちはお婆ちゃん♪﹂ ﹁あら、いらっしゃいイリーナちゃん。おやまぁ・・・今日はお友 達と一緒かい?﹂ ﹁うん♪それで今日のオススメは?﹂ ﹁丁度よかった。今さっきゴマ団子が揚がったところだよ﹂ ﹁本当⁉﹂ ﹁今日はゴマ団子にするかい?﹂ ﹁うん♪﹂ ﹁あいよ、ちょっと待っとくれ﹂ そういうとお婆ちゃんはゴマ団子を詰めに厨房へ向かう。 ﹁むふふ∼・・・楽しみだな∼♪﹂ ﹁あ・・・あの・・・・・・﹂ ﹁なに?﹂ 421 ﹁ゴマ団子って・・・何ですか?﹂ いま何か聞き間違いのようなことが聞こえた気がした。 ゴマ団子って何ですか? 確かにそういった気がした。少しだけ時間が経過して、ようやく事 を理解した私は目を大きくして驚いてしまった。 ﹁えぇえええええ‼??﹂ ﹁ひゃう⁉﹂ ﹁亞莎ちゃん⁉ゴマ団子知らないの⁉﹂ ﹁はっ・・・・・・はい・・・ずっとお城にいましたから・・・﹂ その言葉で糸が繋がった。確かにこの時代の甘味はかなりの貴重品 であり、庶民はもちろん城の人間でも上層部でもなければ滅多に口 にする事は出来ない。 亞莎ちゃんも寿春城攻略の後、孫権様に見いだされて下士官から軍 師見習いに昇進した。 そう考えたら知らないのも頷ける。 すると箱詰めを終わらせたお婆ちゃんがもどって来て、私達に爪楊 枝が刺さったゴマ団子を差し出して来た。 ﹁はいイリーナちゃん、オマケだよ。折角だから熱い内に食べてい きなさいな﹂ ﹁いいの⁉﹂ ﹁いいのいいの。熱い内が美味しいからね。お友達も食べて行きな さいな﹂ ﹁わ∼い‼お婆ちゃん大好き‼﹂ 子供のようにはしゃぐ私。出来たてのゴマ団子を食べれるなどは、 422 ある意味で贅沢だ。私が一つ掴むと亞莎ちゃんも同じように摘まん で暫く眺める。 ﹁ほふほふ・・・う∼ん‼ホクホクで美味しい‼亞莎ちゃんも食べ てみなさいよ‼すっごく美味しいから♪﹂ ﹁えっ・・・は・・・・・・はい。頂きます﹂ 私に薦められて亞莎ちゃんも口にする。一口食べたら彼女の表情は 驚きに包まれた。 ﹁美味しいです‼﹂ ﹁でしょでしょ?ゴマの風味と程よい甘さが混ざりあって口の中の モチモチした感触が癖になるのよね∼♪﹂ ﹁気に入ってくれて何よりだよ。お嬢ちゃんも美味しかったかい?﹂ ﹁はい‼こんな美味しいもの初めてです‼﹂ ﹁そうかいそうかい・・・それじゃあイリーナちゃん。はいこれ﹂ ﹁ありがとう。また来るからね♪﹂ お婆ちゃんに代金を支払うとイリーナはゴマ団子を受け取って店を 後にした。なお、ゴマ団子の虜になった亞莎ちゃんは週一のペース で買いに行くほどになったらしい。 余談だが、なぜイリーナが本屋にいたかというと・・・・・・。 ﹁ふふふ・・・これで絶対に大きくして見せる‼﹂ 本屋にいた理由は女性に人気がある週刊誌[阿蘇阿蘇]を買う為で あり、今週の特集はというと・・・・・・。 423 必見‼気になる彼を釘付けにする巨乳のなり方‼ だったらしい。 424 第59話:ゴマ団子︵後書き︶ 徐州での戦後処理が完了して、撤収準備を行なうライル達。最後の 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 便に乗り込む前、ライルは一刀にあるものを渡す。 次回 [白い証] 御遣いと狼の絆。 425 第60話:白い証︵前書き︶ ライルと一刀。2人の友情が芽生える。 426 第60話:白い証 徐州における俺達の任務は完了した。残った戦後処理は劉備軍に任 せ、海兵隊は呉に帰還していく。 全ての機材を撤去していき、次にエストック隊、ソードブレイカー 隊の順で帰還していき、最後にバハムート隊が残った。 本陣である下丕城の前には撤収準備を進める俺達と、見送りをしに きた劉備軍が集まっていた。しかし・・・・・・、! ﹁ご主人様はどちらに行かれたのだ⁉﹂ ﹁ご主人様ぁ∼‼﹂ 一刀の姿が無かったのだ。桃香と愛紗達が辺りを見渡して呼び掛け るが返事がない。しかし俺はなぜいないのかは知っている。その様 子を少しだけ笑いながら伺っていると空中強襲部隊の中尉が話しか けて来た。 あれ は?﹂ ﹁中佐、全隊員の搭乗が完了しました。いつでも離陸可能です﹂ ﹁分かった。それより ﹁曹長が手伝ってますから、もう終わるでしょう﹂ ﹁彼女達の驚く姿が目に浮かぶよ﹂ ﹁俺は逆に妙な反応になりそうな気がしますがね・・・・・・しか も桃色の・・・﹂ ﹁それは一理あるな、だが若い内に青春を堪能させてやるのもあり だぞ。カーク中尉﹂ ﹁あなたは何処ぞの親父ですか?﹂ 俺の言葉に黒人海兵隊員のカーク・ランバート中尉が呆れながら失 427 笑してしまう。彼との付き合いもそこそこ長く、ウルフパック創設 時から行動を共にしている。 そういう会話をしていると愛紗が歩み寄って来た。 ﹁ライル殿、ご主人様を見なかったか?﹂ ﹁まあまあ、そう怖い顔をしなさんなって。その内に分かるからさ﹂ ﹁何がだ?・・・・・・えっと・・・﹂ ﹁カーク・ランバートだ。カークでもランバートでも好きな方で呼 んでいいよ﹂ ﹁ならばカーク殿。いずれ分かるとはどういう意味だ?﹂ ﹁それはだな・・・ねえ中佐﹂ ﹁そうだな、中尉﹂ 俺達が話を濁らせると愛紗は分からない顔をする。そこへ桃香達も 歩み寄って来た。 ﹁ねえねえ愛紗ちゃん。ライルさん達と何を話してるの?﹂ ﹁にゃははぁ∼。愛紗とおじちゃん達が仲良しなのだ♪﹂ ﹁ほう、愛紗も中々隅に置けないな﹂ ﹁こ⁉・・・こら⁉鈴々⁉星﹂ 鈴々と星にからかわれて愛紗は顔を少しだけ赤くしながら折檻する が、2人は追いかけて来る愛紗から逃げる様に移動する。 俺達はそれを失笑しながら眺めているとスーパーシースタリオンの 影にいた曹長がでて来た。 ﹁おっ?出来たか?﹂ ﹁あれ、どうかしたのライルさん?﹂ さぷらいず ってなんですか?﹂ ﹁ああ、ちょっとしたサプライズがな・・・﹂ ﹁はわっ、ライルさん。 428 ﹁驚くって意味だよ﹂ ﹁驚く?なあ、ライルの兄貴。何が驚くってんだ?﹂ ﹁見てのお楽しみだ。・・・・・・出て来ていいぞ一刀‼﹂ 俺がそういうと全員がスーパーシースタリオンの影から出て来た一 刀に視線を固定させた。 ﹁に・・・・・・似合ってるかな?﹂ ﹁わあ∼‼﹂ ﹁なっ⁉﹂ ﹁お兄ちゃんカッコいいのだ‼﹂ ﹁これは・・・凛々しい姿ではないか﹂ ﹁はわわ⁉﹂ ﹁あわわ⁉﹂ ﹁ほ・・・北郷・・・・・・なのか?﹂ ﹁めっちゃカッコええやん一刀‼﹂ ﹁なっ・・・・・・なななな⁉﹂ ﹁ご主人様・・・・・・真っ白﹂ ﹁ふ・・・ふん‼恋殿よりかっこいいなどと絶対に思ってないです ぞ⁉﹂ ﹁へぅ∼////﹂ ﹁はぅ⁉////﹂ ﹁すっげえ‼﹂ B ホワ 全員がそれぞれのリアクションを見せて驚いてくれた。なにしろ一 刀が着用しているのは海兵隊の制服の一つであるクラス イトドレス。 肩には元帥の階級章に俺と同じ数の略章、襟元には彼の牙門旗であ る十文字だ。 この制服は俺が前に言った祝いの品であり、あの後にジーンに頼ん 429 で用意させたのだ。 ﹁よく似合ってるじゃないか﹂ ﹁そうですか?﹂ ﹁ああ、むしろ似合い過ぎだぜ♪﹂ と称される英雄になれてい 確かによく似合っている。普段着と化している聖フランチェスカ学 天の御遣い 園の制服が白だからだろう。 制服のおかげで彼は巷で るから、白がかなり強調されているホワイトドレスなら、より説得 力が増している。 というよりも本当に似合いすぎだ。 ﹁ライルさん、ありがとうございます﹂ ﹁気にするな。だが無闇に着るのはやめてくれよ。その服はどちら かというと式典や謁見とかの制服だからな﹂ ﹁・・・でしょうね﹂ これを普段着にしたら素っ裸でHALO降下をさせてやる。 ﹁中佐、離陸準備が整いました﹂ ﹁了解だ・・・・・・それじゃあ、俺達は呉に帰還する。世話にな ったな﹂ ﹁ライルさん達こそ、本当にありがとうございます﹂ 俺と一刀は互いに右手を出し合うと、自然に握手を交わした。 ﹁桃香殿。お子さんが生まれたら直ぐに駆けつけるからな﹂ ﹁はい‼ライルさん達もだよ‼﹂ 430 俺は軽く敬礼をしながらスーパーシースタリオンに乗り込むとロー ドランナーが後部ハッチを封鎖。 離陸用意が整うと機体はゆっくりと上昇していき、建業がある方角 へと進んで行った。 ﹁行っちゃいましたね﹂ ﹁ああ、そうだね﹂ ﹁初めて会った時は怖い印象だったけど凄く優しい人達だったね?﹂ ﹁またおじちゃん達と会いたいのだ‼﹂ 飛行していくスーパーシースタリオンを見送りながら、一刀達は暫 くしてからその場を離れる。しかし彼等は再び肩を並べて闘うこと になる。 それも近い内に・・・・・・・・・。 431 第60話:白い証︵後書き︶ 袁紹軍撃退を成し遂げ、建業に帰還したライル達。帰還と同時に冥 海兵隊の誇り,Re Marine] 真・恋姫無双 琳から待ち望んだ言葉が聞けた。 次回 [Wu 次世代の部隊の足掛かりが成る。 432 ハンターキラー詳細︵前書き︶ ひと段落つきましたので、今回は特殊部隊 単な詳細をお伝え致します。 ハンターキラー の簡 433 ハンターキラー詳細 ハンターキラー/Hunter Killer 正式名称:第0独立機動大隊直属特殊作戦グループ 所属オペレーター数:16名 チーム数:3チーム+支援航空チーム 指揮官:ライル・L・ブレイド中佐 任務:特殊作戦全般 モットー:我が心、獲物を狩る狩人の如く ウルフパック創設時にライル自らが創設した特殊部隊。フォースリ ーコンやMARSOC出身者のみで構成されており、精鋭で構成さ れた部隊の中でも更に選び抜かれた最精鋭部隊とされている。 戦闘力はオペレーター一人ひとりが驚異的に高く、素手で敵の声帯 をむしり取ったり、相手の心臓を素手で貫いたりと、全身が文字通 り武器とされる。 装備に関して創設当初は一般部隊と同じものを使用していたが、実 戦で判明したデータを元に独自の装備を採用している。 ウルフパックの中でも最高機密として厳重な情報管制が敷かれ、孫 策軍でさえも存在を知っているのは雪蓮と冥琳、穏、千里の4人の みである。 しかも普段は判別させないように一般部隊に編入させて、誰が特殊 部隊オペレーターが特定さるないようにしている。 434 ハンターキラー詳細︵後書き︶ 次回は第3回アンケートにありましたハンターキラーの銃火器の簡 単な詳細をお伝え致します。 435 第62話:ハンターキラー装備︵前書き︶ 今回はハンターキラー専用の装備を簡単に書きました。 436 第62話:ハンターキラー装備 ハンターキラー使用武器一覧 ハンドガン USP,45T ドイツの銃器メーカーであるヘッケラー&コッホ社が開発した自動 拳銃の45口径特殊部隊仕様。ドイツ連邦軍ではP12と呼ばれて いる。 ハンターキラーでは主力セカンダリーアームとして支給されており、 任務ではM45以上の頼もしい相棒になる。 CASV アサルトライフル SCAR−L Mod1 CASVともボルタースカーライトとも呼ばれてい ハンターキラーの主力アサルトライフル。ウルフパックではMk1 6 る。 SCAR−Lにボルター社の軽量化処置と放熱性向上を図ったCA CASV SVハンドガードを採用しており、射撃時における蓄熱を抑えてい る。 SCAR−H Mod0 CASVともボルタースカーヘビーとも呼ばれてい ハンターキラーの主力アサルトライフル。ウルフパックではMk1 7 る。 基本的な改良はMk16と変わらず、こちらもCASVハンドガー ドを搭載している。 437 スナイパーライフル SCAR−SSR Mk17をベースとしたセミオートスナイパーライフル。Mk20 ともボルタースカーシューターとも呼ばれている。 基本的にはSCAR−Hのスナイパー仕様でフルオート機能を取り Rifleの略。 Ada 除いてあり、バレルもフリーフローティングに交換して命中精度を 高めている。 軽機関銃 SCAR−HARM Modular Mk16をベースとした軽機関銃。HAMRとはHeat ptive NATO弾仕様の分隊支援火器で、Mk19 IARとは同格の仕様であり、敵から機関銃手 CASVともボルタースカーガナーとも呼ばれている。 5.56x45mm Mod0 H&K社のM27 を特定させないようになっている。 ショットガン M870ショーティー レミントンM870をベースとした12ゲージショットガン。スト ックを取り除いてバレルを極限まで短縮した仕様となっており、機 動力を重視するハンターキラーの要望に合わさっている。 オペレーターからはフェザーライトⅡという愛称がある。 グレネードランチャー Mk13 Mk16とMk17に合わせて開発された40mmグレネードラン チャー。 M320のように砲身を横に向ける動作を加えたため、より全長の 長い弾薬を使用出来るようになった。更にトリガーグループはマガ 438 ジンを迂回してライフル本体のトリガーの真下に配置されており、 40mm6連装グレネードランチャーをベースとし 引き金を引く側の手の中指でランチャーの発射が行えるようになっ ている。 Mk14 M32MGL たグレネードランチャー。M32が一般部隊向けに対してMk14 は特殊部隊向けに改修が施され、銃身を8inにまで短縮。 更に専用弾頭であるヘルハウンド弾は鉄で出来た城門を一撃で破壊 が可能になっている。 特殊武器 XM200 ライルの指示で独自開発されたクロスボウ。連射が出来ないことや 最大射程が100m、装填に時間が掛かるといった欠点があり、扱 いも難しいが火薬は一切使用しないので絶大な隠密性を持ち、更に 敵から矢を奪い取って使用できる利点があるので、ある意味で後漢 末期最強の兵器になっている。 愛称は雪雷。 439 第62話:ハンターキラー装備︵後書き︶ 次回から本編に復帰します。なお、この装備ですがあくまで専用武 器であり、他は通常火器と同じであります。 440 第63話:Wu Marine's︵前書き︶ 帰還したライル達。孫呉に新しい部隊が登場する。 441 第63話:Wu Marine's 徐州から無事にキャンプ・ヴェアウルフに帰還した俺達は提出する 報告書を纏め上げ、一休みして翌日に建業へと向かった。 ﹁お帰りなさいませ将軍‼﹂ ﹁ただいま﹂ ﹁アレックス様もご無事で‼﹂ ﹁ありがとう、いま帰ったよ﹂ ブルードレスを着ているから市街地でも注目の的だった。 城に入ると直ぐに兵士や侍女達から熱烈な歓迎を受けた。クラス B 報告書を脇に抱えながら挨拶してくる人達に敬礼をしながら歩いて いき、雪蓮殿達が待つ玉座の間へと入室していった。 ﹁失礼致しま・・・﹁﹁おっかえり∼‼ラ∼イル‼﹂﹂またかよ⁉ しかも増えてる⁉﹂ 入室するやいなや、雪蓮殿とシャオ殿が抱きついて来た。 ﹁も∼っ‼お姉ちゃん離れてよ‼ライルは私のお婿さんになるんだ から‼﹂ ﹁シャオこそ離れなさいよ‼ライルは胸が大きい子が好きなんだか ら、ねえライル♪﹂ そういうと雪蓮殿は俺の顔を胸に押し付けて、シャオ殿は背中に飛 び乗って来た。危険を察知したアレックスは直ぐにその場から離れ てしまい、他のものは呆気に取られている。 442 ﹁ちょっ⁉し・・・雪蓮殿⁉苦しい⁉﹂ ﹁もう、ライルったら照れちゃって可愛い♪﹂ 確かに恥ずかしいあまり俺は顔を真っ赤にさせている。というか、 頼むから誰が助けてくれ。 ﹁﹁いい加減にせんか‼﹂﹂ ﹁﹁きゃん⁉﹂﹂ 見かねた冥琳殿と祭殿がそれぞれの頭に拳骨をお見舞いして、2人 は頭を抑えながら悶絶してしまう。確かに音からして痛そうだ・・・ 。 ﹁すまないなライル﹂ ﹁いつも助かります・・・冥琳殿﹂ ﹁これ、儂は無しか?﹂ ﹁祭殿もありがとうございます・・・﹂ ﹁応っ‼礼は酒で構わんぞ♪﹂ ここにも手間が掛かる人物がいた。一応は全員に土産は用意してお り、祭殿には酒壺一つを買ってあるが、後で追加にもう2、3個を 用意する必要が出来てしまった。 すると若干涙目になっている雪蓮殿が復活した。 ﹁もう‼痛いわよ冥琳‼﹂ ﹁だったら無闇にライルに抱き付くのをやめればいいであろう?﹂ ﹁ブーブー‼それじゃつまんな∼い‼﹂ ﹁祭もひっど∼い‼頭の形が変わっちゃうじゃない‼﹂ ﹁心配は無用じゃ。尚香殿の頭の硬さなら大丈夫ですぞ﹂ 443 確かにこういっては何だが、シャオ殿は石頭の印象がある。という か先程の拳骨でシャオ殿の音が鈍かった気がする。 これ以上漫才を続ける訳にはいかないので、俺は持っていた報告書 を冥琳殿に渡した。 ﹁まあ・・・楽しい漫談はそこまでにして・・・・・・こちらが報 告書になります﹂ ﹁ああ、確かに受け取った・・・・・・﹂ そういうと冥琳殿は報告書を睨みつけるように伺う。 ﹁魯粛や千里からも報告は受けている。袁紹の撃退。よくやってく れた﹂ ﹁ありがとうございます。しかし奴が再び動きを見せれば我々も動 きます。そして今度こそ引導を・・・﹂ ﹁じゃあその時は私も連れてってね♪﹂ ﹁こら、雪蓮⁉﹂ ﹁だってライル達ばっかりじゃずるいじゃない♪それに私も久々に 暴れたいし♪﹂ 雪蓮殿・・・・・・本音がだだ漏れです。 確かに総大将自らが先頭に立てば兵の士気が挙がるだろうし、俺自 身も彼女の武には興味がある。 そんな彼女に対してため息を吐きながらズレだ眼鏡のブリッジを押 さえながら正しい位置に戻す。 ﹁あなたには溜まった業務の整理が残ってる筈だが?﹂ ﹁ぎくっ⁉・・・・・・え・・・ええっと・・・め・・・冥琳が代 わりにやってくれるっていうの﹁私がそれを容認すると思っている 444 のか?﹂うっ・・・・・・﹂ ﹁はっはっはっ‼相変わらず流石の策殿も冥琳には敵わぬようじゃ の・・・﹁あなたもですよ祭殿?﹂ぎくっ⁉﹂ ・・・頼むから漫才をやめてほしい。というか冥琳殿が先ほどから みっちり と業務をしてもらうとして、ラ 妙に怖い。普段が冷静だからその分だけ今の状態が怖い。 ﹁まあ、2人には後で イルに伝えることがある﹂ ﹁なんでしょう?﹂ ﹁例の新設する部隊の準備が整ったぞ﹂ 冥琳殿の言葉で俺の表情はすぐに指揮官の表情に変わる。 ﹁やけに早かったですね?﹂ ﹁安心しなさい、手は抜いてないわよ♪﹂ ﹁そうじゃ。手など抜いたら儂らの面目に関わるからのぅ﹂ ﹁ああ、これが詳細書だ﹂ そういうと懐から一枚の書類を取り出した。いつも思うのだが、一 体全体どこから取り出している? ﹁・・・人数は確かに4,000人。駐屯地は浦口。確かに予定通 りですね﹂ ﹁ああ、だが部隊の指揮する者と装備がまだ決まっていないが、ど うするのだ?﹂ ﹁装備に関しては既に手を打ってあります。しかし刀鍛冶を出来る だけ多く手配して下さい。欲を言えば腕のいい職人を中心に・・・﹂ そういうと確かに頷いた。この年代の技術力を考慮に入れ、尚且つ 445 孫呉軍兵士達が使い易い武器を選ぶのには苦労した。 ﹁ねえライル。それで新しい部隊の名前はなんてするの?﹂ ﹁ええ、4つの部隊にはそれぞれ別の名前がありますが、それらを 孫呉海兵隊 です﹂ 統一した部隊の名前は・・・・・・・・・。﹂ 全員が耳を傾ける。 ﹁部隊名は・・・・・・ 孫呉海兵隊・・・・・・俺達の海兵隊の技術や知識を孫呉に伝授し て、呉の繁栄に尽力する最前戦で戦う部隊。 その後にも簡単な打ち合わせを行ない、俺達は次の仕事に取り掛か る。次の仕事は、4つの大隊を指揮する将軍の選抜・・・・・・・・ ・・・・。 446 第63話:Wu Marine's︵後書き︶ 孫呉海兵隊が駐留している浦口へと向かうライル達。部隊を眺めた 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 後にライルはある4人を集めた。 次回 [4人の武将] 孫呉海兵隊が活動を開始する。 447 第64話:4人の武将︵前書き︶ 海兵隊が駐留している浦口駐屯地。ここにライルはあの4人を呼ん だ。 *内容の一部に元ネタと応募された部隊名あり 448 第64話:4人の武将 浦口、建業の対岸に位置する土地で、前世では浦口区として栄えて いる。 浦口にはようやく設立に漕ぎ着けた孫呉海兵隊の海兵隊員4,00 0名が駐屯していた。後はこれを1,000人ずつの大隊4個を振 り分け、更にそれらを指揮する武将4人を選抜する。しかし既に誰 を選ぶかは決まっている。 ﹁で・・・お前達が呼び出された訳だ﹂ ﹁なるほど・・・﹂ ﹁ひゃわ・・・・・・私が将軍にでしゅか⁉﹂ ﹁某が将にですか?﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ 浦口の海兵隊駐屯地の本陣には俺の他に千里、美花、優龍、そして 百合の4人。初めて会った時にこの4人の忠誠心と武に注目してい た。 海兵隊の部隊を指揮する将校は他の海兵隊員よりも国家に対する忠 誠心は高くならなければならないし、最前線が活動の場であるから 殴り込み部隊 とも呼ばれ 死亡率がかなり高い指揮官の実力はかなり高く必要とされる。 ﹁この海兵隊は俺がいた天界では別名 ていた。他国に何か不穏な動きがあったら真っ先に敵地に送り込ま れることからな﹂ ﹁殴り込み部隊って・・・・・・かなり物騒な通称名ですね?﹂ ﹁まあな・・・だが常に最前線に送り込まれるから必然的に隊の能 力はかなり高い。指揮官となるとそれ以上だ﹂ 449 実際は指揮官も兵士も充分に能力が高いが、ここは誇示しておく。 ﹁・・・しかしライル様﹂ ﹁どうした百合?﹂ ﹁私と丁奉が誘われた理由はよく分かります。私は水軍出身で丁奉 もかなりの実力者です。しかし一軍師と軍船の設計技師が武将に迎 え入れられるというのはどうかと思います﹂ その言葉で千里と美花がむっとした表情で百合を睨む。俺は咳払い をして場を整えた。 ﹁その点なら問題はない。この2人はしっかりやってくれるよ﹂ ﹁なぜそのような根拠が?﹂ ﹁理由は簡単だ。まずは美花だが知っての通り武器を手にすると性 格が変わる。弓を持つと凶暴になって、斧を持つと冷静になる﹂ ﹁えぇえええ⁉わ・・・私は性格が変わりましぇん‼・・・・・・ 噛んじゃった・・・﹂ ﹁お前は朱里か﹁しゅりぃいいいいい‼‼﹂てめえも黙ってろ‼﹂ 朱里に反応して超絶妹バカが出た千里の頭に竹簡を叩き落とす。 ﹁確かにそうなのですが、それと何か関係が?﹂ ﹁だったら百合。お前は昼間から弓一式を抱えて夜遅くまで走り続 け、尚且つ息を上げずにいられるか?﹂ ﹁・・・・・・不可能です﹂ ﹁美花にはそれができるんだよ。まあ、武器を持たせたらの話だが な・・・・・・﹂ 俺はその事を思い出して失笑してしまう。一度だけ彼女への暗黙の 450 了解を忘れて訓練中に弓を渡してしまったことがあり、翌日の訓練 にかなりの支障をきたしてしまった。 まあ、そのお陰で彼女が受け持つクラスの基礎体力は一番高い。 その美花はというと恥ずかしいのか、隣にいる優龍の背後に隠れて しまっている。ひとまずは彼女に補佐を付けておいた方がいいだろ う。 ﹁次は千里だが・・・俺は一度だけこいつと模擬戦をしたことがあ ってな。その時に分かったことだが・・・・・・﹂ 氣 の使い手でもある。荒削りのところもあるが、鍛 ﹁何がでしょう?﹂ ﹁こいつは えればかなりの強さになる筈だ﹂ ﹁よく分かりましたね。あれでもかなり抑えたのですが・・・・・・ ﹂ ﹁確かに上手く隠されてたが、無意識に翡翠杖に氣を送ってたぞ。 あれのお陰でかなり危なかった﹂ 正直に言うと千里が氣の使い手だったとは驚いた。しかも奴の場合 は氣を錫杖に集中させ、地面を突いた際の音で相手の動きを一時的 に封じ込ませるというものだ。 氣をより多く溜めればそれだけ範囲も広がるが、その分だけ氣の消 耗も激しくなる。いわば諸刃の剣。しかしそれを無しにしても千里 の武には一目置いている。朱里に関する話をしなければ大丈夫だろ う。 ﹁これ以上の理由は必要か?﹂ ﹁・・・・・・・・・すまなかった。諸葛瑾、太史慈﹂ ﹁分かって頂けたら結構です。凌統将軍﹂ 451 ﹁︵コクリコクリ︶﹂ ﹁優龍は異存はないか?﹂ ﹁某は異存ありません。その大役、喜んで引き受けさせて頂きます﹂ ﹁よし、4人にはそれぞれ1,000人ずつの兵を与える。弓兵や 軽歩兵、重歩兵と効率的に配備しているからな。鍛錬は連携重視で 行動してくれ。詳しい内容はこれにある﹂ そういうと4人に一日の流れや採用している武器のデータ、兵科の 内容や所属人数の数値。各種訓練内容と方法、効果や時間などとい った事を記している兵法書を渡す。 ﹁あ・・・あのぅ・・・・・・ラ・・・ライルしゃまが書かれたの でしゅ・・・ですか?﹂ ﹁そうだ。訓練は3日後だ。それまで可能な限り内容を叩き込んで くれ。不明があれば聞きに来てくれ﹂ ﹁御意﹂ ﹁それでライル殿、某達の部隊名はいかようか?﹂ ﹁兵法書の表紙に書いてある﹂ 子義 子瑜 そうすると4人が同時に表紙に目を配る。そこに書かれていた部隊 名は・・・ 第1大隊 指揮官:諸葛瑾 部隊名:飛狼隊 第2大隊 指揮官:太史慈 部隊名:雄狼隊 452 第3大隊 指揮官:丁奉 承淵 公積 部隊名:仁狼隊 第4大隊 指揮官:凌統 部隊名:神狼隊 ﹁俺の部隊は本部直属になり、部隊も第0大隊 群狼隊 に改名。 それぞれの牙門旗や孫呉海兵隊の牙門旗はいま用意している。届い たらすぐに知らせるからな﹂ ﹃御意﹄ ﹁ようこそ海兵隊へ‼我等は貴官達の着任を歓迎する‼﹂ そういうと俺は4人に踵を鳴らして最敬礼の姿勢を執る。それに吊 られて4人も同様に敬礼を返して来た。 4人が着任したことで孫呉海兵隊は完成した。後は実戦を経験させ れば孫呉の中でも屈指となるだろう。陣地に掲げられた孫旗が風で 靡き、それを心待ちにしていた・・・・・・。 453 第64話:4人の武将︵後書き︶ 曹操軍の本拠地がある許昌。袁紹軍の徐州制圧失敗と孫呉海兵隊の 真・恋姫無双 雄龍 海兵隊の誇り,Re と の龍を狼に置き換え 情報を纏める中、ある1人の男が任務より帰還した。 次回 [魏武の龍] 飛龍 武を極めんとする武人。ここにあり。 元ネタ解説 飛狼、雄狼 中華人民解放陸軍特殊部隊 た名前。 454 第65話:魏武の龍︵前書き︶ 許昌に1人の英雄が帰還する。 455 第65話:魏武の龍 曹操が治める許昌にも齎された。 徐州における劉備軍の圧勝、それに伴う袁紹軍の戦力低下、呉の海 兵隊創設。これらの情報が覇王 ﹁・・・以上が細策からの報告になります﹂ ﹁ありがとう桂花︵けいふぁ/荀彧の真名︶﹂ 荀彧の報告に曹操は頷く。 この世界の荀彧はそういった傾向は全く感じられず、曹操に心髄し ている感じだ。 ﹁しかし袁紹軍もやはり大したことありませんね‼所詮はう・・・・ ・・うご・・・秋蘭、なんだっけ?﹂ ﹁はぁ・・・烏合の衆だ。姉者﹂ ﹁そうだそうだ‼烏合の衆です華琳様‼﹂ 言葉を思い出させてもらった夏侯惇。そのことを曹操達は呆れてし まう。 ﹁まあ、袁紹のことなどどうでもいいわ。しかし劉備と孫策が同盟 一刀に・・・・・・ライル・L・ブレイドか?﹂ を組んだ方が興味深いわね。しかも・・・﹂ ﹁北郷 ﹁ええ、それに関羽や張遼、呂布、趙雲・・・・・・欲しいわね﹂ ﹁そんな華琳様⁉華琳様のお側に汚らわしい男など置かれたら妊娠 してしまいます‼﹂ ﹁落ち着きなさい桂花、公私混同はあなたの悪い癖よ﹂ 456 この世界の荀彧には大の男嫌いがあり、それが公私混同となってい る。 ﹁しかしあの男の武と覇気は素晴らしいものだ。側においておいた 方が貴女の力になる筈よ﹂ ﹁あら?、季琳は随分とあの男に興味があるようね?﹂ ﹁まあな、1人の将としても一度は手合わせ願いたいものだ﹂ ﹁待て季琳‼ライルとの一騎打ちは私が先だぞ‼﹂ ﹁はぁ・・・相変わらず姉者は可愛いな﹂ 何だか脱線している。そんな状況から不意に扉が開けられ、そこか ら衛兵が入ってきた。 ﹁失礼致します‼徐晃将軍がお戻りになられました‼﹂ ﹁分かったわ。通して﹂ ﹁御意‼﹂ そういうと衛兵が再び部屋を出て、入れ違いで別の人物が中に入っ て来た。 黒と濃紫色の服装の上に黒と淡い青色を主体としたカラーリングの 公明。 鎧を身につけ、銀髪を後ろで束ねるポニーテールの男性。 彼の名前は徐晃 公明、ただいま帰還致しました﹂ 彼は彼女たちの前まで歩み寄ると、片膝を付いて拝礼の姿勢を執る。 ﹁曹操殿。徐 ﹁ご苦労だったわね牙刀︵がとー/徐晃の真名︶。早速だけど、手 筈は整ったのかしら?﹂ ﹁はっ。既に楽進、李典、于禁、曹洪殿、郭嘉、程昱等を中心に軍 勢を洛陽で編成完了。ご命令があり次第、いつでもかの地に出陣可 457 能であります﹂ 牙刀の出陣可能という報告で、曹操は口元を笑わせる。 ﹁いつもそうだけど、相変わらず仕事が速いわね﹂ ﹁恐縮であります。曹操殿﹂ ﹁はぁ・・・いつも言ってるけど、私のことは真名で呼びなさい﹂ ﹁それは恐れ多く思います。私のような将が曹操殿の真名を口にす るなどと・・・・・・﹂ ﹁牙刀‼華琳様の命令が聞けないのか⁉﹂ ﹁牙刀・・・・・・華琳様や姉者、他の者たちはお前のことを高く 評価しているのだ。いい加減に私達のことを真名で呼んではくれな いか?﹂ ﹁ふっ・・・ふん‼あんたみたいな男に真名を呼ばれると妊娠しち ゃうかもしれないけど、華琳様のご指示だから仕方なく呼ばせてあ げるわよ‼﹂ ﹁確かにお前は無駄に固すぎる。私も前にいったがお前のことは高 く評価しているのだ。真名を託せるくらいにな・・・・・・﹂ 曹操達は牙刀の無駄に固いことを口にする。彼の性格は軍に忠実で 魏武の龍 という 忠誠心も高い。更に武も夏侯惇と互角で、知識や戦術に関しても荀 彧や郭嘉、程昱にも匹敵する。 魏の中でも屈指の実力者とされ、敵味方問わず 異名で知られる。 主に対して忠誠心が高いのはいいのだが、武人としての能力の影響 で堅物となっているのだ。 ﹁託して頂いたという名誉と誇りは確かに喜んでお受け致しました が、口にするというのはどうかご理解を・・・・・・﹂ 458 ﹁はぁ・・・ならいつか呼ばせてみせるとして、桂花。こっちの用 意は?﹂ ﹁はい、軍備は整いました。今は兵糧の確保を行なっていますが、 5日以内に全ての用意が整います﹂ ﹁分かったわ。じゃあ今日はここで解散とするわ。牙刀、今晩こそ 閨に来ないかしら?季琳でもいいけど・・・﹂ ﹁いつも言わせて頂いておりますが、恐れ多く思います﹂ ﹁だから私もそんな趣味は無いと言っているだろ?﹂ ﹁やっぱり・・・・・・じゃあ桂花、今晩はあなたにお願いするわ﹂ ﹁はい‼華琳様‼﹂ そういうと全員が解散していく。 それから3日後、各地はある書状で騒ぎ出す。その内容は・・・・・ ・・・・。 袁紹が帝を僭称した 459 第65話:魏武の龍︵後書き︶ 袁紹が帝を僭称した。この内容はあからさまな漢室への反逆で、武 へ動き出す。 海兵隊の誇り,Re 官渡 が結成され、ライル率いる孫呉海兵隊も雪蓮と孫権と 力をチラつかせるがどこも従わなかった。そして遂に曹操主体で 反袁紹連合 真・恋姫無双 共に袁紹討伐に決戦の地 次回 [英雄達の対峙] 官渡の戦いが始まろうとする。 公明 オリジナルキャラクター設定 徐晃 曹操に仕える武将で真名は牙刀。魏の重鎮ね中でもただ1人の男で、 その武や知は夏侯惇や荀彧を上回るとされる。 かなり堅物で、彼女達から真名は預かっているが部下と同僚以外の 真名口にすることは滅多にない。 劉備軍の愛紗とは同じ河東郡の出身同士であり、彼女に青龍偃月刀 を与えたのも彼である。 彼の得物は青龍偃月刀の対になる赤龍偃月刀。 460 第66話:英雄達の対峙︵前書き︶ 呉、蜀、魏の3英雄が対峙する。 461 第66話:英雄達の対峙 袁紹による帝を僭称という暴挙は瞬く間に漢全体に広がった。あの 愚者は玉璽を手に入れたとくだらないことを抜かしていたが、玉璽 は建業の国宝庫に厳重に保管されている。 反袁紹連合 参加を呼び掛けた。 更にどうやら曹操もそのことは薄々勘付いているようであり、諸侯 に 雪蓮殿率いる孫策軍も袁紹討伐に参加することになり、俺が率いる 孫呉海兵隊も孫権殿と冥琳殿、甘寧、穏、亞莎の5人と共に集合地 伯符及び配下4,000名。反袁紹連合の呼び掛けに応じ 点の官渡に向かっていた。 ﹁孫策 て連合に参加する﹂ ﹁お待ち致しておりました。あと少しで軍議が開始されます。代表 者の方々はご出席をお願い致します。配下の皆様には陣地に案内致 します﹂ ﹁分かった。通達に感謝する﹂ 連合軍本陣の前にいた曹操軍兵士に受付を済ませ、案内を受けなが ら俺達は周囲を見渡す。 ﹁反董卓連合の時みたいね♪﹂ ﹁規模は小さいがな﹂ ﹁あの時は袁紹のクソが半数を占めてましたから、規模が小さく感 じられますか?﹂ ﹁はい∼。だけどお荷物さんがいなくなりましたから数は少ないで すけど質は高いですよ∼﹂ 462 何気に穏が鋭いところを突いてきた。確かにあの時は敵側である董 卓軍にいたが、あの時連合軍の兵力の約5割が袁紹軍、2割が袁術 こと美羽の軍勢で占めていたらしい。 確かに連合軍に参加していた諸侯にとって袁紹軍はお荷物でしかな かったらしい。 俺も同様に辺りを見渡していると、見覚えのある人影が見えてきた。 ﹁ライルさん﹂ ﹁ん・・・・・・よお、一刀達も参加したか﹂ 歩み寄ってきたのは一刀だ。よく見るとすぐ側に劉備軍の牙門旗の 一つである十文字に関旗、紺碧の張旗が風に靡いていた。 ﹁あら、一刀じゃない♪﹂ ﹁孫策達も来たんだ。久しぶりだな﹂ ﹁まあね♪それより聞いたわよ∼♪劉備ちゃんと子供作ったんだっ て∼♪﹂ ﹁まっ・・・・・・まあね・・・﹂ 一刀は照れ臭そうに頬を掻きながら顔を赤くした。 仲謀だ﹂ ﹁そうだ紹介するわ‼この子は私の妹よ﹂ ﹁・・・孫権 ﹁噂は聞いてるよ。よろしくね孫権﹂ ﹁もうっ、相変わらず素直じゃないわね。そして隣にいるのが私の 義理の妹♪﹂ ﹁直接会うのは初めてになる。私は周瑜、字を公謹だ﹂ ﹁初めまして、それと同盟締結感謝するよ﹂ 463 ﹁気にするな。同盟締結は我等に利があるからだ﹂ ﹁冥琳も生真面目ねぇ﹂ ﹁それと一刀・・・・・・忠告しておくぞ﹂ ﹁分かってます・・・・・・﹂ そういうと俺と一刀は溜息を吐きながら横目で右を伺う。砂煙を巻 き上げながらあのバカが接近していた。 ﹁うぉおおおお‼‼しゅぅうりぃいいいい‼‼﹂ ﹁﹁やかましい‼‼﹂﹂ 俺と同時に一刀もやって来た妹バカの千里の顔面にストレートを打 ち込み、千里は鼻血を出して目を回しながら気絶した。 あまりにも予想通りの展開に俺達は溜息を大きく吐いて呆れてしま う。 ﹁きゅぅううう∼・・・・・・﹂ ﹁千里の妹バカは聞いてたけど・・・まさかこれ程とはね・・・﹂ ﹁ああ・・・・・・それと思春、そのバカをお仕置きを頼む﹂ ﹁御意・・・・・・何でしたらそのまま・・・﹂ そのまま甘寧は千里を縄で手早く巻き付け、担ぐと後方に連行して いく。もう何も驚かない。俺も呆れていると何か気配を後方から感 じ取った。 一刀殿とお見受けする﹂ ﹁失礼、孫策軍指導者の孫策様と孫呉海兵隊武将のライル殿、そし て劉備軍指導者の北郷 歩み寄って来たのは黒と濃紫色の服装の上に黒と淡い青色を主体と したカラーリングの鎧を身につけ、銀髪を後ろで束ねるポニーテー 464 ルの男性・・・・・・徐晃だ。 ﹁そうよ。あなたは?﹂ ﹁申し遅れました。私は魏王曹 孟徳様が配下、魏軍武将を務める 性は徐、名は晃。字を公明と申します。曹操様のご指示を受け、本 陣へご案内させて頂く為に参上致しました﹂ 俺と一刀は表情を変えずに驚く。何しろ目の前に魏の中でも正史に て夏侯惇、張遼に並ぶ功績を立てた名将がいるのだ。 しかもその雰囲気や覇気にも驚かされる。 ﹁そう、わざわざありがとうね♪私は孫呉の孫策よ。こっちにいる のが軍師の周瑜で、こっちは妹の孫権よ﹂ ﹁お目に掛かれて光栄の極みであります﹂ 徐晃殿は雪蓮殿に挨拶を済ませるとすぐに俺達に振り向いて来た。 俺も彼に敬礼をしながら自己紹介する。 ﹁劉備軍所属の北郷 天の御遣い 一刀です﹂ と 江東の銀狼 にお目に掛か ﹁孫呉海兵隊指揮官のライル・L・ブレイドだ徐晃殿﹂ ﹁英雄として名高い れて感謝致します﹂ 俺と一刀、更に徐晃殿は互いに礼をし合う。その光景には圧倒的な 雰囲気を醸し出し、雪蓮殿達はその光景に圧巻している。 ﹁どうかなされたか、孫策殿?﹂ ﹁いっ・・・いやぁ・・・・・・ねえ、冥琳?﹂ ﹁私に振るな・・・・・・それより徐晃殿、すまないが本陣に案内 を頼めるか?﹂ 465 ﹁失礼した。でしたら孫策様と周瑜様、そしてライル殿。ご同行を 願います﹂ ﹁御意だ﹂ ﹁だったら俺も行きます。軍師と副将を連れて来ます﹂ ﹁承知致した﹂ そういうと一刀はすぐに陣地から軍師の詠、副将の愛紗を連れて来 て、俺達と共に徐晃殿に案内される。 呉のライル、蜀の一刀、魏の牙刀。謀反人袁紹との決戦地である官 渡にて、3人の英雄が対峙した瞬間であった。 466 第66話:英雄達の対峙︵後書き︶ 連合軍本陣、そこにら乱世の奸雄こと曹操を始めとした諸侯の武将 が集まっていた矢先、袁紹が行動を開始する。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 数で圧倒的に負けている連合は軍議で策を練る。 次回 [知力] 軍師達の会話が始まる。 467 第67話:知力︵前書き︶ 官渡に集った群雄達。英雄と称される者達の対話が始まる。 468 第67話:知力 案内に来た徐晃殿の案内で本陣に案内された俺と雪蓮殿と冥琳殿。 一刀に軍師の詠と副将の愛紗。 因みに桃香達は徐州に残っている。 理由としては二つあり、袁紹軍の別働隊が再び攻め込んでくる可能 性があり、それらに備えた手段。 そしてもう一つは桃香本人が妊婦だからだ。 それに加えて正史でも実際に参加していた愛紗や詠、霞の3人と兵 士2,000名を連れて来ているみたいだ。 本来なら鈴々と星も参加していたが、今回は桃香の護衛に残ってい る。仕方がないことだ。 違いがあるとすれば官渡の戦いで劉備軍は徐州を追われて袁紹の下 に身を寄せていた。 最も、袁紹が曹操軍に客将として身を寄せていた関羽を見掛けて劉 備達を捕らえようとして逃げ延び、荊州の劉表に匿ってもらったと される。 徐晃殿に案内されて、俺達は本陣の天幕に到着した。 ﹁失礼致します。孫策軍及び劉備軍の方々をお連れ致しました﹂ ﹁ありがとう牙刀。中に入れてちょうだい﹂ ﹁はっ。・・・どうぞお入りください﹂ 徐晃殿に勧められ、俺達も天幕の中に入って行く。その直後に俺達 に視線が集中した。天幕の中には既に他の陣営からの大将が集まっ ていた。特に一番奥にいる金髪の少女の視線が強烈だ。 469 左右に虎牢関で俺と一騎打ちをした夏侯惇に妹の夏侯淵、更に猫耳 を思わせるカチューシャをした少女がいるのだから、彼女こそが乱 世の奸雄で知られる曹操だろう。 ﹁久しぶりじゃない孫策﹂ ﹁あなたもね、曹操﹂ 2人は簡単に笑顔で挨拶はするが、目が笑っていない。むしろその 笑顔に恐怖を抱く。 ﹁北郷もよく来てくれたわ。関羽もね﹂ ﹁ああ、袁紹の野郎が許せなくてね。力を貸すよ﹂ ﹁曹操殿。この節は世話になった﹂ ﹁あら、お礼なら貴女が来てくれたらいいわよ♪﹂ ﹁前にもお伝え致したが、私はご主人様や桃香様の義の刃。降るこ となどありはしない﹂ ﹁そう、残念ね。・・・・・・そして、そっちの男が噂のライルね ?﹂ 曹操は一刀達にも挨拶をすると、待ってましたと言わんばかりに俺 の事を品定めの如く見てくる。何だか知らないがあまりいい気分で は無い。一個人としても尊敬している曹操から見られているのだ。 落ち着く訳が無い。 しかし何とか平常心を保ち続け、彼女の前で踵を鳴らして敬礼をす る。 ﹁お初にお目に掛かります曹操殿。自分は孫策様配下、孫呉海兵隊 孟徳。今回の連合軍総大将で、 司令ライル・L・ブレイドであります﹂ ﹁直接会うのは初めてね。私が曹 470 魏を治める魏王よ﹂ ﹁名高い曹操殿とお会いで来て嬉しく思っております。その節は直 筆の書状まで頂き、感謝致します﹂ ﹁ねえライル、いつの間に手紙のやりとりをしたの?﹂ ﹁洛陽を脱出して傭兵として活動していた時期であります。ちょう ど孫策様が訪れる4日ほど前に・・・・・・﹂ ﹁ブー‼私もライルからの恋文が欲しい∼﹂ ﹁なっ⁉ライル、貴様⁉華琳様を誑かすつもりだったのか⁉﹂ 雪蓮殿の冗談を真に受けて夏侯惇が物凄い剣幕で詰め寄って来た。 ﹁ちょ⁉・・・落ち着け夏侯惇‼雪蓮殿も達の悪い冗談はやめてく ださい‼﹂ ﹁だって∼、本当のことなんだも∼ん♪﹂ ﹁だから冗談はやめてください‼曹操殿もご説明を‼﹂ ﹁あら、てっきり私は閨の誘いかと思ってたわ♪﹂ ﹁あなたも何を言ってるんですか⁉﹂ ﹁ライル貴様ぁ‼そこに直れ‼首を叩き斬ってやる‼﹂ ﹁お前も武器を振り回すな⁉全部根も葉もない嘘だ‼この2人の冗 談だ‼﹂ ・・・・・・なんだ・・・この状況は・・・。 俺は何とか冥琳殿と一刀の助け舟に救われ、からかっていた雪蓮殿 と曹操殿は満足した笑みで椅子に座る。 というか曹操殿がここまでドSだとは予想すらしていなかった。 そんなこんなでようやく軍議が開始されることになったが、既に俺 は疲れ果てていた。 ﹁さて、本来なら自己紹介をするのが正しい手順だけれども、以前 471 の連合の時の面子と殆ど変わらないから省かせてもらうわ。早速だ けれども軍議を始める﹂ 城を挟み、烏巣、白馬、 曹操殿が仕切ると全員が中央の机の上に敷かれている地図に視線を 移す。 地図にはここ官渡から袁紹軍の本陣がある 延津、原武の位置が記されていたが、相変わらず雑な地図だ。 城から大軍勢を出陣させてここ官渡に向かってるら しかしこれでもこの時代ならかなり正確な地図なのだろう。 ﹁袁紹は既に しいわ。これまで私の部下が調べた結果、敵の数は10万から12 万とされるわ﹂ ﹁12万・・・・・・随分と集めれたものね﹂ ﹁大方、しらみつぶしで各集落を脅迫し回ったのでしょう。徐州を 攻め込んだ兵も子供や老人が多かったほどです﹂ ﹁相変わらず解せないわね・・・そんな奴が帝を名乗るなんて、猿 が王冠を被るようなものよ﹂ ﹁全くです‼華琳様を差し置いて王座に就くなどばんじいに体当た りする‼﹂ ﹃?﹄ 夏侯惇の言葉に全員が困惑する。いま確かにバンジーや体当たりと いったが、少し考えて似た言葉を考えた。 ﹁ええっと・・・・・・夏侯惇?﹂ ﹁なんだ?﹂ ﹁それを言うなら万死に値するじゃないのか?﹂ アホ と判断する。 ﹁私はそう言ったのだ‼馬鹿ではないのか⁉﹂ 俺は夏侯惇の印象は 472 ﹁姉者・・・今のは姉者が間違っていたぞ﹂ ﹁そ・・・・・・そうなのか?﹂ ﹁全く‼これだから脳筋は・・・﹂ ﹁誰がノーコンだ‼﹂ なんでそんな言葉を知っている⁉ ﹁はぁ・・・春蘭、私に恥をかかせたいのかしら?﹂ ﹁うぅううう・・・・・・華琳様ぁ・・・﹂ ﹁はぁ・・・相変わらず姉者は可愛いなぁ﹂ ﹁曹操殿、頼みますから話を修正していただけないか?﹂ ﹁そうね・・・・・・すまないわね﹂ 曹操殿は溜息を吐きながら話を元に戻す。 ﹁詠、君の考えはどう思う?﹂ ﹁白馬と延津はどうなってるの?﹂ ﹁あなたは?﹂ ﹁私は詠、軍師よ。それよりどうなの?﹂ ﹁ふぅ∼ん・・・・・・両方ともあの馬鹿の手中にあるわ。それが どうしたの?﹂ ﹁だったら取るべき手段は明白よ﹂ ﹁ほぅ・・・両方に囮を置くのか?﹂ 冥琳殿がそういうと詠は頷く。 ﹁あの馬鹿の性格からすれば怖気付いたと思って陽動に気が付かな いはずよ。その後に各個撃破﹂ ﹁兵は多いが愚か者で保身に走ることしか脳が無い愚者の中の愚者・ 473 ・・・・・﹂ ﹁確かに袁紹は食い付くはず・・・それだけで私達の勝ちになりま す﹂ 軍師達が先を読みながら策を練ると、愛紗が地図を指差す。 ﹁しかし・・・この囮こそが問題ではないか?敵は数で勝るので、 些細な囮など歯牙にも欠けないだろう﹂ ﹁ふふっ、相変わらずいい着眼点ね関羽﹂ ﹁すみません、ご主人様﹂ ﹁いいよ愛紗。それで曹操達はどう思ってる?﹂ ﹁関羽と同意見よ。何処の陣営がこれを引き受けるかしら?﹂ ﹁・・・・・・少しいいでしょうか曹操殿?﹂ ﹁なにかしら?﹂ ﹁袁紹や奴に組するクソッタレが確実に食い付く有効な手段がある﹂ 俺がそういうと全員が俺の言葉に耳を傾ける。だがその前に地図を どうにかしたい。俺は胸ポケットから周辺の地図を取り出し、それ を広げた。 ﹁これは・・・・・・すごい地図ね・・・﹂ ﹁この戦が終われば記念に差し上げます・・・・・・地図を見る限 りでは白馬と延津のちょうど中間あたりに渓谷があり、戦闘には不 向きですが、敵を誘い込むには最適な場所です。囮部隊はここを進 軍して手前で反転して退却。 両方の部隊を誘い込んだ隙に別働隊が白馬と延津を攻撃。 敵の兵器を破壊したら占領はせずに放棄。その後に合流して中央の 敵を撃破して撤退します。するとどうなると思われますか?﹂ ﹁・・・敵の戦力を分散させられるということね?﹂ ﹁その通りです。それにはこの陽動部隊にはかなり重要な役割を担 474 いますが、1つ最高の手段があります﹂ ﹁はいはいは∼い‼先陣は私が立候補する∼‼﹂ ﹁雪蓮殿・・・頼みますから話を最後まで聞いて下さい・・・・・・ 2つの拠点間を守備している将が確実に食い付き、なおかつ討ち取 れば武名が挙げられる・・・・・・貴女にお願いしたい・・・曹操 殿﹂ そういうと全員がどよめいた。何しろ総大将を囮に使うのだから当 然だ。しかし成功すれば敵は確実に食い付く筈。手段としては最良 だが彼女達が黙っている筈が無い。 案の定、夏侯惇達が怒気を込めながら詰め寄って来た。 ﹁貴様‼華琳様にそのような危険な役をさせられる筈がないだろう ‼﹂ ﹁そうよ‼馬鹿じゃ無いの⁉だったらあんたが囮になって突っ込め ばいいじゃない‼﹂ ﹁まあ聞いてくれ。敵は曹操殿が総大将を務めていることは気がつ いているだろうし、もし仮に曹操殿が討たれたら俺達の敗北は知っ ている﹂ ﹁だったら尚更・・・﹁面白いじゃない﹂か・・・華琳様⁉﹂ ﹁確かにわたしを討ち取れば、袁紹は無条件で天下を下すことにな るし、名も挙がるでしょうね﹂ 万が一・・・否、億が一も無いだろうが仮に袁紹が勝利すれば俺達 は確実に見せしめとして斬首。 兵力を吸収して各地で虐殺を開始するだろう。 ﹁しかし袁紹如きの雑兵で負けることなど無い。こちらの作戦に気 が付かないまま敵は確実に敗北するでしょう﹂ ﹁ライルも言うようになったわね♪だけど私も同じ考えよ。あんな 475 馬鹿猿に負けることなんて考えてもないし♪﹂ ﹁俺もライルさんや孫策と同意見だ。奴のせいで俺達の仲間が傷付 き、幽州にいた友人や戦友が命を落とした・・・・・・絶対に許し てはおけない‼﹂ ﹁私には春蘭や秋蘭、牙刀、有能な臣下達が集ってる。更に江東の 小覇王に江東の銀狼、天の御遣い、軍神という英雄達も集った。袁 紹に負ける要因など考えられないわ﹂ いつかは敵になるかも知れない。しかし今は信頼出来る仲間同士だ。 決意し合うと天幕にウルフパックの海兵隊員が入って来た。 ﹁報告‼袁紹軍が進軍を開始‼進路から判断して原武に向かってい ると思われます‼﹂ ﹁早いな・・・﹂ ﹁えぇ・・・のんびりはしてられないわね・・・・・・ライルの案 で進めるわ‼﹂ ﹁じゃあ私達は延津を攻めるわ﹂ ﹁俺達劉備軍は白馬を攻める‼﹂ ﹁俺達群狼隊を3つに分けて置く‼俺は一刀と行く‼作戦内容は追 って通達する‼﹂ ﹁頼むわね・・・解散‼﹂ 官渡の戦い がいま、始まろうとしていた・・・・・・・・・ 曹操が指示すると全員が行動する。歴史の分岐点となる3大戦場の 1つ 。 476 第67話:知力︵後書き︶ 遂に開戦した官渡の戦い。数で圧倒的不利の状況下で、ライル率い 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re る第1中隊は一刀達と共に白馬を目指す。 次回 [オペレーションボギー発動] 狼と御遣い、白馬に君臨。 477 第68話:オペレーションボギー発動︵前書き︶ 袁紹軍の戦力を低下させるオペレーションボギー始動。 478 第68話:オペレーションボギー発動 官渡・・・・・・現在の河南省中夘県に位置するこの場所は九州の 中心である中原の地であり、中国7大古都のうち、殷の都安陽、東 周から長く都が置かれた洛陽、宋の都開封の3大古都を有する。 そして赤壁の戦い・夷陵の戦いと共に﹃三国志﹄の時代の流れを決 定付ける重要な戦いと見做される。 俺が指揮する第1中隊120名は連合軍白馬方面強襲軍として一刀 が指揮する劉備派遣軍と共に白馬に向かっていた。 ﹁ウルヴァリンから各中隊。現在地と状況を報告せよ﹂ <こちらアイアンマン、曹操軍と共に順調に進軍中。まもなくで予 定地点に到着する。どうぞ> <パニッシャーからウルヴァリン。こちらも順調に延津に接近中> ﹁了解した。作戦開始は赤色の信号弾。幸運を祈る。ウルヴァリン out﹂ 通信を終了させると俺は久々に装着する神斬狼の状況を確認する。 今回のオペレーションボギーだが、中央に曹操、夏侯惇、夏侯淵、 荀彧、徐晃という魏軍の重鎮達で構成された陽動部隊が進軍してい る隙に、俺達が西門、雪蓮殿が指揮する孫呉海兵隊とレオンが率い る第3中隊が東門より出陣して延津へと向かう。 そして両方の敵が曹操に集中すると俺達の出番だ。 曹操と行動しているアレックス率いる第2中隊の通信で合図を送り、 479 確認したらまずM252 60mm軽迫撃砲による先制攻撃で敵の 出鼻を挫き、30秒間による砲撃後に突撃。 敵の残存戦力と保管されている兵器と兵糧を破壊した後に、奇襲成 功の合図である赤色の信号弾を発射。 曹操軍が渓谷に敵を誘き寄せる、白馬と延津両方より合流した部隊 で敵を挟撃して殲滅。その後に官渡城に帰還する。 しかし今回の戦闘で俺達にはかなりの制限が掛かっている。理由は 単純明快で、いずれは敵になる曹操軍に可能な限り情報を与えない 処置である。 だから戦車やヘリはもちろん、ジャベリンやSMAW、更にクレイ モアも使用出来ない。辛うじてM262とM320A1が使用出来 る程度で、官渡では白兵戦が主体になる。 ジーンから名高い武将と同格の実力に底上げされていることに加え て、日頃から訓練はしてきていたから問題無しだろう。 ﹁ライルさん、状況はどうなってますか?﹂ ﹁順調だ。敵はまだこちらの作戦に気がついた様子は見当たらない。 予定通りだよ﹂ ﹁せやけどまさかこんな早ようにライルと一緒に戦えるやなんて、 嬉しいなぁ♪﹂ ﹁しかしライル、お前は本当に凄いな﹂ ﹁何がだ愛紗?﹂ ﹁曹操殿をあそこまでやる気にさせて、しかも大胆で先読みした策 をあんな短時間で思いつくところだ。朱里や雛里ならともかく、私 には想像すら出来ないだろう﹂ ﹁ありがとうな、それより愛紗は確か徐晃と出身が一緒だったよな 480 ?﹂ ﹁あぁ、徐晃殿には色々と世話にもなったことがあってな、私の偃 月刀も徐晃殿から頂いたものなのだ﹂ 確かに徐晃と関羽は河東郡の出身で、敵味方を超えて武人の共鳴を したとされているが、偃月刀の話は聞いたことが無い。 そういえば確かに徐晃は出陣する際に手にしていた得物は、まるで 色違いの青龍偃月刀だ。赤色が主体だったから名前は赤龍偃月刀と いうところだろう。 ﹁しかし・・・・・・帝を僭称した袁紹の討伐とはな・・・﹂ ﹁確か時系列的には・・・袁術討伐が正しいでしたよね?﹂ ﹁ああ、記録では帝を保護した曹操に対抗するように、孫策から預 かった玉璽で帝になろうとしたが誰も認めず、曹操軍と孫策軍、更 に曹操軍に身を置いてた劉備軍の3つが討伐を命じられ、袁紹以上 に将に恵まれてなかった袁術軍は壊滅したらしい﹂ の3人は曹操軍にいて、徐州を ﹁みたいですね。しかもこの官渡の状況がその寿春と酷似してるし、 愛紗・・・・・・関羽や張遼、賈 追われた劉備軍は袁紹軍に身を寄せてた﹂ ﹁もはや知識は役立たないな・・・・・・﹂ ﹁みたいですね・・・・・・﹂ 周囲を警戒しながら俺達は慎重に白馬に到着。兵を丘に隠し、60 mm軽迫撃砲を5門設置すると暗視装置を使って敵情を観察する。 ﹁こちらウルヴァリン、予定地点に布陣。状況は?﹂ <こちらアイアンマン、予定地点に到着> <こちらパニッシャー。予定地点に到着しました。いつでも攻撃可 能> 481 ﹁了解した、オペレーションボギー発動。曹操殿に行動開始と伝え <Copy that that Colonel> Colonel> てくれ﹂ <Copy これで準備が整った。すぐに曹操軍がいる中央戦線から派手に銅鑼 が鳴らされ、しばらくしてから白馬の部隊がそちらに向かって行っ た。 ﹁よし、掛かってくれた﹂ ﹁愛紗、霞。準備して﹂ ﹁お任せ下さいご主人様﹂ ﹁いつでもええで一刀﹂ <アイアンマンから各中隊へ‼荷物が届いた‼繰り返す‼荷物が届 いた‼> アレックスからの合図が届いた。俺はすぐに無線越しに迫撃砲部隊 へ指示を出した。 ﹁ウルヴァリンから迫撃砲部隊‼砲撃開始‼﹂ 482 第68話:オペレーションボギー発動︵後書き︶ 作戦が開始された。白馬と延津の敵部隊が曹操軍に集中した隙に、 海兵隊の誇り,Re 延津方面の雪蓮が指揮する孫呉海兵隊とレオンが指揮する第3中隊 真・恋姫無双 も攻撃を開始した。 次回 [烈火の一撃] 孫呉海兵隊の有志達が敵を駆逐する。 483 第69話:烈火の一撃︵前書き︶ 孫呉海兵隊、遂に降臨。 484 第69話:烈火の一撃 <ウルヴァリンから迫撃砲部隊‼砲撃開始‼> 中佐からの指令でこちらで展開していた迫撃砲部隊も攻撃目標であ る延津に対して砲撃を開始。 発射された60mm榴弾は次々と敵陣に落着していき、そこから発 せられるのは敵の断末魔だ。 その様子を伺いながら俺は孫策様と孫権様、周瑜様、陸遜、甘寧、 千里、美花、優龍、百合を見る。 ﹁ねえねえレオ∼ン。まだなの?﹂ ﹁間もなくです。この砲撃が終了しましたら私達の出番になります﹂ ﹁私達の分まで取らないでよね∼﹂ ﹁姉様、もう少し緊張感をお持ち下さい‼﹂ ﹁それより雪蓮、作戦は忘れないでくれ﹂ ﹁は∼い♪﹂ なんというか、本当に戦闘直前の状態か? 迫撃砲による砲撃時間は30秒間だけだ。瞬く間に30秒が経ち、 砲撃が終了した。 ﹁孫策様、お願いします﹂ ﹁ええ・・・・・・旗を掲げろ‼﹂ ﹃御意‼﹄ 俺の言葉で彼女は瞬間に表情を変えた。何度か見ているが、本当に 不思議な人だ。 485 やがて全員の牙門旗を持った旗手がやって来て、次々と牙門旗を掲 げる。延津では既に火災も発生しており、夜でも旗を確認出来る程 だ。 牙を剥いた狼 に孫呉 そこに翻る旗は孫旗、甘旗、諸葛旗、太史旗、丁旗、凌旗。 更に俺達ウルフパックの部隊マークである 海兵隊の旗だ。 孫策様は南海覇王を抜刀すると切っ先を天高く掲げた。 ﹁聞け‼孫呉の勇敢なる同士達よ‼我等はこれより漢に仇なす逆賊 袁紹と戦を繰り広げる‼奴等は民を見境なく斬り捨て、土地を怪我 し、更にはこの漢の歴史を汚そうとしている‼ そのような下郎共を野放しに出来ようか⁉ 否‼ 出来る筈が無い‼奴等に我等の力を見せつけよ‼お前達は選び抜か れた精兵達だ‼その勇敢な雄姿を‼その確かな武を‼その猛る炎を みせつけよ‼﹂ ﹃応っ‼﹄ ﹁全軍‼突撃せよぉ‼‼﹂ ﹃うおぉおおおおおお‼‼﹄ 孫策様を先頭に俺達もそれぞれの得物を手にして敵陣に突っ込んだ。 なお、今回の作戦では同士討ちを避けて銃火器は使用出来ない。 だから白兵戦で決めることになった。 ﹁武久‼左から片付けるぞ‼﹂ ﹁分かった‼突っ込むぞ‼﹂ ﹁うぉらぁああああああ‼‼﹂ 486 閃光 ‼﹂ 俺は龍舌を構えながら突っ込み、目の前にいた敵10人程の体を吹 き飛ばす。 ﹁南郷流単刀心眼術・・・・・・ 閃光 を放つ。 武久は日本刀の政宗を手に奴の流派である南郷流単刀心眼術の剣技 の一つ 奴の剣筋は素早さが重視され、氣によって強化された斬り付けで、 敵の間を縫う様に駆け巡り、奴が通過した後には苦しむ前に命を絶 たれた袁紹軍兵士の死体だけだ。 ﹁突き進め‼奴等に我等の力を見せつけよ‼﹂ 孫策様は南海覇王を手に単身で敵兵を次々と仕留めて行く。彼女の 実力は俺を上回る実力で、中佐でさえ模擬戦で引き分けに終わった 程だ。 彼女の周囲には瞬く間に死体で埋め尽くされ、彼女の身体も返り血 で浴びせられている。 ﹁進めぇ‼孫呉の誇りを愚者共に見せつけろ‼外道共の血で殺され た民に贖わせてやれ‼﹂ 孫権様も未熟ながらも敵を駆逐する。彼女の実力は本音をいえばま だまだ甘い。鍛えられているから、袁紹軍兵士程度の実力なら負け ることはないだろうが、中佐と少佐がいずれ直させるといっていた。 ﹁鈴の音は・・・・・・黄泉路への誘いと思え‼﹂ 鈴の甘寧の実力は伊達ではないようだ。彼女から発せられる戦場に 487 は不釣り合いの透き通るように美しい鈴の音は、聞き入れてしまう 鈴音 は閃光を描きながら、敵に痛みを感じさせる時 がそれは敵の死を意味していた。 彼女の得物 間も与えず、時間差で次々と敵の首が地面に落ちていった。 孫呉の重鎮3人が縦横無尽で駆け巡る中、孫呉海兵隊の兵士達も連 携をとりながら、敵を仕留めて行く。 それは4人の大隊長も一緒だった。 ﹁なっ⁉か・・・身体が動かねえ⁉﹂ 翡翠杖 に氣を溜め込み、それを地面に突きつけ、音 ﹁悪いね・・・・・・だけど容赦はしないよ﹂ 千里は錫杖 を鳴らすと敵兵は剣を構えた姿勢から動くことが出来なかった。 海兵隊大隊長の中で一番弱そうに見えるが、それは誤りだ。 孫呉に所属している軍師には共通点があり、軍師としてだけではな く武将としても優秀だということだ。周瑜様や陸遜も外見からは想 像もつかない程に強い。千里もまさしくそれだ。 動けなくなった敵を翡翠杖で敵を次々と倒していき、時間が経つと 死体は音を立てて崩れ落ちた。 ﹁くそっ⁉強すぎる・・・おっ‼ガキがいるぞ‼﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ 鬼蹂双鉞 を構えたまま、動かない美花を斬り ﹁へへっ‼ガキだからって容赦しねぇ・・・﹂ 袁紹軍兵士が双鉞 捨てようとするがそれは叶わないことになる。 488 ﹁・・・・・・・・・なにかいった?﹂ 美花は素早く一回転して鬼蹂双鉞を構え直した。そこに残されてい たのは上半身が無くなった敵の下半身だけだ。 ﹁ひぃ⁉﹂ ﹁・・・・・・地獄に落ちろ﹂ 敵が逃げ出そうとした瞬間に彼女は舞い上がり、小柄特有の素早さ に彼女の見掛けによらない怪力と身体能力で敵は返り血を吹き出し て行く。 ﹁に・・・・・・逃げろぉ⁉﹂ 牙門旗狩り を片手で操り、その剛腕で敵を跡形もなく薙ぎ払う。 の異名を持つ優龍も総重量が60kg以上もある大 ﹁逃しはせん‼堅実にして闘い、勝つ‼﹂ 地破豪斧 斧 を使いこなせる 頭に受ければ木っ端微塵に砕け散り、振り下ろされたら身体そのも のが砕け散る。 ﹁なっ⁉け・・・・・・剣が浮いてやがる⁉﹂ ﹁よ・・・妖術使いだぁ⁉﹂ 飛翔剣 ﹁我が剣技‼破れるなら破ってみせろ‼﹂ 孫呉・・・・・・否。漢で唯一とされる 百合は自由自在に宙に浮く剣の陣形を変えながら敵を切り裂いて行 く。 飛翔剣は合計6本使用することで真価を発揮して、右手で片手剣を 操り、左手の指全てに特殊な糸で繋いだ剣を結びつけ、そこに氣を 489 飛竜 で様々な剣技で敵を仕留めていく。 流し込むことで自由自在に陣形を変えれる。 百合は飛翔剣 孫呉海兵隊員達も弱い相手だからと油断せずに連携で敵を確実に仕 留めていき、やがて敵は逃亡。もしくは降伏してきたが俺は奴等を 許す訳にはいかない。 降伏してきた敵にも容赦なく斬り捨て、周辺を制圧すると確認した 武器や兵糧を燃やす。 ﹁レオン‼作戦成功だ‼﹂ ﹁よし‼赤の信号弾を撃て‼﹂ ﹁分かった‼﹂ ﹁孫策様‼第2段階に移行します‼﹂ ﹁えぇえ∼‼まだ暴れ足りないわよ‼﹂ ﹁曹操軍のところに行けばまだ暴れられますから‼﹂ ﹁そういうことなら早く行きましょ♪﹂ 孫策様に第2段階と伝え、迫撃砲部隊に無線で指示を下すと、赤色 の信号弾が打ち上げられた。中佐達と一刀君達も作戦成功のようで、 少ししてから信号弾が打ち上げられた。 そして俺達は敵の増援が来る前に、曹操軍と共に挟撃をしかけるべ く、中央戦線へと向かった・・・・・・。 490 第69話:烈火の一撃︵後書き︶ 中央戦線でも戦闘が行なわれていた。曹操、夏侯惇、夏侯淵も武を 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 見せつける中、魏武の龍の異名を持つ牙刀も赤龍偃月刀を振るう。 次回 [龍と死神] 戦場に赤い閃光が走る。 491 第70話番外編:呉のハロウィン︵前書き︶ ハロウィンということで、番外編をお届け致します。 492 第70話番外編:呉のハロウィン ト といいながらお菓子を貰いに回る祭典で 10月31日、ハロウィン。子供達がお化けの仮装をして家に リック・オア・トリート ある。 この時代でこの国には存在する訳が無いのだが、建業城城内では・・ ・・・・。 ﹃トリック・オア・トリート‼﹄ ﹁はい、お菓子だよ﹂ 建業に暮らす子供達がお菓子をもらい回っていた。俺も手作りパン プキンクッキーを5つ入れた袋をやってきた子供達に配る。 なぜ城内でハロウィンをしているかというと、一週間前に遡る。大 孤児院に暮ら ということらしい。 の子供好きで知られる優龍が執務室にやって来て、 す子供達の為に何か出来ないか ちょうどそこに南瓜を持ってやって来た雪蓮殿がやって来て、時期 を思い出してハロウィンを提案したのだ。 子供達の為にしてあげるということで全員賛同してくれた。約一名 を除いてだが。その一名はというと・・・・・・。 ﹁お・・・お化けが一杯・・・・・・お化けが・・・・・・・・・ ととさまかかさま・・・こ・・・怖いよぅ﹂ お化けが大の苦手である百合は布団に蹲って、虎のぬいぐるみを抱 きしめながら震えていた。俺は仮装として12騎士団の格好で配っ ていると、執務室の扉が再び開けられた。 493 ﹁精がでるな﹂ ﹁これは祭殿・・・それに美花もか﹂ 入って来たのは特殊メイクを施したゾンビ姿の祭殿に相変わらず恥 ずかしそうに、祭殿の後ろに隠れている熊の着ぐるみを着た美花だ。 なんというか二人とも違和感が無い。はたから見たら本当の親子に 見える。 ﹁見回りですか?﹂ ﹁そうじゃ。せっかくじゃから見て回ろうかと思うてな﹂ ﹁まさか祭殿も菓子目当てで・・・?﹂ ﹁そんなことはせんわい。しかし・・・ほれ♪﹂ ﹁・・・と・・・・・・とりっく・・・お、おあ・・・・・・とり ー・・・とぅ﹂ 美花は恥ずかしそうにしながらも俯きながら両手を前に出してトリ ック・オア・トリートという。 見ていると本当に小動物に思える可愛らしさだ。俺は躊躇なく彼女 の手にクッキーを置いた。 ﹁はい、後てゆっくり食べな♪﹂ ﹁︵コクリコクリ︶﹂ 頷いて礼をすると、誰かが飛び込んで来た。 ﹁ラ∼イル様ぁ∼‼﹂ ﹁ラ∼イル♪﹂ ﹁兄様なのじゃ♪﹂ ﹁はぅあ・・・﹂ 494 元気娘三人衆の明命、シャオ殿、美羽に加えて亞莎が飛び込んで来 た。もちろん仮装をしてだ。 明命は雛里の服装を藍色から白と黄色に変えて、更に猫耳+尻尾+ 肉球手足を付けた魔法猫少女。 シャオ殿はやはりというべきか、黒一色の衣装で手に模造品の鎌を 持った小悪魔。 美羽も予想通りに蜂だった。蜂の被り物に蜂の尻尾の部分。背中に 羽を付けた蜂コスチュームだ。 活発トリオの後ろには恥ずかしそうに袖で照れ隠しをしている執事 服を着た亞莎。以外過ぎてかなり似合っている。 ﹁兄様ぁ∼♪妾達は似合っておるかえ?﹂ ﹁ああ、可愛い蜂だ﹂ ﹁にょほほ∼♪もっと褒めてたも♪﹂ ﹁明命もシャオもよく似合ってるよ。可愛らしい猫と悪魔だな﹂ ﹁ニャ♪ニャニャニャ♪なんちゃって♪﹂ ﹁やっぱり♪シャオってやっぱりなに来ても可愛いよね♪﹂ ﹁あ・・・あのぅ・・・・・・﹂ ﹁亞莎も似合ってるよ、いつもの服装もいいけど、執事服も可愛い﹂ そういうと再び亞莎は顔を赤く染めて袖で顔を隠す。どこか調子で も悪いのだろうか? そう思いながら祭殿に視線を送ると、なにやら呆れた表情でため息 を吐いていた。 ﹁あのぅ・・・ライル様﹂ ﹁なんだ?﹂ ﹁えっと・・・・・・ト・・・トリック・オア・トリートです﹂ ﹁あ∼⁉亞莎だけずる∼い‼﹂ 495 ﹁兄様‼妾も鳥食うあ鳥井戸なのじゃ‼﹂ ﹁ええっと・・・美羽ちゃん。それをいうならトリック・オア・ト リートです﹂ ﹁大丈夫だ。来ると思ってみんなのクッキーも焼いてあるから﹂ そういいながら机の中に閉まってあった袋を取り出した。 これは彼女達の好みに合わせて材料を変えたもので、明命には同じ マタタビの一種であるキウイフルーツを使ったキウイクッキー。 美羽は言わずもがなでハチミツペーストを練り込んだハチミツクッ キー。 シャオには桃の果肉を練り込んだ桃クッキー。 亞莎には表面にゴマをふんだんにまぶしたセサミクッキー。 ﹁なんじゃ、儂は除け者なのか?﹂ ﹁祭殿にもちゃんと用意していますよ。ほら﹂ 祭殿にはリンゴと干しぶどうを練り込んだジュエルクッキーを渡す。 本来ならクリスマス用のクッキーだが、まあ問題はないだろう。 ﹁すまぬのぅ、催促したようじゃ﹂ 催促しただろう。 ﹁それよりも策殿達はまだ来てはおらぬのか?﹂ ﹁えぇ、優龍と千里は菓子作りに行ってますが、雪蓮殿達は﹁ライ ル様ぁ﹂来たようです・・・・・・⁉﹂ 間延びした口調で入って来た穏の格好に思わず膠着してしまう。何 しろ格好が牛を思わせるのだろうが、牛柄のビキニを見に付けて頭 に牛の角に腰には尻尾という何とも大胆極まりない格好だから。 496 ﹁ふむ、やはり予想通りの反応だな﹂ 次に入って来たのが冥琳殿だ。彼女は真逆で大胆ではない。だが黒 を主体としたロングコートに黒のズボン、黒のロングブーツ。更に は首にロザリオを付けている。悪魔祓いで有名なエクソシストだ。 いつもは天女の様な服装で、恐らくは呉で一番の美貌を誇る彼女だ。 その神々しい雰囲気に加えてあまりにも似合いすぎる服装で見惚れ てしまった。 ﹁どうだライル、お前達の世界の退魔士の服装だが、おかしくはな いか?﹂ ﹁いっ・・・・・・いえ・・・その・・・よ・・・よく似合ってい ます・・・﹂ ﹁そうか、しかしお前はなぜ顔を赤くしているのだ?﹂ ﹁それは・・・﹂ ﹁ライルさぁ∼ん、私も似合ってますかぁ?﹂ ﹁あぁ・・・似合い過ぎる位に似合ってるよ﹂ ﹁えへへぇ∼♪﹂ ﹁ところでライル。皆には甘味があって私たちにはよもや無いとい うのはないだろうな?﹂ ﹁ありますが・・・﹂ ﹁あぁ、そうだったな・・・・・・トリック・オア・トリート﹂ ﹁はぅあ∼・・・トリック・オア・トリートですぅ﹂ 流石は大軍師だ。発音も完璧で話せている。そうしながら穏にはミ ルククッキー。 大のお茶好きである冥琳殿には抹茶を練り込んだ抹茶クッキーを渡 す。 497 ﹁すまないなライル﹂ ﹁結構ですよ。それより雪蓮殿の姿が無いのですが・・・﹂ ﹁ああ、あの子なら﹁ラ∼イ∼ル♪﹂来たようだな﹂ ちょうど話題の人物がやって来て、扉が勢いよく開けられた。 ﹁雪蓮殿、お待ちしていまし・・・たぁ⁉﹂ 俺は少し座っていたので、部屋に入ってきた雪蓮殿を見て思わず後 ろに倒れこんでしまう。 何しろ穏以上に大胆極まりないビキニにミニスカート、フリルが付 いた手袋とハイヒール、背中に悪魔の翼、更に口には牙。 つまり彼女のコスチュームはヴァンパイアだ。しかも似合い過ぎて いる上に本当に刺激的すぎる格好だ。 ﹁ねえねえライル‼どうっ⁉似合ってる⁉﹂ 雪蓮殿はそういいながら前屈みになって似合うか否かと問い詰めて 来る。しかも豊満な胸の谷間が視線に飛び込んで来て、恥ずかしい あまり俺は視線をそらす。 ﹁えっ・・・ええ・・・・・・とても﹂ ﹁むふふっ♪照れちゃって・・・ライル可愛い♪﹂ ﹁・・・・・・いきなりトリックですか?﹂ お ﹁ねえ、ところでトリック・オア・トリートってどういう意味なの ?﹂ ﹁・・・・・・今更ですか?﹂ ﹁うん♪﹂ ﹁はぁ・・・・・・トリックが悪戯という意味で、要約すれば 498 菓子をくれなきゃ悪戯するぞ です﹂ ﹁へえ∼・・・・・・︵ニヤリ︶﹂ ﹁それより雪蓮殿。クッキーが欲しかったら合言葉を・・・・・・﹂ ﹁分かってるわ・・・・・・・・・﹂ なんだか嫌な予感しかしない。 ﹁トリック・オア・・・・・・・ライル‼﹂ ﹁・・・・・・・・・はい?﹂ と言った。 トリック・オ ﹁だ∼か∼ら∼♪ライルをくれなきゃ悪戯しちゃうわよ∼♪﹂ だって俺⁉ トリック・オア・ライル 俺は頭で今の言葉を理解しようとする。いま確かに ならぬ 俺をくれなきゃ悪戯するぞ ア・トリート 意味は ﹁ちょ⁉雪蓮殿⁉お・・・俺を貰ってなにするつもりですか⁉﹂ ﹁そんなの決まってるじゃない♪。あっ‼逆でもいいんよ♪ライル が私を貰ってくれても♪﹂ ﹁・・・・・・じゃああげなきゃどうするんですか?﹂ ﹁むふふっ♪・・・・・・じゅる♪﹂ なんだか様子がおかしい。条件反射で俺は飛び上がって窓に足を掛 けるとそのまま飛び降りた。3階からだ。 ﹁あーっ‼待ちなさーいライル‼大人しく私に貰われなさーい‼﹂ そういいながら雪蓮殿も俺を追い掛けて飛び降りる。その状況に冥 琳殿や祭殿達は呆気にとられていた。 一方その頃、孫権殿の私室では・・・・・・。 499 ﹁蓮華様、もはや覚悟を決められたほうがよろしいのでは?﹂ ﹁嫌‼こんな格好で行ったら死んじゃうわよ‼﹂ ﹁私も一緒に行きますから﹂ ﹁絶対に嫌ぁーー‼﹂ 水色のメイド服に髪を下ろした甘寧に覚悟を決めると言われながら、 恥ずかしいあまり部屋から出たくないバニーガールの衣装を着た孫 権殿の姿があった・・・・・・・・・。 500 第70話番外編:呉のハロウィン︵後書き︶ 次回は本編に戻ります。 501 第71話:龍と死神︵前書き︶ 魏武の龍。戦場を駆け巡る。 502 第71話:龍と死神 あの男の策が成ったようだ。白馬と延津から放たれた怪しげな赤い 光。信号弾と呼ばれる天軍の合図に使われる兵器らしいが、私から みればまるで血だ。 現に白馬と延津からやって来た袁紹の兵は次々と我が軍と奴の派遣 した副官が率いる100人ほどの兵の前に倒されて行く。 ﹁皆のもの‼今は耐え凌げ‼さすれば勝機は我らのものとなる‼﹂ ﹁袁紹のような雑兵共に怯むな‼我ら魏武を見せつけろ‼﹂ を手に次々と敵の首を刎ね上げ、 で敵を斬り伏せ、夏侯淵将軍も弓 絶 ﹁弓兵は気を付けろ‼間もなくで味方が敵の背後に現れる‼誤射は するな‼﹂ 最前線では曹操殿自らが大鎌 七星餓狼 で2人を援護。 夏侯惇将軍が大剣 餓狼弓 あらゆる面で袁紹軍を大きく上回る我が軍の将兵達もそれに鼓舞さ れて、敵を飲み込んでいった。 しかし私も武人として負けてはいられない。手に赤龍偃月刀を持ち、 公明の武‼止められるものがいるならば止めてみせよ‼﹂ 武を振るう。 ﹁この徐 向かって来る袁紹軍兵士を舞い踊るように仕留める。敵の実力はお 世辞にもよくない。 我が軍と比べても天と地ほどの差があり、奴等はただがむしゃらに 突っ込んで来ているだけだ。後は敵を壊滅させ、官渡城に撤退する 503 だけだ。しかし流石に数が多い。 ﹁ええい‼曹操なぞの輩に敗北など許さん‼囲んで血祭りにしやが れ‼﹂ 血迷ったのか、敵の将は撤退どころか抗戦維持を指示する。はっき り言って愚策としかいいようがない。戦では6つの危険な地形があ る。 四方を崖に囲まれた場所、天井。 牢のように三方を囲まれた穴倉、天コウ。 草木が密集して足をとられ易い場所、天離。 両側が崖で前方が細い場所、天ゲキ。 崩れ落ちそうな天然の落し穴、天ショウ。 絶燗に天井、天コウ、天離、天ショ 切り立った崖に挟まれた谷間、絶燗。 孫子兵法第6章行軍編の一説 だ。 ウ、天ゲキに遇わば、必ず速やかにこれを去りて、近づくことなか れ 6つの地形があれば、可能な限り避け、不可の場合は斥候を出して 徹底的に調べる。 逆にこちらが敵を追い込んだり誘い込むならば徹底的に利用する。 周辺の地形は切り立った崖が囲んでいる絶燗だ。加えて敵はこちら の策に全く気がついておらず、そんな状態で突き進もうとすると・・ ・・・・。 ﹁報告‼袁紹軍の後方に劉備軍と孫策軍‼奴らの背後を取りました ‼﹂ 504 白馬と延津を攻撃した両軍に回り込まれ、退路を遮断されてしまう。 ﹁あい分かった‼敵は袋の鼠だ‼このまま一気に締め上げ、奴等を 封殺しろ‼﹂ ﹃応っ‼﹄ 私の指示で配下の兵達も得物を手に前進していく。赤龍偃月刀で1 人、また1人と向かって来る敵を斬り捨てる。 ﹁頑張ってるじゃねえか徐晃殿‼﹂ 私の前には先に前進していたと思われるライル殿の副将であるアレ ックス殿がいた。 既にこの男も多数の敵を斬り捨てたようであり、曹操殿と同じ大鎌 と奴の衣服には返り血がこびりついていた。 私は奴の隣に並び、赤龍偃月刀を構え直す。 ﹁貴公も中々の武人とお見受けする、いつかは手合わせを願いたい ものだ﹂ ﹁ほう、気が合うじゃねえか。俺もあんたと闘ってみたいと思って たところだぜ‼﹂ そういいながら斬りかかって来た袁紹兵の身体を一刀両断にして、 アレックス殿は反対側にいた敵の首を刎ねた。 ﹁だが今はお預け願いたい。されどもいつかは果たしたい﹂ ﹁いいぜ‼このまま一気に敵を壊滅させる‼﹂ ﹁ふっ・・・ならば私も更に猛るとしよう‼﹂ 私とアレックス殿は同時に敵へ斬り掛かる。曹操殿達も今が絶好の 505 好機と判断したのか、攻勢に出たようで、可能な限り広がって敵を 封殺していく。 ﹁くっ⁉何時の間に回り込まれた⁉﹂ ﹁そこの者‼袁紹の将と見受けする‼﹂ 敵の将と思われる兵に赤龍偃月刀の切っ先を向け、気迫を飛ばす。 目の前の将は槍を構えるが完全に怯んでいるようだ。 ﹁我が名は魏王、曹操殿が配下‼魏軍が武将の徐晃‼貴殿の名はい かがか⁉﹂ ﹁ふっ・・・ふん‼曹操の小童の飼い犬が⁉あんな小娘如きの将な どこのわし田豊の敵ではないわぃ‼﹂ 田豊と名乗る将はそういうと槍を前に突っ込んで来るがあまりにも 見え透いていた。構え方も雑で、目線も定まっていない。しかも至 る所が隙だらけ。 このような愚か者に時間を掛ける必要はないが、腐っても相手は武 人。ならば武には武で返すのが礼儀だ。 私は偃月刀を高く構え、目を瞑って精神を集中させる。 ﹁血迷ったか⁉ならばそのままくたばれ‼﹂ 槍が私の身体を貫こうとした直前、動きを見切った私は身体を逸ら して避け、隙だらけである此奴の首目掛けて赤龍偃月刀を構える。 ﹁せめての手向け‼全ての武と力を持って討ち取らせて頂く‼﹂ そういいながら私は渾身の力を込めて振るい、田豊の首は宙を舞う。 506 首を失った身体は音を大きく立てて地面に崩れ落ちる。 公明が討ち取り申した‼﹂ 宙を舞っていた首はそのまま落ちて来て、髪を掴むと天高く掲げた。 ﹁敵将田豊‼この徐 一騎打ちの勝利を宣言すると、周囲から味方の歓声が挙がり、反対 に袁紹軍兵士は自分達の将が討たれたと知り、士気が下がったよう だ。 ﹁敵は怯んだ‼このまま勢いに流れ込め‼﹂ ﹃応っ‼﹄ そのまま一気に私達は攻勢に出るが、勝敗は暫くしてから付いた。 退路を断たれた袁紹軍は呆気なく壊滅。こちらの損害は非常に少な い。 我等の圧倒的勝利だ。私は策を講じたライル殿に感心するが、同時 に脅威を抱く。今は味方であるが、敵になると考えたら間違いなく 最大の脅威となるだろう。 我等は悠々と官渡城へと凱旋した・・・・・・・・・。 507 第71話:龍と死神︵後書き︶ 海兵隊の誇り,Re は反 官渡での前哨戦は連合軍の圧勝に終わった。しかし数で勝る袁紹軍 は人海戦術で官渡を包囲した。 袁紹の無謀ともいえる愚策に袁紹軍の中で稀な良心を持つ張 真・恋姫無双 論するが・・・・・・。 次回 [邪心の中の良心] 愚者は歯止めを知らない。 第2回キャラクター投票、結果発表 第1位:思春 性格的にも軍人としての資質満載 第2位:華琳 軍服を着て手に鞭、ナチスの軍服が最も似合いそう‼ 第3位:焔耶 厳しいだろうがどこか抜けている印象がマッチ‼ 前回と比べてかなりサッパリとしていますが、ランキングは以上に なります。 投稿理由に関しましては私が印象に残ったものを選ばせて頂きまし た。投票された皆様には感謝の言葉を送らせて頂くと同時に、第3 回キャラクター投票を実施いたしておりますことをお知らせ致しま す。 508 第72話:邪心の中の良心︵前書き︶ 保身しか考えていない袁紹に、1人の良心が物申す。 509 第72話:邪心の中の良心 官渡の戦いに置ける序盤戦は二手も三手も先を読んだライルの策で、 連合の圧勝に終わった。だが白馬と延津に展開していた袁紹軍の戦 力はほんの微弱程度で、連合の総戦力の約6倍を誇る袁紹軍は戦線 拡大を実施。官渡の周辺に展開していた。 開戦から10日後、袁紹は決戦に備えて原武城に駐留しており、そ こに曹操軍の部隊が攻撃を仕掛けて来たが、ろくに戦闘をせずに曹 操軍が撤退していく。そのことを袁紹は原武城の城壁から眺めてい た。 ﹁おーほほほほほ‼今日も私の軍の圧倒ですわね‼﹂ 帝 なのですから、あ ﹁流石は袁紹様です。見事なまでに素晴らしい策でしたな‼﹂ ﹁当然ですわ‼なにしろこの私はこの国の んなクルクル小娘と野蛮人に点の御遣いだなどとほざいてるブ男に 負ける筈がありませんことでしてよ逢紀さん﹂ 袁紹軍参謀である逢紀のお世辞に、袁紹は聞くだけで腹が立って来 る高笑いをする。 正史ではそこそこ有能な人物とされていたらしいが、この世界の逢 楽をする 為である。 紀は袁紹と同じく無能で、自分の保身や私利私欲しか考えていない。 奴が仕えている理由は単純に 2人が話をしていると城壁にまた誰かが歩いて来た。長い髪を三つ 編みにして袁紹軍軽歩兵の派手で仕方がない金色の武具、背中には 弩と矢筒を背負った女性だ。 510 ﹁袁紹様﹂ ﹁あら?張 儁乂に袁紹は一旦高笑いをやめた。 さん、どうかしましたの?﹂ 袁紹軍武将の1人である張 よ、まだ言っておるのか⁉その話は既に終わったではないか ﹁袁紹様、昨日に話させて頂いた包囲網の件なのですが・・・﹂ ﹁張 ‼﹂ ﹁しかし⁉いくらわが軍が数で勝っているとはいえ、いくらなんで も兵力の分散が過ぎます‼しかも大半が士気が低い新兵では攻勢の は戦線の状況に不満を持ち、袁紹に直訴する。 際に尋常ならざる被害が出ます‼﹂ 張 袁紹軍兵士が漢の中で弱い1番の理由は袁紹本人にあるが、それと は別に過度な徴兵制により集めた訓練日数が足りない新兵に、訓練 法が定まっていない無駄な訓練。 せ 間違った戦術に生命線となる補給路の欠如など、戦争における戦術 の はそのことを危惧しており、大攻勢にしろ包囲にしろ、ベテラ の字が無いどころか、文字そのものが無いといった感じだ。 張 ンの部隊を少しでも配備したいという話だが、袁紹は実戦経験があ る兵を全て自分の身の回りにだけ配備している。 文醜顔良が劉備軍に捕らえられて以来、袁紹軍という邪心の中で唯 一の良心の持ち主である彼女は兵が無駄に死んで行くことに我慢出 来なかったのだ。 しかし当の袁紹は理解できない表情をしながら返答してきた。 511 ﹁あなたも分からず屋ですわね、数で勝ってるのですから、充分で はありませんの﹂ ﹁ならばせめて兵糧の配給を‼これでは前戦の兵士達が飢えで、動 けなくなります‼﹂ ﹁別によいではないか﹂ ﹁逢紀‼貴様は兵を何だと思っているのだ⁉﹂ ﹁兵士など単なる捨て駒でしかないではないか。足りなくなったら また民を徴兵すればいいだけのこと﹂ ﹁そうですわ。民なんて湧いて出てくる蟻みたいなもの。そんな輩 は私に只々従えばいいですのよ﹂ に対 ﹁正気ですか⁉民あっての国なのに、民がいなければ国が成り立た ないのですよ⁉﹂ 民のことを一切考えていない袁紹に対してもなお反論する張 して苛立ち始める袁紹。目線で近くにいた衛兵に命令すると、張 の両腕を掴んで連行していく。 ゴミ を連れて行きなさいな‼﹂ さん、私の命令を聞けないのでしたら我が軍に必要ではあり ﹁なんのつもりだ⁉離せ⁉離さないか‼﹂ ﹁張 ませんわ‼衛兵‼その ﹁﹁御意‼﹂﹂ 下品 な 生ゴミ ですわね、ひとまずは私 ﹁くっ⁉このクソッタレの大馬鹿野郎が‼袁紹‼裏切るのか⁉﹂ ﹁あらあら、随分と のいる場所が生臭くなっては溜まりませんから、烏巣にでも連れて 行きなさいな﹂ に袁紹への忠誠心は微塵も存在しない。連行されながら ﹁くそっ⁉覚えてやがれ袁紹⁉必ずぶっ殺してやる‼﹂ もはや張 も抵抗する彼女を衛兵は殴り、そのまま烏巣へと連れて行く。 512 の後を追跡する劉備軍細作、 しかしこの判断が後に誤りだとなる。この一部始終を城壁の影から 見ていた曹操軍の細作と連行される張 上空から全てを偵察していたRQ−11Bレイヴンによって全てが 筒抜けであるから・・・・・・。 513 第72話:邪心の中の良心︵後書き︶ 官渡の戦いは膠着状態に陥った。兵力は少ないが練度が高い連合軍 と数は多いが雑兵揃いの袁紹軍。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 互いが牽制しあう中、連合軍に情報が齎された。 次回 [賢者と愚者の違い] 互いの違いが一目瞭然。 514 第73話:賢者と愚者の違い︵前書き︶ 数で劣る連合軍に、情報が齎される。 515 第73話:賢者と愚者の違い 膠着状態に陥った官渡。序盤戦における夜戦で圧勝した連合軍は官 渡城に包囲されている寸前であり、周辺には袁紹軍。 しかも井闌︵攻城の際に用いられる櫓︶、衝車などの攻城兵器が配 備されており、攻撃準備が出来ているように見えるが、依然として そんな様子はない。 俺は偵察チームが送信したレイヴンからの情報をプリントアウトし て、軍議に出席した。 ﹁状況を確認するわね﹂ 連合軍総大将である曹操が仕切る。軍議には俺とアレックスと雪蓮 殿、冥琳殿、一刀、詠、愛紗、徐晃殿の他に銀髪を三つ編みにして 身体中に傷跡がある目力が鋭い少女がいる。 ﹁知っていると思うけど、私達は袁紹に包囲されそうな状態よ。周 辺には大軍勢で攻城兵器も見えてる﹂ ﹁しかし包囲網そのものは完全ではないみたいね。官渡城東側に展 開するのが遅いようだし、なにしてるのかしら?﹂ ﹁あの馬鹿の考えなど分かる訳がなかろう。馬鹿なのだからな﹂ ﹁確かに馬鹿だからなね﹂ ﹁馬鹿に聞く薬って昔から言うけど、あったとしてもあの馬鹿には 効かないでしょうね﹂ 馬鹿という単語を連呼する。まあ、事実だから仕方がないが何処か らかクシャミが聞こえた気がしたが気のせいだろう。 516 ﹁曹操殿、よろしいでしょうか?﹂ ﹁あら、なにかしら?﹂ ﹁これをご覧頂きたい。我々の偵察隊が入手した情報です﹂ そういうと脇に挟んでいたファイルを広げ、レイヴンが撮影した航 空写真を見せる。 ﹁これは・・・・・・絵か?﹂ ﹁凄いわね・・・どうやって描いたのかしら?﹂ ﹁これは写真と申します。まあ・・・・・・すみませんが説明は省 かせて頂きます。こちらをご覧ください﹂ 指差したのはいざこざがある写真。そこには何かを指示している袁 紹と側近らしき男、加えて衛兵に連行されていく女性だ。 ﹁何かを言い争った様子に見えるが・・・・・・﹂ ﹁しかも感じ的にも袁紹に反発して、それを奴が気に食わなかった から当人を連行したと推測できます。流石に誰なのかまでは解りま せんが・・・・・・荀彧さん﹂ ﹁ちょっとなによ?﹂ ﹁君なら誰か分かるんじゃないか?・・・・・・なあ、一刀﹂ ﹁ええ。ライルさん﹂ 二人は確信を持っているが、なにを言っているか彼女達は分からな い。 ﹁ご主人様、いったい何を言っているのですか?﹂ ﹁そうよライル∼。私達にも分かるように説明しなさい﹂ ﹁そうね、私にも分からないんだからなんか気に食わないわね。は っきりさせなさい﹂ 517 ﹁これは失礼しました。なら単刀直入に・・・・・・荀彧さんは曹 ﹂﹂﹂﹂ 操殿に仕える以前は袁紹軍にいた筈﹂ ﹁﹁﹁﹁‼‼ ﹁加えて黄巾の乱辺りだったね?当初は袁紹の軍師ではなく只の侍 女として仕え、不遇とされてたけど曹操の噂を聞いて抜け出した・・ ・・・・違うかい?﹂ ﹁ちょっとあんた達⁉何処でそれを知ったのよ⁉﹂ ﹁それは・・・・・・秘密だよ﹂ ﹁Yeah﹂ ﹁白状しなさいよ‼全身精液製造男‼﹂ ﹁﹁なに言ってるんだ?﹂﹂ ﹁桂花、その辺にしておきなさい﹂ ﹁す・・・・・・すみません﹂ ﹁さすがライルと一刀ね♪﹂ ﹁天界から来たというのは伊達では無い・・・・・・そういうとこ ろか﹂ そう言われると少し照れ臭くなる。しかしこれだけ判ったとしても 戦局の打開などには繋がらない。そう考えていると扉が開けられた。 ﹁軍議中に失礼致します。程昱様と劉備軍の張遼様が来られており ます﹂ ﹁霞が?﹂ ﹁ご苦労、通しなさい﹂ ﹁御意。・・・・・・こちらへ﹂ 見張りの兵がそういうと、後ろから霞と曹操軍の軍師らしき少女が 入って来た。金髪のロングヘアに西洋風ドレスらしき服装を着て、 頭に妙な人形を置いた不思議な雰囲気を醸し出す少女だ。 518 ﹁霞、なにかあったの?﹂ ﹁すまんなぁ、軍議中に来てもうて・・・袁紹んとこに行っとった 細作が戻ってきよったんや﹂ ﹁風も同じですー、華琳様﹂ ﹁そう・・・・・・紹介しておくわね北郷、ライル。この子は私の ところで軍師をしてる程昱よ﹂ ﹁程昱ですー﹂ 不思議少女 であり、しかも頭の人形が ﹁んで俺が宝ケイってんだ。よろしくな兄ちゃん達﹂ 彼女の雰囲気はまさしく 喋ったように見えたが、どう考えても腹話術。 ﹁お兄さん達が噂の天の御遣いさんと天の軍隊さんですか?﹂ 一刀だよ。それで程昱ちゃん・・・・・・﹂ ﹁そうだ。孫呉海兵隊指揮官のライル・L・ブレイドだ﹂ ﹁俺は北郷 ﹁はい?﹂ ﹁なんで俺の背中に乗ってるのかな?﹂ 何時の間にか程昱は一刀の背中に乗っていた。というか、本当に何 時の間に・・・・・・。 ﹁はいー、お兄さんの背中が何だかポカポカしてそうだったのでつ いー﹂ ﹁ポカポカしてそうって・・・・・・俺は太陽かなにかか?﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁なんやぁ∼愛紗、特等席取られて残念やなぁ∼♪﹂ ﹁なっ⁉なにを言っている⁉た・・・確かに羨ましい・・・じゃな い⁉いや・・・その・・・・・・﹂ ﹁ねえねえライル∼♪私もおんぶして∼♪﹂ ﹁なっ⁉﹂ 519 ﹁あなた達・・・・・・話を戻してもいいかしら?﹂ 曹操殿が呆れながらも話を戻して来た。 ﹁それで風︵ふう/程昱の真名︶、報告しに来たのでしょ?﹂ ﹁はいー。実は袁紹さんと袁紹軍の将みたいな女の人が揉めていた みたいで、袁紹さんはその人を連行させたみたいなのです﹂ というらしいです﹂ ﹁その将の名前は?﹂ ﹁なんでも張 ﹁桂花、知ってる?﹂ ﹁はっ・・・・・・はい。文醜と顔良の二枚看板に次ぐ良将で、袁 のことやねん。何でも袁紹の 紹に味方する武将の中では民や兵を思う武将です﹂ ﹁なんやぁ奇遇やな、うちもその張 といえば曹操軍でも優秀な将だ。し ボケに反発しよったみたいで、烏巣に連れてかれよったみたいやね ん﹂ 二人からの報告で考える。張 かも連行された先が烏巣・・・・・・。 ﹁・・・曹操殿﹂ ﹁どうかしたのかしら?﹂ ﹁私の作戦を聞いてみたくなりませんか?﹂ ﹁いいわ。聞かせて﹂ ﹁我等が入手した情報に、兵糧の大半がその烏巣に集まっている。 しかもそこに袁紹に歯向かった将がいる。更に包囲網は東側が遅れ ている・・・・・・﹂ ﹁なるほど・・・烏巣を攻めるのね?﹂ 詠が察したようであり、俺も頷く。 520 ﹁確かに有効な策です。しかも袁紹軍の兵達はかなりの空腹らしい ですから、烏巣が落ちれば士気も落ちるはずですよー﹂ ﹁うむ、しかしライルがいたら私達軍師の出番が無いな﹂ ﹁そんなことはありません。頭脳の優秀さなら冥琳殿達が・・・﹂ ﹁確かに烏巣を攻めたら確かに士気が激減するでしょう。しかも、 軟禁されている将を救いだせれば袁紹軍の中枢に関する情報も入る はず・・・・・・﹂ ﹁ならばライル、あなたに任せても構わないかしら?﹂ ﹁了解。ならば水先案内人を誰かお願いしてもよろしいでしょうか ?﹂ ﹁凪﹂ ﹁はい﹂ 文謙といいます﹂ ﹁そういえば紹介がまだだったわね。凪﹂ ﹁ライル殿、北郷殿。自分は楽 楽進とは・・・。 確かに彼女からは歴戦の猛者特有の雰囲気が醸し出されており、納 得の理由だ。 、孫策、周瑜に北郷 しかし本当にここには名高い武将や軍師が勢揃いしている。曹操に 徐晃、荀彧、程昱、楽進、関羽、張遼、賈 一刀。 対して袁紹にはもはや名高い将はいない。これが賢者と愚者の違い 文謙とはな・・・﹂ だろう。 ﹁楽進 ﹁⁉・・・なぜ自分の名を⁉﹂ ﹁気にするな。それよりも雪蓮殿も冥琳殿も許可頂けませんでしょ うか?﹂ ﹁構わないわ。ねえ冥琳?﹂ 521 ﹁ああ、構わない﹂ ﹁少数での潜入になります。ですのでそちらも水先案内人は多くて も3人くらいでお願いします﹂ ﹁分かったわ。いつから行ける?﹂ ﹁四半刻もあれば充分です﹂ ﹁・・・随分と速いわね?﹂ ﹁では、楽進殿も急いで準備を・・・﹂ ﹁分かりました﹂ そういうと俺と楽進は準備の為に軍議から外れる。 烏巣・・・・・・この官渡に置ける重要な局面に差し掛かろうとし ようとしていた。 522 の救出と兵糧の破壊。ライルは再びハンターキラー 第73話:賢者と愚者の違い︵後書き︶ 拘束された張 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re を出動させ、楽進達と共に向かう。 次回 [烏巣] 官渡での分岐点に差し掛かる。 523 第74話:烏巣︵前書き︶ 烏巣を攻撃。この戦いの戦局を左右する。 524 第74話:烏巣 連合軍に烏巣の情報が舞い込んだその日の深夜。あと2時間弱で日 が変わる時間帯だ。 俺は再び夜襲を仕掛ける為にハンターキラーを出動させ、暗くなっ たら官渡城の東城壁からラペリング降下。 水先案内人である楽進と、彼女の親友である于禁と李典と共に向か う。 その道中に敵の伏兵部隊を発見したが、サプレッサー付のHK41 6とHK417で迅速に排除。そして烏巣が一望出来る丘に到着す ると布陣して様子を伺う。 ﹁敵の数が他と比べても少ないな﹂ ﹁そのようですね。しかもかなり油断し切っている﹂ ﹁せやけどそれだけウチ等が楽出来るっちゅうことやな﹂ ﹁そうなのぉー﹂ 月明かりがあることに加えて烏巣周辺には松明が焚かれているので かなり明るい。 俺は双眼鏡を使って楽進、李典、于禁と共に偵察をする。 紫の髪で幼い顔立ちに身体だけ成長した関西弁を喋るメカニックの ように工具を装備しているのが李典。 反対側にいるオレンジの髪をサイドテールにして丸眼鏡、そばかす、 喋り方に特徴がある若干の現代風服装をしたのが于禁だ。 楽進はまだこの時代相応の格好だからいいが、2人の服装にいささ 525 か疑問点がある。 螺旋槍 と呼んで 特に李典の得物なのだが、外見は中世ヨーロッパの騎馬部隊が愛用 したランスだが、螺旋状になっている。彼女は いるが、どう考えてもドリルだろう。 この世界の違和感には慣れたつもりだったが、流石にこれはな・・・ ・・・。 ﹁ライル殿、どうかしましたか?﹂ ﹁いや・・・・・・ちょっと考え事をしててな・・・・・・それよ り楽進、君ならあの城をどう料理する?﹂ ﹁なんやぁ∼兄さん、凪︵なぎ/楽進の真名︶を逢引きに誘っとる んでっかいな?﹂ ﹁ブーブーなの‼沙和︵さわ/于禁の真名︶達にも美味しいもの奢 ってほしいの‼﹂ ﹁﹁なっ⁉・・・何を言ってる⁉﹂﹂ 2人の悪ふざけに対して俺と楽進は同時に同じセリフを言ってしま う。俺たちは恥ずかしくなって顔を赤く染め、2人は面白そうに笑 っていた。 ﹁・・・すみません・・・・・・ライル殿・・・お恥ずかしいとこ ろをお見せして・・・﹂ ﹁いや・・・俺の方こそ・・・・・・。それより・・・君達ならど うやってあの城を攻略する?﹂ 気を取り直し、再び烏巣を見る。 を救い出して、兵糧を破壊するのが常套かと・・・﹂ ﹁はい、幸いにも他と比べても兵の数が少ないです。見つからずに して張 526 ﹁俺と同じ考えだ。だがまずは城外と城壁にいる敵を排除する必要 がある﹂ 確かに脱出する際に城外に敵が残っていたら邪魔で仕方がない。加 えて戦場では高い場所からの攻撃は有効だ。スナイパーチームであ るハンター3を2つに分け、一つは丘の上に待機してM107A1 で遠距離狙撃。 もう一つは城門前に陣取り、近距離狙撃兼脱出路維持を行なう。 ﹁3人はここで待機していてくれ。俺達で外の獲物を仕留めて来る﹂ ﹁いくらなんでも数が多いのでは?﹂ ﹁大丈夫だ。こいつがある﹂ そういうとサプレッサーとM956フラッシュライト、フォアグリ ップ、AN/PEQ−15、エイムポイントT−1+マグニファイ アを装着させたHK416とM45を軽く叩く。 すると李典が妙に目を輝かせながら話しかけて来た。 ﹁なあなあ兄さん。ちょ∼とだけでええから分解・・・・・・やな い。触らせてぇ﹁ダメだ﹂ええ∼⁉﹂ ﹁ダメなものはダメだ﹂ ﹁ええ∼⁉いけずぅ∼‼﹂ ﹁こら真桜‼ライル殿を困らせるな‼﹂ 恐らく血が騒いだのだろう。しかしなんというか、楽進も苦労する なぁ・・・・・・。 ﹁よし、行動を開始する。ハンター3は狙撃位置に付け﹂ ﹁了解﹂ ﹁ハンター2は一緒に来い。狩を始めるぞ﹂ 527 ﹃了解﹄ ﹁3人もこいつ等と一緒にいてくれ。排除したら直ぐに南門で合流 だ﹂ ﹁分かりました﹂ ﹁了解や‼﹂ ﹁りょーかいなの‼﹂ ナイトメア の発動である・・・・・・。 そういうと全員が行動を開始する。烏巣夜襲作戦であるオペレーシ ョン 528 第74話:烏巣︵後書き︶ 内部に潜入するハンター1とハンター2。それに楽進達。ライル達 海兵隊の誇り,Re の救出に向かう。 が兵糧にC4を仕掛ける間にハンター2のダン、クラウド、ポー、 真・恋姫無双 レニーの4人は彼女達と共に張 次回 [ハンター2] ハンター2の実力が合間見える。 529 第75話:ハンター2︵前書き︶ ハンター2の刃が反射する。 530 第75話:ハンター2 烏巣周辺にいた敵部隊の排除にはさほど時間が掛からなかった。何 しろ殆どが居眠りをしていたり、ちょろまかした兵糧を食べていた ダン り、仲間と雑談をしていたりしていて、全体的に隙だらけだったか らだ。 中佐が指揮するハンター1とこの俺・・・・・・ダニエル ウィキニッド上級曹長が指揮するハンター2も同様に音を立てずに 次々と仕留めていく。 俺のチームはハンターキラーの中でも少し変わっている。特殊部隊 だから射撃の実力は屈指ではあるが、射撃よりも白兵戦が得意だ。 ハンター2−1こと俺はコンバットナイフ。 ハンター2−2ことポー・リーチェン曹長は三節棍。 ハンター2−3ことレニー・マクダナル一等軍曹はトマホーク。 ハンター2−4ことクラウド・レインディー二等軍曹はグルカナイ フの二刀流だ。 そして俺達は内部に潜入すると中佐達と別れ、パッケージの確保へ とむかった。 <ハンター3−3からハンター2。そちらにタンゴ1が接近> ﹁敵が来る。隠れろ﹂ そういうとすぐに近くの物陰に身を潜める。3人も何をしているの かすぐに同じように身を隠す。 531 その直後に少し先から槍を持った敵兵が姿を現し、俺達の前を通過 して行った。すぐに俺はクラウドにハンドシグナルで命令すると、 彼はグルカナイフを腰の鞘から取り出し、それを構えながら背後に 忍び寄ると一気に飛び付き、口を塞ぐと鋒を敵の喉元に突き付けた。 ﹁⁉﹂ という将が幽閉されてる筈だ。何処にい ﹁静かにしろ。騒げば分かるよな?﹂ ﹁︵コクリコクリ︶﹂ ﹁よし、手短に聞く。張 る?﹂ ﹁ぐ・・・・・・この先の・・・扉の先にある地下牢に・・・﹂ ﹁見張りは?﹂ ﹁ご・・・・・・5人だ・・・﹂ ﹁そうか、ならば最後の質問だ。お前は幽州戦に参加したか?﹂ ﹁ああ、・・・・・・さ・・・参加した・・・﹂ ﹁わかった・・・・・・・・・だったら死ね﹂ そう尋ねると敵兵の声帯を切断して、敵は苦しみながらゆっくりと 地面に倒れる。 もし参加していなかったら同情の余地はあったが、幽州戦に参加し ていたとなると話は別だ。幽州におけるこいつ等の行動には俺も我 慢ならない。 死体を影に隠すとすぐに合流する。 ﹁パッケージはこの先の地下牢らしいです﹂ ﹁見張りは?﹂ ﹁少なくとも5人はいるそうです﹂ ﹁分かった・・・・・・。ハンター2−1からハンター1﹂ <こちらハンター1−1。感度良好> ﹁状況報告。パッケージの位置を確認。パッケージは地下牢﹂ 532 out﹂ <了解だ。直ちに急行して確保せよ> ﹁了解です中佐。ハンター2−1 中佐への通信を簡単に済ませ、3人に振り返る。 ﹁目標はこの先の地下牢だ。見つからずに移動する。いいか?﹂ ﹁分かった﹂ ﹁了解なのー﹂ ﹁なあなあ、あんさん何で独り言ゆうてたん?﹂ ﹁あぁ、こいつは通信機って言ってな・・・・・・遠くの相手と会 ﹂ 話する道具だよって・・・・・・そんな目で見てもあげないよ?﹂ ﹁ガーーーン‼ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ 予想の斜め上を行くリアクションに流石に対応が追いつかない。好 奇心に駆られるのはよく分かるが、流石にここまでは予想していな かった。 ﹁・・・・・・先にいくよ?﹂ ひとまずはパッケージ確保を優先させたいので、部下を連れて地下 牢に続く階段を見つけだし、それを音を立てずに降りて行く。 階段を降りてすぐ側に部屋があったので覗き込むと、中に敵が一名。 しかも出てこようとしていたので少し下がって隠れる。 幸いにも敵は反対側に移動して行ったが、それは俺達の進路でもあ る。 ﹁ポー。出番だ﹂ 533 ﹂ ﹂ アサシン マスター ﹁了解。武器をお願いします﹂ ﹁音は立てるなよ ﹁分かってるって、 ポー・リーチェン曹長に指示するとクラウドと同じように音を立て ずに忍び寄る。 ﹁‼﹂ ﹁ふんっ‼﹂ タイミングを図ると一気に飛び掛り、足を蹴って態勢を崩すと首締 めの態勢から一気に敵の首をへし折った。 ポーは琉球空手と中国武術で黒帯を有する実力者であり、ウルフパ ックでも中佐達と共にCQCの教官を担当している程だ。だから相 手の首をへし折るくらい造作も無いことだ。 ﹁正面クリア﹂ ﹁了解だ。前進する﹂ 敵を仕留めると俺も先頭に移動してMP7A1を構え、ポーが左手 を俺の肩に置いてその後ろには楽進達。後部にはレニーにタクティ カルベルトを掴まれながら最後尾でMP7A1を構えるクラウド。 特殊部隊におけるカバリングの基本姿勢だ。こうすることで互いの 位置を把握出来ると共に不意の遭遇戦にも瞬時に対応できる。 暫く薄暗い廊下を進んでいると曲がり角の先に扉の前にいる敵兵。 数は左右に1名ずつだ。 ハンドサインで敵の存在を知らせ、楽進達も何となく意味は理解し 534 たようだ。ポーとクラウドに待機命令を出すと俺はコンバットナイ フ、レニーはトマホークを取り出し、俺が一気に飛び出すとレニー もトマホークを投擲。 ﹁ん?﹂ ﹁なん・・・・・・﹂ 敵が気付いた時には既に頭にトマホークが食い込んで死に絶え、残 りの一人も喉にコンバットナイフが貫通して声を発せられず、苦し みながら死んで行った。 制圧すると全員を呼び、扉の左右に位置して、MICH2001の AN/PVS−18を起動させてMP7A1を構える。本来は突入 の際にM84を使用するのだが、隠密行動重視なので使用は出来な い。 俺はタイミングを図ると扉を一気に蹴破り、なだれ込むように室内 に突入。 中には油断しきっていた敵兵4名と椅子に鎖で縛られている女性。 突入すると瞬時に照準を合わせて4.6mm弾を額に撃ち込み、瞬 時に室内を制圧。どうやらここは拷問部屋のようだ。至る所に趣味 の悪い拷問器具がおかれている。 俺達はフラッシュライトで顔を照らしながら歩み寄る。 ・・・・・・儁乂﹂ ﹁そのまま、お前の名前は?﹂ ﹁ち・・・張 ﹂ ﹁一つ前の主の名前と出身地は?﹂ ﹁韓馥・・・生まれは冀州河間郡 中佐から渡された詳細書は一致している。間違いなさそうだ。俺は 楽進達を呼ぶと彼女の縛られている鎖を外す。 535 ﹁張 様ですね?﹂ 孟徳様配下の者です。右が李典、左が于禁。あ ﹁あ・・・あんたは?﹂ ﹁自分は楽進。曹 なたを助けに参りました﹂ ﹁た・・・・・・助けに?﹂ ﹁詳しい話は後です。まずはここを出ないと・・・﹂ ﹁・・・かたじけない﹂ ﹁2、4。先行しろ﹂ ﹁了解﹂ ﹁了解です隊長﹂ を左右から于禁と李典が支えて移動する。そして地下 指示を出すとクラウドとポーが先に出口へと向かう。脱出路の確保 だ。 歩けない張 牢から出るとすぐに脱出地点へと向かう・・・・・・・・・。 536 を救い出し、全ての兵糧にC4を仕掛けたライル達。脱 第75話:ハンター2︵後書き︶ 無事に張 を援護しながらライル達も脱出地 海兵隊の誇り,Re 出する直前で敵に見つかる。張 真・恋姫無双 点へと向かう。 次回 [脱出] 任務成功に突き進む。 537 第76話:脱出︵前書き︶ 確保からの脱出。 538 だな?﹂ を救い出したハンター2と楽進達と合流を果たした。 第76話:脱出 無事に張 ﹁中佐﹂ ﹁よくやった・・・・・・張 ﹁あんたは?﹂ 天の軍隊 かい?﹂ ﹁この部隊の指揮官だ。今はそれしか言えないがな﹂ ﹁・・・噂に聞いた に付いてやってくれ﹂ ﹁今は脱出に専念してくれ。ハンター2、先導だ。左右上下にも気 を配れ﹂ ﹁了解﹂ ﹁3人は張 ﹁分かりました﹂ ﹁了解や‼﹂ ﹁了解なの‼﹂ 的確に指示を下した直後に通信が入る。 ﹁こちらハンター1。どうした?﹂ <中佐、北側にお客さんです> ﹁数は?﹂ <正確な特定は不能。しかし200人以上は確実にいます・・・・・ ・くそっ⁉敵が潜入に気付きました‼そっちに向かってます‼> そう聞いて耳を済ませる。確かに北側が騒がしくなって来たようで あり、走る音も徐々に近付いていた。 539 ﹁ハンター3−3‼3−4‼すぐにそこから離れろ‼俺達は別ルー トから脱出する‼﹂ out!!﹂ <了解‼ハンター3−1と合流します‼幸運を‼> ﹁そっちもな‼ハンターリーダー 通信を切ると直ぐにHK416を構える。他の隊員達も同様に銃火 器を構え、悟った楽進達も臨戦態勢に入る。 ﹁コンタクト‼﹂ 先導のダンが敵を発見して、すかさずMP7A1を発砲。俺達も別 方角から出現した敵に対して攻撃を行なう。だが攻撃したことで位 置を悟られてしまい、他の奴らを呼び寄せてしまう。 ハンター3もM107A1を使用して援護してくれているが、それ でも向かって来る。流石に数が違いすぎるのだ。更に先頭にいるハ ンター2にも敵が集中し始めていて、ダン達は白兵戦に突入する。 ﹁ハァ‼﹂ You son of a bitch‼ ダンは両手にコンバットナイフを手にして、出現する敵を次々と仕 留める。 ﹁Comon!!!! ‼﹂ ウルフパックで最年少の17歳であるハンター2−4ことクラウド アサシン の由来 も両手にグルカナイフを持ち、華麗な剣捌きで敵の攻撃を封殺する と次々と斬り捨てる。彼のコードネームである ともなった動きである。 540 ナイフを投げて首を刎ねると素早く飛び込み、拾い直すと再び斬り つける。 百足 を手にして、変幻自在の ﹁掛かってきやがれ‼南郷大尉の一番弟子の俺が相手をしてやる‼﹂ ハンター2−2ことポーは三節棍 動きで敵を翻弄しながら仕留めていく。 ポーは気を百足に流し込むことで打撃力を高めることが可能であり、 様をお守りするぞ‼﹂ 足払いをしたらそのまま一気に頭蓋骨を粉砕する。 ﹁真桜‼沙和‼張 ﹁任しときぃ‼﹂ ﹁頑張るなのぉ‼﹂ ﹁はぁああああ‼猛虎蹴撃‼﹂ 楽進は回転しながら跳び上がる。すると彼女の右脚が光だし、それ を敵集団目掛けて蹴り放つ。 その攻撃には驚かされた。俺も氣は集められるが、あくまでもそれ は索敵用であり、戦闘には使用出来ない。 孟徳の下で天を貫く螺 だが彼女はそれを戦闘に特化している。その破壊力は高く、次々と 吹き飛ばされる。 ﹁ウチの螺旋はただの螺旋やないでぇ‼曹 旋槍やぁ‼﹂ 李典も得物である螺旋槍に氣を送り込んで回転させ、それをランス のように突き付けて敵を巻き込み、受け止めようとしても回転に負 けて吹き飛ばされる。 ﹁お前らみたいなグズでクソ虫はタマを切り取ってクズな家系を根 541 二天 を手に強烈な罵声を浴びせながら斬りつける。 絶やしにしつやるのぉー‼‼﹂ 于禁も双剣 見る限りでも中々の剣技であり、幼さが残る顔立ちに相反する冷静 な動き。 更に受け止めると全身を使いながら反撃する。 全員が奮戦するが流石に数が違いすぎることで、徐々に追い込まれ て行く。やがて南門の数十m先に追い込まれ、かなりまずい状況に 陥る。 ﹁くそっ⁉包囲された‼﹂ ﹁あと少しで脱出出来るのに⁉﹂ ﹁円陣で固まれ‼互いを援護するんだ‼﹂ ひとまずは円陣を組んで防御態勢を執るが、敵は次々と接近して来 る。俺もHK416で攻撃を加えながら打開策を考えて背後を見る。 そこには城壁。そして楽進達を見るとようやく閃いた。 ﹁李典‼螺旋槍で壁をぶち破れるか⁉﹂ ﹁そんなん朝飯前やで‼すぐに穴あけたる‼﹂ そうすると李典は螺旋槍を壁に当てると、氣を一気に流し込んで掘 削を開始する。その勢いは凄まじく、辺り一面に掘り返された石が 撒き散らされるが、流石に頑強のようだ。 穴が空いて向こう側は見えているが、人は通れそうにもない。 だが、これでいいのだ。 ﹁楽進‼壁を吹き飛ばせ‼﹂ 542 これが狙いだ。向こう側が見える位の穴が設けられたら、後はそれ を広げるだけだ。 そういうと楽進は直ぐに壁の前に立ち向かい、氣を右手に集中させ る。 ﹁はぁああああ‼勇龍掌波‼‼﹂ 右手に集中させた巨大な氣弾を壁目掛けて撃ち出し、穴が開けられ た城壁を貫通して数十m先で消滅したようだ。開けられた穴は大人 が3人ほど通れる位に広がり、脱出路が確保出来た。 ﹁よし‼ここから脱出するぞ‼死にたくなかったら一気に走れ‼﹂ 遅滞攻撃を加えながら次々と脱出していき、やがて俺を残すのみと なる。俺も脱出してポーチからC4の点火器を取り出し、全速で走 りながら起爆スイッチを押した。 背後からは立て続けに発生するC4の爆発。吹き飛ぶ破片と敵兵。 更に爆炎で身体に火がついて悶え苦しむ。 敵はいきなり発生した爆発で恐れを抱いたようであり、蜘蛛の子を を救い出し、袁紹軍の兵糧の大半を破壊したこと 散らすように逃げ出す。 作戦成功だ。張 で、戦局に多大な影響を及ぼすだろう。 俺はハンター3がいる丘まで走ると、直ぐに腰掛けて通信を行なう。 ﹁こちらウルヴァリン。応答せよオーバーロード﹂ 将軍を救い出して、敵兵糧を破壊。烏巣は陥落 <こちらオーバーロード。感度良好> ﹁作戦成功だ。張 した﹂ <了解です中佐。回収部隊を送ります。out> 543 通信終了から暫くして、回収部隊が運転するM1114が到着して、 それに乗り込むと直ぐに官渡城に帰還するのであった・・・・・・・ ・・。 544 を救い出して様々な面で優位になった連合軍。 第76話:脱出︵後書き︶ 烏巣が陥落して、張 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 連合軍総大将の曹操は好機であると判断し、大反抗を開始する。 次回 [大反抗作戦] 連合の猛者達が武を振るう。 545 第77話:大反抗作戦︵前書き︶ 連合軍による猛反抗。開始される。 546 第77話:大反抗作戦 のように袁紹のやり方に反発を抱 から袁紹に関する情報を入手する。 烏巣が陥落したことはすぐに両陣営に伝わった。連合軍はそれに加 えて救出した張 それによれば、袁紹軍の中に張 く将兵が多く、尚且つ各地に兵を分散させ過ぎている。加えて最前 戦に配備されている兵の大半が空腹で、ろくに戦えない。 更に攻城兵器も数は揃っているが、コストの大幅削減で質はかなり 悪く、扱う兵士もろくに訓練されていない。予想以上に袁紹軍の内 部は纏まっていないようだ。 その情報を基に曹操は大反抗作戦実施を決意。夜明けと共に包囲部 隊に対して攻撃を開始した。 先手はやはり俺達だ。城壁に陣取っていたM2重機関銃にM224 60mm軽迫撃砲による攻撃で敵の井闌や衝車、投石機を集中的 に攻撃。 いくら精度が低いとはいえ、投石機等は歩兵部隊に対して脅威であ ることに変わらない。 巨大な石が飛来してくるなど、想像するだけでも恐ろしくて仕方が ない。 その効果は絶大だ。井闌の上にいた弓兵は倒壊の際に落ちて、衝車 も縄が切れて杭の下敷きになり、投石機も投石直前に装填していた 岩に敵が踏み潰される。 547 そんな状態が開始されて7日。攻撃を仕掛けられた袁紹軍は各地で 敗走を続け、俺達も担当地域である右翼戦線である白馬に対して攻 撃を仕掛けていた。 ﹁一気に攻め上げろ‼遮蔽物に身を隠しながら仕留めろ‼﹂ ﹃了解‼﹄ ﹁南郷‼12人を連れて回り込め‼敵を誘い込むから待ち伏せしろ ‼﹂ ﹁了解です中佐‼分隊‼俺に続け‼﹂ ﹃了解‼﹄ 南郷はHK416+M320A1を手に2個分隊を率いて、敵の退 却予想進路に先回りする。 IARを構えて敵に発砲する。敵は 俺も試験運用を行なっている100発入りC−MAGとAN/PV Q−31Bを装着したM27 攻撃範囲に飛び込む前に銃弾の雨に晒される。 ﹁ウルヴァリンからウォーハンマー‼グリット2−5−2、1−7 −1に砲撃を要請‼目標は白馬東部の敵部隊‼﹂ <ウルヴァリン、こちらウォーハンマー‼了解です中佐‼グリット 2−5−2、1−7−1‼効力射‼砲撃開始‼> 後方に布陣しているウォーハンマーに砲撃を指示して遮蔽物に身を 隠しながら砲撃を伺う。その数秒後、空気を切る音と共にM888 が落着。抵抗を続ける敵や逃げ出そうとしていた敵部隊構わず吹き 飛ばす。 既に白馬の大半は占拠が完了して、残っているのは東部だけだ。 既に多数の敵を仕留め、中には降伏する敵も相次いだ。降伏してき た敵の処置は孫呉海兵隊の千里率いる第1大隊が後方で対象する。 548 戦場で捕虜というのは邪魔な存在だ。何しろ捕虜を後方に護送する にも、安全を確保するのも、監視するにも人手がいる。要するに戦 闘を実施する兵員を割かなければならない。 そこで、第二次大戦のアフリカ戦線で行なわれていた方法を思い出 して実行した。 捕虜を一度に獲得した場合、武装解除した敵を味方後方部隊がいる 方角に歩かせる。これなら仮に逃げ出そうとしても身を守る術はな く、やがては餓死なり衰弱死なり、勝手に死んで行く。 生きたければ逃げずにただ後方部隊がいる方角に歩いて行くしかな いのだ。 ﹁中佐‼偵察隊から報告‼川岸に最後の投石機を確認‼凌統将軍の 第4大隊が被害を受けてます‼﹂ 俺はM27を発砲しながら丘を駆け上がり、その場で伏せて構える。 AN/PVQ−31Bに映し出されたのは、北部に展開している第 4大隊に攻撃を仕掛けている投石機があった。 ﹁あいつを潰すぞ‼第1小隊はついて来い‼第2小隊は援護射撃‼ 他は引き続き敵を殲滅しろ‼﹂ ﹁了解です中佐‼﹂ ﹁第2小隊‼中佐達の突撃を援護しろ‼﹂ DMR、 そういうと俺と第1小隊は交互支援を行ないつつ、遮蔽物に身を隠 Mod1等で援護射撃を行なう。 しながら前進。第2小隊はそれをHK416やHK417 Mk46 549 いくらこの時代の戦闘とはいえ、どこから弓兵が攻撃を仕掛けてく るか分からない上に、弓は殆ど音を発さないから、普通の狙撃兵よ りもたちが悪い。 そう思っている矢先、さっそく弓兵の姿を見つけた。幸いなことに 発見した俺に向けられていて、素早くM27の照準を合わせてトリ ガーを弾く。撃ち出された弾丸はしっかりと敵に命中して、敵弓兵 の死体は坂を転がり落ちた。 しかしこのM27は撃ちやすい。この戦闘で判明したデータを基に 改良を施して、部隊の正式軽機関銃として採用するつもりだが、こ れならアサルトライフルとしても活躍出来るだろう。 ﹁手榴弾‼﹂ やがて投石機の近くにある溝に飛び込むと、M67を取り出し、投 石機の使用兵士目掛けて投擲。 手榴弾の存在を知らない敵はそれに気がつくはずもなく、爆発によ り吹き飛ばされた。 確認するとM27を構えながら前進。投石機に重傷を負ってもたれ 掛かる敵に素早く発砲。せめてもの慈悲だ。せめて頭部を撃ち抜い て楽にしてやる。 ﹁オールクリア‼﹂ 投石機を制圧して、俺はポーチからMk3A2攻勢衝撃手榴弾を取 り出す。 この手榴弾は爆風や破片で攻撃をするではなく、起爆の際に発生す る衝撃波で攻撃する物だ。だから掩蔽壕や資材の破壊などに使用さ 550 れることが多い。 手榴弾のピンを抜いて、そのまま投石機に投げ込む。 ﹁爆発するぞ‼﹂ 警告すると再び溝に飛び込み、爆発に備える。数秒後に手榴弾が起 爆して、発生した衝撃波で投石機を吹き飛ばし、辺りに残骸が降り 注ぐ。流石に目の前に本体の丸太が降り注いだのは肝が冷えた・・・ ・・・。 ﹁こちらウルヴァリン‼投石機を破壊した‼現状を報告してくれ‼﹂ out‼﹂ <こちらオーバーロード。投石攻撃の停止を確認。孫策様の本隊が 西部エリアを制圧。敵は降伏を始めました> ﹁了解した‼このまま掃除を続ける‼ウルヴァリン 通信を終了させるとC−MAGをP−MAGに交換してM27を構 え直す。 ﹁よし‼あと人押しだ‼そのまま残敵を掃討するぞ‼﹂ ﹃了解‼﹄ 再び俺達は抵抗を続ける敵を駆逐する為に部隊に合流する。それか ら暫くして中央線戦を一刀率いる劉備派遣軍。左翼戦線の延津を曹 操軍が制圧。 これで黄河を挟んで南側を連合軍、北側を袁紹軍が布陣する形とな り、両軍は来る決戦に備えて軍備の再編成を執り行う。俺達も完全 に占領した烏巣へ補給を行なう為に移動して行った・・・・・・・・ ・。 551 第77話:大反抗作戦︵後書き︶ 戦いは再び膠着状態に陥る。その間に部隊の再編成を実施して、ラ 海兵隊の誇り,Re イル達も次の戦いに備えて身体を休める中、ライルに曹操が訪ねて 真・恋姫無双 来る。 次回 [赤兎馬] ライルに新たな相棒が生まれる。 552 第78話:赤兎馬︵前書き︶ 陣地で休息を執るライル。そこに曹操が訪ねて来た。 553 第78話:赤兎馬 連合軍の大反抗作戦で白馬を占領した俺達は補給と休息を行う為に、 完全制圧して補給地として再起動した烏巣に駐留していた。 破壊した兵糧の残骸や袁紹軍兵士の焼死体は既に取り除かれ、内部 には既に物資が集められていた。 俺達は孫策軍の陣営で身体を休めていた。 ﹁美味いなぁ﹂ ﹁ええ、全くです﹂ ﹁たまにはコーヒーも悪くありませんね﹂ ﹁俺は毎日飲んでるがな﹂ ﹁だから中佐の執務室は豆の臭いがするんですか・・・・・・﹂ これをいうのもなんだが、俺の執務室兼自室の一画にはコーヒーメ ーカーと複数の瓶に入ったコーヒー豆が置かれており、遠征前に訪 れて来た冥琳殿に注意されたことがある。 群狼隊陣地の一画で俺と南郷、更に南郷を兄と呼ぶポーの3人でコ ーヒーを飲んでいた。 ﹁おい、ライル﹂ ﹁よお、アレックス。どうした?﹂ ﹁お前にお客さんだよ﹂ ﹁客・・・誰だ?﹂ ﹁直接会えば分かる・・・どうぞ﹂ 客が来たと報告したアレックスは直ぐに俺たちがいるテント入り口 の右側に直立不動で敬礼をする。 554 そこに入ってきた人物達を見て俺達も慌てて立ち上がって敬礼をす る。 ﹁あら?・・・邪魔だったかしら?﹂ 何しろ入ってきたのは曹操に徐晃、更に曹操と顔が似ているが、俺 より少し身長が小さいくらいの長身で黒のVネックノースリーブに ホットパンツ、黒のロングブーツというなんとも大胆な格好で、金 髪のショートヘアをした女性がいた。 どうでもいいが、その服装に雪蓮殿並のバストは狙っているのか? ﹁楽にしてくれていいわよ﹂ ﹁どうかなさいましたでしょうか?﹂ ﹁ええ、あなたに用があって来たのよライル﹂ ﹁自分に?﹂ ﹁ええ、悪いんだけれど一緒に来てくれないかしら?﹂ ﹁それは構いませんが・・・そちらの女性は?﹂ ﹁そうだったわね、愛琳﹂ ﹁あいよ。初めましてだなライルさん。あたいは曹洪。字は子廉っ てんだ。よろしくな﹂ だから顔が似ているのか・・・・・・。 武久大尉であります﹂ ﹁孫呉海兵隊指揮官のライルだ。部下の南郷とポー﹂ ﹁副官の1人をしております南郷 ﹁輸送隊所属のポー・リーチェン曹長であります﹂ ハンターキラーという訳には行かないので、機密保持の為に普段は 輸送隊所属ということになっている。 555 ﹁曹洪殿。今は要件を先に・・・﹂ ﹁分かってるって・・・相変わらず牙刀は固いなぁ♪﹂ ﹁愛琳︵あいりん/曹洪の真名︶﹂ ﹁あいよ華琳﹂ ﹁それで、来てくれるわよね?﹂ ﹁・・・・・・分かりました。お供します﹂ そう返答すると俺は曹操と共にテントを後にして移動する。 3人の案内で連れてこられたのは少し先に行った所にある曹操軍陣 地。そこにある軍馬の馬小屋だ。餌の枯芝に馬特有の臭いが充満し ている。 ﹁なぜ馬小屋に?﹂ ﹁いいからついて来なさい。見せたい物があるから﹂ そう言われながら後に続くと、馬小屋の一番奥にいた他の馬とは明 らかに違う馬に目を奪われた。 鬼神 呂布と 軍神 関羽にしか従わなかったとさ 血のような深紅の肌。烈火の如く赤髪。更に見るもの全てを震わせ るような眼。 三國志演義で れ、最後はそれを表すかのように食べることを拒み、自ら餓死を選 んだとされる獰猛な馬・・・・・・。 ﹁・・・赤兎馬﹂ ﹁赤兎馬?﹂ 556 ﹁ライル殿、この馬をご存知なのか?﹂ ﹁ええ・・・・・・まあ・・・﹂ どうやらこの世界では赤兎馬とは呼ばないようだ。まあ仕方がない。 赤兎馬の伝説は賛否両論と別れており、本当に空想上の生き物とも、 血のように赤い汗をかく汗血馬とも言われている。しかしそれは分 かるがなぜここに連れてこられたのかが理解出来ない。 ﹁この馬はね、反董卓連合を組む少し前に旅商人から受け取った馬 なんだけど、気性が荒くて誰にも従わない暴れ馬よ﹂ ﹁気性が・・・・・・荒い?﹂ ﹁そう。だから私はもちろん、夏侯惇や夏侯淵、この二人でさえも 扱えなかった程のね﹂ ﹁しかも春蘭は斬り殺そうとしたほどにね♪﹂ 曹洪は笑ってはいるが、かなり無理がある笑方だ。恐らくは何か派 手な落馬でもしてトラウマになっているのだろう。 余計な検索は諦めて、改めて赤兎馬の眼を見る。 ﹁・・・・・・いい眼をしている﹂ ﹁それでライル、あなたって馬に乗ったことはある?﹂ ﹁小さい時にはよく乗っていました・・・・・・それが?﹂ ﹁そう・・・・・・牙刀、愛琳﹂ ﹁御意﹂ ﹁あいよ﹂ 二人は何かを悟り、赤兎馬を連れて外に出る。俺も曹操に連れられ て同じように馬小屋の外に出た。 ﹁曹操殿・・・なにを?﹂ 557 ﹁ライル。あなた、この馬に乗ってみたくない?﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁はぁ・・・その沈黙は答えているようなものよ﹂ 俺の沈黙に飽きれながらもそう口にする曹操。しかし本音をいえば 乗ってみたい。何しろ呂布と関羽にしか懐かなかった名馬だ。しか もあの馬みたいなじゃじゃ馬なら尚更だ。 俺は無言で頷き、赤兎馬に跨って手綱を手にした瞬間、赤兎馬が暴 れ出した。辺りに積まれていた木箱を蹴り倒し、木製の壁は難なく 蹴破られる。 ﹁くっ⁉﹂ こいつはあからさまに俺を試している。 暴れて俺を降り落とそうとするが、手綱をしっかりと握り、足に力 をいれて踏ん張る。その途中で被っていた野戦帽を落としたが、恐 らくは踏まれただろう。だが気にする余裕などありはしない。 俺は確かにハイスクールまで乗馬をしていたが、それは競馬や牧畜 などで使用されるアメリカンクォーターホースだ。 恐らくは数分の時間が経過しただろう。俺は若干の興奮状態になっ ていたが、馬はようやくおとなしくなった。暴れる様子も見られな い。 ﹁はぁ・・・はぁ・・・﹂ ﹁まさか・・・・・・﹂ ﹁すごい・・・あのじゃじゃ馬を・・・﹂ 558 ﹁・・・・・・・・・﹂ 俺は息を上げながは周囲を見渡す。そこには驚きを隠せない曹操、 徐晃、曹洪が見えた。 ﹁・・・曹操殿﹂ ﹁走ってみたいのね?いいわ。あなたなら乗りこなせると思うわ﹂ ﹁ありがとうございます・・・・・・・・・ハァ‼﹂ 許可をもらうと俺は赤兎馬を走らせる。ハイスクール時代に乗って いたアメリカンクォーターホースが赤子に思えるような早さだ。 正史でも一日で千里を駆けると言われ、希代の名馬とも呼ばれてい る。 ︵凄い・・・風になった気分というレベルじゃない‼俺がこいつに なった気分だ‼︶ こいつの考えや気持ちが手綱を通じて伝わってくる感覚がする。そ れは本当に一心同体になった気分だ。反対に赤兎馬も俺の考える動 きを的確に実行して駆け巡る。 そして暫く走らせて、興奮も冷めぬ状態で曹操の下に戻って来た。 ﹁曹操殿‼こいつは素晴らしい名馬だ‼﹂ ﹁随分と気に入ったようね?﹂ ﹁ええ‼こんな名馬は生まれて初めてだ‼﹂ 本当に素晴らしい名馬だ。しかも曹操にも懐かなかった馬に俺は乗 れた。俺は馬を降りて首を数回撫でる。 ﹁曹操殿、こんな素晴らしい名馬に乗せて頂き、本当にありがとう 559 ございます﹂ 俺が手綱を渡そうとした瞬間、彼女はそれを制した。 ﹁この子はあなたに託すわ﹂ ﹁俺に?﹂ ﹁ええ、残念だけれど、私の陣営には乗りこなせる者はいないわ。 それにこの子もあなたと一緒に行きたいみたいだし﹂ そういうと赤兎馬を見た。確かに瞳を通して俺に訴えかけて来てい と・・・。 るように感じた。 相棒 俺は暫く考えて、笑みを浮かべると手綱を左手で握りしめながら、 曹操に踵を鳴らして最敬礼をする。 ﹁ありがとうございます‼喜んでお受け致します‼﹂ ﹁大事にしてあげなさい。・・・・・・それとライル﹂ ﹁何でしょう?﹂ ﹁あなた・・・・・・私の処に来ないかしら?﹂ その言葉に俺は再び冷静になる。曹操からの勧誘。しかしそれは祖 国への裏切りになる。俺は笑みのままで首を横に振った。 ﹁・・・それは出来ません﹂ ﹁どうして?﹂ ﹁自分は孫呉に忠誠を誓った身・・・・・・孫策殿達や仲間を裏切 りたくはありませんし、1人の軍人としても志を貫き通したいので す﹂ 560 ﹁・・・・・・そう・・・残念ね﹂ ﹁しかし、お気持ちだけはしっかりとお受け致しました﹂ ﹁分かったわ。今回のところは下がるけど、これだけは覚えておき you.Cao Cao・・・﹂ なさい。私は欲しいものがあれば必ず手に入れるわ‼だから覚悟し ておくことね﹂ ﹁・・・Thank そういうと俺は赤兎馬を走らせて自分の陣地へと戻って行った。そ して俺に出来た新たな相棒・・・・・・赤兎馬に乗って戻ってきた 俺を見てアレックス達は驚きを隠せずにいた。 と・・・・・・・・・。 そしてこいつの新しい名前を直ぐに考えた。 スレイブニル 561 第78話:赤兎馬︵後書き︶ 新たな相棒であるスレイブニルを手に入れたライル。一方で連合軍 による黄河渡河作戦と決行された。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re ライルもハンター1を率いて対岸に先行する。 次回 [狙撃] 狼の正確無比な攻撃が静かに始まる。 562 第79話:狙撃︵前書き︶ 大口径の銃弾が飛来していく。 563 第79話:狙撃 黄河を挟んで両軍が渡河の準備を薦める中、ハンター3は冥琳殿と 中佐の指示に従って、袁紹軍の準備を抑制する為、4人で対岸に渡 った。 袁紹軍陣地の東側にある山。ここに俺達がいるが、奴等は絶対に発 見出来ないだろう。何故なら1,800mも離れている上に、携行 している50口径アンチマテリアルライフルのM107A1バレッ トには迷彩処置が施され、俺達もスナイパーの必需品である偽装用 装備のギリースーツに身に纏い、プローン姿勢で身を潜めていたか らだ。 この俺、グルック・サイモン少尉はM107A1のスコープを覗き 込みながら、目標となるターゲットを探す。 ﹁ハンター3−3、そっちになにか動きはないか?﹂ <伝令らしき敵の動き以外は見当たりません> 俺達がいる場所から更に北へ500mほど進んだ場所にいるハンタ ー3−3とハンター3−4も同じようにM107A1で敵陣を監視 している。 確かにやけに敵の動きが活発になっている。恐らくは何か企んでい るのだろう。 ﹁・・・やけに騒がしいな﹂ ﹁奴等パーティーの準備でもしてんだろ?﹂ ﹁ぶっ潰してやりたいな﹂ ﹁中佐達の渡河作戦には潰せるさ﹂ ﹁ああ、おったまげるだろう<少尉、右側の山。吹き溜まりにある 564 付近を見て下さい。こちらからではよく確認出来ません>了解、確 認する﹂ ハンター3−3からの報告で指定された箇所を調べる。隣にいるス ポッターを務めるハンター3−2も同様に確認する。 ﹁見えたか?﹂ ﹁・・・・・・3−3の言う通りだ。6名を確認・・・中央セクタ ー・・・700m・・・西の風・・・2ノット・・・4名が武装し ている﹂ ﹁残り2名は民間人か?﹂ <大方、略奪でもするつもりでしょう> ﹁ゴキブリ野郎が・・・・・・始末してやる﹂ 奴等は正規軍としての誇りを持っていない。やっているのはそこら 辺にいる賊と変わらない。俺はスコープのレティクルを調整して、 風向きや高低差、気温、湿度等を計算して、中心をほんの少しだけ 敵兵の頭部右側にずらす。 ﹁どいつからやる?﹂ ﹁民間人に一番近い奴から仕留める・・・野郎・・・・・・女に手 を出しやがった﹂ ﹁了解、片付けてやれ﹂ そういうと俺は息を吸い込んだら吐き出さず、呼吸の際の筋肉の動 きを封じて、姿勢を落ち着かせ、M107A1のトリガーを引いた。 撃ち出された12.7mm弾は寸分の狂いも無く、照準を合わせた 敵兵の頭部を粉砕した。 敵兵と民間人はなにが起こったのか理解出来ず、ただ頭が無くなっ た死体を見ていた。 565 ﹁ナイスショット﹂ ﹁槍を持った間抜けヅラを片付ける﹂ 次にすぐそばにいた槍兵に照準を合わせ、トリガーを引いた。する と弾丸はしっかりと同じようにヘッドショットを決めた。 ﹁いいぞ、ど真ん中だ﹂ <少尉、残りが流石に逃げ出しました> ﹁どっちか狙えるか?﹂ <槍兵を仕留めます> ﹁OKだ。軽歩兵は任せろ﹂ ハンター3−3に1人を任せ、俺は残った軽歩兵に照準を合わせて トリガーを引く。流石にヘッドショットではないが、それでも胴体 に命中して、敵の身体を真っ二つにした。 <ナイスショット> ﹁民間人はどうした?﹂ ﹁・・・逃げ出したようだ﹂ <なんかすまない気分ですね> ﹁当面は夢に出るだろうな﹂ 確かに目の前で頭が吹っ飛んだのだ。この時代ではまずない現象で、 下手をすれば・・・いや、確実にトラウマになるだろう。 ﹁グルック、お客さんだ。20名以上﹂ その方角を見ると馬に乗った敵兵が接近していた。しかし俺達を探 しているようではないようで、方角的に敵陣に向かっているのだろ 566 う。 ﹁やり過ごせ。動かなければ気付かれはしない﹂ ﹁了解﹂ 流石に数が多いのでやり過ごすことにしたが、万一に備えてMP7 A1の用意をする。バレットを使用するには距離が近すぎる。交戦 になったとしてもM107A1と同じようにサプレッサーを装着し ているから、敵陣にいる連中には気付かれたりはしないだろう。 敵兵はこちらに気付くそぶりを見せないまま、敵陣に向かって行っ た。 ﹁脅かしやがって・・・﹂ ﹁グルック、別の動きだ。丘の上にある山道﹂ ﹁確認した・・・・・・大部隊だな。ハンター3−3。確認出来た か?﹂ <了解。こちらでも確認しました。敵の増援ですかね?> ﹁そうだろう。牙門旗は・・・・・・沮だが・・・誰だ?﹂ ﹁詳しいのはいないからな・・・先頭にいる踏ん反り返った奴がそ うだろう。しかしなんで輿に?﹂ ﹁俺に聞くな。だがなんだか腹立つな﹂ ﹁仕留めるか?﹂ ﹁当たり前だ。距離は・・・・・・1,200ってところか﹂ ﹁ああ、風向きに変化はないが、強くなっている。風速はおよそ5 だ﹂ ﹁OK﹂ 情報を基に微調整を行ない、レティクルを敵の頭部に合わせる。 準備が整ったら俺は深呼吸して、トリガーを引いたが、微かに下に 567 それて、担ぎ手の頭部に命中した。 ﹁ダメだ、下に逸れた﹂ ﹁任せろ、これで終わりだ﹂ 地面に転んで伏せた状態になった敵将に合わせると再び発砲。次は 若干上に逸れたが、それでも目標の頭頂部を吹き飛ばし、脳を辺り にぶちまけた。 それを見た敵兵は次々と逃げ出し始める。ひとまずは増援到着阻止 といったところだろう。 <ナイスキルです、少尉> ﹁ありがとう、夜になったら場所を変えるぞ。流石にここはヤバく なりそうだ﹂ そういって夜になるのを待ち、山の頂上付近へと場所を変えて、再 び敵陣の偵察と監視を続行した。 それから2日後、開始された連合軍による渡河作戦は大成功になり、 ひとえにハンター3の地道な活躍がそこにはあった・・・・・・。 568 第79話:狙撃︵後書き︶ 渡河作戦は大成功に終わった。後は敵本陣目掛けて侵攻するだけだ が、その前に兵達を休ませる。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re ライルと一刀が食事をしている中、2人の少女が歩いてきた。 次回 [.食いしん坊と料理少女] 持ってきたMREも残りわずか。 569 第80話:食いしん坊と料理少女︵前書き︶ 食事は古今東西、常に重要。 570 第80話:食いしん坊と料理少女 ハンター3による影ながらの活躍で連合軍は無事に黄河を渡河した。 袁紹軍はハンター3による狙撃と連合軍を前に撤退していき、連合 軍も侵攻部隊の渡河完了まで川岸で陣を張る。 俺達は中心の孫策軍陣地の前方に布陣して、袁紹軍の反撃に備える。 現に袁紹軍は既に4回、反撃してきているが俺達の銃撃や阻止砲撃、 更に機動力を活かした一刀、愛紗、霞達による奇襲。 更に徐晃と夏侯惇、夏侯淵達による猛追で殆ど損害を発生させず全 て撃退した。そして今日も袁紹軍による5回目の反撃を防ぎ、共に 出陣した一刀と共に俺達の陣にいた。 ﹁ふぃ∼‼食べた食べた‼﹂ ﹁満足してくれたようだな?﹂ 戻ってきた時間帯がちょうど昼飯時だったので、折角だから一刀と 共に食事をした。 戦地で重要視されている食事。例え優秀な兵士や軍隊であっても温 かくて栄養がある食事を摂らなければ力が発揮できない。 アメリカ海兵隊でも戦地で充分な食事が摂れるようにCT︵コンテ ナ化キッチン︶を使用している。俺達もそれを採用しているのだ。 内部に調理台や配膳用テーブル、グリドル、配膳用キャビネット、 寸胴加熱装置、オーブン、トレッチラックヒーター、浄水装置を備 え、1日3食の温かい食事を最大800食分供給できる能力を持ち、 571 最大で3日間のフル稼働が可能だ。ウルフパックでは軍に入隊する 前に一流ホテルにいた部下もいて、その実力は味が示していた。 知識さえあれば様々な料理を作れるが、欠点として移動にトラクタ ーが必要であり、CTの隣には移動用のM1083/M1088戦 術級中型軍用車両が停車している。 ﹁けど本当に美味しかったですよ。まるで一流ホテルみたいな美味 しさだ﹂ ﹁ああ、料理長がホテルで実際に料理長をしていてな。ミシュラン で星2つを貰ったらしい﹂ ﹁どうりで・・・・・・﹂ 本当に美味だった。今日のメニューだが定番のチリビーンズに飯類 のジャンバラヤ、スープ類のフィッシュチャウダー、肉料理のミー トローフ、サラダ類のコールスロー、デザートのアップルパイだ。 かなりガッツリとくる組み合わせだがバランスよく栄養を摂取出来 る。 因みに一番人気が高いのが日本料理であり、一週間に一回は和食が 出る。その際の料理長は南郷だ。明日がその和食が出る日なので楽 しみである。 ﹁だけど鈴々や恋がいたら平らげてしまいそうですね﹂ ﹁いくらなんでも2人だけで500人分を平らげるのは無理がある だろう・・・・・・多分﹂ ﹁そうですよね・・・・・・多分﹂ 本音を言えばあり得ないことはない。 572 ﹁それよりライルさん﹂ ﹁なんだ?﹂ ﹁さっきから気になってたんですが・・・・・・﹂ ﹁﹁︵ジィー︶﹂﹂ 頼むから触れずにいてほしかった。先程から机に隠れながらこちら を見ている少女が2人。1人は桃の髪を2本の春巻きみたいに束ねた 活発な印象が強い女の子で、もう1人は緑色の髪に青い大きなリボ ンを付けた少し天然そうな少女だ。 俺は最後まで気が付かないふりをしようとしていたのに、一刀が指 摘したことで気にせざる得なくなってしまった。 ﹁ええっと・・・・・・な・・・なにかな?﹂ ﹁ふえっ⁉気付いてた⁉﹂ ﹁いや・・・初めから気が付いてたからね・・・一応は言っておく けど・・・・・・﹂ ﹁ご・・・ごめんなさい﹂ ﹁いいよ・・・それより、何か用かなお嬢ちゃん達?﹂ ﹁ぶぅ∼‼ボク達はお嬢ちゃんじゃないやい‼許褚だ許褚‼﹂ ﹁﹁そうかそうか。許褚っていうのか・・・許褚⁉﹂﹂ ﹁うん、そうだよ。そんでこっちが琉琉﹂ ﹁は・・・初めまして。典韋といいます﹂ ﹁﹁典韋⁉﹂﹂ なんというか・・・久々に驚かされた。 ﹁ええっと・・・許褚ちゃん?﹂ ﹁なに?﹂ ﹁確認がてら聞きたいんだけど・・・・・・字は仲康?﹂ ﹁うん‼そうだよ‼﹂ 573 元気一杯に答えられて、間違い無さそうだ。 ﹁ねえねえ、それよりさっきからなに食べてたの?﹂ ﹁なにって・・・俺の国の料理だが・・・﹂ ﹁季衣︵きい/許褚の真名︶、いきなりじゃいけないよ。まだこの 人達の名前も知らないんだから・・・﹂ ﹁う∼ん・・・そうだね﹂ 一刀。劉備軍所属だよ﹂ ﹁はぁ・・・・・・俺は孫呉海兵隊指揮官のライルだ﹂ ﹁俺は北郷 ﹁へえー。兄ちゃん達がそうなんだ‼﹂ ﹁に・・・兄ちゃん?﹂ ﹁うん‼﹂ なんというか・・・まるで鈴々のような感覚だ。というよりも人懐 っこい妹というポジションだろう。 ﹁ねえねえライル兄ちゃん‼ボクも食べたいよ﹂ ﹁なんだ、腹が減ってたのか?﹂ ﹁そうなんだよね。ボクと琉琉って華琳様の親衛隊だからさ∼。さ っきまで春蘭様と一緒に敵をやっつけにいってたから、お腹ペコペ コなんだよ﹂ ﹁夏侯惇と・・・・・・分かったよ。持って来てやる﹂ ﹁やったぁ∼‼﹂ ﹁典韋ちゃんも食べるか?﹂ ﹁あ・・・はい・・・・・・だけど、少しお願いが・・・・・・﹂ 典韋はその場でお辞儀をする。 ﹁あの・・・無理じゃなかったら、その・・・厨房を見せて欲しい 574 んです﹂ ﹁厨房を・・・・・・なぜ?﹂ ﹁はい、私はよく季衣や華琳様の食事を用意するので、ちょっと興 味が・・・﹂ だから彼女の腕に微かだが火傷の跡があるのか・・・・・・。おそ らく中華鍋を振るった時に油でも掛かったのだろう。料理人なら誰 でも必ずなることだ。 しかし典韋は礼儀正しい性格をしている。なんだか本当に妹のよう な感覚を放ち出す2人だ。 俺は軽く微笑むと2人の頭を撫でながら答えた。 ﹁いいよ。折角だから見ていきなさい﹂ ﹁本当に⁉﹂ ﹁ああ﹂ ﹁ありがとうございます‼兄様‼﹂ ﹁じゃあ、俺は自分の陣地に戻ります。ご馳走様でした﹂ ﹁ああ、また一緒に食べようぜ﹂ そういうと一刀は紙トレーを所定の場所に捨てると自分の陣地に戻 っていく。この後に2人を案内したが、何かと大変だった。 典韋は見たこともない調理器具や食材、調味料に興味津々であり、 許褚もゆうに20人前以上は軽く平らげた。 更に訪れた曹操や夏侯惇や夏侯淵、楽進、于禁、李典にもご馳走す る羽目になり、意外にも大食いだったのでゆうに8人だけで50人 前は平らげられてしまった・・・・・・・・・。 575 第80話:食いしん坊と料理少女︵後書き︶ 官渡の戦いはもはや決着が着きつつあった。袁紹軍内部は度重なる 敗戦で総兵力を次々と失い、冀州、青州、幽州各地でレジスタンス による抵抗や将兵達による反乱で、指揮系統は壊滅。しかし現実を 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 見ない袁紹は民間人が残る倉亭に軍を進めた。 次回 [倉亭解放戦] 劉備軍による民間人救出が開始される。 576 第81話:倉亭解放戦︵前書き︶ 袁紹軍占領下の倉亭へと向かう一刀達。御遣い達による救済が始ま る。 577 第81話:倉亭解放戦 袁紹軍による攻撃は連合軍の不動の防御を前に全て払い除けられ、 当初30万もいた袁紹軍だが、度重なる敗戦や各地で発生した抵抗 軍による抗戦、袁紹軍将兵達による反乱で次々と兵が失われていき、 城に向けて連合軍は進軍を開始され、俺達劉備 今や7万もいればまだマシだということになっていた。 最終目的地である 派遣軍は機動力を活かして即応部隊として、倉亭へと向かっていた。 ﹁愛紗、倉亭まではまだ掛かるの?﹂ ﹁いえ、この山を超えたら見えてくるはずです﹂ ﹁せやけど袁紹のアホんだら共がどこにもおらへんなぁ。どないな っとるんや?﹂ ﹁あの袁紹が策を講じるなんて考えられないわ。多分だけど将兵達 が怖気づいて出てこないんだと思うわ﹂ それは言えてる。既に俺達も多数の捕虜を獲得して、軍備の増強を 行なえた。もちろん希望者は暫くの捕虜生活を送ってもらって自分 達の家に帰ってもらったり、他陣営に行きたいという者もいれば送 り届ける。 因みに一番人気は曹操軍の陣営であり、捕虜の4割は既に曹操軍参 加が決まっている。 ﹁なあ、詠﹂ ﹁なによ?﹂ ﹁領土問題の事なんだけど、詠はどう考えてる?﹂ ﹁青州や幽州の覇権のこと?﹂ 578 ﹁ああ、俺の考えだと・・・領土に関しては全て曹操が統治すると 思うんだ﹂ ﹁なあ、一刀。なんで分かるん?﹂ ﹁俺達やライルさん達、それに孫策軍は別に領土目的や袁紹の遺産 接収が目的じゃない。ただ純粋にあの女をこの世から消したい。そ れだけだ。だけど曹操の目的は計り知れないところがあるんだ。欲 しい物は絶対に手に入れるって言い放った程だからね﹂ 実を言うと俺やライルさん達には分かり切ったことだ。 青州兵 を作り出している。 何しろ正史で黄巾の残党が青州で跋扈した際に、曹操は土地や生活 の場を与える条件で精強な軍勢 俺達にとってそれは脅威になるが、向こうは漢室に最も近い曹操。 恐らくは荀彧や郭嘉、程昱辺りが根回しをしている筈だ。 ﹁あんたのいう通り。それに今の私達に新しい領土なんて資金を締 め付けるだけよ。だったら私たちは少しでも多くの兵力を吸収すれ ばいい﹂ 詠が考えた方針は兵力の確保。いずれは曹操軍が軍勢を南下させ、 力による天下統一を狙い、それに備えた軍備増強を画策する。 いくら雑兵ばかりといっても訓練し直しさえできれば、幾分かはマ シになるだろう。 ﹁しかしご主人様。曹操殿は確かに脅威になるでしょうが・・・﹂ ﹁愛紗?﹂ ﹁孫呉も侮れないかと・・・﹂ ﹁なんやぁ?愛紗はライル達が裏切るんゆうんかいな?﹂ ﹁そうはいっていない。私もライルが裏切るなどとは思ってはいな い。だがあの軍勢が敵に回るとなったらと考えてな﹂ ﹁・・・まあそうやな。もしライル等が敵になりよったら、正直ゆ 579 うて勝てる自信は無いでぇ﹂ 確かに愛紗や霞の言うことにも一理ある。ライルさん達には戦車や 榴弾砲、攻撃ヘリがある上に、アメリカ海兵隊最大の武器になる兵 士。 更にライルさんが将軍を務める知識を注ぎ込んだ孫呉海兵隊。加え て総大将の孫策も恋を超える実力を持ってる上に美周嬢こと周瑜、 漢で一番の実力を有した孫呉水軍だ。 現段階でもし敵になったらまず勝てないだろう。というよりも本当 に現段階では孫呉による天下統一も可能だろうが、孫策が前に言っ ていた。 。 私が戦う理由は民や家族を守る為。だから本音を言ったら天下な んて興味も無い その言葉に偽りは見当たらなかった。恐らくは真実だろう。 そう考えていると前方に馬に乗った味方がやって来た。軽歩兵の装 備を身に纏った斥候部隊の兵士だ。 ﹁報告致します‼倉亭にて火の手が挙がっております‼﹂ ﹁火の手やて⁉﹂ ﹁まさか・・・袁紹軍の奴等‼﹂ ﹁周辺には袁紹軍の牙門旗‼倉亭に暮らしていた民が次々と奴等の 手に‼﹂ ﹁くそっ⁉外道が‼愛紗と霞は一緒に‼騎馬隊を連れて急行するぞ ‼﹂ ﹁御意‼﹂ ﹁任せときぃ‼﹂ ﹁詠は後続部隊の指揮を任せる‼到着したら俺達の動きに併せて支 580 援を‼﹂ ﹁わかってるわ‼﹂ 飛燕 ﹁さあ皆いこう‼民を救い出すんだ‼﹂ ﹃応っ‼﹄ そう指示すると俺は乗っている愛馬 行する。 を走らせ、倉亭へと急 倉亭の集落からは確かに火の手が挙がっていた。遠くには民が備蓄 したとされる食料を運び出す袁紹軍の姿。更に斬り捨てられた老人 や村人の死体。 中には両手両足を縛られ、慰め者にされた後に腹を斬られて命を落 とした女性の死体もあった。 俺は怒り浸透の状態で神龍双牙を抜刀すると、敵兵目掛けて突入を 開始する。 ﹁突っ込む‼霞は回り込んで撹乱を‼﹂ ﹁了解や‼﹂ ﹁ご主人様に続けぇ‼﹂ やがて集落に突入して敵を斬り倒す。袁紹軍は俺達が来るなんて予 想すらしていなかったようであり、略奪した品をその場に投げ捨て ると逃げ出そうとしていた。 ﹁一人も逃がすな‼奴等に自分達がやった重さを思い知らせてやる のだ‼﹂ 俺の側で走らせる愛紗も青龍偃月刀を握りしめ、逃げ出す敵兵の背 中を斬り倒す。義の刃とも軍神とも呼ばれている彼女の実力は恋に 581 次ぐもので、馬から飛び降りたと同時に次々と倒していく。 俺も逃げ出そうとしていた一団の前に立ち塞がると剣先を殺気と共 に向けた。 ﹁このクソッタレが・・・死ぬ覚悟は出来てるだろうな?﹂ ﹁へっ・・・・・・へん‼テメエ見たいな優男にま・・・負ける筈 がねえんだよ‼やっちまえ‼﹂ 完全にひるんでいる状態で10人ほどが剣を片手に突っ込んで来た。 俺は小さく溜息を吐くと神龍双牙を繋げて薙刀にすると、それを数 ﹁北郷流二刀心眼術・・・ 皐月 皐月 をお見舞いする。薙刀にした神 ‼﹂ 回ほど回転させて構える。 北郷流二刀心眼術二の大刀 龍双牙を縦横無尽に回転させ、足と手首の向き次第で予測不可能な 剣裁きを使える対同時攻撃手段である。 ﹁ふ・・・ひぃいいいい‼??﹂ ﹁逃がしは・・・しない‼﹂ 僅か2秒足らずで10人を斬り裂き、指示した敵はその光景に恐怖 を抱き、槍を捨てて逃げ出したがそうはいかない。 俺は倒した敵兵の槍を広い、それを思いっきり投げた。ほぼ垂直で 飛来した槍は敵兵の首を貫通して、首を吹き飛ばした。 ﹁愛紗‼民間人を安全な場所に避難させて‼俺は敵を片付ける‼﹂ ﹁はい‼ご主人様‼お気をつけて‼﹂ ﹁愛紗も気をつけてくれ‼軽歩兵隊は俺に続け‼街の中心地に向か うぞ‼﹂ 582 ﹃応っ‼﹄ 俺は愛紗に民を任せると軽歩兵100人を連れて集落の中心地へと 急行する。 戦闘開始から15分が経過した頃に、詠が指揮する後続部隊が到着。 詠は騎兵隊を駆使して敵を追いかけ回し、やがて丘に展開していた 弓兵と弩兵が射程距離に飛び込んで来た敵を次々と射抜いていく。 民間人の退避が完了させると、後方に回り込んだ霞率いる騎馬隊が 敵の退路を遮断。そこから敵を締め上げて殲滅。敵は完全に戦意を 失い、降伏してくる者も出て来たが、そんな都合がいい場面などな い。俺はもちろん奴らを徹底的に殲滅させる為に再び構える。 戦闘開始から約1時間。展開していた敵部隊は完全に殲滅され、解 ・・・・・・。 放した倉亭と負傷した民を到着した曹操軍に任せ、再び前進する。 目指すは最終目標の 583 第81話:倉亭解放戦︵後書き︶ 官渡の戦いは連合軍の完勝で幕を降ろした。袁紹軍は冀州の藜陽に 退却。そこに全軍を集結させて決戦の構えを見せる。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 連合軍も万全な状態で決戦に挑む。 次回 [袁家討伐] 迷家の命運が尽きようとしている。 第3回キャラクター投票運動部編 第1位:凪 ・あんな後輩が欲しい‼ ・何事も一生懸命で、失敗した時に見せる恥ずかしいリアクション が可愛すぎる‼ ・後輩だけではなく、彼女として欲しい。 第2位:翠 ・一緒にいると元気になれそう‼ ・信じられない失敗をして涙目で帰ってきたら抱きしめてあげたい。 第3位:蒲公英 ・元気を分けてくれそう。 ・怒れない悪戯でみんなの妹になって欲しい‼ 以上になります。皆様のご投票、大変感謝致します。次回も学園物 になりますので、是非ともご参加下さいませ。 584 第82話:袁家討伐前編︵前書き︶ 連合軍による袁家討伐。レオン率いる第3中隊が先陣を切る。 585 第82話:袁家討伐前編 官渡で敗北した袁紹軍は自身が納める冀州に退却。更に青州と幽州 を任されていた袁紹軍部隊も反乱軍と抵抗軍による連合隊により敗 北。これにより袁紹は文字通り四方八方が敵だらけになる状態だ。 それ程にまで袁紹に対する反発が凄まじいということだ。 しかしそんな状況であっても袁紹は敗北を考えておらず、あり得な いことに俺達に無条件降伏を通達して来たのだ。 曹操は中身を見ないでその竹簡を大鎌の絶で叩き割り、降伏の使者 を追い返した。 そして曹操は袁紹をもはや害悪でしかないと判断し、捕らえ次第に その場で斬首にするという命令を発した。 そして俺達は袁紹軍が集結している藜陽へと軍を進ませ、暫しの睨 み合いを行なった後に両軍がぶつかり合った。 Четвертын 排除に向かう‼﹂ Таракан︵チトヴョールトゥイ・ ﹁パニッシャーからストーム‼敵陣地左翼に到着‼これよりターゲ ット タラカーン/ロシア語で第4のゴキブリ︶ <了解しましたパニッシャー。情報によりますとタンゴは敵左翼の out!!﹂ 陣地指揮所で確認。周辺には袁紹軍が展開。注意してください> ﹁了解したストーム‼忠告に感謝する‼パニッシャー 俺達第3中隊はターゲットのチトヴョールトゥイ・タラカーンを排 除する為に左翼の斜面を駆け登っている。 俺達がチトヴョールトゥイ・タラカーンと読んでいるのは袁家三女 586 の袁煕 顕奕の事であり、レイヴンによる偵察写真によって位置は 丸わかり。 更に忍び込んだ細策と民間からの通報により、不仲である二人の姉 と一人の妹を仲介しているらしい。 これにより袁紹軍は一定の連携を保っているが、奴さえ仕留めれば 連携は一気に瓦解する。俺達は曹操軍軍師の郭嘉が考えた策の第一 陣ということだ。 因みにロシア語にした理由は、特に無い。母親がロシア人であると いう少佐が言い出したからそうなっただけだ。 顕奕が袁紹の妹だというのには露蘭並みに 俺もMKA1919A1で射撃を加えながら前進する。 余談だが中佐達は袁煕 驚いていた。 城に核弾 中佐によると奴は本来、袁紹の子供だったらしく、性別が変わって いることよりもそっちに驚いていた。 しかしあんなクソッタレがあと3人もいると考えたら、 頭を撃ち込んで一族全員を根絶やしにしてやりたい。 そんな事を考えながらMKA1919A1やM45、OKC−3S、 龍舌を切り替えながら部下達と共に攻撃する。 ﹁大尉‼ユニフォーム3が支援に加わりました‼﹂ ﹁よし‼前に出させろ‼﹂ ﹁了解です‼チャーリーからユニフォーム3‼前に出て突破口の確 保を‼﹂ <了解‼前進します‼> 少ししてから支援車であるM1114に強化装甲を追加装備したM 1151が二輌、俺達の側を通過して搭載されているM2で前方に いた敵集団に12.7mm弾の雨を降らせる。 587 敵はなす術なく次々と身体をミンチにされ、俺達も少し離れてから 前進する。 ﹁全隊‼ユニフォーム3に続け‼このまま一気にタンゴに接近する ぞ‼﹂ ﹃了解‼﹄ <ストームからパニッシャー。前方の丘150mに敵のトラップを 確認。丸太で下敷きにするみたいです> ﹁全隊停止‼グレネーダー前へ‼﹂ 指示すると全隊がその場で停止して、俺の側にHK416+M32 0A1を装備したグレネーダー3名がやって来た。 lock‼﹂ ﹁目標‼前方の丘‼11時方向‼距離150‼狙え‼﹂ ﹁Target this!!﹂ ﹁Fire‼﹂ ﹁Take 攻撃指示でグレネーダー3名はM320A1のトリガーを引き、M 433高性能炸薬多目的榴弾を発射。 撃ち込まれた榴弾は2発が丸太に、残り1発が少し下に着弾して、 固定されていた丸太が転がり落ち、下にいた袁紹軍兵士を下敷きに していく。 ﹁目標の排除を確認‼﹂ ﹁前進再開‼俺に続け‼﹂ ユニフォーム3の支援を受けながら袁煕がいる砦へと向かうが、そ れほど時間は掛からなかった。砦は丘の頂上に位置しており、俺達 は窪みに身を隠しながら射撃を加える。 588 砦の周辺には弓兵が弓兵を射るが、強化装甲で護られたM1151 にはごく小さな傷をつけるだけで、俺たちには絣はするが致命傷に なる位の負傷者は出ていない。 ﹁流石に激しいな‼﹂ ﹁大尉‼このままでは突破不能です‼﹂ ﹁迫撃砲を使え‼奴等を一網打尽にするんだ‼﹂ M224による制圧砲撃を指示すると少ししてから迫撃砲弾が砦の 周辺にいた敵部隊を巻き込み、周辺には爆発音が鳴り響く。恐らく は両軍の本陣にまで聞こえるだろう。 ﹁いいぞ‼砲撃中止‼マークスマンは残って援護射撃‼それ以外は 得物に切り替えろ‼一気に周辺の敵を片付けるぞ‼﹂ ﹁了解‼・・・聞いた通りだ‼海兵隊魂をクソ野郎共に見せつけて やるぞ‼﹂ ﹃Hoooah‼﹄ 部下達はそれぞれの得物、もしくはHK416にOKC−3Sを着 DMRⅡを装備しているマークスマンは新し 剣。俺も背中に背負っていた龍舌の柄に手を掛ける。HK417 DMRとHK417 いマガジンに交換して援護射撃に備える。 ﹁突撃‼前へ‼﹂ ﹃うぉらああああ‼﹄ 俺を先頭にして大声を出しながら全員が突撃を敢行する。後方には 援護射撃をするマークスマン達とM1151によるM2の射撃。 その気迫を前にして敵は次々と命を散らしていく。 589 ある者は片手剣で斬り捨てられ、ある者は銃弾の餌食に、またある 者はOKC−3Sを突き刺されて死んでいく。 ﹁おらおらぁ‼‼死にたくない奴はとっとと失せろ‼さもないとあ の世に送ってやる‼﹂ 龍舌を縦横無尽に振り回し、向かってくる敵を纏めて切断する。龍 舌の欠点は20kgという重量だが、その分の破壊力は抜群。 斬りつけ、潰す。それが龍舌の使い方だ。 ピクセルグリーン、LHWヘルメット、 瞬く間に周辺には袁紹軍兵士の死体だらけになり、俺のMTVアー マーベストやMARPAT 更に龍舌には敵の返り血で真っ赤だ。 しかしそんな細かいことを気にしている時間はない。周辺を制圧し て門の左右に張り付く。M1151は周辺を警戒。一個小隊が突入 する為に準備する。 ﹁城門にC4を仕掛けろ‼﹂ ﹁了解‼﹂ アサルトバックにC4を納めていた部下がC4を取り出し、それを 城門に設置すると安全な場所に退避する。 ﹁いいぞ、やれ‼﹂ ﹁ドカーン‼﹂ C4の点火器を操作して、城壁を吹き飛ばす。 590 ﹁Charge!! Move move!﹂ Mod1で発砲 起爆と同時に俺はMKA1919A1を発砲しながら突入。部下も それに続き、HK416やHK417、Mk46 しながら突入する。 その先には袁紹と顔が似ているが、髪型がウェーブからツインテー ルに変更したクソッタレの女がいた。 顕奕だな⁉﹂ ﹁な・・・なんですの⁉﹂ ﹁動くな‼袁煕 ﹁くっ・・・だ・・・・・・だったらどうだというのですの⁉汚ら わしい優男の分際で私の名前を呼ぶと汚れてしまいますわ⁉﹂ ﹁犬猿の姉妹を取り持って苦労してるだろ?・・・いっそ、俺が楽 にしてやるよ‼﹂ 俺は部下にMKA1919A1を預け、龍舌の剣先を向ける。 ﹁や・・・優男の分際で不遜な物言いですわね⁉そ・・・その軽口 を叩けないようにして差し上げますわ‼﹂ 袁煕は完全に怯んでいるが、強がって剣を構えて斬りかかってきた が、はっきりいって素人の構えだ。剣の持ち方自体、手の位置が逆 になっているし、肘も無駄に曲がっている。 俺は少しだけしゃがんで肩に担いだ龍舌で受け止める。 ﹁なっ⁉﹂ ﹁はっきり言うと・・・今までの敵の中で弱すぎる‼﹂ お世辞にも本当に弱すぎる。受け止めた剣を軽く弾き飛ばし、回転 591 しながら龍舌でこの女の両腕を斬り落とす。 ﹁き・・・きゃあぁあああ‼わ・・・・・・私の華麗な手がぁ⁉﹂ ﹁その声を聞くだけで腹が立つ‼とっととくたばりやがれ‼﹂ 本気で腹が立つので、俺は龍舌を構え直して、刺突で袁煕の顔目掛 けて仕掛け、口より上を切断。残ったのは腕がない顎より下からの 死体。死体は音を立てながら倒れ、転がってきた奴の顔を龍舌で潰 した。 ﹁敵将袁家三女袁煕‼討ち取った‼﹂ ﹁Hoooooah‼‼﹂ 周囲から部下達の勝鬨が挙がり、それを見た袁紹軍兵士達は戦意を Тара 完全に消失させ、武器を捨てると両手を上げて降伏してきた。 ﹁ストーム‼こちらパニッシャー‼Четвертын канを排除‼繰り返す‼目標を排除‼残った敵兵は降伏‼﹂ <タンゴダウンを確認。中佐達に伝えます。第3中隊は攻勢まで周 辺を消毒してください> ﹁了解だ‼out!!・・・捕虜を一箇所に集めろ‼このまま消毒 を続けるぞ‼﹂ ﹃了解‼﹄ タンゴダウンで俺達は捕虜を集め、完了すると残敵を掃討して、攻 勢開始まで周辺を警戒する。袁煕を仕留めたことで袁紹軍の連携は 瓦解するだろう。 次女と四女を葬り、最後は長女を殺すだけ・・・・・・・・・。 592 第82話:袁家討伐前編︵後書き︶ 海兵隊の誇り,Re 顕甫。これを担当するのは雪蓮率いる孫呉海 袁煕が討ち取られたことは瞬く間に広がり、袁家は連携を失う。次 の目標は四女の袁尚 真・恋姫無双 兵隊だ。 次回 [袁家討伐中編] 小覇王、戦場に舞い踊る。 593 第83話:袁家討伐中編︵前書き︶ 小覇王と銀狼、戦場を駆け巡る。 594 第83話:袁家討伐中編 袁家三女の袁煕がレオンによって討ち取られたというニュースは瞬 く間に広がった。 郭嘉の策通り、仲介役がいなくなった袁家の3人は連携を無くし、 それぞれが保身に走って互いを前に出させようとする。 指揮系等の欠如と士気低下を確認した曹操は行動を開始する。次の ターゲットは次女の袁譚と末っ子の袁尚。 そして右翼にいる末っ子の袁尚を討ち取るべく、私が指揮する孫呉 海兵隊が戦闘を繰り広げていた。 ﹁臆するな‼敵は数だけの烏合の衆‼我ら孫呉の敵ではない‼﹂ ﹃応っ‼﹄ 流石はライルが将軍を務める部隊だけのことはあるわ。一般兵であ ってもその武や勇猛さ、連携は私達の兵と比べても強力。 全員が弱い相手だからと油断せずに連携で戦い、それぞれが得物の 長所短所を埋めてある。 だけど私も負けてはいられない。馬に乗り、袁紹軍兵士を南海覇王 で斬り伏せながら、殺気や覇気を敵にぶつける。 文 伯符‼我の首を討ち取る者がいるならば前に出よ‼﹂ ﹁我は孫呉の王‼江東の虎と呼ばれ、孫呉を築いた英雄、孫堅 台の子‼孫策 檄を飛ばし、味方の士気を高めると同時に敵の士気を落とす。冥琳 もこれが皆を率いる者としての責務と言っていた。 595 まあ、私は負ける気はしないけど。 ﹁くっ・・・・・・たかだか一人の女相手になにしてやがる⁉束に なって掛かれ‼﹂ 向こうの指揮官らしい男が指示して私に10人以上で斬りかかって 来たが、彼がそれを許すはずが無かった。私の後ろから聞こえてく る乾いた音。そして同時に倒れる敵兵達。 私の後ろには武器を構えるライルだ。さっきの攻撃はライル達によ る援護で、大丈夫なんだけど私の護衛をしてくれているのだ。 そしてライルが武器を抱えながら、彼の愛馬に乗って私の側に歩み 寄って来た。 ﹁雪蓮殿・・・あまり無茶なことはしないで頂きたい﹂ ﹁あら?だって冥琳に言われたんだも∼ん♪﹂ ﹁それにしたって他にもやり方があるでしょ?敵の士官や将を討ち 取るとか・・・﹂ ﹁ブーブー‼だって袁紹軍の兵士ってすっごく弱いんだもん‼それ じゃ退屈‼﹂ ﹁退屈ってね・・・﹂ ﹁それにぃ∼♪私の背中はライルが護ってくれるから平気だし♪﹂ 戦場に不釣り合いの無垢な笑みを浮かべる私にライルは顔を赤く染 めて視線を外してしまう。 もう、本当に可愛いんだから♪ そんな空気に痺れを切らしたのか、敵の士官が剣を片手に斬りかか って来た。 ﹁なにいちゃついてやがる⁉うざったいんだよ・・・・・・﹂ 596 剣を振りかざそうとした瞬間、私はその男の胴体。ライルは首を切 断して斬り捨てた。 ﹁まあ、あなたが討たれるというのは想像出来ませんが、早く我ら も役目を果たしましょう﹂ ﹁もう、ライルも相変わらず真面目なんだから♪︵そんな不意にカ ッコいい顔をしないで‼目を合わせられないじゃない・・・︶﹂ 恐らく私の顔は赤いと思う。しかしライルも普段は冷静沈着で凄く 強いけどみんなに優しくって、時折見せる変化がある表情も飽きな いし、本人は隠してるつもりだろうけど、かなりの照れ屋さん。 みんなもそんなライルに心を惹かれて、集まる。だけどいつまでも こんな雰囲気を味わっている訳には行かない。心を落ち着かせて南 海覇王を掲げる。 ﹁このまま突き進め‼我とライル将軍と共に袁尚の首を獲るぞ‼﹂ ﹃応っ‼﹄ ﹁総員突撃‼孫策殿に続け‼﹂ 私を先頭にライル達も私に続いて突撃を敢行する。敵はその光景に 恐れを抱いたのか、得物を捨てて逃げ出す。しかし奴等に逃げきれ るということはないだろう。 敵は我々に斬り捨てられ、そのまま亡骸は踏み潰されてしまうから だ。 怯んだ敵を蹴散らしながら袁尚がいる右翼の砦へと到着。周辺の制 圧をみんなに任せると私とライルは馬に乗りながら砦へと殴り込み を掛けた。どういう訳か門は開けっ放しだったので、簡単に入る事 597 が出来た。 ﹁な・・・何事ですの⁉﹂ 砦の中央付近に見るだけで腹立たしい女がいきなりの来客に驚愕し ているようだ。 顕甫ね?﹂ 髪型とスタイルが違う少しだけ小太りの体型だが顔がそっくりなの ですぐに分かった。 ﹁あなたが袁紹の妹の袁尚 ﹁そ・・・・・・そうだとしたらどうだというのですの⁉﹂ ﹁分からないか?・・・・・・ここは戦場だ。あんたは逆賊袁紹の 妹で、俺達はそれに敵対する連合軍所属だ﹂ ﹁そうよ♪それにこうやって敵同士が目の前にいる目的はただ一つ ♪﹂ そうすると私とライルはそれぞれ馬から降りて、南海覇王と神斬狼 の鋒をこの女に向けた。凄まじい殺気と共に・・・。 ﹁﹁貴様の首を貰う為だ‼‼﹂﹂ ﹁ひいっ⁉な・・・何をしてますの⁉早くこの汚らわしい獣を始末 なさいな‼﹂ 袁尚が指示を下すとゾロゾロと敵が湧いて来た。全員が私達に怯ん で腰が引けている。 ﹁舐められたものね?﹂ ﹁ええ、この程度の数で俺達に勝とうなどとは・・・﹂ ﹁右側は任せるわね?﹂ ﹁了解です。しかし手早く片付けましょう﹂ 598 そういうと私達は左右に別れて敵を食らい始める。ここからは言葉 は不要と思う。敵兵は私達の武を前になす術なく命を散らせ、まと もに攻撃が出来ない状況だ。 恐らくは100人近くで仕掛けて来たのだろうけど、雑魚はどこま でも雑魚。 私の血には一つ問題がある。一定量以上の返り血と一定時間を超え て闘い続けると、一時的な戦闘狂になってしまう。 身体が熱くなり、血が欲しくなる。 だけどこんな連中が相手だとその傾向は見られないようだ。 対してライルは本当に凄い。ライルは冷静さを常に保ってられるし、 剣技や格闘技だけではなく、状況に合わせて短剣の二刀流や銃に素 早く切り替えて対処する。 雑兵では敵うはずがなく、数分後には周辺に死体だらけになってお り、私達の身体や武器には敵の返り血。その光景はまさに修羅。地 獄という言葉が生易しい状態にも思える。 周辺の敵を排除し終わり、私達は腰が抜けて震える袁尚にそれぞれ 刃を向けた。 ﹁さて♪邪魔はなくなったし、死ぬ用意は出来た?﹂ ﹁いやっ⁉死にたくありませんわ‼い・・・命だけは・・・・・・ そ・・・そうですわ‼わ・・・私の側近にして差し上げますわ‼そ うすればお姉様を殺して私達だけで天下を統一出来ますてよ⁉﹂ 599 ここまで往生際が悪い奴はそういない。しかも現状に目をやらず、 ただ死ぬのに抗う。私達は溜息を吐きながら武器を構える。 ﹁・・・・・・遺言は・・・﹂ ﹁・・・・・・それだけか?﹂ ﹁まっ・・・・・・﹂ 最早時間は与えない。私は袁尚の首、ライルは心臓に突き刺して息 伯符とライルが討ち取った‼﹂﹂ の根を止めた。私はライルと共に袁尚の落とした首を拾い上げ、点 高く掲げた。 ﹁﹁敵将袁家四女袁尚‼孫 ﹃わぁあああああああ‼‼﹄ 私達の勝鬨に兵士達は得物を掲げた。周辺にいた袁紹軍は次々と降 伏して行き、中には袁紹に反発して共に闘いたいと志願してきた兵 士もいた・・・・・・。 600 第83話:袁家討伐中編︵後書き︶ 海兵隊の誇り,Re に向かえる。 戦線の左右は制圧出来た。これで中央に展開している袁譚を討ち取 れば、袁紹軍の戦線は崩壊して、最終目的の 真・恋姫無双 中央線戦を担う曹操軍も進撃を続けていた。 次回 [袁家討伐後編] 魏武の猛追、刮目せよ。 601 第84話:袁家討伐後編︵前書き︶ 魏の拳闘士、龍と共に舞い上がる。 602 第84話:袁家討伐後編 三女の袁煕に続き四女の袁尚が孫策軍によって斬られた。これで袁 紹軍の戦線は左右を抑えられ、袁家も残るは長女の袁紹と次女の袁 譚のみとなる。 藜陽の中央線戦にはその次女である袁譚の軍勢と曹操軍が凌ぎを削 っていた。 ﹁突き進め‼奴等に魏武の強さを死をもって見せつけてやれ‼﹂ 牙刀隊長は部下に檄を飛ばしつつ、斬りかかる敵を返り討ちにする。 隊長の武は本当に素晴らしい。的確に相手の隙を見つけだし、豪の 中に柔を交えた洗礼された武。 赤色の偃月刀がまるで真紅の閃光を描くように敵を裂き、束ねられ た私と同じ銀髪が光を反射して見えるような感覚になる。 その間に敵が自分を討ち取る為に斬りかかってきたが、両腕に装着 している手甲の閻王に氣を送り込み、そいつの懐に飛び込むと喉に 一撃を食らわせる。 ﹁隊長に遅れを取るな‼後に続けぇ‼﹂ ﹃応っ‼﹄ ﹁かぁ∼‼凪の奴、がんばっとるなぁ‼せやけどうち等も突き進む でぇ‼﹂ ﹃ウラァアアアア‼﹄ ﹁お前等もっと突っ込むのぉ‼その腐ったケツ引き締めてクソッタ 603 レな奴等にぶちこんでやるのー‼﹂ ﹃サー・イエス・サー‼﹄ 自分の部隊に続いて真桜と沙和の隊も周りにいる敵を次々と倒して 行く。自分達にはそれぞれ200人ずつの兵が与えられ、真桜の隊 は本来は工兵隊であるが地形的には攻城兵器などは使用できない。 しかし通常戦であっても充分に敵を駆逐できる程の実力は有してい る。 ﹁凪‼左の奴等から掃討するぞ‼﹂ ﹁はい‼突入します‼楽進隊続けぇ‼﹂ 自分は命令すると同時に敵が固まっている辺りに飛び上がり、足に 氣を集中させる。 ﹁我が武器は拳・・・我が鎧はこの肉体・・・岩砕き、鋼も通さぬ 硬気功・・・・・・拳に宿れば炎となり、四肢に満ちれば鋼となる・ ・・・・・飛べ‼我が内に燃える炎よ‼﹂ 身体を回転させながら左足に氣弾を集中させ、それを一気に振り上 げた。父が編み出し、自分が最も得意とする必殺技・・・。 ﹁猛虎蹴撃‼‼﹂ 放った猛虎蹴撃はしっかりと敵集団に直撃、周辺の敵を一掃した。 敵は私の攻撃に怯んだのか、その場で足踏みしてしまった。しかし 隊長がそれを見逃す筈が無かった。 ﹁いいぞ凪‼よくやった‼﹂ ﹁はっ・・・はい‼ありがとうございます‼﹂ 604 ﹁敵は怯んだ‼一気にいくぞ‼﹂ ﹃応っ‼﹄ ﹁全軍突撃‼我が漆黒の徐旗に続け‼﹂ ﹃うぉおおおおお‼‼﹄ その勢いに身を任せ、出現する敵を縦横無尽に叩き潰す。 隊長は単独でも自分なんかは足元にも及ばない実力者で、華琳様や 春蘭様達も認めている数少ないお方だ。 自分も隊長と共に向かってくる袁紹軍兵士を倒しながら、袁譚がい るとされる砦へと向かう。私達が中央を確保したら最後は劉備軍の 北郷殿率いる部隊の出番になっている。 連合の中で機動力に跳んだ部隊だ。騎馬を活かして袁紹軍本陣へと 雪崩れ込み、袁紹を討つ。その為に左右を抑えたのだ。 自分達は一気呵成に攻めたて、目標の砦の周囲にいた敵を制圧する とすぐに城門を真桜の螺旋槍で穴をあけ、自分の勇龍拳波でそれを 広げたら砦内部に突入した。 ﹁門が開いた‼今こそ袁譚を討ち取り、勝利へと邁進せよ‼﹂ ﹃応っ‼﹄ 自分達の後を直ぐに隊長が部隊を引き連れて砦内部に戸津乳してい き、内部にいた袁紹軍と競り合いを開始するが、その中に剣を持っ た女がいた。 ﹁何をしてらっしゃいますの⁉さっさと敵を片付けてしまいなさい ‼﹂ 605 部下達には無理やり戦わせ、自分は後ろで守られながら戦おうとも しない卑怯者・・・髪型も顔も良く似ていたのですぐに分かった。 こいつが袁家次女の袁譚だと。 ﹁隊長‼﹂ ﹁委細承知‼ここは我等が食い止める‼その隙に凪が奴を討ち取れ ‼﹂ ﹁凪‼任せときぃ‼﹂ ﹁凪ちゃん頑張るなの‼﹂ 隊長達の声援を受け、袁譚目掛けて姿勢を低くしながら一気に駆け 寄り、周りの護衛を先に片付ける。 敵兵は槍を突き出してきたが自分はそれを簡単に蹴り折り、頭蓋骨 を粉砕させ、時には手刀で相手の心臓を貫いたりと、ものの数秒で 制圧。 だが直後に袁譚が刺突を仕掛けてきた。 ﹁私が・・・私があなたのような醜い方に負ける筈などありはしま せん‼﹂ 自分は身体を横にして刺突してきた剣を両脇と背中で挟み込み、動 けないようにしっかりと押さえ込んだ状態から一気に力を込めて、 袁譚が持っていた剣を柄の部分から一気に粉砕。 ﹁ひぃっ⁉﹂ ﹁袁譚、お前の負けだ。潔く覚悟を決めろ﹂ 自分は手刀の構えを取りながら袁譚に覚悟を決めさせる。一方で死 にたくない奴は涙しながら必死に抵抗しようとする。 606 ﹁お・・・お待ちなさい‼わ・・・私を殺めたらどうなるかお分か りですの⁉私が死んだらこの国は大損害を受けるのですよ⁉﹂ ﹂ ﹁・・・・・・そんな訳がないだろう?﹂ ﹁い・・・いやぁあああ‼ 最後の最後まで往生際が悪い。自分は有無を言わせずに手刀でこの 女の首を刎ね、頭が無くなった身体からは大量の血が吹き出し、音 を立てて地面に倒れる。 文謙が討ち取っ それを済ませると袁譚の首を手に取り、天高く掲げた。 ﹁敵将袁家次女袁譚‼曹操様が配下、徐晃隊‼楽 たぁ‼﹂ ﹃うぉおおおおお‼‼﹄ 周りからは部下達が歓声を挙げ、自分達の将が討たれたことで士気 が地に落ちて、降伏する者と逃げ出す者と綺麗に分かれた。 ﹁凪ぃ∼‼﹂ ﹁凪ちゃ∼ん‼﹂ 少ししてから手を振りながら真桜と沙和が駆け寄って、後ろから隊 長が歩み寄ってきた。 ﹁やったやん凪‼ごっつい手柄やで‼﹂ ﹁おめでとうなの‼﹂ 駆け寄って来た二人に抱きつかれ、勝利の賛美を受ける。そこへ隊 長がすぐ側に歩んで来た。 ﹁隊長・・・袁譚の首です﹂ 607 ﹁うむ、よくやったな。凪﹂ そういうと隊長は笑みを浮かべながら自分の頭に手を置き、軽く撫 で始める。 ﹁た・・・・・・隊長・・・﹂ ﹁凪ぃ∼♪顔が真っ赤やでぇ∼♪﹂ ﹁いいなぁ∼。沙和も隊長にナデナデして欲しいの∼♪﹂ ﹁?﹂ 自分の顔は恐らく真っ赤だろう。だが自分がなぜ真っ赤なのかは隊 長は理解できないだろう。自分達が袁譚を討ち取った時点でこの戦 場における袁紹軍の戦線は瓦解した。 その間に劉備軍の騎兵部隊が一気に袁紹軍本陣へと奇襲を仕掛け、 袁紹が捕らえられたと思ったが・・・・・・。 ﹁袁紹がいない?﹂ ﹁ああ、俺達が乗り込んだ時には既にいなかった。戦闘中に自分だ け真っ先に逃げ出したと捕虜が言っていた﹂ 城以外 袁紹は逃げ出していた。自分達はこれで戦いが終わると思っていた がそうは行かなかった。 ﹁だけどあの馬鹿猿はどこ行っちゃったんだろ?﹂ 城か﹂ ﹁雪蓮殿、奴が逃げ出す先は一箇所しかありません﹂ ﹁・・・・・・ ライル殿は軽く頷く。確かに奴に逃げ出せる場所はもはや 608 に残されていない。 なにしろ反乱や暴動で袁紹に味方をする一団は無いに等しく、この 藜陽で大量の捕虜を獲得して、袁紹には兵士は無くなったに等しい。 ﹁だけどすぐには兵を動かせないわ。流石に皆を休ませないと﹂ ﹁曹操殿、我等が行きましょう﹂ ﹁ライル?﹂ ﹁奴をこれ以上野放しにしているとなにしでかすか分からない・・・ 。ここは即行動が大事です﹂ ライル殿は即時行動を進言する。確かにこれ以上は危険。だったら 直ぐにでも行動に移り、袁紹を討ち取る必要があるが、連合の疲労 も歪めない。 しかしライル殿達なら可能な気がする。 ﹁・・・いいわ﹂ ﹁曹操殿?﹂ ﹁しかし私達はここで軍を休ませる。袁紹追撃はあなた達に一任す るけど、いいかしら?﹂ ﹁了解です。雪蓮殿と冥琳殿もよろしいでしょうか?﹂ ﹁構わないわ♪﹂ ﹁うむ、確かに我等も疲労感が歪めないからな。ならばライル達に 任せるしかないだろう﹂ ﹁ありがとうございます。では、すぐに出撃しますので・・・﹂ 城へと向かって行った・ ライル殿はそういうと連合軍本陣を後にして、暫くしてからライル 殿達が使用していた鉄の車に乗り込んで、 ・・・・・・・・。 609 第84話:袁家討伐後編︵後書き︶ 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 城へライル率いるハンターキラーが急行する。 黎陽も連合軍の勝利で幕を閉じたが袁紹はいなかった。捕虜の情報 で 次回 generation] 第二章最終回 [New 暴家滅亡後に新たな時代が始まる。 610 第85話:New generation︵前書き︶ 終戦と次世代に向け、狼が駆け抜ける。 611 第85話:New generation 城へと逃げ出していた。 藜陽での決戦に勝利したのも束の間、敵総大将の袁紹は戦わずして 妹3人を見捨てて 城へとハン しかし連合軍の疲労も歪めず、素早い追撃は不可能の状態だった。 そこで俺はハンターキラーを率いて袁紹が逃げ込んだ ヴィーを走らせていた。 ﹁素早く行動し、袁紹に逃げられる前に対処するぞ‼﹂ ﹃Hoooah!!﹄ ﹁奴に逃げられたらもう追撃は不可能になる‼チャンスは一度きり 城へ逃げ込ん 城に逃げ込んだことは最大のチャンスでもあるが、同時に最 だ‼﹂ 奴が 後のチャンスでもある。兵力は皆無に等しい袁紹が だら逃亡するのに時間が掛かるが、万が一にでも逃亡を許したら周 辺は混乱している。 城へ殴り込み、 そんな状態だと追撃は不可能になって、俺達の祈願は達成出来ない。 だから俺達はハンヴィーを使用した強襲で一気に 脱出路を維持しつつ袁紹を拘束もしくは排除するのだ。 ﹁ハンター2‼突入を開始しろ‼﹂ <了解‼突入します‼> <こちらハンター3‼攻撃開始‼> 612 ハンター3が搭乗するハンヴィーのM134Dから7.62mm弾 の雨が敵に降り注ぎ、城門前にいた衛兵を排除。 開けっ放しになった城門から内部にハンヴィーごと突入して少しし てから停車。 MASSに切り替えて 俺も助手席からM45をホルスターから抜いて近くにいた敵に発砲。 降車するとM45からHK416+M26 城内にいる敵部隊に発砲する。 ﹁予定通りだ‼ハンター3は留まってハンヴィーを死守‼残りは突 入して奴を探すぞ‼﹂ ﹃了解‼﹄ そういうと敵襲を知らせる銅鑼が鳴り響く中、俺を先頭にハンター 1とハンター2が後に続き、ハンター3はハンヴィーに留まってM 134Dによる援護射撃を開始する。 敵はやはり数がかなり少なくなっているようであり、しかも交戦せ ずに逃げ出す始末だ。 D 俺達は交互支援で出現する敵を次々としとめる中、途中でハンター 2と分かれて奴がいる可能性が一番高い玉座の間へと向かう。 ﹁左の部屋から敵‼﹂ ﹁排除しろ‼﹂ 後方で俺をカバーしていたハンター1−2が素早くHK417 MRⅡの照準を合わせて発砲。敵の額に命中して敵は壁にもたれか かりながら倒れる。すると出現した敵の後ろから悲鳴が聞こえたの で照準を合わせながら伺う。 ﹁動くな‼両手を頭の上に‼﹂ 613 ﹁ま・・・待ってくれ⁉殺さないでくれ‼﹂ 銃口を向けながら敵に降伏を勧告する。すると文官の太った男は素 直に両手を頭の上に置いて従う。 ﹁袁紹は何処だ⁉言えば見逃してやる‼﹂ ﹁ひぃ⁉・・・や・・・奴なら自分の部屋にいる‼﹂ ﹁何処だ⁉﹂ 俺はHK416のストックで軽く殴ると、倒れながら必死に命乞い をする敵文官。正直に言うと情けない。 ﹁ぐわっ⁉な・・・殴らないでくれ・・・・・・この先の突き当た りの部屋だ‼﹂ ﹁本当だろうな⁉﹂ からの情報を思い出す。 ﹁ほ・・・本当だ‼この逢紀の名前に誓う‼﹂ 俺は名前を確認すると、烏巣で救出した張 袁紹と同じく保身しか考えていなく、兵や民を蟻呼ばわりした汚な いクソッタレだ。 からの礼だ‼﹂ 俺はHK416の銃口を外すと素早くM45を抜いた。 ﹁そうか‼これは張 ﹁ま・・・待て⁉﹂ 有無を言わせずこの野郎の額に45.ACP弾を撃ち込み、逢紀は 絶命して音を立てながら廊下に倒れた。 ﹁この野郎の言ったことは本当でしょうか?﹂ ﹁ああ、あれは本当だろう。袁紹の命を掛けてもいい・・・ハンタ 614 ー1−1から全ハンター‼袁紹の位置を特定‼これより急行する‼﹂ <こちらハンター2−1、了解‼> <ハンター3−1了解‼> 位置特定を報告すると再び一列になって廊下の突き当たりにあると される袁紹の自室へと向かう。 暫くして、逢紀が話した通りに突き当たりに部屋があり、他の扉と MASS、HK417 DMRⅡ、M27 IAR、H はあからさまに違う。俺達はそれぞれ左右に位置づき、HK416 +M26 K416+M320A1を構える。 ﹁突入する・・・・・・いいな?﹂ 俺は全員の目を見る。フェイスマスクごしだが全員が同じことを考 えているだろう。 fidelis‼‼﹄ fidelis を叫 ﹁・・・孫呉と・・・・・・民と・・・・・・俺達の為に・・・﹂ ﹃Semper Semper MASSを使用してドアノブを破壊。 俺達のモットーである言葉 ぶと俺はM26 扉を蹴破ると一気に突入する。 ﹁コンタクト‼‼﹂ やはりいた。月殿に濡れ衣を着せて洛陽を脅かし、幽州に侵略して 民と捕虜を虐殺して、更に私利私欲で民を苦しめていた愚者・・・・ ・・袁紹だ。 615 ﹁な・・・なんですの⁉﹂ ﹁動くな‼両手を頭の上に置いてその場に伏せろ‼﹂ ﹁な・・・ゴミの分際で私に指図するのですの⁉私は帝ですのよ⁉﹂ ﹁両手を頭の上に‼やるんだクソ野郎‼﹂ 袁紹に降伏を勧告するが、奴は従うどころか未だに自分が帝だと言 い放つ。 ﹁もう一度いう‼両手を頭の上に置いてその場に伏せろ‼今すぐだ ‼﹂ ﹁お・・・お黙りなさいな‼こ・・・ここの私が貴方のようなクズ に従う・・・ひ・・・必要なんてありませんことですのよ‼﹂ そうすると袁紹は鞘から派手で仕方がない剣を抜刀して構えるが、 恐怖で震えている上に完全に逃げ腰だ。はっきり言って脅威にもな らない。 だがこれ以上は時間を掛けたくない。 ﹁最後の警告だ‼その場に伏せろ‼﹂ 俺達は捕縛対象者に対しては三回まで警告する。その間に降伏する ならよし。しないなら仕留めるだけだ。 だが袁紹はたとえ降伏したとしても連行した先にいる曹操に首を刎 ねられるだろう。 少しだけの沈黙を破るかの如く、絶望の表情をした袁紹は半ばヤケ になって声を挙げながら斬りかかって来た。 ﹁わ・・・私は帝ですわ・・・・・・名族ですのよ・・・それなの に・・・あなたのようなゴミに負けはしないのですわぁあああ‼﹂ 616 ﹁中佐‼﹂ ﹁構わん‼撃てぇ‼‼﹂ もはや逃がしはしない。俺の発砲命令で全員が一斉射撃で袁紹に発 砲。袁紹の身体中に多数の銃弾が命中していき、袁紹は音を立てな がら剣を手放して倒れた。 ﹁撃ち方やめぇ‼﹂ 射撃停止で全員が射撃をやめて新しいマガジンに交換する。確認し たら俺はM45を構えながら慎重に歩み寄る。すると袁紹は微かに だがまだ生きていた。 ﹁め・・・・・・名・・・族・・・・・・が・・・・・・ま・・・ けは・・・﹂ ﹁・・・お前が負けた理由は単純だ・・・・・・外道の道に踏み込 んだ時点でお前は死んだようなものだ﹂ そういうと俺はM45の照準を袁紹の額に合わせて、トリガーを引 いて発砲。この愚かで哀れな女にトドメを刺した。 袁紹殺害を完了させると俺は通信機で連絡を入れる。 ﹁ウルヴァリンからオーバーロード﹂ <こちらオーバーロード。感度良好> ﹁報告する。タンゴダウン。繰り返す、タンゴダウンだ。袁紹は死 んで、この戦いに終止符を打った﹂ out﹂ <タンゴダウン確認。作戦終了。増援を送ります> ﹁頼む、ウルヴァリン 通信の向こうからタンゴダウンを聞いて歓声が挙がったのを聞きな 617 がら通信を終了させる。 城の城門前に晒されることにな 袁紹が死んだことは瞬く間に全土に広がり、奴の首は斬り落とされ、 見せしめとして槍に突き刺されて った。 この戦いは連合軍の勝利で幕を閉じ、袁紹軍が治めていた領地は全 て事前に根回ししていた曹操軍が統治することになり、袁紹の遺産 も半数が曹操軍に渡る。 俺達には攻城兵器全て、一刀達には黄河における貿易優先権と兵力 を確保した。 袁紹を討ち取った俺には討逆将軍への昇格が決まり、正真正銘の英 雄となった俺達は戦後処理が完了次第、すぐに呉への帰路に就いた。 城。俺はクラス ブルードレスを着て一刀と桃香の部屋に来ていた。 そして、戦いが終結してから半年後の徐州の下 B ﹁よく似てるじゃないか﹂ ﹁えへへぇ∼♪可愛いなぁ∼♪﹂ ﹁ライルさん、本当にわざわざ来てくれてありがとうございます﹂ 寝台には桃香。その隣には腰にまで髪を伸ばして三つ編みポニーテ ールにした一刀。 そして彼女の腕の中にはスヤスヤと幸せそうに眠っている新しい命・ ・・・・・一刀と桃香の間に産まれた子供である。 なお、愛紗達は宴の準備で城を空けており、城下からは二人の子供 誕生を祝う為に様々な祝いの品が届けられている。国全体がお祝い 618 状態だった。 産まれて来た子供は男の子で、顔立ちは桃香似で目や口元は一刀と 似ている赤毛が混ざった茶髪の男の子だ。 俺は赤ん坊の頬を軽く触れながら一刀に振り向く。 阿斗 にしました。ね、桃香?﹂ ﹁それで一刀、この子の名前は?﹂ ﹁はい、幼名は ホワイトドレスの胸ポケットから一 ﹁うん♪それでね、大きくなったら姓は劉で名は禅。字は公嗣にす るんだよ♪﹂ ﹁真名は?﹂ ﹁ご主人様♪﹂ A ﹁うん、真名はこれです﹂ そういうと一刀はクラス ・・・﹂ 枚の紙を取り出して、俺に渡す。そこに書かれていた名前は・・・・ 刀瑠︵とーる/劉禅の真名︶ ・・・・・。 ﹁・・・ 俺はその日の晩は宴に出席して戦争とは無縁の時間を過ごした。こ の後、覇道を突き進む曹操との戦いが待っている。 袁紹軍とは比べ物にならない程に苦戦するだろう。だが俺は祖国や 民、更には仲間達の為に武器を取る。 群雄割拠 fin だが今は、平穏の時間を噛み締めよう・・・・・・・・・・・・。 第二章 619 第85話:New generation︵後書き︶ 袁紹討伐から約1年、呉の中でも屈指の重鎮となったライル。彼が 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 休暇を満喫している背後で雪蓮の姿があった。 次回 第三章:乱世の混沌 [ライルの日常生活] ライルの平和な日常生活が明らかになる。 620 第86話:ライルの日常生活︵前書き︶ 第三章[乱世の混沌]。ここに開幕 621 第86話:ライルの日常生活 袁紹の討伐から1年、俺達が呉に仕官してから実に1年半が経過し たある日、袁紹討伐に最も功績を挙げて孫呉軍で宿将である祭殿と 同格の地位を築き、討逆将軍になった俺は、建業の城下町を歩いて いた。 別に警邏をしている訳ではない。今日は業務から解放されて久々の 休暇を満喫しているのだ。 ひとまずは屋台で売られていた猪肉の串焼きを頬張る。だが1つだ け気になることがあるのだが・・・・・・。 ︵コソコソ・・・・・・ジィー︶ ︵一体なにをしてるんだ・・・雪蓮殿は?︶ 隠れながら後を付けてくる雪蓮殿が気になって仕方がない。ひとま ずは気が付いていないフリをしているが、実際はどうすればいいの か分からない状態だし、今朝方のこともあり今は彼女に顔を合わせ られない。 何しろ自分の部屋で目を覚ますと、雪蓮殿が俺を抱き枕にして心地 良さそうに眠っていたのだ。 それだけなら彼女はもちろん、小蓮殿や美羽もたまに忍び込んで来 るから流石に慣れたが、下着姿というのは驚かされた。朝っぱらか ら壮絶な目覚めに加えて物凄い恥ずかしさで顔を合わせられないの だ。 ︵今朝方のこともあるし・・・・・・このまま気が付かないフリを しておこう・・・︶ 622 とりあえず食べ終わった猪肉の串焼きの串をすぐそばにあったくず かごに捨てて、繁華街に向かうことにした。 理由は俺の神斬狼の刃を街の武器屋に研いで貰っているので引き取 りに行くことと腹ごしらえ、それとマイブームとなっているお香の 補充が目的だ。 繁華街に到着するとやはり雪蓮殿の尾行を受けながはも俺は武器屋 へと足を運び、暖簾をくぐる。 ﹁おやっさん、邪魔するぞ﹂ ﹁いらっしゃい‼・・・ああ、ライルの旦那ですかい⁉﹂ 現れたのは50歳位の初老の男性で、名前は呂藩。何でも幼少の頃 から益州で修行を積み、呉に戻ってきて直ぐに実力が評価されて孫 家お抱えの刀鍛冶になったらしい。 因みに明命の魂切や甘寧の鈴音などは彼が作り出した傑作らしい。 普段はこの店で商売を行ない、建業郊外にある鍛冶場は弟子達に任 せており、孫家や将軍級の地位を持つ軍人の得物を作る場合にのみ 鍛冶場で作る。 ﹁ちょうどよかった。鍛冶場から届いたところでさぁ﹂ ﹁相変わらず早いな﹂ ﹁迅速第一が心情ですからね・・・。こちらですぜ。確認してくだ せぇ﹂ そう言われて呂藩から神斬狼を受け取り、研ぎ具合を確認する。一 寸の曇りや刃こぼれが見られない素晴らしい仕事だ。俺はウェスト ポーチから代金を取り出して呂藩を渡す。 623 ﹁代金だ。いつもすまないな﹂ ﹁いいってことですぜ・・・あぁ‼そうだ旦那﹂ ﹁なんだ?﹂ ﹁そろそろ新しい得物を考えておいたほうがいいですぜ﹂ ﹁・・・・・・やはりか?﹂ 俺が尋ね返すと呂藩は頷いた。実を言えばここ数日、神斬狼の調子 がおかしかった。 こいつの構造は手甲の部分そのものがスライド式となっており、ス ライドさせて3本の刃を展開させるというものだが、そのスライド 基部が一ヶ月前の跋扈した黄巾残党討伐からスムーズに作動しにく くなってる。 本来ならジーンに頼んで新しいパーツを送って貰えばいいが、武器 弾薬や兵器といった面でかなり世話になっている。これ以上の負担 を掛けさせたくはない。 アレックスの髑髏やレオンの龍舌、武久の正宗と違ってカラクリの ようなものな上に、俺自身が最前線で斬り込むから使用期限が近い のだろう。 ﹁まあ、見たところ当面は大丈夫でしょうが、いつまで保つか分か りませんぜ﹂ ﹁それは分かってる。流石に俺も何か考えてる最中だがな・・・・・ ・﹂ ﹁旦那は他に武術が?﹂ ﹁剣術が得意だが・・・・・・﹂ ﹁旦那?﹂ 次は 雪蓮ちゃんと一緒にでも来てくだせぇ﹂ ﹁・・・いや、何でもない。とにかく留意しておく。邪魔したな﹂ ﹁へい。 624 ﹁・・・・・・あいよ﹂ 俺は呂藩の言葉に顔を少し赤くさせながら返答する。布に包んだ神 斬狼を用意しておいたバックパックに放り込むと、すぐに店を後に した。 それから腹ごしらえでたまに足を運ぶ飯店に行き、揚州炒飯︵揚州 魚︵ジギョの蒸し物︶を腹に放り込んですぐに店を出る。 の川エビ入り五目炒飯︶に獅子頭︵巨大肉団子のスープ蒸し︶、清 蒸 なお、俺が食べた料理は淮揚料理と呼ばれ、長江北部の揚州、淮安、 鎮江を発祥の地とする。ヤンツァイとも呼ばれる。材料選びと包丁 使いの技が進んでおり、味は淡白であっさりとし、スープなどに優 れている。 そして雑貨洋品店では消耗品、本屋では新しい兵法書を購入してい くが・・・・・・。 ︵コソコソ・・・ジィー︶ ﹁はぁ・・・・・・声・・・かけようかな﹂ いつまでも気が付いていないと思い込んでいる雪蓮殿に根負けしそ うだ。というかなんでさっきから尾行しているのだろう? ひとまずは気が付いていないフリをしながら最後の目的地である香 専門店へと到着。 しかしこの時代になんで専門店があるのか理解出来なかった。 ﹁いらっしゃいませ‼ライル様‼﹂ 眩しい位に明るい笑顔で出迎えてくれた赤髪の街娘。彼女はこの店 625 の一人娘であり、いつでも明るくて進んで店の手伝いをしている非 常にいい子だ。 ﹁やあ、相変わらず元気そうだね﹂ ﹁はい‼父上や母上も元気ですよ‼それで何時もの緑茶香ですか?﹂ ﹁頼む。それと森林もだ﹂ ﹁はい‼﹂ 注文すると慣れた手つきで指定した香を箱に詰めて行き、合計20 本もの香を箱詰めした。 ﹁お待たせしましたライル様﹂ ﹁ありがとう・・・・・・これは?﹂ ﹁おまけの新作の香です。甘い香りがしますよ﹂ にだけ使って 本当に大事な人と二 本当に大事な人と二人っきりになった時 ﹁そうか、悪いな。だったら帰ったら早速使って﹁ああっと‼但し この香は くださいね♪﹂・・・はい?﹂ 必ず 使うと言おうと彼女はそれを制止する。 ﹁いいですか、ライル様?このお香は 人っきりになった時に使ってくださいね?﹂ ﹁・・・・・・仮にその大事な人と使ったらどうなるんだ?﹂ ﹁それはぁ∼∼秘密です♪﹂ ﹁秘密ってね・・・・・・まあいい、受け取っとくよ﹂ 流石に善意を無駄にする訳にはいかないので、とりあえずは受け取 孫策様 と一緒にいらっし っとくことにした。というか、聞かないほうがいいだろう。 ﹁ありがとうございました‼次はぜひ 626 ゃって下さい‼﹂ 呂藩と同じことを言われて顔を真っ赤にしながら俺は買い物を済ま せて建業城へと引き返すのであった。 因みに後をつけていた雪蓮殿は・・・。 ﹁ちょっ⁉め・・・冥琳⁉痛い痛い⁉﹂ ﹂ ﹁まったく・・・私が少し離れた隙に抜け出して・・・帰ったらみ っちりお仕置きだな﹂ ﹁だから耳を引っ張らないでー‼ 仕事を抜け出していたから、追いかけて来た冥琳殿に耳を引っ張ら れながら連行されていった・・・・・・・・・。 627 第86話:ライルの日常生活︵後書き︶ 建業に衝撃が走る。宣城が反旗を翻した山越と黄巾残党により占拠 された。雪蓮は宣城奪還の為、孫権に軍を任せる。ライル達も別働 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 隊として山越の陣地に強襲を仕掛ける。 次回 [エイブラムス] M1A2の砲火がコダマする。 628 第87話:エイブラムス︵前書き︶ 陸の王者。敵に噛み付く。 629 第87話:エイブラムス 袁紹討伐から各地で小さな争いが起こっていた。黄巾の残党達によ る跋扈や有力者達による反乱、賊達による略奪などが目立ち、各勢 力は鎮圧にあたった。 やはり戦闘の増加は正史通り袁紹が発端だったらしく、奴は死んで もなお俺達に多大な迷惑を掛けている。 ある日、賊討伐完了直後で孫策様達に情報が齎された。 宣城が山越と黄巾残党によって占拠された 本当なら宣城が陥落したという事実はなく、逆に守備を任されてい た孫権の護衛役で合計12箇所もの負傷を負った周泰の大活躍によ り敵を退けたとされている。 まあ、守る武将がいなかったのだから仕方がない。だがこのまま見 過ごす気は更々ない。 宣城奪還として孫策様は孫権様を奪還軍の大将に命じ、副将として 甘寧と明命、軍師として穏を派遣。直ちに奪還へと向かった。 ただし俺達は彼女達とは行動しない。穏の策で俺達には別働隊とし て宣城より東部にあるとされる奴等の拠点に攻撃を加えるべく、進 軍していた。 <こちらウルヴァリン、これよりカウンターナイツ作戦を開始する。 逐次報告せよ。over> 630 ﹁こちらウォーランス1、了解です。LOD到着後に報告します。 out﹂ <了解したウォーランス1> 中佐の作戦開始の通信を受けて、俺が指揮するM1A2を6輌運用 する戦車部隊ウォーランスが先頭を突き進む。 <ストームから全ユニットへ。敵陣地に投石機を確認。原始的では ありますが直撃は避けてください> ﹁ウォーランス1了解﹂ <ウォーランス1に報告。レイヴンが前方に敵部隊を確認。防御用 投石機も複数確認> ﹁了解だストーム。我々の出番だ。ジェイク、聞こえたか?戦闘配 備だ﹂ ﹁了解。いつでも行けます。燃えて来たぜ﹂ ﹁ドライバー、全速前進だ﹂ ﹁了解、大尉﹂ ﹁各車へ。即応態勢維持。ウォーランス3、何か確認出来るか?﹂ <なにも確認出来ません> ﹁了解だ。各車へ。これから先にいる奴等は全て敵部隊だ﹂ 臨戦態勢を指示して戦闘車両フォーメーションの一つであるパンツ ァーカイルで前進する戦車部隊。 そこから300mほど離れた地点には機械化歩兵部隊のソードブレ イカーを載せたEFVガビアルを運用するウォーピック隊。 更に後方にはM1114やM1156に分乗した軽歩兵部隊のエス トック隊が続く。 敵拠点制圧後に中佐が指揮する空中強襲部隊のハルバート隊と、武 631 。騎士団の反撃作戦だ。 久が指揮するグレイブ隊が宣城に強襲を仕掛けて孫権様の本隊を援 カウンターナイツ 護する手筈だ。 作戦名は <大尉、こちらウォーランス5。前方に防御用投石機を確認。こち らを捕捉したようです> ウォーランス5の報告を確認して、前方の様子を伺う。確かに前方 から放たれた岩が飛んで来ているが、所詮は投石機。距離が全然足 りない。だがこちらは既に射程内に捉えている。 安定翼付き装弾筒徹甲弾︶発射 ﹁ウォーランス1から各車へ。攻撃を許可する。ジェイク、サボッ ト︵APFSDS/M829A3 ‼﹂ ﹁了解‼・・・食らいやがれ‼﹂ 砲手のジェイクに砲撃を指示すると彼は砲身を微調整して、照準を 合わせるとトリガーを引く。発射されたサボットは高速かつ水平に 目標の投石機に直撃して粉砕。 ﹁ウォーランス隊は前進しながら攻撃‼索敵を怠るな‼﹂ ﹁奴等心底びびってやがるな、ざまぁみやがれ‼﹂ ﹁油断するなジェイク。追い詰められた鹿ほどなにしでかしか分か ったものじゃない﹂ ﹁装填よし‼﹂ ﹁撃て‼﹂ 装填次第、すぐに他の投石機に砲撃を実施。他のエイブラムスも同 様にサボットを撃ち込む。いくら敵が訓練されていても一方的な破 壊に耐えられる筈がなく、やがては残った投石機を放棄して逃げ出 632 す。 そして最後の投石機の破壊を確認すると無線で指示をする。 ﹁ウォーランス1から各車へ。エリア内の投石機を破壊。前進し・・ ・﹂ 前進命令を出そうとした瞬間、少し離れた場所に石が落ちて来た。 今度はこちらを射程内に捉えているようだ。 ﹁いや、待て‼撤回する‼撤回する‼防御用投石機の攻撃を確認‼ 直ちに攻撃‼直ちに攻撃せよ‼﹂ <ウォーランス2からウォーランス1へ‼前方に敵の反応を捉えま した‼> <丘の上だ‼距離は300‼> ﹁ジェイク‼狙えるか⁉﹂ ﹁照準よし‼攻撃します‼﹂ 直ぐに丘の上から狙っている敵の防御用投石機に照準を合わせてサ ボットを発射。発射されたサボットはしっかりと中心付近に命中し て、ウォーランス2がもう片方を仕留めた。 俺達が防御用投石機と呼んでいるのは巨大な錘の位置エネルギーを 利用した平衡錘投石機。 トレビュシェットとも呼ばれる投石機の一種で、中国では霹靂車と いう名前だ。 最大射程は約300mとも言われており、投石機の中では最長かつ 高威力が自慢の攻城兵器であり、固定式ということでこういった防 御でも使用されていた。 ﹁ウォーランス1からストーム。防御用投石機2基と交戦して撃破。 633 ミッションを続行する﹂ <了解です大尉。次のチェックポイント到着後に報告。out> ﹁ドライバー、あの丘の尾根まで前進するぞ﹂ ﹁了解﹂ 前進を指示してすぐにドライバーは尾根まで前進させる。 ﹁全車停止。ラインフォーメーション。ラインフォーメーションだ﹂ <ウォーランス1、こちらハンター2−1。敵拠点に攻城部隊が集 Air−Vehicle/超小 結中。UAVからの映像を送る。out> ﹁ジェイク、MAV︵Miclo 型航空機︶フィートに接続。MAV操作可能﹂ T−ホーク に接続。上空からの映像 指示を受けて直ぐにジェイクがモニターを操作してハンター2が飛 ばしたMAVのRQ−16 を確認する。 <ウォーアックスからウォーランス1。こちらは砲撃準備完了。待 機する。over> ﹁了解したウォーアックス指揮官。ターゲットをレーザーでマーク する﹂ MAVを操作してターゲットとなる敵陣地にレーザーを照射。砲撃 位置を後方約10kmに展開しているウォーアックス隊のM109 A6PIMがGPSで確認した。 <了解したウォーランス1。砲撃位置を確認。これより砲撃を開始 する。スタンバイ> 確認の通信が来てから暫くして、俺達の頭上に風きり音が鳴り響き、 634 M107HE弾が敵陣地を襲う。その砲撃は60秒間続く。 1分間で4発の合計24発が敵陣地に撃ち込まれ、尾根からでも黒 煙は確認出来た。 <ウォーアックス指揮官からハンター2。砲撃完了。これより第2 陣地に移動する。over> <こちらハンター2。主要目標への命中ならず。風に流されたと推 測> out。・・・・・・HEAT装填‼﹂ ﹁こちらウォーランス1。これより敵野営地へ突入、目標の破壊に 向かう ﹁了解・・・・・・・・・装填よし‼﹂ Expl Multi−Purpose HEAT−MP−T︵High Anti−Tank 対拠点としてM830 osive Tracer︶を装填させ、他のエイブラムスも同様にM830を 装填。 ﹁各車へ。合図と共に敵野営地へ突入。3・・・2・・・1・・・ 前進‼﹂ 俺の合図で全車が全速力で敵野営地に突撃を開始する。敵は俺達の 突撃に銅鑼を鳴らして慌てるが、時既に遅しだ。 ﹁各車へ‼ロックンロール‼ロックンロールだ‼作戦通りに行け‼﹂ ﹃了解‼﹄ <ウォーランス1指揮官。こちらアイアンマン。これより下車戦闘 に入る。誤射に注意しろ> ﹁了解です少佐‼﹂ EFVが搭載している30mmチェーンガンで攻撃を加えながら前 635 に躍り出る。そこから少佐のソードブレイカー隊が降車して周辺の 敵を攻撃し始める。 エストック隊もハンヴィーの機動力を活かして回り込み、退路を遮 断しに向かう。 <ウォーランス6より報告‼前方に衝車を確認‼> <防御用投石機も確認‼更に歩兵を確認‼> ﹁ジェイク‼機銃を使え‼奴等を黙らせろ‼﹂ 砲塔に搭載されている同軸重機関銃のM2で前方にいる敵に銃撃を 加え、次々と敵兵を仕留める。 敵は見たこともない装甲車を前に恐れて逃げ始め、中には反撃のつ もりか弓を放つ敵もいたが効く筈がない。 敵野営地の奥に進むと周辺に物資がばら撒かれた複数の建物を発見。 目標の物資だ。 ﹁見つけた‼ジェイク‼12時方向に敵備蓄物資‼吹き飛ばせ‼﹂ ﹁了解‼チェックメイトだ‼﹂ 目標に照準を合わせるとジェイクはトリガーを引き、M830を発 射。すぐに建物は爆発を起こして周囲に瓦礫や破壊された物資の残 骸が降り注ぐ。 他のエイブラムスも同様に残った建物に対してM830を撃ち込み、 一気に畳み掛ける。 ﹁直撃だ‼﹂ ﹁ドカーン‼﹂ ﹁いいぞよくやった﹂ <アイアンマンからウォーランス1。こちらは周辺の敵を制圧した> 636 ﹁ウォーランス指揮官から報告。目標破壊。目標を破壊しました﹂ <了解だ。作戦成功を確認。ストーム、了解か?> <こちらストーム。了解です少佐。中佐に伝えます> <頼む> 少佐が作戦成功を宣言すると俺達は周辺に残った残敵を掃討する為 に移動を再開する・・・・・・・・・・・・。 637 第87話:エイブラムス︵後書き︶ レオン達が敵拠点を占領したことでお膳立ては出来上がった。あと はチェックメイトを掛けるだけ。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re ライル率いるハルバート隊と南郷率いるグレイブ隊が作戦を開始す る。 次回 ﹁エアボーン﹂ 孫呉に仇なす敵に空から仕掛ける。 638 第88話:へリボーン︵前書き︶ 空中からの強襲。敵は慌てふためく。 639 第88話:へリボーン <ストームからウルヴァリン。機甲部隊が敵拠点を制圧。敵の退路 を遮断しました> ﹁了解ストーム。こちらは宣城へ接近中。孫権殿の部隊が接敵が少 し早いことを除けば予定通りだ﹂ <了解です。ハンター3と通信を繋げます> <ウルヴァリン、こちらハンター3−1。監視位置で待機中。敵は 攻撃に備えて警戒態勢に入っています> out﹂ ﹁ハンター3は監視を続行しろ。必要に応じてバレットライフルで 援護してくれ。ウルヴァリン イリーナとグルックとの通信を終了させて俺はMH−60Sナイト ホークで移動しながら目標の宣城へと向かう。 ﹁ウルヴァリンからグラディウス隊各機。城壁に展開している敵の 掃除が完了次第、各自降下予定地点に向かいダストロープを実施。 俺達の降下完了後は孫権軍の支援に向かえ﹂ <こちらグラディウス1、了解しました> ﹁グレイブ隊は俺達を援護しろ。但し、城にはあまり派手な損害を 出すな﹂ <こちらグレイブ1、了解> 元々は我が軍の拠点であったので、再占領後は再び自軍の拠点にな る。だから可能な限りは損害を抑えなければならない。 正直に言うと無茶な注文を孫権殿はしてくれたものだ。戦いで施設 の損害は民間人や人質がいない限り二の次に置かれる。 640 はっきり言って孫権殿には呆れる。軍議中には自らが最前線に赴く といっていたが、彼女の実力でそれが通用するのは旧袁紹軍や賊程 度で、山越は長年もの間孫呉軍と交戦している歴戦の猛者が多数存 在している。 もちろん俺と穏は反対したが、彼女は軟弱だと言い張って一蹴した。 あれには流石に腹が立つ。 仕方が無いので俺達の進路確保が完了するまで待機することで承認 したが、それも無駄だった。進路確保が済んでいないのに交戦した ら意味がなくなる上に向こうの兵力は一万。対して孫権殿の軍勢は 二千弱な上に敵は投石機や衝車を多数装備している。 このままでは数に負けて包囲殲滅が目に見えている。ならば作戦を 変更して俺達だけで宣城を陥落させ、一刻も早く孫権軍救援に向か うしかない。 しかし作戦が完了したら直ぐに孫権殿と2人で話す必要がある。 <ウルヴァリン、こちらグレイブ1です。前方に防御用投石機を確 認> lock。FOX3、FOX3> ﹁了解した南郷、やってくれ﹂ <Target 隣を飛行している南郷のヴァイパーが正面に見掛けた投石機にレー Good Kill!! Good K ザーロックを行ない、AGM−114Mを発射。ミサイルは目標の right!! 頭上まで飛行すると角度を急に変えて目標に弾着する。 ﹁Oh ill!!﹂ <グラディウス1からグラディウス各機。全目標への攻撃を許可。 out> 641 <グラディウス2、了解> <3了解> <4了解> <5了解> やがて高度を落として敵への攻撃に備える。敵はやはり俺たちの攻 撃に備えて、防御態勢を調えていたが空からの強襲は予想すらして いないだろう。 ﹁交戦開始だ﹂ <了解、攻撃開始‼> 南郷のヴァイパー編隊が少し先に先行して散開。M197を使用し て内部の監視塔を破壊する。ナイトホークに搭乗している部下達は それぞれの武器に弾薬を装填して、俺も携行しているHK417に 初弾を装填して無線で指示を下す。 ﹁ガナー‼塔にいる連中を片付けろ‼﹂ ﹁了解です‼﹂ 機体右側に搭載されているM134Dで塔の上にいた敵弓兵隊を一 網打尽にして、その際に一部の残骸が地上に落ちてそこにいた敵兵 に降り注ぐ。 ﹁右にシフトだ﹂ <了解。位置を変えます> ﹁グレイブ1、右側の塔にヘルファイアをお見舞いしろ﹂ <了解‼FOX3‼> 南郷に目標を指示すると直ぐに発射されたヘルファイアⅡが塔の上 642 に命中。 これで城壁と塔はクリアだ。後はそれぞれの小隊が目標地点を制圧 するだけで、俺の第1小隊は宣城北東部にある武器庫の制圧だ。M 134Dで攻撃を加えながら北東部へと向かう。 <こちらグレイブ3、降下を援護します> ﹁感謝するグレイブ3、見えた敵は残らず始末してくれ。こちらの 安全確保のためだ﹂ <了解です中佐> 焼夷榴弾と時たま放たれるM242 グレイブ3のヴァイパーが先行して武器庫周辺の敵に対してガトリ ング掃射を実施。M56A4 曳光焼夷榴弾が周辺にいた敵守備隊に襲いかかり、上空からのガ トリング掃射により敵が逃げ始める。 ﹁ロープ‼﹂ 俺の搭乗するナイトホークも武器庫上空でホバリング状態で静止し て、両側からラペリングロープが降ろされる。そしてHK417を Go Go!!﹂ 背中に預け、ロープをしっかり掴む。 ﹁ロックンロール‼Go SPECTOR DRで照準を合わせ、近 一気に蹴り、そのまま地上に降下。地上に降下するとすかさず搭載 されているELCAN くにいた敵に7.62mm弾を放つ。 次々と部隊が降下していき、全員の降下が完了するとロープが切り 離されてナイトホークがM134Dを発砲しながら上昇していく。 ﹁中佐‼全員降下完了‼﹂ 643 Move!!﹂ ﹁よし‼第2分隊は警戒にあたれ‼第1分隊は俺と一緒に敵を駆逐 する‼﹂ ﹃了解‼﹄ ﹁時間が無い‼素早く確実に行くぞ‼Move 確かに今は時間が惜しい。孫権殿がやられる前になんとしても宣城 を陥落させ、俺達も救援に向かわなければならない。 HK417を構えながら宣城制圧へと向かっていった・・・・・・・ ・・。 644 第88話:へリボーン︵後書き︶ ライル達が宣城を攻撃している頃、孫権軍は劣勢状態になっていた。 数で劣る孫権軍も必死に攻撃する中、2人の影が主を死守する。 海兵隊の誇り,Re 真・恋姫無双 次回 shadow] of a [Activity 孫家の影が舞い踊る。 645 第89話:Activity of a shadow︵前書き ︶ 劣勢の孫権軍。主を護る為に2人の影が武を振るう。 646 第89話:Activity of a shadow ライル率いる部隊が宣城を攻撃している頃、宣城郊外の私達は敵勢 力と交戦中だった。 ﹁怯むな‼呉の武を奴等に見せつけよ‼正義は我らにあり‼﹂ ﹃応っ‼﹄ ﹁蓮華様に続けぇ‼我等の命を孫呉に捧げよぉ‼﹂ ﹃応さっ‼﹄ ﹁戦線の維持を‼間もなくで味方の増援が来ます‼﹂ ﹃応っ‼﹄ 私が指揮する本隊と思春が指揮する親衛隊に明命が指揮する周泰隊 が奮戦する。 ﹁左翼に槍兵隊を向かわせて下さい∼‼負傷者はすぐに後送して下 さい∼‼﹂ ﹁はっ‼すぐに‼﹂ 後方では穏が戦況を分析して配下の兵に部隊を動かす。しかし敵は 私の予想を上回る力を有し、次々と兵達を倒していく。 。 呉の力は果てしなく強い。だから歯向かう一団や賊程度には負け たりはしない 私はずっとそう思っていた。だが現実はどうだ? 敵は数はもちろん練度や装備、士気も上回っている。現に2,00 0いた兵の半分以上が既に戦死して、残った兵達も徐々に数を減ら 647 している。 ﹁孫権様‼これ以上の戦線維持はもはや不可能です‼ここは一度さ がって態勢の再構築を‼﹂ ﹁まだ行ける‼各員は奮戦して戦え‼﹂ ﹁しかし・・・・・・がはっ⁉﹂ 親衛隊員の兵が撤退を進言しようとした矢先、彼の背中に数本の矢 が突き刺さる。私は近づいていた敵に対して斬りつける。 ﹁蓮華様⁉明命‼蓮華様を連れて退却しろ‼私が殿になる‼﹂ ﹁御意‼・・・蓮華様‼ここは退却します‼﹂ ﹁なぜだ⁉ここで退却すれば呉の名誉と姉様の名に傷が・・・﹁孫 権‼覚悟‼﹂なっ⁉﹂ 明命に連れられて退却させられようとした矢先、槍を構えた敵兵が 私に仕掛けて来た。 間に合わない⁉ 思わず目を瞑ってしまった直後、明命が魂切で返り討ちにする。し かし敵は更に出現してくる。 ﹁孫権がいたぞ‼討ち取って長年の怨みを晴らしてやれ‼﹂ ﹁へへっ‼まずはこの小娘をいたぶってやれ‼﹂ ﹃へいっ‼﹄ 頭に黄色の頭巾を被った黄巾残党が錆が見られる剣や槍を手にして 一斉に明命に斬りかかって来た。 ﹁はっ‼﹂ ﹁ぐわっ⁉﹂ 648 ﹁がはっ⁉﹂ ﹁ぐふっ⁉﹂ 明命は素早い動きで向かってくる敵を次々と斬り伏せていくが、徐 々に身体に切り傷が増えていく。 ﹁なにやってやがる⁉そんな小娘など後回しにしろ‼孫権を討ち取 れ‼﹂ ﹁はっ⁉しまった⁉﹂ ﹁蓮華様⁉﹂ 明命に複数の敵兵が足止めをしている隙に5人以上が潜り抜け、私 に剣を振りかざす。 ﹁くっ⁉﹂ ﹁くたばりやがれぇ‼﹂ 今度こそおしまいだと思い、剣が私を捉えようとした瞬間、目の前 に誰かが割って入りわたしを庇う。最初は誰かが分からなかったが ほんの少ししてからすぐにわかった。 ﹁明命⁉﹂ 明命が私を庇って背中を斬られ、そのまま私に倒れかかって来た。 すぐに彼女に揺すって話しかけるが意識が無い。 ﹁明命⁉しっかりしろ‼明命‼﹂ ﹁ちいっ‼邪魔しやがって‼2人纏めてあの世に送ってやるよ‼﹂ 明命を傷付けた敵兵は再び剣を構えて斬りかかって来て、私は明命 649 を抱きしめて庇う。しかしいつ迄たっても剣が届かない。 強く瞑った目を開いて見ると額に小さな穴が開いた敵兵の死体が転 がっていた。 そして周辺からは奇怪な音。剣を振る音にも似ているが規則的な音 だ。空からしてきて私を含めた全員が見上げる。 ﹁なっ・・・なんだよありゃあ⁉﹂ ﹁ば・・・化け物だぁ⁉﹂ ﹁ライル⁉﹂ 上空にいたのは武器を構えたライルに奴が所有している空飛ぶカラ クリ。 しかも別方角からは複数の爆発。目線をそちらに向けると同じく奴 が所有する鋼鉄の車が6輌、敵を攻撃しながら迫っていた。 ライルが地上に降り立ち、敵を攻撃しながら私達に駆け寄ってきた。 ﹁孫権殿‼無事か⁉﹂ ﹁ライル⁉﹂ ﹁ここは我等が引き継ぎます‼孫権殿は後方へ撤退を‼﹂ ﹁み・・・明命を置いてなど行けるか⁉﹂ ﹁戦意を失った奴がいても邪魔なだけだ‼つべこべ言わずに早く退 却しろ‼﹂ ﹁なっ⁉﹂ ﹁蓮華様‼﹂ ﹁甘寧‼そいつ等を連れて退却しろ‼後は俺達に任せておけ‼﹂ ﹁・・・分かった‼任せる‼﹂ 650 ライルは退却を拒む私に怒気を込めながら怒鳴りつけ、駆け付けた 思春に私を退却させる為に明命を担いで私の腕を掴んで駆け出す。 敵は私達に攻撃を仕掛けて来たが、ライル達の攻撃で直ぐに制圧さ れる。 ﹁全隊‼戦線を押し戻せ‼戦車隊は後方のくそったれを片付けろ‼ 俺達は孫権殿の退却を支援するぞ‼﹂ ﹃了解‼﹄ そういうとライルは空飛ぶカラクリと鋼鉄の車の援護を受けながら 次々と敵を飲み込んでいく。 敵はライル達の兵器を知らずにただ単に仕掛けて来たが、邪魔な銃 撃では恐らくは勝てないだろう。 予期していなかった増援で敵は逃げ始め、ライル達がそれを駆逐す る。 私はそれを離れた陣地で眺めていた。 それからさほど時間が掛からず、宣城周辺にいた敵は完全に駆逐さ れ、私達は辛うじて勝利したが、代償は大きかった。 損害を出し過ぎた私の軍勢は意気消沈しながら再占領した宣城へと 入城する。 戦死者1,147名、負傷者371名、行方不明者20名。これが 私達が出した損害だった・・・・・・・・・。 651 第89話:Activity of a shadow︵後書き ︶ 辛くも勝利した孫権軍。命に別状は無い明命が治療を受ける中、怒 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re り心頭のライルは孫権に指揮官としての責務を問いただす。 次回 次期王としての決意 孫権の覚悟が問われる。 652 第90話:次期王としての決意︵前書き︶ 辛くも勝利した孫権軍人だが、ライルは彼女に怒りを見せる。 653 第90話:次期王としての決意 宣城を再占領した俺達はすぐに戦後処理と負傷者の治療に取り掛か った。しかし負傷者の中には虚しく死んでいった兵もいて、正直言 ってやるせない気持ちだ。 特に明命が酷かった。命に別状はないけれども、背中に出来た切り 傷は消えることは無いだろう。 確かに正史でも窮地に陥った孫権を護る為に自らを鼓舞して、12 箇所もの負傷を置いながらも守り通した偉業が記録されている。 治療にあたった女性衛生兵によると両腕に7箇所と両足に4箇所、 そして一番大きい背中に1箇所、合計12箇所もの切り傷が正史通 りあったそうだ。 顔に残らなかったのが幸いだ。あんな可愛らしい顔に傷でも付いた ら後味が悪すぎる。 俺は足音を立てながら孫権殿の下へと向かった。 ﹁衛兵、孫権殿は何処だ?﹂ ﹁ライル将軍‼﹂ ﹁挨拶はいい、孫権殿は何処だ?﹂ ﹁はっ・・・しかし、甘寧将軍からもあまり会合は﹁何処だと聞い ているんだ‼﹂ひぃっ⁉も・・・申し訳ありません⁉この先の軍議 室です⁉﹂ 中々居場所を言わなかった衛兵に苛立ち、思わず怒鳴りつけた俺は 654 軍議室へと向かう。その道中にすれ違う孫呉兵達は怯えながら慌て て道を譲る。 恐らくは身体中から発せられる怒気に怯えてしまったのだろう。し かし気にせずに俺は軍議室の扉を衛兵の静止も聞かずに乱暴に開け 放つ。 ﹁ひゃう⁉﹂ ﹁何事だ⁉﹂ ﹁・・・・・・﹂ 中にいたのは穏に甘寧、更に椅子に座って落ち込んでいる孫権殿の 姿だ。俺は無言で彼女に歩み寄る。 ﹁・・・なんだライル?私を笑いに・・・﹂ 彼女がそう言おうとした瞬間、室内に乾いた音が響き渡る。室内に は驚いた甘寧と穏、左頬が赤くなった孫権殿、そして右手を振り上 げた俺だ。 要するに彼女に対してビンタを食らわしたのだ。孫権殿は余りにも いきなりのことだったので呆気に取られていた。 ﹁・・・ら・・・ライル・・・﹂ ﹁・・・バカ野郎が‼﹂ ﹁なっ・・・貴様‼蓮華様に何を⁉﹂ ﹁貴様は黙ってろ‼口出しするな‼﹂ ﹁なんだと⁉﹂ ﹁はぁあ⁉お・・・落ち着いて下さい‼﹂ ﹁穏‼そいつを連れて部屋を出ていろ‼俺がいいという迄は誰もい れるな‼﹂ 655 ﹁はっ・・・はい‼﹂ ﹁離せ穏‼・・・ライル‼貴様ぁ‼﹂ 甘寧は暴れながら俺に殴り掛かろうとしていたが、穏と複数の衛兵 に連れられて軍議室を追い出された。 そして部屋には重すぎる空気が流れ、俺は孫権殿を睨みつける。 ﹁・・・親衛隊員から聞いた・・・お前は自分達が負けることはな いと思い込んでいたのだな?﹂ ﹁・・・そうだ﹂ ﹁しかも退却すれば呉の名誉に泥がつくとも・・・・・・何様のつ もりだ?﹂ ﹁なん・・・だと?﹂ ﹁ケツに毛も生えてないヒヨッコのくせに何様のつもりだと聞いて いるんだ﹂ ﹁貴様‼私を侮辱するの﹁粋がるんじゃねえぞヒヨッコ‼﹂‼‼ ﹂ 再び部屋に乾いた音が鳴り響き、今度は孫権殿の右頬が赤く染まる。 そして俺は孫権殿の襟元を握り締めて彼女を吊るしあげる。苦しそ うだが緩める気はさらさらない。 ﹁貴様の間違った考えのせいで大事な仲間が大勢死んだ‼今でも苦 しみ悶えながら死んでいく奴だっているんだぞ‼﹂ ﹁ぐっ・・・それはみな覚悟の上だろ‼孫呉を守る為に自らの命を 捧げてくれたのだ‼﹂ ﹁それが貴様の指導者としての考えか⁉﹂ ﹁ああ‼そうだ‼﹂ ﹁だったら貴様は指導者としても軍人としでも‼孫呉の次期王とし ても失格だ‼﹂ 656 俺はそう言うと彼女をその場で投げ飛ばし、壁に叩きつける。幾ら 彼女が女性だからといってそんな考えを見過ごす程、俺は優しくな い。 ﹁確かに彼等は自ら危険を承知で軍に志願し、命を捧げてくれた‼﹂ ﹁だから私も﹁だが‼﹂・・・﹂ ﹁だがそんな彼等を無事に家に返してやるのが指導者の責務だろう が‼﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁彼等が死んで更に悲しみが広がるのが彼等の家族だ。戦死者1, 147名、重軽傷者371名、更に行方不明者20名。貴様のせい で倍以上の人達が悲しみにくれるだろうな﹂ 俺は自分の考えを何の修正も無しに孫権殿に言い放つ。死んでいっ た彼等は勇敢な兵士だったが、同時に彼等はこの呉に暮らす民でも あった。 ﹁はっきり言って貴様が雪蓮殿の妹とはとても思えないな。武術の 未熟さはまだ目を瞑れるが、指導者としても未熟。軍人としても未 熟。更には孫家の人間としても未熟だ﹂ ﹁⁉﹂ ﹁偉大な孫呉に属する軍人ならば、民の為にどうやったら喜ばせて やれるか、どうやって悲しみを減らすか、どうやって命を救えるか・ ・・・・・戦場で全ての命を守り通すなどは現実的に不可能だ。だ がだからこそ、軍を任された人間はその犠牲者を減らさなければな らない。己の誇りや信念を時には投げ捨ててな﹂ ﹁わ・・・私は・・・・・・﹂ ﹁俺も天の国に居た頃から仲間を預けられ、彼等を無事に家に帰す 為に戦っている。426人。426人だ。これだけの部下達が俺を 657 信頼して、俺に付いて来てくれている。だから俺もその期待に答え、 彼等を無事に帰らせる為に死なせたりはしない﹂ 仲謀。討逆将軍の地位の下、偏将軍である貴 ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・孫権 殿に3日間の営倉入りを命じる。そこでもう一度、次期王としてど うすればいいのか、しっかり考えろ﹂ ﹁・・・・・・・・・解った﹂ 彼女に営倉入りを命じると俺は軍議室を後にする。いくら孫家の人 間だからといって階級では俺が上だ。 親衛隊員達からは恨まれるだろうが、それで彼女が覚醒して成長し てくれるのなら安いものだ。 次期王としての決意 を考えたい その後、孫権殿は言われた通り自ら営倉に入った。甘寧はやはり最 初は猛反対していたが、彼女が と言ったら甘寧も隣の営倉で待つといって自ら営倉入りを始める。 俺は彼女の成長を節に願いながら、負傷者テントへと足を運んでい った・・・・・・・・・。 658 第90話:次期王としての決意︵後書き︶ 負傷者の治療で慌てるライル達。味方が次々と苦しみながら息を引 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re き取る中、ある人物が駆け付けて来た。 次回 [華佗] 負傷者テントに元気が舞い戻る。 659 第91話:華佗︵前書き︶ 負傷兵で溢れる陣地。そこに一人の名医が現れる。 660 第91話:華佗 再占領した宣城の城壁前の負傷者テント。ここには負傷した重軽傷 者300人以上がいた。 ﹁こっちにリンゲル液を‼チェストシールもだ‼﹂ ﹁駄目だ‼肺を損傷してる‼人工呼吸器を‼﹂ ﹁おい‼しっかりしろ‼こんなところでくたばるんじゃない‼﹂ ﹁目を開けろ‼お前には嫁さんが待ってるんだろ⁉だから死ぬんじ ゃない‼助けてやるから目を覚ますんだ‼﹂ テント内では瀕死の重傷を負った孫権軍兵士を必死に助けようとす るウルフパック隊員が治療をつづける。 しかし何とか九死に一生を得た兵士より無念にも息を引き取った兵 士が多い。 俺も医療テントの一つで腹に矢創を受けた兵士を治療も虚しく見届 けていた。 ﹁くそっ⁉くそっ⁉くそっ⁉﹂ ﹁中佐‼ここは任せて下さい‼中佐は他を‼﹂ ﹁分かった‼﹂ 俺は部下にこの場を任せて他のテントに向かう。外には比較的軽傷 の兵士が治療を受けており、中には無傷の孫権軍兵士が進んで治療 に当たる。彼等は孫呉海兵隊の中で俺達の医療技術の基礎を教え込 んだ言わばコンバットメディックだ。 ﹁ライル‼﹂ 661 ﹁そっちはどうだ⁉﹂ ﹁医薬品が全く足りない‼輸血剤が底を尽きかけてる‼﹂ ﹁分かってる‼ヴェアウルフに通信したが最低でも30分は掛かる ‼﹂ ﹁くそっ⁉それじゃ間に合わない‼﹂ はっきり言って孫権軍の損害は予想外であり、あまり多くの輸血剤 を含む医薬品や医療器具を持って来てはいなかった。加えてウルフ パックの弱点の一つである衛生兵の不足が祟っている。 すると治療に当たっていた兵士が駆け寄って来た。 ﹁ライル将軍‼アレックス将軍‼近くから医者が治療に加わりたい と‼﹂ ﹁本当か⁉﹂ ﹁ありがたい‼すぐに案内してくれ‼﹂ ﹁御意‼﹂ 兵士が暫くしてから話していた医者という人物を連れて来た。赤い 髪で黒のノースリーブの上にヒーローのような服装をした若い青年 だ。 ﹁患者はどこだ⁉﹂ ﹁将軍‼お連れしました‼﹂ ﹁来てくれて感謝する‼部隊長のライルだ‼隣は副官のアレックス だ‼﹂ ﹁あんた達が噂の孫呉海兵隊か・・・俺は流れの医者をしている華 佗だ‼﹂ ﹁﹁華佗⁉﹂﹂ 彼の名前を聞いて驚きを隠せなかった。 662 かなりの年寄りだった筈だが、彼の場合は性転換ではなく相当な若 返りとは・・・・・・。 ﹁どうした?﹂ ﹁いや・・・何でもない・・・・・・それより来てくれた事を感謝 する‼﹂ ﹁君には重傷者を頼む‼向こうの天幕だ‼﹂ ﹁任せろ‼﹂ 簡単に挨拶すると俺達は華佗を連れて医療テントに入って行く。中 には腹に斬創を受けて瀕死の状態である味方兵士だ。 ﹁こいつだ‼腹を斬られてる‼﹂ ﹁解った‼すぐに病魔を退治してみせるぜ‼﹂ そういうと彼は何処からか鍼を取り出し、それで身体を押し始める。 ﹁ここか・・・違うか、こっちか?﹂ 流石に何をしているのかきこうとした瞬間、彼は鍼を持った右手を 高く掲げた。 ﹁見つけたぁ‼かなり厄介な病魔だ・・・だが患者を死なせたりは させん‼貴様等病魔など‼この鍼の一撃で蹴散らしてやる‼はああ ああああああああ‼‼﹂ 何か気合を入れ始めた瞬間、驚くべきことが起きる。彼の右手が光 り始め、そこから溢れんばかりの氣が集中力し始めたのだ。 その光景に俺も驚愕してしまう。 663 ︵なんて奴だ⁉氣が膨れ上がっていく⁉︶ ﹁我が身、我が鍼と一つなり‼一鍼同体‼全力全快‼必察必治癒 ‼病魔覆滅‼ゴッドヴェイドゥーー‼‼﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁げ・ん・き・に・・・なぁああれええええええっ‼‼﹂ 凄い掛け声と共に氣を集中させた鍼を負傷兵の腹筋付近に突き刺し て、そこから氣を兵の体内に注ぎ込むのを感じ取れた。 そしてどこかで落雷の落ちる音がした・・・・・・様な気がする ﹁貴様の野望‼もはやこれまで‼病魔退散‼‼﹂ 一応は治療が終わったようだ。俺もすぐに確認すると光景に驚きを 隠せなかった。 ﹁・・・傷跡が・・・無くなってる・・・﹂ 負傷兵の致命傷となっていた斬創の後が綺麗に無くなっており、兵 も痛みが消えて眠っているのだ。 俺達の医療技術を持ってしてもこれだけ完璧に治療出来るのは流石 に不可能だ。 ﹁次の患者は⁉﹂ ﹁あ・・・・・・ああ‼頼む‼﹂ しかし華佗は休むことなくその後も次々と重傷者を治療していき、 俺達も外にいる軽傷者を片っ端から手当していった。 664 それから一時間後・・・。 ﹁︵ガツガツ‼モグモグ‼︶﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ 治療を済ませた華佗は氣と体力を回復させる為に食事を摂っていた。 それくらいなら思う存分食べてくれとは確かに言ったが、よくこれ だけ食べられるとヒシヒシと思う。 何しろ机は空いた紙トレーが文字通り山のように積まれ、調理担当 の兵士も目まぐるしく料理を運んでくるし、厨房では戦闘よりも修 羅場になっている状況だ。 規模的に例えると第一次大戦終結翌日に第二次大戦が起きて、更に 終戦翌日に第三次大戦が勃発したような状況だ。 ﹁ごちそうさん‼‼いやぁ∼うまかった‼‼﹂ ﹁ははは・・・・・・喜んでくれて幸いだよ・・・﹂ 満腹になったと聞いて厨房がようやく終戦になったと思って、派手 に音を立てながら崩れた。 ﹁華佗君・・・君には本当に感謝してもし切れない。仲間達の命を 救ってくれたこと・・・心から礼を言う﹂ いい奴 だ。実は最後の患者であった明命の ﹁礼なんていい。俺は苦しむ人々を救うこそが俺自身の使命だと思 ってるだけだ﹂ 華佗の印象はまさに 665 傷跡を全て綺麗サッパリ消してくれて、彼女の身体は以前の綺麗な ものに戻してくれた。 その直後に目を覚ました明命から思わずアッパーカットを食らって 顎が痛いが・・・・・・。 ﹁そういえば、一つ気になってたんだが・・・﹂ ゴッドヴェイドゥー ﹁なんだ?報酬ならいらないと言っただろ?﹂ ﹁それはもう諦めた。治療の度に言ってた というのは﹁今なんていった⁉﹂・・・﹂ いきなり目を輝かせながら華佗が顔を近づけてきて質問してきた。 ﹁・・・ゴ・・・ゴッドヴェイドゥー・・・だが・・・・・・﹂ ﹁︵プルプルプル︶﹂ ﹁・・・どうした?﹂ ﹁素晴らしい‼‼﹂ いきなり華佗は両手を挙げて喜び始める。というか今の会話の何処 に喜ぶ要素があった? ゴットヴェイドー ﹁な・・・何が素晴らしいんだ?﹂ ﹁五斗米道を一発で完璧に発音できる者に出会えるとは‼一刀の言 っていたことは本当だったんだな‼﹂ ﹁一刀を知ってるのか?﹂ ﹁ああ‼あいつもゴッドヴェイドゥーの発音を一発で言えた一人だ からな‼﹂ そういうことか・・・・・・。つまり彼の所属している一団で五斗 米道の発音が英語風になっているから発音出来る人間がこの世界の 人間では非常に限られるから、喜んだのだろう。 666 ﹁ライル‼お前も一刀と同じ今から俺の親友だ‼これからは神医︵ カムイ/華佗の真名︶と呼んでくれ‼﹂ ﹁親友ってね・・・・・・まあいい。俺からもよろしく頼む。神医﹂ そういうと神医の差し出された右手を掴み、固く握手を交わした。 ﹁そういえば神医はここに一人で来たのか?﹂ ﹁いや、仲間と一緒に来たんだが怪我人が大勢いると聞いて俺だけ ﹂﹂ 先に来たんだ。もう到着する筈だが﹁ラ・・・ララララ・・・ライ ル‼⁉ 何か言うとした瞬間、アレックスが物凄い血相をかいて食堂テント に飛び込んで来た。普段からこんなに取り乱す奴では無いので、俺 もビックリした。 ﹁なっ⁉ど・・・どうした⁉﹂ ﹁いいいいい今、じょ・・・城門にば・・・・・・ばばばば・・・ 化け物が⁉﹂ ﹁化け物・・・そんなのいる訳が﹁﹁だ∼れが一度みたらむこう一 月は悪夢に出て来そうな筋肉ダルマですってぇえ⁉﹂﹂化け物⁉﹂ 本当にいた⁉ 目の前に筋肉ダルマスキンヘッド三つ編み紐ビキニ下オンリーの気 色悪い化け物に白髪執事ヒゲ褌マッチョの化け物が⁉ 思わずその場にいたウルフパック全員が銃火器を構えて、俺もM4 5を取り出して構えた。 だが神医だけは違う反応を見せていた。 667 ﹁二人とも‼やっと来たか‼﹂ ﹁あんらぁ∼神医ちゃん♪やっと会えたわねん♪﹂ ﹁神医殿よ。遅れてすまなかったであるな﹂ ﹁・・・・・・・・・知り合いか?﹂ ﹁ああ、こいつ等が俺と一緒に旅をしてる仲間だ﹂ ﹁あ∼らぁ♪神医ちゃんやご主人様と同じくらいにいい漢乙じゃな いのん♪﹂ ﹁うむ、それに中々の力を持っておるようじゃな﹂ ﹁頼むから近づかないでくれ・・・それで俺はライル。あんた達は ?﹂ ﹁美女。貂蟬ちゃんとおぅ∼♪﹂ ﹄ ﹁漢乙道亜細亜方面前継承者の卑弥呼であ∼る‼﹂ ﹃貂蟬に卑弥呼‼⁉ ここにいる全員︵神医を除く︶が呆気に取られた。というよりも全 員が本当に同じことを思っただろう。 ︵あ・・・悪夢だ・・・︶ それもそうだろう。絶世の美女である貂蟬と、神秘に包まれた邪馬 台国の王だった卑弥呼のイメージが音を立てて崩壊したのだから・・ ・・・・・・・。 その後に神医と化け物ブラザーズは宣城を去り、再び放浪の旅に出 た。その道中・・・・・・。 ﹁貂蟬よ﹂ ﹁なぁ∼に?卑弥呼?﹂ ﹁あの者達をどう感じた?﹂ 668 ﹁うぅ∼ん・・・この外史を壊そうだなんて考えてはいないわねん。 むしろ逆に雪蓮ちゃんと出会えたから守りたいと感じたわん♪﹂ ﹁ジーンの言っていた通りじゃな。見事なまでのアメリカ海兵隊員 じゃ♪﹂ ﹁そうねぇん♪﹂ 貂蟬と卑弥呼は何やら神医には聞こえないように話していた・・・・ ・・・・・。 669 第91話:華佗︵後書き︶ 孫権が営倉に入ってちょうど3日。ライルは孫権の答えを聞くため 海兵隊の誇り,Re に営倉へと向かう。それはライルを納得させるものか?それとも・・ 真・恋姫無双 ・・・・。 次回 孫権 次期王の答えが聞かされる。 670 第92話:孫権︵前書き︶ 次代の王となる者の覚悟と覚醒。 671 第92話:孫権 宣城の戦いから3日、周辺にいた山越は壊滅して黄巾の残党は呉に 降伏。以降は孫呉軍の一員として暫くの捕虜生活の後に貢献するこ となる。 神医が施してくれた治療のおかげで負傷兵は歩けるまでに体力を回 復させ、後から来た宣城駐留部隊と交代で建業に帰還を始める。 俺も腰に営倉の鍵を取り付けて宣城地下にある営倉へと階段を降り ていた。 ﹁・・・・・・加減はどうだ?﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ 営倉には先日の作戦を台無しにしかけた孫権殿と、昨日から隣の営 倉から移った甘寧がいた。 ﹁早速だが、この前の答えを聞かせて貰いたい。だが、俺に納得さ せられない答えなら・・・・・・分かってるな?﹂ 孫権殿のやったことは軍において決して許されるものでは無い。作 戦を無視した独断専行に加えて味方を危険に晒した。 本来は軍法会議に処して斬首だが、彼女は雪蓮殿の妹であると同時 指導者として に次期王だ。雪蓮殿が王を退役して彼女が孫呉を導いて行かなけれ ばならない。 だから彼女には自覚してもらわなけるばならない。 672 の責務と覚悟 を・・・・・・。 ﹁・・・その前に聞かせて欲しい﹂ ﹁何をだ?﹂ ﹁・・・アレックスが2日前に来て話してくれた。お前が私に厳し くしていたのは、お前の過去にあると・・・﹂ ﹁・・・あの馬鹿・・・余計なことを・・・・・・﹂ ﹁ライル、何があった?﹂ ﹁・・・私も聞きたい。お前が蓮華様をそこまで心配していた訳を・ ・・﹂ 俺は2人の営倉の前で暫く考え、ため息を吐くとすぐ前の壁に座り 込む。 ﹁・・・・・・俺が天の世界にいた頃の話だ﹂ そう言うと2人は俺の言葉に耳を傾ける。正直に言うとこの話をす るのは辛くて仕方がない。いい思い出などなに一つないからだ。し かしここで話さなければ彼女は前に進めない。そんな気がして仕方 が無かった。 ﹁向こうの世界で10年前、俺が士官になりたての頃だ。俺が所属 していた軍はとある国家と戦争をしていた。敵は練度も技術力も低 く、戦局はそのおかげで優勢だった﹂ ﹁﹁・・・・・・・・・﹂﹂ ﹁俺の部隊は敵首都で指導者がいると情報があった。確保の為に向 かったが・・・罠だった﹂ ﹁罠・・・﹂ ﹁俺の部隊は敵に包囲され、部下が次々と死んで行った。副官が退 却を進言したが、俺はそれを拒んだ。海兵隊は敵に背中を見せない 673 と・・・思い込んでた﹂ と。 俺の言葉で孫権殿はこう思っているだろう。 私と同じだ ﹁敵指導者は殺害したが、生き残ったのは俺1人。国は俺を英雄と 人でなし 、 味方殺し だとも言われ 称えて勲章授与や昇進が決まった。だが死んだ仲間には棺桶・・・ 遺族からも恨まれたさ。 た。何度自ら命を絶とうと思ったか・・・・・・﹂ ﹁でも・・・・・・﹂ ﹁だが、そんなことをしても逃げていると同じだ。そんな時に教え てくれたのが・・・俺の親父だ﹂ 国民を守るということは、部下達を守ること。部下を悲 ﹁父親?﹂ ﹁ああ、 しみから守ることはその家族の悲しみを無くすこと。部隊を守るこ ﹂ とは国家を守ることと同義。死んだ者達を真に思うのならば、生き 続け、1人でも多くの家族を守れ その言葉に2人は言葉を失った。自分と全く同じ状況を知り、そん な素晴らしい言葉を預けたのだ。 ﹁だから俺は部下達の墓標前で誓った。この命が尽きるまで1人で も多くの部下達を、生きて家族の下に返してやると・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁この話は終わりだ・・・・・・それで、君はどうだ?次期王とし ての覚悟の意味は?﹂ ﹁・・・・・・正直・・・まだ解らない﹂ 俺は何も言わずに耳を傾ける。 674 ﹁私は母様みたいに器は持たないし、覇気でも姉様の足元にも及ば ない﹂ ﹁・・・蓮華様・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁この3日間で思ったことは、それを知っているからこそが・・・ 私の強さになる。己の弱さ、無力を知る。たとえ私の行動が姑息だ ろうと、呉という家族を守る為の策を練る。それこそが・・・・・・ 私の力に・・・次期王としての覚悟となる﹂ 俺は彼女の言葉の直後にジッと彼女の眼を見る。その眼は覚悟を決 めた眼であり、一切の迷いは見当たらない。 俺は軽く笑うと鍵を手にして営倉の扉を開けた。 ﹁・・・貴女の覚悟・・・しかと聞きました・・・孫権殿﹁蓮華よ﹂ ・・・・・・﹂ ﹁わたしの真名は蓮華。この名をあなたに預けるわ﹂ ﹁私もだライル・・・・・・。今までの非礼を詫びる意味でも我が 真名・・・思春を預けたい﹂ 2人からの真名。蓮華と思春。俺は2人の顔を見ながら微笑み、踵 を鳴らして最敬礼をする。 ﹁このライル・ローガン・ブレイド。確かにお2人の真名を預から せて頂きました‼﹂ 仲謀の覚醒が成された瞬間であった・・・・・・・・・。 俺は敬礼を解くと2人を外に案内した。ここに次代の孫呉の王とな る孫権 675 第92話:孫権︵後書き︶ 覚醒した蓮華と思春に真名を預からせて暫く、孫呉海兵隊の定期合 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 同訓練を終了させたアレックスに珍客が訪れる。 次回 [意思の硬さ] 保守派の魔の手がアレックスに近づく。 676 第93話:意思の硬さ︵前書き︶ 海兵隊と水軍の合同演習に迷惑な客が来る。 677 第93話:意思の硬さ 宣城の奪還が完了して暫くが経過した。ライルの計らいで次期王と しての覚醒を果たした蓮華殿は積極的に俺達に鍛錬を申し出て来て いた。 俺達は連携を重視しているので、まずは連携を学ぶといっていた。 俺達ももちろん喜んで引き受け、今日も孫呉海兵隊と孫呉水軍によ る合同軍事演習を終了させた処だ。 ﹁やはり上陸直後の部隊展開が遅いな・・・﹂ ﹁ええ、この世界の軍船ではかなり速いらしいですが﹂ 俺はM1114の側で今回の軍事演習の結果を部下のサイファー・ シュラウド最上級曹長と共に検証していた。 彼との付き合いはライルに続いて長い。何しろ俺やライル、レオン、 武久、更にはウルフパックの約半分は新兵の頃に彼が教官を務めて いたからだ。 ファーター︵Valter:ドイツ語で父親︶ と呼んで 確か新兵教官をして20年と言っていた。だから俺達は最年長であ る彼を いるが、イギリス人である彼はドイツ語で呼ばれることを理解でき ていないようだ。 ﹁強襲上陸をするまでの実力は申し分ないが、展開が遅いし・・・ 何よりも問題は打撃力だ﹂ ﹁木造軍船だったら弓か弩しか援護武器が無いですし、でかい奴を 載せるにはキツイですな。だからといってただ巨大にすればその分 678 だけ人手がいる﹂ この時代の船はオールで漕ぐ他に帆を張って前進するものが一般的 だ。 司令船の役割を担う楼船に主力船の役割がある十数人を乗せた露檮 と小型船の艇、偵察と突撃で使用される快速艇の先登、敵艦に体当 たりして撃沈する朦衝、馬のように水面を疾走する赤馬などがある。 孫呉水軍でも主力船として活用されており、水軍戦術のスペシャリ ストである元水賊の思春率いる艦隊の実力も合わさって高い実力を 有しているが、俺達に比べても見劣りしている。 ﹁そういえば少佐、確か美花ちゃんに提案したんですか?﹂ ﹁ああ、強襲揚陸艦だろ?ちゃんと提案したさ。だがこの時代では 画期的過ぎるから出来上がるのはまだ先だろう。支援艦や護衛艦も な・・・﹂ ﹁早く完成してくれないと間に合わなくなる可能性がありますから な﹂ ﹁赤壁だろ?﹂ ﹁ええ﹂ 俺達は水軍造船を担当している美花と水軍総司令官を務める冥琳殿 造船業でもしていたのか? と言われた。それ程にま に特例として新造艦の設計図を提供している。 2人からは でこの世界では革新的な設計をした軍船なのだ。俺達が話しあって いると誰かが歩み寄ってきた。振り向くと淑やかそうな初老の女性 が歩み寄ってきた。 ﹁お主達﹂ ﹁これは孫静殿﹂ 679 文 俺とサイファーは直ぐに踵を鳴らして敬礼をする。歩み寄ってきた 幼台だ。 のは雪蓮殿や蓮華殿、シャオちゃんの叔母に当たる先代、孫堅 台の妹である孫静 かなり有能な将とされていたが、この世界の孫静は雪蓮殿の方針に 反対する穏健派筆頭の文官で、話し合いで解決しようと掲げている。 確かに話し合いは大事だが、この連中はただ保身に走っているだけ だ。 だ。 偉そうに踏ん反り返って威張るだけの無能連中。俺達から見れば 孫呉の面汚し ﹁相変わらず野蛮なことをしよるわぃ。軍事演習など、民が納める 年貢の浪費じゃわぃ﹂ ﹁本当ですな。流石は傭兵上がりと水賊連中じゃわい﹂ ﹁これ、事実であっても口にするではない﹂ ﹁これは失礼。口が滑ってしもうて﹂ ﹁・・・で、何か御用でありましょうか?﹂ 孫静の周りにいる気味悪い笑い方をする老臣連中はあからさまに嫌 味を口にしてくる。はっきり言ってウザいが、俺とサイファーは堪 えて孫静に用件を尋ねる。 ﹁お主等、今から主を鞍替えして妾等と来ないか?﹂ ﹁・・・言っている意味がわかりかねます﹂ ﹁自分も少佐と同じく・・・﹂ ﹁妾等はお主等の実力は判っておるぞ。孫策やお主等の将以上にの ぅ。じゃからこの国を真に思う我等で呉を変えてゆくのじゃ﹂ 俺は怒りが段々と強くなっていくことを感じた。ろくに会ってもな 680 い上に戦おうとしない連中が何を言い出すか・・・。 ﹁孫策のやり方はこの国を食い物にしとるだけじゃ。姉上と同じ戦 ばかり繰り返しとるし、規律も乱れるに決まっておる﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁じゃからお主等は今から儂等の手足になればよい﹁﹁お断り致し ます﹂﹂な・・・なんじゃと⁉﹂ ﹁自分達は孫策殿とライル将軍に忠誠を誓った孫呉海兵隊員です。 常に忠誠を という信念があります。ですので皆様に 主を変えるなど、我等にはあり得ないことです﹂ ﹁海兵隊は 鞍替えすることはあり得ません﹂ ﹁な・・・なんならそれ相応の地位もやるし、特別に給金もやるぞ ‼それじゃったらよいじゃろ?﹂ ・・・本当にウザい。金で何でも解決するやり方には袁紹を思い出 すし、何よりもしつこい。俺はため息を吐きながらこの耄碌連中を 睨みつける。 ﹁はぁ・・・・・・分かってないようだな孫静殿。俺達は金や地位 には興味が無いし、相棒達を裏切るつもりもない﹂ ﹁その通りだ﹂ ﹁なっ‼・・・一将の分際でなんという口の聴き方じゃ⁉﹂ ﹁先に失礼をはたらいたのはあんたらだろ?いきなり土足で演習場 を踏み歩いたと思えば、金や地位を餌に引き抜こうとしてきた。は っきり言ってウザい﹂ ﹁何をいいよるか‼孫静様、じゃから儂等は反対したのですぞ。こ のような野蛮な連中を仲間に加えるなど・・・﹂ ﹁そうですぞ‼それに部下がこのような口の聴き方なのですから、 こやつ等の将もたかが知れとること﹁いま、なんて言った?﹂ヒィ ⁉﹂ 681 流石に今の発言には我慢ならない。俺は専用ガバメントであるM1 911A2、サイファーは前の世界から持参していた45口径リボ ルバーのM1917のハンマーを起こして構える。 ﹁俺達のことを馬鹿にするのは一向に構わないが、ライルや雪蓮殿 のことを侮辱するのは我慢ならないな﹂ ﹁うむ、私から見ても少佐と中佐達は我が子も同然だ。だから侮辱 するのは許せん﹂ その凄まじい殺気を恐れ、3人は足を震え指す。 ﹁くっ・・・・・・な・・・なら勝手にせよ‼後で来ても知らんか らのぅ‼﹂ ﹁分かったからとっとと消えろ、ウザいんだよ‼﹂ 最後までしつこい孫静に対して俺は上空目掛けて45,ACP弾を 発砲。孫静達は小さく悲鳴をだすと一目散に逃げ出した。いい様だ よ。 ﹁はぁ・・・・・・﹂ ﹁大丈夫ですか?﹂ 孫静に反旗の可能性あ ﹁まあな、本当にあんな奴等が我が軍の一員だと考えると腹が立っ てくるな﹂ ﹁同感ですよ﹂ ってな﹂ ﹁後でライルと冥琳殿に進言しておこう。 り ﹁それがいいでしょう。最近になってから穏健派の連中が嗅ぎ回っ てると聞きますから・・・﹂ ﹁そっちも大変だな。新兵が連中に飼い慣らされないようにだけは 682 するなよ?﹂ ﹁了解です。それよりどうですか?この後に黄蓋様と遅めのアフタ ヌーンティーにするんですが一緒にでも・・・﹂ ﹁おっ‼いいねぇ♪付き合うとしようか♪コーヒー飲みたかったと こだし♪﹂ ﹁・・・あんなドブ水のどこがいいんですか?﹂ そういいながら俺達はM1114に乗り込んで演習結果と孫静の反 旗可能性を報告しに向かい、それが終了すると祭殿とのアフタヌー ンティーに向かった・・・・・・・・・。 683 海兵隊の誇り,Re 城では騒動がある。城で働く人達に次々と不運な出来事が起こ 第93話:意思の硬さ︵後書き︶ 下 真・恋姫無双 っていた。 次回 [詠の不運日] 詠の不幸属性、ここに極まる。 684 あの日 が到来。 第94話:詠の不運日︵前書き︶ 苦労人の詠の 685 第94話:詠の不運日 城。この日はドタバタしていた。 ご主人様の為に苦労して作った炒飯が⁉﹂ 劉備軍の本拠地である下 ﹁あぁああああ‼⁉ 愛紗は一刀の為に苦労して作った炒飯︵という名前のなんだか分か 鈴々のオヤツ返すのだぁああ‼‼﹂ らない料理︶を床にぶち撒けてしまったり・・・。 ﹁にゃにゃあ‼⁉ 鈴々が楽しみに口にしようとした肉まんをカラスに持っていかれた り・・・。 ﹁﹁はわわぁ∼︵あわわぁ∼︶‼ライルさんから貰った大事な兵法 書が虫に‼﹂﹂ ライルさんから貰ったアメリカ軍の戦術マニュアルを虫に食べられ ていたり・・・。 ﹁あぁああああ‼‼わ・・・私の大事な秘蔵メンマがぁ・・・・・・ ﹂ 星も大事に取っておいたメンマを食べようとしたら腐っていたり・・ ・。 ﹁・・・・・・・・・︵グズっ︶﹂ ﹁れ・・・れれれ恋殿ぉおお‼泣かないで下さいぃい‼・・・ギャ 686 フッ‼⁉ ﹂ 城下町では給金支給日の前日で最後の小遣いをつぎ込んで買った紙 袋一杯の肉まんを全て台無しにしてしまった恋に、慰めようとして 慌て、壁にぶつかった拍子に頭に木箱が落ちて来たネネだ。 その様子を一部始終、城壁から俺は露蘭と霞と共に眺めていた。 ﹁・・・・・・相変わらず凄いな・・・﹂ ﹁ほんまやで。せやけど今日の奴は今までで一番強烈やなぁ﹂ ﹁そうなのか⁉﹂ ﹁せやでぇ。今までで酷かったんが確か・・・・・・うち等がまだ 洛陽におった時に嵐が薄力粉ぶち撒けてもうてな、そこに火つけた らなんや知らんけど食堂が爆発しよったんや﹂ そっちの方が強烈だろ⁉ まあ、この時代に粉塵爆発なんて知られてないから不可解な爆発だ と思われるだろう。 詠は普段はツンデレ眼鏡っ子だが、何かと苦労が絶えない苦労人で もある。どういう訳か稀にそれ迄蓄積された不幸が一気に放出され て、本人や月、桃香、刀瑠以外の人間に何らかの不幸が降り注ぐの だ。 ﹁それで詠は?﹂ ﹁今は自分の部屋におるで﹂ ﹁でも大丈夫かよ・・・城の中や外でこんな調子だから本人は大変 なことになってないのか?﹂ ﹁それは大丈夫だよ露蘭。どういう訳か知らないけど今までで本人 や月や桃香には不幸なことになったことが無いんだよ﹂ ﹁・・・なんで?﹂ 687 ﹁さぁ・・・﹂ 本当に謎である。そう思いながら霞を見るとどこからか酒壺を取り 出していた。 ﹁まあ、今日一日だけは本当に大人しいしといた方がええで﹂ ﹁・・・霞、どっから出したの?﹂ ﹁一刀と露蘭も飲むか?前にアレックスが来た時にくれた天界の酒 やねんて♪﹂ ﹁おっ♪いいねぇ♪﹂ ﹁俺は遠慮するよ。何だか嫌な予感がするからね﹂ ﹁さよか・・・ほんならいっただっきま∼す‼﹂ そういうと霞と露蘭は盃に注がれた酒を飲むと、暫くしてから顔が ﹂﹂ 赤くなってきた。それも大量の汗を掻きながらだ。 ﹁﹁み・・・・・・水ぅううう‼⁉ 2人は全速疾走で井戸に向かうが、その道中に階段から落ちたよう だ。俺は露が置いていった盃に小指をつけて確認する。 ﹁‼‼・・・・・・ウォッカじゃないか‼流石の霞でも無理な筈だ rektyfiko よ・・・しかもよく見たらスピリタスウォッカって書いてあるし・・ ・・・・。﹂ Spirytus と書いてある。 酒壺をよく見ると小さく wany 96度という高アルコール度数に仕上げられた世界最高純度のスピ リッツで、喫飲中は喫煙を含め火気厳禁と聞いたことがある。 688 しかし霞達がよく呑む白酒は高くても50度位だから、倍近くもあ る酒には勝てないはずだ。 そういえば去年にライルさん達と一緒に祝いに来た時の祝杯でも大 量に呑んでもアレックスさんは一切酔わなかったな・・・。 俺は酒壺に蓋をして片付けるとひとまず城壁から降りた。 取り合えずは桃香と刀瑠の部屋に行こうとするが、それが不味かっ た。部屋のすぐ側で侍女の仕事をしていた月と鉢合わせになる。 ﹁あっ、ご主人様﹂ ﹁やぁ月。洗濯物?﹂ ﹁はい、詠ちゃんがお休みですから、早めにお洗濯を片付けておこ うと・・・﹂ 詠にはこういう日には必ず一週間前くらいには前兆があるので、事 前に休みを組み合わせているのだが、当の本人にはばれている。 ﹁手伝うよ月﹂ ﹁へぅ?大丈夫ですよご主人様。今日はいつもより多いけど、1人 で大丈夫ですから﹂ ﹁俺も急ぎの仕事は無いし、半分持つよ﹂ ﹁いえ。自分のお仕事は自分でやらないと・・・・・・へぅ⁉﹂ ﹁月⁉・・・・・・うわっ⁉﹂ 俺が半分持とうとした瞬間、月がメイド服のスカートを踏んでしま い倒れかける。俺もすぐ反応したが無理な態勢だったので月を巻き 込んで倒れてしまう。 ︵いたたたた・・・・・・な・・・なんだ?・・・口元が妙に柔ら かいような・・・‼‼‼︶ 689 ︵へ・・・へぅうう////︶ 互いが目を開けた瞬間、瞬時に顔を赤くしてしまった。 何しろ洗濯物をクッション代わりに俺が月を押し倒したような姿勢 で、左手は支える際に月の右手首を掴み、左手は月の胸。極め付け ﹂ に月の唇と俺の唇が重なっている。ハタから見たら俺が月を襲って いるような格好だ。 ﹁ご・・・・・・ごめん‼⁉ ﹁へぅうううう/////﹂ 顔をすぐ離して謝るが、月は顔を本当に真っ赤にしながら気を失っ ているようだ。その直後に背後から妙な金属音と凄まじすぎる殺気 と嫉妬が感じ取れ、震えながら振り向いた。そしてそこにいたのは・ ・・・・・。 ﹁ご主人様・・・・・・何をしてらっしゃるのでしょうか?﹂ ﹁主様・・・月様に何をされておいでか?﹂ そこにいたのは青龍偃月刀を構えた嫉妬神こと愛紗に、金剛爆斧を 担いだ狂将こと嵐。 2人の背後には燃え盛る漆黒の炎が見えるような感じがして、更に その発せられる気配と笑っているが目が笑っていない表情が怖すぎ る。 ﹁で・・・ご主人様。なにかご説明はありますか?﹂ ﹁あと・・・何かと言い残したいことはありますかな?﹂ ﹁は・・・はははは・・・・・・ふ・・・2人とも・・・なんで武 器を構えているのでしょうか・・・?﹂ 690 ﹁はい♪・・・なんだか分かりませんがなんとなくです﹂ ﹂ ﹁私は遠征の帰りです♪さあ、主様。逝きましょうか?﹂ ﹁ははは・・・・・・・・・誤解だぁあああ‼⁉ ﹁﹁逃がしませんよご主人様︵主様︶ぁあああ‼‼﹂﹂ ﹁へぅうう・・・・・・ご主人様と口付け・・・////﹂ 幸せの絶頂の表情をしながら気を失っている月を他所に俺は全速力 で鬼から逃げ回る羽目になった。結局は捕まって2人の強力なフル スイングで吹っ飛ばされたのはいう迄もなかった・・・・・・。 691 第94話:詠の不運日︵後書き︶ 魏の中でも男嫌いの桂花。最近華琳に優遇されている牙刀に一泡吹 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re かせるために行動に移る。 次回 [桂花と罠] 魏の平和な日常。 692 第95話:桂花と罠︵前書き︶ 桂花による罠?が発動する。 693 第95話:桂花と罠 許昌のとある一画。ここにせっせと何かをしている猫耳フードを被 った荀彧がいた。 ﹁やっと掘れた・・・・・・後は枝と草を乗せて、その上に土を被 せるだけ・・・﹂ 落とし穴 で そういいながら荀彧はシャベルを突き刺すと用意していた草や枝を 穴に覆い隠し、更にその上に土を被せた。俗に言う ある。 ﹁ふっふっふ・・・・・・見てなさいよ牙刀‼今日という今日は絶 対にギャフンと言わせてやるんだから‼﹂ なぜ彼女が落とし穴など作ったかというと、一週間前に遡る。 ﹁曹操殿、こちらが先日迄の新兵鍛錬に関する報告書と警邏状況に 関する報告書です。ご確認を﹂ ﹁ご苦労。目を通すから少し待って﹂ 徐晃から渡された二種類の報告書に目を通す曹操。彼女の机の上に は既に大量の竹簡や書類が山のように積まれており、しかも全てが 軍を動かすのに必要な報告書だ。 魏軍のNo.2でもある夏侯惇や夏侯淵、軍師の荀彧なども裁断は するが、最終確認には曹操自らが確認する必要がある。 694 加えて軍の増強や都市の治安維持が今の時期で重要視されているの で、徐晃の報告書は直ぐに確認するらしい。 報告書の内容を確認した曹操はそれを引き出しの中に仕舞う。 ﹁相変わらずいい仕事をしてくれるわね。最近は徴兵や新兵の鍛錬 も順調みたいだし、もう少しで目標は達成するわ﹂ ﹁恐縮であります﹂ ﹁はぁ・・・いつになったら私のことを真名で呼んでくれるのかし ら?﹂ ﹁何度も仰いますが・・・﹁栄誉と誇りはありがたくお受け致しま すが、口にするというのはご了承くださいでしょ?﹂・・・いかに も﹂ 予想通りのことが綺麗に当たって溜息を吐く曹操に逆に言われても 平然とする徐晃。 ﹁まあいいわ・・・それより小休止にするからあなたも付き合いな さい。言っておくけど、拒否は言わせないわよ?﹂ ﹁・・・御意﹂ 事前に拒否の選択肢を潰された徐晃に曹操からの誘いを断れる訳も なく、徐晃は彼女の部屋の椅子に腰掛けてティータイムを過ごす。 そして少ししてから・・・。 ﹁やっと報告書が終わったわ♪これで華琳様に褒められてご褒美が 貰えたら最高よ♪﹂ 報告書を抱えながら荀彧は曹操からくれるかもしれないご褒美を考 えていた。なお、何を考えていたかというと・・・割愛させて頂く。 695 そんなことを思いながら曹操の執務室の扉を数回ほどノックして扉 を開けた。 ﹁華琳様。報告書をお持ちしまし・・・・・・﹂ 彼女は扉を開けた瞬間に呆気に取られただろう。何しろ窓の前にあ る机を挟んで曹操と徐晃が茶を飲んでいるのだ。 しかも晴れた天気でカーテンが風で小さくなびいていることに加え て、顔立ちが整った歴戦の武人の顔立ちをした徐晃と年相応の顔立 ちをした曹操の、まさに絵になるような光景が広がっていたから。 ﹁か・・・・・・華琳・・・様?﹂ ﹁あら桂花。どうかしたの?﹂ ﹁は・・・はい。報告書をお持ちしたので・・・ご覧頂きたいので すが・・・﹂ そういいながら徐晃を睨みながら曹操に報告書を手渡す。暫く見て いると曹操は溜息を吐きながら机の上に報告書を置く。 ﹁・・・桂花﹂ ﹁は・・・はい‼﹂ ﹁あなた・・・・・・私に報告書を持ってきたのよね?﹂ ﹁はい‼今度の遠征で掛かる費用と人員に関する報告です‼﹂ ﹁だったらこれがどうやって報告の内容になるか聞きたいわね。牙 刀、あなたは分かるかしら?﹂ そういうと牙刀も中を拝見して、少ししてから彼は荀彧に報告書を 返した。 696 ﹁荀彧よ・・・これは暗号か何かか?私には理解しかねるが・・・﹂ ﹁ふん‼あんたみたいな男に理解出来るとは思ってないけ・・・ど・ ・・・・・・・・あれ?﹂ 荀彧も中を確認する。中に書かれていたのは報告書ではない。それ には曹操に閨で使えそうな攻められ方を纏めた彼女特製の百合本だ。 ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁・・・で、どうしたいのかしら?﹂ ﹁す・・・すみません‼隣にあった本と間違えて持ってきてました ‼‼﹂ ﹁はぁ・・・しっかりしてちょうだい。あなたは我が軍の主力なん だから。少しは牙刀を見習って欲しいものね﹂ ﹁うぅうううう・・・華琳さまぁあ・・・﹂ 荀彧の失敗に軽く注意して曹操は徐晃の仕事ぶりを褒めていた。そ れから一週間後の今に登るということになる。 ﹁全く‼華琳様にちょっと期待されてるだけでお褒めの言葉を貰う だなんて‼生意気なのよ‼今日は絶対にギャフンと言わせてみせる わよ‼﹂ そういいながら高笑いをする荀彧。しかし少し離れた場所の木の影 には・・・。 ﹁・・・何をしているのだ?﹂ ﹁さあ・・・あの子は時々なにをしてるのか分からない時があるか らね﹂ 697 が一部始終を伺っていた。 徐晃が木にもたれ掛り、反対側から官渡の戦いより曹操軍に降った 張 殿はどうお考えか?﹂ ﹁牙刀、あんたはどうしたらいいと思う?﹂ ﹁張 ﹁ひとまずは行ってみようか?﹂ ﹁御意﹂ そういいながら2人は荀彧に歩み寄る。しかしまだ気が付いていな いようだ。 のみだと思っ の真名︶、見て分からない?落とし穴よ、落 ﹁桂花、何してるの?﹂ ﹁神楽︵かぐら/張 とし穴﹂ ﹁誰に仕掛けたの?﹂ ﹁もちろん‼牙刀に決まってるじゃない‼﹂ 荀彧はすぐ背後に徐晃がいることに気が付かず、張 て暴露しまくる。 というかすぐ背後にいるのに気が付かないものだろうか? ﹁へぇえ∼♪じゃあ牙刀に仕掛けてどうするつもりなの?﹂ って言わせてみせるわよ‼﹂ びえーん可愛い荀彧様ぁ‼いい子になり ﹁この落とし穴にはね、ミミズやカエルや虫をふんだんに入れてあ るのよ‼あの男が落ちて ますから出してくださーい‼ ﹁・・・ふ∼ん・・・・・・そうなんだ♪﹂ ﹁見てなさいよ牙刀‼今日こそ醜態を曝け出させてやるわ・・・・・ ・あれ?﹂ 698 それを聞くと徐晃は彼女の襟の後ろを猫みたいに掴み、落とし穴の 上にぶらさがらせると・・・・・・。 ﹁きゃぁあ⁉﹂ 手を離した。 ﹁ちょっと神楽‼‼なにする﹁少しは懲りたか?﹂が・・・牙刀⁉ あんた、いつからいたのよ⁉﹂ ﹁最初からいた。因みに落とし穴の場所は丸わかりだった﹂ 殿、どうしましょう?﹂ ﹁ムキイイイ‼あんたまた私にこんなことを‼‼﹂ ﹁張 ﹁桂花ちゃ∼ん♪暫くあなたの集めた動物さん達と遊んであげなさ い♪﹂ ﹁え?・・・・・・きゃああ⁉ミミズが⁉カエルが⁉虫が⁉﹂ 落とし穴の底に無理やり送り込まれた生き物達が仕返しのごとく荀 殿。私は仕事が残ってますので・・・﹂ 彧に乗ってきて、彼女の身体に這いずり始める。 ﹁張 私をここから出して行きなさいよぉおお‼ ﹁そう?じゃあ私もお昼ご飯にしよっと♪﹂ ﹁ちょっとぉおお‼⁉ ﹂ 荀彧は立ち去る2人に猛抗議するが、その叫び声は虚しく響いた。 因みに後日、完璧にした落とし穴を作って徐晃を待ち構えたが、曹 操が落ちかけて彼女に追いかけ回された。 ﹁牙刀なんて大っ嫌いーー‼‼﹂ 699 第95話:桂花と罠︵後書き︶ 書類整理に追われていたライル。彼は小休止を兼ねて中庭に足を運 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re ぶ。そこには先客がいた。 次回 [お礼とハプニング] 2人の英雄は気持ちに翻弄される。 700 第96話:お礼とハプニング︵前書き︶ ライルの心境に変化が起こる。 701 第96話:お礼とハプニング 建業城内部にある俺の自室兼執務室。城の中でも日当たりがよい場 所にあり、室内には窓の前に寝台、すぐ側に兵法書や現代の戦術マ ニュアル、暇つぶしに読むことがある小説などを収納した本棚。 中央には書類や竹簡を裁断する為の大きめの机。扉のすぐ側にはコ ーヒーメーカーや瓶詰めされた数種類のコーヒー豆。 壁には前世で俺が授与した名誉勲章を始めとした勲章や大統領感状、 俺の活躍を評して名付けられたアーレイバーグ級ミサイル駆逐艦の L Braid]をバックに撮った隊の集合写真が飾ら 70番艦であるDDG−120[ライル・L・ブレイド/USS Lyle れている。 軍務の中に私生活が合間見える内装だが、今はそれらに浸ることは 出来なかった。 ﹁これが警邏第7地区からの報告書で、こっちが第10地区。海兵 隊の新兵鍛錬経過報告書は・・・・・・﹂ 机に積まれた報告書や調達詳細書などを片っ端から裁断していく。 俺は孫呉討逆将軍であると同時に孫呉海兵隊最高司令に警邏隊隊長、 鍛錬部隊の教官を兼任しているから、一度に来る報告書はかなり多 い。 更に普段は俺をサポートするアレックス達にもそれぞれの仕事があ るので、来てはくれない。 702 だから1人で黙々と竹簡に目を通し、確認済みと再提出要請のもの と分別する。最初の頃は筆や竹簡など向こうでは使わなかったから 難儀したが、今は流石に慣れた。 俺はひとまず筆を置いてもたれ掛かり、不意にすぐ側の時計に目を 配る。 ﹁ふぅ・・・・・・もうこんな時間か﹂ 時計の針は午後1時半を差していた。確か朝食を採ったのは朝6時 半。仕事を開始したのは7時丁度だから6時間半も報告書と格闘し ていたことになる。 ﹁どうりで腹が減ったと思う筈だ・・・・・・少し息抜きするとす るか﹂ そう至るとすぐにブラックベレー帽を頭にはめて行動に移る。 昼食の揚州炒飯と点心を胃袋に収納すると腹を落ち着かせる為に中 庭へと足を運ぶ。この城の中庭は洛陽城とは違って桃の木は壁際に 植えられている。 理由はここでよく鍛錬などが行なわれる為の処置だ。しかし複数が 植えられているので、咲きごろには絶景になる。 ひとまずは近くの木に歩み寄ると不意に気配を感じ取る。反射的に ホルスターに収めてあるM45に手が伸びるが、気配からは敵意は 感じられない。 ﹁やっほー。ラ∼イル♪﹂ 703 聞き覚えのある声がして、すぐに辺りを見渡すが人影は見当たらな い。だが向こうは確実に笑っているだろう。 ﹁上よ、上♪﹂ そう言われて見上げると声の主をようやく見つけた。木の枝に座っ てこちらを見下ろしている俺の主である・・・。 ﹁・・・雪蓮殿・・・・・・そこでなにをしているのですか?﹂ 雪蓮殿だ。俺も木に登って隣に腰掛ける。 ﹁あら?見て分からない?﹂ ﹁・・・・・・仕事をサボって昼間から酒盛りをしているように見 えますが?﹂ ﹁ブーブー‼サボってるんじゃないもん‼ちょ∼っと休憩してるだ けなんだから‼﹂ ﹁・・・・・・前も似たようなことをしていませんでしたか?・・・ ﹂ ﹁うん♪﹂ 言いきったよ・・・。しかも無垢な笑みを浮かべながらだ。思わず ドキッとなったが何とか平常心を保つ。 ﹁ねえ、ライルはなんでここに?・・・あっ‼もしかして∼・・・ 私のことが恋しくなった?﹂ ﹁ち・・・・・・違います‼朝からずっと報告書に目を通してまし たから昼休憩をしてるだけですよ⁉﹂ ﹁ふふっ♪照れちゃって・・・可愛いんだから♪・・・えいっ♪﹂ 704 ﹁うわっ⁉﹂ 顔を赤くしながら否定する俺に彼女は悪戯好きな子供みたいな笑顔 を浮かべ、俺の顔を自分の胸に埋もれさせてきた。 ﹁どぉ∼♪お姉さんの胸に埋もれてる感想は?﹂ ﹁ちょっ⁉し・・・雪蓮殿⁉く・・・苦しい‼﹂ 絶対に酔っている。というか俺と雪蓮殿は 確か同い年のはずだ。 何とか彼女の胸から離脱して、ほんの少しだけ離れて顔を真っ赤に しながら呼吸を整える。 ﹁ふふふっ♪ライル∼、大丈夫?﹂ ﹁はぁ・・・はぁ・・・何を考えてるんですか?﹂ ﹁えぇ∼。だってライルがあんまりに可愛かったし∼。それにライ ルだって嬉しかったでしょ?﹂ ﹁ちがっ⁉・・・いや⁉・・・まあ・・・・・・い・・・嫌では・・ ・・・・って⁉何を言わせるんですか⁉﹂ ﹁もうっ♪素直じゃないんだから♪﹂ 彼女が相手だと完全にペースを持っていかれてしまう。戦場では勇 猛果敢に攻める孫呉を導く王だが、普段は天真爛漫で無垢な笑みを 浮かべられる年相応の明るい女性だ。 確かに彼女からの温かさや女性特有の香りで、本音を言えば嫌では ない。 雪蓮殿は杯に注がれた酒を飲みながら、穏やかな表情で俺を見る。 ﹁・・・ライル、ありがとう﹂ 705 ﹁・・・なにがですか?﹂ ﹁蓮華のことよ。次期王を自覚するキッカケを作ってくれて・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁今までのあの子は理想や誇りに意識を向けすぎて、無駄に力が入 っていた・・・。だけどライルがキッカケを作ってくれたおかげで、 蓮華の心に余裕が出来たわ﹂ 確かにあの出来事からの彼女の変化は凄まじいものだ。孫呉海兵隊 との合同訓練や指揮官として兵士一人ひとりに声をかけて回ったり、 一般兵とタッグを組んで互いをカバーし合う戦い方をしたりと、以 前とは本当に別人とも思える。 ﹁・・・俺はただキッカケを与えただけです。彼女の決意は彼女自 身が見つけた・・・それだけです﹂ ﹁蓮華だけじゃないわ。冥琳や祭、それにみんなもあなたには心か ら感謝してるのよ。だから・・・﹂ そういうと雪蓮殿は俺の手と彼女の手を重ねて、じっと俺を見てく る。その表情は優しさに満ち溢れ、透き通るような瑠璃色の瞳はま さに宝石であり、見ていると本当に吸い込まれそうな瞳だ。 ﹁これからも私達を支えてね﹂ ﹁・・・・・・もちろんです﹂ 俺は彼女の笑顔に笑顔で返す。雰囲気はまさに最高であり、 ハタから見たら恋人同士だろう。俺は思わず彼女に近づこうとした が、これが不味かった。枝が妙な音を立て始めて・・・。 ﹁えっ?・・・・・・きゃあ⁉﹂ ﹁くっ⁉﹂ 706 枝が折れて、俺はすかさず雪蓮殿を抱き寄せて彼女の下に潜り込み、 自分の体をクッション代わりにして衝撃を受ける。 ﹁いたたたた・・・・・・雪蓮殿・・・大丈夫です・・・か・・・・ ・・﹂ ﹁うん、大丈夫よライ・・・ル・・・﹂ 互いに状況を理解した。今の俺は彼女に押し倒された格好で、顔も 息が掛かる程に近く、あと少しで唇同士が触れ合う距離にまである。 そんな状況に体が膠着してしまう。 ﹁﹁・・・・・・・・・・・・﹂﹂ その状態が暫く続き、自然と互いの距離が縮んでいくが、城の方角 から人の気配で終わりを迎える。 ﹁雪蓮・・・﹂ ﹁め・・・冥琳﹂ 現れたのは青筋を立てた鬼の角が生えたように見えるご立腹の冥琳 殿だ。正直に言うと怖い・・・・・・。 ﹁お前は仕事もせずにこんな所で何をしているのかな?しかもライ ルを押し倒して・・・﹂ ﹁あ・・・あははは・・・・・・いやぁ∼・・・・・・ち・・・ち ょ∼っと疲れたから軽く息抜きを・・・﹂ ﹁前も同じことをいって仕事を放っていたのは誰だったかしら?﹂ ﹁あはははは・・・・・・﹂ 707 あからさまに不利な状況に雪蓮殿は笑うしか残されていなかった。 ﹁それでライルも仕事はどうした?﹂ ﹁いえ・・・昼休憩の最中でして・・・﹂ ﹁ふむ・・・まあいい。それより早く戻って仕事をしなさい雪蓮。 ﹂ 因みにまたサボったら・・・・・・﹂ ﹁サボったら・・・?﹂ ﹁禁酒一月だ﹂ ﹁えぇえええええええええ‼⁉ 孫呉で屈指の飲兵衛である雪蓮殿にとってはまさに地獄のような罰 則だろう。 たしか以前に一週間の禁酒がされた間の雪蓮殿は文字通り使い物に ならなかった。しかも口を開けば、酒という単語の羅列だけだ。 冥琳殿に腕を掴まれて連行されそうになる雪蓮殿だが、それを必死 に待ったを掛けた。 ﹁あぁあああ‼待って待って‼まだライルに用があるのよ‼すぐ済 むから少しだけ待って‼﹂ ﹁・・・・・・すぐ済ませなさい﹂ 珍しく雪蓮殿のワガママを聞いて腕を手放すと、雪蓮殿が俺に歩み 寄ってきた。 ﹁ライル、さっきの続きなんだけど∼・・・お礼がしたいのよ♪﹂ ﹁お礼・・・ですか?﹂ ﹁そう♪そして・・・・・・これがお礼よ♪﹂ ﹁⁉﹂ 708 お礼をしたいと言った雪蓮殿は顔を近付けて来て、俺の頬にキスを してきた。何が起こったのか理解できないまま、俺はその場で固ま ってしまう。 しかし雪蓮殿は嬉しそうな表情をしながら顔を離す。 ﹁ふふっ♪ライルのほっぺって柔らかいわ♪﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ちょ・・・だから耳を引っ張らないでぇ∼⁉﹂ ﹁雪蓮、用事が済んだのなら行くぞ﹂ ﹁いたたたたた‼⁉ ﹁・・・・・・・・・・・・・・・﹂ 耳を引っ張られながら執務室に連行される雪蓮殿。 その彼女から頬にキスされた俺は言葉が出ないままキスされた箇所 を無意識に触っていた・・・・・・・・・・・・。 709 第96話:お礼とハプニング︵後書き︶ 頻繁に行なわれるようになった孫呉海兵隊と孫呉水軍による合同演 海兵隊の誇り,Re 習。全員の指揮を高める為に南郷と思春による御前試合が行なわれ 真・恋姫無双 ることになった。 次回 [狼の侍VS鈴の甘寧] 素早さが得意の二人がぶつかる。 710 第97話:狼の侍VS鈴の甘寧︵前書き︶ 海兵隊と水軍の親善試合。開幕。 711 第97話:狼の侍VS鈴の甘寧 孫呉海兵隊と孫呉水軍。 天の この二つの組織は互いに孫呉が誇る第一線軍隊であり、名高い武将 や軍師が多数所属している。 と呼ばれているらしい。 特に海兵隊は俺達が所属しているということで、他国からは 知識を持った軍隊 響きはいいが有名になり過ぎるとそれはそれで大変だ。何しろ他国 からのスパイ等が確実に何かしらの諜報活動を行なって来て、対処 に手を焼かされているからだ。 現に曹操軍と思える細策の侵入がここ数日の間で急激に増加してい て、既に何人か逮捕しているが大概が自決していた。 確実に何かあるだろう。だから不測の事態に備え、孫策様は近い内 に南下して現在のベトナム北部等に位置する交州に軍を進める計画 をしている。曹操が確実に覇権を握るのならば、確実に南進を開始 するはずだ。 それに備えた軍備増強と領地拡大。更に進軍に備えて兵士達の士気 を今から高めておく必要が出てきた。 だから孫呉海兵隊本部がある浦口では・・・・・・。 ﹁これより南郷と甘寧による御前試合を行なう‼﹂ ﹃わぁあああああ‼‼﹄ 712 俺と思春による御前試合が行なわれようとしていた。周辺にはウル フパックのメンツを含めた孫呉海兵隊と孫呉水軍の兵士達。 最前列には少佐やレオン、孫権様、黄蓋様、穏、亜莎、明命、千里、 美花、優龍、百合といったメンツが鎮座している。 なお、中佐はハンターキラーを率いて交州の偵察に赴いている。4 日後に帰還する手筈だ。孫策様と周瑜様はというと・・・・・・。 ﹁めいりーーん‼私も武久と思春の試合見に行きた∼い‼﹂ ﹁駄目だ。業務がサボってたお陰で溜まったままなのだから、今日 はこれが終わるまで何処にも行かせないわ﹂ ﹁ちょっ⁉なんか増えてない⁉﹂ ﹁因みに今日中に終わらなさなかったら一月の禁酒と仕事以外の外 出禁止よ﹂ ﹁冥琳のいじわるぅ∼‼‼﹂ 仕事を怠けていた孫策様を周瑜様が監視していた。 ﹁武久‼負けるんじゃないぞ‼﹂ ﹁甘寧将軍‼やっちゃってください‼﹂ それぞれの陣営が自身の上官を応援する。 ﹁では審判は儂がやるぞ。相手を場外にするか相手の参ったで勝負 有りじゃ。得物は刃先を潰したものを使うように。よいな?﹂ ﹁御意﹂ ﹁構いません﹂ 審判は黄蓋様が務めることになり、俺と思春の中間で立ち止まる。 713 ルールは単純だ。使用武器は刃先を潰した模造品。相手を場外に追 い込むか降参、ノックダウンさせれば勝負有りだ。 俺と思春は互いを睨み合いながら合図を待つ。 ﹁蓮華様の御前だ。悪いが負ける訳にはいかない﹂ ﹁それは俺だって同じだ。少佐や部下達の前でかっこ悪い姿を見せ たくはないからな﹂ 互いは表情を変えないまま、闘気をぶつけ合う。中々の気迫で俺の 前髪が揺れる感触を感じ取った。 しかし俺だけではなく、観客席にいた少佐達もその闘気を感じ取っ ていた。 ﹁少佐、どっちが勝つと思いますか?﹂ ﹁はっきり言って分からない。2人の剣術は速さを重視しているも のだからな﹂ ﹁しかも実力もほぼ互角・・・どう転ぶことか・・・﹂ ﹁はぅあ⁉お二人とも凄い気迫です⁉﹂ ﹁︵アセアセ‼︶﹂ ﹁見てるこちらが緊張してきたな・・・﹂ ﹁うむ﹂ ﹁甘寧の奴・・・実力を挙げているな﹂ 互いの陣営が勝負の行方を予想しようとするが、はっきり言って予 想はつかない。 鈴の甘寧 という異名 孫呉に所属している武将の実力は屈指のものだ。特に思春はその配 下の中では間違いなく最強の強さを誇る。 が指し示す通りということだ。 ﹁よし‼ではお主ら、構えぃ‼﹂ 714 黄蓋様が手を上げると俺は中腰になって鞘に納めた状態の政宗の柄 を軽く握り、思春も体を横にして彼女の得物である呉鈎の一種と思 われる鈴音を抜刀するとアイスピックの持ち方で構える。 ︵この状況・・・先に動いた方が負ける・・・だが︶ ︵奴も同じことを考えている筈・・・・・・ならば︶ ﹁では用意・・・・・・始めぃ‼﹂ ︵︵一気に勝負に掛ける‼‼︶︶ 黄蓋様の号令で一気に互いが駆け出し、やがて刃がぶつかり合う。 ﹁はっ‼﹂ ﹁ふん‼﹂ 思春は政宗を弾き返すと回転しながら斬りかかって来て、俺もそれ を同じようにはじき返し、反対に回転しながら斬撃をして立て続け に回し蹴り。 思春も瞬時に反応して最初の斬撃を回避すると体を捻りながら飛び 上がり、俺の背後を取ろうとする。 着地と同時に鈴音を振り上げるが、素早く政宗で受け止める。だが 彼女は受け止められた瞬間に回し蹴りを付け加えてくる。 ﹁はぁ‼﹂ ﹁くっ⁉﹂ 最初の回し蹴りは回避出来たが、速度を保ちながら再び回し蹴りを お見舞いしようとする思春。最初の蹴りを避けられても態勢を整え る余裕を与えないつもりだ。 715 だが俺も引っかかる訳にはいかない。 ﹁なっ⁉﹂ ﹁甘い‼﹂ 俺は彼女の足を左腕で受け止め、そのまま挟み込むと投げ飛ばす。 ﹁ちぃ‼やってくれる‼﹂ ﹁流石は鈴の甘寧だ‼今の姿勢から立て直すなんてな‼﹂ 彼女は空中で立て直すと両足と左手で着地の衝撃を和らげると再び 距離を置いて構え直す。 ﹁・・・・・・・・・﹂ 思春は無言で俺を睨みつけながら動きを伺い、俺も政宗を再び鞘に 戻して抜刀の構えをする。 その雰囲気に全員が飲み込まれ、辺りが静まり返る。そして何処か らか一枚の木の葉が2人の中間に舞い落ちて、それが地面に落ちる と・・・・・・。 ﹁﹁はぁあ‼‼﹂﹂ 同時に地面を蹴って、瞬間的に2人が消えたように見える。そして 少しして・・・。 ﹁・・・・・・引き分け・・・か・・・﹂ ﹁・・・そのようだ﹂ 俺の政宗は思春の喉元を捉え、対する思春の鈴音は俺の腹部を捉え 716 ていた。 いくら模造品の得物であっても、ほんの少し動いていたら確実に重 傷、最悪の場合は殺していたかもしれない。そんな状況にいち早く 我に帰ったのは審判役の黄蓋様だった。 ﹁・・・はっ⁉そ・・・それまで⁉引き分けじゃ‼﹂ ﹃わぁああああああ‼‼﹄ 黄蓋様の試合終了の宣言で沈黙していた観客達が歓声を挙げて、拍 手が鳴り響く。 俺達は拍手喝采の中、互いの得物を鞘に戻して歩み寄る。 ﹁いい勝負だった﹂ ﹁ああ、私も久々に楽しまされた﹂ fighting!! spirit!! Ye Takehi 俺は彼女に手を差し伸べ、思春もその手を掴んで握手を交わす。そ Good の光景に少佐達は更に拍手を強めて讃えてくれた。 ﹁Yeah!! sa!!﹂ hooooah!!!!﹂ ﹁Hoooah!!!!Samurai ah ﹁甘寧将軍‼凄い試合でした‼﹂ ﹁また見せて下さい‼﹂ 拍手喝采と大歓声の中、俺は右手を握り締めて高く掲げる。 侍と鈴の決着は引き分けに終わったが、本音を言えば結果などどう でもよかった。こんな充実した勝負、滅多に味わえないのだから・・ ・・・・。 717 第97話:狼の侍VS鈴の甘寧︵後書き︶ 現在のベトナム北部近辺に位置する交州。ライルが率いるハンター キラーは潜入偵察を行ない、孫策軍による交州侵攻に備えて敵陣地 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re の位置を調べ上げる。 次回 [ベトナム] 後漢末期のミニベトナム戦争が開幕。 718 第98話:ベトナム︵前書き︶ ライルの元フォースリーコン隊員としての能力が発揮される。 719 第98話:ベトナム 交州は中国の南方の、海にまで出た一帯の地域。黄巾残党や旧十常 侍推進派、旧袁術・袁紹軍、山越で構成された反乱軍が交州正規軍 と隣国であるチャンパ王国︵現在のベトナム南部︶と戦闘状態だ。 そんな連中が便乗して呉への越境が盛んになってきており、今の処 は損害は出ていない。 威彦は呉への帰従を条件に反乱軍鎮圧の手助けを しかしいずれは呉の脅威になりえる。 交州太守の士燮 要請。雪蓮殿はそれを受諾。 俺はハンターキラーを率いて高度6,000ftからHALO降下 を実施。 広がる森林地帯を周辺警戒を厳にしながら鬱蒼とする草木を掻き分 けながら前進。敵拠点とルートを片っ端から探し回っていた。 ﹁相変わらずジャングルは視界が悪いな﹂ ﹁視界範囲は大体30mってところですね?﹂ ﹁ああ、下手をすれば数m先も見えない。こんなジャングルは久し ぶりだよ﹂ こんなジャングルは本当に久しぶりだ。鬱蒼とした森林にきみ悪い 動物の鳴き声。加えてジャングル特有の蒸し暑さ。 FG チェストリグ+パーソナルボディ 1961 しかしハンターキラー専用装備として採用したA−TACS ロードベアリング カラーのコンバットシャツとコンバットパンツ、LBT Aスタイル 720 アーマー、CQCホルスター、ブーニーハット。 CASVやSC CASV等が周辺の色に同化しており、走ったりこちら 加えて同色にカモフラージュされたSCAR−L AR−H から仕掛けなければ気づかれないだろう。 M ﹁しかしまさか一番最初にベトナムに踏み込んだアメリカ人が俺達 とは・・・﹂ ﹁まさに第零次ベトナム戦争ってところですね﹂ となりで12ゲージポンプアクションショットガンのM870 AGPULを手にしたクラウドがそこそこシャレにならない発言を する。 しかし彼のジョークも言えてる部分がある。 間接的ではあるが今後の作戦展開はチャンパ王国を支援する形にな り、チャンパ王国という南ベトナム軍と交州正規軍と共に交州反乱 軍という北ベトナム軍を殲滅させる。 まさに1,800年前のベトナム戦争だ。 ﹁中佐、向こうから足音です﹂ ポイントマンがハンドシグナルで停止を指示するとすぐに全員がそ の場に伏せる。 すると少し離れた切り拓かれた道から続々と反乱軍兵士が行軍して CASVを構えながらその場に息を潜める。 いく。馬に乗った者や荷物を担いで同行する敵兵。規模的には一個 中隊規模だろう。 俺もSCAR−L ﹁全ハンター。敵の数が多過ぎる。やり過ごせ﹂ 721 ≪了解≫ 部隊に交戦禁止を命じ、敵の動きを注意深く伺いながら不測の事態 に備える。 去年と違って俺達の火力は増加している。40mm6連装グレネー CASVをベースに軽機関銃としたSC ドランチャーのMk13やMk16とMk17に合わせて採用した Mk14、SCAR−L AR−HARM、SCAR−HのスナイパーモデルであるSCAR −SSRという銃火器だ。 敵は俺達に気付くことなく、全ての部隊が通過して行く。それから 少ししてから慎重に立ち上がる。 ﹁オールクリア﹂ ﹁ビンゴですね中佐。奴等のホー・チ・ミンルートだ﹂ ﹁ああ、間違いなくこの先に敵拠点があるな﹂ これまでに発見した敵拠点とルートは全て交州全域の地図に記録し ているが、このルートは記録に無い。加えて奴等の進路には記録し ている敵拠点は無い。 ﹁よし。追跡する。音を立てずに茂みを進むぞ。ハンター2、ポイ ントマンだ﹂ ﹃Rog︵了解︶﹄ 奴等の先に拠点があると踏んだ俺達はすぐに森の中を隠れながら移 動を再開させる。途中で敵のパトロール部隊を目撃したが、気付か れる前にナイフで仕留めたり、サプレッサーを装着したSCAR− SSRでヘッドショットで仕留める。 722 もちろん死体はすぐに草むらの中に隠す。その内の何体かの下に安 全ピンを抜いて信管を短くしたM67を置いておく。 こうすることで敵が死体を発見した時に、動かした瞬間に爆発する ブービートラップ︵間抜けの罠︶の出来上がりだ。 追撃開始から暫くして、俺達は草むらに身を隠しながら双眼鏡で先 にあるものを伺う。 ﹁いいぞ、見つけた﹂ ﹁かなりでかい部隊だ・・・﹂ ﹁規模は二個師団かそれ以上ですかね?﹂ ﹁間違いなさそうだぜポー。投石機のパーツに連弩、歩兵に弓兵に 槍兵・・・。オンパレードだ﹂ ﹁攻撃準備だな・・・﹂ ﹁地図にマーキングしました﹂ ﹁どう考えても呉への攻撃準備だな・・・・・・夜になったら仕掛 けるぞ﹂ ﹁攻撃ですか?﹂ ﹁そうだ。敵指揮所を破壊する。明日になれば移動するかもしれん し、攻撃を遅延させられる﹂ ﹁やれやれ・・・まあ、敵大将を始末すれば敵は混乱するでしょう ね﹂ ﹁ハンター3はレイヴンを飛ばせ。敵本陣の位置を探し出してくれ﹂ ﹁了解﹂ ﹁夜まで残り8時間だ。本陣確認後、2人ずつの2時間交代で休め﹂ 敵の攻撃予測が呉であると踏んだ俺達は夜襲に備えてその場に留ま る。攻撃開始までの時間はあと8時間・・・・・・。 723 第98話:ベトナム︵後書き︶ 交州反乱軍による呉攻撃を遅らせる為に夜襲を仕掛けるハンターキ ラー。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 再び闇に潜みながら敵本陣を焼き払う為に忍び寄る。 次回 [夜襲] ならず者集団にお灸を据えてやる。 724 第99話:夜襲︵前書き︶ ウルヴァリンとアサシン。タッグを組んで闇夜に忍び寄る。 725 第99話:夜襲 交州にて正規軍と交戦状態の交州反乱軍の拠点を発見した俺達は夜 襲を行なう為に休息を兼ねてその場に息を潜める。 敵の数はやはり2個師団級の兵力のようであり、装備も揃っている。 だが敵兵はかなりバラバラな面があり、特徴が見られる。 その他と違って統制が取れているのが山越だろう。山越を除いた反 乱軍連中の殆どは賊上がりか何かであり、恐らくは金に釣られて傭 兵みたいに契約を結んだのだろう。 そして潜伏開始から8時間後の午前1時頃。俺達は敵陣地に潜入を 開始する。理由としてはこの時間帯が人が一番熟睡している時間帯 であり、夜襲を仕掛けるには最適の時間帯とされている。 俺はクラウドと共に闇夜を進む。 <ハンター3−1からハンター1−1。敵指揮所はそこから300 m先。周辺に敵兵の姿は少数> ou ﹁了解した。そのまま監視を続行してくれ。ハンター2−1及び1 −2。そっちは?﹂ <脱出路に敵の姿はなし。敵は油断しきっています> <ハンター1−2も同じく> ﹁了解だ。何か変化があればすぐに報告を。ハンター1−1 t﹂ 監視を行なっている部下達に確認をするとすぐに通信を切る。 俺達の計画した作戦はこうだ。アサシンのコードネームを持つクラ 726 ウドと共に隠密行動を取りながら敵指揮所に接近。 内部制圧後にテルミット爆弾を設置。脱出完了後、起爆して退却す るというものだ。 その間、俺を除いたハンター1は俺達の脱出路、クラウドを除いた ハンター2は部隊の退却路を確保。 ハンター3はサプレッサーを装着したSCAR−SSRとM40A 5を用いて敵部隊の監視と狙撃。 既にヴェアウルフには攻撃の報告は行なっており、回収予定地点に オスプレイを向かわせることになっているが、時間が02:10か ら5分間だけ。 更に脱出地点までは50分は掛かる距離であるので、作戦時間は1 0分間しかない。 CASVとサプレッサーを装着させた つまりは時間が無いということだ。俺とクラウドは迅速かつ慎重に 敵指揮所へとSCAR−L USP,45を構えながら突き進む。 ﹁12時方向に敵2名﹂ <中佐、ここからでは死角になって狙撃は不可能です> PUP ﹁分かった。こちらで対処する。クラウド、グルカに持ち替えろ。 暗殺といくぞ﹂ ﹁了解﹂ 前方にいる敵2名が邪魔で前進出来ない。俺はM37K SEALsナイフ、クラウドはグルカナイフを取り出して背後から 忍び寄る。敵は油断しきっており、背後からの俺達に気付く気配は 全く無い。 727 タイミングを見計らって同時に敵に飛び掛り、口を塞ぎながら片足 を蹴って態勢を崩し、俺は相手の心臓部分に突き刺して、クラウド は声帯を切断。 敵は何が起こったのか理解出来ないまま絶命。時間が無いのてした はそのままにしておいて指揮所へと急ぐ。 <ハンター3からハンター1−1> ﹁感度良好。前方の天幕がそうか?﹂ <中佐、前方の天幕に旗があればビンゴです。サーマルセンサーで 内部に敵兵4名を確認> out﹂ ﹁了解だ。このまま制圧に向かう。周辺に仕掛けたクレイモアを回 収していてくれ。ハンター1 確かに前方には反乱軍の牙門旗と思われる旗が靡いていたが、入口 付近に敵の衛兵がいないのは気になる。 普通なら衛兵の1人はいるはずだが・・・。しかし下手に倒して内 部の人間が騒ぎ出さなくなったからかえって好都合だ。俺とクラウ ドは新しいマガジンに交換して入口の左右に陣取る。 ﹁クラウド、1.2.3で突入する。いいな?﹂ CASVとUSP,45を構えて突入態勢 ﹁了解です中佐。いつでもどうぞ﹂ それぞれSCAR−L を取る。 ﹁・・・1・・・2・・・3‼﹂ カウントをして、3になった瞬間に内部に突入。内部には確かに敵 728 兵4名がいたが、突然の出来事に反応が遅れ、そこに5.56mm NATO弾と45,ACP弾を撃ち込む。 中にいた敵兵4名を射殺するとボディランゲージを取る。 ﹁指揮所制圧﹂ ﹁クラウド、テルミット爆弾を仕掛けろ﹂ ﹁了解です。20秒下さい﹂ クラウドがフィールドバックからテルミット爆弾を取り出し、適当 な場所に設置する。その間に俺は机の上に散乱していた竹簡や書類 を探る。何か有力な情報がないか探す為だ。 すると一枚の書類に手を向かわせる。 ﹁・・・マジかよ・・・・・・﹂ ﹁中佐、設置が完了しました・・・・・・中佐?﹂ ﹁見てみろ﹂ そういってクラウドに一枚の書類を手渡し、内容に彼は驚きを隠し きれなかったようだ。 ﹁これは・・・・・・交州反乱軍討伐の初期計画書・・・・・・﹂ ﹁ああ、しかもつい最近のものだ。ご丁寧に補給部隊の中継場所ま で書かれてる﹂ ﹁確かこれを知ってるのは一部だけでしたよね?﹂ ﹁ああ、となると答えは一つだけだ・・・﹂ ﹁軍上層部に裏切り者がいる・・・・ですか?﹂ クラウドがそういうと頷く。書かれていた内容は数日前に行なわれ た交州進軍に関する軍議で検証された進軍経路を記した地図だ。ひ とまずはそれをコンバットシャツの腕ポケットに畳んで仕舞うとS 729 CAR−L CASVを構え直す。 ﹁検索は後回しだ。ひとまずは脱出するぞ﹂ ﹁了解です﹂ そういうと再び闇夜に身を潜めながら味方部隊と合流して、点火機 を手にして設置したテルミット爆弾を起爆。 指揮所周辺に起爆の際に発生した火災で赤く染まり、近くにあった 天幕を伝って燃え広がり、消そうと奮闘した奴もいたが、大半は真 っ先に逃げ出して鎮火したのは陣地の大半が燃え尽きた後だ。 情報を入手した俺達は誰にも悟られることなく予定の地点で迎えに きたオスプレイを操るオーディンによってヴェアウルフに帰還。 だが、今回の仕事はまだ掛かりそうだ・・・・・・。 730 第99話:夜襲︵後書き︶ 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 情報を入手してから暫くの許晶。そこに曹の名を持つ三人がいた。 次回 [曹一族] 三人の曹が対話をする。 731 第100話番外編:孫呉のクリスマス︵前書き︶ 記念すべき第100話。ハロウィンに続いてクリスマスをお届け。 732 第100話番外編:孫呉のクリスマス 12月25日。この日は孫呉に雪が降り注いでいた。建業は一面雪 景色に変貌して、子供達は雪合戦で遊んだり、大人達は雪かきで精 を出していた。そして建業城でも・・・・・・。 ﹃メリークリスマス‼‼﹄ 玉座の間ではクリスマスパーティーが開かれていた。 中央に置かれたクリスマスツリーを囲む様に机にはドライフルーツ が入ったバウンドケーキのシュトレン。 フランクフルター・ヴュルストヒェン、ボックヴルスト、ミュンヒ ナー・ヴァイスヴルスト、ビーアヴルストの5種類を盛り付けたヘ ルマンソーセージ。 フライドチキン、ドイツ風スティファド、フィンケンヴェルダーシ ョレ、ザワークラフト等、数多くのドイツ料理が皿に盛り付けられ ている。 もちろん酒類もある。ケルシュやヴァイツェンビア、ピルスナー、 グリューワイン、キルシェヴァッサーの5種類を用意した。 去年にもクリスマスパーティは行なったが、今回は思考を変えて俺 の祖父の国であるドイツ風。 理由としては単純だ。去年と同じで雪蓮殿達が飽きないようにとい 733 う配慮だ。 そしてその雪蓮殿達はというと・・・。 ﹁プハァ∼♪やっぱり美味しいわねこの びーる って♪﹂ ﹁この羅馬の葡萄酒も落ち着いた味でいい。私好みだ﹂ ﹁肉料理も酒の当によく合うわぃ。これじゃったら幾らでも酒が進 む﹂ ﹁蓮華様、まだ飲まれますか?﹂ ﹁ええ、ありがとう思春﹂ ﹁はぁあああ∼♪雪を見ながらお酒を飲むなんて素敵です∼♪﹂ ﹁美味しいです‼こんな料理初めて食べました‼﹂ けーき が好きぃ‼﹂ ﹁み・・・明命。もう少し落ち着いて食べないと喉に詰まらせてし まいます﹂ ﹁シャオはこの ﹁にょほほ∼♪楽しいのじゃ♪のぅ七乃、魯粛♪﹂ ﹁はい、お嬢様♪﹂ ﹁美羽様、口元が汚れておりますよ﹂ 酒や料理を口にしながら楽しんでいた。しかも雪蓮殿はどういう訳 かミニスカサンタガールの衣装を着ている。まあ、似合っているか ら問題はないが・・・。 そしてこちらでも・・・。 ﹁しゅりぃいいいい‼こ∼んなところにいたんだぁあ∼♪お兄ちゃ ん寂しかったよぅ‼﹂ ﹁あぅあああ∼⁉しぇ・・・千里しゃまぁ⁉私は美花でしゅ⁉朱里 ちゃんじゃありましぇん⁉﹂ ﹁はははっ♪相変わらず千里殿は酒癖が悪いな﹂ ﹁うむ、しかし私達も気にせず楽しむとしよう丁奉﹂ 734 酒癖が悪い千里が酔っ払って美花を朱里と間違えて頬ズリしている 様子を、雪蓮殿以上の酒豪である優龍と百合はピッチャーで注がれ たヴァイツェンビアを飲んでいた。 ﹁楽しんでくれているようだな?﹂ ﹁ああ、ジーンに無理を頼んだ甲斐があったもんだな﹂ ﹁しかし・・・千里の奴、酔うと小さい女の子が朱里に見えるだな んて、どんな酔い方だよ﹂ 泣き上戸や笑い上戸なら聞いたことはあるが、妹上戸というのは流 石に無い。というか美花が災難だな。 ﹁ラ∼イ∼ル∼♪﹂ ﹁雪蓮殿?﹂ ﹁そんな場所にいないでこっちに来て楽しみましょ♪﹂ ﹁これは失礼、今行きます﹂ ヴァイツェンビアを片手に雪蓮殿が俺の腕を掴み、みんなの所へ連 れて行く。どうも彼女も酔っ払っているようだ。まあ確かに見る限 りでは確実に10杯は飲んでいるから当然だろう。 ﹁おうライル。ようやく来よったか、まあ飲め﹂ ﹁・・・祭殿・・・・・・俺が酒を飲めないのは知っているでしょ ?﹂ ﹁応っ‼じゃがお主が酔い潰れるのを見たいのじゃ。なあ、策殿?﹂ ﹁うん♪﹂ ﹁させますか⁉﹂ というか・・・ほんとうに勘弁願いたい。俺が酒を飲むとすぐに酔 い潰れてしまう上に、翌日から数日間は酷い二日酔いに襲われて寝 735 込んでしまう。 しかも飲んだ直後から目を覚ますまでの記憶が全く無いのだ。これ では何をされてしまっているのか把握のしようがない。 2人が俺に飲ませようとしている差中、美羽が俺に抱きついて来た。 ﹁兄様ぁ∼♪妾、贈り物が欲しいのじゃ♪﹂ ﹁み・・・美羽⁉﹂ ﹃⁉﹄ 助け舟とはまさにこのことだ。美羽がプレゼントを強請ってくれた おかげで2人の勢いが削がれた。 ﹁あぁああ∼‼シャオも欲しい‼﹂ ﹁わ・・・私は・・・・・・別に・・・﹂ ﹁ふむ・・・先年の品も中々のものだった。今年も期待してよいな ?﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁ライル様‼私にどうかお猫様と仲良くなれる品を‼﹂ ﹁あぅあ・・・・・・﹂ ﹁ライルさぁあ∼ん♪穏にも新しい本をくださ∼いぃ♪﹂ ﹁わぁ⁉わ・・・・・・分かってますよ⁉ちゃんと用意しています から⁉﹂ 何とか彼女達を抑え込んで、アレックスに視線を送るとすぐにプレ ゼントを持って来た。すぐに全員に行き渡り、それぞれが中身を確 認する。 ﹁わぁ∼い‼天の国のお酒だ‼﹂ 736 ヘネシーだ。 雪蓮殿にはフランス西部のコニャック地方の名産であるブランデー。 それも最高級品である銘酒のリシャール ﹁うむ、流石はライルだ。私達を喜ばす考えを持っているな﹂ 冥琳殿には銀色で編み込みのようなベルトをした腕時計。電池が無 くなってもそのままアクセサリーとして身に付けることが出来る。 ﹁儂には策殿とは別の酒か・・・後で飲むとしようかのぅ﹂ 八海山 だ。 祭殿にも酒だが、こちらは日本酒。新潟県で酒造されて淡麗辛口で キレのある後口に特徴がある名酒 ﹁あ・・・・・・ありがとう・・・ライル、アレックス﹂ 大の虎好きである蓮華殿には可愛らしい虎の赤ちゃんのぬいぐるみ だ。 ﹁わぁ‼シャオもこれでまた可愛くなっちゃう♪﹂ シャオには花の彫刻が掘られた髪飾りだ。色合いも全体的に白色な のでよく似合うと思う。 ﹁はぅあ♪こ・・・これは私が欲しかった天の水軍の戦術指南書・・ ・あぁあああ∼。手にしただけでぇえ∼∼身体か火照ってきちゃい ますぅ﹂ 穏にはアメリカ海軍の戦術書。彼女に本を渡すのは多少危険である が、それでも喜んでくれるのならよしとしよう。 737 ﹁ほぅ・・・・・・前に南郷が話していた天の国の得物か・・・確 かにいい感触だな﹂ 思春には忍刀だ。隠密の役割もある彼女にとって機動力と携帯性に 優れているのでかなり活躍しそうだ。 ﹁にゃああああ‼お猫様変身道具です‼ありがとうございます‼﹂ 明命には猫耳に猫尻尾、猫手、猫足、猫ヒゲというグッズ一式だ。 はっきり言うと彼女のプレゼントが一番簡単だった。早速身につけ て猫になりきっている。 その姿は予想以上に可愛らしい。最近仲がいいクラウドが見たら絶 対に連れて帰るだろう。 ﹁はぅあ‼わ・・・私なんかにこんな素晴らしいものなんて・・・ あ・・・・・・ありがとうございます‼﹂ 亞莎には新しい片眼鏡だ。少し前に亞莎が合わなくなっていると話 していたのを聞き、視力検査と称して彼女に合う眼鏡のデータを揃 えて用意させたのだ。 ﹁にょほほぉ‼蜂蜜なのじゃ♪﹂ ﹁私にはお嬢様とお揃いの首飾りですか♪﹂ ﹁これは・・・天の国の筆記用具・・・・・・なんと素晴らしいも のか・・・﹂ 美羽には一番喜んでくれるように最高級品の蜂蜜。七乃には美羽が いつも身に付けているネックレスと同じもの。 外交官である魯蕭には万年筆やインク、ルーズリーフをワンセット にした筆記用具一式だ。 738 ﹁こ・・・これは⁉朱里の絵⁉﹂ ﹁あぅ・・・・・・く・・・クマのぬいぐるみでしゅ⁉﹂ ﹁某にも用意して頂き、ありがとうございます。ライル将軍﹂ ﹁あ・・・ありがとうございます・・・・・・兄上﹂ 千里には以前に徐州に訪問した際に撮った朱里の写真にCG加工で 千里も加えた写真10枚で美花にはサンタの服装を着せたテディベ ア。 優龍には子供達と一緒に楽しめる遊び方を記した本と菓子作りの調 理本。 そして意外に可愛い物好きである百合には子犬の置物。なお、彼女 は少し前から俺のことを兄上と呼ぶようになっている。 ﹁全員に行き渡ったようですね?﹂ ﹁ありがとうね‼ライル‼﹂ 全員が喜んでくれているようであり、用意した甲斐があった。する と雪蓮殿が俺の腕を掴んで部屋の外に歩き出す。 ﹁ねえライル、実はね。私からもあなたに贈り物があるの♪﹂ ﹁私に・・・ですか?﹂ ﹁そっ♪だから一緒に付いて来て♪﹂ そういいながら雪蓮殿は俺を引っ張りながら玉座の間を後にして廊 下を歩いて行く。 少しして辿り着いたのは中庭。広々とした中庭にも雪が積もり、城 の趣きも加わってかなり幻想的な雰囲気を醸し出していた。 ﹁ここよ♪﹂ 739 ﹁雪蓮殿・・・ここで何を?﹂ ﹁ねえライル、あなたの故郷でこんな言い伝えがあるのよね?﹂ ﹁言い伝え?﹂ ﹁そっ♪・・・とある場所に立った男女の2人は・・・﹂ そういいながら雪蓮殿は俺に抱きつき、両腕を俺の首に回す。いき なりだったので混沌としてしまう。 ﹁し・・・・・・雪蓮・・・殿・・・﹂ ﹁・・・結ばれるっていう言い伝え♪﹂ その瞬間に俺は考えられなくなってしまった。雪蓮殿は俺の顔を近 づけながら目を瞑り、唇を俺の唇に重ねて来た。 ﹁んっ・・・・・・んん・・・﹂ ﹁んっ・・・ちゅっ・・・・・・はぁ・・・﹂ 暫く続いた彼女とのキス。俺達は互いの顔を少し離して互いの顔を 見る。 背後の柱にはヤドリギが貼り付けられて、雪という幻想的な風景に 照らされ、瑠璃色の吸い込まれそうな瞳、そしてなによりも見てい るだけで自然とこちらも笑顔になる優しさに満ち溢れた幼さが残る 顔立ち。 今の彼女は孫呉の王としてではなく、1人の美女としての雪蓮殿だ。 ﹁これが・・・私からのプレゼントよ♪﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・雪蓮﹂ ﹁えっ・・・きゃっ﹂ 俺は嬉しくなり、彼女の顔を寄せてキスをする。いきなりのキスに 740 雪蓮殿も最初は驚いていたが、少ししてから目を閉じて深くキスを 通して気持ちを俺に伝える。 ﹁はぁ・・・ライルって口づけが上手いわね♪﹂ ﹁・・・・・・﹂ ﹁もぅ・・・・・・そこで黙り込まないでよ・・・・・・・・・流 石に恥ずかしいわ﹂ ﹁雪蓮・・・・・・ずっと前から言いたかったことがある﹂ ﹁ライル・・・?﹂ ﹁俺は・・・泗水関で会った時から俺は・・・・・・君が・・・・・ ・﹂ そういいながら再び目を瞑り、やがて唇を再度重ねた。そして・・・ ・・・・・・。 ピピピピピピピピピピピピ‼‼ 不意に鳴り響く電子音。重い瞼を開けると、そこは俺の部屋の天井。 窓の外からは鳥の鳴き声が聞こえる。朝の5時きっかりにセットし た目覚ましを止めて寝台から起き上がると状況を理解した。 ﹁・・・また・・・・・・あの夢か・・・﹂ 741 そう・・・・・・さっきまでの至福の時は夢。シチュエーションは 違うが同じような状況の夢だ。 最後には雪蓮殿と2人きりになり、キスを交わす。普通の夢なら目 を覚ますと同時に忘れているが、この夢だけははっきりと覚えてい る。 しかも一度や二度ではない。孫呉に忠誠を誓ってから時々見るよう になり、最近になってから回数が増えている。 俺は寝台から出て眠気を取り、着替える。身だしなみを整えるので 鏡で照らしながら顔を触る。 ﹁・・・・・・雪蓮・・・・・・・・・はぁ・・・どうしたってい うんだ・・・俺は・・・・・・﹂ 考えていても仕方がない。俺はブラックベレー帽を被ると朝食を摂 る為に食堂へと向かった。 これは、俺が交州へと向かう数日前の話である・・・・・・・・・。 742 第100話番外編:孫呉のクリスマス︵後書き︶ 次回から本編に復帰します。 743 第101話:曹一族︵前書き︶ 乱世の奸雄、行動前に一息つける。 744 第101話:曹一族 予州に位置する許昌城の中庭。ここに3人の少女が集まっていた。 ﹁ふぅ∼。相変わらず季琳の淹れるお茶は格別だな♪﹂ ﹁あぁ、秋蘭ほどではないけどね﹂ ﹁あら、その秋蘭もあなたのお茶には感心するって前に言ってたわ よ♪﹂ 周囲を木々で囲まれ、そこから降り注ぐ太陽の光が心地よい場所で お茶をしているのは曹操に従姉妹の曹仁、曹洪の3人だ。 家臣達を想う曹操は時々何人かをここに呼んで、お茶を飲みながら 他愛のない会話をしている。 それで今日は2人ということだ。 ﹁けど、この3人が揃うのは本当に久しぶりね?﹂ ﹁前に私が来た時は愛琳が青州兵の鍛錬に行ってたし、逆に愛琳が 来た時には今度は私が幽州に袁紹軍残党の討伐に行ってたからね﹂ ﹁本っ当に間が悪いよな♪﹂ ﹁ふふっ。だけどこうして3人が揃うと旗揚げを思い出すわね♪﹂ 曹操はお茶を飲みながら思い出す。彼女が旗揚げをしたのは黄巾の 乱より一年前。 初めはこの曹操、曹仁、曹洪、夏侯惇、夏侯淵、徐晃の6人と10 0人足らずの地方軍だったが、他の義勇兵や志願者を片っ端から吸 が彼女の陣営に加わり、気が付けば今日の時点で50万 収して行き、やがては荀彧や楽進、李典、于禁、許褚、典韋、程昱、 郭嘉、張 745 を超える漢で最も強大な陣営にまでになっていた。 ﹁あぁ、まさかあの時に弱小勢力だった私達がここまで強大の陣営 になるなんてな﹂ ﹁あの時に金貸しを辞めて華琳について行った甲斐があるってもん だよ♪﹂ ﹁あら?私は2人にも感謝しているわよ。季琳は私には無い守りの 策で私達の帰る場所をしっかり守ってくれてるし、愛琳も培った金 融と独自の経路で資金面を一手に引き受けてくれてるし、2人がい るから私達は安心して戦えるのよ﹂ ﹁﹁ありがとう﹂﹂ 2人同時に礼を言う。暫く沈黙したがやがて笑顔のまま、曹操が口 を開く。 ﹁さて、2人に聞きたいんだけど・・・﹂ ﹁なんだい?﹂ ﹁北郷とライル、どう思うかしら?﹂ 一刀とライルの名前を聞いて2人は真剣な表情になる。 天の御遣い ってのも凄いよ﹂ 銀狼 と呼ばれてる北郷は、あの呂布にも引けを取 ﹁分かってるとは思うけど我が覇道を成すにはいずれ戦うことにな るわ。 らない程の剣に加えて劉備の仁徳も兼ね備えている﹂ 天の軍隊 ﹁あたし的には呉にいるライルが厄介だよ。あいつ自身も って呼ばれてるし、 ﹁しかもあの男の軍勢は今までで一人たりとも死人を出していない。 天界の武器もそうだが奴等の武術は名高い武将並だと聞く﹂ ﹁まっ。あたし的には北郷のようなお坊ちゃんやライルみたいな男 じゃなくてアレックスに興味があるんだよな♪﹂ 746 ﹁あら?どうしてかしら?﹂ ﹁官渡の時にあいつと仕合したことがあってな。その時にあたしは 負けちゃったんだけどね・・・﹂ ﹁はぁ・・・何時の間に仕合をしたのよ?﹂ ﹁そん時に気が抜けて立てなかったあたしをあいつは抱きかかえて くれたんだよ♪﹂ ﹁なるほど・・・・・・つまりお前はアレックスに惚れたというこ とだな?﹂ ﹁当ったり∼♪﹂ 笑顔で言い放つ彼女に曹操と曹仁はため息を吐いてしまう。ここま で否定せずに言い放つとかえって妙な感覚だ。 ﹁おまけにあたしを抱きかかえた時のあいつの照れた顔ってのが堪 らなく可愛くってさ‼もうお姉さん可愛がりたくって仕方が無かっ たよ‼あとあと・・・﹁はいはい。そこまでにしなさい﹂ムグッ⁉﹂ 恋バナを曹洪は止めようとしないので、仕方がなく曹仁が口を塞い で遮った。 ﹁全く・・・・・・それで、華琳はどうしたい?徐州と呉は既に私 達を倒し得ない力を身につけてる。加えて西涼にも向かわなければ ならないわよ?﹂ ﹁そうね・・・・・・攻め込むとしたらまずは劉備よ。あそこには 関羽や呂布、張遼、華雄、張飛に趙雲。それに私の下を去った露蘭 がいる。劉備を打ち倒し、全員を私にひれ伏してから、呉を滅ぼす。 これが常套よ﹂ ﹁西涼は?﹂ ﹁ええ、だけどそれは担当本人に聞いた方がいいわよ・・・・・・ そこにいるのはわかってるわ。出て来なさい﹂ 747 そういうと少しだけ離れた木の影から1人の男が現れた。全体的に 青色の文官の服装で、肩まで伸びる黒髪を纏めた長身のキツネのよ うな目をした男だ。 ﹁お見事です曹操様。私の気配を探り出すとは・・・﹂ ﹁よく言うわね。あからさまにワザと気配を出してたくせに・・・﹂ ﹁それで、何の用だ?﹂ ﹁はい、曹操様に涼州方面への攻略に関するご報告がございます。 こちらにお目通りを・・・﹂ そういうと男は手にしていた竹簡を曹操に手渡して、彼女もすぐに 中身を確認する。 ﹁・・・・・・相変わらず綿密な計算で動いてるわね・・・一つ聞 きたいんだけど・・・﹂ ﹁何でしょう?﹂ ﹁あなたはこの連合が立て篭もると判断しているけど、場所は予測 しているのかしら?﹂ ﹁はい、地形的にも涼州と漢中の連合は十中八九、潼関と予測致し ます﹂ 曹操は暫く考える。竹簡の内容は涼州及び漢中における侵攻作戦の 詳細書であり、曹操による漢統一には不可欠な作戦だ。 向こう側もそれに気付き、涼州の馬騰と漢中軍が連合を組織して待 ち構えていたのだ。しかし男が編み出した策はそれを全て予測して 最重要拠点を潼関に定め、ここを落とせば連合は瓦解すると踏んだ。 加えて馬騰は容体が優れず、指揮権は実質上娘の馬超に任している。 748 ﹁・・・いいわ。この策は全てあなたに一任する。出陣させるのは 誰かしら?﹂ 孟徳に捧げてみせよ﹂ ﹁はい、まずは曹仁様に夏侯淵将軍、それに私の私兵部隊を連れて 行きましょう﹂ ﹁・・・許可する。あなたの知謀、この曹 ﹁はい。全てこの私・・・・・・﹂ 仲達にお任せを・・・・・・﹂ 男は下げていた頭を上げて、不敵な笑みを浮かべる。 ﹁・・・・・・司馬懿 749 第101話:曹一族︵後書き︶ 交州で孫呉から情報が漏洩していたことを伝えたライルはすぐに動 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re き出す。対象となる旧呉郡劉繇配下の家臣と保守派を探る。 次回 [イーグルアイ] 孫呉内部の裏切り者を探し出す。 750 第102話:イーグルアイ︵前書き︶ イリーナ達による逮捕劇。ここに開幕。 751 第102話:イーグルアイ 交州から帰還した中佐から驚く情報が齎された。孫呉内部に裏切り 者がいて、そいつが交州反乱軍に情報をリークしているらしい。 その証拠として提出された侵攻計画の初期計画書を渡すと、雪蓮様 は進発前に謀反人を見つけ出して処断することを可決。 そこで中佐は私が指揮官となって内部調査をするように命じ、極秘 裏に容疑者をうかがっていた。 ﹁ストームからイーグル各員。目標は依然と酒を飲んでるわ﹂ <イーグル2了解> <イーグル3了解> 私達は旅商人の変装をしてターゲットを監視する。そして私達がい る場所は長沙南部に位置する桂陽の居酒屋だ。ここは荊州と交州の 行き来に適した街であり、その影響で様々な商人によって賑わいを 見せている。 ひとまずは緑茶を飲みながらパッケージを店の一番の隅で見張る。 こうすれば背後を取られることは無い上に店に入ってくる人達を観 察出来る。 そして部下はそれぞれ店の外に待機。万が一に備えて確保出来るよ うにだ。 私も緊急時に備えて荷物の中にサプレッサーを装着させたMP7A 752 1を忍ばせている。何時でも取り出せるように荷物は手元にある。 こういう任務はアフガンを思い出す。あの時はテロリストの首謀者 を捕縛するスナッチミッションで、勘付かれてタクティカル仕様の AKMSで応戦したが・・・・・・。 なお、私達が監視しているのは許貢という文官配下の副将だ。中佐 によると許貢は正史において実際に孫策を裏切ろうとしたが、孫策 がそれに気付いて処断。 その後に許貢残党が孫策を暗殺したとされている。この世界でも孫 策様の配下に入っているがどうも何やら裏で良からぬことを企てて いるらしい。 私が緑茶を飲み終わったと同時にパッケージが席を立つ。 ﹁タンゴが移動したわ。これから追跡する﹂ <了解、離れて続きます> 部下に小声で通信すると私も代金を机に残して荷物を手にして店を 後にする。 タンゴは自分が追尾されていることなど気がつかず、両手を裾に入 れながら歩いていく。 暫くしてから辿り着いたのは露店が集まる一画で、辺りに珍しいも のを扱う露店が商売をしていた。近場の荊州から来た商人もいれば 遥々羅馬から品を輸入してきた商人もいる。 私に商人が声を掛けて来るが、軽くあしらうと見失わないように少 し近付く。 753 <中尉、タンゴはそこから15m先の露店です。何やら品定めをし ているようです> ﹁そのまま動きを観察して。小さな動作も見逃しちゃ駄目よ﹂ <了解> <こちらイーグル3、屋根上に到着。周辺に敵らしき奴等は見えま せ・・・・・・いや、妙な奴を見つけました。そこから左前方で壁 にもたれ掛かった男。先ほどからタンゴを見ています> ﹁その男の特徴は?﹂ <身長は低めですが体格は中々。恐らくは武芸の経験があると思わ れるスキンヘッド野郎です> ﹁了解。確認した﹂ イーグル3からの報告で怪しい男を見つけ出す。確かに先程からパ ッケージを見ている。しかも私は直感で感じ取った。あれは何かを 企んでいる暗殺者の眼だと。 私は思わずMP7A1に手を延ばして臨戦態勢を整えた。 ﹁各員、警戒して。不明者は何かするつもりよ﹂ ≪了解≫ 指示を下した直後、先程の男が動き出して、ゆっくりとタンゴに歩 ﹂ み寄る。そしてタンゴの背後に立った瞬間・・・。 ﹁きゃぁああああ‼⁉ ﹁こ・・・殺しだぁあ‼﹂ 男は袖の中から短剣を取り出してタンゴの後頭部に突き刺した。私 はそれに驚きながら駆け出した。 754 ﹁くそっ⁉ストームからHQ‼﹂ <こちらHQ> ﹁コードブラック発生‼繰り返す、コードブラック‼犯人は北側へ 逃走‼これより追撃します‼﹂ <了解したストーム。直ちに対応部隊を送る。イーグルチームは目 標の確保に向かえ> ﹁ストーム了解‼聞こえたか⁉すぐにあの男を追うわよ‼﹂ <イーグル2了解‼> <イーグル3了解‼先回りして退路を断ちます‼> 私は荷物をその場に捨ててMP7A1を手にすると犯人を急いで追 いかける。しかしいきなり起こった殺人で周辺は混乱して、逃げ出 す一般人のお陰で上手く追えない状況だ。 out ﹁孫呉海兵隊だ‼道を開けなさい‼道を開けろ‼・・・くそ⁉民間 人が邪魔で後を追えない⁉﹂ <こちらイーグル3‼屋根伝いで奴を先回りします‼> ﹁了解‼こちらは迂回路を捜索して追撃をする‼ストーム ‼﹂ ﹁中尉‼こっちから抜けられそうです‼﹂ ﹁分かった伍長‼﹂ 伍長が見つけた露地裏を使って奴が向かった方角へと急行する。こ こにも何人か逃げ込んだ民間人がいたが、私達がMP7A1を構え ながら前進すると直ぐにみちを開けた。 隣の通りに出ると人目についてしまうが気にしている余裕は無い。 走りながら私はインカムで無線を使用する。 ﹁イーグル3‼ターゲットの位置は⁉﹂ 755 <ターゲットは繁華街から西側市街地に逃走‼。進路上には馬小屋 があります‼> ﹁馬で逃げるつもりね‼イーグル3‼足を狙える⁉﹂ <ダメです‼民間人が多過ぎる‼・・・チャンスだ‼奴が引き返し て建物に入った‼二階から城壁に飛び移るつもりだ‼このまま取り 押さえます‼> ﹁分かったわ‼私達も急行中‼間も無くで接敵‼﹂ イーグル3が全速力でターゲットを取り押さえる為に屋根上を走り、 私達もMP7A1を構えながら城門前に到着。すぐ側の二階建ての 建物から男が飛び移ろうとしていたが無駄に終わる。 <逃がすか‼この野郎‼> イーグル3が背中からアメフト選手顔負けのタックルをお見舞いし て、そのまま真下にあった屋台を下敷きにして落ちて来た。 幸いにも怪我は無いようだ。 イーグル3はM45A1、私達はMP7A1の銃口を敵に突きつけ てホールドアップする。 ﹁こちらストーム。目標を確保しました。回収を要請﹂ out﹂ <了解した。回収部隊を向かわせる。コールサインはジュリエット 3−1> ﹁了解。周囲を監視します。ストーム ﹁さて・・・お前には洗いざらい話してもらうからな。覚悟しろよ クソ野郎﹂ 私達は確保した男が舌を噛み切って自害されないように猿轡をして 拘束する。 756 数分後にはジュリエット3−1のM1114が到着。男を尋問する 為に作戦本部へと向かった・・・・・・・・・。 757 第102話:イーグルアイ︵後書き︶ 作戦は急展開を見せる。拘束した男のにより真犯人が許貢だとわか 海兵隊の誇り,Re り、ライルは裏切り者に制裁を下す為にハンターキラーによる討伐 真・恋姫無双 作戦を実施する。 次回 [裏切り者の粛清] 孫呉を裏切ろうとする輩を叩き潰す。 758 第2回人気キャラクター投票結果発表︵前書き︶ 明けまして、おめでとうございます。 昨年は皆様に多大なお世話になりまして、本年度もよろしくお願い 致します‼ 759 第2回人気キャラクター投票結果発表 前回のジーンによる人気キャラクター投票が終了。造られた特設会 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 人気キャラクター 場の空間は闇に包まれていた。しかし・・・・・・。 ﹁第2回 投票結果発表‼‼﹂ ﹃わぁああああああ‼‼﹄ 再び灯りがともされ、前回と同じ様にステージには俺と久々の登場 であるジーン。更に観客席には恋姫達が座っていた。 可愛い ジーン ﹁さぁさぁ‼再びやってきたわよ‼人気キャラクター投票‼司会は 前回に続いて天界一の可愛さを持つことで有名な ちゃんと、本作の主人公にして最近になってから初々しいリアクシ ョンが目立ち始めてきた呉一の朴念仁、ライル・L・ブレイド中佐 がお送り致しま∼す♪﹂ ﹁・・・・・・ジーン﹂ ﹁なに?﹂ ﹁もうこの状況や空間に関しては突っ込まないが・・・またやるの か?﹂ ﹁当たり前よ♪第3章が開始された記念なんだから♪﹂ ﹁・・・とか言いながら、実は自分が楽しみたいだけではないのか ?﹂ ﹁・・・・・・ワタシニホンゴサパリアルネ♪﹂ ﹁せめて中国語と言わないか﹂ 俺はマイクを手にしながら彼女の明らかなわかり易さに呆れる。 760 ﹁じゃ♪さっそく結果発表に参り・・・﹁ちょっと待ったぁああ‼﹂ ・・・何⁉﹂ JGVS−V8を装着させた88式鉄帽。 いきなり上から飛び降りてきた戦闘服3型に迷彩カバーを取り付け て個人用暗視装置 戦闘靴3型、ライフル兵のポーチ配備を施した防弾チョッキ2型、 USP,45を納めたCQCホルスター、手にAN/PEQ−2や フォアグリップ、エイムポイントT−1を装着させたHK416を 持つ黒のフェイスマスクを被った陸上自衛隊一等陸曹がいた。 ﹁・・・・・・えっと・・・どちら様?﹂ ﹁というかなんでここに自衛隊員がいるんだ?しかも特殊作戦群か ?﹂ ﹁まあ、今から名乗るから少しだけ待ってぇな﹂ そういうと俺は少しだけ下がり、自衛隊員は踵を鳴らして最敬礼を する。 海兵隊の誇り,Re の作者にしてこの外 ﹁読者の皆様‼他作者の皆様‼そして恋姫無双の皆様‼明けまして 真・恋姫無双 おめでとうございます‼ 自分は ウルヴァリン であります‼﹂ 史の管理者でもあり、特殊作戦群になりたいと願う関西人‼ペンネ ーム ﹃ガヤガヤガヤガヤ・・・・・・﹄ ・・・とうとう作者まで出てきたか・・・。 ﹁ちょっと作者‼﹂ ﹁おっすジーン。久しぶりやな?﹂ 761 ﹁おっすじゃないわよ‼いきなり出てきてびっくりするじゃないの ‼それと私の出番が無さ過ぎよ‼﹂ ﹁しゃあないやろ?一応ジーンは裏方でライル達を支えとるんやか らなぁ。あとウチはサプライズはめっちゃ得意やで﹂ ﹁なんかムカつくわね・・・・・・﹂ ﹁まあ、実は司会ジャックなんやけどな♪﹂ ﹁一回死になさーーい‼‼﹂ 作者がとんでもないことを言って、ジーンは何処からか100tハ ンマーを取り出して振り下ろすが、作者はそれを片手で受け止めた。 しかもそれを掴みながら回転し始め、勢いが付いたら・・・・・・ ﹁というわけで・・・・・・吹っ飛べやボケェエエエ‼‼﹂ ﹁覚えてなさいよぉおおお‼‼﹂ 一気にジーンを空高く放り投げ、一筋の星が光った。 ﹁ふぅ・・・・・・相変わらずケッタイなやっちゃやな﹂ ﹁あんたがそれを言うか?﹂ ﹁まぁええやん。それよりも早ようやるで。いくら正月版やからゆ right﹂ うてもお客さん待たせるんはようないで﹂ ﹁・・・・・・Oh ﹁ほんならいっちょ行くでぇ‼まずは10位と9位からや‼﹂ 作者がモニターのルーレットを回して、少ししてから停止した。 ﹁出ました‼第10位は・・・いきなり呉からや‼前回からワンラ 子瑜こと千里‼﹂ ンクダウンで妹の為なら火の中水の中なんて当たり前‼呉一のシス コン‼諸葛瑾 ﹁私ですか?﹂ 762 ﹁第9位は・・・・・・2人いるが順位の変動が凄いな・・・頭脳 はわわ軍師 の諸葛亮 孔明 明晰で料理が美味い。しっかりしているように見えるが実は結構な うっかり者。蜀の臥龍とも言われる こと朱里﹂ ﹁はわわ⁉わ・・・私でしゅか⁉﹂ 酒に酔い、美食に酔い、戦に酔う。人生皆快 と豪語して、その豪快な性格から皆を勇気付ける蜀の姉御肌。 ﹁もう一人は・・・ なり 厳顔こと桔梗殿だ﹂ ﹁ほぅ・・・この儂が9位ですかな?﹂ スポットライトが千里に朱里、桔梗に当てられる。 ﹁ほんで投稿理由はこれや‼﹂ 千里:頼れるシスコン‼良いキャラだと思います‼ 朱里:噛む所がツボです‼ 桔梗:酒に酔い、美食に酔い、戦に酔う人生観が素敵です。仕えた 子瑜・・・ い武将№1です!使う武器を含めて全てが豪快なのが最高です。 ﹁朱里と並んでランクインとは・・・・・・この諸葛 人生に悔い・・・無し・・・・・・ガクッ﹂ ﹁はわわ⁉お兄ちゃん⁉﹂ ﹁はっはっはっ‼儂に仕えたいとは‼まだまだ捨てたもんではない のぅ‼﹂ ﹁・・・誰か担架持ってこい﹂ ﹁まぁ・・・千里は相変わらずやなぁ・・・・・・せやけどホンマ に順位の変動が前回と比べて異様に激し過ぎやで﹂ ﹁そんなに凄いのか?﹂ ﹁せや。前は10位には紫苑やったのに今回は桔梗や﹂ ﹁なんでなんだ?﹂ 763 ﹁新しく参加して下さった方が多いからや。更に今回は参加出来ひ んかった人達もおるしな﹂ ﹁つまり・・・今回の投票はまるっきし別物だと考えた方がいいと いう事か?﹂ ﹁そういうこっちゃ。・・・ほんなら次は8位と7位や‼ドンドン 行くでぇ‼﹂ 作者が再びルーレットを回して、少しタイミングを見計らいながら 停止した。 錦 と呼ばれる ﹁これは・・・・・・蜀だな。スタイル良し、顔良し。竹を割った 猛起こと翠﹂ ようなサッパリした性格だがかなりの慌てん坊。 馬術使い。馬超 ﹁なっ⁉あ・・・あたしなのか⁉﹂ ﹁7位は前代未聞の3人‼面倒やから纏めて行くでぇ‼ 曼成こと真桜‼ 一人目は幼さが残る可愛い顔立ちで胸がデカイ‼魏の熱き螺旋槍‼ 李典 分和こと詠‼ 二人目はドジっ子属性にツンデレ属性を兼ね備えたメガネっ子兼ツ ン子軍師‼董の賈 三人目は来たでぇ‼姉が自由奔放だから真面目になるが、好きな男 仲謀こと蓮華や‼﹂ の前なら心を限りなく許すヤキモチ焼き‼ヤンデレの傾向が見られ る孫権 ﹁よっしゃ‼ランクインしたで‼﹂ ﹁ちょっと⁉もうちょっと何かあるでしょ⁉それとツン子いうなぁ あ‼﹂ ﹁なっ⁉・・・また私か⁉﹂ ﹁よし、これが印象に残った投票理由だ﹂ 翠:明るい、元気、一生懸命だけど天然ゆえに。空回り︵笑 真桜:蜀や董卓軍を抜いて上位に。基本、明るい娘が好きです。関 764 ︵翠語発動中︶﹂ 月への愛やツンツンした感じが好きです! 西弁キャラもあいまって惹き付けられます。 詠: 蓮華:俺の嫁 ﹁%*〆¥÷°○$^☆#〒◇‼⁉ ﹁にっひっひっ♪分かってますやん兄さ∼ん♪﹂ ﹁だからツンツンでもツンデレでもないってばぁ‼﹂ ﹁なっ⁉・・・だ・・・・・・誰が嫁か⁉あ・・・アレックスなら ともかく・・・﹂ ﹁なんか最後の方からとんでもない爆弾発言が聞けた気がしたが・・ ・気のせいか・・・﹂ ﹁まぁまぁ。とりあえず時間ないからな。さっさと6位と5位に行 くで‼﹂ 4人のリアクションを紹介したい気持ちだが、続けたいのでさっさ とルーレットを回す作者。 ﹁出たでぇ‼しかも来たぁあ‼6位は二人‼一人は呉からや‼大和 幼平こと明命‼ 撫子みたいな押さない顔立ちに加えて時々見せる照れたリアクショ ンがGood!!ウチと同じお猫様大好きの周泰 もう一人は魏からやで‼残念やけど前回と順位が下がってしもうた 孟徳こと華琳や‼﹂ けど、そのカリスマ性や覇気は他者を魅了して仕方がない‼魏の覇 王で曹操 ﹁はい‼同じお猫様がお好きなのですか⁉﹂ ﹁あら?だいぶ下になったのね?まあ、構わないわ。その分だけ燃 えるから・・・﹂ ﹁第5位は・・・・・・こっちもだいぶ下に来たな。前回では第1 伯符こと雪蓮殿です﹂ 位だった戦場の覇気溢れる凛々しさと普段の純粋で天然な性格のギ ャップが好印象の我等が呉の英雄、孫策 ﹁あちゃ∼・・・・・・ランクが下がっちゃった・・・﹂ 765 順位がさがったことで曹操は闘志を燃やし、雪蓮殿はやってしまっ たような表情をする。 確かに前回は俺と一緒に首位を取っただけに衝撃を受けただろう。 更に作者が同じ猫好きと知った明命は眼を輝かせながら作者に詰め 寄る。 ﹁はぅはぅ‼そ・・・それで作者様はどんなお猫様がお好きなんで すか⁉﹂ ﹁ウチか?ウチはどんな猫でも好きやな。特にウチで飼っとる子猫 なんかめっちゃヤンチャやねん。見掛けたら構って欲しいみたいで 飛び付いて来よるんよ﹂ ﹁はぅ∼∼‼羨まし過ぎです∼﹂ ﹁作者・・・・・・楽しい猫会談はまた今度にしてくれないか?﹂ ﹁おっと、せやったな。ほんでこれが投票理由やで‼﹂ 明命:俺の中の不動の1位! 御猫様あぁぁぁぁ 華琳:あのカリスマ性や百合が最高です‼私も虐めて欲しい‼ 雪蓮:ライルとの進展がありますように‼ ﹁はぅあ∼‼ありがとうございます‼﹂ ﹁ふふっ、だったら私色に染めてあげるわよ♪﹂ ﹁ライル∼♪慰めて∼‼主に閨で﹁場所を弁えなさい。雪蓮﹂ギャ フン⁉﹂ 俺に飛び付こうとした雪蓮殿は冥琳殿に首根っこを掴まれてそのま ま床に顔をぶつける。はっきり言って痛そう・・・。 ﹁ライル・・・なんでウチを盾にしとるんや?﹂ 766 ﹁いや・・・すまない・・・・・・ついな﹂ ﹁まぁええで。ほんなら次はいよいよ第4位と3位やで‼誰が出て 来よるか楽しみや‼ほんなら・・・ルーレットスタート‼﹂ ︵以下省略︶ 分権こと凪や‼﹂ ﹁まずは4位‼来たで来たで来たで‼魏の忠犬で愛する隊長の為な ら自分から死中に飛び込む魏の突撃隊長‼楽進 ﹁あ・・・愛する⁉﹂ ﹁第3位は2人。一人目はランクアップしたぞ。普段から明るくて 分遠こと霞だ﹂ みんなのムードメーカー役をするが、時折見せる乙女の顔でファン の心を鷲掴み。董の神槍、張遼 ﹁やったぁ∼♪ランクが上がったでぇ∼♪﹂ ﹁もう一人は・・・・・・おいおい、マジか?﹂ ﹁心配あらへん。ウチも初め見た時はホンマに驚いたで﹂ ﹁・・・これは驚きだ。侍の心を受け継ぎ、その高い武術はもちろ グレイブ隊 隊長の南郷 武久 ん、何気ない優しさで漢として憧れを抱かずにはいられない。我等 がウルフパック対地攻撃ヘリ部隊 大尉﹂ ﹁ええ・・・じ・・・・・・自分が第3位⁉﹂ ﹁やるじゃないか南郷‼﹂ ﹁流石は兄上‼﹂ 南郷がランクインしたという大番狂わせで、アレックスとポーが祝 がいい\︵//∇//︶\ 福する。そしてモニターに投票理由が映し出された。 凪:真面目だけどとても可愛らしい所 霞:やっぱりこの娘が一番です。あんな快活な性格なのに意外にう ぶなところがどストライクです。 ︵エセ?︶関西弁もつついてきますね。 767 南郷:戦闘時の男らしさは勿論、日常時の何気ない優しさに惹かれ る。一刀の親戚であるという設定の驚きは忘れられない。後は航空 部隊所属というのも。てっきりスナイパーかと。 ﹁ナ∼ギ∼♪うちら仲良しやなぁ♪記念やから膝枕して∼な∼♪﹂ ﹁なっ⁉し・・・霞様⁉この話では味方同士ではありませんよ⁉﹂ ﹁ふぅ・・・だったら今後もファンの期待に答えられるようにしな いとな・・・﹂ ﹁相変わらず霞は凪に懐くな・・・﹂ ﹁ホンマやな・・・なんや知らんけど罪悪感が・・・﹂ 実を言えば彼女達を引き離したのは苦渋の決断だった。 しかしまさか南郷が食い込むとは・・・・・・これに関しては本当 に予想外だ。 ﹁まあいいだろう。霞が凪の膝枕を堪能している間に進めよう。ル ーレットスタート﹂ そして遂に第2位が映し出される。出て来た名前を見て俺と作者は 驚きを隠せなかった。 へぅ の ﹁来たで来たで来たで来たで‼‼今度は2人共董や‼一人は戦うこ 仲閲こと月‼﹂ とが嫌いだが、誰かを守りたいという強い意思を秘めた 伝道師‼董卓 ﹁へぅ⁉私がですか?﹂ ﹁ライル、これは紹介させて貰うで﹂ ﹁いいだろう﹂ ﹁よっしゃあ‼これも董からや‼戦場では鬼神の如く敵を薙ぎ倒し、 奉先こと恋や‼﹂ 普段は動物や仲間を大事にする‼食べている姿には癒される‼飛将 軍の呂布 768 ﹁︵モキュモキュ︶・・・・・・?﹂ スポットライトを当てられて月は両手を頬に当てて照れて、恋は食 べることで忙しそうだ。しかも周りのみんなはその小動物みたいな 恋に惚けている。そして作者も・・・。 ﹁ほわわわぁ∼・・・・・・﹂ 恋の食べる姿に惚けていた。 ﹁作者、作者﹂ ﹁はっ⁉・・・アカンアカン・・・・・メッチャ危なかったで・・・ もうちょっとで恋をお持ち帰りするとこやった・・・﹂ ﹁まぁ・・・・・・あんな姿を見たら誰だって癒されるからな・・・ ・・・・・・それより投票理由を出すぞ﹂ なんとか作者を引き戻すとスクリーンに投票理由を表情する。なお、 2位ということでそれぞれ二つを記した。 月 ・儚い雰囲気が好きです! ・一番好きなキャラ、優しそう、﹁へう!?﹂がツボです。 恋 ・純粋無垢なところが可愛いです。ずっと一緒にいて構ってやりた くなります。 ・食べている時のモキュモキュは癒される ﹁月殿は相変わらず人気が高いな・・・・・・優しさも桃香以上み たいだから当然だな﹂ 769 ﹁へぅ∼///﹂ ﹁ほんで恋は・・・・・・説明いらんな﹂ ﹁︵モキュモキュ︶・・・これ・・・・・・美味しい﹂ 月殿は相変わらず顔を赤くしながら照れて、恋は食べることに必至 だ。 ﹁さぁさぁさぁ♪次はいよいよ第1位やで♪なぁ∼ライル♪﹂ ﹁だから何で俺に振るんだ?﹂ ﹁あんたが前回の第1位やったからやで♪﹂ ﹁だから俺は順位に興味は無いとなんど・・・﹁ほんならさっそく 行くでぇ‼﹂・・・・・・串刺しにしてやろうか?﹂ 俺の怒気にも一切怯まず、作者はドラムの音を出しながらルーレッ トをスタートさせる。 ﹁さあ、これまでに予測が出来ない状況が続いた人気投票・・・・・ ・ライルの二連覇になるか⁉それとも・・・・・・結果が出たぞ‼﹂ そういうと全員が結果に息を呑んだ。 ﹁遂に出ましたぁああ‼‼勇猛果敢な海兵隊を率いて、自ら最前線 で戦闘から指揮までこなして、私生活では雪蓮を気にし始めた我等 が主人公のライル・L・ブレイド中佐だあ‼‼﹂ ﹃わぁあああああ‼‼﹄ ﹁・・・またか?﹂ ﹁そうや♪二連覇おめでとさん♪﹂ ﹁はぁ・・・・・・まさかと思うがまた変な特典があるんじゃない だろうな?﹂ ﹁それは秘密やで。ほんならもう一人を行ってみるで‼ルーレット・ 770 ・・・・・スタートや‼﹂ 再びルーレットが周りだして最後の一人がモニターに表示された。 ﹁出た出た‼‼その強靭な意思や主に対する鉄の忠誠心‼文武両道 公明こと牙刀だぁああああ‼‼﹂ 才色兼備の持ち主‼ライルと互角の人気を登場当初から誇る魏武の 龍‼徐晃 ﹃わぁああああああ‼‼﹄ ﹁私が・・・・・・恐れながら真実でありましょうか?﹂ ﹁あら、牙刀。何が不満なの?﹂ ﹁しかし、曹操殿を置いて私が一位など・・・・・・﹂ ﹁それだけあなたが人気者ということよ。早く前に行きなさい。こ れは上意よ﹂ ﹁・・・・・・御意﹂ 曹操の命令により前に出てくる徐晃。 ﹁それでは見事二連覇に輝いたライルと、初参加でいきなり首位に 輝いた牙刀‼ 2人にはご覧頂いている皆様に何か一言を言うてもらいましょ‼﹂ ﹁・・・その位なら﹂ ﹁うむ・・・・・・ならばまずはライル殿から・・・﹂ ﹁あぁ・・・・・・日頃から応援を感謝する。みなのお陰で我々は ここまで来れた。今後も我等に声援を願う﹂ ﹁私もソナタ達には感謝している。みなからの声援こそが我等の原 動力となり、この世界を更に広げられる。年が変わっても変わらな い応援を宜しく頼み申し上げる﹂ ﹁よっしゃ‼ほんなら最後に2人の投票理由を3つずつ見てもらお か♪﹂ 771 ライル ・クール頼りになる反面、たまに見せる初々しさが好きです‼そう いう意味では雪蓮と似てるのかも? ・男ならやっぱり強さに憧れますよね⁉何より主人公ですし‼ ・この方を外してどうしろと言うのか。圧倒的なカリスマ性と武力。 加えて隊長として任務や契約に忠実なくせに、最近見せ始めたタジ タジに2828成分を感じずにはいられない。 牙刀 ・己が主に忠義を果たす。なんと気高き武人であるか。個の能力の なんと高い事か。文武両道の武士であると、私は勝手に践んでいま す。この方を武人と言わず、何を武人と言うのか。私はそう言わざ るを得ない。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re ・魏の主人公格‼凪達との警邏様子や華琳とのやりとりに注目‼ ・漢の中の漢‼ ﹁それでは皆様‼本年度も を何卒よろしくお願い致します‼では、人気キャラクター投票をこ れにて終了致します‼﹂ 作者が手を降りながら垂れ幕に隠れていくと辺りが暗くなり、意識 は元の世界へと戻って行った・・・・・・・・・。 772 第2回人気キャラクター投票結果発表︵後書き︶ 次回から本編へと戻ります。 773 第104話:裏切り者の粛清︵前書き︶ 嵐にうごめく幽霊が謀反人を襲う。 774 第104話:裏切り者の粛清 イリーナが拘束した刺客を尋問したことで、機は熟した。 孫呉の執行官が奴から吐かせた情報によると、情報を交州反乱軍に 自分に意見した というくだらない理由だ。 流していたのは穏健派の許貢であり、奴の副官を殺害した理由は単 純に 雪蓮殿は決断した。このクソ野郎を呉の地から抹消する為に配下の 兵もろとも俺達に夜襲を実行することを。 俺はハンターキラーと共にオスプレイで雨が降り注ぐ中、奴がいる とされる別宅に向かっていた。 ﹁よし、状況を確認するぞ﹂ 俺の言葉にハンター1とハンター2が注目する。TRU−SPEC デジタルブラック迷彩服にAN/PVS−18を装着させたMI or CASVを装備した状 キャプチャー。場所は建業から CASVやSCAR−H CH2001、CIRASアーマーベスト、手にはCQC仕様にし たSCAR−L 態だ。 ﹁任務内容はサーチ&キル 南に80km先にあるところにある別宅だ。ここを指揮しているの は許貢という文官だが、イリーナが確保した情報で奴が敵対勢力に 対して情報を流して私腹を肥やすと同時に孫呉からの離反を企てて いたらしい﹂ それも敵刺客が吐いた情報だ。しかし解ってはいたがこの世界の拷 775 問は慣れそうにない。 この世界に来て2年近くになるが、これだけは慣れろと言われても 無理だ。 だから俺は余程のことでも無い限りは拷問には同行しない。 この点に関しては軍人として甘いと自負しているが、俺も人だとい うことだ。 ﹁中佐、敵の兵力は?﹂ ﹁既に冥琳殿が策略で敵部隊の兵力を分断している。当初は300 人近くいたが今は30人弱しか残されていない。この隙に夜襲を仕 掛けて目標を確保するぞ﹂ ﹃了解﹄ ﹁既にハンター3が周辺に先行して援護態勢を取っている。ハンタ ー2は私兵部隊の排除。ハンター1は目標の確保に向かう。今回の 作戦は極秘作戦となる。嵐に紛れ込んで素早く行動しろ﹂ ﹃了解﹄ <中佐。ETAまで残り2分> ゴースト だ﹂ ﹁了解だ機長。分かっているとは思うが痕跡は残すな。今回の俺達 は そういうと俺達はSCARのチャージングレバーを引いてそれぞれ 5.56mm弾と7.62mm弾を装填。やがてオスプレイが高度 ゴースト 。降下地点は大胆にも を下げて行くことを体で感じ、後部ハッチが開放されると機内に強 風と豪雨が入り込んで来た。 今回の作戦名はオペレーション 別宅の敷地内だ。ハンター2が中庭に降下して俺達ハンター1は屋 根に降り立つ。 当初は郊外に降下して潜入する予定だったが、作戦決行当日に豪雨 776 が降りだしたという気象情報が入り、本来は3日後に決行する筈だ ったが作戦を早めたのだ。 敷地内でなら確実に気付かれてしまうがオスプレイの特徴の一つで あるエンジン音が役に立った。何しろBVI騒音発生率が従来のヘ リやレシプロ機と比べても6割から7割がカットされている上に放 大出力化=騒音増 と思われているが考えが安直過ぎる。 熱率は9割も遮断されている。 一般的に 例を挙げるならアメリカ軍の戦闘機で比べるとF−15よりもF/ A−18の方が騒音は大きいが、エンジン出力はF/A−18の方 が低い。 俺も前世で休暇を楽しんでいた時に軍事評論家と名乗っていた奴が オスプレイは駄作機だ。あんな機体があったら煩く とほざいていたが、頭にきたのでそいつを担ぎ上げて 俺を見つけて て眠れない ゴミBOXに放り込んでやった。 話を戻し、雨と風の音がBVI騒音をかなり緩和させ、更に機体そ のものが黒で塗装されているのでサーチライトでもない限りは発見 するのは困難だ。 それぞれが持ち場に到着すると無線で確認する。俺達は屋根にロー プを掛けていつでも突入出来るように構える。 ﹁ハンター1−1から報告。こちらは配置に付いた。室内へと突入 準備完了。ハンター2、そっちの状況は?﹂ <こちらハンター2−1。別宅内部に潜入開始。敵を排除しながら 前進中> 777 <ハンター3−1からハンター1−1。サーマルスコープで室内に 7名を確認。状況から軍議中と推測> ﹁了解だ。ハンター2の配置完了まで待機する。ハンター1−1 out﹂ 通信を終了すると俺は固定されたロープを握りしめながら雨の中で 待機する。 <ハンター3からハンター1。真下にタンゴ。数は3> ハンター3からの報告で真下を見る。そこには見張りと思われる敵 兵4人だ。どうも愚痴を零しているようであり、微かにだが許貢に 対して不満を聞こえる。 だがここで見つかる訳には行かない。俺達は左手でロープを掴みな がらサプレッサーを装着したUSP,45を抜き取る。 ﹁ハンター3、狙えるか?﹂ <了解。狙撃します> 7.62m 通信終了から数秒後、真下にいた敵兵4名がほぼ同時に頭を撃ち抜 かれて地面に倒れる。それはハンター3のM40A5 mボルトアクション式スナイパーライフルとSCAR−SSRセミ オートスナイパーライフルによる狙撃だ。 倒されたことを確認したらUSP,45を閉まって、再び突入準備 をする。 そこから更に数分後、内部を掃討していたハンター2から連絡が入 る。 778 <こちらハンター2−1。目標の入り口に到着。指示を> ﹁了解だハンター2−1。フラッシュバンを投擲後、同時に突入す るぞ。いいか?﹂ <了解> ハンター2からの通信は部屋の前に到着したという報告だ。俺達ハ ンター1は窓のすぐ上に身構えて突入態勢を整える。 ﹁・・・・・・やれ‼﹂ <フラッシュバン‼> 俺の合図で俺は窓から、ハンター2は扉の隙間からM84非致死閃 光手榴弾を投げ込み、室内から起爆音を確認したら壁を蹴って一気 に室内に突入。 ハンター2も室内になだれ込むように突入していき、閃光と音響で 身動き出来ない7人を瞬く間に取り押さえて、腕に拘束プラスチッ クバンドで拘束。 室内にいた敵はやはり7人だったが、室内に突入した直後に窓のす ぐそばにいた1人を射殺しているから6人だ。 ﹁クリア‼﹂ ﹁よし‼撤収する‼ハンター3は直ちに撤収しろ‼﹂ <了解‼撤収します‼> ﹁ハンター2はこなクソ野郎共を見張れ‼俺達は最後の仕上げに入 る‼﹂ 指示を下すと俺達はこの別宅内部の至るところに少しだけ時間を掛 けて、許貢の執務室を中心にテルミット爆薬を設置。 779 死体も数カ所に固めて放置する。こうすれば起爆した時に死体が燃 え上がり、銃創の痕跡を隠匿できる。 何しろ今回の作戦で痕跡は残せない。俺達は幽霊だ。だから本来は ここにはいないことになっている。だが証拠を隠滅する時にもC4 やTNTでは周辺に気付かれる恐れがある。 だから燃やすのだ。テルミット爆薬を仕掛け終わる頃には許貢達の 意識が戻ってきたようであり、騒ぎ出していた。 ﹁貴様ら‼このわしにこのような無礼を働いてどうなるか分かって おるのか‼﹂ ﹁貴様らはあの若造の部下じゃろ⁉とっととワシらを離せ‼﹂ ﹁うるさい‼黙ってろクソ野郎‼﹂ 許貢達は未だに保身に走り、威張り散らしていた。はっきり言って 耳触りだ。クラウドやポー達は言い出した輩を蹴り上げたり、時に はSCARのストックで顔を殴る。 ﹁目隠しをしてそいつ等を連行しろ。猿轡も忘れるな﹂ ﹁了解﹂ 部下達はすぐに捕虜全員に猿轡と目隠しをしていき、そのまま別宅 の外に連れて行く。外には既にオスプレイが着陸しており、俺達は 警戒しながら次々と乗り込んで行く。そして最後に俺が乗り込むと 後部ハッチが閉じられて離陸を始める。 ﹁中佐﹂ ﹁お前がやれポー﹂ ﹁分かりました。・・・さて、お料理の時間だ﹂ 780 ポーにテルミット爆薬のリモートスイッチを渡すと彼は窓を見なが らスイッチを押す。その直後に仕掛けた部屋の窓から炎が吹き出し、 火事 は許貢達の不注意とな 殺害した敵兵の死体や証拠を燃やし尽くしていく。 目撃者無し。証拠無し。これでこの るだろう。 俺達はそのまま建業へと帰還して、許貢はそのまま雪蓮殿の前に突 き出される。 翌日、建業城中庭・・・・・・。 ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁これが証拠だ許貢。処刑された刺客の証言。流出した情報の行き 先。侍女からの密告に目撃証言。全て貴様が謀反人と裏付けている。 何か申しだてはあるか?﹂ ﹁あります‼私は知りません‼配下の輩が勝手にやったことです‼﹂ これだけ証拠が揃っているのに自分は無罪だと言い放つ。ここまで 白々しいことを抜かすのは聞いてるだけで頭にくる。 しかし俺や雪蓮殿、冥琳殿、そして奴の左右にいるクラウドとポー は冷酷な眼で睨みつける。その影響で気温がが低下したような感覚 に襲われるが、気にせず奴を睨みつける。 ﹁私は呉の為に尽くしてきたというのに⁉このような仕打ち⁉これ が孫家のやりかたか⁉﹂ 781 ﹁黙れ下郎が‼貴様が孫家の名を口にするな‼﹂ ﹁ひぃ⁉﹂ ﹁処罰を言い渡す‼謀反人許貢‼孫呉の誇りを捨てただけではなく、 賊と結託して仲間を売った‼これは万死に値する‼よってこの場で 貴様に斬首を言い渡す‼﹂ yes sir!!﹂ ﹁そ・・・そんな⁉私が何をしたと﹁ライル‼此奴の首を刎ねよ‼﹂ ひぃ⁉﹂ ﹁Sir 雪蓮殿が俺に命令するとすぐに腰に身に付けていた孫呉海兵隊正式 採用曲刀の呉鉤二型︵正式名はバデレール︶を抜刀して歩み寄り、 クラウドとポーの二人は猿轡を噛ませて麻袋を被せて前屈みにさせ、 俺は呉鉤二型を構える。 you son of a bitch!!﹂ 深く息を吐き出すと更に力を込め始める。 ﹁Die 大声で叫ぶと俺は呉鉤二型を振り下ろした。首を無くした許貢の遺 体は血を吹き出しながら地面に倒れ、クラウドが袋に入った頸、ポ ーが死体を下がらせてその場をあとにした。 俺は布を取り出して血を拭き取ると鞘に納刀する。 ﹁ご苦労様、ライル﹂ ﹁結構です。それで・・・・・奴の配下の人間はどうしますか?﹂ ﹁既に七乃を中心とした討伐隊を派遣したわ。今日の昼には帰って 来る予定よ﹂ 七乃は軍師としては一流の実力を有しており、彼女と旧袁術親衛隊 は孫呉海兵隊指揮下戦術機動騎兵中隊[三角力︵みかくりき/デル タフォース︶]として再編成され、各地の賊や豪族などの討伐を主 782 任務としている。元々が騎馬戦術に特化した旧袁術親衛隊だからそ の機動力と突破力は郡を抜いている。 ﹁雪蓮殿、一応は他も調べた方がいいでしょう。特に最近になって 保守派の連中が嗅ぎ回っているようです﹂ ﹁その事なら心配は無いわ。ねえ、冥琳?﹂ ﹁ああ、既に探りを入れている。何かあればすぐにこちらに情報が 入ってくる﹂ ﹁了解です。では、こちらは交州への進軍準備に﹁中佐‼﹂イリー ナ?﹂ 進軍準備を報告しようとした矢先、イリーナが血相を書いて俺に歩 み寄ってきた。 ﹁どうした?﹂ ﹁は・・・はい・・・・・・実はついさっき第1大隊の偵察斑から 報告がありました‼﹂ ﹁徐州の?﹂ 。雪蓮殿はすぐに軍議を行う為、 ﹁そ・・・・・・曹操軍が徐州に侵攻を始めました‼﹂ 俺達はその報告に驚愕する。 乱世の奸雄が遂に動き出した すぐに蓮華殿達を招集。俺も無線でアレックス達を呼び出して軍議 室へと急ぐのだった・・・・・・ 783 第104話:裏切り者の粛清︵後書き︶ 曹操が遂に動き出した。徐州が曹操軍による攻撃で陥落寸前だと聞 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re いたライルは雪蓮にハンターキラーでの撤退支援を進言する。 次回 [進発] 天の御遣いの救援に向かう。 784 第105話:進発︵前書き︶ 曹操軍の動きにより、ライルも行動に映る。 785 第105話:進発 曹操が動き出した。天下に一番近い存在に加えて呉を上回る大軍団 を持つ彼女なら容易に予測出来たが、まさか交州に進発する直前と も言えるこの時期に動き出すとは予想外だ。 雪蓮殿はすぐに全員に招集を掛け、俺もアレックスとレオン、武久、 イリーナを呼んで玉座へと足を運んだ。 ﹁みんな揃ったわね。早速だけど本題に入るわ﹂ 雪蓮殿は表情を真面目にしながら話し出す。その重苦しい空気がこ との重大さを物語っていた。 ﹁みんなも知ってるとは思うけど曹操が遂に動き出したわ。曹操軍 は実に50万もの大群を率いて劉備軍の徐州に雪崩れ込んだ。国境 は完全に鎮圧されて、徐州が曹操の手に堕ちるのは時間の問題よ﹂ ﹁しかし姉様。なぜ奴がこの時期に?﹂ ﹁少し考えたら簡単な理由です。奴は簡者を解き放っていて、離反 者が流した情報を入手したのでしょう。交州侵攻という情報を・・・ ・・・・・・﹂ 蓮華殿の疑問に俺が答える。そうでもない限り、交州侵攻直前とい うタイミングで徐州に攻め入るなど、あらかじめ知っていたとしか 言いようがない。 加えて情報が流出したのは調べる限り、許貢の件しか見当たらない。 ﹁それで、出陣した武将はいかがか?﹂ 786 ﹁ああ、夏侯惇に曹洪、徐晃、それに曹操が自ら全軍の指揮を取っ ているようだ﹂ ﹁曹操自らですか⁉﹂ ﹁落ち着きなさい蓮華。それだけ一刀達が強敵だってことよ。私も 逆の立場だったら喜んで出陣しちゃうし♪﹂ ﹁雪蓮﹂ ﹁分かってるわよ・・・・・・まあ、冗談は置いといて・・・曹操 が自ら動いてきたとなると私達も早急に動く必要があるわ﹂ 確かに俺が今の段階で一番の脅威と考えているのは何を隠そう曹操 だ。 一武人としても一指導者としても一軍師としても優秀。更に孟徳新 書という兵法書を執筆している。 それ程の強敵だ。脅威にならない方がおかしい。 ﹁穏、交州に出陣させる軍勢の配備状況は?﹂ ﹁はいぃ。既に交州方面に三角力隊と孫呉海兵隊を中心に国境で展 開してまして、兵糧もライルさんの助言で水を多めに用意してます ぅ﹂ ﹁ねえライル。何で水なの?﹂ ﹁あの地方の水はこちらの物と違って綺麗に見えても病原菌を持っ ている場合があります。 体内に入れば嘔吐や下痢、最悪の場合は死に至る危険性がある為で す。 加えて交州は高温多湿。人の命とも言える清潔な水は必要不可欠に なります﹂ 現地の水は危険性があると筒なく報告する。俺達が交州に偵察を行 なった際にも現地の水は一切口にせず、背中に装備していたハイド レーションに水を蓄えておき、フィールドポーチにはスイスのカタ 787 ディン浄水器と予備としてGI浄水錠剤、総合栄養錠剤の三つを入 れている。 これ無しで現地の生水を飲むのは自殺と同じだ。 一見して綺麗に見えても上流で死体が水に浸かっていたということ も考えられる上に、ネズミの排泄物が何らかの拍子に入って仮性結 核菌による泉熱︵発熱、発疹、腹痛、下痢、嘔吐の症状が出る病気︶ に掛かる危険性がある。 だから俺は兵糧の調達を担当していた穏に飲み水を普段より多めに 用意するように指示したのだ。 ﹁さっすがライル♪﹂ ﹁それより冥琳殿﹂ ﹁なんだ?﹂ ﹁一刀達はどうなりましたか?﹂ ﹁それなら亞莎だ。亞莎﹂ ﹁は・・・・・・はい‼﹂ 冥琳殿に指名され、亞莎が慌てながら脇に挟んでいた報告書を手に する。因みに亞莎が手にしている報告書はクリップボードに纏めた 紙であり、これらは全て相棒がプレゼントしたものだ。 ﹁えっと・・・・・・ほ・・・報告によりますと・・・劉備軍は徐 州を放棄して・・・西に脱出したようです﹂ ﹁西へ?なぜ西に向かったのだ?﹂ ﹁蓮華、理由は単純だ。もしそのまま俺達の領土に逃げ込んだら曹 操はそれを口実に攻め入って来る。本隊が南下するのだから迎撃は 難しい上に、場所からしても到着した頃には建業は陥落。勢い付い た曹操軍は呉を完全に制圧する﹂ 788 ﹁アレックスのいう通りです。曹操の軍師、荀彧に郭嘉、程昱はそ れを踏んだだろうが、諸葛亮や鳳統、それに一刀はそれを考慮に入 れて、あえて西に逃げたのでしょう﹂ 俺とアレックスの説明に蓮華は納得、冥琳と穏と亞莎は同感の表情 をする。 これ迄の流れから判断して、曹操の南下はそういった画策が見られ る。 宣戦布告も無しに曹操は他国へ侵略は絶対しないだろうが、敗残の 部隊がいるとなれば話は別だ。 仮に一刀達が呉に逃げ込んで来たら、それを口実にして引き渡しと 降伏を勧告。受けなければ侵攻。そのまま荊州と益州、交州、涼州 を制圧して天下統一を成し遂げる筈だ。 ﹁そして一刀達は予州を通過して荊州に向かう筈ですが、真の目的 地はその先でしょう﹂ ﹁・・・益州か?﹂ ﹁ええ、益州は劉焉の死後、愚者である跡取りの劉璋により疲弊す るばかり。その影響で反旗を翻す一派がいるようです。亞莎﹂ ﹁はひっ⁉﹂ ﹁君ならこの状況をどうする?﹂ ﹁えっ・・・えっと・・・・・・その・・・わ・・・私でしたら事 実上の内戦状態の益州にかこつけて劉璋に反発する一派を取り入れ て、益州を平定し・・・します﹂ ﹂ 亞莎の答えに全員が息を呑んだ。その亞莎は袖で口元を隠しながら 視線を落としてしまった。 ﹁はぅあ⁉ごめんなさいごめんなさい‼⁉ 789 ﹁はぁ・・・亞莎。謝る必要は一切無いよ。むしろ褒めてあげたい 位に完璧な策だ﹂ 見兼ねたのか、武久が亞莎の側に歩み寄り、帽子を取ると彼女の頭 を優しく撫でる。 ﹁亞莎、武久。仲良くするのはいいけど後でにしなさい﹂ ﹁ふっ。南郷も中々やるのぅ﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・・・・﹂ 冥琳殿と祭殿が軽く茶化し、思春からは壮絶な殺気を醸し出す。恐 らくだが嫉妬も混ざっているだろうが、それをいったら首が飛んで いきそうなので言わないでおく。 ﹁しかし、いま仮に彼等が敗れれば我等はかなり不味い状況に陥り ます。そこで雪蓮殿に提案があります﹂ ﹁あら、なにかしら?﹂ ﹁俺に・・・劉備軍の撤退支援に向かわせて下さい﹂ その言葉に全員が表情を変えずに驚愕する。それはそうだ。交州侵 攻前に同盟関係であるが劉備軍の撤退を支援する。 雪蓮殿は表情を確かめるような顔にして俺に問いかけて来た。 ﹁ライル、ごめんだけど理由を聞かせてくれない?﹂ ﹁はい。先ほども言いましたように、いまこの時期で劉備軍が敗北 するようなことになれば、曹操軍は天を打ち破ったという大義名分 を手にします。そんな状況になったら曹操軍全体の士気は計り知れ なく高くなるでしょう﹂ ﹁ほぅ・・・ライルがそこまで言いよるとは・・・その北郷とやら、 それほどなんかい?﹂ 790 ﹁はい﹂ ﹁しかしライル。お前も分かっているとは思うが我等は交州に向か わなければならない。援軍や支援隊は送れないぞ﹂ ﹁交州方面の指揮をアレックスに任せます。私は少数部隊を率いて 時間稼ぎに徹し、劉備軍が益州に入ればすぐにでも合流します﹂ この状況下では仕方がない。しかし一刀達をやらせる訳にもいかな い。ならば本隊をアレックスに任せて俺はハンターキラーを率いて 援護に向かうのが最良だろう。 ﹁勝手なのは分かります。しかしどうか・・・﹂ ﹁はぁ・・・ライル。私達があなたの考えを無下にすると思ってる の?﹂ ﹁それでは・・・・・・﹂ ﹁ねっ?冥琳♪﹂ ﹁ああ、交州は我等に任せてくれ。お前は劉備の支援に向ってくれ﹂ ﹁ありがとうございます・・・・・・アレックス﹂ ﹁任せろ。一刀君達を任せるぞ相棒﹂ そういいながらアレックスが握り拳を前に出すと・・・。 ﹁ああ、すぐに戻って来るからな。本隊を任せる相棒﹂ 俺も握り拳を出してアレックスの拳にぶつける。 ﹁フフッ♪男の友情ね♪だけどライル。一つだけ約束して﹂ ﹁何でしょう?﹂ ﹁これは主君としての命令よ。必ず・・・必ず帰って来なさい。私 にはあなたが必要不可欠なんだからね♪﹂ 791 その一言で雪蓮殿は顔を少し紅く染め、俺も顔を染めて視線をずら してしまう。はっきり言って恥ずかしいが、何故か知らないがそれ 以上に嬉しかった。 ﹁・・・・・・もちろんです。雪蓮殿・・・これを預かっていて下 さい﹂ そういうと俺は右手人差し指に嵌めてあった指輪を外して雪蓮殿に 渡す。 この指輪は前世から俺が持っている数少ない私物の一つで、アーム ︵輪っか︶の部分が彫られ、0.214CTの内部に星の形を彫り 込んだ天然ダイヤモンドを取り付けた指輪だ。 ﹁私が帰って来たらそれを返して頂きます。それまではあなたが預 かっていて下さい﹂ ﹁ライル・・・・・・分かった♪﹂ そういうと雪蓮殿は左薬指に嵌めて見惚れる。その行動に俺はドキ ッとしたが、何とか悟られずに表情を変えずに出来た。 ﹁で・・・では・・・・・・私は部隊の招集と準備をしますので、 先に失礼します﹂ ﹁そう、いってらっしゃい♪﹂ 雪蓮殿が無垢の笑みを浮かべながらそういうと俺はぎこちない動き で玉座を後にする。 それから数時間後に俺達はオスプレイに兵員、ファルシオン隊のス ーパーシースタリオンに戦闘車両を搭載して、予測針路上である荊 792 州へと向かうのであった・・・・・・。 793 第105話:進発︵後書き︶ 荊州。大陸の中央に位置する土地でかなり重要な地域として認識さ 海兵隊の誇り,Re れている。ライル率いるハンターキラーは陸路で劉備軍がいる方角 真・恋姫無双 へと急行する。 次回 [劉備軍を探して] 狼達が同胞を探し出す。 794 第106話:劉備軍を探して︵前書き︶ 荊州に入ったライル達。劉備軍を捜索する。 795 第106話:劉備軍を探して 徐州が曹操率いる大軍勢に攻撃を受けたという情報を入手。加えて 一刀達がその徐州を放棄して西に退却したという情報もだ。 同盟国である劉備軍の救援に孫策軍は向かいたかったが、交州に軍 備を進めなければならない。したがって俺は交州方面の指揮をアレ ックスに任せ、雪蓮殿に許可をもらってハンターキラーを率いて予 想針路である荊州に向かった。 ﹁・・・反応が無いですね﹂ ﹁仕方が無いだろう。分かってるのは西に向かったということだけ だ。地道に探すしかないのは分かってただろ?﹂ ﹁そりゃ・・・そうなんですがね﹂ ハンター1−2の少尉と話をしながら愛馬のスレイブニルに乗りつ つ双眼鏡で周辺を確認する。 M1161[ブロウラーITV]はハンターキラー専用に採用され た軽汎用車両で、M151MUTTの設計をベースにMV−22B に搭載出来るように設計されている。 これまではM1114を使用していたがMV−22Bには搭載出来 ないことで作戦展開力に影響が出ていた。 そこでMV−22BやCH−53Kにも搭載出来るM1161が採 用された。それに加えて今回の装備はハンターキラー専用の物では ない。 796 ピクセルグリーンデジタルコンバットユニフォームは同じだが、同 Mo MASS、M320A IAR、Mk48 色のカモフラージュカバーを取り付けたLWHヘルメットにMTV ベスト、ODカラーのフェイスマスク。 武器もHK416やHK417、M27 d0、M107A1、M40A5、M26 1という標準装備のものだ。 理由としては曹操軍にハンターキラーの情報を少しでも与えないよ うにということだ。 ﹁ダン、レイヴンから何か分かったか?﹂ ﹁駄目です。農民ならちょくちょく映るんですが劉備軍らしき姿は 見当たりません﹂ ﹁小休止が終わったら東に向かう。いずれは何か動きがあるはずだ﹂ ﹁了解。そろそろレイヴンのバッテリーが無くなりそうです。レイ ヴンを収容しますか?﹂ ﹁頼む﹂ ダンの提案を飲むと俺は騎乗しながらユーティリティポーチに双眼 鏡をしまって、スレイブニルの首を優しく撫でてやる。 軍馬ということに加えてスレイブニルには黒一色の鞍や鐙、馬面を 取り付けている。これにより敵がスレイブニルを目撃した際には恐 怖に駆られるというタクティカルアドバンテージ︵戦略的優位性︶ が発生した。 普段は俺にしか従わない獰猛なじゃじゃ馬だが、女性や子供には大 人しく乗せるという一面もある誇り高き馬だ。 797 レイヴンが地上に着陸すると、直ぐに解体されて収納ボックスに格 納されていく。 するとその直後に近辺の集落に情報を収集していたグルックが戻っ て来た。 ﹁よぅ。何か分かったか?﹂ ﹁幾つか情報が入りました。どうも荊州軍の劉琦に動きがあったよ うです﹂ ﹁いつだ?﹂ ﹁二日前らしく、少数の騎馬隊が東に向かったと言ってました﹂ 俺は報告内容の真意を推理する。 劉琦といえば劉表の長男であり、慈悲深く親孝行者で劉表の死に会 えなかったことに涙を流したとされる人物だ。 この世界での劉琦と長男の劉琮は仲が悪いらしく、劉表が死んでか ら後継者問題が絶たないそうだ。 ﹁・・・気になるな﹂ ﹁この時期に東に向かうだなんて、何か策があると考えた方が自然 でしょう﹂ ﹁劉琦は桃香や一刀と同じ仁徳に溢れる人間だと聞く。そんな奴が 彼女達と戦うなど考えにくい﹂ ﹁と・・・・・・いうことは・・・﹂ ﹁すぐに俺達も東に向かう。上手く行けば劉備軍と合流出来るかも しれない﹂ ﹁了解です﹂ 俺達は小休止を切り上げてすぐに荷物を纏めてブロウラーITVに 乗り込み、俺もスレイブニルを走らせるとそのまま針路を東に向か 798 うのであった・・・・・・・・・。 799 第106話:劉備軍を探して︵後書き︶ 曹操軍による侵略で徐州を脱出した劉備軍。曹操のやり方に疑問を 抱く劉琦の計らいにより新野の地に駐留する。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re そこに頼もしい援軍が駆けつけてくれた。 次回 [騎兵隊到着] 新野の地に2人の英雄が再会を果たす。 800 第107話:昇り竜︵前書き︶ 趙雲こと星。城壁にて・・・。 801 第107話:昇り竜 私達が徐州から脱出して3日が経った。曹操が治める予州を突破し て何とか荊州に入ることが出来たが、その間にも損害が出た。 幸いにも敵には名高い武将や軍師は出払っていたようで返り討ちに することは出来た。 だが危険を承知で共について来た兵が死んでいくという悲しい現実 にも出くわしてしまった。 しかし主と桃香様、そして我等の理想を実現する為にも前に進まな ければならない。 我等を出迎えてくれた桃香様の血縁者でもある劉琦殿の計らいで我 等は新野城にて束の間の休息を取っていた。 ﹁ふぅ・・・・・・﹂ 私も新野城の城壁で杯とメンマを口にしながら城下町を見下ろす。 この国の中央に位置するだけのことはあって人の行き来が盛んで、 街全体が活気に満ち溢れている。更に劉琦殿の人望溢れる政策で民 に笑いも見れる。 とても劉琮のような輩と水面下で争っているとは思えない。しかし 病弱である劉琦殿はあまり長くなさそうだ。私がそんな考え事をし ていると見慣れた人影を目撃する。 ﹁星﹂ 802 ﹁おや?主ではありませぬか。このような場所でいかがなされまし たかな?﹂ ﹁いや・・・仕事も一通り終わったところだから息抜きをしに来た んだよ。星は相変わらずメンマかい?﹂ ﹁相変わらずとは失敬な・・・主もご存知まであろう?メンマは私 にとって友・・・否、もはや私と一心同体ですぞ﹂ ﹁はははは・・・・・・﹂ そう笑いながら主は私の隣に座って同じくメンマを口にする。 ﹁どうかなされましたか?﹂ ﹁うん、ちょっとね・・・﹂ 主はそういいながら差し出したメンマを口にして、徐州があった方 角を見る。 ﹁主は・・・迷われてるのですかな?﹂ 天の御使い としてみんなと行動して、桃香との間に刀瑠を ﹁迷っていない・・・っていえば嘘になるな。俺は桃香達と出会っ て、 儲けた・・・・・・だけど・・・﹂ ﹁だけど?﹂ ﹁だけど・・・・・・その裏側では俺達の為に散って逝った人達が 数え切れないほどいる・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁時々思うんだ・・・・・・もしこのまま理想が実現できなかった ら・・・もし戦が無くならなかったら・・・もし・・・・・・俺が・ ・・元の世界に戻ってしまったら・・・﹁主﹂せ・・・星?﹂ 私は主の不安そうな顔を見て何故か私も辛くなり、主の頭に手を回 すとそのまま私の胸元に顔を引き寄せる。 803 ﹁主・・・・・・主は考え過ぎなのです﹂ ﹁星・・・・・・﹂ ﹁確かに私達は幾多もの犠牲の上に立っています。それ故に実現出 立ち止まるな。信じて前を見て 来なかったらその者達に申し訳が立ちませぬ﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ と・・・・・・﹂ ﹁主も仰ったではありませぬか。 歩く 主は私の胸に埋れながら黙り込んでしまう。 ﹁私は・・・主のそういう処に惚れ込んだのですよ・・・・・・だ から・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁だから・・・また不安になられましたら、私の胸をお貸し致しま すよ﹂ ようやく主の頭を離して私とすぐ前にやる。今の主の表情は赤く染 めており、少ししてから私が好きな主の笑顔になる。 ﹁・・・フゥ・・・やっぱり星には敵わないな﹂ ﹁おや?私の胸だけでは満足されませぬか?でしたら今宵、隅から 隅まで思う存分・・・﹂ ﹁はははは・・・またすぐに調子に乗って・・・・・・だけど・・・ ありがとう﹂ ﹁礼は・・・・・・言葉だけですかな?﹂ 私はそう言うと目を閉じて顔を少しだけ前に出す。 ﹁やれやれ・・・・・・﹂ 804 主もそういうと恐らくだが目を瞑って、私の唇に口付けを交わす。 少しだけ時間が経過して自然と互いの唇が離れた。私は殿方にこの ような感情を抱いたことはこれまで無かった。 主が初めてなのだ。愛紗あたりが羨ましがるであろうが、今は私が 主を独り占めさせてもらうとしよう。 再び口付けを交わそうとした直後、城の外から奇妙な音が聞こえて 来た。 ﹁主・・・﹂ ﹁ああ、聞こえてるよ。だけど敵じゃ無いみたいだね﹂ ﹁そうなのですかな?﹂ ﹁うん。こんな音を出して向かって来られるのはあの人達しかいな いから﹂ ﹁それにしても、なぜこのような場所に・・・・・・﹂ ﹁分からないけど、それは直接聞いた方がよさそうだね。城門で出 迎えて来るよ。星はどうする?﹂ ﹁私は桃香様達に心強い客人が来たと伝えに参りましょう﹂ ﹁分かったよ﹂ それだけを言うと主は客人を出迎える為に城門へと向かう。私も酒 とメンマを手に取ると桃香様達の処へと向かうのであった・・・・・ ・・・・。 805 第107話:昇り竜︵後書き︶ 劉備軍に心強い援軍がやって来た。新野の地にてライルと打ち合わ 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re せを進める中、追撃を再開させた曹操軍が荊州へと侵攻を開始する。 次回 [嵐の前の静けさ] 曹操軍の手が忍び寄る。 806 コラボ作:2匹の狼︵前書き︶ 傭兵 が降臨する。 コラボレーション作品、遂に登場。 別の外史から *このストーリーは他作品とのコラボレーション作品で、本作はも ちろんですがコラボレーション先のストーリー展開には影響はあり ません。 お気軽にご覧下さい。 807 コラボ作:2匹の狼 これは決して表に出ることの無い話だ。袁紹を抹殺して官渡の戦い が終結した7ヶ月が経過した頃のとある晴れ渡ったある日。 俺は一週間の休暇と雪蓮殿達に頼まれた用事で、愛馬のスレイプニ ルと共に長沙へ訪れていた。 と・・・・・・。 そして用事を済ませた帰り道で出会ったのだ。 狂気的な狼の名を持った傭兵 ﹁ふぅ・・・・・・しかし相変わらず量が多いな・・・﹂ 俺はスレイプニルに積まれた荷物を見て溜息が出てしまう。それは 雪蓮殿達から頼まれた土産であり、初めは冥琳殿に頼まれた長沙大 守への手紙をついでに届けるだけだったが、後からほぼ全員に土産 を買ってくることになった。 雪蓮殿と祭殿には酒。 蓮華殿には長沙で人気の果実。 シャオにはペットである周周にあう首輪。 明命には猫にあげる魚の干物。 穏には最近発行された軍略書。 思春には何故か存在したクナイ。 亞莎には注文していたという調理服。 美羽には桃の蜂蜜漬け。 その他に俺個人のお香も買ったから結構な量になってしまった。 808 ﹁すまんなスレイプニル。城に帰ったら美味いものを食わせてやる からな﹂ そういうとスレイプニルは進みながら頷く。やはり俺の考えが分か るようで、俺もこいつの考えが分かるようだった。 首を撫でながら進んでいたその直後、いきなり背筋が凍りつくよう な感覚に襲われた。 スレイプニルはその方角を見ながら立ち止まり、俺もホルスターか らM45を取り出し、初弾を装填して臨戦体制を整える。 ︵なんだ・・・・・・こんな異様な気配は・・・・・・︶ スレイプニルから飛び降りると野戦帽を被り、M45を構えながら 周囲を警戒する。 ﹁気配は・・・向こうの森からか・・・・・・スレイプニルはここ で待ってろ﹂ 頷いたのを確認したら、俺はM45を構えながら森の中へ入って行 く。だが、やはりなにかおかしい。 大抵なら動物の鳴き声がする筈なのだが、その鳴き声が聞こえてこ ないのだ。 周囲を警戒しながら慎重に進み、少ししてから森が途切れ、結構な 大きさの湖へと辿り着いた。 ﹁・・・・・・・・・あれか?・・・・・・まさか・・・﹂ 暫く辺りを見渡すと男が湖の側で立っていたが、俺はその煙草を咥 えた男の姿に驚愕する。 809 M81 BDUに同色の野戦帽、各種ポーチを取り付けたODカラ ーのピストルベルトにホルスター、更に右手にはこの世界には有り はしない筈のロシア軍主力アサルトライフルである5.45mm× 39弾のポイズンバレットを使用するAK−74と40mmグレネ 殺 に思わず身体を震 だ。そこから発せられる 濃すぎる血の臭い 眼 ードランチャーのGP−30に二本の刀。 や身体から発せられる しかし一番印象だったのはその 気 わせる。 だが、それが不味かった。暫く様子を伺っていたらいきなりその男 が振り返り、AK−74を構えてこちらに銃口を向けて来た。 ﹁⁉・・・Shit⁉﹂ 俺は素早く横に転がって近くの岩に隠れる。その直後に俺がいた場 所にGP−30から放たれた弾頭・・・恐らくVOG−25瞬発破 片榴弾と思われる弾頭が着弾して周辺に土埃が舞い上がる。 ﹁くそ⁉いきなりかよ⁉﹂ いきなりの攻撃で少し戸惑うが、俺も岩を盾にしながらM45で反 撃。 敵はそれを横に移動しながら銃撃を続行。溝に隠れて同じように身 を隠しながらAK−74を発砲する。 俺もマガジンチェンジをして新しい弾丸を装填して射撃を加える。 しかし向こうの方が火力が上で、こちらも予備マガジンは残り2本 しかない。加えて向こうは確実にこちらを殺そうとしている。 仕方がないので向こうのリロードの隙に俺は一気に森の中に入って 行く。 敵はそれに反応して追尾する。幸いにも敵は俺を見失ったようであ 810 り、AK−74を構えながら近づいてきた。 そしてAK−74の銃身が姿を現した瞬間に一気に掴みかかった。 ﹁はぁあああ‼﹂ ﹁⁉﹂ 敵の手を離れたAK−74は発砲しながら吹き飛んで、敵はAK− 74用バヨネットナイフを取り出しながら殴り掛かって来た。 俺もすぐに反応して姿勢を低くして回避。直後に回し蹴りを回し蹴 りを放つが、敵も同じように屈んで回避。 立ち上がりながら回転しつつ俺にナイフを突き刺そうとしたが、そ れをすかさず受け止める。 ﹁ふんっ‼﹂ ﹁くそ⁉﹂ そのまま敵は膝蹴りを数回するも、俺も反動を利用して肘打ちをか ます。裏拳をかましたがこれも回避されて敵は押し倒そうとしてタ ックルしてきたが、足を掴まれないように素早く後ろに下がる。 そのまま取っ組み合いになり、身体を木にぶつけながら抵抗する。 その内に敵が俺の背後を取ってナイフで喉を斬ろうとしたが、俺は 敵の顔に肘打ちを食らわし、一瞬だけ怯んだ隙に背後に回り込み、 ナイフを弾き飛ばすたと首に腕を回して締め上げるが、敵は腕を掴 んで一気に俺を投げ飛ばす。 ﹁﹁‼‼﹂﹂ 俺は転がりつつ神斬狼、敵は振り向きながら刀を抜刀して互いに鋒 を向けた。 811 ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・日本人か?﹂ ﹁・・・・・・さあな。てめえこそアメ公か?﹂ 鋒を外さずに敵を伺う。 どう見ても日本人であり、野戦帽が外れて見えた髪は白兵戦を意識 しているのかGIカットであり、その殺気を隠そうともせずこちら を睨みつける眼は歴戦を遥か昔に通り越して、もはや鬼畜。もしく は冷酷で狂気的だ。 更に外人部隊かと思ったがどうも違うようだ。外人部隊は正規軍な のである程度は軍歴に似合う雰囲気を放つが、この日本人からはそ ういった風貌は感じられない。 となると、答えは一つだ。 ﹁・・・貴様・・・・・・傭兵か?﹂ ﹁・・・そうだったらどうする気だ?ジャーヘッド野郎﹂ ﹁どうやってこの世界に来た?﹂ ﹁さあな・・・﹂ ﹁武器を降ろせ。ここで死んでも何もならないぞ﹂ ﹁勝った気でいるんじゃねえクソ野郎。てめえこそ下げやがれ・・・ その気に食わねえ顔を斬り落としてやる・・・﹂ 狂人 だ。 殺気と共に何とも品の無い言葉を放つ。ここまでくると逆に清々し いが、はっきりいってこいつの印象は 戦うことに快感を得て、相手の血を求める狂気野郎だ。当初は捕縛 して事情を聴こうと思ったが、恐らく不可能だろう。ならばせめて 812 解放してやる。 暫くの沈黙の後に俺達は同時に後方に飛び上がり、着地したと同時 に一気に斬りかかった。互いの鋒が相手を捉えようとしたその時・・ ・ ﹂﹂ ﹁﹁待った‼‼﹂﹂ ﹁﹁‼⁉ いきなりの静止に互いはほんの数ミリ手前で鋒を止めて、声がした 方角を見る。 ﹁・・・ジーン﹂ ﹁ライル、武器を下げて﹂ ﹁神、なんで手前がいるんだ?﹂ ﹁まあまあ、そんなに熱くなるなよ。ちゃんと話すからさ﹂ 暫く睨み合うが、ほぼ同時にそれぞれの得物を納刀。少し離れて様 子を伺う。奴はポケットから煙草を取り出して、咥えるとジッポで 火をつけて吸い始める。 神 だよ。そいつを迎えに来たってところだ﹂ ﹁ジーン。隣にいるのは?﹂ ﹁俺は ﹁神?﹂ ﹁ごめんなさいねライル。ちゃんと説明するから・・・﹂ ジーンはそういって奴から少しだけ俺を離し、ことの成り行きを説 明してくれた。 奴の名前は偽名だが性は韓、名は甲。字を狼牙。 813 俺と同じ現代から戦死して飛ばされた傭兵部隊の隊長をしている傭 兵で、しかも俺達と同じく別の外史で孫策軍に在籍しているようだ。 孫策への暗殺を防いで負傷して意識を失い、その時に生じた影響で 誤ってこの世界に迷い込んだらしい。 奴に説明しているのはジーンと同じく外史の管理者らしく、奴があ の男の世界を管理しているみたいで、あの男を迎えに来たというこ とだ。 ﹁理解してくれたかい、兄ちゃん?﹂ ﹁ああ、そこにいる気違いがくたばって別の孫策軍に居座っている ことはな・・・﹂ 俺の国を核の焔で焼き払った国の軍人が核で死ぬ か・・・ ﹁ふん・・・お前こそ、核で吹っ飛ばされたそうじゃねぇか。・・・ ・・・ ・・・面白い冗談だな﹂ その言葉と舐め切った態度に腹が立ち、一発ぶん殴ろうとしたが慌 ててジーンがそれを止めてきた。 ﹁韓甲、あまりあの兄ちゃんをからかうなよ。向こうはこの外史で 英雄なんだからさ﹂ ﹁ふん﹂ ﹁おい、分かったからさっさとそいつを連れて帰ってくれ。はっき り言って気に食わない﹂ ﹁あいよ。早く帰ろうぜ。雪蓮ちゃん達が心待ちにしてるぜ♪﹂ ﹁ああ・・・早く相棒と隊の奴等の処に帰るとしよう﹂ ﹁・・・・・・おい。日本人﹂ ﹁・・・なんだ?﹂ ﹁・・・・・・俺はライルだ。クソ野郎じゃない﹂ 814 ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁孫呉海兵隊・・・本部直属第0大隊[群狼隊]大隊長兼海兵隊指 令・・・ライル・L・ブレイド中佐だ﹂ ﹁・・・・・・気が向いたら覚えておいてやる﹂ ﹁お前は?﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ 暫く沈黙する韓甲だが、煙草を指で挟みながら振り向く。 ﹁・・・・・・ジョン・ドゥ。お前をいつか殺す奴の名前だ﹂ それだけ言うと、神と名乗る男と共に韓甲の身体が薄くなっていき、 やがては小さな粒子となって空に消えて行った。 それを俺はジーンと共に見上げる。 ﹁さてっ。私も帰らなきゃね。折角の休暇だったのに騒がせちゃっ てごめんなさいね﹂ ﹁・・・もうあんな珍客はごめん被る﹂ ﹁大丈夫よ。今度から気をつけるから・・・・・・それと、私がい なくなったら右胸ポケットをみてね﹂ ﹁なんだ?﹂ ﹁私からの細やかなお詫びよ♪じゃ、またね♪﹂ それだけ言い残すとジーンも消えていった。残された俺はそれを見 送りながら言われた通りに胸ポケットを調べる。 ﹁なんだ?・・・さっきまで無かった筈だが・・・・・・・・・あ いつ・・・﹂ そこに入れられていたのは一枚の写真。映し出されていたのはそれ 815 ぞれの得物を構えている俺と韓甲だ。 いつの間に撮影したのか・・・・・・。俺は溜息を吐きながらそれ をポケットの中に仕舞う。城に帰ったら何か癪に触るが、折角のジ ーンからのプレゼントだ。取り敢えずは壁に貼っておこう。 仕舞うと口笛を高々と吹いて、暫くするとスレイブニルが駆け寄っ てきた。どうやら心配していたようであり、近付いて来ると顔を俺 にすり寄せて来た。 ﹁すまないな、スレイプニル。心配掛けたようだ・・・・・・早く 城に帰ろうか﹂ 狼 の名前を持った2 スレイプニルにそういうと跨り、スレイプニルを建業城に向けて掛 け出させた。 俺と韓甲。別々の外史で孫策軍に所属する 人のスリリングな一度っきりの出会いだった・・・・・・・・・。 816 コラボ作:2匹の狼︵後書き︶ 次回から本編に復帰致します。 で、登場したのは主人公の韓甲 また、コラボ作品とはブレイズ様の 達 監督:ブレイズ様 制作:ウルヴァリン 真・恋姫†無双 外史の傭兵 狼牙こと和樹に自称神でした。 817 第109話:嵐の前の静けさ︵前書き︶ 新野での軍議。ライル達に凶報が飛び込む。 818 第109話:嵐の前の静けさ 俺達が駐留している新野城に心強い援軍が来た。 孫呉海兵隊のライルさんが率いる部隊だ。人数は12名と少なかっ たが、それでも実質上の窮地に立たされている俺達にとってありが たいものだ。 俺はライルさんを城門で出迎え、部下の人達は準備をする為に作業 に掛かり、ライルさんは俺と一緒に軍議室へと足を運んだ。 ﹁にははぁ∼♪久しぶりやなぁライル♪﹂ ﹁・・・ライル、久しぶり﹂ ﹁本当にお前はいい時に来てくれるな﹂ ﹁へぅ・・・お元気そうでよかったです﹂ ﹁ふん‼ネネは助かったなどとはちょっとも思ってないですぞ‼﹂ ﹁ま・・・まあ・・・・・・ひ・・・ひとまずは礼を言っておくけ ど、あんたの為じゃないからね‼﹂ ライルさんは部屋に入ったと同時に霞達による歓迎を受けていた。 霞は右腕に抱きつき、恋は腰に抱きついている。 ﹁あははは、相変わらずライルさんは人気者だね♪﹂ ﹁ぶぅ∼‼鈴々もライルおじちゃんに構って欲しいのだ‼﹂ ﹁ほぅ、しかしライル殿の初心な反応もなかなかよいものだな﹂ ﹁はぁ・・・・・・羨ましいなぁ・・・﹂ ﹁はわわぁ・・・﹂ ﹁あわわぁ・・・﹂ ﹁ご主人様・・・・・・﹂ 819 ﹁わかってるよ。だけどちょっと踏み込みにくいな・・・﹂ ﹁かずっち・・・・・・何だか分からないけど妙に悔しくなって来 たぜ・・・﹂ その場にいた全員がそれぞれのリアクションをみせる。特に露蘭は あからさまに嫉妬を見せているようだ。しかしこのままでは話が始 まらないので、抱きついて来ている霞と恋を離すと桃香に話しかけ る。 ﹁はぁ・・・頼むから俺を助けてくれないかな?﹂ ﹁ええ?・・・だって恋ちゃんや霞ちゃんが楽しそうだったからつ い・・・﹂ ﹁あのね・・・曹操の軍がすぐにでも攻め込んで来るかしれないの に、あまりノンビリは出来ないんだ。それに君達が考えを教えてく れないと俺達も作戦の立案が出来ないんだよ?﹂ ﹁そ・・・そうです姉上‼﹂ ﹁おや?愛紗はなぜムキになっているのだ?﹂ ﹁なっ⁉・・・だ・・・誰がムキになっているか⁉﹂ ﹁まあまあ・・・・・・それよりも、俺達は君達の撤退援護で派遣 されたが、さっきもいった通りに君達の目的地である益州に入るま でだ。それまでの間は君達の指揮下に入る。朱里と雛里もいいな?﹂ ﹁は・・・はい‼こちらも凄く助かりましゅ‼﹂ ﹁︵こくりこくり︶﹂ 朱里噛みながら、雛里は相変わらず俺の後ろに隠れながら承諾する。 確かにライルさん達は交州に向かわなければならないのに、それを 割いてこっちに来たのだ。あまり無理は言えない。 ﹁それで一刀、君は今後の計画はどうするんだ?﹂ ﹁大体は分かるかと思いますが・・・・・・﹂ 820 ﹁・・・やはり 蜀 か・・・﹂ ライルさんがそういうと俺も頷く。予想通りの展開と考えているだ ろう。まあ、ライルさんも俺と同じ時系列から来たんだ。 当然といえば当然だろう。 ﹁俺達はこの新野を明日にでも出発します。その後は襄陽へと向か い、長坂橋を通過して帰州、建平を経由して益州の白帝城へと向か います﹂ 正直に言えば白帝城へは向かいたくは無い。理由としては簡単であ り、俺達が知っている三国志で夷陵の戦いにて大敗した劉備が失意 で倒れ、そのまま死去した場所が白帝城だ。 だがあまり贅沢は言ってられないし、ライルさん達のおかげで呉と は友好な関係を保っている。 ﹁それで君達の戦力は幾ら残っている?俺の勘だと多くても3万程 だと思うが・・・﹂ ﹁うむ、予州を突破するのに兵力が低減したが、大体はその位は残 っている﹂ ﹁はわわ・・・曹操さんの兵力は50万と言われてましたから、ま ともに戦っても負けるだけでしたから・・・﹂ ﹁確かにそうだな・・・数はそのまま力になる。もし君達があのま ま徐州で抵抗していたら即座に同盟破棄をしていただろうな﹂ ﹁破棄・・・ですか?﹂ ﹁だが安心しろ。君達の判断は間違ってないよ﹂ そう言われて俺達は少し安心した。 821 ﹁俺達の策はこうです。益州へと先行する部隊と曹操を食い止める 殿の二つに分けて、益州には愛紗と恋、星、嵐、ネネ、それに俺が 向かいます。本隊には桃香と朱里、雛里。直衛には白蓮。殿には霞 と露蘭、それに鈴々を配備します﹂ ﹁俺達は?﹂ ﹁ライルさん達にも殿をお願いします。食い止める手段も任せても いいですか?﹂ ﹁了解だ。ひとまずはこれらを使う﹂ そういうとライルさんは迷彩服の腕ポケットから一枚の紙を取り出 by M14AP Mine. and sniping. bridge. by Mine し、机に広げた。全員がそれに釘つけとなるが、読めるのは俺だけ burial だろう。そこに書かれていたのは・・・。 ・Mine Claymore a attack of delay M18A1 ・The ・Blasting 英語で書かれているからだ。恐らくは俺にしか分からないようにと いう配慮だろうが、地雷を使うのは地雷廃棄推進国である日本出身 の俺はあまり乗り気ではない。 ﹁一刀、気持ちは分かるが敵の数が多い上に広がっているんだ。な らばこれが有効な手段だ﹂ ﹁それは分かってるんですが・・・不発があったら後が大変ですよ ?﹂ ﹁その点なら心配はない。導線も繋げて置くから点火器で全てどう にかなるぞ﹂ ﹁・・・分かりました。お任せしますが、設置場所は教えてくださ い。味方がやられるのは避けたいです﹂ 822 ﹁了解だ。設置場所に関しては地形で判断する﹂ そういうとライルさんは計画書を折り畳んで再び腕ポケットにしま う。地雷を使えば恐怖に駆られた敵は確実に慎重になり、追撃速度 を低下させられる。 加えてスナイパーによる正確無比の狙撃と、敵のルートを遮断する 為に橋を爆破。 これなら本隊と後方部隊の退却時間は稼げるし、追手を振り切れる。 加えて尖兵は恐らく夏侯惇か徐晃だろう。士気が高い状態だから突 然の爆発や狙撃が起これば確実に混乱する筈だろう。後はライルさ ん達と霞達の技量に委ねられる。 俺達が打ち合わせをしていると室内に兵士が入ってきた。 ﹁失礼致します‼﹂ ﹁どうしたの?﹂ ﹁偵察隊から報告です‼曹操軍が進軍を再開‼荊州に対して侵攻を 開始しました‼﹂ ﹁なっ⁉荊州軍はどうした⁉国境付近に展開していた筈だろう⁉﹂ 俺達は兵士からの報告に驚愕した。愛紗のいう通り荊州軍も展開し ている筈なのに、侵攻速度が早い。 そして俺とライルさんは直感で感じた。 ﹁一刀・・・﹂ ﹁ええ・・・恐れていたことが起こったようですね﹂ ﹁一刀、どういうこっちゃ?﹂ 823 ﹁劉琮が曹操に降伏したんだよ﹂ ﹁ええぇ⁉そうなのご主人様⁉﹂ ﹁そうとしか考えられないよ。劉琮と劉琦さんは前から仲が悪かっ たし、劉琮の側近をしてる蔡瑁と蒯越は曹操に通じてたとされてる から、考えられないことはないよ﹂ ﹁ちょっと⁉あんた知ってたの⁉﹂ ﹁俺が甘かったみたいだ・・・まさかこんなに早く奴が降伏するな んて・・・・・・それで劉琦さんはどうなったの?﹂ ﹁はっ‼劉琦様は南に脱出して身を潜めております‼劉備様は直ぐ にでも新野を脱出されよのこと‼﹂ ﹁朱里‼すぐに兵を動かして‼急いでここを離れる‼﹂ ﹁ぎ・・・御意‼﹂ ﹁みんなも急いで準備して‼曹操は待ってくれないから‼﹂ ﹃御意‼﹄ 俺が指示するとみんなはすぐに持ち場へと向かう。幸いにも事前に 準備は済ませていたから数時間後には出発することが出来た。 そして俺達は襄陽を通過して、因縁がある長坂橋へと踏み込んだ・・ ・・・・。 824 第109話:嵐の前の静けさ︵後書き︶ 曹操軍が遂に荊州へと侵攻してきた。遅滞攻撃をもろともせずに予 想以上に早い侵攻速度にライル達と劉備軍は長坂橋で追い付かれる。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re そして殿を務める霞と露蘭に阿斗が取り残されたと聞く。 次回 [長坂橋の戦い] 神槍と白騎士が急行する。 825 第110話:長坂橋の戦い︵前書き︶ 神槍と白騎士、蜀の宝を救い出す。 826 第110話:長坂橋の戦い 俺達が新野を脱出して4日が経過した。華琳はやはり尖兵を春蘭と 牙刀にしていたようで、かつて俺がいた黒騎兵を中心に破竹の勢い で猛追を仕掛けてきた。 予想以上に屈強 らし その間にライルの兄貴達が地雷とかいう待ち伏せ用の兵器や兄貴達 の武器で侵攻速度を遅らせたが、兄貴曰く い。 だけどそれでもカズっちや桃香達が長坂橋を渡ったことには成功し た。後は最後尾の連中が通過するのを待つだけだけど、遂に華琳達 が追いつきやがった。 俺と霞、兄貴達、それに鈴々は得物を構えながらそれを見ていた。 ﹁かぁあ∼‼ごっつい数やな‼﹂ ﹁流石は黒騎兵だぜ。兄貴の攻撃に怯まないで来るだなんて﹂ ﹁あんな奴、鈴々が全部やっつけてやるのだ‼﹂ ﹁落ち着け鈴々。俺達の役目は勝つことじゃない。部隊の退却完了 までの時間を稼ぐことだ﹂ ﹁にゃ?わかってるのだおじちゃん‼﹂ ﹁だから俺はまだおじちゃんと言われる程に年を食っちゃないと何 度・・・﹂ そんな話をしていると慌てて駆け寄って来る劉備軍最後の部隊が見 えたが何か様子がおかしい。すると侍女が俺達の前に息を切らしな がら話しかけてきた。 827 ﹁か・・・夏侯覇様‼張遼様‼張飛様‼﹂ ﹁あんたは確か・・・阿斗ちゃんと一緒におった・・・阿斗ちゃん はどないしたんや⁉﹂ ﹁り・・・劉備様と北郷様のお子が・・・阿斗様が取り残されて‼﹂ ﹁なんやて⁉﹂ ﹁阿斗が⁉﹂ ﹁露蘭‼霞‼敵が来るのだ‼﹂ 阿斗が取り残されたと聞いた直後に曹操軍が追いついて来た。それ も鬨を挙げながらだ。 ﹁分かった‼俺達が助け出すぜ‼あんたは早く逃げるんだ‼﹂ ﹁は・・・はい‼﹂ そういうと侍女はすぐに後方にある長坂橋へと走り出す。だが瞬く 間に周りが曹操軍によって囲まれる。 暫くの睨み合いの後に、四方八方から一斉に斬りかかって来たが、 俺と霞が飛び上がり、鈴々の丈八蛇予を足掛かりに霞が、兄貴の右 腕を俺が足掛かりにして一気に敵の背後に着地する。 ﹁ここは鈴々に任せるのだ‼﹂ ﹁よっしゃ‼任せたでぇ鈴々‼ライル‼﹂ ﹁必ず救い出せ‼それまでは橋を死守してやる‼﹂ ﹁頼んだぜ兄貴‼﹂ 俺と霞は曹操軍の中を突破しながら駆け出す。その間にも敵が仕掛 けて来たが、最小限に反撃しながら突き進む。 828 ﹁おらぁああ‼邪魔やどかんかい‼﹂ ﹁俺達の前に立つんじゃねえ‼昔の仲間だからって手加減は出来ね えぞ‼﹂ 霞は素早く縫うように突破していき、俺も西欧海龍と東欧地龍を駆 使しながら敵を蹴散らして行く。 途中の砦を突破して、逃げ遅れた味方を救い出しながら北北西にあ る砦へと向かう。 位置関係からしている可能性があるのが北北西の砦で、逃げ遅れた 味方もそこにいる可能性が高いと言っていた。 だけど流石は黒騎兵だぜ。こっちが二人だと知って連携を組みなが らそれを阻止してきやがる。 ﹁き・・・貴様は・・・・・・夏侯覇⁉﹂ ﹁張遼もいるぞ‼討ち取って曹操様に頸を捧げよ‼﹂ ﹃応っ‼﹄ やっぱり俺って向こうからは嫌われてるなぁ・・・・・・まあそり ゃそうだ。 黒騎兵を逃げ出したのは事実だしな。だけど俺だってやられる訳に はいかないんだよなぁ。北北西の砦に飛び込むと案の定、敵が阿斗 を捜索していた。 ﹁露蘭‼早いとこここ突破するで‼﹂ ﹁分かってるって霞‼いっちょ俺等の力、見せてやるぜ‼﹂ ﹁よっしゃ‼突撃や‼﹂ そういうと砦にいた黒騎兵に向かって突撃を敢行。俺もあいつ等の 829 攻撃を防いで反撃を繰り返し、瞬く間に辺りを制圧する。 ﹁よし‼片付けた‼﹂ ﹁阿斗ちゃんはここにおる筈やけど・・・もしかしたらもう連れて かれてもうたんやろか・・・・・・﹂ ﹁いやいやいや、それだったらあいつ等が探してたのが説明できな いって・・・・・・なんだ?﹂ ﹁どないした?﹂ ﹁いや・・・なんか向こうでなんか聞こえたような・・・﹂ そういいながら聞こえてきた方角に耳を傾ける。なんか声みたいだ が・・・。 ﹁そこの倉庫からやな・・・﹂ ﹁よし、開けるぜ﹂ 俺は倉庫の扉の取っ手を手にして、ゆっくりと開ける。中にいたの は負傷した兵。そしてその両手には・・・。 ﹁阿斗ちゃん‼﹂ ﹁はぁ・・・はぁ・・・ち・・・張遼・・・様・・・・・・﹂ ﹁あんた大丈夫かいな⁉﹂ ﹁はぁ・・・あまり・・・大丈夫じゃ・・・・・・ありませんね・・ ・﹂ ﹁おいおいおい‼喋んなって‼傷口が広がるぞ‼﹂ ﹁私は・・・結構です・・・・・・それより・・・あ・・・阿斗様 を・・・﹂ 負傷している兵士は力を振り絞りながら阿斗を俺に託す。俺は阿斗 を受け取ると左手で抱きかかえる。 830 阿斗はスヤスヤと眠っており、肝が座っている。流石は桃香ちゃん とカズっちの子供だ。 ﹁は・・・早く・・・・・・お行き下さい﹂ ﹁なにゆうとんねん⁉あんたも早く逃げるんや‼﹂ ﹁それは・・・・・・無理みたい・・・です﹂ ﹁そんなことないって‼俺達が助けてやるから頑張るんだ‼﹂ ﹁はぁ・・・ふふっ・・・・・・も・・・もう・・・・・・目が・・ ・見えないのです・・・わ・・・・・・私は・・・これまでのよう・ ・・です・・・﹂ ﹁﹁・・・・・・・・・﹂﹂ ﹁ですが・・・・・・最後に一つだけ・・・・・・・・・お頼みし たい・・・ことが・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・分かった・・・ゆうてみ﹂ ﹁じ・・・侍女に・・・李田という・・・子がいます・・・・・・ どうか・・・お伝え下さい・・・・・・・・・この張瑜が・・・愛 して・・・いた・・・・・・と・・・・・・﹂ 張瑜と言った兵士は握りしめられていた俺の手からずれ落ち、やが ては地面に落ちる。 彼の死を見守った俺達は開いたままの目を瞑らせ、首から下げてい た首飾りを取り、右手を腹の上に置かせる。 ﹁・・・あんたの言葉・・・絶対に伝えてやる。だからゆっくり休 みな﹂ ﹁露蘭、行くで﹂ ﹁ああ・・・﹂ そういうと俺は武器を手にして霞の後に続く。外に出ると敵が使っ ていたとされる軍馬が数頭いて、俺達はそれを利用することにした。 831 しかも遠方から増援が来やがるのが見えやがった。多分だけど本隊 だ。 ﹁霞‼早く兄貴達のトコに戻るぜ‼華琳の本隊が来る‼﹂ ﹁分かったで‼いっちょ飛ばしたるとすっか‼﹂ そう叫ぶと俺達は同時に馬を走らせる。道中には敵がいたが構って やる時間もないし、俺と霞は強行突破で敵中を掻い潜る。 来た道を戻り、やがては長坂橋の前で仁王立ちしている鈴々と兄貴 が見えてきた・・・・・・・・・。 832 第110話:長坂橋の戦い︵後書き︶ 阿斗の救出は成功した。長坂橋で待ち構えていた鈴々とライルは霞 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re と露蘭の脱出を援護する為、二人で曹操軍に挑む。 次回 [燕人張飛] 小さな巨人が敵を蹴散らす。 833 第111話:燕人と銀狼と刃と龍︵前書き︶ 豪傑2人に龍と刃が襲い掛かる。 834 第111話:燕人と銀狼と刃と龍 霞と露蘭が馬に乗って戻って来た。露蘭の左腕には抱きかかえられ た阿斗の姿。無事に救い出して戻って来たようでよかった。 ﹁ライル‼鈴々‼﹂ ﹁後は任せたぜ‼﹂ それだけ言うと俺達の横を抜けて行き、全速力で馬を走らせる。そ の直後に後方から二人を追撃して来た敵が凄い勢いで迫り来る。 だが鈴々は地面に突き刺していた丈八蛇矛を抜き取り、それを構え ると回転し始めた。 ﹁燕人張飛‼参上なのだ‼﹂ そう言うと蛇矛の矛先を敵に向ける。 ﹁鈴々達と生死を決したい奴は・・・・・・﹂ その間に敵は迫り来るが、息を大きく吸い込むと凄い気迫と共に・・ ・・・・。 ﹁いるかぁああああなのだ‼‼‼﹂ もの凄い気迫と共に大声で叫び、信じられないことにそれで先頭集 団にいた敵部隊が吹き飛んだのだ。 確かに正史でも長坂橋で仁王立ちした張飛の気迫に追撃を仕掛けて 835 きた曹操軍は怯んだとされているが、まさか気迫だけで敵を吹き飛 ばすとは思わなかった。 ﹁にゃにゃ‼ガオーーなのだぁ‼‼﹂ そう叫ぶと蛇矛を片手に敵布陣に突撃していく。俺もすぐに立ち直 って神斬狼を展開させて鈴々の後に続いた。 ﹁うりゃうりゃぁああ‼‼ここから先は誰も通さないのだぁあ‼﹂ ﹁鈴々‼あまり前には突っ込むな‼向かって来る奴だけを片付ける ぞ‼﹂ ﹁分かったのだ‼﹂ ﹁ハンター1−1からハンター各員‼援護しろ‼﹂ <こちらハンター1−2‼援護します‼> 無線で指示すると対岸で待機していたハンターキラーが向かって来 る敵部隊に対して攻撃を開始。 俺も神斬狼で向かって来る敵兵を次々と仕留めていく。敵はその光 景に怯みながらも仲間や部下を鼓舞して俺達に立ち向かって来る。 ﹁なんて奴等だ⁉これが人の成す業なのか⁉﹂ ﹁皆‼恐れるではない‼敵は2人‼分は我らにあり‼・・・・・・ がはっ⁉﹂ ﹁こ・・・この2人・・・・・・まさに・・・万夫不当・・・﹂ ﹁くっ⁉絶対的な戦力差を覆しやがるなんて⁉﹂ 指揮官がどれだけ鼓舞しても次々と俺の神斬狼で切り伏せられ、鈴 々の丈八蛇予で吹き飛ばされる。それがやがて敵が新兵を中心に恐 怖へと変わり、攻撃の手が止む。 836 俺と鈴々は橋の前に戻り、得物を構えながら殺気と気迫をぶつける。 ﹁天下無双と呼ばれた燕人張飛の丈八蛇予‼雑兵の千や二千‼地獄 に送るのは軽いのだ‼﹂ ﹁鈴々﹂ ﹁なんだのだ?﹂ ﹁敵集団から凄い勢いでこちらに来る気配があるぞ。しかもかなり の気迫だ﹂ ﹁にゃ‼そいつは強いのかなのだ⁉﹂ ﹁それは直接会った方がいいだろう。・・・・・・構えろ﹂ 俺の警告で蛇予を構え直す鈴々。その直後に敵集団の中から2人の 敵が突っ込んで、その攻撃を受け止める。すると予想通りの人物だ った。 ﹁私が相手をしてやるぞ張飛‼﹂ ﹁にゃにゃ⁉盲夏侯なのだ‼﹂ ﹁その名を言うなぁあ‼‼﹂ 現れたのはやはり夏侯惇だった。彼女は七星餓狼で単調ながらも凄 まじい斬撃を鈴々に放つ。俺も援護で駆け寄ろうとした直後、襲い かかって来た敵の攻撃を受け止める。 ﹁やはり徐晃か⁉﹂ ﹁ライル殿‼何故貴公がここに居られるのかは聞かぬが、敵ならば 私と手合わせ願おう‼﹂ 公明。 俺の前に現れたのは赤龍偃月刀を手にして、立て続けに仕掛けて来 る徐晃 尖兵部隊が2人の指揮する部隊だから、合間見えるタイミングがあ 837 るとは思っていたが、まさかこうも悪いタイミングとは・・・。 ﹁ふん‼﹂ ﹁はぁあ‼﹂ 徐晃の一撃を受け止めて軽く飛ばすと俺は間髪入れずに右の神斬狼 で突きを見舞う。徐晃にはそれを受け止められ、今度は左の神斬狼 を振り上げるが弾き返される。 ﹁うりゃうりゃぁああ‼鈴々はその程度じゃ殺られないのだ‼﹂ ﹁くっ⁉・・・舐めるなぁあ‼﹂ 対してこちらは鈴々が余裕で夏侯惇を挑発して、その挑発に短気の 夏侯惇は怒りを露わにしながら仕掛けていく。向こうは大丈夫だろ う。 力なら恐らくは互角だろうが鈴々が条件的に有利だ。何しろ小柄特 有の身軽さに加えて蛇予は攻撃範囲が広いし、鈴々の勘がある。 それに対岸にはハンターキラーが援護態勢を整えている。 一騎当千の豪傑が橋の前に陣どれば一般兵は迂闊には動けず、まと もに相手を出来るのは名高い武将のみとなる。これが俺達の狙いだ。 だがその武将に徐晃が出てきたのは本当に厄介だ。 徐晃は身体を回転させながら赤龍偃月刀を連続で振り上げ、最後に 6回目で一気に振り下ろす。 ﹁流石は徐晃だ‼血が滾って来たぞ‼﹂ ﹁ライル殿も見事な武‼私も感服いたす‼﹂ ﹁だがな‼俺は負けられん‼仲間や祖国の為にもな‼﹂ ﹁それは私も同じ事‼我が忠誠の誓いを立てた曹操殿の為にも‼貴 838 殿を討ち取らせて頂くぞ‼﹂ そう叫ぶと徐晃は更に勢いを強め、俺は防戦一方になってしまう。 更にここで問題が生じ始める。 神斬狼が妙な軋み音を出し始めたのだ。以前から調子がおかしかっ たことに加えて、徐晃の猛攻に悲鳴を上げ始めたのだ。 だが俺も隙を見つけて攻撃を仕掛けるが、徐晃は一歩下がって、偃 月刀を構える。 ﹁しかと見よ‼これぞ武の極み‼﹂ 徐晃は飛び上がりながら振り上げ、俺もその勢いで少し態勢を崩し てしまう。それを徐晃が見過ごす筈もなく、そのまま両手で構えて 振り下ろす。 ﹁武の髄を見よぉお‼﹂ ﹁ぐぅっ⁉﹂ 俺は神斬狼を重ねて攻撃を防ぐが、その瞬間に俺の周りに小さな破 片が舞い散った。 ﹁くっ⁉神斬狼が⁉﹂ その破片とは、俺の得物である神斬狼の破片。刃は全て折れ、稼働 PUP SEALsナイフとOKC−3Sを抜刀 部は根元から完全に折れてしまった。俺はすかさず徐晃を蹴り、そ の隙にM37K して構える。 ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ 839 そしてそれぞれが武器を構えて睨み合う中、その沈黙が打ち破られ る。 ﹁そこまでよ‼﹂ 俺達は声がした方角を見る。するとそこにいたのは・・・・・・。 ﹁・・・曹操・・・孟徳・・・﹂ 840 第111話:燕人と銀狼と刃と龍︵後書き︶ ライル達の前に姿を現した曹操。圧倒的不利の状況の中、乱世の奸 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 雄は欲している狼に降伏を促す。 次回 [乱世の奸雄] ライルの忠誠心が問われる。 841 第112話:乱世の奸雄︵前書き︶ 覇王と龍、狼に感服する。 842 第112話:乱世の奸雄 ﹁・・・曹操・・・孟徳・・・﹂ 俺は警戒しながら騎乗した曹操を睨みつける。その傍には軍師の荀 彧や官渡の戦いで一時的に動向した楽進と于禁、それに李典。 曹操の従姉妹である曹洪に俺のことを兄ちゃんや兄様と呼ぶ許褚と 典韋がそれぞれの武器を手にしながら歩み寄って来た。 そして夏侯惇と徐晃も武器を構えながら曹操の下に歩み寄った。俺 と鈴々も橋の前で武器を構えながら様子を伺う。 ﹁・・・・・・・・・﹂ <中佐> ﹁攻撃は禁ずる。各隊はブロウラーに搭乗しながら待機だ。いいな﹂ <了解です> 無線を使用して小声で指示を出すと鈴々を見る。 ﹁鈴々・・・先に橋を渡って霞達と合流してくれ・・・﹂ ﹁おじちゃんはどうするのだ?﹂ ﹁曹操と少し話をする。大丈夫だ、直ぐに追いつく﹂ ﹁・・・分かったのだ‼だけど後で会うのだ‼﹂ そう言うと鈴々は急いで長坂橋を渡り、先行した霞と露蘭の下に向 かう。 俺はそれを見送ると再び曹操に振り向いた。 843 ﹁・・・久しぶりねライル。反袁紹連合以来かしら?﹂ ﹁・・・そうなります。そちらもお変わりは無いようで・・・﹂ ﹁ええ、だけど凄いわね。あなたと張飛、それに後方であなた達を 支えてた部下だけでこの軍勢と渡り合うんだなんてね﹂ 褒めているように聞こえるが、実際は違うだろう。何しろ目が笑っ ていない上に、口調も僅かながら殺気が感じられる。 ﹁だけど、一つだけ聞かせなさい﹂ ﹁・・・・・・・・・︵コクリ︶﹂ ﹁あなた達の呉は交州に向かったと聞いてたのに、何故あなた達は ここにいるのかしら?﹂ ﹁・・・我ら呉と劉備軍は同盟を締結している・・・同盟国の援護 を行なって何が悪い?﹂ ﹁ふふっ。そうね・・・しかしあなたは判断を見誤ったことで寧ろ 好都合だわ﹂ そう言うと曹操は馬から飛び降り、アレックスと同じく大鎌を手に し、その小柄からは想像も出来ない位に強力な覇気を醸し出し、俺 にぶつけて来た。 ﹁今すぐ武器を捨てて降伏し、我が軍勢に下りなさい‼そうすれば 命は保証するわ﹂ やはりだ。前に曹操から俺を組み入れたいと言っていたから大体の 孟徳の覇道に捧げるべきものよ。 予想はしていた。鞍替えするつもりは全く無いが、だったら一つ聞 いて見たいことがある。 ﹁あなたの知識や武は、この曹 孫策や劉備などでは無く・・・ね﹂ 844 ﹁・・・ならば問いたい。あなたの覇道で犠牲となる者達をどう思 われている?﹂ な平穏を生みま ﹁犠牲となった者達は我が覇道の礎となってもらう。私の理想を成 一時的 す為ならどんな恨みでも背負って見せる﹂ ﹁・・・・・・・・・孤独だな﹂ ﹁孤独?﹂ ﹁ええ・・・確かに力による天下統一は す。だがそれは押さえつけられた平穏です。たとえ自身が民の為に だと思っていても、民からすれば理解される筈が無い・・・﹂ ﹁・・・何が言いたい?﹂ 家族 の笑顔の為に私は武器を手にして戦うのです。だ ﹁私は国や仲間、民の為に戦う。抑制や強制では無く、私を信頼し てくれる から私はあなたと共には行けません﹂ はっきりと答えた。しかし俺が忠誠心に従っただけのことであり、 と・・・。 そして何よりも俺は雪蓮殿と約束した。 絶対に帰って来る ﹁・・・・・・早く行きなさい﹂ ﹁曹操殿?﹂ ﹁兵の損失も思ったより多いことだし、今日のところは見逃してあ げるわ。 だけど・・・これだけは覚えておきなさい。私は欲しいものは必ず 手に入れる‼いつか必ず呉を打ち破り、あなたを私の配下に加えて みせる‼﹂ そう叫びながら曹操は俺に指をさしながら宣言する。俺はナイフを 鞘に収め、口笛を高々と吹いてスレイプニルを呼んだ。 845 スレイプニルは橋を渡って、俺の側に立ち止まる。 すぐに俺はスレイプニルに乗り、手綱を握って鐙に足を掛けて橋を 渡ろうとした直後、徐晃が一歩前に出てきた。 ﹁ライル殿﹂ ﹁徐晃殿?﹂ ﹁我が真名は牙刀と申す﹂ 俺を含め、その場にいた全員が驚愕した。何しろ名高い徐晃がいき なり敵である俺に真名を託して来たのだから。 ﹁ライル殿の武や志・・・私は感服致した。されど貴公との戦いは まだ終わっておらぬ。だからどうか・・・私が真に貴公を打ち倒す 程の武を極めたその時に、また手合わせ願いたい﹂ そう言うと牙刀は偃月刀を掲げる。俺は騎乗しながら彼に敬礼をす る。 ﹁牙刀・・・・・・あんたに勝つのはこの俺だ。だから俺が打ち倒 すまで死ぬなよ﹂ ﹁貴公こそ﹂ 俺はそう言い残すとスレイプニルを走らせ、橋を渡り切った直後に ポーチから点火機を取り出してスイッチを押した。 それて連動して木製桁橋のカンチレバー︵形持ち梁︶を仕掛けたC 4を用いて爆破して、カンチレバーがなくなったことで結合部が破 壊され、スパン︵中央支間︶が川に落下していく。 これで曹操軍は渡河に時間を掛けることになり、追撃は不可能とな る。 846 長坂橋のデトリッション︵破壊︶を完了させた俺は部隊と合流して、 すぐに劉備軍と合流する為に向かうのであった・・・・・・・・・。 847 第112話:乱世の奸雄︵後書き︶ ライルが長坂橋で曹操軍と対峙している頃、交州では孫策軍と交州 正規軍による合同制圧作戦が開始された。 海兵隊の誇り,Re 攻撃目標の街に取り残された民間人を救出する為にアレックスは部 真・恋姫無双 隊を率いて向かう。 次回 [死神による救済] 交州の民を救い出す。 848 第113話:死神の救済︵前書き︶ 人質救出作戦にアレックスが挑む。 849 第113話:死神の救済 相棒が指揮するハンターキラーが劉備軍の援護に向かっている頃、 雪蓮殿率いる軍勢は行動を開始した。 交州への進軍である。 交州反乱軍の戦力で驚異となるのは地形を活かしたゲリラ作戦だが、 俺達孫呉海兵隊を最前線に出し、練度で劣る国境付近に展開してい た敵を殲滅。一気に進撃する。 だが攻勢開始から4日が経過した頃に問題が発生した。敵に占拠さ れている砲撃対象の集落に民間人が人質にされているとの情報が舞 い込んで来た。 その場所は敵の重要拠点の一つで、人質がいなかったらウォーアッ クス隊による砲撃を行なう筈だった。そこで俺が指揮するソードブ レイカー隊とウォーピック隊が市街地に突入する作戦が立案され、 ガビアルに乗り込んで進軍していた。 ﹁いいか⁉今回の作戦は人質となった民間人の救出だ‼既にレイヴ ンにより位置は判明している‼降車地点の200m先にある建物だ ‼﹂ ﹃了解‼﹄ ﹁第2大隊と第3大隊が西から攻撃を加えている‼クソッタレ共の 目がそっちに釘付けになってる間に一気に行くぞ‼﹂ ﹁少佐‼人質の人数は⁉﹂ ﹁情報では1人‼味方と民間人以外は全て敵だ‼﹂ 850 そういうと俺はMk46 DMR、M27 Mod1を手に取って初弾を装填する。 部下達もHK416やHK417、HK417 ACOGの電源をオンにして戦闘準備を整える。 IARの初弾を装填して光学機器の電源をいれ、俺もAN/PVQ −31B ﹁中佐、降車地点に到着しました﹂ ﹁よし‼‼民間人をクソッタレ共から救い出すぞ‼﹂ ﹃Hooah!!﹄ ﹁Retreat⁉﹂ fidelis!!﹂ ﹃Hell!!﹄ ﹁Semper ﹃Hooah!!!!﹄ right marine,s!!Let,s go!! 大声で叫ぶとガビアルが停車して後部ハッチが開放される。 ﹁Oh Move!!﹂ 30 俺達も一気に降車してガビアルの左右に展開。前方には戸惑う敵兵 がいたが、照準を合わせると見つけた敵に対して発砲。 部下達も敵に対して発砲していき、ガビアルからもMk44 mmチェーンガンによる攻撃が開始。 ﹁敵を足止めしろ‼近付かせるな‼﹂ ﹃了解‼﹄ ﹁1−2︵第1小隊第2分隊︶と1−3︵第1小隊第3分隊︶は俺 に続け‼人質救出完了後にウォーピック1とウィスキー4は急行し ろ‼﹂ <ウォーピック1了解‼> 851 <こちらウィスキー4‼了解‼> ﹁時間が無い‼敵が撤退する前に人質を救出‼砲撃範囲から脱出す るぞ‼いいな⁉﹂ ﹃了解‼﹄ ﹁行くぞマリーンズ‼﹂ そういうと1−2と1−3が俺の後に続き、他の部隊とガビアル、 M1114が敵を釘付けにする為に攻撃を開始する。 作戦内容はこうだ。 交州反乱軍に捕えられている人質が監禁されている建物に二個分隊 で突入。 その間にソードブレイカー隊とウォーピック隊は市街地内部、エス トック隊と孫呉海兵隊第2大隊と第3大隊が外部で敵を釘付けにす る。 人質を救出したらウォーピック1とウィスキー4が回収に向かい、 部隊は市街地より脱出。最終にウォーアックス隊のM109A6P IMによる集中砲撃で敵を廃村もろとも排除する。 ガーディアンエンジェル 。守護天使作戦だ。 力がない民間人を救い出し、悪魔という敵から守護する今回の作戦 は 途中の建物や路地裏から出現する敵に5.56mmNATO弾を撃 ち込みながら前進。 ﹁そこのボロ屋に敵が逃げ込んだぞ‼﹂ ﹁少尉‼手榴弾をくれてやれ‼﹂ ﹁了解‼・・・・・・手榴弾‼﹂ 852 近くにいた少尉に対して逃げ込まれた空き家に手榴弾を投げ込むよ うに指示し、窓から内部に手榴弾を放り込む。 数秒した後に中から敵の断末魔の叫び声と共に爆発音が聞こえ、壁 の一部が吹っ飛んだ。 ﹁目標の建物だ‼一気に行くぞ‼﹂ ﹃了解‼﹄ そういうと俺は背中に背負っていた髑髏を手に取り、それを構える と一気に駆け出した。周辺には敵が複数展開していたが関係ない。 俺は敵に向かって走りながら一歩手前で飛び上がる。 ﹁はっ‼﹂ 飛来しながら髑髏を振りかざし、反応が遅れた敵兵の首を刎ねる。 江東の死神 ⁉﹂ ﹁き・・・巨大な鎌に斑目模様の服装⁉﹂ ﹁こ・・・ ﹁見せてやるよ‼死神って奴の力をな‼﹂ 少しカッコつけながら俺は震えて身動きが取れない敵兵を次々と刈 り取る。敵は怯みながら反撃するが、俺の敵ではない。 という異名を持つように、俺も敵から という異名で知られている。 江東の銀狼 江東の死神 因みに相棒が は 理由はただ単に髑髏を手に持って敵の首を刎ねる戦い方を得意とす るからだ。 その光景はまさに死神だ。周辺の敵を刈り終えると髑髏からMk4 853 6 Mod1に切り替えて壁に張り付き、俺と1−2が突入して、 1−3が周辺を警戒する。 HK416を構えた伍長が入り口手前に張り付くとポーチからM8 4を取り出し、ピンを抜くと構える。 ﹁フラッシュバン‼﹂ そのまま建物内に投げ込んで起爆に備える。少し間を置いて起爆し、 確認したら一気に内部に突入。入り口には敵が待ち構えていたが、 突入と同時に制圧。 ﹁エントランス制圧‼﹂ ﹁ディーパー‼スミス‼入り口を見張れ‼﹂ ﹁﹁了解‼﹂﹂ ﹁シモンズとハモンドは一階‼ゲレロとセブリコッドは俺と二階だ ‼行くぞ‼﹂ ﹃了解‼﹄ そういうと担当する二階へとM45を構えながら上がり、上がった 先にいた敵を仕留める。 どうやらこの建物は以前は旅館として機能していたようであり、中 々の広さだ。 俺は襖を開けながら様子を伺い、やがては最後の部屋の前に辿り着 く。耳を澄ますと中からは口論と思われる話し声。 俺達は左右に張り付き、セブリコット上等兵が少しだけ開けると内 部にM84を投擲。 854 起爆すると襖が衝撃で吹き飛び、俺達は一気に突入。内部には拘束 された人質と武装した敵。すかさずM45の照準を合わせて発砲。 敵は反撃も出来ずに制圧され、俺は新しいマガジンを装填して警戒 する。 ﹁クリア‼﹂ ﹁クリア‼﹂ ﹁クリア‼﹂ M45を構えながら跪いた人質に歩み寄り、俺はホルスターにM4 5を戻す。 ﹁大丈夫か?﹂ ﹁あ・・・・・・あなたは?﹂ ﹁俺は孫呉海兵隊のものだ。君の救出に来た﹂ ﹁え・・・えっと・・・・・・﹂ ﹁俺はアレックス・ヴォード。孫呉海兵隊の副司令で孫策殿配下の 将だ﹂ ﹁お姉様の?﹂ ﹁お姉様?﹂ ﹁は・・・はい・・・・・・わ・・・私は雪蓮姉様と蓮華姉様の妹 で孫翊、字を叔弼といいます﹂ 名前を聞いて驚かされる。確かによく見たら長い桃色の髪にモデル を思わせるスタイル。加えて座っていることで露わになった脚は美 しく、雪蓮殿が胸で蓮華が尻が自慢だとしたら、彼女の場合は美脚 だろう。更に礼儀正しく眼鏡を掛けていることでかなり知的印象が 強い。 それらの相違点を除けばよく似ている。 855 ﹁あなたが孫翊殿・・・・・・お噂は予々﹂ ﹁い・・・いえ⁉私の噂なんてお姉様達と比べたら些細なもので‼﹂ ﹁・・・・・・と・・・兎に角‼急いでここを離れます。セブリコ ット﹂ ﹁はっ‼﹂ ﹁HQに通達‼パッケージ救出‼これより脱出する‼﹂ ﹁了解‼・・・1−2からHQ‼﹂ <こちらHQ> ﹁パッケージ救出‼繰り返す、パッケージ救出‼これより脱出する ‼﹂ <了解した1−2。HQから作戦行動中の全隊へ。パッケージを確 保。これより作戦の第2段階へと移行する。射程範囲内にいる部隊 out> は直ちに退却せよ。ウォーピック1とウィスキー4は1−2と1− 3及びパッケージを回収した後に脱出せよ。HQ 通信を終了させると俺達は孫翊殿を連れて建物の外に出て、ウォー ピック1とウィスキー4の到着を待つ。距離は200m弱だったの でそれほど時間は掛からず到着。 ガビアルやハンヴィーを初めて見た孫翊殿は驚きを隠せずにいた。 ﹁孫翊殿はウォーピック1に乗せる‼1−3もガビアルだ‼4人は ウィスキー4に搭乗しろ‼﹂ ﹃了解‼﹄ ﹁孫翊殿‼これに乗って下さい‼この街から脱出します‼﹂ ﹁は・・・はい‼﹂ 俺は孫翊殿を一番にガビアルへと乗せ、続いて1−3と1−2の4 人が搭乗して、車長は確認すると後部ハッチを閉鎖。残った俺達も ウィスキー4に搭乗して、スミス伍長が銃座に着く。 856 ﹁よし脱出だ‼敵が前にいたら引き殺せ‼﹂ <こちらウォーピック1‼了解です少佐‼クソ野郎を挽肉にしてや ります‼> 中央突破を指示するとガビアルのブッシュマスターⅡとハンヴィー のM134Dが見掛けた敵を片っ端から仕留めて行き、無謀にも立 ち塞がった敵は28tもあるガビアルに踏み潰される。 やがてウォーアックス隊の攻撃範囲から脱出した俺達は雪蓮殿達が 待つ本陣へと向かう。恐らくは久々である姉妹の再会の為に・・・・ ・・。 857 第113話:死神の救済︵後書き︶ 人質となっていた孫翊を救い出せた。後は残った敵を無人の町もろ とも吹き飛ばすだけだ。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re その任務を待機していたウォーアックス隊が実行する。 次回 [パラディン] 交州に砲声が木霊する。 858 第114話:パラディン︵前書き︶ 交州に砲撃音が木霊する。 859 第114話:パラディン 少佐達によるパッケージ救出を知らせる無線が入って来た。 少佐達が乗るウォーピック1とウィスキー4は脱出したようだ。こ ウォーアックス の出番だ。部隊長であるこの俺、テ れで街には敵しか残っておらず、遠慮なく砲撃出来る。 自走砲部隊 イラー・K・ナカタ中尉も車長ハッチからパラディン内部に入る。 <HQからウォーアックス指揮官。作戦の第2段階移行許可が出ま した> ﹁こちらウォーアックス1指揮官。了解したHQ。少佐達の脱出を 確認した﹂ <こちらでも確認しました。対象地域なな友軍及び民間人は無し。 敵しか残っていません> ﹁了解。準備が完了次第、直ちに砲撃を開始する。out﹂ HQとの通信を終了させて、ヘッドホンを操作して各車両に通信を 行なう。 ﹁ウォーアックス1指揮官より各車。状況を報告せよ﹂ <こちらウォーアックス2。砲撃準備完了。何時でもいけます> <ウォーアックス3から報告。準備完了> <ウォーアックス4から1。待機中> <ウォーアックス5から報告。セーフティ状態で待機中> <ウォーアックス6からウォーアックス1。砲撃可能。指示を待ち ます> 860 > 5輌のパラディンからの準備完了と待機中という通信が返って来た。 タイガー12 ﹁ウォーアックス1から観測チーム。聞こえるか?﹂ <こちら観測チーム。コールサインは ﹁了解だタイガー12。こちらは準備完了だ。何時でも砲撃可能。 待機している﹂ 観測チームであるタイガー12に待機中と報告する。俺達が目標か ら約20km先に展開していることに対し、観測チームは目標の北 2km地点にいる。 20kmも離れていては何処に着弾するのか判る訳がない。だから ヴィクター の座標は1− 観測チームが砲撃の際に着弾位置を報告、着弾位置を誘導するのだ。 <ウォーアックス1、主要ターゲット 6−7、3−3−5> ﹁座標確認。これより砲撃する・・・・・・HE装填﹂ 装填手に使用するM107榴弾の装填を指示して、数秒後には装填 が完了。他の車両でも装填が完了して、砲撃準備が整った。 ﹁こちらウォーアックス1。砲撃座標1−6−7、3−3−5。効 力射。砲撃開始・・・・・・撃て‼﹂ 俺の射撃命令で6輌のパラディンから一斉にM107榴弾が撃ち出 され、周辺にけたたましい砲撃音が鳴り響き、砂塵と発射炎が舞う。 ﹁こちらウォーアックス1。弾着・・・・・・今‼﹂ <こちらタイガー12‼目標に命中‼ど真ん中だ‼座標修正無し‼ 861 連続で吹き飛ばしてやれ‼> ﹁了解したタイガー12‼続けて砲撃する‼・・・次弾装填急げ‼﹂ ﹁次弾装填・・・・・・よし‼﹂ ﹁照準よし‼﹂ ﹁撃て‼﹂ ほぼ20秒後に次弾が装填され、ガナーが発射ボタンを押す。先ほ どと同じように砂塵と発射炎が舞い上がり、車体が射撃の反動で揺 れる。 ﹁3・・・2・・・弾着・・・今‼﹂ 俺は時計で着弾までの時間を計算して、数秒後には撃ち出された砲 弾が目標に降り注ぐ。 そしてタイガー12が着弾状況を報告して装填手が必要な砲弾を装 填。発砲、確認、装填を繰り返して行く。 17発を撃ち終わった辺りでタイガー12からの追加報告が入って くる。 <こちらタイガー12‼敵指揮官と思われる奴が脱出を図っている ‼仕留められるか⁉> 通信内容は敵指揮官の逃亡。ここで指揮官を逃がせば敵の指揮系統 に打撃を与えられない。ならば仕留めなければならない。 ﹁こちらウォーアックス1‼了解した‼ターゲットをレーザーでマ ークしてくれ‼﹂ <了解だウォーアックス1‼ターゲットをレーザーでマーク‼レー ザーコードは120‼> 862 観測チームは時々、レーザーを使用して目標の正確な位置を伝える 必要があり、その際はレーザーレンジファインダーのLLDRを携 行している。 155mm精密誘導砲弾だ。これは内 そのデータを受信すると俺は装填手に指示を下す。 ﹁M982装填‼﹂ ﹁エクスカリバー装填‼﹂ 俺が指示したのはM982 部に安定翼やGPSを搭載した弾頭で、空対地ミサイルのようにピ ンポイントで目標を破壊する為に開発されている。 電気式信管測合器により、目標の緯度・経度・高度などの座標、信 管起爆モード、GPSコード等を設定し、榴弾砲に装填する。 ﹁データ入力完了‼﹂ ﹁装填よし‼﹂ ﹁撃て‼﹂ 発射直後、後部カバーが離脱し安定翼を展開する。最高点に達する までは、装薬のエネルギーを有効活用するため弾道飛行する。 エクスカリバーのCEP︵半数必中界︶は10m以内とされ、地対 空ミサイル陣地などには、地上高約4mで炸裂して、広い範囲を制 圧する空中炸裂モードを、施設などには着弾の瞬間に炸裂する瞬発 モードを選択する。 頑丈な鉄筋コンクリートの建物には、建物内部に突入後に起爆する 延期モードを使用する。 863 そして今回のターゲットは対人。空中炸裂モードとなる。同じよう にターゲットへの命中まで時間を測り、やがてタイガー12からの 通信が入った。 <命中確認‼目標排除‼> これで敵の指揮系統にある程度の打撃を与えることが出来た。 <ウォーアックス1、こちらアイアンマンだ。聞こえるか?> ﹁こちらウォーアックス1。よく聞こえます少佐﹂ <よくやった。廃村にいた敵はあらかた始末できた。これより制圧 に掛かる> out> ﹁了解です少佐。砲撃姿勢の状態で待機します﹂ <頼む。アイアンマン 少佐からの通信を終了させると次は各車両へ通信を開く。 ﹁ウォーアックス1から各車へ。聞いての通りだ。砲撃姿勢のまま でその場に待機しろ。何時でも砲撃出来るようにしておけ、了解か ?﹂ ≪了解≫ 待機命令を出し、俺の車両も何時でも砲撃出来るように待機する。 この砲撃の後、敵は完全に戦意を失って降伏するものと逃げ出すも のに分かれた。俺達は廃村を完全に制圧して、次の攻撃目標へと進 軍するのであった・・・・・・・・・。 864 第114話:パラディン︵後書き︶ 長坂橋で曹操軍を振り切ったライル達は益州へと入り、白帝城へと 入城する。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re そこでライル達は一刀の新たな仲間と出会う。 次回 [馬一族の出会いと特別任務] 狼、錦と出会う。 865 第115話:馬一族の出会いと特別任務︵前書き︶ 狼と錦が出会う。 866 第115話:馬一族の出会いと特別任務 何とか曹操軍の追撃を振り切り、途中で出くわした劉琮軍による攻 撃があったが全てを蹴散らし、無事に益州へと入った。道中には後 方警戒にあたっていた劉備軍と寝返った元劉璋軍兵士も見れた。 そして益州に入ってから大体四半日で白帝城に到着。俺達は城内に 入って全員で一刀達が待つ玉座へと向かう。 ﹁失礼、北郷殿と劉備殿に面会を希望する﹂ ﹁よくお戻りになられました。既に皆様がお待ちです。どうぞお入 り下さい﹂ そういうと衛兵は扉を開けて、俺達は玉座へと入る。中には一刀と 桃香達、更には会ったことが無い女の子が2人。 男気 が感じられる背が高めの女の子 2人とも髪をポニーテールにして、片方は瑠璃色の服に白のスカー ト。眉が太くて目が大きい 悪戯好き の印象が感 と、色違いの服に胸元をリボンから小さめのネクタイ。オレンジ色 の髪をサイドポニーテールにしたいかにも じられる少女だ。 俺達は一刀達に歩み寄り、停止すると踵を鳴らして敬礼をする。 ﹁ライルさん‼無事でよかった・・・﹂ ﹁何とか無事で済んだよ。かなり際どかったがな・・・。それより 阿斗は大丈夫だったか?﹂ ﹁うん♪霞ちゃんや露蘭君のおかげで無事だよ。ほら♪﹂ 867 そういうと桃香は抱っこしていた阿斗を俺に見せる。つぶらな瞳で こちらを見ている阿斗に歩み寄り、頬を優しく触ると指を握って来 た。 ﹁ライルさん、本当にありがとうございます。刀瑠やみんなを助け てくれて・・・﹂ ﹁俺達は鈴々と一緒に橋を守っただけだ。この子を助けたのは霞と 露蘭だよ﹂ ﹁いややわぁあ♪そんなに褒めんとってぇなぁあ♪﹂ ﹁それ程でも・・・あるぜ♪﹂ 褒められて霞は両手を頬に添えて、露蘭は両手を腰に当てて大分に 威張る。 ﹁ぶぅううう‼鈴々も頑張ったのだ‼﹂ 横から鈴々が両手を挙げながら近づいて来た。 ﹁分かってるよ鈴々﹂ そういいながら一刀は鈴々の頭に手をおいて撫で始める。 ﹁にゃはは∼♪お兄ちゃんに撫でられたのだ♪﹂ ﹁こら鈴々‼今は仮にも軍議中だぞ‼ご主人様もあまり鈴々を甘や かさないで下さい‼﹂ ﹁とかいいつつ、実はお主も撫でて貰いたく仕方が無いとみた♪﹂ ﹁せ・・・星⁉﹂ ﹁・・・鈴々だけずるい・・・・・・恋にもナデナデ・・・﹂ ﹁へぅ・・・﹂ 868 ﹁ちょ⁉駄目よ月⁉駄目だから戻って来なさい‼﹂ ﹁はわわぁ‼﹂ ﹁あわわぁ‼﹂ ﹁・・・なんだかこの光景・・・前にもあったような気がすると感 じるのは私だけか?﹂ ﹁心配するな白蓮。私も同じことを考えていたところだ﹂ ﹁こらぁあ‼ヘボ君主‼恋殿に何するつもりですかですぞ‼﹂ 一刀のナデナデをきっかけに先程の2人と俺達を除いて全員がそれ ぞれのリアクションを見せる。というか何人かは確実に嫉妬が入っ ているだろう。 ﹁・・・それで一刀。さっきから気になってたんだが・・・そちら の2人は?﹂ ﹁えっ⁉・・・あ・・・・・・はい。益州に入って暫くしてからな った俺達の新しい仲間です﹂ ﹁あたしの名前は馬超っていうんだ。よろしくな﹂ ﹁はいは∼い♪蒲公英は馬岱っていうんだよ♪仲良くしてね♪﹂ 俺は表情を変えずに驚く。しかしどうでもいいが、騎馬戦術が得意 な武将は何で大半がポニーテールをしているんだ? ﹁馬超殿と馬岱殿か・・・・・・自分は孫呉海兵隊総司令官兼第0 銀狼 って呼ばれてる将か・・・聞いてはいたけ 大隊大隊長を務めるライル・L・ブレイド中佐であります﹂ ﹁あんたが噂の ど、変な名前だな﹂ ﹁ふ∼ん・・・だけどカッコいいね♪おじさん♪﹂ 馬岱殿の一言が何気にぐさっと来た。なんで鈴々もこの子も俺のこ とをおじちゃんやらおじさんと呼ぶんだ・・・・・・? 869 ﹁・・・・・・えっと・・・だ・・・大丈夫ですかライルさん?﹂ ﹁いや・・・大丈夫・・・・・・気にしては無いから・・・は・・・ はははは・・・はは・・・・・・はぁ∼・・・﹂ 実は大丈夫じゃない。歳に関してはどうも慣れない。頼むからせめ て兄ちゃんと呼んで欲しい。 ﹁そ・・・・・・それで・・・君達は確か西涼にいた筈だが、なぜ ここに?﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・あたし達の国に・・・曹操が攻めて来たんだ﹂ ﹁⁉﹂ ﹁あたし達が潼関で曹操軍を迎え撃ったんだけど・・・・・・全部 が読まれて裏を掛かれたんだ・・・﹂ ﹁それで翡翠・・・馬謄叔母様が蒲公英達を逃がす為に抵抗して・・ ・・・・﹂ 2人は悲痛な気持ちで何が起こったのか説明してくれた。 曹操軍による涼州侵攻は予測できていたが、まさか兵を二手に分け て来るのは予想外だ。だが長坂橋で夏侯淵と曹洪の姿が無かったの がようやく理解出来た。 だが、これで北側の領土は全て曹操の手に落ち、西涼の狼という異 名を持つ馬謄が殺害されたというのが立証されてしまった。 ﹁・・・すまない。・・・・・・お悔やみ申し上げる﹂ ﹁いや・・・だけど何時か必ず・・・あたしの手で曹操を討ち取っ て、母様の仇を討ってやる‼・・・だけど今はご主人様や桃香様と 一緒にこの国を押さえるけどな﹂ 870 ﹁蒲公英も頑張るよ‼﹂ そういうと2人は一歩下がる。 ﹁事と内容は分かった。俺からも報告だ。長坂橋を爆破したから曹 操軍は追撃して来られない。道中には劉琮軍が待ち構えていたが、 全て撃破した﹂ ﹁そうですか・・・だけどこれで荊州北部と中部か完全に曹操の手 に落ちましたね﹂ ﹁ああ・・・君達も早くこの国を落とさないと不味い状況になるぞ﹂ ﹁分かっています。明日には進軍を再開させます。ですがライルさ ん﹂ ﹁なんだ?﹂ ﹁やっぱり・・・・・・一緒には来てくれないのですか?﹂ 俺は沈黙する。確かに劉備軍の指揮下に入るのは一刀達が益州に入 るまでの期間であり、それが成されたから直ぐに孫策軍に戻って交 州平定に向かわなければならない。 ﹁・・・ああ﹂ ﹁えええええ⁉おじさん来てくれないの⁉﹂ ﹁そういう契約だったからな。俺達も早く呉に戻って曹操に備えな いと・・・・・・それと俺はまだおじさんと呼ばれる程に歳を食っ ちゃいない﹂ ﹁そうなの?﹂ ﹁そうだ﹂ ﹁ふぅ∼ん・・・残念だったねお姉様♪﹂ ﹁な・・・何がだよ?﹂ ﹁ニシシシ♪だってお姉様言ってたじゃん♪ライルお兄さんと会え たらいいなぁって♪﹂ 871 ﹁な・・・なに言ってんだよ蒲公英⁉﹂ ﹂ ﹁おまけにライルお兄さんの馬に乗りたいって言ってたよね♪﹂ ﹁¥$€%%°○*〒々^=÷〆‼⁉ 馬岱の爆弾発言に馬超は顔を真っ赤にしながら解読出来そうもない 羅列を口にして慌てる。 というか、悪戯をしている馬岱の笑顔もそうだが、慌てる馬超もな んだか保護欲に駆られてしまいそうなのは気のせいだろうか? だが本音を言えば力を貸してやりたい。それは孫呉軍人だからとし てではなく、同盟国だからという理由ではない。 個人的に一刀の行く末を見てみたいのだ。だが軍人である以上は任 務が完了した今、すぐにでも本隊と合流しなければならない。 俺は暫く考えて、ある妙案を思いついた。 ﹁ポーとクラウド。2人とも前へ﹂ そういうと2人が前に出て来て一刀に敬礼をする。 ﹁一刀、桃香。紹介しよう。右がクラウド・レインディー二等軍曹 で、左がポー・リーチェン曹長だ﹂ ﹁初めまして、クラウドだ﹂ 一刀です。でもライルさん、何がどうしたんですか?﹂ ﹁俺はポー・リーチェン。よろしくな﹂ ﹁北郷 ﹁それは今から話すよ・・・・・・気をつけ‼﹂ 俺がそういうと2人は踵を鳴らして直立不動の姿勢でその場に佇む。 ﹁クラウド二曹‼ポー曹長‼お前達2人に特別任務を言い渡す‼成 872 Yes sir!!﹂﹂ 都制圧完了までの間、オブザーバーとして劉備軍の支援にあたれ‼﹂ ﹁﹁Sir 振り返ると、唖然とした一刀達。だがその一刀は素早く復帰したよ うであり、俺に戸惑いながら話しかけて来た。 ﹁え・・・えっと・・・・・・ライルさん?﹂ ﹁なんだ?﹂ ﹁状況が今ひとつ理解し辛かったんですが・・・・・・﹂ ﹁要するにだ。この2人をオブザーバー・・・助言役として残らす から、存分に活躍させてやれということだ﹂ ﹁いいんですか?﹂ ﹁因みに、2人は武術にも優れてるぞ。クラウドは二刀流と暗殺の 達人で、ポーは徒手格闘技と多節棍の達人だ。しかもこのポーは南 郷の弟子でもある﹂ ﹁武久さんの?﹂ ﹁そうだ。それで了承してくれるか?﹂ ﹁もちろん大歓迎です。ねえ桃香?﹂ ﹁うん♪みんなもいいよね?﹂ 2人は見渡して全員の表情を見る。全員が賛成の表情をしており、 問題はなさそうだ。 ﹁それでポーとクラウド。何か要望はあるか?﹂ ﹁そうですね・・・・・・ならブロウラーを一台お貸し下さい﹂ ﹁それとMP7A1と予備マガジンと弾薬を大量にお願いします﹂ ﹁分かった。回収部隊に届けさせる﹂ その後に俺達は軍議をようやく再開させ、クラウドとポーは一刀の 親衛隊に暫く身を置くことになり、必要に応じて部隊を任せられる 873 こととなった。 そして俺達は回収部隊が到着するまでの間、白帝城の守備を行なう のであった・・・・・・・・・。 874 第115話:馬一族の出会いと特別任務︵後書き︶ 劉備軍の撤退支援は完了した。任務完了したライル達はクラウドと 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re ポーの2人を残して交州の本隊へと向かう。 次回 [針路を交州へ] 狼達が新たな戦地へと飛び立つ。 875 第116話:針路を交州へ︵前書き︶ 蜀のはわわ軍師とあわわ軍師に続き、ふわわ軍師が現れる。 876 第116話:針路を交州へ 無事に劉備軍の撤退をサポートした俺達も益州に入り、劉備軍が駐 留している白帝城で警備に当たり、翌日の昼間に回収にやって来た MV−22BとCH−53Kが到着。 既にブロウラーとスレイプニルをCH−53Kに載せ、そのまま先 にヴェアウルフに向かって離陸して行った。俺も装備を身につけて HK416を片手に一刀達と話をしていた。 ﹁ライルさん、本当にありがとうございました﹂ ﹁気にする必要はない﹂ ﹁だが私達は本当にお前には感謝している。機会があれば、また来 てくれ。その時には歓迎する﹂ ﹁分かった。楽しみにしているよ愛紗﹂ 愛紗はそのまま手を差し伸べ、俺もそれを握って握手を交わす。 ﹁それより一刀﹂ ﹁なんですか?﹂ ﹁劉璋軍を絶対に侮らない方がいいぞ。奴自身は無能だが、黄忠や 厳顔、張任と有能な武将が多い﹂ ﹁分かってます。油断ならないのは知ってます﹂ ﹁だが君達ならやれると信じてる。期待を裏切るなよ﹂ ﹁はい。必ず期待に応えてみせます﹂ ﹁クラウドとポーも任せるぞ﹂ ﹁了解です‼﹂ ﹁俺達に任せて下さい‼﹂ 877 一刀に伝えると俺は踵を鳴らして敬礼をして、一刀とクラウドとポ ーも同じように敬礼を返す。 ﹁それよりライルさん、孫策に渡して欲しい親書がありますから渡 してくれませんか?﹂ ﹁分かった。それでその親書は?﹂ ﹁はい。それならここに・・・・・・あれ?﹂ ﹁どうした?﹂ ﹁確かに隣にいたんだけど・・・・・・どこに行ったんだ?﹂ どうも誰かがいたようであり、一刀は辺りを見渡して探し出す。俺 も探すが誰もいない。すると誰かの声が聞こえて来た。 ﹁あ・・・あのぅ∼・・・ここでしゅ⁉﹂ ﹁何処からだ?﹂ ﹁声はするが姿が見えないな・・・﹂ ﹁こっちでしゅ・・・﹂ ﹁ポー、分かるか?﹂ ﹁いや・・・何だか不気味だな・・・﹂ クラウドとポーも加わって探すが一向に見つからない。一応は気配 はするが姿が見えない。何故か知らないが桃香達が苦笑いを浮かべ ているが今ひとつ理解できない。 ﹁こ・・・こっちでしゅ‼下でしゅ‼﹂ ﹁﹁﹁﹁下?・・・・・・うわ⁉﹂﹂﹂﹂ 俺達が一斉に視線を下に向けると同時に驚いた。そこにいたのは朱 里と同じ服だが、サイズが小さいようだ。 878 じゃなくて ふわわ ? その子は声に驚いたのか、俯いてしまっていた。 ﹁ふわわ⁉﹂ はわわ ﹁・・・ふわわ?﹂ ・・・ ﹁・・・・・・えっと・・・どうしたんだ朱里?・・・・・・服の 寸法を間違えたのか?もしくは縮んだのか?﹂ ﹁はわわ⁉わ・・・私はこっちです‼﹂ 後方から声がしたので振り向くと、そこには何時もの服装と身長の 朱里がいた。それも拗ねながらだ。 俺は前と後ろを交互にみながら考えに至った。 ﹁・・・・・・・・・・・・分裂?﹂ ﹁﹁違いましゅ‼‼・・・はわわ︵ふわわ︶・・・噛んじゃった・・ ・﹂﹂ ・・・・・・なんだ?・・・この小動物は・・・・・・。 俺は目の前にいる小動物が乗せているベレー帽を外して思わず頭を 撫でてしまっていた。 ﹁はわわ⁉なんで撫でるんですか⁉﹂ ﹁ふわわ∼・・・・・・﹂ ﹁いや・・・何と無くな・・・・・・まあ、冗談はおいといて君は ?・・・﹂ ﹁はわっ⁉なんだか軽く流された気がしますが、この子は私の妹の・ ・・﹂ 879 ﹁ふわわ⁉・・・せ・・・性は諸葛、名は均で字は子魚‼ま・・・ まにゃは夏雅里︵かがり/諸葛均の真名︶でしゅ‼﹂ なるほど・・・それでよく似てるのか。しかし姉がこうなら妹も影 響されるのか・・・。千里の気持ちも分からなくはない。 ・・・その頃、交州の海兵隊野戦基地では・・・。 ﹁だぁああああああ‼離して下さいアレックス様ぁあ‼﹂ ﹁落ち着け千里⁉大体なにがあったんだよ⁉﹂ ﹁何故か分かりませんが益州に行かなきゃならない気がして仕方が 無いんですよ‼というか行くべきなんです‼﹂ ﹁訳が分からん‼﹂ ﹁しゅりぃいいいい‼‼かがりぃいいいい‼‼今お兄ちゃんが行く ぞぉおおお‼‼﹂ ﹂ ﹁だから朱里ちゃんは相棒に任せとけって⁉あと最後のは誰なんだ ぁあああ‼⁉ 暴走状態の千里をアレックスが必死になって取り押さえていた・・・ 。 俺は何だか相棒が救援を求めているように感じて、夏雅里から親書 を受け取り、2人のベレー帽を正しく被り直させる。 880 ﹁真名まで預けてくれるのか?﹂ ﹁は・・・はい・・・・・・だって・・・お姉ちゃんやお兄ちゃん がまにゃをあじゅけてますから、私もあじゅけましゅ・・・噛んじ ゃった・・・﹂ ・・・・・・連れて帰ってもいいかな? そんなくだらないことを考えながら、俺は夏雅里から親書を預かり、 一歩後ろに下がると再び敬礼をする。 ﹁それじゃ、俺達は帰る。頑張ってくれ﹂ ﹁はい、ライルさんもお元気で﹂ ﹁ライルさ∼ん‼また来て下さいね‼ほら♪刀瑠ちゃんもバイバイ しましょうね∼♪﹂ ﹁あわわ︵コクリコクリ︶﹂ ﹁にゃはは♪おじちゃんバイバイなのだ♪﹂ ﹁また今度、メンマを共に語りましょうぞ♪﹂ ﹁まったねぇ∼♪ライルお兄さ∼ん♪﹂ ﹁今度あたしと馬で勝負してくれよ‼﹂ ﹁・・・ライル・・・また会う﹂ ﹁へぅううう・・・お怪我のないように・・・﹂ ﹁べ・・・別に来たかったら来なさいよね‼べ・・・別にあんたの 為じゃないんだからね‼月の為なんだからね‼﹂ ﹁ライル♪アレックス達にもよろしゅうなぁあ♪﹂ ﹁今度の模擬戦は私が勝つ‼﹂ ﹁ま・・・またな・・・・・・ライル﹂ ﹁恋殿を待たせるのは許さないですぞ‼﹂ ﹁兄貴♪次は土産頼んだぜ‼﹂ 全員がそれぞれの言葉を俺に送ると最敬礼で返し、直ぐにオスプレ イに乗り込む。 881 全員の搭乗を確認した機長は後部ハッチを閉鎖して徐々に高度を上 げて行く。 そしてオスプレイは機首を東に向かって飛行を始める。 雪蓮殿達が待つ交州へと・・・・・・。 882 第116話:針路を交州へ︵後書き︶ 劉備軍をとり逃したものの、荊州北部と中部を手中に収めた曹操軍。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 新野で治安活動に赴いていた牙刀と凪は警邏を行なっていた。 次回 [牙刀と凪] 警邏でハチャメチャが起こる。 883 孫呉海兵隊 詳細︵前書き︶ ひと段落しましたので、ライルが創設した孫呉海兵隊の詳細を簡単 に記します。 884 孫呉海兵隊 詳細 今回はライルが創設した孫呉海兵隊の兵科と装備を紹介します。 孫呉海兵隊 本部:浦口海兵隊駐屯地 所属人数:約6,000 司令:ライル・L・ブレイド ライルが創設した部隊。水軍出身者や自ら志願して来た愛国者で構 成されており、ハートマン軍曹式新兵訓練法を採用していることも あって高い戦闘力と士気を誇る。 部隊 初期編成は第1∼4大隊の4個で構成されていたが、完全志願制を 採用しているのでそれに合わせて輸送部隊や戦闘衛生兵部隊、七乃 を中心とした旧袁術軍親衛隊を併合再編成した第10戦術機動騎兵 中隊が創設され、時代の一歩先を行く編成となっている。 第0大隊 ウルフパック 子瑜 指揮官:ライル・L・ブレイド 部隊名:群狼隊 第1大隊 指揮官:諸葛瑾 部隊名:飛狼隊 885 第2大隊 指揮官:太史慈 子義 承淵 部隊名:雄狼隊 第3大隊 指揮官:丁奉 公積 部隊名:仁狼隊 第4大隊 指揮官:凌統 部隊名:神狼隊 第10戦術機動騎兵中隊 指揮官:七乃 部隊名:三角力︵みかくりき/デルタフォース︶ 叔弼 第1戦闘衛生兵部隊 指揮官:孫翊 部隊名:赤十字隊 訓練 志願した新兵は6ヶ月間の訓練に耐える必要があり、最初の3ヶ月 間は基礎体力や剣、弓、格闘技、短剣術の4つ、集団戦闘の基礎、 上陸展開力を徹底的に鍛え上げ、個人という概念を捨てさせる。 残りの3ヶ月は各種兵科の専門的な訓練を実施する。 兵科 886 軽歩兵 一般兵の別名。基礎訓練に加えて槍術を扱った訓練も追加され、特 性から最前線で活躍させられる。 重歩兵 対騎兵や破壊力を重視する兵科。基礎訓練に加えて戦斧や盾、援護 射撃用の弩の訓練が追加される。 騎兵 騎馬術を駆使する兵科。元々は旧袁術軍親衛隊のみで構成されてい たが、増員に伴い正式に構成された兵科。 基礎訓練に加えて馬術や朴刀、ランスの訓練が追加される。 戦闘衛生兵 軽歩兵の能力に医療技術が加わった兵科で、他と違って訓練期間が 更に3ヶ月長い。 医療の基礎技術や動物学、植物学、製薬の訓練を実施する。 この他にも兵站や訓練担当官、憲兵、工兵と更に分かれるが、訓練 そのものは他の部隊で執り行われる。 装備 呉鉤一型 全長:95cm 重量:1.6kg 孫呉海兵隊の標準装備。呉の草や低木が密集した呉の道を切り拓く ブッシュナイフとして曲刀の形となった。 思春の鈴音がまさしくこれになる。 887 呉鉤二型 全長:60cm 重量:1.5kg 孫呉海兵隊の標準装備の一つ。正式名称は西ヨーロッパで海兵が更 に使用していたバデレール。緩やかな湾曲の片刃で、幅が広く狭い 船上でも使い易い。 海兵隊では部隊長専用とされている。 呉鉤短型 全長:45cm 重量:1.2kg 孫呉海兵隊の標準装備の一つ。一型の短剣仕様で、正式名称はクク リもしくはグルカナイフ。どの兵科でも海兵隊員の予備武器として 装備される。 長槍 全長:3.0m 重量:3.5kg 孫呉海兵隊軽歩兵の標準装備。正式名称はロングスピアー。組織戦 を重視する海兵隊のニーズに応えられるように、突撃に特化してい る。 短槍 全長:2.0m 重量:2.0kg 孫呉海兵隊軽歩兵と騎兵の標準装備。正式名称はショートスピアー。 長槍を短くしたもので、刺突の他に投擲にも適している。 集団戦や騎乗戦、遠距離戦とあらゆる局面で使用される。 戦斧 888 全長:150cm 重量:11.1kg 孫呉海兵隊重歩兵の標準装備。正式名称はバトルアックス。切断用 の武器だが、鎧を着た敵を殺傷出来るようにフック部分にはハンマ ーが取り付けられている。 騎兵隊の突撃を防ぐ為に地面に突き刺してパイクのような使い方も される。 騎馬槍 全長:4.2m 重量:4.0kg 孫呉海兵隊騎兵の専用装備。正式名称はランス。柄の根元はバンプ レートと呼ばれる傘状になっており、拳を保護。 脇に抱えて突進し、馬の勢いで突き刺した。 孫呉海兵隊騎兵部隊の象徴ともされている。 十字弩 全長:100cm 全幅:70cm 重量:10kg 孫呉海兵隊重歩兵の標準装備。正式名称はクロスボウ。矢を装着し て弦を引いた状態でロックし、引鉄を操作して射出する。 弦を巻き上げるリールがあるので人力よりも強力な弦を張れる。 その分だけ再装填に時間がかかるが、部隊を3列に分けて弱点を無 くしている。 弓 全長:60cm 重量:0.7kg 孫呉海兵隊の標準装備。通常よりも小型であり、運用には弓嚢と矢 889 筒、弓矢30本を携行する。 海兵隊員全員が射撃の名手という特徴を発揮する象徴的な装備であ る。 軍馬 騎兵隊で使用されている軍馬は全てライルの愛馬であるスレイプニ ルと同じ馬具が採用され、鐙や腹帯、大勒、胸懸、馬面が採用され、 従来の馬具と比べても高い安定感を有している。 なお、軍馬の品種はチャイニーズホース。 890 孫呉海兵隊 詳細︵後書き︶ 次回から本編に戻ります。 891 第118話:牙刀と凪︵前書き︶ 牙刀の決意を少女が聞く。 892 第118話:牙刀と凪 長坂橋で劉備軍を取り逃がす。我等の主目的は成し遂げられなかっ たが、劉琮率いる荊州軍が我が軍に降伏。荊州の北部と中部を支配 下に置くこては出来た。 そして我が軍は長坂橋から引き返し、軍備を整えると新野に駐留。 当面はこの地域の治安維持活動に力を注ぎ、確固たる基盤を設ける ことになった。 私も警邏隊隊長として、街の警邏にあたっていた。 ﹁隊長・・・いつもながらすみません・・・﹂ ﹁全く・・・あの2人には悩まされる﹂ 私は現在、繁華街を凪と共に警邏を行なっている。ただ、少し呆れ ながらだだが・・・。その理由は単純明快で真桜と沙和がいないの だ。普通なら風邪や他の業務で来れなくなったと思うが、あの2人 の場合はそんなことではない。 大方・・・。 ﹁やったなの‼阿蘇阿蘇の最新号が買えたなの‼﹂ ﹁うっひぇ∼‼製造停止になってもうた等身大からくり春蘭様や‼﹂ ・・・などと仕事をサボっている姿が容易に想像出来る。だが2人 を探すのに仕事を割く訳にはいかないので、仕方なく私と凪の2人 で見回りをすることにした。民の様子は活気に満ち溢れており、今 は行方をくらましている劉琦が統治していただけに治安状況は良い。 893 我等の統治に初めこそは戸惑いがあったが、曹操殿が圧政を敷かな いと分かって普段通りの生活を送る民の姿。 私はそれを見ながら歩いて行く。 ﹁しかし・・・なかなか活気に満ち溢れていい街だな﹂ ﹁そうですね。民の笑顔や笑い声が溢れていて素晴らしい眺めです﹂ ﹁うむ・・・・・・皆が曹操殿のお考えを理解すれば、この国は必 ず・・・・・・﹂ な平穏を生みます。だがそ 私はそこで言葉を止めた。あの時・・・長坂橋でのライル殿が曹操 一時的 殿に言った言葉を思い出したのだ。 確かに力による天下統一は れは押さえつけられた平穏です。たとえ自身が民の為にだと思って いても、民からすれば理解される筈が無い 確かに一部の人間から見れば曹操殿の目指す覇道は独裁の道。全て の人間が同じ考えを持つことなどは不可能な話だ。 ﹁・・・隊長?﹂ ﹁・・・あぁ・・・何でもない﹂ ﹁何処か具合でも・・・﹂ ﹁いや・・・・・・ライル殿のことを考えていてな・・・﹂ ﹁ライル殿・・・・・・ですか?﹂ ﹁うむ・・・歩きながらでも話そう・・・丁度いい機会だ﹂ そういいながら私と凪は並びながら歩いて行き、小休止も兼ねて少 し先にある広場で腰を降ろす。 ﹁凪、なぜ私が敵であるライル殿に真名を預けたのか分かるか?﹂ 894 ﹁・・・・・・いえ・・・﹂ ﹁そうか・・・実は私にもはっきりとは分からんのだ﹂ ﹁隊長?﹂ ﹁あの時・・・あの男が言った言葉に感服したのは確かだ。主であ る孫策に対する絶対的な忠誠心に呉への愛国心・・・更に仲間や民 を想う心に戦う者としての覚悟・・・どれをとっても敵ながら素晴 らしいものだ﹂ ﹁・・・・・・それは私も感じました・・・・・・私自身もあの方 には敬意を持てます﹂ ﹁うむ・・・あの男が支える呉という国・・・孫家の理想・・・・・ ・それもまた・・・一つの平和なのだろう・・・だが﹂ ﹁?﹂ 私は立ち上がり、腰掛けていた木にもたれ掛かる。 ﹁真に平和を望むのなら・・・なぜ我等の陣営に来なかったのかが 守るものだから従え という権化がまた現れ 血筋があるから他の者より 分からん・・・劉備や孫策のようなやり方では・・・・・・いずれ ・・・ はまた第二の十常侍や宦官が現れる。 優れている る﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁血筋や家系に囚われることなく、皆が生きる為に努力する乱世の 先・・・一人一人が力を尽くす世を作る・・・・・・﹂ ﹁隊長・・・・・・﹂ ﹁・・・だからこそ・・・私は誓った。私を迎え入れて頂いた曹操 殿や・・・・・・今は亡き曹嵩様が望まれた世を実現すると・・・ あの男に私の真名を預けたのは、その意思表示なのかもしれぬな﹂ ﹁・・・・・・・・・そうかも知れませんね﹂ ﹁・・・凪・・・・・・これからも共に曹操殿を支えていくぞ﹂ 895 そういいながら私は凪に振り返り、右手を差し伸べる。 ﹁私や夏侯惇殿、夏侯淵殿達と共に曹操殿を支え、必ずや我等の理 想を成し遂げて見せる。だから・・・・・・共に戦ってゆくぞ﹂ ﹁・・・・・・・・・はい‼﹂ 凪は私の手を取り、引いて立ち上がらせる。凪は私に取って副官で もあり、仲間であり、戦友だ。彼女達となら必ずや・・・・・・曹 操殿の理想を実現するだろう。必ず・・・・・・・・・・・・。 ところ変わって、繁華街の一角にある店では・・・。 ﹁やっぱりここのお店のお茶は最高なの♪﹂ ﹁せやなぁ♪おまけにうちが欲しかったからくりの道具も見つかり よったし、今日はついとるで♪﹂ ﹁あっ♪沙和が行きたかったお店の新作が載ってるの♪﹂ 沙和と真桜が茶を飲みながら仕事をサボっていた。沙和は阿蘇阿蘇 の新刊を読みながら茶を飲み、真桜はからくりを作る際の工具を眺 めていた。 これが休日だったら何の問題は無いが、この日でこの時間帯は執務 896 の真っ最中だ。 ﹁ねえ真桜ちゃん♪これから新作の服を買いに行かないなの?﹂ ﹁服かぁ・・・・・・ウチはあんま興味は無いんやけど・・・・・・ たまにはええな♪﹂ ﹁じゃあ早速行くなの﹁何処に行く気だ?﹂もっちろん新しい服を 買いに・・・・・・あれ?﹂ ﹁なんや沙和、どないかしよったん﹁それは私も聞かせて貰いたい ものだな﹂・・・・・・・・・﹂ 2人はからくりの音の如く、店の前に目線を配る。そこには・・・・ ・・。 ちゃん ﹁﹁なあ・・・・・・真桜・・・沙和﹂﹂ ﹁﹁た・・・・・・隊長・・・凪﹂﹂ 阿修羅の如く、負の気配を出す私と凪の姿があった。 2人は顔が真っ青になり、冷や汗が吹き出していた。 ﹁二人とも・・・・・・お前達はなぜこのような場所で茶を啜って いるのか説明はあるか?﹂ ﹁あと、その書物と工具についてもそれは素晴らしき理由があるの か、聞かせて頂こうか?﹂ ﹁い・・・いやぁ∼・・・・・・ち・・・ちょっと休憩なの⁉﹂ ﹁せ・・・せやせや⁉ちょ∼っと休憩してから警邏に戻るつもりや ったんやで⁉﹂ ﹁ほぅ・・・・・・ならば亭主の目撃証言の三刻以上もいるのはど ういうことか?﹂ ﹁﹁ぎくっ⁉﹂﹂ 897 2人は夢中になり過ぎて時間の経過を忘れていたようだ。そのお陰 で私と凪が2人の分の仕事をする羽目になったのだ。 ﹂﹂ ﹁・・・・・・2人共、今月の給金三割減﹂ ﹁﹁えぇええええええ‼⁉ ﹁それと仕置き付きだ・・・凪﹂ ﹁さてと・・・・・・覚悟はいいな、2人共?﹂ ﹂﹂ ﹁は・・・あははははぁ・・・な・・・・・・凪ちゃん・・・何だ か怖いの・・・﹂ ﹁ちょ・・・な・・・・・・凪?﹂ ﹁猛虎蹴撃‼‼﹂ ﹁﹁いぃいいいいいやぁああああああああ‼⁉ 因果応報・・・・・・もしかしたらこの2人の為にあるのかもしれ ぬな。 このお仕置きの後、私は自腹で店の修理代を出したのは言うまでも ない・・・・・・・・・。 898 第118話:牙刀と凪︵後書き︶ 劉備軍撤退支援から帰還したライル率いるハンターキラーも交州に 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 到着した。そこでライルに旧袁術軍親衛隊が出迎える。 次回 [義妹の願い] 心優しい少女、ライルに祈願する。 899 第119話:義妹の願い︵前書き︶ 狼の義妹。義理の兄に祈願する。 900 第119話:義妹の願い 劉備軍の撤退支援を完了させ、クラウドとポーの2人を特別任務で 残した俺達はヴェアウルフに帰還。 IARに装備を交換すると交州に向かうCH 僅かな休息を取るとすぐに補給を済ませ、俺も火力重視で光学機器 を取り付けたM27 −53Kに乗り込み、すぐに交州へと向かった。 相棒からの通信によれば国境付近は完全に制圧して、北側から孫策 軍。南から交州正規軍の挟撃で反乱軍は敗走を重ねている状態だ。 交州の孫策軍駐屯地に到着するとすぐに本陣へと向かう。 ﹁ライル将軍‼益州での任務、ご苦労様でした‼﹂ ﹁ありがとう、孫策殿は中か?﹂ ﹁はい‼報告致しますので今暫くお待ちを‼﹂ そう言うと本陣前にいた衛兵が雪蓮殿に報告へと向かい、暫く待っ ていると先程の衛兵が息を上げながら戻ってきた。それで本陣の場 所だけ聞くと衛兵は休ませて、すぐに本陣へと向かう。 ﹁失礼しま・・・﹁おっかえり∼♪﹂やっぱり来た⁉﹂ 最早お約束となっている状況だ。俺が天幕に入った直後に雪蓮殿が 抱きついて来る。 ﹁待ってたわよ♪私のお婿さん♪﹂ ﹁ちょっ⁉し・・・雪蓮殿⁉だから胸が当たってますって‼あとお 901 婿さん⁉﹂ ﹁聞いたわよ♪左薬指に指輪を嵌めるのは天の国では婚約って♪﹂ ﹁・・・・・・誰から聞いたんですか?﹂ ﹁アレックス♪﹂ ・・・・・・あの野郎・・・・・・。後で覚えてやがれ・・・。 相棒に復讐を考えていると今度は背中に誰かが抱きついて来た。最 初はシャオかと思ったが、よく考えたらシャオは建業で祭殿と亞莎、 思春と共に留守を任されていた筈だ。 気になったので振り向くとそこには・・・。 ﹁兄様∼♪会いたかったのじゃ♪﹂ ﹁み・・・美羽⁉﹂ いたのは俺達ウルフパックの義妹である美羽だった。 ﹁ちょ⁉なんで戦地に美羽がいるんだ⁉﹂ ﹁だって兄様が心配じゃったのじゃ・・・﹂ ﹁駄目じゃないか美羽⁉こんな危ない場所に着いて来ちゃ‼﹂ 俺がそういいながら美羽を叱ると、美羽は体をビクッとさせて、俺 の目を見ると表情をやがて怯えにさせていき、涙目になっていった。 ﹁だ・・・だって・・・・・・ひぐっ・・・妾が・・・大好きな兄 様が・・・ひぐっ・・・心配・・・じゃったから・・・ぐずっ・・・ ﹂ ﹁お・・・おい・・・・・・美羽?﹂ ﹁ぐずっ・・・兄様ぁ・・・・・・ううぇ・・・うぇえええええん 902 ‼⁉ ごめんなさいなのじゃああ‼⁉ ﹂ 怖かったのか、大泣きを始めてしまった美羽に俺はアタフタしてし まう。別にそんなつもりじゃなかったのだが・・・。 天幕にいた雪蓮殿や蓮華殿、冥琳殿、穏、明命、千里、美花、優龍、 百合はそれぞれの反応を見せ始める。 ﹁あ∼♪美羽を泣かせた∼♪﹂ ﹁はぁ・・・ライル、心配なのは分かるが怖がらせてどうする?﹂ ﹁あまり幼い子を泣かすのは関心しないな﹂ ﹁あら∼。ライルさんってもしかしたら可愛い女の子を虐めたくな る性格なのですかぁ∼♪﹂ ﹁はぅあ⁉ら・・・ライル様にそんな性癖が⁉﹂ ﹁・・・ライル様・・・まさか朱里にも同じことを・・・?﹂ ﹁ライル将軍・・・・・・それは某に対する宣戦布告としても宜し いのか?﹂ ﹁はぅう⁉み・・・美羽ちゃん⁉泣いちゃ駄目でしゅ‼﹂ ﹁あ・・・兄上が望まれるのでしたら・・・その・・・・・・﹂ ﹁こら・・・・・・話が変な方向に進んでる。それから雪蓮殿、あ からさまに楽しまないで下さい。それと百合も服を脱ごうとするの はやめなさい‼嫁入り前だろ⁉﹂ ・・・・・・なんだ?・・・この状況は・・・・・・。 俺は泣き続ける美羽を何とか宥め、今は椅子に座る俺の膝に座らせ ている。かなり機嫌を直してくれたようであり、先程の大泣きとは うって変わって上機嫌だ。 雪蓮殿も俺の膝に座らろうとしてきたが、冥琳殿と蓮華殿によって 阻止された。因みに後から七乃と三角力隊の小隊長数人がやって来 903 て、美羽を泣かせたということで先程からジト目で見られている。 ﹁そ・・・それで・・・・・・なんで美羽を連れて来たんですか?﹂ ﹁はい、それに関しては私達が説明した方がいいでしょう。いじめ っ子のライルさん♪﹂ ﹁そうどすなぁ∼。ウチ等が言いはった方が分かりやすぅてよろし ゅうおもいます。いじめっ子のライルはん♪﹂ ﹁だから俺は虐めてないって・・・七乃、八枝﹂ 俺は美羽の頭を撫でながら2人に返事する。八枝という女性の名前 は雷薄だ。 腰にまで伸びる黒のロングヘアをマーメイドウェーブにして、小柄 だが胸が星や恋なみにデカく、七乃の来ているスチュワーデスに似 た服に制帽を被ったのが雷薄の姿だ。京都弁で喋るのは失笑したが・ ・・。 ﹁まあ、ライルさんにお嬢様が会いたかったというのもあるんです が、出征前に届いた報告で連れてくるしかなかったんですよ﹂ ﹁情報?﹂ ﹁ああ、反政府軍側に旧袁家に組みしている輩は知っているな?﹂ 冥琳殿に尋ねられると俺は無言で頷く。 ﹁実は寿春の戦いで殆どがウチ等と一緒に雪蓮はんの処に移ったん どすが、狸や狐のお人等がその少し前に交州に派遣されとったんど すえ﹂ ﹁つまりは・・・交州に部隊を派遣した時に俺達が反乱したって訳 か?﹂ ﹁そうどす。それでえらい厄介になっとるんどすわ﹂ ﹁厄介だと?﹂ 904 ﹁その・・・実は・・・・・・・・・私達の仲間・・・家族がいる んです﹂ 七乃の言葉で俺を除く全員が表情を暗くするが、一番辛そうなのは 美羽だった。 ﹁兄様・・・・・・﹂ ﹁美羽、辛いなら私が言うわ﹂ ﹁雪蓮・・・﹂ 雪蓮殿が俺の膝に座っていた美羽を抱きかかえて七乃と雷薄の側に そっと下ろした。 ﹁交州反乱軍にいる旧袁術軍を指揮してるのはね、紀霊っていう武 将よ﹂ 三国志の中でも謎に包まれた人物はたまにいるが、その中でも有能 であったのにも関わらずあまり記されていないのが紀霊だ。 を間に受けたのだろう﹂ ﹁紀霊は美羽を実の娘みたいに大事にしてたからな。我等が流した 袁術殺害 ﹁紀霊殿は我等にも親しく接して来た御仁だった。だからそれを裏 切ったと勘違いしているようだ。偽情報が仇となったか・・・﹂ ﹁はぃ∼。あの人は武や美羽ちゃんを大事にする気持ちは凄いんで すけど、考えるよりも行動が先に出てしまうんですよねぇ∼﹂ 極度の親バ なんというか・・・・・・冥琳殿と蓮華殿、穏の説明で大体の人物 像が想像出来た。 というところだろう。 俺が直感で感じた紀霊の人物像は一言でいい纏めると カ猛将 905 ﹁やけど、もしあのお方を説得出来申したら役に立つはずどすぇ﹂ ﹁妾も・・・紀霊・・・・・・九惹︵くじゃ/紀霊の真名︶を助け て欲しいのじゃ‼じゃから兄様‼﹂ そういいながら美羽は俺に抱き付いて来た。身長差があり過ぎるか ら性格には足にだが・・・。 ﹁じゃから兄様ぁ‼九惹父様を助けて欲しいのじゃ‼妾はもう‼家 族がいなくなるのは嫌なのじゃ‼﹂ ﹁美羽・・・﹂ 必死に願う美羽の祈願に全員が言葉を失う。こんな小さい女の子が ここまで必死になって頼んで来ているのだ。 俺は美羽の頭を撫でながら軽くしゃがむ。 ﹁・・・分かった﹂ ﹁ほ・・・本当かえ?﹂ ﹁ああ、美羽の家族なら俺の家族みたいなものだ。それに今は少し でも仲間が欲しい。雪蓮殿達が認める程の実力ならば、味方に出来 れば頼もしいだろう﹂ ﹁ふふっ♪そう言うと思ったわライル♪ねえ冥琳?﹂ ﹁ああ、それでこそライルだ。穏﹂ ﹁はぃ∼。九惹さんの場所は明命ちゃんが調べてくれてますよぉ♪﹂ ﹁はい‼九惹様や旧袁術軍は奠邊府という場所に集結してます‼﹂ ﹁位置は分かるか?﹂ ﹁はい‼ここです‼﹂ 俺はポケットから交州一帯の地図を取り出して明命に見せる。する と明命が指差した場所に俺は言葉を失った。何しろそこはかつて強 906 大国だったフランスが徹底された戦術の前に大敗北した土地・・・・ ・・。 ﹁・・・・・・・・・ディエンビエンフー・・・﹂ 907 第119話:義妹の願い︵後書き︶ 益州に入った劉備軍。着々と成都への道を進んで行き、20以上も ある支城の一つを制圧。オブザーバーとして派遣されたクラウドは 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 軍神と会話を交わす。 次回 [形見] オーストラリアの暗殺者。形見の内容を口にする。 908 第120話:形見︵前書き︶ 狼の暗殺者。義の刃と語らう。 909 第120話:形見 劉備軍が益州に入って暫くが経過した。北郷君と劉備ちゃんが率い る軍勢は順調に成都に向けて進軍する。しかし、劉漳軍も黙っては いない。 進路上には支城が20以上もあり、劉漳を見限って無血開城する支 城もあれば頑なに抵抗する支城などと様々だ。 4つ目の支城であるこの城を陥落させ、降伏した兵を併合した劉備 軍はその日の進軍を停止。オブザーバーとして同行している俺、ク ラウド・レインディー二等軍曹は城壁に腰掛けながら武器の手入れ をしていた。 ﹁ふぅ・・・こんなもんだな。次だ﹂ 研石を行ない、椿油を塗って手入れを終えた状態のグルカナイフを 鞘に納めると、もう一本のグルカナイフに取り掛かる。 グルカナイフは日本の鉈と同じで、定期的に椿油を塗って、棒砥石 を使って研がなければならない。 これを編み出したグルカ人に敬意を払う為に定期的に手入れを念入 りに行なっている。 そして2本目のグルカナイフの手入れを終えて出来を確認する最中、 後方から気配がしたのでグルカナイフを鞘に納めるとUSP,45 を構えて飛び上がる。 910 ﹁ク・・・クラウド殿⁉﹂ ﹁関羽か・・・脅かさないでくれ﹂ 龍刃隊 が いたのは俺の反応に驚く関羽だ。手には彼女の得物である青龍偃月 刀。 よく考えれば確か彼女が隊長を務める一刀君の親衛隊 周辺にいた残党を駆逐していた。恐らくはその帰りで俺を見かけた のだろう。 USP,45をレッグホルスターに戻しながら彼女を伺う。 ﹁いま帰りかい?﹂ ﹁ああ、辺りにいた敵はあらかた片付けた。ひとまずはご主人様や 姉上に報告するところだったが、クラウド殿を見つけて・・・﹂ ﹁そうか・・・﹂ ﹁それでクラウド殿は何をしていたのだ?﹂ ﹁天気がいいし、やることが無かったからな。武器の手入れだよ﹂ 尋ねながら関羽は偃月刀を立て掛けて俺の隣に腰掛ける。しかし見 れば見る程に綺麗な黒髪にしっとりとした美しい肌だ。 中佐が美髪嬢と呼んでいたが頷ける程の美少女だ。俺はそれに見惚 れていると、関羽が話しかけて来た。 ﹁クラウド殿、如何されたか?﹂ ﹁いや・・・・・・可愛いなぁっと思ってね﹂ ﹁なっ⁉か・・・・・・可愛いなどと⁉ば・・・バカにしないで下 さい‼﹂ ﹁いや・・・バカにはしてないんだが・・・・・・﹂ ﹁全く・・・・・・ご主人様と同じことを仰るなんて・・・私は武 人なのですから可愛いなどというのは不要です﹂ 911 ﹁そうか?俺達がいた国じゃ、関羽位の年の女の子はお洒落や恋愛 に夢中なんだがな﹂ ﹁はぁ・・・・・・しかしクラウド殿やライルがいた世界はやはり 平和なのか?﹂ ﹁まあな・・・一応は平和は保っている場所もあれば半世紀以上も 続いてる紛争や内戦もあるな﹂ ﹁・・・・・・天の国も完全に平和なのではないのだな﹂ ﹁そうだな・・・﹂ ﹁クラウド殿はなぜ軍に入ったのだ?﹂ 関羽から軍に入った理由を聞かれ、俺はすぐに彼女に振り返る。 ﹁・・・言わなきゃダメか?﹂ ﹁いや・・・別にただ私が気になっただけだ。無理に話してくれる 必要はない﹂ ﹁別に大丈夫だよ・・・いいよ。話してあける﹂ そういうと俺はレッグホルスターの他に腰の辺りに取り付けている ヒップホルスターから一つの拳銃を取り出す。 ウルフパックでは採用されていない俺自身の私物でもあり、俺が大 事にしている宝だ。 外見はM45A1と似ている箇所があるがスライドストップやサム セーフティ、ハンマーの形状が違う。更に木製グリップは保っては FN ブローニング いるが傷だらけで、全体的にも細かい傷やすり減っている箇所が幾 つかある。 俺が大事にしている9mm口径のM1934 ハイパワーだ。 ﹁それは?﹂ 912 ﹁これは俺の国・・・・・・俺の親父の故郷の軍で使われていた拳 銃でな﹂ ﹁クラウド殿はライルと同じ国同士ではないのか?﹂ ﹁生まれた国は同じだけど親父は移民なんだよ。オーストラリアっ ていうこの国から遥か南に進んで、海を超えた先にある島国の生ま れだ﹂ ﹁大海を渡った⁉﹂ ﹁俺達の世界じゃよくある光景だからな。別に珍しいことじゃない よ﹂ まあ・・・海を渡るにはまだまだ年代が必要だがな。 ﹁俺の家は昔から男は軍歴を持つっていう伝統があってな。親父の 代まではオーストラリア軍で軍歴を重ねて行ったんだ。もちろん祖 父もな﹂ ﹁祖父?﹂ ﹁俺が最も尊敬してる軍人だよ。かつて世界を巻き込んだデカイ戦 争があってな。うちの祖父はたった1人で敵の侵攻を食い止めたり、 捕虜を敵陣から奪い取ったり、敵の拠点を破壊したりと大暴れした んだ﹂ 関羽の表情は半信半疑のようだ、まあ、分からなくはない。これは レインディー一族では伝説になっている程であり、尊敬はしている がどこまでが事実で何処からが偽りなのか、調べる術はなかった。 ﹁その戦争が終わってからも各地で発生した様々な戦争に参加して、 英雄と称されたが・・・・・・﹂ ﹁が・・・どうしたのだ?﹂ ﹁ベトナム・・・・・・この国の交州に当たる地帯で15年も続い た戦争で・・・・・・任務中に行方不明になったんだ﹂ 913 正直に言えば少し辛い話だ。生まれる前に祖父は行方不明になって、 親父もその時はまだ子供。顔を写真ではみたことはあるが、その写 真もいまやヴェアウルフの兵舎に数枚ある程度になってしまってい る。 ﹁この武器は・・・・・・親父から受け継いだ祖父の・・・たった 一つの形見なんだ﹂ そういいながら俺はスライド右側に目線を送る。そこには荒削りで the だ。 grandchild born some はあるが、あからさまな手彫りの文字がある。書かれている文字は・ ・・。 For day いつか生まれてくる孫の為に 関羽は俺の話に耳を傾けながら少し悲痛そうな顔をする。 ﹁俺が軍人になったのは、祖父みたいに立派な軍人になることと・・ ・足取りが少しでも分かるかと思ったからだ﹂ 軍人になった理由をいいながら俺はM1934をヒップホルスター に納め、グルカナイフを身に付けると工具一式を纏めて脇に抱える。 ﹁さあ、みんなの所に行こう。俺も用事があったのを思い出した﹂ ﹁あっ・・・・・・ああ・・・そうだな﹂ そういうと俺達は一刀君達の所へと足を運ぶ。 914 しかし本当に劉備軍はいい人達ばかりだ。俺の祖父の話にまるで自 分の事のように哀しくなってくれるのだから。中佐が目をかけるの も頷ける。 当面は彼等と共に戦うとしよう・・・・・・・・・。 915 第120話:形見︵後書き︶ 新兵鍛錬の後、牙刀は何時ものように自らの鍛錬に励んでいた。 そこに西涼攻略から帰還した司馬懿と彼の配下達が不穏な笑みを浮 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re かべながら歩み寄って来る。 次回 [龍心] 魏武の龍。武人としての志を見せる。 916 第121話:龍心︵前書き︶ 龍虎の下に鷹の目を持つ者たちが歩み寄る。 917 第121話:龍心 荊州の状態が安定し始め、新野の地を別の治安維持部隊に引き継い で、我等は洛陽へと帰還した。 現地の治安維持に関してはいきなりやって来た我等よりも長年もの 間、街の守備に就いていた荊州軍に任した方がいい。だから曹操殿 は最低限の武将を監視役に残しつつも現地の守備は彼等に任してい るのだ。 洛陽に到着した我等は大量の書類が待っていて、曹操殿への報告書 や新兵の鍛錬経過報告書、洛陽における警邏状況の報告書。真桜と 沙和の2人からの始末書と本当に大量だ。 全ての書類整理を4人掛かりで済ませ、各部署に提出していき、最 関へと向かい、沙和は買い物、真桜はカラクリ 後に曹操殿へ提出したらようやく3日間の連休が与えられた。 凪は鍛錬目的で虎 市場へと足を運んでいる。 そして私は特に用事など無かったので部屋にて仕事をしようとした が、やり始めた直後に曹操殿に見つかって休暇が終わるまで仕事す ることを禁じられてしまった。 そこで自主鍛錬を行おうと赤龍偃月刀を片手に鍛錬場へと足を運ん だ。 ﹁ふぅ・・・ふん‼﹂ 今朝方から朝食と小休止を挟みながら只管に素振りを行なう。素振 918 りは如何なる武芸の基礎中の基礎とされ、これを怠ると戦場で思い も寄らぬ事になりかねない。 周囲には私と同じく鍛錬に励む新兵や指導に当る指南役。掛け声と 怒鳴り声が響く中、私が一息つくと得物を片手に誰かが歩み寄って 来た。 ﹁相変わらず精が出るな、牙刀﹂ ﹁?・・・あぁ、お主か参刃﹂ 歩み寄って来たのは鍛え抜かれた筋肉に凪と同じく傷だらけの身体。 魏武の猛虎 と称され、 士載で真名は参刃。私と同じ時期に仕官した曹嵩様 まいやー 短髪の上に青巾を被った大男だ。 奴の名は鄧艾 より曹一族に付き従う最古参の武将で、 新たに作られた兵器や武器の試験運用を最前戦で執り行う技術試験 隊の隊長を務めている。 ﹁西涼から帰っていたのか?﹂ ﹁うむ、曹操殿への報告がてら李典殿に用事があったのだがな。今 日はいないのか?﹂ ﹁ああ、楽進は虎牢関に鍛錬で于禁は服を買いに、李典はカラクリ 市へと休暇を楽しんでいる。火急の用事か?﹂ ﹁そういう訳ではないが・・・この得物の感想を聞かせて欲しいと 頼まれていたので、報告書に纏めたのだが・・・・・・﹂ そういうと参刃は脇に挟んでいた竹簡を取り出して私に手渡す。 参刃は少し前まで大剣を使用していたが、西涼方面攻略前の戦で壊 れてしまい、それを聞いた真桜が試験運用も兼ねて新たに作り出し 919 た歩兵携行式攻城旋棍 破城旋棍 を渡していた。 長さ5尺︵中国で約165cm︶幅半尺︵約16.5cm︶もある 大型の旋棍で、両端に先端を尖らせた鉄を被せ、氣を流し込むこと で破城槌並の破壊力を有しているが、弱点は一目瞭然。 デカイ上に重さが100斤︵中国で約60kg︶もあり、参刃程の 大男で無ければ扱えない。 ﹁ならば私が代わりに伝えておこう﹂ ﹁任せよう。氣が使える拙者は使えるが一般の将兵では扱えん。大 量に設けるのは些か不向きであろうな﹂ ﹁承知した。李典にはそう言っておこう。彼奴が喜びそうな話だ﹂ ﹁忝い。李典殿には礼の品を後日改めて渡すとも﹂ ﹁異彩承知。奴にはカラクリ作業の工具が喜ぶだろう。店を教え﹁ 名高い武将同士が如何なる対話か?﹂・・・司馬懿殿﹂ 背後から話しかけられたので振り向くと、そこには西涼方面攻略を 子季。 任されていた司馬懿がいた。その右側には若くして司馬懿の副将ま でに上り詰めた鍾会 左側には同じく司馬懿の副将で、かつて西涼の錦馬超により反旗を 翻した王一族を討伐され、ただ1人の生存者であった王異だ。 ﹁これは司馬懿殿。お久しぶりであります﹂ 江東の銀狼 の得物を破壊するなど、 ﹁うむ、徐晃も元気そうだな。長坂橋での活躍は聞いている﹂ ﹁恐縮であります﹂ ﹁しかも・・・呉に付き従う 見事としかいいようがあるまい﹂ ﹁しかし彼奴を討ち取るには至りませんでした。結果的には劉備に 920 は逃げられ、ただ兵力を消耗しただけ。私の武が足りなかったばか りに・・・﹂ ﹁鄧艾も先の戦では見事な迄の戦果だった。魏武の猛虎は伊達では ないようだな﹂ ﹁某は任務を遂行したまで。褒められるものでもありません﹂ 司馬懿は我等を褒め称えるが、右側にいた鍾会は面白くなさそうな 表情でこちらを睨みつける。 ﹁ふんっ。たかが凡愚の分際で・・・﹂ ﹁鍾会。口を慎め﹂ ﹁しかし司馬懿様。劉備のような軟弱者と呉の野良犬を取り逃がす 徐晃も、実験動物みたいな鄧艾も、僕に比べたら対したことありま せん﹂ 司馬懿はあまり信用ならないが知略に関して私は認めている。考え は読めないが己の信念に従って動いているので一定の評価は出来る。 だが鍾会に関しては腹が立つ。私がこいつの鍛錬を担当したが英才 教育を受けたからと言って命令には従わない。 女だから従わないと自分勝手が過ぎる傾向があり、私はもちろん凪 達からの評価も最低だ。 ﹁鍾会、相変わらず貴様は己の事しか見えておらぬようだ。敵を見 下しているといずれ足元を掬われるぞ﹂ ﹁僕がそんな失態を犯すなんてあるはずはない。英才教育を受けた 選ばれし人間だからな。傷だらけの醜い女を部下にするお前とは違 う・・・﹂ 私は考えるのを止め、偃月刀の切っ先を鍾会に向けた。だがそれを 921 王異が寸での処で打撃武器の筆架叉で受け止める。暫くの睨み合い の後に渋々であるが偃月刀を下げてやった。 ﹁・・・次また同じことを口にすれば貴様の首を撥ねる﹂ ﹁・・・・・・負け犬が﹁やめぬか鍾会﹂・・・・・・﹂ 見かねたのか、司馬懿が鍾会を咎めに入った。 ﹁すまないな徐晃﹂ ﹁いえ・・・こちらこそ軽率な真似を・・・・・・しかし我が部下 を侮辱するのでありましたら容赦致し兼ねます﹂ ﹁心得よう。それはそうと、今日はお前達に話がある﹂ ﹁何でしょう?以前の件に関しましてはお断り致した筈ですが・・・ ﹂ ﹁察しがいいな。それで・・・考えてくれたか?﹂ 司馬懿の話とは、私には警邏隊。参刃には試験部隊を脱退して司馬 懿の私兵部隊に入るか否かというものだ。 私兵部隊に入れば其れ相応の地位や待遇を保証。希望があるなら部 下達も招き入れると言っている。 一般兵なら願ったり叶ったりの条件だが、私達は曹操殿に忠誠を誓 った身だ。答えが変わることなどありはしない。 ﹁・・・以前にも仰った通り、我等は曹操殿に忠誠を誓った身。鞍 替えはお断り致します﹂ ﹁私もです。軍人としての責務もあります故、転属は行えません﹂ ﹁ふむ・・・・・・まあよい。今日のところは鍾会の非礼もある。 出直すことにしよう。気が変われば何時でも声を掛けよ。行くぞ、 鍾会、王異﹂ ﹁御意﹂ 922 ﹁分かりました﹂ そういうと司馬懿は来た道を引き返し、鍾会と王異も後に続いた。 ﹁・・・・・・牙刀。大丈夫か?﹂ ﹁心配無用だ。されども・・・﹂ 仲達・・・・・・・・・奴は危険だ。警戒を怠らぬ方が ﹁うむ・・・・・・某も同じことを考えていた﹂ ﹁司馬懿 よいだろう﹂ そういいながら我等は司馬懿を見る。彼奴の野心は恐らくは曹操殿 を上回る。警戒に越したことはないであろう。 曹操殿に仇なすとあれば容赦無く討ち取るだけだ。そう決心しなが ら私は参刃も加えて鍛錬を再開させるのであった・・・・・・。 923 第121話:龍心︵後書き︶ 孫策軍による交州平定は佳境に入った。雪蓮率いる本隊が敵本拠を 攻撃する中、ライル率いる孫呉海兵隊はディエンビエンフーに集結 している旧袁術軍を降伏させる為に向かう。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re そこでライルは猛将と出会う。 次回 [袁術の三叉槍] 少女の義親がライルに襲い掛かる。 924 第122話:袁術の三又槍︵前書き︶ 少女の猛将。狼に襲い掛かる。 925 第122話:袁術の三又槍 戦局は俺達に傾いていた。孫策軍と孫呉海兵隊による北部戦線と交 州正規軍の南部戦線は確実に反乱軍を討伐していき、交州の都であ る河内を奪還。 開戦から二ヶ月で南北の戦線が合流を果たした。これにより反乱軍 は分断され、実質の主力軍であった山越は壊滅。反乱軍も次々と降 伏または殲滅され、鎮圧は時間の問題だった。 俺達ウルフパックは雪蓮殿と冥琳殿の指示を受けてから旧袁術軍部 隊の武装解除を行なうべく、ディエンビエンフーへと急行。 現地に到着すると敵は俺達が来るのを待ち構えていたようであり、 有利な籠城をせずに野戦を行おうとしていたのだ。 これが普通の賊連中だったら遠慮なく一網打尽にするところだが、 敵は旧袁術軍の中でも精強な紀霊率いる本隊だ。戦力に加える必要 がある上に美羽との約束もある。 ひとまずは降伏勧告を行なったが敵の返答は・・・。 くたばれ ・・・まるでバルジの戦いで有名な第101空挺師団長代理マコー リフ准将だな・・・・・・・。 仕方が無いので俺達は一度だけ敵と交戦して、敵前衛を排除したら 926 再び降伏勧告を行なうことにした。 そして俺もハルバート隊を率いて敵の中央に突撃を敢行していく。 ﹁連携を取りながら戦え‼油断すると殺られるぞ‼﹂ ﹃了解‼﹄ ﹁11時方向に敵弓兵‼撃ち込め‼﹂ ﹁吹っ飛べ‼﹂ 分隊のHK416+M320A1を装備した部下に敵の排除を命じ、 すぐにM441が撃ち込まれる。 敵は俺達を目撃したことでただ只管に仕掛けてくるが、勢いが凄ま じい。事実を知らない奴等から見れば俺達は確かに仇だから当然だ ろう。 IARを構え、A ACOGを覗き込んで照準を合わせて発泡す だが殺られる訳にはいかないので、俺もM27 N/PVQ−31B る。 ﹁くそ⁉なんて奴等だ‼﹂ ﹁こいつら化け物か⁉どんだけ撃ち込んでも向かって来やがる‼﹂ ﹁そりゃそうだ‼こいつ等は美羽ちゃんが生きてるなんて知らない んだ‼﹂ ﹁出来るなら殺したくは無いが仕方が無い‼・・・・・・左翼から 敵騎兵‼﹂ 本当にキリが無い。加えて地の利に関しては俺達よりも向こうが上 だ。火力ではこちらが圧倒的に上であっても相手は死に物狂いで俺 達を皆殺しにしようとしている。 その執念は鬼気迫る。向かってくる敵兵を倒しながら俺はインカム に左手を伸ばす。 927 ﹁ウルヴァリンからストーム‼タンゴリーダーの場所を確認出来る か⁉﹂ <こちらストーム。レイヴンで周囲を観測中ですが、数が多すぎる ので特定不能です> <3−3からウルヴァリン‼中央からそちらに単騎で急速接近中の 敵を確認‼まもなくでそちらに着きます‼> 通信にあった方角を見ると確かにこちらへ単騎で向かってくる敵が いたが、その男が醸し出す気迫に俺は驚かされた。しかしすぐに現 IARの照準を騎乗してきた敵に合わせるが、 実に戻り、敵の攻撃を横に転がりながら回避する。 回転しながらM27 その姿に息を飲んだ。 身に付けている鎧は古代ローマで装着されたロリカ・セグメンタタ と呼ばれる細長く切られた鉄製の板金を重ねて構成されている鎧に、 その下に見えるのはロリカ・ハマタと呼ばれるチェーンメイル。 眼 と手に持たれた三又槍。 兜からはみ出た長いくせ毛が混じった黒髪に加えて歴戦の猛者でし か持つことが許されない 七乃や八枝、美羽から聞かされている全ての特徴に一致している。 この男こそが・・・。 ﹁俺は袁術軍武将の紀霊だ‼貴様が銀狼だな⁉﹂ この男こそが、美羽が父と呼んでいる猛将紀霊。 ﹁・・・・・・あぁ。そうだ﹂ ﹁貴様と裏切り者の孫策が殺した袁術様の仇が‼ここを貴様等の墓 928 場にしてくれる‼﹂ そう叫びながら紀霊は素早く馬から飛び上がり、俺に三又槍で仕掛 けてくる。 紀霊が持つ三又槍には刃全てに返しがあり、一度でも突き刺さった ら肉を持っていかれるだろう。 目にも止まらない素早い刺突を俺はM27を背中に預けて、仮の装 備として身に付けていた呉鈎二型を抜刀して受け流す。 ﹁うらぁああああああ‼‼﹂ ﹁くっ⁉なんて馬鹿力だ⁉﹂ 奴の身体付きからして力はかなり強いと予測はしていたが、受け止 める度にくる振動はかなり来る。こんな攻撃を一々受け止めていた ら骨を持っていかれそうな位に強力だ。 ﹁どうした⁉その程度の力しか持たぬクセに我が主を手に掛けたの か⁉﹂ ﹁紀霊‼﹂ ﹁貴様がその名を呼ぶなぁあ‼﹂ 防戦一方になり、奴は更に攻撃を強める。だがこのままでは本当に 殺られかねない。俺も反撃を開始して呉鈎二型を振るう。 いきなりの反撃で紀霊は刺突をやめて後方に飛び上がる。だがすぐ に俺も距離を詰めて薙ぎ払う。 ﹁やるではないか‼殺し甲斐があるぞ‼﹂ 929 ﹁ちぃ‼戦闘狂が‼﹂ 本当にアキレウスもしくはグラディエーターを彷彿とさせる男だ。 俺が仕掛けると三又槍で防いで反撃。長さを突いて体術を行なうも 柄の長さを活かされて塞がれ、反撃で蹴りが来る。 七乃からの話によればこいつは強さを求めてシルクロードを渡り、 古代ローマで義勇兵として実戦を潜り抜けて帰国。 その全ての技が古代ローマで鍛えられた確かな物。俺が戦ってきた 中でも実力はかなり上に食い込んでくるだろう。 有利と思えば逆に不利になったり、不利から逆転して有利になった りと一進一退の激しい攻防戦が繰り広げられる。 ﹁はぁ・・・はぁ・・・﹂ ﹁はぁ・・・はぁ・・・﹂ 斬り合いは既に60合くらい続き、俺と紀霊は息を上げているが、 それでも切っ先を向けたままに保つ。 ﹁はぁ・・・はぁ・・・く・・・・・・負けてたまるか・・・み・・ ・美羽様を殺した奴に・・・﹂ ﹁はぁ・・・何故だ・・・﹂ ﹁?﹂ ﹁何故そこまで・・・・・・あの子に忠義を尽くす・・・お前ほど なら何処にも迎えいれ﹁知った風な口を聞くな‼‼﹂・・・﹂ 俺が口にしようとしたら、いきなり紀霊が怒声を発しながら仕掛け 930 て来た。素早く反応して攻撃を受け止め、力くらべに発展する。 ﹁貴様に何が分かる‼俺を救ってくれたお方を殺した貴様に‼﹂ ﹁くっ⁉・・・何の話だ⁉﹂ ﹁力を求め国を出て、帰国した俺を煙たがる連中のせいで俺は居場 所を無くした‼﹂ 感情が極限にまで高まったのか、猛攻を仕掛けながらも叫び出す紀 霊。 ﹁官軍は俺を気違いと見下し、同調した民は俺を化け物扱い‼力を 誰からも認められず、飢え死にし掛けた処を助けて下さったのが美 羽様だ‼﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁あの子は見ず知らずの俺を迎え入れてくれた‼あの子は俺に居場 所をくれた‼あの子は俺を父と慕ってくれた‼﹂ 少しだけ隙が出来て、槍を突き出した瞬間に俺は身を屈めて奴を蹴 り飛ばす。奴は地面を数回ほど転がりながらも、やがて腹を押さえ ながら立ち上がる。 どうしたのじゃ?お腹空いたのなら妾の処に来るのじゃ♪ ︵美羽様・・・︶ にょほほ♪紀霊は面白いのじゃ♪妾の処にいて欲しいのじゃ♪ ︵美羽様・・・︶ むにゃむにゃ・・・・・・九惹父様ぁ・・・大好きなのじゃ・・・ ﹁美羽様・・・・・・うぉおおおおおお‼‼‼﹂ 今までにない気迫を吐き出しながら奴は三又槍を構えて突っ込んで 931 きたが、怒りのあまり防御が疎かになっている。 すまない・・・美羽・・・約束を守れない兄貴を許して欲しい。 これ以上の戦闘を回避する為、俺は呉鈎二型を構え直し、奴が槍を 突き出した瞬間に喉を斬ろうとした瞬間・・・・・・。 ﹂﹂ ﹁やめるのじぁ‼‼﹂ ﹁﹁‼⁉ 切っ先が奴の喉を貫通しようとした瞬間に、戦場には不釣り合いで ある子供の叫び声が鳴り響き、俺と紀霊は発信源へと視線を送る。 そこにいたのは、七乃と八枝の2人に連れられて駆け寄って来る美 羽の姿。 その突然の状況に俺は驚かされるが、それ以上に驚かされたのは紀 霊だ。 ﹁み・・・・・・美羽・・・様・・・?﹂ ﹁もうやめるのじゃ九惹‼﹂ ﹁そんな・・・・・・だって・・・美羽様は殺されたと・・・﹂ ﹁九惹さん・・・それは偽りの情報なんです﹂ ﹁七乃・・・八枝・・・﹂ 死んだ としてくれたんどすゎ﹂ ﹁孫策はんとライルはんは美羽様を古狸から救ってくれはって、わ て等を守る為に表向きで ﹁美羽様を・・・・・・救った・・・?﹂ ﹁・・・・・・そうだ。俺達は美羽を袁家の人間ということを利用 して私服を肥やしている奴等を討伐して救い出し、美羽を表向きで 死んだことにし、孫策軍に保護させた﹂ 932 危険は感じられないと判断した俺は呉鈎二型を納め、少しだけ距離 を置きながら成り行きを話し始める。 すると美羽が紀霊の下に歩み寄り、紀霊もそれを混乱しながら姿を 見る。 ﹁じゃからもういいのじゃ・・・・・・元の妾の大好きな優しい九 惹に戻って欲しいのじゃあ・・・﹂ ﹁美羽様・・・・・・﹂ 生きていたこと、そして美羽の顔を見て紀霊は三又槍を落とし、美 羽を強く抱き締めた。 それも歓喜の涙を流しながらだ。 ﹁よかったぁ・・・・・・ほんとによかったぁ・・・美羽様ぁ・・・ 美羽様ぁ﹂ 美羽が生きていたと涙を流しながら喜び、周りにいた旧袁術軍兵士 も武器を手放して涙を流していた。一人の少女によって戦いが終わ った瞬間だった。 その後、周囲に展開していた敵は美羽が生きていたことを知ると武 器を捨てて潔く降伏していき、紀霊も俺達に降伏。ディエンビエン フーでの戦いは鎮圧され、反乱軍本隊も同時刻くらいに壊滅。 交州における戦闘は孫策・交州正規軍連合の勝利で終わり、俺達も 降伏した敵兵を連れて孫策軍本隊へと合流する為にディエンビエン フーを後にした・・・・・・。 933 第122話:袁術の三又槍︵後書き︶ 交州における戦いが終息した頃、益州で行動する劉備軍も戦を繰り 広げていた。次なる相手は黄忠。 しかし黄忠軍内部に不穏な動きを察知したクラウドとポーと一刀は 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 楽成城へと潜入する。 次回 [スニーキングミッション] 3人による潜入が開始される。 934 番外編:ハチャメチャバレンタイン︵前書き︶ 呉でバレンタインをやるとこうなった。 935 番外編:ハチャメチャバレンタイン 2月14日、バレンタインデーは世界各地で男女の愛の誓いの日と される。 この文化はまだ存在しないが、建業の厨房では・・・。 ﹁あちち・・・やっと仕込みが終わった﹂ 俺は昼食が終わった厨房を借りて、バレンタイン用の生チョコを作 っていた。女性が男性に対してチョコをあげるのは日本の文化であ り、一般的なバレンタインは逆で男性が女性にチョコやなにかしら のプレゼントを贈る。 だから俺は女性へプレゼントを贈るようにしている。なお、バレン タインに関してはまだ雪蓮殿達には教えていない。 ﹁次はこれを寝かして・・・﹂ 俺からのサプライズもあり、何しろ恥ずかしい。ラップを敷いたト レイに仕込みを終えた生チョコを流し込み、氷で敷き詰められた発 泡スチロールに寝かして、休憩も兼ねて3時間ほど時間を潰す。 そして固まった生チョコをトレイから取り出し、それをお湯で熱し た包丁で四角形に形を合わして切っていく。 ﹁パウダーは・・・・・・ココアにアーモンド、ココナッツ、カラ ーチョコにするか﹂ 936 そうすると四角形に切った生チョコの表面をお湯で少しだけ濡らし、 皿に分けてあった各種パウダーを付ける。 そうしないとすぐに剥がれてしまうのだ。後はこれを彩り良い感じ で用意していたパッケージに箱詰めすれば・・・。 ﹁よし‼完成だ‼﹂ バレンタインチョコの完成だ。 因みにチョコそのものには特別な技術はない。ジーンから取り寄せ た板チョコ4枚に生クリーム100g、砂糖小さじ一杯、隠し味に 赤ワインを少量だけいれる。 イズ ベストだ。出来上がった生チョコを手にして、と たったこれだけだ。しかしこういう物はシンプルなのが1番美味い。 シンプル ある事を思い出す。 ﹁さてと・・・・・・問題はこれをどうやって渡すかだな・・・﹂ 自分で思うのもなんだが、何とも女性みたいなことを考えている。 だがいざ渡すとしても誰だって考えてしまうものだ。 しかし何時迄も考えている訳にはいかない。 ﹁まっ・・・一先ずは歩きながらでも考えるとしよう。とりあえず し﹁ラ∼イ∼ル♪﹂うわっ⁉﹂ 食堂を出ようとした直前、何処からとも無く雪蓮殿が現れ、作った 生チョコを背中に思わず隠してしまう。 ﹁し・・・雪蓮殿・・・・・・いつの間にいたのですか?﹂ ﹁う∼ん・・・・・・勘♪ここに来たらなんかいい事があるって♪﹂ 937 相変わらずだが何とも脅威的的中率を誇る勘だ・・・。 ﹁ねえライル、食堂でなにしてたの?﹂ ﹁い・・・いえ・・・・・・ちょっと・・・﹂ ﹁あっ♪いまライル背中に隠したでしょ?﹂ ﹁ギクっ⁉﹂ 俺は雪蓮殿の指摘で視線を逸らしてしまう。 ﹁な・・・何の事ですか?・・・わ・・・私は何も隠してなどあり ませんよ?﹂ ﹁あぁ∼♪なんか怪しい‼見せてよ♪み∼せ∼て∼よ∼♪﹂ ﹁ちょっ⁉し・・・雪蓮殿⁉﹂ 背中に隠した生チョコを見るために雪蓮殿は俺に抱きついて来て奪 おうとする。俺は顔を真っ赤にしながら抵抗するが、彼女から発せ られる香りと密着していることで俺の身体に当たっている胸で思う ように抵抗出来ない。 ﹁むふふ∼・・・えいっ‼﹂ ﹁あっ⁉﹂ 一瞬だけ意識を削がれた瞬間に生チョコを奪われてしまった。 ﹁ふ∼ん・・・何だか甘い匂いがするわね♪中身って何なの?﹂ ﹁う∼・・・・・・﹂ ﹁ブーブー‼ここまで来たんなら教えて頂戴よ‼﹂ ﹁ぐっ・・・・・・な・・・生チョコという甘味です・・・﹂ ﹁なまちょこ?﹂ 938 ﹁はぁ・・・・・・雪蓮殿にあげる為のものだったんです。脅かす つもりだったのに・・・﹂ ﹁私に?﹂ 雪蓮殿の問いに俺は頷き、暫く彼女を見る。すると彼女は目を輝か せながら俺に再び抱きついて来た。 ﹁嬉しい‼ありがとうライル‼﹂ ﹁だっ⁉だからいちいち抱き付いて来ないで下さい⁉﹂ ﹁じゃあじゃあ♪お礼に私から熱∼い口付けを﹁何をするって?﹂ ギクっ⁉﹂ 雪蓮殿が顔をひきづりながら振り向くと、そこには青筋を立て、何 やら背後に筋肉ダルマの影が二つ見えるような気がする冥琳殿がい た。 雪蓮殿はもちろんだが、本音を言えば俺も怖い。 ﹁お前はまた執務室から抜け出して、ライルを誘惑するなんてな・・ ・﹂ ﹁・・・って・・・・・・また仕事をサボってたんですか?﹂ ﹁あ・・・・・・あははははは・・・ち・・・ちょ∼っと休憩を﹁ ﹁同じ理由が通じると思うのか︵思いですか?︶﹂﹂・・・ごめん なさい﹂ ﹁全く・・・・・・それで何を持っているのだ?﹂ ﹁ライルからの贈り物♪﹂ そういうと冥琳殿がそれを見ながら俺に話しかけてきた。 ﹁ライル、朝から何かを作っているかと思ったらこれを作っていた のか?﹂ 939 ﹁え・・・ええ・・・・・・まぁ・・・﹂ ﹁それで・・・贈り物とやらは雪蓮にだけか?﹂ ﹂ ﹁うっ・・・・・・・・・はぁ・・・分かりました・・・直ぐに作 って持って行きます・・・﹂ ﹁うむ、頼むぞ。さあ雪蓮・・・戻るぞ﹂ ﹁いたたたた⁉だから耳を引っ張らないで∼‼⁉ もはや定番の連行になっているな・・・・・・。俺は無線でジーン に材料の追加を進言して冥琳殿の分を作り、それを渡した直後にほ ぼ全員に知れ渡り、結局は蓮華殿やシャオ達の分、加えてジーンの 分まで作る羽目になってしまった。 まあ・・・雪蓮殿に渡せただけでも良しとしよう・・・・・・。 940 番外編:ハチャメチャバレンタイン︵後書き︶ 次回から本編に戻ります。 941 第124話:スニーキングミッション︵前書き︶ 敵地への潜入。人質を何としても救い出す。 942 第124話:スニーキングミッション 劉備軍は順調に成都にむけて進軍していく。道中で合流した敵部隊 を吸収していき、現段階での兵力は5万に成長。現在も増強傾向に ある。 そして15箇所目の支城である楽成城へと軍を進め、俺とクラウド、 それに一刀君の3人で潜入していた。 ﹁目標の位置は分かっているか?﹂ ﹁ああ、大体の場所は把握している﹂ 今から一週間前に武官と文官が降伏してきて、とある情報を齎した。 漢升は劉璋を見限り、劉備軍に降伏するつもりだ その情報とは、楽成城の城主で弓の名手である後の五虎大将軍で後 将軍となる黄忠 ったが、成都から派遣された韓玄、郭石、区星という武官がそれに 気付き、黄忠の子供を人質にして無理やり戦わせているという。 当初は罠の可能性も指摘されたが、逃げて来た民からの情報に加え て武官と文官の助け出して欲しいという必死な頼みに桃香ちゃんと と・・・。 一刀君は決断した。 救い出す そこで俺達は一刀を引き連れて楽成城へと潜入。桃香ちゃん達が外 で引きつけている間に人質を救出。クラウドと一刀君が馬で脱出し て俺が単身でそのクソッタレ野郎共を血祭りに上げる。 943 だがその前に見つかったら話にもならないので俺達はひとまず旅芸 人の服装で潜入している。 馬車には俺達の得物とサプレッサーとエイムポイントT−1、フォ アグリップ、AN/PEQ−16を装備させたMP7A1とUSP, 45を隠している。 そして俺達は一週間の情報収集の後、人質の居場所を特定して陽動 攻撃が行なわれる日に行動を開始。 敵がそちらに注意を向いている隙に救い出すという流れだ。 ﹁・・・・・・ポーさん﹂ ﹁なんだい?﹂ ﹁これ・・・着替えてもいいですか?﹂ ﹁そんな時間はないだろ?なぁ、クラウド♪﹂ ﹁それはいえてるぜ。舞姫様♪﹂ 俺達は旅芸人の格好の上にタクティカルベストを身につけて、横に は女性がいた。 その格好は赤を主体とした和服に左目を隠した黒の長髪。帯に日本 刀を差している美人だ。 なお、彼女の名前は・・・・・・。 ﹁・・・頼みますから名前で呼んで下さい・・・女形の服って恥ず かしいんですから・・・﹂ ﹁ははっ・・・悪かったって。一刀君﹂ ﹁しかし・・・君って本当は女じゃないのか?﹂ ﹁俺は男です‼﹂ 944 言わなくても分かるが、この美女は日本文化の歌舞伎の一つである 女形の格好をした一刀君だ。 南郷大尉が言っていた。北郷一族と南郷一族の男は修行として和の 心を理解するべく、女形で舞いをするらしい。 しかしまさかここまで似合っているとは思わなかった。 特にこの格好を見た桃香ちゃんや関羽は思わず鼻血を出して気を失 い、はわあわふわ軍師三人衆は妄想に意識が飛び、霞と星は襲い掛 かろうとして、他の女性陣達は何だか自信を無くしたようだ。 ﹁まぁ、冗談はさておき・・・・・・人質はこの先にある空き家・・ ・大胆にも城の近くで監禁されているようだ﹂ ﹁黄忠の城の目と鼻の先にですか?﹂ ﹁灯台下暗しという奴だ。劉備ちゃん達が陽動撹乱しているから注 意はどうしてもそっちに向けられるからな。あと黄忠も必死だろう ﹂ 確かに自分の子供が人質にされたら誰だって必死になる。その人質 が無事に解放されるという保証はないし、何よりもこんな卑劣な手 段を用いる奴等だ。 口封じで黄忠もろとも逆賊として殺害する可能性が極めて高い。 ﹁しかし黄忠の子供とはな・・・ということは黄叙になるか﹂ ﹁この世界でもやっぱり女なのかな?﹂ ﹁・・・でしょうね。今までで性別が同じだったのは諸葛謹さんに 神医、丁奉さん、それに徐晃くらいでしたから・・・﹂ ﹁民の情報では黄忠も淑やかな女性ということだからな。しかし民 にも兵にも慕われる心優しい御仁・・・・・・一度会ってみたいな﹂ 945 ﹁救出して韓玄達を駆逐すれば会えますよ﹂ ﹁そうだな・・・・・・・・・隠れろ。目標の建物だ﹂ 路地裏に隠れながら様子を伺う俺達。その視線の先にある空き家の 前には武装した見張りが数名。呑気に雑談をしてやがる。 ﹁あの建物ですか?﹂ ﹁ああ、昨日の時点で中に子供がいるのを確認している。それにあ んな場所に見張りを立てるなんて何かがあるとさか言いようがない だろ?﹂ ﹁見張りは3人か・・・内部にも何人かいるだろう﹂ ﹁どうします?﹂ 挨拶 してな﹂ ﹁こちらから尋ねるんだ。入口から入らないと失礼だろう?もちろ ん入口前の連中にも そういうと俺はMP7A1と背中に預けている多節棍の百足を軽く 叩く。するとクラウドもMP7A1を構え、一刀君も抜刀の用意を する。 ﹁一刀君。君が先に行って奴等を誑かしてくれないか?﹂ ﹁はぁ・・・・・・分かりました﹂ 溜息を吐きながら一刀君は見張りのところへと歩き出す。一刀君の 姿を見つけた敵兵は何の警戒もせずにナンパを始める。 ﹁おい、見ろよ﹂ ﹁なにがだ・・・・・・うひょー‼﹂ ﹁凄え美人じゃねえか⁉﹂ ﹁今日は兵隊さん﹂ ﹁こんな場所にあんたみたいないいとこの嬢ちゃんがどうしたんだ 946 い?﹂ ﹁連れを探していまして・・・・・・知りませんか?﹂ ﹁そんな連れなんて忘れて俺等と遊ばねえか?﹂ ﹁えぇ∼。どうしようかな?﹂ ﹁いいじゃねえか♪﹂ ﹁う∼ん・・・・・・そうですね∼。だったら・・・・・・﹂ 一刀君は見事なまでの女声で誑かしていると、1人に近づいて攻撃 範囲に入ると、素早く神龍双牙の天を抜刀して、1人の敵の喉を貫 いた。 ﹁ぐぁ・・・﹂ ﹁・・・・・・地獄に落ちやがれ﹂ ﹁なっ⁉・・・・・・﹂ 残った敵兵は槍を構えようとするがそれは叶わなかった。MP7A 1の照準を合わしていた俺とポーの放った4.6mm弾が額に命中 して、瞬く間に制圧される。 入口前に移動するとクラウドは左手にグルカナイフを手にしてUS P,45を構える。準備が出来ると俺はクラウドの右肩に左手を置 の合図だ。 き、深く深呼吸すると短く二回叩く。 やれ 確認したクラウドは扉をノックして、少しだけ開いたら一気に突入。 扉を開けようとした敵はクラウドのグルカナイフで刺殺され、俺も 続いて突入。MP7A1で照準を合わせて室内で寛いでいた敵を仕 留める。 947 ﹁クリア‼﹂ ﹁クリア‼制圧確認‼﹂ 制圧を確認すると人質を探すが見当たらない。一刀君は神龍双牙を 構えながら虫の息状態の敵に突きつける。 ﹁言え‼人質の子供は何処だ⁉﹂ ﹁ひ・・・一足遅かっ・・・た・・・な﹂ ﹁なんだと⁉﹂ ﹁さ・・・さっき・・・・・・韓玄様達が・・・連れて行った・・・ ・・・・・・い・・・いまご・・・ろは・・・くたば・・・って・・ ・・・・・・・﹂ 一足遅かったようだ。人質は既に別の場所に移され、命が危ない。 一刀君はこいつの心臓に刀を突き刺してトドメを刺す。 ﹁こんな奴等がいるから・・・・・・この国は疲弊していくばかり なんだ・・・﹂ ﹁一刀君・・・・・・﹂ ﹁急ぐぞ。話からしてまだ間に合う﹂ ﹁・・・・・・はい。奴等が向かうとすれば城壁だけです﹂ ﹁黄忠を脅すつもりか・・・・・・作戦変更だ。人質を救い出した ら一刀君は子供を連れて先に撤収してくれ。俺達で韓玄達をぶっ殺 す﹂ ﹁分かりました﹂ ﹁捕虜は必要ない。黄忠配下の兵以外のケダモノ以下連中は全員殺 してやれ﹂ ﹁Rog﹂ そういうと俺達は直ぐに城壁へと急ぐ。この無益な戦闘を終わらせ、 948 人としてのプライドを忘れたクソッタレ野郎を叩き潰す為に・・・・ ・・・・・・・・。 949 第124話:スニーキングミッション︵後書き︶ 交州が孫策軍の統治下に置かれたちょうどその頃、徐州の隣にある 青州。かつて跋扈した黄巾残党軍がいたが、現在は歌姫達の活躍で 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 曹操軍の青州兵となった。そしてその青州で彼女達の歌声が響き渡 る。 次回 [歌姫] 彼女達の歌声が人々の心を掴む。 950 第125話:歌姫︵前書き︶ 魏の歌姫達、久々の休暇に向かう。 951 第125話:歌姫 徐州の北部に位置する青州。ここはかつて袁紹が納めていたが、度 重なる過度の増税や兵達による横暴が酷く、袁紹が死んだ後に旧黄 巾党の残党達が蜂起。 しかし曹操の尽力で暮らせるだけの畑と土地を与えるという条件で 青州兵 とされており、元々は歴戦をくぐり抜けて来た猛 組み込むことに成功した。 現在は 者ばかりだったので、曹操軍の中でも屈指の士気を秘めている。 特別な手段 数え役満姉妹 がある。そしてその手段は・・・・・・。 その高い士気を保つには其れ相応の技量が無ければ不可能だが、彼 等にはある ﹁みんな大好きー?﹂ ﹃てんほーちゃーーーん‼‼﹄ ﹁みんなの妹ー?﹂ ﹃ちーほーちゃーーーん‼‼﹄ ﹁とっても可愛い﹂ ﹃れんほーちゃーーーん‼‼﹄ 今日も青州兵を集めて歌を歌っていた。彼女達は 。そ という現代でいうところのアイドルグループで、その個性の可愛ら しさと歌声で絶大な人気を誇っている。 黄巾の乱 しかし彼等からの絶大な人気の理由は他にもある。 漢王朝が無能であると知れ渡るキッカケとなった 952 の黄巾党の首謀者とされる天公将軍こと張角に姉妹の張宝と張梁。 男 であるとして死んだことにし、徴兵 この名前が彼女達の本当の名前であり、かつて世間を騒がせた張三 姉妹その人達である。 曹操は表向きで彼女達を 活動と慰安活動の役割をやらせる条件で陣営に保護したのだ。 ﹁みんなぁ∼♪今日は来てくれて本当にありがとう♪﹂ ﹁やぁ∼ん♪ちぃ、と∼っても嬉しい♪﹂ ﹃わぁあああああああああ‼‼‼﹄ ﹁じゃあ早速いっくよ∼♪みんなも楽しんでね∼♪﹂ 桃色のロングヘアで三人の中で一番胸が大きい長女の天和がそうい うと観客の青州兵達は歓喜を挙げて楽しみ出す。そして彼女達の歌 が始まった。 ライブは何の問題もなく終了して、彼女達は打ち上げも兼ねて夕食 を摂っていた。 ﹁うぅ∼ん♪やっぱり美味しぃ∼♪﹂ ﹁肉まんおかわり♪﹂ ﹁姉さん達、慌てて食べると喉に詰まらせるわよ﹂ 美味しい料理で舌鼓をうつ天和と地和に対して落ち着いて食べる末 っ子の人和。すると扉が開けられて蒸籠を抱えた2人の青州兵が入 ってきた。 953 ﹁﹁お待たせしました‼追加の点心です‼﹂﹂ ﹁ありがとうね張ちん♪波ちゃん♪﹂ ﹁おっそ∼い‼ちぃ待ちくたびれちゃったんだからね‼﹂ ﹁すみませんね。二人とも﹂ ﹁いえっ⁉皆さんが喜んで頂けたら我等は満足です‼﹂ ﹁その通りです‼﹂ お礼を言われて2人は嬉しそうに蒸籠を机に置く。彼等の名前は張 曼成と波才。 三人が旅芸人をしている頃から付き従っている熱狂的な信仰者で、 彼女達が曹操軍に裏から加わることになると自ら進んで付き人を申 し出た。 ﹁ねえねえ‼明日の予定は何かあったっけ?﹂ ﹁いえ、曹操様から日々の活躍で兵の調達は順調なので明日から1 0日間はゆっくり休むようにと伝令がありました﹂ ﹁本当に⁉﹂ ﹁はい。遠出をするのでしたら旅費も出すとのことです﹂ ﹁やったぁ∼♪おっやすみ♪おっやすみ♪﹂ ﹁じゃあじゃあ‼ちぃは美味しいものい∼っぱい食べたい♪﹂ 久々に休みと聞いて天和と地和は手を挙げて喜ぶ。ここのところ纏 まった休みは無かったから、丁度いい機会だ。 ﹁私は久々に温泉に行きたいわね﹂ ﹁あっ⁉だったら私も行きたい‼﹂ ﹁分かりました‼でしたら明日すぐに手配します‼﹂ ﹁うん♪ありがとうね張ちん♪﹂ ﹁でしたら皆さん、呉に行ってみませんか?﹂ 954 ﹁うにゃ?呉に?なんで?﹂ ﹁旅商人から聞いたんですけど、何でも建業の近くに眺めがいい温 泉宿があるらしいんです﹂ ﹁ほんとに⁉﹂ ﹁あと建業に新しい店が出来たらしいですよ﹂ ﹁わぁ∼‼じゃあみんなで行こうよ‼﹂ ﹁・・・まあ、身元が分からなかったら大丈夫でしょうから、呉に しましょ﹂ ﹁うん‼﹂ ﹁じゃあ僕は出国手続きを済ませますね﹂ ﹁おっねが∼い♪﹂ そういうと5人は夕食を再開させ、翌日から休暇を楽しむ為に旅人 の服装と荷物を手に馬車で向かう・・・・・・。 955 第125話:歌姫︵後書き︶ 交州での戦いに勝利した孫策軍は無事に平定を果たした。その交州 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 本城ではささやかな宴が執り行われていた。 次回 [戦いの後] 宴に神秘的なことがある。 956 第126話:戦いの後︵前書き︶ 戦いの後、ある事がきっかけで珍事件が起こる。 957 第126話:戦いの後 交州での戦いで勝利を収めた俺たち孫策軍。局地的にはまだ一部に おいて反乱軍が抵抗を続けるが、鎮圧は時間の問題になっていた。 反乱軍によって襲われていた集落には既に用意した支援物資を配布。 治療にも戦闘衛生兵部隊が中心となって治療に勤め、街の修復には 工兵部隊が修復にあたる。次の統治者である俺達の印象をより良い ものにする為の活動だ。 そして俺達は現在、交州本城に駐留している。理由としては・・・・ ・・。 ﹁やっぱり勝った後に飲むお酒は最高ね‼﹂ ﹁雪蓮、いくら無礼講だからと深酒は慎みなさい。仕事に支障が出 るぞ﹂ ﹁えぇ∼?いいじゃない♪今日位は大目に見てよね♪﹂ ﹁はぁ∼・・・・・・姉様は相変わらずね﹂ ﹁そうですね蓮華姉様﹂ ﹁蓮華様、華蓮︵かれん/孫翊の真名︶。まだ飲まれますか?﹂ ﹁はぅ∼。やっぱりライル様が用意したお酒は美味しいですねぇ∼﹂ ﹁ふぅ・・・これで朱里達がいたら最高なんだがなぁ∼・・・﹂ ﹁ひゃう⁉千里様・・・私の頭をなぜ撫でるのでしゅか⁉﹂ ﹁美味い酒に料理、それに美しい舞姫。宴には相応しいものよ﹂ ﹁ああ﹂ それぞれが料理や酒に舌鼓を打っていた。用意されたものはこの地 方の料理もあるが、大半は俺達が用意したもの。 958 占領軍には変わりないから民に負担となりかねない纏め買いを極力 避け、輸送部隊が揚州から送ってきた。 材料を用意したから、あとは交州正規軍の料理人達に調理してもら う。 ﹁んく・・・んく・・・・・・ぷはぁ∼‼ねえ冥琳、そういえばラ イルは?﹂ ﹁何か準備をすると言っていたぞ。余興でもしてくれるのだろう﹂ ﹁ふぅ∼ん・・・・・・じゃあ楽しみにしてなきゃ♪﹁お呼びです か?﹂あっ・・・ライ・・・ル・・・・・・﹂ 機会を伺っていたように姿を見せたが、雪蓮殿は俺が着ている服に 言葉を失ったようだ。 それはそうだ。俺が着ている服装は黒羽二重、染め抜き五つ紋付き の長着と羽織に仙台平の袴をつけた服装が第一礼装と呼ばれる和服 だ。 俺の姿を見た雪蓮殿は目を輝かせながら俺に話しかけてきた。 ﹁すっごくカッコいい‼ねえ冥琳⁉﹂ ﹁うむ・・・なんとも落ち着いた立ち振る舞いか・・・﹂ ﹁ありがとうございます﹂ 辺りを見渡すと蓮華殿達も俺の見たことも無い服装に釘付けとなっ ているようだ。数日前に真名を預かった華蓮殿も顔を赤くしながら 俺を見ているが、なぜ赤くしているのかよく分からない。 ﹁ら・・・・・・ライル・・・な・・・何かやってくれるのか?﹂ 959 ﹁あぁ、そうですよ。舞姫も舞い終わったことですので、早速やら せて頂きます﹂ そういうと俺は彼女達の前に移動。それと同時に俺と同じ和服を着 たアレックスやレオン達が入って来て、40cm程の長さで7つの 穴が設けられた能管を懐から取り出す。 その他にアレックスは三味線、レオンは小鼓という和楽器を手にし て正座する。雪蓮殿達は何が始まるのか楽しみにしながら様子を伺 う。 ﹁では・・・この交州での戦の勝利を祝い、我等群狼隊による余興 をお楽しみに下さい。今から行なわれるのはこの国より東へ海を渡 った先にある倭の国の演奏になります。お楽しみ下さい﹂ そういうと俺は能管を構え、他の連中も構える。暫く構えると俺達 は演奏を開始する。全員がその独特のリズムに心奪われるが、もち ろんこれだけではない。 俺達が入って来た扉が開けられて、そこから入って来た人物に全員 が言葉を失う。 ﹁うわぁ∼・・・・・・﹂ ﹁これは・・・﹂ ﹁・・・・・・綺麗・・・﹂ ﹁な・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁はぅ∼・・・・・・凄く美しい人ですぅ﹂ ﹁いったいあれは誰だ?﹂ ﹁はぅあ⁉﹂ 960 ﹁これはなんとも・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・﹂ 現れたのは薄化粧を施し、長い黒髪を割れしのぶと呼ばれる舞妓の 髪型。一月の季節花を表す正月の髪飾り、まるで天女を思わせる和 服に羽衣を身に纏った本当に美しい舞姫。 見る者からすれば本当に天女が空を舞うようにも見える神秘的な舞 いとそれを際立たせる和楽器による演奏。 雪蓮殿たちはもちろん、交州の文官や武官、更には舞姫達と演奏団 も余りにも幻想的な光景に言葉を失っていた。 約5分程の演奏は佳境に入り、最後に舞姫が構えたと同時に演奏が 終了となる。 彼女達が呆気に取られる中、俺達が一礼すると雪蓮殿が立ち上がっ て拍手。それに続いて冥琳殿や蓮華殿達も立ち上がって拍手を送る。 ﹁雪蓮殿、お楽しみに頂けましたか?﹂ ﹁ふぇ⁉・・・・・・え・・・えぇ・・・凄すぎて言葉が出なかっ たわ・・・﹂ ﹁う・・・うむ・・・・・・いろんな演奏や舞いを見て来たが・・・ 今までで一番の美しさだった・・・﹂ ﹁それはありがとうございます﹂ ﹁あ・・・あの・・・・・・ライル様﹂ 俺が雪蓮殿達と話していると華蓮殿が話しかけて来た。それも顔を 少しだけ赤くしながらだ。 ﹁あの・・・・・・先程の女の人はどなたでしょうか?﹂ 961 ﹁分かりました。でしたら紹介致します﹂ そういうと俺は手招きをしながら先程の舞姫を呼ぶ。 ﹁先に言っておきますが、驚くこと間違いなしです﹂ ﹃?﹄ 武久です﹂ ﹁では舞姫様。雪蓮殿達に自己紹介を・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・南郷 名前を口にした瞬間、一瞬だけだが時間が止まったような感覚に襲 ﹄ われる。しかし暫くしてからその名前を聞いて・・・・・・・・・。 ﹃えぇえええええええええええ‼‼⁉ 一斉に物凄い驚愕な声を出す。 ﹁ちょ⁉えっ⁉ほ・・・本当に武久⁉﹂ ﹁な・・・・・・あ・・・あぁ・・・・・・よく見たら確かに武久 だ・・・﹂ ﹁な・・・・・・た・・・たたたた武久⁉﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁はぅあ⁉なんだか負けてしまいました⁉﹂ ﹁・・・・・・武久様・・・﹂ ﹁ひゃう⁉た・・・たけひしゃしゃま⁉﹂ ﹁にわかに信じ難い・・・﹂ ﹁がはっ⁉﹂ ほぼ全員が目を大きく見開き、言葉を所々で噛ませる。特に百合に 関しては鼻血を出しながら気絶してしまった。 962 ﹁これは俺の国の舞いで ﹁歌舞伎・・・・・・﹂ 歌舞伎 という名前です﹂ ﹁歌舞伎の中では俺みたいに男性が女性になりきって美しさを表現 する女形というものがあります﹂ 南郷が説明をするが、あまり耳に入っていないようだ。そして南郷 が気になって華蓮殿の顔を覗き込むと、彼女は顔を真っ赤にしなが ら迫って来た。 ﹁武久様ぁあ‼‼﹂ ﹁なっ⁉﹂ ﹁武久様すっごく可愛いです‼もう私釘付けです‼﹂ なんというか・・・完全に変なスイッチが入ったようだ。すると雪 蓮殿が何かを閃いたようで、俺に視線を向けて来た。 ﹁はっ⁉武久でここまで可愛いんだから・・・もしかしてライルも ⁉﹂ 雪蓮殿がそういうと全員が一斉に俺を見る。 ﹁ラ∼イ∼ル♪ちょ∼っと向こうにお化粧しに行かない?﹂ ﹁なっ⁉ちょ・・・し・・・雪蓮殿・・・・・・﹂ ﹁あっ⁉私もお姉様と同じこと考えてました‼﹂ ﹁さっすが華蓮‼じゃあ一緒に・・・・・・﹂ もはや二人は目が興奮状態になっている。俺は持ち前の勘で全速力 でその場を逃げ出す。しかし後ろから・・・・・・。 ﹁待ちなさ∼いライル‼大人しく女の子になりなさ∼い‼﹂ 963 ﹁待って下さ∼い‼ライル様ぁあ‼﹂ ﹁冗談じゃないです⁉誰が女装などしますか‼⁉ ﹂ 後ろから追いかけてくる猛獣に食われまいと、俺は全速疾走で逃げ 回る。 交州での戦いが終わった後に起こった珍戦の始まりだった・・・・・ ・・・・。 964 第126話:戦いの後︵後書き︶ 楽成城での戦いは新たな展開を見せていた。韓玄達が黄忠の娘を人 質にして、戦いを強要していた。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 内部に潜入しているポー達は救出の為に動き出す。 次回 [マスター] ポーの怒りが下郎に下る。 965 第127話:マスター︵前書き︶ マスターの名を持つ狼が下衆の三人を始末する。 966 第127話:マスター 俺達は韓玄達によって人質にされた黄忠の子供を救出する為に俺と クラウドと一刀君の3人で敵陣内部に潜入。そして監禁されている 空き家へと突入したが、既に人質は別の場所に連れて行かれていた。 場所を突き止めた俺達は取り返しのつかない事態へとなる前に城壁 へと急ぐ。 城外では時間稼ぎに徹する劉備軍と戦いを強要されている黄忠軍が 戦闘を繰り広げ、楽成城の城壁に異常なまでに太った大男が3人い た。 この男共こそが韓玄、郭石、区星。 なぜ、韓玄達がここにいるのかと言うと、いつまで経っても戦いに 何の変化もないことに苛々した。 三人は戦の様子を見に来たようだ。 俺達は物陰に隠れて確保のタイミングを伺っている。 ﹁黄忠の奴・・・さっさっと北郷軍を倒さぬか‼﹂ ﹁役立たずが・・・おい‼奴の小娘を連れて来たか⁉﹂ ﹁あんな小娘共に手を焼くなどとは・・・・・・所詮は女というこ とよのぅ﹂ ﹁韓玄様‼郭石様‼区星様‼ガキを連れて来ましたぜ‼﹂ 俺達も同じ方角を見ると兵士に抱えられている紫色の髪に桃色の幼 稚園児が着るような服を着た子供がいた。俺とクラウドはMP7A 967 1を構えるがまだタイミングが悪い。 ﹁くっくっくっ・・・そうか・・・・・・おい役立たずの黄忠‼‼﹂ いきなりこの戦場すべて声が届く大声を出す韓玄。 ﹂ その声に外にいる桃香達や黄忠軍兵士達も声がした方に顔を向けた。 ﹁璃々‼⁉ ﹁お母さん‼‼﹂ 悲痛な親子の声が戦場に響く。 ﹁テメエ等そこを動くんじゃねぇ‼さもなきゃこのガキをぶっ殺す ぞ‼‼﹂ 韓玄がそう言うと腰に差している剣を抜き璃々の首へ近づける。 俺達は段々と奴らに対する怒りを強めて行くのを感じる。卑劣極ま りない外道連中を直ぐにでも殺してやりたい。 自分の娘の命の危険に焦る黄忠に、幼い子供を人質にする韓玄達に 怒りを露わにする桃香達。その怒りは一般兵士にも芽生えている。 ﹁お母さん‼お母さん‼‼﹂ ﹁おい役立たず‼その小娘共をさっさと捻り潰しやがれ‼﹂ ﹁もっとも、無能な輩にも同じ道を歩んで貰うがのぅ﹂ 城壁で耳触りな笑い声を発する3人に対してあまりにも外道なやり 方をする韓玄達を睨む黄忠。 その眼には怒りと悲しみが込められていた。 968 ﹁なんだその眼は⁉まだ自分がどういう状況にいるのか分からない ようだな・・・おい‼ガキの腕を切り落とせ‼‼﹂ ﹁へぃ‼﹂ 黄忠の態度に苛々きた韓玄は璃々を拘束している兵士にそう言う。 命令された兵士は大きく振り上げる。 ﹂ ﹁安心しな・・・一瞬で終わるからよっ‼‼﹂ ﹁璃々‼⁉ これはまずい 直感で感じた俺達はすぐさま照準を敵兵に合わせ、4.6mm弾を 発砲して倒す。 ﹁なっ・・・なんだ⁉﹂ ﹁Move!!Move!!﹂ 敵兵を倒して俺達は一気に突入を敢行。俺とクラウドがMP7A1 で人質の近くにいた敵兵を始末すると神龍双牙を抜刀して薙刀にし た一刀君が確保へと急ぐ。 ﹁ポーさん‼クラウドさん‼﹂ ﹁俺達が食い止める‼君は桃香ちゃん達の下へ‼﹂ ﹁分かりました‼頼みます‼﹂ 一刀君は人質を脇に抱えると全速力で城門へと駆け出す。暫く呆気 に取られていた敵兵だがすぐ正気を取り戻して弓を射ろうとするが、 MP7A1でそれらを倒す。 969 ﹁なんだテメエ等⁉﹂ 韓玄、郭石、区星がそれぞれ剣や槍、斧を手にして迫る。俺達は互 百足 を構える。 いに背中合わせにして周辺に包囲した敵兵に殺気をぶつける。その 手にはグルカナイフと多節棍 ﹁貴様等何者だ‼﹂ ﹁お前等クソに名乗る名前なんざ無いんだよ﹂ ﹁この国に蔓延るゴミの掃除屋とでも言っておく﹂ 郭石が大声で叫ぶと、俺達も殺気全開で睨みつける。すると韓玄と 区星の2人がMP7A1を見て何かを悟ったようだ。 天の軍隊 だな⁉﹂ ﹁黒く見えない弓矢を放つ筒・・・・・・くっくっくっ・・・・・・ そうか‼貴様等、孫呉の ﹃天の軍隊⁉﹄ 天の軍隊という言葉を聞いて周辺の敵兵がざわめき出す。まさかこ こでも俺達の存在が有名とは・・・。 ﹁くっくっくっ・・・・・・どうやら俺様にツキが回って来たよう じゃねえか・・・郭石‼区星‼﹂ ﹁おぅ‼俺等の時代が来たみてぇじゃねえか‼﹂ ﹁お主等はもはや袋の鼠じゃ・・・﹂ ﹁なんのことだ?﹂ ﹁貴様等・・・・・・俺等の手駒になるかこの場で八つ裂きになる か、どっちか選びやがれ﹂ ﹁何をふざけたことをほざく?﹂ 970 いきなり勧誘を始めた韓玄、郭石、区星の3人。 ﹁テメエ等バカだろ⁉こんな状況で貴様等が勝つなんてねぇんだよ ‼﹂ ﹁孫策のような田舎の小娘にそんな力は勿体無い・・・・・・その 力は全てわし等のもんじゃ﹂ ﹁断んなら構わねぇぞ。孫策や野良犬のクソガキに仕える大バカな んだからよぅ・・・ひゃひゃひゃひゃ‼﹂ 郭石の耳触りな笑い声をきっかけに周りのクソ共が笑い出した。も はや同情の余地などありはしない。こいつ等は皆殺し決定だが、一 つだけ聞いて見たいことがある。 ﹁なら貴様等に一つだけ問う。あんな小さな女の子を人質にして恥 ずかしいと思わないのか?﹂ ﹁あぁああん?﹂ ﹁おかしなことを口にしよる・・・あんなガキの1人や2人、そこ ら辺に湧いて出る﹂ ﹁はん‼家族やらなんやら耳触りなことを言う連中なんて知ったこ とじゃねぇんだよ‼家族なんざ食いもんでしかねえんだからよ‼﹂ その言葉で俺等の怒りは最高潮を向かえたように感じる。俺は百足 の特性である七節棍と五節棍の二つに分け、両手で構える。 ﹁・・・・・・クラウド﹂ ﹁あぁ、周りの雑魚は俺で充分だ。お前はあのゴミ連中を始末して くれ﹂ ﹁任せたぜ。アサシン﹂ ﹁そっちもな、マスター﹂ ﹁何を話してやがんだ?﹂ 971 ﹁俺等の方針が決まったぜ・・・・・・﹂ 俺がそういうとクラウドがグルカナイフを構えて敵集団の中へ突入 していき、周辺の敵を次々と切り裂いていく。 ﹁なっ⁉﹂ ﹁貴様等を・・・・・・殺す‼‼﹂ そういうと俺は郭石の懐に飛び込み、七節棍で奴の顔に叩きつける。 ﹁がはっ⁉﹂ ﹁貴様等を許さない・・・家族を食物だと?・・・・・・ふざける な‼貴様等三人はこのポー・リーチェンが殺してやる‼‼﹂ ﹁くっ⁉だったら望み通りに殺してやらぁ‼﹂ 俺の攻撃に対して郭石は槍を突き出し、韓玄は剣、区星は斧で仕掛 けて来たが楽に回避する。 ﹁テメエ等‼邪魔すんな‼﹂ ﹁貴様こそ邪魔なんだよ‼このクソガキは俺の獲物だぞ‼﹂ ﹁貴様が邪魔じゃ‼引っ込んでおれ‼﹂ 今度は仲間割れか・・・・・・何とも救えないクソ共だ。俺は遠慮 なくこの3人を纏めて痛めつけてやる。今度は七節棍でこいつ等の 汚物が溜まった腹めがけて一撃を加えて吹き飛ばす。 ﹁くそくそくそくそ‼‼﹂ ﹁景気付けだ。まずは貴様から殺してやる﹂ 郭石に狙いを定める七節棍に氣を流し込み、強度を高める。俺の百 972 足には氣を流し込むことで硬さを調節できる。 今の七節棍は岩をも貫通する程に強度が増した多節鞭のようなもの となっている。それを腹を抑えながら膝をつく郭石に振るう。 ﹁ぎゃっ⁉﹂ モロに横腹に食らった郭石の身体は見事なまでに真っ二つとなり、 上半身は音を立てながら地面に落ち、俺の足下に腐ったこいつの血 が流れ出す。 ﹁まずは一匹目・・・﹂ ﹁くそ⁉郭石の役立たずが⁉﹂ ﹁隙ありじゃ‼くたばるがよいわぁ‼﹂ 今度は背後から区星が斧を振り下ろすが、俺は背中を向けながはそ れを軽く受け止めて防ぐ。 そして左手に持った五節棍も同じように氣を流し込んで強度を高め て、区星の左目目掛けて突き刺してやった。 ﹁これで残りは一匹だけだ・・・・・・﹂ 突き刺した五節棍を引き抜き、氣を止めて元の状態に戻す。韓玄は 俺の返り血を被り、殺気あふれる眼を見て後ずさりを始めていた。 ﹁くっ・・・⁉﹂ ﹁念仏は・・・唱え終わったか?﹂ ﹁う・・・く・・・来るな⁉来るな化け物⁉来るんじゃねぇ‼﹂ 少し暴れただけでさっきの勢いが完全に消えて、韓玄は剣をただ振 り回すしか出来なくなっているようだ。俺は百足を繋げて元の十二 973 節棍に戻すと氣を練り、それを百足に流し込む。 ﹁貴様はゆっくりと殺してやる・・・﹂ ﹁な・・・なにが⁉﹂ 百足を手にして俺は奴の剣を弾き飛ばし、身体を回転させながら奴 の首に百足を巻き付けた。 ﹁なっ⁉なんだよこりゃ⁉多節棍じゃねえのかよ⁉﹂ ﹁冥土の土産に教えてやる・・・こいつは氣を流して硬さを調整で きるんだよ﹂ ﹁ま・・・待て⁉お・・・・・・俺が悪かった‼だ・・・だからど うか命だけは⁉・・・あがっ⁉﹂ ﹁今更遅いんだよ・・・・・・おっ、向こうは終わったようだな?﹂ 俺は百足で奴の首を締め付けながら横を見ると全身に返り血を浴び て両手にグルカナイフを持ちながら歩いて来るクラウドの姿。 ﹁ポー、こっちは終わったぞ﹂ ﹁相変わらず手際がいいな・・・・・・凄い姿だぞ﹂ ﹁それはお前も同じだろ?﹂ 確かに俺の姿もクラウドほどではないが返り血を浴びている。第三 者から見たらその姿に加えて辺りにはクラウドが皆殺しにした韓玄 地獄 そのもの。そして俺達は罪人に罰を与え 達に組みしたクソ共の亡骸。 その光景はまさに る鬼というところか・・・。 ﹁で・・・・・・まだそいつを殺らないのか?﹂ 974 ﹁おっと・・・忘れてた﹂ ﹁ぐがっ⁉がっ・・・あがっ・・・・・・﹂ 俺は徐々に締め付けを強くしていき、韓玄は口からヨダレを垂らし、 顔色も青くして言葉を発せられなくなっている。そろそろ俺の氣も 限界に近付いていたので、ひと思いにトドメを刺してやることにし た。 ﹁じゃあな・・・・・・クソブタ野郎‼‼﹂ そういうと一気に百足を締め切り、奴の首は骨が砕けて肉が締めら れる音を出しながら切断された。 奴の首は俺の足下に転がって来て、それを一気に踏み潰してやった。 ﹁任務成功だな?﹂ ﹁ああ、ひとまずはセーフティゾーンに向かうぞ。返り血の服で彼 等と合流したくない﹂ ﹁了解だ。行くとしよう﹂ そう言うと俺達はこの修羅場を後にして、血塗れの服を着替える為 にセーフティゾーンへと向かう。 この戦いの後、人質が助けられたことで戦う理由が無くなった黄忠 軍は劉備軍に降伏。そのまま楽成城は劉備軍に託されて、黄忠もそ のまま劉備軍に降った。 関羽、張飛、趙雲、馬超、そして黄忠。これで五虎大将軍が集結し たのであった・・・・・・・・・。 975 第127話:マスター︵後書き︶ 洛陽にある鍛錬場。牙刀と春蘭は久々に仕合をしていた。兵士達が 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 見守る中、2人の得物がぶつかり合う。 次回 [魏武の龍と魏武の大剣] 2人の武将がぶつかり合う。 976 第128話:魏武の龍と魏武の大剣︵前書き︶ 牙刀と春蘭による訓練風景。 977 第128話:魏武の龍と魏武の大剣 洛陽にある鍛錬場。ここでは現在、私が率いる部隊と夏侯惇殿と夏 侯淵殿が率いる黒騎兵隊による合同訓練が行なわれている。 各員がそれぞれ剣や弓、槍に分かれて掛け声と共に武を振るう。黒 殿が担当していて、その訓練 騎兵隊は私の隊に比べても統制が取れ、私の部下達にはいい手本と なるだろう。 訓練の指導には凪や真桜、沙和、張 に季衣と流流も参加してはいるが、まだ幼いということもあり力の 加減が出来ず、既に何人か医務室に直行となってしまったが・・・。 そして私はというと・・・・・・。 ﹁でりゃあぁああああ‼‼﹂ ﹁そんな大振りでは私に当てられませんぞ‼﹂ 夏侯惇殿と仕合をしていた。彼女の攻撃は凄まじい勢いで怯むこと 無く向かって来るが、まだ無駄が見られる。 ﹁もっと間合いを意識しながら闘って‼大振りだとかわされたら一 巻の終わりです‼﹂ ﹁だったら避けていないで大人しく当たられればよいだろ⁉﹂ 私の言葉に彼女は七星娥狼を振り上げるとそのまま姿勢を低くして、 回転しながら振り払う。 しかし私はそれを冷静に見極め、一撃目は後方に回避して、二撃目 は赤龍偃月刀で防ぐ。 978 それを防ぐと同時に弾き、素早く回転すると反動を利用して偃月刀 の石突で突く。それに何とか反応した夏侯惇殿は刀身で受け止める が、反動で少し後方に押された。 ﹁くっ⁉まだまだぁあ‼‼﹂ ﹁その動きも予想済みです‼﹂ 夏侯惇殿はその場を力強く蹴るとそのまま物凄い勢いで刺突を繰り 出して来たが予想済みの範囲だ。 私は偃月刀を左手で持つと彼女の右側に回り込んだ。 ﹁なにっ⁉﹂ ﹁うらぁああ‼﹂ ﹁うわっ⁉﹂ 腕を掴むとそのまま彼女を振り回し、勢い付いた処でそのまま放り 投げた。流石に態勢を整えられなかったようであり、着地に失敗し た彼女はそのまま地面を何度か転がった。 ﹁ぐっ⁉なんのこれしき・・・・・・﹂ ふらつきながらも何とか七星餓狼を手に取ろうとするがそうはいか ない。素早く彼女の下に歩み寄り、地面に落ちたままの七星娥狼を 足で押さえ込むと偃月刀の鋒を彼女の喉元に突き付けた。 ﹁・・・・・・まだやりますか?﹂ ﹁ぐっ⁉・・・・・・わ・・・私の負けだ・・・﹂ ﹁これでまた私の勝ちです﹂ ﹁次は私が勝つ‼だから早く構えろ‼﹂ ﹁・・・・・・確か三回までのお約束だったはずですが?﹂ 979 ﹁そんなの知らん‼私が今だといったら今だ‼﹂ 私は軽く溜息を吐いてしまう。最初の約束で確かに三回までの仕合 だったのに、夏侯惇殿はまるで駄々をこねる子供のようにせがむ。 私達は所属も階級も違うからこういった合同鍛錬でしか手合わせが 出来ないし、前回の合同鍛錬に私は幽州にいたので参加は出来なか った。 どうもその際に夏侯惇殿は私との仕合を楽しみにしていたようであ り、今回はその侘びも兼ねて一回の処を三回にしたのだ。 流石に手こずっていると弓を手にした夏侯淵殿が歩み寄って来た。 ﹁どうかしたか姉者?﹂ ﹁しゅうら∼ん‼牙刀が仕合をしてくれんのだ‼﹂ ﹁はぁ・・・確か三回までだったであろ?﹂ ﹁しかしまだ私は勝ってないぞ‼﹂ ﹁いちど結んだ約束は守らないとならないだろ?それに・・・・・・ 華琳様に知れたらお怒りになられると思うが?﹂ ﹁うっ⁉・・・そ・・・・・・それは嫌だ・・・﹂ ﹁そういうことだ。すまないな牙刀。姉者が我儘を言って・・・﹂ ﹁いえ・・・何時ものことですから問題ありません﹂ しかし何というか・・・夏侯惇殿も曹操殿が絡むと大人しくなるな・ ・・。しかし余程私と闘いたかったのだろう。仕方がないので約束 を新たにすることにしよう。 ﹁でしたら夏侯惇殿﹂ ﹁なんだ?﹂ ﹁5日後には真桜の工兵隊と参刃の実験部隊が合同で訓練を行ない 980 ます。その鍛錬に私も同行致しますから、その時にお越し頂けまし たらまた仕合を致しましょう﹂ ﹁本当か⁉約束だぞ‼約束を守らないと許さんぞ‼﹂ ・・・あなたがそれをいいますか・・・。まあ私が約束を守れば問 題ないの話だ。そんな約束をしていると城から伝令が走って来た。 ﹁徐晃将軍‼曹操様がお呼びであります‼﹂ ﹁解った・・・・・・すみませんがお二人共。鍛錬の指揮をお任せ しても宜しいか?﹂ ﹁あぁ。後は任しておけ﹂ ﹁牙刀‼さっきの約束を忘れるなよ‼﹂ ﹁大丈夫そうですね・・・・・・では頼みます﹂ 2人に鍛錬の指揮を頼むと私はすぐに曹操殿の処へと向かう。 余談だが、この後に夏侯惇殿がかなり無理のある鍛錬を実行したよ うで兵の大半が使い物にならなくなり、曹操殿に折檻されてしまっ たのは言うまでもなかった・・・・・・・・・。 981 第128話:魏武の龍と魏武の大剣︵後書き︶ 交州から帰還したライル達。最も活躍したライルは破壊された神斬 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 狼に代わる新しい得物を手に入れる為に行動する。 次回 [新しい相棒] 英雄に新たな武器が齎される。 982 第129話:新しい相棒︵前書き︶ ライルの新しい得物が生まれる。 983 第129話:新しい相棒 ウルフパックの本拠地ヴェアウルフと海兵隊本部の浦口駐屯地より 孫武呉起 更に江河を上った先にある八卦洲。俺はとある用事でこの地域にあ る軍事施設に赴いていた。 孫呉海兵隊の武器や防具を製造する直轄の兵器製造局 という兵器省だ。 ここには呉鈎などの武器を生み出す鍛治場と、海兵隊専用の軍船を A サービスドレスを 設計する造船所の2箇所に分けられており、職人達が日々制作を行 なっている。 そして俺は現在、刀剣類の鍛治場にクラス 着て槍を手にしていた。 ﹁・・・・・・これではないな。全体的に幅が違うし、何よりも重 量の偏りがある﹂ ﹁そうですかい・・・しかし中々難題ですなぁ。ライルの旦那﹂ 孫呉お抱えの刀鍛冶である呂藩が製作した槍を手にして軽く振るう。 なぜ俺がこんなことをしているかというと、前々から調子が悪く、 長坂橋で牙刀との戦いで破壊された神斬狼に代わる新しい得物を模 索しているからだ。 俺はああいう武器の他に剣術と槍術を使え、呉鈎を採用しているか ら剣術はそちらを使えばいい。だったら必然的に俺は新しい得物を 984 槍の一種にしたのだが、これが難題だ。 既に何通りもの試作した槍を振るってみたが、どれも何か違う。呂 藩の実力が原因ではない。寧ろ彼の作品はどれを取っても最高な逸 品で、これは単純に俺の感覚の問題だ。 ﹁すまないなおやっさん。せっかく作ってもらったのに・・・・・・ ﹂ ﹁いえ、ボツになった槍は売り物になりますから大丈夫でさぁ。し かも旦那の武器を作るのにはかえって燃えて来るってもんですぜ‼﹂ ﹁ははっ・・・・・・だが無理だけは絶対にしないでくれよ。身体 を壊したら元も子もないからな﹂ ﹁解ってまさぁ‼まだまだ若い者には負けてませんぜ‼﹂ 元気でいてもらうのは最もだが、元気過ぎるのもどうかと思うが・・ ・。俺達が入り口まで歩いているとすぐ前に2人の姿を見掛けたが 片方に見覚えがあった・・・・・・美花だ。 ﹁お∼い、美花﹂ ﹁あぅあ⁉・・・ら・・・ライル様・・・﹂ 孫呉 相変わらず美花は恥ずかしそうにしながらトテトテともう一人の背 と呼ばれる猛者とは思えない位に可愛らしい姿だ。 後に隠れ、顔を少しだけ出してこちらを見る。これが戦場で の鬼人 ﹁美花・・・・・・くすぐったい﹂ ﹁すまないが、君は?﹂ ﹁あぁ、旦那は会うのが初めてでしたな?こいつはあっしの娘でさ ぁ﹂ ﹁私・・・呂人・・・・・・字は博嘉﹂ 985 そういえば確かにおやっさんには娘がいると聞いたことがある。水 色のショートヘアーで瞳は藍色。身長は大体140cmの小柄で鳥 の形をした髪飾りをした女の子だ。 特徴的な喋り方であり、なんだか恋みたいな雰囲気を醸し出してい る不思議な女の子だ。しかし彼女と呂藩を見て思ったことが一つあ る。それは・・・。 ︵・・・似てないな︶ 顔がまるっきし似てないのだ。 ﹁・・・旦那・・・・・・今すっごく失敬な ことを考えてやせんでしたか?﹂ ﹁いや・・・何でもない・・・・・・俺はライル。宜しくな﹂ ﹁・・・・・・うん﹂ ﹁まぁ、口足らずなんですが、あっしの自慢の娘でさぁ。ガキの頃 から鍛治場に入って妙に出来がいい刀や槍なんかを作りやすからね ぇ。いずれは婿養子を入れて跡を継いでもらいたいもんでさぁ﹂ どこにでもいる親バカだな・・・。まあ、超が付く程の妹バカであ る千里と比べたらまだマシだ。 すると高々と笑っている呂藩は何かを閃いたようであり、実の娘に 話しかけた。 ﹁おぅ、そうだ‼博嘉、おめぇ当面は客からの注文はないか?﹂ ﹁ううん・・・・・・注文の剣は・・・二日前に出来た。・・・お 客さん・・・喜んでた﹂ ﹁そうか・・・だったら旦那の新しい得物を造ってみねぇか?﹂ 986 ﹁新しい得物?﹂ ﹁そうだ。いいですかい?ライルの旦那﹂ ﹁あぁ、おやっさんが任せるんだ。それに実力も認めているんだか ら腕は確かだろう﹂ ﹁決まりですな﹂ ﹁・・・じゃあ、新しい得物の特徴・・・教えて・・・出来たら・・ ・・・・指定したい箇所も・・・﹂ ﹁了解だ。仕様書はこれになる。材料や資材も必要なものがあれば いってくれ。すぐに用意させる﹂ ﹁︵コクリ︶・・・分かった。だったら・・・お願い﹂ 博嘉は俺の傍に歩み寄り、身長差もあったので軽くしゃがんで顔を 見る。 ﹁・・・甘いお菓子・・・食べたい﹂ ﹁・・・・・・・・・はい?﹂ ちょこ ・・・博嘉も 彼女からの頼みに自分でも素っ頓狂な声を出してしまうが、彼女は 気にせずに頼みを口にする。 ﹁前に・・・美花から聞いた・・・・・・ 食べたい﹂ ﹁生チョコか・・・・・・いいよ。出来上がったらすぐに届ける﹂ ﹁︵コクリ︶﹂ そういうと博嘉は笑顔で頷く。なんというか・・・何処と無く恋と 雰囲気が似ているな。俺が立ち上がろうとしたら美花が俺の上着を 握り締め、何かを訴えていた。 それを悟った俺は美花の頭を撫でながらその訴えに応える。 987 ﹁解ったよ。美花も軍船の設計で多忙だしな。ちゃんと美花の分も 用意するよ﹂ ﹁はぅあ・・・あ・・・ありがとうごしゃいましゅ・・・噛んじゃ った・・・﹂ ・・・本当に可愛らしいな・・・この義妹は・・・。そんなくだら ないことを考えながら俺は鍛治場を後にする。 ・・・・・・それから2日後、驚くことに注文した得物が出来上が ったと呂藩が品を手にして城を訪れたのだ。 はっきり言って早過ぎる。 彼等のルールで出荷前にはおやっさんが一つ一つ確認するらしいが、 問題どころか今までで彼女が作った中でも最高の出来らしい。 どうやら彼女は注文した直後に彼女専用の鍛治場に籠り、食事どこ ろか睡眠も無しで48時間ぶっ続けで製作していたようだ。そして 今はグッスリと眠っており、起きるのは明日の夕方頃という。 後日、彼女にお礼の品を持っていくことを考えながら雪蓮殿達が待 つ玉座へと足を運んだ。 ﹁ねぇねぇ、どんな風の武器にしたの⁉﹂ 988 ﹁落ち着きなさい雪蓮。まずはライルが見てからよ﹂ 玉座には雪蓮殿と冥琳殿、蓮華殿、華蓮殿、シャオ、祭殿、穏、思 春、明命、亞莎、千里、美花、優龍、百合、美羽、七乃、八枝、九 惹、アレックス、レオン、南郷、それにおやっさんという重鎮達だ。 ﹁ねぇねぇライル‼早く見せてよ‼﹂ ﹁見る限りでは槍に見えるわね﹂ ﹁はい、しかしそれにしては短いかと・・・﹂ ﹁ふむ・・・じゃがあやつの考えた得物じゃ。興味が湧くわぃ﹂ ﹁はぅあ‼もったいぶらないで下さい⁉﹂ ﹁あ・・・あの・・・・・・わ・・・私も・・・楽しみです・・・﹂ ﹁ライル様は確か鉤爪を使ってたけど・・・﹂ ﹁や・・・・・・やっぱりライル様は凄いお方です・・・﹂ ﹁うむ。それがしも楽しみである﹂ ﹁︵ワクワク・・・ワクワク・・・︶﹂ ﹁のぅ七乃、みなが集まってどうしたのじゃ?﹂ ﹁これからライルさんが新しい武器を見せてくれるんですよお嬢様 ♪﹂ ﹁ほんまに楽しみどすなぁ、九惹はん♪﹂ ﹁あぁ、ライルは教えて頂けなかったからな﹂ ﹁俺は槍にウォッカを賭けるぜ♪﹂ ﹁自分は剣にフィッシュ&チップス‼﹂ ﹁・・・賭けにならないと思うが・・・﹂ 全員が俺の新しい得物を楽しみにしているが、そこのロシア系とイ ギリス人・・・何を賭けてやがるんだ? しかもフィッシュ&チップスを賭けるな。せめてビールのスピット ファイアにしろ。 989 ﹁・・・・・・では、さっそく披露させて頂きますが、よろしいで すか?﹂ 全員を見渡すとそれぞれが楽しみにしている。確認した俺は呂藩か らデカイ大布に巻かれた得物を手にして、それを一気に解いて全体 を露わにした。 ﹁・・・凄いな﹂ 全員がその出来に言葉を失う。そこから現れたのは二筋の槍。だが 全体的に短く、反りを持たせていて稲先が鋭い中央が膨らんだ片刃 で、峰にはスパイクが設けられている槍が二本。 ﹁・・・それがライルの新しい武器・・・﹂ ﹁・・・何という輝きか・・・﹂ 稲先は全体が黒であり、そこから光が反射して黒く光っているよう に見える美しさ。俺の新しい武器の正式名称はグレイブ。 それを2.0mから長さ1.2mに縮めて稲先を薙刀みたいに反り を持たせている。 ﹁どうですかい旦那?﹂ ﹁・・・・・・凄過ぎるな・・・重量も抑えられてシックリ来る﹂ 俺は両手に・・・ショートグレイブを手にして軽く振ってみる。本 当に軽くて使い易い。博嘉の実力には本当に驚かされた。 ﹁ねえライル、その槍の名前は?﹂ ﹁名前・・・・・・こいつは・・・﹂ 990 雷 と 雪 です﹂ 俺は二つを見て暫く考えて、ある文字が閃いた。 ﹁こいつらの名前は・・・ 俺はそれぞれ雷と雪という名前を付ける。ここに英雄の新たな得物 が得られた瞬間であった・・・・・・。 991 第129話:新しい相棒︵後書き︶ 人質を救い出し、黄忠軍を配下に加えることが出来た劉備軍。ポー 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re とクラウドも城外の野営地で寛いでいると来客が訪れる。 次回 [優しい花] 益州の弓使いが2人に訪れる。 992 第130話:優しい花︵前書き︶ 花の名前を持つ婦人が2人を訪れる。 993 第130話:優しい花 韓玄達を倒し、無事に人質となっていた黄忠の娘を救出。 戦う原因がなくなった黄忠軍はすぐに降伏して劉備軍に降った。城 内にいた民は黄忠の在命を必死に願っていたが、一刀達が黄忠を殺 すつもりなどさらさら無いと知ったら、街全体で歓喜の声が挙がっ た。 そして俺達は進軍を停止して、黄忠軍の再編成と兵士達への休息を 目的として3日ほど駐留することとなった。 その日の晩、俺とポーは当てがわれた天幕の外にブロウラーに地図 を広げて周辺の状況を確認していた。 ﹁劉備軍の別働隊は無事に綿竹関を制圧したようだ。これで北部は 国境付近を除いて劉備軍が統治することになる﹂ ﹁これで残る要所は3箇所だけだな。雒城に青白江、新都城。これ らを制圧出来たら後は成都まで一直線だ﹂ これまでで劉備軍は背後からの不意打ちに備え、楽成城を攻める前 に別働隊を事前に難航とされていた綿竹関へと向かわせていた。 機動力と破壊力がある霞と嵐と露蘭、軍師に雛里ちゃんを向かわせ た。 雛里ちゃんを向かわせたのには理由がある。正史にて雒城で龐統は 流れ矢に当たって死去。落鳳坡である。可能性としてあり得なくは 無いので、万が一の配慮で一刀君が差し向けたのだ。 994 ﹁しかしこの三つが問題だろうな。向こうの報告では綿竹関に張仁 に厳顔、魏延の3人は確認されていない。いるとしたらこの三つの どれかだろう﹂ ﹁この三人は劉璋軍の中でも屈指の軍勢だが・・・・・・﹂ ﹁一番厄介なのは・・・忠義の武人・・・・・・張仁か﹂ ポーの答えに俺は頷く。張仁の忠誠心や武勇は有名で、張仁が指導 した兵達も劉璋軍の中では最精鋭とされている。 俺達の行動を考えていると、不意に背後から気配を感じ取る。俺達 は同時にUSP,45をCQCホルスターから取り出して構えると そこには1人の御仁がいた。 ﹁こんばんわ・・・お邪魔でしたでしょうか?﹂ そこにいたのは紫色のロングヘアに穏やかな物腰とあふれる母性の 漢升である。 雰囲気を醸し出す反則的なまでに主張されている爆乳の美女・・・ 黄忠 俺達はUSP,45をホルスターに戻すとすぐに踵を鳴らして敬礼 する。 ﹁・・・黄忠様でありましょうか?﹂ ﹁はい、性は黄、名は忠。字を漢升と申します﹂ 群狼隊 所属のクラウド・レインディー二等軍 ﹁自分は劉備軍に助言役として参加しておりますライル将軍配下孫 呉海兵隊第0大隊 曹であります﹂ ﹁同じくポー・リーチェン曹長であります﹂ 俺達が名乗ると黄忠殿は優しい笑顔で微笑み、軽く会釈をする。 995 ﹁どうかされましたでしょうか?﹂ ﹁いえ、ご主人様から聞かせて頂きました。璃々・・・・・・私の 娘を韓玄達から救い出して頂いたと・・・﹂ ﹁わざわざそのことの為に・・・・・・お心遣いに感謝致します﹂ ﹁あらあら・・・お礼を言うのはこちらです。娘をお救い頂き、本 当に感謝致します﹂ そんな状況で、俺達と黄忠様は口元を押さえて笑う。 ﹁ふふ・・・・・・これじゃ堂々巡りですね?﹂ ﹁本当ですわね。ご主人様が仰った通りのお方ですね﹂ ﹁一刀君が何か?﹂ ﹁はい、お二人の孫呉海兵隊の噂はここ益州にも届いています。国 や主に絶対的な忠誠を誓い、その卓越された力で民と兵を守り、力 を持たない人達に手を出す敵には鉄槌を下す心優しい天の軍隊と・・ ・﹂ ﹁なんとも誇張された噂ですな・・・﹂ ﹁全くだ・・・俺達はあくまで海兵隊員として任務をこなしている だけなのに・・・﹂ ﹁ふふ・・・ご謙遜ですね。やっぱり噂通りのお方ですわ﹂ そう言うと黄忠様は俺達のすぐ前まで歩み寄り、俺達の顔を見る。 その表情は桃香ちゃんや関羽とは違う美しさで、大人の女性に相応 しい雰囲気だ。 俺達はそれに思わず顔を紅く染めて、視線を逸らしてしまう。 それを見た黄忠様は何か閃いたような悪戯っ子みたいに不敵に笑い、 俺達の手を取る。 ﹁どうかなさいましたか?﹂ ﹁えっ⁉・・・い・・・いえ⁉なんでも・・・﹂ 996 紫苑 をお預けいただけませ ﹁そうですか・・・お2人にお礼をさせて頂きます。娘をお救い頂 いた感謝の印として・・・我が真名 んか?﹂ ﹁真名を・・・ですか?﹂ ﹁はい、お二人はもちろんですが、あなた様方の主様にも真名を預 けさせて頂きますね﹂ ﹁・・・分かりました。確かに真名を預からせて頂きました﹂ ﹁それと・・・これもどうかお受け下さい﹂ そういうと紫苑殿は俺の両頬に手を添えて、顔を少し右に向けると 左頬に唇を落とした。 ﹁なっ⁉﹂ ﹁ポー様にもですわ﹂ そういうとすぐに俺と同じように左頬に唇を落とした。あまりにも いきなりだったので俺達は2人揃って困惑してしまう。 ﹁ふふっ・・・今日は遅いので失礼させて頂きます。また明日お会 いしましょう﹂ それだけ口にすると紫苑殿は帰って行った。残された俺達はキスさ れた頬を触りながら、顔を真っ赤にさせるのであった・・・・・・。 997 第130話:優しい花︵後書き︶ 紫苑殿率いる軍勢を組み込んだ劉備軍は雒城へと向かう。次なる相 手は益州の猛者にして喧嘩士の厳顔と弟子の魏延。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 有利な籠城を捨てて野戦を挑む厳顔に一刀が挑む。 次回 [豪快の喧嘩士] 益州の地に雷鳴が鳴り響く。 998 第131話:豪快の喧嘩士︵前書き︶ 雒城攻略戦におき、そこで一刀は蜀の喧嘩士と出会う。 999 第131話:豪快の喧嘩士 楽成城で編成を完了させた俺達は黄忠こと紫苑を仲間に加えて次の 攻略目標である難攻不落の雒城へと駒を進めた。 紫苑から齎された情報では、ここを守備しているのは彼女の友人で あり、尚且つ古参兵の一人である勇将厳顔と猛将魏延。 しかし厳顔達も劉璋に対して愛想を尽かしているようであり、本音 では俺達に降りたいらしいがそこは武将の血。 ただでは降らないつもりのようで、雒城での籠城戦を捨てて野戦と を選んだ。 といっていたが、逆をいえば実力を見せれ 喧嘩 脳筋は苦手 いう真正面からの 蒲公英は ば抵抗しなくなるということだ。 俺達はその誘いに乗ることにして策を講じつつ正面からぶつかる。 俺も愛馬の飛燕に跨り、神龍双牙を薙刀にして手にしながら戦況を 見る。 ﹁・・・やっぱりこっちが優勢だね﹂ ﹁はい、桔梗︵ききょう/厳顔の真名︶も焔耶︵えんや/魏延の真 名︶ちゃんも生粋の武人ですから、おとなしく籠城戦をするのは相 に合わないのです﹂ ﹁だけど・・・私達と厳顔さんの兵力差は歴然なに・・・﹂ ﹁ふわわ・・・お姉ちゃん・・・・・・き・・・桔梗しゃまと焔耶 お姉ちゃんは劉璋しゃまと仲が悪いんでしゅ﹂ ﹁やっぱり?﹂ 1000 ﹁えぇ、私も桔梗達も劉璋様の政の酷さに今まで何度も進言したの ですが、聞き入れて下さったことは一度もありませんでした﹂ ﹁それで韓玄達が派遣された・・・と?﹂ そういうと紫苑は頷く。 ﹁だけど向こうにはそういう輩はいないようだね﹂ ﹁は・・・はい。桔梗しゃまにいたら籠城戦にするはじゅでしゅ・・ ・ふわわ・・・噛んじゃった﹂ ﹁あらあら・・・相変わらずいい子ね夏雅里ちゃん♪﹂ ふわわ∼⁉ と言いながら両手 そういうと紫苑は夏雅里を抱きかかえて、その反則的な豊満すぎる 胸に埋める。夏雅里は相変わらず をバタつかせる。俺はその光景に釘付けとなるが、紫苑がそれに気 付き微笑んで来た。 ﹁あら?、どうかしましたかご主人様?﹂ ﹁えっ⁉あ・・・いやぁ・・・・・・何でも・・・﹂ ﹁うふふ♪ご主人様、いま私のどこをご覧になられたのです?﹂ ﹁なっ⁉い・・・いや⁉な・・・何でもないよ⁉﹂ ﹁ふふっ♪そんなに遠慮しなくても、何でしたら今度じっくりと・・ ・﹂ ﹁はわわ⁉﹂ ﹁ふわわ⁉﹂ ﹁し・・・紫苑⁉今は戦の真っ最中だから⁉そういうのはちょっと ⁉﹂ ﹁あら、そうですか♪でしたら戦が終わりました夜にでも・・・﹁ あんた等・・・何やってるんだ?﹂あらあら♪﹂ 背後を見ると白馬に跨り、二年前にライルさんがあげた彼女専用の 1001 得物であるハルバート 馬雷 を手にした白蓮が呆れていた。 俺は内心で助かった気持ちをしながら話しかける。 ﹁ぱ・・・白蓮・・・準備は?﹂ ﹁あぁ、何時でも行けるよ。白馬義従も出陣を待ち焦がれてる﹂ 白馬義従とは白蓮が幽州にいた頃の騎兵隊で、射撃に優れた者を選 抜し全員に白馬を与え、戦場において自身の近くに置いた。その勇 名は異民族にまで知られていたとされ、実質上の彼女専属の部隊だ。 の中でも屈指の実力を有した精鋭部隊でもある。 今では100頭ほどの白馬しかいない。しかし俺の親衛隊である 劉天刃 ﹁分かった。斗詩と猪々子は?﹂ ﹁ここだぜ兄貴♪﹂ ﹁もう文ちゃんったら‼ちゃんとご主人様って言わなきゃダメだよ ‼﹂ 白蓮に続くように白色の鎧を身に纏い、それぜれ大剣と戦槌を手に した顔良こと斗詩に、文醜こと猪々子が現れる。 彼女達はかつての徐州攻防戦の後に袁紹を見限り、命を救ってくれ ただけではなく居場所を与えてくれた俺達に感謝して、暫くしてか ら俺達の仲間になった。 なお、鎧や武器も全て袁紹に関わる装具は処分。今の装備はライル さんが記念として用意してくれたのだ。 出陣の用意が完了したのを確認したら俺も気持ちを引き締める。 ﹁朱里、夏雅里、紫苑。それじゃ行ってくるよ﹂ 作戦は第二段階に移行。 ﹁はい、ご主人様達は予定通り厳顔軍の中枢に強襲をお願いします﹂ ﹁分かった。愛紗達にも伝令を出して。 1002 狩を始める ﹂ ﹁﹁御意﹂﹂ ﹁紫苑も予定通りに俺達の援護を﹂ ﹁了解です﹂ ﹁さぁみんな行こう‼﹂ そういうと俺も白蓮達を率いて敵軍の中枢・・・厳顔に向かって飛 燕を走らせる。 戦況はやはり俺達の優勢だ。厳顔がいくら有能で部下達も猛者であ っても野戦では俺達に有利だ。 しかも紫苑の部隊もほぼ無傷で手に入れた上に義勇兵が新たに加わ っている。兵力差は俺達に分がある。 俺も神龍双牙で敵を薙ぎ払いながら厳顔を探す。 ﹁戦えない者はすぐに降伏しろ‼俺達は命は取らない‼﹂ ﹁一刀‼﹂ ﹁白蓮‼厳顔の位置は⁉﹂ ﹁ここから少し先にいったところにいたって部下が見つけた‼﹂ ﹁分かった‼俺が行く‼白蓮は敵の掃討を‼﹂ ﹁あぁ‼だが一刀‼﹂ ﹁なに?﹂ ﹁必ず勝って戻って来いよな‼負けたら許さないからな‼﹂ ﹁分かってるさ白蓮‼そっちもな‼﹂ そう言い合うと俺は飛燕から飛び降りて厳顔がいるとされる場所に 向かって走り出す。すると少し走った先に他の敵とは違って高い闘 気を醸し出すのが一人いた。 1003 しかし同時に危険を察知する。何しろ大剣に似た得物を構える敵が こちらを狙っていたからだ。俺はすかさずバク転でかわしたが、俺 はそれに驚かされる。いきなり轟音が鳴り響いたと思ったら俺が先 ほどまでいた場所が爆発したのだ。 俺はすぐに態勢を戻して構える。俺に攻撃してきたのは灰色に近い 銀髪に紺色の服、一番の特徴で紫苑並の胸をして、左肩にデカデカ と酒と書いたパットを身につけている美女。 特徴が全て一致している。彼女が厳顔だ。 ﹁ほぅ、さっきのを避けるとはな。やるではないか小僧﹂ ﹁お褒めの言葉をどうも。あなたが厳顔さんですね?﹂ 玄徳が懐刀の北郷 一刀﹂ ﹁いかにも。儂が雒城を任されておる喧嘩士の厳顔じゃ﹂ ﹁俺は劉備軍、劉 そういうと周囲にいた厳顔軍兵士がどよめき始める。しかし厳顔だ けは軽く笑って見せた。 ﹁お主が劉備とかいう小娘に仕えとる天の御使いか・・・・・・成 る程のぅ。中々の武だ﹂ ﹁厳顔さんこそ・・・・・・戦わずにして降伏はなしといったとこ ろですね?﹂ 一刀‼ ﹁そういうことじゃ。わかっているのなら早くこい‼豪天砲の威力 を見せつけてくれよう‼﹂ ﹁ならあなたを倒して俺達は成都を手に入れる・・・北郷 参る‼﹂ そういうと俺は地面を強く蹴って突撃する。だが厳顔も俺に攻撃を 仕掛ける。その攻撃を俺はアメフトみたいにかわしたり、時にはそ 1004 れを斬り落としながら足を止めない。 しかし俺の接近戦を簡単に許す厳顔では無いようだ。俺が懐に飛び 込んだ瞬間にその場で一回転しながら回し蹴りを見舞う。 ﹁接近戦とて苦手ではないわ‼﹂ 俺もすぐに態勢を低くして回し蹴りを避け、立て続けに振り下ろさ れた豪天砲という武器を前に回避。すぐに俺も回し蹴りを浴びせる が厳顔も回し蹴りをぶつけてきた。 すぐに蹴りの姿勢を解いて神龍双牙で斬り掛かるが、それも振り上 げで阻止される。 そんな調子が暫く続き、俺と厳顔は力くらべへと発展していた。 ﹁やるではないか‼久方ぶりに血が滾ってくるぞ‼﹂ ﹁俺もです‼噂に聞いただけの勇ましさです‼劉璋の配下にしてお くのは惜しい‼ますます味方にしたくなった‼﹂ ﹁だったら儂に勝って奪ってみせよ‼﹂ そう言うと厳顔は俺の懐に飛び込んできて、そのまま豪天砲で刺突 をする。俺はすぐに受け止めるが銃口がこちらを向いていた。 ﹁この間合いなら長柄は役に立たん‼少し痛いが我慢せえよ小僧‼﹂ そう言って豪天砲のラスト一発を俺目掛けて放つ。 ﹁甘い‼﹂ ﹁なっ⁉﹂ そう言うと俺は瞬時に神龍双牙の薙刀を解除して、地で放たれた一 1005 発を至近距離で切断。切断された弾丸はそのまま俺の背後で二箇所 で爆発する。 ﹁凄く痛いですけど我慢して下さい‼﹂ 俺はそのままもう一方の天の峰で厳顔の腹部に渾身の一撃を食らわ せた。 ﹁がはっ⁉﹂ 交わし切れなかった厳顔はそのまま豪天砲を手放し、少し先に飛ば される。 豪天砲 でしたっけ? ﹁ぐっ! 本当にかなり痛いではないか・・・・・・﹂ ﹁厳顔さんの・・・ あれの弾に比べたら痛くは無いと思いますよ﹂ そう言いながら俺は倒れたままになっている厳顔の首筋にそっと鋒 を突きつける ﹁降伏してくれますね?﹂ そう厳顔に問う。すると彼女は微笑みながら俺の顔を見る。 ﹁ふふっ。確かに儂の負けじゃ。潔く降伏するとしよう。それに・・ ・・・・﹂ 漆黒の魏旗 が見えなくなって そういいながら厳顔は味方部隊の方角を見る。俺も横目で見てみる と先ほどまで遠くだが見えていた いた。 1006 翠と蒲公英が担当していた魏延の牙門旗だったが、見えないという ことは向こうも終わったようだ。 ﹁もう一人も捕まったみたいじゃからな﹂ ﹁魏延ですね?恐らくは俺達の本陣にいます。立てますか?﹂ ﹁何とかな・・・﹂ ﹁さぁ、行きましょう。紫苑達が待ってますよ﹂ ﹁ほぅ・・・紫苑も降ったとは聞いておったが、既に真名まで託さ れとるとは・・・﹂ ﹁ええ。紫苑も既に俺達の大切な仲間です。厳顔さんも﹁桔梗じゃ﹂ ・・・﹂ ﹁儂の真名は桔梗じゃ。この真名をお主に預けるとしよう。お館様 ♪﹂ ﹁お・・・お館?﹂ そんなやり取りをしながら俺は飛燕に豪天砲を載せ、桔梗に肩を貸 して本陣に戻る。 自分達の大将が捕縛されたと知った厳顔軍将兵は次第に降伏してい き、雒城も無事に制圧出来た。成都への道のりは目と鼻の先に近づ いついた・・・・・・。 1007 第131話:豪快の喧嘩士︵後書き︶ 厳顔こと桔梗を降し、雒城を陥落させた一刀達は城内にて決戦に向 け、英気を養う。 海兵隊の誇り,Re 新たな仲間になったが一刀を認めない魏延こと焔耶は一刀に仕合を 真・恋姫無双 申し入れた。 次回 [御膳仕合] 剛力少女が御使いに挑む。 1008 第132話:御膳試合︵前書き︶ 自身の力を過大評価している魏延に一刀が灸を据える。 1009 第132話:御膳試合 雒城を陥落させ、見事に厳顔と魏延を配下に加えることに成功した 俺達。今は再編成の為に雒城へと駐留。益州の都である成都に万全 の状態で挑む為に、今は少し休息することにする。 玄徳です‼﹂ そして俺達の本陣では桔梗と魏延が桃香達と顔合わせをしていた。 ﹁劉備殿ですかな?﹂ ﹁は・・・はい‼私が劉備 ﹁そんなに賢たまらないで下され。儂の名は厳顔。真名は桔梗。今 後は劉備殿の為にこの喧嘩士の力をお使い下され﹂ ﹁はい‼でしたら私のことも桃香って呼んで下さいね♪﹂ ﹁あ・・・あの‼劉備様‼わ・・・私のことも焔耶とお呼び下さい ‼﹂ ﹁うん♪だったら私のことも桃香って呼んでね♪焔耶ちゃん♪﹂ 真名を託されて前髪の右側にメッシュを入れて、黒のホットパンツ や首に巻かれたチョーク、両腕を覆うような赤い手甲を身につけた 魏延は嬉しそうだ。 なんだか分からないが、どうやら桃香に一目惚れしたようだ。する と魏延は桃香に抱きかかえられている刀瑠に視線を移す。 ﹁ほぅ、桃香様にも子どもがおられますのか﹂ ﹁うん‼私とご主人様の子どもです‼﹂ ﹁・・・・・・・・・桃香様﹂ ﹁なに?﹂ ﹁その・・・ご主人様という者は?﹂ 1010 ﹁えっ?いま桔梗さんの隣にいるのがご主人様だよ♪﹂ 桃香が俺を教えると魏延は俺に歩み寄ってきた。それも相当な気迫 と共にだ。 ﹁・・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁これ焔耶‼名乗らんか‼﹂ 一刀。よろしくな魏延﹂ ﹁は、はい桔梗様・・・・・わたしの名は魏延だ﹂ ﹁俺は北郷 ﹁それじゃあ愛紗ちゃん達が帰ってくるまで﹁お待ちください‼桃 一刀‼﹂ 香様‼﹂・・・・・焔耶ちゃん?﹂ ﹁北郷 ﹁なんだ?魏延?﹂ ﹁これからわたしと試合え‼﹂ 魏延は肩幅に足を開くと人差し指を刺しながら俺に試合を申し込ん できた。いきなりのことだったので全員が呆気に取られてしまう。 ﹁・・・・・え・・・えっと・・・いきなりどうしたの?﹂ ﹁お前が本当に桃香様に相応しい奴か確かめたいだけだ‼﹂ どうやら俺はあまり魏延から印象をよく受けられていないようだ。 ﹁やめぬか焔耶よ‼お館様は儂を退かせる程の武人ぞ‼未熟なお主 に勝てる筈がなかろう‼﹂ ﹁いえ‼桔梗様がただ負ける筈がありません‼どうせこいつはあの 馬岱とかいう奴と同じ何か卑怯な手を使ったに決まってます‼その ようなこいつが桃香様に相応しい筈がありません‼﹂ 1011 カチンッ 何だか分からないが魏延の一言が癪に触った。戦ったこともない奴 が何を言うか・・・。 ﹁いい加減にせぬか焔耶‼実力も図らぬのに相手を見下すなと何度 も﹁いいぜ・・・やってやるよ﹂・・・お館様⁉﹂ ﹁戦後処理でみんなが帰ってくるまでやることが無いんだ。それに・ ・・そこまで言われて黙っているほど俺は背負ってない‼﹂ 俺がそう言い放つと本幕にいた全員が驚愕したがどうでもいい。 彼女にはきついお灸を据えてやる必要があるからだ。俺が先に天幕 を出ると魏延も後に続いた。 ﹁すみませんな桃香様、焔耶の奴は昔から喧嘩癖が強いじゃじゃ馬 でしてな﹂ ﹁あ・・・あははは・・・・・・大丈夫かな?焔耶ちゃん・・・﹂ ﹁なぁに・・・お館様なら手加減をして下さるじゃろて。それに今 のは確かに焔耶が悪い。一度きっちり灸を据えて貰ったほうがよい でしょう﹂ 楽しそうな表情をしながら桔梗も天幕を後にして俺達の後に続く。 桃香も呆気に取られてしまうが、ようやくその後に続いて来た。 外に出ると担当地域の戦後処理から帰って来たクラウドさんとポー さん、それに紫苑と朱里、夏雅里、白蓮、斗詩、猪々子も帰って来 たようだ。 愛紗達はどうやらまだ掛かるらしいと斗詩が報告してきた。 1012 ﹁桔梗、あなたもご主人様に?﹂ ﹁おぉ紫苑ではないか‼もちろん焔耶もじゃが見ての通りだ﹂ ﹁ふふっ♪焔耶ちゃんは相変わらずね♪﹂ ﹁えっ・・・えっと・・・・・・こ・・・これはどうしたんでしょ う?﹂ ﹁ふわわ∼・・・﹂ ﹁あいつって確か・・・魏延だよな?﹂ ﹁ご主人様と試合する見たいだけど・・・﹂ ﹁あっ⁉あたいもアニキと試合したいよ‼﹂ ・・・最後あたりの発言は欲望のような・・・。 ﹁なら儂が審判役を務める。よいな?﹂ ﹁お前なんか瞬殺してやる‼﹂ ﹁・・・やれるならね﹂ 魏延は何処からか棍棒のようなデカイ打撃武器を取り出して両手で 構える。俺も神龍双牙の片方である天を抜刀して片手で構える。 ﹁はっ‼なんだその細い剣は‼私を舐めているのか⁉﹂ ﹁舐めてるかどうか、やってみれば分かるよ。負ける気なんて鼻 から無いけどね﹂ ﹁ふんっ‼そんなものわたしの鈍砕骨で文字通り粉砕してやるぞ‼﹂ ﹁それでは・・・・・・始め‼﹂ ﹁はああああああああああああああ‼‼﹂ 開始早々、魏延は鈍砕骨を俺に向かって振り下ろしたが、その動き を冷静に見極めてパターンを瞬時に選び、身構える。 ﹁ふっ‼﹂ 1013 恐らくは見ている彼女達は何が起こったのか分からないだろう。振 り下ろされた鈍砕骨を弾き飛ばし、天の鋒を魏延の喉元に突き付け ていた。 ﹁し・・・勝者‼お館様‼﹂ 桔梗からの勝利判定を受けて鋒を下げて、天を鞘に納めた。 ﹁き・・・・・貴様‼汚いぞ⁉﹂ ﹁は?﹂ ﹁私の鈍砕骨を簡単に弾き飛ばすだなんて一体どんな妖術を使った ⁉﹂ ﹁妖術なんか使える筈がないじゃないか。君の振り下ろしに隙が見 えたからそこを突いただけだよ﹂ ﹁嘘をつけ‼こんなことはありえん‼﹂ ﹁それくらいにしておけ焔耶﹂ ﹁しかし、桔梗様⁉・・・ギャフッ⁉﹂ ﹁武人なら武人らしくこういった時くらい潔くするものじゃ‼馬鹿 者‼﹂ ﹁・・・・・はい﹂ 桔梗に頭頂部にモロ拳骨を喰らい、魏延は頭を抑えながら蹲って敗 北を認める。 ﹁ほれっ‼お主が負けたのだから詫びも兼ねて真名を預けんかい‼﹂ ﹁ええ⁉﹂ ﹁なんじゃったらお主のだ∼いすきな犬猫を大量に小部屋に一緒に 閉じ込めて貰いたいのか?﹂ ﹁ひぃ⁉そ・・・それだけはどうか勘弁してください桔梗様⁉﹂ 1014 ﹁分かったならさっさと真名を預けんかい‼﹂ ﹁うう∼・・・・・・わ・・・私の真名は焔耶だ・・・お館﹂ ﹁分かった。宜しく頼むよ、焔耶﹂ ﹁ふんっ‼﹂ この後、桔梗と焔耶は全員に真名を預け、孫呉海兵隊と聞いたクラ ウドさんとポーさんに2人はまた試合を挑んだが、結果は2人の敗 北というのは言うまでも無い。 俺達は二日後に軍備の再編成を完了させ、そのまま進軍を再開させ て青白江と新都城を無血制圧。 士気は最高潮のまま、俺達は最終目標である成都に進軍する・・・・ ・・。 1015 第132話:御膳試合︵後書き︶ 青白江、新都城を無血制圧した俺達は遂に成都へと辿り着く。士気 海兵隊の誇り,Re で遥かに下回る敵は次々と降伏していく中、一刀達は最後の障害と 真・恋姫無双 立ち向かう。 次回 [天の御遣いvs忠義の武人] 愚者に忠義を貫く武人が御遣いに挑む。 1016 第133話:忠義の武人︵前書き︶ 一刀達の前に最後の劉璋軍武将が対峙する。 1017 第133話:忠義の武人 劉備軍による益州平定は間も無くで達成されようとしていた。雒城 が陥落してから俺達に降伏する劉嶂軍が相次ぎ、瞬く間に軍事力は 拡大していった。 天府の国 と呼ばれてきた。 そして俺達は成都に軍備を進ませる。成都は豊かな成都平原の中に あって古くから しかし今の成都は劉璋により疲弊の一途を辿り、無理な軍備増強と それに伴う増税という先軍主義で民は疲弊している。だから一刻も 早く成都を解放するのだ。 俺達は既に成都城を包囲。民の避難も完了させた。残るは籠城する 劉璋軍を降伏させ、劉璋本人を捕らえるだけだ。 俺は飛燕に跨り、神龍双牙を両手に構えて城門前に陣取る。 一刀‼劉 玄徳が懐刀にして天の御遣いと言われている‼俺達 ﹁劉璋軍‼すぐに城門を開けて降伏してくれ‼俺は北郷 備軍大将の劉 玄徳といいます‼お願いです‼どう は侵略しに来たのではない‼俺達はただ、この益州に暮らす民を護 りたいだけだ‼﹂ ﹁劉璋軍の皆さん‼私は劉備 か門を開けて降参して下さい‼私はこれ以上の戦いは回避したいん です‼﹂ 俺達の名前を聞いて城壁にいる劉璋軍兵士に動揺が広がる。更に俺 は畳み掛ける。 1018 ﹁もう一度いう‼すぐに城門を開けて降伏してくれ‼無駄な殺生は したくはないが、民を救う為ならお前達を倒さなければならない‼ だが俺もそんなことはしたくはない‼ だから頼む‼武器を捨てて降伏してくれ‼﹂ 今一度降伏を促し、城壁からはなにやら言い争っている声がしてき た。恐らくは降伏したい敵と籠城する敵が揉めているのだろう。 暫く様子を伺っていると、城門が音を立てて開門し始めた。 降伏してくれるのかと思い、俺は思わず安堵の表情をしてしまうが、 それもすぐに元に戻る。 開いた城門から鎧を身に纏った男がいたが、その男から発せられる 気迫と覇気によってだ。 袖の無い白い龍が描かれた黒の服装に裏地が赤色の腰に身に付ける マント、猛禽類を思わせる額当て、太めのベルトのようなものが左 右2本ずつ付いた黒いブーツ、右目に出来た切傷を隠すように眼帯 を付けた灰色の髪をした初老の男性だ。 一刀様です 揖礼をして、俺と桃香もすぐ 玄徳様と、天の御遣いの北郷 揖礼の姿勢をとる。 その人は俺達の前に立ち止まると正 に正 ﹁劉備軍総大将の劉備 な?﹂ 一刀です﹂ ﹁はっ・・・はい‼劉備です‼﹂ ﹁北郷 ﹁私は劉璋軍宿将。劉璋様が家臣の張仁と申します。名高きお二人 に御目にかかり、まこと光栄であります﹂ 俺は驚愕した。暗愚と称されても最後まで劉璋に付き従った忠義の 武人が目の前にいるのだから当然だ。 1019 ﹁お二人の噂、ここ成都にも響いておりますぞ。暮らす民も劉璋様 より劉備様に益州を納めて欲しいと聞きますぞ﹂ ﹁それなら話が早い・・・俺達に降伏してくれませんか?﹂ ﹁お願いです‼私達はこの国を救いたい・・・だから私達に力を貸 して下さい‼﹂ ﹁この国・・・この大陸から戦を無くし・・・・・・皆が笑って暮 らせる仁の世を作るために・・・あなたの力をどうか・・・俺達に 貸してくれませんか?﹂ 俺と桃香の思いを力強く訴えかける。張仁は少しだけ俯き、そして 首を横に振るう。 ﹁・・・・・・すまぬ。それは出来ない相談だ﹂ ﹁⁉・・・どうしてですか⁉劉璋さんは民を疎かにして、保身に走 っているんですよ⁉それなのに・・・それなのに何でそんな人に仕 えるんですか⁉﹂ ﹁・・・・・・私は武人。そして我が主は劉璋様のみ。例え劉璋様 が圧政を敷き、独裁者に仕える飼い犬と陰口を叩かれようと一度忠 を誓ったからには、二君には従えぬ﹂ ﹁・・・そんな・・・﹂ 張仁さんの言葉に俺は言葉を失い、桃香は悲しい顔をする。 ﹁故にここで私を取り逃せば、再び貴方達を狙いましょう。情に駆 られる位なら私は貴方を道連れに致します。劉備様﹂ ﹁そんな・・・私には分かりません‼私には﹁それまでにしておこ う、桃香﹂ご・・・ご主人様?﹂ 俺は一歩だけ前に出て桃香の言葉を遮る。 1020 ﹁これ以上は張仁さんへの侮辱になる。言葉ではまずこの人は考え を変えない﹂ ﹁うむ・・・ご理解くださったかな?﹂ ﹁えぇ、あなたのように忠義を誓う人はライルさん以外に会ったこ とがありません﹂ ﹁おぉ、呉に仕える銀狼か・・・ふふ。そのような素晴らしい御仁 と比べられるとは嬉しい限りだ﹂ ﹁えぇ。しかしだからと言って俺の大事な家族を傷付けられる訳に はいきません﹂ ﹁・・・・・・・・・うむ、よい眼をしておる。流石は天の御遣い と称される英雄だ・・・・・・・・・ここからは言葉は不要・・・﹂ そう言うと張仁さんは背中に背負っていた得物・・・赤色の刀身が 印象的な双鉤を抜刀して構える。 ﹁己の信念を貫きたくば、我が身を屍に変えてみせよ‼﹂ 一刀‼﹂ ﹁・・・・・・分かりました。俺はこんなところで負ける訳にはい きません‼北郷流二刀心眼術師範‼天の御遣い北郷 ﹁我が名は張仁‼劉璋軍宿将にして巴蜀の守護者‼﹂ ﹁いざ尋常に‼﹂ ﹁推して‼﹂ それを互いにいいながら、姿勢を少しだけ互いに低くして足に力を 貯める。そして・・・・・・。 ﹁﹁参る‼‼﹂﹂ 同時に地面を蹴って、互いの刃がぶつかった・・・・・・。 1021 北郷 一刀と 忠義の武人 第133話:忠義の武人︵後書き︶ 天の御遣い 海兵隊の誇り,Re 張仁。2人の戦士が刃 を交え、雌雄を決する為に武を振るう。勝つのは御遣いか、それと 真・恋姫無双 も忠義か・・・。 次回 [強い意思] 四筋の刃が舞い踊る。 1022 第134話:強い意志︵前書き︶ 一刀と張仁。二人の英雄が剣を交える。 1023 第134話:強い意志 ﹁はぁああああ‼‼﹂ ﹁でりゃああ‼‼﹂ 成都城の正門前にて行なわれている俺と張仁さんによる一騎打ちは 激しさを増していた。俺の神龍双牙を立て続けで薙ぎ払うように攻 撃すると双鈎の月牙で防がれ、反対に張仁さんは双鈎の柄頭にて振 り上げで攻撃を仕掛ける。 ﹁まだまだぁ‼‼﹂ ﹁甘いぞ‼﹂ 張仁さんが回転しながら柄頭で刺突を仕掛けて、俺がそれを回避す ると立て続けに振り上げ。それをすぐに受け止めて弾き返して、同 じように回転しながら斬りかかる。 すると張仁さんはすぐに後方へ飛び上がり、俺も距離を置いて神龍 双牙を構え直す。 ﹁ふん・・・・・・噂に聞いた通り見事な武だ﹂ ﹁あなたこそ・・・流石は巴蜀の宿将・・・世界が広いことを実感 します﹂ ﹁嬉しいことを言ってくれるな・・・﹂ ﹁どういたしまして・・・﹂ 俺達は互いに相手の出かたを伺いながら気迫をぶつけ合う。そして この人の実力は間違いなく高く、恐らくは恋や愛紗達の上を行く。 1024 ライルさんでもどうなるか分からないだろう。 しかし状況的には俺が不利の状況だ。何しろ彼が持つ双鈎は多種多 様な攻撃パターンを有する武器。 状況に合わせて攻撃パターンを変えられる武器に巴蜀きっての武人。 この二つが組み合わさるとここまで脅威になるとは・・・。 ﹁ふふ・・・どうかしたかな?﹂ ﹁いえ・・・・・・はっきり言うとここまで強いとは・・・思いま せんでしたよ﹂ ﹁それは私も同じことよ・・・恐らくそなたは私が育てあげたヒヨ ッコ共より強く・・・尚且つ今まで出会った武人達の中で一番であ ろうな・・・・・・しかし・・・﹂ ﹁だが・・・﹂ ﹁﹁俺︵私が︶勝つ‼‼﹂﹂ 向こうの武が柔軟なら俺はそれを上回る圧倒的な剛を持って戦うだ けだ。素早く神龍双牙を薙刀にして張仁さんに襲いかかる。 振り下ろしから回転しながらのなぎ払い、その直後に刺突。張仁さ んは全てを回避するとすかさず反撃。 今度は連続の斬撃、しかもただ無闇に斬りかかるのではなく、肘打 ちや回し蹴りも入った素早い攻撃だ。 距離を再び稼ぐ為に回転して斬撃をお見舞いするとすかさず回し蹴 りを食らわせる。 流石に予想していなかったようで双鈎を重ねて受け止め、後ろに弾 き飛ばされる。 1025 それを見逃さず一気に距離を詰めて神龍双牙を再び二つに分けて素 早く振り上げと振り下ろし、なぎ払い、刺突を組み合わせた斬撃を 見舞う。 だがそこは歴戦の猛者だ。 そんな不利の体制にも関わらずそれらを全て双鈎で受け止め、攻撃 から防御。防御から攻撃という目にも止まらぬ早さで互いを攻撃す る。 そして俺が神龍双牙で斬りかかるとそれを重ねた双鈎で受け止め、 暫くの力比べに発展する。 ﹁ぐぅ・・・ふぅうううう‼‼﹂ ﹁ふぅうううう・・・・・・ふん‼﹂ 力比べから張仁さんは隙を突いて俺の腹部に蹴りを見舞う。その力 強い蹴りで俺は後方に飛ばされてしまう。 ﹁がはっ⁉﹂ 身体を城壁に叩きつけられ、一瞬だが呼吸が遮られる。たがそれは 張仁さんからすればまたとない好機だった。 ﹁これで終わりだ‼御遣い‼﹂ 張仁さんは飛び上がり、双鈎の鋒を向けながら俺を突き刺そうとす る。 ここまでか・・・ 1026 ﹄ 心の中で諦め掛けたその時・・・。 ﹃ご主人様‼⁉ 桃香達の声が聞こえ、更にここにはいないみんなの顔が浮かび上が ってきた。すると俺はすぐに前に転がる。 ﹁なにっ⁉﹂ そのまま降ってきた張仁さんは地面に双鈎が突き刺さり、俺はすぐ そばに落ちていた天をすぐに掴み、振り向きながら俺は・・・・・・ 。 ﹁くっ⁉﹂ ﹁ふん‼﹂ 薙ぎ払いながら俺は張仁さんの背後に回る。そして暫くの沈黙の後 で・・・。 ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・見事・・・だ・・・﹂ 張仁さんは双鈎を地面に落とし、そのまま片膝を地面に突き、背中 から倒れる。 俺はもう片方の空を拾い上げ、神龍双牙を納刀するとすぐに張仁さ んの下へ歩み寄る。 ﹁張仁さん・・・﹂ 1027 ﹁ふふふ・・・見事だ・・・・・・﹂ 俺は倒れながらも俺の勝利を讃える張仁さんを見下ろす。すると人 混みから桃香と紫苑、桔梗、焔耶の4人が駆け寄ってきた。 ﹁張仁さん‼﹂ ﹁烈光︵れっこう/張仁の真名︶様・・・﹂ ﹁烈光・・・﹂ ﹁お爺様‼﹂ ﹁よう・・・・・・・・・久しいな・・・娘達・・・﹂ ﹁烈光・・・すまぬ・・・・・・お主は最後まであの小僧に忠義を 誓っておったのに・・・儂らは・・・﹂ 桔梗は張仁さんの手を取りながら、寝返ってしまったことを詫びる。 しかし張仁さんは微笑みながらその手を重ねる。 自らの考えに従うのは恥じることではない ・・・と・・ ﹁何を謝る・・・・・・い・・・いつも言っておいたで・・・あろ う・・・ ・・・・﹂ ﹁﹁﹁・・・・・・・・・﹂﹂﹂ ﹁・・・どうして・・・・・・﹂ 沈黙の中、桃香が張仁さんに話しかける。その瞳には涙を浮かべな がらだ。 わ・・・・・・私は・・・ち・・・忠義に・・・生 ﹁どうしてあなたは・・・そこまでやる必要があったのですか?﹂ ﹁ふふ・・・ きることしか・・・知らぬ・・・そ・・・・・・それに・・・わ・・ ・私は後悔などしておらぬ・・・最後・・・最後まで・・・・・・ お・・・己の信義を・・・貫け・・・・・・たのだから・・・ごほ 1028 っ⁉﹂ ﹁烈光⁉﹂ ﹁だ・・・だから・・・・・・そんな悲しい・・・顔は・・・し・ しないでくだされ・・・﹂ 張仁さんは流れる桃香の涙を拭うと、紫苑達に振り向く。 ﹁紫苑・・・﹂ ﹁はい・・・﹂ ﹁璃々を・・・しっかりと・・・育ててやれ・・・あの子は・・・ 私にとっても・・・・・・孫のような・・・・・・子だからな・・・ ﹂ ﹁はい・・・﹂ ﹁焔耶・・・﹂ ﹁お爺様⁉﹂ ﹁お・・・お前は・・・・・・今までで・・・最高の・・・弟子だ・ ・・・鍛錬を・・・・・・怠るなよ・・・﹂ ﹁は・・・はい‼・・・ひく・・・わ・・・分かりました‼﹂ ﹁き・・・桔梗・・・﹂ ﹁・・・なんじゃ?﹂ ﹁さ・・・先に逝って・・・・・・待って・・・おるぞ・・・・・・ ま・また・・・共にさ・酒を交わそうぞ・・・﹂ ﹁・・・・・・あぁ。あの世で待っておれ。美味い酒を用意してお らなかったら承知せぬぞ﹂ ﹁ふ・・・ふふ・・・・・・言いよる・・・・ぐ・・・ごほっ⁉ご ほっ⁉﹂ ﹁烈光様⁉﹂ ﹁お爺様⁉﹂ ﹁烈光⁉﹂ 1029 張仁さんは咳込みながら血を吐き、だがそれでも最後の力を振り絞 って俺と桃香を見る。 ﹁ほ・・・北郷・・・殿・・・劉備様・・・﹂ ﹁・・・・・・﹂ ﹁私の・・・・・・真名は烈光・・・・・・この真名を・・・ふ・・ ・二人に・﹂ ﹁・・・はい・・・・・・確かに預かりました﹂ ﹁私も・・・私も確かに預かりました‼﹂ ﹁すまぬ・・・・・・・・・しかし・・・我が・人生・・・最後ま で・・・・・・す・ばらしき・・・もので・・・・・・あった・・・ ﹂ 烈光さんの力が抜けて行くのを感じ取る。 ﹁この国を・・・・・・任せ・・・ました・・・・・・ぞ・・・・・ ・・・・﹂ その言葉を最後に烈光さんの瞼がゆっくりと閉じ、俺の手を掴んで ﹂ いた右手は力が完全に抜けて、地面に小さく音を立てながら落ちた。 ﹁烈光‼⁉ ﹁烈光様⁉﹂ ﹁お爺様・・・・・・お爺様‼⁉﹂ 桔梗と紫苑は目を伏せ、焔耶の瞳からは涙が溢れている。俺は地面 に落ちた手を掴み直し、力強く握りしめた。 ﹁・・・烈光さん・・・・・・俺は・・・あなたのような素晴らし い方に出会えたことを・・・一生忘れません。だから・・・俺たち 1030 の道を・・・見守って下さい・・・﹂ 俺は涙を堪えながら、烈光さんに感謝の意を口にする。烈光さんが 戦死したことで劉璋軍はもはや軍の統制も取れずに降伏。 すぐに成都城へと突入して劉璋を討ち取り、俺達は益州を手に入れ られた。 それから数日後の雒城郊外にある見渡しがよい丘の上、ここに一つ の墓標が立てられた。 この益州を守り続け、最後は華々しく俺達に益州を託して散って行 った英雄・・・・・・張仁は魂になりながらも、彼が愛した益州を 見守っていた・・・・・・。 1031 第134話:強い意志︵後書き︶ 遂に成都を陥落させ、益州を制した劉備軍。疲弊していた民の心を 癒しながら戦後処理にあたる。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re クラウドとポーも影ながら手伝い、そして彼等が帰還する時が迫る。 次回 [戦いの後] 国を得た仁徳王と御遣いが二人の狼を見送る。 1032 第135話:戦いの後︵前書き︶ クラウドとポー。二人が建業へ帰還する時がやって来る。 1033 第135話:戦いの後 数ヶ月にも及ぶ劉備軍の益州平定は成都を制圧したことにより幕を 閉じた。 形骸に成り下がったてはいたが、実質上の大将であった劉璋と忠義 を貫き通し、一刀君達に益州を任せた張仁を失ったことで劉璋軍は 戦意を完全に消失。 一部では未だに抵抗を続ける輩もいるが、大半は素直に降伏。抵抗 を続ける残党もいずれ降伏するだろう。 一刀君や桃香ちゃん達は現在、内政の改善に尽力を尽くしていたが 予想以上に酷かった。 劉璋に侍る官吏達は民から巨額の税を搾り取ったら自らの懐に仕舞 い込み、民の為に使われることはなかった。 そのため田畑水田は荒れ放題。道もろくに整備されていないなど、 挙げたらキリがない。 一番酷かったのは民そのものだ。中佐から聞かされていた華やかな イメージの成都は面影すらなく、飢えに苦しんで死んだように座り 込む民もいれば、そこ等に落ちていた残飯を取り合う子供達。 大通りに虫が集った死体も何体かあった。紫苑殿や桔梗殿達が見限 る気持ちが改めて理解できる状況だ。 1034 まずは民に炊き出しを行なうことになったが数が予想以上に多く、 交州を平定して帰還していた中佐にMREレーションを片っ端から 空輸してもらうことになった。 民の炊き出しを行ないつつ、成都の復興を進めること3日。城内の 一室で・・・。 ﹁うえ∼ん⁉ぜんぜん終わらないよ∼⁉﹂ 目を通す必要がある書類に桃香が悲鳴をあげていた。 ﹁桃香、キツイのは分かるけど頑張って﹂ ﹁ふぇ∼ん⁉ご主人様ぁ∼手伝って∼⁉﹂ ﹁あのね・・・桃香はまだマシな方なんだよ?・・・俺なんて昨日 から寝ずなんだからさ・・・﹂ ﹁それでもキツイの‼朱里ちゃ∼ん‼雛里ちゃ∼ん‼夏雅里ちゃ∼ ん‼早く戻って来てよ∼‼﹂ 扉の向こうから悲鳴と救援要請を発する桃香ちゃん。それを宥めな がら自分も必死に書類と格闘する一刀君。まあ、旧劉璋軍の無能な 文官共が無視していた民や治安に関する重要な書類を精算している のだから仕方が無いだろう。 そう考えて俺は扉をノックした。 ﹁はい?﹂ ﹁一刀君、桃香ちゃん﹂ ﹁あぁ、クラウドさん。扉は開いてますからどうぞ﹂ ﹁失礼するよ・・・・・・・・・また何という量なんだ?﹂ 扉を開けるととんでもないびっくり箱だ。二人が仕事をする机の上 1035 には積み重なった竹簡、床にも決算を済ませた竹簡と書類が所狭し と置かれていた。 ﹁た・・・大変そうだな﹂ ﹁まあ・・・全てが民の為になるものですから無下には出来ません よ。それで、用事は何ですか?﹂ ﹁あぁ、MREレーションの輸送があらかた終わった。見たくはな いだろうが、これが報告書だ。重要じゃないから落ち着いたら確認 してくれ﹂ そういうと俺は持っていた書類を一刀に手渡す。因みにこの瞬間に 桃香の涙目が更に増したというのは言うまでもない。 ﹁それと中佐から指示が来た。俺とポーは次の最終輸送便が到着次 第建業に帰還せよらしい﹂ ﹁帰還命令ですか・・・﹂ ﹁そうだ。忙しい時にすまないが、こちらも任務だ。それに契約は 成都制圧完了までだったからな・・・﹂ 中佐からの帰還命令。確かに俺とポーが劉備軍と行動を共にするの はここ成都攻略完了まで。 その攻略が完了した今、任務が完了されて建業へと帰還しなければ ならない。 帰還命令を伝えると一刀君はその場で立ち上がる。 ﹁そうですか・・・・・・もう少しだけいて貰いたかったですけど 仕方が無いですね。輸送ヘリの最終便はいつ来るんですか?﹂ ﹁予定では明日の朝に到着する。大型機が2機とオスプレイが1機。 最後の援助物資を満載してくる﹂ 1036 ﹁分かりました。でしたら仕事の引き継ぎだけして頂いてくれませ んか?﹂ ﹁了解だ・・・・・・それと一つ頼みがある﹂ ﹁なんですか?﹂ ﹁俺と君は同年代なんだからさ。堅苦しい敬語はやめてくれないか ?﹂ ﹁えっ?・・・・・・でも・・・いいんですか?﹂ ﹁いいの。ポーも言ってたぞ。君は少し無駄に固いって﹂ ﹁はぁ・・・・・・・・・分かったよ。これでいいかな?﹂ ﹁OKだ。じゃあ俺は失礼するよ。仕事がんばってくれ﹂ ﹁うん﹂ ﹁は∼い﹂ そういいながら俺は二人の執務室を後にする。撤退の準備をする為 にあてがわれた部屋へと向かう。 翌日の朝・・・・・・。 予定通りCH−53Kスーパーシースタリオンが2機とMV−22 Bオスプレイの3機編隊が最後の援助物資を積載して成都に到着し た。補給部隊がすぐに援助物資を降ろしていき、それを受け取った 劉備軍の補給部隊が兵糧庫へと格納していく。 1037 すぐに作業は完了して補給部隊の隊員がスタリオンに登場。もう1 機にグロウラーを搭載する。それを確認した俺とポーは同伴してい た南郷大尉と共に一刀君と対峙していた。 ﹁武久さん、お久しぶりですね﹂ ﹁あぁ、元気そうでよかったよ。それと巴蜀の平定おめでとう﹂ 続いて ﹁ありがとうございます。クラウドとポーも今までありがとう﹂ ﹁こっちこそ、君達と一緒に行動できて楽しかったよ﹂ ﹁また遊びに来るから、その時には頼むよ﹂ 俺は手を差し伸べると一刀君も差し伸べて握手を交わす。 ポーと大尉も同じように手を差し伸べて彼と握手を交わす。 すると彼の背後から朱里と夏雅里と雛里が歩み寄って来た。 ﹁あの・・・南郷さん﹂ ﹁よう朱里に雛里。元気そうでよかったよ﹂ はわわ∼ と あわわ∼ といいながら照れてしま 歩みよってきた二人を大尉はその場で屈んで頭を撫で始める。二人 は相変わらず っている。 ﹁それで君は?何だか朱里に似てるが・・・﹂ ﹁ふわわ⁉わ・・・私は朱里お姉ちゃんの妹でしゅ‼し・・・しぇ いは諸葛‼名はき・・・均‼あ・・・あじゃ・・・あじゃにゃは子 魚‼まにゃ・・・真名は夏雅里でしゅ‼・・・ふわわ・・・・・・ 噛んじゃった・・・﹂ ・・・・・・相変わらずだが・・・舌足らずである上に噛みまくり だが、そこが何とも可愛らしい。というか本当に保護欲に駆られて 1038 しまう。 気が付けば俺は夏雅里ちゃんを抱きしめていた。 ﹁ふわわ⁉く・・・クラウドしゃま⁉﹂ ﹁・・・・・・連れて帰る。そんで育てる﹂ ﹁ちょ⁉・・・クラウド⁉﹂ ﹁落ち着けクラウド‼気持ちは本当に分かるが人攫いみたいなこと をするな⁉﹂ ﹁はっ⁉・・・・・・俺は何を・・・﹂ 気が付けば俺はオスプレイに向かって夏雅里ちゃんを抱きかかえな がら向かっていた。しかしポーが後頭部を叩いてくれたお陰で正気 を取り戻した。 ﹁ふわわ∼・・・・・・お姉ちゃ∼ん・・・きゃん⁉﹂ 俺から解放された夏雅里ちゃんはトテトテと姉の側に向かうが、そ の手前で躓いて転んでしまう。再び保護欲に駆られてしまいそうだ ったが何とか制止して見ていた。 そんな光景に一刀君は苦笑いをしていた。 ﹁ははは・・・・・・相変わらずだな・・・﹂ ﹁中佐と千里から聞かされてはいたが・・・何とも可愛らしい光景 だな・・・﹂ ﹁す・・・すまなかった・・・一刀﹂ ﹁ご主人様・・・これを・・・﹂ ﹁いえ・・・・・・そ・・・それよりこれをライルさんと孫策に渡 してくれませんか?﹂ そういうと雛里から親書と思える手紙を受け取り、それを大尉に渡 1039 す。 ﹁大尉、離陸準備が完了しました。何時でも帰投可能です﹂ 後方からオスプレイのパイロットが敬礼をしながら準備完了を報告 する。俺と大尉とポーも敬礼を返すとパイロットはすぐにオスプレ イに戻って行った。 ﹁じゃあ俺達は帰るよ。中佐に何か伝言はあるか?﹂ ﹁そうだね・・・・・・情勢が安定したら使者を送るっていってく るないかな、クラウド?﹂ ﹁分かったぜ。任せてくれ﹂ ﹁じゃあな﹂ 伝言を預かると俺達は敬礼をしてすぐにオスプレイに乗り込む。搭 乗を確認したオスプレイパイロットは後部ハッチを閉鎖し、メイン ローターを始動させてゆっくりと高度を上げていく。 そして一定の高度に達するとローターの向きを変えて建業に向かう。 俺は窓から劉備軍を眺めていた。 ﹁一刀とかなり仲良くなったようだな?﹂ ﹁えぇ、彼等は本当にいい奴等ですよ。中佐が目を掛けるのもよく 理解出来ました﹂ ﹁まったくですよ師匠。もし最初に彼等と出会っていたら恐らく彼 等についてた位に﹂ ﹁流石は北郷一族きっての武人だ・・・お前達二人の心も掴んだよ うだ・・・今度くる時には土産でも用意してやるか・・・﹂ 一刀達の印象を話しながら俺達を乗せた輸送部隊は途中でジーンへ の要請を行ない、燃料補給を繰り返しながら建業へと帰途についた。 1040 劉備軍が蜀を平定したことにより、漢の勢力は孫策様の呉軍に一刀 君と桃香ちゃんの蜀軍、そして曹操率いる魏軍。天下はこの三つに より動くことになる。 時がくれば曹操が攻め込んで来るだろう。だが今は身体を休めると しよう。帰ったらなにをするか・・・・・・・・・・・・。 1041 第135話:戦いの後︵後書き︶ 久々の休みであるライルが目を覚ますと見覚えのない少女がいた。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re みんながライルの隠し子だというが・・・。 次回 [雪蓮パニック] 天真爛漫の雪蓮が騒動を巻き起こす。 1042 第136話:雪蓮パニック︵前書き︶ 今回から暫くは拠点ストーリー。始めは雪蓮。 1043 第136話:雪蓮パニック 交州を平定した後、俺たちは多忙を極めていた。反乱によって発生 していた難民の炊き出しや治療、復興、交州常駐部隊の編成に治安 維持部隊の創設。更に同時に隣国となったチャンパ王国との自由貿 易条約の締結。 平定してから一月が経過してようやく落ち着きを見せ始め、俺も建 業に戻ってクラウドとポーからの報告書に目を通していた。 ﹁ふぅ・・・・・・今日の分はこれで最後だな・・・・・・流石に 疲れた﹂ 俺の執務室兼自室には寝台を除いてかなりの数の報告書が所狭しと あった。孫呉海兵隊の損害報告書や戦死報告書、ウルフパックで使 われた弾薬の消費報告書。治安維持部隊からの警備報告書、訓練部 隊の進捗報告書や戦果報告書と多種多様の報告書。 これを1人で裁断したのだから我ながら恐れいる。疲れた目をマッ サージしながら俺は寝間着に着替えて寝台に潜り込む。 ﹁明日はようやく休み・・・だから・・・・・・お香の・・・調達 に・・・・・・行かないとな・・・・・・﹂ 明日の予定を考えていた途中で睡魔が襲って来て、俺は逆らうこと なく眠りについた。眠りについて暫くして扉が開けられて誰かが入 ってきたことに気が付かず・・・・・・。 1044 朝日が顔を出した次の日。俺としては珍しく朝寝坊をした。だがそ れでも7時には目を覚ましてはいる。 ﹁うっ・・・う∼ん・・・・・・よく寝た・・・・・・?﹂ 俺は身体を起こしつつ、寝ぼけ眼で隣を見る。そこには小さく盛り 上がり、小さく寝息を立てながら誰かが眠っていた。しかし桃色の 髪をしているから誰かは分かる。 ﹁やれやれ・・・・・・また潜り込んで来たのかシャ・・・オ・・・ ・・・﹂ シャオと思って掛け布団を捲った瞬間に俺は言葉を発せなくなった。 なにしろ確かに桃色の髪ではあるが髪型が違う上に身長がシャオよ りも小さい全く見覚えのない少女が指を咥えながら、気持ち良さそ うに眠っていたからだ。 幻かと思い、一度掛け布団を元に戻して再び捲るがやはり少女がい た。それを何度か繰り返してみるも結果は同じ。 ︵ちょっと待て・・・・・・この子は誰だ⁉雪蓮殿の妹⁉隠し子⁉ それとも迷子か⁉︶ 頭を抱えながら必死に状況を整理しようとするが頭がこんがらがる ばかりだ。だが今はとにかくこの子をどうにかしたほうがいい。な にしろこんな処を華蓮辺りにでも見られたら・・・。 1045 ﹁ライルさまぁ∼♪朝ですよ∼♪﹂ ﹁ち・・・ちょっと待て⁉﹂ ・・・何というタイミングだ。扉を開ける華蓮を制止させる間もな く、状況を見た華蓮殿と見られたら俺は沈黙してしまう。 ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ 暫くの沈黙の後、ドアノブに手を掛けていた華蓮は部屋に入ること ﹂ なく扉をゆっくりと閉め、暫くの間を置きながら・・・。 ﹁ライル様に隠し子がぁあああああああああ‼⁉ 城全体にも聞こえそうな叫び声で逃げていった。 ﹁お・・・・・・おい華蓮まて⁉話を・・・ぐはっ⁉﹂ 俺は慌てて寝台から飛び出て追跡しようとするが床に放置したまま の書類に足を取られてその場で転んでしまう。その騒動を聞き付け て蓮華殿達が駆けつけたというのは言うまでもなかった。 それから暫く経過して、俺は蓮華殿や冥琳殿達に包囲されながら正 座をさせられていた。 ﹁それで・・・お前はいつ子供を作ったのだ?﹂ ﹁ぶぅ∼‼シャオがいるのに浮気なんて‼﹂ 1046 ﹁ふぅ、しかし私達に隠し事など水臭いな﹂ ﹁はっはっはっ‼ライルも中々隅に置けんな‼﹂ ﹁貴様という奴は・・・・・・﹂ ﹁あ・・・・・・あぁあああああの⁉ら・・・ライル様⁉﹂ ﹁はぅあぁああ・・・ですがお相手は誰なんですかライル様‼﹂ ﹁だけどこの子・・・何処かで見たことがありますね∼﹂ ﹁・・・・・・しかし本当にいつの間に・・・﹂ ﹁あぅあぅ・・・ら・・・ライルしゃまの馬鹿﹂ ﹁子育てに関しましては其れがしにお任せ下さい﹂ ﹁兄上が・・・兄上がぁ・・・・・・﹂ ﹁にょほほ♪兄様の子供なら妾の妹なのじゃ♪のぅ七乃?八枝?九 惹?﹂ ﹁そうですね♪﹂ ﹁ライルはんったら・・・若さに任せてもろたんどすか?﹂ ﹁しかしライル・・・俺は別に私用に口出す気はないが・・・俺達 に隠し事は確かに水臭いぞ﹂ 俺を囲んでいる蓮華殿達は完全に今も寝台でグッスリ寝ている見知 らない女の子を俺の隠し子と誤解しているが、はっきり言って逃げ 出したい。 というか本当に身に覚えがない。 ﹁あ・・・あの皆さん・・・・・・だからさっきから言っているで しょう?俺に心当たりは無いし、第一子作りだなんて向こうの世界・ ・・・・・天の国で亡くなった妻としか経験がないです﹂ ﹁じゃあ今も寝ているその子は誰の子だ⁉﹂ ﹁蓮華様、大声を出すとライルの子供が起きます﹁う∼ん・・・﹂・ ・・起きたようです﹂ 全員が目を擦りながら寝ぼけている女の子に視線を集中させる。す 1047 ると女の子は俺を見つけると笑顔になって飛びついてきた。 ﹁ライルだぁ‼おはよ∼‼﹂ ﹁うわっ⁉﹂ ﹁ほぅ・・・その懐き様からやはりお前の子供であろ?﹂ ﹁だから俺の子供では無いですって祭殿・・・それで・・・・・・ お嬢ちゃんは何処から来たんだ?お父さんとお母さんは?﹂ ﹁ぶぅ∼‼ライルったらひっど∼い‼雪蓮はお嬢ちゃんじゃないも ん‼﹂ ﹃・・・・・・・・・・・・え?﹄ 全員が同時に口を開く。いまこの子は確かに自分の名前を雪蓮とい った。 文台とその夫だと思う。しかし前に確か二人の真名 ﹁ねえライル、紅蓮母様と勇蓮父様は?﹂ 恐らくは孫堅 を知っているのは今や雪蓮殿の他に蓮華殿、華蓮、シャオ、冥琳殿、 祭殿しか知らないらしいし、全員が滅多な事では口にしない筈だ。 ﹄ 加えてこの場に雪蓮殿がいない上に自身を雪蓮と名乗る女の子。つ まり結論は一つしかない。 ﹃えぇええええええええええ‼‼⁉ ﹁?﹂ ﹁ちょ⁉ほ・・・本当に姉様⁉﹂ ﹁あ・・・あぁ・・・・・・よく見たら確かに子供の頃の雪蓮だ・・ ・﹂ ﹁な・・・なんと面妖な・・・﹂ 幼馴染と妹、それに姉みたいな存在である祭殿がいうのなら間違い 1048 無いだろう。しかしなぜ雪蓮殿が子供になったのかが問題だ。原因 を考えていると気配を消して部屋から退出しようとする華蓮を見掛 けた。 俺はすぐに扉に回り込んで開けられた扉をすぐに閉めた。 ﹁ひぃ⁉﹂ ﹁華蓮・・・君なにか知ってるな?﹂ ﹁は・・・はははは・・・・・・なに言ってるんですかライルさま ぁ∼・・・・・・私なにも作ってませんよ?﹂ ﹁作ってません?﹂ ﹁・・・はっ⁉﹂ ・・・自ら綺麗に墓穴を掘ってくれた。これで分かった。どう考え ても彼女が何か知っている。それを察した彼女達も腕を組みながら 華蓮への包囲網を作って、俺も指を鳴らしながら彼女をビビらせる。 ﹁さぁ華蓮・・・話してくれるな?﹂ ﹁は・・・・・・はい・・・﹂ 観念した彼女は全てを話した。雪蓮殿に頼まれて小さくなって俺の 秘密を探る為の薬を作り、どうやら小さくなる薬ではなく少女にな る薬が出来上がってしまったということだ。 というか小さくなる薬って・・・・・・何かのファンタジー小説じ ゃないんだからそんな薬を作るな。 ﹁それで・・・・・・雪蓮殿は元に戻るのか?﹂ ﹁は・・・はい・・・・・・薬の効果は明日の朝になれば切れます・ ・・﹂ 1049 ﹁全く・・・すまなかったライル。姉様と妹が迷惑を掛けた上に疑 って・・・﹂ ﹁さ・・・流石に今回のは度肝抜きましたが・・・﹂ ﹁ねぇねぇライル‼雪蓮と遊ぼ‼﹂ ﹁ちょ⁉雪蓮殿⁉﹂ ﹁遊ぼうよ∼‼あ∼そ∼ぼ∼よ∼‼﹂ ﹁だ・・・だから少し待ちなさいって⁉﹂ ﹁グズッ・・・ライルは・・・雪蓮と遊ぶの・・・イヤ?﹂ ﹁うっ⁉﹂ ﹁ライルは・・・雪蓮のこと・・・・・・嫌い?﹂ 中々遊んでくれない俺に雪蓮殿は若干の涙目をしながら俺を見上げ てくる。はっきり言って破壊力が強力すぎる・・・下手をすれば恋 よりも破壊力があるだろう。俺はため息を吐きながら頭を撫でる。 ﹁・・・・・・分かりましたよ・・・でしたら今日一日遊びましょ うか・・・﹂ ﹁やったぁ∼♪きょうのライルは雪蓮のもの∼♪﹂ そう歌いながら雪蓮殿は本当に嬉しそうに俺を引っ張ってそのまま 街へと駆り出されてしまった。 因みに騒ぎの張本人である華蓮はこの後しっかりと蓮華殿と冥琳殿 のお叱りを受けて、お仕置きとして一週間の彼女専用研究室へ出入 り禁止となった。 けっきょく俺は雪蓮殿が疲れるまで遊び相手をさせられてしまい、 心身共々に疲れた。そして雪蓮殿はと言うと・・・。 1050 ﹁すぅ∼・・・すぅ∼・・・﹂ ﹁はぁ・・・疲れた・・・・・・下手な戦場よりも疲れるな﹂ 可愛らしい寝息を吐きながらぐっすりと眠っていた。元の性格が天 真爛漫かつ無邪気だから、それが子供に戻ってしまうと倍増してし まっているのだから溜まったものではない。 加えて街では俺と雪蓮殿との間に出来た子供という噂まで流れてし まい、行く先行く先で恥ずかしい思いをした。 そのご本人は笑顔を振るいまくって人気者になっていたが・・・・・ ・。 ﹁しかし・・・俺と雪蓮殿の子供か・・・・・・﹂ そう言いながら子供雪蓮殿の頭を優しく撫でてあげる。実を言えば 悪い気はしなかった。雪蓮殿と結ばれて子供が出来たら恐らくこん な日常が待っているだろう。 ﹁ふぁ∼・・・・・・流石に眠いな・・・・・・・・・お休み・・・ 雪蓮﹂ そういいながら額にキスを落とし、俺は自室へと戻った。 なお、朝を迎えるとまた雪蓮殿が潜り込んでいて、俺の寝台に潜り 込んで暫くしてから薬の効果が切れたようであり、服を着ていない 全裸だったので俺は再び誤解を受ける羽目になったというのは別の 話・・・ 1051 第136話:雪蓮パニック︵後書き︶ 建業城内部にある中庭。ここで久々に蓮華と戦闘衛生兵である華蓮 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re が仕合をしていた。実戦経験で蓮華が有利かと思われたが・・・。 次回 [姉妹] 武門孫呉の姉妹が相入れる。 1052 第137話:姉妹︵前書き︶ 孫家次女の蓮華と三女の華蓮。二人が浦口で仕合を行なう。 1053 第137話:姉妹 孫呉海兵隊の浦口駐屯地。この駐屯地内部にある鍛練場では孫呉海 兵隊員達がそれぞれの兵科に合わせた訓練を実施していた。 その鍛練場の一角では・・・。 ﹁蓮華♪華蓮♪しっかり頑張りなさ∼い♪﹂ 私と妹の華蓮が対峙していた。 ︵︵なんでこうなった⁉︶︶ 話は少し前に遡る。私は数ヶ月前から孫呉海兵隊の訓練に参加して おり、ライルやアレックス達の指導で連帯の戦い方と槍術を学んで と言っていたが、それにして いた処に、孫呉海兵隊で戦闘衛生兵部隊の隊長をしている華蓮と姉 二人の成果を見てみたい 様がやって来たのだ。 姉様曰く はあからさまに楽しそうだった。恐らくは仕事をサボりたい理由で あろう。 しかし私も自身がどれだけ力を付けたのか確認したかったところだ し、華蓮が修業先の張魯が教祖をする五斗米道からどれだけ強くな ったのか興味があった。 違∼う‼‼五斗米道じゃない‼ゴッドヴェ と聞こえた気がしたがあえて気にしない。 ・・・・・・どこかで イドーだ‼‼ 1054 ﹁・・・・・・すまないな蓮華、華蓮。訓練の邪魔をしてしまって・ ・・﹂ ﹁アレックスのせいじゃないわ。姉様は相変わらず困ったものだ・・ ・﹂ ﹁まぁ・・・そこが姉様のいいところ何ですよね﹂ ﹁ふふ・・・・・・そうだな華蓮。それより・・・やるからには私 も姉としての面子がある。だから負ける訳にはいかんぞ﹂ ﹁ふっふっふ∼♪私も負けませんからね♪蓮華姉様♪﹂ 覇天双戟 を構える。 そういうと私は姉様の南海覇王の姉妹的存在である江東大器を構え、 華蓮も地面に置いていた長柄武器の あれは一言でいえば方天戟を二つ繋げた長柄武器で、方天戟のよう に引っ掛けや斬撃、刺突が得意とされていて、それが二つ付けられ ているからその分だけ扱いが難しい。 私は肩幅に足を広げて両手で江東大器を構えて、華蓮も覇天双戟を 眼 は武門孫家特有の鋭いものとなった。それ等を確認した 数回ほど回転させて左手で構えると開いた右手を私に向けて来た。 その 審判役のアレックスが片手を上げる。 ﹁では両者の準備が整ったということで・・・・・・構え・・・・・ ・始め‼﹂ アレックスの合図と同時に私が構えていた江東大器を横にしながら 先手必勝で突っ込み、華蓮に近づくと連続で仕掛ける。 ﹁はっ‼でりゃ‼﹂ ﹁はい‼はい‼はい‼﹂ 1055 華蓮に反撃の機会を与えない為に私は一気呵成に刺突から引っ込め てすぐに斜めの振り上げ、薙ぎ払い。一回転しながら再び薙ぎ払い。 その反動を利用して二連続で回し蹴りを見舞わせる。 :雪蓮視線 私は最初は仕事をサボりたい理由の為に二人の仕合を提案したけど、 予想以上に面白くなって来た。 何しろあの蓮華がムダがまだ見られながらも剣術と体術を組み合わ せた戦い方をしているのだから。少し前の蓮華では考えられない状 況ね。 私が二人の闘いぶりを見ていると後ろから誰かが近付いてきた。 ﹁やってますな﹂ ﹁あら、サイファーじゃない♪あなたも見学?﹂ ﹁新兵共を指導していましたが、休息を挟んで見に来たのです。と なり失礼します﹂ 来たのはライル達の父親みたいな存在のサイファーだった。私から しても父親みたいな感じで、特に最近は祭と仲がいい。羽田から見 たら本当に夫婦とも思える位になのよね。 ﹁しかし孫権様も戦い方をようやく改めましたな﹂ ﹁ねえサイファー、あなたはどっちが勝つと思う?﹂ ﹁賭けの誘いですかな?﹂ 1056 ﹁あっ‼ブーブー‼ちゃんとした問いなのに∼‼﹂ ﹁ハハハハハハ‼冗談ですよ。そうですな・・・・・・まだ始まっ たばかりのようですから分かり兼ねますが、このまま行けば孫権様 が先に息切れを起こしますな﹂ ﹁やっぱりそう思う?﹂ ﹁はい。確かに孫権様は宣城の頃と比べても着実に強くなられてお りますが、まだまだ全体的な動きにムダがみられます。 対して孫翊様は一見すれば防戦一方ですが、孫権様の攻撃を僅かな 動きで全て見切っています﹂ ﹁ふふっ♪相変わらずいい着眼点ね♪それに気が付いているでしょ ?﹂ ﹁はい・・・・・・孫翊様は・・・﹂ ﹁﹁一歩も動いていない﹂﹂ :蓮華視線 私は華蓮へと立て続けに仕掛ける。その攻撃を前に華蓮は防戦一方 だが、何かがおかしい。私は少し息切れをし出してきたのに華蓮は そんな様子は見当たらない。 それどころかその表情にはまだまだ余裕が感じられるのだ。 ﹁くっ⁉﹂ 流石に息切れを整える為に攻撃を一旦停止して後方に飛ぶ。着地と 同時に鋒を華蓮に向けながら警戒する。 対して華蓮はその場から動かず最初と同じ構えを崩さなかった。 1057 ﹁はぁ・・・はぁ・・・・・・華蓮﹂ ﹁何ですか姉様?﹂ ﹁なんでお前は仕掛けてこないんだ?﹂ ﹁なんでって・・・・・・姉様の攻撃が激しすぎでしたから反撃が 出来なかっただけですよ﹂ ﹁だったらなぜそんな平喘とした顔をしているのだ?まさか私が姉 だからといって遠慮しているのか?﹂ ﹁い・・・いえ⁉遠慮だなんて・・・﹂ ﹁だったら次はお前が打ち込んで来い﹂ ﹁・・・・・・いいんですか?﹂ ﹁構わない。遠慮無く来い‼﹂ ﹁・・・分かりました・・・でしたら・・・﹂ そういうと華蓮は肩幅にまで足を広げると中腰になり、右手を再び 叔弼・・・・・・参ります‼‼﹂ 私に向けて来る。まるで私を狙うようにだ。 ﹁・・・武門孫家三女。孫 そう叫ぶと華蓮はその場で地面を一気に力強く蹴り、瞬く間に私の 懐に飛び込んで来た。 ﹁くっ⁉﹂ なんとか反応して私は振り上げをすぐに受け止めるが、華蓮は続け て身体を回転させながら反対側で薙ぎ払い、それをしゃがんでかわ すがすぐに再び振り上げがきた。 ﹁甘いですよ姉様‼﹂ ﹁ちぃ⁉まだまだぁあ‼﹂ 1058 刺突、薙ぎ払い、振り下ろしという連続攻撃を見極めながら合間を 見つけて反撃する。私はその中に体術を加え蹴りや肘打ち、膝蹴り、 更には頭突きも喰らわせるが華蓮は怯まずになおも反撃してくる。 私は防がれた振り上げから反動を利用して一気に身体を捻りながら 振り下ろしを見舞う。だが華蓮も柄の中間でそれを受け止め、力比 べへと発展してしまう。 ﹁ぐぅううう‼‼﹂ ﹁くっ⁉負けませんよ姉様‼﹂ そのまま華蓮は弾き返すが、これが私の狙いだ。私は素早く江東大 器を水平に持って来て刺突を加える。 これで決まった。 私は勝ったと思ったがそれは違っていた。華蓮は横に小さく飛んで 回避すると覇天双戟を地面に突き刺すとそのまま勢いで信じられな いような動きをしてきた。 ﹁な⁉﹂ ﹁後ろがガラ空きですよ姉様‼﹂ 華蓮は突き刺した覇天双戟を軸にして勢いを保ちながら私の背中に 蹴りを仕掛けて来た。 流石に予想外で受け止められず、背中に蹴りを喰らった私は前に飛 ばされてしまった。 ﹁くはっ⁉﹂ 1059 なんとか息を整えると立ち上がろうとするが、膝を地面から離す寸 前に華蓮が駆け寄って来て覇天双戟の鋒を私の喉元に突きつけて来 た。 ﹁それまで‼華蓮の勝利‼﹂ 審判役のアレックスが片手をあげて華蓮の勝利を宣言した。華蓮は 覇天双戟の鋒を外すと一歩後ろに下がる。 私もその場で立ち上がると江東大器を鞘に納めて礼をする。 ﹁大丈夫でしたか姉様?﹂ ﹁大丈夫だ華蓮。しかし見事だったぞ。鍛錬は怠っていなかったよ うだ。私も負けないように日々精進せねば・・・﹂. ﹁ふふっ♪一緒に頑張りましょうね姉様♪﹂ 仕合では私は負けてしまったが、新たな気持ちで精進に励めそうだ。 笑顔で華蓮を讃えるとアレックスと華蓮と共にその場を後にした。 その後、仕事をサボっていたところを冥琳に見つかって耳を引っ張 られながら連行されていったのは言うまでもなかった・・・・・・。 1060 第137話:姉妹︵後書き︶ 蜀建国を成し遂げた一刀達。建国から暫く経過してから彼等の頭脳 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re が東屋に集まっていた。 次回 [天の頭脳陣] 異名を持つ頭脳陣達が集結する。 1061 、陳宮の軍師陣に新たな軍師が現れる。 第138話:天の頭脳陣︵前書き︶ 諸葛亮、龐統、諸葛均、賈 1062 第138話:天の頭脳陣 はわわ・・・・・・私達が成都を制圧して蜀を建国して暫くが経過 しました。民の大半は私達に賛同してくれましたが一部の豪族は未 だに抵抗を続けていてご主人様や桃香様を新たな主だと認めてくれ ないです。 このまま放っておけば劉璋さんに組みしていた人達の反乱を起こさ せるきっかけになりかねないのでご主人様は討伐を決意。自ら一軍 を率いて東の地方へと足を運んだ。 一方はというと・・・・・・。 ﹁お姉ちゃん出来上がったでしゅ﹂ ﹁はい、ありがとう夏雅里ちゃん﹂ ﹁朱里ちゃん。ご主人様に見て貰う立案ってどれだったかな?﹂ ﹁これだよ雛里ちゃん﹂ ﹁全く・・・相変わらず凄い量だわ﹂ ﹁へぅ・・・大変だけど頑張ろうね。詠ちゃん﹂ 私と雛里ちゃん、夏雅里ちゃん、月ちゃん、詠ちゃんはご主人様が 推し進めている改革の調整に忙しかった。後は劉璋さんの手抜きの 政のおかげで内部もかなり疲弊状態が酷く、放置していれば民の笑 顔なんて夢のまた夢。 そこでご主人様は大改革を実施。大きく分けて二つの計画を実施し ました。 1063 まず一つは役所と消費税の導入。役所を設けて成都に暮らす民の把 握と効率よく税の収集を図り、民の生活を改善させる。 二つ目は成都独立警邏部隊と交番の発足。軍部とは全く違う指揮系 統を持つ組織を作り、街の治安活動に尽力する。 その他にも大小様々な法案があるけど、急な大改革で民が混乱しな いように無駄な税は全て無くし、減税で民の暮らしを快適にしてい くことになりました。 ﹁はわわ・・・徐州もそうだったけどやっぱりご主人様って凄いで す﹂ ﹁はい・・・この役所や消費税なんて私達じゃ思い付かないです﹂ ﹁ふわわぁ∼・・・ご主人様って本当に凄いお方でしゅ・・・﹂ ﹁ま・・・まあ・・・・・・確かに私でもこんな改革は思い付かな いけど・・・全く・・・・・・自分が考えたんだから自分が裁断し なさいよね・・・﹂ ﹁でも詠ちゃんってやっぱりご主人様が大好きなんだね?﹂ ﹁ちょ⁉だ・・・だれがあんな奴を大好きだなんて⁉ち・・・違う んだからね月‼ボクはあんな奴ぜぇええええったいに好きじゃない んだからね‼﹂ 私達は詠ちゃんの反応に笑みを浮かべる。すると誰かが扉を叩いた 音がしたので、私が声を掛けると入室してきました。 黒髪だけれど左目を隠した前髪を紫色に染めて、全体的に張仁さん 白虎 を鞘に納めた男の人。 とよく似た色違いの白い服装に両脇には亡くなられた張仁さんの双 鈎 この人は徐庶、字を元直。私と雛里ちゃんが水鏡先生の私塾にいた 頃の先輩で、私塾にいた時にお菓子作りを教えてくれた人でもあっ て、どこか雰囲気がご主人様に似ている優しい人でもあります。 1064 かんり ﹁朱里、頼まれていた成都全体の見取図と新しい治安維持法の草案 だ。確認を・・・﹂ ﹁はい、ありがとうございます飴里さん﹂ ﹁ちょっと飴里‼あんたも少しは手伝いなさいよね‼﹂ ﹁詠ちゃん。飴里さんも自分の仕事があるんだから押し付けちゃダ メだよ﹂ ﹁はははっ・・・俺は君達みたいに有能じゃないよ。策は皆とは及 ばないし、武も愛紗や一刀君とも劣る。俺みたいな半端者がいても 邪魔になるだけだよ﹂ ﹁はわわ⁉そんなことないでしゅ‼・・・噛んじゃった・・・﹂ はぅう・・・・・・また噛んじゃった・・・。 ﹁まあ・・・その・・・頼ろうとしてくれる気持ちは嬉しいから、 それだけは受け取っておくよ﹂ ﹁・・・飴里さん・・・相変わらずですね﹂ ﹁どういう事かな?雛里﹂ ﹁飴里さんは・・・自分が思ってるより実力があります。なのに驕 らず自らの力を過小評価する・・・﹂ ﹁ふわわ・・・・・・か・・・飴里しゃまはしゅごい人なのに・・・ ﹂ ﹁まっ・・・・・・そこまで控えめだと返って清々しいわね・・・・ ・・だけど一軍を任されたんなら少しはそれらしく振舞ったらどう なのよ?﹂ 古い友人の私や雛里ちゃんはもちろん、夏雅里ちゃんと詠ちゃんも 飴里さんを凄い人だと思っているのに、その飴里さんは自分にあま り自信を持てずにいる。 今はご主人様の親衛隊で最前線で策を巡らす軍師兼武将として私達 1065 の仲間になって、実際にこの前の残党軍討伐ではご主人様や愛紗さ ん達と同等に戦果を出したのに・・・・・・。 ﹁じゃあ俺は行くよ。役所建築の指揮に戻らないと・・・﹂ ﹁あ・・・はい。すみませんでした引き留めてしまって・・・﹂ ﹁いいよ。それじゃ頑張ってね﹂ それだけ言い残すと飴里さんは部屋を後にする。私は引き留めるこ ︵桃の種子の蒸し菓子︶ とが出来ずに見送ってしまった。普段は謙虚で誰にでも優しい飴里 さん。お菓子作りも上手で特に五黒桃仁 禁じ手 がありまし は私と雛里ちゃんの大好物。ご主人様みたいに誰からも慕われるの に何処か寂しげだった・・・・・・。 あっ・・・・・・・・・そういえば一つだけ た。 ﹁ふぅ・・・・・・仕事前に取っておいた肉まんを食べるとしよう・ ・・か・・・・・・﹂ ﹁モグモグ・・・・・・あっ・・・徐庶様﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・その肉まん﹂ ﹁えっ⁉こ・・・これ徐庶様の⁉﹂ ﹁・・・・・・・・・おい﹂ ﹁ひっ⁉﹂ ﹁あんた・・・俺が何よりも肉まんが好物なのは知っているよな?﹂ ﹁あ・・・あああああああああの⁉その⁉﹂ 1066 兵は震えながら後ずさりしていくが、飴里さんは普段からは想像も 出来ない位の怒気を醸し出しながらその兵の襟を掴み、そのまま・・ ・・・・。 ﹁問答無用じゃぁあ‼死に晒せボケぇえええ‼‼﹂ ﹂ です・・・・・・・・・。 死にたくなかったら飴里さんの肉まん ﹁うぎゃぁああああああああああ‼⁉ ・・・投げ飛ばした。 飴里さんの禁じ手とは即ち を絶対につまみ食いしてはならない 1067 とある準備 第138話:天の頭脳陣︵後書き︶ 話は少し遡る。レオンが を進めていて実行しようと した矢先にチンピラに絡まれていた少年2人と少女3人と出会う。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re それを助けてレオンは5人を誘う。 次回 [獅子と歌姫御一行] Special 元直の真名であります飴里を考案頂けました。 Thanks:もう様 ライオンに歌姫達が後に続く。 新キャラの徐庶 ここに多大な感謝を示させて頂きます。 1068 オリキャラ詳細 呉︵前書き︶ ひと段落しましたので一度しっかりとオリキャラを紹介します。 *キャラが増えれば増加します。 1069 Marine オリキャラ詳細 呉 Wu 孫呉軍 Shu 子瑜 せんり 翡翠杖 諸葛瑾 真名:千里 武器:錫杖 飛狼隊 Corp's︵孫呉海兵隊︶ 劉備軍の朱里と夏雅里の兄で、孫呉海兵隊第1大隊 の大 隊長を務める。異様なまでのシスコンであり、朱里や夏雅里を見つ けると飛び付いてしまう。 外見が優男なので軍師としか見られないことも多いが、荒削りがあ るが氣の使い手でもあり、特に地面に捏ねた氣を放出して敵の動き を封じる戦い方を得意としている。 ライルを兄のように慕っているが反対に妹が慕う一刀を天敵と目の 敵にしている。 子義 めいふぁ 鬼蹂双鉞 、大弓 龍滅爪弓 雄狼隊 の大隊長と造船局局長 必殺技は諸葛瑾流地獄落とし︵要するにバックドロップ︶。 太史慈 真名:美花 武器:双鉞 雪蓮の親友で孫呉海兵隊第2大隊 を務める少女。外見が本当にヨーロッパ人形のような可愛らしさで 極度の恥ずかしがり屋。だが外見に似つかわしくなく剛力の持ち主 であり、ハンヴィーを誤って放り投げてしまってスクラップにした こともある。 普段は恥ずかしがり屋だが三重人格の持ち主でもあり、鬼蹂双鉞を 1070 持てば冷徹になり、逆に龍滅爪弓を持てばライル達も真っ青になる ゆうろん 承淵 地破豪斧 位の凶暴になる。 丁奉 真名:優龍 武器:大斧 牙門旗狩り 仁狼隊 の大隊長に という異名を持ってお 孫堅の代から孫呉に仕えている豪腕の猛将。戦場に出れば必ず敵の 牙門旗を奪ってくることから り、その事が評価されて孫呉海兵隊第3大隊 抜擢された。 性格は豪快であり、全体的に動作も大振りになっているが意外にも 裁縫や料理、家事全般か得意という家庭的な一面もあり、それ等は 公積 飛燕 全て大好きな子供達に必要な技術らしい。 凌統 真名:百合 武器:飛翔剣 神狼隊 の大隊長に抜擢された。 元は孫呉水軍にいた歴戦の猛者だったが、冥琳の推薦で孫呉海兵隊 第4大隊 性格は基本は寡黙で他人と距離を置く傾向があるが心を許した相手 には限りなく心を許す。 かつて父親を思春に殺された過去を持ち、初めの頃は敵視していた らしいが今は見られない。 漢の中でただ1人の飛翔剣を使える氣の使い手でもあり、今後の訓 練次第では呉軍最強の使い手にもなれるとされている。 弱点がないように見えるが幽霊の類が大の苦手であり、ハロウィン になると自分の部屋の布団に包まって震えている。 武門孫家 1071 孫翊 叔弼 真名:華蓮 覇天双戟 文台を母に持つ孫家三女。誰かを助けたい一心で単身、漢中 武器:両刃戟 孫堅 の五斗米道の張魯の下で医学を学び、免許皆伝の後に立ち寄った交 州で反乱軍に捕まるも、アレックスに救い出されて孫呉に帰還した。 性格は淑やかで誰にも敬語を使うが、時には雪蓮みたいに天真爛漫 になると思えば蓮華みたいに真面目になり、更に時にはシャオみた いに無邪気になるなど表情豊かでもある。 本人は自覚していないが呉の中で一番の美脚を誇り、更には雪蓮に 匹敵する程の武を有している。その為、雪蓮の勧めで孫呉海兵隊戦 闘衛生兵部隊長を任されている。 孫静 真名:無し 文台の妹で雪蓮、蓮華、華蓮、小蓮の叔母にあたる。孫呉軍 武器:無し 孫堅 の派閥の一つである保守派筆頭で、表向きでは降る回っているが裏 では改革派の雪蓮と対立している。 性格は淑やかであるが知ったふうな事を言ってライル達を引き抜こ 孫呉の面汚し うとしたり、元江族である思春や孫呉海兵隊をゴロツキ呼ばわりす るなど、かなり嫌な性格をしている。ライル達曰く 。 子敬 旧袁術軍 魯粛 真名:無し 武器:無し 以前は袁術軍の軍師を務めていた男性で美羽の兄である亡き袁基か 1072 ら仕えている。美羽のことを実の娘のように慕っており、寿春攻防 戦で美羽が保護されると自身もそのまま孫策軍に降った。 性格は温厚。交渉術や読心術に長けることから降ってからは主に同 盟関係にある劉備軍との架け橋を担う外交官として腕を振るってい る。 なお、千里とは気があうようであり、休みが合うと一緒に酒を飲み に行っている。 雷薄 真名:八枝 武器:騎馬槍 袁術親衛隊出身の武将で七乃の親友。人一倍美羽を大事に想ってお り、美羽がライル達に助けられたことを確認するとすぐに降伏。そ のまま孫呉海兵隊第10戦術騎兵中隊の副隊長に任命される。 阿国さん と呼 性格は穏と似てのほほんとしており、京都弁を喋ることからウルフ パック所属の武久を含めた日本人海兵隊員からは ばれている。 因みに七乃と同様にSが備わっており、可愛さ余って美羽をからか って楽しむこともしばしばある。 紀霊 真名:九惹 武器:三尖槍 旧袁術親衛隊の親衛隊長を務めていた生粋の戦士。かつて力を求め てローマ軍に義勇兵として単身シルクロードを渡ったという経歴を 持ち、幾多もの死地を潜り抜けて帰国。その為、実戦経験は祭を上 回り、実力は本気で怒った恋と互角とされている。 しかし漢王朝から黙殺されてしまい、危うく餓死しかけたところを 美羽に助けられ、以降は彼女に絶対の忠誠を誓っている。 性格はよく言えば豪快、悪く言えば馬鹿。噂や欺瞞情報を真に受け 1073 ることもあり、そのことが原因で一度はライル達と対立している。 しかし美羽が死んだという情報が偽りだと知って、以降は孫呉海兵 隊第10戦術騎兵中隊の中隊長としてライルと互角の武を振るって いる。 その他 呂範 真名:無し 武器:無し 孫策軍お抱えの鍛治屋。10代の頃に益州にて修行を積み、約20 年の修行を終えてからすぐに実力がかわれて孫家に召し仕えた。 性格は豪快で雪蓮とも彼女が幼少の頃から知っているからタメ口で 話し合える仲でもある。彼女の南海覇王や蓮華の江東大器、思春の 鈴音、明命の魂切も彼の作品だが、さすがの彼もライルの得物を造 博嘉 るのには大苦戦した。 呂人 真名:無し 武器:無し 呂範の愛娘。小さい頃から鍛治場にいた事で無意識に刀鍛治として の能力が開花して、僅か14歳にして孫呉海兵隊の専属鍛治職人に 抜擢された。 性格は恋がそのまま来た感じであり、言葉足らずで表情が乏しいが 実は甘い物が大好きで、ライルの手作りチョコが一番のお気に入り でもある。 ライルの新しい二筋の短槍である雪と雷は彼女が作り出した最高傑 作でもある。 1074 オリキャラ詳細 呉︵後書き︶ 次回は蜀を紹介。 1075 オリキャラ設定 蜀︵前書き︶ 今回は蜀のオリジナルキャラクターを紹介。 *キャラが増加すれば追加します。 1076 龍刃隊 オリキャラ設定 蜀 親衛隊 仲権 ろらん 西欧海龍 夏侯覇 真名:露蘭 武器:片手剣 、盾 東欧地龍 とある出来事 名門夏侯一族の出身で、春蘭と秋蘭とは従兄妹。かつては2人と共 に華琳の親衛隊である黒騎兵に所属していたが、 により軍を逃亡。 トロイ に その後は暫く傭兵として活動して白蓮に雇われていた時に袁紹の侵 略に見舞われて捕まるも、ライル達のオペレーション より救出され、そのまま救出先である一刀達の仲間になった。 性格は常に明るく、自分の考えは行動で示すので誰からもすぐに慕 われる。一刀とは義兄弟同然でライルを兄貴て慕っており、更に最 白騎士 の名が示す通り其れ相応の武勇を誇っている。 近になり始めてから霞が気になり始めている。 自称 かんり 元直 白虎 徐庶 真名:飴里 武器:双鉤 水鏡私塾の出身で朱里や雛里の先輩。私塾卒業後は各地を放浪して 武と智を磨き、旅先に立ち寄った成都で情勢に嘆き、張仁の人柄に 触れて彼専属の軍師となった。 性格は控えめだが肝が座っており、仲間や民の為に勇気を引き出す 心もある。普段は怒らないが、自身の大好物である肉まんを食べら れると普段とは信じられない位の怒気を発する。︵恋は例外︶ 鈴々のトラウマの一つでもある。 1077 張仁が亡くなった後に一刀達に降り、以降は彼の親衛隊である龍刃 隊専属軍師兼武将として活躍している。 お菓子作りに関しては朱里や雛里が尊敬する程に凄く、一刀からク ッキーの作り方を一度聞いただけで完璧に再現する程の腕前。 知力はもちろんだが各地を放浪していたことに加えて張仁から指導 を受けていたので実力は一刀と互角。 余談だが一刀と露蘭、飴里の3人は雰囲気が似ており、桃香が益州 を治めてから3人で街の食堂で一緒に食事しているのがよく目撃さ かがり 子魚 れている。 諸葛均 真名:夏雅里 武器:無し 朱里と千里の妹で、諸葛一族本家の次女。容姿は朱里をそのまま小 さくしたような感じであるが服装は朱里のサイズより少し大きい。 その為よく転ぶら、 元々は劉璋軍の軍師だったが、裏から根回しをしていた飴里の計ら いで白帝城へと回され、そのまま劉備軍に参加した。 性格は姉以上のうっかり者で、﹁∼でしゅ﹂など舌足らずの影響で 必ず噛む。彼女の能力は軍事よりもどちらかと言えば政で発揮。影 ながら一刀や姉を支えている。 ふわわ軍師 という名前がある。 諸葛一族の血筋なのか、彼女も慌てるとふわわ∼と慌ててしまうこ とから 余談だが一度だけウルフパックのクラウドに本気で持ち帰りされそ うになったことがある。 れっこう 旧劉璋軍 張仁 真名:烈光 1078 武器双鉤 白虎 旧劉璋軍の中で最強の武を誇る武将。 呼ばれている。 巴蜀の守護者 と 西の脅威である五胡への対策と新兵の鍛錬、更には兵站や地形判断 劉璋軍の父 という軍略にも特出した能力から敵味方問わず も 軍規に厳しい性格で信賞必罰を取っているが相手の信念や力の使い 道を尊重する器量の広さも兼ね揃えつつ、自らの信念である劉璋へ の絶対的な忠誠心を崩さないという強い意志を貫き通した。 劉備軍による成都制圧戦でも劉璋への忠義を貫き通し、一刀との一 騎打ちで敗北した後に桃香達に巴蜀を託してこの世を去った。 彼の墓は雒城郊外に設けられ、得物の白虎は飴里に渡った。 とーる 公嗣 その他 劉禅 真名:刀瑠 武器:無し 一刀と桃香の間に出来た第一子。成都陥落直後で2歳。顔立ちは桃 香似で目や口元は一刀と似ている赤毛の男の子で、天の血が入った ということで蜀全体の宝物とされている。 もちろん劉備軍全体でも絶大な人気であり、特に愛紗や恋なんかは 一度抱っこすると中々放そうとしない。 1079 オリキャラ設定 蜀︵後書き︶ 次回は魏になります。 1080 オリキャラ設定 魏︵前書き︶ 今回は最後の魏になります。 *キャラが増えれば追加します。 1081 赤龍偃月刀 オリキャラ設定 魏 公明 最古参兵 徐晃 真名:牙刀 武器:偃月刀 華琳の父親である曹嵩の代から曹一族に仕えている歴戦の武将。曹 魏武の龍 と呼ばれている。 一族や華琳に対して忠誠を誓っており、卓越された智勇に確かな武 から敵味方問わず 性格は冷静かつ忠義に厚い。尚且つ部下や仲間の生還を優先してお り、凪や真桜、沙和を始め部下や華琳達からの信頼も厚い。 欠点をあげるとすれば生粋の武人という影響で堅物となっているこ とと、中々の美形と髪質が綺麗だということで無自覚に女性を堕と してしまう。 破城旋棍 ライルとは敵味方を超えた共感を感じ取り、奇妙なライバル関係と 士載 なっている。 鄧艾 真名:参刃 武器:歩兵携行式攻城旋棍 魏武の猛 という異名を持ち、常に最前線で試作兵器の試験運用を実施す 牙刀の戦友で曹嵩から曹一族に仕えている歴戦の軍人。 虎 る実験部隊の隊長を務めている。 性格は牙刀と同じく忠義に厚く、部下とのコミュニケーションを欠 かさないので信頼はかなり厚い。 武に関しても牙刀と劣らず異名に恥じない実力を有し、尚且つ凪以 上の氣の使い手でもある。 1082 きりん 子考 曹一族 曹仁 真名:季琳 武器:大剣 餓狼岩剣 華琳の従姉妹にあたる曹操軍古参兵の1人。以前は荒くれ者であっ たが華琳の父親である曹嵩に救われ、そのまま一族の仲間入りを果 たした。 華琳達が戦に赴いている間に城の守備を任されることが多く、今ま 魏武の大盾 と呼ばれている。 でで彼女が指揮する防衛を突破した者はいない。そのため彼女は味 方から 性格は冷静で、余程の事でも無い限りは怒りに任せることはない。 加えて魏の中では珍しく百合属性を持っておらず、華琳からの誘い あいりん 子廉 餓狼風爪 を軽く断っている。 曹洪 真名:愛琳 武器:短剣 華琳の従姉妹にあたる曹操軍古参兵の1人。以前は金貸しをしてい て守銭奴とされていたが、曹嵩の紹介で金貸しを辞めて華琳の配下 に入った。そこで培った人脈や卓越された資金繰りで曹操軍全体の 資金管理も担当している。 性格は若干だが男勝りで服装に関しては無頓着。自分の裸を見られ ても何とも無い感覚だが、閨に関しては本当に許し合える異性とし かしないというある意味で曹操軍内部で一番の乙女でもある。 かぐら 儁乂 旧袁紹軍 張 真名:神楽 1083 武器:弩 裂空 以前は袁紹軍武将だった女性。 兵を蟻呼ばわりする袁紹に殺されそうになったがライル率いるハン ターキラーと凪達によって救出され、袁家討伐後は曹操軍に降った。 魏軍の中では秋蘭に続く弓の名手で、弩に関しては彼女の右に出る 者はいないとされていて、秋蘭とも特に仲がいい。 性格は明るく年相応の人当たりがいい女性だが、軍務では仲間や部 司馬八達 の次男。魏軍の中で 下を第一に考える柔軟な考えと仲間思いの考えを有した優秀な将と されている。 せいはく 仲達 司馬一族 司馬懿 真名:誠白 武器:謎 魏の名門である司馬一族の人間で もかなり上位の地位を獲得しており、軍略と智謀は華琳を上回ると された野心家でもある。 性格は腹の底が読みきれない謎めいた性格であり、一応は華琳に忠 誠を誓ってはいるが彼女達からは警戒されている。知略だけでは無 く武術にも覚えがあり、格闘技に関しては暇を見つけては新兵に叩 き込んでいる。 魏軍でただ一つの私兵部隊を有しており、その数は一万とされてい るが、こちらも謎が残る。 王異 真名:不明 武器:筆架叉 司馬懿の私兵部隊に属する武将。かつて冀城で反乱を起こした王一 族最後の1人で、反乱を鎮圧して一族を駆逐した翠への復讐の為に 1084 司馬懿の誘いに従って私兵部隊に入った。 性格や私生活などありとあらゆる一面で謎に満ちた人物であり、分 かっているのは司馬懿の副官として優秀であることと翠への憎悪は 計り知れないということだけ。 鍾会 真名:無し 武器:細剣 王異と同じく司馬懿の副官をしている青年。幼い頃から英才教育を 受けており容姿淡麗で知力も武力も優れている努力しない天才。 だが他人を見下したり、人を外見だけで判断。自分より功績があっ た将に暴言を吐くという最低最悪な性格で、牙刀や参刃はもちろん 華琳達からの評価も最低とされている。 加えて本人は司馬懿を信頼していないが、司馬懿も信頼はしていな い。 1085 オリキャラ設定 魏︵後書き︶ 次回から本編に復帰します。 1086 第142話:ライオンと歌姫御一行︵前書き︶ レオンに歌姫が現れる。 1087 第142話:ライオンと歌姫御一行 とある準備 に励んでいて、一週間 話は少し前に遡る。この俺・・・レオンに新しい知人が出来上がっ た時の話だ。 俺は前々から暇を見つけては 前にそれが完成。軍人を本職としている俺が許可を取り次ぐのが大 変だったが、建業の活性化に貢献するという条件で冥琳殿が容認し てくれた。 俺は普段の軍服ではなく休暇用で個人的にジーンから取り寄せたジ ーンズにウェスタンブーツ、黒一色のノースリーブシャツとドッグ タグという非常にラフな私服でリュックサックを背負いながら街中 を移動していた。 ﹁流石にまずいな・・・完全に遅刻だ﹂ 今日の朝に忘れ物を思い出して一旦はヴェアウルフに戻っていたの だが向かう手段のPTボートが全て出払っていて、合計1時間の遅 刻をしてしまった。 だがいまさら慌てても仕方が無いので、取り敢えずはゆっくり向か うことにした。 ﹁ふぅ・・・しかし俺が言うのなんだが平和だな・・・・・・デカ イ事件なんて滅多に起こらないし、これでチンピラがいなかったら どれだけ﹁ちょっと離しなさいよ⁉﹂・・・楽なことか・・・・・・ はぁ﹂ ・・・これで更に到着時間が遅れるな。俺は騒ぎが起きた場所へと 1088 急ぐ。少し先に向かうとやはりチンピラが少年少女の一団にちょっ かいを出していた。 一団は小柄の男の子二人が前に出て少女3人を守ろうとしているが 完全に舐められている感じであり、チンピラ連中は下品な笑いをし ながら追い詰めていた。 ﹁ひひひ・・・おい小僧。そこの嬢ちゃんを説得してくるよぅ。俺 遊びたい だけなんだからよ‼﹂ 達はただ楽しく遊びたいだけなんだからさぁ﹂ ﹁そうそう‼ただ ﹁うるさい‼お前達なんかに3人を渡したりなんかするか⁉﹂ ﹁そうだ‼私達は守るって決めたんだから‼﹂ ﹁張ちん・・・波ちん・・・﹂ ﹁そうよ‼ちー達も誰があんた達なんか一緒にいたくないわよ‼﹂ 恐らくは怖いのだろうが、それを押し殺して2人は少女を守る。な かなか見所がある少年だ。だがチンピラが何をしでかすか分からな い。俺は人だかりを掻き分けて前に出る。 ﹁おい早くしろ。警邏隊が来やがるぞ﹂ ﹁へん‼狼だか犬だか知らねえがどうせ弱っちいに決まってんだろ ⁉﹂ ﹁違いねえ‼ぎゃはははは‼﹂ ﹁さて・・・おいクソガキ共・・・さっさとその娘よこしやがれ・・ ・さもねえと﹁どうなるって言うんだ?﹂あぁあん?・・・なんだ てめえ、俺様達に楯突くってんじゃ⁉﹂ 短剣を取り出したチンピラの肩を数回叩き、振り向いたこいつの顔 にストレートを見舞ってやり、そのまま積み上げられた木箱に吹っ 飛ばした。 他の奴等は唖然とするが、すぐに表情を歪ませながら短剣を取り出 1089 して俺を睨みつける。 ﹁なんだてめえ⁉﹂ ﹁俺達にこんなことしやがってどうなるか分かってんのか⁉﹂ ﹁それはこっちの台詞だ。建業で・・・しかも白昼堂々と誘拐しよ うとしやがって・・・・・・﹂ ﹁あぁあん?・・・・・・ん?・・・お・・・おい・・・こいつま さか・・・﹂ という異名を口にした。どうやらこい ﹁げっ⁉こ・・・こいつは・・・群狼隊の・・・・・・﹂ 江東の獅子 ﹁江東の獅子⁉﹂ 俺の顔を見て つ等は兵隊崩れか盗賊の類だろう。だったらここで逃がす訳にはい かない。 ﹁お前達の罪状は3つ。どれも現行犯だ。治安維持法違反に傷害未 遂罪、それに・・・・・・﹂ ﹃そ・・・それに?﹄ ﹄ ﹁ただでさえ遅れている俺の時間を更に遅らせた罪だ‼‼﹂ ﹃ひぃいいいいいい‼⁉ ここから先は言葉など不要だろう。近くの分署から警邏隊が駆け付 けた頃にはチンピラ連中は叩きのめされ、6人は気絶させられて積 み上げられていた。 俺は連中を本部に連行するように指示を下し、襲われていた一団に 歩み寄っていた。 ﹁大丈夫か?どこか怪我はないか?﹂ ﹁は・・・はい。大丈夫です﹂ 1090 ﹁あ・・・あの・・・・・・﹂ ﹁何かな?﹂ ﹁危ないところを助けてくれてありがとうございます﹂ ﹁ま・・・まあ・・・・・・助けてくれたんだからちーも礼は言っ ておくわね・・・ありがとう﹂ ﹁もぅ・・・ちーちゃんったら素直じゃないんだから♪﹂ ﹁ちょっと天和姉さん‼﹂ ﹁姉さん達、名前をまだ教えてないよ﹂ 眼鏡を掛けた紫色の冷静な少女がじゃれあっている二人を軽く注意 する。すると二人もようやく思い出して俺に話しかけて来た。 ﹁私は天和だよ♪この二人のお姉さんなの♪﹂ ﹁ちーは地和﹂ 曼成です﹂ ﹁・・・私は人和です。助けてくれてありがとうございます﹂ ﹁僕は張 ﹁私は波才といいます﹂ ﹁天和ちゃんに地和ちゃん、人和ちゃん、張くんに波才くんだね。 俺はライル将軍配下のレオン・キャメロン大尉だ。レオンって呼ん でくれ﹂ 俺は5人の名前を聞いてなんだか引っかかる。何処かで聞いたこと がある名前だが、まあいいだろう。 ﹁君達は呉の人間じゃないね。旅人か何かか?﹂ ﹁はい。歌を生業としていろんな場所を回ってる旅芸人なんですよ﹂ ﹁歌手か・・・・・・それでなんでこの建業に?﹂ ﹁うん♪なんだか最近になってこの街に新しいお店が出来たってい うから来たんだよ♪﹂ ﹁はい、だけど迷っていた時にさっきの奴等が・・・﹂ 1091 獅子白 その言葉でようやく理解した。つまりは不運に巻き込まれたと言う ことだった。 っていう店か?﹂ ﹁災難だったな・・・それより新しい店ってもしかしたら 侍 ﹁あっ・・・うん‼そうだよ♪﹂ ﹁だったら丁度いい。俺もそこに向かうところだったんだ。よかっ たら案内するよ﹂ ﹁本当⁉やったあ‼﹂ ﹁助かりますレオンさん﹂ ﹁ああ、こっちだよ﹂ そういいながら俺5人を連れて目的の店へと向かった。店は建業繁 華街の奥にあり、全体的に店の色が白で塗装され、店の一部はカフ ェテラスみたいにしてある。 ﹁ここがそうなの?﹂ ﹁うわ∼♪なんだかお洒落だね♪﹂ ﹁あの・・・レオンさんはなんでこの店に?﹂ ﹁それは入ってのお楽しみだ。立ち話もなんだから中に入ろう﹂ そういうと俺は洋式の扉を開けるとそこは・・・。 ﹃お帰りなさいませご主人様♪お嬢様♪﹄ ・・・メイドカフェだった。いや、この世界なら侍女茶屋といった ところだろう。俺は平然としているが後ろの5人は完全に唖然とし ていた。なかなか面白い光景だ。 1092 ﹁執事長遅いですよ⁉﹂ ﹁すまない、ちょっとゴタゴタがあってな﹂ ﹁し・・・執事長って?﹂ ﹄ ﹁あぁ、そういえばまだだったな。ここの支配人ってのは俺なんだ﹂ ﹃えぇええええええ‼⁉ 驚くのも無理はない。軍人である俺が副業でメイドカフェを運営し ているのだ。俺が支配人をしている理由だが、街の活発化に貢献し たかったからだが最初は中佐達も難色を示していたが、売上金の一 部を孫呉軍と孤児院に回すことで経営許可を頂いたのだ。因みにこ のカフェにはとあるもう一面がある。 ﹁ははは・・・驚いてくれてなによりだ。さあ席に座って楽しんで くださいませご主人様、お嬢様﹂ 俺はアクションをしながら5人を席へと案内してから奥にあるスタ ッフルームへと執事服に着替える為に入室していく。 その後に俺も業務をこなすが、天和達に指名されっ放しだったとい うのは言うまでもなく、メイド達に接客されて鼻の下を伸ばしてし まい、ヤキモチを焼いた天和と地和に抓られていた。そして約1時 間後・・・。 ﹁今日はごちそうさま♪レオン♪﹂ ﹁ちぃの可愛さなら当然よね♪﹂ ﹁ありがとうございました。ですが本当にタダでいいのですか?﹂ ﹁いいっていいって。残ったお金は帰り道に使いなさい。また物騒 な連中に会わないとも限らないからね﹂ ﹁うん♪また会おうねレオン♪﹂ ﹁ほら張に波才‼行くわよ‼﹂ 1093 ﹁﹁は・・・はい・・・・・・﹂﹂ 後方に視線を送ると土産をたくさん持たされた張くんと波才くんが いた。店を経営していて何だが自業自得だと思う。俺と人和は失笑 しながら二人を見ていた。 ﹁じゃあレオンさん、私達はこれで・・・﹂ ﹁ああ、また遊びに来てくれよ﹂ 兵士の顔 へとすぐに変え それだけ伝えると彼女達は建業の城門へと足を運ばせる。俺も暫く 見送り、姿が見えなくなると笑顔から て俺の背後に話しかける。 ﹁ふぅ・・・・・・明命﹂ ﹁ここに﹂ もう一つの だ。この店で働くメイドの一部は明命など隠密なのだ。 背後にはメイド服を着た明命がいた。これが俺の店の 顔 この店は他には無い運営をしているから、他国の軍勢が偵察に忍び 込んできたら街の様子も必ず調べる。 そういった連中にとってこの店は調査の的だ。 だから冥琳殿の条件の一つで隠密を見つけ出す目的でメイドの中に 明命達を紛れ混ませているのだ。 曼成に波才は確か旧 ﹁でもレオン様、あの方達がなんで怪しいのでしょうか?﹂ ﹁俺が着替えをしていて思い出したんだ。張 黄巾軍の幹部だった奴だ﹂ ﹁なるほど・・・・・・確か旧黄巾軍を纏めて配下に加えたのは・・ ・﹂ 1094 ﹁曹操軍だけだ・・・﹂ ﹁それでどうしましょうか?﹂ ﹁恐らくは本当に休暇か何かだろうが、一応は監視を密かに付けて くれ﹂ ﹁御意﹂ そう返事すると明命の気配が消えた。恐らくは監視に向かったのだ ろう。 彼女には言わなかったが、天和、地和、人和という名前・・・。確 か黄巾党の首謀者である張角、張宝、張梁が自称していた天公将軍 と地公将軍と人公将軍など共通点が多い。 曼成と波才。可能性は限りなく黒に 冥琳殿が前に話していたが、三人は本陣で焼死したとされているが 死体は見つかっていない。 その三人に付き従っている張 近いだろう。 だが後は明命の仕事だ。俺は溜息を吐きながら店へと戻っていった・ ・・・・・。 1095 第142話:ライオンと歌姫御一行︵後書き︶ 建業城内部にある厨房、ここに亞莎に美羽、シャオ、美花、百合が 海兵隊の誇り,Re 集まって調理をしていた。全てはライルにあるものを作る為にだが・ 真・恋姫無双 ・・。 次回 [兄思いの妹たち] 厨房で妹たちの戦いが始まる。 1096 第143話:兄思いの妹達︵前書き︶ ライルを兄と慕う妹達が日頃の感謝をする。 1097 第143話:兄思いの妹達 建業城にある厨房、ここには現在・・・。 ﹁あーしぇー‼これはどうするのー⁉﹂ ﹁し・・・シャオ様・・・白玉粉が大きすぎます﹂ ﹁あーしぇー‼蜂蜜を混ぜてはダメかの?﹂ ﹁だ・・・ダメですよ。蜂蜜でベトベトになっちゃいます・・・﹂ ﹁やった‼出来上がりです‼﹂ ﹁・・・み・・・明命・・・・・・どうやったら猫型になるの?﹂ 亞莎が中心になって美羽やシャオ、明命の3人と一緒に料理をして いた。この3人は普段は料理など絶対にしないけど、私が料理して いるのを見て急にやりたいと出しました。。 何故かというと・・・・・・。 ﹁でもみんなが急に料理をしたいだなんて・・・﹂ ﹁ふっふっふっ∼♪これでライルを私にメロメロにしちゃうんだか ら♪﹂ ﹁なんとっ⁉妾は兄様に頭をナデナデしてめらうのじゃ♪﹂ ﹁私はライル様に日頃のお礼をしたいです‼﹂ やっぱりライル様絡みでした・・・。 でもみんな一緒に料理をするのは楽しいですし、私もライル様に手 作りのゴマ団子を召し上がって頂きたいです。 だけどなかなか思うようにいかないようです。 1098 シャオ様は白玉粉が手のひらよりも大きいし、美羽ちゃんは蜂蜜を 入れようとするし、明命はなんでか知りませんが猫型になってしま ってます。 ﹁ね∼ね∼。亞莎﹂ ﹁はい?﹂ ﹁亞莎ってライルのこと好き?﹂ シャオ様がいきなり飛んでもない事を言い出してきた。私は恥ずか しくなって思わず服の袖で顔を隠してしまう。 ﹁ふえ⁉・・・い・・・いきにゃりなに言ってるんでしゅ⁉﹂ ﹁はぅあ⁉シャオ様直球過ぎます⁉﹂ ﹁ええ∼⁉だってシャオはライルのお嫁さんになるんだからね♪だ けど独り占めはいけないからみんなも側室にしてあげないとね♪﹂ ﹁はぅはぅ⁉でもライル様には雪蓮様がいますよ⁉﹂ ﹁ふっふっふっ∼♪恋は早い者勝ちなんだよ♪だからシャオが料理 も出来るってこととシャオの可愛さで絶対にメロメロにしちゃうん だからね♪﹂ ・・・・・・羨ましいです。私もシャオ様みたいに積極的だったら なぁ・・・。そう心で思いながら白玉粉をせっせと丸めて、それを 平にすると同じく丸めていたこしあんに包み込む。 ﹁えっと・・・次はゴマをふんだんにまぶして・・・﹂ ゴマ団子の白玉粉に胡麻をまぶし、全てに胡麻をまぶしたら熱して ある油に入れる。 ﹁皆さんも出来ましたか?﹂ 1099 ﹁うん‼ライルへの愛情たっぷり込めたシャオ様特性のゴマ団子だ よ♪﹂ ﹁妾もなのじゃ♪これで兄様も妾にナデナデしたくなる筈じゃ♪﹂ ﹁お猫様の形のゴマ団子が出来たです‼ライル様、喜んでくれると 嬉しいですね亞莎‼﹂ ﹁うん、そうだね明命。じゃあ早速ライル様の処に行きましょう﹂ ひとまず揚がったゴマ団子︵明命のだけはやっぱり猫型︶を皿に盛 り付けて、シャオ様や美羽ちゃん、明命と一緒にライル様のお部屋 へと向かった。 そして暫くしてからライル様のお部屋に到着したが、いつ来てもラ イル様と厨房の距離は離れている。これがやっぱり大変だけれども その分だけ日当たりはいいから過ごし易い。 私達は扉の前に到着。 ﹁それじゃ早速ライルの部屋に突撃∼♪﹂ ﹁突撃なのじゃ∼♪﹂ ﹁はぅあ⁉ちょっと待ってください二人とも⁉﹂ ﹁どうしたの?﹂ ﹁あ・・・あの・・・・・・いきなり押し入ったりしちゃったらそ の・・・ら・・・ライル様が驚かれてしまいます﹂ のっく という相手に来客を知らせる方法を聞 ﹁えっ?じゃあどうするの?﹂ ﹁前にライル様が いていますから、それをやるです‼﹂ そういうと明命はライル様のお部屋前に歩み寄り、軽く握りこぶし を作ると指の関節で扉を軽く数回ほど叩いた。 ﹁開いてるよ﹂ 1100 ﹁あっ・・・はい・・・・・・失礼しま﹁﹁おっ邪魔しま∼す︵な のじゃ︶‼﹂﹂あぅ﹂ 私が扉を開けたと同時にシャオ様と美羽ちゃんがライル様のお部屋 に飛び込んじゃいました。倒れかけましたがすんでの処で踏ん張り、 皿に盛り付けたゴマ団子は無事でした。 ﹁遊びに来たよライル♪﹂ ﹁兄様ぁ∼♪妾達と遊ぶのじゃ♪﹂ ﹁シャオに美羽・・・・・・俺は今は仕事中なんだが・・・﹂ ﹁ぶぅ∼‼遊ぼうよ∼‼﹂ ﹁そうなのじゃ‼﹁あ・・・あの・・・・・・﹂ん?・・・どうし たのじゃ亞莎?﹂ 何だか二人とも目的をすっかり忘れているようでしたのでひとまず はこちらに振り向かせる。 そしてすぐにライル様の側まで歩き出す。 ﹁どうかしたか亞莎?﹂ ﹁あ・・・ああああの・・・・・・し・・・シャオ様やみんなで作 ったご・・・・・・ゴマ団子・・・よ・・・よよよ良かったら・・・ その・・・・・・﹂ ﹁ゴマ団子?﹂ ﹁おおぉっ‼そうじゃったのじゃ‼﹂ ﹁シャオ達が一生懸命作ったゴマ団子だよ♪﹂ ﹁はぅはぅ・・・ら・・・ライル様‼どうぞ召し上がって下さい‼﹂ みんながそういうと私はゴマ団子が盛られた皿をライル様に手渡す。 するとライル様は暫く考えながら私達に笑顔を見せてくれた。 1101 ﹁・・・・・・ありがとう、さっそく食べさせてもらうとしよう﹂ そういうとライル様は一つ摘まんで口にしてくれた。 ﹁うむ・・・・・・これは美羽が作った団子だな。蜂蜜の味がほの かに出てて美味いよ﹂ ﹁本当かえ⁉にょほほ∼♪﹂ ﹁これは・・・・・・シャオだな・・・うん。大きいから食べ応え があるよ﹂ ﹁その分シャオからの愛情も大きいよ♪﹂ ﹁次は・・・・・・明命のだな・・・いかにも明命らしちゴマ団子 だが、味も美味い﹂ ﹁あ・・・ありがとうございます‼﹂ みんなライル様に褒められて喜んでいる。そして最後に私の作った ゴマ団子を摘まんで口にしてくれました。 ・・・不味かったらどうしよう・・・。不安で逃げ出したい気持ち を押し殺してその場に踏み止まり、ライル様が私に話しかけてくれ た。 ﹁ふむ・・・これは・・・・・・亞莎が作ったのか?﹂ ﹁は・・・はい・・・・・・美味しくなかったですか?﹂ ・・・やっぱり不安です。不安で口元を隠しながら感想を待ってい ると、ライル様が私の頭を撫でながら話しかけてくれました。 ﹁・・・うん。美味いよ亞莎﹂ ﹁ほ・・・・・・本当でしょうか?﹂ ﹁ああ。みんなが作ったゴマ団子はどれもこれも今まで食べた中で 美味かったよ。ありがとう﹂ 1102 そういいながら私達の頭を優しく撫でて頂いた。 ﹁ふっふっふ∼♪シャオ様に掛かれば当然よね♪﹂ ﹁にょほほ∼♪もっと撫でてたも♪﹂ ﹁はぅはぅ・・・﹂ それぞれが反応を示し、特にシャオ様と美羽ちゃんはもっと撫でて 欲しいとせがみ始める。 ライル様は本当にお優しい方です。例え不味かったとしても笑顔で 美味しいとお答えした筈です。だけど今はライル様のご褒美を満喫 したいと思います・・・・・・・・・。 1103 第143話:兄思いの妹達︵後書き︶ 武久と思春。二人は互い主を尊敬する心を持つ。仁義の心に忠義の 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 心。二人の心は似た箇所がある。 次回 [惹かれ合う心] 互いの心が引きつけられる。 1104 第144話:惹かれ合う心︵前書き︶ 侍と鈴。互いが惹かれ合う。 1105 第144話:惹かれ合う心 ウルフパック本拠地の潜城ことヴェアウルフ南西部。ここは砂浜が 広がる一帯であり、敵の上陸部隊に備えてM18A1指向性対人地 雷やM14対人地雷を組み合わせた地雷原が存在する。 しかし一画には砂浜でのCQC訓練を行なう広場があり、その区画 を囲む様に地雷原が埋設されているのだ。 ﹁はぁ‼‼﹂ ﹁ふぅ‼シィ‼﹂ 俺と孫呉水軍の実質的指揮官である思春は互いの武に磨きをかける 目的で仕合をしていた。理由は特に無い。 互いの武に磨きをかける目的で時々であるが仕合をしているのだ。 俺達は戦場に身を置く以上、死ぬ覚悟はある。だがそう簡単にはや られたりはしないが戦場に絶対という言葉は存在しないように、俺 達も戦場で絶対無傷という訳にはいかないだろう。 だがそうならない為にも日々日頃の鍛錬は必須になる。 ﹁素早くなって来たな思春‼それに切れ筋もますます鋭くなって来 ているな‼﹂ ﹁ふん‼当たり前だ‼蓮華様の為に日々の鍛錬は欠かせんからな‼﹂ ﹁それはいいぞ‼・・・だが‼﹂ ﹁くっ⁉﹂ 思春の動きにほんの少し。ほんの少しだが隙を見つけ出し、その隙 1106 が出来た手首と二の腕を掴む。 そのまま思春の顔に右肘で肘打ちを見舞い、怯んで無意識に手にし ていた鈴音を引き戻そうとしたが、その反動を逆に利用。 そのまま彼女の身体を空中で一回転させながら地面に伏せさせた。 ﹁がはっ⁉・・・・・・く・・・﹂ ﹁大手だ﹂ 俺の手には奪い取った鈴音。そしてその鋒は彼女の喉元に突きつけ られていて、反撃できないように腕を足で押さえつけている。 この状態で彼女には足に暗器でも無ければ無理だ。それを理解した 思春は・・・・・・。 ﹁・・・・・・私の負けだ﹂ 自ら負けを認めた。これが未熟な兵なら抗って無駄な抵抗をしてい るところだが流石は彼女だ。 自らの負けを認める技量を持っている。今回は俺の勝ちだったが勝 率は現段階でほぼ互角といえる位で、自分が勝っても次は負けると いう独自の方程式が出来上がっている。 地面に倒れたままの彼女から鋒を外し、そのまま左手で彼女を引き 上げた。 ﹁立てるか?﹂ ﹁あぁ・・・・・・すまない﹂ ﹁よっと・・・相変わらず軽いな。お前は・・・﹂ ﹁・・・なにが言いたい?﹂ 1107 ﹁おいおい・・・せっかく人が褒めているのに何を殺気ぶつけて鋒 を向けてるんだ?﹂ 頼むから照れ隠しのつもりで俺に殺気をぶつけるのは勘弁願いたい。 両手を挙げながら降参を示すと思春は睨みながらも鋒を下ろしてく れた。 こういう素直じゃない点も可愛いがな。 ﹁・・・・・・南郷﹂ ﹁なんだ?﹂ ﹁貴様にとって武はなんだ?﹂ ﹁・・・意図が分からん﹂ ﹁そのままの意味だ﹂ ﹁・・・・・・俺にとって武は・・・身を護る術でもあり・・・仲 間を護る糧でもある﹂ 俺はその場に座り込むと思春も隣に腰掛ける。 と呼ばれ ﹁俺達南郷一族は代々薩摩という土地の南側を守護する守り手の武 天の御遣い 一刀の北郷一族が守護する役割を担っていた﹂ 門だ。その土地の北側を一刀・・・・・・ ている北郷 ﹁・・・貴様と御遣いは確か親族だったな?﹂ ﹁あぁ。向こうの世界で8年前に行方が知れなくなって、まさかこ の世界で再会出来るとは予想していなかったがな・・・ふぅ﹂ ピクセルグリーンデジタル迷彩の右腕ポケットから取り出して 思春と話しながらポケットから日本酒が入ったボトルをMARPA T 口にする。 なかなか度数の強い酒だから喉の渇きに似た感触がキツイ。 1108 ﹁思春・・・・・・君はどうだ?﹂ ﹁・・・・・・私の武はこの呉・・・蓮華様をお護りする為のもの だ・・・私は・・・私は仲間を迎え入れて下さった蓮華様に持てる 力の全てを捧げるのみだ﹂ ﹁ふ・・・・・・相変わらず・・・だが・・・・・・君らしい﹂ 俺は思わず思春の頭を優しく撫でてしまっていた。 ﹁なっ⁉・・・何をする⁉﹂ ﹁おっと・・・・・・すまない。ついな﹂ ﹁くっ⁉全く‼・・・・・・・・・﹂ 思春は顔を真っ赤にしながら怒り口調で視線を背けるが、満更でも なさそうだ。 暫く沈黙になっていたが、俺を睨みつけながらも思春は俺に向かっ て口を開いてくれた。 ﹁・・・南郷﹂ ﹁なんだ?﹂ ﹁貴様は私をどう感じ取っている?﹂ ﹁・・・・・・無愛想で堅苦しい。融通が効かない﹂ ﹁殺してやろうか﹁だが・・・﹂・・・・・・﹂ ﹁無愛想の中で優しさが見られる。仲間を想えるし、魅力的な女性 であるな・・・俺にとっては﹂ そういうと思春は暫く沈黙して顔を赤く染めてしまった。その姿が 可愛くて仕方がなく、俺は無意識に彼女に引き寄せられていた。 ﹁・・・・・・思春・・・﹂ 1109 ﹁なん・・・・・・んんっ⁉﹂ 俺はそのまま顔を近付けて、彼女の唇に自分の唇を重ねた。暫く彼 女は目を大きくして戸惑っていたが、慣れ始めると彼女も目を瞑っ て唇を押さえつけていた。 そして暫く続いたキスも離して、俺は彼女を見つめる。その表情は 目がトロンとして、顔を仄かに赤く染めていた。 ﹁・・・これが・・・・・・俺の気持ちだ﹂ それだけ言うと俺は立ち上がってその場を後にする。俺の気持ちと は大事な人・・・・・・思春が好きだということだ。 思春と俺には主に対して絶対的な忠誠心を誓うという共通点がある。 それでいて俺と互角の武を秘めている。そこからきっかけとなり互 いの武を極める目的で仕合を繰り返しているが、それが段々と1人 の女性として見れて来たのだ。 俺も少し照れながら自身の基地へと足を運ぶのだった・・・・・・。 1110 第144話:惹かれ合う心︵後書き︶ 隠密というのは訓練を絶やさない。それは呉軍の隠密部隊も同じ。 隠密の訓練を行なう為に祭と穏、クラウド、サイファーの4人率い 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re る部隊は明命を見つけ出す為に彼女のテリトリーに踏み込む。 次回 [猫少女を捕まえろ] 深い森の中で悲鳴が木霊する。 1111 第145話:猫少女を捕まえろ︵前書き︶ 森林で猫少女を捕まえる。 1112 第145話:猫少女を捕まえろ 建業郊外にある森林地帯。とはいっても円形に広がる半径3km程 の小さな森ではあるが木々や草が密集して鬱蒼としている先が見え ない森でもある。 そんな森の中を俺とサイファーファーターを含めた15人と黄蓋様 や穏の30人部隊と一緒に進んでいた。 ﹁黄蓋様、いい加減教えて頂けませんか?﹂ ﹁何がじゃ?﹂ ﹁我等がこんな森のど真ん中で移動しているかということです﹂ ﹁そうですね∼。もうそろそろいいんじゃないですかぁ﹂ ﹁まあ・・・頃合いか。実は今日は隠密の鍛錬じゃ﹂ ﹁隠密・・・ということは明命の部隊と合同ですか?﹂ ﹁いや、今日は儂ら全員と明命一人で鍛錬をするんじゃ﹂ その言葉を聞いて俺達は呆気に取られる。何しろ45対1で一体ど んな鍛錬をするのか分からないのだ。 ﹁そんな顔をするでないわぃ。気を引き締めんかい‼﹂ ﹁痛っ⁉﹂ ﹁ぐわっ⁉﹂ 間抜けな顔をしていたのだろう。俺達に喝を入れるように黄蓋様が 後頭部を思いっきり引っ叩いた。 ﹁いたたたた・・・・・・で・・・ではどんな訓練をするんですか 1113 ?﹂ ﹁うむ、今日はこの森の中で息を潜めとる明命を我等が捕まえるん じゃ﹂ ﹁そうですよ∼。明命ちゃんは私達全員を返り討ちにしたら勝ちで、 逆に私達は明命ちゃんを捕まえれたら勝ちになりますぅ♪﹂ ・・・つまりは鬼ごっこということだろう。 ﹁しかし祭殿、それでは有利なのでは?﹂ ﹁サイファー、あまり明命を甘く見ん方がよいぞ。この森は明命に とっては庭のようなもんじゃし、何よりも明命に捉えられたりしよ れば・・・﹂ 黄蓋様が話している途中で後方にいた孫策軍兵士がいきなり倒れた。 俺達はすぐに駆け寄るが気絶しているだけのようだった。 ﹁こうなるのじゃ﹂ ﹁こ・・・これは明命が?﹂ ﹁そのようだ・・・つまりは明命ちゃんに捉えられたらこうなると ?﹂ ﹁はいぃ∼♪だけどそれだけじゃないんですよ∼﹂ ﹁﹁?﹂﹂ ﹁そやつの顔を見れば分かるぞ﹂ そう言われて俺とファーターはすぐに倒れた兵士を見る。すると言 葉が出なかった。何しろその兵士には・・・・・・。 1番最初にやられちゃいました♪てへっ♪ 顔にデカデカと黒ずみで書かれていたのだ。 1114 ﹁・・・・・・・・・なんだこれは?﹂ ﹁つまりじゃ。明命にやられたらその場で顔にこのような落書きを されるということじゃ﹂ ﹁しかしこれだけなら後で洗い流せば済むのでは?﹂ ﹁甘いなサイファー。この墨は明命特製の墨でな。一度書かれたら 3日は落ちない代物なのじゃ﹂ ・・・つまりはこういうことだろう。明命に捕まえられたら顔に何 かしらの洗い流せない落書きをされて、そんな状態で建業市街地を 歩く羽目になる。 ﹁・・・なんですか?その公開処刑のような醜態は?﹂ ﹁これまでは儂らが一方的に負けておるから今日こそは儂らが勝つ のじゃ﹂ そういうと黄蓋様が闘志を燃やし始めるが、その間に孫策軍兵士2 名と俺達の仲間が一人餌食になった。 ﹁このままでは埒があかないな・・・早く部隊を散開させた方がい いでしょう﹂ ﹁うむ、ならば儂等は東へと向かう。一刻後にはまたこの場で落ち 合うぞ﹂ ﹁了解です祭殿。クラウドは半数を率いて南を頼む。私は半分を連 れて北側を捜索する﹂ ﹁了解です。ご武運を﹂ ファーターに指示を与えられて俺達は担当地区である南側へと向か う。 その間に周囲から恐らく明命に襲われた連中の悲鳴が聞こえてきて、 1115 南側に到着した俺達は更に部隊を分けて捜索を始めるが、30分も しない内に次々と刈られていった。因みに顔には・・・。 油断しちゃいました♪ つまづいてやられちゃった♪ 自身の詰めの甘さが表されたり・・・。 居場所を教えて自滅♪ マヌケな罠に掛かっちゃいました♪ 自身の動作で敗北したり・・・。ここまではまだいい。だが問題は・ ・・。 カツラです♪ ・・・・・・秘密を暴露されたり・・・。 私は動物に嫌われちゃいました♪ ・・・ここまでならまだ許せる。だが次は・・・。 ニャー ・・・・・・・・・なんだこれは?・・・。 恐らくだが書く事が無くなったのだろう。哀れに思いながら俺の周 りには既に数人しかいなかった。 ﹁くっ・・・まさか明命がここまで強いなんてな・・・﹂ 1116 ﹁軍曹、どうしますか?﹂ ﹁合流地点に向かうぞ。こっちがこんな状態なら他の隊も同様な状 態だろう﹂ ﹁了解です﹂ ﹁行くぞ。左右上下に注意を払いながら慎重に向かうぞ﹂ ﹁﹁﹁Hooah﹂﹂﹂ そういうと俺達は縦隊を組んで最初にいた合流地点へと向かう。そ の間に二人がやられてしまい、残ったのは俺と女性伍長だけになっ ていたが何とか合流地点へと到着した。 ﹁残ったのは俺達だけのようだ・・・﹂ ﹁⁉・・・・・・軍曹あれを‼﹂ 伍長が指を指すと黄蓋様と穏、それにファーターが倒れていた。俺 達が慌てて駆け寄り、直ぐに身体を起こしてあげたがやはり気絶し ていたが顔には落書きされていない。 黄蓋様と穏には・・・・・・。 存在価値は巨乳のみ 乳に栄養行きすぎ 反則的な胸にデカデカと書かれていた。というかあからさまな私怨 が入ってるだろう・・・。 ︵明命は胸にコンプレックスを抱いてるからな・・・︶ 心の中でそう思いながら次はファーターに歩みより顔を上げるが思 わず吹いてしまった。 1117 お髭男爵であ∼る♪ などと書かれていて、紳士髭が追加されていた。 ﹁軍曹、やっぱり俺達だけみたいです﹂ ﹁そのようだな﹂ ﹁どうします?﹂ ﹂ ﹁・・・・・・止むを得ない・・・。こうなったら最終手段を取る ぞ﹂ ﹁最終手段?﹂ ﹁伍長・・・・・・これを付けろ﹂ ﹁えっ?・・・・・・えぇえええええ‼⁉ 俺が伍長に渡した物。それは・・・。 ﹁なんでこんな物もってるんですか⁉﹂ ﹁何って・・・明命にあげようと思って用意していたものだ﹂ 猫耳 魔法の言葉 を だ。まさかこんな場所 伍長は顔を真っ赤にしながら俺に問い詰めてきていた。対明命用の 最終手段とは明命が確実に食い付く で活躍するとは思いにもよらなかったが・・・。 ﹁ほら、いつ明命が来るか分からないんだ。早く 言うんだ﹂ ﹁うぅ∼・・・・・・に・・・ニャー・・・﹂ 伍長は少しポーズを取りながら猫の鳴き声を恥ずかしがりながら顔 を染めて口にする。俺は別に平気だが他の隊員からすれば即刻連れ て帰られるだろう。 1118 ﹁よし、後は待つだけだ﹂ ﹁うぅ・・・これで来なかったらただの間抜けですよ∼・・・﹂ ﹁心配するな。すぐに来るから少しだけ待ってくれ﹂ ﹁だけどあからさまな手段で来るなんて﹁おーねーこーさーまー‼ ‼﹂・・・マジ?﹂ 恥ずかしがりながら伍長が嘆いていると、すぐ側の枝から目を輝か せながらお猫様と叫びながら飛びつこうとする明命が現れた。 というか本当に飛び出して来るか普通・・・・・・。 俺は飛び付いて来ようとしている明命の前に回り込んでそのまま彼 女をキャッチ。しっかりとホールドして逃げられないように包み込 む。 ﹁はぅあ∼お猫様ぁ∼・・・あれ?﹂ ﹁明命捕まえたり♪﹂ 俺がしっかりと明命を抱きかかえながら笑顔で彼女を見下ろす。は たから見たら恋人同士が抱き合っているように見えるが、状況を把 握した明命は顔を瞬く間に真っ赤にして慌て始めてしまった。 ﹁はぅうぅぅぅ⁉く・・・クラウド様⁉は・・・放して下さいです ⁉﹂ ﹁だ∼め♪それに明命は俺に捕まったんだから今回の鍛錬は俺達の 勝ちだよな?﹂ ﹁はぅ・・・・・・ま・・・まさかこんな単純な手段で負けちゃう なんて・・・﹂ ﹁じゃあ明命への罰はこのまま俺に抱っこされながら城に戻ること い・・・嫌です⁉恥ずかしいです⁉﹂ にしようか?もちろん街中を堂々とね♪﹂ ﹁えぇええ‼⁉ ﹁苦情は受け付けないよ♪それじゃ帰ろうか?﹂ 1119 ﹁はぅううううう・・・・・・﹂ 俺は恥ずかしがってすごく可愛らしく感じる明命をお姫様抱っこし ながら建業城へと歩み始める。その間に兵士達は全員目が覚めたが 顔に書かれたら落書きで恥ずかしい目にあったのはいうまでもなく、 特に・・・。 ﹁うぅ∼・・・何でこんな目に・・・﹂ 猫耳を付けたままの伍長が1番恥ずかしそうであった・・・・・・・ ・・。 1120 第145話:猫少女を捕まえろ︵後書き︶ 成都の大衆食堂。在り来たりな感じではあるがここには一刀や露蘭、 海兵隊の誇り,Re 飴里がよく通うことでめ有名だ。そしてその日も3人は一緒に昼食 真・恋姫無双 をとっていた。 次回 [義兄弟] 蜀のイケメン三人衆の人気は高い。 1121 第146話:義兄弟︵前書き︶ 蜀のイケメン三人衆が誓いを立てる。 1122 第146話:義兄弟 益州の成都繁華街。ここは劉璋が治めていた頃は治安が非常に悪く、 特に治安面においては最悪と言ってもおかしくはなかった。 しかし俺達が蜀を手に入れてからは治安回復と活気を取り戻すこと に尽力。一月が経過した頃にはだいぶよくなっていた。 だがそれだけでは民の心を掴むことなどは不可能な話であり、だか ら俺達の軍の方針で可能な限り街に出て民と接することにしている のだ。 この日も午前中の業務を終了させて俺は昼食も兼ねて繁華街に繰り 出していた。 ﹁御遣い様∼‼﹂ ﹁こんにちわ、元気そうで何よりです﹂ ﹁おや、御遣い様。今日は劉備様と阿斗様は一緒じゃありませんの かい?﹂ ﹁こんにちわお婆ちゃん。二人は今日は城にいるよ﹂ ﹁あらあら、御遣いの坊やじゃない。お姉さんと遊ばないかい?﹂ ﹁う・・・・・・ま・・・また今度ね・・・﹂ 街中を歩く度に民から積極的に話しかけられてくる。老若男女問わ ずだ。中には年上のお姉さんに誘惑されそうにもなるがそれはやん わり断わっている。 初めの頃は信頼を得るために必死だったが、すぐに桃香や愛紗達を 信頼してくれて心を開いてくれた。そんな心身掌握に尽力しながら 俺は飴里が勧めてくれた大衆食堂へと足を運んでいた。 1123 この大衆食堂は民の憩いの場としても有名であり、価格も安いし量 も多い上に美味い。経営しているのは老夫婦で、二人からして俺達 は孫や我が子のような感じだといっていた。 場所は繁華街のちょうど真ん中辺りにあり、暫く歩いているとその 食堂に到着。すぐに暖簾をくぐって店内へと入る。 ﹁こんにちわお婆ちゃん、お爺ちゃん﹂ ﹁おや、一刀ちゃんいらっしゃい﹂ ﹁よう一刀‼相変わらず元気そうじゃねえか‼﹂ ﹁うん、今日も変わらず元気だよ。いつもの頼むね﹂ ﹁おうさ‼座って待っててくんな‼﹂ 亭主のお爺ちゃんに言われていつも座っている席へと向かうが、そ こには既に先客。もちろん知っている顔だ。 ﹁ん?・・・ようカズっち‼﹂ ﹁露蘭に飴里。二人も昼飯?﹂ ﹁あぁ、俺も少し前に来てね﹂ ﹁カズっちもこっちに来なよ♪一緒に飯食おうぜ♪﹂ ﹁分かったよ。じゃあお邪魔します﹂ 店内で先に食事していた露蘭と飴里の同じ席へと腰掛け、神龍双牙 を机に立て掛ける。 ﹁相変わらずここで俺達が揃うな﹂ ﹁全くだ。飴里が勧めてくれただけのことはあるぜ﹂ ﹁気に入ってくれて何よりだよ。それにあの老夫婦も二人のことを 気に入ってくれたようだしね﹂ 1124 そう言われて先ほどの老夫婦を見る。確かに非常に楽しそうに仲良 く注文の料理を作ってくれている。見ているだけでこっちも嬉しく なりそうな仲がいい光景だ。 エビチリ そう言われながら露蘭は天津飯、飴里は麻婆豆腐と肉まんを口にす る。すると暫くしてからお盆に注文した乾焼蝦仁と担担麺を乗せて やってきた。 ﹁はい一刀ちゃん。熱いから気を付けてお食べ﹂ ﹁ありがとうお婆ちゃん・・・うん。いつも通り美味しそうな香り だよ﹂ ﹁ありがとね﹂ 俺は料理を受け取って、直ぐに小皿にエビチリを移して口にし始め る。 ほのかにピリッとしてエビの弾力が本当に美味い。俺が初めて来て からずっと頼んでいるお気に入りの料理だ。 ﹁なあなあカズっち﹂ ﹁ん?﹂ ﹁桃香ちゃんとはどうやって結ばれたんだ?﹂ ﹁ぐふっ⁉・・・ゴホゴホ⁉い・・・いきなりなに言い出すんだよ 露蘭⁉﹂ ﹁だって気になるじゃねえか♪阿斗ちゃんも桃香ちゃん似で可愛い しな﹂ ﹁それは同意見だな。本当に君の子供かい?﹂ ﹁飴里・・・それはどういう意味だ?﹂ ﹁ふっ・・・・・・冗談だよ﹂ 飴里には似合わない冗談を口にし始める。どうやら今は大好物の肉 まんを食べているからご機嫌のようだ。 1125 ﹁あのね・・・何か勘違いしているようだから一言いっておくけど ね。俺は桃香だけが特別だなんて思ってないよ﹂ ﹁そうなのか?﹂ ﹁当たり前だ。愛紗や鈴々、朱里、雛里、星、紫苑、桔梗、焔耶、 翠、蒲公英、月、詠、恋、霞、嵐、ネネ、夏雅里、白蓮、猪々子に 斗詩。みんな俺にとって掛け替えのない大事な家族だ。だから誰か を贔屓にするだなんて出来ないよ﹂ ﹁じゃあ俺達は?﹂ ﹁もちろん露蘭と飴里も大事な家族さ。それも兄弟とも思ってる﹂ ﹁おっ♪嬉しいこと言ってくれるじゃねえか♪﹂ ﹁当然だろ・・・そうだ‼﹂ そういうと俺はお婆ちゃんを呼んで、小さな盃に軽い酒を注いでく れるように頼み、すぐにお婆ちゃんが持ってきてくれた。 ﹁なんだい一刀君。流石に勤務中に飲酒はマズイよ﹂ ﹁分かってるさ。さっきも言ったように君達二人は俺にとって兄弟 みたいに感じてるんだ。二人はどう思ってるかな?﹂ ﹁俺達?・・・俺もカズっちとは兄弟だと思ってるぜ。もちろん飴 里もさ﹂ ﹁一刀君は烈光様が認められた漢だ。それは朱里や雛里、夏雅里が 認めてるから間違いないと思うよ﹂ そういうと俺は盃を一つ手に取る。 ﹁やっぱり俺と同じ考えだったようだね・・・・・・だから俺は・・ ・二人と義兄弟の契りを交わしたい﹂ 俺はその場で立ち上がり、盃を掲げる。露蘭と飴里は少ししてから 1126 同じように盃を手にして立ち上がる。 ﹁ふぅ・・・俺もカズっちみたいな奴が兄貴だと思えたら嬉しいぜ ‼﹂ ﹁俺もだ。兄が出来るのは嬉しいことだ﹂ ﹁よし‼じゃあ血盟だ‼﹂ 二人の顔を伺うと肘を少しだけ曲げて構える。 ﹁我ら三人‼生や場所は違えども‼﹂ ﹁同じ志の下‼﹂ 一刀‼﹂ ﹁血は繋がらずとも心を一つにせん﹂ ﹁我が名は北郷 仲権‼真名は露蘭‼﹂ 元直。真名は飴里﹂ ﹁我が名は夏侯覇 ﹁我が名は徐庶 ﹁共に語らい‼﹂ ﹁共に戦い‼﹂ ﹁共に歩み進む﹂ ﹁上は国家に報い、下は民を安んずることを誓う‼﹂ そういうと俺達は同時に曲げていた肘を伸ばし・・・・・・。 ﹁﹁﹁乾杯‼﹂﹂﹂ 盃を鳴らす。店内にその音は響き渡り、老夫婦と居合わせていた他 の客達はそれを見守っていた。 俺、露蘭、飴里。義兄弟の契りを交わした瞬間であった・・・・・・ ・・・。 1127 仲達。彼は自身の屋敷で久々の休みを満喫 第146話:義兄弟︵後書き︶ 曹操に付き従う司馬懿 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re していた。ちょうどそこに彼の家内達が歩み寄る。 次回 [司馬一族] 野心の中にも大事なものはある。 1128 第147話:司馬一族︵前書き︶ 曹操以上の野心を誇る司馬懿にも大事なものはある 1129 第147話:司馬一族 一刀達が益州を平定してから暫く経過した頃の洛陽城内にある一室。 劉備軍が益州を平定したことで一時は慌ただしかったが、今では平 仲達は日々の執務に時間を費 穏を取り戻していつも通りの雰囲気を醸し出していた。 この部屋を執務室としている司馬懿 やしていた。 ﹁全く・・・・・・劉備が益州を平定した位で慌ただしくしおって・ ・・私の時間が無くなってしまうではないか﹂ ﹁父上。その時間を確保したいが為に非番の私達を駆り出したのを お忘れではないでしょうね?﹂ ﹁全くだぜ親父。俺だって今日は久々に釣りでも行こうかと思って たのにさ﹂ ﹁う・・・うるさいぞ。子元、子上﹂ 子元と司馬昭 子上。二人はそれぞれ私の私兵部隊の一軍を 私の左右にある机で執務を手伝わされている二人の息子。名前は司 馬師 率いている武将だ。 ﹁だけどなぁ親父。埋め合わせはやってくれよな。それに残業代に せいじ せいろん 美味い飯と美味い酒﹁今は仮にも執務中だ。そういった話は後にし ろ誠璽﹂うぐ・・・・・・分かってるって誠龍兄さん﹂ 仕事が終わった後の埋め合わせを要請する誠龍に誠璽が口を塞ぐ。 確かに今は私が頼み込んだこともあるが執務中だ。そういった話は また今度にして貰いたい。 1130 ﹁しかし父上、今は劉備の軍勢が益州を平定したがまだ国内は安定 していない。それなのに曹操殿はなぜ攻め込む事を容認されないの でしょうか?﹂ ﹁さぁな。しかし曹操殿は相手が力を付けた頃に決戦を挑んで勝利 することをやり方としているのだ。自らの覇道の為にな・・・・・・ ﹂ ﹁はぁ・・・・・・相変わらず堅苦しいお方だな曹操嬢ちゃんは・・ ・・・・﹂ 確かにまどろっこしい。敵は叩ける内に叩いておかないといずれは 自らの破滅へと向かうというのに・・・・・・。私が今の指導者で あれば遠慮なく攻め込んでいる。そう考えながら筆を進めていると 執務室の扉が開けられて誰かが入って来た。 数は二人。一人は男で銀色の鎧を身に着けた大人しそうな青年で、 もう一人は長い髪をまとめて不敵な笑みを浮かべている女だ。もち ろん私は誰なのか知っている。 ﹁誠白様、お仕事は捗っていますか?﹂ こはる 春華。真名は小春。私が唯 ﹁うっ・・・・・・し・・・春華・・・・・・﹂ 私に話しかけてきたのは正妻である張 一愛した女であるが同時に私がもっとも恐れている女でもある。 ﹁あら?息子二人を駆り出しているというのにまだ終えられておら れないのですか?﹂ ﹁うっ・・・・・・そ・・・それはだな小春・・・・・・﹁まさか とは思いますが、我が子等のせいにさられないでしょうね?﹂う・・ ・・・・すまん・・・﹂ 1131 笑顔ではあるがどこか怒っている小春の怒気に私は思わず身を縮ま ってしまう。 ﹁そ・・・・・・それで・・・お前はどうかしたのか?﹂ ﹁あら、私は3人に間食の肉まんをお持ちしただけですよ。最も、 この子はお仕事の別件で来たようですよ。ねえ﹂ ﹁は・・・はい﹂ そういって小春に背中を押されて前に出てくる先ほどの青二才。こ やつは諸葛誕。字を公休。我が司馬一族と並ぶほどの名門である諸 葛一族の人間で、劉備軍の諸葛亮と呉の諸葛謹の親戚といっていた。 こいつは私の下で軍師としての修行をしている最中だ。 ﹁それで・・・・・・お前は何を持ってきたというのだ?﹂ ﹁はい。司馬懿様に火急の竹簡が舞い込んで来ましたのですぐにお 目通りをお願いいたします﹂ ﹁・・・今は我等は見てのとおり多忙だ。そういうことならお前一 人でも出来るだろうが・・・﹂ ﹁え?・・・・・・し・・・しかし・・・これは曹操様直々の指示 でありますが・・・﹂ ﹁曹操様からだと?﹂ ﹁はい﹂ ﹁はぁ・・・・・・分かった。さっさと寄越せ﹂ 本来ならこいつに押し付けたいところだが曹操からの指示であるな ら従わなければならない。嫌々ではあるがそれを片手で受け取ると すぐに目を通す。見ると書かれている内容は先日の私兵部隊を用い た賊討伐の報告要請だ。そういえばまだ報告書を出していなかった。 1132 ﹁はぁ・・・・・・﹂ ﹁どうかなされましたか父上﹂ ﹁なんでもない。先日の賊討伐の報告書の催促だ﹂ ﹁あら、まだ報告書を出しておられなかったのですか?﹂ ﹁ぎくっ・・・・・・﹂ ﹁私は前にも言った筈ですよ。報告はその日の内に済ませるべきも のだと・・・﹂ ﹁い・・・いや・・・・・・それは・・・その・・・・・・すまん﹂ ﹁でしたら・・・早く仕事を済ませる必要が出てきましたね。誠璽 と誠龍もですよ﹂ ﹁分かっています母上﹂ ﹁俺達の方はあらかた終わってるぜお袋﹂ ﹁まぁ・・・流石は自慢の息子達ね。旦那様も少しは見習われたら どうですか?﹂ ﹁う・・・うむ・・・﹂ ・・・・・・本当に頭が上がらない。なんというか本当に掴み所の ない性格をした怖い女だ。だがそんな小春だからこそ私は惹かれた のだろう。普段からこんな日常をしているのだから飽きはしない。 だからこそ私は自らの野心の為に動かなければならない。たとえそ れが茨の道であっても・・・・・・・・・・・・。 1133 公謹。彼女はとあることで悩んでいた。 第147話:司馬一族︵後書き︶ 呉の美周嬢、冥琳こと周瑜 ある人物の顔が最近になって離れなくなっていた。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 彼女が悩んでいた処を親友が話しかける。 次回 [冥琳の憂鬱] 希代の大軍師も恋沙汰には弱い。 1134 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 人気キャラク 第3回人気キャラクター投票結果発表前編︵前書き︶ 今回は第3回 ター投票の結果発表前編をお届け致します。 1135 第3回人気キャラクター投票結果発表前編 海兵隊の誇り,Re 人気キャラクター 造られた人気キャラクター投票結果発表特設会場の空間は闇に包ま 真・恋姫無双 れていた。しかし・・・・・・。 ﹁第3回 投票結果発表‼‼﹂ ﹃わぁあああああああ‼‼﹄ 第1回、第2回と同様にスポットライトが灯され、舞台前には各陣 営に分かれて主要キャラクター達が勢揃いしていた。 そしてステージにはマイクを手に取ったジーンともはや諦めながら マイクを手にしているライルが上がっていた。 ﹁はぁ・・・またやるのかジーン・・・﹂ ﹁まったくあの馬鹿作者が軍に入った記念で急遽開催だなんて・・・ ﹂ ﹁そう言ってやるな。10年近く待ち望んでようやく掴み取った夢 らしい。根性と諦めの悪さには感服するよ﹂ ﹁本当よね・・・まあいいわ。せっかくだしさっさと終わらせてし まいましょ。じゃあまずは10位から行ってみよ∼♪﹂ ジーンがそういうと定番のルーレットが回転し始め、そして止まっ た。 ﹁ちょ⁉なんでいきなりランクインキャラが4人もいるのよ⁉﹂ ﹁俺が知るか。今回はキャラの偏りが何時もより無かったらしいか らな﹂ 1136 ﹁そうなの?・・・じゃあ紹介するわね。 士元こと雛里ちゃん♪﹂ まずは一人目よ。蜀陣営からロリッ子の代表格であわわ軍師と呼ば れている龐統 ﹁あわわ⁉わ・・・私でしゅか⁉・・・あぅ・・・噛んじゃった・・ ・﹂ ﹁二人目と三人目は初ランクインだな。今までは我儘な印象しか無 かったが本作では年相応の明るくて素直な妹キャラになった袁術 子 公路こと美羽で、三人目は普段は恥ずかしがり屋のゴスロリ系だが 武器を持たせると性格が急変するギャップ萌えキャラの太史慈 義ことこと美花だ﹂ ﹁うにゃ?にょほほぉ∼妾も人気者なのじゃ♪﹂ ﹁あぅあ⁉私でしゅか⁉﹂ 文謙こと凪‼﹂ ﹁そして四人目♪隊長の為なら火の中水の中なんて当たり前‼魏の 中でも屈指の純粋な女の子‼楽進 ﹁はっ?私がか?﹂ そう言われると雛里、美羽、美花、凪の四人にスポットライトが当 てられる。そしてモニターには投稿理由が表示された。 雛里:口癖が好き 美花:大人になろうと努力して、演技してるようにみえる子。実は がんばりやさんかも?目立とうとしてる割に案外目立ってない子︵ 笑︶ 美花:普段と武器持ったときとのギャップがいい!!あと戦闘中に ちょくちょく人格変えて戦ったら意外と恋にも勝てそう!! 凪:我らが凪ワンコ‼独り占めしないでくれ牙刀よ‼ 1137 ﹁あぅ・・・は・・・恥ずかしいでしゅ・・・﹂ ﹁にょほほぉ∼♪兄様ぁ♪ナデナデしてたも♪﹂ ﹁・・・・・・ふにゅ∼・・・﹂ ﹁なっ⁉わ・・・私が隊長に独り占め・・・﹂ ﹁なんというか・・・予想通りのリアクションだな・・・﹂ ﹁まぁそこが可愛くていいじゃない♪あなたも相変わらずいいお兄 さんね♪﹂ ﹁まあな、こいつ等は可愛らしい義妹だよ。だがランキングを進め るぞ﹂ そういうと再びルーレットが回され、暫く回転してからようやく止 まった。 ﹁・・・本当にランクインキャラの偏りが少ないな・・・バランス がいいというか何というか・・・﹂ ﹁本当ね♪じゃあ次は9位よ♪人数は2名‼一人目は初登場から定 元直こと飴里‼﹂ 評がある蜀のイケメン3人衆の一人で朱里と雛里のお兄さん的存在 ‼徐庶 ﹁俺が?・・・それって本当かな?﹂ ﹁相変わらず謙虚な性格だ・・・もう一人も蜀陣営からだ。天真爛 蜀の仁徳王 劉備 玄徳こと桃香だ﹂ 漫でのほほんとした性格だが、根と芯はしっかりとしていて好きな 人にはとことん甘える。 ﹁ふぇ?やったぁ∼♪私も入っちゃった♪﹂ 飴里は自分がランクインしたことに疑問を示し、桃香は抱っこして いる刀瑠に頬ずりして喜ぶ。 ﹁すまないが時間が無いからさっさと理由を公表するぞ。理由はこ れだ﹂ 1138 飴里:正直、これからどれぐらい出番があるのかは分かりませんが ヤッパリ愛着が⋮ 桃香:紫苑に続くお母さんキャラになってから優しさが滲み出て可 愛いです。 ﹁どうやら本当みたいだね・・・ありがとう・・・嬉しいよ﹂ ﹁えへへ∼♪お母さんだよ∼♪﹂ ﹁見ているこっちまで和んで来る光景ね・・・・・・さあ‼さあ‼ 気を取り直して次に行って見ましょう‼第8位はこの人‼﹂ 和みムードを振り払ってジーンはルーレットを回し始め、回された ルーレットは暫くしてから停止した。 ﹁出ました‼もはやこのランキングで常連となっているオリジナル 子瑜こと千里‼﹂ キャラ‼愛する妹の為なら喜んで飛んでくる呉で1番のシスコン‼ 諸葛瑾 ﹁って⁉だからシスコンではありません‼純粋に朱里や夏雅里を大 事にしているだけですって⁉﹂ ﹁それをシスコンと言うのだと思うのだが・・・投票理由はこれだ﹂ 千里:ただ一途に妹達を愛する、ある意味では一つの事を貫き通す 男ですね。雛里に対して特に語らない事から、ロリコンではなくシ スコンであると背中で語る一本気な男です。 ⋮浮気はしそうにありませんが結婚もなさそうですね。 ﹁何ですか⁉この理由は⁉﹂ ﹁というか全くその通りだな﹂ ﹁本当よね・・・﹂ ﹁・・・・・・そこの二人・・・哀れそうな視線を送るのは辞めて 頂けませんか?﹂ 1139 ﹁これは失礼・・・・・・じゃあさっさと進めるとしよう﹂ ﹁ちょ⁉・・・将軍⁉﹂ ﹁はいは∼い♪じゃあ次は第7位よ‼第7位は・・・・・・こちら ‼﹂ 千里の一人漫談を強制終了させ、イリーナは回されていたルーレッ トを止める。 ﹁第7位は3名‼時間を押したいから纏めていくわよ‼一人目は呉 から‼訓練で捕まったら顔に恥ずかし∼い落書きをされるという無 邪気さに大好きなお猫様を見つけたら自身もお猫様になっちゃう明 命‼ 奉先こと恋ちゃん‼ 二人目は董から‼戦う姿と普段の姿にギャップがあり過ぎてファン を鷲掴み‼天下の呂布 一刀‼﹂ 最後は蜀からよ‼仲間や民‼更には愛する人との間に授かった宝物 の為に二筋の刀を振るう武人‼天の御遣いこと北郷 ﹁はぅあ⁉やりました‼三回連続で入りましたお猫様‼‼﹂ ﹁︵モキュモキュ︶・・・ご主人様と・・・一緒﹂ ﹁俺が7位か・・・・・・やったぜ‼﹂ 三回連続でランクインしたことで大いに喜ぶ明命に一刀と同じラン クに入ったことで反応を示す恋。今回が初のランクインとなって握 り拳を掲げながら喜ぶ一刀。 ﹁やったな一刀﹂ ﹁ありがとうございますライルさん‼﹂ ﹁はいは∼い♪男同士の熱い握手は後回しにしてちゃっちゃと進め るわよ♪これが投票理由よ♪﹂ 明命:お猫様同盟 1140 恋:食べてる姿に何度も悶絶‼お持ち帰りしてもいいっすか⁉ 一刀:自分が主人公に求める要素をすべてぶっこんだような、正に 理想的な一刀です 国、盟友、仲間だけでなく、愛する人との愛の形である子供を背負 った彼のさらなる活躍に期待!! ﹁とまあ・・・こんな感じだな﹂ ﹁やりましょう‼お猫様同盟作りましょう‼﹂ ﹁︵モキュモキュ︶・・・・・・おかわり﹂ ﹁理想的って・・・・・・だったらますます頑張らないとな‼﹂ ﹁本当に嬉しそうね一刀君♪じゃあ次にいきましょうか♪第6位に 入ったのはこ∼の人♪﹂ 今度はジーンがルーレットを回し始め︵以下省略︶ ﹁これは・・・・・・董からだ。猫みたいに自由気ままだが純情可 分遠﹂ 憐で恋愛になるとそのウブさでファンの心を鷲掴み。最近になって 露蘭を気になり始めた張遼 ﹁なんや∼・・・6位かいな・・・も∼ちょっと上いけると思っと ったんやけどな﹂ ﹁もう一人は・・・俺達からか・・・イギリス生まれのアメリカ育 ウォーランス 隊隊長のレオン・キャメロン大尉だ﹂ ちで高い戦闘力と普段の優しさを兼ね備える我等がウルフパック戦 車部隊 ﹁うぉっしゃ‼何だか知らないがランクインしたぞ‼﹂ 中々順位が上にいかないことに少しだけガッカリする霞に理由はよ く分からないがランクインして両手を挙げて歓喜の声を挙げるレオ ン。 ﹁何だか徐々にウルフパックの面子がランクインしてくるようにな 1141 ったな﹂ ﹁以前は武久も入ったからね∼♪じゃあさっさと進めちゃいましょ ♪﹂ 霞:あの関西弁とウブなリアクションがドツボです‼彼女にしたい キャラNo.1です‼ レオン:渋くてかっこいいですね。三姉妹との絡みのシーンが印象 的でした。対応がなんか如何にも、軍人さんぽい ﹁もう∼♪いややわぁ∼♪彼女やなんて∼♪せやけどありがとうな ♪﹂ ﹁渋くてかっこいいだなんて・・・嬉しいぜ‼ありがとうな‼﹂ ﹁こらレオン、嬉しいのは分かるがあまり騒ぐな。進まないぞ﹂ ﹁あっ・・・す・・・・・・すみません中佐・・・﹂ ﹁じゃあレオンへの折檻が終わったところで次に﹁あ∼・・・ちょ っと待ったジーン﹂なに?﹂ ﹁実はルーレットの調子が少し悪くてな・・・メンテするから小休 止してくれないか?﹂ ﹁そうなの?・・・じゃあ直るまで小休止にするわ♪それまで暫く 待ってね♪﹂ 1142 第3回人気キャラクター投票結果発表前編︵後書き︶ 次回は後編をお届け。 1143 第3回人気キャラクター投票結果発表後編︵前書き︶ 人気キャラクター投票後半。 1144 第3回人気キャラクター投票結果発表後編 ﹁直ったようだな。待たせたなジーン。早速だが再開させるとしよ うか﹂ ﹁おっそ∼い‼ヒック・・・﹂ ﹁・・・・・・お前・・・酔ってるのか?﹂ ようやくモニターの調子が良くなったというのに今度はジーンの様 子がおかしい。しかしよく見ると彼女の足下には空になったボトル が大量に転がっていた。 つまり彼女は酔っ払っているということだ。というかこの短時間で どうやったらこんなになるまで飲めるんだ? ﹁ヒック・・・・・・ニヒヒ∼♪ライル∼・・・な∼んで4人にな ってるの∼?﹂ ﹁分かった・・・・・・分かったからとにかくお前は部屋で休んで な・・・﹂ ﹁えぇ∼⁉やだやだぁ∼‼もっと飲みたい∼‼﹂ ﹁はぁ・・・仕方が無い・・・・・・こうなったら・・・﹂ 溜息を吐きながら俺は完全に酔っ払ったジーンを掴むと・・・。 ﹁うぉりゃぁあああああ‼﹂ ﹁行って来ま∼す‼﹂ 前回作者がジーンを放り投げた時に出来た穴からジーンを再び投げ 飛ばした。これで酔っ払いはどうにかなった。 1145 ﹁全く・・・・・・すまないなみんな。ここからは仕方がなく俺一 人で仕切らせて貰う。さぁ、さっさと進めてしまおうか。第5位は これだ﹂ 俺はルーレットに指差すと暫くしてから結果が出された。 ﹁第5位は二人で片方は蜀だな。初登場からその容姿や喋り方、更 子魚こと夏雅里﹂ には舌足らずの箇所で人気を宿している朱里の妹で通称ふわわ軍師。 諸葛均 ﹁ふわわ⁉わ・・・わたしでしゅか⁉﹂ 仲穎こと月殿で ﹁もう一人は董からだ。戦いを心から嫌うがそれ以上に何もできな いことを嫌う心優しい少女。へうの伝道師の董卓 す﹂ ﹁へぅ?・・・へぅううう⁉﹂ まさかロリッ子が同時に来るなんて・・・。 ﹁面白いリアクションの最中に申し訳無いが時間が無いので進ませ て貰う。投票理由で印象的だったのはこれだ﹂ 夏雅里:ありゃもう兵器‼勝てない‼別の意味で・・・ 月:儚い雰囲気が好きです ふわわ と へ 投票理由が出た瞬間に二人は恥ずかしいのか夏雅里は大きいベレー を言いながらだが・・・。 帽で顔を隠し、月殿は両手で顔を隠す。もちろん ぅ ﹁はぁ・・・・・・時間がありませんから進みますよ。次は第4位。 第4位はこちら・・・・・・・・・・・・出ました。次は単独のよ うで、その美貌と知的、更にはスタイルと服装で天女を思わせる呉 1146 の中でも格別の美しさを誇る周瑜 公謹こと冥琳殿です﹂ ﹁ほぅ・・・私が第4位か・・・中々の結果だな﹂ ﹁おめでと♪冥琳♪﹂ ﹁ふふっ・・・ありがとう雪蓮。それでライル、私の投票理由はな んだったのだ?﹂ ﹁これは失礼しました。こちらがその理由になります﹂ 冥琳:クールな上にスタイルと顔バツグン‼理想的な完璧美女です‼ ﹁ふふっ・・・煽てても何も出ないぞ。だが素直に喜んでおくとし ましょう﹂ ﹁珍しいですね・・・・・・まぁそれはさておき次に参りましょう。 第3位はこちらになります﹂ そういうと俺はルーレットを回し、暫くしてから第3位が表示され た。次はどうやら2人のようだ。 ﹁ここで来たか・・・第3位は二人。戦場では英雄に相応しい佇ま いと武を振るい、普段は天真爛漫で民と君主の隔てなく接する優し く無邪気な雪蓮殿です﹂ ﹁やった∼♪前より人気があがった∼♪﹂ ﹁おめでとうございます雪蓮殿・・・次は我等ウルフパックからだ。 グレイブ隊 隊長の南郷 武 侍と海兵隊員の志を胸に秘め、空からだけではなく日本刀を手にし て敵を切り伏せる対地攻撃ヘリ部隊 久大尉﹂ ﹁俺もですか?・・・えっと・・・・・・ありがとうございます﹂ スポットライトが2人に当てられ、雪蓮殿は両手をあげながら無邪 気に喜び、武久は少しだけ照れ臭そうに頬を掻く。 1147 ﹁それでは次は2人の投票理由です。こちらをご覧ください・・・﹂ 雪蓮:雪蓮やべぇ。まじやべぇ。かわいいし強い。女性キャラとし て必要な魅力と、指導者キャラ、戦士キャラとして必要な魅力を兼 ね備えている。非の打ち所がない・・・・・・。すばらしい・・・・ ・・ 武久:戦闘時の男らしさに加え、歌舞伎もできるとは、かっこよす ぎです ﹁確かに雪蓮殿は戦闘時と普段のギャップがありますからね。人気 が出るのも頷けます。 武久も対地攻撃適性の高さに加えて近接戦の強さや歌舞伎も出来る。 女性からの人気も高いぞ﹂ ﹁ありがとうライル♪じゃあお祝いに私と熱∼い接吻して♪﹂ ﹁なっ⁉い・・・いつの間にステージに⁉てか何でそうなるんです か⁉﹂ ﹁ええ∼⁉いいじゃない♪記念なんだしいいでしょ⁉﹁いい加減に しないか﹂イタタタタ⁉ちょ⁉冥琳⁉耳を引っ張るのはやめて∼⁉﹂ 危なく雪蓮殿にキスされそうになったが、寸でのところで冥琳殿が 助け舟を出してくれた。 何だか少し残念だが仕方が無い。切り替えて先に進むとしよう。俺 は気にせずにルーレットを回し、第2位のランクインキャラを表示 した。 ﹁ほぅ・・・ここで来たか・・・武人としても軍人としても魅力を 兼ね揃え、主に対して絶対的な忠誠心を胸に秘める魏武の龍。徐晃 公明こと牙刀だ﹂ ﹁私が・・・・・・それは誠かライル殿?﹂ ﹁あぁ、間違いないさ牙刀。あんたの人気もかなり定評があるから 1148 納得の理由だ。さて、第2位だから投票理由は二つ表示するぞ。投 票理由はこれだ﹂ 牙刀 ・やはり武人という点において彼は他を圧倒していますね。忠義は 勿論、戦った相手に敬意を表する姿はまさに男の中の男。これから の拠点描写に期待したいところです。 ・誇り高い武人とはまさしく彼でしょう。特に調子が悪かったとは いえ、ライルの得物を破壊するという大戦果を叩き出してますし、 なによりもカッコいいです。 ﹁流石は俺のライバルだ。確かに俺から見てもあんたは尊敬に値す る﹂ ﹁そういうライル殿もだ。私は貴公に目指すものがあると信じてい るのだからな﹂ ﹁ふっ・・・嬉しいことを言ってくれるじゃないか牙刀・・・・・・ さて、次はいよいよ首位になるが誰が入っているか﹁たっだいま∼ ♪﹂・・・もう酔いはいいのかジーン?﹂ 振り向くと何事も無かったような顔をしているジーンが戻って来て いた。 ﹁いや∼♪ごめんなさいね♪流石にお酒ボトルで30本も飲んだら 酔うわ♪﹂ ﹁・・・・・・飲み過ぎだ。というか雪蓮殿達以上の酒豪なのか?﹂ ﹁うん♪﹂ ・・・・・・というかバッカスだな・・・・・・一応は天使だから ある意味で間違ってあいないか・・・。 1149 ﹁それより次はいよいよ第1位よね?じゃあさっそく行ってみよ∼ ‼ルーレットスタート‼﹂ ジーンがそういうとドラムの音と共にルーレットが派手に回り出す。 そして全員が息を飲んで見守る中、ようやくルーレットが止まった。 ﹁出ました出ました出ました∼‼第1位はやっぱりこの人‼兵士、 指揮官、武人、そして漢という憧れと敬意を一手に集める歴戦の猛 者‼ 江東の銀狼 という異名を持つ英雄‼ しかも最近になってから人間臭さが合間って人気が更に急上昇中の 我等が主人公‼ 孫呉海兵隊司令にして自身も 第1位はライル・L・ブレイド中佐になりました‼﹂ ﹃わぁああああああああああ‼‼﹄ ﹁・・・また俺か?﹂ ﹁うん♪そうだよライル﹂ ﹁まさかと思うがまた変な特典があるんじゃないだろうな?﹂ ﹁あぁ大丈夫♪今回は質問があるだけだから♪﹂ ﹁質問?﹂ ﹁V3達成を記念してね♪じゃあ次は投票理由ね♪一位だから3つ 用意したからこっちを見てね﹂ ライル ・最近妙に初々しい場面が見えますね。見た目や言動からは全く想 像出来ない脳内での雪蓮との関わりは見ていて面白いです。 だいぶ彼女との距離も縮まってきていますし、これからに期待。 ・戦士として、指揮官として、人間としても優れたパーフェクト主 人公。パーフェクト主人公を否定する声もありますが、自分はこう いう主人公が大好きです。海兵隊の誇りのような、群像劇的な作品 1150 なら特に。 ・さすが主人公ですね。かっこいい!!恋愛面で千里を見習わせて みたらすぐに雪連とくっついたりして。いや、初々しさがいいのか? ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁相変わらず人気者ねライル♪﹂ ﹁・・・・・・で・・・あんたが言ってた質問は?﹂ ﹁あぁそうだったわね・・・えっと・・・・・・これが質問よ♪﹂ 質問 ライルは雪蓮のことをどれだけ好きなの? ﹁ちょ⁉なんだこの質問は⁉というか絶対に雪蓮殿でしょこの質問 だしたのは⁉﹂ ﹁なっんのこと∼♪わたし知らないも∼ん♪﹂ ﹁絶対そうだ⁉﹂ いつの間にか再び雪蓮殿がステージに上がって俺との距離を詰めて いた。ほのかに香る女性特有の香りと雪蓮殿の幼さが残る顔が迫る。 俺は顔を赤く染めながら視線を逸らしてジーンを投げ飛ばした時の 穴から外に脱出する。 ﹁あっ⁉待ちなさいライル‼大人しく私を愛してるって言いなさ∼ い‼﹂ 逃げる俺を雪蓮殿は物凄い爆弾発言を口にしながら追撃を仕掛けて 来る。別次元で狼と虎の追いかけっこをやるとは思わなかった。 1151 海兵隊の誇り,Re 真・恋姫 人気キャラクター投票はこれでお終い ﹁あ∼あ・・・行っちゃったわね・・・それじゃ第3回 無双 ♪じゃあ皆さん‼またお会いしましょう♪﹂ ジーンがそういうと再び意識が元の世界に戻っていった・・・・・・ ・・・。 1152 第3回人気キャラクター投票結果発表後編︵後書き︶ 次回から本編に戻ります。ご参加頂きました皆様。多数のご投票を 誠にありがとうございました。 1153 第150話:冥琳とアレックス︵前書き︶ 仕事を早く終わらせた冥琳。休む為に歩いていると何かが聞こえる。 1154 第150話:冥琳とアレックス 私の名前は周瑜。親友である雪蓮が率いる孫呉にて大軍師をしてい る。ここ2年で呉の発展は目を配るものがある。 2年前に袁家という理由で独裁者に祭り上げられた袁術こと美羽を 救い出して独立を果たし、袁紹討伐で名を轟かせ、更に交州を平定 させて貿易を発展させているというものだ。 孫呉海兵隊 だが私達だけではこれほど円滑には進まなかっただろう。これらの 偉業には奴等の影響が多大にあった。 ライル率いる天の知識が与えられた孫呉の最精鋭部隊 だ。天の軍隊とも呼ばれている群狼隊が我等に協力しているとい うことで志願兵や移民が増え続け、今は落ち着いているがそれでも 軍民共々充実したものとなっている。 そのお陰で私の仕事も多忙にはなったが、やり甲斐はあるので全く が頭から離れなくなっ 苦にはならない。だが少し前から・・・・・・。 ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁周瑜様、どうかなさいましたか?﹂ 気になること ﹁いや・・・・・・何でもない・・・﹂ 職務には影響しないのだが ていたのだ。 ﹁お疲れなのでしょうか?最近なんだか溜息の回数が増えているよ 1155 うに思われるのですが・・・﹂ ﹁いや・・・大丈夫だ。それに最近になって曹操の動きが活発な時 期だ。疲れているだからという理由で休む訳にはいかない﹂ ﹁それはそうですが・・・・・・﹂ ﹁それよりも、あと必要な案件は?﹂ ﹁優先させる案件は先程のものが最後になります﹂ ﹁そうか・・・﹂ 私と共に裁断している文官は私が育て上げた弟子達。かなり教え込 んで並みの文官よりも遥かに優秀だが、優秀過ぎるのも考えものだ な・・・。 ﹁後の案件は我等だけで裁断出来ますので、周瑜様はご休息なさっ て下さい﹂ ﹁最近になってから働き詰めなのですから、後は我等に任せてお休 みになられて下さい﹂ ﹁そうか・・・・・・ならばお言葉に甘えることにしよう﹂ 部下達に勧められて私は筆を置いて退出する。しかし休息といって も特にやることはないのだ。 ﹁ふふっ・・・・・・それにしても・・・﹂ に好意を抱いていることに気が付いた。 が疼くとはな・・・﹂ 軽く笑いながら私は廊下を歩く。 女 とある男 ﹁まさか私の封じた 少し前から私は その男は相棒を常に支え、更には自らも最前線で戦う猛者。 だが私生活では誰にも気兼ねなく接し、この前も私の仕事をさり気 1156 なく手伝ってくれたという優しさも持っている。 私がそう考えていると中庭から何やら聞こえて来た。どうやら音楽 のようだ。 私は趣味として音楽を聴き、私自身も二胡を演奏することもある。 気になったので私はそのまま中庭へと足を運んだ。 ﹁あっ・・・・・・﹂ そこにいたのは木と木に何やら長い網のようなものを結びつけ、す ぐ側の岩に腰掛けて弦楽器を引いている迷彩服を身につけた金髪の 男・・・・・・アレックスだ。 木々から漏れる木漏れ日やそよ風も合間って何とも神秘的な雰囲気 を醸し出し、私は柱の影に隠れながらそれに暫く魅入っていた。 しかしアレックスは弦楽器を弾くのをやめ、軽く笑いながら私の方 を見る。 ﹁いつまでそこにおられるのですか冥琳殿?﹂ 気が付かれてしまい、仕方なく私は柱から姿を現す。 ﹁流石だなアレックス、いつから気が付いていたのだ?﹂ ﹁少し前です。大体あそこの角からこちらに到着する中間辺りです ね﹂ ﹁殆ど最初からでじゃないか・・・・・・相変わらず人が悪い﹂ ﹁どうも・・・・・・それで冥琳殿は何をされていたのですかな?﹂ 互いに軽く笑みを浮かべながら話している。 1157 ﹁あぁ、私の方は休息だ﹂ ﹁もう終えられたのですか?﹂ ﹁いや・・・重要な案件を確認したら文官達が残りを引き受けてく れた。少しは休んだ方がいいとな・・・﹂ ﹁それは・・・・・・何とも﹂ ﹁それで、アレックスこそここでなにをしていたのだ?﹂ ﹁今日は休みなんです。晴れた日だから久々に外でくつろごうと・・ ・﹂ うぉっか というかなりキツイ酒だ。 そういいながらアレックスは備え付けられた机に置かれている酒を 軽く口にする。確か ﹁それでそれは何という楽器だ?﹂ ﹁ギターですか?﹂ ﹁ぎたー・・・・・・見る限りでは天の国の弦楽器のようだが・・・ ﹂ ﹁概ねそんな処です﹂ 成る程・・・天の国の弦楽器か・・・・・・二胡とは違う音色で心 が落ち着く。私が眺めているとアレックスが何か閃いたようで、私 の顔を覗き込んでくる。 ﹁それで冥琳殿、確か今はお休みになられるのですね?﹂ ﹁うむ、しかし特にやることなどはないから部屋に戻って本でも読 もうかと思ってな・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・そんなのじゃ休みとは言えませんよ﹂ ﹁ふふっ、だが仕方なかろう。他にやることがないのだからな﹂ ﹁でしたら・・・・・・それっ﹂ ﹁うわっ⁉﹂ 1158 そういうとアレックスは私の手を軽く握って、先端を木に結び付け てある網に私を放り込んだ。 ﹁ちょっ⁉アレックス⁉﹂ ﹁あなたは無理をし過ぎる傾向がありますからね。無理矢理にでも 休んで頂かないと聞かないと判断しました﹂ ﹁・・・全く・・・・・・だから私は﹁それに、どんな感触ですか ?﹂感触?・・・・・・﹂ そう言われて私は放り込まれた網の感触をすぐに調べる。暫く考え ていると・・・・・・。 ﹁こ・・・これは・・・・・・﹂ これは何とも不思議な感覚だ。表現は困難だが包み込まれるような 感覚が表現で一番的確だろう。 ﹁お気に召しになられましたか?﹂ ﹁う・・・うむ・・・・・・何だか不思議な感覚だ・・・・・・ま るで揺りかごだな﹂ ﹁確かにハンモックと似てる箇所がありますね﹂ ﹁ハンモック・・・・・・これは天の国の寝具か何かか?﹂ そう尋ねるとアレックスは頷いた。ハンモック・・・・・・これは 確かに心地良い感覚だ。そよ風でハンモックがゆっくりと揺れて本 当に心地良い。私が暫く堪能しているとアレックスが再びギターを 手に取り、岩に腰掛けると再び弾き始めた。 ﹁今日位は休んでもバチは当たりません。身体の力を抜いてゆっく り休んで下さい﹂ 1159 ﹁ふぅ・・・・・・分かった・・・ならば・・・ゆっくり・・・・・ ・休ま・・・せて・・・﹂ アレックスが弾くギターの音色に加えてハンモックの心地良さによ って睡魔がやって来て、微かな抵抗も虚しく私の意識は夢の中へと いってしまった・・・・・・。 アレックス視線 ふぅ・・・やっと眠ってくれた・・・・・・。 俺はギターを弾きながらハンモックで眠る冥琳殿を伺う。その表現 は穏やかで本当に気持ち良さそうだ。 彼女は呉にとって掛け替えのない存在だ。それに応えるかの如く彼 女も日々努力しているが、それが無理を強いられている状態。 それが続けば確実に倒れてしまい、最悪の場合は正史の周瑜と同様 に肺結核でこの世を去ることにもなりかねない。 俺はそんな末路などまっぴらごめんだ。 少しでも彼女の疲れが癒せるのなら俺はどんなこともしてやる。 だが今は・・・・・・気持ち良さそうに安心しきった表情で眠る天 女の為に演奏に徹しよう。それが俺の・・・・・・彼女に対する気 持ちだ・・・・・・。 1160 第150話:冥琳とアレックス︵後書き︶ 魏の許昌。ここに曹操や夏侯惇、更には徐晃や司馬懿達も集められ、 とある軍議が行なわれていた。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re それは曹操にとって避けては通れぬ大事な局面でもある。 次回 [覇道] 乱世の奸雄が遂に動き出す。 1161 第151話:覇道︵前書き︶ 乱世の奸雄が遂に動き出す。 1162 第151話:覇道 私達徐晃隊は許昌におられる曹操殿の呼びかけに応じてすぐに副官 の凪を引き連れて許昌へと馳せ参じた。 許昌には既に夏侯惇殿や夏侯淵殿、曹仁殿、曹洪殿、凜、風、桂花 と我が軍の重鎮達が集められ、物々しい雰囲気に包まれていた。 ﹁曹操殿、お待たせしてしまい申し訳ありません﹂ ﹁構わないわ牙刀、すぐに軍議を始めたいから席についてちょうだ い﹂ そう言われて我等はあてがわれた椅子に腰掛ける。隣には参刃がい た。 ﹁みんな揃ったわね。早速軍議を始めるわ﹂ 曹操殿が全員に話し掛け、視線が一斉に曹操殿へと向けられる。 ﹁みなのお陰で我等は漢の北側全域に荊州北部を手中に治めること がなった。しかし我が覇道を世に実現させるには我が軍は南軍をし なければならない﹂ ﹁遂に始まるのですな曹操殿﹂ ﹁そうよ参刃﹂ 参刃の問い掛けに曹操殿は頷く。確かに我が軍は既に漢の北部にあ る10個の州に加えて中心に位置する荊州北部を陥落させ、残る領 土は孫呉が治める揚州と交州、劉備が治める益州、そして荊州中部 1163 と南部を残すのみとなった。 兵力、国力共に二つの陣営を上回っている。 ﹁だから私はここに上意を命ずる。我が軍は準備が整い次第南に軍 を進め、呉を降す﹂ その言葉に全員が様々な反応を示す。呉にはライル殿が率いる天の 軍隊の他に精鋭揃いの孫呉水軍、更には英雄孫策や軍師周瑜。 名高い武将や軍師が多数在籍していて、今は兵力の調達が滞ってい るらしいが一兵卒も練度が高い。 すると反対側に座っている司馬懿殿が口を開いた。 ﹁曹操様、お一つよろしいか?﹂ ﹁何かしら?﹂ ﹁なぜこの時期に呉を攻めるのか理解しかねます。今は呉ではなく 統治してまだ日も浅く、兵力が安定していない劉備を攻める方がよ ろしいのではありませぬか?﹂ 孟徳 ﹁司馬懿の言うことにも一理あるわ。だが我が覇道にそのような楽 な道など不要。相手が力を付けてから全力で倒す。それが曹 の戦運びよ﹂ 自ら困難な道へと挑む。それが曹操殿の信条であり、これまで何度 もそれで勝利を勝ち取っている。 ﹁それに・・・呉を先に攻め込んで降すという理由はあなたも分か っている筈よ﹂ 一刀よりも現在 ﹁・・・天の軍隊と呼ばれている群狼隊を手中に収め、その圧倒的 な武力と戦闘力を用いて一気に攻勢を掛ける﹂ ﹁そうよ。そして私は天の御遣いと呼ばれる北郷 の呉の礎を築いた江東の銀狼ライルの方が脅威と認識している。 1164 だが逆を言えばあの男を配下に加えられればこの上ない戦力となる。 ならば私は何も言いません とだけ口 我が覇道を実現させるにはあの男の力と名声が必要となるわ﹂ それだけ言うと司馬懿殿は にして着席する。 ﹁それで桂花、兵力はどのくらい用意できるかしら?﹂ ﹁はっ、18万は用意が可能です﹂ ﹁キリが悪いわね・・・・・・20万を一ヶ月以内に用意なさい。 出来るわね?﹂ ﹁は・・・はい‼﹂ ﹁凜﹂ ﹁はい﹂ ﹁あなたは攻城兵器の手配を。第一目標の寿春で必要になるわ﹂ ﹁御意﹂ ﹁風﹂ ﹁はい∼﹂ ﹁あなたには兵糧の手配を命じるわ。長期戦を考慮にいれて余分に 用意して頂戴﹂ ﹁分かりました華琳様∼﹂ 桂花、風、凜の3人に的確な指示を下す。 ﹁春蘭、秋蘭はそれぞれ前衛の右翼と左翼。牙刀と参刃は中央、司 馬懿の私兵部隊には中衛を任せるわ﹂ ﹁﹁﹁﹁﹁御意﹂﹂﹂﹂﹂ ﹁季琳と愛琳にも前衛を任せるわ。季琳は春蘭と共に右翼、愛琳は 秋蘭と行動しなさい。いいわね?﹂ ﹁あぁ、任せてくれ華琳﹂ ﹁よっしゃ‼腕がなるじゃないか‼﹂ 1165 ﹁頼もしいわね。それと牙刀﹂ ﹁何でしょう?﹂ ﹁確実にライルは最前線に回されるわ。この中であの男に立ち向か える武を秘めているのはあなただけ。だからライルだけは必ずあな たが倒しなさい。いいわね?﹂ そう言われると全員が私に視線を集中させる。確かにこういうのも 公明。必ずやライル殿を討 何だが、ライル殿の武に敵うのは私だけ。夏侯惇殿や凪では難しい だろう。 私はそれ等を見て拝礼をとる。 ﹁・・・・・・分かりました。この徐 ち負かしてご覧に見せましょう﹂ 私に任された任務は重要だ。我が好敵手のライル殿との一騎打ちに 勝たなければならない。もしライル殿との一騎打ちに勝利出来れば その時点で呉軍の士気は地に落ち、呉軍を屈するきっかけともなろ う。 この後にそれぞれの兵力と戦準備を命じられて解散となった。次代 をゆく孫呉との戦い。本来なら心踊る状態ではあるが、何だが嫌な 予感がする。 次の戦・・・分からないが何かとんでもない事態が起こる予感がし て仕方が無い。 しかしもはや呉侵攻は可決した。今更覆すことなど叶わない。気合 を入れ直して私は凪と共に部隊の調子を整える為に部隊へと戻る・・ ・・・・・・・。 1166 第151話:覇道︵後書き︶ とある晴れた日、ライルは雪蓮殿に連れられてとある場所へと赴い ていた。そこは彼女達にとって大切な場所。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re そこで話している2人に何かが動き出す。 次回 [倒れる銀狼] 呉の怒りのきっかけが生まれる。 1167 第152話:倒れる銀狼︵前書き︶ 雪蓮とライル。互いが大事な場所へと向かうが・・・・・・。 1168 第152話:倒れる銀狼 この一ヶ月間、何も起きない。一応は曹操軍に何やら活発な動きが 見られるという報告を受けて冥琳殿は国境付近に監視部隊を派遣し て警戒にあたっている。何かあれば直ぐに伝令が戻って来る。 しかし万一に備えてヴェアウルフにはデフコン3を発令。何か有事 が起きれば何時でも出撃出来る態勢を整えている。 俺もすぐに現場指揮が出来るように執務室にMTVアーマーベスト とLHWヘルメット、更にはAN/PVQ−31BとAN/PEQ −16、AFG2を取り付けたHK416の10inモデルを鍵付 き家具の中に保管している。 俺が執務室で書類の裁断をしていると不意に扉がノックされ、俺は 入室許可を出す。 ﹁は∼い♪ライル♪﹂ ﹁雪蓮殿、どうかなさいましたか?﹂ ﹁・・・ねぇライル。・・・今日は暇?﹂ 入室してきた雪蓮殿が都合を聞いてきた事態にビックリし、そのし おらしい仕草に改めてドキっとした。 俺は顔を紅く染めながら応える。 ﹁え・・・ええ・・・・・・緊急の仕事は今のところありませんし、 細かい裁断はまだ残っていますが、後回しでも大丈夫です﹂ ﹁・・・ならちょっと付き合ってくれるかな?﹂ 断る理由も無く雪蓮殿からの誘いで二つ返事で返す。 1169 Mk45A1Aが格納されたCQCホルスターを装着すると雪蓮殿 に手を引かれて執務室を出て、それぞれ乗馬すると城外へと向かっ た。 そして俺は城からほんの少し離れた森の中にある小川へと連れてこ られた。鳥の鳴き声に河のせせらぎしか聞こえない非常にのどかな 場所である。 スレイプニルを待たせると雪蓮殿に手を握られながら連れて行かれ、 森林を抜けた先に到着した。小さな滝があり、澄み切った小川には 川魚がたくさん泳いでいるのが確認出来る。だが俺は別箇所に視線 を向けていた。 ﹁ここは・・・﹂ 孫堅 文台 と 呉狼 雷藩 。 小川の畔にある荒削りではあるが設けられた二つの墓石。そこに彫 られている名前はそれぞれ ﹁ここにね・・・・・・私の母様と父様が眠ってるの﹂ やはりだ・・・・・・つまりここは雪蓮殿のご両親が眠られている 神聖な場所。確か前に祭殿から2人の墓の場所を知っているのはご く僅かと聞かされている。 ﹁ここが・・・・・・しかしなぜこんな場所に?﹂ ﹁父様が嫌がってたのよ。死んでまで王という呪縛に囚われたくは ないからって・・・・・・そして母様は父様の側で眠りたいと・・・ 1170 ・・・﹂ 何と言うか・・・・・・いかにも雪蓮殿のご両親という感じだ。だ が分からないこともない。死んだ後くらいはゆっくりと眠りたいも のだ。 軽く説明しながら雪蓮殿は懐から布を取り出して汚れを取り始める。 ﹁手伝います﹂ ﹁ありがとう﹂ 暫く掃除をしていき、やがて二つの墓標は汚れ一つない綺麗さを取 り戻した。 ﹁こんな感じでよろしいですか?﹂ ﹁ええ・・・綺麗になったわ・・・・・・母様に父様。紹介するわ ね・・・・・・この人はライル。私の・・・・・・大切な人よ﹂ 雪蓮殿から大切な人と言われて少しドキッとしたが冷静さを保ちつ つ2人の墓前に軽く頭を下げる。 ﹁・・・・・・お初に御目に掛かります孫堅様、呉狼様。私はライ ル・ローガン・ブレイド中佐。孫呉海兵隊司令で雪蓮殿を支えてお ります﹂ ﹁もぅライルったら・・・・・・こういう時は嘘でも恋人だって言 うものよ♪﹂ ﹁なっ⁉﹂ ﹁ふふっ♪︵恋人だって言って欲しいのは本音なんだけどね♪︶﹂ 悪戯っ子みたいな笑みを浮かべながら大胆な一言を前に俺は恥ずか しくなって視線を反らしてしまう。 1171 そう語る雪蓮殿は、どこか寂し気で有りながらも嬉しそうで誇らし 気だった。 ﹁ねえライル、孫呉の名前の由来を知ってる?﹂ ﹁確か孫家所縁の呉群の一文字を繋げたと記憶しています﹂ ﹁それもあるけど、少しだけ違うわ﹂ ﹁?﹂ ﹁孫呉は母様の孫堅と父様の呉狼をなぞったのよ。2人の理想を実 現させるという意味合いを込めてね・・・﹂ ﹁理想・・・・・・ですか﹂ ﹁うん・・・みんなの・・・・・・呉の民の・・・仲間や家族の笑 顔の為に・・・大陸に平和を齎す事を・・・・・・﹂ 俺は雪蓮殿の言葉を聞き続ける。 ﹁それが孫呉の悲願・・・父と母の夢・・・私の夢・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁父様、母様見ていて・・・・・・2人の夢・・・呉のみんなの未 来の為に・・・あなた達の娘は命の限り・・・戦うから・・・﹂ ﹁・・・・・・俺も﹂ ﹁ライル?﹂ ﹁俺も雪蓮殿と共に・・・俺たちウルフパックを家族として迎え入 れてくれた呉という家族の為に・・・・・・戦います﹂ これが俺の願い・・・民の笑顔、仲間の笑顔、そして何よりも雪蓮 殿の笑顔の為に武器を手に取る。それを2人に伝えなければならな い気がしたのだ。 ﹁・・・・・・・・・・・・ライル﹂ ﹁何でしょう・・・⁉﹂ 1172 声を掛けられて雪蓮殿に振り向いた瞬間、俺の顔のすぐ前に雪蓮殿 の顔があった。彼女の両手は俺の両頬を添えられ、唇は彼女の唇に 重ねられている。 暫く続いた彼女とのキス。そして唇が離れると俺は状況を理解しよ うと目が点になっていた。 ﹁し・・・・・・雪蓮・・・殿・・・・・・﹂ ﹁ライル・・・・・・ありがとう・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁ありがとうライル・・・私達と出会ってくれて・・・・・・私達 の処に来てくれて・・・﹂ そういいながら雪蓮殿は俺の胸に顔を埋めて来る。その小さな手は 俺の背中に回される。 ﹁ライル・・・・・・愛してる・・・﹂ 俺はその言葉を聞いて彼女を優しく包み込む。 ﹁・・・・・・俺もだ・・・俺も・・・君を愛してる・・・・・・﹂ ﹁ライル・・・﹂ ﹁君を離したくない・・・・・・泗水関で初めて出会ってから・・・ ・・・ずっと君を想い続けていた・・・好きだ・・・・・・雪蓮・・ ・・・・愛してる﹂ ﹁私も・・・あなたが好き・・・・・・ライル・・・愛してる・・・ ・・・ずっと一緒にいて・・・離さないで・・・﹂ 互いの気持ちをしっかりと伝え、俺達は再び唇を重ねようとした瞬 1173 間、少しだけ離れた茂みから何か感じた。 草木が不自然に揺れる音に弦を引く音、そして微かな殺気・・・俺 はそれを感じた瞬間に何かが光った。そして考えるよりも身体が先 に動いていた。 ﹁雪蓮‼‼﹂ ﹁なっ⁉ライル⁉﹂ 俺はすぐに雪蓮を押し倒し、その瞬間に俺の左肩に一本の弓矢が掠 った。 ﹁ぐぅ⁉ちっ‼﹂ 俺は倒れながらもCQCホルスターからMk45A1Aを取り出し て弓矢が飛んで来た茂みに連続で45,ACP弾を発射。 ﹁ぐあっ⁉﹂ ﹁あぐっ⁉﹂ 向こう側から被弾して乾いた悲鳴が聞こえ、7発の弾を撃ち終わっ た後に一人分の逃げ出す足音が聞こえた。1人だけ取り逃したよう だ。俺は左肩を押さえながら茂みを調べる。 そこには死体が二体とまだ息がある敵兵。俺はそいつが目を覚ます 前に再び気絶させる為に腹部に蹴りを見舞う。 ﹁ライル‼大丈夫⁉﹂ ﹁えぇ・・・なんと・・・か・・・﹂ ﹁ライル⁉﹂ 1174 俺は雪蓮に振り向いた瞬間、左肩に酷い激痛が走る。息が苦しく、 力が入らない上に視界がぼやけて来た。 俺は力を振り絞り、掠った際に破けた迷彩を裂いて傷口を調べる。 出血はしていないが傷口の色が急速に紫色へと変色していた。 俺はそれが何なのか直ぐに理解できた。 ﹁くそ・・・・・・毒かよ・・・﹂ 1175 第152話:倒れる銀狼︵後書き︶ ライルが毒矢を受けた。それは雪蓮達の怒りをかうのに充分過ぎる 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 理由になった。暗殺者の所属が曹操軍だと知った雪蓮達は・・・・・ ・。 次回 [修羅] 孫呉の怒り、ここに覚醒する。 1176 第153話:修羅︵前書き︶ 雪蓮を庇い毒矢を受けたライル。彼を傷付けられた雪蓮達の怒りは 凄まじかった。 1177 第153話:修羅 ライルが私を庇って毒矢を受けた・・・。茂みの中には死んだ刺客 2人の死体と気を失った刺客1人。本来ならこいつ等の身体をバラ バラにしてやりたいが、いきなり倒れたライルに私はすぐ駆け寄っ た。 ﹁ライル⁉﹂ ﹁ぐっ・・・・・・うぅうう・・・﹂ ライルの顔色が徐々に青くなっていき、体温も冷たくなっているの に汗が止まらない。息も荒い上に若干だが痙攣も起こしている。 私はすぐにライルの上着を脱がせて矢が掠った箇所を見る。 すると傷口から紫色へと変色していた。やはり先程の矢には毒が塗 られていたようだ。毒の種類によって治療方法は変わるが、共通し た応急処置ならある。 ﹁・・・ごめんね、ライル﹂ 私は何の躊躇もなく左手をライルに軽く噛ませ、一言謝ってから傷 口を噛み千切った。 ﹁ウウゥ・・・ヴ⁉ヴヴゥッ⁉﹂ 矢の傷口を噛み千切られる痛みの為に呻き声を洩らすライル。 口には舌を噛まない為の布は無く、だから代わりに私の左手が挟ま れている。 1178 ﹁くっ⁉﹂ 意識が無くとも外部からの激しい苦痛の為に強く歯を噛み締めるラ イル。 しかし私はその痛みに耐えて、軽く噛み切った毒の混ざった箇所を すぐに吐き出した。それから数回ほど毒を吸い上げては吐き捨てて、 服の一部を引きちぎった応急の包帯で止血をする。 それが一通り終わった辺りでライルのいつも持っている通信機から 音が聞こえて来た。 <アイアンマンからウルヴァリン、応答せよ> 私はすぐにライルの装備品から探す。 <ウルヴァリン。こちらアイアンマンだ、応答せよ> 繰り返されるアレックスからの呼び掛けを頼りに私は右腰あたりに 装着されている通信機を見つけた。使い方は前にライルから教えら れているから何とか分かる。 <ライル、聞こえるか?こちらアレックスだ。返事しろ> ﹁アレックス⁉﹂ <その声は雪蓮殿・・・ライルはどうしましたか?> ﹁アレックス‼すぐに建業の外れにある森に来て‼ライルが毒矢を 受けたわ‼﹂ <なっ⁉ほ・・・本当ですか⁉> ﹁応急処置はしたけどあまり長くは持ちそうにないわ⁉だから急い で‼﹂ <分かりました‼直ぐに救護班を向かわせます‼通信機をそのまま 1179 にした状態でその場から動かないで‼> 私は通信機の電源を入れたままにしてライルを膝枕しながら待つ。 すると直ぐにアレックスが寄越してくれたヘリが到着してすぐにラ イルを収容。私もそれに乗って建業へとすぐに戻った。 城に戻ると慌ただしかった。ライルをすぐに医務室へと運び出し、 掛かりつけの医者と毒の専門家に後を任せると私は心配を押し殺し ながら玉座へと向かった。 ﹁姉様⁉どうしたのですか⁉もしやどこか怪我でも⁉﹂ ﹁大丈夫よ・・・・・・それにこれは私の血じゃないわ﹂ ﹁えっ⁉﹂ ﹁みんなよく聞いて頂戴・・・・・・ライルが私を庇って刺客が放 ﹄ った毒矢を受けたわ﹂ ﹃‼⁉ ライルが毒矢を受けたと聞き、全員が驚愕した。すると蓮華は慌て ながら私に問い詰めて来た。 ﹁そ・・・それでライルは⁉ライルは無事なのですか姉様⁉﹂ ﹁落ち着け蓮華・・・孫呉の次期王が無闇に慌てる姿を見せるな﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁それで冥琳・・・・・・何が起きているか説明して・・・﹂ ﹁あぁ・・・寿春の部隊にいた兵が傷だらけで駆けつけて来た。そ いつによると北から曹操の軍勢が大部隊を率いて強襲を仕掛け、短 1180 時間で寿春を制圧したらしい﹂ そう・・・やっぱりあの刺客は曹操の手のものなのね・・・・・・ 薄々分かってはいたけど随分と舐めたことをしてくれるわね・・・・ ・・。 ﹁・・・その兵士は?﹂ ﹁・・・・・・私達に報告し終わったと共に・・・﹂ ﹁そう・・・つまりは黒幕は曹操と言うことなのね?﹂ そう尋ねると冥琳は頷いた。ならばやるべきことは一つだけ。 ﹁・・・・・・アレックス﹂ ﹁・・・なんでしょう?﹂ ﹁曹操が憎い?﹂ ﹁・・・はい﹂ ﹁殺してやりたい?﹂ ﹁はい・・・だがただ殺すだけでは生ぬるい・・・・・・奴にはこ の世の地獄を与えてやらないと気が済みません・・・・・・﹂ ﹁・・・そう・・・・・・孫呉全軍に命ずる‼﹂ 私は怒気を込めながらみんなに命令を下す。 ﹁卑劣な手を用いて侵略し、我が愛するライルを傷付けた曹操の軍 勢を一兵残らず・・・・・・皆殺しにせよ‼‼﹂ ﹃御意‼‼﹄ ﹁大軍師周瑜‼﹂ ﹁はっ‼﹂ ﹁すぐに可能な限りの軍勢を集結させて出撃させよ‼今回の戦に策 など不要‼獣の如く狩り尽くすのみ‼﹂ 1181 ﹁御意‼﹂ ﹁アレックス将軍‼﹂ ﹁Sir!!﹂ Yes Sir!!!!﹂ ﹁お前達海兵隊は最前線で牙となり、敵を喰らい尽くせ‼‼﹂ ﹁Sir ﹁全軍直ちに出陣‼‼奴等の処刑地は・・・・・・合肥だ‼‼﹂ 曹操の侵攻速度を考えて合間見える場所は合肥。私達は卑怯な手段 を用いて来た曹操軍の下郎共を皆殺しにするために出陣する。 待っていなさい曹操・・・・・・必ず貴様を殺してやるから・・・・ ・・・・・。 1182 第153話:修羅︵後書き︶ 合肥にて対峙する孫策軍と曹操軍。天下統一を目指す士気の高い曹 操軍に、ライルを傷付けられて怒り狂う孫策軍。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 互いの指導者が対峙する中、曹操は衝撃の事実を聞かされる。 次回 [あさきゆめみし] 小覇王が全軍に檄を飛ばす。 1183 第154話:あさきゆめみし︵前書き︶ 憎き曹操を前に雪蓮殿の怒りを込めた檄が飛ぶ。 1184 第154話:あさきゆめみし 宣戦布告も無しに呉へと侵略しただけではなく、呉の英雄でもある ライルを傷付けた曹操軍を迎え撃つ為に出撃した俺達。 俺達がいる場所は合肥。雪蓮殿の判断で奴等を皆殺しにする箇所に 定めたが、本当に奴等との会敵場所になるとは思わなかった。 だが、今はそんなことどうだっていい。俺はライルを傷付けた奴等 には死よりも恐ろしい地獄を見せてやる。 俺は騎乗する雪蓮殿と共に愛馬のイクシオンという黒馬に乗り、互 いに対峙している丁度中間位置へと向かっていた。 ﹁・・・・・・・・・アレックス﹂ ﹁・・・なんでしょう?﹂ ﹁すぐに突っ込みたい気持ちは分かるわ。私も同じ気持ちだけど、 少しだけ抑えて﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁兵を鼓舞し、怒り全てを曹操にぶつけて奴等を皆殺しにする・・・ ・・・その後はあなたの好きに戦いなさい。だからそれまでは我慢 しなさい。いいわね?﹂ ﹁・・・・・・御意﹂ 雪蓮殿のいう通り、やるなら全員で奴らを皆殺しにしてやりたい。 魏に対する攻撃だけではなく、僅かでも生き残った奴等に恐怖を抱 かせる。 1185 呉の大地と英雄に手を掛ける者は血に飢えた狂狼の餌食になる という恐怖を奴等に植え付ける。 俺達が馬を止めると曹操軍から三人の人影が馬に乗って近づいて来 ていた。忘れる筈がない。 かつて袁紹を始末する為に共闘し、だが今はライルを傷付けた仇敵・ ・・・・・。 ﹁曹操・・・・・・﹂ 俺は殺したい気持ちを必死に抑えながら睨みつける。 対して奴は何も知らないような涼しい顔をしながら従姉妹の曹仁と 曹洪を連れて俺達のすぐ前に馬を止める。 ﹁あら、遅かったじゃない孫策﹂ まるで挑発するかの如く毒舌を始める曹操。俺だけでは無く雪蓮殿 からも凄まじ過ぎる怒りが抑えられているのを感じる。 ﹁これ以上英雄同士の戦いにあまり無粋なものは必要ないわね﹂ 何が英雄か・・・・・・暗殺という卑劣で姑息な手段を用いた貴様 にそんな言葉を口にする資格などない。 ﹁誇り高く、堂々と戦いましょう・・・英雄孫策‼そして我が覇道 の礎となりなさい‼﹂ 誇り高く・・・堂々だと?・・・・・・それに礎?・・・・・・な らば、俺達はその捨て石を無残に砕いてやる。 1186 ﹁・・・・・・・・・やる・・・﹂ ﹁?何ですって?﹂ 怒りを抑えることが出来なくなった雪蓮殿は南海覇王を抜刀し、鋒 を曹操達に向ける。その光景に曹仁と曹洪もそれぞれ大剣とナイフ を抜こうとしたが、俺達の怒気を前に躊躇したようだ。 ﹁曹操‼貴様が私の暗殺を企んだのか‼貴様ほどの人物がこのよう な卑劣な策を講じるとはな‼﹂ ﹁⁉・・・何を言いたいのだ孫策?﹂ ﹁知らないとは言わさんぞ‼貴様が放った刺客のせいで・・・私を 庇った我らの愛する・・・私が愛するライルが倒れたのだ‼﹂ ﹁なっ⁉・・・どういうことだそれは⁉﹂ ﹁問答無用だ曹操‼貴様ら魏などミナゴロシニシテヤル‼﹂ 怒りをもはや隠そうとせず、雪蓮殿はそのまま振り返り、鋒を天高 く掲げると待機している孫策軍全将兵に檄を飛ばす。その姿はまさ に英雄だ。 呉の将兵よ‼我が朋友たちよ‼ 我らは父祖の代より受け継いできたこの土地を、袁家の手より取り 戻した‼ だが‼ 今、愚かにもこの地を欲し、無法にも大軍をもって押し寄せてきた 敵がいる‼ 1187 敵は卑劣にも、我が身を消し去らんと刺客を放ち、この身を毒に侵 そうとしたのだ‼ しかし我が愛する者が我が身を庇い代わりにその身に毒を受けたの だ‼ 伯符、そのようなことをされ黙っているような人物ではな 卑劣な毒によって、今も苦しんでいる‼ この孫 い‼ 我が身、鬼神となりてこの戦場を駆け巡らん‼ 我が気迫は盾となりて皆を守ろう‼ 我が闘志は矛となり、呉を犯す全ての敵を討ちこらそう‼ 勇敢なる呉の将兵よ‼その猛き心を‼その誇り高き振る舞いを‼そ の勇敢なる姿を我に示せ‼ その勇敢なる姿を、我が母文台と父雷藩も見ておられる‼ 呉の将兵よ‼我が友よ‼ 愛すべき仲間よ‼愛しき民よ‼ 孫伯符、怒りの炎を燃やし、ここに曹魏打倒の大号令を発す‼ 天に向かって叫べ‼心の奥底より叫べ‼己の誇りを胸に叫べ‼ その雄叫びと共に怨敵、曹魏を討ち滅ぼせえぇぇぇ‼‼‼ 1188 天に掲げられた鋒が再び曹操に向けられ・・・・・・。 おぉおおおおおおおお‼‼‼‼ 怒りを込めた鬨が前衛から響き、それが中衛、さらにそれが後衛へ と伝わっていき、やがては大地が軽く揺れる程の膨大な質量へと変 わる。 ﹁アレックス将軍‼‼﹂ 鋒を下ろす雪蓮殿の指示を受け、俺はイクシオンに積まれた荷物を 担ぎ、それを乱暴に地面に落とすと一気に布の一部を剥ぎ取った。 ﹁なっ⁉・・・わ・・・我が軍の兵士・・・﹂ 荷物とはライルを傷付けた刺客の生き残り。あれから拷問として両 腕を引き千切り、身体の至る処を殴りまくって、このクソ野郎の顔 は腫れ上がって歯は全て折れている。 俺は雪蓮殿を軽く見て、彼女が頷いたのを確認すると髑髏を左肩に 担ぎながら、刺客の背後に立つと・・・・・・。 ﹁・・・・・・ふんっ‼‼﹂ そのまま垂直に髑髏を振り下ろす。一寸の狂いも無しに文字通り一 刀両断された刺客の死体はおびただしい血を地面に流しながら二つ 1189 に別れる。 その壮絶な光景に曹操達は顔を青く染めていた。しかし俺は一切気 にせず雪蓮殿と同じように鋒を曹操に向ける。 ﹁・・・・・・・・・次に会う時は・・・貴様等も同じやり方で殺 してやる・・・﹂ それだけ伝えると俺はイクシオンに跨り、雪蓮殿も馬に乗ると陣地 へと引き返していく。曹操もしばらく呆然としていたが、徐々に意 合肥の戦い が始まる・・ 識を戻していき、真実を確かめる為に自軍の本陣へと引き返してい った。 間も無くで魏呉の因縁の戦・・・・・・ ・・・・・・・。 1190 第154話:あさきゆめみし︵後書き︶ 本陣に戻った曹操は直ぐに事実を確かめる為に確認をする。しかし それも手遅れ。怒り狂う孫呉の死兵を前に聖戦を下衆により穢され 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re た曹操は全軍退却を指示するが・・・・・・。 次回 [覇王の落日] 覇王の名に消えない汚点が残される。 1191 第155話:覇王の落日︵前書き︶ 孫策から暗殺未遂を聞かされ、曹操は退却を命じる。 1192 第155話:覇王の落日 顔色を真っ青にして本陣に戻って来た曹操殿。我等は本陣にて出迎 えたが何やら様子がおかしかった。 護衛役として同行していた曹仁殿から事情を聞き出せたが、その内 容に私は驚きを隠せなかった。 我が軍の兵士が独断で孫策殿を暗殺しようとし、それを庇ったライ ル殿が代わりに毒矢を受けたという。 先程のアレックス殿による処刑にはそういう理由があったと理解し たと同時に私は怒りを覚えた。曹操殿の戦を穢されただけではなく ライル殿を殺そうとした。 本陣にて曹操殿は怒りと焦りを隠し切れず机を強く叩いた。 ﹁どういうことだ⁉誰が孫策暗殺を命じたのだ⁉﹂ ﹁わ・・・我等がそのような事、する筈がありません‼﹂ ﹁では何故だ⁉何故ライルが毒を受ける⁉何故このような事が起こ る⁉﹂ 私も同じ心情だ。ライル殿とは正々堂々と一騎打ちを申し込み、あ の男に勝つつもりであったのに、その機会を潰された。すると事実 確認をしていた桂花と凛が慌てながら戻って来た。 ﹁か・・・華琳様‼‼﹂ ﹁事情が判明しました‼少し前に亡命してきた許貢の残党で形成さ れた一団が孫策を暗殺しようとしたようです‼﹂ 1193 許貢の残党・・・・・・。確かに我等が徐州を制圧した少し後あた りに呉から主君の許貢を処刑され、我等に亡命してきた一団があっ た。 それなら辻褄があう。奴等は孫策殿への復讐の為に曹操殿の顔に泥 を塗ったのだ。 事情を曹操殿は全身から凄まじい怒気を発しながら桂花達に命ずる。 ﹁その者共の首を刎ねよ‼‼﹂ ﹁えっ⁉﹂ ﹁知勇の全てを掛けた英雄同士の戦いを下衆に穢された怒りが解ら ぬのか⁉﹂ それは私も同じです曹操殿。この戦、私は持てる全ての力を用いて 挑むつもりであったのに、それを思念に囚われた愚者に潰された。 ﹁その者共全ての首を刎ねよ‼‼﹂ ﹁ぎ・・・御意‼﹂ ﹁春蘭‼﹂ ﹁は・・・はっ‼﹂ ﹁呉に弔問の使者を出せ‼我等は一度退く‼﹂ ﹁し・・・しかし華琳様⁉この状況で退却すれば尋常成らざる被害 を受けることは必死‼‼﹂ 夏侯惇殿と夏侯淵殿の言葉も一理ある。全てをぶつける覚悟で主力 の大半を前衛に回しているのだ。 それに素早く反応したのが司馬懿殿だ。 ﹁・・・曹操様、これは寧ろ好機なのではありませぬか?﹂ ﹁・・・貴様は何が言いたい・・・司馬懿﹂ 1194 ﹁あの男が倒れたことで呉の戦力は落ちております。今なら全軍を 用いれば奴等を殲滅出来ま﹁ならば戦えと言うのか⁉﹂・・・﹂ 戦略的に交戦を進言しようとした司馬懿殿の言葉を曹操殿が怒声で 遮る。 ﹁下衆に穢されたこの戦を続けて何の意味がある⁉どのような意味 がある⁉﹂ ﹁しかし・・・﹂ ﹁最早この戦いに意味は無く、大義も無くなったのだ‼軍を退かな ければ・・・私は・・・﹂ ﹁駄目です‼敵軍突撃を開始しました‼﹂ 凛からの報告で我等は本陣の天幕から出る。孫策軍の方角から聞こ える怒声に爆発音、更には空から聞こえる噂に聞いた空を舞うカラ クリ。 それらに呼応するかの如く聞こえてくる我が軍の将兵の悲鳴と断末 魔。曹操殿はそれを見て歯を食いしばっていた。 ﹁くっ・・・なんだこれは・・・このような戦い・・・・・・誰が 望んだと言うのだ・・・﹂ ﹁華琳様‼本陣を後退させて下さい‼我等が殿を務めます‼﹂ ﹁季衣、流流は華琳様の護衛を‼命に替えても御守り申し上げろ‼﹂ ﹁﹁はい‼‼﹂﹂ ﹁司馬懿殿、もはや奴等の攻勢を止めるのは不可能。あなたもお分 かりの筈です﹂ ﹁くっ・・・・・・やむを得んか・・・王異‼私兵部隊に退却命令 を出せ‼可能な限り交戦せず退却しろとな‼﹂ ﹁御意﹂ 1195 流石の司馬懿殿も退却しなければならないと理解し、副官である王 異に伝令を向かわせた。 ﹁追撃や無駄な戦いはするな‼穢されたこの戦い・・・・・・せめ て・・・無事に収拾せよ‼﹂ ﹃はっ‼﹄ ﹁凪、我等も殿を務める‼曹操殿の退却の時間を稼ぐぞ‼﹂ ﹁分かりました‼﹂ ﹁参刃‼﹂ ﹁分かっている‼其れがしも殿に向かおう‼﹂ 私はこのような結末にした天を恨みたい。私は偃月刀を手にし、味 方の退却の時間を稼ぐ為に殿へと向かった・・・・・・。 1196 第155話:覇王の落日︵後書き︶ 魏呉の戦いは壮絶だった。怒りに任せて魏軍の兵士を次々と殺して 海兵隊の誇り,Re いく呉の勢いは止まらない。全ての将は奮戦し、曹操の首を刎ねる 真・恋姫無双 為に猛追する。 次回 [呉軍の逆襲] 死兵と化した呉軍が狂狼となる。 1197 第156話:呉軍の逆襲︵前書き︶ 復讐に燃える孫呉。敵に対して容赦ない鉄槌を下す。 1198 第156話:呉軍の逆襲 呉軍の怒りは予想を遥かに大きいものだった。ライルは予想以上に 呉に好かれている証拠だ。合肥の各地で呉軍全将兵の怒号と魏軍の 悲鳴が混ざり合っていた。 ﹁進め‼進め進め進めぇ‼‼曹操の兵共を血祭りにあげよ‼孫呉の 英雄の血を・・・ライルが流した血を‼奴等の命で償わせよ‼ 殺し尽くせ‼‼腐った魂を持つ下衆共を‼その血を呉の大地に吸い 込ませるのだ‼ 贖え‼奴等ね体内に流れる下郎の血で我等が英雄の血を贖わせるの だ‼‼﹂ 孫呉海兵隊の一員として一軍を率いる蓮華も江東大器で斬り伏せな がら前進していく。剣術だけではなく体術も混ぜた戦運びで向かっ てくる敵を返り討ちにしていく。 ﹁ライルよ・・・まだ逝くでない・・・・・・お主は呉に・・・策 殿に必要な漢じゃ・・・じゃからまだ逝くではないぞ・・・﹂ ﹁黄蓋様‼早く奴等を皆殺しにし、奴等の血をライル様に捧げまし ょう‼‼﹂ ﹁我等の英雄を・・・・・・ライル様を傷付けた卑劣な奴等に死を ‼‼﹂ 祭殿も多幻双弓を左手に、右指の間全てに弓矢を挟み込み弦を弾く。 1199 ﹁応っ‼‼黄蓋隊に告げる‼‼一兵たりとも逃すな‼皆々殺し尽く せ‼‼ よいか⁉敵兵の耳を削げ‼鼻をもげ‼目玉をくり抜き喉を貫け‼‼ 敵の亡骸を踏み躙り、呉の怒りを天に示せ‼‼ 我等が英雄を傷付けた天に怒りを、悲しみを、見せつけるのだ‼‼﹂ 矢の雨 を降らされ、敵兵の亡 弓兵部隊を率いる祭殿の部隊も一斉に弓を構え、見える魏軍の兵士 を次々と仕留めていく、文字通り 骸はまるでハリネズミみたいな姿へと変貌していった。 ﹁ライル様・・・ライル様ぁ・・・・・・。 みんな・・・頑張れ・・・・・・ライル様が安心出来るように・・・ 私達もちゃんと呉を護れると・・・その姿を見てもらう為に・・・﹂ 呉軍本陣にて指揮を任されていた亞莎は今も苦しんでいるライルを 心配しながら前線で戦うみなを案ずる。 状況に合わせて兵の増援を向かわせ、少しでも敵兵の命を奪う軍略 を駆使する。 ﹁殺せ‼殺せ‼殺し尽くせ‼‼我等の怒りをケダモノ共に見せつけ ろ‼‼ ライルを・・・我等が英雄を穢した罪を、奴等の命で償わせろ‼‼ 投降する者は殺せ‼‼逃げる者も殺せ‼‼その血を大地に吸い込ま せ、孫呉に二度と歯向かえないように‼‼﹂ 1200 思春率いる孫呉水軍強襲部隊もまた、持ち前の機動力と勢いを糧に して次々と敵兵を血祭りに上げる。思春本人も鈴の音を鳴り響かせ ながら見える敵兵全ての首を刎ねてゆく。 ﹁邪魔者は殺して下さい‼‼一人とて逃しては駄目です‼‼敵に・・ ・ライルに手を掛けた奴等にこの世の地獄味合わせてやるのです‼ ‼﹂ 明命も魂切で縦横無尽に敵の内部へと駆け回り、次々と斬り伏せて ゆく。もともと小柄で呉の中でも一番の素早さを誇る彼女だからこ そ出来る芸当だ。 ﹁穏、このまま私達も敵を喰らい尽くすとしよう﹂ 、 で向かってくる敵を片っ端から仕留める。その 白虎九尾 ﹁はい∼、このまま一気に魏の皆さんを殺っちゃいましょう﹂ 紫燕 冥琳と穏も今回は前線にて指揮を執りつつ冥琳は鞭 穏は多節棍 美貌と雰囲気からは想像も出来ない強さで、彼女達の背後には討た れた敵兵の死体が散乱していた。 孫策軍のみんながそれぞれ左右の戦線で敵を片っ端から仕留めてい く中、中央の孫呉海兵隊も推し進めていた。 1201 ﹁よくもライル様を・・・・・・容赦しないぞ曹操軍‼‼﹂ 孫呉海兵隊の参謀も任されている千里も翡翠杖で敵の動きを封じつ つ、敵に苦痛を与える戦いをする。孫呉海兵隊で知略に長けた千里 の人体を利用した戦いだ。 と大弓 龍滅爪弓 を切り替えながら鬼神の異名 ﹁このクソッタレ野郎共が‼‼ライル兄ぃをよくも‼‼皆殺しにし 鬼蹂双鉞 てやらぁ‼‼﹂ 双鉞 に恥じぬ戦運びをしていく美花。獰猛、冷徹と性格が切り替わるの で掴み所が分からないので敵は対処が出来ず、次々と命を散らして いく。 ﹁其れがしは貴様等を許さん‼‼我が命に替えても貴様等を殲滅す る‼‼﹂ 優龍も地破豪斧で敵を叩き潰しながら、その豪腕で敵の頭を掴み上 げるとそのまま敵の頭を握り潰す。 そして頭が潰れた敵の身体をそのまま振り回し、周囲にいた敵兵を 吹き飛ばしていく。 1202 ﹁兄様を・・・兄様を・・・・・・よくも兄様を傷付けたな⁉その 飛燕 に繋がれている糸を最大にまで伸ばし、四方 命・・・全て斬り裂いてくれる‼‼﹂ 百合も飛翔剣 八方から襲い掛かろうとしていた奴等を同時に斬り裂いてゆく。 その姿はまさに人剣一体。彼女の多種多様な攻撃を前に魏軍兵士は なす術なく散ってゆく。 ﹁おのれ・・・・・・貴様等ぁ‼‼許さん‼許さんぞ‼‼消炭にし てくれるわぁ‼‼﹂ ﹁あんさんら・・・逃しはしまへんで・・・・・・そのまま地獄の 鬼はんとこ行かせたるさかい﹂ 長年の付き合いである九惹と八枝も武器を片手に第10戦術騎兵中 隊と共に敵の懐に深く潜り込んだ。 それぞれの武器で斬り裂き、軍馬で踏み潰す。命の恩人でもあるラ イルがあのようなこっになり、その怒りが馬達にも伝わったようで 馬達も躊躇無く敵を踏み潰していく。 孫策軍、孫呉海兵隊共に死傷者を出しながらも着実に敵を始末して いく。そんな中、一番先頭では・・・。 1203 ︵ライル・・・・・・死なないでね・・・︶ ﹁がはっ⁉﹂ ︵約束したよね?・・・離さないって・・・ずっと一緒にいるって・ ・・︶ ﹁ぐわっ⁉﹂ ︵お願い・・・・・・私を一人にしないで・・・︶ ﹁ぐあっ⁉﹂ ︵私・・・あなたが好き・・・だけど・・・・・・今は・・・︶ ﹁ぐっ⁉﹂ 雪蓮殿の周りには味方はいない。辺りには彼女に斬り伏せられた敵 の無惨な亡骸。そして身体中にこびり付いた敵兵の返り血は足下に も流れ、歩く度に血で出来た足跡がくっきりと残る。 その姿は普段の無邪気な彼女からは想像も出来ない。全身に浴びた 眼 。 返り血に加えて、敵兵の血を吸った南海覇王、そしてなによりも冷 酷、非情を体現させたような 彼女は南海覇王の鋒をゆっくりと恐怖で震えている敵に向ける。そ の姿は・・・・・・。 血に飢えた虎 であった・・・・・・・・・。 ﹁貴様等の命‼全て刈り尽くしてやるぞ‼‼﹂ 鬼や鬼神も逃げ出す 1204 第156話:呉軍の逆襲︵後書き︶ 孫呉の将兵が戦場で敵を始末していく中、アレックス達ウルフパッ クも敵中枢に殴り込みを掛けていた。敵に対して容赦無く降り注ぐ 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 銃弾に砲弾、アレックスも怨敵の曹操を殺すべく前進する。 次回 [無慈悲の死神] 死神が敵の命を刈り尽くす。 1205 第157話:無慈悲の死神︵前書き︶ 狼達は怒りのまま曹操軍に喰らい尽くす。 1206 第157話:無慈悲の死神 孫策軍本隊と別行動を取り、俺達ウルフパックは動かせる限りの兵 器を用いて曹操軍の中枢へと向かっていた。 <グレイブ1から全機‼攻撃を続行しろ‼将など後回しだ‼一人で も多く始末しろ‼> <了解‼> <ウォーランス隊はこのまま直進‼砲撃をしながら敵を踏み潰して やれ‼‼> <ブラボー2−2からウォーアックス‼次の座標に敵が集結‼4− 3−3‼9−1−1‼> Mod1を乱射しながら曹操軍本 <こちらウォーアックス指揮官‼確認した‼4−3−3‼9−1− 1‼効力射‼砲撃開始‼> 無線を聞きながら俺はMk46 Mod1、 陣へと前進する。その中でも背中に背負っている髑髏に切り替えな がら敵の首を次々と刎ねる。 ﹁左に敵兵6‼﹂ ﹁吹っ飛びやがれクソ野郎‼﹂ ﹁よくも中佐を‼﹂ ﹁逃げるんじゃねえ‼‼ぶっ殺してやるから‼‼﹂ 部下達もそれぞれHK416やHK417、Mk46 HK417DMR、後方からはSR−25MやM107A1を用い て狙撃している味方スナイパーチーム。 1207 全員が曹操軍に対して凄まじい怒りを覚えている。だがみんなには 悪いが、あの小娘を始末するのは俺だ。弾切れを起こしたMk46 に新しいBOXマガジンを再装填し、すぐさま近くにいた敵負傷兵 の頭に見舞う。 ﹁曹操のガキは何処だ⁉﹂ ﹁少佐‼グレイブ1から報告‼曹の牙門旗を確認‼﹂ ﹁分かった‼アイアンマンからグレイブ1‼﹂ <こちらグレイブ1‼> ﹁南郷‼貴様は先行して奴等の退路を遮断しろ‼曹操は殺すな‼﹂ <了解です少佐‼> 無線で指示を下すと頭上にタイガーシャークが描かれたヴァイパー がM197を発砲しながら飛来していく。 ﹁中尉‼ここは貴様に任せるぞ‼﹂ ﹁少佐は⁉﹂ ﹁小娘の首を刈って来る‼増援はいらん‼一人でやる‼﹂ ﹁無茶です‼﹂ ﹁これは命令だ中尉‼任務を遂行しろ‼﹂ ﹁・・・了解‼必ず曹操の首を‼﹂ ﹁わかっている‼﹂ 中尉に指揮を任せると俺は背中にMk46を預け、両手で髑髏を構 えて敵中に突撃を仕掛ける。 ﹁そこをどけ雑魚共‼貴様等に用は無いんだよ‼﹂ 今の俺の眼中には曹操しか見えていない。立ち塞がる雑魚共を蹴散 らしながら南郷が攻撃を加えている地点へと急行する。弓兵が俺を 1208 狙っていたが、後方からの狙撃や俺の動きに呼応したレオンの砲撃 で次々と倒されていく。 そして俺はそのまま曹操軍の本陣へとたった一人で突入していく。 辺りは南郷の攻撃した痕跡が見られ、死体の他に体の一部を失って 苦しむ敵兵の姿も確認出来た。しかしそれには構わず無線で南郷に 後退を指示すると速度を落とさず突撃する。 ﹁なっ・・・なんだ貴様⁉﹂ ﹁敵襲‼敵襲だ⁉﹂ 辛うじて生き残っていた敵の首を二人同時に一振りで斬り落とす。 するとそれを合図にしたかのように周りからゾロゾロと敵が現れる。 はっきり言って邪魔だ。 仕方が無いので辺りを掃除しながら曹操を捜索することにした。 すっかり包囲されているが関係ない。俺は敵が集中している辺りに 斬りかかる。 ﹁ぐあっ⁉﹂ ﹁ぎゃっ⁉﹂ ﹁ぐわっ⁉﹂ 電光石火の如く、俺は固まっていた奴等を瞬殺させ、敵の背後に回 り込むと次々と首を刎ね飛ばす。 僅か1分足らずで辺りには首が無い死体が地面を埋め尽くし、俺の 身体と髑髏には返り血が大量にかかっていた。 ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ 1209 すると俺は左腕を押さえながら必死に走り出す敵を見つけ、後を追 う。すると奴は一番デカイ天幕に向かっていた。俺は直感で感じる。 あそこに曹操がいる 俺はゆっくりと歩きながら天幕に入ろうとする敵兵の背後に歩み寄 る。 ﹁そ・・・曹操様⁉﹂ ﹁何事か⁉﹂ ﹁お・・・お逃げ下さい曹操様⁉江東の死神が・・・﹂ ・・・案内ご苦労さん。俺は髑髏を構えて天幕ごと奴の首を刎ね飛 モウトク・・・・・・﹂ ばした。そしてようやく見つけた。金髪ツインテールに髑髏の装飾 をした鎧を身につけた曹操を・・・。 ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁ヨウヤクミツケタゾ・・・・・・ソウ 1210 第157話:無慈悲の死神︵後書き︶ 遂に曹操を見つけたアレックス。曹操の首を手に入れる為に単身で 挑む。 その間に次々と魏の武将達が曹操を逃がす為に集まるも、今のアレ 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re ックスは誰にも止められなかった。 次回 [髑髏] 死神となるアレックス、本来の力を発揮させる。 1211 第158話:髑髏︵前書き︶ 怒りに身を任せたアレックスに曹操軍の将が立ち向かう。 1212 第158話:髑髏 ﹁ヨウヤクミツケタゾ・・・・・・ソウ モウトク・・・・・・﹂ 俺は天幕の中にいた曹操に狙いを定める。中には曹仁、曹洪、更に 許褚と典韋がそれぞれの得物を直ぐに構えていた。 その表情はすっかり凍りついていた。、先ほどまでいなかった筈の 俺がいつの間にか自分達の前にいて兵士を突き刺していたから。 ﹁くっ⁉アレックス‼‼﹂ ﹁・・・ヒサシイジャナイカ・・・・・・ソウコウ・・・﹂ ﹁何であんたがここにいる⁉﹂ ﹁キマッテイル・・・アイボウヲキズツケタソコノクソガキノクビ ヲモライニキタダケダ・・・﹂ ﹁ライルの事は聞いた‼あれは許貢の残党が勝手にやったんだ‼華 琳の意思じゃない‼﹂ ﹁そうだ・・・・・・それに我等はこれ以上の戦を望んでいない・・ ・我等はすぐにこの地より﹁カッテナコトヲヌカスナ﹂なっ⁉﹂ 曹仁の自分勝手な言葉を聞き、俺は彼女達の頭上スレスレに髑髏を 飛来させ、天幕を吹き飛ばした。そして回転しながら戻って来た髑 髏を見ずにキャッチする。 ほんの少しでも動いていたら間違い無く自分達の首が飛んでいたと 思うと彼女達は冷や汗が止まらなくなっている。 ﹁カッテナコトヲヌカスナ・・・・・・アイボウヲキズツケタダケ ジャナク、ワガソコクニフコクモナシニセメコンデ・・・・・・ア マツサエカッテニオワラセル・・・・・・・・・ソンナノガツウジ 1213 ルトオモッテイルノカ?﹂ ﹁くっ⁉﹂ ﹁季琳・・・今のこいつに何を言っても無駄みたいだぜ・・・・・・ ﹂ ﹁あっ・・・ああ・・・・・・何という殺気だ・・・﹂ 俺は殺気を隠そうとせず、髑髏を肩に担ぐ。その発せられる殺気に 曹仁達はそれぞれ武器を構える。 ﹁くっ⁉愛琳‼﹂ 、曹洪は双短剣 餓狼風牙 を ﹁あぁ・・・季衣と流流は華琳の傍から離れるな‼お前達じゃまだ 敵わない‼﹂ 飢狼岩剣 ﹁﹁はっ・・・はい‼‼﹂﹂ そういうと曹仁は大剣 構えて俺に斬りかかって来た。 ﹁はぁ‼‼﹂ ﹁せりゃ‼﹂ 曹仁は大剣で振り上げ、その直後に曹洪が右で振り下ろし、すぐに 左で体を回転させながら斬りつけて来て再び右で刺突してくる。 ﹁アマイゾ・・・﹂ だが俺も隙がある腹部に髑髏を見舞うが、それは曹仁により阻まれ る。防がれたと同時に体を右に回転させて今度は反対側から曹仁を 斬り掛かるが、今度は曹洪の短剣で防がれる。 ﹁はっ‼﹂ 1214 ﹁チィ・・・ジャマダ・・・﹂ ﹁アレックス‼﹂ ﹁どうしてもやると言うなら私達はお前を討つ‼‼﹂ ﹁オモシロイ・・・ヤッテミロヨ・・・﹂ 俺は左手で二人を挑発すると、それに乗せられて二人同時に斬りか かって来た。 連携が互いに取れている二人の攻撃を軽くかわし続け、時には俺も 髑髏で攻撃を加えるがそれも防がれる。 互いに攻守が入れ替わる中、斬り合いは暫く続くが流石に二人は疲 れが見えてきたようだ。しかし俺は疲れなど出ていない。体内から アドレナリンを発生させ、力の大半を戦闘につぎ込んでいる。 だから疲れなど発してはいない。俺は肩に髑髏を担ぎ直すと肩で息 をする膝を付いた二人に歩み寄る。 ﹁はぁ・・・はぁ・・・﹂ ﹁くっ・・・・・・化け物かよ・・・﹂ ﹁ナカナカテコズッタガ・・・コレマデダ・・・・・・アンシンシ ロ・・・スグニアソコノガキドモモオクッテヤル・・・・・・ダカ ラアンシンシテ・・・・・・アノヨデマッテイロ・・・・・・﹂ 俺は髑髏を構えて二人の首を刎ねようとするが、その刃が届く前に 誰かに止められた。 ﹁アレックス‼‼﹂ ﹁キサマカ・・・カコウトン・・・﹂ ﹁姉者だけでは無いぞ‼‼﹂ 1215 その言葉と同時に俺は夏侯惇の七星餓狼を弾き、直ぐに振り向いて 飛来した弓矢を叩き落とす。 ﹁でりゃあぁあああ‼‼﹂ ﹁はっ‼﹂ ﹁食らうなの‼﹂ その直後に今度は楽進、李典、于禁の3人による連続攻撃。流石に 距離を置くとその直後に再び背後から気配を感じる。 ﹁うぉらぁああああ‼‼﹂ 襲いかかって来たのは鍛え抜かれた筋肉に傷だらけの身体。短髪の 上に青巾を被った大男だ。 ﹁鄧艾‼退け‼﹂ その男は巨大な旋棍を連続して殴り掛かるが、全ての攻撃をかわし た瞬間に今度は頭上から俺の知っている男・・・・・・徐晃が赤龍 偃月刀を構えて俺に斬りかかって来た。 直ぐに俺は先程の大男を蹴り飛ばすと髑髏でその一撃を防ぐ。 ﹁アレックス殿‼‼武器を納められよ‼﹂ ﹁ジョコウカ・・・・・・﹂ 俺も髑髏を構えながら全員と距離を置く。すると辺りは完全に包囲 されている状態だ。正面には徐晃と先程の大男・・・鄧艾に息を整 えた曹仁と曹洪。 右には夏侯惇と夏侯淵。 左には楽進、于禁、李典。 1216 背後には武器を構えた許褚と典韋、更に俺と同じ大鎌を手にした曹 操がいた。 ﹁フン・・・・・・ズイブントアツマッタモノダナ・・・﹂ ﹁仲間を傷付けられた貴様等の気持ちも分かるが、我等も華琳様を 江東の死神 と言われるお前でも一度にこれだけの将を やらせる訳には行かない‼﹂ ﹁いくら 相手では勝てまい・・・退くなら今のうちだぞ﹂ 夏侯淵の言葉に俺は眼を瞑って髑髏を地面に突き刺す。 ﹁アレックス殿・・・其れがしは鄧艾と申す。貴殿の武勇は聞いて おります。されどもここで散らすのは不本意・・・どうか退いて頂 きたい﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁アレックス殿・・・・・・頼む。我等はもはや戦をする気はござ らぬ。ここは武器を納めよ﹂ ﹁アレックス・・・・・・確かに今回は私の不注意が招いた結果・・ ・我等は今回は退く。しかしこれ以上続けるのなら私達はあなたを 斬らなければならない・・・武器を納めて直ぐに下がりなさい﹂ 徐晃、鄧艾、そして曹操の言葉を耳にするしかし俺は・・・・・・。 ﹁フッ・・・フフフフフフフ・・・・・・・・・ハハハハハハハハ ハハハ‼‼‼アハハハハハハ‼‼﹂ 天目掛けて高々と笑う。曹操達は何が起こったのか理解出来ていな いようだ。 ﹁何が可笑しい?﹂ 1217 高々と笑うと俺は顔を再び足下に向け、暫くしてから・・・・・・。 カタカタカタカタカタカタ 髑髏の由来ともなった髑髏の彫刻が歯と歯をぶつけだし、辺りに不 愉快な音を発し出す。 ﹁なんだ・・・・・・この不愉快な音は・・・﹂ ﹁何という・・・・・・禍々しい殺気だ・・・﹂ 髑髏の発する音は暫く続き、それがようやく止むと俺は顔をあげて 瞑ったままの眼を開けた。 その眼は・・・・・・。 ﹁・・・・・・アマリチョウシニノルナヨ・・・・・・ザコドモガ ‼‼‼﹂ 俺の殺気を表すかのように、灰色から殺意に満ちた深紅だった・・・ ・・・・・・・・・。 1218 第158話:髑髏︵後書き︶ 髑髏の真の力を発動させたアレックス。その圧倒的な力を前に束に なっても徐晃達は勝てない。 真・.恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 曹操もその武を前に覚悟を決めるが・・・・・・。 次回 [彼方の面影] 死神と化したアレックスに曹操達も立ち向かう。 1219 第159話:彼方の面影︵前書き︶ 死神と化したアレックスと曹操達がぶつかり合う。 1220 第159話:彼方の面影 ﹁・・・・・・アマリチョウシニノルナヨ・・・・・・ザコドモガ ‼‼‼﹂ 身体中に力が漲ってきやがる・・・まさか髑髏の真価がこれ程とは 思わなかった。 こいつは氣を流し込めことで髑髏と俺を繋げる一刃同体とする。装 飾の髑髏が歯をぶつける動きはその同調させる段階で発する動きだ。 それにより今の俺は髑髏でもあり、髑髏もまたこの俺・・・アレッ クス・ヴォードでめある。 ただ欠点がある。逆を言えば今の俺は人間兵器でもあり、人として の感情はほぼ皆無。戦うことのしか出来ない存在となり、目標がい なくなるかリミッターが発動するまで止まることのない殺戮マシン だ。 だが今は流れに身を任せ、曹操を殺す。俺は最初に夏侯惇目掛けて 斬りかかる。 ﹁ウォオオオオオオ‼‼﹂ ﹁ちぃ⁉舐めるな‼﹂ 俺は身体を回転させながら髑髏を振り下ろし、夏侯惇は七星餓狼で それを防ぐ。攻撃の隙を与えず連撃を浴びせる。 ﹁くっ⁉なんだこいつ⁉﹂ 1221 ﹁姉者⁉﹂ 夏侯惇に斬りかかる中、少し離れた場所から夏侯淵が餓狼爪で弓矢 を3本同時に放つが、夏侯惇を弾き飛ばすと左手でそれを全て掴み 取る。 ﹁フンッ‼‼﹂ ﹁なっ⁉・・・・・・くっ⁉﹂ 掴んだ弓矢全てをそのまま夏侯淵に投げ返すが、奴は寸での処でか わした。 ﹁春蘭様‼秋蘭様‼﹂ ﹁凪‼ウチ等もいくで‼﹂ ﹁分かっている‼隊長‼﹂ ﹁うむ‼些か卑怯ではあるが一斉に掛かるぞ‼そうで無ければ奴に は勝てん‼﹂ ﹁アレックス殿‼覚悟召されよ‼‼﹂ 今の状況でも不利だと判断した徐晃は全員で一斉に攻めることにし たようだ。 ﹁フッ・・・オモシロイ‼‼ジゴクヲミセテヤル‼‼﹂ ﹁でりゃあああああ‼‼﹂ ﹁せい‼なの‼﹂ ﹁はぁあああ‼‼猛虎蹴撃‼‼﹂ 二天 を受け流し、楽進の猛虎蹴撃は刀身で受け止めて 三羽烏の連携にも反応する。李典の螺旋槍を滑らせながら弾き、于 禁の双剣 左手で楽進の足を掴むとそのまま于禁と李典目掛けて投げ飛ばす。 1222 ﹁でりゃああああ‼‼﹂ ﹁えぇえええい‼‼﹂ で、典韋はまるで を俺に投げ付けてくるが、 岩打武反魔 伝磁葉々 今度は背後からだ。許褚が大鉄球 巨大なヨーヨーのような武器 髑髏の柄を地面に突き刺すと通過した瞬間に鎖と紐を握りしめ、そ のまま二人を遠くに投げ飛ばした。 ﹁うぉらあああああ‼‼﹂ ﹁アレックス殿‼覚悟されよ‼﹂ ﹁これは防げまい‼‼﹂ ﹁悪く思わないでねアレックス‼‼﹂ ・・・本当に鬱陶しい・・・・・・。今度は徐晃、鄧艾、曹仁、曹 洪の4人による同時攻撃か・・・・・・。まず曹仁の餓狼岩剣を防 ぎ、鄧艾の破城旋棍を脇で受け止めてそのまま曹洪の餓狼風爪を防 ぎ、最後に徐晃の赤龍偃月刀を受け止めた。 ﹁なっ・・・なんと⁉﹂ ﹁其れがし等の攻撃を全て⁉﹂ ﹁・・・ウットウシイムシダ‼﹂ 魏の武将全ての攻撃を跳ね返され、あまつさえ子供みたいにあしら われる。奴等からしたらショックだろう。 しかしそのまま身体を捻りつつ、曹洪の横腹目掛けて回し蹴りを見 舞う。いきなりだったようなので曹洪は防御が間に合わず、徐晃、 鄧艾、曹仁を巻き込むように吹き飛ばされる。 ﹁くっ・・・・・・何という強さだ・・・・・・﹂ 1223 地面に倒れた徐晃は辺りを見渡す。辺りには予想を遥かに上回る威 力にダメージが大きくその場に立てずにいる曹仁達。 このままこいつ等全員を皆殺しにしてやってもいいが気が変わった。 こいつ等には主が目の前で無様に殺されるという屈辱を味合わせて やる。 死 俺は髑髏を構え直すと視線の先には絶を構える曹操の姿があった。 ﹁ホゥ・・・・・・キサマモアラガウノカ?﹂ ・・・どちらの鎌が強いか・・・﹂ ﹁私だけが何もしない訳にはいかないわ・・・・・・来なさい 神 ﹁クックックックッ・・・・・・ナラバ・・・ソノナマクラオオガ マゴトキサマノクビヲ・・・・・・﹂ 笑いながら絶を短く持つ曹操に照準を合わせ、一気に地面を蹴った。 ﹁キリオトシテヤラァアアア‼‼﹂ ﹁くっ⁉﹂ 曹操は素早く俺の薙ぎ払いに反応して絶にて受け止める。しかし俺 は攻撃の手を緩めず猛撃を見舞ってやる。 ﹁くっ⁉まだまだぁ‼‼﹂ ﹁クソガキガ‼‼﹂ 互いの大鎌がぶつかり合う。だが状況的には俺が押している。向こ うは既存の技術で作られた戦闘用大鎌だが、こっちはジーンが作り 上げた言わば天界の武器だ。 1224 俺の猛撃を前に曹操の表情は厳しいものとなっていた。 ﹁くっ⁉・・・まさしく死神ね・・・・・・﹂ ﹁マダツヅケルノカ・・・・・・イイカゲンアキラメテクビヲヨコ シヤガレ‼‼﹂ 俺は一瞬だけ姿を消し、次に現れたのは曹操のすぐ目の前。曹操は すぐに絶を構えたが渾身の力を込めて奴の大鎌を粉砕してやった。 ﹁なっ⁉・・・・・・がっ⁉﹂ 刀身が全て砕け散り、柄にだけなった絶を見ている曹操の首を左手 で掴み、そのままつるし上げる。 ﹁コレデ・・・オワリダ・・・・・・﹂ それだけいうと俺は髑髏を構え、曹操の首を刎ねようとする。 ﹁曹操殿⁉・・・・・・くっ・・・﹂ 主を助ける為に徐晃達が立ち上がろうとするが身体がいう事を聞か 裂空 を構えた張 。そ ないようだ。そして曹操の首に刃が届こうとした瞬間、俺の左腕に 一本の弓矢が突き刺さった。 ﹁クッ⁉・・・コシャクナ⁉﹂ ﹁華琳様‼‼﹂ 矢が飛来した方角を見ると丘の上には弩 れに軍師の郭嘉に程昱、負傷した曹仁達に駆け寄る黒騎兵。 1225 ﹁今の内に皆さんを回収してください‼‼﹂ ﹁ありったけ投げちゃってくださいです∼。その隙にトンズラしち ゃうのです∼﹂ そして一部の黒騎兵が何か投げ付けてきて、暫くしてから辺り一面 に煙が立ち上り始める。 奴等が投げ付けたのは煙玉か・・・・・・。 流石にいきなりの発煙に対処が遅れ、俺は煙に巻かれてしまう。 そして暫くしてから煙が収まったが、辺りを見渡しても誰もいない。 そして離れた場所に馬に乗らされて退却している曹操の姿を確認出 来た。 ﹁・・・・・・サクセン・・・シッパイカ・・・﹂ 曹操に逃げられた。どうやら将は誰も仕留められなかったようだが、 膨大な数の敵を仕留められたのも確かだ。 俺は氣を鎮め、瞳の色が深紅から灰色へと戻って行く。そして深く 孟徳‼‼﹂ 息を吸い込むと・・・・・・。 ﹁曹操 大声で奴を呼ぶと、向こうも聞こえたようで振り向いた。 ﹁今回だけは貴様等の将に免じて見逃してやる‼‼だが再びこの地 に足を踏み込めば、次こそは貴様等を八つ裂きにしてくれる‼‼そ れを覚えておけ‼‼﹂ それだけ叫ぶと俺は髑髏を肩に担ぎ、いつの間にか掛け声が聞こえ 1226 なくなっていた合肥へと引き返して行く。 合肥の戦いにて曹操軍は出陣させた20万もの兵力の内、14万が 死傷。捕えられた捕虜もその場で首を刎ねられた。 対して怒りに満ちていた孫策軍は10万の兵力差を覆し、奇跡的に も死傷者は3万にまで抑えられていた。 正史における魏軍の勝利で終わったとされる合肥の戦いは孫策軍の 圧倒的勝利で幕を閉じる。 この戦いで魏軍は占拠した寿春を別働部隊により奪還され、揚州か らの完全撤退を余儀無くされた。そしてアレックスもライルの容体 を気に掛けてすぐ建業へと帰還していく・・・・・・・・・。 1227 第159話:彼方の面影︵後書き︶ 合肥での戦いから10日後、ライルが倒れたという事実は予想以上 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re に影響されていた。その報は一刀達にも届いていた。 次回 [慰安部隊の派遣] 盟友の事態に御遣いが駆けつける。 1228 コラボ第2段:銀狼と猛狼︵前書き︶ コラボ第1段[2匹の狼]に続いて恋姫†無双−外史の傭兵達−と のコラボ第2段をお届け致します。 前回の和樹に続いて今回は・・・・・・。 1229 コラボ第2段:銀狼と猛狼 魏軍の刺客により俺は雪蓮を庇って毒を受けた。彼女を守れたとい う嬉しさと同時に俺は曹操に対して失望した。 曹操は常に正々堂々と戦いを挑み、自分や他者にも誇りを持たせて 勝利を得る。俺の中にそういった彼女への印象があったのに、それ が裏切られた。 だが今はそんなのはどうだっていい。早く目覚めて雪蓮に顔を見せ て安心させないと・・・・・・。そして眼を開けると何かがおかし かった。気を失う直前の記憶では確かにナイトホークに載せられて 建業に搬入された筈だ。 なのに辺りの光景はどう考えても森の中だ。しかも直ぐそばには漢 BDUに同色の野戦 方薬を精製する際に用いられる薬研に小さめのふるい。 ﹁ここは・・・・・・どこだ?﹂ ﹁おっ、気が付いたか?﹂ 声を掛けられ、振り向くとそこには、M81 帽、各種ポーチを取り付けたODカラーのピストルベルトに形状か ら判断してイタリア製9mmマシンピストルのM93R入りのホル スターを身につけて腰に大刀を装着させた黒髪のG.Iカットをし た男だ。 因みにどういう訳か背中に薬草と思わしき竹籠を担いでいた。はっ きり言って不釣合いすぎる。 1230 ﹁おいおい、助けてくれた恩人にそんな警戒するもんじゃねえぜ﹂ ﹁・・・・・・助けた?﹂ ﹁あぁ、薬草を集めてたら茂みで倒れてたお前を見つけてな。全く・ ・・ちょっとは感謝してくれよな。ほら、水だ﹂ そう言われて男は竹籠を降ろすとキャンティーンを投げ付け、それ を受け取るとキャップを開けて中に入っている水を飲む。 ﹁・・・・・・すまない・・・助かった﹂ ﹁いいって、まぁ確かに初めは警戒したがな。ライル中佐殿﹂ ﹁・・・・・・・・・なんで名前と階級を?﹂ ﹁なんでって・・・迷彩の襟に階級章あるし、ネームワッペンに名 前書いてるじゃねえか﹂ そう言われれば確かにそうだ。今は装具を身につけていないのだか ら確認は容易だろう。 ﹁それで・・・・・・ここはどこだ?﹂ ﹁ここは建業郊外にある森の中だぜ﹂ 恐らくだが現代には戻って来てなどいないだろう。もしここが現代 なら建業ではなく南京という筈だし、そして何よりも大刀を装備し ている筈が無い。 百鬼ってんだ﹂ ﹁・・・・・・そういえば・・・あんたは?﹂ ﹁俺か?俺は呂猛 ﹁呂蒙?﹂ ﹁あ∼、一応は言っておくが呂布の呂に獰猛の猛だぜ。てか三国志 を分かるのか?﹂ 1231 狼牙だな﹂ ﹁まぁな・・・・・・だがもしかしたらお前は日本人か?﹂ ﹁一応はな﹂ ﹁ふぅ・・・・・・まるで韓甲 思わずかつて出会った狂気の傭兵の名前を口にして、それを聞いた 呂猛はいきなり表情が厳しくなって、右手はM93Rへと伸びてい た。それを見た俺は痛む身体を動かしてCQCの姿勢を構える。 ﹁・・・・・・お前・・・何者だ?﹂ ﹁・・・なんの話だ?﹂ ﹁何でお前が相棒の名前を知ってやがるんだ?﹂ ﹁相棒?﹂ ﹁お前はどう考えてもこの時代の人間じゃねえ・・・現代のジャー と言っても ヘッドだ・・・・・・ブーツの結び方とパンツの状態で判別出来る。 なのに相棒の名前を知ってやがる・・・﹂ 別世界にいって同じ境遇の奴と戦った ・・・・・・あの男・・・絶対に話していないな。 まあいきなり 頭がおかしい奴だと思われてしまう。 ・・・いたか?そんな奴・・・ と言いかねない。 更にあの狂気野郎だ。絶対に口にしないだろうし、仮に口にしたと しても 俺はひとまず目の前の危険を回避する為に話すことにした。 ﹁待て・・・ベレッタを抜こうとするな。説明してやる﹂ ﹁・・・・・・分かった﹂ それだけいうと呂猛はベレッタから右手を離して少し離れた場所に 腰掛ける。そして俺は話した。 1232 俺が長沙に用事を済ませて愛馬にて建業へと戻る際に鉢合わせ。奴 がいきなりAK−74+GP−25で仕掛けて来た事。 CQCに発展した事。ジーンと神が現れて奴を連れ帰って行った事 を話した。 そして俺達も現代で戦死し、孫策軍に参加して2年くらいしてから 雪蓮を庇って曹操の刺客が放った毒矢を受けて気を失い、気が付い たらこちらに来ていたも話す。 全てを話し終わると呂猛はいきなり笑い出した。 ﹁ハハハハハハ‼‼そいつは災難だったな♪﹂ ﹁笑い事じゃない。こっちはM45しか無かったから危うく死に掛 けたんだからな﹂ ﹁まあまあ♪だったら相棒が悪かったな♪代わりに謝るぜ♪﹂ ﹁まぁ・・・過ぎた事だしな・・・・・・﹂ ﹁しっかし・・・・・・俺達と同じ境遇で・・・しかも同じ孫策軍 にいて向こうの伯符殿と恋仲になったなんてな・・・﹂ ﹁ちょっと待て⁉俺は雪蓮と恋仲だなんて一言も・・・・・・・・・ ハッ⁉﹂ ・・・しまった・・・・・・墓穴を掘ってしまった・・・。 それを奴は聞き逃す事なく、顔をニヤニヤしながらこちらを見てい ジキルとハイド だな。 た。何というか、こいつからも狂気的な雰囲気を感じるが陽気な印 象も感じられる。 例えになるか分からないが 俺は顔を赤く染めながら視線を逸らす。 1233 ﹁ハハハハハハ‼‼お前は面白い奴じゃねぇか‼和樹にも見習わせ てやりたいぜ‼﹂ ﹁笑わないでくれ・・・告白だってかなり勇気いるんだからな﹂ ﹁まっ♪そりゃそうだな♪﹂ こいつは誘導術にでも長けているのか?何だか知らないがこいつと 話しているとどうも誘導されている気がして仕方が無い。 ﹁ハハハハハハ・・・いや∼笑った笑った♪怒るなよ。これでも祝 ってやってんだぜ♪﹂ ﹁祝ってくれるのはありがたいが・・・・・・﹂ ﹁まぁ・・・それは置いといて・・・・・・曹操が英雄ねぇ・・・﹂ ﹁まぁな・・・・・・俺の中にそんな印象があった。まさかそんな 奴が暗殺みたいなことをするとはな・・・・・・﹂ ﹁ふぅ・・・なぁライル﹂ ﹁なんだ?﹂ ﹁寝言は寝てから言いな﹂ 俺はいきなりの言葉に唖然とする。 ルール無用 、 勝てば官軍、負ければ賊軍 。お ﹁戦争なんて所詮は勝てばいいんだよ・・・そこに綺麗も汚いもあ りゃしねぇ。 前も分かってる筈だ﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁それに・・・・・・英雄なんて要は大量殺戮者で・・・偽善者だ。 聖戦 なんぞ、くっだらねぇったらありゃ 自分の都合や理屈で従わない奴等を皆殺しにするクソッタレ野郎。 だから、曹操の掲げる しねぇ﹂ ﹁・・・まぁな。だが仲間を守る為には英雄と称される奴も必要だ。 どんな時代でもな・・・・・・これだけは譲れない﹂ 1234 ﹁ふん・・・・・・ま、俺には関係ねぇけどな﹂ ﹁忠告は感謝する・・・・・・少し待ってくれ﹂ ユーティニティベルトに備え付けてある無線に反応があったので、 話を一旦やめて応答する。 ﹁こちらウルヴァリン、感度良好﹂ <よかった⁉やっと繋がった‼> ﹁ジーンか?﹂ <あなたなに呑気な声を出してるの?別世界に行っちゃってるのよ ?> ﹁君こそ落ち着け。こっちは大丈夫だし、毒気もだいぶ無くなった﹂ <・・・そっちで何があったの?> ﹁俺を介護してくれた傭兵が解毒剤を調法してくれてな。それでだ いぶ楽になった﹂ <そう・・・それであなたを救ったのってやっぱり韓甲?> ﹁いや、その副官だ﹂ <そう・・・それであなたを元の世界に戻すわ。みんな意識が無い から心配してるわよ。特に雪蓮ちゃんが・・・> ﹁了解した。頼む﹂ 通信を終了させて俺は無線をポーチに戻すと呂猛に振り向く。 ﹁帰るのか?﹂ ﹁あぁ、俺の担当官が今から俺を元の世界に戻すらしい﹂ ﹁あいよ♪おっと・・・だったらこれを持ってった方がいいぜ﹂ そういうと呂猛はカルテを取り出し、それを千切ると俺に手渡した。 書かれている内容はドイツ語だが、俺はドイツ家系の血筋だから何 の問題もない。書かれているのは受けた毒気の種類に量、更には治 1235 療方法や解毒剤の作り方が記されていた。 ﹁何から何まですまない﹂ ﹁いいっていいって、気まぐれって思ってくれて大丈夫だからな﹂ ﹁ふっ・・・・・・そういうことにしておくさ。礼をいうぞ呂猛﹂ ﹁あいよ、機会があったらまた会おうぜジャーヘッド﹂ 俺達は互いに敬礼をし合うと、俺の体が消えていき、やがては意識 も元の世界へと戻っていった。それを見守った呂猛は道具一式を片 付け、竹籠を背負いながらタバコを取り出して火を着けた。 ﹁ふぅ・・・・・・面白い奴だった・・・だが相棒には黙っておい た方がいいだろうな・・・﹂ それだけ小さな声で口にしながら建業へと引き返していった・・・・ ・・・・・。 1236 コラボ第2段:銀狼と猛狼︵後書き︶ 次回から本編に復帰致します。 ご覧になられてありがとうございました。 そしてコラボ先の恋姫†無双−外史の傭兵達−作者ブレイズ様にも 多大な敬意と感謝を示させて頂きます。 監督・監修:ブレイズ様 製作・企画:ウルヴァリン 1237 第161話:使者︵前書き︶ 方針を決めている一刀達の元にライルが倒れた情報が舞い込む。 1238 第161話:使者 魏が何やら不穏な動きを見せ始めている。向こうに潜入させている 細策からの報告で許昌、新野の二箇所に集結していた軍勢が呉に向 かって侵攻を開始したという情報が入った。 これに合わせて魏軍との国境付近に配備していた部隊の一部をいっ たん成都へと呼び戻し、異民族が集結している南蛮侵攻への戦力拡 大を図る。 この先、俺達は魏に漢中奇襲も計画している。今回の南蛮侵攻には それ等の計画をカモフラージュする目的と共に、後顧の憂いを断つ 目的もある。 それ等の計画を話し合う為に俺達は成都本城の玉座の間に集合して、 日々軍議を繰り返していた。 ﹁朱里、南蛮への準備はどのくらい進んだ?﹂ ﹁はい、兵隊さんの数を3万から4万に変更して、西側と北側の国 境に兵力を均等に保ちつつ魏の細策の注意をそっちに向けさせてい ます﹂ ﹁さすが朱里だ。後は兵糧だけど、頼んでた物は?﹂ ﹁それも大丈夫だよ一刀君。指定してた干物や乾燥肉。こっちも数 は揃ってる﹂ ﹁あと、清潔なお水です。こっちもご主人様のご指示通り手配が終 わりました﹂ 朱里、雛里、飴里の3人に兵力及び兵糧と水の確保を確認する。前 にライルさん達から南蛮平定の際には必ず清潔な水をこっちから持 1239 ち込むようにアドバイスされている。 後は兵糧に関して日持ちする干物を中心に確保し、足りなかったら 自分達で作る。このお陰でかなりの干物が確保出来た。 ﹁じゃあ次は南蛮へ出陣するのは誰にしようか・・・﹂ ﹁は∼い‼‼鈴々が行きたいのだ‼‼﹂ ﹁こら鈴々⁉﹂ ﹁ねえねえご主人様。南蛮ってどんな場所なの?﹂ ﹁あぁ、南蛮は鬱蒼とした木々が密集した地形で気温と湿度が高く て蒸し暑い。なおかつ虫が多い地形だね﹂ ﹁うぇ∼・・・タンポポ暑い場所と虫は嫌だなぁ∼・・・﹂ ﹁だったらお前は残ればいい。私が活躍している間、後ろでプルプ ル震えてればいいさ﹂ ﹁言ったわね∼‼‼あんた毎度毎度一言多いのよ‼この脳筋‼﹂ ﹁何だと⁉﹂ また始まったよ・・・・・・焔耶と蒲公英・・・。確かに正史で魏 延と馬岱はあまり仲が良く無かったとされているが、まさかこの世 界でも何てな・・・。因みにこうなると最後には必ず・・・。 ﹂﹂ ﹁やめぬかバカ者共‼‼﹂ ﹁﹁ぎゃふん‼⁉ 背後から桔梗による垂直落下型のゲンコツが降り注ぐ。しかも今回 は本当にいい音がして痛いだろう。それを表すかのようにゲンコツ をマトモに受けた二人は頭頂部を抑えながら蹲っている。 ﹁はぁ・・・・・・いつもすまないね桔梗﹂ ﹁なに、何時ものことですぞ﹂ ﹁まぁ・・・見慣れたといったら見慣れたけどね・・・・・・﹂ 1240 ﹁ふふっ♪相変わらず仲がいいわね、焔耶ちゃんとタンポポちゃん は・・・﹂ ﹁﹁仲良くない︵です‼︶︵もん‼︶﹂﹂ ・・・やっぱり仲がいいな・・・。 ﹁しかしご主人様、人員の選抜には十分配慮された方が宜しいです ね﹂ ﹁うん、今の俺達には問題点が多い。北と東からは曹操、南には南 蛮、そして西からは五胡・・・三方面からの同時は無いだろうけど 事は慎重に運ばないとね﹂ ﹁はい、特にいずれ魏軍がこちらに向かって侵攻してくるのは火を 見るよりも明らか・・・。現に呉へ侵攻するという情報も入ってき ています﹂ ﹁そうだね・・・・・・﹂ ﹁ライルさん達・・・・・・大丈夫かな・・・﹂ 本音を言えば分からない。圧倒的な火力ならライルさん達が圧倒す るが、物量戦に持ち込まれたら流石のライルさん達もただではすま ないだろう。 ﹁なぁ、少しだけいいかな?﹂ ﹁ん?・・・どうかした飴里?﹂ ﹁そのライルってどんな人かな?﹂ ﹁そういえばまだ飴里はライルさんに会ったことがないね?﹂ ﹁あぁ、よく露蘭がその人の事を自慢してるからね﹂ 確かに露蘭はライルさんの事を兄貴分みたいに慕っている箇所があ るから、それを聞いていたとしても不思議じゃないな。俺が口にす る前に隣で刀瑠を抱きかかえている桃香が先に答えた。 1241 ﹁あのね、ライルさんってすっごい人なんだよ﹂ ﹁姉上・・・それじゃ説明になっていませんよ。ライルは我等以上 に武芸に長けていて・・・﹂ ﹁知略も私達に教えられて・・・﹂ ﹁うんうん♪それでいてとっても優しいんだよ♪﹂ ﹁にゃはは♪ライルおじちゃんは鈴々たちの人気者なのだ♪﹂ 相変わらず鈴々はライルさんのことをおじちゃんと言う。まだそん なに年取ってないのにおじちゃんは堪える。せめてお兄ちゃんと呼 んで欲しかったらしいけど、少し前から諦めたらしい。 ﹁それで露蘭や白蓮を助け出してくれたり、霞や嵐、恋、ねね、月、 詠が俺達の仲間になったのもライルさんのお陰なんだ﹂ ﹁せやで♪うち等とライルは前に洛陽におった時の戦友や♪﹂ ﹁うむ‼しかしいつかはライルに借りを返さなくてはな﹂ ﹁・・・恋、ライルに会いたい﹂ ﹁へぅ、ライルさん・・・お元気でしょうか?﹂ ﹁月に会いにこないだなんて何を考えてるのよ、あいつは・・・﹂ ﹁次に会った時には囲碁は負けないですぞ‼﹂ 少しだけ説明しただけでこれだけ盛り上がる・・・・・・ライルさ んは本当にみんなの人気者だな・・・。 ﹁じゃあ話が逸れたけど、配備先を話し合うよ・・・﹂ そういいながら俺達は配備を考える為に軍議を進める。そして話し 合いの結果、決まったのは・・・ 1242 南蛮方面は俺と桃香、愛紗、鈴々、朱里、紫苑、桔梗、タンポポ、 焔耶。 五胡方面は霞、嵐、恋、ねね、詠、露蘭、白蓮。 魏方面には飴里、翠、星、雛里、猪々子、斗詩、夏雅里。 ﹁じゃあ大体はこんな感じだね﹂ ﹁はい、全体的に統制が取れて良いと思われます﹂ ﹁じゃあ基本方針はこんな感じだね。何か変更があったらすぐに﹁ 主、失礼しますぞ﹂星、どうしたの?﹂ 俺が区切ろうとした瞬間、兵站の確保で離れていた星が扉を開けて 中に入ってきた。 ﹁どうしたのだ?何かあったような雰囲気だが・・・﹂ ﹁うむ、実はさっき細策が帰還してきた。信じ難い情報を齎してな﹂ 何だかいつもの星の雰囲気ではない。それほど何か重大なことがあ ったということみたいだ。 ﹁信じ難い情報ってなんなのだ?﹂ ﹁うむ、実は10日前に曹操率いる魏軍が呉に侵攻した﹂ その言葉に全員が驚く。いくら何でも侵攻速度が早過ぎる。 ﹁魏は呉の反撃の機会を与えないように素早く軍を進ませて短期決 戦に持ち込もうとしたようですぞ﹂ ﹁星、曹操軍の兵力は?﹂ 1243 ﹁約20万・・・しかも主だった将の大半が出陣したようです﹂ ﹃20万⁉﹄ しかも将の大半だなんて・・・・・・。 ﹁な・・・なあ⁉呉はどうなったんや⁉まさか負けたなんて・・・﹂ ﹁安心しろ霞、合肥という場所で孫策殿率いる主軍とぶつかって、 魏は半数以上の兵力を失って撤退したようだ﹂ ﹁よ・・・よかったで・・・﹂ ﹁しかし・・・呉はそれを上回る兵力を用意していたのでしょうか ?﹂ ﹁いや・・・孫呉の兵力は10万足らずらしいが、あまり目立った 損失が無い快勝だったらしい﹂ ﹁10万の兵力差を覆すだなんて・・・・・・やっぱりライルさん 達の奮戦が?﹂ ﹁どうやらそれだけではないようですぞ﹂ 意味あり気な星の説明に俺達は耳を傾ける。 ﹁実は・・・戦が開始される直前に魏の刺客が孫策殿を暗殺しよう としたらしいのです﹂ ﹁あ・・・暗殺⁉﹂ ﹁もしかして・・・許貢の一派?﹂ ﹁はわわ⁉ご主人様はご存知なのですか⁉﹂ ﹁許貢の残党が魏に亡命したっていう噂を聞いたことがあってね﹂ ﹁それで星ちゃん‼孫策さんは大丈夫なの⁉﹂ ﹁大丈夫です桃香様、孫策殿はご健在です﹂ ﹁よ・・・よかったぁ∼・・・﹁ただ・・・﹂ただ・・・どうした の?﹂ ﹁孫策殿を庇って代わりに毒矢を受けた御仁がおられたようです﹂ 1244 ﹁ちょっと待って星‼その庇った人って・・・まさか⁉﹂ ﹁はい・・・・・・孫策殿を庇って毒矢を受けたのは・・・・・・・ ・・ライル殿です・・・﹂ それを聞いて俺達は驚愕する。なにせ俺達の恩人であるライルさん が毒矢を受けた。その言葉に対して真っ先に反応したのが霞達だ。 ﹁そ・・・それでライルは⁉ライルはどうなったんや⁉﹂ ﹁分からぬ・・・毒を受けてから意識が戻らぬらしく・・・﹂ ﹁そんな・・・・・・ライルが・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ 霞はライルさんが意識不明だと聞いてショックを隠せずにいた。す ると恋がいきなり立ち上がり、方天画戟を手にすると歩き出した。 ﹁恋⁉何処に行くんだ⁉﹂ ﹁・・・恋、曹操・・・殺しに行く﹂ ﹁殺しにって、駄目だ恋‼落ち着け⁉﹂ ﹁曹操・・・ライルを傷付けた・・・・・・ライルは恋の家族・・・ 家族を傷付けた曹操・・・許せない﹂ ﹁落ち着くんだ恋‼気持ちは分かるけど今は駄目だ‼﹂ 俺は何とか言い聞かせるが、恋は首を降り続ける。今の恋の表情か らは怒りが感じられる。 ﹁恋‼ライルさんなら大丈夫だ・・・ライルさんが毒矢程度でやら れると思うかい?﹂ ﹁・・・・・・・・・︵フルフル︶﹂ ﹁ライルさんなら大丈夫さ。必ず目を覚まして元気な姿を見せに来 てくれるさ。だから今は落ち着いて・・・・・・な?﹂ 1245 ﹁・・・・・・分かった。恋・・・曹操殺すの・・・今はしない﹂ 何とか恋を説得して、方天画戟を降ろさせる。 ﹁兎に角・・・ライルさんが倒れたとなると直ぐに使者を送らない と・・・﹂ ﹁そうですね・・・・・・戦力が低下しちゃいますけど恩人のライ ルさんが倒れたとなると派遣しなければ・・・﹂ ﹁なぁ一刀・・・ウチに行かせて‼﹂ ﹁霞・・・﹂ ﹁ウチはまだライルに礼を返してへんねんや・・・ウチ・・・嫌や で・・・・・・﹂ ﹁霞が行くんだったら俺も行くぜ‼それに華琳は暗殺の類を嫌って る・・・・・・間違いなく魏からも弔問の使者がくる筈だから真意 を確かめたい‼﹂ ﹁・・・分かった・・・・・・呉への使者は霞と露蘭・・・・・・ それに俺も行く﹂ ﹁はわっ⁉ご主人様もでしゅか⁉﹂ ﹁俺もライルさんが心配だ。いても立ってもいられない位にね・・・ ・・・南蛮方面の指揮は桃香達に任せる。いいかな?﹂ ﹁はい、こちらはお任せ下さい。ご主人様はライルの安否確認を・・ ・﹂ ﹁ありがとう・・・・・・さぁみんな。直ぐに取り掛かろう﹂ ﹃御意‼‼﹄ それだけ伝えると俺達は直ぐに準備に取り掛かる。その翌日、俺と 霞、露蘭、そして軍師として飴里も同行することとなり、全員から の手紙を預かると飛燕に乗って建業へと出発した・・・・・・・・・ 。 1246 第161話:使者︵後書き︶ 呉との戦いで大敗退を喫した魏軍。孫策暗殺未遂という事実は曹操 の意志ではないにしても事実となった。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 呉への使者を送ることを決めた曹操はそれを選ぶ。 次回 [魏の弔問] 弔問という決死隊が決められる。 1247 第162話:弔問の使者︵前書き︶ 呉との戦いで大敗退を喫した曹操軍。曹操はすぐに呉への使者を派 遣する。 1248 第162話:弔問の使者 呉から退却した我等は占領した寿春にて生き残った友軍を再編成し、 揚州から完全撤退をすると本拠許昌へと退却した。 20万もいた我が軍は壊滅的な損害を受ける羽目となり、今や6万 足らずの兵力しかいない。加えて兵の士気も地に落ちていた。 孫呉の熾烈な攻撃に加えて噂でしか知らなかったライル殿率いる孫 呉海兵隊が用いる天界の兵器。どれだけ有能な将兵が集まろうと未 知なるものが自分たちを襲うとなるとそれが恐怖に変わり、やがて は散っていく。しかしそれらだけではなかった。 ライル殿が我が軍の兵士による独断で倒れた これが一番の要因だろう。それによる孫呉の怒りは計り知れないも のとなり、特に主である孫策殿と副将アレックス殿の曹操殿への憎 しみは我等が武をも凌駕するものとなり、特にアレックス殿は夏侯 惇殿や夏侯淵殿達が束に掛かっても軽くあしらわれてしまった。 その影響で曹操殿は危うくアレックス殿に討ち取られそうになった。 あの時、神楽殿と凜と風が来てくれなければ取り返しのつかないこ ととなっていただろう。 そして許昌城へと退却を果たし、今は玉座の間へといた。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹃⋮⋮⋮⋮⋮﹄ 玉座内部は沈黙が広がっていた。それは仕方がなかろう。これまで 1249 我等は必勝不敗を誇る軍勢だったが、今回の戦で我が軍は大敗退を 喫した上に曹操殿の評判は落ちてしまった。 ﹁⋮⋮⋮曹操殿﹂ ﹁牙刀⋮⋮⋮⋮何かしら?﹂ ﹁あまり御自分を責められない方が宜しいです﹂ ﹁⋮⋮⋮そう⋮⋮﹂ そうはいったが相変わらず曹操殿は変わらず落ち込んだ表情をする。 ﹁華琳様!!どうか今一度、呉に攻めるご命令を!!このままでは 華琳様のお顔が立ちません!!﹂ ﹁姉者⋮⋮⋮頼むから少しは空気を読んでくれ﹂ ﹁だが秋蘭!!このままでは悔しいではないか!!我等天兵が呉に 負けるなどとは⋮⋮﹂ ﹁だが実際に我等は敗退したのだ。それに今は兵達も疲れきってい る⋮⋮⋮今の状態で攻め込んだとしても今度こそ奴等は我等を完膚 無きまでに殲滅するだろう﹂ ﹁しかしだな秋蘭!?﹁春蘭⋮⋮少し黙りなさい﹂か⋮⋮華琳様! ?﹂ なかなか話を聞こうとしない夏侯惇殿に曹操殿がようやく口を開い た。 ﹁桂花⋮⋮今回の戦で我等はどのくらい被害を出した?﹂ ﹁はい⋮⋮⋮報告によりますと出陣した我が将兵の20万の内、生 還できたのはたったの6万の兵力のみ⋮⋮⋮しかも大半の兵の士気 が低下しきっております﹂ ﹁特に前衛はほぼ壊滅状態です。我が隊の兵力も五千弱いましたが、 今は百人にも満ちておりません﹂ 1250 桂花の報告に私も補足として被害報告をする。呉との戦いが熾烈に なると予測して新兵をあまり連れて来なかったのが唯一の救いだっ たが、代償として我が隊の古参兵や指揮官がかなりやられてしまっ ている。それは夏侯惇殿達も同様のことであり、夏侯一族の人間も 何人か参加していたがかなり討ち取られてしまっているようだ。 ﹁⋮⋮司馬懿﹂ ﹁いかがなされたか?﹂ ﹁あなたは呉の動きがどう出るかわかるかしら?﹂ ﹁聞くまででもありますまい⋮⋮⋮英雄と称されるあの男が曹操様 のご意思ではないにしろ、我が軍の新兵により毒を受けたというの は事実⋮⋮報復として何かしらの攻撃をしてくるのが予測されます﹂ ﹁桂花達は?﹂ ﹁私も⋮⋮不本意ながら司馬懿と同じ考えです﹂ ﹁呉のお兄さんは人気者らしいですからね∼⋮⋮だからもし風達が 何もせずにいたら仕返しに来ちゃいます∼﹂ ﹁それは当然の選択だと思います。いくら確実に勝利を掴み取る為 とはいえ、私達は呉に宣戦布告の使者を送っていません﹂ 使者を送らなかったというのは本当である。これは我等が少しでも 呉に勝つための布石の一つであったが、今回はそれも仇となってい る。 ﹁⋮⋮⋮春蘭⋮秋蘭⋮⋮弔問の使者はどうなっているの?﹂ ﹁⋮⋮既に処断した首謀者の首を塩漬けにしています。後は向かう 者を決めればいつでも出発できます﹂ ﹁そう⋮⋮⋮分かったわ⋮⋮しかし並の文官や武官が行ったところ で打ち首に合うのは必然⋮⋮⋮慎重に選ぶ必要があるわね⋮⋮﹂ 1251 これが一番の難題かもしれない。暗殺という卑劣な手段を用いて戦 乱を開いてしまい、あまつさえそれを途中で放り出してしまったの だ。勝ち負け以前の問題で武人としてもかなりの無礼である。それ 故に弔問の使者というのは身分相応でなければ打ち首も必然⋮⋮⋮ 実質上の決死隊でもあるのだ。 ﹁⋮⋮⋮曹操殿⋮⋮その弔問の使者の任⋮⋮私にお任せ頂けません でしょうか?﹂ ﹁牙刀?﹂ 志願するという言葉を聴いて全員の視線が私に集中する。 ﹁私は全身全霊を持ってライル殿と刃を交えたかった⋮⋮しかし横 槍が入ったせいでそのライル殿が傷つき、あの男に無礼を働いてし まったことは事実⋮⋮それに⋮⋮⋮﹂ ﹁それに?﹂ ﹁それに⋮⋮⋮ライル殿の容態が心配なのです⋮ですのでどうか⋮ ⋮私にその任を命じて頂きたい﹂ そういうと私は曹操殿に頭を下げて申し出る。曹操殿は暫く考え、 公明。任を全うさせて頂きます﹂ 公明⋮⋮貴殿に呉への弔問使者の任⋮⋮一任する﹂ やがて決断に至る。 ﹁⋮⋮⋮徐晃 ﹁ありがたき幸せ⋮⋮この徐 ﹁副官として凪⋮⋮軍師として司馬懿⋮⋮⋮あなたも行きなさい﹂ ﹁はい、お任せ下さいませ﹂ ﹁司馬懿、あなたには文も届けてもらうわ。後で私の部屋にまで取 りに来なさい。いいわね?﹂ ﹁御意﹂ 1252 それだけいうと私と凪、それに司馬懿殿はすぐに準備に掛かる。命 じられたその日の翌日に私達使者は少数の部隊を率いて呉へと向か う⋮⋮⋮⋮。 1253 第162話:弔問の使者︵後書き︶ 魏呉との戦いが終結して2週間後、ライルが負傷したことを聞きつ 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re けた一刀達の蜀軍使者と牙刀達の魏軍弔問。 次回 [3英雄の再結集] 建業の玉座にて英傑達が集う。 1254 第163話:3英雄の再結集︵前書き︶ 遂に眼を覚ましたライル。ずっと看病をしてくれていた雪蓮に感謝 をする中、蜀と魏からそれぞれ使者がやって来た。 1255 第163話:3英雄の再結集 ・・・・・・何だか夢を見ていた感覚だった。雪蓮に2年越しの告 白を果たし、その直後に曹操軍の刺客が放った毒矢から雪蓮を庇い、 俺が毒を受けて生死の境を彷徨っていた。 そこから俺はやがて意識を覚醒させ、気が付けば見慣れた天井が視 界に飛び込んで来た。 ﹁うっ・・・・・・う・・・﹂ 俺は意識がまだ完全に正常しない状態で重い頭を振り、辺りを見渡 す。 側には執務の際に使う机や椅子、写真や勲章、更には扉のすぐそば にはコーヒー豆が瓶詰にされた状態で保管されている。 ﹁あの後は・・・・・・どうなったんだ?﹂ Junper 俺は記憶を手繰り寄せる。確かに雪蓮を狙った敵から庇い、それが 毒矢で、ナイトホークで駆けつけたPJ︵Para /パラシュート降下救難員︶により建業に搬送されたが、その先か らの記憶が無い。 ﹁すぅ・・・すぅ・・・﹂ ﹁?﹂ どこからともなく寝息が聞こえてくる。俺が横を向くと・・・。 1256 ﹁すぅ・・・すぅ・・・すぅ・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・・﹂ 寝台に倒れ込むように眠り、俺の手を握っている雪蓮の顔があった。 彼女の瞼は赤く張れ上がり、寝台は彼女が流したであろう涙によっ て濡れていた。 ﹁・・・・・・泣いていたのか・・・ずっと・・・・・・﹂ ﹁すぅ・・・すぅ・・・﹂ ﹁こんなに赤く腫れさせて・・・・・・ありがとう・・・そしてご めんな・・・雪蓮﹂ ﹁う∼ん・・・﹂ 俺が彼女の髪を撫でながらずっと一緒にいてくれたことを感謝する と、雪蓮が目を覚ましたようだ。 ﹁すまない・・・起こしちゃったかな?﹂ ﹁う∼ん・・・・・・ライ・・・ル﹂ まだ若干だが寝ぼけているようであり、目を擦りながら俺の顔を見 る。 ﹁おはよう・・・・・・雪蓮﹂ ﹁・・・ライル・・・・・ライル‼‼﹂ 雪蓮は俺の顔を見て感極まったのか、抱きついてきた。その光景に 少しだけ驚きながらも俺は彼女をしっかりと受け止めてあげる。 ﹁馬鹿‼ライルの馬鹿‼私がどれだけ心配したと思ってるのよ⁉﹂ ﹁すまない・・・・・・本当に・・・﹂ 1257 ﹁あなたが死んじゃったら私・・・私・・・﹂ 雪蓮は俺の首に腕を回してしっかりと抱き付いて、俺も彼女の背中 に手を回して彼女の長くて綺麗な桃色の髪を優しく撫でて落ち着か せる。 ﹁雪蓮・・・・・・君が無事で本当によかった・・・﹂ ﹁・・・馬鹿・・・・・・15日も目を覚まさなかったのに・・・ みんな本当に心配したのよ・・・﹂ ﹁15日も・・・雪蓮はずっと俺の傍に?﹂ そう言いながら雪蓮は頷く。15日間もずっと俺の傍を離れず付き っきりで看病してくれた。彼女の言葉に俺はますます嬉しくなり、 より強く雪蓮を抱きしめる。 ﹁・・・・・・本当にありがとう・・・雪蓮﹂ ﹁・・・・・・今回だけだからね・・・次また無茶したら許さない んだから・・・﹂ ﹁分かってる・・・君と離れるだなんて考えたくもないからな・・・ ・・・﹂ ﹁ライル・・・・・・んっ・・・﹂ 約束すると前回とは打って変わって彼女に俺からキスをする。 ﹁んん・・・ちゅ・・・んはぁ・・・ライ・・・ル・・・ん・・・﹂ ﹁ん・・・ちゅ・・・んん・・・しぇれ・・・ん・・・・・・﹂ 暫くしてから彼女は舌を俺の口に侵入させ、俺の舌に絡ませる。や がて彼女に押し倒されるような態勢になるも、俺も彼女の気持ちに 応えるように舌を絡ませる。 1258 ﹁・・・っはぁ∼・・・﹂ ﹁はぁ・・・雪蓮﹂ ﹁ライル・・・・・・愛してる・・・﹂ ﹁俺も愛してる・・・・・・雪蓮・・・﹂ 互いに愛してることを伝えると二つ再び互いの唇が重なる。俺達が 互いを愛し合っているが、扉が開けられて中に誰かが入って来たこ とに気が付かなかった。 ﹁ふっ・・・・・・ようやく目が覚めたようだな・・・﹂ C サービスドレスと 声を掛けられて唇を離して振り向くとそこには俺が以前に孫呉海兵 隊所属の将軍級専用として採用したクラス 略帽を身に纏った九惹がこちらを見ていた。 ﹁く・・・九惹・・・﹂ ﹁全く・・・見せつけてくれるな・・・﹂ おはよう・・・・・・雪蓮 の辺りからだな﹂ ﹁・・・・・・一応は聞いておくが・・・どこからいたんだ?﹂ ﹁ ・・・殆ど最初からじゃないか・・・。俺と雪蓮は顔を紅くさせな がら磁石みたいに離れる。 ﹁それより孫策、周瑜が呼んでいるぞ。すぐに玉座に来いってな﹂ ﹁冥琳が?﹂ ﹁あぁ・・・ついさっき蜀から慰問の使者が到着したらしい。名前 は張遼に徐庶、夏侯覇、それに天の御遣いだ﹂ ﹁一刀が?﹂ ﹁霞と露蘭も来たのか?﹂ 1259 文 ﹁あぁ、それと忌々しいが魏からも弔問の使者共が来やがった﹂ 魏という言葉に雪蓮は表情を歪ませる。 ﹁誰が来たの?﹂ 公明に楽進 仲達とその配下の人間二人だ﹂ ﹁ご丁寧に名高い武将を連れて来ているぞ。徐晃 謙、それに司馬懿 司馬懿という名前を聞いて心の中で驚く。後の晋となる国の基礎を 築き上げる英傑が弔問の使者としてやって来たという。 ﹁・・・・・・分かった。すぐに行くわ﹂ ﹁頼む。俺は先に行っているぞ﹂ それだけ言うと九惹は先に玉座へと引き返していく。 ﹁ライル・・・ごめんだけど行ってくるわ﹂ ﹁あぁ・・・行って来てくれ﹂ 俺達は軽いキスをすると、雪蓮は玉座へと足を運んでいく。 雪蓮視線 私が玉座に入るとそこには一刀達と曹操の将である徐晃達が待って いた。全員が魏の使者を睨みつけていることにより部屋の空気は重 1260 く、特に先に待っていたアレックスなんかは腰に装着させている拳 銃を抜けるように右手を添えていた。 気にせず私はそのまま玉座の椅子に腰掛けると使者達は姿勢を正し、 私と向かい合った 文謙と申します﹂ ﹁お久しぶりであります孫策殿﹂ ﹁私は徐晃様の副官の楽 字を公休であります﹂ ﹁我が名は司馬懿。字を仲達。こちらは私の配下になります﹂ ﹁お初にお目に掛かります。我が名は諸葛誕 ﹁同じく、配下の文鴦。字は次騫﹂ ﹁久しいな孫策﹂ 文遠といいます﹂ ﹁初めまして・・・・・・やないな・・・うちは蜀で将しとります 張遼 ﹁自分は性は徐、名は庶。字を元直と言います﹂ ﹁えっと・・・は・・・初め・・・・・・まして・・・せ・・・性 は夏侯で名は覇・・・字は仲権って言います﹂ それぞれの使者達は頭を下げて挨拶をする。だがまずは一刀達に話 しかけることにした。魏なんかは後回しで構わない。 ﹁本当に久しいわね一刀﹂ ﹁あぁ・・・ライルさんが倒れたって聞いたから直ぐに飛んで来た よ・・・・・・﹂ ﹁そう・・・・・・ライルに変わってお礼を言っておくわ・・・﹂ ﹁それで・・・ライルさんの容体は?﹂ ﹁それは後回しで話すわ。それよりも・・・・・・・・・・・・ど の面を下げてやって来た・・・魏の使者・・・﹂ 一刀に対する反応とは打って変わって怒りを込めながら睨みつける。 1261 ﹁はっ・・・・・・我が主、曹 孟徳様の謝罪の文と今回の暗殺は 孟徳様のご意志では無いことをお伝えに参りました﹂ ﹁そのような言葉が信じられると思うのか?﹂ ﹁こちらがその親書となります。どうかお納め下さい﹂ sir﹂ ﹁・・・アレックス将軍﹂ ﹁Yes 司馬懿と名乗る男は袖から曹操直々の文を取り出した。傍にいたア レックスは前に歩み寄り、それを受け取ると中身を確認する。 ﹁内容はどうか?﹂ ﹁・・・・・・責任転嫁も甚だしいですな。呉へ勝手に侵略してき たくせに戦を勝手に終わらせ、更には自分は暗殺に関わっていない とほざいている・・・・・・孫策様がご覧になられる価値もありま すまい・・・・・・だが・・・・・・﹂ ﹁だが・・・どうした?﹂ ﹁打ち首になるかもしれないのに、覚悟を決めてやってきた勇気に 称えて及第点と言った処でしょう﹂ ﹁・・・・・・ありがたき幸せ﹂ そういうと徐晃達は少しだけ悔しそうな表情をしながら見上げてく る。 ﹁しかし・・・・・・そのような紙切れ一枚で今回の非礼が白紙と なるとは思うな・・・・・・貴様達魏は我等の英雄を傷付け、更に は土足で呉の大地に踏み入った・・・・・・それだけ許されないこ とをしたのだぞ・・・﹂ ﹁それは承知しております・・・・・・﹂ ﹁大体、それを実証する証拠が何処にあるのか?﹂ 1262 ﹁こればかりは信じて頂くしかありますまい﹂ ﹁なんだと貴様‼‼﹂ ﹁諸葛誕、文鴦﹂ ﹁﹁はっ﹂﹂ 無礼と感じ取った思春が斬りかかる前に司馬懿が何かを指示すると 二人は4つの壺を取り出した。 ﹁それはなんだ?﹂ ﹁はい、今回の暗殺に関わった者達の首であります﹂ つまりは首謀者達の首を塩漬けにしたものということだ。 ﹁この者供が今回の騒動の発端となった要因となります。どうかこ ちらもお納め下さい﹂ ﹁そのようなことだけで帳消しになるとでも思ったか下郎共が⁉ふ ざけるのも大概にしろ‼‼﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁冥琳・・・貴女らしく無いわよ・・・少し落ち着いて・・・﹂ 珍しく声を挙げて怒りを見せる冥琳に私は宥める。 ﹁一刀・・・・・・あなたはどう思うかしら?﹂ ﹁いいのか?﹂ ﹁構わないわ﹂ ﹁・・・・・・本音を言えば俺も魏に対して怒りを持っている。俺 達にとっても恩があって・・・劉孫同盟の架け橋になったライルさ んが傷付けられたんだ・・・・・・。 ここにいる霞・・・張遼と夏侯覇も同様だよ。張遼はかつて董卓軍 にいた頃にライルさんと共に戦った戦友で、夏侯覇も袁紹から救わ 1263 れた恩がある・・・・・・﹂ ﹁そう・・・・・・ならば夏侯覇よ﹂ ﹁俺・・・・・・じ・・・自分でありますか?﹂ ﹁固くならなくてもよい・・・お前は魏の夏侯一族の人間だと聞く。 どう思う?﹂ ﹁俺は・・・・・・確かにかつて魏にいました・・・・・・その魏 がどういう方針で動くのか俺は知っている・・・・・・。 だから俺がここに来たのはライルの兄貴が心配なことと、魏の使者 に真意を確かめたい為にここへ来ました﹂ 夏侯覇がそういうと私は彼の眼を見る。嘘偽りの無い真っ直ぐな眼 をしている。 ﹁そう・・・・・・﹂ ﹁孫策殿・・・・・・ライル殿のご容態は如何がか?﹂ ﹁な・・・⁉あのような無礼を働いておきながら⁉貴様達のせいで・ ・・ライルが死に掛けて﹁蓮華殿・・・少し落ち着かれよ﹂・・・ ライル⁉﹂ 私達が部屋の扉に目線を送ると、そこには海兵隊の制服を身に纏い、 左腕を包帯で安静にしながら立っていたライルの姿があった・・・・ ・・・・・・・・。 1264 第163話:3英雄の再結集︵後書き︶ 一刀と徐晃とライル。3陣営の英雄が再び揃う。ライルを傷付けら れて魏に怒りを持つ蜀と呉に曹操の関与を否定する魏。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 謁見に重たい空気が流れる中、ライルが取った行動は・・・・・・。 次回 [それぞれの意志] 英雄同士の対話が始まる。 1265 第164話:それぞれの意志︵前書き︶ 包帯を巻きつつ現れたライル。魏の使者に対する判断が下される。 1266 第164話:それぞれの意志 一刀達蜀の使者と牙刀達魏の使者が玉座で雪蓮と謁見を行なってい る。俺は暫く扉の前で様子を伺っていたが、魏に対する風当たりは かなりのもののようだ。 蓮華殿や思春はもちろんだが、つい先ほど普段は感情を見せない冥 琳殿の怒声も聞こえた。このままでは話がいつまでも平行線だと判 断した俺は衛兵に指示を出して扉を開けさせた。 ﹁蓮華殿、お気持ちは嬉しいのですが、このままではいつまで経っ ても話が進みません。ですので今は落ち着かれては如何か?﹂ ﹁むぅ・・・・・・ライルがそういうのなら・・・﹂ ﹄ 俺が落ち着かせると蓮華殿は渋々だが自分の立ち位置へと戻る。 ﹃ライル︵さん、殿︶‼⁉ ﹁久しぶりだな一刀。それに霞に露蘭﹂ ﹁ちょ⁉ライル‼毒うけたって聞いたんやけど大丈夫なん⁉﹂ ﹁そうだぜ兄貴‼あまり動くなって⁉﹂ ﹁大丈夫だ。毒気は殆ど抜けたし、左腕がまだ痺れるが時期に戻る﹂ そう聞くと一刀達は安心した表情を見せる。そこまで心配してくれ ていたことだろう。そして次は魏軍に視線を送る。 魏の使者はやはり牙刀に楽進、後の3人は初対面だが一人だけ雰囲 気が違う。恐らくこいつが司馬懿だろう。 ﹁・・・・・・ライル殿﹂ 1267 ﹁久しぶりだな・・・牙刀・・・・・・それに楽進﹂ ﹁は・・・はい‼お久しぶりです‼﹂ ﹁そっちの3人は・・・・・・﹂ ﹁そなたとは初対面となるな。私は司馬懿、字を仲達という﹂ やはりこの男が司馬懿か・・・・・・。確かに曹操殿のようなカリ スマ性と野心を感じられる。 ﹁あなたが司馬懿か・・・・・・俺がライル・L・ブレイドだ﹂ ﹁虎牢関や官渡での活躍は私も見ていた。ライル﹂ ﹁・・・・・・あの時、現場にいたのか?﹂ ﹁ふふ・・・・・・貴殿の武勇や部隊の活躍は聞いている。貴殿達 のような勇猛果敢な将兵を是非とも我が私兵部隊に加えたいものだ﹂ 俺は司馬懿の言葉に背筋が冷えるのを感じた。この悪寒の正体はこ いつから発せられる野心だ。司馬懿は先程からこちらを見通すよう な視線で何かを企んでいそうな表情で見ている。はっきりいって気 味が悪い。 ﹁ライル、どうかした?﹂ ﹁・・・いや・・・・・・何でもありません﹂ ﹁そう・・・・・・徐晃よ・・・話を元に戻すが、今回の貴様等が やったことは許されるものではない。それは分かっているな?﹂ ﹁・・・・・・はい、それは重々に承知致しております﹂ それだけ口にすると雪蓮は立ち上がり、南海覇王を抜刀すると牙刀 の喉元に突き立てた。 ﹁私は魏という国を許せそうにもない。呉の大地に踏み込んだだけ ではなく、このライルを傷付けた・・・・・・それは何があっても 1268 許されるものではない﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁この場で私は貴様等の頸を討ち取ることも出来る・・・・・・だ が・・・﹂ そういうと雪蓮は牙刀に向けていた鋒を下ろす。 ﹁ライルよ・・・﹂ ﹁はっ﹂ ﹁この者達の処遇を決めよ・・・﹂ その言葉に俺は息を飲んだ。 sir﹂ ﹁今回の一番の被害者はあなたよ・・・・・・だからあなたに決め yes る権限があるわ・・・﹂ ﹁・・・Sir そう命令され、俺はM45を手に取り、初弾を装填すると牙刀に銃 口を突き付けた。その光景に全員が息を飲んだ。 ﹁牙刀・・・・・・はっきり言って今回の一件は俺も許せそうにも ない・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁お前達は自らの意志では無いにしろ、我が主である雪蓮殿を殺そ うとした。それは絶対に許せない。だが・・・・・・﹂ ﹁だが・・・﹂ 牙刀が尋ね直すと俺はM45を外す。 ﹁今回の一件・・・・・・不問にしたい﹂ 1269 不問という言葉に全員が驚愕した。あれだけの事をされたのに不問 なのだ。当然だろう。だが一人だけ違う反応を示したものがいた。 雪蓮だ。 ︵やっぱり・・・・・・私の勘通りの判断ね︶ ︵流石は雪蓮だな・・・俺の考えを読んでいたか・・・︶ 俺達は互いの考えを読み合い、軽く笑みを浮かべる。それ等を確認 した俺は再び牙刀に振り返る。 ﹁ライル殿・・・なぜ我等を不問にされるか?・・・・・・我々は 貴公を殺害しようとした・・・・・・それをなぜ見逃すと申すのか・ ・・理由を尋ねたい・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・簡単だ。・・・・・・雪蓮は生きている・・・彼女 を守れるのなら俺はどんな死地にでも飛び込む覚悟があるし、彼女 を守るというのは俺の誇りでもある﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁それに・・・・・・﹂ ﹁それに・・・・・・なにか?﹂ ﹁あんたの帰りを待っている奴等がいる・・・・・・俺の無事を待 ってくれていた人達のようにな・・・・・・﹂ そう言って俺は後ろを振り向く。そこには俺らしい判断と感じ、軽 く笑ってみせるアレックスや冥琳殿。特に雪蓮は守ると言われて本 当に嬉しそうだった。その笑みを見るだけで俺も自然と嬉しくなり、 軽く笑うとそれに続いて一刀達も笑う。 ﹁ふふ・・・やっぱりライルさんらしいですね﹂ ﹁ほんまやな♪やけど安心したで・・・・・・﹂ 1270 ﹁そう言うな一刀、霞﹂ ﹁でもやっぱ兄貴は兄貴だぜ﹂ ﹁これが・・・・・・一刀君と同じ英雄の器・・・﹂ 変わらない俺に安堵する一刀達。それを見ていた雪蓮も笑いながら 牙刀に話しかけてくる。今度は先程までの怒気は感じられない。 ﹁はいはい、じゃあ結論を言うわ。徐晃、今回の件に限りあなた達 魏のやったことは不問にするわ﹂ ﹁姉様、本当にいいのですか?﹂ ﹁私は構わないわ。それに一番の被害者のライルがそう言うんだも の。それを覆して首を刎ねるだなんて私は人でなしじゃないわよ﹂ ﹁蓮華様、そこが雪蓮のいいところです﹂ ﹁・・・確かにそうね﹂ ﹁ありがと♪冥琳♪蓮華♪じゃあ今日はこれで解散とするわね。使 者達にはそれぞれ部屋を用意させるから今晩は泊まって行きなさい﹂ 雪蓮の指示で中にいた衛兵数人はすぐに指示通り動き出す。 そしてその後に一刀達はそれぞれの陣営に用意された客室まで案内 され、時間が来たら俺と対談することとなる。 そして、俺は雪蓮と共に自室へと戻った。 ﹁ふふっ♪やっぱりライルは優しいわね♪﹂ ﹁何がだ?﹂ 1271 今の状態は椅子に座る俺の膝に雪蓮が座っている状態だ。その状態 で俺は右腕を彼女に包み込み、彼女もそれを掴む。 ﹁だが、雪蓮も徐晃達を殺す気なんてなかったんだろ?﹂ ﹁どうして?﹂ ﹁まぁ、簡単だ。君からは怒気は確かに感じられていたが殺気は全 く感じられなかった﹂ ﹁あら?もしかしてライルの勘違いだったのかもしれないわよ♪そ れに私がただ隠してただけかもしれないし﹂ ﹁純粋な君は隠し事はどちらかと言えば下手な方だからな﹂ ﹁ブーブー⁉どう意味よそれ⁉﹂ ﹁はははっ♪怒るなって・・・ちょっとからかいたくなっただけさ﹂ ﹁もぅ・・・・・・ふふっ♪﹂ ﹁それに・・・・・・君は俺を信じてくれていたからな﹂ ﹁当たり前よ♪未来の旦那様♪﹂ ﹁旦那様って・・・・・・気が早いな﹂ ﹁でも満更じゃないでしょ?﹂ ﹁ま・・・まあな・・・・・・﹂ ﹁もぅ♪相変わらず可愛いんだから♪﹂ そういうと雪蓮は俺に振り向き、俺の顔を豊満な胸に押し付けて来 た。 ﹁むぶ・・・・・・し・・・雪蓮?﹂ ﹁ほれほれ∼♪﹂ ﹁ぶはっ⁉・・・はぁ・・・・・・今はイチャついてる時間帯じゃ ないだろ?それにもうすぐしたら一刀達が来るんだ﹂ ﹁ええ∼⁉もっとライルとイチャイチャしたい∼⁉﹂ ﹁分かった分かった。だったら今は・・・﹂ 1272 そういうと俺は雪蓮にキスをする。今度は前のフレンチキスではな く唇が重なるだけのものだが、彼女から甘い香りと味が伝わって来 る。 そして暫くしてから唇を離した。 ﹁今はこれで我慢してくれないか?﹂ ﹁ブー・・・・・・まあいいわ♪今はこれで我慢してあげる♪だけ ど今晩は寝かさないんだから♪﹂ ﹁・・・・・・お手柔らかにな﹂ ﹁知らな∼い♪﹂ そう言いながら雪蓮は手を軽く振りながら部屋を退出していく。ま ぁ・・・嬉しかったから良しとしよう。すると暫くしてから扉の前 にいた衛兵が一刀達が訪ねて来たと報告して来て、入室許可を出す と一刀達が入ってきた・・・・・・・・・・・・。 1273 第164話:それぞれの意志︵後書き︶ ライルとの面会。最初は一刀達だ。ライルを兄て慕う一刀と露蘭に 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 戦友の霞。その光景に飴里は懐かしさを感じる。 次回 [蜀との面会] ライルに新たな義弟が出来る。 1274 第165話:蜀との面会︵前書き︶ 面会序盤の蜀陣営との細やかな対話が始まる。 1275 第165話:蜀との面会 謁見は魏の不問ということで解散となった。一部の人間は納得して いなかったが、それらは後で説得するとしよう。 今の俺は椅子にコーヒーを飲みながら座り、それぞれ面会に対応す る為に待機している。最初は一刀達でその次が諸葛誕と文鴦、次が 司馬懿で最後は牙刀と楽進という順番だ。 司馬懿とその側近二人を別々にしたのは俺の興味からだ。正史にて 毌丘倹の乱 と 諸葛誕の乱 である。 二人は最初は魏に組みしていたが、司馬一族のやり方に反旗を翻し 呉に亡命。有名な 司馬懿も勿論だが実質上の千里の従兄弟である諸葛誕と星に匹敵す るとされる武勇の持ち主である文鴦にも会って見たかった。 俺がコーヒーを口にしていると扉がノックされ、向こう側から声が して来た。 ﹁ライル将軍。北郷様、張遼様、夏侯覇様、徐庶様がお見えになら れました﹂ ﹁分かった。通してくれ﹂ ﹁御意﹂ 入室許可を出すと扉が開けられ、そこから一刀達が入室してきた。 俺はその場で立ち上がり、4人に敬礼して出迎える。 ﹁よく来た、座ってくれ﹂ ﹁すみませんライルさん。忙しい時に・・・﹂ ﹁気にするな。一応だが俺は怪我人だからな。仕事は完治してから 1276 だよ﹂ ﹁ほんまに・・・心配して損したわぁ・・・・・・意識もどらんっ て聞いて心配したんやで・・・うち等は・・・﹂ ﹁心配掛けてすまなかったな・・・﹂ ﹁まぁ・・・兄貴が元気そうで良かったぜ﹂ ﹁お前もすまなかったな・・・・・・それよりも、彼が徐庶か?﹂ ﹁はい、性は徐、名は庶。字は元直。今は一刀君の親衛隊で軍師と 武将をしています﹂ 徐庶と名乗る青年が丁寧に名乗って頭を下げる。この青年が正史に て劉備に諸葛亮を紹介した後の魏の軍師か・・・・・・。 しかしこの世界の徐庶は蜀に所属しているのか・・・・・・。 群狼隊 大隊長のライル・L・ブレ ﹁噂は聞いてるよ。知っているだろうが俺も自己紹介しておくよ。 孫呉海兵隊司令官兼第0大隊 イド中佐だ﹂ 所属と姓名、階級を名乗ると俺は彼に手を差し伸べて握手を交わす。 ﹁しかし君達も忙しかっただろうな。蜀の平定に魏と五胡への警戒。 更には南蛮・・・﹂ ﹁ちょい待ち⁉何でライルがそれ知ってとるんや⁉﹂ ﹁少し考えたら分かることだよ﹂ 本当は有名な話なんだがな・・・。恐らく一刀も同じ考えだろうが、 ここは敢えて伏せておく。 ﹁それよりも何か飲むか?﹂ ﹁ほんならうちは﹁言っておくが酒はないぞ﹂えぇええ∼⁉﹂ ﹁霞・・・・・・ライルさんは酒を飲めないの知ってるだろ?﹂ 1277 ﹁おぉ⁉せやったな♪﹂ ﹁ふっ・・・・・・コーヒーを入れるから少しだけ待ってくれ﹂ そういうと俺はコーヒーカップを人数分用意してウォータードリッ プで摘出したケニアコーヒーを注ぐ。 ケニアコーヒーはフルーツのような爽やかな風味が特徴のコーヒー で、全体的に強い風味でバランスが良い。 その為にヨーロッパではタンザニア産とともに一般的な銘柄とされ ている。 コースターの上にカップを置き、砂糖とミルクを置いて4人の前に おいた。 ﹁ライル殿。これは何なんですか?﹂ ﹁こいつはコーヒーと言ってな・・・俺の世界でかなり普及した飲 み物だよ﹂ ﹁つまりは・・・天界の飲み物ですか?﹂ ﹁せやで、せやけどこのまま飲んだら苦いんやよなぁ∼。やからこ れ入れるんよ﹂ そういいながら霞は慣れた手付きで砂糖とミルクを入れる。彼女は 結構な甘党であり、角砂糖も3つ投入している。本当に激甘だ。 ﹁一刀はどうする?﹂ ﹁ブラックがいいです﹂ ﹁了解だ。露蘭と徐庶君の分は任せてくれ﹂ ﹁任せたぜ﹂ ﹁お手数をお掛けします﹂ そういいながら二人の分に砂糖とミルクをいれて渡す。二人はすぐ 1278 に口に含めるが、熱さで舌をやけどしそうだったようだ。 ﹁それで、みんなは元気か?﹂ ﹁はい、桃香や愛紗達も変わらず元気です。だけどみんなライルさ んのことを心配してましたよ﹂ ﹁・・・そんなにか?﹂ ﹁そうだぜ。なあ霞﹂ ﹁せやせや‼・・・そうや、みんなから寄せ書き預かってるんよ﹂ ﹁寄せ書き?﹂ ﹁はい、こちらがそれになります﹂ 徐庶は懐から一枚の色紙を取り出し、俺に手渡されてくれた。中に 書かれている内容は誰が書いたのか直ぐに分かってしまう。 それを受け取って俺は非常に嬉しくなった。俺の為にここまでして くれているのだ。嬉しくならない訳がない。 ﹁・・・ありがとう・・・・・・嬉しいよ。俺なんかの為にこんな ことをしてくれるだなんて・・・﹂ ﹁そんな、ライルさんがしてくれたことに比べると些細なものです よ﹂ ﹁あぁ、兄貴はみんなの兄貴だからな﹂ ﹁にゃはは∼♪色男はんはモテモテやなぁ∼♪﹂ ﹁・・・・・・やっぱり凄い人だ﹂ ﹁徐庶君?﹂ ﹁ライル殿、俺と一刀君、それに露蘭は共に義兄弟の契りを交わし、 飴里 を預けたい﹂ 互いに真名を託しあいました。話を聞く限りでも二人の兄貴分だと 分かります。だからどうか俺の真名 そういうと徐庶は俺の眼を見てくる。その眼は真っ直ぐなものであ 1279 り、自らの意志であると物語っている。 それを悟った俺は笑いながら話しかける。 ﹁ふぅ・・・・・・ライル・ローガン・ブレイド。確かに君の真名 を預かった﹂ そういうと俺はコーヒーを掲げて一気に飲み干す。ここにまた、俺 の義兄弟が誕生した瞬間であった・・・・・・。 1280 第165話:蜀との面会︵後書き︶ ライルは蜀との面会を終えて次の面会を始める。次は司馬懿配下の 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 諸葛誕と文鴦。二人の将にライルはどう思うか? 次回 [私兵の感情] 次代を担う将とライルの対話が始まる。 1281 第166話:私兵の感情︵前書き︶ 2組目の面会。次は諸葛誕と文鴦。 1282 第166話:私兵の感情 約1時間の対談を終えて一刀達は執務室を退出する。みんなが元気 なこと。 蜀の内政が順調に回復していっていること。 黄忠殿と厳顔殿が俺に会いたがっていること。 更には刀瑠が少しずつだが一人で歩き出して喋られるようになって 来ていると聞かされた。 変わらない蜀の面々を確認出来た上に寄せ書きというプレゼント。 それを額に入れて壁に飾ってある。それが終了して別のカップ二人 分に今度はキリマンジャロを注ぐ。 正式名称はタンザニアコーヒーで'野性味あふれる'と評されるこ とが多い強い酸味とコクが特長だ。 カップに注いで角砂糖とミルクを用意し終わった直後に二人が来た と言う報告を受け、椅子に座ると入室許可を出した。 衛兵に付き添われて入ってきた黒髪のムーヴィングマッシュという 髪型に千里の服装に似た白主体の格好をした青年に、ブラウンのヨ ーロピアンルーズリーゼントに赤色の甲冑を身につけた青年だ。 二人は入室して直ぐに拱手の礼をしたので、俺もその場で立ち上が って二人に対して答礼をする。 ﹁ライル殿、お初にお眼に掛かります。自分は司馬懿様の下で軍師 をしております姓は諸葛、名は誕。字を公休と申します﹂ ﹁同じく、司馬懿様配下で武将を務める姓は文、名は鴦。字を次騫 1283 といいます﹂ 群狼隊 大隊長を務めるライル・ ﹁君達が司馬懿配下の優将か・・・。よく来たな文鴦に諸葛誕。俺 が孫呉海兵隊司令官兼第0大隊 L・ブレイド中佐だ。まあ、まずは座ってくれ﹂ そう言われて文鴦と諸葛誕は少しだけ緊張しながら備え付けられた 椅子に着席する。その直後に二人は室内を見渡していた。 ﹁やっぱり珍しいか?﹂ ﹁い・・・いえ⁉これは失礼した⁉﹂ ﹁失礼しました・・・﹂ ﹁ふっ・・・気にするな。確かにこの国では珍しい物が多いからな﹂ 2人の緊張を若干だが和らげ、コーヒーを口にする。2人も同じよ うにコーヒーを口にするが熱い上に飲んだこともないコーヒーの苦 味に顔を少しだけ歪ませてしまった。 ﹁はははは、慌てないでゆっくり飲むんだ。甘くしたかったらこれ を一つ入れてかき混ぜな﹂ ﹁﹁は・・・はい﹂﹂ そう言われて二人は角砂糖一つとミルクを少しだけ入れてよくかき 混ぜてから口にする。今度は大丈夫そうだ。 ﹁で・・・俺に何か聞きたいことでもあったのではないか?﹂ ﹁はい・・・・・・ですがその前に・・・﹂ ﹁?﹂ ﹁此度の戦の件・・・実に申し訳ありませんでした﹂ いきなり頭を下げて謝罪をする文鴦に諸葛誕。 1284 ﹁我ら魏に組みしていた一部の者共が報酬に目が眩み、あまつさえ 暗殺という手段を用いてあなたや孫策殿を暗殺しようとした・・・ これは許される筈がありますまい・・・・・・ ﹂ ﹁いくら不問となったとはいえ、魏はあなたに対して無礼を働いた・ ・・・・・本当に申し訳ない・・・ライル殿﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ 俺は2人の申し訳無さに対して何か申し訳無さが残る。しかしこの ままでは話が進まないので俺は反対に話しかけることにした。 ﹁・・・過ぎたことだ。気にするな﹂ ﹁し・・・しかし⁉﹂ ﹁そんな気に病む必要はない。俺も生きてるし、雪蓮・・・・・・ 孫策殿だって無事だったんだ。忘れろとは言わないがな・・・﹂ ﹁﹁・・・・・・・・・﹂﹂ ﹁それよりも今は対談の時間だ。政治や軍事は無しにして腹を割っ て話さないか?﹂ ﹁いえ・・・そ・・・・・・その・・・な・何を話したらいいのか・ ・・﹂ ﹁よし、じゃあ俺から質問だ・・・諸葛誕﹂ ﹁はっ・・・はっ‼﹂ ﹁君はたしか千里の従兄弟だったよな?﹂ ﹁はい﹂ ﹁ということは朱里や夏雅里とも?﹂ ﹁2人をご存知なのですか?﹂ ﹁まぁな・・・それよりも3人は昔からあんな感じなのか?﹂ ﹁は・・・はい。あの2人は昔からよく噛む癖がありまして、水鏡 私塾でも知らない人間はいなかった程です。千里に関しても・・・﹂ 1285 ・・・・・・試しに聞いてみたのだが、何と無く想像がつく。そこ に雛里も加わるのだから癒し系の勢揃いで勉強が進まない自身があ る。 ﹁ということは君も水鏡私塾出身か?﹂ ﹁はい。私と千里、それに徐庶も同じ時期に入った同期です﹂ ﹁成る程な・・・よし、次は文鴦だ﹂ ﹁はっ・・・はい‼﹂ 甲冑の音を立てながら背筋を伸ばして綺麗な姿勢に直す文鴦。その 姿に俺は思わず吹いてしまった。 ﹁ふふ・・・すまないな。だからそう硬くなる必要はない﹂ ﹁す・・・すみません・・・・・・﹂ ﹁まぁいいさ。それよりも君は何でも並外れた武勇を秘めていると 聞いた。武器は何を使うのかな?﹂ ﹁は・・・一応は・・・・・・槍です﹂ ﹁槍か・・・俺も短槍を使うぞ。といってもつい最近からだがな﹂ ﹁そうなのですか?﹂ ﹁ああ、是非とも武勇を競いたいな﹂ そんな話を1時間続け、コーヒーを飲み干した時間には面会時間が しゅんり 終了となった。文鴦と諸葛誕は充てがわれた部屋に戻りながら何か を話していた。 はやて ﹁・・・・・・なぁ・・・俊里﹂ ﹁・・・何だ隼照﹂ ﹁あの方・・・どう思った?﹂ ﹁・・・・・・噂以上の御仁だった。自らの地位や名声に溺れず、 1286 誇りや信念を貫き通す﹂ ﹁あと・・・敵である我等にも垣根無く接し、我等の無礼も簡単に 許してくれた。自分があんな酷い目にあったっていうのに・・・﹂ 天界の英雄 だ﹂ ﹁知勇だけではなく、五常全てを兼ね備えている・・・・・・まさ に ﹁なぁ・・・もし最初に俺たちがあの人に出会っていたら﹁それは 言うな俊里﹂・・・﹂ ﹁我等は魏に忠誠を近い、司馬懿様の配下に加わった・・・昔のこ となんか思いたくもない﹂ ﹁・・・諸葛一族の誇りと魏の愛国心って奴か?﹂ ﹁・・・そうだ﹂ 公休に文鴦 次騫。後に二人は愛国心を持って行動するこ 小声で話しながら二人は客室へと戻っていった。 諸葛誕 ととなるが、まだ誰も予測出来なかった・・・・・・・・・。 1287 第166話:私兵の感情︵後書き︶ 遂に司馬懿との面会だ。自らの野心の為に動く司馬懿に信念や大事 な人の為に戦うライル。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 知勇で優れる2人の天才は何を悟るのか・・・・・・。 次回 [司馬懿] 司馬懿が不審な影を残す。 1288 第167話:司馬懿︵前書き︶ ライルと司馬懿。2人の英傑が対面する。 1289 第167話:司馬懿 次がいよいよ司馬懿との対談だ。正史にて当時の大将軍であった曹 爽を殺害し、形骸と成り下がった魏を廃止し、晋の基礎を築き上げ た戦略家。 かの諸葛亮も遂に勝つことが出来なかった人物でもある上に、曹操 も常に警戒していたらしい。 一先ずブルーマウンテンをカップに注ぎ、待つことにした。 卓越した香気を持ち、調和の取れた味わい、軽い口当りと滑らかな 咽越しが特徴で、コーヒーの最上位と有名である。 入れ終わって口にしていると司馬懿が訪ねて来た。 ﹁ほぅ・・・ここが英雄殿の自室か・・・﹂ 孟徳様配下の性は司馬、名は懿。 司馬懿は入室するや否や室内を興味深く見渡す。一回り見渡すと俺 に拱手の礼をして挨拶する。 ﹁少しだけ遅れましたな。私は曹 字を仲達と申す﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁どうかなさったか?﹂ ﹁・・・いや・・・・・・何でもない﹂ 何だか知らないがこの男に違和感が感じられる。俺はジェスチャー で席を指し、それに気が付いて司馬懿も反対側の席に座る。 1290 ﹁これは・・・あの2人が話していた天界の飲み物ですかな?﹂ ﹁そうだ、そこにある角砂糖一つと牛乳を少しだけ入れて掻き混ぜ るんだ。そのままでも飲めるが、苦かったらそれらを入れるんだ﹂ そう説明すると司馬懿はまずブラックで飲んでみた。苦味を感じる 感覚は無いようで、平喘としている。 ﹁ふむ・・・多少は苦味を感じるが・・・口当たりがよいな﹂ ﹁珍しいな・・・こっち側の人間は初めて飲むと甘さを求めるんだ がな・・・﹂ ﹁そういうものか・・・。まぁ良い﹂ カップをコースターに置き、司馬懿は再び俺を見通すような視線で こちらを見てくる。 ﹁何か?﹂ ﹁うむ・・・良い眼をしているな。それも左右で色が違うというの がな・・・﹂ 俺のオッドアイを見ていたのか・・・。俺の瞳は右が琥珀色で左が 赤というかなり変わった色合いをしている。琥珀色は俺の血筋がド イツ系であるという名残だが、そこに非常に稀な赤とオッドアイと いう組み合わせだ。 ﹁しかし貴殿の評判は本当に素晴らしいものだな。噂は2年前より 耳に入っていたぞ﹂ ﹁虎牢関か?﹂ ﹁うむ、民の為に戦う天の軍隊。主や国家の為に武を振るう誇り高 き海兵隊。特に有能な将兵全てを纏める有能な将軍である貴殿の噂 は逸脱している﹂ 1291 ﹁・・・なんとも誇張された評判だな﹂ ﹁その謙虚さも素晴らしい。本当に私の配下に是非とも加えたいも のだ﹂ ﹁・・・・・・何が言いたい?﹂ ﹁さぁ・・・意味が分からないな﹂ ﹁とぼけるな。あんたは先程から俺の反応を見ながら話している。 まるで俺の弱点を探すようにな・・・﹂ ﹁ふふ・・・・・・流石はライル殿だな・・・遠回しの対話は通用 しないか・・・・・・。なら貴殿に聞きたいことがある﹂ ﹁・・・なんだ?﹂ ﹁貴殿はこの乱世をどう思うか?﹂ あからさまに俺を試している。だが質問に答えなければ対談の意味 が無い。悟られない程度に答えるとしよう。 ﹁・・・・・・分からない﹂ ﹁分からない?﹂ ﹁あぁ、分からない。戦局なんて常に変化するんだ。歴史に残りそ うな戦術でも戦局が変わらない場合もあるし、一本の弓矢が戦局を 激変させることだってある。 局地的な戦闘でそうなのに、乱世の先なんて誰にも分かりはしない﹂ ﹁ならば貴殿は何の為に戦うのだ?﹂ ﹁・・・俺が戦う理由は祖国や主、仲間、友人、更には民や大事な 物の為に戦う・・・・・・。それだけだ﹂ ﹁・・・・・・﹂ 戦う理由を口にすると司馬懿は黙り込む。本当は雪蓮の為にも戦う という理由もあるが、これを口にする訳にはいかないだろう。 すると司馬懿はコーヒーを飲み干して、机に両肘を付いて手を重ね ながら喋り出した。 1292 ﹁ふむ・・・・・・やはりなかなかの決意を秘めているな・・・﹂ ﹁・・・なんのつもりだ?﹂ ﹁ライル殿、この国を真に思うのならば、私の私兵部隊に来ないか ?﹂ ・・・やはり勧誘か・・・。司馬懿の私兵部隊はかなりの力を秘め ているとの噂もある上に謎も多い。しかし何かしらの真意を掴める かも知れないから、話を聞いてみることにした。 ﹁この国は今や3つの陣営で別れている。魏、呉、そして蜀。それ ぞれが己の理想や野心の為に戦っている。しかし指導者も人間だ。 指導者が死ねば再び内乱が起き、やがては疲弊していく﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁それを防ぐには我等魏がこの国を統一し、力をもって統治するの がいい。だから貴殿も私の下に来い。相応の地位も用意する﹂ ﹁・・・・・・・・・断る﹂ ﹁ほぅ・・・・・・﹂ ﹁俺は海兵隊だ。忠誠を誓ったからには心身全てを祖国に捧げたか ら、俺達がこの呉を裏切ることなど毛頭ない﹂ 司馬懿は確かに有能な男だ。高いカリスマ性で惹きつける能力もあ るだろう。だが俺は孫呉や雪蓮達の為に戦うと誓った。だから俺が 司馬懿に組みするなどありはしない。 ﹁ふむ・・・・・・まあ良い。今回は諦めるとしよう﹂ ﹁・・・・・・意外に話が解るんだな﹂ ﹁今回の私はあくまでも使者としてここに来ただけに過ぎん。無理 な引き抜きは今の状況で行なえば唯では済まんだろう﹂ 1293 そう言うと司馬懿は立ち上がり、扉にむけて歩き出す。 ﹁すまなかったな、貴重な時間を割いてくれて﹂ ﹁ああ・・・・・・﹂ 俺が軽く敬礼をすると司馬懿も軽く頭を下げてから退出していった。 仲達・・・・・・奴には充分警戒した方がいいだろう・・・ それを見送ると俺は大きく息を吐きながら椅子にもたれ掛かる。 司馬懿 俺はそう思いながら少しだけ冷めたコーヒーを口にする・・・・・・ 。 1294 第167話:司馬懿︵後書き︶ 最後の面会はライバルの牙刀と副官の楽進。互いに武を認め合う武 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 勇を秘めた英雄達が新たな約束を交わす。 次回 [銀狼と龍] 銀狼と龍が再び合わさる。 1295 第168話:銀狼と龍︵前書き︶ ライルと牙刀と凪。互いの心を通わせる。 1296 第168話:銀狼と龍 気疲れしそうだった司馬懿との対談を終わらせ、俺は最後の面会者 である牙刀と楽進の到着に備えていた。 とはいっても新しくコーヒーを用意するだけなのでカップにコナコ ーヒーを注ぐ。キリマンジャロに続くハワイ産の高級品であるコナ コーヒーは嫌味のない酸味を持ち、ブレンドに用いると良質な酸味 が与えられる。 取り敢えず茶菓子としてクッキーも用意し終わると扉が数回叩かれ た。 ﹁ライル殿、失礼する﹂ ﹁入れ﹂ 入って来たのは牙刀と隣を歩く楽進だ。牙刀は平常心を保っている が楽進は室内をキョロキョロと伺う。 ﹁凪、落ち着け﹂ ﹁えっ・・・は・・・・・・はい⁉すみません隊長‼﹂ 注意された楽進は犬みたいにシュンとなってしまう。俺はその光景 に思わず微笑んでしまっていた。 ﹁失礼したライル殿﹂ ﹁いや、構わない。それにしても二人は仲がいいんだな?まるで恋 人だぞ﹂ 1297 ﹁なっ⁉ら・・・ライル殿⁉わ・・・私が隊長の・・・こ・・・・・ ・ここここ恋人だなんて⁉﹂ ﹁落ち着け﹂ 俺が少しだけからかうと楽進は面白い位に顔を真っ赤にさせながら 俯いてしまった。そんな反応に笑いながら俺は2人に座るようにジ ェスチャーで伝えた。 理解した2人はすぐに椅子に腰掛け、俺も座りながらカップを手に とった。 ﹁こうして話をするのは反袁紹連合時以来か?﹂ ﹁そうなる・・・あの時の猛馬は元気にしておるか?﹂ ﹁あぁ、変わらず元気だ。相変わらずのじゃじゃ馬だがな・・・﹂ ﹁その様子だと元気みたいだな﹂ スレイプニルの話で盛り上がる俺と牙刀。だが彼はすぐに深刻そう な表情をしながらこちらを見てくる。 ﹁・・・・・・ライル殿・・・この度の一件・・・まことに申し訳 なかった﹂ ﹁隊長・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁私は・・・貴殿とは正々堂々と一騎打ちで互いの武を競いたかっ た。しかし・・・﹂ 牙刀は握り締めた両手を更に力を込めている。 ﹁しかし・・・あのような卑劣な者共が貴殿を殺そうとし・・・あ まつさえ魏呉との聖戦を汚してしまった・・・・・・﹂ ﹁隊長・・・・・・﹂ 1298 ﹁ライル殿は我らを不問にされたが・・・貴殿の要望あらば・・・ 私の頸を刎ねて頂きたい﹂ 牙刀のいきなりの発言に楽進は驚愕するが、俺は冷静さを保って話 を聞き続ける。 ﹁貴殿は私にとって敵味方を超えた存在・・・・・・英雄と称され る貴殿に刎ねられるのならば本望だ・・・だからどうか謝礼を込め てこの頸を﹁寝ぼけるな徐晃﹂・・・﹂ 流石にこれ以上は聞いてられない。俺は怒気を込めつつ牙刀を睨み つける。 ﹁玉座でも雪蓮に言われた筈だ。手紙や謀反人の頸程度で今回の一 件が丸く収まることなど無いと・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁今更お前の頸を刎ねた程度で俺の魏に対する印象が変わる訳でも ないし、何よりも腑抜けとなったお前の頸に何の価値も無い﹂ ﹁ライル殿・・・﹂ ﹁それに・・・・・・俺も言った筈だ。魏にはお前の帰りを待って いる奴等がいるとな﹂ ﹁私の・・・﹂ ﹁曹操に夏侯惇、夏侯淵、許褚、典韋、于禁に李典。幾多もの仲間 がお前の帰りを待っているんだ。それにお前の隣にもいるだろ?﹂ そう言って牙刀は隣にいる楽進を見る。その表情は心配そうな表情 で、この表情には見覚えがある。 俺が意識を失っていた間に心配してくれていた雪蓮の哀しそうな顔 だ。その表情を見た牙刀は深く息を吸い込み、それを吐き出した。 1299 ﹁・・・すまなかったな。ライル殿﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁私はどうやら弱気になっていたようだ。このようなことをしても ただ逃げているだけ・・・・・・。そして何よりも曹操殿達の気持 ちを無下にする処だった・・・﹂ ﹁・・・・・・そうだな﹂ ﹁貴殿の言葉で改めて思い知らされた・・・ならば私の武は主達の 為に振るい・・・必ずや次の闘いで貴殿に勝ってみせよう﹂ そういいながら俺を見てくる牙刀。その眼には闘志が蘇っており、 決意に満ちた素晴らしいものとなっている。 俺は口元をニヤリとさせながら返答する。 ﹁・・・中々いい眼をしている。さっきまでとは大違いだ。なぁ楽 進?﹂ ﹁・・・はい。先程までの隊長は隊長では無かったですが、今は私 が知っている隊長その人です﹂ ﹁すまなかったな凪﹂ ﹁いえ・・・・・・それよりライル様﹂ ﹁何だ?﹂ ﹁私の真名は凪といいます﹂ ﹁・・・・・・いきなりだな。どうした?﹂ ﹁ライル様のお言葉・・・私も感激しました。武人としても将とし ても・・・私はあなたを尊敬しております。ですのでどうか私の真 名をお受け取り下さい﹂ 自身の真名である凪を俺に預けようとする。預かってくれないので はないかという不安が少しだけ混ざった表情に可愛いと思ったが、 俺は立ち上がって踵を鳴らして敬礼をする。 1300 ﹁凪・・・・・・確かにその真名を預かった﹂ そういいながら俺達は時間が許す限り雑談を楽しんだ。次に会う時 には互いに敵同士。 どちらかが命を落とすかもしれない。 だが今は楽しむとしよう。2人の友と共に・・・・・・・・・。 1301 第168話:銀狼と龍︵後書き︶ ライルと牙刀達が対談をしているその頃、別の場所でもう一つの対 談が行なわれていた。露蘭と文鴦。互いに認識がある2人はどうい 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re う話をするのか・・・。 次回 [騎士] 2人の騎士が対峙する。 1302 第169話:騎士︵前書き︶ 露蘭と隼照。2人の騎士は互いの気持ちをぶつけ合う。 1303 第169話:騎士 ライルの兄貴が無事に目を覚ましてくれて安心したぜ・・・・・・。 魏からも使者として牙刀さんや司馬懿、後は諸葛誕達が来てたって いうのは驚いたけど、華琳はやっぱり暗殺を指示してないってこと も分かった。 兄貴と対談した後に俺達は一旦客室に戻って、ある程度の行動許可 が出て来て俺は食堂で腹ごしらえする為に向かった。 ﹁いや∼♪兄貴が無事で本当によかったぜ♪﹂ ﹁全く・・・相変わらず人騒がせなんやからな・・・ライルは・・・ ﹂ ﹁そう言うなって霞、生きてたんだからよしってしようぜ♪﹂ 兄貴の話をしながら俺と霞は建業城の食堂へと向かう。案内してく れてる衛兵は苦笑いしながも俺達2人を案内してくれる。 歩いていると廊下の向こう側から何やらいい匂いがしてきた。 ﹁おっ♪この匂いは麻婆豆腐じゃないか?﹂ ﹁ん∼・・・せやな﹂ ﹁そんじゃ‼早速いこう・・・ぜ・・・・・・﹂ ﹁なんや露蘭、どないかしよったんか?﹂ 霞が俺に話し掛けてきたけど、今はそれどころじゃない。すぐ前の 廊下に赤い甲冑を身につけて壁にもたれ掛かっている魏の使者の1 人がいやがった。しかも俺が知ってる奴と来やがった・・・。 1304 ﹁・・・隼照﹂ 次騫。俺がかつて魏にいた頃、俺と同じく ﹁・・・ああ、久しぶりだね露蘭﹂ 目の前にいたのは文鴦 って呼ばれてる魏の武将だ。 甲冑を身につけて俺が白騎士って呼ばれてるようにその容姿から 赤騎士 俺と隼照は暫く沈黙した後に気になった霞が間に入ってくる。 ﹁な・・・なぁ・・・・・・露蘭﹂ ﹁・・・悪い霞・・・・・・すまないけど先に行っててくれないか ?﹂ ﹁え?・・・・・・う・・・うん・・・﹂ それだけ言うと霞は衛兵に案内されながら食堂へ先に向かう。いま ここにいるのは俺と隼照、後は隼照の案内をしてたと思う槍を手に した衛兵数人だ。 ﹁・・・何年ぶりかな?﹂ ﹁・・・・・・3年ぶりだ﹂ ﹁・・・少しだけ話さないか?司馬懿様には許可を頂いている﹂ 隼照からの提案に俺は暫く考えてから小さく頷き、その場から動き 出す。向かった先は中庭であり、そのすぐそばの木の前に立ち止ま ると俺達は対峙する。 ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁・・・あれからどうしてた?﹂ ﹁・・・2年前までずっと傭兵をしてた﹂ ﹁君がいきなり魏を抜けて大変だったよ。夏侯惇様は追い掛けるつ 1305 もりだったし、何よりも徐晃将軍は悩んでた﹂ ﹁・・・すまないな﹂ ﹁・・・なぁ露蘭﹂ ﹁・・・なんだよ?﹂ 魏への帰従 。だが今さら魏に戻ったって周り ﹁今からでも遅くない。だから悪いことは言わない。魏に戻って来 ないか?﹂ 隼照からの提案は が黙っていないだろうし、今の生活も気に入っている。 ﹁曹操様には俺からも一緒に頭を下げて頼む。だから戻って来てく れ・・・お前の力が必要なんだ﹂ ﹁・・・・・・・・・悪い・・・隼照。それは出来ない﹂ ﹁・・・なんでだ?﹂ ﹁俺は・・・確かに魏にはいたけど・・・今は蜀の将だ・・・今さ ら魏に帰ることなんて・・・﹂ ﹁だけど・・・俺は君の力は蜀ではなく魏で真価を発揮すると思っ てる・・・君はこのまま才能を埋めさせるつもりなのか?﹂ ﹁・・・俺の剣や盾は・・・ライルの兄貴がくれて・・・・・・蜀 のみんなの為に戦うきっかけになったんだ・・・・・・だから俺は・ ・・﹂ そういいながら俺は中庭から見える蒼天を見上げ、暫くしてから再 び隼照を見る。 ﹁だから俺は・・・蜀の為に武を振るう‼﹂ ﹁・・・・・・分からない﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁分からない‼君は魏に仕える夏侯一族の一員‼魏に従う義務があ るのになぜ⁉﹂ 1306 ﹁・・・・・・俺は・・・そんな呪縛に縛られたくはない・・・﹂ ﹁君はまた運命から逃げるのか⁉郭淮の時のように﹁黙れ‼﹂なっ ⁉﹂ 郭淮という名前を口にした瞬間、俺は声を上げながら隼照の甲冑の 一部を掴み、睨みつける。 ﹁・・・その名前を口にするな・・・・・・でないと・・・殺す‼﹂ ﹁だがこのままではまた君は誤ちを繰り返すだけだ‼俺は君を救い たい‼だから﹁うるさい‼﹂がっ⁉﹂ 俺は隼照を力強く突き飛ばし、隼照はそのまま壁にぶつかる。 ﹁・・・お前に何が分かるんだよ・・・あんな事を味わった俺の気 持ちが・・・・・・﹂ ﹁・・・露蘭・・・﹂ ﹁もうあんな思い・・・味わいたくない・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・ごめん・・・﹂ 一言謝ると俺はそのまま食堂へは戻らず、充てがわれた客室へと向 かう。 部屋に帰ると様子がおかしいと感じ取ったカズっちと飴里に頼んで 1人にさせてもらい、部屋に俺1人になると寝台に座り込む。 ﹁・・・・・・・・・遥・・・・・・・・・﹂ 1307 第169話:騎士︵後書き︶ ライルが目覚めたのには2人の治療があった。五斗米道の使い手で 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re ある神医と華蓮。2人は互いの力を合わせて治療に全力する。 次回 [ゴッドベイドー] 2人の名医が友を救う。 1308 第170話:ゴッドヴェイドー︵前書き︶ ライルが倒れたあの日の話が語られる。 1309 第170話:ゴッドヴェイドー 面会を全て終えた俺の自室。今はここに久々の客人が見えていた。 ﹁毒気は殆ど抜けたようだな。これなら数日で復帰出来るだろう﹂ ﹁そうか・・・すまないな神医﹂ ﹁いや、お前達とは親友だからな。当然のことをしただけだし、俺 は医者だ。患者がいるんだったらそれを助け出すのが俺の使命だ﹂ ﹁私も頑張りましたよ﹂ ﹁華蓮もだ。治療に励んでくれて助かったよ﹂ ﹁えへへ∼♪﹂ ﹁あんらぁ∼♪私達だってライルちゃんの為に頑張ったんだからね ん♪﹂ ﹁うむ‼神医殿の大事な友なら我等の友でもあるからな‼﹂ 部屋の中にいたのは俺が毒矢を受けたと聞いて駆け付けた神医に華 蓮。更には入城する際に一悶着を起こしたと思う貂蟬と卑弥呼。 相変わらず貂蟬は身体をくねらせ、卑弥呼は肉体を見せつけるかの 如く胸を張る。 頼むからやめてくれ・・・・・・病状が悪化しそうだ。 何故この3人がいるかというと、俺が毒矢で気を失っていたあの時 まで遡る・・・・・・・・・。 1310 ﹁ライル様‼‼ライル様‼‼﹂ ライル様が魏による刺客の毒矢で倒れた。雪蓮姉様を守る為に庇っ たと聞いている。 今はこの城には雪蓮姉様達はいない。曹操軍を撃滅する為に軍を率 いて合肥へと出陣しているからだ。 時折ではあるけれど合肥から轟音が聞こえてきている。多分はアレ ックス様達が魏軍に大打撃を与えていると思うけれど、今の私の役 目は城に残り、ライル様の治療をすることである。 私はゴッドベイドーの医者でもあるから任されたが、一向にライル 様の容体が戻らない。それどころか僅かずつだけれども氣の流れが 弱くなっている。 ﹁ライル様‼お願いです‼まだ向こうに逝かないで‼呉には彼方の 力が必要なんですよ⁉雪蓮姉様を置いて逝くんですか⁉﹂ 私はライル様に話しかけながら氣を送り続ける。しかしこのままで は私の氣がいずれかは底を尽きてしまい、そうなったらライル様は 死んでしまう。 ﹁くっ⁉私じゃ・・・私じゃまだ・・・・・・駄目なの・・・?﹂ 私はゴッドベイドーを身に付けたいというのには理由があった。き っかけは父様が病死されたこと。 その時に何も出来なかった私は父様みたいな人を1人でも無くした い一心で漢中へ単身で渡り、そこで張魯先生の教えを請い、ゴッド ベイドーを学んだ。 1311 だけどこのままではライル様が死んでしまうだけではなく、張魯先 生にも申し訳が立たない。私は歯を食いしばりながら必死に氣を送 り続ける。 ﹁お願い・・・・・・神様・・・私に・・・私に・・・・・・・・・ ライル様を助け出す力を下さい・・・お願いです・・・﹂ 必死で心の中で祈ると、不意に扉が開かれた。そこには・・・。 ﹁患者はどこだ⁉﹂ ﹁か・・・神医様⁉﹂ そこにいたのは張魯先生の下で修行していた頃の兄弟子で、私の本 当のお兄さんみたいな人でもある華佗様だった。 ﹁華蓮‼待たせたな‼﹂ ﹁私もいるわよん華蓮ちゃ∼ん♪﹂ ﹁華蓮よ‼我等も力を貸すぞ‼﹂ 背後からは貂蟬様と卑弥呼様も来てくれた。これなら何とかなるか も知れません・・・・・・やって見せます‼。 ﹁ほぅ∼ら♪忘れ物を届けに来たわよん♪﹂ ﹁我等が道を切り開く‼お主は病魔とやらを叩きのめせ‼﹂ ﹁お二人とも・・・それは⁉﹂ ﹁必要なものなのでしょ?さ、使ってん﹂ そういいながら貂蟬様はいつも履いている桃色の一張羅から赤色の 針を取り出す。これは私が張魯先生から貰ったものであり、無くす といけなかったから一先ず張魯先生の処に預かって貰っていたもの 1312 である。 ﹁はい‼ありがとうございます‼﹂ ﹁卑弥呼‼貂蟬‼2人はライルに氣を流し続けてくれ‼俺と華蓮が その間に病魔を滅する‼﹂ ﹁分かったわん♪・・・・・・ぶるぅらぁあああああああああ‼‼ ‼﹂ ﹁ぬあぁあああああああああああああ‼‼‼﹂ 卑弥呼様と貂蟬様は膨大なまでの氣を全身から引き出し、それをラ イル様へと注入していく。その間に私達は病魔の元凶を探し出す。 ﹁これか・・・違うな・・・ここでもない・・・﹂ ﹁何処なの?・・・どこに・・・・・・﹂ ﹁こいつか・・・・・・見つけた‼﹂ 病魔の元凶を神医様が見つけた。場所は心臓の少しだけ右上辺りを 示していた。 ﹁これは・・・かなり手強い病魔だが・・・我が親友を死なせはし ない‼﹂ ﹁病魔なんかにライル様を渡しはしません‼﹂ ﹁華蓮‼﹂ ﹁はい‼﹂ 互いにそう言い合うと私は紅針。神医様は金針を手にしてそれぞれ 氣を流し込み、やがては針が輝き出す。 ﹁うぉおおおおおお‼我が金針‼﹂ ﹁はぁああああああ‼我が紅針‼﹂ 1313 ﹁我が友を蝕む悪き病魔を駆逐する‼﹂ ファイナル・ゴットヴェイドー ﹁我が英雄を救う力を持って病魔を打ち払う‼﹂ ﹁我が身‼﹂ ﹁我が鍼と一つなり‼﹂ ﹁一鍼同体‼﹂ ﹁全力全快‼﹂ ﹁必察必治癒‼﹂ ﹁病魔覆滅‼﹂ ﹁﹁もっと輝け‼‼賦相成・五斗米道オォォォォォッ‼﹂﹂ ゴッドヴェイドーの最終奥義である賦相成・五斗米道。膨大なまで の氣を使う見返りにどんな強力な病魔をも撃滅させることが出来る 究極奥義をライル様に使うことにした。 ﹁﹁げ・ん・き・に・・・なぁああれええええええっ‼‼﹂﹂ 一気に私達はライル様を蝕む病魔の場所に突き刺し、収縮させた氣 を一気に解放させた。そして全ての氣を流し込み、刺した針をライ ル様から離した。 ﹁﹁貴様の野望‼もはやこれまで‼病魔退散‼‼﹂﹂ その後はライル様を安静にさせて、私達は容体を確認しながら隣の 部屋で待機していたがその後が大変だった。 何しろ心から心配していた雪蓮姉様はつきっきりで介護したいと言 い、最終的にはこちらが折れざる得なかった。 しかし父様と母様が亡くなった時には涙一つ流さなかった雪蓮姉様 1314 が無事だと聞いて号泣していた。 それほどまでに雪蓮姉様はライル様を愛していると感じた。なんだ か嫉妬しそうでしたがそれ以上に嬉しかったです・・・・・・。 ﹁しかし本当に2人には感謝している。もちろん貂蟬や卑弥呼にも だ﹂ ﹁うふふっ♪お礼だなんて水臭いわねんねん♪﹂ ﹁がっはっはっはっ‼素晴らしき漢乙をむざむざ死なすことなど我 輩にはあり得んからな!﹂ 一応は卑弥呼と貂蟬にも礼をいうが、何だか気持ち悪くなってきた。 ﹁それより神医様、これからどうなさいますか?﹂ ﹁あぁ、一先ずはまた旅に出るつもりだ。まだこの国にはくるしむ 人々が助かるのを待っているからな﹂ ﹁だったら旅費は大丈夫なのか?﹂ ﹁少しだけ心許ないな・・・卑弥呼﹂ ﹁うむ、そろそろ何処かで資金を調達する必要があるぞ﹂ ﹁うふふっ♪だったら私の踊りで稼いで﹁言っておくが無断でそん なことをしたら厳罰ものだぞ﹂あんらぁあ∼、残念だわん﹂ 頼むから街中でそんな怖いことをしないでくれ。下手をすれば商人 が逃げてしまう。すると何かを思いついた華蓮が手を軽く叩いて前 に出てくる。 ﹁じゃあ神医様‼暫くの間だけ建業に留まりませんか?﹂ 1315 ﹁ここにか?﹂ ﹁はい♪﹂ そういうと神医は耳を傾ける。そういえば確かに今の時期で神医に ピッタリの仕事があったのを思い出す。 ﹁そうだったな華蓮。実は数日後に海兵隊の健康診断があってな。 各地から医者を掻き集めているんだが数が足りないんだ﹂ ﹁だから神医様にも手伝って欲しいんです﹂ ﹁どうだ神医?その際の居住場所と食事、給金も多めに支給する﹂ ﹁そういうことだったら断る理由はないな。だったら暫くの間はお 前達の陣営に世話になるか﹂ ﹁感謝する。華蓮、後で冥琳殿に報告書を提出してくれ。兵站科に も報告書してくれよな?﹂ ﹁御意﹂ そういうと華蓮は神医達を案内する為に部屋を退出する。当面の間 は寝床に倒れている形だが、一先ずは傷の完治に全力を注ぐとしよ う。 俺は本棚から小説を取り出して、寝転がりながらページを開くので あった・・・・・・。 1316 第170話:ゴッドヴェイドー︵後書き︶ ライルが無事だったと聞いて喜ぶ一刀。時間を持て余している一刀 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re は何と無く中庭に来たが、先にそこには雪蓮がいた。 次回 [一刀と雪蓮] 天の御遣い、英雄と言葉を交わす。 1317 第171話:一刀と雪蓮︵前書き︶ 露蘭を1人にさせた一刀。中庭にて孫策と対話をする。 1318 第171話:一刀と雪蓮 俺が部屋で待っていると霞と一緒に食堂へと行っていた筈の露蘭が 深刻そうな表情で戻って来た。気になったので話しかけようとした が、1人にして欲しいと頼まれたので一緒にいた飴里と共に部屋を 出た。 飴里が食堂にいる霞のところへ向かわせて俺はその間は特にやるこ とが無かったので、仕方なく中庭へと足を運んだ。するとそこには 先客がいた。 ﹁あら?一刀じゃない♪﹂ ﹁孫策?﹂ 先客とは、この国の王である孫策だ。彼女は呉の宿将である黄蓋さ んと一緒に日陰で酒を飲んでいた。というより今は業務中だと思う んだが・・・。 ﹁こんな処で何してるの?﹂ ﹁あら?私はここの主よ。何をしていてもおかしくないじゃない♪﹂ ﹁うむ、しかしそれを言うならお主の方が何をしておるのじゃ?﹂ 一刀って言います﹂ ﹁ははは・・・痛い処を突かれましたね・・・って・・・そういえ ばまだ挨拶がまだでしたね。俺は北郷 ﹁ライルからは話は聞いておるぞ。儂は孫堅様より仕えておる黄蓋 公覆じゃ。見知りおけぃ﹂ 正史で赤壁の戦いにて活躍を見せた宿将の黄蓋と挨拶を交わす。 1319 ﹁一刀も一緒に飲まない?前にアレックスから貰ったお酒よ♪﹂ ﹁酒って・・・いいのか?﹂ ﹁なにが?﹂ ﹁今はライルさんが寝台に横になっていて、しかも魏の侵攻からあ まり時間が経過してないんだ。それに今は多分だけど業務中の筈だ と思うんだけど・・・﹂ ﹁ぶぅ∼‼いいじゃない‼それにライルは華佗っていう医者と妹の 診察を受けてるんだから部屋に入れないのよ‼﹂ ﹁それにお主は他国の人間じゃ。あまり干渉するのは関心せんな・・ ・・・・それに男が細かい事を気にするではないぞ‼﹂ 自由奔放とはまさしくこの事だろう。ライルさんの苦労が何となく 分かる気がするな・・・。 ﹁まぁ・・・それは置いといて・・・一刀は本当に何をしてたの?﹂ ﹁いや・・・ちょっと散策をね・・・・・・﹂ ﹁じゃったらお主も来るがよい。話をしてみたかった処じゃ﹂ ﹁う∼ん・・・・・・・・・分かった。じゃあお邪魔させてもらう よ﹂ 断る理由は特に見当たらなかったので、言葉に甘えて俺も2人の輪 の中に入り、孫策から酒が注がれた盃を受け取り、それを口に放り 込む。 ﹁おおっ♪中々いい飲みっぷりじゃ。まぁもっと飲め﹂ ﹁ありがとうございます黄蓋さん・・・﹂ ﹁話は聞いてたけど、一刀ってお酒に強いのね♪﹂ ﹁強くなったのはこっちに来てからだよ﹂ ﹁なんじゃ?天界ではお主は酒を飲まんかったのか?﹂ ﹁国によってはバラバラだけど、俺の国じゃ二十歳以上じゃないと 1320 飲酒が出来ない法律があるんだ。小さい時から飲酒すると体に毒だ からね﹂ ﹁えぇ∼⁉それじゃつまらないじゃない⁉﹂ ﹁そうじゃ‼それでは人生の半分を損しておるではないか⁉﹂ ・・・そんなこと言われてもね・・・。 ﹁そういう法律があるんだ。こればっかりはどうしようも無いんだ よ﹂ ﹁ぶぅ∼・・・あぁそうだ一刀♪ちょっと聞いてみてもいい?﹂ ﹁なにが?﹂ ﹁劉備ちゃんとは相思相愛よね?﹂ いきなりの質問に俺は飲んでいた酒を吹き出してしまい、そのまま むせてしまった。 ﹁げほっ⁉げほっ⁉・・・い・・・いきなり何を言い出すんだ⁉﹂ ﹁だって気になるじゃない♪閨のこととか♪閨のこととか♪閨のこ ととか♪﹂ ﹁あ・・・あんたは酔っ払いの親父か⁉﹂ ﹁おぉ‼確かに気になるのぅ‼じゃから大人しく白状せんか‼﹂ ・・・この2人・・・・・・完全に酔っ払ってるな・・・。しかも 気迫が尋常じゃないくらいに凄まじく、俺はそれに負けて顔を赤く 染めながら白状することにした。 ﹁・・・・・・まぁね・・・﹂ ﹁で?7日にどれ位してるの?﹂ ﹁そ・・・その・・・・・・よ・・・4日に一回は・・・﹂ ﹁ほぅ・・・・・・じゃったらどんな感じじゃ?﹂ 1321 ﹁・・・・・・優しく・・・してあげてます・・・﹂ 頼むから本当に誰か助け舟を出して欲しい・・・恥ずかし過ぎるし、 何よりも俺自身こういう話は苦手のジャンルに入ってしまう。俺の 反応を見ながら楽しんでいる酔っ払い2人は大笑いしながら酒を飲 んでいた。 ﹁はははは‼‼ごめんなさいね一刀♪﹂ ﹁しかし・・・天の御遣いも閨事にはウブとはのぅ。見てるこっち は飽きぬな♪﹂ ﹁笑わないでよ・・・だったら孫策はライルさんとはどういう関係 なのさ?﹂ ﹁私?・・・ライルと私も相思相愛よ♪﹂ ﹁うむ、ライルが倒れておった時に策殿はずっとそばにおったし、 今朝方も熱い接吻を交わしておったようじゃしのぅ﹂ ﹁うん♪﹂ 恥じらいもなく孫策は笑顔で頷く。しかしあのライルさんがそんな 大胆なキスをするなんて・・・・・・。 孫策は確かにその純粋無垢なイメージで周りの人間を明るくしそう だし、ライルさんも一度好きになった相手は大事にしそうなイメー ジがある。 それがまさに実証されたということだ。 ﹁やっぱり一刀って面白いわね♪﹂ ﹁褒め言葉として受け取っておくよ﹂ ﹁もう、そんなに拗ねないでよ♪お詫びに私の大事にしてるとって おきのお酒のませてあげるから♪﹂ ﹁・・・・・・美味いのか?﹂ 1322 ﹁うむ‼儂も前に飲ませてもらったが、かなりの絶品じゃったわい ‼﹂ 黄蓋さんがそういうなら本当に美味いのだろう。すると孫策は何処 からか酒が入った酒壺を取り出して盃に注ぎ始める。これは・・・・ ・・。 ﹁これは・・・ワイン?﹂ ﹁輪員?﹂ ﹁北郷よ。なんじゃそれは?﹂ ﹁これはワインっていって・・・・・・葡萄っていう果物の果汁か ら作った酒なんだ。羅馬が発祥とされてるんだ﹂ ﹁へぇ∼・・・羅馬のお酒なんだ・・・﹂ ﹁どうりで珍しい味じゃと思ったぞ﹂ ﹁香りもいいし、確かにいいワインだと思うよ﹂ ﹁そう♪じゃあ飲みましょう♪﹂ ﹁そうじゃな♪ならば今はこの香りも一興として楽しむとしようか のぅ﹂ ﹁そうだね﹂ そういいながら俺達は注がれたワインを口にしようとした瞬間・・・ ・・・。 ﹁楽しめるとでも思っているのか?﹂ いきなり怒気が満載された声がしてきたので、俺達はゆっくりと声 がした方角に顔を向ける。そこにいたのは・・・。 ﹁全く・・・只でさえ忙しいのに私が少し離れた隙に酒とはな・・・ ﹂ 1323 青筋を立てて仁王立ちしていた周瑜がいた。 ﹁あ・・・あはははは・・・め・・・冥琳・・・﹂ ﹁酒を飲んでいるということは既に仕事は終えているということで あろうな?﹂ ﹁あ・・・あはははは・・・・・・え・・・えっと・・・・・・そ の・・・そ・・・そう‼これはお酒じゃないのよ‼水よ水‼﹂ ﹁ほう・・・水か・・・﹂ ﹁そうじゃ‼こ・・・これは只の水じゃ‼﹂ なんというか・・・あまりにも無茶苦茶な言い訳だな・・・紫色で アルコールの匂いがする水なんて見た事がないがな・・・。 ﹂﹂ そういいながら周瑜はワインが入った酒壺を片手で持ち上げ、近く にある花壇へと歩き出す。 何を勿体無いことを‼⁉ ﹁だったら花に水をあげなければな‼‼﹂ ﹁﹁あぁああああああ‼⁉ ﹁水だったら問題ないだろ⁉それよりも2人共・・・これから仕事 が待ってるわよ・・・﹂ 水という名前のワインを周瑜によって花壇にばら撒かれ、孫策と黄 蓋さんは絶叫のような表情でそれを見ていた。 その後に2人は周瑜に連行されていき、強制的に仕事をさせられた ようだ。その傍らで俺は・・・。 ﹁・・・・・・あれ?・・・俺はどうしたらいいんだ?﹂ 独りぼっちにされて立ち尽くしていた・・・・・・。 1324 第171話:一刀と雪蓮︵後書き︶ 一刀が雪蓮と祭の2人で話をしている頃、執務室にいた千里にも客 人が来ていた。 諸葛瑾に諸葛誕。同じ諸葛一族だが所属する陣営の違いで互いの間 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re に重い空気が流れる。 次回 [諸葛一族] 諸葛一族の二大男子。己の信念を確認しあう。 1325 コラボ第3段:2人の英雄︵前書き︶ コラボレーション企画第3段。今回はブレイズ様に続いて人気作品 とのコラボが実現しました。 どうぞお気軽にお楽しみ下さいませ。 1326 コラボ第3段:2人の英雄 夢 。 あれは確か曹操が呉へ南進する1ヶ月前の話だ。俺は膨大な書類と 格闘して辛くも勝利し、眠りに付いた先の話だ。つまりは と錯覚してしまう程にだ。俺はその夢の ただその夢があまりにも印象的で鮮明に覚えていた。 本当に夢だったのか? と・・・・・・。 中で彼に出会ったのだ。 黒龍 ﹁う・・・う∼ん・・・・・・﹂ 眩しい位の太陽が俺に朝日を浴びせて来て、それを片手で遮りなが ら目覚めた。 ﹁いかん・・・寝過ごした・・・・・・か・・・﹂ 俺は起き上がるが周囲の状況に思考が固まる。確かに俺は建業城の 自室で睡眠を取っていた筈だ。つまり俺の視界には見慣れた天井が 存在しなければならないのに、俺が今いる場所は・・・。 ﹁・・・・・・・・・どこだ?﹂ 1327 森の中だった。辺りからはスズメの鳴き声やそよ風で草木が靡く音、 俺がいる場所は木漏れ日が丁度いい感じで降り注いでいたので、か なり心地良かった。普通ならこのままもう一度だけ横になりたい気 分だが、今はそれを堪能している場合ではない。 俺は考えるよりも手が自然に無線機に伸びていき、無線の周波数を ジーンに合わせた。 ﹁・・・ジーン・・・聞こえるか?﹂ <う∼ん・・・なによライル・・・こっちは真夜中なんだし用事な ら明日にしてよ・・・> ﹁今は緊急時だ。君に少し尋ねたい﹂ <緊急時?> ﹁あぁ・・・実は・・・・・・﹂ 俺はジーンにありのままを話した。自室で寝ていたのに目が覚める と見覚えのない場所にいたと。 最初はまた何か時系列でトラブルでもあったのだと思ったが、今回 は違うようだ。その答えをジーンは眠そうに答えてくれた。 <ふわぁ∼・・・なんだ・・・・・・超眠じゃない・・・> ﹁超眠・・・なんだそれは?﹂ <むにゃ・・・超眠っていうのはね・・・超越する睡眠っていう言 葉の略称で・・・・・・何らかの拍子で別世界にあなたが迷い込ん じゃったっことよ・・・> 超越する睡眠か・・・他の世界に繋がるなんてどれだけ何でもあり なんだ? 1328 ﹁・・・で?・・・何の問題もないんだな?﹂ <大丈夫よ・・・あなたが目を覚ますと自動的に意識が戻るわ・・・ 例えあなたがそっちで死んじゃっても夢扱いになるから大丈夫・・・ だから起きるまでそっちの世界で楽しんだら?> ﹁はぁ・・・了解した。だったら言葉に甘えさせてもらう﹂ <りょ∼かい∼・・・ふわぁああ・・・じゃあ私は寝るわね・・・ おやすみ∼・・・ぐぅ・・・> ﹁・・・・・・天界にも夜があったんだ・・・﹂ そうくだらないことを考えながら俺は無線機を離して、辺りを見渡 す。夢の中だろうか、すぐ側に俺の得物であるショートグレイブに M45、後はすぐ側にレオポルドM3スコープに、オフセットマウ ントとリフレックスサイトを取り付けたSR−25Mが立て掛けら れていた。 それをすぐに手に取り、7.62mm弾の初弾を装填して構えてみ る。何処にも異常はなさそうだ。 セーフティを掛けてスリングを肩に通し、俺は辺りを見渡す。 ﹁ここじゃ何処か分からないな・・・歩くか・・・﹂ 独り言を口にしながら俺は森の外に向かって歩き出す。大体の時間 は10分弱で森の外へと出れたが、それは何かが聞こえて来たから だ。戦場で完全に聞き慣れた怒声に悲鳴。更には濃い血の臭いだ。 背負っていたSR−25Mを構えて俺はすぐにその方角へと駆け出 していた。 そして森の外が見渡せる場所へと到着するとそこには案の定、二つ の陣営が確認された。その場でプローン姿勢でパイポッドを立てた SR−25Mを構え、俺はスコープを通じて様子を伺う。 1329 ﹁・・・夢の中でも戦か・・・夢くらいはのんびりしたいぞ・・・ 一つは・・・・・・黄巾党の残党で・・・もう一つは劉備軍か・・・ ﹂ 交戦しているのは頭に黄色の頭巾を巻いた黄巾党の残党と、劉の牙 ・・・・・・聞いたことがないな・・・﹂ 門旗が確かに確認できる。しかしその中に気になる牙門旗も確認さ 漆黒の黒旗 れた。 ﹁ 視界に飛び込んで来たのは漆黒の黒旗。だが俺が知っている限り黒 という漢字が入った名前の持ち主はいなかった筈だ。俺は戦況を確 かめる為にスコープを覗き続ける。 ﹁劉備軍は奮戦してるが数が違いすぎるな・・・だがどの兵もかな りの技量・・・・・・あいつは・・・﹂ 劉備軍側の将兵はかなり統制された動きを見せており、俺は特にそ の中の一人に視線が止まる。 映し出されたのは青年で、容姿はくせのない少し長めの黒髪に、黒 い瞳のパッチリした目に整った少し幼い顔立ち。 背は一刀と変わらないくらいだろう。 服装は白の小袖の上に黒い胴服を着て裾がボロボロの黒い上着を羽 織り、藍色の袴を穿いた真っ黒な和装。 上着は胸の位置に円の中にとぐろを巻く黒龍を浮かび上げている。 1330 背中の真ん中まで伸びた黒髪を首筋辺りで龍の頭を模した黒い髪飾 りで留めている。 誰から見ても中々の美青年だと分かる。その青年は左手に持った黒 色の槍を駆使しながら次々と敵を仕留めて行く。 しかし敵の数が違いすぎるので、僅かずつだが包囲されつつある。 そして背後から剣と槍を構えてその青年を斬りかかろうとする敵を 確認。 ﹁まずいな・・・援護してやるか・・・﹂ そう口にしながらスコープのレティクルを敵の頭に合わせて、トリ ガーを引いた。 ・?視線 不味い状況だ・・・愛紗に頼まれて一刀の親衛隊の一部を引き連れ て演習を実施していたが、まさか黄巾党の残党と鉢合わせするなん てな・・・。 ﹁連携を組め‼単騎で挑むと数の暴力に屈することになるぞ‼﹂ ﹃応っ‼﹄ ﹁せりゃ‼﹂ 敵は確かに雑兵共だが、こちらが200人位の小部隊であることに 対して向こうは確実に1000人近くはいるだろう。俺は槍を手に しながら次々と敵を仕留めて行く。 その内の一人の首に足で挟み込み、その敵を軸にしながら周りにい 1331 る敵を円を描きながら斬り伏せ、軸となっていた敵を頭から地面に 叩き伏せる。 部下を鼓舞しつつ敵を片付けていく。そして俺は背後から敵が斬り かかろうとしている事に感づき、姿勢を低くして構える。 ﹁甘い‼そんなのは奇襲だなんて言えない・・・ぞ・・・﹂ 最後の言葉を口にしようとした瞬間、集団の中央にいた敵兵の頭が 強い衝撃を与えたような動きを見せる。そしてそいつのコメカミに は小さい穴が空いていた。そして少しだけしてから乾いた雷の音に 似た音。それが立て続けに鳴り響き、何が起こったのか理解出来ず に立ち止まっていた敵が次々と倒れていった。 そこには同じく一寸の狂いも無しにコメカミや額、片目に風穴が空 いていた。 この音は忘れ掛けようとしていた音・・・前世でTV等で聞いたこ とがあった銃声だ。俺は銃声がした方角を見て誰によるものか確認 する。 ﹁・・・あれは・・・﹂ そこにいたのは丘を駆け降りながら黒い筒・・・ライフルを構えて 敵に攻撃を仕掛ける緑色の迷彩服に防弾チョッキ、背中に二筋の短 槍を背負っている銀髪で長身の男。歳は俺よりも歳上だろうがそん なことはどうでもいい。俺が一番の衝撃を受けたのは・・・・・・。 ﹁・・・海兵隊・・・﹂ その男が間違い無くアメリカ海兵隊員だからだ・・・。 1332 ・ライル視線 どうやら援護は不要だったようだ。先程の青年は正面の敵を素早く 始末して敵の攻撃範囲に捉えられる前に振り向いていた。 だがサプレッサーを装着していなかったので発砲音でこちらの存在 は悟られた。だから俺は発砲しながら丘を駆け下りる。そして丘を 降りるとすぐ両手にショートグレイブを手にして近くにいた敵集団 を斬り捨て、青年に駆け寄って背中合わせとなる。 ﹁大丈夫か?﹂ ﹁・・・あぁ。・・・加勢には感謝する。少し数が多かった処だ﹂ 背中合わせになってはいるがまだ味方とは思われておらず、背後か らでも警戒されているのに気が付く。 玄徳様と北郷 一刀殿率いる蜀軍が将・・・黒薙、字は明蓮﹂ ﹁君・・・名前は?﹂ ﹁劉 ﹁黒薙・・・・・・いい名前だ・・・俺は孫呉海兵隊指令のライル・ ・・・それに迷い込んだ?﹂ L・ブレイド。訳あってこの場所に迷い込んだ﹂ ﹁孫呉海兵隊・ 俺達が話していると痺れを切らした敵が複数で仕掛けて来たが、俺 は身を低くして身体を捻りながら仕掛けて来た敵2名を同時に仕留 め、黒薙はその場で飛び上がり、すれ違い様に同じく敵を同時に2 名仕留めた。 1333 ﹁今はのんびり話している場合じゃないな﹂ ﹁それもそうだな・・・行けるか?﹂ ﹁当然だ・・・奪う事しか脳がない獣に負けはしない﹂ そう言いながら俺は左右のショートグレイブを回転させながら重ね て構え、対して黒薙は左手で槍を素早く回転させて矛先を敵に向け る。 ﹁確かにな・・・左は任せてくれ﹂ ﹁分かった・・・だったら私は右を片付ける﹂ ﹁了解だ。素早く・・・﹂ ﹁確実に・・・﹂ ﹁﹁殲滅する‼﹂﹂ それだけ言い放つと俺達はそれぞれ左右に展開。近くでただ突っ立 っている黄巾党残党を次々と刈り取っていく。 そこから時間は対して掛からなかった。士気が元から低い黄巾残党 で敵う筈も無く、逆に練度が高いと思われる黒薙の部隊所属も同じ ように不利な状況を覆し、まるで猛る龍のように敵を飲み込んでい く。 その姿は俺達海兵隊に勝るとも劣らないものであり、何よりもその 勇猛果敢な将兵達の先頭をいく青年の戦いぶりは直感で感じた。 ﹁この男も・・・・・・英雄か・・・﹂ 夢の中であるが、何故か初対面なのに背中を安心して預けられる青 年。本当に不思議な感覚だが、今は目の前の敵に集中しよう。ショ ートグレイブを構え直し、敵中に突撃を敢行する・・・・・・。 1334 ・雛斗視線 凄く不思議な男だ。理由を聞かずこちらに助力してくれ、更には俺 に背中を預けてくれている。向こうは俺と同じ槍使いで、それを二 刀流にしている戦い方をしている。その中で体術も組み合わさって おり、 しかもそれ等全ては非常に卓越されたものであり、柔の中にも豪が 合わさった感じだ。そう考えている間にも敵は仕掛けてくるが、一 人目をまずは右からの振り上げで斬りつけ、次は石突で腹に突きつ けて動きを封じ、回転しながら薙ぎ払う。 ﹁はっ‼﹂ ﹁ぐはっ⁉﹂ ﹁うぐっ⁉﹂ ﹁ぎゃっ⁉﹂ 看破入れず仕掛けてくるも、向かって来た集団を連続の刺突で突き 崩し、最後に力を込めて地面に槍先をぶつけて吹き飛ばす。 ﹁しかし・・・あの男・・・﹂ 敵が怯んだ隙に俺はライルに視線を送る。威風堂々で覇気に満ち溢 れ、更には確固たる信念を感じれるその姿も・・・。 ﹁曹操や孫策と同じ・・・英雄・・・か・・・﹂ いつまでも見ている訳にはいかない。槍を構え直し、中腰になって 1335 右手を敵に向けながら左手で槍を保持しつつ背中に委託させる。 ﹁我が名は黒薙‼この名を知っても向かって来る者がいるならば、 我が命を奪ってみせろ‼‼﹂ 星がいいそうな言葉を俺なりに考えて、敵を挑発しながら敵に突撃 を敢行する。 ・ライル視線 ﹁せいっ‼はっ‼でりゃ‼﹂ ﹁はいはいはいはい‼‼﹂ 苦戦していた劉備軍はすっかり立て直し、逆に敵部隊はその猛反撃 で戦意を消失。逃げ出す者が次々と出始めた。だが俺は再び黒薙と いう青年と合流。 背中合わせで同じ速度で駆け出し、すれ違い様の敵を次々と斬り捨 てる。そして敵が固まっている場所にまで到着すると背中を預けつ つ回りながら360°で攻撃範囲にいる敵を薙ぎ払っていく。その 雷 を地 最中、ほぼ互いの正面から半ばヤケになって槍を突き出し向かって 来る敵がいた。 ﹁﹁うむっ‼﹂﹂ 互いの考えを悟ったのか、俺は右手のショートグレイブ 面に置き、黒薙の右手を取るとほぼ同時に互いを引きつけ、それぞ れ少しだけ飛び上がりながら槍先を突き刺す。 そして黒薙が雷を目線の高さまで蹴り上げて、俺もそれをすぐさま 1336 受け止めるとすぐさま敵を斬りつける。 黒薙も同様だ。振り向きざまに敵の腹に蹴りを見舞って吹き飛ばす。 自分でいうのもなんだが本当に息が合った連携だ。 そうしながら戦闘を継続していると遠方から砂塵が見えた。最初は 敵の増援かと思ったが、隣を見ると黒薙の口元が笑っていた。 ﹁やっと来たか氷‼﹂ ﹁誰だそれは⁉﹂ ﹁俺の出来がいい従者だ‼﹂ に 純白の公孫旗 ・・・それに 深紅の呂旗 ・ よくみると確かに漆黒の黒旗が確認出来たが、それとは別に見慣れ 紺碧の張旗 た牙門旗も確認された。 ﹁ ・・﹂ 見間違える訳がない。俺の戦友である霞に白蓮、それに恋が増援と してやってきたのだ。だが直感的に何かを悟った俺は攻撃速度を更 に速めて、敵を狩っていく。 すると斧を片手に逃げ出す味方を制止する指揮官らしき敵を確認出 来た。数は2人。俺達はすぐさまそいつ等の処まで駆け出し、槍を 構える。 ﹁おっ⁉おい⁉あ・・・あの2人⁉﹂ ﹁ば・・・化け物じゃねえか⁉おい‼お前が行け‼﹂ ﹁なっ⁉なんで俺が⁉テメエが行けばいいだろ⁉﹂ ﹁うっ・・・うるせぇ‼お前が行け‼﹂ 互いを前に出させようとして仲間割れか・・・所詮は賊ということ 1337 だ。俺達はそれぞれ片方の懐に飛び込んで構えた。 ﹁﹁ひぃ⁉﹂﹂ ﹁とっとと・・・﹂ ﹁・・・死ね﹂ 敵に死の宣告を下すと俺達はほぼ同時に、尚且つ一刀両断にする。 敵指揮官は肩から文字通り真っ二つとなり、音を立てて地面に崩れ 落ちる。それを確認した俺達はそれぞれ首を斬り落とし、それを高 々と掲げる。 ﹁﹁敵将‼討ち取った‼﹂﹂ ﹃わぁあああああああああ‼‼﹄ 敵将を討ち取ったことで周囲から勝鬨が挙げられ、反対に指揮官を 失った敵は逃げ出すか降伏するかの二つしか手段が残されていない 状況へと陥る。 俺も敵将の首を放り投げるとショートグレイブを背中に預け、SR −25Mにタクティカルリロードで新しいマガジンに交換。リフレ ックスサイトによる照準の構え方を執る。 ﹁敵はあと少しで壊滅だ。このまま味方増援との挟撃を提案するが ?﹂ ﹁私も同じことを考えていたさ・・・﹂ そう確認すると黒薙は槍を何度か回転させ、状態を確認すると再び 構え直す。 ﹁では・・・行くか‼﹂ 1338 ﹁ああ‼黒薙隊‼あと一息だ‼このまま一気に敵を薙ぎ払うぞ‼﹂ ﹃応っ‼‼﹄ ﹁全軍‼突撃‼前へ‼﹂ ﹃うらぁあああああああ‼‼﹄ 黒薙の檄で将兵達は士気を最高潮にさせ、それぞれ剣や槍を空高く 掲げると増援部隊と接敵した敵の背後に突っ込んで行った。 この後は一方的だった。恐怖に駆られた敵になす術はなく、ただ劉 備軍に駆逐されていくか降伏していく。本当にこの二つだけだ。数 刻には駆逐が完了して、そのまま戦後処置へと移行していった。 ・雛斗視線 戦が完全に終わったのは夜になってからだ。黄巾党残党勢力は完全 に駆逐され、俺達はそのまま敵味方関係なく死んで行った人達の遺 体を丁重に埋葬していき、作業自体はあと2刻ほどで完了する。周 囲には弔いの焚き火が焚かれ、明るさの中に悲しさと虚しさが見え る。 俺は合流した氷に部隊の指揮を任せると、そのままあの男へ歩み寄 る。 ﹁終わったのか?﹂ ﹁いや、埋葬作業ならまだ続いてるけど引き継ぎはしたさ。後は従 者がやってくれるだろう﹂ ﹁優秀な従者なんだな?﹂ ﹁あぁ・・・私には勿体無い位に優秀な従者だ﹂ 1339 他愛の無い話をしながら俺はライルに対して拱手の礼を執る。 ﹁ライル殿・・・この度は助力してくれて本当に感謝している﹂ ﹁いきなりだな・・・﹂ ﹁貴殿のお陰で味方の被害を最小限に抑えられた。本当に感謝する﹂ ﹁気にするな・・・助力は俺が勝手にしたことだ。君が感謝する必 要だなんてどこにも無い。それに俺がいなかったとしても君なら簡 単に乗り切れてただろう?﹂ ﹁・・・随分謙虚なんだな?﹂ ﹁そういう君もだろ?﹂ ﹁ふっ・・・・・・ふふふふ﹂ ﹁くくくく・・・﹂ ﹁﹁あははははははははは‼‼﹂﹂ 互いに謙虚だと言いあっていると、それがなんだか可笑しくて俺達 はほぼ同時に笑い始める。すると背後から聞き慣れた声がしてきた。 ﹁おぉ∼い‼ひ∼な∼と∼‼﹂ 俺が振り向くと得物を担いでこっちに歩み寄って来ている霞がいた。 ﹁お疲れさん雛斗♪﹂ ﹁あぁ・・・ありがとう霞﹂ ﹁なぁなぁ雛斗∼、さっきから誰と話しとったん?﹂ ﹁あぁ・・・紹介する霞。この人は・・・・・・あれ?﹂ 俺が再びライルに振り向くが、さっきまでそこにいた筈のライルが 姿形もなかった。辺りを見渡すがそれらしい姿は全く見られなかっ た。 1340 ﹁雛斗、どないかしたん?﹂ ﹁えっ?・・・あ・・・・・・いや・・・何でも無い・・・ちょっ と考え事をしてただけだよ﹂ ﹁ふぅ∼ん・・・そうなんや﹂ ﹁霞、悪いんだけど先に行っていてくれない?まだちょっと仕事が 残ってるから、終わらせてからすぐに行くよ﹂ ﹁ええよ♪﹂ そういうと霞は満面の笑みを浮かべながらもと来た道を引き返す。 それを見送ると俺は辺りを見渡し、ライルが何処にもいないことを 確認。不意に空を見上げるとまだ一筋の流れ星が流れた。一瞬であ ったが、非常に美しい流れ星だった。それを見た俺は口元がふと笑 いながら空を見続ける。 新しい戦友 に真名を預け、霞の後を追う。そ ﹁・・・俺の真名は雛斗・・・・・・あなたに預けるよ。ライル・ L・ブレイド﹂ 俺は先程までいた して霞に追い付いたと思うとそこには俺の従者である黒永・・・氷 がいた。 どうやら作業の進捗状況の報告をしに来たようであり、報告を受け ると氷は俺に話しかけて来た。 ﹁雛斗様・・・何か良いことでもありましたか?﹂ ﹁うん?﹂ ﹁笑みが残っていますよ﹂ ﹁ふっ・・・そうだね。この国に英雄は・・・意外に多いのかもね﹂ ﹁は?﹂ 当然、意味の分からない氷は首を傾げる。俺はそれを笑って氷の頭 1341 を軽く叩く。 ﹁さ、早く終えて帰ろう。星が見える内に仕事を終えたいからね﹂ 氷の肩を取りながら作業を早く終わらせる為に移動していく。恐ら く彼に会うことはもう叶わないだろう。だけど彼との出会いは俺の という思い出は・・・・・・。 思い出の一つとなり、今後なにがあっても忘れることはない。 別世界の英雄との一日のみの共闘 ・ライル視線 ピピピピピピピピピピピピ いきなり目覚ましの電子音が流れ出す。俺はそれをすぐに止めると 身体を起こして辺りを見渡す。 ﹁・・・俺の・・・部屋・・・だな・・・﹂ 辺りには俺が深夜まで整理していた書類の山に本棚、壁には写真や 勲章が飾られ、棚にはコーヒー豆が瓶詰された状態で保管されてい た。 ﹁は・・・ふわぁあああ・・・しかし変わった夢だったな・・・﹂ そういいながら俺は頭を軽く掻く。 ﹁だが・・・﹂ 1342 明蓮・・・・・・真名は雛斗か・・・ふふっ・・・・・・﹂ 俺はそう思いながら窓を開けて室内の空気を入れ替える。 ﹁黒薙 戦いの夢だったが、心地よい夢だった。この話が語られることは有 り得ないだろう。だが俺にとってはかなり貴重な夢であったことに は間違いない。 寝巻きから迷彩服に着替えると朝食を摂る為に俺は食堂へと足を運 ぶのであった・・・・・・・・・。 1343 コラボ第3段:2人の英雄︵後書き︶ コラボレーション企画第3段いかがでしたでしょうか? 真・恋姫†無双 ∼緑に染まる黒の傭兵∼ との 今回は私のご盟友の一人でありますforbidden様が作者を 務めておられる コラボレーションとなります。 真・恋姫†無双 ∼緑に染まる黒の傭兵∼ と 本作はもちろんコラボレーション先には影響は一切ありませんので、 是非ともお気軽に 合わせてご覧くださいませ。 ここに改めてコラボレーションにご参加頂きましたforbidd en様に感謝を述べさせて頂きます。 監督:forbidden様 企画・制作:ウルヴァリン 1344 第173話:諸葛一族︵前書き︶ 千里と俊里。二人の諸葛が対峙する。 1345 第173話:諸葛一族 ライル将軍との対談が全て終了したという報告が来た。表向きでは 雪蓮様の計らいによる決定事項だが、あれ等は全てライル将軍によ る事項だ。 俺の学友である飴里や将軍の戦友である神槍こと張遼殿と魏の夏侯 一族出身の夏侯覇殿と北郷は将軍が無事だったということで安堵の 表情を浮かべていた。 そして魏の連中にも対談が許可されていたが、はっきり言うと納得 がいかなかった。それもそうだ。なんで将軍を傷付けただけじゃな く、祖国に対して土足で踏み入った奴らにもそういった計らいをし なきゃならないんだ? 子瑜 公休こと俊里と無言で碁をしてい ・・・・・・まぁ、それは置いといて、この俺・・・諸葛謹 こと千里はというと・・・。 ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ 自室にて魏の軍師である諸葛誕 た。 俊里は俺達の従兄弟にあたり、水鏡先生の私塾にいた頃には俺と飴 里と同じ時期に入って卒業している。既にこういう状況に突入して 一刻が経とうとしているが会話らしい会話は最初あたりしかしてい ない。あったとしても・・・。 1346 ﹁・・・・・・千里﹂ ﹁・・・・・・なんだ?﹂ ﹁・・・何でも無い﹂ こんな状況だ。それは仕方が無い。いくら従兄弟でも俊里はライル 将軍を傷付けた魏の軍師。過ぎ去ったことだとは分かっているが心 では理解出来ていない。 ﹁・・・お前の番だ﹂ ﹁・・・なぁ、千里﹂ ﹁なんだよ?﹂ ﹁・・・・・・ライル殿ってどういう人なんだ?﹂ ﹁・・・聞いてどうする気だ?﹂ ﹁軍師としても・・・俺個人としても興味が湧いて来たんだ・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁魏が呉に対して非礼を働いたことは詫びる。だけど今だけは従兄 弟同士で話さないか?﹂ 俊里のいうことにも一理ある。いくら魏の使者だとしても今の俊里 は客人でもある。ある程度は腹を割って話さなければならない。 そう考えると俺は口を開いた。 ﹁・・・ライル将軍は俺にとって上官でもあり・・・師匠でもあり・ ・・なによりも兄のような存在だ﹂ ﹁兄?﹂ ﹁あぁ・・・俺だけじゃない・・・呉のみんなはライル将軍をまる で実の兄や息子のように慕っているし、民からの人望も厚い。だけ ど慢心にならず、呉に暮らすみんなを大事に思っている。おまけに 出来るだけ街に出て軍民の境を無しにして大衆食堂で民と一緒に食 事したりしている﹂ 1347 ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁それでいて呉蜀同盟の架け橋や冀州解放戦、交州平定、孫呉独立 もライル将軍が多大な貢献をしているんだ・・・あの人こそまさに 英雄だよ・・・﹂ ﹁英雄・・・﹂ ﹁そのライル将軍を手にかけようとしたんだ。呉の中でも魏に対し て過激な考えを持った奴等が出て来ている程に怒りを買ってしまっ たんだよ。お前達は・・・・・・﹂ 実際に最近は改革派内部で一部の過激な奴等がライル将軍を暗殺未 遂としてでも手を出されて、魏を根絶やしにするという考えを示し ている。 それと保守派連中だ。孫静様はライル将軍を毛嫌いしていることで 有名であり、魏による呉侵攻に合わせて行方が知れないのだ。 何かがあるとされて周瑜様は捜索隊を出して調査にあたっているが 手掛かりがない状態だ。 ﹁ライル将軍が許したからといって他の将兵全てが許すことはない んだ・・・帰りの道中は気を付けた方がいいぞ﹂ ﹁・・・善処する﹂ ﹁まぁな・・・その手でいいのか?﹂ ﹁あぁ・・・次はそっちだ﹂ 話をしつつも碁を続ける。俺の番になったので俺は目的の場所に碁 石を置いた。 ﹁・・・これでチェックメイトだ﹂ ﹁ちぇっく・・・なんだって?﹂ ﹁要するに投了ってことだ﹂ 1348 ﹁なっ⁉なんだって⁉﹂ 投了を宣言すると俊里は碁盤を見る。最初は俊里が優勢だったが、 それらは全てこの状況を作り出す布石だったのだ。 暫く碁盤と睨み合いをしていた俊里だったが、状況を理解した俊里 は正座に座り直す。 ﹁・・・負けた﹂ ﹁状況終了。お疲れさん﹂ それだけ言うと碁石を箱に全てなおして碁盤を片付ける。用事が終 わったようなので俊里は部屋を後にしようとしていたので、俺はそ れを止めた。 ﹁待て、俊里﹂ ﹁・・・なに?﹂ ﹁これは従兄弟としての警告だ﹂ ﹁?﹂ ﹁あの司馬懿って奴には気を付けろ﹂ ﹁司馬懿様か?﹂ ﹁あいつは何かを企んでいる・・・・・・孫策様ほどの勘はないが・ ・・これでも俺の勘は何かと当たるからな﹂ ﹁・・・軍師が勘に頼るのか?﹂ ﹁ともかく気を付けておけ﹂ ﹁・・・感謝する﹂ 俊里はそういうと俺の自室から退出していく。確かに一軍師が勘に 頼るなどもってのほか。しかし司馬懿が将来的に呉にとって災いに なると勘が騒いでいるのだ。 1349 俺はそう考えながら碁盤を元の場所に整頓するのであった・・・・・ ・。 1350 第173話:諸葛一族︵後書き︶ 一刀達が建業にいる頃、蜀の西部方面にも動きが見られた。 漢朝に長年もの間、刃を向けていた五胡が動き出したのだ。五胡対 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 策を任されている嵐達はそこで奇妙な出会いをする。 次回 [麒麟児対嵐] 西側の凶戦士が蜀に噛み付く。 1351 第174話:嵐VS麒麟児︵前書き︶ 対五胡で出陣した嵐。そこで難敵と出くわす。 1352 第174話:嵐VS麒麟児 主様と霞達がライルの見舞いの為、建業にいる頃の益州西部の国境 付近。私達が対峙しているのは異民族が暮らすとされている五胡。 奴等は怪しげな妖術を使うとされ、この国に何度も侵攻を仕掛けて 来ている。 夏雅里と飴里の推測によると奴等の目的は新しい領土と食糧を得る ことらいしがあくまでもそれは憶測。噂に聞いたことがあるのだが 商人の一団が奴等に捕まり、見るも無惨な殺され方をされた。 もしそれが本当ならそのような蛮族をこの国に入れる訳にはいかな い。私は金剛爆斧を担ぎながら奴等がいる荒野を見つめていた。 ﹁・・・・・・来ないな・・・﹂ ﹁来るわよ・・・必ずね﹂ 口から漏れると隣にいる詠がそれに答える。 ﹁まさか今回に限って来ないだなんてことはないだろうな・・・・・ ・闘いたくて身体が疼くではないか﹂ ﹁あんたまたそんなこと言って・・・そんなことばっかりしてると 痛い目を見るわよ﹂ 玄徳様と北郷 一刀様に使える大斧だ・・・。民の為に ﹁分かっている。今の私はかつての私ではない・・・。今ここにい るのは劉 我が武を振るうのが私の役目だ﹂ ﹁・・・あんた・・・本当に変わったわね﹂ ﹁そう褒めるな・・・・・・偵察隊が帰って来たようだ﹂ 1353 私が詠と話していると、前方に国境のすぐ手前まで向かっていた偵 察隊が帰って来たが何か様子がおかしい。偵察隊の1人が慌てなが ら私達のもとに駆け寄って来た。 ﹁ほ・・・報告致します‼﹂ ﹁どうした⁉﹂ ﹁はっ‼五胡の軍勢がこちらに接近しております‼﹂ ﹁来たか・・・敵の数は?﹂ ﹁10,000弱と予想されます‼敵の全てが歩兵で騎兵は確認さ れておりません‼﹂ 五胡の兵力は10,000弱・・・。いつもの兵力に比べればかな り少ない。我等を侮っているのか・・・・・・それとも何か策があ るのか・・・どちらにせよ油断は出来そうにもない。 ﹁分かった・・・お前達は後方に下がって今暫し休め﹂ ﹁はっ‼﹂ 指示を下すと偵察隊はすぐに後方へと下がっていく。 ﹁詠・・・五胡の連中をどう思う?﹂ ﹁今迄の五胡にしては数が少ないわ・・・威力偵察が目的か・・・ それともこちらの情報が向こうに伝わっていないか・・・﹂ ﹁それで・・・どうするのだ?﹂ ﹁兵力ならこちらが上よ。敵をこの渓谷手前に誘き寄せるわ。嵐に はその尖兵を率いて﹂ ﹁うむ、向かって来る敵は全て我が仁の大斧で蹴散らしてみせよう ‼﹂ 1354 そういうと私は部隊を率いてすぐに五胡に向かって馬を走らせる。 戦が始まるのに大した時間は掛からなかった。敵は何の躊躇もなく 私達へ刃を向け、そしてぶつかってきた。五胡軍の兵士は全身の筋 肉が引き締まった大男が多く、何かの動物の頭蓋骨を仮面として被 っている。その力強い攻撃は確かに驚異ではあるが動きが単純だ。 ﹁奴等の越境を許すな‼我等の家族を守る為にも踏み留まり闘い抜 くぞ‼﹂ ﹃応っ‼劉備様と北郷様の為に‼﹄ 私が率いる華雄隊は私を先頭に奮戦する。私達の部隊は敵陣の奥深 く突き進む強襲を主眼に置いた部隊ではあるが、同時に向かって来 る敵をその爆発力で封じ込める防衛の任も任されることも多い。 昔の私に見習わせたい気分だ。かつての私はただ正面から仕掛ける ことしか知らない猪であった。しかし主様が私の力を活かしつつ、 圧倒的な剛を持って敵の攻撃を跳ね返す戦い方を伝授して下さった。 玄徳様と北郷 一刀様に仕え 金剛爆斧の攻撃範囲の長さと私が持つ力を合わせて向かって来る五 胡を次々と吹き飛ばしていく。 ﹁五胡の蛮族共よ‼我は仁徳王、劉 る仁の大斧の華雄‼貴様等蛮族に我が蜀を好きにはさせん‼命が惜 しくば立ち去るがいい‼﹂ 私は金剛爆斧を地面に突き刺し、仁王立ちにて威嚇するが奴等は立 1355 ち去る処か表情を変えずに向かって来る。それを確認したらすぐに 金剛爆斧を引き抜いて構える。 ﹁引かぬか‼ならば貴様等の頸、この華雄が貰い受ける‼はぁああ ああああ‼‼﹂ 剣や槍を構えて向かって来る五胡。私はそれに向かって斬り込むが 何かがおかしかった。奴等は私と刃を交える距離より前で急に立ち 止まり、鋒を下ろす。 そして違和感がもう一つ。何かがこちらに向かって飛んでくる音だ。 それが何なのか分からなかったが直感で上空に構え、それと同時に 何かが当たった。 ︵小刀・・・・・・いや・・・違う⁉︶ 飛来して来たのは確かに小刀だが、柄には紐が設けられており、そ れが引っ込むと上空に飛び上がっていた誰かの手元に戻り、同時に 逆手で持っていた剣で私に斬りかかってきた。 ﹁くっ⁉﹂ その攻撃を受け止め、私はその敵を弾き飛ばす。しかし攻撃者は何 回転かしながら軽々と着地して構えの姿勢を取る。 その姿は他の五胡の兵士と比べて小柄かつ華奢だが、それでも筋肉 の締まり方は立派なものだ。青色の髪を束ねて動物の毛を使った服 装に血のように真っ赤な胴巻き、左目のみを露わにさせている仮面。 更にその欠如させてある個所から覗かせている黄色の瞳をした目は 私に狙いをつけている。 1356 それらを見て私はすぐに感じ取った。 ︵こいつ・・・かなり出来る・・・︶ 全身から発せられる闘気でかなりの強敵だと感じ取った。体格から して若い男と推測させられるこいつは再び私に斬りかかってきた。 逆手に持った剣を振り上げ、そのまま左からの薙ぎ払い、左手で保 持された小刀による刺突。 刺突の反動を利用した再度の薙ぎ払い。その素早くも的確な攻撃の 前に私は反撃出来ずにいた。 ﹁くっ⁉やるな‼﹂ ﹁・・・・・・﹂ ﹁五胡にも貴様みたいな奴がいるとは・・・・・・だが国に仇なす なら容赦はしない‼﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ 何も喋ろうとしないこいつに対して今度は私の反撃を見舞わせる。 金剛爆斧に渾身の力を込めて振り下ろし、そのまま体を捻らせて反 動を利用した一回転からの振り上げからの連続しての振り上げ。 それが終了したら再び奴の猛攻、そして私の反撃。この繰り返しが 何度も行なわれ、時間が経つのも忘れていた。 ﹁はぁ・・・はぁ・・・﹂ ﹁ふぅ・・・ふぅ・・・﹂ 何度も刃をぶつけ合い、互いに息があがった状態だ。だがこれ以上 の時間は掛けられない。何としてでも次で勝負を決める必要がある。 1357 私は金剛爆斧の柄を短く持ち直し、敵に斬りかかった。 ﹁甘い‼﹂ ﹁⁉﹂ 敵はその攻撃を受け止めるが、私はすぐに手を離して受け止められ た反動を逆に利用してその場で飛び上がり、身体を捻りながら回し 蹴りを見舞う。 流石にこれには反応しきれなかったようであり、私の蹴りが仮面を 粉砕する。いくら仮面で威力が半減されたといっても顔に食らった のだ。少なくとも手傷にはなるだろう。 ﹁勝った・・・のか?﹂ 勝利したと思ったが、奴は顔を押さえながら立ち上がり、姿勢を整 えると押さえていた手を退けて私を睨みつけてきた。しかし奴の顔 を見て私は驚きを隠せなかった。何しろその顔は・・・。 ﹁あ・・・・・・主・・・様・・・?﹂ 私の主、北郷様と瓜二つだったからだ。私の反応を見て奴は自身の 得物を手にしてその場で立ち止まる。 ﹁・・・やるじゃないか・・・・・・まぐれ当たりとはいえ、この 私に一撃を与えるとはな・・・﹂ ﹁なっ・・・﹂ ﹁貴様に免じて今日は退くとしよう。だが・・・次は無いと思え・・ ・・・・引き上げるぞ‼‼﹂ ﹃うぉおおおお‼﹄ 1358 信じられない位の大声で奴は部下達に退却を命じ、同時に一矢乱れ ぬ統制された動きで退却していく。奴もその場から立ち去ろうとす るが、私は奴に問いかける。 ﹁また会おう・・・蜀の大斧﹂ 伯約。麒麟児と呼ばれ・・・いずれは漢を打ち ﹁ま・・・待て‼貴様は・・・一体・・・・・・﹂ ﹁・・・俺は姜維 滅ぼすものだ‼﹂ 自身の名前を名乗ると姜維はその場から駆けていく。その早さは馬 にも負けないものであり、瞬く間に見えなくなった。私はそれをた だ見ているしかなかった。 ﹁華雄様‼ご無事でしたか⁉﹂ ﹁えっ・・・あ・・・・・・あぁ・・・﹂ ﹁どうかされましたか?﹂ ﹁い・・・いや・・・なんでもない﹂ 部下の言葉で私は正気を取り戻し、地面に落ちたままだった金剛爆 斧を手にする。 ﹁それより、部隊を再編成して本陣に戻るぞ﹂ ﹁はっ‼既に編成は完了しております‼﹂ ﹁そうか・・・ならば早く戻るぞ﹂ ﹁御意‼﹂ 伯約。このことは主様以外には黙っておいた 本陣に戻る指示を下すと私達はすぐに撤退を開始する。主様と瓜二 つの難敵・・・姜維 方がいいだろう。そう思いながら私達は本陣に向かうのであった・・ ・・・・。 1359 第174話:嵐VS麒麟児︵後書き︶ 謁見が行なわれた翌日。一刀達はそれぞれの陣営に帰ることになっ 海兵隊の誇り,Re ている。帰る準備が進められる中、ライルと雪蓮もようやく二人き 真・恋姫無双 りとなれた。 次回 [雷と雪] 英雄も普段は人の子となる。 1360 第175話:雷と雪︵前書き︶ 全ての予定が終わったライルと雪蓮。夜に2人っきりの時間を過ご す。 1361 第175話:雷と雪 そこそこ長い診察だった。華蓮と神医によると回復する速度が常人 よりもかなり早く、あと数日程で業務を再開させられるとのこと。 こんなに休んだのは前世のアフガンにてテロリストのIED攻撃を 受けて重傷を負ったとき以来だ。 だが復帰すれば確実に溜まった書類の整理が待っている。第0大隊 大隊長兼孫呉海兵隊司令に警邏隊隊長、訓練所所長。今の役職がこ れらになる。 はっきり言って多忙にも程があると思いたい位である。だがこれが 仕事なのだから遂行しなければならないし、何よりもこれら全てが 孫呉の未来に直結する大事な役職だ。だから無下には出来ない。 しかし動いてはいけないとは言われていない。仕事は出来ないがあ る程度の行動なら許可されているので、俺は・・・・・・。 ﹁ふっふ∼♪﹂ 華蓮達が退出してから暫くしてやって来た雪蓮に甘えられていた。 ﹁それでね冥琳ったらヒドイのよ∼‼せっかく祭と一緒に飲んでた お酒を捨てちゃったんだから・・・﹂ ﹁いや・・・それはどう考えても仕事サボってた君達が原因だと思 うんだが・・・﹂ ﹁ぶ∼‼ライルも一刀みたいなことをいう∼‼﹂ ﹁・・・ていうより一刀もいたのか?﹂ ﹁うん♪﹂ 1362 すまないな一刀・・・・・・後で詫びとして何か持って行かせるか ら・・・。 ﹁でもライルって本当に人気者よね♪﹂ ﹁なにがだ?﹂ ﹁だって魏が謝罪の使者を送って来るのは当然だけど、一刀達も来 てくれたのよ。それに張遼って言う子も凄く心配してたみたいだし ね♪﹂ ﹁・・・本当に心配を掛けたな・・・﹂ ﹁本当よ・・・﹂ 雪蓮の話で霞達が本当にどれだけ心配したのかが理解出来る。何し ろ霞は友達や仲間を本当に大切にする心優しい女の子だ。強い相手 と闘いたいという若干の戦闘凶の一面が見られるが、普段は明るく て純情だ。 霞の印象を思い出しているとムスっとした雪蓮が俺の両頬を摘まん で引っ張り始めた。 ﹁い・・・いふぁい⁉いふぁい⁉しぇるぇん⁉︵い・・・いたい⁉ いたい⁉雪蓮⁉︶﹂ ﹁むぅ∼‼浮気は許さないんだからね‼﹂ どうやら霞の印象を考えていてヤキモチを焼いてしまったようだ。 そんなリアクションもまた可愛く、何処か保護欲に駆られてしまい そうだ。 暫く俺の頬を引っ張っていてようやく離してくれたが、彼女はムス っとしながらソッポ向いてしまった。 1363 ﹁わ・・・悪かったよ雪蓮﹂ ﹁プン‼ライルなんて知らな∼い‼﹂ ﹁はぁ・・・じゃあどうやったら許してくれるかな?﹂ ﹁そうね∼・・・じゃあ・・・﹂ そういうと彼女は俺に振り向いて目を閉じ、顔を少し前に出して来 た。 なにを望んでいるのか理解した俺は軽くため息を吐きながら・・・。 ﹁やれやれ・・・・・・・・・んっ・・・﹂ 彼女の両肩に手を置いて、同じように目を閉じて顔を近付けていき、 彼女の唇にキスを落とした。 ﹁ふ・・・ん・・・・・・ちゅ・・・ちゅ・・・ライ・・・ル・・・ んはぁ・・・ちゅば・・・はん・・・ん・・・﹂ ﹁ちゅちゅ・・・ん・・・ふ・・・雪蓮・・・ちゅう・・・ふぁ・・ ・しぇれ・・・んちゅう・・・ふ・・・ん・・・﹂ あまりに濃厚で情熱的なキス。 ﹁ふぅぁ∼∼∼・・・・・・・・﹂ ﹁はぁ・・・・・・雪蓮・・・﹂ ﹁なに?﹂ ﹁・・・・・・愛してる﹂ そういいながら彼女を優しく、かつしっかりと抱きしめ、対する彼 1364 女も同じよう背中に両手を回して離さないようにしっかりと抱き締 めて来た。 ﹁ねぇ・・・ライル﹂ ﹁・・・・・なにかな?﹂ ﹁私も・・・あなたを愛してる・・・﹂ ﹁・・・・・・ふふっ﹂ それから少しの間だけキスを何度も続け、俺はその際にあることを 本 思い出して立ち上がり、引き出しの中から包み紙に包まれたお香を 取り出した。 ﹁ねぇライル、それは?﹂ だって﹂ ﹁だいぶ前にお香屋でお香を買った時に娘さんがくれたんだ。 当に大事な人と2人っきりになったら使え ﹁ふぅ∼ん・・・じゃあ私が本当に大事な人なんだ♪﹂ ﹁当たり前だ・・・﹂ そういいながら俺はジッポを取り出してお香に火を付ける。すぐに お香の香りが部屋の中に充満していき、俺達を包み込む。 ﹁・・・変わった香りだな・・・どうかな雪蓮?﹂ ﹁そうね・・・なんだか甘い香りでもないし・・・不思議な・・・ かお・・・り・・・﹂ ﹁雪蓮?﹂ 何だか雪蓮の様子がおかしかった。気になったので俺は隣に再び腰 掛けて彼女の顔を覗き込む。 ﹁雪蓮?大丈夫か?﹂ 1365 ﹁う∼ん・・・・・・﹂ ﹁どうかしたか雪蓮・・・・・・んっ⁉﹂ 顔を覗き込んで話し掛けた直後、雪蓮は俺の後頭部に両手を回し、 そのまま自身の唇を押し当てて来た。あまりにもいきなりだったの で身構えが出来ず、俺は寝台に押し倒された形となった。 ﹁ん・・・ふ・・・ちゅちゅ・・・ふ・・・ん・・・ちゅばぁ‼ん ん‼﹂ ﹁ちゅ・・・ちゅば‼ふぁ‼ちゅう・・・ふぅん・・・んはぁ・・・ ﹂ 先程とは比べ物にならない位に濃厚で激しいキス。雪蓮が俺の舌に 自身の舌を絡ませ、貪るように唾液を交換してくる。 ﹁ん・・・んん・・・ぷはぁ・・・﹂ ﹁はぁ・・・はぁ・・・し・・・雪蓮・・・﹂ ﹁ライルぅ・・・熱い・・・身体が熱いの・・・﹂ ﹁あ・・・熱い?﹂ いきなり熱いと言い出す雪蓮。そういえば確かお香を焚いた瞬間に こういった症状になっている。俺は少しだけお香の香りをかいでみ た。 ﹁・・・この匂いは・・・ま・・・まさか媚薬入りか?﹂ 症状からして間違いないだろう。つまりお香屋の娘さんはこういう 状況にする為にあれを渡したということになる。 しかしその間にも雪蓮は濃厚なキスを続けて来る。 1366 ﹁ライルぅ・・・﹂ ﹁し・・・雪蓮・・・﹂ ・・・・・・やばい・・・あまりにも可愛すぎる・・・それにどう やら俺にも媚薬の効果が回って来たみたいであり、頭がぼーっとし てきた。 ﹁し・・・雪蓮・・・・・・﹂ ﹁ライル・・・・・・﹂ もはや理性の制御が出来ない。理性が働かないのならそのまま流れ に身を委ねることにし、俺は再び雪蓮の唇を堪能する・・・・・・。 それからあまり記憶が曖昧となっていた。朝になって気が付けば俺 と雪蓮は生まれたままの状態で寝台に抱き合いながら寝ていた。 俺はため息を吐きつつも彼女の唇に軽くキスを落とし、寝冷えしな いように掛け布団を彼女に被せて服を着る。 それから暫くして、一刀達の使者一行と牙刀達一行がそれぞれの陣 営に戻る時間がやってきた。 俺は建業の城門前にて見送りをする為に集まっていた。 1367 ﹁じゃあライルさん、俺達は帰ります﹂ ﹁あぁ、心配を掛けてすまなかったな﹂ 俺と一刀は互いに手を差し伸べて握手を交わす。 ﹁ライル殿、私達もこれにて失礼させて頂く。どうかお元気で・・・ ﹂ ﹁あぁ・・・出来ることなら次に会うのは戦場以外がいいが・・・ それは叶わないだろうな・・・﹂ ﹁うむ・・・しかしその時には互いに力と技を出し尽くし、武を極 めようぞ﹂ ﹁望むところだ・・・凪も元気でな、于禁と李典にも宜しく言って おいてくれ﹂ ﹁は・・・はい‼﹂ 相変わらずだが本当に忠犬みたいな子だ・・・。 2人には既に桃香と曹操に俺と雪蓮が書いた手書きの返書を渡して ある。 桃香へは心配させたことへの詫びと近い内にそっちに邪魔すること。 曹操には今回の一件の不問。それに司馬懿への警戒という軽い警告 だ。 ﹁じゃあ帰ります。身体には充分に気を付けて下さいね﹂ ﹁だったら私達も帰るとしようか・・・世話になったな﹂ ﹁あぁ・・・・・・元気でな﹂ 一刀。 そういいながら俺達は手にしていた得物を掲げて、刃を軽く重ねる。 蜀の英雄・・・北郷 1368 魏の英雄・・・徐晃 公明。 そして俺。呉、蜀、魏の3英雄が争いの無い時間で再開を約束した 瞬間だった。 次に会う時に牙刀とは敵同士・・・だが迷っている訳には行かない。 呉に手を出す敵がいるのならばそれは必ず排除しなければならない。 の背中を見送るのであった・・・・・・・・・。 それが俺達、海兵隊の役目だ。だが今はそれぞれの陣営に帰還する 友 1369 第175話:雷と雪︵後書き︶ 蜀に帰還して桃香率いる南蛮方面軍に合流した一刀。準備を整えて 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 南蛮へと出陣し、そこで南蛮王と出会う。 次回 [南蛮] 南蛮王とその仲間達と出会う。 1370 第176話:南蛮︵前書き︶ 一刀が合流した南蛮方面軍。南蛮の地にて新しい仲間が増える。 1371 第176話:南蛮 蜀の南部に広がる鬱蒼とした森林地帯、南蛮。中国大陸を制した国 が南西方面の帰順しない異民族に対する呼称となったこの土地に暮 らす民族は漢王朝に帰従せず、部族単位で動くことでしか知られて いない。 その南蛮部族の一部が最近になってから蜀の国境付近に悪さをし始 め、このことを重く感じた俺はライルさんへの見舞いを済ませ、蜀 に帰還してすぐに桃香達南蛮平定軍と合流。 そこですぐに南蛮へと向かったが問題が早くも生じた。それは・・・ ・・・。 ﹁あ・・・暑い・・・﹂ あまりの暑さに参っていた。一応は俺も薩摩出身だがここの暑さは 比べ物にならない。だから俺もフランチェスカ学園の上着を脱いで 紛らわせているが、それでも暑かった。 ﹁ご∼主人様ぁ∼・・・何とかならない∼?﹂ ﹁こればっかりはどうにもならないよ・・・﹂ ﹁しかし・・・この暑さで兵達もかなり参っています﹂ 愛紗の言葉で俺は振り向いた。確かにみんなこの暑さでかなり疲れ ているようだ。一応は休息を多めに与えてはいるけれども、これば っかりはどうしようもない。 ﹁はぁ∼・・・だったら短期決戦ってことかな・・・﹂ 1372 ﹁そういう事になるよ・・・ところで、南蛮の国の特徴は分かる?﹂ ﹁そうですねぇ∼、まずこの国の住民は家では無くて洞穴に住んで いるそうです﹂ ﹁獣じみた格好をしていたり、見たこともない食べ物を食べたり・・ ・﹂ 朱里と雛里の言葉に俺は耳を傾ける。 ﹁つまり・・・文化が全く違うってことだね・・・他には?例えば 部族の規模とか・・・﹂ ﹁それほど大きな部族はおらんだろうな﹂ ﹁何故そう言えるのだ?﹂ ﹁南蛮の人間は部族単位で動く。部族には必然的に口を賄える人数 しかいない﹂ 流石は蜀に長く仕えている焔耶だ。確かに南蛮の民族一つ一つは小 さいが、それらが連合を組んで蜀に反旗を翻したとされる。 ﹁じゃあ狙い通り、短期決戦で決着を付けられるかな?﹂ ﹁それは無理なのだ。だって地の利は奴らが持ってるんだから。﹂ ﹁あ・・・そっか・・・う∼ん・・・じゃあ長期戦になるかもしれ ないねぇ﹂ 桃香が深くため息を付く。その時・・・ ﹁当然なのにゃ‼﹂ どこからともなく声が響いた。俺達はそれぞれの得物を手に取って 臨戦体制を整える。 1373 ﹁誰だっ⁉﹂ ﹁我こそは南蛮大王孟獲なのにゃ‼ショクとか言う奴らめ‼我らの 縄張りに入ってきて、タダで帰れると思ったらいかんじょ‼﹂ そこにいたのは前方から愛らしい出で立ちの元気一杯の小さな猫耳 少女がいた。俺は思わず鋒を下ろしてしまっていた。 特に桃香はいつの間にか目を輝かせながら歩み寄っていた。 ﹁うわ∼‼可愛いぃい♪﹂ ﹁にゃ?﹂ ﹁ねぇねぇご主人様‼この子、ぬいぐるみみたいで可愛いよ‼耳ま でついてるし‼﹂ ﹁・・・﹂ ﹁ご主人様?﹂ ﹁・・・・・・﹂ ﹁ご・・・ご主人様?﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ 桃香が話し掛けているようだが、俺は耳に入っていなかった。孟獲 に歩み寄ると・・・。 ﹁にゃっ⁉﹂ ﹁・・・・・・お持ち帰りする・・・﹂ 孟獲を抱きかかえると来た道を引き返していた。 ﹁ニャー⁉にゃにするにゃ⁉みぃは南蛮の王様なのにゃ‼離すにゃ ‼﹂ ﹁・・・って⁉ご主人様⁉あなたは何をしておられるのですか⁉﹂ ﹁はっ⁉・・・・・・危なかった・・・﹂ 1374 愛紗が俺を止めてくれたおかげで人攫いみたいなことは避けられた。 ジタバタと暴れる孟獲を俺はゆっくりと地面に降ろしてあげた。 ﹁ごめんごめん・・・ところで、君がここに来たって事は戦いに来 たのかな?﹂ ﹁そうなのにゃ!お前達の相手をするにゃ‼﹂ ﹁ほぅ・・・ならば話が早い。南蛮王の素っ首たたき落とし、後顧 の憂いを断たせてもらおうか‼﹂ 愛紗が偃月刀を構える。 ﹁上等なのにゃ‼南蛮大王孟獲が相手をするじょ‼子分共‼﹂ 孟獲が先に大きな猫の手の付いた鈍器を構えた。すると孟獲の背後 から・・・。 ﹁みぃ様がんばるにゃー‼﹂ ﹁つぎトラ‼トラがたたかうにゃ‼﹂ ﹁みぃ様∼・・・おなかへったぁ∼﹂ ・・・・・・なんだこの小動物は・・・。 何やら猫娘達が応援を受け、孟獲は勇ましげに武器を構えた。 ﹁ふーっ‼みぃは強いじょ‼泣いて謝ったら許してやるじょ‼﹂ ﹁あらあら♪可愛らしい子分さん達ね♪﹂ ﹁・・・ご主人様﹂ ﹁・・・分かってる・・・戦えないんだよね?﹂ ﹁・・・は・・・はい﹂ 1375 ﹁うん・・・気持ちは凄く判るから良いよ。下がっといて﹂ ﹁す・・・すみません。はぁ∼・・・﹂ いつもは真面目な愛紗がこんな惚けてしまっている表情をしながら 後方に下がる。 恋と同じ匂いがする相手じゃ、愛紗じゃ戦えないだろうな。という かこんな子供と戦うとまるで俺達が悪者だ。だから俺は神龍双牙を 納刀して孟獲に歩み寄る。 ﹁まぁまぁ孟獲ちゃん。ちょっとお話しようか?﹂ ﹁何にゃ?﹂ ﹁俺達はね。孟獲ちゃん達を力で従えるつもりはないんだよ﹂ ﹁にゃ?﹂ ﹁簡単に言うとね。俺達とお友達になって仲良くしましょうって事 だよ﹂ ﹁仲良く・・・にゃ?﹂ ﹁うん、そうだよ﹂ ﹁ふん‼みぃはお前達と仲良くするつもりはないのにゃ‼﹂ ﹁そう・・・じゃあどうすれば仲良くしてくれるのかな?﹂ そういうと孟獲は考え始める。 ﹁う∼ん・・・そうだにゃ‼この森の中でみぃを捕まえる事が出来 たら考えるにゃ‼﹂ ﹁この森の中で逃げる孟獲ちゃんを捕まえればいいんだね?﹂ つまりは鬼ごっこということだ。 ﹁分かったよ。だけど捕まえたらちゃんと約束を守らなきゃ駄目だ よ﹂ 1376 ﹁もちろんにゃ‼そのかわり捕まえられなかったらお前達の負けに ゃ‼﹂ それだけいうと孟獲が走って俺達から離れる。 ﹁へへーんにゃ‼捕まえられるものなら捕まえてみろにゃ‼﹂ 猛スピードで視界から消えていった。 ﹁よろしかったのですか?﹂ ﹁なにが?﹂ ﹁地の利は向こうにありますし・・・何より・・・・すばしっこそ うですよ?﹂ ﹁大丈夫だよ。俺に考えがあるから・・・蒲公英はどこだ?﹂ ﹁ここにいるよ∼♪﹂ 俺がそういうと元気一杯に手を挙げながら蒲公英が現れる。 ﹁朱里、雛里、蒲公英。ちょっと耳を拝借﹂ 俺は3人を集めて話をする。 ﹁・・・・・・・・・・・・って内容だよ﹂ ﹁はわわ・・・なるほど。﹂ ﹁あわわ・・・それは名案です﹂ ﹁にしし∼、面白そう‼蒲公英そういうの大好き♪﹂ ﹁よし、それじゃ、すぐ始めようか﹂ ﹁﹁御意です♪﹂﹂ ﹁了解∼♪﹂ 1377 そういうと3人はすぐ準備に取り掛かる。愛紗や桃香達は何なのか あまり理解出来ていなさそうだけれども、説明するよりも見た方が 手っ取り早い。 俺達は猫を捕まえる為に行動に移る。 ﹁・・・え・・・えっと・・・ご主人様﹂ ﹁なに?﹂ ﹁いくらなんでも馬鹿にし過ぎなんじゃ・・・﹂ 桃香は俺が仕掛けた罠に失笑していた。というか罠というよりも落 とし穴にの上に饅頭を置いただけのものだ。普通の人なら素通りす る程度のものだ。 ﹁うん、大丈夫だと思うよ。というかこっちの罠の方が掛かる気が するからね﹂ ﹁でもいくら私でもあんな罠には引っかからないし、それに分かり 易いし﹁にゃにゃぁ∼⁉﹂えっ?・・・・・・﹂ ﹁こんなところになんで落とし穴があるにゃ⁉深いにゃ⁉助けてに ゃ⁉﹂ ﹁・・・・・・あ・・・あはあははは・・・﹂ ﹁・・・綺麗に引っかかったね・・・﹂ 仕掛けた罠にあっさりかかる孟獲。俺は落とし穴に歩み寄って孟獲 あっ・・・猫 と口にしたのは爆笑しかけた。 を抱きかかえる。因みに猫みたいに首を掴まれた状態だ。その時に 朱里と雛里が ﹁はい、捕まえた﹂ 1378 ﹁にゃ∼・・・﹂ ﹁これで良いかな?﹂ ﹁まだにゃ‼みぃはまだ降参しないにゃ‼﹂ 子供みたい・・・というか子供か・・・。諦めが悪い孟獲をゆっく り降ろして同じ目線になるようにかがむ。 ﹁じゃあ・・・次また捕まったら約束を守ってね﹂ ﹁ふー‼覚えてろなのにゃー‼﹂ 捨て台詞を残して去っていった。 それから何種類か罠を仕掛け、流石に簡単には引っかからないと思 ったが・・・。 ﹁にゃー⁉網が落ちて来たにゃ⁉暗いにゃ⁉助けてにゃ⁉﹂ スズメ獲りの罠に引っかかったり・・・。 ﹁ハグハグハグハグ‼﹂ 肉をぶら下げた釣り糸にあっさり釣れたり・・・。 ﹁あぅぅ∼・・・頭に血が上るのにゃ・・・たすけてぇ∼、た∼す けてにゃ∼・・・﹂ スネアトラップに引っかかり・・・。 ﹁にゃ⁉なんでこんなところに穴があるにゃ⁉﹂ 1379 二回目の落とし穴・・・。 ﹁にゃぁああ⁉また引っかかったにゃぁ・・・もう嫌にゃぁぁぁ⁉﹂ 三回目の落とし穴。そして極め付けは・・・。 ﹁にゃぁぁぁ・・・もう嫌にゃぁぁぁ・・・・・・みぃはもう帰る にゃぁぁ・・・﹂ ・・・四回目の落とし穴。下手な獣よりも簡単に引っかかったな・・ ・。 流石に7回も引っかかったことでグッタリとしている孟獲は・・・・ ・・。 ﹁うにゃぁぁぁ・・・もう降参にゃぁ・・・﹂ 俺達の前で尻をついて降伏していた。流石にやり過ぎたと反省した 俺は孟獲を抱き抱えてそのまま肩車をしてあげる。 ﹁に・・・にゃっ⁉﹂ ﹁ごめんね、いじめちゃって・・・だけど君と友達になりたいって のは本当だよ﹂ ﹁にゃ・・・みぃと友達になってくれるのかにゃ?﹂ ﹁ああ、本当だよ﹂ 俺の顔を覗き込む孟獲に俺は笑顔で答える。すると孟獲はニカッと 笑顔を見せて答えてくれた。 ﹁分かったにゃ‼みぃはショクと友達になるにゃ‼﹂ 1380 ﹁そりゃ嬉しいな。じゃあ俺のことは一刀って呼んでいいよ﹂ ﹁兄ぃはこれからみぃの兄ぃにゃ‼真名のみぃを預けるにゃ‼﹂ 兄ぃって・・・まぁ確かにこの子は何というか元気一杯の末の妹み たいな感じがする。肩車をしてあげると何かに気が付く。 右側から砂塵を舞い上げながら何かがこちらに向かって来ていた。 それを見た美以はなんだか慌て出した。 ﹁にゃ⁉あ・・・あれは⁉・・・兄ぃ‼すぐ逃げるにゃ‼﹂ ﹁に・・・逃げる?﹂ ﹁にゃぁぁ・・・まずいにゃ・・・また菫に怒られるにゃ⁉﹂ ﹁・・・・・・?﹂ かなり混乱している様子だが、俺が話し掛けてかける前に砂塵の要 因からなにやら声が聞こえて来た。 ﹁こぉぉぉぉぉぉらぁあああ‼‼みぃぃぃぃいぃぃぃぃ‼‼﹂ 見えてきた姿はカールがかかった黒髪に桃色主体の南蛮服を身に付 け、桃色の猫耳と尻尾を付けた紫苑や桔梗に負ける劣らずのスタイ ルを持った女性だ。 その女性はすごい勢いでこちらに向かって来ていた。 そして美以の前で急ブレーキをかけて停止した。 ﹁美以‼あんたまたあたいが寝てる隙に勝手に出歩いて‼﹂ ﹁ひぃ⁉﹂ ﹁おまけにまた人様に迷惑掛けて・・・今日という今日はお仕置き だよ‼﹂ ﹁にゃっ⁉ご・・・ごめんなさいにゃ⁉もうしないにゃ⁉﹂ 1381 ﹁あ・・・・・・あの∼・・・﹂ ﹁ん?・・・あぁすまなんだね。あたいの美以が迷惑掛けちまった 一刀って言います・・・後ろにいるのは俺の みたいだね。で・・・あんた等はなんだい?﹂ ﹁お・・・俺は北郷 大事な家族です﹂ ひとまずは自己紹介すると、女性は俺のことをマジマジと見てくる。 ﹁へぇ・・・あんたが噂の御遣いって奴かい・・・あたいはこの子 等の親代わりをしてる祝融ってんだ﹂ ﹁分かりました・・・で・・・・・・なんで俺の顔をジロジロと?﹂ ﹁いやだねぇ・・・噂の御遣いってのがどんな奴だと思ってねぇ・・ ・﹂ そういいながら祝融は俺の胸板に手を置いて来た。 ﹁へぇ・・・よく見たら中々可愛い坊やじゃないかぃ・・・﹂ ﹁あ・・・あの・・・﹂ すみれ ﹁気に入ったよ、あたいもあんた等蜀に協力させてもらうよ。これ からはあたいのことは菫って呼んどくれ﹂ ﹁わ・・・・・・分かりました・・・﹂ ﹁そんな固っ苦しい喋りは無しだよ♪どうだいあんた?このままあ たいの家に来るかい?いろいろと尽くしてやるよ♪﹂ そういいながら菫は俺の腕に抱きついてきて、顔を口付けが出来る 距離までに近付けてきた。 それと同時に背後からなにやら気配が・・・。 ﹁ご主人様∼・・・﹂ ﹁あなたは何をされておいでですか?﹂ 1382 ﹁は・・・・・・はあははははは・・・﹂ 振り向くとそこにいたのはヤキモチを焼いている桃香と愛紗・・・。 ﹁す・・・菫さん・・・気持ちは嬉しいんだけど・・・その・・・﹂ ﹂﹂ ﹂ ﹁あら残念♪だったら今度は一晩・・・じっくりと・・・﹂ ﹁﹁ご主人様‼⁉ ﹁ご・・・誤解だぁあああ‼⁉ 嫉妬に駆られた二人による鬼ごっこが始まった。 この後に南蛮と交友を深めて平定に成功。美以達も正式に蜀の客将 として迎え入れられ、これにて南蛮問題は解決した・・・・・・・・ ・。 因みにこのあと、愛紗と桃香に捕まった俺は二人とデートする羽目 となった・・・・・・。 1383 第176話:南蛮︵後書き︶ 南蛮平定が完了した丁度その頃、使者達が帰還していった呉でも新 たな動きが見えた。 保守派による大規模な反乱。現場に復帰したライルも部下を率いて 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 反乱軍に占拠された街に潜入する。 次回 [ハリケーン] 深夜の街並みに狩人達が忍び込む。 1384 第177話:ハリケーン︵前書き︶ 反乱軍により制圧された街に復帰したライルが任務に向かう。 1385 第177話:ハリケーン あの魏による呉侵攻を阻止し、一刀達が見事に南蛮を平定させてか ら約一ヶ月、呉内部は荒れていた。 孫静率いる保守派と豪族一派が反乱軍を結成した 魏の侵攻に合わせて行方不明になっていたあの孫静は各地の豪族や 雪蓮の方針に反発する一派を引き連れて各地で決起。戦闘が繰り広 げられていた。 その間に魏による呉への再攻撃が予想されていたが、数日前に曹操 からの使者が赴いて反乱軍鎮圧までの期間は呉に対して一切の攻撃 はしないと知らせてきた。 同盟国の蜀は南蛮平定からあまり日が経過しておらず、今は内務に 力を注いでいる状態だから援軍は不可能。今回の内乱は俺達だけで 鎮圧しなければならない。 そして建業から南に位置する新都が反乱軍により占拠されたという 報告が舞い込み、加えて状況確認の為に孫静の側近の一人が現地入 りしたという情報が入った。 現場復帰した俺はハンターキラーを率いて新都に潜入。確保へと向 かう為に水路を移動していた。 ﹁ハンター1−1よりオールハンド。状況を報告しろ﹂ <ハンター2−1から1−1。こちらは潜入ポイントに到着> <ハンター3−1から報告。こちらも潜入ポイントに到着。待機し ます> 1386 コヨーテブラウンカラーのローデシアンチェストリグにCQCホル コンバットユニフォームに同色のブーニーハット。 スター等の装具を身に付け、MARPATピクセルグリーンGEN 3 手にサプレッサーとAN/PEQ−15、パイポッド、右上部のオ WPSASSと フセットマウントに取り付けたリフレックスサイト、リューボルト M3ライフルスコープを取り付けたSR−25M いう狙撃任務用の装備だ。 俺達ハンター1の任務は2と3よりも先に潜入して雨が降る市街地 の中を察知されないように目標がいるとされる建物が確認出来る場 所へと向かい、ハンター2は別ルートから孫策軍支持派の残党と合 流して目標の建物の屋上へ向かう。 ハンター3は城壁へと向かい、奪還部隊の突入口確保と明日120 0より開始される新都奪還の援護だ。 加えて建物への突入は1155より開始される手筈だ。仮に目標を 取り逃がしたとしても周辺には孫策軍による包囲網。逃げられる筈 がない。 だが孫呉の誇りを忘れて雪蓮に反旗を翻す奴等を俺は絶対に逃しは しない。たとえこの場で逃したとしても地の果てまでも追い掛けて 殺してやる。 ﹁しかし・・・中佐も災難ですね﹂ ﹁何がだ?﹂ ﹁復帰していきなりの作戦が反乱軍の鎮圧だなんて・・・﹂ ﹁時期が悪かったんだ。致し方あるまい・・・だが裏切り者には一 切の情けは掛けられない。あの婆さんを見つけたら絶対に始末して やる・・・﹂ 1387 雨が降る市街地の中をSR−25M Mod1 で警戒しなが CASVを装備 WPSASS ら前進していき、俺の後ろでMk16 している1−2が何かを見つけた。 ﹁中佐、屋根の上に弓兵﹂ ﹁隠れろ、見つかったら厄介だ﹂ そういうと俺達は物影に隠れながら様子を伺う。俺達の針路上には 敵兵が4名と屋根上に弓兵が2名。 恐らくは見張りだろうが練度が低そうだ。特に弓兵の一人は腰掛け ているし、もう一人は面倒くさそうな表情をしながら見張りをして いる。 俺は迷わず屋根上にいる弓兵に照準を合わせる。立っている奴が別 方向に視線を向けた瞬間に座っている奴の頭部を撃ち抜いた。 ﹁もう一人・・・﹂ そしてもう一人が気付く前に照準を合わせて発砲。同じく頭部を撃 ち抜かれた敵の死体は地上に落ちることなく屋根の上に倒れる。 ﹁残り4人。そのまま残りを仕留めるぞ﹂ WPSASSを構え直し、ハンター1−2 ﹁﹁﹁Hooah﹂﹂﹂ すぐさまSR−25M CASVでハンター1−3は俺と同じ編成 WPSASS。 Mod1+Mk13 Mod0を構え Mod1 はMk16 のSR−25M ハンター1−4はMk16 る。全員のライフルにサプレッサーが装着されているので、発砲音 が聞かれることはないだろう。 1388 そして各々が照準を合わせるとほぼ同時にトリガーを引いた。放た れた5.56mm弾と7.62mm弾はしっかりとヘッドショット を決め、命を絶たれた4人は音を立てて崩れた。 ﹁正面クリア。前進するぞ﹂ ﹁了解﹂ ﹁了解です中佐﹂ ﹁しかし、街はすっかり封鎖されているようですね﹂ そう言われながら俺は角から大通りを見る。少し先には敵の検問所。 敵の数はそれほどでもないが、攻撃に備えていると思われる大型連 弩が確認出来る。 ﹁あれに見つかったら厄介だ。見つからないように物影に隠れなが ら行くぞ。気を抜くな﹂ ﹁方角はここから東北に進んだ先ですね。それにはいちど広場を通 過しなければならないですよ﹂ ﹁なんで分かるんだ?﹂ ﹁前に休暇でここに来ましたからある程度ならわかります﹂ 1−2の話を聞きつつも俺達は警戒しながら前進していく。道路に は警戒にあたっていた奴等がいたが、これ等の障害は排除したり、 時にはやり過ごしたりして前進を続ける。 そして通過地点でもある場所に到着すると俺達は隠れながらライフ ルを点検する。 ﹁よし、ここから予定通りに二手で行くぞ﹂ ﹁了解﹂ 1389 ﹁少尉は俺と一緒に来い。ポイントαへと向かう﹂ ﹁了解です中佐﹂ ﹁曹長と軍曹は路地を進みながらポイントbに向かえ。一番大きな 建物だからすぐに分かる﹂ ﹁了解です﹂ ﹁了解﹂ ﹁ハンター2および3。状況は?﹂ <路地を通過中。指定時間までに到着可能です> <ハンター3から報告。こちらは城壁に到着。予定狙撃地点の制圧 中> ﹁確認した。だが路上で敵の行動が予想以上に活発だ﹂ <警戒した方がいいですね> ﹁あぁ、交戦は可能な限り避けるんだ。数ではこちらが不利だ。こ んな下らない戦場で死にたくはないからな﹂ <それはありますね・・・> 無線でハンター2と3に警戒を指示すると俺はみんなにハンドシグ ナルで指示。少尉は俺の後に続いて、曹長と軍曹は別の路地を進み、 その先にあった壁をよじ登っていった。 俺達も前進を再開するが本当に敵の行動が活発だ。道中の屋根の上 には警戒にあたる敵の弓兵が何度か確認され、その度に路肩や物影、 時には建物の中に潜入してやり過ごす。 ﹁少尉、そこを動くな﹂ ﹁了解﹂ 少尉に停止命令を出すと俺はUSP,45を取り出し、ゆっくりと 曲がり角に歩いていく。すると敵がそこから現れ、照準を頭部に合 わせて45.ACP弾を撃ち込む。 死体は音を立てて倒れようとしたが、すんでの処で受け止めてゆっ 1390 くりと路地に引っ張り込む。 ﹁ハンター1−3、そっちの状況は?﹂ <こちらは位置に付きました。しかし広場には敵の大軍が集結して います> ﹁具体的な数は?﹂ <歩兵が40名以上。防御用の大型連弩も確認> ﹁了解だ。こちらもαに急行する﹂ 向こうは既に到着したようだ。だったら俺達もすぐ目標地点に向か わなければならない。広場の隅をゆっくり確実に進みながら広場の 反対側へと向かう。すると・・・。 ﹁誰だ?﹂ 察知されてしまった。だが向こうはこちらを敵だと感じていないよ うであり、何の警戒もせずに歩み寄って来た。 俺は何も言わずOKC−3Sを手にして構える。 ﹁ムグッ・・・⁉﹂ 素早く回り込んで口を塞ぎながら喉もとを切り裂く。そのまますぐ に死体を物影に隠して匍匐しながら前進。 やがて目標の建物である大きな宿が見えて来て、そこから約200 こちら という曹長からの連絡があったポイ m離れた場所に俺達の狙撃地点であるポイントα。無線で で銀髪のイケメンを見つけた ントbの塔も見える。 幸いにもまだ周辺には敵はまだ展開しておらず、取り付くのには容 易かった。 1391 ﹁こちらハンター1−1。ポイントαに到着した。他の連中は?﹂ <こちらハンター2−1、目標の建物を確認。屋根伝いで取り付き ます> <ハンター3−1よりハンター1−1。こちらも正門付近を制圧。 突入口の確保と援護準備完了> out﹂ ﹁了解した。まだターゲットが来るまで時間がある。今の内に休ん でおけ。ハンター1−1 休息を命じて通信を切る。こちらも今の内にSR−25Mのメンテ ナンスを行ない、万全の態勢で狙撃に挑む。後は目標が現れるのを 待つだけ・・・・・・・・・。 1392 第177話:ハリケーン︵後書き︶ 準備は整った。ライル達がそれぞれの狙撃地点に構え、旅館の屋根 に取り付いたクラウド達が確保の用意をする。 and 真・恋姫無双 Roll] 海兵隊の誇り,Re そして合図と共に開始する。 次回 [Rock 反乱者に狼達が噛み付く。 1393 第178話:Rock and Roll︵前書き︶ 目標の建物にハンター2が突入する。 1394 第178話:Rock and Roll 新都に潜入した次の日の正午頃。俺達は目標の建物の屋根の上にい た。 パーソナルウェポンライトとエイ Mod1。 ラペリングロープを固定させて待機している。手にはCQB仕様に バレルを交換したMk16 オプションパーツにはM961 ムポイントT−1+エイムポイント3×ブースター、タンゴダウン タイプバトルQDショートフォアグリップを取り付けてあり、室内 Mod0を抱える。 戦闘に特化した仕様となっている。因みに奇襲目的として既にサプ レッサーは取り外されている。 俺達は物影に隠れつつ、合図を待っていた。 <ハンター2各員、現状を報告せよ> Mod1+Mk13 ﹁ハンター2リーダー、準備よし﹂ ダン曹長は隣でMk16 ﹁ハンター2−2、突入用意完了﹂ ポーも手にM870MAGPULに初弾を装填して答える。 Mod0だ。壁の向こう側にいる敵がいれば彼 ﹁ハンター2−3。OKです﹂ レニーはMk17 女の出番になる。そして・・・。 1395 ﹁ハンター2−4、狩の準備よし﹂ 俺も無線で準備よしと答える。作戦の第二段階だが、今朝方には既 に目標の一段が到着している。こちらの潜入に気取られた気配は全 くない。 入り口前や窓付近には衛兵が確認されており、孫策様率いる本隊が 攻撃を開始するのを確認出来たら中佐達がそれ等を狙撃。 その際の発砲音を合図に俺達ハンター2が一気に室内へ突入。障害 を排除しつつ目標を仕留める手筈だ。 目標の排除完了と同時に孫策軍がハンター3により確保された正門 ハリケーン の全容だ。 より市街地に突入。敵敗残兵を掃討する。これが今回のオペレーシ ョン 準備を進めていると街の外から声が鳴り響いてきた。 <ハンター3から報告、孫策様率いる本隊が攻撃を開始> <了解した。反乱軍の様子は?> <いきなりの攻撃に混乱して次々と討ち取られています> <了解した。ハンター1−1から全ユニット。状況開始。繰り返す、 状況開始だ> ﹁了解です中佐・・・・・・さて、野郎共。嵐の中に突入するぞ﹂ ﹁﹁﹁了解﹂﹂﹂ ダン曹長の指示で俺達は屋根の淵に足を掛けて突入出来る姿勢を取 る。下には見張りの敵兵が数名いたが、それは複数の銃声で全員が 音を立てて倒れた。 中佐達による狙撃だ。その銃声を聞くと膝を曲げて足に力を溜め込 む。 1396 ﹁突入する‼﹂ 曹長の指示で俺達はほぼ同時に淵を蹴り、一気に室内へと突入。俺 も抱え撃ちをしながら近くにいた敵の身体に銃弾を浴びせつつ室内 へと飛び込んだ。 ﹁て・・・敵だぁ⁉﹂ ﹁こ・・・こいつら群狼隊⁉﹂ いきなりの出現に驚く敵兵。だが俺達は容赦せず敵に銃弾をお見舞 いする。敵の数は少なかったので制圧には5秒も掛からなかった。 ﹁室内制圧‼﹂ ﹁よし二手に別れる‼俺とレニーは一階を制圧‼クラウドとポーは 二階を制圧しろ‼﹂ ﹁了解‼﹂ ﹁了解です曹長‼行くぞクラウド‼﹂ ﹁分かってるさ‼﹂ 二手に別れて俺達は引き続き二階の捜索を実施し、曹長とレニーは 近くの階段を降りて行って一階へと向かった。 混乱しながらも向かってくる敵兵を次々と仕留めながら部屋を捜索 していく。 ﹁フラッシュバン‼﹂ 時にはポーが内部にフラッシュバンを放り込んで怯んだ隙に制圧し たり・・・。 1397 ﹁フラグアウト‼﹂ 敵しかいないことが分かっていたらM67を投げ込んで一網打尽に したり・・・。 ﹁くそがぁあああ‼﹂ ﹁そんな攻撃が通用するかよ⁉﹂ ヤケになって斬りかかってきた敵には容赦なくグルカナイフで切り 裂いてやる。 俺とポー。改めて感じるが俺達の連携効率はハンターキラーの中で もずば抜けて高い。実際に何度か中佐達をあと一歩の処まで演習に て追い込んだことがある。いつも逆転されてしまうが・・・。 そんなことを考えながら俺達は二階の部屋を片っ端から捜索してい くが目標は見当たらない。そして一番端の室内を制圧し終わり、死 体の顔を確認していた。 ﹁くそっ⁉ハズレだ‼﹂ ﹁こっちもだ・・・目標はいないようだな・・・﹂ ﹁リーダー‼そっちはどうでしたか⁉﹂ ﹁こっちもダメだ‼﹂ ﹁逃げられたか⁉﹂ リーダーも一階を制圧して目標を捜索したがいたのは一般兵のみ。 ここにいるというのは確認済みだが、どこにもいなかった。すると 無線がなってそれにすぐ出る。呼びかけ先は中佐だった。 <ハンター1−1からハンター2> ﹁こちらハンター2、感度良好﹂ 1398 <目標を建物の右側で確認した。奴等逃亡しようとしているぞ> ﹁くそっ⁉逃がすか‼﹂ <奴は護衛を盾代わりにしている・・・くそっ⁉狙撃の邪魔だ‼> <まずいです中佐‼逃げられます‼> <分かってる‼・・・くそ⁉目標をロスト‼> <こちらハンター1−3‼こちらからでも敵の追尾は不可能‼> <了解・・・くそっ⁉> ﹁中佐‼自分達が追跡します‼﹂ <・・・・・・いや・・・我々はこのまま周囲の制圧にかかる‼後 はアレックス少佐達に任せる‼> ﹁中佐⁉﹂ <命令だ曹長‼それに地の利は向こうにある‼気持ちは分かるが下 手に動けば思う壺だ‼いいな⁉> ﹁Fuck!!﹂ <ハンター1各員はハンター2と合流‼建物の確保を維持するぞ‼> <<了解‼>> 俺達は目標の排除には失敗した。だがそれはそれで構わない。周辺 はすでに孫策軍が包囲していて、幸いにも奴等が逃げた先には少佐 達ウルフパック本隊が展開している。 俺達は部隊の到着までの間、占拠した建物の維持に務めるのであっ た・・・・・・。 1399 第178話:Rock and Roll︵後書き︶ 目標の排除には失敗した。しかし作戦が失敗した訳ではない。目標 が逃げた先にはアレックスの部隊が展開していて、ライルからの報 真・恋姫無線 海兵隊の誇りRe 告でしばらくしてから敵の一団が姿を現す。 次回 [ソードブレイカー] 剣破壊の猛者が立ちはだかる。 1400 ソードブレイカー︵前書き︶ 偽善者に対してアレックスが喝を入れる。 1401 ソードブレイカー ハンターキラーは目標の排除に失敗したらしい。ついさっき相棒か ら無線で連絡が来たが、ターゲットだった孫静の側近は部下を盾に Mod1を Mod0を背負いながら双眼 しながら馬で逃げ出し、こちらに向かってきているらしい。 俺は孫策軍本陣にて背中にMk48 鏡で戦況を確認していた。因みにいつもならMk46 使うのだが、生憎いまは定期メンテナンスと修理を行なっている。 だが今回は威力を重視した方がいいと判断出来たので7.62mm 弾仕様のMk48を携行することになった。 ﹁珍しいじゃないか、お前が目標を仕留め損なうなんて・・・﹂ <手間を掛けるな・・・いいところまで追い込んだんだが・・・> ﹁まぁいいさ。こんなこともあろうかと策を二重にしておいたんだ ろ?﹂ <まぁな・・・任せて大丈夫か?> ﹁任せろ。北側には第1大隊。東に第2.南に第3、西に第4大隊 を配備させてる。奴等が逃げられることはないさ。俺は部隊を率い て目標の確保に回る﹂ <了解だ。こちらは確保した建物の確保を続行する。over> ﹁アイアンマン、out﹂ 通信を終了させると俺は地面に突き刺していた髑髏を引き抜き、そ れを肩に担ぐ。すると目の前に見慣れた御仁がいた。今回の討伐で 弓兵隊の総指揮を執っている祭殿だ。 ﹁祭殿﹂ 1402 ﹁おう、アレックスではないか。何かあったか?﹂ ﹁はい、ライルが狙っていた目標がこちらに向かって来るとの報告 がありましたので、自分は部隊を率いてこれを仕留めます﹂ ﹁ほぅ、ライルにしては珍しい・・・彼奴なら確実に仕留めると思 うたが・・・﹂ ﹁まぁ・・・あいつもまだ病み上がりですし・・・不確定要素も戦 場には必然ですからね﹂ ﹁確かにな・・・自分の思うように運んだら戦は面白くないわぃ﹂ ﹁はははは・・・相変わらずですね﹂ 両手を組みながら笑い飛ばす祭殿。流石は孫呉の宿将にしてみんな の母親だ。こういう戦場でも余裕を崩さない。 ﹁そうだ、前に話した酒が入りましたよ﹂ ﹁なに⁉本当か⁉﹂ ﹁はい、この戦が終わりましたら祝勝としてサイファーと飲んで下 さい。あいつも喜びます﹂ Ma,am﹂ ﹁応っ‼だったらはよう行かんかい‼儂に酒を頼むぞい♪﹂ ﹁Yes 酒を届ける約束をして俺は口笛を吹き、駆け寄ってきたイクシオン の首筋を撫でると跨り、そのまま目標が来るとされるポイントへと 向かった。 戦線は入り乱れていた。各戦線の孫呉海兵隊は包囲を縮めつつ反乱 1403 軍を殲滅していき、対する反乱軍は突破口を作ろうと必死になって いた。だが反乱軍の練度では呉の最精鋭と呼ばれている海兵隊の相 手が務まる筈がない。 むしろここまで持ち堪えられていることには賞賛に値する。俺は今 のところMk48は使わず、髑髏やM1911A2を使い分けて敵 を仕留める。 ﹁はんっ‼そんな実力で反乱なんてな‼舐めるのも大概にしやがれ ‼﹂ 江東の死神 や 無慈悲の鬼神 、更には 首狩り 俺は次々と反乱軍兵士の首を髑髏で切断していく。敵は髑髏を振り 回す俺を見て と口にしながら逃げ出したり、中には降伏してきたりとヘッピリ 腰になっている。 だが反乱を起こしておいて今更降伏なんて虫のいい話なんかではな い。 次々と敵の生き血を髑髏に吸わせていると通信が入る。 <ストームからアイアンマン> ﹁こちらアイアンマン‼感度良好‼﹂ <レイヴンが情報をキャッチしました。目標の一団が馬でそちらに 急速接近中です> イリーナからの報告を受けて俺は街がある方角を見る。確かに馬を 全速力で飛ばしながらこちらに向かって来ている一団の姿が確認出 来た。 1404 ﹁了解したストーム‼これより目標の確保に向かう‼アイアンマン out‼﹂ Mod0を交換し、抱え撃ちの姿勢で構えると目標の一 通信を一方的だが終了させ、俺は近くにいた敵を仕留めると髑髏と Mk48 団に向かって7.62mm弾を撃ち込む。 ﹁ぎゃはっ⁉﹂ ﹁あぐっ⁉﹂ ﹁ぐはっ⁉﹂ 7.62mm弾の雨に敵は次々と落馬していき、中には落馬した際 に馬に頭を踏み付けられて死ぬ奴もいた。 一定の数を減らしたら再び髑髏に持ち替え、連中の処へと駆け寄る。 すると顔を軽く擦りむいた剣を手にした文官らしき男がよろめきな がら立ち上がろうとしていた。 ﹁よし‼そこを動くな‼﹂ ﹁なっ⁉なんだ貴様は⁉﹂ ﹁動くんじゃねぇ‼武器を捨てて両手を頭の後ろに回せ‼﹂ ﹁ぐっ⁉そ・・・孫策の飼い犬が⁉我等の大義に歯向かうか⁉﹂ ﹁ほぅ・・・じゃあその大義ってのはなんだ?﹂ ﹁孫策はただ戦火を広げるだけだ‼民の為なら孫策を倒し、孫静様 がこの国を治めるのがいい‼﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁見ておれ‼我等がこの国を手にいれて蜀を滅ぼし、曹操を滅ぼし て天下泰平の世を﹁ふざけるな偽善者が‼﹂ひぃ⁉﹂ この偽善者野郎の言葉を聞いていると腹が立つ。俺は大声で喝を入 1405 れてやる。 ﹁黙って聞いていればふざけたことを抜かしやがって‼貴様等のや ってることがただ無益に戦いを広げてるだけだろが‼そんな連中が 天下泰平⁉ふざけるんじゃねぇクソ野郎共が‼﹂ ﹁う・・・うるさい‼戦狂いの貴様が何をいう⁉貴様など正義のも とに討ち取ってやるわ‼‼﹂ そういいながら奴は剣を片手に斬り掛かってきた。しかし俺は髑髏 を構え直し、刺突を交わすと髑髏の刃をこいつの首筋に当ててやっ た。 ﹁うっ⁉﹂ ﹁本当なら殺してやりたいが・・・貴様は生きて捕獲しろって命令 が出てるから今は殺さないでおいてやる。だが・・・・・・﹂ そういうと俺は髑髏の剣筋を外すと体を回転させながらこいつの腹 に・・・・・・。 ﹁一発食らわせないと気がすまない‼﹂ ﹁がっ⁉﹂ この偽善者野郎の腹に強力な回し蹴りを食らわせる。奴は地面を転 がり、少ししてからようやく止まった。俺は簡易手錠を奴の手首に 掛けて無線のスイッチを入れる。 ﹁アイアンマンからウルヴァリン﹂ <こちらウルヴァリン> ﹁報告する。目標を確保。繰り返す、目標を確保した﹂ <了解だアイアンマン。手間を掛けたな> 1406 ﹁後でウォッカをくれよ・・・アイアンマン out﹂ 無線を切ると俺はこの野郎の手首を乱暴に掴み、そのまま本陣へと 連行していく。こね後に雪蓮殿率いる本隊が市街地内部に突入を成 功させ、ライルと合流を果たした。 それと同時に周囲にいた敵は駆逐され、市街地は孫策軍によって奪 還。反乱軍から市民を解放させられることに成功した・・・・・・・ ・・。 1407 ソードブレイカー︵後書き︶ 反乱軍との戦いが続く呉。もう一つの戦線である烏程でも動きがあ った。ここの鎮圧を任されているレオンと蓮華はここに孫静がいる 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re という情報をつかむ。 次回 [獅子と虎] 戦場と獅子と猛虎が駆け抜ける。 1408 第180話:獅子と虎︵前書き︶ 獅子と虎の姉妹。戦場を駆け巡る。 1409 第180話:獅子と虎 新都で中佐達が敵側近を捕らえる為に行動している頃、もう一つの 戦線である烏程でも戦いが繰り広げられていた。 ﹁ちぃ⁉よくもまぁこんなに集まりやがって‼﹂ ﹁華蓮‼そっちにいったぞ‼﹂ ﹁はい‼姉様‼﹂ 俺と蓮華、華蓮は最前線で次々と出現してくる反乱軍兵士を斬り伏 せていた。俺たちがここに進軍したのには理由がある。細作からの 報告で彼女達の叔母である孫静がここにいるという情報が齎された からだ。 俺達は互いに背中を任せながら敵にぞれ龍舌、江東大器、覇天双戟 の鋒を向けつつ威嚇する。 ﹁まさかこんなにも兵力を隠し持っていたとはな・・・﹂ ﹁大方、傭兵や賊を片っ端から吸収していったんだろうな・・・・・ ・あの陰気臭い婆さんなら考えられる﹂ 姉 ﹁しかし・・・叔母様はいったい何を考えているのでしょう・・・ 私達を裏切るだなんて﹂ と・・・﹂ ﹁孫静叔母様は前々から姉様と対立していたから・・・・・・ 様のやり方は無闇に戦を広げているだけ 危険を冒す者が勝利する とい 何とも聞くだけで腹が立つものだ。俺の生まれ故郷でもあるイギリ スの特殊部隊SASのモットーで う言葉がある。 1410 保守派の連中は自分から危険には飛び込まず、都合がいい時にだけ しゃしゃり出て来てあれこれ抜かす寝ぐら連中ばかりだ。 中佐と少佐もかなり以前から保守派の嫌がらせを受けており、特に 雪蓮殿と恋仲に発展した中佐は奴らの事を毛嫌いしていた。 ﹁まぁ、ここにあいつがいるって情報だ‼さっさとここを片付けて 奴を捕まえるぞ‼蓮華‼華蓮‼﹂ ﹁分かったわ‼﹂ ﹁はい‼必ず叔母様に真意を問いただしてみせます‼﹂ そういいながら俺達は敵の真ん中に斬り込む。俺は龍舌の重さとリ ーチの長さを活かし、敵集団に飛び込むとそのまま振り回して敵の 身体を一刀両断。足を斬り落とされて野垂れ回っている奴等には頭 を潰す。 ﹁孫呉を裏切り、民を苦しむ賊軍共よ‼我等に刃を向けたという大 罪‼贖わせてやるぞ‼﹂ 蓮華は江東大器の軽快さを糧に相手の攻撃を弾き返すと刺突を繰り 出し、斬撃には横にかわして素早く懐に飛び込み、そのまま声帯を 切断して確実に敵の命を奪っていく。 ﹁ごめんなさい・・・・・・だけどあなた達を倒さなければ呉の民 が苦しんでしまいます‼﹂ 敵に詫びをいれつつ、覇天双戟による攻撃と中佐直伝のCQCで敵 の身体を斬り裂き、時には相手の首に腕を回し混んでそのまま首の 骨をへし折る。 通常の剣術だけなら雪蓮殿や蓮華に分があるが、彼女は武将である 1411 と同時にコンバットメディック・・・戦闘衛生兵でもある。だから 人体の構造を知り尽くした彼女だから中佐はCQCの技術を教えた のだ。 敵を斬り伏せながら前進していると目標ポイント・・・・・・孫静 がいるとされる山小屋に到着した。俺と蓮華達は入口に張り付き、 扉を開けて突入の姿勢を執る。 ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ﹁﹁・・・・・・︵コクリ︶﹂﹂ 二人が頷くと俺は一気に扉を蹴破って一気に内部へと突入をするが・ ・・。 ﹁今だ‼撃てぇ‼﹂ 室内には孫静ではなく敵弓兵がスタンバイしており、そのまま二本 の弓矢が俺達の方へと放たれた。 ﹁避けろ蓮華‼﹂ ﹁なっ⁉﹂ ﹁くっ⁉﹂ 蓮華に向かって飛来する弓矢。間に合わないと判断した俺は彼女を 突き飛ばす。しかし完全には間に合わず、左肩に一歩が突き刺さっ た。 ﹁レオン⁉﹂ ﹁レオン様⁉﹂ ﹁くっ⁉耳を塞いで伏せろ‼﹂ 1412 そういいながら俺はM67手榴弾のピンを抜き、そのまま内部で爆 発。そのまま俺は龍舌をその場に置いてM45A1をホルスターか ら抜き、構えながら室内に再度突入。敵は先程の爆発で爆死したよ うであり、制圧はすぐに完了した。 ﹁制圧﹂ ﹁レオン‼早く傷の手当を‼﹂ ﹁装具を外して下さい‼すぐに治療します‼﹂ ﹁ただの擦り傷だ。死にはしない﹂ ﹁ダメよ⁉﹂ ﹁今は作戦中だ。軽傷なんだから後回しで充分だよ﹂ ﹁ダメです‼すぐに治療します‼﹂ right・・・﹂ ﹁い・・・いや・・・だから大丈夫だ﹁﹁装具を取りなさい‼‼﹂﹂ ・・・Oh 二人の勢いに俺は折れざるを得ず、仕方なく俺はその場で装備を外 して二人からの治療を受けることになった。 治療が完了した辺りで周囲が制圧されたと報告を受け、反乱軍は降 伏を始めたが孫静の姿はない。どうやら誤報だったようだ。仕方が 無いので俺達は死傷者の把握と捕虜の搬送を完了させると治安維持 部隊を残して一旦建業へと帰還する。 因みにこの後に蓮華が看病するといいだし、断ろうとしたが断りき れず看病を受けることになってしまったというのは別の話・・・・・ ・・・・。 1413 第180話:獅子と虎︵後書き︶ 建業より下流に進んだ一帯。南郷率いる航空隊と思春と明命が率い る部隊は反乱軍が潜んでいるとされる3箇所の集落へと向かう。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re ナイトホークを操るグラディウス3も臨検する村へと急行する。 次回 [グラディウス3] 夜鷹が蜂の巣に飛び込む。 1414 第181話:スコーピオン3︵前書き︶ 武久の指揮下でスコーピオン3が臨検に向かう。 1415 第181話:スコーピオン3 中佐達とレオン大尉が別戦線で敵を攻撃しているその頃、建業から SEAL,s がそこに向かっていた。 孫呉水軍強襲陸戦部 長江より下流へ進んだ一帯。南郷大尉率いる航空隊と甘寧将軍率い 通称 る孫呉水軍強襲部隊から派遣された特殊部隊 隊 <こちらジャンヌ1、集落の住民の集合が完了。全員を広場に集め ました> <了解したジャンヌ1。敵勢力からの抵抗はあったか?> <抵抗はありません。こちらの要請に素直です> <了解。集められたら臨検を開始せよ> <ジャンヌ1了解> 俺達スコーピオン隊から降下した臨検部隊が数カ所の集落に臨検を 実施し始める。報告によれば集落の幾つかが奴等の拠点らしく、物 資や兵員を隠蔽しているらしい。 そこで大尉と甘寧将軍はこの地域一帯に孫呉治安維持法戦時特例第 7条を可決。空と陸からによる臨検部隊を投入した。 <グレイブ1からスコーピオン3。ポイントEにてジャンヌ4を降 下させろ。レイヴンからの情報で動きが見られないようだ> ﹁こちらスコーピオン3、了解。ポイントEに向かいます﹂ 大尉からの指示を受けて目標地点である約6km先の集落にナイト ホークを飛ばす。集落上空に到着するがやはり動きが見られなかっ た。機長は外部スピーカーを使用して集落に呼びかける。 1416 ﹁市民の皆さん。こちらは孫呉海兵隊第0大隊航空隊です。孫呉治 安維持法戦時特例第7条に基づき集落への臨検受け入れを命じます。 速やかに家から出て来て下さい。出て来ない場合は臨検を強行しま す﹂ 機長が呼び掛けをするが一向に動きが見られない。仕方が無いので 機長は大尉に無線報告をする。 ﹁スコーピオン3からグレイブ1へ。ポイントEへの呼び掛けを実 施しましたが、姿が見られません。強制臨検の許可を願います﹂ <了解したスコーピオン3。SEAL,sがそちらに向かっている。 到着まで上空で警戒せよ> ﹁了解しました大尉。交信以上﹂ 上空待機が出たことでナイトホークが上空で旋回しながら警戒をす る。俺も機体側面のM134Dを構えて周辺を見渡すが、いまだに 何も見当たらない。 ﹁機長、敵が仕掛けてきたら攻撃しても?﹂ ﹁そうならないことを祈っていろ。出来るなら手荒なことはしたく ない﹂ ﹁民間人を巻き込む可能性がありますからね。敵がいないことを祈 りたいです・・・・・・うわっ⁉﹂ 俺が副長に返信しようとした瞬間、俺のすぐ側に一本の弓矢が飛来 して跳ね返された。 ﹁どうした⁉﹂ ﹁機長‼攻撃を受けました‼くそ⁉ふざけやがって‼敵が仕掛けて 1417 きやがった‼﹂ 俺達が下を見下ろすと家から武装した敵部隊が続々と出現してきて、 何人かは弓を構えてこちらに攻撃してきている。 ﹁こちらスコーピオン3‼集落から敵部隊が出現‼攻撃を受けまし た‼﹂ <了解したスコーピオン3。反撃を許可する。敵を片付けろ> Fier!!﹂ ﹁了解グレイブ1‼・・・ガナー‼﹂ ﹁Wilco!!Open 機長と大尉からの攻撃許可を受けて俺はガトリングガンのバレルを 回転させながらトリガーを引く。6本の銃身から放たれた7.62 mm弾の雨が敵に降り注ぎ、敵の身体を遮蔽物ごとミンチにしてや る。 ﹁ふざけやがって⁉アリみたいに飛び出てきやがった‼﹂ ﹁掴まれ‼上昇する‼﹂ TEAM4に随伴しているジャンヌ1−7から戦闘 <こちらTEAM4のジャンヌ7‼集落の北西部で敵と交戦‼> SEAL,s 開始の報告を受ける。 <敵の数が流石に多い‼上空から航空支援を要請する‼> ﹁了解した‼待ってろジャンヌ7‼すぐに向かう‼﹂ 味方部隊からの支援要請を受けてすぐに北西部へと向かう。地上で IAR、H は孫呉水軍と反乱軍が戦闘を開始させており、僅かながらも随伴し ているジャンヌ7が携行しているHK416やM27 K417から放たれる発砲音が聞こえていた。 1418 ﹁派手にやってやがるな・・・ガナー‼片付けろ‼﹂ ﹁了解‼喰らいやがれ‼﹂ ﹁間違っても味方を撃つなよ‼部隊がやられたら作戦は失敗だ‼﹂ <こちらジャンヌ7‼城壁と城門付近にいる反乱兵共を片付けてく れ‼> ﹁了解‼﹂ ジャンヌ7からの指示で俺は薙ぎ払うように二箇所に展開している 敵部隊を攻撃する。高度を少しだけ下げて見える敵兵を片っ端から 始末していく。 <いいぞスコーピオン3‼そのまま撃ち続けろ‼> ﹁了解‼ガナー‼奴らをぶっ殺せ‼﹂ ﹁分かってます‼だけど数が多過ぎます‼﹂ ﹁スコーピオン3からグレイブ1‼敵の数が多過ぎます‼火力不足 により増援を要請‼﹂ <こちらグレイブ1、無理だスコーピオン3。各地で戦闘に突入し て手が回らない。現戦力で対処せよ> ﹁了解‼﹂ <ダンテ、目標が見えるか?> <ターゲットの山です‼> <了解だ、殺っちまえ> 大尉に増援を要請したが却下され、仕方なく俺達は引き続き高度を 下げつつ敵を仕留めていく。 その間にも敵は撃ち落とすつもりなのか、こちらに弓矢を放ってく る。しかし当たったとしても微かな傷を付ける程度であり、逆に俺 が操作するM134Dの餌食となっていく。 1419 <こちらジャンヌ7‼礼をいう‼> ﹁また何かあれば駆けつける‼頑張ってくれ‼﹂ <了解だスコーピオン3‼交信終了‼> 敵は俺達の攻撃に怯んだようであり、ナイトホークは高度をあげな がら集落へ戻る。 俺もM134Dで敵の固まっている辺りを攻撃にしていく。 ほんの少しだけ降下をしつつジャンヌ4の降下地点を確保する。一 番デカイ建物の周辺を片付けるとナイトホークらラペリングロープ を地面に垂らすとジャンヌ4の隊員がそれを掴む。 ﹁ジャンヌ4‼降下地点だ‼﹂ ﹁ロックンロール‼Go、go、go‼﹂ ジャンヌ4が一気に次々と地上へと降り立ち、8名の隊員が降下し たらロープを切り離して直衛に就く。 敵はどうやら先程の建物を本部にしているようであり、窓から弓兵 がこちらとジャンヌ4を攻撃してきていた。 <こちらジャンヌ4‼敵を纏めて始末できるか⁉> ﹁任せろ‼ガナー‼﹂ ﹁くたばりやがれ‼﹂ 建物の前でホバリング状態で停止すると窓に布陣している弓兵達に 対して弾丸の雨を浴びせる。 貫通した壁は瞬く間に穴だらけとなり、そこから瓦礫が辺りに散乱 していく。 <こちらジャンヌ4‼敵の攻撃がやんだ‼一気に目標制圧にかかる 1420 ‼> ﹁了解だ‼こちらはこのまま周囲を警戒する‼﹂ ﹁機長‼10時方向に敵増援‼﹂ ﹁確認‼仕留めます‼﹂ ナイトホークの機体を俺が敵増援に対して攻撃出来るように向きを 変え、照準を合わせるとそのまま薙ぎ払う。 ﹁くそっ⁉多方面から敵増援‼﹂ ﹁残弾数のこり僅か⁉﹂ ﹁スコーピオン3からグレイブ1へ‼多方面から敵増援がジャンヌ 4に急行中‼こちらは残弾数のこり僅かのため増援を要請します‼﹂ <ジャンヌ7、そちらの位置は?> <城門を突破‼市街地に突入してそちらに向かってます‼> 無線内容で城門がある方角を見るとSEAL,sが武器を掲げなが らこちらに向かってきていて、やがて背後から敵に対して不意打ち を仕掛ける。 背後からの攻撃で敵は混乱状態に陥り、反撃もままならない状態で 討ち取られていく。 <こちらジャンヌ7‼さっきの礼を返しに来たぞ‼> ﹁助かった‼感謝するぞジャンヌ7‼﹂ 俺達はそのまま周辺に展開している敵を次々と仕留めていき、5分 弱で建物に突入したジャンヌ4から建物制圧の方向。俺は残弾数の こり僅かのM134Dの銃口を向けながら辺りを見渡す。 ﹁こちらスコーピオン3、撃ち方やめ﹂ ﹁機長、辺りの制圧は完了したようです﹂ 1421 ﹁スコーピオン3からグレイブ1。ポイントEの制圧は完了。燃料 弾薬補給いちど帰還します﹂ <こちらグレイブ1。了解だスコーピオン3、そちらの警戒はこち らで引き継ぐ。補給完了後に戻って来てくれ> ﹁了解です大尉・・・・・・・・・なんだ?﹂ 機長が機首を変えた瞬間、何かを見つけたようだ。建設中の建物の 中に向きをこちらに向けている物体・・・・・・。 ﹁まずい⁉バリスタだ‼﹂ ﹁回避だ‼回避しろ‼﹂ ﹁くそっ⁉﹂ 機長が急いで回避行動を取り、俺もM134Dの残った弾丸全てを ぶち込む。敵はその攻撃で倒され、バリスタも粉々に吹き飛んだが 弾みで馬鹿でかい弓矢の一部が回転しながら放たれ・・・・・・。 ﹁危ない⁉﹂ 俺達の処に向かって飛んで来た。ナイトホークは回避行動を執るが 完全には間に合わず、機体後部に激しくぶつかった。 ﹁うわっ⁉﹂ ﹁くそっ⁉こちらスコーピオン3‼被弾した‼被弾した‼﹂ ﹁掴まれ‼﹂ ナイトホークは徐々に回転する数が多くなっていく。 機内では警告音が鳴り響き、俺も必死にM134Dにしがみ付く状 態だ。 1422 ﹁ハーグ‼ECLを引け‼﹂ ﹁了解‼・・・くそっ⁉まずい墜落する‼‼﹂ 機体が激しく振動を発し、回転しているので発生された遠心力によ り身体が張り付く感じに見舞われる。 of a bitch! コクピットでは機長と副長が必死に操作をしていた。 ﹁出力上昇‼状態は⁉﹂ son ﹁フットペダルがまだ生きてます‼﹂ ﹁くっ⁉Come・・・you !‼‼﹂ 機体は回転しながら、あろうことかジャンヌ4がいる建物に向かっ ていた。このまま向かっていけばジャンヌ4を巻き添えにしてしま う。だが機体の回転は徐々に小さくなっていた。 ﹁掴まれ‼‼﹂ 機体はぶつかる寸前でコントロールを取り戻し、メインローターを 掠めながら一気に上昇。ナイトホークは少しふらつきながらも機体 を安定させていく。 俺は助かったと感じ取りM134Dにもたれかかっていた。 ﹁無事か⁉﹂ ﹁し・・・死ぬかと思った・・・﹂ ﹁副長、機体状況は?﹂ ﹁トルク度干渉良し、テイルローター及びメインローター出力10 %低下。油圧計若干低下。コントロール系統に振動あり。帰還した らオーバーホールが必要です﹂ ﹁ジャンヌ4、そっちは?﹂ 1423 <こちらジャンヌ4・・・危なかったですが死傷者なし> <グレイブ1からスコーピオン3、機体状況を報告しろ> ﹁トルク度干渉良し、テイルローター及びメインローターの出力1 0%低下。油圧計若干低下。コントロール系統に振動あり。墜落寸 前でしたが基地には帰還できます﹂ <了解した。スコーピオン3は速やかに基地に帰還せよ。そちらの 警戒はグレイブ4に引き継がせる> ﹁了解です﹂ 大尉からの帰還命令を受けてここの上空警戒をグレイブ4に引き継 ぎ、基地へと帰還した。基地に帰還したナイトホークはそのあとす ぐにオーバーホールに出され、整備隊を泣かせることだろう。 ガナーである俺もM134Dの整備を手伝うべく、工具を片手にメ ンテナンスドックへ足を運ぶのであった・・・・・・・・・。 1424 第181話:スコーピオン3︵後書き︶ 孫策軍と孫静軍が戦を繰り広げている頃、漢中南部に布陣していた 翠達。漢中の先にある彼女達の故郷である涼州を話している中、翠 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re の口からある女性の名前が出される。 次回 [翠の過去] 錦馬超の過去が明かされる。 1425 第182話:翠の過去︵前書き︶ 翠が飴里に自身の過去と幼馴染について語る。 1426 第182話:翠の過去 あたし達が漢中に布陣してから暫くが経った。その間にご主人様と 一緒に見舞いに行ってた飴里も戻って来て、魏との戦いに備えてた。 漢中を超えた先にあるのはあたしや蒲公英の故郷・・・・・・涼州 がある。あたしは陣地の馬小屋で愛馬である黄鵬、紫燕、麒麟の毛 並みを綺麗にしてやると十文字槍の銀閃を担いで歩いていた。 ﹁ふぅ・・・よし‼腹減ったから何か食べるか♪﹂ 一先ず小腹が減って来たので食堂がある場所に行くと目の前に見慣 れた奴がいた・・・飴里だ。しかも紙袋一杯で湯気が出ている肉ま んがあった。しかも片手には美味そうな匂いを醸し出している肉ま ん。それを美味そうに頬張りながらこちらに歩いていた。 ﹁ん?・・・やぁ翠﹂ ﹁よっ♪な∼んか美味そうなもん持ってるな♪﹂ ﹁だったら翠も一緒に食べるかい?流石に作り過ぎてちょっと困っ てたんだよ﹂ ﹁本当か⁉やっりい∼♪﹂ 本当に今日はいい日だぜ♪飴里の作る肉まんは凄く美味いし、それ でいて食感も柔らかいし何度食べても飽きが来ない。あたしは飴里 の後に続いて向かった。 1427 ﹁ふぅ∼♪腹一杯だ♪﹂ ﹁ははは・・・喜んでくれてなによりだね﹂ 飴里の作った肉まんを存分に堪能し、あたしはお茶を飲みながら口 直しをする。 ﹁そういえば飴里ってライルさんに会えたのか?﹂ ﹁ライル殿?・・・ああ。一刀君と露蘭、霞と一緒に会えたよ。噂 以上に凄くいい人だったし、真名も預かってくれたよ﹂ ﹁えぇ⁉もう真名を預けたのかよ⁉﹂ ﹁あぁ・・・もしかして翠はまだだったのかい?﹂ ﹁くっそ∼・・・・・・あの時にあたしも真名を預けとけばよかっ たよ・・・﹂ ﹁ふふっ・・・翠はライル殿を気に入ってるようだね﹂ ﹁なっ⁉ななななななな何いってんだよ⁉﹂ ﹁そんなに隠さなくても・・・﹂ ﹁あ・・・あたしは別にライルさんに真名を預け損ねてるだなんて ちょっとも思ってないんだからな‼‼ホントちょっともなんだから な‼‼﹂ ﹁ははっ・・・相変わらず翠は可愛らしいね・・・﹂ ﹁!?@¥&♪#〆*☆︵翠語発動中︶﹂ ﹁わ・・・分かった・・・分かったから少し落ち着こうか?﹂ ホントにもう‼ご主人様も飴里も意地悪だ・・・。 ﹁全く・・・ご主人様も飴里もすぐあたしをからかうんだから・・・ ﹂ ﹁ちょっと悪戯が過ぎたね・・・・・・あっ、そうだ。ちょっと聞 きたいことがあるんだけどいいかな?﹂ 1428 ﹁なんだよ?﹂ ﹁いや・・・この間に確か花束を持ってたよね?﹂ ﹁花束?・・・・・・あぁ、あれか﹂ ﹁なんだか少し気になってね・・・無理にとは言わないけど・・・﹂ ﹁あぁ・・・ちょっと・・・・・・墓参りをして行ってたんだよ﹂ ﹁墓参り?・・・・・・母君?﹂ ﹁いや・・・王氏のだよ﹂ ﹁王氏っていうと確か・・・・・・漢中の豪族の・・・﹂ 飴里の言葉にあたしは軽く頷く。 ﹁あたし達がまだ涼州にいた頃に・・・朝廷から使者が来たんだよ﹂ ﹁・・・王氏を中心とした王一族の漢に対する謀反・・・﹂ ﹁そう・・・・・・謀反をした王氏と一族の討伐・・・それが漢王 朝からの書状だったんだ。だから昔から王氏と関わりがあったあた し等が討伐を命じられたんだよ・・・﹂ あたし達馬一族が王一族の討伐をしたのは今から大体2∼3年前の 話だ・・・。 ﹁あたしと母様、蒲公英は一軍を率いてあいつ等が立て籠もってた 剣門山に出兵したんだ。あたしはあまり乗り気じゃなかったけどな﹂ ﹁君がかい?﹂ ﹁当たり前だよ。敵になっちゃったとはいえ、王氏はあたしのこと をよく面倒みてくれてたんだ・・・あたしと蒲公英からして叔父の ような存在だったんだ・・・﹂ ﹁だけど・・・君はそれを振り払って自らの任を全うさせた・・・﹂ ﹁うん・・・だからあたしは今までの恩を返したくて王氏に一騎打 ちをして勝った・・・だけど・・・﹂ 1429 あたしは湯呑を机において、言葉を軽く吐き出す。 ﹁だけど・・・それを見た王一族の残りがあたしに襲い掛かって来 て・・・・・・それで・・・﹂ ﹁仕方なく・・・・・・全員を倒した・・・﹂ ﹁うん・・・だけど・・・あいつだけはその場にいなかった﹂ ﹁あいつ?﹂ ﹁あたしの幼馴染で・・・・・・名前は・・・王異っていうんだ﹂ ﹁王異・・・・・・聞いたことがある・・・勇猛果敢で才知に優れ、 更に戦略家だけじゃなく武芸にも長けた女性だと・・・﹂ 飴里の言葉にあたしは頷く。王異はあたしの幼馴染で、昔から武術 だけじゃなく智略にも長けていて、更にあの綺麗さから周りから常 に求婚が絶えず、妖精とも呼ばれていた。 ﹁多分・・・あいつは私のことを恨んでると思う・・・﹂ ﹁まさか・・・﹂ ﹁ううん・・・絶対に恨んでるさ・・・・・・あいつは王氏が大好 きだったから・・・その王氏と家族を倒したあたしを絶対に恨んで るよ・・・﹂ かつての幼馴染に恨まれる・・・・・・そう考えるだけであたしは 辛くなってしまう。小さい頃いっしょに遊んだり、いっしょに飯を 食べたり、いっしょに互いの母に怒られたりした。 そんな仲が良かった奴に恨まれるだなんて、辛くて仕方が無い。 ﹁だけど・・・あたしは負けられないんだ・・・曹操から西涼を取 り戻さないといけないし・・・ご主人様や桃香様が掲げた仁の世を 叶えなきゃならない・・・だからもしあいつが向かって来るなら受 けて立ってやる﹂ 1430 そういいながらあたしは握り拳を作ってギュッと握る。 今のあたしは蜀軍に身を置く白銀の槍、錦馬超。仲間や蜀に仇なす 悪人共や敵はあたしの十文字槍で貫いてやる‼ そう言ったら飴里は軽く笑いながらあたしに話しかけて来た。 ﹁ふふっ・・・やっぱり翠は・・・元気な方が可愛らしいな﹂ ﹁!?@¥&♪#〆*☆︵翠語発動中︶﹂ また可愛いなんて言われた・・・。あたしは顔を真っ赤にしながら 慌ててしまう。せんな話をしていると槍を手にした伝令があたし達 に歩み寄って来た。 ﹁報告‼偵察隊が戻りました‼﹂ ﹁分かった・・・それでどうだった?﹂ ﹁ハッ‼報告によりますと魏軍の一団が進軍を開始‼天水より南へ 出陣させた模様‼﹂ 伝令からの報告で驚く。あたしの予想で魏軍が南侵してくるのは分 かってたけど、出陣場所は長安と思い込んでいた。だけど飴里は特 に驚くような素振りは見せず、冷静に伝令へと指示を下す。 ﹁やはり・・・天水に軍備を隠していたか・・・・・・その位置か ‼徐晃‼それと・・・・・ ら察して敵の目的は漢中の要所・・・定軍山・・・・・・出陣させ た敵将は?﹂ ﹁ハッ‼牙門旗から判断して夏侯淵に張 ・﹂ あたしは伝令が口にした名前に言葉を失った。何しろ・・・・・・。 1431 ﹁最後の牙門旗は ‼﹂ 白銀の王旗 ‼司馬懿配下の王異と思われます 先ほどまで話していたあたしの幼馴染・・・・・・王異だったから・ ・・・・・。 1432 第182話:翠の過去︵後書き︶ 天水より出陣した秋蘭が大将を務める魏軍。狙いは漢中の要所、定 海兵隊の誇り,Re 軍山。共に出陣する牙刀と凪達は静かなる復讐に燃える王異の言葉 真・恋姫無双 に耳を傾ける。 次回 [冷酷な妖花] 王異、自らの復讐の為に一計を画作する。 1433 第183話:冷酷な妖花︵前書き︶ 牙刀に妖花が策を巡らせる。 1434 第183話:冷酷な妖花 ライル殿への謝罪を表す弔問、更に呉内部で孫静率いる反乱軍が結 成されて孫策軍と内戦状態に突入したという報を受けて一月と少し。 我等は密かに軍備を整えて天水より出陣。漢中を我等の支配下にす るべく最大の要所である定軍山へと進路を進めていた。 天の御遣い でもある北郷殿がこの地を制すれば戦略的に 漢中とは漢の高祖である劉邦が立った地とされ、中山成王に連なる 劉備と もこちらに不利となり、逆に向こうは名声も高まる。戦局的にはこ ちらが有利だが向こうも馬超や趙雲、更には未知数の力を有する徐 庶がいる。予断は許されない状況だ。 だから我等は強行軍としてすぐに定軍山を陥落させ、蜀軍の援軍が 到着する前に漢中を得る必要がある。 夏侯淵殿を大将とし、私も凪達と兵2000を引き連れて、もう一 つの要所である陽平関にいた。 ﹁凪、負傷者の後送は完了したか?﹂ ﹁はい、既に大半の負傷者が後方に下がりまして、逐一交代要員が 鄧艾様と共に到着する手筈です﹂ ﹁沙和の方も新兵達の配備は完了させたの。負けてないから士気は 高いままなの﹂ ﹁攻城兵器の用意も大方完了してるで。試作品の移動式半自動連弩 も残りの部品は鄧艾様が持って来てくれはるし、破城槌も数は少な いけど調整出来とるで﹂ 我等4人は自分達の部隊内にある天幕に集まり、それぞれの作業状 1435 況を確認する。 陽平関を陥落させるのには大した時間は掛からず、攻撃開始から僅 か2日で陥落させられた。しかし幾分かは問題も生じた。 ﹁せやけど華琳様もなに考えてはるんやろな∼?﹂ ﹁そうなの。出陣させる部隊を二線級部隊を中心にするなんてちょ っとキツイの﹂ 新調部隊 だ。合肥の戦いにてかな 2人のいった通り、今回出陣させた将兵の大部分は後方部隊の兵士 や新兵達で構成された謂わば りの数の戦慣れした兵士を失い、あまり余力は無いのは致し方が無 いが、流石に少ない。 ﹁新兵を任されたのは仕方が無い。恐らくは実戦を立て続けに経験 させて一人でも多くの将兵を鍛え上げたいというのだろう﹂ ﹁確かに・・・呉との戦いでかなりの数の下士官達を失いましたか ら・・・﹂ ﹁あんときはホンマに死ぬかと思たで・・・﹂ ﹁沙和も聞いてたけど、江東の死神さんが一番怖かったの・・・﹂ ﹁せやせや、あんとき神楽の姉さん等が来るん遅かったらホンマに うち等死んどったで﹂ 確かにあの時は本当に危なかった。アレックス殿を始めとした孫呉 軍の怒りは尋常ではなく、あそこまで簡単にあしらわれたのは初め てだった。しかし何時迄も過去のことを考えている訳には行かない。 私は別の竹簡に手を伸ばして、中に書かれている兵站関係の報告に 目をやる。 ﹁とにかく、新兵を少しでも生きて帰す為に兵站は途切れさせては ならん﹂ 1436 ﹁そうですね。しかもここからは山岳地帯になりますし、大半が新 兵ならば山岳での戦は知らない筈です﹂ 新兵の他の問題とは我等は今まで山岳での戦は経験していないとい うことだ。山岳地帯ならば兵站の確保は難しく、兵達の疲労もかな り高くなっている。一応は装備を軽歩兵用のものを配備してはいる が、それでも疲労はいがめない。 竹簡に署名するとそれを凪に渡した。 ﹁凪、すまないがこれを夏侯淵殿に渡して来てくれないか?﹂ ﹁分かりました﹂ ﹁頼む。それが終わったら休んでくれ。真桜と沙和も各小隊長に伝 達が完了したら休んでいいぞ﹂ ﹁了解や♪﹂ ﹁は∼いなの♪﹂ 3人に指示を下すと彼女達は天幕を後にする。するとその入れ違い で再び天幕の入口から誰かが入って来た。 ﹁相変わらず・・・賑やかね﹂ ﹁王異・・・﹂ 入って来たのは黒髪に白い肌。全体的に黒を強調した服。背中に二 本の筆架叉を預けた女性・・・・・・司馬懿の副官の1人である王 異だ。 ﹁珍しいな・・・ソナタからこちらに赴くとは・・・﹂ ﹁ええ、少し話があるのよ。いけなかったかしら?﹂ ﹁そういう訳ではないが・・・何用か?﹂ ﹁あなた・・・蜀軍の武将に誰がいるか知ってるかしら?﹂ 1437 ﹁・・・うむ・・・・・・聞く限りでは徐庶に趙雲、それに錦 超と聞いている﹂ ﹁そう・・・・・・ふふふ・・・馬超・・・﹂ 馬超の名前を聞くと王異は不敵に笑い出す。 馬 ﹁・・・馬超・・・私の父を殺し、一族を滅ぼした女の子・・・・・ ・西涼の死神・・・ふふふ・・・やっと会えるのね・・・﹂ ﹁王異?﹂ ﹁徐晃殿・・・・・・あなた・・・私に付き合ってくれるかしら?﹂ いきなり王異が私の側まで歩み寄り、右手で顎を撫でてくる。私は それを払って彼女との距離を広げる。 ﹁・・・質問の意図が掴めぬ﹂ ﹁あなたは部下を守り、1人でも多く故地に帰してあげたい・・・・ ・・違うかしら?﹂ ﹁当たり前だ。彼らにも家族がある。そこに無事に帰してやるのが 将の勤めだ﹂ ﹁ふふっ・・・だから私に協力して・・・・・・代わりにあなたの 手助けをしてあげるわ﹂ ﹁・・・馬超を討ち倒す手助けをか?﹂ ﹁察しがいいわね・・・その通り・・・・・・私は死神の首が欲し い・・・あなたは部下を1人でも多く家に帰したい・・・・・・利 害は一致しているわ﹂ ﹁・・・・・・その策とは?﹂ ﹁協力してくれるのかしら?﹂ ﹁・・・・・・・・・・・・部下を危険にさせる策は御免被るがな・ ・・﹂ ﹁分かっているわ・・・・・・ふふふ・・・﹂ 1438 部下を危険に晒さないという条件で私は王異の策に協力することと した。 王異・・・かつて自身の一族を馬超に討伐された女。私はひとまず 協力することにしたが油断ならないのも事実だ。 我が軍はその後も強行を続行し、蜀軍よりも先に定軍山を手中に収 めることが叶い、蜀軍の攻撃に備えて守りを固める。 そして陥落から2日後、定軍山の隣に位置する挿旗山にて劉備軍が 陣地を築いた・・・・・・・・・。 1439 第183話:冷酷な妖花︵後書き︶ 呉の内乱は膠着状態に陥っていた。神出鬼没でゲリラ戦を仕掛ける 反乱軍に応戦する孫策軍。 ] 海兵隊の誇り,Re ファイアストーム 真・恋姫無双 互いが牽制しあう中、ライル達は遂に孫静の居場所を特定する。 次回 [オペレーション 裏切り者に狼が駆けつける。 1440 ファイアストーム 発動。ライル率いる強襲部隊 第184話:ファイアストーム 前編︵前書き︶ オペレーション が長沙本城へと急行する。 1441 第184話:ファイアストーム 前編 孫静率いる反乱軍との戦いが始まって約2ヶ月、戦局は膠着状態に 陥っていた。いくら豪族が集結して傭兵や山賊を掻き集めたとして も練度や数で雪蓮達に敵う筈がなく、戦況は俺達に傾いている。 しかし孫静軍は戦い方をゲリラ戦に変更したようであり、各地に出 没しては隠れるというゲリラ戦術で俺達の手を焼かせている。 キャンプ・ヴェアウルフに帰還していた俺も部隊を率いて周辺に出 没するゲリラ部隊を鎮圧していた時に明命が情報を齎してくれた。 孫静の居場所を遂に特定したのだ。 場所は長沙本城。前々から長沙の大守は孫静と交流があったとされ、 それを裏付けかのように反乱軍が集結しているらしい。 加えて長沙に駐留していた一部が孫静軍に合流し、孫策軍に反旗を 翻した。 開始。作戦開始です> しかしこの情報は孫静軍鎮圧のまたとない好機であり、俺達は孫呉 海兵隊を中心に長沙攻略に赴いた。 <ストームからウルヴァリン> ファイアストーム ﹁いいぞストーム﹂ <オペレーション ﹁了解したストーム。こちらはフェーズラインリヴァイアサンに到 達﹂ 1442 <了解です中佐。レイヴンと偵察隊による情報収集を継続します> ﹁了解したストーム。ウルヴァリンから全強襲チーム。Goサイン だ。ファイアストーム開始﹂ <了解です> <Goサイン上等‼奴等を吹っ飛ばさずに帰るのはゴメンだしな‼> ﹁いいか?俺達の任務はターゲットへの対処だ。民間人は既に脱出 したようだ。構うことはないからな﹂ 俺はハルバート隊を率いてスコーピオン隊のナイトホークに分乗し、 威嘉湖の上空を飛行していた。俺達の任務は長沙本城に空中より強 襲を仕掛け、孫静を確保もしくは殺害。 周辺にも多数の反乱軍がいるが、その点も対策している。 <アイアンマンからウルヴァリン> ﹁聞こえてる﹂ <こちらは渡河完了だ。レオンのウォーランス隊も逐一上陸してい る> 地上に展開しているアレックスからの報告だ。アレックスは地上戦 力を指揮し、反乱軍の拠点に対して攻撃を仕掛ける予定だ。情報に よると長沙本城の北東部にある茶子山にて大規模な施設がある。武 器保管施設に訓練施設、更には火計に使われる魚油の保管庫がある らしい。奴等にとって生命線とも呼べる場所だ。 ﹁こちらは長沙本城に飛行中だ。何かあれば報告してくれ﹂ <了解だ相棒。out> ﹁中佐、着陸まで残り30秒﹂ ﹁3、4、5は先に着陸しろ。1と2が上空より援護する﹂ ≪了解≫ ﹁よし。戦闘用意だ﹂ 1443 30mm C DMRⅡを手に取り、 1−4X28 そういうと俺は機内ラックよりHK417 初弾を装填するとACCUSHOT QBズームスコープを覗き込む。 最初の着陸地点である本城周辺には敵が待ち構えていたが、ナイト ホークの襲来により混乱しているようだ。 sight!! this!!> DMR DMRⅡを構えた隊員が視界 Take ﹁ウルヴァリンからハルバート及びスコーピオン隊。攻撃を許可す る﹂ in <了解、攻撃開始します> <Target 各機のガナーと同じ様にHK417 に入った敵に対して攻撃を開始。M134DとHK417 Ⅱから放たれる7.62mm弾は確実に敵に命中していき、俺も機 体に揺らされながらも的確にヘッドショットを決める。 そして援護を受けながら3機のナイトホークからラペリングロープ が降ろされて、少ししてから隊員が降下を始める。 その間に弩を構えた敵が味方を狙っていたが、すかさず照準を合わ せて仕留める。 <こちらハルバート3−1‼降下完了‼> <ハルバート4も完了‼敵と交戦中‼> <ハルバート5より報告‼こちらも降下完了‼> 地上に視線を送ると36名の隊員が降下を完了させ、逃げる敵に銃 撃を加えているのが確認できた。上空からは彼等を降下させたナイ トホークがM134Dを使って援護射撃を行なっている。 1444 ﹁ウルヴァリンからサイクロプス。航空支援は可能か?﹂ <こちらサイクロプス、了解です。グレイブ3と4が急行します> ﹁ハルバート3、4、5を援護してやってくれ。味方はIRマーカ ーで確認できる﹂ <こちらグレイブ3、了解です中佐> <グレイブ4了解> ﹁ウルヴァリンからスコーピオン2、城壁沿いに飛行し、着陸地点 ブラボーに回れ﹂ <こちらスコーピオン2、後に続きます> 指示を下しながら俺達を乗せたスコーピオン1とスコーピオン2は M134Dで発砲しながら着陸地点へと目指す。 DMRⅡにより仕留められる。 敵はこちらに反撃のつもりか、弓矢を放って来ているが当たる筈も なく、逆にHK417 ﹁中佐、着陸地点上空に到達。ラペリングロープは降ろしますか?﹂ ﹁いや、強行着陸しろ。スコーピオン2がその間に援護してくれる﹂ ﹁了解。中庭に接近。着陸します﹂ グラディウス2の援護を受けながらグラディウス1が高度を落とし ACOG TA31 ECOS、 DMRⅡをラックに戻し、AN/PEQ−15とM952Vウ つつ、中庭に着陸した。着陸の際の振動を感じる前に俺はHK41 7 ェポンライト、Trijicon ラピッドトランジションサイト、AFG2を取り付けたHK416 の初弾を装填。 機体が着陸すると俺達は続々とナイトホークから降り立った。 ﹁行け行け行け‼‼﹂ ﹁12時方向に敵‼﹂ ﹁排除しろ‼﹂ 1445 降下完了と同時に周辺にいた敵兵に銃撃を加える。俺も距離が近い 敵に対してはHK416を右斜めに構えてラピッドトランジション サイトで照準を合わせて発砲。 ﹁うらぁああ‼‼﹂ ﹁ふんっ‼﹂ ﹁あぐっ⁉﹂ 果敢にも戟を構えて向かって来た奴がいたが、HK416の試験的 に交換しているSTRストックで弾くと左手でHK416を保持し つつ右手でOKC−3Sを取り出し、心臓付近に突き刺した。 周辺を制圧すると俺達はチームを3つに分けて城内へと突入。手近 な扉に張り付くと部下がトマホークを取り出し、ドアノブを破壊す ると扉を蹴破る。 直後に俺が内部にM84を投げ込んで、室内から爆発音が鳴り響く と一気に突入。室内には閃光を浴びた敵兵が4名いたが、すかさず M45に切り替えて発砲。瞬く間に制圧した。 ﹁右クリア‼﹂ ﹁左クリア‼﹂ ﹁室内制圧‼次だ‼﹂ ﹁了解‼続きます‼﹂ 室内を制圧すると俺達は次の部屋へと向かう。途中には敵が待ち構 えていたが、すぐに背中に預けていたショートグレイブに切り替え て襲いかかってやった。 ﹁ふんっ‼﹂ 1446 ﹁ぎゃっ⁉﹂ ﹁甘いんだよ‼﹂ ﹁お前がな‼﹂ ﹁ぐはっ⁉﹂ 敵は剣で斬りかかってきたがすかさず雪でそれを受け止め、雷で敵 の身体を貫く。 貫いた直後に左から敵が出現したがすぐに右手の雷を手放し、M4 5を抜いてヘッドショットを見舞ってやった。 ﹁このままいくぞ‼ターゲットが逃げる前に確保する‼﹂ ﹃了解‼﹄ そういうと雷と雪を背中に預け、HK416を構えると再び前進す る。俺達が戦闘を継続している中、茶子山でも戦闘が継続していた・ ・・・・・。 1447 第184話:ファイアストーム 前編︵後書き︶ 長沙での戦いが繰り広げられている中、蜀と魏がにらみ合う定軍山 でも動きがあった。先に占領された定軍山を奪取する為、希代の軍 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 師でもある飴里は策を巡らせる。 次回 [飴里] 蜀の軍師が知恵を醸し出す。 1448 第185話:飴里︵前書き︶ 定軍山攻略の前に飴里は策を生み出す。 1449 第185話:飴里 魏軍が漢中を手中に収める為に軍備を進めたという情報で急いで向 かったが一歩遅かった。既に定軍山は魏軍により占領され、周辺に は魏軍守備隊が展開していた。 仕方がなく俺たちは褒城に駐留。敵の動きを警戒しながら軍備を纏 めていた。 ﹁まずいな・・・・・・魏軍の動きがまさかここまで早いだなんて・ ・・予想外だよ。本当に・・・﹂ 俺は報告書を片手に机の上に広げられた地図とにらみ合う。まだ基 盤が固まっていないにしろ、敵の動きが本当に機敏でまさかこんな 短時間で定軍山にまで進出してくるとは誰も思わない。 こちらも対応策として陽平関と武郷、そしてこの褒城の三つを結ん だ防衛網を形成し、早馬で一刀君達にも援軍を要請しているがいつ になるか分からない。 対して向こうは兵力で勝る上に情報によると長安から物資と兵員を 送って来ており、いつまでもここにいると魏軍の守りが硬くなる。 攻撃を掛けるなら守りが整ってない今しかない。 ﹁定軍山はまさに天然の要塞・・・高低差が激しい地形。険しい道 に断崖絶壁の崖・・・・・・守るに容易く、攻めるに困難だ・・・・ ・・さて・・・どうやってこれを・・・ん?﹂ 顎に手をあてながら考えていると不意に天幕の外から人の気配。俺 1450 は白虎を手にして警戒するが、それが誰なのか理解すると軽く笑い ながら収める。 ﹁ふぅ・・・・・・そんなところで立ってないで中に入ってきたら どうだい?・・・・・・雛里、夏雅里﹂ ﹁﹁あわっ⁉︵ふわっ⁉︶﹂﹂ 俺に言い当てられて、2人は相変わらず可愛らしい声を出しながら 姿を見せる。 ﹁あ・・・あの・・・・・・か・・・飴里様は何で私達がいると?﹂ ﹁う∼ん・・・・・・何と無く・・・かな?﹂ ﹁ふわわ・・・あ・・・相変わらじゅしゅごいでしゅ・・・﹂ ﹁ははは・・・・・・それで・・・俺に何か用事かな?﹂ そういいながら2人は両手に持っていたお盆を前にだす。その上に は彼女達が作ったであろう好物の肉まんと湯気があがったお茶だ。 ﹁その肉まんは・・・どうしたの?﹂ ﹁は・・・はい・・・・・・遅くまでお仕事してる飴里様に・・・﹂ ﹁わ・・・私と雛里お姉ちゃんで作ったでしゅ・・・﹂ ﹁俺に?﹂ ﹁﹁そ・・・そうでしゅ‼あわわ︵ふわわ︶・・・噛んじゃった・・ ・﹂﹂ 2人はお盆をもちながらいつものように噛む。その何とも可愛らし い光景に俺は先程まで自分が放っていた緊張感が和らぎ、2人に歩 み寄って頭を撫でていた。 当人2人は相変わらずあわわとふわわを口にしながら照れていた。 1451 ﹁ありがとうね、だけど俺の方は心配ないから大丈夫だよ﹂ ﹁ふわわ・・・で・・・でも飴里しゃま・・・・・・ここに来てか らおやしゅみしてないでしゅ・・・﹂ ﹁︵コクリコクリ︶魏が定軍山を奪取してしまったのは確かに大変 ですが、少し休憩した方がいいです・・・﹂ そういうと2人は心配そうな表情をしながらこちらを見上げてくる。 仕方無く俺は周辺の地図を片付けて雛里が持っているお盆の上にあ る肉まんに手を伸ばして口に運んだ。 ﹁あの・・・お・・・・・・美味しかった・・・ですか?﹂ 2人は感想が気になって心配そうな表情でこちらを見る。ゆっくり 味わうと俺は笑みを浮かべながら彼女達に目線を合わせる。 ﹁うん、皮生地はふっくらしてて、肉汁も染み込んでて美味しいよ﹂ 率直の意見を述べると雛里と夏雅里は安心したようだ。 ﹁さて・・・2人がこれ以上心配にならないように今日はこの位に しておくよ﹂ ﹁あ・・・はい・・・じゃあ私達が持ちます﹂ ﹁いいよ、自分で持てるから大丈夫だよ﹂ ﹁ふわっ⁉私達もおてちゅだいしましゅ⁉・・・ふわわっ⁉﹂ 2人が俺の荷物を持とうとした瞬間、夏雅里が服の裾を踏んでその 場に転んでしまった。いつも姉である朱里より大き目の服を着てい る彼女だ。その影響でよくこのように服を自ら踏んで転ぶことがよ くある。 1452 普通なら自分に合った大きさの服を着たら解決するのだが、その光 景が一種の保護欲に駆られてしまう上に癒し系でもある。だから誰 も服を小さくした方がいいと言えずにいるのだ。 ﹁あわわ・・・だ・・・大丈夫・・・夏雅里ちゃん・・・?﹂ ﹁ふわわ・・・お膝・・・しゅりむいちゃいました・・・﹂ ﹁はは・・・災難だね夏雅里・・・﹂ 夏雅里に歩み寄ろうとした瞬間、不意に視線が机の足に向いた。 そこには先程まで夏雅里が手にしていたお盆が奇跡的に立て掛けら れた体勢にあり、机におかれていた湯呑が倒れて中に残っていたお 茶が溢れてお盆に落ちていた。 ﹁あ・・・あの・・・・・・飴里様・・・﹂ ﹁えっ?・・・・・・あぁ・・・ごめん﹂ ﹁あの・・・私は夏雅里ちゃんを連れて行きますから失礼しましゅ・ ・・噛んじゃった・・・﹂ ﹁あ・・・あぁ・・・分かった。肉まんご馳走様﹂ ﹁︵コクリ︶あ・・・ありがとうございます・・・・・・行こ、夏 雅里ちゃん﹂ ﹁あぅ・・・﹂ それだけ伝えると雛里はすぐに夏雅里を連れて本幕を出る。俺はそ が使えるなら・・・・・・よし。 を確認し、魏への対抗策が思いついた。 あれ れを見送るとすぐに定軍山周辺の地図を机に広げて調べ事を始める。 ﹁もし一刀君が言ってた とある場所 いける・・・いけるぞ‼﹂ 定軍山周辺の 1453 しかしこの手段は乾坤一擲でもあり、もし失敗したら俺達は退却す るしかなくなる。 だが俺は負けるなんて全く考えていない。一刀君やライル殿が家族 を信じるように、俺もみんなを信じる。 俺は策を巡らして定軍山攻略の手段を用意していくのであった・・・ ・・・。 1454 第185話:飴里︵後書き︶ 長沙での戦いは熾烈を極めていた。茶子山方面でも数で勝る反乱軍 とアレックス率いるウルフパック本隊を含む孫呉海兵隊による戦い が激化。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re レオン率いるウォーランス隊も敵の真っ只中へと突撃を敢行する。 次回 [陸の王者] 百獣の王と陸の王者が敵を喰らう。 1455 第186話:陸の王者︵前書き︶ 陸の王者、エイブラムスが駆け巡る。 1456 第186話:陸の王者 茶子山方面。ここには反乱軍の大規模な訓練施設や兵器・武器保管 施設、更には魚油の保管場所が集結しているらしく、反乱軍の生命 線ともいえる場所だ。 中佐率いるハルバート隊が長沙本城に奇襲を仕掛けている間に少佐 の指揮下で俺達ウォーランス隊も敵中に飛び込んでいた。 ﹁ガナー‼10時方向‼敵の弓兵隊を狙え‼﹂ ﹁見つけた‼撃ちます‼﹂ ﹁次弾装填‼引き続きHEAT‼﹂ ﹁HEAT装填よし‼﹂ ﹁ドライバー‼速度そのまま‼味方を撥ねるなよ‼﹂ ﹁了解‼敵なら踏み潰してやります‼﹂ ヴィットマン は見える敵に対してM830 HE 俺達ウォーランス1クルーが搭乗するM1A2エイブラムスの00 7号車、愛称 AT−MP−Tを撃ち込んだり、距離が近い敵に対しては同軸機関 銃のM240や砲身基部に搭載しているM2重機関銃で確実に仕留 める。 この2年間で俺達のM1A2もかなり改良がされている。 Urban Kit︶ System︶を採用。M2 CROWSと呼ばれるR Survival まずは対戦車能力を必要最小限にまで抑え、そこに対人対策として TUSK︵Tank Weapon を採用。戦車長用にPROTECTOR WS︵Remote 重機関銃と組み合わせて搭乗員の危険性を軽減させている。 他にも装填手周囲と機関銃に盾を追加、装填手用機関銃に暗視照準 1457 機を追加。 対人用火力と安全性の向上に成功しており、人海戦術が基本である CROWSはハンヴィーやパラディン この時代に適したものとなっている。 因みにPROTECTOR などの車両にも搭載されており、全体的な攻撃力向上にも貢献して いる。 それと余談ではあるが、全ての車両には愛称があり、それぞれ好き な番号を描かれている。 <ウォーランス2から1‼敵増援を確認‼> <3から報告‼敵の投石機を撃破‼任務を続行します‼> <こちらウォーランス4‼残弾残り僅か‼いちど後退します‼> <ウォーランス5から大尉‼4の護衛に回ります‼> <ウォーランス6から4‼穴は埋めてやる‼> 他の車両もそれぞれ戦果を挙げているようであり、敵増援に対して CROWSを使って仕留める。 も迅速に反応している。俺も近くに接近していた敵兵にPROTE CTOR ﹁くそっ⁉流石に抵抗が激しい‼﹂ ﹁奴等にとってここは生命線ですからね⁉必死なんでしょ⁉﹂ ﹁全くだ‼人の迷惑も考えやがれってんだ‼・・・正面に敵兵‼﹂ ﹁大尉‼M830A1残り10‼とM1028が8発‼﹂ ﹁機銃を使え‼﹂ ただこちらも立て続けに砲撃していたので残弾数が少なく、心持た ない状態だが後退は出来ない。仕方無く節約で機銃中心にして敵を 1458 薙ぎ払う。 <アイアンマンからウォーランス1‼こちらはそちらから2時方向 に展開しているが弓兵と大型連弩の抵抗が激しく身動きが取れない ‼そこから片付けてくれ‼> RWSを使って少佐がいる方角を確認する。すると700mほど離 れた場所に少佐達を確認した。そして撃ち下ろす形で丘の頂上には 物陰に隠れながら少佐を攻撃している敵弓兵と連弩が少佐達を攻撃 していた。 ﹁こちらウォーランス4‼確認しました‼﹂ <頼んだ‼こちらは負傷者4名‼素早く片付けてくれ‼> ﹁了解‼・・・・・・ガナー‼目標2時‼距離700‼丘の上の敵 部隊‼﹂ ﹁目標捕捉‼﹂ ﹁HEAT装填‼﹂ ﹁撃て‼﹂ 目標を指示して装填手が素早くM830A1を装填。砲手のジェイ ク軍曹もすぐに照準を合わせてトリガーを引いた。 撃ち出されたHEAT−MP−Tはしっかりと敵弓兵部隊へと向か っていき、着弾すると木っ端微塵に吹き飛ばした。 ﹁目標に命中‼﹂ ﹁次弾装填‼目標連弩‼﹂ ﹁装填よし‼﹂ ﹁照準よし‼﹂ ﹁撃て‼﹂ 1459 次の目標である大型連弩に照準を合わせて発砲。こちらも直撃して 木っ端微塵に破壊し、周辺に破片を撒き散らして二次被害を齎した。 連続で次の連弩も破壊して、少佐達を攻撃していた脅威を排除した。 <こちらアイアンマン‼目標の排除を確認‼いい腕だ‼これより施 設に接近する‼> out‼﹂ ﹁了解です少佐‼こちらは別ルートで引き続き残敵の掃討に回りま す‼ウォーランス1 少佐達の前進を確認し、俺達は別ルートから前進を再開。敵のルー トを遮断して脱出を阻止することがウォーランス隊の任務だ。 敵陣地に続く道を進み、補給に戻っていたウォーランス4と5も合 流して小隊縦隊隊形にて前進をしていた。 ﹁ウォーランス1から各車へ。周辺の警戒を厳にし、敵との突発的 攻撃に備えよ﹂ <2了解> <3了解> <4了解> <5了解> <6了解> 小隊縦隊隊形を取りつつ各車は担当されている方角を警戒する。こ の場合だったら先頭の俺達が前方で2が右前、3が左前で4が右後 ろ。5が左後ろを警戒して6が後方となる。 こうすれば待ち構えている敵に対しても素早く発見させられ、尚且 つ先手を打てる。 ﹁大尉、11次方向の丘に人影を確認。恐らく民兵です﹂ 1460 ﹁武装しているのか?﹂ ﹁いえ、こちらを見ているだけです﹂ <絶対に俺達を見張ってますよ大尉> ﹁それだけじゃ撃てないな・・・﹂ ひとまずはRWSを向けながら前進していく。するとさっきの民兵 がなにやら片手を挙げていた。 ﹁さっきの奴・・・なにをしてるんだ?﹂ ﹁分かりませんね・・・﹂ ﹁警戒は続ける<大尉‼10時方向から攻撃‼>なっ⁉﹂ こちらから10時方向を見ると複数の岩がこちらに飛来してきてい た。 ﹁くそっ⁉全車避けろ‼﹂ <散開しろ‼殺られるぞ‼> 降り注ぐ投石攻撃に俺達はすぐに散開。時にはRWSを使って岩を 破壊していく。照準を合わせようにも敵は稜線を盾にしていてこち らからでは狙えない。 ﹁くそっ⁉撃ち落としてもキリがないぞ‼﹂ ﹁大尉‼このままじゃまずいです‼﹂ ﹁分かってる‼ウォーランス1からウォーランス隊各員‼これより 敵陣に対して突撃を敢行する‼ラインフォーメーションを組んで一 気に突っ込むぞ‼﹂ <ウォーランス2了解‼> <突撃上等‼奴等をビビらせてやります‼> ﹁スモーク散布‼﹂ 1461 無線でスモーク散布を指示すると全車から砲塔左右に取り付けられ ている8連装スモークディスチャージャーよりスモークが散布され た。 このスモークは肉眼像だけでなく熱線映像も遮り、今は不要になっ ているが煙幕弾の代わりにチャフを発射することも出来る代物だ。 ﹁スモーク展開確認‼行けます‼﹂ ﹁こちらレオン大尉だ‼全車突撃‼前へ‼﹂ ≪了解‼≫ 無線で突撃開始を指示し、俺達を先頭に他のエイブラムスも後に続 いて敵陣に突撃が始まる。スモークの中を突き進み、その間にも投 石攻撃は続いているが命中する筈もなく、やがては攻撃が止んでき た。 そしてスモークを突き抜けて丘を駆け上り、頂上に到着するとその 先には敵の投石機陣地が見える。周辺には投石機用の岩が側に積み 上げられ、いきなりの出現に敵は動揺していた。 ﹁各車へ‼自由射撃だ‼すべて破壊しろ‼﹂ ここから先は言葉が無用だ。 自由射撃で全てのエイブラムスからほぼ一斉にHEAT−MP−T が投石機に撃ち込まれ、周辺に瓦礫や放たれる直前の岩が周辺にい た敵兵に降り注がれる。 生き残って敗走していく敵兵には機銃掃射で始末していき、数分後 には投石機陣地を制圧した。 1462 ﹁敵の殲滅を確認‼被害状況を報告・・・・・・必要ないか・・・﹂ 敵の殲滅を確認したら俺は車外に身を乗り出して辺りを見渡す。他 のエイブラムスに目立った損害は見当たらず、俺のエイブラムスに も小さな擦り傷を除いて損害は見当たらない。 ﹁ウォーランス1からHQ﹂ <ウォーランス1、どうぞ> ﹁報告する。敵の投石機陣地による待ち伏せを受けたが、こちらの 反撃で陣地は壊滅排除した﹂ <了解です大尉> ﹁それとこちらに補給部隊を要請。砲弾がほぼ空だ﹂ <確認しました。補給部隊を手配します。現在地にて待機して下さ い> ﹁頼む﹂ HQにいるイリーナに報告と補給申請すると、その直後に茶子山か ら激しい爆音。それに少し驚いて振り向くと爆炎に黒煙。それが悠 々と天高く舞い上がっていた。 ﹁少佐達の方は成功したようだな・・・・・・﹂ <派手な花火ですね> <全くだ。ざまあみやがれ> ﹁各車へ。敵の施設は破壊されたようだ。俺達は補給が完了次第す out﹂ ぐに本隊と合流。残敵の掃討に向かうぞ。了解か?﹂ ≪了解≫ ﹁それまで少し休んでおけ。パニッシャー 無線で今後の行動を指示すると俺はCVCヘルメットと掛けていた サングラスを外し、黒煙が立ち上る茶子山を眺めるのであった・・・ 1463 。 1464 第186話:陸の王者︵後書き︶ 一触即発の定軍山。蜀軍と魏軍が睨み合い、やがてそれは切って落 とされる。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 蜀軍による先制攻撃。その先鋒の翠に因縁の王異が対峙する。 次回 [馬超と王異] 錦と謳われた翠に妖華が立ち塞がる。 1465 第187話:馬超と王異︵前書き︶ 錦と妖花。因縁ある2人が遂に対峙する。 1466 第187話:馬超と王異 レオンのウォーランス隊とアレックス率いるウルフパック本隊が茶 子山の反乱軍施設を破壊した丁度その頃、漢中の定軍山では戦いが 始まった。 夏侯淵が率いてる魏は定軍山で守りを固めてて、あたし達は麓から 攻めてる形になってる。飴里が考えた策は、まず定軍山の麓にある 龍牙 で ってやつ 拠点を制圧して魏の注意をそっちに向けさせ、その間に定軍山の隣 にある天蕩山を奪取。 策 と直刀槍 それが巧くいったら飴里がご主人様から前に聞いた 銀閃 が一気に魏の本陣に雪崩れ込むらしい。 あたしと星は白馬に跨り、十文字槍の 敵を薙ぎ払いながら前に進んでた。 子龍‼我が名を聞き恐れぬ者は掛かって来い‼怯 ﹁行っくぜぇえー‼‼悪鬼の魏軍‼あたしの槍に貫かれやがれ‼﹂ ﹁我は常山の趙 む者なら早々に立ち去れ‼﹂ 辺りには剣や槍を構えた曹操軍があたしと星に仕掛けて来たけど、 はっきり言えば弱い。敵はあたしの槍で吹っ飛ばされたら、麒麟に 蹴散らされたりもする。 中には悲鳴をあげながら逃げ出す奴だって出始めた。 この調子だったらあたし達だけで本陣を陥落させられるんじゃない のか? 1467 そう考えてると隣にいる星が龍牙を構えながらあたしを見て来た。 ﹁翠、あまり油断していると足元を掬われるぞ﹂ ﹁どうしたんだよ星?﹂ ﹁うむ・・・先程から気になっていたのだが・・・敵兵の動きがお かしい﹂ ﹁動き?﹂ ﹁本陣の目と鼻の先だというのに、こうも容易く懐にまで飛び込め た・・・何かあると考えた方がよいだろうな・・・﹂ ﹁あぁ∼・・・・・・そういえば確かにそうだけど・・・あたし達 はあたし達の役割をやらなきゃな﹂ ﹁ふふっ・・・愛しいお方の為にかな?﹂ ﹁なっ⁉なななななな何いってんだよ⁉なんで飴里がそこで出て来 るんだよ⁉﹂ ﹁おや?私は一言も飴里殿だなどと言っておらぬが?﹂ ﹁﹁★■※@▼●∀っ⁉︵翠語発動中︶﹂ 戦の最中だってのに星は⁉だけどそれはすぐに元に戻されることに なる。いきなり飛んで来た一本の弓矢。それに素早く反応した星は 龍牙で叩き落とし、あたしも矢が飛んで来た方角に視線を送る。 か⁉﹂ 。右からも誰かが出てき ﹁まさか本当に錦と昇り龍が来るなんてね・・・﹂ ﹁張 そこにいたのは城壁の上で弩を構えた張 たのでそちらに向くと・・・。 ﹁たった二人でここまで乗り込んで来るとは・・・流石は趙雲殿と 馬超殿だ﹂ 1468 ﹁徐晃もかよ⁉﹂ 赤龍偃月刀を構えた徐晃。そして・・・・・・。 ﹁あぁ・・・・・・ようやく会えた・・・﹂ 正面を振り向くとあたしは言葉を失った。そこにいたのはかつての 親友だったけど、今は敵同士になった・・・。 そう ﹁そ・・・・・・蒼﹂ ・・・・・・王異。 ﹁ふふふ・・・恋にも似たこの気分・・・・・・馬超・・・会いた かった・・・この時をどれだけ待ち望んだか・・・﹂ ﹁あんた・・・・・・蒼・・・なんだよな・・・﹂ ﹁えぇ・・・あなたに一族を殺され、復讐に囚われた哀れな女・・・ ﹂ そういいながら蒼は背中から筆架叉を取り出し、逆手で構えるとあ たしに向かって掛け出した。それに反応して麒麟から飛び降り、龍 牙でその攻撃を受け止めた。 ﹁西涼の死神・・・・・・この時を幾度となく望んだか・・・一族 の仇・・・・・・覚悟‼‼﹂ ﹁くっ⁉﹂ ﹁翠⁉﹂ ﹁貴殿のお相手は私が承るぞ‼趙雲殿‼﹂ ﹁くっ⁉徐晃⁉﹂ 1469 あたしと蒼。星と徐晃の一騎打ちが始まった。 蒼は筆架叉を左右で2回ずつ斬りつけ、左側で薙ぎ払うとそのまま 右側の持ち方を変え、鋒をあたしに突き出してきたけど、銀閃でそ れらを全て防ぎ、少し距離をおいて石突を地面に突き刺し、それを 支柱にしながら一回転。 反動を利用しながら振り下ろすがこいつは蒼に防がれる。立て続け に石突で横っ腹を狙うけど右側の筆架叉で防がれ、すぐに刺突する けど防がれる。 そのまま勢いで穂先と石突を交互に薙ぎ払うが全て防がれて、その 合間に蒼は力を込めながら右側の筆架叉で振り下ろし、あたしがそ れを避けると今度は左側の筆架叉で振り下ろす。 すかさず刺突を見舞うけど逆にお腹に蹴りを食らって少し吹き飛ば される。 ﹁逃がさない‼大人しく散って‼﹂ ﹁やめろって蒼⁉﹂ ﹁死神がその名を口にしないで‼それに私は蒼じゃない‼﹂ 睨み合いながらあたしは蒼にやめるよう促すけど、逆に斬り掛かっ てきてあたしと力比べになる。 ﹁蒼という子は死んだわ・・・私の名前は王異・・・・・・西涼の 死神に家族を殺され・・・ただ復讐の為だけに生きてきた・・・そ して・・・・・・﹂ ﹁えっ⁉﹂ 蒼は回転しながら後ろに飛び上がり、着地と同時にあたしに凄い速 さで斬り掛かって来た。 1470 ﹁死神の首こそが・・・・・・私が望む唯一のもの‼﹂ ﹁がっ⁉﹂ 蒼は両方の筆架叉で振り上げ、銀閃を吹き飛ばすとそのままあたし の腹に蹴りを見舞って来た。 あたしはそれをモロに受け、地面に倒れてしまった。そこに蒼が上 に跨り、鋒をあたしに向けて来た。 ﹁一族の仇・・・ふふっ・・・これで・・・・・・﹂ 蒼はあたしの首に筆架叉の鋒を向けて・・・・・・。 ﹁終わりよ‼‼﹂ あたしはそれに思わず目を瞑ってしまう。 ︵ごめん・・・・・・蒲公英・・・ご主人様・・・・・・︶ 鋒があたしの喉に迫る。 ︵飴里‼‼︶ 最後に飴里に会いたかったな・・・・・・。あたしは死を覚悟する けど、いつまでたっても攻撃がこない。気になったので恐る恐る目 を開けてみると・・・・・・。 ﹁何とか間に合ったようだね﹂ 蒼の筆架叉を白虎で受け止めている飴里の姿があった。 1471 それを見た蒼はすぐにあたしからどいて距離を置く。 ﹁か・・・飴里﹂ 元直。どこにでもいる・・・軍師兼武将だよ﹂ ﹁あなた・・・何者?﹂ ﹁俺は徐 ﹁か・・・飴里⁉なんであんたがここにいるんだよ⁉策ってのはど うなったんだよ⁉﹂ ﹁それなら心配ない。何とか間に合ってくれたからね﹂ 純白の夏侯旗 が靡いていた・・・ そういいながら飴里は天蕩山を見る。あたしも気になったので振り と 向くとそこには・・・・・・。 十文字 ﹁俺の義弟と義兄達がね﹂ 天蕩山の山頂には ・・・・・・。 1472 第187話:馬超と王異︵後書き︶ 長沙本城での戦いは進んでいた。ハルバート隊の奇襲を受けて動揺 海兵隊の誇り,Re する反乱軍を駆逐しながらライルは孫静確保へと急行する。 次回 中編] 真・恋姫無双 [ファイアストーム 反乱軍との戦いが終幕へと向かう。 1473 第188話:ファイアストーム 中編︵前書き︶ 銀狼が遂に裏切り者を見つけるが・・・・・・。 1474 第188話:ファイアストーム 中編 ﹁ウルヴァリンからオールハンド。状況を報告しろ﹂ 長沙本城に奇襲を仕掛けている俺達。出現してくる敵は排除したり、 気絶させた状態でその場で拘束しておく。 ただ流石に敵の数が多く手を焼いている状態だ。だからその場合は スコーピオン隊による支援射撃を要請。固まっている敵部隊を一網 打尽にしながら孫静捜索を継続中だ。 <こちらハルバート2。兵舎で敵部隊と交戦中> <ハルバート3。2チームに分けて東門と南門を閉鎖。敵兵十数名 を捕虜にしました> <ハルバート4から報告。西門閉鎖後に武器庫前にて交戦中。こち らが押してます> <ハルバート5よりウルヴァリン。本城東南部の兵糧庫を制圧。C 4を設置して爆破します> 作戦は順調のようだ。ハルバート各隊はそれぞれが与えられた任務 を順調に消化していき、反乱軍を確実に疲弊させている。 攻城戦においては外から攻め込んで敵を倒すよりも、敵の武器庫や 兵糧庫などの要所を制圧もしくは破壊して一枚岩ではない守備を内 側から切り崩した方が上手くいくものだ。 特にこの長沙本城は大きく分けて玉座が存在する北部エリアに武器 庫がある西部。 兵糧庫が点在する東南部、兵舎や詰所がある東部。そして宝庫の中 1475 央部という構造となっており、その周囲に高い城壁と見張り台に防 御用連弩を配備させているようだ。 だから敵の攻撃が大きく制限される内側から仕掛ける。俺もHK4 16に新しいP−MAGを挿入して5.56mm弾を再装填する。 ﹁了解した。こちらも西部武器庫を制圧した。これより玉座へと向 かう。各隊は敵の増援と伏兵に警戒しつつ、任務を完遂しろ﹂ ≪了解≫ ﹁スコーピオン隊も引き続き上空から援護してくれ。ただし燃料が out﹂ 半分を過ぎたら補給に戻れ。了解か?﹂ ≪了解≫ ﹁頼りにしている。ウルヴァリン 無線から手を放す。そして城壁に残ってこちらを狙っていた敵の弓 兵に照準を合わせて発砲。敵はそのまま城壁から落ちて身体を地面 に叩きつけた。 ﹁よし‼我々はこのまま玉座へと向かう‼あの陰気臭い野郎共を今 日こそ片付けるぞ‼﹂ ≪Hooah!!≫ ﹁1−2はここに残れ‼敵が来たら航空支援を使え‼﹂ ﹁了解です中佐‼﹂ ﹁行くぞ‼﹂ HK416を構え、ハルバート1−1を引き連れて俺は玉座へと急 IA 行する。その道中には敵が待ち構えていたがHK417、HK41 MASS、M27 DMRから放たれる5.56mm弾と7.62m 6+M320A1、HK416+M26 R、HK417 m弾、散弾に敵う筈もなく、次々と返り討ちにされる。 1476 中には取り付いてくる奴もいたが、俺の二刀槍術や部下達のCQC にてこちらも返り討ち。 途中にあった部屋という部屋を片っ端から制圧していき、北部エリ アに到着。玉座の間の入り口前に取り付いた。 ﹁・・・駄目です。内側からロックされています﹂ ﹁了解だ。軍曹、壁にC2を仕掛けろ。壁に穴を開けて突入するぞ﹂ ﹁了解﹂ 後方にいた軍曹が扉の左側にバックパックから取り出したC2を円 形に仕掛ける。C2は旧式のプラスチック爆薬で、威力が低いこと から室内突入用ツールとして使用している。 俺達は少しだけ離れて爆破の衝撃に備える。そしてリモートスイッ チを握っている軍曹がスイッチを押すと仕掛けたC2が起爆し、そ こに大人が軽く通れる位の大穴を作り出した。 ﹁行け‼突入だ‼﹂ ﹁Hooah!!﹂ 俺達は銃を構えて室内に突入するが問題が生じた。それは玉座が俺 が思っていたよりも広く、反対の壁付近には弓兵がこちらに向かっ て弓を構えていた。 しかもそれだけではなく、突入した付近からは剣や槍、戟を手にし た敵兵が次々と出現し、突入口にも別の敵兵が出現。ようするに・・ ・・・・。 ﹁中佐⁉﹂ ﹁くそっ⁉囲まれた⁉﹂ 1477 俺達は完全に包囲されてしまったということだ。俺達は銃を構えつ つ円陣を組んで各方角に殺気を浴びせる。すると玉座の一番奥から 誰かが姿を表したが、誰なのかは直ぐに分かった。 ﹁やはり来よったか﹂ ﹁・・・・・・孫静﹂ 雪蓮達の叔母であり、この反乱を引き起こした孫呉の裏切り者の孫 静だ。相変わらず不敵な笑みを浮かべ、こちらを見下げるような視 線で見てくるが俺はHK416の銃口を向けたままに保つ。 ﹁ここで待っておれば必ず其方らからノコノコと顔を出すと思った ぞ。流石は伯符の飼い犬じゃ﹂ ﹁ふん・・・きな臭い狐よりはマシだ﹂ ﹁お∼お∼、怖い。じゃがその狐に囲まれておる犬はどこじゃった かのぅ?﹂ そういうと孫静は小さく笑い始める。それに釣られてか周りにいた 敵兵も声を挙げながら俺達に対して馬鹿にし始める。 ﹁しかし・・・妾は伯符みたいに無闇に手をあげたりはせぬ。大人 しく武器を捨てて妾に降るがよい﹂ ﹁・・・なにを言ってやがる?﹂ ﹁妾達はこの国に大平を齎す善なる者よ。伯符や劉備、曹操は汚ら わしく戦をしておるだけじゃ。見とるこっちが気分が悪くなりよる﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁じゃが妾はお主達にも救いの手を差し伸べてやろうぞ。妾に降り、 その力を妾達の為に使うがよい﹂ ﹁・・・・・・フッ﹂ 1478 ・・・・・・聞いているだけで腹が立つ。思わずトリガーを引きそ うになったが、それを必死に堪えて睨みつける。 ﹁答えは聞くまでもないが﹁馬鹿めが‼‼﹂なっ⁉﹂ ﹁言いたいことはそれだけか⁉さっきから黙って聞いていれば何を ほざきやがる‼貴様こそ・・・いや‼貴様の方がただ民を苦しめて 無益な戦いを広げているだけだ‼﹂ ﹁なっ⁉・・・ぶ・・・無礼者‼妾を誰だと思っておるか⁉﹂ ﹁孫呉軍人としての誇りを忘れ、民や家族を苦しめる偽善者野郎だ ろうが⁉﹂ ﹁なっ⁉偽善者じゃと⁉﹂ ﹁あぁ‼自分からは手を汚さず高みの見物しかしないクソ偽善者だ ‼俺達や雪蓮達は民を守る為に危険を顧みない‼戦って明日を勝ち 取る‼貴様のような腰抜けとは違うんだよ‼﹂ 俺は持てる限りの怒気を周囲にいる全ての敵に浴びせてやる。敵兵 はそれに思わず怯んで、孫静自身も小さく悲鳴をあげて身を縮ませ る。しかしやがて身体を震わせながらこちらを睨み始めた。 ﹁・・・よう分かった・・・・・・ならば妾は邪悪な其方らにせめ てもの慈悲を与えてやろうぞ・・・・・・潔く散るがよいわ‼﹂ そういうと孫静は右手をあげ、それをみた弓兵は弓を構える。俺達 もそれぞれの武器を構えて応戦の構えをみせる。そして・・・。 ﹁放てい‼﹂ 孫静が攻撃を指示した瞬間、突入口にいた敵兵が血飛沫を吹き出し ながら吹き飛ばされる。いきなりだったので孫静達はもちろん、俺 1479 達もそれに驚いて振り向いた。 そこにいたのは頼もしい援軍でもあり、俺にとって掛け替えのない 存在。逆に孫静にとって恐怖以外なにものでもない存在の・・・。 ﹁久しぶりね・・・・・・孫静叔母様﹂ 南海覇王を構えて裏切り者を粛清しにきた雪蓮だった・・・・・・・ ・・。 1480 第188話:ファイアストーム 中編︵後書き︶ 翠の危機に颯爽と駆け付けた飴里。その翠に深い憎しみを抱く蒼。 海兵隊の誇り,Re 互いの刃がぶつかり合う中、天蕩山に辿り着いた一刀と露蘭達も行 真・恋姫無双 動に移す。 次回 [天蕩山からの奇襲] 一刀達、天の知識を使って魏に食らいつく。 1481 第189話:天蕩山からの奇襲︵前書き︶ 一刀と露蘭。2人の白が奇襲を仕掛ける。 1482 第189話:天蕩山からの奇襲 何とか飴里の方は間に合ったようだ。ここから翠が討ち取られそう になった時にはいても立ってもいられない衝動に駆られたが、間に 合って安堵の表情を浮かべる。 南蛮から戻って来た俺達南蛮平定軍はすぐに兵を纏めて俺と露蘭率 いる分遣隊は直ぐに定軍山へと急行し、紫苑と桔梗、焔耶は別働隊 として長安から向かって来る輜重隊へゲリラ攻撃を仕掛ける為、そ れぞれ向かった。 だけど流石は飴里だ。俺が前にさりげなく話した戦術の利点と地形 を瞬時に照らし合わせて今回の策を思いついたのだ。 俺は愛馬の飛燕に跨りながらライルさんが前にくれた双眼鏡を覗い て様子を伺っていた。 ﹁よかった・・・翠は無事みたいだ﹂ ﹁本当か⁉﹂ ﹁あぁ・・・飴里が間に合って間一髪の処で攻撃を受けずにすんだ みたいだ﹂ ﹁よ・・・よかったぜ∼・・・﹂ 隣にいた露蘭も胸を下ろして安堵する。向こうでは睨み合いを続け ている飴里と王異と思わしき女性。星と徐晃が一騎打ちを繰り広げ ている状態だ。鄧艾と楽進達がいないのが気になるけど、あの周辺 にいるというのは間違いない。 俺は双眼鏡をしまうと神龍双牙を抜刀し、目の前を改めて確認する。 1483 ﹁よし、次は俺達が飴里に応える番だ。気合を入れていくよ﹂ ﹁な・・・なあ・・・・・・カズっち﹂ ﹁なに?﹂ ﹁いや・・・飴里から聞かされてはいたけど・・・・・・本当にこ こからいくのか?﹂ そういうと露蘭は同じ方角を指差す。そこに広がるのは急勾配とな っている崖。殆ど隣の定軍山目掛けて一直線になるように向かって おり、所々に岩や木々が点在している崖だ。 だけど俺は表情を変えることなく魏軍の本陣を見下ろしていた。 ﹁当たり前さ。何しろ正面は完全に固められてるし、別の道も今頃 はがっちり防御されてる筈。魏軍の不意を完全に突くんだったらこ の手段しかないよ﹂ ﹁いやいやいやいや・・・・・・だからってこんな崖から奇襲する なんて聞いたことがないぜ﹂ ﹁ふふっ・・・・・・まあそうだろうね。俺だって何も知らずにや らされそうになったら足が竦むよ。だけど・・・﹂ ﹁だけど?﹂ ﹁俺達なら出来る。一緒に誓いを建てた義兄弟なんだからさ﹂ 俺がそういうと露蘭は少し照れ臭そうにしながらも、しばらくして 北欧天龍から西欧海龍を抜刀し、右手で構える。 ﹁まっ・・・そりゃそうだな・・・・・・俺達なら出来る‼出来る ったら出来るってな‼﹂ ﹁あぁ‼その通り‼﹂ 俺達はそれぞれ神龍双牙と西欧海龍の鋒を天高く掲げ、キンッとい う音をたてる。 1484 俺達が気合を入れあっていると部下の一人が戟を手に歩み寄って来 た。 ﹁北郷様、部隊の出陣準備が整いました﹂ ﹁ありがとう。士気の方は?﹂ ﹁はっ。劉天刃の騎兵隊は士気が最高潮を迎え、出陣を心待ちにし ています﹂ 報告を受けて俺は後ろに振り返る。そこには馬に跨り、刀や槍、戟、 弓を片手に待機している騎兵隊が凛々しい表情で待ち焦がれていた。 それに軽く笑いながら俺は再び神龍双牙を高く掲げた。 よし‼準備は整った‼この漢中を制すれば益州の守りはより強固 となり、みんなの大事な家族が安全となる‼ 俺達の家族の為‼仲間の為‼大事な人の為‼それぞれ皆は心に秘め ている想いは様々だ‼ だが‼ その想い一つ一つがここにいる全員に力を与え、皆を守る支えとな 仁の世 の為に‼﹄ る‼皆のその力を一つに纏め、家族達が笑える世界を‼ ﹃応っ‼劉備様と北郷様の 俺が軽く鬨を揚げると全員がそれぞれの武器を高く掲げ、同じよう に鬨を揚げる。これでさらに士気は高まっただろう。俺は神龍双牙 を繋げて薙刀にすると手綱をしっかりと掴んだ。 1485 ﹁劉天刃隊‼‼俺達に続けぇええ‼‼﹂ ﹃うぉおおおおおおおお‼‼‼﹄ そう叫ぶと飛燕は一気に飛び上がり、崖を一気に下っていく。露蘭 を始め、部下達も俺に続いて同じように崖を降る。 平安時代の末期の寿永3年2月7日に摂津国福原および須磨で行わ 義経がやったとされる 逆落とし である。 れた源軍と平軍により繰り広げられた戦いである一ノ谷の戦いにお いて、源 今回の地形が一ノ谷とよく似ている。切り立った崖の先には魏軍の 本陣。加えて魏軍はここに背を向けているような状態で構えている。 流石に奇襲を得意とする夏侯淵もこれは思いにもよらないだろう。 ただ欠点があるとすれば俺達は奇襲部隊ということもあって数はか なり少ないし、夏侯淵は曹操の股肱。間違いなく援軍を送ってくる 筈だ。 だから敵の防備が手薄な内に定軍山を陥落させる今しか好機がない。 手間取っているとやがてはこちらは退却するしかなくなる。 だから今回は迅速かつ確実に定軍山を奪取しなければならない。俺 は手綱を操りながら露蘭に話しかける。 ﹁露蘭‼大丈夫かい⁉﹂ ﹁全然平気さ‼むしろ迫力があって楽しいぜ‼﹂ ﹁悪いけど一番乗りは俺だよ‼﹂ 雷電 を更に速く走らせ、俺も負けずに飛燕の速度を ﹁あっ⁉だったら勝負だぜカズっち‼いぃいやっほぅうううう‼‼﹂ 露蘭は愛馬 更に速めた。そして敵の本陣のすぐ手前で同時に二頭が飛び、ほぼ 1486 同時に近くにいた敵兵を踏み潰しながら着地した。 ﹁敵陣に到着だ‼一気に陥落させるぞ‼﹂ ﹁よっしゃ‼やってやるぜ‼﹂ 動揺している魏軍に斬りかかる俺達。ここまで来たら引き返すこと は叶わない。神龍双牙を構えながら飛燕から飛び降りた俺は一気に 敵集団に斬りかかる・・・・・・・・・。 1487 第189話:天蕩山からの奇襲︵後書き︶ 追い詰められたライルの下に駆け付けた雪蓮。最後の抵抗で刃向か う孫静の手駒を蹴散らしながら孫静に近づく。 海兵隊の誇り,Re 真・恋姫無双 次回 は終息へと向かう。 後編] ファイアストーム [ファイアストーム オペレーション 1488 第4回人気キャラクター投票結果発表︵前書き︶ 第4回人気キャラクター投票結果発表。 1489 第4回人気キャラクター投票結果発表 ・・・・・・人の仕事 真・ 人気キャラクター投票結果発表 第4回 Unteroffizier・・・ だぁ!!その前振りはもういいわよ‼ 造られた人気キャラクター投票結果発表特設会場の空間は闇に包ま れ を取らないでくれないか? ﹁うるさい天の声‼‼﹂ ・・・Jawohl,Herr 。 海兵隊の誇り,Re ﹁まったく・・・・・・じゃあ早速はじめるわね♪ 恋姫無双 ‼‼﹂ ﹃わぁああああああああ‼‼﹄ ﹁さぁさぁ‼やってきたわね‼今回でこの投票も4回目‼しかも今 まで以上に白熱した投票らしいから私も超楽しみ‼司会は私、天界 一の美少女のジーンちゃんと・・・﹂ ﹁はぁ・・・・・・ライルだ﹂ ﹁ちょっとライル⁉テンション低っ⁉﹂ ﹁頼むから俺を司会から外してくれないか?仕事で忙しいんだから・ ・・﹂ ﹁ダメ♪それは作者が許さないんだからね♪﹂ ﹁・・・・・・なにを言ってるんだ?﹂ ﹁それと∼・・・今回はスペシャルゲストが来てるわよ♪まだ少し 時間が掛かるからもうちょっと待ってね・・・・・・さてさて♪ラ イルへの説得も終わったのでさっそくいってみましょう‼ルーレッ トスタート‼﹂ 1490 ﹁・・・・・・どこが⁉﹂ ライルの疑問も後回しにして、ルーレットが回り出した。 ★■※@▼●∀っ⁉ 孟起こと翠‼﹂ という独自の言葉で定評あ ﹁出ました‼第10位はこの3人♪両方とも蜀陣営から‼照れた時 に見せる表情と り‼最近になってから飴里を意識し始めている馬超 ﹁な・・・なんであたしが飴里を意識してるんだよ⁉﹂ ふわわ軍師 ‼諸葛 ﹁もう1人は最早可愛らしさは核兵器‼蜀の和み系に加わってロリ 子魚こと夏雅里ちゃん‼﹂ ッ子陣営で群を抜く可愛らしさを持った通称 均 ﹁ふわわっ⁉わ・・・私でしゅか⁉﹂ 子瑜こと千里だ﹂ ﹁そしてこっちは呉からだ。妹を想う気持ちはもはや病気の手前。 本作一のシスコン。諸葛謹 ﹁だ・・・だからシスコンじゃありませんって⁉﹂ ﹁・・・なんというか・・・予想通りの反応だな・・・﹂ ﹁まぁいいじゃない♪じゃあ投票理由の中で一番印象的だったのは これね♪﹂ 翠:普段は元気一杯なのに恋愛事になるとしおらしくなるリアクシ ョンが可愛いです‼特にウェディングドレスとゴスロリ服はどスト ライク‼ 夏雅里:彼女のためなら、火の中ICBMの中でも‼ 千里:軍師としての時とシスコン時のギャップがすごい!もう二重 人格といっても過言ではない︵笑︶。早くいい嫁さん見つけて妹離 れできるといいですね。いや、結婚してもシスコンは健在か?千里 の今後が非常に楽しみです!! 1491 ﹁★■※@▼●∀っ⁉︵翠語発動中︶﹂ ﹁ふわ・・・は・・・はじゅかしいでしゅ・・・﹂ ﹁だからシスコンじゃないのに・・・﹂ 相変わらず2人は顔を真っ赤にし、翠は独自の翠語を発し、夏雅里 は大きいベレー帽をさらに深く被っている。 千里は否定しているのにシスコンだと言われて拗ねてしまったよう だ。 ﹁さぁさぁジャンジャンと行くわよ♪次の第9位はこちら♪﹂ そう指差すとルーレットが回り出す。 公 ﹁出ました‼第9位も2人‼1人は呉から‼妖しい雰囲気と豪快な 性格が絶妙にマッチし、他には見れない魅力を醸し出す‼黄蓋 覆こと祭さん‼﹂ ﹁ほぅ・・・この儂かいな?﹂ ﹁二人目は俺達からだ。軍人としてだけではなく経営者としての顔 を持つ。戦闘になれば卓越された指揮能力と連携で敵を圧倒する。 ウォーランス隊隊長のレオン・キャメロン大尉だ﹂ ﹁って⁉俺ですか中佐⁉﹂ 名前を挙げられるとスポットライトが2人に浴びせられる。 ﹁さぁ‼続けていくわよ‼印象的だったのはこれよ‼﹂ 祭:呉の大黒柱?かつ古参の武将であり無くてはならない存在な所 ですかね。後は人の気持ちが良く分かるというか客観的に見てくれ る所も好きですね。 1492 レオン:その名前の如く猛る獅子みたいに戦い、私生活ではメイド 喫茶の執事長をしている。そのギャップがすごく好印象です。 ﹁はっはっはっはっ‼分かっておるではないか‼まだまだ儂も捨て たものではないな‼﹂ ﹁ははは・・・だったらこんど店に来てくれ。ご奉仕させて頂くよ﹂ ﹁ドサクサ紛れに店の宣伝が入ったな・・・まぁいいだろう﹂ ﹁私もレオンのお店に行ってみたいわね・・・・・・あっ‼着いた みたいね﹂ ﹁何がだジーン?﹂ ﹁特別ゲスト♪・・・では皆さん、お待たせしました♪ゲストが到 着したから紹介するわね♪﹂ ﹁だから誰なんだ?﹂ ﹁それは∼・・・・・・この人達で∼す♪﹂ そうジーンが話すと入り口の扉が開けられ、スポットライトがそこ に当てられる。そこから現れたのは三人組の男女。その1人の青年 で一応は主人公をし ∼緑に染 と2人の少女はこちらに歩いて来て、誰かのかそれでようやく分か った。 恋姫無双∼黒龍の旅∼ 真・恋姫†無双 ﹁それじゃ自己紹介お願いしま∼す♪﹂ と ﹁えっと・・・初めましてかな・・・ まる黒の傭兵∼ てる黒薙。字を明蓮っていいます﹂ ﹁黒薙様の従者をしています黒永と申します﹂ 真・恋姫†無双 ∼緑に染まる黒の傭兵∼ で新しく の主人公 ﹁私も黒薙様の従者をしてる黒季だよ﹂ 現れたのは 恋姫無双∼黒龍の旅∼ である雛斗とその従者の黒永。 1493 従者をしている黒季。俺は雛斗に歩み寄ると握手を交わした。 ﹁久しぶりだな雛斗﹂ ﹁ライルも元気そうでよかったよ﹂ ﹁初めましてライル様﹂ ﹁君が黒永か。話は聞いてるよ。とても優秀な従者だとね﹂ ﹁いえ・・・その・・・・・・私はただ・・・黒薙様の為にやって いるだけで・・・﹂ ﹁はいは∼い♪自己紹介もそれまでにして続けるわね。三人ともも 最後まで楽しんでってね♪次は8位。8位はこちら♪﹂ そういうとルーレットが再び回る。 ﹁出ました♪8位は3人ね♪纏めていくわ。1人は呉から。ツンデ 仲謀こと蓮華♪ レ要素に加えてかなりのヤキモチ焼き。安産型のお尻が国宝級とさ れてる孫権 元直こと飴里♪ 2人目は蜀‼最近になってから出番が急上昇中で軍師だけじゃなく 武将としても能力を遺憾無く発揮している徐庶 奉先こと恋ちゃんで∼す♪﹂ 3人目は董からよ‼天下無双の強さとは別に動物に好かれる優しさ ‼食べてる姿は癒される呂布 ﹁なっ⁉わ・・・私か⁉﹂ ﹁俺がかい?・・・本当かなそれは?﹂ ﹁︵モキュモキュ︶・・・・・・?﹂ それぞれのリアクションを見せる3人。 ﹁じゃあ反応を伺いたいけど投票理由に入るわね♪﹂ 蓮華:俺の嫁。 1494 飴里:軍師としても優秀なのに、颯爽と駆け付けて翠を助け出す強 さ‼カッコいい‼。 恋:主人を守る番犬のようで、気ままに行動する猫のような特性︵ ?︶を持つとかどストライクでした。無印から大好きなキャラです。 ﹁だ・・・だから誰が嫁なのよ⁉﹂ ﹁颯爽とね・・・だけど・・・・・・ありがとう﹂ ﹁︵モキュモキュ︶・・・美味しい﹂ ﹁ははは・・・やっぱり恋の食べてる姿は癒されるな・・・﹂ ﹁そうですね﹂ ﹁う・・・噂には聞いてたけど・・・確かにこれは・・・﹂ ﹁あぁああん‼相変わらず可愛いんだから恋は⁉まぁそれはおいと いて・・・次は7位。7位はこちら♪﹂ 再び︵以下省略︶ ﹁出たようだな・・・これは単独だ。これに関しては俺が紹介する ぞ・・・・・・歴戦の猛者が集うS,W,MARINEの中でムー ドメーカーの役割を担う一方、戦場では死神の如く死を撒き散らす 俺の相棒。ウルフパック副官のアレックス・ヴォード少佐だ﹂ ﹁お・・・俺がか⁉・・・・・・やったぜ‼﹂ スポットライトがアレックスに浴びせられ、相棒は片手を握りしめ ながら喜ぶ。 ﹁じゃあそのまま6位もいくわね♪6位には2人がランクインした わ♪1人は董からよ♪ 文遠こと霞‼ 猫みたいに気ままだけど純情で時折見せる乙女でファンを確実に伸 ばしてる張遼 1495 武久大尉‼﹂ もう1人はウルフパックからよ♪侍の心を有して空から仲間を守る 守護天使的存在‼グレイブ隊隊長の南郷 ﹁おっ♪うちかいな♪﹂ ﹁少佐の次が俺ですか?﹂ アレックス:先の戦いでの印象が強すぎます。無双と言いましょう か、非常に仲間想いです。冥琳との絡みに期待。 霞:明るく純粋なところが好みです。一目惚れした娘。 武久:頼れる中間管理職 ﹁そ・・・そんなに強烈だったのか?﹂ ﹁いややわぁ∼♪うちに惚れてもうたやなんて♪﹂ ﹁頼れるか・・・・・・だったら期待に応えられるよう頑張らせて もらいます﹂ ﹁どうやらライルの副官もかなり優秀みたいだね?﹂ ﹁あぁ、俺の頼りになる義兄弟達だ﹂ ﹁はいは∼い♪じゃあちゃっちゃと進めちゃいましょうか?次は第 5位と第4位♪それじゃ∼・・・ルーレットスタート‼﹂ そういいながらジーンはマイクを指しながらルーレットを回し始め、 やがて停止した。 ﹁でちゃいました‼第5位は3人よ♪長い黒髪に小さな身体‼パッ 幼平こと明命ちゃんに、普段は何を チリとした眼はまさに人形みたいな可愛らしさ‼お猫様になると自 身もお猫様になっちゃう周泰 子龍こと星‼ 考えてるか分からないけど、しおらしい表情をも見せて意外と初心 ‼趙雲 そして最後は戦うことは嫌いだけど何もできないことはもっと嫌い 1496 ‼純粋で非常に心優しい ん♪﹂ へぅの伝道師 ﹁はぅあ⁉やりましたですお猫様‼﹂ ﹁おや?私ですかな?﹂ ﹁へぅ?﹂ の董卓 仲穎こと月ちゃ 紹介されると明命は近くにあった猫のぬいぐるみに頬ずりを始める。 星は相変わらずメンマを食べながらリアクションを崩さず、月は両 手で顔を隠している。 ﹁はははは・・・・・・相変わらずだな・・・次は第4位だがこち 天の御遣い 北郷 一刀だ﹂ らは2人いるぞ。1人目は蜀からだ。その輝く純白の服装に二筋の 刀。強さと優しさを秘めた ﹁やった‼前よりランクが上がった‼﹂ ﹁そしてもう1人は・・・・・・こ・・・これはマジか?﹂ ﹁私もそれを見て本当にビックリしたわよ・・・まさかここまで好 評なんて思っても無かったから・・・﹂ ﹁わ・・・分かった・・・・・・もう1人も一応は蜀からだ。その 左手に握り締められた黒い槍は仲間や家族を守り通す守護の槍。戦 明蓮、真名は雛斗だ﹂ 場では颯爽と現れて卓越された軍略と武術を振るう別世界の英雄。 黒龍こと黒薙 そう言われると明命と一刀、そして俺の隣にいる雛斗にスポットラ イトが浴びせられる。 ﹁ライル・・・これって本当に俺がランクインしたのか?しかも4 位だなんて・・・﹂ ﹁あぁ・・・作者もこれは本当にいい意味で予想外だったらしい。 再度コラボ希望も幾つか来てる程だよ﹂ ﹁おめでとうございます雛斗様﹂ 1497 ﹁さっすがは雛斗様。他の作品でも人気を集めちゃうなんて♪﹂ ﹁あ・・・ありがとうね、2人共﹂ ﹁は∼い♪じゃあ投票理由に移るわね♪雛斗だけは特別に二つ送っ ちゃうから♪﹂ 明命:お猫様同盟‼ 星:人の事は弄るくせに、いざ自分の事となると脆くなるとか⋮く すぐられるものがあります 月:恋姫の中でかなり好きな子です!あんまり目立たないけど大人 しそうで優しそうなところが良いですねぇ 一刀:自分の中では彼の順位は揺らぎません。理由は前回の投票の 通り。近々単独主人公デビューもするそうで、さらに期待していま す。 雛斗 ・ライルとの息が合った共闘に興奮しました‼両方とも好きなキャ ラクターなのでぜひともまた共闘して欲しい‼‼ ・英雄同士が会うとこうなるのか・・・2人が闘うとどうなるんだ ろう・・・? ﹁確かに前々から思ってたけど、武人としてもライルとは闘ってみ たいな﹂ ﹁それは俺もだ。あんな闘いを見せられたら誰だってそうなる。同 じ槍使いなら尚更といったところだ﹂ ﹁う∼ん・・・私もかなり興味があるけど、それはまた別の機会に しておいて・・・次は第3位と第2位よ♪﹂ 1498 興味があるが、今は対決だなんて出来っこない。少し残念だがルー レットに視線を移す。 ﹁出た出た出たぁああ‼両方とも単独‼第3位は魏から‼誇り高き 公明こと牙刀‼﹂ 武人としてだけではなく仲間の安否を優先させる忠義に生きる軍人 ‼その潔さには感服を受ける徐晃 ﹁自分が・・・それは誠か?﹂ ﹁そして第2位はこの人‼普段は天真爛漫で無邪気‼仕事をサボっ 伯符こと雪蓮‼﹂ ては酒を飲んだりライルと一緒にいる可愛らしさ‼遂にライルと恋 仲に発展した我らがメインヒロイン‼孫策 ﹁やったぁ∼♪私も2位に返り咲いちゃった♪﹂ ﹁ははっ、よかったな雪蓮。おめでとう﹂ ﹁ラ∼イ∼ル∼♪記念に口付けして♪﹂ ﹁今はダメだ。だから後にしてくれないか?﹂ ﹁えぇ∼⁉ブーブー‼いまライルと口付けがしたい∼‼﹂ ﹁はいはい、雪蓮さん。これが終わったら好きなだけしちゃって構 わないから、今は少しだけ我慢してね♪﹂ ﹁ブ∼・・・﹂ ﹁こ・・・この世界の孫策ってあんなに甘えん坊なのか?﹂ ﹁あぁ﹂ ﹁さてっと・・・じゃあ投票理由に移るわね♪理由はこれよ♪﹂ 牙刀 ・義理堅く忠誠心の強さがかっこいい!誰とくっつくのか楽しみで す!凪とくっつくと堅物コンビで面白いかも? ・言わずもがな。何事にも礼節を欠かさない姿勢は流石です。 雪蓮 ・ライルとの恋仲発展おめでと‼末長く幸せに‼ ・戦場と普段のギャップがGood!!理想的な彼女ですし、なに 1499 よりもライルが羨ましい‼ ﹁流石は牙刀と雪蓮。定評の評価だな﹂ ﹁ねえねえライル♪次はいよいよ首位よ♪今の気持ちは?﹂ ﹁だから俺に振るな﹂ ﹁さぁさぁさぁ‼現在V3のライルが死守するか⁉それとも別キャ ラクターが奪い取るか⁉一位はこの人‼﹂ 最後ということでドラムの音が鳴り響き、他と比べて長くルーレッ トが回る。そしてドラムの音が鳴り止んだと同時にルーレットが止 まった。 ﹁出ました‼第4回のトップはやはりこの人‼武人、軍人、指揮官 として最高な上にそれに溺れず普段の温厚な性格でファンの心を鷲 掴み‼最近になって雪蓮ちゃんと遂に恋人関係になってアツアツな 一面を見せる我らが主人公‼ウルフパック指揮官のライル・L・ブ レイド中佐だ‼﹂ ﹁・・・また俺か?﹂ ﹁そうよライル♪4連覇おめでとう♪﹂ ﹁凄いなライル・・・・・・﹂ ﹁おめでとうございます、ライル様﹂ ﹁まぁ一応はおめでと♪﹂ ﹁じゃあ投票理由に移るわね♪これが投票理由よ♪﹂ ライル ・これは不動ですね。さすが主人公と言わざるを得ません。鈍感卒 業おめ?︵笑︶やっとヒロインとくっつきましたね。雪蓮と末永く お幸せに! ・理想の上司 1500 ・彼もまた、私のなかでは不動の同率首位です。が、どっちかとい えば一刀なので2位で。歩の無い将棋は負け将棋というように、王 不在の将棋は成立しません。この作品というでかい将棋の中心です。 ﹁と、言うわけで一位は驚異のV4を叩き出したライルに終わった けど雛斗さん。どうだった?﹂ ﹁4回ともライルが首位を獲得したのには驚いたよ。もしまた来れ るんだったら是非とも2人と一緒にお邪魔したいね﹂ ﹁だったら最後のシメは雛斗、君がやるか?﹂ ﹁俺が?﹂ ﹁ああ、俺からも頼む﹂ ﹁えっと・・・・・・分かったよ﹂ そういうと雛斗は俺からマイクを受け取り、全員に振り向いた。 ﹁お初の方はお初に御目にかかります。姓を黒、名を薙と申します。 今回、まさか他作品のキャラクター投票に私に票が、しかも上位に お邪魔させて頂けるとは思いませんでした。とても嬉しいです。こ れもコラボをしてくださったウルヴァリン様、そして投票をくださ った皆様のお陰です。作者forbiddenに代わって、心から お礼申し上げます。これからもどうか、ウルヴァリン様、forb iddenをよろしくお願い致します﹂ ﹁黒薙様∼、お堅いし長いよぉ。それより、新作﹃恋姫無双∼黒龍 の旅∼﹄をよろしくね∼♪﹂ 真・恋姫無双 海兵隊の誇り, ﹁ちょっと黒希⁉ここで宣伝なんて、失礼ですよ!﹂ ﹁⋮⋮俺のコメントのはず﹂ 雛斗のシメが終わり、ここに第4回 1501 Re 人気キャラクター投票は幕を閉じたのであった・・・・・・・ ・・。 1502 第4回人気キャラクター投票結果発表︵後書き︶ 次回から本編に復帰します。そして4位にランクインした黒薙 蓮こと雛斗。forbidden様、おめでとうございます。 明 今回の結果はかなり面白かったので、次回もありましたらまた皆様 の投票を楽しみにさせて頂きます。 皆様ね多数のご投票、改めてお礼申し上げます。本当にありがとう ございました。 1503 第191話:ファイアストーム 後編︵前書き︶ 孫呉内乱。ここに終結。 1504 第191話:ファイアストーム 後編 ﹁久しぶりね・・・・・・孫静叔母様﹂ 俺達が孫静の罠に嵌って包囲された状況に突入口から雪蓮が南海覇 王を片手に駆け付けて来た。既に彼女は多数の敵を葬っているよう であり、南海覇王を含めて彼女の身体には返り血がびっちりとこび りついていた。 孫静を含む敵部隊はそっちに目線がいっていた。それを俺達が見逃 す筈もなく、HK416を背中に預けてショートグレイブを両方と も取り出した。 ﹁突っ込むぞ‼﹂ ﹃了解‼﹄ そう指示すると部下達はそれぞれの得物を片手に突撃を開始する。 ﹁はあぁあ‼‼﹂ ﹁ぐはっ⁉﹂ ﹁ぎゃっ⁉﹂ 敵の懐に飛び込んだ俺は、まず手前にいた敵を雷で切り裂くとその まま回転しながら雪の石突で腹に一撃を加え、振り上げるように敵 を切りあげる。 ﹁ひ・・・怯むな‼奴を討ち・・・ぎゃっ⁉﹂ ﹁あら?私を忘れないで欲しいわね﹂ 1505 いつの間にか俺のすぐ側に来ていた雪蓮も近くにいた敵の腹に刺突 を見舞って葬り、それを一気に引き抜くと振り上げ、立て続けに振 り下ろす。 そのまま舞うように左右上下の斬撃で敵を次々と薙ぎ払う。彼女の 活躍に負ける訳にはいかない。俺はショートグレイブを両方とも弓 を構えた敵兵に投げ付け、そのまま敵の命を奪う。 ﹁いい武器だ。借りるぞ﹂ 倒した敵が持っていた手斧を構え、そのまま破壊力に任せて敵を文 字通り吹き飛ばす。俺は何らかの理由でショートグレイブが使えな 。これまでに6つの武器 い場合に備えて複数の武器を使えるように訓練している。 刀に斧、弓、方天戟、更には双鈎や九歯 が使えるようになり、現在は撃剣も鍛錬している。 敵を薙ぎ払いつつ、ショートグレイブの側まで歩み寄ると周りにい た敵に手斧を投げ付けると一気にショートグレイブを抜き取り、再 び舞うように敵を薙ぎ払う。 ﹁中佐達に遅れるな‼俺達も敵に食らいつくぜ‼﹂ ﹁応っ‼﹂ ﹁殺ってやるぜクソッタレ‼﹂ 横目で部下達もOKC−3Sや呉鈎一型、自身の得物である槍や朴 刀で敵を倒していた。 ただ斬りつけるだけではなくCQCや体術を組み合わした戦い方を 見せており、日々の訓練を怠っていない証拠だ。俺は嬉しく感じつ つも雪蓮と共に向かって来る敵を倒していった。 ﹁な・・・何をしておる⁉早く奴らを仕留めぬか⁉﹂ 1506 ﹁じ・・・冗談じゃねえ⁉俺はもうあんなバケモノなんかと戦いた くねぇ⁉﹂ ﹁や・・・やめてくれ⁉俺は降伏するぜ⁉﹂ ﹁俺も降伏する⁉﹂ 俺達の戦いを目の当たりにして、戦意を失った敵兵が次々と武器を 捨て始め、それを確認した部下達に拘束させていく。 ﹁お・・・お主等⁉あれだけ大金をつぎ込んだというのに妾を見限 るのか⁉﹁やはりそういうことか﹂ひぃ⁉﹂ だ・・・貴 勝手に降伏していく傭兵達を避難する孫静に俺達は怒気を込めなが 雪蓮はただ戦いを無闇に広げているだけだ ら睨みつける。 ﹁なにが 様がただ金を使って戦を拡大させている張本人じゃないか﹂ ﹁う・・・うるさい⁉お・・・お主等・・・自身が既に負けること を知らぬようじゃな⁉今頃妾の船団が建業を制圧﹁あら?それも無 理よ叔母様♪﹂な・・・なんじゃと⁉﹂ ﹁確かに長沙方面の船団も叔母様に加担しちゃってるけど、そんな のごく一部。あなたに不満を持ってた人達はすぐ私達に降伏したわ﹂ ﹁な・・・なんじゃと⁉﹂ ﹁それに連絡があった。生きた的が俺達の基地に出現したを海岸で 全滅させたらしいぞ﹂ この報告は少し前に入って来ていた。なんでもヴェアウルフに長沙 方面から向かって来た敵性船団が上陸してきたが、地雷原と城壁に Defense System︶と2連装艦船搭載タイプ 設置されている対地防御火器に流用したVADS︵Vulcan Air のM2により簡単に壊滅させられた。 1507 この時代では難攻不落どころではないレベルを誇る防御力を誇るの だ。そんな程度の戦力で陥落させるなど舐め切っているとしか言い ようがない。 自身の船団が壊滅したことを聞いた孫静はショックが隠せないよう であり、徐々に後ろに下がっている。 幼台‼﹂ ﹁さて・・・外にいた奴等も大半が降伏してるし、最早お前に味方 する奴等はいなくなった。つまりは・・・﹂ ﹁あなたの負けっていうことよ・・・謀反人孫静 ﹁くっ⁉﹂ 俺達はそれぞれ南海覇王とショートグレイブの鋒を構える。すると 孫静は恐怖に駆られたのか、後ろの通路へと走っていった。逃げ出 したので俺はグレイブを突き刺してHK416を構えるが、雪蓮が それを静止した。 ﹁逃がすか‼﹁待ってライル﹂雪蓮?﹂ ﹁ライル・・・それを貸して﹂ ACOG TA31 EC そういうと雪蓮は俺からHK416を奪うように手に取り、若干戸 惑いながらも構えてTrijicon OSを覗き込む。 ﹁裏切ったとはいえ、孫家の一員だった・・・だからせめて私の手 で・・・﹂ ﹁・・・・・・分かった・・・使い方は前に教えた通りだ。落ち着 いて狙え。君なら大丈夫だ﹂ そういいながら彼女は照準を孫静に合わせる。そして深呼吸すると 1508 息を止めた。 ﹁叔母様・・・・・・これが・・・手向けよ﹂ それだけ言うと雪蓮はHK416のトリガーを引き、5.56mm 弾が撃ち出される。銃弾は真っ直ぐと飛来していき、孫静の後頭部 を貫通。孫静の身体は廊下に音を立てながら倒れてピクリとも動か なくなった。 ﹁・・・・・・ヘッドショット確認。いい腕だ﹂ ﹁ありがとう﹂ それだけ言うとHK416を俺にHK416を返し、代わりに南海 覇王を抜刀して掲げた。 ﹁敵総大将孫静‼孫家当主孫策が討ち取った‼‼﹂ 勝利宣言をすると俺達はそれぞれの武器を掲げて勝鬨を挙げた。 この勝利により反乱軍は瞬く間に壊滅。降伏が続々と続いて呉内部 における内乱は終結を迎えた・・・・・・・・・。 1509 第191話:ファイアストーム 後編︵後書き︶ 定軍山に急襲を実行した一刀と露蘭。予期していなかった兵法によ 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re り混乱する魏軍。露蘭はその中で従兄妹である夏侯淵と対峙する。 次回 [夏侯の名を持つ者達] 2人の夏侯が火花を散らす。 1510 第192話:夏侯の名を持つ者達︵前書き︶ 夏侯覇と夏侯淵。2人の夏侯一族が刃を交える。 1511 第192話:夏侯の名を持つ者達 天蕩山からカズっち達と一緒に崖から滑り降りて秋蘭の軍勢に奇襲 皐月 ‼﹂ を仕掛けた俺達。その効果は絶大だった。 ﹁北郷流二刀心眼術弐の太刀 ﹁ぐはっ⁉﹂ ﹁でりゃぁああ‼﹂ ﹁ぎゃっ⁉﹂ 俺とカズっちは馬から飛び降りて周りにいる敵を次々と倒していく。 敵の主力はどうやら黒騎兵みたいだけど、流石に予測すらしていな かった急勾配の崖からの奇襲には対応が遅れたようだ。だから俺は 遠慮なくこいつ等に仕掛けて回る。 ﹁カズっち‼この調子ならいけるぜ‼﹂ ﹁あぁ‼だけど油断は禁物だよ露蘭‼﹂ ﹁解ってるさ‼なんせ相手は秋蘭だ‼こんな程度で退却するなんて ありはしないからな‼﹂ 劉備軍の中で華琳達のことを一番知ってるのは魏軍にいたことがあ る俺だけだ。だから従兄妹の秋蘭がどんな性格なのか理解してるつ もりだ。 そんなことを考えていると俺はすぐに北欧天龍を構えて攻撃を防ぐ。 そこに来たのは一本の弓矢。しかも寸分狂いなしの正確な一撃で、 少しでも反応が遅れてたら間違い無く額に突き刺さってた一撃だ。 突き刺さってた弓矢を取り除いて俺は西欧海龍の鋒を弓矢が飛来し 1512 た方角に向ける。 そこにいたのは俺が知ってる顔触れだった。 ﹁あの瞬間で私の一撃を防ぐとは・・・・・・流石は兄者・と言っ た処か・・・﹂ ﹁お久しぶりですな・・・夏侯覇殿﹂ ﹁げっ⁉ま・・・参刃かよ⁉﹂ おいおいおい・・・マジかよ・・・。秋蘭の他にも参刃がいる。面 識があるだけならまだ良いんだけど、苦手な相手なんだよな・・・ 参刃は・・・。 ﹁あの天蕩山の絶壁をまさか下ってくるとは・・・流石に予測して いなかったよ﹂ ﹁へへっ‼当然だぜ‼なんせ俺達は最高の義兄弟なんだからさ‼﹂ と謳われる北郷殿と刃を交えられるとは武人とし 仲権‼﹂ ﹁だが・・・そう簡単に定群山は渡せぬ・・・敵となったからには 華琳様の為にも・・・﹂ そういうと秋蘭は餓狼爪を構える。 ﹁貴様を討ち取らせて貰うぞ‼夏侯覇 ﹁あぁ‼掛かって来い秋蘭‼﹂ ﹁露蘭‼夏侯淵は任せた‼﹂ 天の御遣い ﹁あいよ‼任せされて‼﹂ ﹁ か⁉俺も全力でやらせてもらいます‼﹂ 士載‼全力でお相手させて頂く‼﹂ 魏武の猛虎 て感無量‼この鄧 ﹁貴方が そういいながらカズっちは参刃と闘いを始めた。神龍双牙と破城旋 1513 棍が互いに火花を散らし合い、カズっちと参刃も互いの誇りを掛け て闘う。 対する俺達の闘いも秋蘭の先制で幕を開けた。 ﹁我が一撃‼受けてみろ‼﹂ ﹁解り易いぜ‼んなもんが当たるかよ‼﹂ 秋蘭は得意の3本同時で弓矢を放つが、俺は全てを空中で叩き落と し、そのまま一気に距離を詰めるため懐に飛び込もうとする。 妙才に近付けると思わないほうがいいぞ‼﹂ だがそれを簡単に許す秋蘭じゃなかった。 ﹁おっと⁉﹂ ﹁そう容易くこの夏侯 ﹁へん‼上等‼﹂ 俺の動きを封じる為に足下に弓矢を射て、動きを止めた瞬間に本命 を撃ち込んで来たけど、北欧天龍でそれを弾く。その隙に秋蘭は距 の為にってやつか?﹂ 孟徳に 離を離して攻撃を仕掛けてくるが、それを全部弾いてやった。 ﹁うっは∼‼やっぱ秋蘭は強いわ‼中々近づけねぇ‼﹂ 曹一族 ﹁当たり前だ。私は華琳様にお仕えする将だ。我が主、曹 全てを捧げると誓ったのだ﹂ ﹁全ては華琳・・・いや・・・ ﹁兄者・・・・・・今からでもまだ間に合う。華琳様には私からも 頭を下げて悲願する。いい加減に帰って来てはくれぬか?﹂ ﹁はっ?いきなり何を言い出すんだよ﹂ ﹁兄者も気が付いている筈だ。劉備や北郷のような理想だけ翳すだ けではこの国に大平は来ない﹂ ﹁・・・隼照にも同じこと言われたぜ・・・﹂ 1514 ﹁華琳様の覇道こそがこの国に大平を齎すと確信している・・・だ から今からでも遅くはない・・・戻って来てはくれぬか?﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁遥の為にも・・・﹂ 俺は遥の名前を聞いて言葉を控えた。だけど暫くしてから軽く口元 を笑わす。 ﹁ありがとな・・・秋蘭・・・だけどそれは無理な話だ﹂ ﹁・・・・・・何故だ?﹂ ﹁確かに理を示して華琳の力で律する覇道なら乱世は終わるかもし れない﹂ ﹁だったら﹁けどな・・・﹂・・・﹂ ﹁けどな・・・・・・力で抑え付けるってやり方・・・そんなのに 民や家族に笑顔だなんて叶わない﹂ 俺はそういいながら被ってた兜を脱ぎ、それを地面に落とした。 ﹁俺は・・・カズっちや飴里・・・ライルの兄貴と会って・・・・・ ・霞・・・張遼と出会って・・・俺の過去を打ち明けても俺を家族 として迎えいれてくれたみんなを守りたい・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁だから・・・﹂ そういいながら西欧海龍を再び秋蘭に向ける。 妙才‼﹂ ﹁俺はもう過去には縛られねぇ‼カズっちやみんなの為に俺は・・・ あんたに勝つ‼夏侯淵 ﹁兄者・・・・・・変わらないな・・・﹂ ﹁あぁ‼﹂ 1515 ﹁そうか・・・・・・ならばこの夏侯 妙才‼曹 仲権‼﹂ 孟徳の忠臣にし て‼夏侯一族の誇りにも掛けて貴様を討ち取る‼夏侯覇 今までに無かった闘気を発しながら、秋蘭はまるで雨のように弓矢 を放って来た。対する俺も北欧天龍を地面に突き刺し、両手で西欧 海龍を構えると全ての矢を叩き落とし、そのまま一気に秋蘭の懐に 飛び込んだ。 ﹁甘いぞ‼﹂ だがその程度で秋蘭は怯まなかった。俺が懐に飛び込むと左足で強 力な回し蹴りを見舞って来た。 俺は素早く後ろに飛んで回避するけど、秋蘭は餓狼爪の姫反りと小 反りで仕掛けて来た。 ﹁ちぃ⁉﹂ 秋蘭は奇襲の使い手でもあり、こいつの餓狼爪は特別製だ。姫反り と小反りには小刀が仕込まれており、不意に近付いて来た敵に対し て確実な一撃を加える。 秋蘭は餓狼爪を薙刀みたいに扱い、俺を翻弄させる。だけど純粋な あれ を使って見るとすっか。 剣術なら俺に分がある。 いっちょ ﹁悪いな秋蘭‼一気に決めさせてもらうぜ‼﹂ ﹁やれるならやって見せろ‼﹂ ﹁その言葉・・・忘れるなよな‼・・・はぁああああああ‼‼﹂ ﹁くっ⁉な・・・なんだ・・・・・・氣が膨れ上がっている⁉﹂ 俺は西欧海龍を背中で背負いような姿勢で構え、足幅を肩の位置に 1516 まで持ってくる。そこから右膝を曲げて左足を前に出す。 爆雷猛龍斬 ‼﹂ 爆雷猛龍斬 。カズっちが素早さ、飴里が技で優 そして力を込めてそれを一気に振りかざした。 ﹁必殺 俺だけの必殺技 れているに対して俺は力で2人に勝る。 ライルの兄貴がくれた西欧海龍は氣が流しやすく、同時にその氣を 溜め込んで渾身の一撃を浴びせられる。その特性と2人の利点を組 み合わせたのが爆雷猛龍斬ってわけだ。 ﹁うぉらあああああ‼‼﹂ ﹁ぐっ⁉・・・・・・かはっ⁉﹂ 秋蘭は爆雷猛龍斬を餓狼爪で受け止めるが耐え切れず、その反動で 城壁に身体を叩きつけた。手に持っていた餓狼爪は中央から完全に 折れ、破片が辺りに散らばった。俺は構えを解き、ゆっくりと歩み 寄ると西欧海龍の鋒を秋蘭の喉元に突き付けた。 ﹁・・・・・・俺の勝ちだ﹂ ﹁ぐっ・・・・・・侮っていたか・・・私は・・・﹂ ﹁言っただろ?過去に囚われないって・・・﹂ ﹁・・・・・・き・・・斬れ﹂ ﹁悪いけど、そいつは断るぜ﹂ ﹁な・・・情けを・・・・・・掛ける・・・のか?﹂ ﹁俺の役目はお前を捕らえることなんでね♪だから・・・﹂ そういうと鋒を外す代わりに、秋蘭の腹に力を込めて拳を見舞った。 ﹁がはっ⁉﹂ 1517 ﹁・・・ちょっと眠ってもらうぜ・・・﹂ ﹁ぐ・・・姉者・・・華琳・・・様・・・﹂ 意識が薄れる中、秋蘭は春蘭と華琳の名前を口にして気を失った。 それを確認した俺は西欧海龍を高く掲げた。 ﹁敵将夏侯淵‼劉備軍武将夏侯覇が生け捕った‼﹂ 俺の勝利宣言で仲間達は歓声を挙げ、カズっちと闘っている参刃も それに振り向いた。 ﹁なっ⁉夏侯淵将軍‼﹂ ﹁おっと⁉ここから先には行かせません‼﹂ ﹁くっ⁉・・・・・・撤退だ‼退け‼﹂ 秋蘭が捕まったことを知った参刃は助け出そうとするがカズっち達 に阻まれ、すぐにそれが不可能だと判断したようで部下に撤退命令 を出して本陣から退却を始める。 1人の将に部下達を危険に晒せない。流石は生粋の軍人だぜ。 俺は捕らえた秋蘭を拘束し、暫くしてから制圧した定軍山の守備を 固めるのだった・・・・・・・・・。 1518 第192話:夏侯の名を持つ者達︵後書き︶ 孫静を討ち取ったライル達。街を解放した孫策軍は悠々と建業に凱 旋を果たす。鳴り響く楽器に勝利を祝う民の歓声。それ等を浴びな 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re がらウルフパックも前進する。 次回 [凱旋] ライル達は勝利を噛みしめる。 1519 第193話:凱旋︵前書き︶ 建業に帰還したライル達。民と勝利を分かち合う為に凱旋パレード を実施する。 1520 第193話:凱旋 実に3ヶ月近く続いていた孫策軍と反乱軍による内戦は孫静が戦死 したことにより孫策軍の勝利に終わった。 その事実は瞬く間に冥琳により各地に伝えられ、反乱軍のやり方に 不満を抱いていた民衆の蜂起や豪族一派の無条件降伏。一部では未 だに反乱分子が抵抗を続けているが、それは孫呉陸軍により鎮圧さ れるだろう。 俺と雪蓮は久々に我が家がある建業への帰路に付いた。 この勝利は信じてくれた民の力 雪蓮の言葉により建業にて大規模な凱旋パレードが実施されること になる。しかも今回は珍しく冥琳もこの祭りに賛同。 部隊が集結したと同時にヴェアウルフにて練習が行なわれ、一週間 後に凱旋パレードが開幕された。 ∼∼♩ ﹃わぁああああああああ‼‼‼﹄ パレードに鳴り響く音楽隊の演奏。隊列の先頭には孫呉の牙門旗に 孫呉陸軍、孫呉水軍、孫呉海兵隊、そしてウルフパックの部隊旗を 掲げた騎手。 その後に続くのは音楽隊指揮者とピッコロやイングリッシュホルン、 ファゴット、クラリネット、サクソフォーン、トランペット、ホル ブルードレスを身に纏ったウルフパック隊員。 ン、トロンボーン、スネアドラム、シンバルを身につけ、クラス B 1521 その後方には・・・。 ﹁凄い賑わいだな﹂ ﹁はぅあ・・・恥ずかしいでしゅ﹂ ﹁活気に満ちた民の笑顔を見るのはやはり良いものだ﹂ ﹁頑張った甲斐があったな﹂ 将軍クラスの海兵隊大隊長の千里、美花、優龍、百合が将官用のブ ルードレスを身に纏って乗馬しながらパレードに参加。 当帰 という。 因みに何故か知らないが美花は特に狼に好かれる性質があり、彼女 が乗っているのは軍馬ならぬ軍狼の ﹁にょほほ∼♪楽しいのじゃ♪﹂ ﹁良かったですね♪お嬢様♪﹂ ﹁せやけどホンマに賑やかで、皆さん楽しそうどすなぁ♪﹂ ﹁我等の勝利を祝ってくれているのだ。こちらも期待に応えられて よかった﹂ 第10戦術機動騎兵中隊の中隊長となった九惹に専属軍師の七乃、 副長の八枝。更にマスコットでもある美羽が九惹と同じ馬に乗り、 後方に式典用の鎧甲冑を着て騎馬槍を掲げた騎兵10名が悠々と続 く。 ﹁頭ぁーーー右‼‼﹂ そしてアレックスを先頭に同じくブルードレスを着用しているウル フパック隊員。白い制帽に式典用として使っているM14バトルラ イフルでアクションをしながら行進。 動きには一切の乱れは見当たらなく、完全に息の合った素晴らしく 1522 力強い光景だ。 ﹁ははは・・・凄い歓迎だな・・・﹂ ﹁魏のスパイはいいんですかね?﹂ ﹁間違いなくいるだろうな。だが和えて強さを見せつけてるんだよ。 誇示してむやみに攻めて来れなくする為にな﹂ ﹁軍事パレードはそういった意味合いが強いですからね﹂ アレックス達のすぐ後ろから砲身を上に向けて、いつもと変わらな い服装でパレードに参加するレオン達。 ハッチから上半身を乗り出して民に対して敬礼をしながら密かにマ イクを使って話をしている。その更に後ろからはガビアルが同じよ うに砲身を上に向けて前進していく。 その更に後ろからはパラディンと海兵隊員が続いて、そのパレード 隊の中央付近になるとようやく俺がいる場所となる。 群衆が俺と隣にいる雪蓮を見つけた途端に・・・・・・。 ﹁きゃあーーー‼‼お帰りなさいライル様‼‼﹂ ﹁孫策様もお変わりなく‼‼﹂ ﹁ライル将軍万歳‼‼﹂ ﹁孫策様万歳‼‼﹂ などのような声援がこれでもかという位に叫ばれた。俺は軽く微笑 みながら民に敬礼をすると、何故か知らないが女性陣が満面の笑み を浮かべながら倒れていった。 ﹁ま・・・・・・またか・・・﹂ ﹁どうしたの?﹂ ﹁い・・・いや・・・・・・さっきから熱狂のせいか失神する人が 1523 多いんだ・・・しかも何故か女性ばかり・・・﹂ ︵・・・・・・ニブチン・・・・・・︶ ﹁?・・・どうかしたか?﹂ ﹁プン‼鈍いライルなんて知らな∼い﹂ ﹁?﹂ 雪蓮は訳も分からず頬を膨らませながら彼女の愛馬である白馬の的 盧を歩ませる。 ﹁なぁ雪蓮。話は変わるんだが・・・﹂ ﹁な∼に?﹂ ﹁蓮華のことだ﹂ ﹁蓮華?﹂ 蓮華の名前を出すと雪蓮は拗ねるのをやめてこちらを向いてくれた。 先程の表情も可愛かったから少し残念だが・・・・・・。 ﹁君も知ってるだろうが、彼女はだいぶ変わった。一月前の討伐戦 でも仲間と連携してかなりの戦果を叩き出している﹂ ﹁そうね・・・あの子ったらレオンが怪我をした時には海兵隊を代 理で指揮してたわね﹂ ﹁あぁ・・・俺の部下達も彼女を認めている。前線でも各大隊から もかなりの評価が出てるらしい﹂ 実は少し前に蓮華に対する印象を聞いて見たのだが、まだ荒削りの 処があるけれど指揮官や指導者としての素質は充分にあるという結 論が出ていた。 ﹁ふふっ♪あの子も一皮剥けたってことね♪﹂ ﹁そうだな・・・・・・そろそろいいんじゃないか?﹂ 1524 ﹁何が?﹂ ﹁分かってるくせに・・・・・・﹂ ﹁お返し♪・・・・・・だけどまだ早いと思うのよ﹂ ﹁早い?﹂ ﹁そう・・・あの子は民や家族を自分の力に出来る強い子よ。器な ら私やあなたを上回ると思うわ。だけどそれだけじゃ駄目・・・・・ ・あの子にはまだ一つ欠けてる物がある﹂ ﹁足りないもの?﹂ ﹁そう♪﹂ ﹁なんだよ?それは?﹂ ﹁ふっふ♪女の子の秘密♪﹂ ﹁?﹂ そういいながら雪蓮は再び声を掛けてくれている民に笑顔で手を振 る。何のことかサッパリ分からないが、パレードが終わったら聞い てみるとしよう。 俺も再び民に笑顔で手を振るのであった・・・・・・・・・。 1525 第193話:凱旋︵後書き︶ 蜀魏による定軍山の戦いは夏侯淵を捕虜にしたことにより蜀の勝利 に終わった。露蘭の従兄妹であるということで仲間に加えようとす るが実現しない。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re そんな中、思いもよらない人物から妙案が齎される。 次回 [忠臣] 定軍山の支配権を確立させていく。 1526 第194話:忠臣︵前書き︶ 定軍山での戦いに勝利し、夏侯淵を捕虜にした一刀達。夏侯淵の身 柄を利用する為に一計を練る。 1527 第194話:忠臣 俺達が定軍山を陥落させてから数日が経過した。あれから魏軍は定 軍山から撤退し、北西部にある武都に引き揚げた。 周辺には撤退が間に合わなかった魏軍の残存戦力が転々としており、 それ等の討伐や捕縛を中心に動いているのが俺達の現状だ。 先の戦いで魏軍の夏侯淵を捕虜にした露蘭に陽動を見事に成功させ た翠と星。更に後方撹乱を実施した紫苑、桔梗、焔耶。 陽動部隊を回収した飴里など、4重に張り巡らした策で、これで魏 軍は迂闊にこちらに侵攻できない筈だ。 だけど俺達には別の意味で大変な仕事が残っていた。 ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁はぁ・・・いつ迄そうやってるつもりなんだ?﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ 捕虜にした夏侯淵はひとまず定軍山の砦にある牢屋に監禁しており、 投獄したその日から正座を崩さないで目を瞑った状態だ。 捕虜だから牢屋に入れるのは仕方が無いが、彼女は食事をいっさい 食べず、水も一滴すら飲まないのだ。 ﹁このままじゃ飢え死にするだけなんだから、せめて少しは食べた らどうだ?﹂ ﹁・・・・・・知らん﹂ ﹁はぁ・・・露蘭から聞かされてたけど・・・・・・本当に忠臣だ ね。君は・・・﹂ 1528 ﹁この身も心も全て我が曹 るつもりなど毛頭ない﹂ 孟徳に捧げたのだ。貴様等蜀になど降 夏侯淵は左目を小さく開くとそう口にしながら再び閉じる。 ﹁だけどこっちに降るにしろ、魏に帰るにしろ、死んだら元も子も ないんだ。そんなことをしたって無駄死にするだけなんだ。だから ちょっとでも食べたら?﹂ 孟 ﹁・・・たとえ私が朽ち果てようと、私の魂は我が姉・・・夏侯 元譲が意思を引き継いでくれる。必ずや貴様等を打ち倒し、曹 徳の天下を切り拓く﹂ 俺は暫く彼女を伺うが、彼女は今の姿勢を崩さない。そんな状況に 溜息を深く吐くと牢屋を後にする。 外には紫苑と桔梗、更には菫という蜀の3大じ・・・・・・・・・ もとい、3大お姉さんが待ってくれていた。 ﹁どうでしたか?﹂ ﹁はぁ・・・やっぱり駄目みたいだ。夏侯淵はこっちに降る気は全 く無いみたいだ﹂ ﹁それは困りましたな・・・あやつの弓の腕前は儂や紫苑と同等と 言うのにな﹂ ﹁かといって処断などすれば魏が黙ってはないでしょう﹂ ﹁なぁに‼あたいが魏の連中なんざ軽く追い払ってやるさね‼﹂ ﹁い・・・いや・・・・・・菫・・・今の俺達で真っ向からぶつか ったらまず勝ち目はないんだけど・・・﹂ ﹁大丈夫さね‼あたいは強い‼そんで魏も尻尾巻いて逃げ出すさ‼﹂ 1529 菫は豊満な胸元を叩くように豪語する。 ﹁しかしご主人様。彼女の処遇をすぐにでも検討して頂かないと・・ ・・・・﹂ ﹁それは分かってるよ紫苑。だけど夏侯淵は露蘭の従兄妹だし、万 が一にでも彼女が死んだりしたら露蘭も堪えると思うんだ﹂ ﹁御館様、今は戦乱の真っ只中です。他者の気持ちを汲み取るとい うのは大事でしょうが、それに拘り過ぎますと足下を掬われますぞ﹂ ﹁それも分かってるさ﹂ 知っていたことだけど捕虜というのは本当に苦労する。 特に夏侯淵のような魏の一角を担う重要人物なら尚更その苦労が倍 増する。 このままでは彼女は絶対にこちらに付いてくれそうにないし、かと いって下手に処断なんかしたら魏の凄まじい怒りを買って大攻勢の キッカケを与えかねない。 ﹁とにかく、魏が何か動きを見せる前にこちらから先手を打ちたい。 定軍山の治安安定にも進めなきゃならないし、この漢中から魏を一 掃する意味合いでもね﹂ ﹁と・・・具体的にはどうなさるのですかな?﹂ ﹁まずは魏に使者を送る。捕虜解放を条件に漢中からの撤退を交渉 してみたい﹂ ﹁たった1人の将に漢中から撤退ですか・・・・・・いくらあの人 が曹操軍の忠臣だとしても、あまりにも条件が不釣合いなのでは?﹂ ﹁こちら側が捕らえた捕虜全員も引き渡す。向こう側にとっても黒 騎兵は貴重な戦力だからね﹂ ﹁じゃが魏の連中は前に孫策を暗殺しようとした・・・果たしてあ やつ等がこちらの誘いに乗るかどうか・・・﹂ 1530 ﹁はっきり言って曹操が素直に要求を呑むかどうかなんて分からな い。だけど試す価値はあると思うんだ﹂ ﹁へぇ∼。旦那には確証があるってんかいな?﹂ ﹁まず夏侯淵が曹操の忠実な家臣であること。魏内部でかなり重要 な地位にいること。この二つが一度に失うと頭脳を傷つけるような ものだからね。まぁ・・・これは賭けのような策だけど・・・・・・ ﹂ 確かにこの案件は賭けの要素が強すぎる。何しろ曹操がこの提案に 乗る保証なんて何処にも無い。 ﹁だけど、この交渉はどっちに転んでも保険は効くから﹂ ﹁なんだい旦那?その保険ってのは?﹂ ﹁なるほど・・・・・・魏がこちらの要求を飲めば漢中は手に入る﹂ ﹁逆に拒めばあの小娘の身柄は放棄。自由に出来るということです な?﹂ ﹁そういうこと。紫苑、すぐに雛里達に書状を用意させて﹂ ﹁分かりました﹂ ﹁桔梗は護衛隊の編成。菫はその護衛隊の指揮を執って﹂ ﹁御意﹂ ﹁あいよ。なんだったら褒美は前払いでな♪﹂ ﹁・・・え?﹂ ﹁あら♪でしたら私も一緒で構いませんか?﹂ ﹁えっ⁉ちょ⁉﹂ ﹁ほう・・・紫苑と菫が望むのであれば・・・儂も頂くとしますか のぅ♪﹂ ﹁ちょ⁉紫苑⁉桔梗⁉菫⁉どこに⁉﹂ ﹁﹁﹁もちろん閨︵ですわ♪︶︵ですぞ♪︶︵だよ♪︶﹂﹂﹂ ﹁えっ⁉ちょっ⁉まっ・・・・・・・・・﹂ 1531 ご褒美の先払いとして俺は次の日の朝まで付き合わされて、三人は 肌がツヤツヤになって、俺には松葉杖を突きながら軍議に参加。 俺の策で交渉が行なわれることとなり、交渉役として飴里、護衛役 として菫の部隊が向かうこととなり、その日の昼頃に魏軍駐屯地へ と向かった・・・・・・・・・。 1532 第194話:忠臣︵後書き︶ 無事に戦勝式典を終了させ、久々の休暇を過ごすアレックス。まだ 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 賑わいが収まらない中、アレックスにとって嬉しい出来事が起こる。 次回 [俺が父で彼女が母で] 死神と鷹。距離が一気に縮まる。 1533 第195話:俺が父で彼女が母で︵前書き︶ 死神と鷹。互いに気持ちを通じ合う。 1534 第195話:俺が父で彼女が母で 反乱鎮圧から暫くが経過した。式典も無事に成功に終わって、軍事 的印象も経済的印象も右肩上がりだ。 今でも街に繰り出せば流石に引き上げた商人はいるにしても、未だ に活気に満ち溢れている。俺も久々にライルから3日間の休暇を貰 い、ジーンズに黒一色のランニングシャツ。首からドッグタグをぶ ら下げて休暇を満喫していた。だがここで問題が生じた。それは・・ ・・・・。 ﹁えへへぇ∼∼∼♪ととさまぁ♪﹂ ﹁だ・・・だから俺は君のお父さんじゃないってば・・・﹂ 迷子と思われる小さな男の子にお父さんと間違えられているのだ。 俺がいる場所は繁華街の一角で、辺りには露店が出回ってていてか なりの賑わいだ。 ﹁ととさま∼♪だっこ∼♪﹂ ﹁あぁ∼分かった分かった・・・ほら・・・﹂ そうせがまれて子供を肩に乗せてやる。当の本人は楽しそうに足を 軽くバタつかせながらキャッキャと辺りを見渡していた。 ﹁はぁ・・・弱った・・・こんな処を見られたら確実にからかわれ るな・・・特に冥琳殿に見られでもしたら﹁私がどうしたというの だ?﹂うひゃっ⁉﹂ 1535 いきなり背後から話しかけられて、奇声を出しながら飛び上がって しまった。振り向くと 不敵な笑みを浮かべている冥琳殿だ。 ﹁・・・え・・・えっと・・・・・・いつから?﹂ ﹁その子がお前にしがみ付いてお前が困惑し始める辺りからだな﹂ ﹁殆ど最初からじゃないですか⁉﹂ ﹁しかし、お前も水臭いな。我等の間柄で隠し事など﹂ ﹁いやいやいや⁉この子はどう考えても迷子ですよ⁉みれば分かる でしょ⁉﹂ ﹁隠すな隠すな♪しかしお前はいつそんな可愛らしい子供を儲けた のだ?﹂ ﹁だーかーらー⁉﹂ ・・・冥琳殿・・・。あからさまに楽しんでるな・・・。 ﹁はははっ。すまんな。お前が子供をあやす姿が妙に新鮮でな﹂ ﹁全く・・・からかわないで下さい・・・こっちは大変なんです・・ ・わっ⁉こ・・・こらっ⁉暴れたら危ないだろ⁉﹂ 冥琳殿のからかいがようやく終わると、待ってましたとばかりいい そうな勢いでご機嫌の子供がはしゃぎ出す。 ﹁しかし手慣れたあやし方だな・・・やはりお前の子供ではないの か?﹂ ﹁だから違いますって・・・・・・俺は5人兄妹の長男でしたから 弟や妹の面倒を見てたってだけですよ﹂ ﹁そうなのか?﹂ ﹁そうなんですよ・・・・・・ん?﹂ 1536 少しだけ冥琳殿と話していると男の子は暴れるのを止めて冥琳殿の 方をじっと見ていた。 ﹁な・・・なんだ?﹂ ﹁きっと冥琳殿がいいんですよ・・・って・・・そんなに乗り出し ちゃ危ないって﹂ ﹁こ・・・困ったな・・・・・・私はあまり子供には慣れていない のだが・・・﹂ そうは言いつつ冥琳殿は恐る恐る男の子の小さい手に自身の手を差 し伸べる。彼女の手を掴んだ男の子はニパッと眩しい位に無垢な笑 みを浮かべながら次の瞬間、とんでもない爆弾発言をした。 ﹁かかさまぁ‼﹂ ﹁えっ?﹂ ﹁か・・・かかさま?﹂ そういいながら小さな手で冥琳殿の手をしっかり掴む。 ﹁わ∼い‼かかさまー、かかさまぁ‼﹂ ﹁こ・・・こらこら。私はお主のかかさまではないぞ﹂ ﹁かかさま‼﹂ ﹁いやいやいや・・・私は子供を産んだ経験はおろか、子作りの経 験も無いのだからお主の母では・・・﹂ ﹁ちょっ⁉あなたは真面目に何を言ってるの⁉﹂ 恐らくは混乱しているのだろう。というか何時もはクールな彼女も こんな表情をするんだな∼、と少しだけ得した。背中を向けられて 抱っこしてくれないので、男の子は段々と涙目になっていく。 1537 かかしゃまぁ∼‼⁉ ﹁うぅ∼∼∼・・・・・・﹂ ﹁お・・・おい?﹂ ﹁うわぁあああああん‼⁉ ﹁なっ⁉﹂ ﹂ 泣き出してしまったよ・・・・・・。そんな状態に冥琳殿はアタフ タして困っている。こんな彼女を見たのは初めてだな・・・。 何とか結論に達したようで、俺から男の子を受け取るとそのまま抱 っこしてあげる。 ﹁はぁ・・・・・・ほら。抱っこしてあげるから泣くのはやめなさ い﹂ ﹁・・・・・・・・・︵ニカッ♪︶﹂ ・・・あっ・・・・・・可愛いな。 ﹁はぁ・・・全く。それでこの子の母親は何処にいるのだ?﹂ ﹁それが分かってたら苦労しませんよ。まあ・・・分かったことと いえば、この子の父親と母親は俺達に似ているってこと位ですかね﹂ ﹁しかし・・・この子は人見知りをせぬのだな。これでは簡単に攫 われてしまいそうではないか﹂ ﹁ふふっ・・・まるで本当の母親みたいですね?﹂ ﹁なっ⁉・・・か・・・からかうな・・・﹂ 何気にさっきの仕返しをする俺。というか顔を真っ赤に染めてそっ ぽ向いた彼女の表情はまた可愛らしく、思わずドキッとした。 今日は何かと彼女の普段は見れない表情をたくさん見れて役得状態 だ。 だがちょっと待て・・・・・・よく考えたら冥琳殿が母親ってこと 1538 は俺が父親ってことになり、今の光景はまさに親子。 そんなことを考えていると顔を真っ赤に染めてしまい、ひとまずは この子の親を探し出す為に街を歩く。 幸いにも親はすぐに見つかった。その際になぜ俺達を親だと間違え たのかというのが、俺はシャツの色。冥琳殿は服のデザインが似て いるという何とも単純な子供らしい間違え方だ。 俺と冥琳殿はその親子を見送ると城へと引き返していった。 そしてその日の夕方。俺はウォッカと自分で作った塩漬けニシンと ブリヌィというロシアのクレープを皿に乗せて城壁で飲んでいた。 だがいつものペースなら既にスタローヴァヤと呼ばれる食卓用ウォ ッカを3本は空けているのだが、今はボトルの半分も飲んでいない。 理由としては・・・・・・。 ﹁はぁ・・・﹂ 先程から溜息を吐いてばかりでウォッカが全く進まないからだ。理 由は昼間のことだ。 ﹁はぁ・・・まさか・・・・・・彼女の存在がここまで大きくなっ てたとはな・・・﹂ 今更ながら自覚する。彼女のことは前々から気になってはいたが、 自分でもまさかこんなに気持ちが膨れ上がるとは思わなかった。 チビチビとウォッカを飲んでいると階段の方から誰かが歩いて来た。 俺はグラスを置いて振り向いた。 1539 ﹁やはりここにいたか﹂ そこには先程まで考え事の根拠となっていた冥琳殿がいた。 ﹁探したではないか・・・いつもなら中庭にいるというのに﹂ ﹁今日はその・・・たまには城壁で飲むのもいいかと・・・思いま して・・・﹂ ﹁話がある・・・となりいいか?﹂ ﹁は・・・はい。どうぞ・・・﹂ そういいながら俺はすぐに隣を空けて、彼女はそこに腰掛ける。微 風に靡かれた髪が俺の鼻をくすぶり、いい香りにドキッとしてしま ったが平常心は保つ。 ﹁私にも一杯もらえるか?﹂ ﹁・・・珍しいですね。冥琳殿が自分から酒を飲まれるなんて・・・ ﹂ ﹁私だって、たまには酒を飲みたい時だってあるさ﹂ そう言われながら俺はもう一つのショットグラスにスタローヴァヤ を注いで彼女に渡す。 冥琳殿はそれを受け取ると一気に飲み干して、予想以上にキツかっ たのか軽く咳き込んだ。 ﹁こほっ、こほ・・・相変わらず強い酒だ・・・﹂ ﹁大丈夫ですか?・・・水どうぞ﹂ ﹁こほ・・・すまないな﹂ 俺から水を受け取ると再び一気に飲み干して落ち着かせる。 1540 ﹁それで・・・冥琳殿はなぜここに?﹂ ﹁いや・・・なんだか今日はお前と一緒にいたくてな。そんな気分 なのだよ﹂ ﹁俺と・・・・・・ですか?﹂ ﹁アレックス・・・・・・お前はこの国をどう思う?﹂ ﹁この国・・・?﹂ ﹁私は・・・自分が生まれ育ったこの国が好きだ。むろん民や暮ら す街もだ﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁幼い頃から私は将来を期待されて、私の父や母も私に軍師として 様々な兵法を教え、知恵を授けてくれた。ちょうどその頃だ・・・ あの子に出会ったのは・・・﹂ ﹁雪蓮殿・・・ですか?﹂ 断禁の仲 と称され、私も雪蓮が ﹁そうだ・・・・・・私と雪蓮は瞬く間に意気投合し、血は繋がっ ていないが本当の姉妹のように 望む国を目指したい。支えたいと心から願っている。その為には自 だった という言葉に引っかかる。彼女か孫呉を裏切 分を律する構えだった﹂ 俺は彼女の 女 が毎晩疼いて止まらないのだ・・・﹂ るなどあり得ないことだが、やはり気になってしまった。 ﹁私の・・・封じた そういいながら冥琳殿は俺の右頬を触ってこちらの顔を向けさせる。 ﹁め・・・冥・・・琳殿・・・﹂ ﹁んっ・・・・・・﹂ 冥琳殿は顔を近付けてゆっくり目を閉じ、俺の唇と重ねた。暫く驚 1541 きを隠せなかったが俺はやがて同じように目を閉じて、彼女の後頭 部に左手を回してより深くキスをする。 ﹁ん・・・んんっ・・・﹂ ﹁んんっ・・・ん・・・はぁ﹂ 暫くのキスを終えて、俺達は互いを見つめ合う。 夕日に照らされた彼女の顔は美しく、言葉がそれ以外に出てこなか った。 ﹁・・・冥琳殿・・・﹂ ﹁冥琳でよい﹂ ﹁冥琳・・・﹂ ﹁アレックス・・・・・・私はお前を好いている﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁私の中でお前という存在が日を増す毎に強くなっている・・・お 前が私の事をどう思っているかは分からない。だがせめて今だけは・ ・・・・・私だけの物になってくれないだろうか?﹂ 彼女なりの告白は堅苦しいが、その分だけ想いというのが十分に込 められている。それだけでも嬉し過ぎる。俺は彼女を優しく包み込 み、そのまま寄せ付けた。 今だけ なのかい?﹂ ﹁ア・・・アレックス・・・・・・﹂ ﹁・・・望みは ﹁えっ?﹂ ﹁俺的には・・・今だけじゃなくて・・・・・・この先も一緒にっ てのは駄目かな?﹂ ﹁アレックス・・・﹂ ﹁冥琳・・・﹂ 1542 互いの気持ちを伝え合い、俺達は再び目を閉じて、互いの唇を重ね あった。その日の晩、俺達は何度も愛し合い、互いが離れないよう に抱き合った。 もう絶対に彼女を離したりはしない。たとえそれが運命に逆らった 結果になろうとも、俺は絶対に彼女の側から離れたりはしない。 絶対に・・・・・・・・・。 1543 第195話:俺が父で彼女が母で︵後書き︶ 夏侯淵が捕虜となってから約2週間後。交渉が行なわれる五丈原に て蜀と魏の代表者が対峙していた。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 捕虜引き換えと領土明け渡し。ただそれだけの筈だったが・・・・・ ・。 次回 [五丈原] 交渉の裏側では策略が動いていた。 1544 第196話:五丈原︵前書き︶ 蜀と魏による交渉が五丈原にて行なわれるが・・・。 1545 第196話:五丈原 夏侯淵と彼女の部下を返還する条件として魏軍は漢中からの撤退と いう交渉開始から一週間後、曹操の直筆による手紙が飴里により齎 された。 交渉の結果、魏軍はこちらの要求を承諾。漢中から軍備を漢中より 撤退させた。恐らくだが未だに間者は展開しているだろうが、多少 の危険はこちらとしても妥協しなければならないし、気にし出した らキリがない。 漢中からの撤退を確認したから次はこちらの番だ。俺は愛紗と紫苑、 桔梗、朱里、飴里の5人と劉天刃隊を引き連れて魏の領土である五 丈原へと向かった。 そして捕虜返還の当日・・・。 ﹁・・・やっぱり曹操自らが出向いて来たか・・・﹂ 俺達と魏軍は崖に掛けられた橋を挟むように対峙している。向こう 側には曹操の他に夏侯淵の姉である夏侯惇、徐晃、司馬懿など魏の 重鎮達が勢揃いしている。 特に夏侯惇はかなり殺気立っている。妹が捕虜になっているとなっ たら当然だろうが・・・。 ﹁はわわぁ・・・﹂ ﹁朱里、無理はしなくていいから後ろに下がってる?﹂ ﹁はわっ⁉だ・・・大丈夫でしゅ‼‼﹂ 1546 自分では大丈夫だと強がっているが、よくみると足下が震えていた。 それを警戒しながらも軽く笑いながら飴里が歩み寄って来て朱里の 頭を撫でてやる。 ﹁ははは、大丈夫だよ朱里。怖くないからね﹂ ﹁はわっ⁉怖くなんかないですよ∼⁉﹂ ﹁ふふ・・・それよりもご主人様﹂ ﹁準備は出来た?﹂ ﹁はい。夏侯淵将軍の引き渡しはいつでも行なえますが・・・﹂ ﹁しかしご主人様が自ら引き渡しに赴かなくても・・・私か紫苑に お任せ頂けないでしょうか?﹂ ﹁それは駄目だよ愛紗。交渉の条件で互いの主自らが赴くことも条 件に入ってるから、それを破れば桃香の名前に傷を付けることにな る。それに・・・﹂ 俺が指差すと反対側から曹操と徐晃が橋を渡り始めていた。 ﹁向こうが赴くのに俺が行かない訳にはいかないさ﹂ それだけ言うと俺は夏侯淵達の監視役をしている兵士数名と俺の護 衛役である飴里を引き連れて同じように橋を渡り始める。 そして互いが橋の中央に差し掛かった辺りで少し距離を置いて立ち 止まる。 ﹁・・・久しぶりね。北郷﹂ ﹁あぁ、そっちも変わりはないようだね﹂ ﹁さっそくだけど・・・秋蘭を引き渡しなさい﹂ ﹁分かってる。だけどまずは黒騎兵から返還する。その後にそっち が漢中の譲渡書を渡してから彼女を解放する。そういう約束だ﹂ 1547 交渉内容を口にすると曹操は表情を変えないものの、苛立ちがこみ 上げているのを感じた。 まずは彼女を落ち着かせることが先だろう。衛兵がそれぞれ黒騎兵 の後ろに回り込み、縄を切断していった。解放された黒騎兵は少し 急ぎながら曹操の下へと移動した。 ﹁・・・これで信じてもらえたかな?﹂ ﹁・・・・・・まぁいいわ。牙刀﹂ ﹁御意﹂ 部下達の解放を確認して少し苛立ちが無くなった曹操は徐晃に指示 し、指示を受けた徐晃は懐から一枚の書状を取り出して俺に歩み寄 った。 ﹁北郷殿・・・こちらが漢中に関する全権の譲渡書になる。確認さ れよ﹂ 受け取るとすぐに中身を確認する。確かに漢中の譲渡書だ。俺はそ れをすぐに懐へとしまった。 ﹁・・・確かに確認した﹂ ﹁では・・・夏侯淵殿をこちらに引き渡されよ﹂ ﹁分かってるよ・・・飴里﹂ ﹁あぁ﹂ それだけ言うと飴里はすぐに夏侯淵の側に歩み寄り、両腕を縛って いた縄を切断。彼女は手首の調子を整えると飴里に付き添われなが ら曹操の下に歩き始める。 1548 ﹁華琳様・・・﹂ ﹁秋蘭・・・無事でよかったわ﹂ ﹁申し訳ありません・・・余計なご心配を掛けたばかりか、領土を 失う失態を犯してしまい・・・﹂ ﹁気にしないで・・・領土はまた取り戻せばそれでよい。だけど私 孟徳 の覇道を実現させるにはあなたが必要不可欠。それにあなたがいな ければ私1人で春蘭を抑えなければならないわ・・・﹂ ﹁華琳様・・・﹂ 俺は曹操と夏侯淵のやりとりを見ていた。やはり彼女は曹操 だと実感させられた。彼女なりの天下統一を実現させる為の姿がこ こにあったのだ。 暫く干渉に慕っていた曹操はすぐに元の表情に戻して俺に話しかけ て来た。 ﹁聞いての通りよ北郷。暫くは漢中を貴方達に預ける。しかし覚え ておきなさい。いずれ貴方達を降して漢中も蜀も我が手中に収めて みせる。その譲渡書は肌身離さず大切に持っていることね﹂ ﹁悪いけどそうはさせないよ。俺達にとっても領土は大切だし、負 けるつもりも毛頭ない﹂ ﹁言ってくれるわね・・・しかし仁などて人を導けると思ってるの か?﹂ ﹁・・・・・・﹂ ﹁理を示し・・・力で律する。そうでなければ人は瞬く間に堕落し、 玄徳と出会い、彼 国が滅ぶ。貴方達蜀がやろうとしていることはそういうことなのよ﹂ ﹁・・・そうなのかもしれない﹂ ﹁だったら﹁だけど・・・﹂・・・﹂ ﹁だけど俺は人を信じたい・・・桃香・・・劉 女の優しさと望む理想に触れた・・・そっちに信じる道があるよう 1549 に、俺達にも信じる道がある﹂ 俺は自分の信念を曹操にぶつける。もし俺がこの世界に来て最初に 出会っていたのが曹操なら俺は曹操に仕えていたかもしれない。 仁 、曹操は 覇 を唱 桃香や孫策、ライルさん、曹操の進む道の先はみんな繋がっている。 この国を平和にしたい しかし曹操の道は俺達とは違う。俺達は え、互いがぶつかり合う。 それだけ言うと曹操は軽く笑いながらこちらに話しかける。 ﹁まぁいいわ。だったらやってみることね﹂ ﹁曹操・・・﹂ ﹁だけど私は蜀という国は認めないわ。それは心しておくことね﹂ ﹁だったら俺達は君に意地でも認めさせてみるよ﹂ それだけ口にすると俺は部下達と飴里を引き連れて朱里達の下に歩 み始める。しかしその直後に何か嫌な予感がした。 軽く耳を澄ませ、何か感じ取ると俺は振り向きながら天を抜刀して 振り下ろした。 ﹃⁉﹄ 全員が俺の行動に驚愕する。しかし俺は気にせず、天の鋒を曹操に 向けた。 ﹁・・・・・・何の真似だ?﹂ ﹁な・・・﹂ 1550 曹操はまだ状況把握が出来ていないようだ。俺の足下には俺目掛け この交渉だけは互いを傷付けず、伏兵を潜 て放たれた一本の弓矢。そして飛来してきたのは曹操軍側。 と・・・﹂ ﹁条件にあった筈だ。 ませない ﹁北郷殿⁉これは我等では﹁黙れ‼‼﹂⁉﹂ ﹁見損なったぜ曹操・・・確かにライルさんの一件で少なからずお 前達に怒りを持った・・・だけどそれは一兵卒が勝手にしたことだ と理解していた。お前がそんなことを指示する筈がない・・・俺も そう思っていた・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁だけどこれでハッキリしたぜ・・・やっぱりお前の覇道ってのは 止めなきゃならない・・・﹂ それだけ言うと警戒しながら武器を構えている飴里や部下達を引き 連れて朱里達の処に戻る。 愛紗達も先程の不意打ちには怒りを感じているようであり、愛紗は 青龍偃月刀、紫苑は颶鵬、桔梗は豪天砲を構えて何時でも攻撃でき る態勢にある。それに反応して魏軍の弓兵隊も弓を構えて射る態勢 を整える。 一触即発の状態だ。だが俺は橋を渡るとみんなを制止し、口笛を吹 いて駆け付けた飛燕に跨がり、愛紗達もそれぞれ馬に乗る。 ﹁次に会う時は容赦しない・・・・・・よく覚えておけ‼‼﹂ 大声で叫ぶと飛燕は駆け出す。愛紗達も俺の後に続いて馬を走らせ る。 五丈原における交渉の本題そのものは成立したが、蜀と魏の対立は これにより決定的となった。 1551 魏による蜀と呉への暗殺未遂。この一件は各地で魏に対する不信感 を抱かせる結果となった。だがこの時の俺には気付くことが出来て いなかった。 途轍もない計画が進められ、これが始まりに過ぎなかったというこ とを・・・・・・。 1552 第196話:五丈原︵後書き︶ 建業の一画。最近になってから猫が寄ってこないことに悩んでいた 明命にクラウドは一計を与えた。彼はその様子を伺う為に行動する 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re が、そこで話が進む。 次回 [猫騒動] 暗殺者と猫少女、互いの気持ちを打ち明ける。 1553 第197話:猫騒動︵前書き︶ 猫好きの暗殺者と猫少女。互いに気持ちを通わせる。 1554 第197話:猫騒動 反乱軍鎮圧から暫くが経過した。各地で無駄な抵抗を続けていた穏 健派の残党共は次々と駆逐され、つい先日に最後の一人が甘寧将軍 により討ち取られたという報告が挙げられた。 これにより孫呉を悩ませていた寄生虫は完全に駆除されて近い内に 再び攻め込んで来るであろう魏に対する対抗策を用意出来る。しか も報告によれば漢中を平定させた一刀君を五丈原にて捕虜返還の際 と魏の非礼に怒りを感じた孫策様は魏と に暗殺しようとしたらしい。 一度ならず二度までも の外交ルートを遮断。経済制裁により魏を疲弊させていく。 ヴォルフズィルバー を中佐の指揮で決行。 それに加えて後日、呉蜀軍事同盟の強化を目的とした大規模合同軍 事演習 この演習には孫呉海兵隊の全戦力が参加する予定であり、海兵隊員 達も腕が鳴ると張り切っていた。 先の討伐戦にて影から主力を支えたハンターキラーの面々には一週 が気になって繁華街から離れた路地裏へと足を運んでいた。 間の休暇が与えられ、この俺クラウド・レインディー2等軍曹は ある事 ﹁さてと・・・万が一の備えも手に入れたし、後は見つけるだけだ な﹂ 紙袋を抱えて歩く俺。 ﹁しっかし、明命の悩みを聞いた時には面白すぎて爆笑しかけたぜ。 ま・・・明命らしい悩みなんだがな﹂ 1555 休暇が始まる前日に明命が書物庫で調べ事をしていた俺にいつもよ り元気がない明命が話しかけて来て、心配になった俺が事情を聞い たのだが、その理由というのが・・・・・・。 お猫様が近付いてくれません‼‼ ・・・要約すれば最近猫が懐いて来てくれないということだ。普通 の人間なら何ともない状況だが、猫を崇拝している程の猫大好きっ 子である彼女にとっては国の一大事と同等の問題なのだろう。 前にあげた猫耳と猫尻尾を付けて近付い ということを話したら目を輝かせながら実行し 仕方なく俺は提案として てみてはどうだ? てみると意気込んでいた。 ・・・本音はただ単に明命をからかってみたかっただけなんだがな・ ・・。 ︵しかし・・・明命と一緒にいると毎日が楽しくて仕方が無いな。 真面目なんだけど何処か天然が混ざってるし、あと何よりも本人は 自覚してないがそこそこのドジっ子だからな∼♪︶ 明命とは一緒に仕事をする仲だから中佐や少佐達よりも明命の知ら れざる一面を見れたりもする。 いつの間にか明命のことばかりを考えている自分を自覚していると 路地の先に座りながら猫と戯れている明命を見つけた。 ﹁よう、明命﹂ ﹁あっ‼クラウド様‼﹂ ﹁その様子だと巧くいったようだね?﹂ 1556 その通り と口にしたような気がした。 ﹁はい‼クラウド様のご助言のおかげで色んなお猫様とお親しくさ せてもらってます‼﹂ ニャー 明命の言葉に合わせて猫も ﹁ところで、クラウド様もお猫様と仲良くなられに来られたのです か?﹂ ﹁あぁ、明命の様子を見に来たんだよ﹂ ﹁わ・・・私ですか?﹂ ﹁そ。それでもし巧くいってなかった場合の予備案も幾つか持って きたってわけ﹂ そういいながら俺は紙袋の中身を広げる。そこには猫じゃらしやネ ズミの小さなぬいぐるみ、鰹節や煮干し等と猫グッズを次から次へ と出していく。 ﹁はぅあっ‼これならお猫様もきっとお喜びになれる筈です‼わざ わざありがとうございます‼・・・?・・・・・・これは何でしょ うか?﹂ そういうと明命は小袋を取り出す。 ﹁あぁ、それはマタタビを粉にしたものだよ。猫が一番すきなのっ てマタタビだと思うからな﹂ ﹁ああ‼これならきっとお猫様もお喜びに・・・なられ・・・・・・ ﹂ マタタビが入った小袋を見ていた明命の目が徐々にトロンとしてき た。 1557 ﹁み・・・明命?﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁どうした?﹂ ﹁・・・・・・ニャ?﹂ ﹁ニ・・・ニャ?﹂ ﹁ニャァアアア∼♪﹂ 俺は困惑してしまう。何しろ明命は目をトロンとさせながら俺に頬 ずりをしてくる。 ﹁ちょっ⁉どうしたんだ明命⁉﹂ ﹁ニャー♪﹂ 俺は顔を真っ赤にさせながら困惑する。マタタビを見ていた明命は いきなり酔ったような感覚になっている。 ︵どうしたんだ⁉マタタビを見てから様子がおかしくなったよな⁉ これじゃまるで猫・・・猫⁉︶ ・・・・・・まさかと思うが・・・猫の格好をしていたから心も猫 みたいになっていて、マタタビの香りを嗅いだ影響で酔っ払ってし まった。 俺はこの状況で推理するが、現実的に考えてもありえない・・・い や・・・・・・この世界ならありえなくはないか・・・。 ﹁ニャァアアアアン♪﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ その間にも明命は顔をペチペチと触ったり、俺の胸板に匂い付けの 1558 ように顔を頬ずりしたり、座ったままの俺に乗っかったりとしてく る。 まるで猫・・・というか本当に人懐こい子猫が甘えているような可 愛らしさだ。徐々に俺の我慢が削られていき、やがて限界に達した。 ﹁・・・も・・・・・・もう我慢できない‼‼明命‼﹂ ﹁ニャ?﹂ 俺は猫グッズから・・・・・・。 ﹁ニャ⁉ニャニャニャ‼﹂ ﹁ほ∼らほら♪こっちだよ♪﹂ 猫じゃらしを取り出して明命の目の前で振ってやる。すると明命は 両手を丸くして目を輝かせながらそれを追い掛けて来た。 ﹁ニャ‼﹂ 右に降ると明命も右について来て・・・。 ﹁ニャ‼ニャニャニャ‼﹂ 左に降ると明命も左について来る。 ︵や・・・やばい・・・・・・これは堪らん︶ 面白い上に可愛らしい。俺はそんな状態を満喫していると猫じゃら しを明命に取られてしまった。 そして明命は再び俺に頬ずりを再開する。 1559 ﹁ニャァアアアアン♪﹂ ﹁うわっ⁉﹂ 頬ずりをしていた明命がいきなり飛び掛かって来て、俺に跨るよう になってきた。 ﹁ニャァアアアアン♪・・・クラウド様♪﹂ ﹁み・・・明命⁉﹂ いま確かに俺の名前を口にした。どうやらマタタビの酔いが覚めて 来たようだ。 ﹁明命‼俺が分かるか⁉﹂ ﹁ニャ♪クラウド様はクラウド様ニャ♪﹂ ﹁よ・・・よかったような・・・・・・残念なような・・・﹂ ﹁ニャ∼♪クラウド様ぁ♪﹂ ﹁明命?﹂ ﹁クラウド様ぁ・・・クラウド様は猫は好きかニャ?﹂ ﹁えっ?・・・あ・・・・・・あぁ・・・猫は好きだが・・・﹂ ﹁ニャ∼♪クラウド様は猫が好きにゃ♪明命も猫が好きにゃ♪﹂ そういいながら明命の顔が近付いて来る。 ﹁だから明命はクラウド様が好きだにゃ♪﹂ ﹁み・・・明命・・・・・・んっ・・・﹂ そういいながら明命は目を閉じ、俺と口付けをかわしてきた。いき なりの状況だったので俺は驚きを隠せなかったが、暫くしてから俺 も目を閉じて彼女への気持ちを受け止める。 1560 実際にはあっと言う間だろうが、長いように感じる明命とのキス。 暫くしてから互いに唇を離し、俺達は見つめあっていた。 ﹁明命・・・・・・﹂ ﹁私・・・クラウド様が好きだにゃ・・・・・・大好きだにゃ﹂ ﹁・・・俺もだ・・・・・・俺も明命が好きだ・・・ずっと一緒に いたい・・・﹂ ﹁明命もずっと一緒にいたいにゃ・・・・・・﹂ 互いの気持ちを伝えあうと、俺達は再び互いの唇を堪能する。この 純粋な女の子をずっと大事にしなければならない。出来ることなら 俺は彼女を戦場に出したくはないが、それは彼女の忠誠心を傷付け てしまう結果となってしまう。 だったら俺も彼女の傍で共に闘う。彼女を護る為に・・・・・・・・ ・。 余談だが明命の酔いは完全に覚めたようだが、記憶ははっきりと残 っていたようであり、恥ずかし過ぎて顔を真っ赤にさせて俺に火を 付けてしまったというのは言うまでもなかった・・・・・・。 1561 第197話:猫騒動︵後書き︶ 書庫というのは軍師にとってかなり重要な場所だ。古今東西様々な 軍略書が敷き詰められている。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re ポーと軍師でもある穏に軍師としての勉強を頼む為に書庫へと訪れ た。 次回 [師匠と師匠] ポーと穏がドタバタ勉強を開始させる。 1562 第198話:師匠と師匠︵前書き︶ ポーと穏。勉強会の果てに・・・。 1563 第198話:師匠と師匠 軍師にとって知識というものは重要。それは国が直接管理する書庫 ならば尚更である。それは建業城内部にある書物庫も同様であり、 一番有名な孫子、呉子、尉繚子、六韜、三略 、司馬法、李衛公問対の武経七書を始め孫臏兵法に加えて俺が記し た兵法三十六計や武備志。 武久の防衛学に中佐の軍事地理学を記した本や漢の地図など多種多 様の資料が厳重に保管されている。 ウルフパックにおいても兵法書は重要視しており、ポー・リーチェ ン曹長もまた中佐の計らいで軍師としての教育を受けることとなっ て日々勉学に励んでいたが・・・。 ︶ ﹁あふぅううううん♪ポーさまぁああああ♪﹂ ︵なんでこうなった⁉ 勉強を見てくれている筈の陸遜こと穏に迫られていた。俺はこの状 況に困惑しながらも彼女を落ち着かせる為に奮戦する。 ﹁お・・・落ち着かないかな穏?﹂ ﹁はぅあああん♪なにがですかぁ∼?﹂ ﹁い・・・いやね・・・・・・相変わらず興奮してるから・・・出 ﹂ これで落 来れば落ち着いてくれたら﹁落ち着いてなんかいられません‼ は・・・はい?﹂ ﹁素敵なご本と出会って・・・身体が熱いんですぅ∼‼ ち着いてなんかいられません∼♪﹂ ﹁えっとだな・・・はは・・・・・・少し離れてくれると嬉しいん 1564 だがな・・・﹂ それに気をやられないように俺は必死に理性を繫ぎとめようとする。 しかし残念な事に穏はその魔性を強く押し付けてくるからたまらな い。 先程から彼女は椅子に腰掛けている俺の太腿に座って、耳元で語り 掛けながら俺の頬を撫でてくる。 ﹁遠くにいたら声が聞こえないですよ∼・・・そ・れ・に∼・・・・ ﹂ しかも思わず ・・ポー様は知りたくないんですかぁ∼?・・・・・・︵れろ︶﹂ ﹁あひゃっ⁉ いま確かに左耳の淵を舐められた⁉ なにやってるの君は⁉ なめられた⁉ ﹂ の・・・のののののの穏⁉ 変な声をだしちまったし・・・。 ﹁ちょっ⁉ それに知りたいってなにを⁉ なに人の手を自分の胸におくの⁉ ﹂ ﹁な・い・の∼?・・・それにぃ・・・こ∼こっ、ん。どれだけ熱 ちょ⁉ いのか知りたくはありませんか∼?﹂ ﹁わっ⁉ ﹁知りたくないの∼?﹂ なに言わすの⁉ ﹂ ﹂ ﹁い・・・いや・・・・・・し・・・知りたくない訳じゃないけど・ ・・てっ⁉ ﹁あふぅううううん♪もう・・・﹂ ﹁もう?﹂ ﹂ ﹁もう・・・我慢出来ませぇ∼ん‼ ﹁うわっ⁉ 穏に引っ張られて俺はベッドに放り込まれ、その上を穏が跨る。普 1565 通に見るのもそうだが、見上げるとその巨大過ぎる豊満な胸がかな なにすんの・・・ひゃ⁉ ﹂ り強調されて、俺は思わず唾を飲んだ。 ﹁ちょっ⁉ ﹁はぅあ・・・ポー様ぁ・・・・・・﹂ ﹂ 俺に跨ったまま穏は首筋をゆっくりと舐めてきた。頼むからやめて くれ・・・俺は首筋が弱いんだから・・・。 ﹁ちょ・・・の・・・・・・穏・・・やめ・・・くぅっ⁉ ﹂ ﹁ポー様ぁ・・・・・・んっ﹂ ﹁んっ⁉ 酒に酔ったような表情をしながら穏は俺とキスを交わす。何処か甘 く、熱が篭ったキスだ。 んはっ・・・の・・・ん・・・・・・んんっ・・・﹂ ﹁んっ・・・んんっ・・・ふぁ・・・あむっ・・・﹂ ﹁んっ⁉ いつもののほほんとした彼女からは想像も出来ない積極的で大胆な ディープキスだ。俺も最初は拒もうとしたが、甘い吐息に勝てるは ずもなく、暫くしてから逆に俺の方から積極的に舌を絡ませていく。 ﹁んっんん・・・ぷぁ・・・﹂ ﹁はぁ・・・はぁ・・・﹂ ﹁はぅあ・・・ポー様ぁ・・・身体が熱いですぅ﹂ ﹁・・・・・・﹂ ﹁ポー様は熱くないんですかぁ?﹂ ﹁・・・誰のせいで熱くなったと思ってるんだ?﹂ ﹁あはっ・・・じゃあ∼・・・お・そ・ろ・い・ですね∼♪﹂ 1566 ﹁はぁ・・・だけど・・・・・・君のせいだからね穏・・・﹂ ﹁あんっ♪﹂ そういいながら俺は身体を一気に起こして逆に彼女を押し倒す。こ こまできたら我慢も限界だし、何よりも我慢するつもりもない。 ﹁・・・君のせいだよ。俺をこんなに滾らせているんだからね﹂ ﹁だけど∼・・・私もポー様のせいで滾っちゃいましたぁ﹂ ﹁だから君がこの滾らせを鎮めて・・・代わりに俺が君を鎮めてあ げるから・・・﹂ ﹁はぃいい♪﹂ そういいながら俺達は再び唇を重ねる・・・・・・・・・。 ﹁すぅ・・・すぅ・・・﹂ ﹁思ったよりもやっぱり軽いな﹂ ことを済ませた直後に疲れて眠ってしまった穏を俺は抱きかかえな がら彼女の私室へと運んでいた。 ﹁しかし・・・こんな無垢な寝顔をするのがあの陸遜だなんてな・・ ・﹂ 1567 ﹁むにゃむにゃ・・・・・・ポー様ぁ・・・﹂ ﹁ん?・・・なんだ寝言か・・・﹂ 迷彩服をしっかりと掴みながら眠っている穏がなにか俺を寝言で呼 んだようだ。耳を澄まして聞いてみると・・・・・・。 ﹁ポー様ぁ・・・だ∼いすきですぅ・・・むにゃむにゃ・・・﹂ 寝言で俺が好きだという眠り姫。俺は顔を赤くさせてしまうが、そ れ以上に心が満たされていった。 ﹁・・・・・・俺もだよ﹂ そういいながら俺は眠っている彼女の唇に優しくキスする。 俺は戦争孤児だ。 だから誰よりも家族の大切さと失う悲しさを理解しているつもりだ。 そんな中で中佐達という家族を手に入れた時は嬉しかった。 そして、俺にとって同様に大切な存在となった穏。一癖も二癖もあ る女の子だが、その無垢な性格でみんなを和ませてくれる。 俺は彼女の笑顔を守りたい。この意外と独占欲が強くて嫉妬深いが 何かを心から大事に出来る優しい女の子の笑顔を・・・・・・・・・ 。 1568 第198話:師匠と師匠︵後書き︶ 珍しく仕事が終わった雪蓮。逆にやることがなかったので中庭で飲 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re もうとすると先客がいた。 次回 [寝顔] 優しき王、恋人に連れ添う。 1569 第199話:寝顔︵前書き︶ 久々の休みをもらった雪蓮。その束の間の平和を満喫する。 1570 第199話:寝顔 孫静叔母様の反乱が終わった後から私は死ぬほど忙しかった。あの 保守派連中の悪事に加担した奴等を討伐したり、大小様々な集落に 慰問で赴いたり、部屋でずっと竹簡と睨めっこ・・・・・・。 ・・・本作に死ぬかと思ったわ・・・。おまけにこっそり逃げよう とすれば冥琳に見つかっちゃうし、目を離した隙に窓から抜け出そ なぜなら・・・。 うとしたらサイファーが罠を仕掛けてたり・・・。 だけどそれも今日で終わり‼ 仕事に缶詰だったから肩がこって仕方 ﹁おっ休み∼♪おっ休み∼♪﹂ 今日は待ちに待った休み‼ が無かったわ・・・おまけに私の大好きなお酒も冥琳が飲ませてく れなかったから大変だった。 私はお酒が入った酒壺を片手に廊下を歩く。前なら休みには朝まで お酒を飲むんだけど、それよりも前にまず向かうべき場所へと向か う。 もちろん私の恋人であるライルのところだ。 彼以外の誰が、私のこの猛る気持ちを受け止めてくれるだろうか ?イヤない! ﹁ライルと何して遊ぼうかな∼?魚釣りかな∼?それとも花見?﹂ 1571 私の中で想像力はムクムクと膨らんでいく。 ﹁それとも∼・・・最近ご無沙汰だったから朝まで∼・・・ムフフ ♪﹂ そんな想像をしながら私は中庭に差し掛かった。季節はもうすぐ春 なのでほのかに暖かく、もう少しすれば植えられている桃の木が咲 き始める。 ﹁あら?あれは・・・﹂ そんな木を見ながら歩いていると木の根元あたりに誰かがいること に気が付く。 それが誰なのかすぐに分かった私は足取り軽く歩み寄る。そして反 対側から彼を覗き込む。 ﹁ラ∼イ∼ル♪﹂ そこにいたのはやはりライルだった。私は笑顔で話しかけるが反応 がない。再度名前を呼んでみるも変化がなかった。気になったので 私は隣に膝を曲げて座り込むとその理由がすぐに分かった。 ﹁スゥ・・・スゥ・・・﹂ ﹁昼寝・・・してたんだ・・・﹂ ライルは開いたままの本に手をおきながら気持ち良さそうに寝息を 立てて昼寝をしていた。 そこは木漏れ日がこぼれて程よい暖かさに加えて心地良い強さの小 風に風で揺れて小さく擦れ合う葉っぱと枝の音。 多分だけどそれが気持ち良くて寝ちゃったんだと思う。興味本位に 1572 私は木にもたれかかっているライルの隣に座って寝顔を覗き込む。 ﹁スゥ・・・スゥ・・・﹂ ﹁フフフッ♪ライルの寝顔かわいい∼♪プニプニ♪﹂ そう素直に感じながら指で軽くライルの頬を突く。すると・・・・・ ・。 ・・・うみゅっていった♪ほっぺたも柔らかくて面白い ﹁うみゅ・・・﹂ ﹁プッ‼ ♪プニプニ♪﹂ ﹁ふみゅ・・・スゥ・・・﹂ ﹁フフフッ♪やっぱりかわいいわ♪﹂ 江東の銀狼 って呼ばれて敵から恐れられているなんて思わ こんな可愛らしい寝顔をしながら気持ち良さそうに寝ている男の子 が ないでしょうね。 そんな無垢な寝顔を見せられると不意に視線がライルの唇へと向く。 それを暫く見ていたら自然と引き寄せられてライルと唇を重ねる。 もちろん起こさないように軽く触れる程度の口づけにしておく。暫 く唇を重ね、それをゆっくり離して彼の頬を優しく撫でる。 ﹁本当に・・・可愛いんだから・・・﹂ そういいながら頬を優しく撫で続けているといきなりライルが私に もたれ掛かってきて、そのまま下にずれていく形で私の膝に顔がき た。 いきなり膝枕の態勢になった私は少しだけ驚くけど、同時にそれが 嬉しくなって再び頬を優しく撫でる。 1573 ﹁・・・よっぽど疲れてたのね・・・・・・ゆっくり休んでね・・・ ﹂ ﹁う∼ん・・・・・・雪蓮・・・スゥ・・・﹂ ﹁・・・ライル・・・・・・愛してるわ・・・・・・フワァァ・・・ 私も眠たくなっちゃった・・・﹂ 本当に気持ち良さそうに寝ているライルをみていると私も眠たくな っちゃった。そういえば昨日の晩も遅くまで仕事しちゃってたし・・ ・そう考えてるとますます眠たくなってきた。 睡魔に勝てるはずもなく、私は木に寄り添いながら夢の中へ飛び込 む。夢の中でもライルと一緒だったらいいわ・・・・・・。 ﹁全く・・・2人の姿が見当たらないと思ったら・・・﹂ ﹁はぅ・・・いいなぁ・・・﹂ ﹁しかし孫策殿の表情・・・実に幸せせうではないか﹂ ﹁うぅ・・・兄上・・・﹂ 柱の影から昼寝中のライルを膝枕しながら眠ってしまった雪蓮を見 1574 る千里、美花、優龍、百合の孫呉海兵隊大隊長4人衆。 ﹁それより千里よ、其方は確かライル将軍に火急の知らせがあった のでは?﹂ ﹁あぁ、ライル様に呉蜀合同軍事演習の草案が纏まったから持って きたんだけど・・・こりゃ明日にした方がいいな﹂ ﹁うむ、それがよかろう。では邪魔な者はさっさと退散するとしよ うか﹂ ﹁︵コクリ︶﹂ ﹁ほら、行くぞ百合﹂ ﹁孫策様ぁ・・・どうか代わって下さい・・・﹂ ﹁はぁ・・・・・・﹂ ライルを膝枕している雪蓮がそんなに羨ましいのか、指を咥えなが ら2人を見る百合。その様子を千里は溜め息を吐きながら連れてい ったそうだ・・・・・・・・・。 1575 第199話:寝顔︵後書き︶ 老兵は次代を担う若者達を見守る。それはどこの世界でも同じであ り、孫呉でも例外ではない。 ライル達の父親代わりでもあるサイファーと雪蓮達の母親代わりで 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re ある祭。子供同然の彼等を見守る親は何を思うか・・・。 次回 [老兵と宿将] 老いてなお、互いに引き寄せられ合う。 1576 第200話番外編:メイド︵前書き︶ 200話到達記念。ライルと雪蓮の相思相愛をご覧下さい。 1577 第200話番外編:メイド とある晴れた日の話だ。俺が遠征中に溜まっていた書類の整理に明 け暮れていた頃、連日で執務室兼自室にて仕事をしていた。 何しろ反乱軍との戦いで孫呉海兵隊にも多数の戦死者が出てしまい、 部隊の再編成が急務だ。 ﹁ふぅ・・・ようやく7割方は片付いたか・・・流石に多いな・・・ ﹂ ある程度であるが片付けた書類を分けると俺は背凭れに凭れ掛かり、 目の疲れを解す。ぶっちゃけいえばここ3日間はずっとこんな状態 が続いているのだ。前の世界での事務仕事がお遊びに思える位の量 だ。 しかし量が多いほど俺が期待されていると実感させられるので無下 には出来ない。 ある程度目を解して背伸びをすると残りを片付ける為に事務仕事に ﹂ 復帰しようとするが、不意に扉がノックされた。 ﹁ライル∼♪いる∼?﹂ ﹁雪蓮か?・・・いいよ入って﹂ ﹁おっじゃましま∼す♪﹂ ﹁どうしたんだい?雪蓮・・・なっ⁉ 雪蓮が入って来て俺は彼女の服装に思わず仰け反りそうになった。 なにしろ彼女の今の格好はいつものチャイナ服ではなくフリルのつ いたミニスカート仕様のメイド服。加えて髪をポニーテールにして 1578 似合ってるかしら?﹂ 赤い縁の伊達眼鏡をかけている。 ﹁ねぇねぇ♪どうライル⁉ ﹁あ・・・・・・あぁ・・・す・・・凄く・・・可愛い・・・﹂ ﹁やった♪﹂ ﹁そ・・・それより・・・それどうしたんだ?﹂ ﹁これ?昨日なんとなく物置を漁ってたら箱に入ってたのよ♪﹂ そういいながら彼女は俺の腕に抱きついて来た。しかも豊満な胸の 谷間や太ももを見せつけているので目のやり場に困ってしまう。 いつもとは違う彼女の姿に俺は真っ赤にしてしまうがよく見たら裾 ALEX の辺りにタグらしきものが見えた。 IN よく見ると・・・。 MADE ﹁・・・・・・・・・・・・﹂ ‼ ‼ ︶ 俺は暫く考え込んで、結論に達した結果・・・。 ︵あのやろ∼‼ ・・・・・・生きてきた中で最も相棒の野郎を吹き飛ばしてやりた いと心から思った。そうとは知らずその張本人はと言うと・・・・・ ・。 1579 ﹁あれ⁉ ﹂ 冥琳に着せたかったメイド服がない⁉ まっておいたんだが何処いったんだ⁉ たしかここに閉 倉庫から雪蓮が持って行ったことを知らないで隅々まで探していた。 ご主人様 ってこと ﹁ふふふっ♪前にレオンのお店に行った時に行った時に聞いたけど、 これって天の国じゃ侍女が着る服よね?﹂ ﹁あっ・・・ああ・・・・・・﹂ ﹁だったらぁ∼・・・今日のライルは私の ﹂ になるわね♪﹂ ﹁えっ⁉ ﹁むふふっ♪ねぇライルも嬉しいでしょ?今日は私を好きなように しちゃっていいんだからね♪﹂ 俺は思わず息を飲んでしまった。雪蓮は俺を誘惑するように目の前 で胸元を見せつけて、加えて寄せて来ている。最近はずっと仕事づ ったから雪蓮と触れ合う時間は無いに等しく、本音をいえばイチャ つきたい。 だがまだ仕事が残っていたので出来るならそちらを片付けてからだ。 いいじゃない⁉ 仕事なんで後回し ﹁えっと・・・ごめん・・・・・・まだ仕事が残っているからな・・ ﹂ ブーブー‼ ・また後でにしてくれないか?﹂ ﹁えぇええ∼⁉ にしちゃいなさいよ∼⁉ ﹂ ﹁ダメなものはダメだ。それに仕事が終わったら存分にイチャつけ 私はいますぐライルとイチャイチャしたい∼‼ るんだから我慢しろ﹂ ﹁ブーブー‼ ﹁はぁ・・・・・・子供かきみは?﹂ 1580 若干だけれども呆れながら俺は筆を進める。なかなか構ってくれな あ雪蓮はしばらく可愛らしく頬を膨らませて拗ねていたが、やがて 何か閃いたような顔をして俺の背後に歩み寄る。 ﹂ ﹂ 気にはなったが仕事に集中させると不意に後頭部に柔らかい何かが し・・・雪蓮⁉ 当てられた。 ﹁うわっ⁉ ﹁な∼に?﹂ ﹁そういうのは後にしてって言ったでしょ⁉ ﹁あら?私がただこうしてるだけだし、ライルは気にしないでお仕 事してていいのよ♪﹂ ﹁あ・・・あのねぇ・・・﹂ ﹁ほらぁ∼♪頑張れ頑張れ∼♪﹂ そういいながら雪蓮はより強く抱き付いてきて胸を押し当ててくる。 とてもじゃないが集中できない。しかしそれでも反応を示さない俺 に彼女は俺に顔を向けながら膝に座ってきた。 ﹁ちょ・・・み・・・見えないんだが・・・﹂ ﹁あらあらぁ∼♪すごく肩が凝ってるみたいですねぇ∼ご主人様♪﹂ ﹁ご主人様ってね・・・とにかくどきなさい。前が見えないよ・・・ ﹂ ﹁あんっ♪もぅご主人様ったら♪そんなに腕を動かしちゃあぶない わよ♪﹂ そういいながら雪蓮はメイド服のボタンに手をかけ、ゆっくりとメ イド服の上を脱ぎ出す。 ﹁ほらっ♪ライルが動くから服が脱げちゃった♪﹂ 1581 ﹁き・・・君が自分から脱いだんだろ?﹂ ﹁ふふっ♪どう?その気になった?﹂ ﹁た・・・頼むからちゃんと服を着てくれ・・・流石に目の行き場 がない・・・﹂ ﹁ブー・・・・・・固いわねぇ・・・・・・じゃあ・・・﹂ 今度は不敵な笑みを浮かべながら両手を俺の頬にあてて、顔を自身 の顔に近付けてきた。 ﹁・・・その気にさせてあげる・・・﹂ ﹁しぇれ・・・ん・・・・・・﹂ 反論を与えないように雪蓮は俺の顔を近付けて深く唇を重ねてきた。 ﹁んん・・・ちゅ・・・んはぁ・・・ライ・・・ル・・・ん・・・﹂ ﹁ん・・・ちゅ・・・んん・・・・・・﹂ 口の中で、別の生き物のように動き回る雪蓮の舌。 最初こそは驚いたが彼女の感触には勝てず、俺も目を閉じて手を彼 女の後頭部と腰に廻すとより深く彼女の舌に自身の舌を絡ませる。 やがて息苦しくなったのか雪蓮は顔を離す。彼女をみつめる俺の口 から、知らず知らずのうちに溜め息のような息が漏れた。 ﹁どうしたの?溜息なんか吐いちゃって﹂ ﹁いや、雪蓮が綺麗だって改めて思ったのとそんな雪蓮の魅力に、 あっさり負けちゃった自分が、少し情けなく思ったんだよ﹂ ﹁ふふ♪そんな風に考えなくてもいいのよ♪好きな人と口づけ出来 るのは、女の子にとって幸せなのよ♪﹂ ﹁そこは・・・否定しないな﹂ 1582 ﹁それより∼・・・・・・その気になった?﹂ ﹁・・・・・・・・・その気にならない方がおかしいよ﹂ そういいながら今度は俺から彼女と唇を重ねて同時に舌を絡ませる。 それを望んでいた彼女は特に驚いたりはせず、待ち焦がれていたか のように積極的に舌を絡ませる。 もう仕事は後回しでもいいや。今は愛しい雪蓮と触れ合いたい。 その後に俺達は朝まで何度も愛し合い、朝に起こしに来た華蓮には 驚かれ、仕事が終わっていなかったことで冥琳には雪蓮と一緒に怒 られてしまったというのは言うまでもなかった・・・・・・・・・。 1583 第200話番外編:メイド︵後書き︶ 次回から本編に戻ります。 1584 第201話:老兵と宿将︵前書き︶ 老兵と宿将。互いの主について語り合う。 1585 第201話:老兵と宿将 いま私は休暇を楽しんでおる。反乱軍との戦いで育成部隊から一時 的に戦闘部隊に回され、迫撃砲部隊を率いて中佐や少佐達の支援に あたった。 ﹂ その反乱軍鎮圧も無事に終わり、私の部隊は1週間の休暇が与えら ﹂ れ、私自身も久々の趣味を満喫していた。 ﹁いい風だ‼ ﹁しかし本当に馬とはまた違った感覚じゃな‼ ﹂ ﹂ ﹂ しっかり掴まって‼ もっと速く走れんか⁉ ﹁気に入ってもらって何よりですな‼ ﹁サイファー‼ ﹁もちろんですぞ‼ 私の趣味というのはツーリングだ。だから中佐に無理を頼んでジェ M20を操り、祭殿を載せて草 ーンから取り寄せたイギリスの軍用バイクである12馬力単気筒サ イドバルブエンジン搭載のBSA 原を走っていた。 下手にバイクで市街地を走るとバイクを見たこともない民が混乱し てしまう。 だから休暇・・・しかもこういった平原でなければ走ることなど出 来はしないが、広い緩やかな平原を気持ち良く走れるのでかえって 都合がよかった。 祭殿に速さをせがまれて速度をどんどん速めていく。しかし流石に 時々であるがエンジンを休ませる必要があるので、山道を走行中に 見つけた茶屋にて休息を摂ることにした。 1586 ﹁ぷはぁ∼‼ やはりお主の酒は美味いな‼ ﹂ ﹁はははっ・・・飲み過ぎには充分に気を付けて下され﹂ ﹁そう固いことを言うでない。ほれ、お主も飲まぬか﹂ ﹁私は帰りも運転するのです。飲酒運転など言語道断。それに俺は 紅茶がありますし・・・﹂ そういいながら祭殿はブランデーが入った酒壺を飲み、私はポット に入れていたミルクティーを飲む。周囲は山中であり木々に囲まれ ながら目の前に広がる風景を楽しめる。いい場所だ。 ﹁しかし平和ですなぁ・・・﹂ ﹁本当じゃ。儂には少し物足りないがのぅ﹂ ﹁ははっ・・・しかし戦わなくてもよいのならそれに越したことは ありますまい。早く引退して余生をノンビリと過ごしたいですしな﹂ ﹁儂は引退する気など考えておらぬぞ。生涯現役じゃ﹂ まだまだ若い者には負けはせぬぞ♪﹂ ﹁流石ですな﹂ ﹁応っ‼ 生涯現役とは・・・相変わらず元気なお方だ。 ﹁サイファー﹂ ﹁なんでしょう?﹂ ﹁お主はライル達をどう思っておる?﹂ ﹁中佐ですか?﹂ ﹁そうじゃ。儂は先代様より孫呉に仕えておるというのは知ってお るな?﹂ ﹁・・・確か孫策様の母君、孫堅様でしたかな?﹂ ﹁そうじゃ。じゃから策殿や権殿、翊殿、それに尚香殿や冥琳。み な儂にとって実の娘みたいな存在じゃ。無論、ライルも儂は息子の 1587 ように思っとる﹂ ﹁息子・・・ですか・・・・・・﹂ ﹁知っておるか?冥琳は今では威張っておるが昔は泣き虫でよく儒 子共に虐められておってな。儂がよく助けておったのじゃ﹂ ﹁あ・・・あの周瑜様がですか?﹂ ﹁そうじゃ、それに策殿も昔は一人で厠に行くのが怖かったし、権 殿も昔は甘えん坊だった﹂ ・・・なんだか聞いてはならないような爆弾発言を聞いてしまった 気がするな・・・。 祭殿は酒壺の酒を口にしながら話を続ける。 ﹁お主とライル達はいつ知り会った?﹂ ﹁そうですな・・・もう10年以上も前になります。中佐や少佐達 がまだ新兵だった時に鍛え上げたのが私だった・・・﹂ ﹁ほぅ・・・﹂ ﹁中佐と少佐はその頃から能力が卓越しておりまして、2人揃って こいつは化ける と・・・で 歴代の成績を全て塗り替えました。あらゆる優秀者の称号を総なめ にしてましたな﹂ ﹁さすがはライル達じゃな﹂ ﹁だからすぐに直感したんです。 すから中佐の訓練はあえてより一層厳しくし、徹底的で大事に鍛え 上げました。本当の息子みたいに・・・﹂ ﹁・・・・・・﹂ 実際、私にとって中佐達は息子や娘達にも思える。それは孫策様や 孫権様達にも同じであり、みな私の子供達のように思える。すると 祭殿は手にしていたブランデーを長椅子に置き、軽く微笑んでいた。 ﹁ふぅ・・・お主は本当に呉狼様に似ておる﹂ 1588 ﹁呉狼・・・・・・たしか孫策様達の父親でしたかな?﹂ 英雄 じゃ﹂ ﹁うむ・・・家族や仲間を大事に思い、優しさの中に熱い思いを秘 めた正真正銘の ﹁・・・私は英雄ではありませぬぞ。どこにでもいる老兵です﹂ ﹁それは民や歴史が決めるものよぅ。じゃがお主にもライルや策殿 達と同じように英雄としての素質を備えておる﹂ そういいながら祭殿は空いたカップを手にして、そこにブランデー を注いで私に突き出してきた。 ﹁・・・少なくとも儂はそう思うぞ・・・﹂ 私は無言のままブランデーを受け取り、それを一気に流し込む。英 雄という言葉を考えながら一気に飲んだ。 久々に飲んだ母国の味は大変まろやかで飲みやすかった・・・・・・ 。 1589 第201話:老兵と宿将︵後書き︶ を託す。 二度も卑劣な手段を使ったことにされてしまった曹操。各地で徐々 海兵隊の誇り,Re ある物 に人心は離れていき、豪族も動き出す。 真・恋姫無双 己の覇道を見つめ直す曹操に牙刀は 次回 滅 火を失いかける覇王に再び焔が宿る。 1590 第202話:滅︵前書き︶ 自身の志を見失いかける華琳に牙刀が形見を託す。 1591 第202話:滅 五丈原にて夏侯淵殿を救い、漢中を代償に将の戦力低下を防いだの も束の間、誰かが北郷殿を暗殺しようとした。 二度も天に卑劣な手段を用いた という風 暗殺そのものは防がれたが、これにより蜀との関係は更に悪化を辿 り、加えて曹操殿に 評が着せられてしまった。 我等は意気消沈の状態で許昌へと帰還したが安らぐ時間は全く無い。 国内では曹操殿の覇道に疑問を抱き始める一派が出現し、更に一部 の豪族が反旗を翻したのだ。 その中で私も凪達を率いて徐州にて反旗を翻した孔融を鎮圧し、許 昌に帰還した。 ﹁・・・以上が今回の報告になります﹂ ﹁ご苦労だったわね・・・﹂ ﹁いえ・・・﹂ 私は孔融討伐の報告を執務室にて曹操殿に行なう。しかし最近の曹 操殿からは覇気があまり感じられなくなっていた。 溜息を吐く回数が格段に増えて、時々なにか思い悩んだような表情 もする。私達もかなり心配して悩みがあるなら打ち明けるように施 しているのだが一向に口にしない。 ﹁では私はこれで失礼致します・・・・・・それと曹操殿﹂ ﹁なに?﹂ ﹁何か悩まれているようですが・・・﹂ 1592 ﹁・・・・・・別に大丈夫よ﹂ ﹁口が過ぎるようですが、みな心配しております。特に私や参刃は あなたに10年以上も付き従っているのです。お隠しになられてい てもすぐに分かります﹂ ﹁・・・・・・そうね・・・だけど心配は無用よ﹂ ﹁強情を張らないで頂きたい。私でよければお考えを打ち明けては 如何か?﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ 曹操殿は沈黙してしまう。私と参刃は曹操殿がまだ赤子だった頃か ら付き従っているのだからお考えや何か違う箇所が見られたらすぐ に分かる。 暫く沈黙した後、ようやく曹操殿が口を開いた。 ﹁・・・・・・牙刀﹂ ﹁なんでしょうか?﹂ ﹁あなた・・・・・・後悔はしていない?﹂ ﹁・・・何がでしょうか?﹂ ﹁この私に付き従っていることよ。後悔なんかしてない?﹂ ﹁・・・・・・聞かれるまでもありますまい。私は既に貴女へ忠誠 を誓いました。覆ることなどありはしません﹂ ﹁・・・・・・そう・・・一つ聞いてもいいかしら?﹂ ﹁如何様にも﹂ 覇道 についてね﹂ ﹁・・・私は五丈原で北郷が暗殺されかけた時から考え出した・・・ 私の歩む ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁私は覇王・・・たとえ民の心が離れようとも、民からの恨みや妬 みを買おうとも・・・我が理想を実現させるのなら謹んで受け止め る覚悟。それは今でも変わらない。だけど・・・﹂ ﹁・・・・・・﹂ 1593 ﹁だけど・・・最近になってから分からなくなっているのよ・・・ 私は秋蘭を救い出す為に漢中を北郷に一時預けた・・・確かにそれ であの子は助けられたわ。だけど代償は漢中を失ったことと私に対 呉と蜀には天の加護あり。曹 ・・・・・・﹂ する汚名・・・聞いているわ。 孟徳に天下への資格なし その言葉を聞いて耳が痛い。何でも郊外よりそういった噂が流れて いて、民の心が徐々に離れていっている。蜀と呉の間者が流してい ると思われたがどうやら違うらしい。 ﹁・・・・・・牙刀。貴方はどう思う?﹂ ﹁・・・・・・聞くまでもありますまい﹂ ﹁・・・・・・﹂ ﹁私達臣下は貴女の覇道こそがこの国を泰平へと導くことを確信し ています。例え民の心が離れようとも、我等の忠誠は崩れはしない。 それに・・・・・・﹂ ﹁・・・・・・なに?﹂ ﹂ ・・・今は 孟徳に天下への 強請らず勝ち取れ 曹 ﹁それに・・・証明すればよいのです。難しく考える必要などどこ 強請らず勝ち取れ と・・・実力を示すのです﹂ にもない。天下への資格が無いというなら 資格あり ﹁・・・ 私はその言葉を聞いて頷いた。 亡き曹嵩様がよく口にされた言葉だ。その言葉を曹嵩様より引き継 いで、私が曹操殿にお伝えしたのだ。 ﹁曹操殿、あなたに尋ねます。貴女は何かを得る代わりに何かを失 う覚悟はありますか?﹂ ﹁・・・なにがいいたい?﹂ ﹁そのままの意味です。何かを成すにはそれ相応の代価と犠牲が伴 1594 います。それが例え夏侯惇殿や夏侯淵殿達を失う結果となろうとも、 貴方にその覚悟がありますか?﹂ 改革を成す為には幾多もの犠牲とそれに似合う代価が必要となる。 我等はこれまでに足下が見えない位の犠牲の上に立っている。 暫く続く沈黙の後、曹操殿は口を開いた。 ﹁・・・・・・あるわ﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁私はここに来るまで幾万もの犠牲を出した。だから礎となった者 たちの為にも・・・私は歩みを止めない﹂ ﹁2人の内のどちらか・・・もしくは両方を失っても・・・ですか ?﹂ ﹁失うかも知れないなら失う前に成し遂げればよい。あの子達をむ ざむざと死なせたりはしないわ﹂ 大事な肉親でもある2人を失わずに天下統一を果たす。いかにも曹 操殿らしい一言だが、その瞳は先ほどとは違って決意と信念が宿っ た力強いものだ。 私は軽く笑みを浮かべると曹操殿をジッと見る。 ﹁曹操殿・・・ご足労願います﹂ そう言って私は曹操殿を連れて廊下を歩く。向かった先は私の私室。 室内には寝台と机、椅子など必要最小限の家具の他に一箇所だけ隔 離されるかのように鎮座した鍵付きの箪笥。 ﹁私を連れて来てどうするのかしら?﹂ ﹁少しだけお待ち下さい﹂ 1595 そう短く言うと首に掛けていた鎖付きの鍵を取り出し、二つある鍵 を差し込んで両方を掴む。 ﹁・・・この日をどれだけ待ち望んだか・・・﹂ そういうと両方を同時に左へ回す。鍵が解除された音がし、扉をゆ っくりと開ける。 ﹁・・・これは・・・﹂ 曹操殿は言葉が出て来なかった。そこにあったのは一筋の大鎌。部 分的にはかつてアレックス殿に破壊された絶に似ているが、決定的 に違うのはそれが双鎌だということだ。 滅 。かつて貴女の父君がお使いになられた双鎌です﹂ それを手に取ると曹操殿に見せる。 ﹁これは ﹁父様が?﹂ ﹁はい・・・旦那様がお亡くなりになられる前、貴女が挫折し、そ こから立ち直った時に託すよう遺言を残されました・・・曹操殿﹂ 孟徳。汝は自らの使命を果たし、前に歩み続け ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁改めて問う。曹 るか?﹂ 亡くなった曹嵩様のご意志・・・それは誰もが身分の関係がなく力 を出して生きていける世界。 その意思は曹操殿に受け継がれ、その意思をいま新たに試されてい る。 曹操殿は間を置かず滅を受け取り、少し回転させると背中で構えた。 1596 ﹁父様の意思・・・・・・それは私のやるべき誇りでもあり・・・ 天へと示す存在意義・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁ならばやるべきことは一つだけ・・・・・・牙刀﹂ ﹁はっ﹂ ﹂ ﹁みんなを集めなさい。軍議を始めるわ﹂ ﹁御意‼ 新たに覚醒した曹操殿の指示でみなを玉座に集めるため駆け出す。 ・・・・・・義父上・・・見ておられますか? 貴方の願いが一つ叶えられ、貴方の意思は確かに貴方が愛した娘に 受け継がれています・・・。 1597 第202話:滅︵後書き︶ 幽州における反乱を鎮圧する司馬懿率いる私兵部隊。自らの才を弁 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re えない凡愚に嫌気を指す司馬懿は・・・・・・。 次回 [正始] 狼顧。自らの信念で画策する。 1598 第203話:正始︵前書き︶ 才に溢れる司馬懿。退屈な戦に嘆いていた。 1599 第203話:正始 五丈原での一件の後、我等は魏に対して反旗を翻した幽州の公孫淵 とその一族が率いる燕軍の討滅に向かっていたが、はっきり言えば くだらない戦だった。 かつてこの地で烏丸族などの異民族を幾多も撃退した公孫瓚と同じ 血筋だと聞いてどのような輩かと思えば有利な籠城戦を捨てて城の 前に布陣したり、要所を抑えて陽動部隊で軽く挑発すれば面白い位 に釣られたりと愚策の極みだ。 こんな凡愚に上等な策を巡らす必要などない。 こ・・・降参いたします⁉ 命だけは⁉ ﹂ 交戦開始から僅か5日、我等ら燕の本拠地である遼東へと攻め込ん で燕を滅ぼした。 ﹁し・・・司馬懿殿⁉ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹂ だから命は﹁黙れ 捕らえた公孫淵は必死に命乞いをしている。反乱を起こしといてな んとも図々しい・・・。 ﹂ひぃ⁉ ﹁え・・・燕建国は撤回し、魏に帰従します‼ 凡愚が‼ ﹂ ﹁さっきから聞いておれば情けない・・・・・・反乱を起こしたな ﹂ らそれ相応の気概と覚悟を示さぬか‼ ﹁ひっ⁉ ﹁反乱を起こしたことそのものは大した罪ではない・・・・・・貴 1600 ﹂ ﹂ ﹂ 様が犯した最大の罪状は己の才を弁えず、下らぬ反乱を起こして私 の手を煩わせたことだ‼ ﹂ ‼ この凡愚の頸を刎ね、槍に突き刺しておけ‼ ﹁し・・・司馬懿殿⁉ ﹂ ﹁連れて行け‼ ﹁御意‼ ﹁お・・・おのれぇええええ‼ 公孫淵は悲鳴に近い声を出しながら兵に引きずられていく。最後ま でなんとも情けない・・・・・・公孫瓚が聞いたら呆れるだろうな。 そんな状況に私は空を見上げながら大きく溜息を吐いてしまってい た。 ﹁はぁ・・・なんともつまらなぬ・・・凡愚どもの乱痴気騒ぎに付 き合わされる・・・・・・虚しい・・・﹂ 私は自分の才を持て余す状況と魏の現状に嫌気がさしていた。 今の魏は呉と蜀に対する攻勢では敗退を喫し、将兵の士気低下が否 めない。加えて曹操殿は1人の将の為に漢中といい戦略上重要な領 土を劉備と北郷に明け渡し、寿春も一度は制圧したにも拘らず手放 した。 その及び腰とも取れる策に公孫淵のような凡愚が図に乗り、果ては 国を立ち上げて自滅していく。 ﹁父上、如何なされましたか?﹂ ﹁師か・・・いやなに・・・・・・相変わらずつまらぬ戦だったと 思ってな﹂ ﹁確かに・・・・・・張り合いが全くありませんでした。始まる前 から勝利は見えていたというのは分かっていましたが、呆気なさ過 ぎでしたな﹂ 1601 師の言う通り張り合いが無さ過ぎる。特に今回の戦は右を見ても左 を見ても凡愚、凡愚、凡愚。 立場ある者は時に下らぬ戦にも出向かなければならないが、流石に 今回は我が息子達に放り投げたい気分だった。 ﹁それで・・・お前は私に何の用だ?昭みたいに怠けにきたのでは なかろう?﹂ です﹂ これより我が軍は改めて歩み出す。帰還が可能 ﹁ご冗談を・・・父上宛てに許昌より伝令が来ております﹂ ﹁なんだ?﹂ ﹁はい、内容は な軍勢は速やかに許昌へと帰還せよ 知人 が出来ました﹂ ﹁ふん・・・今更か・・・・・・まあいい。このような退屈な場所、 さっさと立ち去るとするぞ﹂ ﹁はい、それと徐州に予定通り ﹁そうか・・・誰にも悟られてはないだろうな?﹂ ゴホッ⁉ ﹂ ﹁無論です。既に子上は洛陽、母上は長安、その他の将兵達も各地 に治安維持を名目に向かいました﹂ ﹂ ﹁上々だ。誰にも悟られぬように・・・ゴホッ⁉ ﹁父上⁉ ﹂ いきなり咳き込んでその場に倒れてしまう私に子元が慌てて駆け寄 る。 ﹁父上⁉ ﹁ぐっ・・・・・・大丈夫だ師﹂ ﹁・・・父上・・・・・・やはりお身体が・・・﹁それを口にする な﹂・・・﹂ 少しふらつきながらも師の助けなしで立ち上がる。手には咳き込ん 1602 だ際に吐血し、少しだが血が付いていた。 ﹁ふふっ・・・祈願成就までに身体が持てばよいが・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁さぁ帰るぞ。早く帰らぬと曹操殿の機嫌が損ねてしまう﹂ 何事もなかったかのように私は自軍の本陣へと歩き出す。 私にはまだやるべきことが残っているのだ。道半ば・・・更にはこ のような場所で果てる気など更々ない。 必ず私は手に入れる・・・・・・才ある者が束ねる平和な国をな・・ ・・・・。 1603 第203話:正始︵後書き︶ 眠れない夜。辺りが暗くなった建業の城壁で風に当たりに来た蓮華。 同じく城壁に来ていたレオン。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 呉蜀の合同演習が近い中、二人は・・・・・・。 次回 [月夜の音色] 獅子と虎。月夜に導かれる。 1604 第204話:月夜の音色︵前書き︶ 寝苦しい夜。涼みに出てきた蓮華はそこで1人の少女となる。 1605 第204話:月夜の音色 その日は久々に蒸し暑い日になっていた。季節が夏だというのもあ るけれど昨日は雨が降ったというのもある。 その蒸し暑さも加えてここ建業は真夏になると本当に暑い。そこに 湿気も混ざったら交州にも負けない位の暑さになるから、過ごしに くい。 ﹁ふぅ・・・やっぱり外はまだ涼しいわね﹂ 私は暑さで寝苦しかったので外に出て風当たりがいい城壁へ涼みに 向かっていた。寝汗をかいて気持ち悪かったので寝巻きを新しいも のに着替えてからだけど。 ﹁だけどたまにはゆっくり月を見てお酒を飲むのもいいわよね。姉 様に見つかったら大変だけど・・・﹂ 私は小さめの酒壺と湯のみを片手に城壁へと続く階段を上がる。す ると中間あたりで何かが聞こえてきた。 ﹁これは・・・・・・笛?﹂ 聞こえてくる透き通った音色。すぐに私はそれが笛の音色だと理解 した。そのまま音色に誘われるように城壁へと上がって辺りを見渡 すと少し先でその音色を醸し出している張本人を見つけた。 ﹁・・・レオン?﹂ 1606 笛を吹いていたのはレオンだ。小さな蝋燭と月明かりに照らされ、 硝子の湯のみに注がれたお酒。 更に目を閉じて笛の音色を巧みに操るその姿は幻想的で、どこか切 なかった。しかし私は惹きつけられ、自然とレオンに歩み寄ってい た。 ﹁レオン﹂ ﹁ん?・・・蓮華か﹂ 笛に集中していたのか、私に話し掛けられるまで気がつかなかった ようだ。 ﹁どうしたんだ?こんな夜更けに・・・﹂ ﹁ちょっと寝苦しかったから風に当たりに来たのよ。レオンこそど うしてここに?﹂ ﹁似たようなもんさ。今晩は特に蒸し暑いからね。となり座るか?﹂ ﹁えぇ。ありがとう﹂ そう言われてレオンはすぐに私が座れる程の場所を空けてくれて、 私はそこに腰掛ける。 ﹁レオンって笛を吹けたの?﹂ ﹁あぁ、最近になってから中佐に勧められて始めたんだ。まだ中佐 のようには上手く吹けないけどね﹂ ﹁そんなことなかったわ。透き通ってて綺麗な音色だったわよ﹂ ﹁はははっ。そう言ってくれて嬉しいな。ありがとう﹂ ﹁私もたまに冥琳に二胡を教えて貰ってるけど、中々うまく弾けな いわ﹂ ﹁へぇ・・・﹂ ﹁・・・なに?その意外そうな顔は?﹂ 1607 ﹁いや・・・いいことを聞いたと思ってね。それよりもそれは酒か ?﹂ ﹁えぇ。一緒に飲む?﹂ ﹁じゃあ・・・お言葉に甘えて﹂ 私はレオンの湯のみに持って来たお酒を注ぎ、そのお返しとしてレ オンは私の湯のみに自分の酒を注ぐ。 そのあとに湯のみで乾杯し、それを一口だけ飲む。 ﹁美味しいお酒ね﹂ ﹁あぁ。自慢の酒だからね。飲み慣れて無い人でもこれなら対して 酔わずに済むんだ﹂ ﹁そうなの?だけど飲み過ぎは出来ないわね。二日酔いにでもなっ たら明日の業務に影響が出ちゃうし、姉様に説得も出来なくなるわ﹂ ﹁ははっ・・・相変わらず真面目だな?﹂ ﹁相変わらずは余計よ﹂ そんな話をしながら自然と笑顔になる。ライルもそうだけどレオン も不思議な雰囲気を出して皆を惹きつける。 普段から常に明るく、何処か軽い一面もあるけれど民や仲間のこと を大事に思う熱い一面や知略と武勇にも優れてる。 本当に不思議な人だ。 だから色んなことを知りたくなる。レオンの生まれ故郷や家族、軍 に入った理由やレオンの素顔なんかも知りたい。 私の事をどう思っているのかも・・・・・・。 ﹁・・・・・・ねぇレオン﹂ 1608 ﹁なんだ?﹂ ﹁す・・・少し貴方に聞いてみたいことがあるのだけれど・・・﹂ ﹁どうしたんだ?急に改まって・・・﹂ ﹁べ・・・別に深い意味はないわ・・・・・・だ・・・ダメ?﹂ 私は顔を赤くさせながらレオンに問いかける。ただ聞いてみたいだ けなのに我ながら恥ずかしい・・・。 するとレオンも顔を赤くさせながら話し始める。 ﹁そ・・・そうか・・・・・・それで・・・何が知りたいんだ?﹂ ﹁そ・・・その・・・・・・レ・・・レオンは私のことをどう思っ ているの?﹂ ﹁・・・・・・はい?﹂ ﹂ ﹂ ﹁だ・・・だから・・・・・・レオンは私のことをどう思ってるの ?﹂ ﹁・・・・・・プッ‼ ﹁わ・・・笑わないでよ⁉ ﹁い・・・いやぁゴメンゴメン♪印象か・・・・・・そうだな・・・ ﹂ 顎に手を当てながら考えるレオン。 ﹁真面目で一生懸命。一緒にいるとこっちも勇気付けられる・・・ そんな感じだな・・・・・・だけど・・・﹂ ﹁だけど・・・なに?﹂ ﹁無茶をしすぎるというか・・・真面目だけど何処か危なっかしい。 個人的にももうちょっと自分に素直になって欲しいな﹂ ﹁・・・悪かったわね。素直じゃなくて・・・﹂ ﹁拗ねないでくれよ。だけど素直になって欲しいってのは本心だね﹂ 1609 そういいながらレオンは私の手をとってこちらを見る。思わずドキ ドキしてしまい、顔が赤くなりそうだけれど視線を少し逸らして何 とか悟られなかった。 ﹁蓮華、よく聞いて欲しいんだ。君は初めて出会った時からだいぶ 変わった。前は無鉄砲で誇りに固執したヒヨッコだったけど、今で は中佐や少佐達も認める立派な指揮官だ。それは誇っていい。だけ ど・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ 蓮華 という少女になってくれ﹂ ﹁だけど・・・もう少しだけ自分に素直になって欲しい。せめて戦 いや業務がない時は ﹁私という・・・少女?﹂ 今なら何と無く解る気がする。昔の私は孫家の次女という誇りに似 合うことに意識しすぎて皆を危険に晒していた。 だから昔とは変わった私なら、レオンの言葉の意味が解る気がする。 ﹁・・・・・・ねぇレオン﹂ ﹁なにかな?﹂ ﹁一つ・・・お願いしてもいい?﹂ ﹁いいよ。なに?﹂ ﹁その・・・笛を聞かせてくれない?﹂ ﹁笛を?﹂ ﹁うん・・・ダメかしら?﹂ ﹁・・・喜んで﹂ そういいながらレオンは笑い、その場に立ち上がると笛の吹き口に 口を添えて吹き始める。 どこか優しくて懐かしさを感じる音色。身体全体を使って表現し、 月明かりに照らされたその姿は神秘的で、まるで彼がどこか少年の 1610 ようなあどけないように思えた。 それを見ている内・・・・・・いえ。 前から私は気付いていたわ。だけど自分に素直じゃなかったから気 が付かないフリをしていた。私は・・・・・・・・・。 ︵・・・あなたが好き・・・︶ 1611 第204話:月夜の音色︵後書き︶ 蜀と呉の同盟強化を目的とした合同演習が行なわれている中、建業 で留守番となった雪蓮と祭と華蓮。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 久々に食事をしながら話していると雪蓮に変化が・・・。 次回 [雪蓮] 孫呉の祈願が訪れる。 1612 第205話:雪蓮︵前書き︶ ライルが遠征している頃、建業にいる雪蓮に変化が訪れる。 1613 第205話:雪蓮 晴れ渡った昼下がり。私は仕事の合間を貰って久々に食堂でお昼ご 飯を食べていた。いつもなら侍女が持って来てくれるんだけど、今 日は私の大好物の揚州炒飯だって聞いたから食べに来た。 なんだけど・・・。 ﹁うぅ∼・・・なんだか食欲が湧かなかった・・・﹂ ﹁あれだけ間食すればそうなるに決まっているだろ?﹂ ﹁そうですよ、お姉様﹂ なぜか半分くらいしか食べられなかった。前までなら普通に完食で きたんだけど、少し前から半分しか食べられなっていた。残すのは 作ってくれた人に申し訳ないから一緒にいた冥琳と華蓮に食べても らった。 ﹁でもお姉様。最近になってから間食が増えましたよね?太っちゃ いますよ?﹂ ﹁それは分かってるんだけど・・・なんだか妙に酸っぱいものが食 べたくて仕方が無いのよ﹂ ﹁酸っぱいものですか?﹂ 最近になってから妙に酸っぱいものが食べたくて仕方が無いのよね。 蜜柑は確かに嫌いではないけど格別に好きという訳でもない。 多く食べたとしてもせいぜい1日4∼5個くらいなんだけど、最近 は20個近くを食べてる気がする。 1614 一週間前から蜀との軍事合同演習で遠征をしているライルから貰っ た凄く美味しい蜜柑なんだけど流石に食べ過ぎているわ。 ﹁蜜柑は確かに美味しいですけど食べ過ぎは身体に悪いですよ﹂ ﹁しかし何でこう毎日のように蜜柑を欲しがるんだ?普通なら食べ 飽きる筈だが・・・﹂ ﹁それが分かったら苦労しないわよ。流石の私も今回は勘が冴えな いわ﹂ ﹁・・・・・・それは本当か?﹂ ﹂ ﹁えぇ、おまけに月のものも来てないし・・・なによりも食べると・ ・・・・・・・・うぷっ⁉ ﹁雪蓮?﹂ ﹁お姉様?﹂ いきなり気持ち悪くなって私は口を手で塞いで我慢しながら急いで 厠へと向かう。少し間をおいてから後を追うように2人も駆け出す。 ﹁・・・ふぅ・・・﹂ ﹁大丈夫か雪蓮?﹂ ﹁お姉様・・・なにかご病気なのですか?﹂ ﹁心配ないわよ2人とも。ちょっと戻しちゃっただけだから・・・﹂ ﹁ダメですよ。もしかしたら本当に何かの病気かもしれませんから、 いちど私が診察します﹂ ﹁本当に大丈夫♪ただちょっとびっくりしちゃっただけだから♪﹂ ﹂ ﹁調子が悪い人に限ってそういうんですよ。だから私が診ますから 冥琳もなんとかいってよ∼‼ しっかりと治療を受けて下さい﹂ ﹁ぶ∼ぶ∼‼ ﹁雪蓮。悪いことは言わないわ。華蓮様の治療を受けなさい﹂ ﹁そうですよ。それにもうお姉様の身体はお姉様だけのものじゃな 1615 ‼ ﹂﹂・・ いんですよ。もし何かあったりしたらライル様が悲しんじゃいます﹂ ﹁うっ・・・だ・・・だから本当に﹁﹁受けなさい‼ ・はい・・・﹂ 2人の気迫に負けて仕方無く華蓮の診察を受けることになった。そ の間にも華蓮はブツブツと考えていた。 ︵食べる毎に戻して月のが来てない・・・それで酸味があるものを 食べる・・・・・・まさか・・・︶ 考え事をしている華蓮の後に続いて私はそれに続いて医務室へと入 る。因みに冥琳は外で待つことになった。診察そのものはすぐに終 わる。 流石に治療を受けたからその診察結果が気になってしまうのは心理 かしら? ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁で・・・どうだったの?﹂ 私がそう尋ねると華蓮は軽く笑って私の手を取りながら小さく力を 込める。 ﹂ ﹁お姉様、落ち着いてよく聞いて下さいね﹂ ﹁な・・・なに?﹂ ﹁・・・・・・おめでとうございます‼ いきなり祝いの言葉を伝えられて思わず困惑してしまう。しかし華 だ・・・だからどうしたの⁉ それになにがめでたいの 蓮はそれに気にもせずただただ喜んで手を振るう。 ﹁ちょ⁉ 1616 か説明してよ⁉ ﹂ ﹁これが喜ばずにはいられませんよ‼ あぁ‼ お母様とお父様が 雪蓮姉様のお腹の中に赤ちゃんが ﹂ いたらどれだけ喜ばれるか・・・﹂ ﹂ ‼ ﹁だ・・・だから教えてってば⁉ ‼ ﹁出来ちゃったんですよ‼ いるんですよ‼ 華蓮の言葉に私は耳を疑った。たしかにいま私のお腹の中に私の子 供がいるといった。何かの聞き間違いかと思ったけど、そうでもな ければ華蓮の嬉しさが説明できない。 ﹁・・・えっと・・・・・・か・・・華蓮・・・誰のって?﹂ ﹁嫌ですよ♪とぼけちゃって♪お姉様とライル様の子供に決まって るじゃないですか♪﹂ ﹁わ・・・私とライルの・・・子供・・・﹂ ﹁そうですよ♪あぁ∼♪愛の結晶が出来るなんて羨ましいです♪﹂ 私は何気無く自分のお腹を触る。すると微かにだが新しい命の気を 感じ取れる。それもライルの気も混ざっていて、これが私とライル の子供だということを表していた。 早く演習に行ってるライル様にお知 本当なら私も望んでいたことでもあり、喜ぶべきだけれども・・・・ ・・。 ﹁こうしちゃいられません‼ らせしないと﹁華蓮﹂はい?﹂ ﹁・・・このことは・・・ライルには黙っていてくれないかしら?﹂ ﹁えっ?﹂ ・・・今は喜んではいられない。予想すらしていなかった言葉に華 1617 ﹂ 蓮は膠着してしまっていた。 ﹁な・・・なんでですか⁉ ライル様は ﹁今は魏との戦いが控えているのよ・・・みんなに余計な気遣いを ライル様はきっと喜ばれますよ⁉ 掛けさせたくはないのよ﹂ ﹁で・・・でも⁉ お姉様のことを本当に愛して﹁だからこそよ﹂・・・﹂ ﹁私も・・・ライルには知って貰いたいし、ライルの子供を産みた い・・・だけどもし今しってしまったらライルは戦いに集中出来な くなるかも知れない・・・﹂ ﹁・・・・・・・・・﹂ ﹁ライルには私から時期を見計らって教えるわ・・・だから今はこ のことを胸に閉まっておいて・・・・・・お願い・・・﹂ ﹁お姉様・・・・・・分かりました・・・﹂ 単なる食べ過ぎ 。時間は掛かりますけど放 そういいながら華蓮は診察結果が書かれた紙を細かく破る。 ﹁お姉様の病状は っておけば完治します﹂ ﹁・・・ありがとう﹂ そういいながら私は華蓮の部屋から退出する。出来ることなら私も ライルには知って貰いたい。だから時期を見計らって魏との戦いが なさそうだったら伝える筈だったけど、それは暫くは叶いそうにも なかった。 約一ヶ月半の軍事合同演習を終えてライルが呉に帰還してから暫く 経過したある日、寿春方面軍からの伝令で私達は忙しくなった。 1618 曹操軍が大規模な軍勢を率いて南進を開始。寿春は陥落寸前 1619 第205話:雪蓮︵後書き︶ 曹操が再び動き出した。敵の狙いは寿春の制圧。破竹の勢いと戦力 差を覆すことが不可能と判断した雪蓮は寿春からの撤退を命ずる。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 殿を務めることとなった優龍も味方を逃がす為に立ち塞がる。 次回 [寿春撤退戦] 呉の牙門旗狩り、魏の大軍に立ち塞がる。 1620 第206話:寿春撤退戦︵前書き︶ 寿春からの撤退。殿を務める優龍が魏軍に立ち塞がる。 1621 第206話:寿春撤退戦 某等が蜀との合同軍事演習より戻った直後、寿春がある揚州一帯が 騒がしくなっていた。 曹操軍による揚州侵攻。 第二次呉魏衝突である。曹魏は万全の状態で我が国に戦いを挑んで 来たようであり、兵の質や数、加えて大量の兵器に軍馬。その予測 兵力は50万と予測されている。 対して我が軍は国境にて大敗を喫し、揚州防衛の要である寿春城も 陥落寸前となっていた。 見事としか言いようがない位に完璧な電撃戦だ。これに対して孫策 様は少しでも多くの命を救う為に寿春からの撤退を決意。我ら孫呉 海兵隊が味方の背後を守る殿の役割を担うこととなった。 完全に不意打ちの状態であったが、海兵隊の即応性により予想より も兵員の損失は低い。しかしそれは孫呉海兵隊と孫呉陸軍であり、 国境を警戒していた孫呉水軍の部隊は完全に壊滅した。 味方を見捨てたりするな 後は我々だけ 彼等の死を決して無駄には出来ない。某も地破豪斧を手に向かって ﹂ 来る魏兵を次々と仕留めていった。 ﹁ぬぅ⋮敵の勢いが衰えぬ‼ お前達も逐一橋を渡れ‼ 寿春からの部隊が橋を渡り終えました‼ ﹂ ﹁将軍‼ です‼ ﹁承知した‼ 1622 ‼ ﹂ ﹁御意‼ ﹂ 友軍部隊が橋を渡り終えたという報告を受け、副官に部下達を渡ら せるよう命じる。 まずは軽歩兵が橋を渡って対岸から弓による援護を行ない、順をお って他の部下達も続々と橋を渡っていく。 敵もそれを阻止する為に弓兵を前に出して来たが、某がいち早く気 ﹂ が付いて弓兵部隊に斬り込んだ。 ﹁そうはさせん‼ ﹂ ﹂ 地破豪斧で敵の弓兵を吹き飛ばし、その勢いに任せて敵の頭を掴む 承淵‼ とそのまま残りの弓兵に投げつけた。 ﹁某は丁 承淵だって⁉ ﹂ 討ち取れば褒美が出るぞ‼ 束にな 貴様ら魏に我等の仲間をやらせたりはせぬ‼ ﹁て⋮丁 ⁉ 奴は1人だ‼ 孫呉の牙門旗狩り ﹁落ち着け‼ ﹂ ﹁ って掛かれ‼ 地破豪斧の鋒を敵に向けながら覇気を当てる。敵は暫く動けなかっ たが、それもすぐに終わる。敵指揮官によって我に返った敵兵が一 ﹁ぎゃっ⁉ ﹂ ﹂ ﹂ 斉に襲い掛かって来たからだ。 ﹁爆せろ‼ ﹂ ﹁うぉおおおお‼ ﹁ぐはっ⁉ 1623 向かって来る敵兵の刀を力任せで叩き折り、そのまま回し蹴りで敵 を蹴り殺して周りにいた敵兵を巻き込む。 その回転による反動を利用しながら手甲で敵を殴り倒す。近接戦闘 ﹂ では勝ち目が無いと判断した敵は再び弓兵に攻撃させようとするが そうはいかぬ。 ﹁これが避けられるか⁉ 手甲内部に取り付けてあるカラクリにより、そこからつぶてが打ち ﹂ 出される。打ち出された石は敵兵の身体を貫通し、さらに後ろにい 渡り終えました‼ た敵を仕留める。 ﹁将軍‼ 背後から橋を渡り終えた副官と部下達の姿。弓兵が弓を構えてこち らを狙っていた弓兵を射抜いてゆく。 副官が某に渡るよう促すが敵の状況を見る。既に周辺には多数の魏 兵の死体が転がっていたが、まだまだ背後から敵の増援部隊が迫っ ている。 いまここで某が渡れば敵に追撃の機会を与えてしまう。そう判断し た某は斬り掛かって来た敵を仕留めると地破豪斧を構えるとそのま し・・・将軍⁉ ま橋に投げ付けた。 ﹁なっ⁉ 仲間を守り通せ‼ ﹂ ﹂ ﹁行け‼ 某が投げた地破豪斧は架け橋を回転しながら文字通り粉砕していき、 1624 最終的には対岸に深く突き刺さった。 その直後に橋は音を立てながら川へと崩れ落ち、破片はそのまま下 流へと流されて行った。 見上げた覚悟だ‼ それがた だが丸腰で我等に勝てると これで某の退路はなくなったが、少なくとも敵の進撃速度を遅らせ ることは出来た。 ﹂ 必ずや愛しき呉の大地を守り通すと‼ ﹁ふ・・・ふん‼ でも⁉ ﹁某は誓った‼ ﹂ とえ某の身体が滅びようとも貴様等のような輩から守り抜くとな‼ ﹂ 手甲を構えながら敵に威嚇する。 苦しまずに討ち取ってやる‼ 1人でも多く我が黄泉の国へとの旅立ちに付き合わせて ﹁せめてもの情けだ‼ ﹁来い‼ ﹂ ﹂ くれる‼ ﹁貴様1人で行きやがれ‼ 敵は一斉にそれぞれの得物を手にし、そのまま斬り込んできた。 討ち取られる覚悟で構えるがいきなり敵の身体が次々と細切れにな ﹂ ﹂ る。敵はいきなりの状況に唖然となり、某は川をみる。 ﹁優龍‼ ﹁ライル将軍‼ 黒い小舟に取り付けられた船首の銃を操るライル将軍だ。今の攻撃 はライル将軍が某を守る為に行なわれたものだ。 ライル将軍は攻撃を行なって敵を釘付けにしている。その間に小舟 は川岸で停泊し、某も反応してそれに飛び乗った。 1625 ﹁ライル将軍‼ ﹂ ﹂ 自己犠牲を払っても仲間を逃がすと思ったから なぜこちらに⁉ ﹁お前のことだ‼ ﹂ 他の部隊は⁉ 迎えに来たんだよ‼ ﹁では⁉ 早くこの地獄 お前達が粘ってくれたおかげで千里達も離脱し ﹂ フルパワーで離脱するぞ‼ 後はお前が離脱したら作戦成功だ‼ ﹁友軍は無事だ‼ た‼ ダン‼ ﹂ ﹁例は後だ‼ ﹂ ﹁⋮感謝します‼ から脱出だ‼ ﹁Hooah!!﹂ 操舵手をしているダン殿は小舟を操り、水面を走るように離脱させ る。脱出を許さないのか魏兵の弓兵が弓と弩を構えていたが逆にラ イル将軍達の銃撃により仕留められる。 その後、某はライル将軍達が回収した部下達と生きて再会出来た。 寿春を始めとした揚州一帯を失うという事態に陥ったが、当初の目 的である兵力の救出という目的は達成された。 我等は必ず揚州を取り戻すという決意を心に秘めながら建業へと帰 還した。 曹操軍は揚州一帯を平定させる為に進軍を停止。同時に我が軍に降 伏勧告を告げる使者を建業に送り出して来た⋮⋮。 1626 第206話:寿春撤退戦︵後書き︶ 寿春陥落から暫く、曹操から送られて来た降伏勧告。時を同じくし て使者として赴いた諸葛亮からの共闘要請。 降伏という意見が多い中、雪蓮は決断する。 海兵隊の誇り,Re 真・恋姫無双 次回 or Resistance] [Surrender 孫呉の未来を見据えた決断が下る。 1627 第207話:Surrender or Resistance ︵前書き︶ 曹操からの降伏勧告。強大な敵を目の前にし、雪蓮は未来を見据え る。 1628 第207話:Surrender or Resistance 合同演習が終了したとほぼ同時に実施された曹魏による二回目の南 下。敵は総戦力を導入してきたようであり、レイヴンからの情報で まだ増える傾向がある。 予想敵兵力は最低でも50万を上回る筈だ。そんな状況で俺達は各 ﹂ 地で友軍部隊の撤退支援にあたり、魏との決戦に備えて戦力を増強 ﹂ まともに戦って勝てる相手ではありま 曹操のような奸物の脅迫に屈してはなりません‼ するが、呉内部では建業の玉座にて荒れていた。 ﹁孫策様‼ 孫策様‼ 降伏すべきです‼ ﹁何を言うか⁉ せん‼ 玉座に集められた孫呉の重鎮達。発端は曹操からの使者が持ってき た曹操直筆の竹簡だ。内容は⋮⋮。 天命は我等魏にあり。今や呉に天兵なる我等に敵うこと叶わず。 孟徳の名の下、孫家等には相応の地位を約束する。なれど刃向 全ての城の門を開門し、我等の軍門に下られよ。 曹 かうことは天に刃向かうことと同義。天の名の下に刃向かう者には 鉄槌を下す。どちらが互いに取って有効的かしかと考えられよ ⋮という内容だ。この世界で城門を開放するということは無条件降 伏を意味している。 1629 曹操からの降伏勧告ということだ。だから家臣達は意見が別れてい るのだ。 武人としての誇り、愛国心、忠誠心、己の保身。これらの感情が蠢 く中で雪蓮は机に置かれた。雪蓮から見て左側が曹操からの降伏勧 告。もう片方⋮⋮。 ︵曹操からの降伏勧告⋮⋮劉備ちゃんと一刀からの共闘要請⋮︶ そう、もう一つの竹簡は桃香と一刀からの共闘要請だ。 使者として赴いた朱里と雛里、夏雅里、飴里の4人から蜀にも同じ ものが送られたらしいが、一刀達はこれを拒否。曹操を止める為に 軍備を集結させているらしい。 因みに朱里と夏雅里を見た千里は暴走していたが⋮⋮。 ︵こんな時⋮⋮父様ならどうするかしら?⋮⋮母様なら⋮⋮︶ 死 。 雪蓮は先程から竹簡を睨みつけている。無理もない。今回は国の一 大事だ。少しでも選択を間違えれば待っているのは ﹁⋮⋮ライル﹂ ﹁なんだ?﹂ ﹁あなたが私だったら⋮どうする?﹂ 雪蓮が隣にいる俺に問い掛け、玉座にいた全員が俺に注目する。そ れは左右に分かれているアレックス達や蓮華達も同じだ。 俺は暫く考えてから答えを口にする。 ﹁⋮⋮確かに曹操の軍勢は強大だ。兵力はもちろんだが兵の質もま 1630 さに脅威。俺達も50万なんて大軍と戦った経験はない。普通に考 えれば降伏を選ぶのは当然だ﹂ その言葉を聞いて降伏を唱えていた文官達は安堵の表情を浮かべ、 武官達は焦りの表情をみせる。だが俺は気にせずに話を続ける。 ﹁俺達海兵隊は孫呉に絶対的な忠誠を誓った。だから俺は君の決定 に従う﹂ ﹁ライル⋮⋮⋮﹂ ﹁たとえそれが降伏にしろ、抵抗にしろ、俺達の役目は呉を護るこ とだ。だから雪蓮の決めた道を俺は進み続けるつもりだ。たとえそ れが茨の道であってもな﹂ 俺は出来るだけ優しい表情をしながら雪蓮を見つめる。たとえ呉の 旗が無くなり、代わりに魏の旗が靡こうとも俺は愛する雪蓮を護る。 ﹁ライル⋮⋮⋮ありがとう﹂ 一言礼をいうと雪蓮はすぐに王としての顔に戻る。恐らく⋮いや⋮ ⋮間違いなく決めたのだろう。 ﹂ よってこの孫 伯符は ﹁⋮⋮⋮降伏⋮共闘⋮我等呉にとってどちらにも利があると私は考 える﹂ 全員が固唾を呑んで見守る。 ‼ ﹁だが⋮私は孫呉の⋮⋮皆の力を信じる‼ 未来を見据えた決断をここに下す‼ そういうと雪蓮は側に立て掛けてあった南海覇王を鞘から抜き取り、 1631 それを左側にあった曹操からの降伏勧告に振り下ろした。 竹簡は容易く砕かれ、机はそのまま真っ二つとなる。梃子の原理で 我等は盟友劉備と北郷 宙を舞う一刀達からの共闘要請。彼女はそれを掴み取り、高々と宣 言した。 抗戦なり‼ 以後、降伏を少しでも口にする者は如何 ﹁我はここに上意を下す‼ 一刀と共に曹操を討つ‼ なる者であろうが、この机と同じ運命を辿ることになるであろう‼ ﹂ 彼女が選んだのは徹底抗戦。降伏して無駄に生きるよりも何かの為 に死ぬことを選んだということだ。 だが俺はこの結果を予測していた。辺りからは武官からの歓声が飛 び、逆に降伏を考えていた文官達は落胆していた。 > ﹂ 総員完全武装の状 こんな腰抜け連中は放っておいて無線機を取り出す。 聞いていたな⁉ 了解です中佐‼ いつでも出撃できるように準備をしておけ‼ ﹁ウルヴァリンから全部隊‼ 態で待機‼ <こちらヴォルグシャンツェ‼ シャンツェに出撃準備命令を発すると雪蓮を見る。 ﹂ ﹁ライル、貴方に一計を任せる。いいわね?﹂ ﹁了解した雪蓮⋮⋮美花﹂ を使うぞ‼ ﹂ 例のもの ﹁は⋮はい⁉ ﹁ そういうと暫くしてから軍議は終了。各自は戦の準備をする為に持 ち場へと戻る。 1632 交渉失敗を知った曹操はすぐさま荊州より大船隊を出動させ、呉に 対して進軍を再開。対する呉蜀連合軍も水軍を纏めて決戦の地へと 向かう。 その場所は⋮⋮⋮⋮⋮⋮ ⋮⋮⋮⋮赤壁。 1633 第207話:Surrender or Resistance ︵後書き︶ 呉蜀連合軍と魏軍。兵力差が存在している連合軍に勝ち目がないよ うにみえる。だが彼等には秘策がある。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re その準備の為にライル達は行動を開始する。 次回 [信念の名の下に] 運命を分ける赤壁が聳え立つ。 1634 第208話:信念の名の下に︵前書き︶ 赤壁開戦直前。ライルは一刀に自身の信念を聞かせる。 1635 第208話:信念の名の下に 徹底抗戦⋮⋮⋮。それは余りにも無謀な決断に見えた。 曹操軍兵力50万に対して呉蜀連合軍の総兵力は28万弱。一応は 数日前に荊州を追われた劉琦率いる水軍残党も劉備軍に合流したが、 それでも気休め程度にしかならない。 一見すれば曹操軍の勝利を予感させるが、俺達は負けることなど考 えてはいない。寧ろ勝利するための策を巡らしている。 ﹂ そして開戦を決意した俺達は急ピッチで兵員や物資を連合軍の駐屯 資材も同じだ‼ 地が設けられた樊口に集結させていた。 ﹁武器弾薬の積み下ろしを急がせろ‼ ﹂ ﹂ ﹁通信司令所の設営は完了か⁉ ﹁誰かこっちを支えてくれ‼ 連合軍駐屯地の一画であるウルフパックのスペースでは急ピッチで 設営が行なわれていた。作戦司令部に指揮所、弾薬庫にバンカーが 設けられ、まるでベトナム戦争時代のアメリカ軍FOBだ。 俺は来客として赴いた一刀をテントに案内し、机を挟んで対談をし ていた。 ﹁⋮いよいよ来たな﹂ ﹁えぇ⋮いつかは来ることでしたから覚悟をしていたつもりでした けど⋮兵力差は歴然ですね﹂ ﹁あぁ。敵は新野城から軍を進出させて江陵で友軍と合流。そこで 1636 大規模な水軍船団を待機させているらしい﹂ この情報は昨日オスプレイからHALO降下を実施したハンター3 により齎されたものだ。 その情報を確認すると今度は机に敷かれている地図を見る。 ﹁まだ出港していないらしいが、それも時間の問題だ。こっちの分 析官からの報告ではこの一週間以内に動き始める﹂ ﹁やっぱり⋮速度を計算にいれたら会敵地点は赤壁⋮﹂ ﹁どこまで運命は皮肉なんだろうな?﹂ ﹁だけど予測なら出来ますね。仮に曹操が敗走すれば烏林に陣を張 り、そこから陸路で江陵へと引き返し、樊陽から新野へと向かう可 能性がありますね﹂ ﹁抑えるとしたら烏林なんだろうが、難しいだろうな。立地条件敵 にはこちらが不利だ﹂ ﹁なんでですか?⋮⋮って、大体は分かりますけど⋮﹂ ﹁風向きだ。この時期だったら赤壁周辺は北風が吹いている。そん あれ もありますからね﹂ な状況で火矢なんか使ったりしたらこっちが危ない﹂ ﹁それに ﹁分かってるさ⋮あんなことは俺も見たくない﹂ だ。 俺が見たくないと口にしたのは祭殿⋮⋮黄蓋による偽りの降伏 苦肉の策 たしか周瑜に自らの身体に棒打ちをさせ、離反させるだけに充分な 状況を作り出して曹操軍に降伏。 その後、諸葛亮による祈祷で東南の風が発生したと同時に船団に火 を放ったと言い伝えられている。 つまりこのままいけば2人は確実に仲違いを演技し、祭殿の身体が 傷付けられる。そして下手をすれば祭殿が死ぬ可能性だってあるの 1637 だ。 そんな危険を彼女には犯せたくはない。それにもし彼女が傷付いた ら間違いなくサイファーがショックを受ける筈だ。 ﹁俺も見たくありませんからね。ライルさん達が家族と思っている なら俺達にとっても家族みたいなものですから⋮⋮﹂ ﹁そうだな⋮⋮話は変わるが、そっちの持ってきた策とはなんだ?﹂ ﹁恐らくはライルさんと同じです⋮⋮⋮これです﹂ そういうと一刀は掌を見せてくる。同時に俺も掌を見せる。そこに 書かれているのは⋮⋮。 Fier ﹁⋮やっぱり同じ考えですね﹂ ﹁あれにはこれが一番だろうから﹂ ﹁それで実行出来たらライルさんの機甲部隊と航空隊の支援で﹁い や⋮⋮今回は使わない﹂⋮え?﹂ 俺の言葉に一刀は呆気に取られたようだ。 ﹁⋮⋮使わないって⋮⋮なぜですか?﹂ ﹁この戦いでは⋮銃火器を除いた戦車やヘリは使わない。使うとし たらボートくらいだ﹂ ﹁なぜ?﹂ ﹁⋮⋮この戦い⋮⋮俺達には別の目的ぐあるからだ。一つは天界の 兵器と呼ばれている戦車やヘリを使わなくても孫呉は魏に劣らない と思い知らさせること。あれが存在するだけで敵にとっては脅威そ のものだからな﹂ 1638 ﹁そ⋮それは分かります﹂ ﹁もうひとつは⋮⋮曹操の目を覚まさせてやる﹂ ﹁目を⋮⋮⋮ですか?﹂ ﹁そうだ。今の曹操は内心でかなり焦っている。君と雪蓮に対する 暗殺未遂や呉蜀との度重なる敗戦。今は落ち着いたようだが魏内部 では曹操に対する不信感が募っているらしい﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁曹操は自らの覇道の為に強行策をしてきている。だが気が付いて いない﹂ 魏 という国は大きくなり過ぎている。このままでは民 ﹁何をですか?﹂ ﹁既に は疲弊していき、そこから再び漢王朝腐敗が始まり、やがては無限 に同じことが繰り返される﹂ 確かに魏は強大になり過ぎている。もはや1人の王では制御しきれ ない位に強くなり過ぎ、そこから生まれるのは民の不満。 やがてそれが蓄積されていき、最後には何かのキッカケで爆発して 再び乱世が始まる。 ﹁だから今回は使わない。使ってもいいのは銃火器やボート。あと は俺達呉と君達蜀が力を合わせて魏を撃退させ、最終的には話し合 いに持ってこさせる﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮天下三分の計⋮ですね?﹂ ﹁そうだ。あれこそがこの国に平和を齎すと確信した。だから何と してもこの戦⋮負ける訳にはいかない﹂ ﹁⋮⋮ライルさん⋮⋮﹂ ﹁それが俺の⋮信念だ﹂ ﹁信念⋮⋮⋮ですか⋮⋮﹂ ﹁もっとも⋮雪蓮と平和な世の中を一緒に暮らしたいというのもあ るんだがな﹂ 1639 そういいながらスリングにHK416を繋げてテントを後にする。 少ししてから一刀も俺の後に付いて来る。 みんなが笑って暮らせる 雪蓮や桃香、そして曹操。目指す先はみんな同じだが道が違う。そ を実現させなければならない。 して俺は雪蓮を選んだ。だから彼女の 世界 だからこの戦いでは負けは許されない。 それが俺の信念だから⋮⋮⋮⋮⋮。 1640 第208話:信念の名の下に︵後書き︶ 50万もの大軍勢で進軍する曹操軍。自身の船に乗船している牙刀 海兵隊の誇り,Re を船尾で凪が見つける。彼から聞かされる不安や迷い。凪がそこで 真・恋姫無双 感じるのは⋮⋮⋮。 次回 [駆け抜ける龍] 穏やかな心が龍を支える。 1641 第209話:駆け抜ける龍︵前書き︶ 龍を支える凪。彼から自身の不安を聞かされる。 1642 第209話:駆け抜ける龍 再び動き出した華琳様。この国に泰平を齎す為に孫策とライル殿が 待ち受ける呉に進軍を再開させた。 こちらの電撃戦で呉軍は敗走。無事に寿春と揚州一帯を制圧した。 しかしすぐに軍備を纏めた呉軍は孫策を中心に赤壁と呼ばれる場所 に大規模な水軍を向かわせたらしい。 そこで華琳様は一気に決着を着ける為に荊州水軍の全てを導入して 大規模船団を構成。そのまま赤壁へと展開した。 私も隊長が指揮する船の廊下を歩いていた。 ﹁すまない、少しいいか?﹂ ﹁あっ、副長﹂ ﹁隊長を何処かで見なかったか?﹂ ﹁隊長ですか?確かに船首でお見かけしましたが⋮﹂ ﹁そうか。すまない、作業を続けてくれ﹂ 船内で作業をしていた兵に隊長の居場所を聞き、私はすぐに船首へ と向かう。 敵よりいち早く展開できた我が軍だが、中原出身の者たちは船に慣 れておらず、船酔いする兵が後を絶たなかった。そこで桂花様はこ の辺りの漁師達に解決策を聞き出し、船と船を鎖で繋いで陸みたい にした。 これで波が来ても微動しかせず、船酔いする者たちは激減した。 先程の兵はその保守点検にあたっていたのだ。 1643 私が船首に続く扉を開けるとそこにお姿があった。船首の淵に腰掛 け、月を眺めている隊長のお姿だ。いつもは束ねている銀色の髪を 下ろし、黒い鎧と共に月明かりが反射して幻想的だった。 暫く見惚れていたがすぐに戻って隊長に話しかける。 ﹁隊長﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮隊長?﹂ ﹁んっ⋮⋮凪か?﹂ ようやく気が付いた隊長は私に振り向いたが、どこか思い悩まれて おられるようにも見えた。 ﹁隊長⋮⋮どうかなされましたか?﹂ ﹁なにがだ?﹂ ﹁隊長⋮いつもの悪い癖が出ておられます﹂ ﹁癖?﹂ ﹁はい⋮⋮隊長はなにか悩まれると必ず髪を下ろされます﹂ そういうと隊長は自分の髪を触る。そして軽く私に微笑んでくれた。 ﹁⋮⋮⋮本当だな﹂ ﹁どこかお身体でも?﹂ ﹁いや⋮⋮ただ少し考え事をしていてな⋮﹂ ﹁考え事⋮ですか?﹂ ﹁あぁ⋮⋮随分と私は遠くに来たと⋮⋮⋮それまでに散って行った 同胞のことを思ってな⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮はい。これまで付き従って残ったのは自分と沙和と真桜の みとなってしまいました﹂ 1644 これまで私達は数多くの部下を失った。そして先日の寿春攻略戦で 私達と同じ位に長く付き従っていた部下が散った。 ﹁⋮⋮⋮凪⋮これでよいのか?﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁私は⋮多くの犠牲の上に立っている。指揮する者としての宿命な のは分かっている。だが⋮⋮﹂ そういいながら隊長は立ち上がる。 ﹁⋮死んでいった部下が私のことをどう思っているのか⋮不安なの だ﹂ ﹁不安⋮ですか⋮⋮﹂ ﹁あぁ⋮私は彼等を生きて故郷に帰してやると約束した。だが彼等 は帰れなかった。約束を守れなかった私を恨んでるだろうか⋮⋮そ れとも呆れているか⋮﹂ ﹁隊長﹂ ‼ ﹂⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮私もいずれは彼等の下に行くことになる。その時に私は彼 等からの仕打ちを受けなくてはな﹁隊長‼ 隊長の悲しそうな表情に我慢できず、背中に力強く抱き付いた。 ﹁隊長⋮⋮どうかそれ以上は言わないでください⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁私は⋮⋮散って行った者達が隊長を恨んでいるとは思えません⋮ そうでも無ければ隊長について来る筈がありません﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁死んでいった部下達も⋮天で隊長を見守ってると思います⋮⋮そ れに私も⋮﹂ 1645 ﹁⋮⋮﹂ ﹁私も⋮⋮⋮隊長だからこそ隊長に着いてこられて来たのです⋮﹂ ﹁⋮⋮そうだな⋮⋮私は⋮ただ⋮駆け抜けるだけだ﹂ それだけいうと隊長は振り返り、優しく私を抱き締めて来た。 ﹁た⋮⋮隊長⋮﹂ ﹁すまん⋮余計な心配をかけてしまっていたな⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮本当です﹂ ﹁凪⋮⋮この戦⋮勝つぞ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮はい﹂ 私も隊長にしっかりと抱きつき、隊長も私をしっかりと抱き寄せて きた。その隊長の温もりを感じ取る為に暫く満喫する。 そして翌日、我が軍の前方に呉蜀連合船団が確認された⋮⋮⋮⋮。 1646 第209話:駆け抜ける龍︵後書き︶ 何とか赤壁に布陣した連合軍。だが既に有利な場所は曹操軍に抑え られており、先手を打たれていた。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re そこで敵の戦闘力を少しでも削る為に一刀と飴里は奇策を繰り出す。 次回 [ハットトリック] スターダストメモリーにてガトー少佐とカリウ 赤壁の奇策、ここに実現。 *台詞のネタ ガンダム0083 ス軍曹の会話をベースとしました。 1647 第210話:ハットトリック︵前書き︶ 一刀による逸話の体現。着実に勝利への布石を固めてゆく。 1648 第210話:ハットトリック 遂に到来した蜀呉連合軍と魏軍による決戦 赤壁の戦い 。いま の段階では赤壁の北側に曹操軍の大船団が布陣し、俺たち連合軍は 南側に布陣。兵力差もある上に気候条件も北風を追い風としている 向こうが有利な状況だ。 だけど魏軍に動きは見当たらず、少数の斥候と警備隊による小競り こちらの動きを伺っている 合いはあったものの本格的な戦闘には発展していない。 このことを朱里達に話すと結論は だ。 ある船 に乗り込んで長江 だったらこっちはその行動を逆手に取って敵の戦闘持久力を少しで も削ぐ為に行動を開始。俺と飴里は を進んでいた。 ﹁もうすぐで曹操軍の前衛と接敵するね?﹂ ﹁あぁ、幸いにもまだこちらの動きには気付いていないみたいだよ﹂ 船に揺られながら船内で酒を飲む俺と飴里。周りには竹や枝でしっ かりと固定された大量の藁。それは船内だけではなく船全体を原型 が分かる程度まで包まれた船だ。 はたから見れば何の船なのかは分からないが、俺達にとってこれは 策をなし得る為に必要な一手の一つだ。 ﹁月明かりしかない上に濃霧だしね。これで気付かれてたらそれこ 1649 そ俺達に天命はなかったってことだよ﹂ ﹁そうだね。だけどよくこんな手段を考え出すね﹂ ﹁そうかな?別に俺じゃなくても飴里や朱里達だったら少し考えた ら出てきそうだけど⋮﹂ ﹁いや⋮確かに俺も敵の戦力を減らすやり方を幾つかは用意してた けど、流石にこんな大胆な策は考えられなかったよ。風向きと様子 見を逆手に取って敵の弓矢をごっそり戴くなんて⋮﹂ 俺が提案した策とは、かつて赤壁にて諸葛亮が周瑜からの依頼であ る10万本の弓矢をたった3日で揃えた逸話をそっくりそのまま利 用した策だ。 ﹁確かにかなり大胆だけど、この策は孫策達の次の策をする為の足 掛かりになるからね﹂ ﹁いま曹操水軍を指揮しているのは元荊州水軍の蔡瑁だ。奴がいな くなれば水軍の指揮能力は大きく削がれる﹂ ﹁何万本もの弓矢を無駄に使ったとなると曹操は確実に怒る筈だか ら、更迭か処断は免れない⋮⋮ちょっと可哀相だけど⋮﹂ これが普通の真面目な将だったら哀れに思えるけど蔡瑁なら話は別 だ。なにしろ奴は桃香と桃香の従姉妹にあたる劉琦を殺そうとした だけではなく、荊州の民を苦しめていた輩だ。 そんな奴に憐れみなんか感じる必要はない。傍に置いている心龍双 牙を軽く触れながら話していると、船尾にいた操舵手が歩み寄って 来た。 ﹁北郷様。そろそろ頃合いになります﹂ ﹁うん、分かったよ。じゃあ予定通りにお願いするよ﹂ ﹁御意﹂ 1650 それだけ伝えると操舵手は持ち場に戻っていき、少ししてから外か ら銅鑼の音が鳴り響く。これで敵にこちらの存在が知られることと なるが、こうでなければ話にならない。 銅鑼の音で曹操軍は警戒態勢に入り、甲板ではこちらの弓兵も各小 隊長の指揮で攻撃体制に入る。そして先取を魏軍に向けたまま、弓 兵隊は一斉に曹操水軍へと矢を放つ。俺はその一部始終を小さな覗 き窓から眺めていた。 ﹁⋮やっぱり北風でこっちの弓矢は一切届かないか⋮﹂ ﹁一刀君、そろそろ閉めた方がいいよ﹂ ﹁分かってるさ飴里。弓兵も船内にすぐ退避させて﹂ ﹁了解﹂ 飴里もすぐに甲板の弓兵を船内ぬ退避させる。他の船でも同様の行 動が行なわれ、甲板に残ったのは弓矢の鹵獲に欠かせない藁の束に でまかせの弓を括り付けた案山子。 そして退避が完了した直後、曹操軍からの反撃が開始される。前衛 の船団より雨のような弓矢が一斉に降り注がれ、瞬く間に案山子と 藁の束はハリネズミみたいに矢が突き刺さっていき、瞬く間に船首 は弓矢だらけとなる。 ﹁よし、じゃあ右旋回の銅鑼をお願い﹂ 弓矢が降って来なくなったことを確認したら次は船を右旋回させて 矢が突き刺さっていない箇所を向ける。 魏兵からしたら再び矢を射ると勘違いするだろう。それを表すかの ように間を置かず再び矢が雨のように降り注ぎ、次から次へと突き 刺さる。 1651 あとはこれをもう一回だ。今度は船体を左側面に向けて銅鑼を鳴ら し、魏兵に攻撃させる。 これで前と左右には矢がこれでもかと言わせる位まで突き刺さった 状態となり、これ以上は怪しまれる危険性があったので、俺達は1 人の死者も出さないで悠々と連合軍本陣へと帰還した。 これを3日連続で実施し、突き刺さった弓矢を全て200本ずつを 纏めて集計した。 幸いにも殆どがそのまま利用できる状態であり、その数は予定数値 を上回る101,200本。これで俺達の戦闘持久力は高まり、逆 に10万本以上の弓矢を使った魏軍は前衛での戦闘持久力が低下し た。 加えて周瑜による彼女と旧知の仲である蒋幹を利用した離間の計に 加えて、あえて一隻を曹操軍に流れ着かせたことにより蔡瑁と同じ 役職の張允が曹操の怒りにより首を刎ねられた。 ⋮⋮⋮⋮。 赤壁の戦い は着実に進んでいる。後の 2人の処断により水軍の指揮系統に少なからずダメージを与えると いう第1段階は完了。 風 俺とライルさんの描く 問題は 1652 第210話:ハットトリック︵後書き︶ 一刀と冥琳の連携により魏軍の指揮系統にダメージを与えることが 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 叶った。両軍による睨み合いが続く中、作戦は第2段階へと移行す る。 次回 [前哨戦] 呉蜀と魏の戦い。火花は突然生まれる。 1653 第211話:前哨戦︵前書き︶ 魏による電撃戦。アレックスのB中隊も防衛ラインを死守する。 1654 第211話:前哨戦 一刀達の方は上手くいったようだ。ハンター3からの報告によれば 水軍の指揮官であった張允と蔡瑁が処断され、現段階でまだ後任者 が決まっていないとのことだ。 まさか正史の諸葛亮が成し得たとされる逸話の一つを完璧にまでや り遂げるとは思わなかったが、それでも敵の指揮系統にダメージは 確実に与えられた。 に 連環の計 、それに 大火計 。指揮系統を 指揮系統への攻撃はこれで達成され、現段階で残っている難題は 東南の風 攻撃できても残り3つが機能しなかったら俺達の敗北は決まってし まう。 諸葛一族奥義 というのが仕上れば猛反撃に打って出られ だが既に下準備はできている。後は朱里ちゃん、千里、夏雅里ちゃ んが る。 俺達は魏軍の動きを警戒して前衛の船団で指揮を執っていたが、曹 Mod1を背中に背負いながらMk153 ﹂ SMAW− 操軍の一部がこちらに向かって来ているとの報告を受ける。 Mk46 NEで敵小型上陸艇を片っ端から撃沈していく。 ﹂ ﹂ まだ来るぞ‼ 水際で確実に撃沈しろ‼ くそっ⁉ ﹁奴等に取り付かれるな‼ ﹁17隻目撃沈‼ ﹁船首に連弩を載せた奴を優先して叩け‼ 俺の指揮するB中隊は担当区画の右翼を担っている。中央には相棒 のA中隊と雪蓮殿率いる孫策軍本隊、左翼にはレオンのC中隊だ。 1655 孫呉海兵隊と水軍は他の地点で攻撃開始までの間は出陣が不可能。 だからこの部隊は俺達だけで対処するしかないのだ。 SMAWの空チューブを取り外し、新しい弾頭チューブを装着させ て照準を向かって来る敵船に合わせてNE弾頭をぶっ放す。 ﹂ 射程内に飛び込んできた 動きが止まりません‼ 露檮は足が遅い‼ ﹁更に後方より敵小型船多数‼ ﹁弾幕を絶やすな‼ ﹂ 戦死者はありませんが負傷者多数‼ ﹂ 第4分隊損害大‼ 奴等を一網打尽にしろ‼ ﹁少佐‼ 救援要請が来ています‼ ﹂ 大至急増援を寄越 前方に敵船多数‼ 第5分隊を連れて第4分隊の支援に回れ‼ ﹂ ﹁軍曹‼ ﹁了解です少佐‼ こちらアイアンマン‼ 分隊続け‼ ﹁オーバーロード‼ ﹂ 現在広範囲で魏軍の 火力が不足していてこのままでは上陸される‼ してくれ‼ 無理です少佐‼ 陸路からも魏軍の奇襲でサイクロプス隊が <こちらオーバーロード‼ > 猛攻を受けています‼ 対応しています‼ > オーバーロードからウォーハンマー‼ 座 座標アルファロメオ6−5−2−6−0−8 ﹂ ﹁なら火力支援だ‼ に迫撃砲を頼む‼ <それなら可能です‼ 砲撃開始‼ > 座標アルファロメオ6−5 標アルファロメオ6−5−2−6−0−8に火力支援‼ 効力射‼ <こちらウォーハンマー指揮官了解‼ −2−6−0−8‼ HQに待機しているウォーハンマーが後方よりM224で阻止砲撃 を実施。砲弾が次々と船団に降り注ぎ、直撃を受けた船はそのまま 沈没していく。 SMAWを置いてMk46を向かって来る先登に照準するとトリガ 1656 側面を突こうとしています‼ ﹂ 数は凡そ ﹂ ーを引いてそのまま木片と変える。未だに向かって来る露檮に攻撃 を加えるが何かがおかしい。 ︵おかしい⋮⋮奴等にしては安直過ぎる⋮︶ どこから現れた⁉ 敵の強襲部隊が出現‼ 心の中で不自然だと感じていると、部下が慌てて報告しにきた。 ﹁少佐‼ ﹁くそっ⁉ ﹂ ﹁奴等撃沈した船を盾にしながら回り込んだようです‼ 20‼ 不意打ちのようだ。俺達の隙を突く為に前衛部隊の一部をぶつけて ﹂ ﹂ 一気に殲滅するぞ 来て、その間に赤馬で側面に回りこむつめりのようだ。 ﹂ こいつら全部囮か⁉ ﹁少佐⁉ ジャベリンはあるか⁉ ﹁くそっ⁉ ﹁伍長‼ いつでも撃てます‼ 上陸されたら厄介だ‼ ﹂ ﹁はい‼ ﹂ ﹁すぐに持って来い‼ ‼ そう指示すると特技兵の伍長は物資の中からFGM−148Bジャ ベリンを担いで来て、赤馬がいる方角にしゃがむと操作を開始する。 ﹂ 敵の先頭にレーザーファインダーを照射してミサイルに情報を送り 込む。 ﹂ いけます‼ 撃て‼ ﹁目標ロック‼ ﹁よし‼ 1657 発射ボタンが押されてミサイルチューブからミサイルが発射される。 ジャベリンには2種類の攻撃パターンがある。目標目掛けて一直線 And F に飛来するダイレクトアタックモードと、目標の真上より急降下す るトップアタックモードの2種類だ。 更にジャベリンは射手の誘導ではなく完全なFier orgetが採用されていて、ミサイル発射後はミサイルが自動的 に目標へ飛来していく。 そして今回はトップアタックモードにしており、ミサイルは射出さ れてから少し離れるとロケットが点火し、そのまま急上昇。高度1 50mに達すると急上昇を開始し、そのまま一気に目標の赤馬に命 いい腕だ‼ ﹂ ⋮ぐはっ⁉ ﹂ 中。それを中心に周囲の赤馬にも爆風や破片で損害を与えられた。 ﹁目標命中‼ ﹂ ﹁続けて撃ちます‼ ﹁伍長⁉ 新しいミサイルチューブに交換し再び攻撃しようとした直後、伍長 の右肩に弓矢が突き刺さった。 ﹂ 俺はMk46を乱射しながら急いで伍長に駆け寄る。 ﹁大丈夫か伍長⁉ お前は後方に下がれ‼ ﹂ ﹁いてて⋮くそ⋮⋮右肩をやられました⋮﹂ ﹁ここは任せろ‼ ﹁す⋮すみません﹂ そういうと伍長は右肩を抑えながら後方へと下がる。俺もすぐに伍 長のジャベリンを手に取り、残りの赤馬に照準を合わせると発射ボ タンを押した。 1658 発射されたミサイルはトップアタックで目標の赤馬へと飛来してい ﹂ き、そのまま命中。うまく排除することに成功した。 ﹁敵強襲部隊撃破‼ これで敵の不意打ちを防ぐことが出来た。ジャベリンをその場に置 いて残りの敵にMk46で攻撃を加え、やがて強襲が失敗したこと に気が付いた敵船団が退却を始めた。 ﹂ 敵が引き上げて行きます‼ ﹁少佐‼ 敵の船団が退却を開始‼ ﹂ > ﹁アイアンマンからオーバーロード‼ 撃退した‼ <了解ですアイアンマン‼ out‼ 負傷者28 アイアンマン こちらの弾薬は底を尽きかけている‼ 戦闘力が低下するも継続は可能‼ ﹁報告する‼ 名‼ ﹂ 報告を終了させると俺はMk46に新しいマガジンBOXに交換さ せる。 前哨戦は連合軍が魏軍を撃退したことにより終結したが、こちらも 損害は大きかった。何しろ俺達にも50人近くの負傷兵を出し、水 軍にも軍船が何隻が撃沈されてしまったからだ。 結果は痛み分け。 もしこの状況が続くようであれば持久戦でこちらが敗北する。 切り札 はまだ敵に知られていない。 一途の不安を感じながら俺達は部隊を再編成し、防御態勢を構築さ せる。だが俺達の その時が来るまで何としても防衛ラインを死守してやる⋮⋮⋮⋮⋮。 1659 1660 第211話:前哨戦︵後書き︶ 戦局は膠着状態に陥っていた。両軍前哨戦で損害がある部隊の再編 に努め、偵察を中心に動いていた。 そこで千里と朱里、夏雅里達はある準備を始める。 海兵隊の誇り,Re この先に待つのは勝利か? 真・恋姫無双 それとも敗北か? 次回 [朱千夏] 諸葛3兄妹、心を一つにして奇跡を起こす。 1661 第212話:朱千夏︵前書き︶ 諸葛一族が戦場に奇跡を起こす。 1662 第212話:朱千夏 赤壁での戦いは膠着状態に陥っていた。数で勝る魏軍は各地で攻撃 を繰り返しては退却。連合はそれに防戦で撃退。 一見すれば俺達が優勢に思えるが、実際にはその真逆で状況は日々 俺達が劣勢へと追い込まれている。もしこの状況が続くなら先にこ ちらが息切れを起こし、やがては敗北する。 それが例えライル将軍達であっても全ての戦場を賄うことなど不可 能。だから俺達には決定的な乾坤一擲の秘策と奇策が必要だ。 だけど俺にはそれを可能にすることが出来る手段が残されている。 ﹂ 俺は主戦場から約8里ほど離れた場所にいた。 ﹁朱里、夏雅里。準備はいい?﹂ ﹁は⋮はわわ⋮⋮だ⋮大丈夫です⁉ ﹁ふわわ⋮お⋮お姉ちゃん⋮緊張しゅるでしゅ⋮﹂ 俺と妹である朱里と夏雅里は寺の一画を和尚から借りて、そこに祭 壇を設けた。 俺達の服装だが、いつもの格好ではない。白が強調され、恰も巫女 。 白 や神主を彷彿とさせる。この服は諸葛一族より代々受け継がれる祈 祷装束。 。 雷光羽扇 雀羽扇 。 更に手にはそれぞれ羽扇があり、白が基調の朱里が持つのが 羽扇 夏雅里が持つ黄色基調の羽扇が そして俺が持つ孔雀の羽を使った羽扇が 1663 そして俺達の中央に置かれている祭器からは火が燃え上がり、辺り 一面を照らす。 ﹁ライル将軍達が必死に防衛線を死守してる。だから俺達もここで 失敗する訳にはいかない﹂ ﹁は⋮はい。この策は私達の祈祷で勝敗が決まります。ご主人様が 一生懸命になって策を成功させたのに、私達が失敗するなんてこと は許されません﹂ ﹁ふわわ⋮⋮だ⋮大丈夫でしょうか?﹂ ﹁どうしたの夏雅里?﹂ ﹁だ⋮だって⋮⋮わたし⋮お姉ちゃんやお兄ちゃんみたいに失敗ば かりしちゃいましゅから⋮⋮も⋮もし失敗しちゃったらって考えて しまいましゅ⋮⋮﹂ そういいながら被っている帽子を深く被って視線を下にずらす夏雅 里。この子は昔から奥手で自信が持てずにいた。 失敗するのが怖い。 みんなが傷付くことが怖い。 そんな気持ちを秘めた優しくて可愛らしい妹だ。俺は軽く笑いなが ﹂ らしゃがんで夏雅里を優しく抱きしめてあげる。 ﹁ふわわ⁉ ﹁大丈夫だよ夏雅里﹂ ﹁ふぇ?﹂ みんなが傷付いちゃうかもしれない ってことだよね?﹂ ﹁大丈夫。俺達なら必ず成功させられる。夏雅里が心配に思えるの は、 ﹁⋮⋮︵コクリ︶﹂ 1664 ﹁大丈夫⋮⋮みんななら必ず無事に帰ってくる。なんせ俺の自慢の 妹達が祈るんだから⋮⋮絶対に神様にも祈りが届く﹂ 出来るだけ安心させるように頭を撫でながら話しかける。 ‼ ﹂ ﹁だから夏雅里も自信を持って⋮⋮お兄ちゃんが付いてるから⋮⋮ ね?﹂ ﹁⋮⋮⋮はい。頑張りましゅ‼ 噛みながらも先程とは打って変って気合が入った返事をする夏雅里。 ‼ ﹂﹂ じゃあ始めよう‼ ﹂ 思わず抱き締めたくなったが何とか耐えた。 ﹁よし‼ ﹁﹁はい‼ 俺達は祭器を中心に3方向に分かれる。そしてそれぞれ羽扇を胸の 前に持ってくると目を瞑り、祈りを始める。 ﹁この地に眠る古代よりの神々よ。我等の願いを聞きたまえ﹂ ﹁我等の同胞を護る盾を我等に与えん﹂ ﹁我等の同胞に勝利の剣を我等に与えん﹂ ﹁龍脈より舞い上がり、そのお力を我等に貸し与えられん﹂ 3人の祈りが進むにつれて、祭壇より燃え上がる炎が更に強くなっ てゆく。 ﹁どうか我等に味方を守護するが聖なる風を⋮⋮﹂ 朱里が祈ると炎が舞い上がり⋮⋮。 1665 ﹁どうか我等に突き進む導きの風を⋮⋮﹂ 夏雅里が祈ると炎が猛り⋮⋮。 ﹁どうか我等に薙ぎ倒す勇猛の風を⋮⋮﹂ 俺が祈ると炎が走る。 そうしながら祈りを続けていると変化が訪れて来た。先程まで吹い ていた北風がまるで渦を巻くように吹き始め、まるで方角を決めよ うと様々な方角けら吹いてきているのだ。 ﹁我等諸葛一族の名のもと⋮﹂ ﹁どうか我等に⋮﹂ ﹁東南よりの風を⋮﹂ ‼ ‼ ﹂﹂﹂ そして仕上げとばかりに俺達は同時に羽扇を高く掲げた。 ﹁﹁﹁我等に東南の風を吹かしたまえ‼ それと同時に炎が今までによりも猛々しく燃え上がり、やがて落ち 着くと風は止まった。そして暫くしてから訪れた変化に俺達は驚き 上手くいったでしゅ‼ 風が⋮⋮風が吹きました‼ ‼ ‼ ﹂ ﹂ を隠せなかった。 ﹁お兄ちゃん‼ ‼ ‼ ﹁しゅごいでしゅ‼ ﹁あぁ⋮⋮やった⋮風が⋮東南の風が⋮⋮吹いた⋮﹂ 後ろで朱里と夏雅里が手を取りながら喜んでいて、俺も加わりたか ったが何とか堪えて、俺はすぐに本隊がいる方向へと向いていた。 1666 ﹁任せましたよ⋮⋮ライル将軍⋮孫策様⋮⋮⋮黄蓋殿‼ ‼ ﹂ これで俺達の役目は終わった。後はみんなの活躍でこの戦の勝敗が 決まる。 そして東南の風を用いる次の一手こそがライル将軍達が考え出した 策の要⋮⋮⋮⋮黄蓋殿とサイファー殿⋮⋮ 俺は孫呉の道を切り開こうとする2人の宿将の武運を心で祈ってい た⋮⋮⋮⋮⋮。 1667 第212話:朱千夏︵後書き︶ 切り札 に乗り込む祭とサイファー。 東南の風は吹いた。これで連合の準備が整い、反撃に打って出る。 そしてライルが用意した 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 赤壁の戦いは2人の活躍に掛かっていた。 次回 [切り拓かれる道] 孫呉の宿将。一世一代の戦に赴く。 1668 第213話:切り拓かれる道︵前書き︶ 老兵の役割。若者の為に道を切り拓く。 1669 第213話:切り拓かれる道 ムジョルニア を使え> <ウルヴァリンからマイティソー︵サイファーのコードネーム︶> ﹁こちらマイティソー。感度良好﹂ <東南の風の発生を確認。作戦開始だ。 ﹁了解ですウルヴァリン。ムジョルニアを使います。マイティソー out﹂ 乗船している船にて中佐からの通信を返答すると、私はブラックベ レーを被り直して風向きを確認する。 不思議なものだ。先程まで吹いていた北風が今では東南より吹き荒 ぶ強風となっているのだから。 こいつ を使える。 蚩尤瀑布砕 を担ぎながら船首へ しかし東南の風が吹いたことで流れはこちらに向いているし、何よ りも 自らの得物であるハンマーの と向かう。そこには指揮をしている祭殿の姿があった。 ﹁祭殿、中佐から連絡がありましたぞ﹂ ﹂ これより我 待ち侘びたではないか‼ ﹁応っ。それでライルはなんと言っておった?﹂ ようやく儂等の出番か‼ ﹁はい、作戦開始ですぞ﹂ ﹁おぉ‼ それであれは使うのか?﹂ ﹁待たされた分も纏めて暴れてやりましょう﹂ ﹁応っ‼ sir!!!!﹄ 一番乗りとして敵を思う存分に叩いてや ﹁そこはお任せします⋮⋮⋮聞いての通りだ貴様等‼ ﹂ yes 等は魏軍に一発かます‼ れ‼ ﹃Sir 1670 るなよ‼ ﹁よし‼ yes ﹂ いい返事だ野郎ども‼ ‼ sir!!!!﹄ ﹃Sir 配置に就け‼ モタモタす ﹂ 私がそういうと孫呉海兵隊の各大隊から選抜された海兵隊員達がそ れぞれの配備場所へと向かう。 ﹂ 魏軍の前衛に各部署照準合わせ‼ ﹂ ﹂ いつでもよいぞ‼ ﹁針路そのまま‼ ﹁サイファー‼ ﹁左舷一番手準備よし‼ ﹂ ﹂ 攻撃用意よし‼ ﹁左舷二番手よし‼ ﹁右舷一番手‼ ﹁右舷二番手準備完了‼ 祭殿を含めた攻撃担当班の班長が大声で報告してくる。目の前に広 がっているのは鎖で繋がれた魏水軍の船団。このまま進めば衝突し てしまうがそうはいかない。 ﹂ ﹂ 私はタイミングを見計らい、やがてこちらの攻撃範囲に入ったのを ‼ 食らうがよい魏兵共よ‼ 撃てぇえええ‼ 確認して右手を振り下ろした。 ﹁0番手‼ ﹁狙い撃ちじゃ‼ 祭殿は設けてあったレバーを勢いよく弾き、同時に乗船する船から 敵軍目掛けて、あるものが放たれた。それを食らった一隻の船は船 首が木っ端微塵に吹き飛び、大穴を開けるとそのまま沈没していく。 この船に搭載されているのは小型化されたバリスタだ。そしてこの 船は中佐が考え出した孫堅級強襲攻撃揚陸一番艦[孫堅]。 1671 孫呉海兵隊の上陸支援と敵船団への中央突破、更には対艦戦闘とい う3つの優位性を一つに纏めた楼船と呼ばれる司令船ベースの新造 船で、敵船を正面から確実に撃沈出来るようにバリスタを搭載して いる船だ。 直撃を受けた敵船は鎖に繋がっていることもあり、隣同士の船を道 連れにするように沈んでゆく。 一撃で撃沈に追い込める威力に弓の名手である祭殿の腕が合わされ ば有効性は更に向上する。 だが魏軍も混乱を最小限に留めているようであり、通過するのを阻 攻撃許可‼ ﹂ 止する為にこちら目掛けて弓矢を放とうとするがそうはいかない。 ﹁左右砲撃手‼ 合図で左右に二門ずつ搭載している近接攻撃用のスリングショット が近くで生き残った船に攻撃を始める。 この兵器はバリスタと比べて射程も威力も低いが信頼性は高い上に 射出するのは魚油を使用した特性焼夷弾。 これは魚油がぎっしり詰まった壺を漏れないようにしっかりと固定 し、その周りに松明を巻きつけるという非常に簡単な構造だが、こ の時代ならば効果絶大だ。 なにせ向こうも火計で使用する筈だった魚油を搭載している。そこ に引火して攻撃を受けた何隻かは爆発を起こし沈没していっている。 敵は完全に不意を突かれたように慌て始めるが、これは事前に策を 巡らせていた結果だ。 民間人に成りすませた間者で魏軍に地方の鎖を使った固定方法を教 1672 えた 連環の計 。 東南の風 オペレー 一刀達による戦闘力低下と冥琳殿による敵指揮官の誅殺。 千里達による祈祷を用いた そして私達による敵船団への中央突破と火計。 だ。 合計4つもの計略が成して始めて成功するこの作戦は ションスペクトラムウォリアー 陸戦用意‼ 敵の懐に飛び込むぞ‼ ﹂ やがて敵船団を突破した我等は針路を魏軍の楼船へ突き進む。 ﹁総員‼ yes sir!!﹄ ﹃Sir 先程まで配置に就ていた兵士達は呉鈎一型や二型、短槍、戦斧を手 ﹂ にとって乗船体勢を整える。祭殿も多幻双弓を持ちながら蚩尤瀑布 ﹂ ﹂ ﹂ 若者達の道を切り拓くのは儂等の役目‼ 儂はみな見てきた‼ 砕を担いでいる私の隣に立ち止まる。 ﹂ ﹁サイファーよ‼ ﹁はい‼ ﹁孫呉の行く末‼ 身体中が滾って来よったぞ‼ ﹁そして勝利への狼煙を挙げるのも我等の使命‼ ﹁おしっ‼ 燃えて来よったわぁああ‼ ﹂ ﹁私もだ‼ 徐々に距離を詰める孫堅級。このままでは正面衝突はまぬがれない が、この船をぶつけて上陸出来るようにするのが役割だ。 1673 ﹁見ておれ‼ ﹂ ﹂ ﹂ ﹂ ﹁この魂の炎が‼ ﹁孫家代々の‼ ﹁我等海兵隊の‼ ﹁﹁燃える想いよぉおおおおお‼ ‼ ‼ ﹂﹂ その熱い想いを体現するかの如く、揚陸艦が楼船に衝突。その際に 敵楼船から小規模な爆発が発生し、魏兵はそれで大混乱に陥る。 私達は揚陸艦から飛び上がり、混乱した敵兵の真っ只中へと着地す ‼ ‼ ﹂﹂ る。そして私と祭殿はゆっくりと立ち上がり、闘志と気迫の全てを 乗せて口を開いた。 ﹁﹁ゆくぞぉおおおお‼ 私と祭殿は敵に気迫をぶつけ、そしてその場から駆け出す。若い連 中の行く先を切り拓く為に⋮⋮⋮⋮。 スペクトラムウォリアーは最終段階へと突入していく⋮⋮⋮⋮。 1674 第213話:切り拓かれる道︵後書き︶ 全ての策は成った。今こそ魏との戦いに決着を付ける時だ。ライル もまた最前線に向かう為に出撃するが、雪蓮がそれを引き留める。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 自らの気持ちを伝える為に⋮⋮⋮。 次回 [愛し合う者達] 2人の英雄、互いを想い合う。 1675 第214話:愛し合う者達︵前書き︶ ライルの出陣前。雪蓮に対し遂に決意する。 1676 第214話:愛し合う者達 曹操軍陣営より火の手が挙がった。サイファーと祭殿の強襲部隊が 敵船団への強襲を成功させ、前衛にあった船は次々と爆発していく。 まるで炎が自らの意志で曹操軍の船団を飲み込んでいくように見え た。 それに呼応して思春率いる水軍が一斉に曹操軍へと前進を開始。敵 船に取り付くと次々と乗り込んで制圧に掛かっていく。 俺は河岸でその光景を眺めていた。 ﹁サイファー達⋮やり遂げたようだな﹂ ﹁そうね⋮⋮敵の前衛はこれでガタガタ。火の手は中衛にまで及ん でるわ﹂ ﹁まさか全ての策が見事に大成功を収めるとは思ってなかったが⋮ ⋮敵の被害は甚大だな﹂ ﹁だけどまだ油断できないわ⋮曹操軍はまだ後方に大軍を控えさせ ている。すぐに決着を付けないと策が台無しになるわよ﹂ ﹁分かってるさ﹂ 確かに曹操軍は後方に大軍を控えているが、それに関しても対策は している。次の段階は曹操軍を封じ込めることになる。 水上からの上陸作戦は我が軍が担当し、陸路から一刀率いる劉備軍 が挟撃を仕掛けることになっている。 ﹁雪蓮、俺もすぐに出撃する﹂ ﹁⋮⋮⋮えぇ⋮ねぇライル﹂ ﹁?﹂ 1677 ﹁⋮⋮あの時の指輪⋮いま持ってる?﹂ ﹁⋮⋮あぁ﹂ ﹁お願い⋮この戦だけでいいから私に貸してくれない?﹂ ﹁⋮⋮別に構わないが⋮⋮急にどうしたんだ?﹂ 指輪を貸してほしいと頼んできた雪蓮に理由を尋ねるが、彼女は口 を閉ざした。暫く悩んだが俺は右薬指に嵌めている指輪を取り出し、 それを彼女に渡した。 受け取った雪蓮は暫く眺めながらそれを左薬指に嵌める。 ﹁⋮⋮⋮⋮.﹂ ﹁ライル⋮必ず帰って来て⋮⋮﹂ 左薬指に嵌めたことで少しだけ驚いたが、先に彼女は俺に抱き付い てきた。 ﹁⋮⋮⋮雪蓮⋮﹂ ﹁約束して⋮⋮必ず⋮必ず私の下に帰って来るって⋮⋮﹂ 次の命 の為にも⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁ 次の命という言葉で俺は思わず彼女の腹部を見る。少しだけ隙間が 出来たことにで確認されたが、無意識に彼女は右手を自分のお腹に 当てている。 更に俺の第6感でもある氣で彼女の氣に分かりにくいが俺の氣も混 ざっていた。この状態で考えられるのは一つしかない。 ﹁⋮⋮まさか雪蓮⋮﹂ ﹁︵コクリ︶⋮⋮⋮お腹の中に⋮赤ちゃんがいるの⋮﹂ 1678 雪蓮のお腹の中には赤ん坊がいる。そしてそれは俺の子供⋮⋮無意 識に俺は彼女のお腹に手を重ねていた。 すると感じられたのは俺の氣と雪蓮の氣が合わさって、別の氣が感 じられた。 俺と雪蓮の子供⋮⋮⋮思わず固まってしまっていた。 ﹁本当は⋮⋮黙っておくつもりだった⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁もしあなたが知ったら⋮戦えなくなるんじゃないかって⋮⋮帰っ て来ないかもしれないって⋮思っちゃってたから⋮⋮⋮だけど⋮﹂ そういいながら雪蓮はより強く抱き締めてくる。 ﹁だけど⋮⋮ライルに知ってもらいたい⋮いま言わなかったらもう 言えないような嫌な予感がした⋮⋮⋮おかしいよね?⋮戦いに向か う人にこんなことを言うだなんて⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮君も意外とバカだな⋮﹂ 軽く笑いながらそう言うと俺は彼女をしっかりと抱きしめる。 ﹁⋮⋮ライル⋮⋮﹂ ﹁なんでもっと早く言ってくれなったんだ?﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁俺はいま⋮⋮凄く嬉しいよ⋮自分の子供が出来ると知って喜ばな い父親なんているものか⋮﹂ ﹁驚かないの?﹂ ﹁確かに驚いたさ⋮⋮だけどそれ以上に嬉しく思うよ、君との間に 子供が出来たことをね﹂ ﹁⋮⋮私も⋮私も嬉しい⋮愛するあなたの子供を産みたい⋮⋮あな たと私の子供と一緒に平和になった時代を暮らしたい⋮﹂ 1679 そういいながら俺達は抱き合うのをやめ、互いを見つめ合う。そし て俺も意を決して前々から伝えたかったことを彼女に伝えることに した。 ﹁⋮⋮⋮雪蓮⋮⋮⋮全てに決着が付いたら⋮⋮⋮⋮結婚しよう⋮﹂ ﹁ライル⋮﹂ ﹁俺は⋮⋮君とずっと一緒にいたい⋮⋮⋮君と一緒に人生を駆け抜 けたい⋮⋮俺がいちばん愛している君とずっと⋮⋮﹂ 雪蓮の目を真っ直ぐに見詰め、優しく語り掛ける。 ﹁⋮⋮はい﹂ 涙を流したまま、雪蓮はいつもと変わらない女神の様な笑顔になっ た。 それを目の当たりにした俺の心臓が、今までにないくらい大きく跳 ねる。 彼女の表情はとてもいとおしくて気が狂いそ 笑顔はもちろん、泣き顔も見た事がある。しかし、初めて目にした 泣きながら笑う うになる。 右手で雪蓮の左手に指を絡める様にして握り、左手は彼女の腰に回 してぐっと抱き寄せる。 そしてゆっくりと目を瞑り、互いの唇が重なった。想いの全てと必 ず帰って来るという約束を載せて、彼女に伝える。 ゆっくりと唇を離した俺は無言のまま彼女から離れ、すぐ側で待っ 1680 ていた愛馬のスレイプニルに跨り、曹操軍の陣地に向かって走らせ る。 味方の船から船へとスレイプニルは飛び移りながら曹操軍陣地へと 向かっていき、味方乗員はいきなりのことで驚きはしたが、俺だと 分かると歓声を挙げながら見送った。 それを見届ける雪蓮は唇に触れながら無事を祈る。 ︵いってらっしゃい⋮⋮⋮︶ 1681 第214話:愛し合う者達︵後書き︶ 全ての策は達成された。水軍が全滅した魏軍は本陣に立て篭もり必 死の抵抗を見せる。 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 魏の熾烈な抵抗に動けずにいた武久と思春は突破口を探るを 次回 [城壁を超えろ] 現代の侍。自ら突破口を探る。 1682 第215話:城壁を超えろ︵前書き︶ 侍と鈴が血路を切り開く。 1683 第215話:城壁を超えろ 魏の水軍に対する火計は見事に成功した。既に水軍の鎮圧はほぼ完 了し、残存戦力もこちら側の水軍が掃討に向かっている。 俺が率いる海兵隊の上陸部隊第1陣と思春率いる水軍強襲部隊は後 ﹂ ﹂ ﹂ 退した敵の本陣がある烏林へと夜間強襲を仕掛けたが、敵は待ち構 敵に反撃の隙を与えるな‼ えて必死の抵抗を見せていた。 ﹂ このままじゃ狙い撃ちにされるぞ‼ あの城壁を突破すれば曹操の頸まで一直線だ‼ ﹁そのまま撃ち続けろ‼ ﹁怯むな‼ ﹁了解大尉‼ ﹁盾をもっと持って来い‼ 俺達は防柵に大盾を添えて即席の防壁を作りながら魏兵に応戦。対 する魏兵も城壁を盾にしながらこちらに弓矢や投槍、更には投石機 流石に反撃が厳しい‼ ﹂ を使ってこちらに火薬入りの火玉を放って反撃する。 ﹁くそっ⁉ このままでは作戦遂行に支 だがあの城壁を突破しなきゃどうにもならん‼ こちらの負傷者は17名‼ ﹂ ﹁大尉‼ 障が⁉ ﹂ ﹂ ﹁分かってる‼ 思春‼ ﹁なんだ⁉ ﹂ ﹂ 援護してやるから奴等を唐揚げにしてやる 余分に持って来ているからな‼ ﹁魚油爆弾はまだあるな⁉ ﹁ああ‼ ﹂ ﹁ありったけ投げろ‼ んだ‼ 1684 ﹂ ﹁言われるまでもない‼ やれ‼ 甘寧隊‼ ﹂ 敵を釘付けにして投擲 持てる魚油を敵に投げ付けて 3カウントで一斉射撃‼ ﹄ ﹁マリーンズ‼ ﹂ ﹃応っ‼ の機会を作れ‼ ﹄ 魚油に引火させろ‼ ﹃Hooah‼ ﹂ ﹁ポーは投擲後に6パックを斉射‼ ﹁了解です師匠‼ 俺と思春の指揮で敵の攻撃を防ぎながら準備をする。海兵隊でもH K416やHK417、Mk46Mod1、M27IARなどに新 ﹂ しい弾倉を送り込み、それぞれが準備する。 ⋮1‼ ⋮撃てぇ‼ ⋮2‼ ﹁3‼ ﹄ ‼ ‼ ﹃ウラァアアアアアア‼ 一斉射撃の号令で敵の城壁に多数の5.56mm弾と7.62mm 投げつけろ‼ ﹂ 弾が撃ち込まれ、その放たれた銃弾で次々と敵兵が倒れていく。 ﹁今だ‼ 敵の攻撃が怯んだのを確認した思春は部下に魚油入りの壺を投擲さ ﹂ せ、次々と城壁外部や内部に叩きつけられる。 ﹁ポー‼ ﹂ 今だ‼ ﹁喰らいやがれ‼ 魚油が散らばった瞬間、ポーは身を乗り出してM32を連射。撃ち 込まれた40mmHE弾は城壁内部や側壁へと命中して爆発。その 爆炎で魚油に引火し、辺りの敵兵を生きたまま焼き殺していった。 1685 それに加えて僅かな隙が生まれ、俺はMKA1919A1を背中に 全軍突撃‼ 前へ‼ 甘 ﹂ 我が旗を掲げよ‼ ﹂ 後に続けぇ‼ 興覇‼ ﹂ これより修羅の道 預けて愛刀の政宗を抜刀すると鋒を敵に向けた。 ﹁今だ‼ ﹁承知した‼ へと突入する‼ ﹁大尉と甘寧将軍に遅れるな‼ 俺と思春、ポーを先頭に全員が声を挙げながら城壁へと突撃を開始 する。火傷したり何とか生き残った敵兵、投石機による阻止攻撃で 被害は出るが城壁手前の急勾配となっている坂に同行していた工兵 隊がハシゴを掛けて、それを使用して兵士が次々と城壁へと上がる。 ﹂ 俺達も部下から長槍を受け取り、それを両手でしっかり掴むと⋮⋮ ⋮。 ﹂ うぉらぁああああ‼ ﹂ ﹁飛ぶぞ‼ ﹁はっ‼ ﹁そらぁあ‼ 棒高跳びの要領で地面に突き刺すと槍のしなりと反動を利用して一 気に飛び越える。 城壁内部は既に入り乱れており、敵味方がそれぞれ斬り合いをして いた。俺も敵が固まっている箇所を見つけ、飛び越える為に鞘へ納 ‼ 雷鳴 雷鳴 を繰り出す。氣が込めら ﹂ めていた政宗の柄に手を添えて氣を送り込む。 ﹁南郷流単刀心眼術二の型 流派の技である対集団戦用の型 れた斬撃で着地点にいた敵兵を切り裂いた。 1686 ﹁鈴の音色は⋮貴様等を黄泉道へと誘う道標と心得よ‼ 弔鐘 ﹂ ﹂ で敵の頭を砕き、素早さと力と技術 思春も着地したと同時に鈴を鳴らし、逆手に持った鈴音に加えて彼 女へあげたフレイル 悪いが手加減してやれねぇぞ‼ の3拍子を合わさった戦いをする。 ﹁師匠と一緒に戦えてるんだ‼ ポーは百足に氣を流し込んで強度を極限までに高め、そのまま向か って来る敵兵の頭を粉砕。 直後に七節棍と五節棍へと切り離し、五節棍で敵の足に絡ませて転 倒させてから七節棍で頭部を貫く。 俺達は次々と向かって来る魏兵を斬り伏せ、味方部隊が城門を開門 するのを援護する。やがて思春の部下が城門に取り付き、城門を開 放していく。 ﹂ そこからまだ外にいた生き残り部隊と後続が内部に突入していき、 抵抗を続ける魏兵を駆逐していった。 味方部隊が突入を開始しました‼ 負傷 Mod 後続の部隊と交代だ‼ ﹁大尉‼ ⋮思春‼ 作戦成功だ‼ ﹂ ﹁よし‼ ﹂ 者をかき集めろ‼ ﹂ ﹁分かった‼ ﹁南郷‼ ﹂ ﹂ 呼ばれた方角を見ると後続を指揮している少佐がMk46 ⋮曹長‼ これで橋頭堡を確保できた‼ 1を携行しながらこちらに駆け寄っていた。 ﹁よくやった大尉‼ ﹁ありがとうございます‼ 1687 ﹁Sir!!﹂ ﹁了解です‼ ﹂ ﹂ ﹁部隊の指揮を任せる俺と思春は少佐と共に前進する‼ ﹁任せたぞ‼ ﹂ ﹂ ポーに部隊の指揮を一任すると俺と思春はそのまま少佐の指揮下へ このままレオン達と合流してライルの支援に向かう‼ と入る。 ﹁よし‼ ﹂ ﹂ ﹂ ﹁了解‼ ﹁分かった‼ ﹁いくぞマリーンズ‼ ﹃Hooah!!﹄ 愛馬であるスレイプニルと共に別ルートより前進している中佐の下 へ向かう為にMKA1919A1を構えて俺達は前進する。 激戦の中、俺達海兵隊はそれぞれの役割を全うするために只管前へ と前進する⋮⋮⋮⋮。 1688 第215話:城壁を超えろ︵後書き︶ 上陸部隊の右翼でも激戦が繰り広げられていた。レオンと明命率い る機動打撃部隊と孫呉海兵隊第3、第4大隊は魏の精鋭である青州 兵との戦闘に突入していた。 海兵隊の誇り,Re 次々と味方が倒れていく中、レオン、明命、優龍、百合の4人は任 真・恋姫無双 務を全うさせる。 次回 [42高地攻防戦] 小さな丘を巡って両軍が凌ぎを削る。 1689 第216話:42高地攻防戦︵前書き︶ 高地奪取に赴くレオン達。そこで久々に魏の知人と対面する。 1690 第216話:42高地攻防戦 俺達はいま、魏軍が展開している右翼で激戦を繰り広げていた。 42高地 を占領するために作戦 俺が率いるC中隊と海兵隊第3大隊と第4大隊、明命率いる周泰隊 は赤壁の右翼にある小さな丘 ﹂ 倒しても倒しても切りが無いぞ⁉ ﹂ 行動をしているが、予想以上に激しい抵抗を受けて苦戦中だ。 ﹁くそっ⁉ ﹂ ﹁でもここまで来て退けないです‼ 右に敵重歩兵‼ ﹂ ﹁凌統殿‼ ﹁甘い‼ 俺達は其々の得物である龍舌と魂切、地破剛斧、飛燕で乱戦状態に て向かってくる敵兵を斬り伏せる。 事前情報によると、ここ右翼には魏軍屈指の団結力と戦闘力を有す る青州兵が展開しており、海兵隊にも引けを取らない勇猛さを有し ている。 加えて水軍が壊滅して他の部隊の士気が落ちているにも関わらず、 流石は青州兵って処 この青州兵は戦になれば士気は高まる。つまり相当厄介な相手だと 噂に聞いただけのことはあるな‼ いうことだ。 ﹂ ﹁くそ⁉ だ‼ 敵の練度に感心しつつも、俺は龍舌で向かって来る敵兵を斜めに振 り下ろして斬り捨てる。 目の前に槍を構えて刺突を繰り出して来たが身体を横に向けたこと 1691 で受け流し、間近になった敵の顔に肘打ちを浴びせて隙を作り、素 油断せずにトドメを忘れな 早くM45をCQCホルスターから抜き取って、そのまま銃口を額 に突き付けてトリガーを弾いた。 ﹄ ﹂ ﹁邪魔な敵は確実に仕留めて下さい‼ いで‼ ﹃応っ‼ 明命は俺のすぐ側で小柄の身体を駆使して素早く敵の懐に飛び込む と魂切を突き刺し、抜き取ると柄頭で顎に一撃加え、そのまま振り 下ろす。 その直後に数人が同時に槍と剣で仕掛けて来るも、近付かれる前に 黄蓋様が切り拓いた功が無駄にならぬ 脚に取り付けられている苦無を取り出し、それを敵兵に投げつける。 ﹂ ﹁敵の勢いに飲まれるな‼ よう戦い抜け‼ 優龍は地破豪斧を振り上げて敵を吹き飛ばし、隣の敵は振り下ろし 火炎豪爆射 歯向かうならば を構えてつぶて て叩き潰す。そのまま目の前にいた敵兵の顔を掴み、そのまま握り 潰すと敵集団に投げ飛ばし、手甲 を敵に放つ。 ﹂ ﹁孫呉の未来を貴様等なんかに潰させはしない‼ 容赦はしないぞ‼ 百合も負けていられないようだ。彼女は飛燕特有の多方向同時斬撃 をフル活用し、いちど敵に包囲させて多方向からの刺突を背中を反 らすことで全て回避し、飛燕の5本の刃が舞い踊るかのように敵を 切り裂く。 各人が其々の武を振るい、その甲斐もあって徐々に戦局はこちらに 1692 傾いて来ているようだ。 俺も龍舌からHK417に切り替えて離れた場所の敵を射撃してい ると、目の前に見覚えのある人物。それはかつて建業にて成り行き でチンピラから助け出し、俺が経営しているメイド喫茶にまた来る 萬成。それに波才﹂ ﹂﹂ と約束した古参兵とも言える少年達だ。 ﹁﹁レオンさん‼ ﹁やっぱり君達か⋮張 それぞれ剣と槍を構える2人。俺もHK417を背中に預けて龍舌 を構える。 ﹁元気そうだな⋮﹂ ﹁レオンさんも⋮この節はお世話になりました﹂ ﹁一応は客商売だからな。客を喜ばすのが副業の目的だ﹂ ﹁流石ですね⋮﹂ それなのに何で降伏 ﹁⋮⋮2人とも⋮大人しく降伏してくれないか?﹂ ﹂ まだ私達は負けていません‼ ﹁なにを⋮言ってるんですか?﹂ ﹁そうです‼ なんかしなきゃならないんですか⁉ ﹁もう勝敗は決まった。魏の水軍は壊滅し、既に我が軍は魏軍の内 貴方た 部にまで深く入り込んだ。勢いに乗った狼を止める手段は残されて ﹂ ﹂ 俺達にはまだ立て直せる程の兵力げあります‼ はいない﹂ ﹁でも‼ ち呉に勝ち目なんて‼ ﹁降伏するのは貴方ですレオンさん‼ 天和ちゃん達も会いたがって ﹁君達のようないい子を殺したくはない。武器を置いて降伏し、家 に帰れ﹂ ﹁そっちこそ武器を捨てて下さい‼ 1693 るんですよ⁉ ﹂ 俺達は互いに降伏するよう促すが、話は平行線のままだ。これでは 堂々巡りだと判断した俺は龍舌を力強く地面に叩きつける。 ﹁このままじゃ話は進まんな⋮⋮漢なら⋮いや⋮⋮⋮﹂ ﹂ だったら首に縄を掛けてでもあなた ‼ そういうと俺は龍舌を構え直し、鋒を2人に向ける。 ﹂ この分からず屋‼ ﹁戦士なら⋮⋮己の意思は闘いで語れ‼ ﹁くっ⁉ を連れて行きます‼ ﹂ お前は2人と共に 天和ちゃん達の為にも貴方を連れて帰ります‼ ﹂ この2人の相手は俺がする‼ ﹂ ﹁レオンさん‼ ﹁レオン様‼ ﹁来るな明命‼ ﹂ 丘周辺の敵を駆逐しろ‼ ﹁はい‼ そう指示すると2人は同時に斬りかかって来る。萬成は槍での刺突 を繰り出し、波才も一糸乱れない動きで剣を振るう。 ﹂ ﹂ だが練度は一般兵よりも少し優れている程度で、俺は龍舌を少し動 まだまだぁ‼ ﹂ ‼ かす程度で攻撃を全て受け止める。 ﹁くっ⁉ ﹁反応が遅いぞ‼ ﹂ ﹂ でりゃあぁあああ‼ ﹁ぐはっ⁉ ﹁萬成⁉ ﹂ ﹁踏込みが甘い‼ ﹁ぐわっ⁉ 1694 一瞬の隙を突き、萬成には龍舌を地面に突き刺してからの回し蹴り、 ﹁くっ⋮はっ‼ ﹂ ﹂ 波才には剣を吹き飛ばしてから頭突きからの前蹴りで吹き飛ばす。 ﹁うらぁああ‼ 今度は2人同時の連携で来たが無駄だ。龍舌を手から放し、HK4 17で刺突を防ぎ、銃口でまずは波才の腹に一撃加え、怯んだ隙に ストックで下から振り上げて顎に攻撃。 続けて萬成の左突きを防ぎ、鋒をずらすと右足を前に出して防左弾 倉攻撃で顔に打撃を与る。 顔に打撃を受けてよろめく萬成に防左側撃という横打撃で彼をその 場に倒す。 流石に今の格闘技が効いたようであり、痛みに這いずり回る2人の 得物を遠くに蹴り離すとHK417の銃口を向けてホールドアップ する。 ﹁くっ⋮くそ⋮⋮﹂ ﹁なんて⋮強さだ⋮⋮﹂ ﹁よし、そのまま動くな﹂ 額と口の切傷から少量だが血を流してこちらを見る2人だが、圧倒 的不利にも関わらず戦おうとする。 ﹁くっ⋮⋮俺達は負けてられないのに⋮﹂ ﹁天和ちゃん達が⋮3人を慕ってくれる人達笑える世界を⋮﹂ ﹁それが2人の戦う理由か?﹂ ﹁⋮⋮⋮あぁ⋮.﹂ ﹁私達はずっとそうして戦って来た⋮⋮3人の歌を⋮大陸中に広め 1695 る為に⋮﹂ ﹁歌⋮⋮か⋮﹂ ﹁はぁ⋮はぁ⋮それなのに⋮⋮なんで貴方達はそれを妨げる⁉ ﹂ ﹁⋮⋮⋮なら一つ聞きたい⋮⋮⋮お前達は彼女達の歌を広めたいと 言ったが⋮こうは考えなかったのか?﹂ ﹁﹁?﹂﹂ ﹁曹操が彼女達の歌を徴兵活動で利用しているのは聞いてる。歌は 生き抜いて、また彼女達の歌を聴きに来てくれ 確かに人を惹きつける不思議な力があるが、それで徴兵されて戦場 とな⋮﹂ に行った者達が るか? 黄巾の乱 にて黄巾党を率いた張角・張宝・ 俺の言葉に2人は言葉を失う。これまでの内部調査で天和、地和、 人和の3人がかつて 張梁だということは判明している。 彼女達の歌に不思議な力があるのなら一度聴けば彼女達のファンに すぐなるだろう。 だが今の乱世ではファンになった者達も戦場に赴き、再び歌を聴け ずに散ってゆく。歌手にとってこれほど悲しいことはない。 ﹁お前達のやっていることは歌を聴けずに死んでいく人間を増やす。 そんなこと⋮彼女達が喜ぶと思うか?﹂ ﹁そ⋮⋮それは⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁俺は君達を殺さない⋮だが曹操の覇道を阻止する。悲しみを減ら し、喜びを増やす為にな⋮﹂ ﹁悲しみを減らし⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮喜びを増やす﹂ ﹁大尉﹂ 1696 2人と話していると小隊を率いていたクラウドがSCAR−L ASVを手にして歩み寄って来た。 ﹁クラウド、周辺はどうなった?﹂ C ﹁周辺の制圧は完了。残存戦力も降伏もしくは退却していってます﹂ ある物 を持って待っていた。 辺りを見渡すと武装解除されて連行されていく青州兵。丘の頂上で は明命達が ﹁軍曹⋮2人を頼む﹂ ﹁了解です﹂ クラウドは指示を受けてMTVアーマーベストに取り付けている簡 易手錠を2人に掛け、そのまま連行していく。 それを見送ると明命達に歩み寄る。 ﹂ ﹁怪我はないか?﹂ ﹁はい‼ ﹁某もなんとか生き残りました﹂ ﹁レオン将軍、これを⋮﹂ そう言われて百合から一本の棒を受け取り、状態を確認するとそれ を地面に突き刺す。4m以上もある長い棒なので支え切れずに倒れ そうになるが、素早く3人が支えてくれた。 ﹂ それを確認した俺は頷き、4人で棒を立てる。 ﹁⋮⋮⋮任務完了だ‼ そういいながら風に仰がれて露わになる一つの牙門旗。 1697 それは 孫呉に海兵隊あり と表す象徴的な旗。 左右に雄叫びを挙げる2匹の狼に、錨を背後に描かれた呉を力強く 掴む羽根を広げた大鷲⋮⋮⋮⋮。 孫呉海兵隊の牙門旗が42高地に靡き、硫黄島を彷彿とさせる光景 は高地の戦いが孫呉の勝利で終わりを告げる瞬間であった⋮⋮⋮。 1698 第216話:42高地攻防戦︵後書き︶ 圧倒的な戦力差を覆し、勢いに乗る呉蜀連合軍の前に魏は各戦線で 総崩れとなっていた。魏軍の後方にて偵察任務を実施していたハン 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re ター3も後続の動きを封じる為に行動を開始する。 次回 [後方撹乱] 4人の精兵が大軍に挑む。 1699 第217話:後方撹乱︵前書き︶ 後方に潜入しているハンター3。掻き回す為に行動に移る。 1700 第217話:後方撹乱 ここからでも赤壁の様子がよく分かる。空を覆い尽くすように真っ 赤に燃え上がる曹操軍の水軍。更に敵本陣から聞こえて来る銃声や 雄叫びに敵兵の悲鳴。 俺達ハンター3が展開している華容山からも連合軍が戦力差を覆し CASVを傍に置き、M10 て大攻勢に転じたということは明らかだ。 俺は迷彩処置を施したSCAR−L 7A1で周辺の様子を伺っていた。 ﹁中佐達⋮派手にやってるな﹂ ﹁あぁ、見る限りでも敵水軍は壊滅して曹操軍は敗走寸前だ﹂ ﹁その追い討ちをするのが⋮﹂ ﹁俺達って訳だ﹂ 隣でスポッターを担当するハンター3−2と供に曹操軍の後軍を見 る。まだ比較的落ち着きは見せているが、前線から逃げ出す敵兵が 後を絶たなかった。 それを引き留める為に兵の首を刎る指揮官も確認でき、まるで第2 次大戦の敗走するソ連兵と共産政治指導員のようだ。 ﹁チェキスト共が⋮⋮始末するか?﹂ ﹁まぁ待て。3と4の下準備が完了したら何時でも撃っていいぞ﹂ ﹁分かっている。だがあんな奴等を見てるとどうしてもな⋮﹂ ﹁お前の共産主義嫌いは相変わらずだな﹂ ﹁ほっとけ⋮⋮<ハンター3−3から3−1>⋮こちら3−1﹂ 1701 <3−3から報告。兵糧庫および武器庫、馬車、投石車等にC4設 置完了。セーフティゾーンに退避完了> <4から1へ。敵兵舎および関門、馬小屋の扉と壁の一部にC4設 置。現在退避中> out﹂ ﹁了解した。4の退避完了と同時にC4を起爆。敵を混乱させるぞ。 ハンター3−1 3−3と3−4からの報告を受けてM107A1に初弾を装填し、 構えを直す。ナイトビジョンと併合して搭載しているリューボルト M3ライフルスコープで2人のIRストロボを探して、幸いにもす ぐ見つかった。 セーフティゾーンは俺達が布陣しているこの場所から約400m離 れた丘にある。 <こちら3−4。セーフティゾーンに到達。3−3と合流しました> ﹁了解した。吹き飛ばせ﹂ 爆破指示を出して暫くしてから関から爆発が発生。C4が次々と起 爆していき、その爆発で敵兵が吹き飛ばされ、木製の壁は崩れ、門 と投石車は木っ端微塵となる。 更には馬小屋の扉も小さな爆発で吹き飛んで、その爆発に驚いた軍 馬が一斉に逃げ出し、近くにいた敵兵を撥ねていった。 今回の俺達の任務には曹操軍に対する後方撹乱の他に陸路から機動 力を活かした劉備軍の支援も与えられている。 馬を逃がすのは敵の撤退速度を削ぎ、投石車破壊は敵の反撃能力を 奪う。門と壁を破壊したのは劉備軍が突入する為の突入口を確保す る為だ。 もうすぐで劉備軍の騎兵隊がこちらに到達することとなっている。 1702 いきなりの爆発に曹操軍は混乱していき、やがて逃げ出す敵兵が増 加。敵指揮官はそれを静止させる為に次々と逃亡兵の頸を刎ていく。 ここで追い討ちを掛けてやる。俺はその指揮官にM107A1の照 準を合わせ、射撃態勢を整える。 ﹁距離は600⋮東南からの風⋮⋮高低差⋮⋮微調整完了だ﹂ ﹁よし、好きなだけ撃て﹂ 相手を混乱させる為なので細かい調整は不要なのだが、これは長年 スナイパーをしている癖だ。 敵に照準を合わせてトリガーを弾く。50口径特有の轟音が辺りに 鳴り響き、瞬時に敵指揮官の頭を木っ端微塵に吹き飛ばした。 魏兵はなにが起こったのか理解できず只々その場に立ち尽くしてお り、その間に魏の牙門旗を持った旗手に照準を合わせてトリガーを もう一度弾く。 今度は腹に命中し、旗手の身体を真っ二つにしてからすぐ後ろにい た敵兵をその場から吹き飛ばす。 CA 敵指揮官と思う奴等を次から次と射殺していく。3−2もSCAR −SSRで的確に敵兵の頭部にヘッドショットを食らわす。 3と4も近付いて来た敵に対してMP7A1やSCAR−L SVで仕留めていき、時々2人が仕掛けたM18A1クレイモア地 雷が起爆して敵の身体が細切れになったりもする。 西側より牙門旗を確認‼ 劉備軍の別働隊、 敵が次々と仕留められていく中、ハンター3−3から通信が入って 来た。 <3−3から3−1‼ 1703 > 趙雲将軍と馬超将軍に馬岱将軍‼ > ﹂ 徐庶軍師‼ 俺達はここ 公孫瓚将軍に張遼 3と4はそのまま劉備軍に合流しろ‼ 将軍等が率いる騎兵隊です‼ ﹁確認した‼ 合流します‼ から邪魔な敵を狙撃する‼ <了解‼ 自信過剰だろうが俺達が軍勢に加勢すれば劉備軍の士気も上がるだ ろう。 スコープで2人の位置を確認しながら障害となり得る敵兵を次々と CASVとMP7A1で手早く片付け、時には 始末していく。途中でこちらに逃げ込んで来る敵兵もいたが、すか さずSCAR−L クレイモアで一網打尽にする。 俺達は劉備軍を援護しつつ曹操軍の後方を見つからないで徹底的に 掻き回してやるとしよう。 俺達の長い潜伏は始まったばかりである⋮⋮⋮⋮⋮。 1704 第217話:後方撹乱︵後書き︶ 勝敗は完全に決した。魏の水軍は完全に壊滅し、陸路からも劉備軍 による奇襲。 策の全てが失敗した曹操は全軍撤退を決意する。曹操を捕らえて乱 世に終止符を打つ為、スレイプニルと共にライルは単身で突入する 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re が、魏の猛将達が立ち塞がる。 次回 [それぞれの意志] 勇猛な将達に狼が挑む。 1705 第218話:意志︵前書き︶ 曹操を追跡するライル。彼は一刀と共に決着を付けるために駆け抜 ける。 1706 第218話:意志 千里の祈祷成功をキッカケとして開始された連合軍による大反抗。 サイファーと祭殿による火計も成功し、アレックス達も部隊を逐一 戦線に投入していく。 対する魏軍は予想すらしていなかった俺達の猛攻により大損害を蒙 り、ダン率いるハンター3と劉備軍による後方撹乱により退路もズ タズタにされたことで混乱していた。 ﹂ 愛馬のスレイプニルを駆り、残敵を次々と仕留める俺は最終ターゲ ﹂ 逃げるなら今のうちだぞ‼ ットである曹操の捜索に全力を注いでいた。 ﹁ぐあっ⁉ ﹂ ﹁そこを退け‼ ﹁ぎゃっ⁉ 立ち塞がる敵をショートグレイブやHK416で確実に仕留めてい く。偵察機であるレイヴンからの情報では曹操は全軍に退却命令を 出したようであり、奴自身も逃亡を開始。 予測逃亡ルートは二つある。 一つは夏口とを経由して遠回りしながら汝南に向かい、そのまま許 昌へと帰還するルート。 もう一つは乱戦となっている華容山を突破し、南郡より北進して樊 城を経由して新野へと向かうルートだ。誰もが曹操の脱出先が許昌 だと思うだろうが、相手はあの曹操。そんな単純なルートは使わな 1707 いだろう。 だから俺は華容山へと全力で向かっていた。この先に曹操がいる。 そんな気がしたのだ。 ﹂ ou ⋮ 大乱戦の影響で曹操を捉え 曹操は発見できたか⁉ だめです中佐‼ ﹁ウルヴァリンからストーム‼ <こちらストーム‼ > ウルヴァリン 奴が山を越える前に捕縛しなきゃならないのに‼ ることが出来ません‼ ﹁くそっ⁉ イリーナは引き続き曹操の索敵を実施せよ‼ t!!﹂ レイヴンでも索敵は困難のようだ。俺はスレイプニルの速度を更に 速め、立ち塞がる敵を踏み潰しながら華容山へと入っていく。 華容山は既に星達が魏軍と激戦を繰り広げている最中であり、辺り からは劉備軍兵士と曹操軍兵士による釜競り合いが繰り広げられて いた。 加えてそこから時折聞こえてくる4.6mm弾と5.56mm弾、 7.62mm弾の発砲音。すぐにこれがハンター3による射撃だと いうことが分かった。 ﹂ すかさず左手でHK416を構えつつ前進していると、見慣れた人 ﹂ 物がいた。 ﹁一刀‼ ﹁ライルさん‼ 増援としてやって来ていた一刀だ。俺は近くにいた敵兵をHK41 6で仕留めつつ、一刀に近付く。 1708 ﹁戦局は⁉ ﹂ 曹操を見たか⁉ そっちは 少し前に曹操が西に逃 曹操軍は各地で敗退している‼ ﹂ ﹁こちら側の圧倒だ‼ ⁉ ﹂ ﹁東で愛紗達が夏侯惇達を押さえてます‼ げたらしいです‼ ﹂ ﹂ ﹁案内できるか⁉ ﹂ ﹁逃げた経路なら‼ ﹁乗れ‼ そう促し、一刀は敵を斬り伏せながらスレイプニルに跨る。それを どっちだ⁉ ﹂ 確認したらすぐにスレイプニルを走らせ、西へと急行する。 ﹁一刀‼ 指定箇所にレイヴンを回せ‼ ﹂ ﹂ ﹁ストーム‼ > ﹁最後に目撃されたのはこの先の関です‼ <了解です‼ イリーナにレイヴンを回すよう指示して、俺達も大急ぎで関へと向 かう。向かって来る敵を俺はショートグレイブ、一刀は心龍双牙で 斬り伏せ、時には手榴弾を放り投げて集団を一網打尽とする。 関が⁉ ﹂ 暫くしてからその関が見えて来たが、俺達は若干の衝撃を受けるこ ととなる。 ﹁くそっ⁉ ﹁道が閉ざされている⋮⋮﹂ 関は追撃を阻止する為に崩落されていて、落石にて門が封鎖されて いた。流石にここからの追撃は不可能と判断した俺は無線に手を向 かわせる。 1709 別のル > そこから200mほど 追撃ルートが塞がれた‼ ⋮⋮⋮⋮ありました‼ ﹂ ﹁ウルヴァリンからストーム‼ ートはあるか⁉ <待って下さい‼ そこから獣道で反対側に回り込めます‼ out!!﹂ 戻って下さい‼ ﹁了解だ‼ すぐに馬を翻し、急いで来た道を逆走する。200mほど進んだ地 点に到着して周囲を警戒しつつ、獣道を探すが幸いにもすぐ見つか った。 俺は一刀にアイコンタクトを送り、一刀も意味を理解したようで頷 く。 それを確認してスレイプニルを獣道へと突入させる。辺りは薄暗く、 曹操は確認できたか⁉ そこから北に約40 ﹂ 所々で枝がはみ出ていたがそれをかわしつつ、獣道を離脱した。 ﹁獣道を抜けた‼ 曹操は近くにいます‼ > 後は奴を捕まえてチェッ ですが周辺には魏兵が展開しています‼ <確認できてます‼ 0‼ > ﹁居場所さえ分かればこっちのものだ‼ ﹂ ご武運を‼ クメイトを掛けるぞ‼ <了解です中佐‼ ようやく曹操を捕捉できた。俺達は通り過ぎる敵兵を無視しながら 前進。一日で千里を駆け抜けると言われる赤兎馬のスレイプニルな ら数十秒で到着する距離だ。 敵兵を薙ぎ払いながら前進し、やがて開けた場所でその姿を確認で きた。 1710 ﹁見えた‼ ﹂ ﹁見つけたぞ曹操‼ ﹂ こちらの存在に気が付いて振り向く曹操。そしてその護衛には厄介 なことに牙刀。奴はこちらに赤龍偃月刀を掲げ、曹操の退路を死守 しようとしていた。 そして小声で何かを話すと曹操は振り返って駆け出した。それに反 ﹂ 応して一刀も心龍双牙を薙刀にしてスレイプニルから飛び降りて後 を追いかける。 ﹂ ﹁逃がさない‼ ﹁させぬ‼ 一刀に向かって振り下ろされる偃月刀の刃。俺も急いで飛び降りて ﹂ ﹂ お前は曹操を⋮⋮⋮奴を捕 駆け寄り、HK416でその一撃を受け止めた。 ﹁ライル殿‼ ﹁お前の相手は俺だ牙刀‼ ﹂ 俺がこいつを抑える‼ ﹁ライルさん⁉ ﹂ ﹁いけ一刀‼ らえろ‼ そういいながら俺は牙刀を蹴り飛ばし、ロアレシーバーにまで至っ た攻撃で使用不可となったHK416を放棄し、ショートグレイブ を構える。 ﹂ ﹂ 一刀はそれに頷くと急いで曹操を追うが、牙刀も黙ってはいなかっ た。 ﹁行かせぬ‼ ﹁お前の相手は俺だといった‼ 1711 ﹂ ﹁くっ⋮⋮ならば貴公を討ち倒して曹操殿の下に向かわせて貰うぞ ライル殿‼ そういいながら赤龍偃月刀を構える牙刀。対する俺もショートグレ イブを回転させて状態を確かめると中腰になって構え直す。 運命の地⋮赤壁。そこで互いの意志を掛けた決闘がいま始まる⋮⋮ ⋮⋮。 1712 第218話:意志︵後書き︶ 遂に曹操を追い詰めたライルと一刀。だがライルは一刀に曹操を任 せて、牙刀との決着を付ける為に踏み止まる。 祖国の為、大義の為、家族や仲間の為。それぞれの意志が交わり合 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re う中、ライルと牙刀による互いの誇りを掛けた闘いが始まる。 次回 [誇り] ライルと牙刀。最後の一騎打ちが始まる。 1713 第219話:誇り︵前書き︶ 銀狼のライル。魏武の龍こと牙刀。好敵手と認め合う2人の決着が 遂に決まる。 1714 第219話:誇り 曹操を追い詰めたのも束の間、脱出を援護していたであろう牙刀が 俺達の前に立ち塞がった。 このままだったら奴を倒さなければ先には進めない。だから俺は牙 刀を引きつけて一刀を先に向かわせることにした。 辺りで連合軍と曹操軍の戦いが繰り広げられている中、俺達は互い の得物を構えて動かないでいた。 ﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂﹂ 互いに機会を伺う。そんな中、俺達のちょうど真ん中辺りに一本の ‼ ‼ ﹂﹂ 流れ矢が突き刺さる。 ﹁﹁‼ ﹂ ‼ ﹂ それを合図に地面を力強く蹴り、瞬く間に刃をぶつけ合う。 ‼ ﹁でりゃあぁあああ‼ ﹁はっ‼ 牙刀が偃月刀を斜めに振り上げ、それを回避すると石突で薙ぎ払う。 それを受け止めると雪で左から右へと振り払うが奴は姿勢を低くす ることでかわし、反動を利用しつつ回転しながら偃月刀を突き出す。 今度は雷で逸らし、斬撃と蹴り技を組み合わせながら牙刀を翻弄す る。 1715 だがそこは魏軍筆頭の武将だ。向こうも同じように斬撃と蹴り技を 匠に使い分け、回し蹴りを回避すると牙刀は右足を前に出しつつ、 そのまま正拳を見舞う。 すかさず反応した俺はショートグレイブを重ねて防御するも、10 mは吹き飛ばされる。その隙を突くように刺突を繰り出してくるが、 素早く体制を立て直した俺は身体を少し右にずらし、両脇で偃月刀 を挟むとそのまま回転して牙刀を投げ飛ばす。 向こうも同じように素早く体制を立て直し、偃月刀を構え直す。 それから再び睨み合いだ。 ﹁⋮⋮⋮フッ⋮⋮﹂ ﹁何がおかしい?﹂ ﹁いや⋮⋮⋮嬉しく思っていてな⋮⋮思わず笑みが零れてしまうよ うだ﹂ ﹁嬉しく?﹂ ﹁私は人生を面白く感じるのだ⋮⋮曹操殿に仕え⋮⋮夏侯惇殿や夏 侯淵殿達と出会い、凪達と仲間となり⋮⋮⋮そして貴殿という好敵 手とも出会えた⋮⋮これが嬉しくならない訳がない﹂ ﹁⋮⋮⋮その点に関しては同感だな⋮⋮俺もお前と闘えて嬉しく思 う⋮⋮もし俺達が最初に出会っていれば、仕えた主が曹操だったか もしれない⋮⋮﹂ ﹁だが⋮⋮そうはならなかった⋮⋮⋮運命とは皮肉なものだ﹂ ﹁あぁ⋮⋮そうなっていれば俺達はよき理解者になっていたかもな ⋮⋮﹂ ﹁しかし⋮⋮⋮私は魏に仕え⋮﹂ ﹁俺達は呉に降った⋮⋮⋮それは紛れもない真実だ﹂ 1716 ‼ ﹁徐晃 公明‼ ‼ ﹂ ﹂ ﹂ ﹁うむ⋮⋮⋮ならばやるべきことはただ一つ⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮そうだな⋮⋮﹂ ﹁互いの武勇と信念を掛けて‼ ﹂ そういいながら俺達は再度構える。 ‼ ﹂ ﹁誇りと愛国心を掛けて‼ ‼ ‼ ﹁ライル・L・ブレイド‼ ﹁いざ尋常に‼ ﹂ ﹂ ‼ ‼ ﹁推して‼ ﹁参る‼ 互いの全てを掛けて俺達は激しくぶつかり合う。牙刀は身体を回転 させながら赤龍偃月刀を連続で振り上げ、最後に6回目で一気に振 り下ろす。 それを受け止めて軽く飛ばすと俺は間髪入れずに突きを見舞う。牙 刀にはそれを受け止められ、今度は雪を振り上げるが弾き返される。 そのような攻防戦が激しく続けられ、瞬く間に30合、40合、遂 には50合を軽く越えて、いつの間にか俺達は崖の上にまで登って いた。夢中になって気がつかなかったが、赤壁に雨が降り注ぎ、炎 上中だった曹操水軍の船団の火災を鎮火していく。 ﹁はぁ‼ ⋮⋮でりゃああ‼ ﹂ ﹂ 近くで部下達による銃声が鳴り響く中、俺達は引き続き斬り合いを ﹁ぐっ⁉ ﹂ する。 ﹁がっ⁉ 1717 疲れが出てきたのか、最初に牙刀の偃月刀が俺の左腕を掠り、雷を 地面に落としながらも雪にて牙刀の右腕を斬る。 互いに軽傷ながらもそこから血が流れ出し、足下に垂れ落ちる。 しかしアドレナリンが身体中から溢れ出て、コンバットハイとなっ ている俺達は痛みを感じることがなく、互いの身体中に切り傷がど んどん増えていく。 その間も70合、80合と数値を重ねていき、やがて100合を突 破させた。かつて関羽と徐晃が戦った際には80合続いたとされて いたが、今回はそれを大きく上回る程の激戦だ。 だが幾らアドレナリンが体内に回っているといっても100合以上 続けたら流石に疲労が隠せず、俺達は肩で息をしている状態だ。 ﹁はぁ⋮はぁ⋮はぁ⋮﹂ ﹁ふぅ⋮ふぅ⋮ふぅ⋮﹂ 今や得物を持つだけでも重労働とも思える位に身体が重い。互いに ふらつきながらも力を振り絞り、ショートグレイブと偃月刀を振る ﹂ った。 ﹁⁉ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 衝撃に手の力が負けたようであり、互いに武器を手放してしまう。 ﹂ だが倒れるのを何とか抑え、握り拳を作って構える。最終的には拳 で決着をつけるということだ。 ﹂ ﹁はぁ⋮はぁ⋮⋮⋮でりりゃあぁ‼ ﹁ぐっ⋮⋮うらぁああ‼ 1718 ふらつきながらも互いの顔に拳を見舞う。額や口、鼻から血が流れ だし、片目も青く腫れ上がる。そして互いの腕が重なり合い、取っ ﹂﹂ 組み合いの格好となると俺達は頭を後ろに出す。 ﹁﹁ふんっ‼ そのまま渾身の頭突きを食らわせる。それも何度もだ。そうしてい く内に額を激しく切ったようであり、左目に血が流れ込んで来て目 を開けられなくなった。しかしそれは牙刀も同じであり、奴は右目 が開けられなくなっている。 だが俺達は闘うのをやめない。俺が殴り掛かると牙刀は姿勢を低く して回避し、そのままアッパーで顎を攻撃する。 少しよろけたが右足で踏ん張り、右ストレートを受け止めて奴の腹 に一撃を与える。 それからはその繰り返しだ。俺が有利になれば一転して不利となり、 逆に牙刀が有利ならば逆転して俺が有利となる。 ﹁ぐっ⋮⋮はぁ⋮はぁ⋮⋮﹂ ﹁ふっ⋮⋮はぁ⋮はぁ⋮はぁ⋮﹂ ここまで格闘を続けていればもはや満身創痍の状態。はっきり言え ば立っているのも辛い状態に陥っていて、視界もぼんやりとしてき ている。 ここまで来たら武芸や技術などは関係がない。相手の根性を少しで も上回れば勝ちという状態となっている。 1719 俺と牙刀はふらつきつつ、構える。 ﹁はぁ⋮はぁ⋮⋮はぁ⋮﹂ ﹁はぁ⋮⋮⋮はぁ⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ‼ ‼ そして互いが攻撃範囲に捉えると⋮⋮⋮。 ﹁﹁うぉおおおおおおおおおお‼ ‼ ﹂﹂ 右拳に最後の力を振り絞り、右ストレートが放たれる。そしてそれ が互いの頬を捉え、顔に凄まじい衝撃が走る。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 互いに沈黙が走る。だがそれはあまり長くは続かなかった。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮見事⋮⋮だ⋮⋮⋮﹂ それだけ言うと牙刀は力が抜けていき、ゆっくりと倒れていく。俺 はすぐに受け止めて姿勢を楽にしてやる。 牙刀の表情は悔しさなどは全く感じられなく、満ち足りた満足気な 表情をしていた。俺は彼の腕を肩に回し、そのまま歩き出す。 ﹁⋮⋮⋮よく頑張ったな⋮⋮今はゆっくり休め⋮⋮⋮友よ⋮﹂ 崖から降りた俺は牙刀を待ってくれていたスレイプニルに乗せてゆ っくりと雪蓮が待っている本陣へと帰還する。 1720 この戦いの後、赤壁に展開した曹操軍は総兵力50万の内の34万 が失われ、軍備を纏めて新野へと撤退。 牙刀や凪達と有能な将や郭嘉などの軍師も捕虜となった。 決定的な戦力差を覆した連合軍も劉備軍5万、孫策軍7万が戦死。 行方不明者や負傷者を含めれば更に膨れ上がるだろう。 俺達は軍備をすぐさま纏めて曹操軍を包囲するべく進軍するのであ った。 誰もが笑って平和に暮らせる天下泰平の世界。これが夢物語ではな く、目の前に迫っていた⋮⋮⋮⋮⋮。 1721 第219話:誇り︵後書き︶ 赤壁の戦いから2ヶ月後、全ての戦いが終焉を迎えた。魏で反乱を 起こした司馬懿率いる軍勢は駆逐され、姜維率いる五胡も撃退され た。 海兵隊の誇り,Re 平和を迎えた新野にてライルは雪蓮と共に過ごす。最後の仕事をす 真・恋姫無双 る為に。 次回 [乱世の先の未来] 未来を見つめる2人。将来に生きる。 1722 第220話:乱世の先の未来︵前書き︶ 乱世の終結。それは新たな時代の到来を意味していた。 1723 第220話:乱世の先の未来 あの歴史上最大の大激戦となった赤壁の戦いから2ヶ月が経過した。 曹操を新野にて追い詰め、戦が終えてようやく乱世が終わると思っ ていたがそうはいかなかった。 赤壁にて大敗したことを察知した司馬懿率いる晋軍による一大武装 蜂起。これにより魏は司馬懿により奪われる形となり、疲弊してい た連合軍は苦戦を強いられてしまったが晋内部で鍾会が反乱を起こ す。 これにより晋の勢いは削がれ、鎮圧は直ぐに行なわれた。その戦に より捕らえられた鍾会は斬首。司馬懿は牙刀との一騎打ちにより敗 北、息子の司馬師と司馬昭、俺達に未来を託して妻の張春華と共に この世を去った。 そこから間を置かないで五胡が攻め込んで来たが、絶大な団結力を 持った俺達に叶う筈もなく、被害拡大を防ぐ為に指導者の姜維は終 戦協定を提案。これにより呉、蜀、魏、五胡による統一国家が締結 された。 全ての戦いを終えた俺達は家族が待つ建業へ凱旋し、街では連日に 渡って祭りが行なわれた。 そして俺はコーヒーを片手に城壁で祭りを眺めていた。 ﹁⋮⋮⋮⋮ふぅ⋮やっと⋮⋮⋮終わったんだな⋮⋮﹂ 1724 全ての戦いが終わって安堵の溜息を吐き出す。 ﹁⋮いや⋮⋮これからだな⋮⋮⋮全てはこれからだ⋮⋮﹂ 国内での戦いは確かに終わった。だがいずれは外界からの侵略が来 ない保証などどこにもなく、この勝ち取った平和を守り続けるのが 今後の俺達の使命だ。 コーヒーを飲んでいると階段から誰かが歩いてきた。それは誰かが なんてすぐに分かった。 ﹁あ∼♪やっぱりここにいた♪﹂ 現れたのはやはり雪蓮だった。あれから彼女は母親になるというこ とを皆に伝え、呉の王座を蓮華に継承した。 そして妊娠数ヶ月の雪蓮のお腹は赤壁よりも大きくなり、自らは隠 居生活を送ることを決定した。 それはこっちの台詞よ∼⋮⋮⋮折角のお祭りなんだか ﹁どうしたんだ雪蓮?﹂ ﹁もうっ‼ らライルも楽しまなきゃ損よ♪﹂ そういいながら雪蓮は俺の隣に座って俺の肩に頭を乗せてきて、俺 も彼女の肩に手を置いて寄せると頭を同じように乗せて密着させる。 ﹁⋮⋮⋮終わったのね⋮﹂ ﹁あぁ⋮⋮長かったな﹂ ﹁これで⋮民が笑って平和に暮らせる⋮⋮父様や母様が望んだ平和 ⋮⋮⋮やっと来たのね⋮﹂ ﹁民の笑顔が勝ち取った平和を象徴している⋮⋮だが本当の戦いは 1725 これからだ﹂ ﹁そうね⋮⋮だから私達はこの平和を守り続けなければならない⋮ ⋮⋮この平和の為に散っていった人達の為にも⋮﹂ ﹁そうだな⋮⋮⋮﹂ そう⋮⋮この平和は計り知れない尊い犠牲があったからこそ実現し たものだ。だからこの平和を守り続けなければ死んでいった全ての 者たちが無駄になってしまう。 ﹁それよりライル⋮⋮ライルはこれからどうするの?﹂ ﹁なにが?﹂ ﹁一刀から聞いたわ。あなたを新国家の相国になって欲しいって⋮ ⋮だけど保留してるらしいじゃない﹂ ﹁まぁな⋮⋮⋮今はまだ決め悩んでいてな⋮⋮﹂ 相国⋮⋮⋮宰相、総理大臣の名称だが、人臣の最高位で国のNo. 2となる存在だ。一刀からも相国となって国を導いて欲しいと頼ま れているが、一ヶ月以内に答えを出すという条件で保留にしてもら っている。 ﹁自信がないの?﹂ ﹁そうじゃない。いきなりだったから考える期間が欲しかっただけ だ。期限までに答えを出すよ﹂ ﹁そう⋮⋮﹂ ﹁それに⋮⋮⋮俺にはまだやるべき大仕事があるからな﹂ そういいながら俺はコーヒーカップを置いて雪蓮を立たせる。彼女 の表情は夕日に照らされて非常に神秘的な美しさを醸し出している。 ﹁雪蓮⋮⋮⋮赤壁での言葉⋮⋮覚えてるか?﹂ 1726 ﹁⋮⋮⋮えぇ﹂ ﹁俺の気持ちは今も変わらない。むしろ強くなったともいえる⋮⋮ ⋮だから改めて言わせてくれ﹂ そういうと俺は雪蓮の左手を取り、彼女から一旦返して貰っていた 指輪を取り出して、それをゆっくりと彼女の左薬指に嵌めた。 ﹁雪蓮⋮⋮⋮俺と⋮⋮結婚してくれ﹂ そういいながら左手を軽く握り、笑顔でこちらを見る雪蓮に俺は左 手を見せる。そこには俺がこの世界に来てから暇を見つけては時間 を掛けて作った婚約指輪が嵌められていて、ジーンに頼んだ貴重な 宝石⋮アレキサンドライトが輝いていた。 雪蓮は同じように左手を見せ、泣きそうなくらいに嬉しそうな表情 をしながら俺の胸に飛び込んで来た。 ﹁⋮⋮⋮はい⋮⋮私は⋮⋮あなたの⋮⋮妻になりたい⋮愛してるわ ⋮⋮ライル﹂ ﹁俺もだ⋮⋮雪蓮。俺の⋮⋮妻になってくれ⋮⋮﹂ 互いの気持ちを再確認し、俺達は目を閉じて唇が近づこうとしたそ の時、少し離れた場所から人の気配。それに気付いて振り返るとそ こには⋮⋮⋮。 ﹁お∼い、何処か他でやれ♪﹂ アレックスやレオン達、蓮華達。更には一刀達蜀の面々や曹操と牙 刀達魏の重鎮。更には俺達に力を貸すことになった司馬師と司馬昭 達、更には姜維の姿があった。 1727 それだけではない。気が付けば城の内外問わず軍民が歓喜の声を挙 げていた。 ﹁くふふ⋮⋮⋮⋮大きなお世話だ♪﹂ そういいながら気にせず雪蓮を抱き寄せ、夕日を背景に彼女とキス をした。 それから一週間⋮⋮⋮⋮俺は黒い蝶ネクタイ・黒のズボン・赤色の カマーバンドのディナードレスを身につけてある場所にいた。 そこは雪蓮のご両親である孫堅様と呉狼様の墓前。彼女の希望で2 人にもドレス姿を見せたいことでここになったのだ。 そして左右には式に参列してくれた一刀達。その中央に敷かれたレ B ブルードレス ッドカーペットのヴァージンロードで、俺は息を飲んだ。 そこには明るい桃色のドレスを着て、クラス を着用した冥琳殿と祭殿に付き添われた喝采を浴びる雪蓮の姿があ った。 その美しさは言葉で表すことは不可能だ。それほどにまで美しい。 1728 ゆっくりと歩いてきた雪蓮はブーケを両手に持ちながら俺の隣に立 ち止まる。 ﹁今日⋮この2人は結ばれます﹂ 俺達の目の前には神父役を引き受けてくれたアレックスがいる。 ﹁私達は、この記念すべき場に立ち会うことが出来ました。ここに 生あることを心から感謝し、2人の永遠の愛を祈りましょう。 この先、多くの困難が待ち受けているでしょう。しかし愛し合う2 伯符を妻と認め、終生変わらぬ 人が手を取り合い、それを乗り越えることを信じています。ライル・ L・ブレイド、あなたはこの孫策 愛を誓いますか?﹂ 伯符。汝はこのライル・L・ブレイドを夫と認め、終生変 ﹁誓います﹂ ﹁孫策 わらぬ愛を誓いますか?﹂ ﹁⋮⋮はい⋮誓います﹂ ﹁では2人を夫婦と認め、永遠の愛の証として指輪の交換を執り行 います﹂ そういうと俺達の義妹となる美羽と美花が俺達の婚約指輪を持って 来て、それをまずは俺が手に取り雪蓮の薬指に嵌める。 続いて雪蓮も同じように指輪を手にとって俺の薬指に嵌めた。 彼女を見るとベール越しに嬉しそうな表情をしながら涙を流してい る。その涙を拭いながらだ。 ﹁母様⋮父様⋮⋮私⋮⋮⋮幸せになります⋮⋮2人のように幸せに ⋮⋮⋮立派な母になります⋮﹂ ︵⋮⋮義母様⋮⋮義父様⋮⋮⋮俺は誓います。この命が尽きても⋮ 1729 雪蓮を守り⋮愛することを⋮⋮.︶ 心の中で義理の両親となる2人に誓う。 ﹁では⋮2人を夫婦と認めます﹂ アレックスの言葉に俺はベールをゆっくりと捲り、雪蓮を見つめる。 意図を理解したのか、ゆっくりと目を閉じる。俺も目を閉じて、想 いの全てをのせて雪蓮と口付けを交わした。 これまで何度も雪蓮とはキスをしたが、今日ほど心の底まで満たさ れるキスは初めてだ。 そして唇を離した直後に割れんばかりの拍手が俺達に送られ、雪蓮 は少し身を屈めた。 ﹁さぁ♪次に幸せを掴むのは誰かしら♪﹂ ﹂ そういいながら彼女はブーケを投げ、投げられたブーケを手にした 凪ちゃんが花束を取ったの∼‼ のは何と凪であった。 ﹁あぁ∼‼ ⋮わ⋮⋮私が⋮隊長と⋮⋮﹂ ﹁ほんなら次の幸せ者は隊長と凪っちゅ∼こてになるな∼♪﹂ ﹁なっ⁉ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ブーケを手にした凪は顔を真っ赤にしながら俯き、珍しく牙刀も頬 を赤くして照れ隠しのつもりか頬をかいていた。 その微笑ましい光景に俺達は自然と笑みを浮かべ、不意に互いを見 た。 1730 ﹁ふふふっ♪これからよろしくね♪旦那様♪﹂ ﹁あぁ⋮⋮必ず君を幸せにするからな⋮⋮﹂ 笑顔でいいながら自然に俺達は再び口付けを交わす。 乱世の果てに勝ち取った平和。恐らくは困難な戦いが待っているだ ろう。だが俺達ならそれすらも乗り越えられると確信している。 未来を勝ち取った俺達なら⋮⋮⋮⋮。 1731 第220話:乱世の先の未来︵後書き︶ 5年の時が過ぎた。乱世で傷付いた大地は実りを蘇らせ、民の笑顔 に溢れて国が栄える。 Pride] 未来を勝ち取った英雄達はそれぞれの人生を歩み、ライルと雪蓮も Corps's 海兵隊の誇り,Re Marine 真・恋姫無双 幸せな生活を送っていた。 次回 最終回[A 平和を満喫する英雄。戦士達はそれぞれの平和を満喫する。 1732 最終回:A Marine Corps's Pride︵前書 き︶ あれから5年後。銀狼と呼ばれた英雄は平和ん満喫していた。 1733 最終回:A Marine Corps's Pride 乱世が終わり、泰平の世が訪れて5年の月日が経過した。戦で荒れ た街や集落は復興し、様々な商人が訪れて活気を見せる。焼け果て た木々は縁々を取り戻し、畑も実りを見せる。 。 乱世を終わらせた各国は呉、蜀、魏、五胡を中心とした新たな統一 晋 国家を建国。 その名は こと一刀を皇帝とし、そ かつてどのような形であれ、信じる道より平和な世界を作ろうとし 天の御使い た司馬懿の願いを組んだ名前だ。 そして平和の象徴である れぞれ呉を蓮華、蜀を桃香、魏を華琳、五胡を亜瑠刀︵あると/姜 維の真名︶がそれぞれ王として領土を統治し、何か不測の事態があ れば連携して対処にあたることとなった。 あれから王の地位を蓮華に譲渡し、俺の妻となった雪蓮とライル自 身はというと⋮⋮⋮。 ﹁すぅ⋮⋮すぅ⋮⋮﹂ ﹁ふふっ⋮⋮まるで大きな子供ね﹂ 森の中にある小川の川岸にある木陰で雪蓮に膝枕をして心地良さそ うに寝息をたてながら寝ていた。 1734 ライルは新国家建国で一刀達の要望で相国の役目を承諾。日々忙し ながらも充実した毎日を送っていた。 そんなライルを雪蓮は髪を撫でながら微笑む。 そして横に伸ばされた右腕の中からも小さな寝息が聞こえる。 ﹁⋮⋮本当に子供が2人いるような感覚ね﹂ そういいながら少しだけ自然をずらす。愛しきライルの腕の上では 雷伯。真名を 春蓮 しゅんれん 。 もう一つの宝物が寝息を立てていた。 名前は孫紹 二人して小川で遊び疲れた後の昼寝タイムである。頭を撫でている と不意に手が重ねられた。 ﹁どうしたんだい雪蓮?﹂ ﹁ふふっ⋮起こしちゃった?﹂ いつの間にか目を覚ましていたライル。2人は互いに笑顔で手を握 り合う。 ﹁本当に気持ち良さそうに寝てたわね♪私も寝ちゃいそうだったわ ♪﹂ ﹁すまないな、俺達だけで寝てしまって⋮⋮﹂ ﹁ううん♪ライルの可愛らしい寝顔を見れて役得よ♪春蓮もよく寝 てるしね⋮⋮﹂ 父親が目を覚ましても心地良さそうに夢の中にいる愛娘。呉の宝で もある春蓮は非常に明るくて人懐っこく、性格も母親みたいに無邪 1735 気。ライルと雪蓮にとってまさに宝だ。 ﹁平和だな⋮﹂ ﹁そうね⋮﹂ ﹁普段が忙しいからな⋮⋮せめて娘と会える時くらいには平和を満 喫しておかないと⋮﹂ ﹁相国になっちゃった以前にライルは私の旦那様で春蓮のお父さん だからね♪ そ・れ・に∼♪イチャイチャしてくれないと私も拗ねちゃうわよ∼ ♪﹂ ﹁はははっ⋮⋮拗ねられたら困るな⋮⋮﹁ん∼﹂おっ?﹂ ﹁あら、起こしちゃった?﹂ まだ眠いのか、目を擦りながら目覚める。そして寝ぼけながらも辺 おはよ∼ございます‼ ﹂ ﹂ りを見渡し、ライルの顔を見つけると暫くしてから笑顔となる。 ﹁おはよう春蓮﹂ ﹁⋮⋮ととさま∼‼ おはよ∼ございます‼ ﹁あれ?かかさまには言わないのかい?﹂ ﹁かかさま∼‼ ﹁はい、おはよう♪﹂ 元気に挨拶しながら春蓮はライルに抱き、ライルと雪蓮は春蓮の頭 を撫でてあげる。 ととさまとおひるねするとぽかぽかするの‼ すると春蓮は本当に嬉しそうにきゃっきゃとはしゃぎだす。 あのね‼ ﹁よく眠れたか?﹂ ﹁うん‼ ﹂ ﹁あら?いい子ね春蓮は♪お母さんもお父さんとお昼寝するのは好 1736 きよ♪﹂ ﹁わ∼い‼ かかさまとおそろい∼‼ ﹂ 嬉しそうにきゃっきゃとはしゃぐ春蓮。すると彼女から可愛らしく 小さなお腹の音がなる。 ﹂ じゃあ久々にレオンの店で食べ ﹁ととさま∼?しゅんれんおなかすいちゃった﹂ ﹁もうそんな時間か⋮⋮⋮よし‼ ﹂ るとするか﹂ ﹁うん‼ ﹁じゃあ春蓮は何を食べたい?﹂ ﹁う∼んと⋮えっとね∼⋮⋮⋮おむらいす‼ ﹁確かにレオンのオムライスは美味いからな⋮⋮⋮じゃあ俺もオム ライスにしよう﹂ ﹁あっ♪だったら私もオムライスに決定∼♪﹂ ﹁わ∼い♪ととさまとかかさまとおそろい∼♪﹂ そういいながらライルは少しだけ雪蓮の膝枕に名残惜しいが立ち上 ﹂ がり、春蓮の右手を繋いで歩く。その際に左手を雪蓮が繋いでいる。 ﹁ねぇねぇととさま∼﹂ ﹁何かな?﹂ ﹂ ﹁しゅんれんね∼♪ととさまだ∼いすき‼ ﹁そうかそうか♪﹂ ﹁それでね∼♪かかさまもだいすき‼ ﹁あらあら⋮⋮ありがと♪﹂ ﹁それでねそれでね♪ととさまとかかさまがなかよしならも∼っと だいすき♪﹂ 娘の無邪気な気持ちに嬉しく感じ、自然と笑顔となるライルと雪蓮。 1737 そんな平和な雰囲気を出しながら3人はスレイプニルに乗って建業 へと戻る。 乱世が終わり、この国に再び平和が訪れた。だが未だに小規模な賊 は出現し、いずれは外界からの侵略も始まるだろう。 だが、たとえ困難な試練が待ち構えていようとも、互いに手を取り 合い、協力し合う彼等なら乗り越えていくだろう。 新たな種は地に根を伸ばし、幹を成してやがては実り、新たな命を 育む。 この国は確かに始まったばかりだ。だが彼等には強力な味方がいる。 始めは董卓軍に仕え、落ち延びた後に呉に帰従し、重要な局面で運 命を左右した海兵隊。 彼等は自らの危険を顧みず、国家の危機になると鋭い矛となり、鉄 壁の盾ともなる。 そんな彼等を民は英雄と讃える。だが彼等は英雄でなくてもよい。 彼等はただ、己の大事なものを守り通す為に⋮⋮更には大事な存在 を守る為に武器を手にする。 そしてライルも雪蓮と春蓮、更には仲間達という代え難い宝物の為 に戦い続ける。 それこそが彼の戦う理由。それこそが⋮⋮⋮⋮⋮。 1738 A Corps's だから⋮⋮⋮⋮⋮ Marine 海兵隊の誇り Pride 1739 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re は 最終回:A Marine Corps's Pride︵後書 き︶ 今回の話をもちまして 最終回となります。 投稿開始から実に1年5ヶ月⋮⋮⋮実に長かったようであっという 間の期間でした。これも支えて下さりました皆々様方のお陰である と自負いたしております。 真・恋姫†無双 二筋の刀を持つ天の御遣い ここに改めまして皆様に感謝の気持ちをお伝えすると同時に、同じ 時系列となる新作 の新連載をここに公表させて頂きます。 こんな私でありますが、これからも皆々様方の為にも外史を広げて いきたいと思っております。 これからも皆様の変わらぬ声援を何卒宜しくお願い申し上げます。 1740 PDF小説ネット発足にあたって http://ncode.syosetu.com/n8199bh/ 真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re 2016年7月9日17時44分発行 ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。 たんのう 公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、 など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ 行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版 小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流 ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、 PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。 1741