...

- 1 - 栃木県監査委員告示第13号 地方自治法(昭和22年法律第67号)第

by user

on
Category: Documents
18

views

Report

Comments

Transcript

- 1 - 栃木県監査委員告示第13号 地方自治法(昭和22年法律第67号)第
栃木県監査委員告示第13号
地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第1項の規定に基づく栃木県職員措置請求につ
いて、同条第4項の規定により、監査した結果を次のとおり公表する。
平成24年9月25日
栃木県監査委員
岩 崎
信
同
花 塚 隆 志
同
黒 本 敏 夫
同
田 崎 昌 芳
栃木県職員措置請求監査結果
第1
請求の受付
1
請求人
栃木市倭町10番2号
殿塚
2
治
請求書の提出日
平成24年7月13日
3
請求の内容
請求人提出の栃木県職員措置請求書による主張事実の要旨及び措置要求は、次のとお
りである。
⑴
主張事実(要旨)
ア
事務所使用について
栃木県交響楽団の事務局を栃木県庁内及び栃木県総合文化センターに41年にわた
り設置させていることは特定団体への利益供与に当たり違法であるから中止すべき
である。
また、栃木県交響楽団は任意の一団体であり、規約に「栃木県の芸術文化の普及
向上に寄与する」と定めてあることをもって優遇されるようなことは認められない。
イ
使用料及び光熱水費等について
無償での事務所使用も認められず、栃木県交響楽団及びそれを認めた職員は、栃
木県に対し、最低でも40年で約4,800万円の使用料及び光熱水費等相当の返還が必
要である。
ウ
補助金について
補助金に関しては平等な取扱いが原則であり、オーケストラに関して栃木県交響
楽団だけに補助していることには問題がある。
エ
「栃木県」の名称使用について
栃木県交響楽団が理由なく「栃木県」の名称を使用していることは認められない。
⑵
措置要求
栃木県知事に対し、栃木県交響楽団の事務局を栃木県総合文化センターに設置させ
- 1 -
ていることの中止を求めるとともに、栃木県交響楽団及び無償での使用を認めた職員
に対する使用料及び光熱水費等相当の返還並びに「栃木県」の名称の使用差止めを請
求することを求める。
4
請求の要件審査
本件 請求は、 地方自治法(昭 和22年 法律第67号。以下「法」 という。)第242条所 定
の要件を具備しているものと認めた。
ただし、法第242条第1項に定める住民監査請求は、普通地方公共団体の執行機関又
は職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契
約の締結若しくは履行、債務その他の義務の負担、公金の賦課若しくは徴収を怠る事実
又は財産の管理を怠る事実があると認めるときに、当該普通地方公共団体の住民が監査
を求め、当該行為の防止、是正又は当該行為によって当該普通地方公共団体が被った損
害の補填に必要な措置を講ずべきことを請求できるものであるが、「栃木県」の名称の
使用差止めを請求することを求める請求人の主張は、前述の財務会計上の行為又は怠る
事実には該当せず法第242条第1項が定める要件を欠くものであるから、監査の対象と
しない。
第2
監査の実施
1
監査対象事項
請求人の請求内容から判断して、次の事項を監査対象事項とした。
⑴
栃木県交響楽団に対し、事務室として、栃木県総合文化センターの一部の使用を許
可(以下「本件使用許可」という。)したことは、違法若しくは不当な財産の管理又
はその怠る事実に当たるか。それを理由として本件使用許可を取り消す必要があるか。
⑵
本件使用許可に係る使用料を免除し光熱水費等を徴収しないことは、違法又は不当
に公金の徴収を怠る事実に当たるか。それを理由として栃木県交響楽団に対し使用料
及び光熱水費等相当の支払を求め、又は無償での使用を認めた職員に対しその損害の
補填を求める必要があるか。
2
監査対象機関
監査対象機関を栃木県総合文化センターの財産管理を所管する県民生活部県民文化課
(以下「県民文化課」という。)及び公有財産の管理等を所管する経営管理部管財課(以
下「管財課」という。)とした。
3
監査の実施
県民文化課職員及び管財課職員から、本件請求に係る関係文書、その他証拠書類等必
要な資料の提出を求め、説明を聴取する等慎重に監査を行った。
4
請求人の証拠の提出及び陳述
法第242条第6項の規定に基づく証拠の提出及び陳述の機会を設け、平成24年8月17
日に請求人から陳述を受けた。
請求人から新たな証拠の提出はなかった。
第3
監査の結果
本件請求についての監査の結果は、監査委員の合議により次のように決定した。
「監査対象事項⑴」については、これを却下し、「監査対象事項⑵」については、これ
を棄却する。
以下、判断の理由について述べる。
1
事実関係の確認
- 2 -
監査対象機関から確認した事項は次のとおりである。
⑴
本件使用許可について
ア
栃木県交響楽団に対する許可の手続き
請求書の提出日における本件使用許可は、平成22年2月9日付けで栃木県交響楽
団から栃木県総合文化センターの県有財産使用許可申請書及び県有財産使用料(貸
付料)減免申請書の提出があり、平成22年3月1日付け栃木県指令県文第268-10号
(以下「指令書」という。)により許可されている。
イ
栃木県交響楽団に対する許可の内容
指令書に記載されている次の事項を確認した。
(ア)
使用許可財産の名称
栃木県総合文化センター
(イ)
使用許可面積
24.50㎡
(ウ)
用途
事務室
(エ)
使用許可期間
平成22年4月1日から平成25年3月31日までとする。
(オ)
使用料
使用料を免除する。
(カ)
費用の負担
使用者は光熱水費等を負担しなければならない。この場合における負担額は別
に指示する。
ウ
本件使用許可の理由等
県民文化課の県有財産の使用許可に係る回議書には使用許可の理由等が明示され
ていないため、県民文化課職員からの説明を聴取することにより次の事項を確認し
た。
(ア)
使用を許可した理由
栃木県交響楽団は公共的団体であり、公益を目的とした活動を継続し、さらに、
それらは県の文化振興施策に密接に関連していると考えられるため、行政財産使
用許可取扱基準について(平成6年9月30日付け総務部長通知。以下「使用許可
取扱基準」という。)3の⑴のアで規定する「公共的団体において、公用又は公
共用に供するため使用するとき」に該当し許可をしている。
(イ)
使用料を免除した理由
栃木県行政財産使用料条例(昭和39年条例第9号。以下「使用料条例」という。)
第6条第1項第1号及び行政財産の使用許可に伴う使用料の減免について(平成
8年3月28日付け総務部長通知。以下「使用料減免基準」という。)1の⑶で規
定する「公共的団体において、県の事務又は事業に密接に関連する公益を目的と
した事務、事業の用に直接供するために使用するとき。」に該当し免除をしてい
る。
(ウ)
光熱水費等の徴収を猶予した理由
行政財産の使用許可に伴う光熱水費等の取扱いについての運用について(平成
8年3月28日付け総務部管財課長通知。以下「管財課長通知」という。)2のウ
- 3 -
で規定する「県の事務事業に密接に関連する公共的団体が、事務室として使用す
る場合。」に該当し徴収を猶予している。
エ
栃木県交響楽団の事務室の使用状況
平成24年8月に栃木県総合文化センターの使用状況を確認したところ、事務室と
して使用されていた。
⑵
使用許可の根拠法令等について
ア
行政財産の使用許可について
法第238条の4第7項では「行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度にお
いてその使用を許可することができる。」と規定している。また、栃木県公有財産
事務取扱規則(昭和52年規則第26号)第33条から第37条において使用許可申請書等
が規定されている。そして、使用許可取扱基準において使用許可処分の審査基準等
が定められており、その3の⑴のアは「公共的団体において、公用又は公共用に供
するため使用するとき」に該当する場合であって、やむを得ないと認められるとき
に限り許可をすることができると規定している。
イ
行政財産の使用許可に伴う使用料について
法第225条では「普通地方公共団体は、第238条の4第7項の規定による許可を受
け て する 行 政財 産 の使 用又 は 公の 施 設の 利用 に つ き使 用料 を 徴収 す ること がで き
る 。」とし 、第228条で「 分担金 、使 用料、 加入 金及 び手数 料に関 する 事項につ い
ては、条例でこれを定めなければならない。」と規定している。そして、使用料条
例第1条で「法第238条の4第7項の規定により行政財産の使用を許可した場合に
おいて、その使用者から徴収する使用料に関して定めるものとする。」と規定し、
第2条で「使用料は、年額により定めるものとし、その額は、別表により算定した
額とする。」と規定している。さらに、第6条で使用料の減免について定めており、
その第1項第1号で「公共的団体において、公用若しくは公共用又は公益事業の用
に供するとき。」は、使用料を減免することができると規定している。また、使用
料減免基準1の⑶で「公共的団体において、県の事務又は事業に密接に関連する公
益を目的とした事務、事業の用に直接供するために使用するとき。(ただし収益を
上げている団体を除く。)」は、使用料を免除することができると規定している。
ウ
行政財産の使用許可に伴う光熱水費等について
行政財産の使用許可に伴う光熱水費等の取扱いについて(平成8年3月28日付け
総務部長通知)において、使用者に負担させる経費、負担の方法及び算定基準等が
規定され、管財課長通知で、その運用が定められている。そこでは「原則として使
用許可を受けた者すべてから徴収するが、これまでの取扱いの経緯を考慮し、次の
いずれかに該当する場合には当分の間、徴収を猶予することができるものとする。」
と規定され、「県の事務事業に密接に関連する公共的団体が、事務室として使用す
る場合。但し、収益事業を行う場合を除く。」ときは、光熱水費等の徴収を猶予す
ることができるとされている。
⑶
芸術文化振興事業費補助金について
芸術文化振興事業費補助金交付要領(以下「要領」という。)によると、芸術文化
の振興普及、及び文化団体の育成を図ることをその目的とし、交付の相手方は栃木県
交響楽団及び栃木県文化協会とされ、交付の対象経費は楽器の購入及び補修並びに定
期演奏等の活動としている。
- 4 -
また、平成23年度は栃木県交響楽団に対し2,884,000円の当該補助金が交付されて
いる。
⑷
栃木県交響楽団の概要について
ア
目的及び組織について
栃木県交響楽団規約(以下「規約」という。)によると、オーケストラ演奏活動
を通して、栃木県の芸術文化の普及向上に寄与することを目的とし、その組織は、
役員、楽団員及び会員をもって構成されている。
イ
活動状況について
県内各市町村を対象とする巡回演奏会や、県が全市町村等と連携し全県的に開催
してきた県民の日の記念コンサートでの演奏など、創立当時から県の文化振興施策
に沿った活動を行ってきた。
現在は、国内外で活躍するソリストを迎えて実施する年2回の定期演奏会のほか、
クラシックコンクール「コンセールマロニエ21」の入賞者をソリストに迎えた特別
演奏会、幼少時から音楽に親しめる機会を提供する「森のコンサート」や「ファミ
リーコンサート」などの活動を行っている。また、平成20年度には各種団体ととも
に「栃木県楽友協会」を組織し、毎年末に第九演奏会を実施するほか、平成24年6
月には栃木県オペラ協会との共催でオペラ「椿姫」を上演した。
高度なテクニックを持つソリストと共演するための演奏技術を維持しつつ、子供
から大人までを対象とした各種演奏会を実施するなど、活発な演奏活動を行ってき
ている。
さらに、楽団員の他団体定期演奏会への協賛出演や、楽団所有の楽器、楽譜の貸
出しなど、県内の他団体への支援も行っている。
ウ
会計について
規約第24条によると「本楽団の経費は、演奏活動による収入、地方公共団体等の
助成金、会員の会費及び寄附金等をもって充てる。」と規定されている。
また、県民文化課に提出された、平成23年度芸術文化振興事業費補助金実績報告
書に添付の平成23年度収支決算書によると、収入は、団員費3,042,000円、補助金
2,884,000円、入場料991,610円ほか計9,075,630円、支出は、指揮者等への報償費
2,513,416円、ホール等使用料及び賃借料1,145,967円ほか計8,850,317円となって
いる。
2
監査対象機関の説明・意見
⑴
県民文化課
栃木県交響楽団の設立に当たっては、昭和44年2月の県議会において「身近に親し
まれるような栃木県交響楽団をつくること」が提言され、これに対し当時の教育長が
「交響楽団が生まれた場合、県が強力にバックアップして育て、県民文化の向上に役
立つという方向で大いに協力、援助をしていきたい。」との趣旨の答弁を行っている。
こうした経緯を経て、翌年、昭和45年1月には県内で活動していた複数の団体(宇
都宮交響楽団、足利交響楽団、宇都宮大学管弦楽団、宇都宮短期大学オーケストラな
ど)が母体となり栃木県交響楽団が設立され、当時の教育委員会事務局社会教育課内
に事務局が設置された。昭和46年4月に教育委員会事務局文化課内に事務局が移され、
さらに、平成10年4月に文化行政の事務移管により栃木県交響楽団の所管が教育委員
会から知事部局の文化振興課(現県民文化課)になったことを契機に、栃木県総合文
- 5 -
化センター内に事務局が移転された。
栃木県交響楽団は、事務局が教育委員会内に設置されてから、栃木県総合文化セン
ターに移転した現在までにおいて、県に密接に関連する公益を目的とした事務事業を
維持し、公共的団体として、県の文化振興施策に密接に関わりながら、活動を続けて
きた。具体的には、県内各市町村を対象とする巡回演奏会(全88回:創立時~平成15
年)、県が全市町村等と連携し全県的に開催してきた県民の日の記念コンサート等(全
19回:昭和61年~平成17年)での演奏、現在では我が国を代表するクラシック登竜門
のひとつとなった「コンセールマロニエ21」の入賞者をソリストに迎えて開催する特
別演奏会(全16回:平成8年~現在)等々、創立当時から県の文化振興施策に沿った
活動を重ねてきている。昭和60年には、文部大臣から地域文化功労賞を受賞している
が、現在も依然として本県のクラシック音楽分野の振興には欠かせない存在である。
公共的団体の定義については行政実例(昭和24年1月13日)があり、それによれば
「公共的団体」とは、農業協同組合、森林組合、漁業協同組合、生活協同組合、商工
会議所等の産業経済団体、社会福祉協議会、赤十字社等の厚生社会事業団体、青年団、
婦人会、教育会、体育会等の文化事業団体等公共的な活動を営むものはすべてこれに
含まれ、法人たると否とを問わないとされている。栃木県交響楽団には自らの定期演
奏会以外の演奏活動が前述したほかにも多く、栃の葉国体・全国都市緑化フェア・国
民文 化祭・ 文化 庁移 動芸術 祭等 、県 内で開 催さ れた 重要な 大規 模イベ ントからの オ
ファーには、県行政と一体となって、その期待に確実に応えてきたところであり、ま
た、本県と友好関係にある中国浙江省での公演により友好関係の増進に大きく寄与し
たと ころで もある 。ま た近年 は、「森のコンサート」(平成14年~) や「ファミリ ー
コンサート」(平成22年~)により子供たちへの普及にも力を注いでいるが、これら
は県の元気プランに掲げた「文化を通じた人づくり」に正に合致した事業である。同
楽団はアマチュア楽団であり、各団員の多くは本業である仕事を有している中で、周
囲の期待に応えるべく楽団の音楽レベルの維持向上のため、週1回以上の練習を重ね、
前述のような公共的な活動を継続している団体である。
以上のことから、栃木県交響楽団は公共的団体であり、公益を目的とした活動を継
続し、さらに、それらは県の文化振興施策に密接に関連していると考えられることか
ら、使用許可については、使用許可取扱基準3の⑴のア「公共的団体において、公用
又は公共用に供するため使用するとき」に該当すると認め使用許可を行ったものであ
る。
同様に、使用料の減免についても、使用料減免基準1の⑶「公共的団体において、
県の事務又は事業に密接に関連する公益を目的とした事務、事業の用に直接供するた
めに使用するとき。」に該当すると認め使用料を免除したものである。
さらに、光熱水費等についても、教育委員会内に事務局があった平成9年度までは
管財課長通知2のア「県の事務事業に密接に関連する公共的団体で、事務室の一部を
事務執行の場所として使用する場合。」に、栃木県総合文化センター内に移転した平
成10年度以降については同通知2のウ「県の事務事業に密接に関連する公共的団体が、
事務室として使用する場合。」にそれぞれ該当すると認めその徴収を猶予したもので
ある。
なお、演奏会の入場料は会場使用料などの経費を補うために徴収しているものであ
り、収益を上げている団体とは考えていない。
- 6 -
以上のことから、使用許可、使用料の免除及び光熱水費等の不徴収については、適
正であると考えている。
⑵
管財課
ア
使用許可取扱基準について
「公共的団体」とは、行政実例(昭和24年1月13日)にもあるように、当該団体
が公共的な活動を営むものであれば「公共的団体」に含まれ、法人格の有無は問わ
ないものと解されている。また、「公用に供する」とは当該団体がその事務事業を
行うために直接使用する場合、「公共用に供する」とは住民の一般共同使用のため
に供される場合と考える。
イ
使用料条例について
「公共的団体」についてはアと同様であり、「公用に供する」とは当該団体がそ
の事務事業を行うために直接使用する場合、「公共用に供する」とは住民の一般共
同使用のために供される場合、「公益事業の用に供する」とは、一般的には、運輸
事業、通信事業、電気事業など、社会公衆の日常生活にとって欠くことのできない
必需のサービス等を提供する事業に供する場合とされているが、広く県民の利益と
なる事業に供する場合をいう。
ウ
使用料減免基準について
「公共的団体」についてはアと同様であり、「県の事務又は事業に密接に関連す
る公益を目的とした事務、事業の用に直接供する」とは、県の事務事業や施策の目
的に合致した事業に供する場合をいう。
「収益を上げている団体」とは、収益を上げているか否かは単に収入、収支の黒
字、赤字で判断することなく、収益事業を行っているか否かに着目して判断してい
る。具体的には当該団体の収益事業に対し法人税が課税されてるかどうかである。
なお、法人税を納める義務がないと規定されている団体や納めていない場合でも、
当該使用許可する場所において自主事業等の実施により明らかに収益が上がるもの
と判断できる場合は「収益を上げている」として取り扱っている。
エ
管財課長通知について
平成8年3月28日以前は、光熱水費等の取扱いについて統一されていなかったこ
とから、当該通知を定めたところである。これにより、これまで光熱水費等を徴収
していなかった団体についても徴収することになったことから、使用者側の財政的
措置等を考慮し徴収猶予期間を設けたものである。
なお、平成8年3月28日以降、新規使用許可者に対する光熱水費等の徴収猶予措
置はない。
徴収猶予されている団体については、今後とも、財産管理者と使用者側とで協議
を継続し、是正に努めるべきものと考える。
3
判断
⑴
本件使用許可について
請求人は、本件使用許可が、特定団体への利益供与に当たり違法であるから取り消
すべきであると主張しているので、これについて判断する。
法第242条第1項に定める住民監査請求は、地方財務行政の適正な運営を確保する
ことを目的とし、その対象とされる事項は、当該普通地方公共団体の執行機関又は職
員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約
- 7 -
の締結若しくは履行、債務その他の義務の負担、公金の賦課若しくは徴収を怠る事実
又は財産の管理を怠る事実に限られるものであり、これらの行為又は事実は、いずれ
も財務会計上の行為又は事実としての性質を有するものである。
行政財産の使用の許可については、平成5年3月22日東京地裁判決(平成6年2月
17日東京高裁判決で支持等)においても、法第242条第1項に定める「財産の管理と
は、財産の財産的価値に着目して、その価値の維持・保全・管理等を図る財務的処理
を直接の目的とする行為をいい、一定の行政目的実現のためにする行為が一面財産の
管理という性質を有し、それらの行為等がなされることによって、結果として地方公
共団体に財産的影響が及ぶような場合は、そこで主として考慮すべきであるのが、行
政目的実現の如何であり、財務会計の適正な実現ではない以上、これに当たらないと
解すべきである。」とされているところである。
本件使用許可は、栃木県総合文化センター(以下「本件施設」という。)の財産管
理者である県民文化課長が、法第238条の4第7項の規定等に基づき、県民の文化の
振興及び福祉の増進を図る等の見地から、その用途又は目的を妨げない限度において
使用 許可の 適否 を判 断する もの であ り、本 件施 設の 財産的 価値 に着目 して、その 維
持・保全・管理等を図る財産的処理を直接の目的とする財務会計上の行為としての財
産の管理又はその怠る事実には該当しないものと判断される。
したがって、本件使用許可は財務会計上の行為としての財産の管理又はその怠る事
実には該当しないものであるから、本件使用許可の取消しを求める請求人の主張は、
法第242条第1項に定める要件を欠くものであり、不適法であるというべきである。
なお、本件施設は、法第238条第4項に規定する行政財産に該当し、同法第238条の
4第7項の規定により、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可す
ることができるものである。その審査の基準等については使用許可取扱基準で定めら
れており、その3の⑴のアで「公共的団体において、公用又は公共用に供するため使
用するとき」は、使用許可をすることができると規定している。
行政実例(昭和24年1月13日)によれば、「公共的団体」とは、農業協同組合、森
林組合、漁業協同組合、生活協同組合、商工会議所等の産業経済団体、社会福祉協議
会、赤十字社等の厚生社会事業団体、青年団、婦人会、教育会、体育会等の文化事業
団体等公共的な活動を営むものはすべてこれに含まれ、法人たると否とを問わないと
されている。
栃木県交響楽団は、県内各市町村を対象とする巡回演奏会や「コンセールマロニエ
21」の入賞者をソリストに迎えて開催する特別演奏会、県が全市町村等と連携し全県
的に開催してきた県民の日の記念コンサートでの演奏など、創立当時から県の文化振
興施策に沿った活動を重ねてきていること、本県と友好関係にある中国浙江省での公
演に より友 好関 係の 増進に 寄与 して きたこ と、 また 、近年 の「 森のコ ンサート」 や
「ファミリーコンサート」により子供たちへの普及を行っていることが栃木県の施策
にある「文化を通じた人づくり」に合致したものであることなどから、公共的団体が、
公用又は公共用に供するため使用するものと判断したことには理由があると認められ
る。
また、使用実態については、前記第3の1の⑴のエで確認したとおり許可用途以外
の目的に供されている事実は認められない。
⑵
本件使用許可に係る使用料を免除し光熱水費等を徴収しないことについて
- 8 -
請求人は、無償での事務所使用は認められず、栃木県交響楽団に対し最低でも40年
で約4,800万円の使用料及び光熱水費等相当の支払を求めること、又は無償での使用
を認めた職員に対しその損害の補填を求めることが必要であると主張しているので、
これについて判断する。
使用料については、使用料条例第6条第1項第1号で「公共的団体において、公用
若しくは公共用又は公益事業の用に供するとき。」は、減免することができると規定
し、使用料減免基準1の⑶で「公共的団体において、県の事務又は事業に密接に関連
する公益を目的とした事務、事業の用に直接供するために使用するとき。」は、免除
することができると規定している。
また、光熱水費等については、管財課長通知で、「原則として使用許可を受けた者
すべてから徴収するが、これまでの取扱いの経緯を考慮し、次のいずれかに該当する
場合 には当 分の間 、徴 収を猶 予す るこ とがで きるも のとする。」と規定 され、「県 の
事務事業に密接に関連する公共的団体が、事務室として使用する場合。但し、収益事
業を行う場合を除く。」ときは、光熱水費等の徴収を猶予することができるとされて
いる。
⑴で述べた栃木県交響楽団の活動状況から、使用料について、公共的団体が、県の
事務又は事業に密接に関連する公益を目的とした事務、事業の用に直接供するため使
用するものと判断し免除したこと、光熱水費等については、県の事務事業に密接に関
連する公共的団体が、事務室として使用するものと判断し徴収を猶予したことにはそ
れぞれ理由があると認められる。また、栃木県交響楽団の収支決算書から、県からの
補助金を含め収入のほぼ全てが指揮者等への報償費やホールの使用料等の経費に充て
られていることから、収益事業を行っている団体ではないと判断したことは是認でき
る。
したがって、使用料条例第6条第1項第1号及び使用料減免基準1の⑶の規定によ
り使用料を免除したこと並びに管財課長通知に基づき光熱水費等の徴収を猶予したこ
とは違法又は不当であるとはいえないことから、栃木県交響楽団に対し使用料及び光
熱水費等相当の支払を求めること、又は無償での使用を認めた職員に対しその損害の
補填を求めることが必要であるとする請求人の主張には理由がない。
⑶
芸術文化振興事業費補助金について
平成23年度に栃木県交響楽団に対し交付された補助金については、栃木県補助金等
交付規則(昭和36年規則第33号)及び要領の規定に基づき、適正に執行されているこ
とを確認した。
ただし、芸術文化振興事業費補助金の交付の相手方は要領において限定されている
ことから、他の団体において要領で規定する目的等に合致する活動等を行っても、当
該補助金の交付を受けられないことが考えられる。
⑷
結論
以上のことから、請求人の本件使用許可の取消しを求める請求については不適法と
し、栃木県交響楽団に対し使用料及び光熱水費等相当の支払を求め、又は無償での使
用を認めた職員に対しその損害の補填を求める請求については理由がないものと判断
する。
4
意見
監査の結果については以上のとおりである。この結果を踏まえ、監査委員としての意
- 9 -
見を以下に述べる。
⑴
栃木県交響楽団への支援の位置付けについて
栃木県交響楽団は、県域レベルのオーケストラとして本県芸術文化の振興等に一定
の役割を果たしていることが認められるが、請求人の主張にもある市民オーケストラ
などの活動もある中で、補助金のあり方も含めて、栃木県交響楽団への支援の位置付
けを一層明確にする必要がある。
⑵
使用許可について
使用許可に当たっては、単にその期間を更新する継続使用許可であってもそれぞれ
の許可は別個のものであるから、その都度申請の理由等を精査するとともに、使用許
可基準や使用料減免基準等への合規性を判断し、その理由等を明示しておく必要があ
る。
⑶
光熱水費等について
前記第3の1の⑴のイのとおり、光熱水費等については使用者が負担しなければな
らず、その負担額は別に指示するものとされているが、実際には管財課長通知に基づ
きその徴収を猶予している。
県有財産に係る使用許可指令書、賃貸借契約書、使用貸借契約書の標準書式につい
て(昭和52年10月26日付け総務部長通知)では、光熱水費等の負担を求めない場合は
その条件を削除するよう定めていることから、使用許可指令書の作成に当たっては、
その取扱いにそごが生じぬよう事務処理に留意されたい。
また、光熱水費等の徴収を猶予していることについては、現在の厳しい県財政や管
財課長通知の主旨等を踏まえ、十分かつ慎重な検討が必要である。
- 10 -
Fly UP