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ゴムの歴史

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ゴムの歴史
物を通して見る世界史
成金が生まれた。
ゴムの歴史
一方、イギリスでは18〜19世紀にかけて植民地
の経済発展のため有用植物としてゴムの植林を計
中国ゴム工業株式会社 大 西 謙 二
画。1876年にイギリス人ウィッカムがゴムの種子
をアマゾンからイギリスに持ち帰り、ロンドンの
ゴムの木
植物園で発芽に成功。苗がセイロン・シンガポール
ゴムの原料となる樹脂液(ラテックス)を分泌
へ送られ、おもにマレーシアを通じて東南アジア
する植物は400種以上あるといわれているが、プ
へ広がる。その後の栽培技術の発展とともに野性
ランテーションに植林されているのは、トウダイ
ゴムから栽培ゴムへと移行し、生産と需要が急速
クサ科のヘベア・ブラジリエンシスでパラゴムと
に拡大した。
呼ばれている。パラゴムは南米アマゾン川流域が
ゴム工業は自動車産業とともに発展
原産地であるが、現在では東南アジアに主産地が
1880年代に入ってダイムラーとベンツによって
移り、世界の天然ゴム生産のほとんどを占めるに
ガソリン自動車が発明され、1887年にダンロップ
至っている。クワ科のインドゴムは観賞用として
が空気入りのタイヤを考案、3輪車用に初めて使
栽培されている。
用して以降、19世紀末から天然ゴムの自動車タイ
天然ゴムの利用と加硫ゴムの発明
ヤとしての需要が急激に増加し、ゴム工業の飛躍
人類のゴム利用の歴史は古く、6世紀のアステ
的な発展の道が開かれた。
カ文明や、11世紀の南米マヤ文明にその痕跡があ
合成ゴムの開発
ると推測されている。西欧諸国がゴムを知ったの
天然ゴムの熱帯地方での偏在と、自動車工業を
は、コロンブスが1493年出発の第2回目の航海途
はじめとする諸産業の発展などにより天然ゴムの
中、プエルトリコとジャマイカに上陸し、ここで
需要は常にひっ迫していた。それゆえ入手に苦慮
先住民が遊びに使用していたゴムボールと初めて
していたアメリカ・ドイツが中心となって、20世
出会ったとされているが、その後の200年余は、
紀初頭には天然ゴムに類似するゴム状物質を作る
希少品として珍重される他にはあまり利用価値が
方法を研究的にはほぼ確立させていた。
なかった。18世紀頃からゴムはレインコートや消
戦争という不幸な事態は、軍事的要素のあった
しゴムとしてしだいに実用的な用途に利用される
天然ゴムの代替要求を飛躍的に前進させ、ドイツ
ようになるが、生ゴムのまま
(未加硫)
使用されて
では国家規模のスケールで汎用合成ゴムの研究を
いたため、温度が上がるとゴムが軟化してべとつ
行い、1940年代には合成ゴムの国産化を完了して
き、温度が下がると硬くなるという欠点があった。
いた。
1839年にアメリカ人チャールズ=グッドイヤー
一方、アメリカでは第二次世界大戦まではイギ
が、ふとした偶然からゴム弾性が大幅に増加し、
リスから天然ゴムを入手できる立場にあったが、
熱に対して生ゴムよりはるかに安定したゴム(加
1942年日本軍によるマレー半島・ジャワ・スマトラ
硫ゴム)を発見。1843年にイギリス人ハンコック
などの占拠により輸入ルートが絶たれ、ドイツか
が種々の加硫法を開発して近代的ゴム工業が始
らの合成ゴムの入手も困難になった。そこでアメ
まった。この加硫法の発明によって、弾性・強じ
リカは合成ゴムの製造を国家管理のもとに推進
ん性・耐久性などが付与され、利用価値が一段と
し、1945年には汎用合成ゴムの国産化に成功した。
広がった。工業用材料として注目されるようにな
それとともに、長年にわたる天然ゴムのイギリス
ると需要が高まり、アマゾン流域の野性ゴムが無
支配から脱し、合成ゴム・製造技術輸出の基礎をつ
秩序に乱伐された。野性ゴムの全盛期には黒い
くった。
ゴールドと呼ばれ、ブラジルのマナウスではゴム
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