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ユーロ圏の財政状況の改善について

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ユーロ圏の財政状況の改善について
Strategy Report
Mitsubishi UFJ Asset Management
2014年5月16日
ユーロ圏の財政状況の改善について
グローバル・マーケット・ストラテジー・チーム
シニアストラテジスト 並木 日出男
 EU(欧州連合)統計局が最近発表したユーロ圏の2013年末の財政赤字は、名目GDP(国
内総生産)比3.0%と2012年末の同3.7%から大きく改善し、各国政府の財政健全化努力は
成長・安定協定の目標達成に向けて着実な成果を上げつつあります。
 ユーロ圏における財政節度の回復は長期金利を引き下げ、加えて、過剰消費体質の是正に
よる輸入の抑制を通じて経常収支の改善をもたらしています。高失業などの緊縮財政による
マイナス面を勘案しても、ユーロ圏のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は健全化が進
んでいると考えられ、ユーロ圏経済は2年連続のマイナス成長を脱して2014年、2015年と緩
やかな景気拡大が見込まれています。
 ユーロ圏経済の課題として、引き続き南欧諸国の財政規律の維持が重要です。ギリシャが
今年4月におよそ4年ぶりに国債発行に成功したほか、ポルトガルは支援への依存から脱却
し、財政面での自立に向かっています。このように、南欧重債務国の状況は好転しつつあり
ます。
改善が進むユーロ圏の財政収支
EU統計局が最近発表したユーロ圏の2013年末の財政赤字は、名目GDP比3.0%と
2012年末の同3.7%から大きく改善しました。ユーロ圏各国は、安定・成長協定により、原則
として各会計年の財政赤字を名目GDP比3.0%以内、総債務残高を同60%以内にとどめる
ことが求められています。2013年末の総債務残高は名目GDP比92.6%とまだ目標よりも高
水準ですが、各国政府の財政健全化努力は着実な成果を上げつつあります。
ユーロ圏財政赤字名目GDP比の推移
(%)
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-7
2003
2004
2005
2006
(出所)Bloombergのデータを基に三菱UFJ投信作成
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
(年)
当資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資の最終決定
はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。当資料に示されたコメント等は、当資料作成日現在の見解であり、事前
の連絡なしに変更されることがあります。投資信託は株式、公社債等値動きのある証券に投資しますので、基準価額は変動し
ます。したがって、金融機関の預金とは異なり元本が保証されているものではありません。投資信託は、預金保険の対象とは
なりません。金融商品取引業者以外でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象ではありません。本資料は当
社が信頼できると判断したデータにより作成しましたが、その正確性、完全性等について保証・約束するものではありません。
Strategy Report
Mitsubishi UFJ Asset Management
財政赤字の削減は長期金利の低下等を通じて経済成長率の引き上げに寄与
ユーロ圏では、南欧の国家総債務が大きく、イタリアの2013年末の政府債務残高の名目
GDP比(見込み)は132.6%、ギリシャが同175.1%、ポルトガルが同129.0%とそれぞれの経
済規模を上回っています。このため、南欧諸国の国債格付けが欧州債務危機前の状態にま
で回復し、最終的な解決に至るまでには、なお相当の時間を要するとみています。
しかし、財政赤字の削減は、長期金利の低下を可能とし、加えて、過剰消費体質の是正に
よる輸入の抑制を通じて経常収支の改善を実現しています。このようなファンダメンタルズの
健全化は、南欧を含む各国の経済成長率の引き上げに寄与するものです。欧州委員会の春
季経済見通しによると、ユーロ圏の実質GDP成長率は、2年連続のマイナス成長から脱却
し、ユーロ圏経済は2014年に1.2%、2015年に1.7%と緩やかな景気拡大が見込まれていま
す。
ユーロ圏経済にとって、引き続き南欧諸国の財政規律の維持が課題となりますが、南欧の
重債務国は高失業などに苦しみつつも、明るい材料もみられるようになってきました。ポルトガ
ルは、支援への依存から脱却し、財政面での自立に移行しつつあります。ギリシャは名目
GDP比でユーロ圏最大の債務を抱えており、今後も国債償還への対応が求められるものの、
今年4月におよそ4年ぶりの国債発行に成功しました。4月上旬のユーロ圏財務大臣会合(非
公式)などの場では、ギリシャ支援に合意する姿勢が示されており、危機の再来は回避できる
と考えています。また、EU統計局による特別調査などによると、欧州市民の間に現状と将来
に対する肯定的な見方が強まってきており、ユーロ圏主要国では南欧重債務国の支援にあ
たり、草の根レベルの支持が集まりやすくなっていることが示唆されています。なお、ウクライナ
を取り巻く政治的・軍事的な緊張は鎮静化していませんが、ユーロ圏はウクライナとの金融面
の関係が薄く、同地域の経済への影響は限定されるとみています。
南欧諸国などの経常収支
(名目GDP比、%)
10
5
0
-5
ギリシャ
アイルランド
イタリア
ポルトガル
スペイン
-10
-15
-20
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
(年)
(出所)IMFのデータを基に三菱UFJ投信作成
当資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資の最終決定
はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。当資料に示されたコメント等は、当資料作成日現在の見解であり、事前
の連絡なしに変更されることがあります。投資信託は株式、公社債等値動きのある証券に投資しますので、基準価額は変動し
ます。したがって、金融機関の預金とは異なり元本が保証されているものではありません。投資信託は、預金保険の対象とは
なりません。金融商品取引業者以外でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象ではありません。本資料は当
社が信頼できると判断したデータにより作成しましたが、その正確性、完全性等について保証・約束するものではありません。
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