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平成 24 年度 日本大学文理学部個人研究費 研究実績報告書
平成 24 年度 日本大学文理学部個人研究費 研究実績報告書 物理生命システム科学科・教授・茶圓 茂 研 究 課 題 研究目的 お よ び 報 研究概要 双極性ミオシンフィラメント上をアクチンフィラメントが滑る際の ADP 遊離速度測定法の開発 ミオシンフィラメント上の蛍光アクチンフィラメントをATP存在下に滑らせる In Viro Motility Assay をおこなうと、ミオシンフィラメントの端から中央に向かうアクチンフィラメントの速度は、 中央から端に向かう速度の約数倍、速い。さらに、両者の滑り速度の活性化エネルギーを測定したと ころ、中央から端に向かう場合の活性化エネルギーが端から中央に向かう場合にくらべて、大きいと いう結果が得られている。両者で滑り速度が大きく違うのは ADP 遊離速度が違うことによると考えら れるが、誰も測定していない。本研究では、この ADP 遊離速度の測定法を開発する。ミオシンフィラ メントにあらかじめ蛍光 ATP を結合させておき、そしてあらかじめ溶液中には CagedATP を含ませ ておき、キセノンランプを瞬間的に発光させることにより、CagedATP を分解させる。すると遊離し た ATP がミオシンフィラメントに結合し、蛍光 ADP が遊離してくるが、その遊離速度をイメージン グにより解析する。 告 研 究 の の 概 結 果 研 究 要 の 考 察 ・ 反 省 ミオシンフィラメント上を滑る蛍光標識アクチンフィラメントの動きを蛍光イメージング法で解析し た。アクチンフィラメントはミオシンフィラメントの端から中央に向かって(forward)は速く滑り、 中央から端に向かって(backward)はゆっくり滑ることがわかっている.しかしながら、ADP 遊離 速度が backward で遅くなっているかどうかは明らかになっていない。本研究ではミオシンに結合し た蛍光 ADP を CagedATP の光分解による ATP により chase する実験装置を開発し、chase される速 さをイメージングした。結果は forward では速く、backward では遅い蛍光強度の減少を示し、ADP 遊離速度が backward で遅くなっている結果を得た。(BIOPHYSICS 9, 13-20. (2013)) 我々は以前に滑り速度の温度依存性を調べ、forward と backward の活性化エネルギーはそれぞれ 44k kJ/mol, 79 kJ/mol であることを報告した。そして、この結果から180°ひねられたミオシンの頭が アクチンフィラメントを動かしており、ひねられることによって ADP 遊離速度を低下させ、ATP に よるミオシンのアクチンからの解離を遅くしているために滑り速度が減少していることを示唆した. 本実験の結果は、backward に動かしているミオシンの頭から遊離される ADP の速度が遅いことを直 接的に観察した。我々は、このモーター蛋白再構成系においてメカニクスとキネティクスを直接観察 することに成功した。さらにさまざまな再構成系運動に応用していきたい。 ※この欄は,本報告書提出時点で判明している事項について御記入ください。 研究発表 学会名 発表テーマ 年月日/場所 研究成果物 テーマ 誌 名 巻・号 発行年月日 発行所・者 ・Takahiro Maruta, Takahiro Kobatake, Hiroyuki Okubo, and Shigeru Chaen Single turnovers of fluorescent ATP bound to bipolar myosin filament during actin filaments sliding. BIOPHYSICS 9, 13-20 (2013) ・Maruta, T., Okubo, H., Kobatake, T., Chaen, S. Measurement of ADP release from bipolar myosin filament track along which actin filament slide. 第50回日本生物物理学会, 2012. 9.23. 名古屋 ・Koyama, T., Maruta, T., Iwai, S., Chaen, S. Effect of mutation of the SH1 helix region of Dyctyosterium Myosin II on the motile characteristics. 第50回日本生物物理学会, 2012. 9.23. 名古屋