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ルータのトラヒック制御によるネットワーク消費電力削減方式

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ルータのトラヒック制御によるネットワーク消費電力削減方式
平成 23 年度電子情報通信学会東京支部学生会研究発表会
講演番号: 234
ルータのトラヒック制御によるネットワーク消費電力削減方式
B-7
Network Electricity Consumption Reduction Method by Controlling Router Traffic
三瓶 明仁
東 秀亮
新津 善弘
Akihito Sanpei
Hideaki Higashi
Yoshihiro Niitsu
芝浦工業大学システム理工学部
College of Faculty of Systems Engineering and Science, Shibaura Institute of Technology
1.はじめに
近年,企業内ネットワークを流れる通信トラヒックの増
加に伴い,ネットワーク機器の電力消費が急増している.
ネットワーク機器の消費電力の多くをルータの待機電力
が占めている.そこで,スリープ機能を持つ MPLS 対応ルー
タで構成されたネットワークのネットワーク内のルータ
が占める消費電力を削減する研究が行われている [1].
本研究では,各ノードがトラヒック量を把握することで
経路制御し,ルータをスリープさせ,ネットワーク全体の
消費電力を削減する方式を提案し,有効性を評価する.
2.先行研究とその問題点
先行研究では,各経路のトラヒック量を計測し,その情
報を基にルーチングすることで経路制御を行い,ネットワ
ークのトラヒック量が少ない時に一部の区間にトラヒッ
クを集約させることで,トラヒック量が少ないルータを作
り出し,そのルータをスリープさせる事で,ネットワーク
内の消費電力を削減している.
先行研究において,一部の区間のみトラヒック量が増大
した場合,トラヒック量が少ない区間でも輻輳が起きない
ように制御してしまうため,トラヒック量が少ないルータ
も稼働してしまう状態になることが問題点である.
3.研究内容
3.1.目的
各ルータはトラヒック量を定期的に把握し,その情報を
基に経路制御を行い,閾値を下回ったルータをスリープさ
せ,消費電力を削減する.
3.2.想定環境
大学や企業などの VPN で構成されたネットワークで,時
間によりトラヒックに偏りが生じる環境を想定する.各ル
ータは MPLS に対応しており,スリープ機能と現在のルー
タに流れているトラヒック量を計測できるものとする.
エッジルータは,現在のネットワーク全体に流れているト
ラヒック量に応じてスリープ時間を決定する.
ルータのスリープとは,ルータ内のメモリのみ電力が供
給される状態を指し,スリープ時間を経過したら自動的に
再起動する.また,ルータの消費電力は,通常時 10kW,スリ
ープ時 200W とする.
3.3.提案方式
各ルータは定期的に,現在流れているトラヒック量をエ
ッジルータに送信する.エッジルータは,経路のトラヒッ
ク量に応じてラベリングを行う.各ルータはルータ間のト
ラヒック量を把握し,トラヒック量がある閾値より下まわ
ったらスリープさせる.
スリープするまでの手法として,方式案 1,方式案2を
提案する.
図,1 方式案の処理手順
方式案 1
①各コアルータは定期的に自身のトラヒック量が閾値を
下回っていないかチェックする.もし閾値(ここでの閾値
は,各ルータに流れるトラヒック量の許容量を 100 とした
時,トラヒック量の値が 20 とする)を下回ったら,スリー
プするルータに決定する.
②スリープする事が決まったコアルータは,エッジルータ
にスリープする事を通知する.
③エッジルータは通知を受けとったら,それ以降スリープ
するコアルータにトラヒックを流さないように制御する.
④エッジルータはスリープ時間を決め,その時間をスリー
プするルータに通知する.
方式案2
①各コアルータは定期的に現在の流れているトラヒック
量をエッジルータに通知する.
②通知を受けたエッジルータは,ネットワークの階層ごと
にトラヒック量が閾値(各ルータに流れるトラヒック量の
許容量を 100 とした時,各階層のトラヒック量を足した値
が 80 とする)を下回っているか判定し,閾値を下回ってい
れば階層でトラヒック量が少ないルータをスリープする
ルータに決定する.
③スリープするルータが決まったら,それ以降そのルータ
にトラヒックを流さないように制御し,スリープ時間を決
め,その時間を通知する.
4.評価と考察
4.1 評価実験
評価は,ネットワークシミュレータである QualNet を使
用し実施する.シミュレーション時間は4時間,また 3 種
類(トラヒック量を 3 段階に分ける),4時間×3種類=計
12 時間シミュレーションを実施する.
4.2 評価項目

消費電力削減量
従来手法や先行研究と比べた,消費電力削減量
4.3 実験結果と考察
トラヒックが多いと
き,方式案1の削減量
が多かった.これは,
個々のルータが現在の
トラヒックに応じてス
リープすることを決め
るため,ネットワーク
全体のトラヒック量が
多くても一部の区間だ
図 2,消費電力削減値
け少なければ,スリー
プすることが出来るため,少なくなったと考える.また,ト
ラヒックが多くない場合で,トラヒックが均等に流れてし
まった場合,ルータをスリープすることが出来なくなり,
削減量が低くなってしまったのではないかと考えられる.
また,トラヒックが多くない場合,方式案2の削減量が
多くなった.これは,ネットワーク全体のトラヒックを考
慮し,スリープするルータを決めるため,トラヒックが少
ない場合などは,スリープするルータの数やスリープ時間
が多くとれ,電力を多く削減できたのではないかと考える.
また,ネットワークのトラヒックが多い場合は,トラヒッ
ク量に偏りがある場合でも,スリープすることが出来ない
場合が生じてしまうため,削減量が少なくなったのではな
いかと考えられる.
以上より,方式案1は,ネットワークのトラヒックが偏
っている場合,方式案2は,ネットワーク全体のトラヒッ
クが少ないときに有効であるといえる.
5.まとめ
今回ネットワークのトラヒック量を 3 段階に分け実験
を行ったが,実際の環境では,時間ごとにトラヒック量は
変化するため,その点を考慮し,今後は時間ごとにトラヒ
ック量を変化させシミュレーションを行い評価を行う.
参考文献
[1] 山田亜紀子,今井悟史,掛水光明“ネットワークの省電
力化を実現するパスベーストラヒック制御方式”信学技
術 KS2009-232(2010-03)
-234-
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