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強さの理由を考える
新 春 特 集 強さの理由を考える ど ばし 土橋 あき お 昭夫 社団法人日本貿易会 副会長 双日株式会社 社長 米国では最近、 「ビッグ・スリー」という言葉の代わりに、 「デトロイト・スリー」という言 葉が使われ始めたのだそうだ。日本車のシェアが高まる一方で、GMやフォードには経営難が 訪れており、もはや「ビッグ・スリー」は「ビッグ」でなくなったからだという。盛者必衰と あ ぜん はいうものの、いささか唖然とさせられるような話である。こんな変化の激しい時代に企業の 経営を任されるのは、なんと頭の痛いことだろうか。 強さとはいったいなんだろう。そんなことを考えさせられることの多い日々が続いている。 思えば2005年は圧倒的なヒーローが誕生して、ワンサイドゲームで勝ちを決める例が多かっ た。 政治の世界では、「9・11」総選挙において自民党が大勝利を収めた。勝ち過ぎて比例代表の 候補者が足りなくなり、杉村太蔵議員が人気者になったりもした。解散・総選挙に踏み切った 小泉首相には、普通の人と違う景色が見えていたとしか思えない。 経済の世界では、予想外の株高が日本経済の復調を告げている。2005年の所得番付第1位に 輝いたのは、カリスマ・ファンドマネージャーの清原達郎氏で、年収は100億円だと言う。そ れとは裏腹に、今の日本には「下流社会」ができているという指摘もある。もはや「勝ち組、 負け組」などという生易しい世界ではなく、「マル金、マルビ」などと言っていられた時代が 懐かしい。 スポーツの世界でもワンサイドゲームが多かった。野球では日本シリーズとワールドシリー ズの両方が4勝0敗で勝負がついた。競馬の世界では無敗の三冠馬、ディープインパクトの強さ が評判になった。テニス界のマリア・シャラポワは、美しさと強さの独り占めである。 華々しい強さの裏側に何があるのか。そして強さは持続可能なのか。そして企業経営はどう したら強くなることができるのか。凡人としては天才の境地は知る由もないが、われわれが今、 大きなチャンスのある時代に生きていることだけは分かる。 史上初、年間6場所連続優勝という偉業を成し遂げた朝青龍は、たまに負けると報道陣に対 して「稽古が足りないよ」と言って悔しがる姿を見せる。横綱という最高位にありながら、日 頃の精進がそれだけ深いのだろう。 横綱の境地には遠く及ばないわが身ながら、この心意気だけでも学びたいものだと思う。 8 日本貿易会 月報