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寺神戸亮が語る バッハの魅力と共演する名手たち
2014年 1月 23日 (木 )紀 尾 井 ホ ー ル 公 演 寺神⼾亮が名⼿たちとともに贈るバッハ協奏曲名作選 寺神戸亮が語る バッハの魅力と共演する名手たち 紀尾井ホールが新春に贈るバッハの夕べ。2つのヴァイオリン協奏曲と、2つのトリプル・コンチェルトを取り上げ、 バッハの⾼雅で清新な響きをお楽しみいただきます。公演に先⽴って、寺神⼾亮さんにバッハの⾳楽の魅⼒や共演する 名手たちを紹介していただきました。 バッハのヴァイオリン協奏曲は、ヴァイオリン学習者 にとって必ず通らなければならない道のようなもの だと思いますが、寺神戸さんが初めてこの2つの曲に 出会ったのは何歳ころのことですか? その時の思い出などあれば併せてお聞かせください。 恐らく小学生の頃だと思います。先ずはヴァ イオリン協奏曲第1番をやりました。きれいな 曲だと思いましたがそれ以上の特別な思いは抱 きませんでした。ただ、初めて有名な作曲家の曲を弾い たので嬉しかったのを覚えています。第2番の方は発表 会で他の人が弾くのをよく聴いていたのですが、なんと 皆ダ・カーポの前で終わっていました。後は同じなので省 略したのか、ダ・カーポ⾃体を⾒落としていたのか、いず れにせよ先生の指示だったのだと思いますが、ずいぶん 尻切れとんぼな感じの曲だなあと思い、⾃分は絶対発表 会では弾くまい、と思っていました。実際その後第2番 を勉強したのかどうか、記憶がありません。 バロック・ヴァイオリンをお始めになってから、これ らのヴァイオリン協奏曲を改めて弾いてみるように なって、音楽の感じ方や作品の捉え方にどのような変 化がありましたか? 先ずは後に師事することとなるシギスヴァル ト・クイケンの録⾳を聴き衝撃を受けました。そ の⻭切れの良さ、生き生きと躍動するリズムと 叙情性に心を奪われ、このような曲だったのか、と驚き を持って体験しました。留学前のことです。その頃待ち に待ったラ・プティット・バンドの新録音で、二つのヴァ イオリンのための協奏曲の第2ヴァイオリンはルシー・ ファン・ダールが受け持っていました。特に衝撃を受けた のは第2番の最初の三和⾳です。短く、勢いのある三つ の音に⼀発でノックアウト、完全に魅了されてしまいま した。それまで知っていた演奏では最初の三つの音は⻑ くテヌートで引き延ばされ、そのような鮮烈な印象は受 けたことがありませんでした。その後⾃分でこれらの曲 に向き合い、演奏するようになって⾊々⾃分なりの発⾒ が多々あり師の演奏とはまた違ったものになっていると は思いますが最初に衝撃を受けたこの演奏に影響を受け ていないと言えば嘘になります。 ちなみにこれらの曲でのレッスンは受けませんでしたが、 後にラ・プティット・バンドで二つのヴァイオリンのため の協奏曲を師と何度も演奏する機会に恵まれましたし、 ヴァイオリン協奏曲は師の伴奏として頻繁に演奏し、何 度かソロも受け持たせていただきました。 寺神戸さんにとって「J. S. バッハ」とはどのような 存在ですか? バッハは知れば知るほど奥が深く、常に新し い側⾯を⾒せてくれる作曲家です。死後250年 以上も経ってさらにこれほど人々に愛され、研 究されるようになるとは本人思いもよらなかったのでは ないでしょうか。バッハの⾳楽はどれをとっても緻密で すが、それが堅苦しくない親しみやすいメロディーに彩 られていて、思わず歌いたくなるようなシンプルさも持 ち合わせているのが不思議と言えば不思議です。バッハ の音楽はそのころ地方色豊かだったバロック時代の⾳楽 を初めて国際的で普遍的なものにしたと思います。⾊々 なスタイルの融合、また古い音楽と新しい音楽の融合と、 縦、横両方の軸での融合がそれぞれ非常に⾼い次元で⾏ われたことが、バッハの音楽を現代にまで生き残らせる 原動⼒になったのではないでしょうか。 ⾃分⾃身、バッハを知れば知るほどその奥深さに圧倒 されさらに引き込まれて⾏くのを感じます。 さて、共演する演奏家の皆さんについてお伺いします。 菅きよみさんは、 紀尾井ホールで2011年4月に行われ 菅きよみさん た「音楽の捧げもの」全曲の公演でもご共演されてい ます。菅さんとのご共演の機会は数多いことと思いま すが、共演歴はどのくらいになりますか?菅さんとの これまでの共演の中でもっとも印象に残っている作 品や公演があれば、ご紹介ください。 菅さんがまだ留学前、桐朋学園の学生の頃初 めて共演しました。師の有田さんに抜擢され、 師の二番フルートでクープランの諸国の人々な どを⼀緒に演奏したのを憶えています。その時にすでに 真面目ながら素晴らしい演奏をしていましたが、その後 留学されバルトルド・クイケンの薫陶を受け本当に素晴 らしい演奏家に成⻑されました。ベルギー在住中ラ・プ ティット・バンドやアニマ・エテルナなどで演奏経験を積 み、日本に帰国してからはバッハ・コレギウム・ジャパン、 リベラ・クラシカなどで活躍し、今や日本には欠かすこと のできない第一人者です。近年ではバッハ・コレギウム・ (裏面に続く) ジャパンのヨーロッパ・ツアーなどでご⼀緒することが 多いのですが、毎回素晴らしいソロを聴かせてくれます。 特にマタイ受難曲の《Aus Liebe (編注:第49曲・ソプラ ノのアリア「愛よりしてわが救い主は死に給わんとす」)》 は絶品です。 今回ソリストとして共演するチョー チョー・ チョー ・ソンヨンさんと ソンヨンさん の出会いやエピソード、魅力などをご紹介ください。 チョー・ソンヨンさんとは2005年、クイケン アンサンブルで韓国に⾏った際に初めて出会い ました。そのときはまだヨンセ(延世)大学のオ ルガン科の学生で、私たちのコンサートのお⼿伝いをし てくれていたのですが、その時今後チェンバロに転向し てデン・ハーグに留学するつもりだということを話して くれました。次に会ったのは2008年頃オランダ、デン・ ハーグで私のレッスンに生徒の伴奏者として来た時です。 通奏低音は当時まだ未熟ながら素晴らしい音を出す人だ と思いました。それ以来室内楽や、ソロの指導をさせてい ただきましたが、その素晴らしいテクニックと⾳楽性に はいつも驚嘆させられ、毎回の成⻑にも目をみはりまし た。卒業試験での演奏は感動的で今も強く記憶に残って います。10点満点に栄誉賞付きというチェンバロ科では 学校始まって以来の最⾼得点でした。 チョーさんのチェンバロを歌わせる能⼒は注目に値す ると思います。ヴィルトゥオーゾな名人芸だけでなく緩 徐楽章の演奏にも注目です。 本公演の出演者はソリストのほかにも名手揃いです。 共演者について、ご紹介ください。 まず、ヴァイオリンの佐藤泉さんと⼾⽥薫さ ん。佐藤さんはブリュッセルに留学され、⼾田 さんはデン・ハーグに留学されましたが、二人と も師は私と同じシギスヴァルト・クイケンです。ラ・プ ティット・バンドでもよく⼀緒になりましたし、同門とい うこともあって気心の知れた演奏仲間です。⼀言で言う なら佐藤さんは誠実な人柄がにじみ出るような演奏、⼾ 田さんは明確でありながらしなやかな演奏をする人です。 史にも詳しく、日本でこの分野で最も豊富な知識を持つ 人の⼀人ではないでしょうか。モダン楽器では読売日本 交響楽団の首席奏者でもあります。その確かなテクニッ クから生み出される音は洗練されており、バス楽器とし ての機能を余すところなく、また過不⾜なく引き出して、 まさに縁の下の⼒持ち的な役割を担ってくれています。 どんな早いパッセージでも重たくなることなく演奏でき るのは⻄澤さんの面目躍如たるところです。 本公演にご来場のお客様に向けてメッセージをお願 いします。 有名ながらなかなか生の演奏に触れる機会の 少ないバッハのヴァイオリン・コンチェルトや トリプル・コンチェルト。パート一人ずつという 最小編成ながら、この編成だからこそできるダイナミッ クな表現が出てくるものと思います。それぞれのパート がその奏者の個性に彩られてより明確に、生き生きと表 現される可能性を秘めているのです。『協奏曲―コン チェルト』というとどうしてもソリスト対オーケストラ、 あるいは大きなアンサンブルというイメージがつきまと いがちですが、バロック時代のコンチェルトは必ずしも そういうものではなく、多分に室内楽的な規模で演奏さ れました。しかしそこでは室内学的な要素だけではなく 明らかに独奏楽器とリピエーノ、トゥッティの対比や対 峙が主な要素となっているのです。小さな編成だけによ り緊張感が⾼まる瞬間もあるでしょう。明確で透明感の あるテクスチュアのなかで『コンチェルト』がどのよう な表情を⾒せるのか、お楽しみに。 寺神⼾亮が名手たちとともに贈るバッハ協奏曲名作選 2014年1月23日(木)19時開演 紀尾井ホール 出 ⻄澤誠治さんはマルチな才能を持つユニークなコント ラバス奏者です。バロック、古典派時代のバス楽器の歴 寺神⼾亮(ヴァイオリン・ソロ) 菅きよみ(フルート・ソロ) チョー・ソンヨン(チェンバロ・ソロ/通奏低音) 佐藤泉、⼾田薫※(ヴァイオリン)、朝吹園子(ヴィオラ) 懸田貴嗣(チェロ)、⻄澤誠治(ヴィオローネ) ※当初発表の大内山薫に代わり⼾⽥薫が出演します。 曲 目 《オール・バッハ・プログラム》 フルート、ヴァイオリンとチェンバロのための協奏曲イ短調 BWV1044 ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調BWV1041 ヴァイオリン協奏曲第2番ホ⻑調BWV1042 ブランデンブルク協奏曲第5番ニ⻑調BWV1050 料 ⾦ 朝吹園子さんとは比較的最近出会いました。ドイツで バッハ・コレギウム・ジャパンの演奏をした時です。とて も気さくで、ヴィオラらしい音と暖かな性格を持った人 だと思います。期待する若⼿です。 懸⽥貴嗣さんはイタリア留学経験を持つ数少ないバ ロック・チェリストです。近年コンティヌオ奏者としてめ きめき⼒をつけてきており、オペラの通奏低音ではイタ リア語を理解して演奏できる貴重な人材です。先日も北 とぴあでの『フィガロの結婚』で素晴らしい演奏をして くれました。 演 S7,000円 A4,000円 Sペア12,000円 友の会Sペア11,000円 申込・問合 紀尾井ホールチケットセンター 00-3237-0061(10時〜18時/日・祝休) 主催 公益財団法人 新日鉄住⾦⽂化財団 ⓒ NIPPON STEEL & SUMITOMO METAL Arts Foundation 無断転載及び複製を禁じます。