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情報共有を指向した新しい受発注システム
NRI NEWS 情報共有を指向した新しい受発注システム 須賀裕文 大手量販店A社では、店舗および本部の情報共有を主な目的とした新しい受発注シス テムの構築を進めており、このほど基幹システムである新商品マスターシステムのリ リースを行った。同システムでは、①大量データの管理、②業務画面での高速の応答、 ③店別、期間別の原価・売価管理機能の強化、④入力の簡素化、省力化、各業務画面 間の連携強化、⑤品番管理機能の強化──などを実現した。 術を駆使して、スピーディかつ柔 テーブル(表)は約50種類にのぼ 軟に実現する。具体的には、各店 る規模となる。今回の新商品マス 大手量販店 A 社には、徹底した 舗の発注担当者が使用する発注端 ターシステムは、単に商品を管理 「単品管理」を行うことで、「顧客 末を、情報共有端末としても利用 するシステムではなく、新受発 が欲しいときに、欲しい商品を欲 できるシステムを構築する。 注・物流システム、販促システム ■システム化の狙いと ポイント しいだけ提供できる仕組み」をつ A 社は、この狙いを実現するた などのサブシステム全般を支援す くるという全体的なコンセプトが めに、①業務の合理化、関連業務 るトータルデータベースの位置づ ある。 間の連動強化、②情報の共有化・ けとした。 今回のシステム化に当たっての 組織化の推進、③マーチャンダイ システム構築時の大きな課題と 1つの狙いは、売れ筋商品を確実 ジングの変化への対応力の強化 しては、①大量データをどう管理 に売り、販売機会ロス・値下げロ ──の3つの機能を持つ基盤シス するか、②各業務画面における高 スを最小限にするという、「小売 テムの構築を目指した(図1)。 速の応答の実現──があった。 り」の基本行動を全店ベースで徹 底することである。また、組織が 大きくなったためにできなくなっ た、「1人で仕入れて1人で売る」 また、業務面での実現機能とし ■新商品マスターシステムの 構築 て、③店舗別あるいは期間別の原 価・売価管理機能の強化、④入力 業務基盤としての商品マスター の簡素化、省力化、各業務画面間 という商売の基本に立ち戻れるよ システムの構築に関しては、以下 の連携強化、⑤品番管理機能の強 うにすることも、狙いの1つであ の観点で行った。 化 ──などが要求された。 る。 このような基本行動の徹底を、 最新の情報技術やネットワーク技 10 知的資産創造/ 1999 年 10 月号 基盤となる新商品マスターシス ①の大量データの管理に関して テムでは、最終的に約 350 万単品 は、最新の高性能サーバーを導入 (衣料・住居・食品)を管理し、 し、2台のサーバーによる相互バ 図1 大手量販店A社の情報システムの全体イメージ 店舗 本部 内部情報 画像情報 個店情報 情報収集 情報共有端末 仮説情報 商品情報 売り方提案 マネジメント情報 ⋮ 外部情報 天気予報 マスコミ 雑誌 他店情報 死に筋排除 販売計画支援 品ぞろえ支援 情報発信 情報の共有化・組織化 情報共有 情報共有 海外 取引先・メーカー 物流センター グループ会社 支援 支援 支援 業務基盤システム(新商品マスターシステム、新受発注システムなど) ックアップやディスク二重化によ り、安全性も同時に高めた。 ②の業務画面での高速の応答に ④については、複数の単品を一 括して変更する機能や、各業務画 面間のジャンプ機能を実現した。 ■情報共有の基盤となる 基幹システム 情報共有(情報収集、情報発信) ついては、OLTP(オンライント また、入力時に毎回繰り返し入力 の仕組みについては、現在開発中 ランザクション処理)方式による する項目などは、次回から入力し である。今回リリースを行った基 トランザクションの流量制御とデ なくても、あらかじめ画面に表示 幹システムは、情報共有の実現を ィレード処理を併用し、さらにデ されているというように、学習機 最終目標として構築した基盤シス ータベース構築チューニング、 能やコピー機能などの便利機能の テムであることに他ならない。 SQL(構造化照会言語)チューニ 充実を図っている。同時に、入力 今回、基盤システムの構築を行 ング、およびラッシュテストを繰 項目のきめ細かいチェックも行う った意味が十分認知されるのは、 り返し実施することにより、最終 ようにした。 これからである。 的に設定目標値を実現し、高負 ⑤の品番管理機能については、 荷・高要求に耐える仕組みを構築 今回の商品マスターシステムは単 した。 品での管理を目的としているが、 ③に関しては性能を上げ、デー 用途に合わせて品番単位での業務 タベースの容量を減らすために最 も行えるような、業務に即した構 適構造を見極め、最適なデータベ 造・機能を実現することができ ースを構築することができた。 た。 『システム・マンスリー』 1999年10月号より転載 須賀裕文(すがひろふみ) 流通システム二部上級システムエンジ ニア 情報共有を指向した新しい受発注システム 11