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Title 前立腺組織内抗菌薬濃度測定に及ぼす手術操作の影響に ついて
Title 前立腺組織内抗菌薬濃度測定に及ぼす手術操作の影響に ついて Author(s) 川嶋, 敏文; 宮北, 英司; 岡田, 敬司; 河村, 信夫; 大越, 正秋 Citation Issue Date URL 泌尿器科紀要 (1985), 31(9): 1657-1660 1985-09 http://hdl.handle.net/2433/118595 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 1657 泌 尿紀 要3Ⅰ巻9号 1985年9月 前立腺組織 内抗菌薬濃度測定に及ぼす 手術 操作の影響について 東海大学医学部泌尿器科学教 室(主 任:河 村信夫教授) 川嶋 敏 文 ・宮 北 河村 INFLUENCE OF OPERATIVE TISSUE Toshifumi 英 司 ・岡 田 信 夫 ・大 越 PROCEDURES CONCENTRATION KAWASHIMA, Hideshi Nobuo 敬司 正秋 KAWAMURA and ON PROSTATIC OF ANTIBIOTICS MIYAKITA, Keishi OKADA, Masaaki OOKOSHI From the Department of Urology, Tokai University School of Medicine (Director: Prof. N. Kawamura) The not tatic of prostatic studied extensively. tissues Our tissues Key changes been minced results when words and suggest tissue agitated that compared tissue in the TUR to open : Prostatic concentration We measured irrigation reduced of antibiotics by operative the concentration the fluid, as a model concentration of in have the rat pros- of TUR-simulation. antibiotics in the prostatic prostatectomy. concentration, Transurethral resection, ッ トにCefoperazone(以 緒 procesures of antibiotics 言 Open prostatectomy 下CPZ)250mgを1mI の生 理 食 塩 水 に 溶解 し,腹 腔 内投 与 した.30分,60 抗 菌薬 の前 立 腺 組 織 内移 行 度 は 薬 剤 の種 類 に よ って 分,90分 後 に 屠 殺 し,腹 腔 内を1回 水洗.肝,腎,膀 異 な り,薬 剤 濃 度 測 定 は お の お の の抗 菌 薬 に つ い てお 胱,前 立 腺,精 嚢,睾 丸,副 睾 丸 を 摘 出 し再 度 水 洗 こなわ れ て い る。 また,測 定 検 体 と して,臨 床 的 に は た だ ち に 一20℃ 前立 腺 液(以 下EPS)あ m1採 血,20分 (以下Open),経 るい は 前 立 腺 被 膜 下 摘 除 術 尿道 的 前立 腺 切除 術(以 下TUR) で 凍 結 保存 した.ま た,心 臓 か ら5 間,3,000rpmで 血 清 分 離 し 一20。Cで 凍結 保 存 した. で得 られ た前 立 腺 組 織 が 用 い られ て い る.し か し,こ 本 実 験 で は ウ ィス ター系 ラ ッ ト24匹を4匹 ず つA群 れ らの お の お の の手 技 で得 られ た 組 織 内 濃 度 が 真 の 前 か らF群 まで6群 に 分 け た.前 述 の ご と く,おの お の の 立 腺組 織 内薬 剤 濃 度 を 反 映 す るか ど うか 議 論 の あ る と ラ ッ トにCPZ250mgを ころ で あ り,こ の こ とに つ い て 検討 した 報 告 も少 な 腹 腔 内 を1回 水 洗 し,前 立 腺 を摘 出 した.摘 出 した前 い.な か で も,TURに 立 腺 を 再 度 水 洗.こ の よ うに し て得 られ た 前 立腺 を 以 よ って 検体 を 得 た場 合に は, 腹 腔 内 投 与 し30分 後 に 屠 殺 ・ 組 織 も細 切 され てお り,灌 流 液 で 洗 い 流 さ れ る とい う 下 の よ うに 処 理 した.A群;た 操 作 も加 わ っ て い るた め,薬 剤 濃 度 は と くに影 響 を 受 室 温 で1時 間 静 置 後 凍結 保 存,C群;10%ウ け る と考 え られ る.今 液 に1時 間 静 置 後 凍結 保 存.D群;10%ウ 回,わ れ わ れ はTURに よる 前 立腺 組 織 内薬 剤 濃 度 の影 響 を,手 術 操 作 を 勘 案 した 動 物実 験 モ デ ル を用 い て検 討 した. に1時 間 震 盈 後 凍結 保 存.E群;前 予備 実 験 と して体 重 約3009の 雄 の ウ ィス タ ー系 ラ リガ ール リガ ール液 立 腺 を 細 切 し10% ウ リガ ール液 に1時 間 静置 後 凍結 保 存.F群;前 を 細 切 し10%ウ 対象 および実験方法 だ ちに 凍 結 保存,B群; なお,IO%ウ 立腺 リガ ー ル液 に1時 間 震 盛 後 凍結 保 存. リガ ー ル液 は27%D一 ソル ビ トール,5.4 %マ ン ニ トール を 含 ん だ 溶 液 でTURの さい に 用 い 泌 尿 紀 要31巻9号1985年 1658 られ る 灌 流 液 で あ る.ま shaker(太 た,震 陽 化 学 工 業)を 血 清 濃 度 に比 ぺ,前 立 腺 組 織 内濃 度 は30分 後 か ら90分 盟 装 置 はpersonal 用 い て,72回/minで 震盗 後 ま でほ ぼ 横 ば い 状 態 で,有 意 の差 は認 め られ なか っ た(Fig.1).こ し た. 濃度測定法 1.血 2r本 清濃度 MicrococcusluteusATCC9341株 を検 定 菌 とす 与30分 後 と した. 実験 A群 か らF群 の前 立 腺 組 織 内薬 剤 濃 度 は,Table2 に示 す ご と くで,お の お の の操 作 を 加 え るに した が っ る 薄 層 ペ ー パ ー デ ィ ス ク法 で 測 定 し た. 2.組 の 結果 よ りわ れ われ は 実 験 で お こな う前 立腺 摘 出 をCPZ投 織 内濃 度 一20℃ に 凍 結 保 存 し た 組 織 は 重 量 測 定 後,そ の う ●=Serum μ9!ml O=Prostatictissue ち19を 7.0)を 取 り,2mlの1/15Mリ ン 酸 緩 衝 液(pH 加 え て ホ モ ジ ナ イ ズ し た.ま 以 上19未 満 の 場 合 に は2ml,0・019以 た,重 未 満 の 場 合 は1m1,0.019未 量 が0・5g 沈 後,上 400 上0・59 300 満 の 場 合 は0・5mlの リ ン 酸 緩 衝 液 を 加 え て ホ モ ジ ナ イ ズ した.30分 3,000rpm遠 -i 500 間, / 200 清 を 取 りMicrococcusluteus / ATCC9341株 を 検定 菌 とす る 薄 層 ペ ーパ ーデ ィス ク 法 で 組 織 内 濃 度 を 測 定 し た.測 CCUS用 培 地 を 用 い た.血 量 線 作 成 に は,コ 水)を 結 / γ ク 定 用 培 地 はMicroco- 清濃 度 を 測 定 す る さい の検 ン セ ー ラ(日 100 /浸 306090minute Fig.1.Serumandprostatictissueconcentration 使 用 した. A∼F群 Table2. 果 に お け る前 立 腺 組 織 内CPZ 濃度 1.予 備実験 血 清 濃 度 は30分 後 に も っ と も高 く,以 後 減 少 した. 実 質 臓 器 で は,腎 臓,副 睾 丸 が 他 の 臓器 に 比 して高 く,血 清値 の2倍 か ら3倍 の値 を示 した(Table1). Table1.CPZ投 与30分 後,60分 るCPZの 後,90分 後 に おけ 経 時 的臓 器 内薬 剤 濃 度 群 操 作 内 容 S.D nm A前 立 腺 を 直 ちに凍 結 保 存4 258.549.3 B室 温 で1時 間 静 置後 凍 結 保 存4 386.0169.5 Clo%ウ リか ル液 〒11。静 置4 Dlo%ウ リガール液鴇 問踊4139.5 E細 切 し10%ウ リガ丁矯 籠344.1 F細 肌10%ウ リガ丁舗 115.6'31.6 62.6 6.5 癒436.0 11,8 n=numberm:meanS.D:standarddeviation "9/ml 600 400 200 1 Il 王 互 ABCDEFgrOUP m,mo8【S.E:st●nderd●rrer Fig.2.A∼F群 に お け る前 立 腺 組 織 内CPZ濃 度 川 嶋 。ほ か:TUR・ て 大 き くそ の 濃 度 は 低 下 し た(Fig.2)。 の ラ ッ トの う ち1匹 は,摘 な お,E群 間 内に ウ リガ ー ル液 中 に 溶 け 出 す な らば,C群 出 した前 立 腺 が 他 の ラ ヅ ト F群 示 す よ うに,A群 下,0.005以 0.025以 下,0。05以 はD群 下,0.025以 下 の 危 険 率 で,同 下,0.025以 険 率 で 有 意 に 高 値 を 示 し た.ま て,F群 CPZ前 はC群,D群,E群, の お の お の と 比 べ て0.005以 0.005以 で は濃 度 が低 下 し,ウ リガ ー ル液 中 で震 猛 したD群 で は さ ら に 低下 す る と推 測 され る.実 験 結 果 で はC群,D群 に 比 べ て 極 度 に 小 さ い た め に 除 外 し た. Fig.2に 1659 前立腺組織内濃度 下,0.01以 た,E群 はC群 に 比 し て お の お の0。025以 群 よ りも有意 に 低 値 を示 し,ウ 下, 様 にB群 立 腺 組 織 内濃 度 はA群,B群 は リガ ール液 が濃 度 に 影 響 を 及 ぼ す と判 定 され た,E群,F群 はTURを 下 の危 案 した モ デ ル で,と に比 し 液 中 に 静 置 あ るい は 震盛 した.す な わ ち,C群 下 の危 険 率 の の コ ン トロール 勘 もに 前 立 腺 を 細 切 し,ウ リガ ー ル に 細 切 操 作 を 加 え た の がE群 で,D群 を対 照 を対 照 に 細 切 操 作 を 加 え た の がF群 で あ る.実 験 結果 で は,E群 で 有 意 に 低 値 を 示 し た. 考 群 に 比 して,F群 察 はC はD群 に 比 し て 有 意 にCPZ濃 度 は 低 値 を 示 した こ とに よ り,前 立 腺 細 切操 作 は さ らに 現在,抗 菌 薬 の前 立 腺 組 織 内濃 度 はEPSま た は手 術 に よっ て 得 た 組 織 に つ い て 測 定 され て い るth:1'"6), そ の濃 度 を 低 下 させ る と考 え られ た.ま た,C群 群,E群 とF群 の間 に はCPZ濃 とD 度 に 有 意 の差 が 認 め そ の お のお の の 検 体 に は い くつ か の 問 題 点 が 考 え られ られ なか った こ とか ら,本 実 験 でお こな った 震盤 操 作 る.EPSで は前 立 腺 組 織 内薬 剤 濃 度に は影 響 を 及 ぼ さなか っ た. は,前 立 腺 の 腺 腔 内 分 泌 液 を 非 生理 的 に 圧 出 し て お り,ま た,測 定 す るに 十 分 な 量 を 採 取 す る こ の実 験 が どの程 度 臨床 に あ ては ま るか 推 測 の 域 を こ とが なか な か 困 難 で あ る.手 術 に よって 得 た 検 体 で で な いが,TURは は,組 織 内濃 度,分 泌 液 内濃 度,さ に 大 き な影 響 を 及 ぼ す こ とが示 唆 され た. らに,血 液 内 濃 度 の混在 した も のを 測 定 し て お り,ま たOpenは 摘出 1)電 気 凝 固 の薬 剤 へ の影 響,2)灌 操 作に よる薬 剤 の拡 散,3)細 以 上 の こ と よ り,前 立腺 組 織 内 の抗 菌 薬 濃度 測 定に は,TURよ 操 作 時 の前 立 腺 液 の漏 出が あ る と考 え られ,TURは 流 液 また は 震 盟 片 化 に よる組 織 液 の漏 少 な く とも前 立 腺 組 織 内薬 剤濃 度 りむ しろOpenに よ って 得 られ た組 織 を用 い た方 が,抗 菌 薬 に対 す る影 響 は少 な く,真 の濃 度に 近 い値 を示 す と考 え られ た. 出 な どが あ り,そ の影 響 の程 度 も不 明 で あ る. 結 語 抗菌 薬 の前 立 腺 液 へ の移 行 に 関 してStameyら7・s) は1)脂 3)高 溶 性 で あ る こ と,2)塩 い解 離 定 数 を もつ こ と,4)蛋 基 性 で あ る こ と, 白結 合 能 が 低 い な どの性 質 に よっ て決 定 され る と報 告 し て い る.し か し,広 く臨床 で使 用 され て い るCefem系 るCPZは,こ 抗生剤であ れ ら の特 性 に 相 反 す るた め に 前 立 腺 液 へ の移 行 は低 い と考 え られ て いた が,近 年 では 諸 家 の報告 に よる と十 分 な臨 床 効 果 の得 られ る濃 度 が 前 立 腺 に移 行 す る と 言 われ て い る5・9'"1z).CPZの 前立腺 1.血 清CPZ濃 度 は,30分 後 に ピ ー クを 示 し以 後低 下 した が,前 立 腺 組 織 内 濃度 は30分 後 か ら90分 後 まで,ほ ぼ横 ば い状 態 を 示 した. 2.前 立 腺 組 織 を10%ウ リガ ー ル液 に 浸 す こ と,組 織 を 細 切す る こ とは 前 立 腺 組 織 内 のCPZ濃 度に 対 して 大 きな影 響 を与 えた. 3,震 盗 操 作 はCPZ濃 度に 影響を 及 ぼ さ なかっ た. 組 織 内濃 度 は宮 田 ら恥 の報 告 に よ る と臨 床 的 に 十 分 効 果 が得 られ る 濃 度 ま で上 昇 し,血 清 濃 度 は 約30分 後 に,前 立腺 濃 度 は血 清 濃 度 に や や 遅 れ て60分 後 に ピー 本論文の要 旨は第31回 日本化学療法学 会東 日本支部 総会に おいて発表 した. クを示 して い るが,わ れ わ れ の ラ ッ トを 用 いた 予 備 実 文 験 では,血 清 濃 度 は 人 間 と 同様 に30分 後 に ピー クを 示 した が,前 立 腺 組 織 内濃 度 は30分 か ら90分 後 まで ほ ぼ 1)門 脇 照雄 ・秋 山 隆 弘 横 ば い状 態 で血 清 に 比 して前 立 腺 組 織 か ら の排 泄 が 遅 CEFAZOLIN(CEZ)の い よ うで あ る. つ い て.西 本実 験 のA群 お よびB群 は コ ン トロー ル群 で 両 者 に 2)足 ウ リガ ー ル液 に よ る 影 響 を み た もの で,CPZが は 短時 直 ・栗 田 孝: 前立腺組織への移行に 日泌 尿39:744∼747,1977 立 望 太 郎 ・桜 木 勉 ・斉 藤 泰 ・近 藤 厚=抗 究,Chemotherapy24=1343∼1344,1976 間 以 内 な らば 室温 の影 響 はC群 以 下 の 実 験 で 無 視 して よい と思 わ れ た ・C群,D群 。八竹 生 剤 の前 立 腺 組 織 お よび 精 液 内移 行に 関す る 研 有 意 の差 は な く,室 温 下静 置 に よる薬 剤 濃 度 の 影 響 は な い と考 え られ,1時 献 3)松 浦 治 ・小 野 佳 成 ・竹 内 宣 久 ・大 島 伸 一=セ ァ セ ト リル の 前 立 腺 臓 器 内 濃 度 の 検 討.日 フ 泌 尿会 1660 泌 尿 紀 要31巻9号1985年 TA:DiffUsionofantibioticsfromplasma 誌72:1511,1981 4)荒 木 博 孝 ・前 川 幹 雄 。三 品 輝 男 ・内 田 睦 ・渡 辺 決 ・海 法 裕 男:Ceftizoxime(CZX)の intoprostaticfluid,Nature219:139∼143, 1968 血清 およ び 前 立 腺 組 織 内 へ の 移 行 に つ い て.泌 尿 紀 要27= 9)第27回 T-1551抄 149∼155,1981 5)福 島 修 司 ・三 浦 川 信 ・岩 崎 猛6近 藤 猪 一 郎 ・藤 井 浩 ・広 10)上 田 前 立 腺 組 織 内 へ の 移 行.泌 11)宮 尿 糸己要29:87∼93,1983 田 和 豊 ・荒 木 豊 子 ・高 本 ト前 立 腺 液 へ の 抗 菌 剤 移 行 の 検 討 一 第5群CEPsの5剤 Chemotherapy29=345∼346,1981 7)StameyTA,・McaresEMandWinningham 徹 ・松 村 陽 右 ・石 戸 則 孝 ・棚 橋 均 ・平 野 418,1981 12)池 田 滋 「 ・石 橋 晃 ・小 柴 健:Ceftiz・xime (CZX),Cefoperazone(CPZ),Cefotaxime DG=ChrQnicbacterialprostat量tisandthe (CTX)の 示己要30:1135∼1142,1984 Urol,103:187∼194,1970 淳 前立腺 組 織 内 移 行 に 関 す る 検 討 。 西 日 泌 尿43:413∼ に つ い て 一. diffusionofdrugsintoprostaticfluid.J 8)winninghamDG,NemoyNJandStamey 学 ・大 森 弘 之 ・近 藤 ・難 波 克 一 ・片 山 泰 弘;Cefbperazoneの 木 恵 三 ・名 出 頼 男 ・藤 田 民 夫 ・置 塩 則 彦 ・山 越 剛 ・浅 野 晴 好 ・玉 井 秀 亀=ヒ 録 集,1979 泰=Cefoperazone.JapJAntibio35= 1104∼1'126,1982 晧 ・石 塚 栄 一 ・北 島 直 登:Cefo- perazone(CPZ)の 6)鈴 日 本 化 学 療 法 学 会 総 会 新 薬 シ ン ポ ジ ウ ムI 前 立 腺 組 織 内 移 行 に 関 す る検 討.泌 (1985年1月7日 尿 受 付)