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本論文:
抗てんかん薬簡易分析法の確立と多剤併用小児てんかん患者への応
用
Es t abl i shm ent of S i m pl e Det erm i nat i on Met hods of Ant i ep i l ept i c Dru gs
and Appl i cat i on t o Therap eut i c Dru g Moni t ori ng of Inf an t P at i ent s wi t h
Epi l eps y Und ergoi n g P ol yph arm a c y
平 成 27 年 度
論文博士申請者
髙橋
良 平 (Takah ashi , Ryohei )
指導教員
吉田
久博
目次
緒言
1
第 1 章
薬物特性と分析方法
4
1. 薬 物 特 性
4
2. 分 析 方 法
5
3. 結 果
12
4.考 察
17
第 2 章
患者血中濃度測定と動態特性
24
1. 対 象 患 者
24
2. 方 法
24
3. 結 果
26
4. 考 察
31
第 3 章
新規測定法の臨床応用
35
症例 1
35
症例 2
36
総
括
38
謝
辞
39
引用文献
40
図・表
43
緒言
正常なニューロンは興奮性シグナルと抑制性シグナルとのバラン
ス に 応 じ て 興 奮 す る .一 方 ,て ん か ん は ,抑 制 性 シ グ ナ ル の 減 弱 ,興
奮 性 シ グ ナ ル の 過 剰 ,シ グ ナ ル 伝 達 シ ナ プ ス 間 の 受 容 体 異 常 な ど に よ
り ,こ れ ら バ ラ ン ス が く ず れ ,発 作 が 起 き る 状 態 を 言 う .発 作 部 位 に
より部分発作や全身発作などに分類され,各々多彩な症状を呈する.
ま た 発 病 年 齢・基 礎 疾 患・発 作 間 欠 時 の 症 状・経 過 な ど を 統 合 的 に 判
断 し ,て ん か ん 分 類 を 行 い ,て ん か ん 診 療 に あ た る . て ん か ん は 種 々
の 成 因 に よ っ て も た ら さ れ る 慢 性 の 脳 疾 患 で ,そ の 多 く が 幼 児 期 に 発
病 す る 小 児 特 有 の 疾 病 で あ る .発 症 率 は 小 児 に 多 く ,脳 の 成 長 と と も
に 減 少 し , 脳 卒 中 な ど の 脳 疾 患 に 伴 い 高 齢 者 で 増 加 す る ( Fi g. 1) .
て ん か ん の 薬 物 療 法 は ,発 作 型 や 各 て ん か ん 分 類・症 候 群 を も と に ,
年 齢 ,性 別 な ら び に 薬 物 代 謝 の 個 人 差 を 考 慮 し ,抗 て ん か ん 薬 を 選 択
す る .効 果 が 充 分 で な い ,ま た は 副 作 用 が 効 果 を 上 回 っ て い る 場 合 に ,
抗てんかん薬の評価を行う.抗てんかん薬の評価は投与量の至適化,
個 別 化 も 考 慮 に 入 れ る べ き で あ る .そ の 場 合 ,薬 物 血 中 濃 度 測 定 が 有
用 で あ る .血 中 濃 度 が 測 定 で き な い 場 合 ,血 中 濃 度 が 低 い た め 増 量 す
べ き な の か ,第 一 選 択 薬 が 無 効 な の か 判 断 で き ず ,治 療 選 択 の 幅 を 狭
め る こ と が で き な い .そ の た め ,血 中 濃 度 測 定 は き わ め て 重 要 で あ る .
そ れ ら の 結 果 を 踏 ま え ,次 の 治 療 薬 を 選 択 す る .第 二 選 択 薬 を 追 加 す
る 場 合 ,併 用 す る 薬 剤 が 増 え る こ と に よ り ,薬 物 相 互 作 用 を 発 現 す る
可 能 性 が あ り ,こ の 点 か ら も 抗 て ん か ん 薬 の 血 中 濃 度 測 定 は 重 要 で あ
る .薬 物 血 中 濃 度 測 定 は ,特 定 薬 剤 治 療 管 理 料 と し て 認 め ら れ て い る
が ,保 険 請 求 で き る の は 月 2 回 ま た は 2 剤 と 決 め ら れ て い る .そ の た
1
め ,多 剤 併 用 す る 場 合 や 頻 回 測 定 を 要 す る 場 合 ,安 価 で 簡 易 な 測 定 方
法を確立することは極めて重要である.
ま た ,小 児 に お け る 抗 て ん か ん 薬 の 血 中 濃 度 測 定 は ,採 血 自 体 が 大
き な 負 担 と な る .一 般 に 検 体 検 査 を 行 う 場 合 ,成 人 ・ 小 児 の 区 別 な く
一 定 量 の 試 料 が 必 要 で あ る .血 液 は 分 注 な ど の デ ッ ド ボ リ ュ ー ム や 複
数 回 測 定 の 必 要 性 も 考 慮 し て , 血 漿 0.2m L に 対 し , 全 血 液 量 と し て
2m L 程 度 が 必 要 と な る .こ の 量 は 成 人 で は 42m L に 相 当 し ,患 児 に 大
き な 負 担 を 強 い る こ と に な る .そ の た め ,欧 州 の 基 準 で は ,循 環 血 液
量 の 3% を 超 え ず ,か つ 1 回 量 と し て 1%を 超 え な い 量 で あ る こ と が 示
さ れ て い る .こ の よ う な 観 点 よ り ,小 児 の 薬 物 療 法 に は ,よ り 少 量 の
試料で測定できる微量高感度分析法の確立が望まれている.
新 規 抗 て ん か ん 薬 の 一 部 の 薬 物 に つ い て は ,海 外 で は ,測 定 キ ッ ト
が開発
1, 2)
されており,汎用機器を用いて測定が可能であるが,使用
頻 度 の 低 い 薬 物 に つ い て は 国 内 販 売 さ れ て お ら ず ,臨 床 現 場 で 適 応 す
る に は 経 営 面 の 問 題 も 生 じ て い る . ま た , LC / MS を 用 い た 報 告
3-5)
も
あ る が 機 器 導 入 費 ,保 守 費 用 な ど の 観 点 か ら 医 療 現 場 で は 普 及 し て い
な い . ま た , HP LC に よ る 測 定 法 も い く つ か 報 告
6-11)
されているが,
試 料 量 が 多 く 必 要 な た め ,小 児 の 血 中 濃 度 測 定 に は 適 し て い な い .前
処 理 や 費 用 に 関 し て ,固 相 抽 出 や 液 液 抽 出 は 調 製 に 時 間 を 要 し ,手 技
に 習 熟 す る 必 要 が あ る .ま た ,資 材 費 を 要 す る こ と か ら ,臨 床 現 場 で
迅 速 か つ 安 価 に 実 施 す る に は 適 し て い な い .さ ら に 特 異 性 試 験 に つ い
て は ,数 種 の 薬 剤 に つ い て 検 討 さ れ て い る の み で あ り ,併 用 薬 に つ い
て 網 羅 的 に 検 討 さ れ て い な い た め ,実 臨 床 で の 多 剤 併 用 患 者 の 検 体 測
定 に は 適 し て い な い 可 能 性 が あ る .ま た ,外 注 検 査 に よ る 測 定 も 可 能
であるが,結果判明までに時間を要し,別途採血が必要となる.
2
以 上 の 問 題 点 を 解 決 す る こ と を 目 的 と し て ,本 研 究 で は ,難 治 性 小
児 て ん か ん 患 者 の 治 療 に 用 い ら れ る 3 種 の 新 規 抗 て ん か ん 薬 ,す な わ
ち ト ピ ラ マ ー ト ,ラ モ ト リ ギ ン お よ び ス チ リ ペ ン ト ー ル の 簡 便 か つ 迅
速 に 微 量 試 料 で 高 感 度 分 析 可 能 な 測 定 方 法 の 開 発 を 試 み た .ま た ,今
回 開 発 し た 簡 易 測 定 方 法 を 臨 床 応 用 し ,そ の 有 用 性 に つ い て 評 価 し た
12-14)
.
本 論 文 で は 研 究 成 果 を ,第 1 章 ; 薬 物 特 性 と 分 析 方 法 ,第 2 章 ; 患
者 血 中 濃 度 測 定 と 動 態 特 性 ,第 3 章 ; 新 規 測 定 法 の 臨 床 応 用 の 3 章 に
分けて論述する.
3
第 1章
薬物特性と分析方法
1. 薬 物 特 性
1-1. ト ピ ラ マ ー ト
ト ピ ラ マ ー ト ( Fi g. 2) は , 分 子 量 339 .36 で , pK a8.7 の 酸 性 薬 物 で
あ り , ( オ ク タ ノ ー ル / 水 ) 分 配 係 数 は l o gP C =0.59 で ,適 度 な 脂 溶 性
を 有 し て い る .特 異 的 な UV 吸 収 が な く 蛍 光 発 光 し な い が ,特 異 な 官
能 基 (ス ル ホ ン ア ミ ド 基 ) を 有 す る こ と か ら , ラ ベ ル 化 剤 を 用 い た
HP LC 法 に よ る 血 中 ト ピ ラ マ ー ト 濃 度 測 定 法 が 報 告 さ れ て い る
6)
.し
か し こ の 方 法 は ,多 く の 試 料 量 (100 0 µ L) を 必 要 と す る こ と か ら ,採
血 量 の 少 な い 小 児 患 者 試 料 に 適 用 す る に は 難 し い 状 況 で あ る .し た が
っ て ,本 研 究 で は ,ラ ベ ル 化 剤 を 変 更 し ,よ り 簡 易 で 高 感 度 な 微 量 分
析法の開発を行った.
1-2 . ラ モ ト リ ギ ン
ラ モ ト リ ギ ン ( Fi g. 3) は , 分 子 量 256 .09 で , pK a5.7 の 塩 基 性 薬 物
で あ る . ( オ ク タ ノ ー ル / 水 ) 分 配 係 数 は l o gP C =0.9 で あ り 良 好 な 脂
溶 性 を 有 し て い る . UV 検 出 器 に よ る 血 中 ラ モ ト リ ギ ン 濃 度 測 定 法 の
報告
7-10)
が さ れ て い る が , そ の ほ と ん ど は 多 く の 試 料 量 (200 µ L) を
必要とすることから
9, 10)
,採 血 量 の 少 な い 小 児 て ん か ん 患 者 試 料 へ 適
用 す る の は 困 難 で あ る .ま た ,こ れ ら 報 告 の 多 く は ,測 定 法 の 有 効 性
や分析精度について多施設間での比較検討がなされていない
7-10)
.さ
ら に ,血 中 ラ モ ト リ ギ ン 濃 度 測 定 法 に 対 す る 併 用 薬 の 影 響 に つ い て 生
体試料を用いて詳細に検討した報告は少なく
7-10)
,小 児 検 体 を 用 い た
検 討 は ほ と ん ど 行 わ れ て い な い . し た が っ て 本 研 究 で は , 小 児 TDM
4
に 適 し た よ り 簡 易 な 前 処 理 方 法 を 用 い た UV 検 出 器 に よ る 微 量 分 析 法
の開発を行った.
1-3 . ス チ リ ペ ン ト ー ル
ス チ リ ペ ン ト ー ル (Fi g. 4) は , 分 子 量 234.29 で , pK a1 4.2 で あ り ,
(オ ク タ ノ ー ル / 水 ) 分 配 係 数 は l o gP C =2.9 4 と 極 め て 脂 溶 性 が 高 く ,
水 に 溶 け に く い 薬 物 で あ る . 順 相 系 の 移 動 相 を 用 い た HP LC に よ る
血中スチリペントール濃度測定法の報告
11 )
もされているが,併用薬
の測定系への影響に関する研究は未だ報告されていない.また既報
では,前処理において液液抽出
11 )
を用いており,迅速に測定を開始
す る の は 困 難 で あ る . さ ら に , 試 料 量 が 多 く 必 要 (100 µ L) な こ と
11 )
から,採血量の少ない小児患者へ適用するのは困難である.した
がって,本研究では臨床現場で迅速に測定することを目的として,
選択性の高い蛍光検出器による簡易な分析法の開発を行った.
2. 分 析 方 法
2-1 . ト ピ ラ マ ー ト
2-1-1 . 試 薬
ト ピ ラ マ ー ト は S IGMA -A LDR IC H 社 よ り 購 入 し た .4 - エ チ ル ベ ン ゼ
ン ス ル ホ ン ア ミ ド お よ び 4 - ク ロ ロ -7 - ニ ト ロ ベ ン ゾ フ ラ ザ ン ( Fi g. 2 )
は 東 京 化 成 工 業 ( 株 ) よ り 入 手 し た . 60% 過 塩 素 酸 は 関 東 化 学 ( 株 )
製 を 用 い , ア セ ト ニ ト リ ル , メ タ ノ ー ル お よ び 精 製 水 は す べ て HP LC
用を用いた.新鮮凍結血漿は日本赤十字社より入手した.
2-1-2 . 標 準 溶 液 お よ び 試 薬 の 調 製
ト ピ ラ マ ー ト 標 準 溶 液 は ト ピ ラ マ ー ト 50.0 m g を メ タ ノ ー ル に て
5
50 . 0 m L に 溶 解 し た も の を ,内 部 標 準 物 質 ( I.S .) と し て 4 - エ チ ル ベ ン
ゼ ン ス ル ホ ン ア ミ ド を , ま た 蛍 光 ラ ベ ル 化 剤 と し て 4- ク ロ ロ -7- ニ ト
ロ ベ ン ゾ フ ラ ザ ン を 使 用 し た . そ れ ぞ れ 50 m g を メ タ ノ ー ル に て 5 0
m L に 溶 解 し た . ま た , I.S . は , 4 - エ チ ル ベ ン ゼ ン ス ル ホ ン ア ミ ド を ,
2 5 0 µ g/ m L の 濃 度 に な る よ う に メ タ ノ ー ル で 希 釈 し た も の を 使 用 し た .
ト ピ ラ マ ー ト , 4 - エ チ ル ベ ン ゼ ン ス ル ホ ン ア ミ ド お よ び 4 - ク ロ ロ -7 ニ ト ロ ベ ン ゾ フ ラ ザ ン は , 溶 解 後 4℃ 保 存 に て 2 ヶ 月 間 安 定 な こ と か
ら,調製後 2 か月以内のものを使用した.
2-1-3 . 試 料 調 製
1 . 5 m L の 遠 心 用 チ ュ ー ブ に ,各 濃 度 に 調 製 し た 検 量 線 用 ス タ ン ダ ー
ド ま た は 血 漿 試 料 100 μ L を 分 取 し , 10 µ L の I.S . を 添 加 後 , 除 タ ン パ
ク 処 理 お よ び pH 調 整 と し て 100 µ L の 6% 過 塩 素 酸 を 加 え て 撹 拌 後 ,
1 5 分 間 放 置 し た .さ ら に ,ジ ク ロ ロ メ タ ン 1 m L を 加 え ,10 分 間 混 和
し た 後 , 20 ℃ , 17, 400× g で 15 分 間 遠 心 分 離 し , 水 相 を 除 去 し た 後 ,
窒 素 気 流 下 で ジ ク ロ ロ メ タ ン 層 を 留 去 し た .残 渣 に 精 製 水 100 µ L,4 ク ロ ロ -7 - ニ ト ロ ベ ン ゾ フ ラ ザ ン 溶 液 100 µ L,お よ び 0.1 M 炭 酸 水 素 ナ
ト リ ウ ム 水 溶 液 25 µ L を 加 え , 55 ℃ に て 120 分 間 反 応 さ せ た . 次 に ,
室 温 に も ど し た 後 , HP LC 用 バ イ ア ル に 移 し , 測 定 試 料 と し た .
2-1-4 . 測 定 機 器 お よ び 測 定 条 件
HP LC 分 析 装 置 に は ,バ イ ナ リ ポ ン プ S L,デ ガ ッ サ ,オ ー ト サ ン プ
ラ ー , カ ラ ム コ ン パ ー ト メ ン ト (恒 温 槽 ) , お よ び 蛍 光 検 出 器 で 構 成
さ れ た A gi l ent 1200 seri es の HP LC シ ス テ ム ( A gi l ent Tech nol ogi es 社 製 )
を 用 い た . 分 析 カ ラ ム に は , Di scov er y HS -C 18 col um n (3 µ m , 4.6
m m ×150 m m , S IGM A -A LDR IC H 社 製 ) を 用 い ,測 定 時 50 ℃ に 保 ち ,ガ
ー ド カ ラ ム と し て In ert si l ODS -80A (5 µm , 10×4.0 m m , GL S ci ences 社
6
製 ) を 使 用 し た .移 動 相 は 25 m M リ ン 酸 緩 衝 液 (p H2.5 ) / メ タ ノ ー ル
/ ア セ ト ニ ト リ ル (50 : 40 : 10, v/ v/ v) を 1.0 m L/ m i n で 送 液 し て 分 析
を 行 っ た . HP LC 注 入 量 は 1 回 20 µ L で あ り , ト ピ ラ マ ー ト の 検 出 に
は 蛍 光 検 出 器 (E x / Em: 470 / 537 nm ) を 使 用 し た . ま た 測 定 試 料 は ,
調 製 後 各 測 定 開 始 時 間 ま で 4℃ に て 保 存 し た .
2-1-5 . 検 討 項 目
測 定 法 の 妥 当 性 を 明 ら か に す る た め ,検 量 線 お よ び 直 線 性 ,定 量 再
現 性 ,な ら び に 特 異 性 試 験 に つ い て 検 討 し た .検 量 線 用 ス タ ン ダ ー ド
溶 液 は , 標 準 溶 液 10 .0 µ L に 新 鮮 凍 結 血 漿 90 .0 µ L を 添 加 し 撹 拌 し た
後 , 新 鮮 凍 結 血 漿 に て 希 釈 を 行 い , 0 .1, 0.2, 0.5, 1.0, 2. 0, 4. 0, 8. 0, 16 . 0
お よ び 32.0 µ g/ m L の 濃 度 溶 液 を 調 製 し た . 各 試 料 中 薬 物 濃 度 の 測 定
に は , 当 該 薬 物 の ピ ー ク 面 積 を I.S . の ピ ー ク 面 積 で 補 正 す る 内 部 標 準
法を用いて評価した.
【検量線】検量線の作成には,各濃度 3 点の平均値を使用し,最小 2
乗法を用いて直線性を評価した.
【再現性】日内の定量再現性は,治療濃度域を中心に各濃度につき 5
回 繰 り 返 し 測 定 す る こ と に よ っ て 評 価 し た .ま た ,同 様 の 濃 度 で 5 日
間 に 渡 り 定 量 す る こ と に よ り 日 間 再 現 性 を 評 価 し た .精 度 は 変 動 係 数
(C .V.) に て 評 価 し ,正 確 度 は ( 定 量 値 / 理 論 値 ) × 100 % で 評 価 し た .
な お , 判 断 基 準 は Uni t ed St at es P har m acopei a (US P ) の 基 準
15)
を参照
した.
【 特 異 性 】特 異 性 試 験 に つ い て は ,健 常 人 よ り 得 ら れ た 新 鮮 凍 結 血 漿
を 用 い て 内 因 性 物 質 の 影 響 を 確 認 し た .ま た ,抗 て ん か ん 薬 20 種 類 ,
国内未承認の抗てんかん薬 4 種類ならびに抗てんかん薬の代謝物 4 種
類 を 併 用 し た 時 の 影 響 に つ い て 精 査 し た .検 討 を 行 っ た 薬 剤 は ,ア セ
7
タゾラミド,エトスクシミド ,オクスカルバゼピン,オクスカルバ
ゼ ピ ン 代 謝 物 で あ る 10 - モ ノ ヒ ド ロ キ シ カ ル バ ゼ ピ ン ,ガ バ ペ ン チ ン ,
カ ル バ マ ゼ ピ ン ,カ ル バ マ ゼ ピ ン 代 謝 物 で あ る カ ル バ マ ゼ ピ ン -10, 11 エポキシド,クロナゼパム,クロバザム,クロバザム代謝物である
N- デ ス メ チ ル ク ロ バ ザ ム ,ジ ア ゼ パ ム ,臭 化 カ リ ウ ム ,ス チ リ ペ ン ト
ー ル ,ス ル チ ア ム ,ゾ ニ サ ミ ド ,チ ア ガ ビ ン ,ト ピ ラ マ ー ト ,ニ ト ラ
ゼ パ ム ,バ ル プ ロ 酸 ,ビ ガ バ ト リ ン ,フ ェ ニ ト イ ン ,フ ェ ニ ト イ ン 代
謝 物 で あ る p - ヒ ド ロ キ シ フ ェ ニ ト イ ン ,フ ェ ノ バ ル ビ タ ー ル ,フ ェ ル
バ メ ー ト ,プ リ ミ ド ン ,ラ モ ト リ ギ ン ,ル フ ィ ナ ミ ド お よ び レ ベ チ ラ
セ タ ム で あ り ,薬 物 の 濃 度 は 一 般 的 に 用 い ら れ て い る 臨 床 治 療 濃 度 を
使用した.
2-2 . ラ モ ト リ ギ ン
2-2-1 . 試 薬
ラ モ ト リ ギ ン お よ び ク ロ ル ゾ キ サ ゾ ン
( Fi g.
3)
は
S IGMA -A LDR IC H 社 よ り 購 入 し た .ア セ ト ニ ト リ ル ,メ タ ノ ー ル お よ
び 精 製 水 は す べ て HP LC 用 を 用 い た .新 鮮 凍 結 血 漿 は 日 本 赤 十 字 社 よ
り入手した.
2-2-2 . 標 準 溶 液 お よ び 試 薬 の 調 製
ラ モ ト リ ギ ン 標 準 溶 液 は ,ラ モ ト リ ギ ン 50 .0 m g を メ タ ノ ー ル に て
5 0. 0 m L に 溶 解 し た も の を 使 用 し た .同 様 に ,I.S . と し て 用 い た ク ロ ル
ゾ キ サ ゾ ン に つ い て も 50 m g を ア セ ト ニ ト リ ル 50 m L に 溶 解 し , 2 0
µ g/ m L の 濃 度 に 希 釈 し た も の を 使 用 し た .ラ モ ト リ ギ ン お よ び ク ロ ル
ゾ キ サ ゾ ン は , 溶 解 後 4℃ 保 存 に て 2 ヶ 月 間 安 定 な こ と か ら , 調 製 後
2 か月以内のものを使用した.
8
2-2-3 . 試 料 調 製
1 . 5 m L の 遠 心 用 チ ュ ー ブ に ,各 濃 度 に 調 製 し た 検 量 線 用 ス タ ン ダ ー
ド ま た は 血 漿 試 料 100 μ L を 分 取 し , 100 µ L の I.S . を 加 え て 撹 拌 後 ,
1 5 分 間 放 置 し た .20 ℃ ,17,400 × g で 15 分 間 遠 心 分 離 し ,上 清 100 µ L
を HP LC 用 バ イ ア ル に 移 し ,精 製 水 50 µ L を 加 え て 撹 拌 し た 後 ,定 量
を試みた.
2-2-4 . 測 定 機 器 お よ び 測 定 条 件
HP LC 分 析 装 置 に は ,バ イ ナ リ ポ ン プ S L,デ ガ ッ サ ,オ ー ト サ ン プ
ラ ー , カ ラ ム コ ン パ ー ト メ ン ト ( 恒 温 槽 ) お よ び UV 検 出 器 に て 構 成
さ れ た A gi l ent 1200 seri es の HP LC シ ス テ ム ( A gi l ent Te chnol ogi es ) を
用 い た . 分 析 カ ラ ム に は , C ad enz a C D -C 18 col um n (3 µ m , 4.6 mm ×150
m m , Im t akt ) を 用 い , 測 定 時 50 ℃ に 保 ち , ガ ー ド カ ラ ム と し て
M i ght ysi l R P -18 GP 5 -4.6 (5 µ m , 関 東 化 学 ) を 使 用 し た . 移 動 相 は A:
25 m M リ ン 酸 緩 衝 液 (pH4.6 ) , B: メ タ ノ ー ル - ア セ ト ニ ト リ ル 混 液
(4: 3, v/ v) を 32 -37 %B (0 -23 m i n) , 32 %B (23 -26 m i n) , 1. 0 m L/ m i n で 送
液 し て 分 析 を 行 っ た . HP LC 注 入 量 は 1 回 20 µ L で あ り , ラ モ ト リ ギ
ン の 検 出 に は UV 検 出 器 ( UV: 215 nm ) を 使 用 し た .ま た 測 定 試 料 は ,
試 料 調 製 後 , 測 定 開 始 直 前 ま で 4℃ に 保 存 し た .
2-2-5 . 検 討 項 目
ラ モ ト リ ギ ン 測 定 法 の 妥 当 性 を 明 ら か に す る た め ,検 量 線 お よ び 直
線 性 ,定 量 再 現 性 ,な ら び に 特 異 性 試 験 に つ い て 検 討 し た . 検 量 線 用
ス タ ン ダ ー ド 溶 液 は , 標 準 溶 液 10 .0 µ L に 新 鮮 凍 結 血 漿 90.0 µ L を 添
加 し 撹 拌 し た 後 ,新 鮮 凍 結 血 漿 に て 希 釈 を 行 い ,0.1, 0. 3 , 0.5, 1 .0, 2 . 0,
4. 0 , 8 .0,16 .0 お よ び 32 .0 µ g/ m L の 濃 度 溶 液 を 調 製 し た . 各 試 料 中 薬 物
濃 度 の 測 定 に は , 当 該 薬 物 の ピ ー ク 面 積 を I.S . の ピ ー ク 面 積 で 補 正 す
9
る内部標準法を用いて評価した.
【検量線】検量線の作成には,各濃度 3 点の平均値を使用し,最小 2
乗法を用いて直線性を評価した.
【再現性】日内の定量再現性は,治療濃度域を中心に各濃度につき 5
回 繰 り 返 し 測 定 す る こ と に よ っ て 評 価 し た .ま た ,同 様 の 濃 度 で 5 日
間に渡り定量することで日間再現性を評価した.精度は変動係数
(C .V.) と し て 評 価 し ,正 確 度 は ( 定 量 値 / 理 論 値 ) × 1 00% と し て 評 価
し た . な お , 判 断 基 準 は US P の 基 準
15)
を参照にした.
【 特 異 性 】特 異 性 試 験 に つ い て は ,健 常 人 よ り 得 ら れ た 新 鮮 凍 結 血 漿
を 用 い て 内 因 性 物 質 の 影 響 を 確 認 し た .ま た ,抗 て ん か ん 薬 20 種 類 ,
国内未承認の抗てんかん薬 4 種類ならびに抗てんかん薬の代謝物 4 種
類 を 併 用 し た 時 の 影 響 に つ い て 精 査 し た .検 討 し た 薬 剤 名 の 詳 細 は ト
ピラマートの項を参照のこと.
2-3 . ス チ リ ペ ン ト ー ル
2-3-1 . 試 薬
ス チ リ ペ ン ト ー ル お よ び キ サ ン ト ン (Fi g. 4) は 和 光 純 薬 工 業 株 式
会 社 よ り 購 入 し た .ア セ ト ニ ト リ ル ,メ タ ノ ー ル お よ び 精 製 水 は す べ
て HP LC 用 を 用 い た . 新 鮮 凍 結 血 漿 は 日 本 赤 十 字 社 よ り 入 手 し た .
2-3-2 . 標 準 溶 液 お よ び 試 薬 の 調 製
ス チ リ ペ ン ト ー ル 標 準 溶 液 は ス チ リ ペ ン ト ー ル 50.0 m g を メ タ ノ
ー ル に て 50 .0 m L に 溶 解 し た も の を , ま た I.S . と し て 用 い た キ サ ン ト
ン は 50 m g を ア セ ト ニ ト リ ル に て 50 m L に 溶 解 し , 200 µ g/ m L の 濃 度
に な る よ う に 溶 解 し た も の を 使 用 し た .ス チ リ ペ ン ト ー ル お よ び キ サ
ン ト ン は , 溶 解 後 4℃ 保 存 に て 2 ヶ 月 間 安 定 な こ と か ら , 調 製 後 2 か
10
月以内のものを使用した.
2-3-3 . 試 料 調 製
1.5 m L の 遠 心 用 チ ュ ー ブ に ,各 濃 度 に 調 製 し た 検 量 線 用 ス タ ン ダ ー
ド ま た は 血 漿 試 料 10 μ L を 分 取 し ,50 µ L の I.S . を 加 え て 攪 拌 し た 後 ,
1 5 分 間 放 置 し た .2 0℃ ,17,400×g で 1 5 分 間 遠 心 分 離 し ,上 清 を HP LC
用バイアルに移し,測定試料とした.
2-3-4 . 測 定 機 器 お よ び 測 定 条 件
HP LC 分 析 装 置 に は ,バ イ ナ リ ポ ン プ S L,デ ガ ッ サ ,オ ー ト サ ン プ
ラ ー , カ ラ ム コ ン パ ー ト メ ン ト (恒 温 槽 ) お よ び 蛍 光 検 出 器 か ら 構 成
さ れ た A gi l ent 1200 seri es の HP LC シ ス テ ム ( A gi l ent Te chnol ogi es ) を
用 い た .分 析 カ ラ ム に は ,Di scov er y HS -C 18 col um n (3 µ m , 4. 6 mm ×150
m m , S IGMA -A LDR IC H) を 用 い , 測 定 時 50 ℃ に 保 ち , ガ ー ド カ ラ ム と
し て In ert si l ODS -80A (5 µ m , 10 m m ×4.6 mm , G L S ci ences ) を 使 用 し た .
移 動 相 は 25 m M リ ン 酸 緩 衝 液 (p H2.6 ) / ア セ ト ニ ト リ ル (43 : 57, v /
v) を 1.5 m L/ m i n で 送 液 し て 分 析 を 行 っ た . HP LC 注 入 量 は 1 回 5 µ L
で あ り , ス チ リ ペ ン ト ー ル の 検 出 に は 蛍 光 検 出 器 (Ex / E m : 210 / 400
nm ) を 使 用 し た . ま た 測 定 試 料 は , 試 料 調 製 後 各 測 定 開 始 時 間 ま で
4℃ に 保 存 し た .
2-3-5 . 検 討 項 目
測 定 法 の 妥 当 性 を 明 ら か に す る た め ,検 量 線 お よ び 直 線 性 ,定 量 再
現 性 ,な ら び に 特 異 性 試 験 に つ い て 検 討 し た .検 量 線 用 ス タ ン ダ ー ド
溶 液 は , 標 準 溶 液 10 .0 µ L に 新 鮮 凍 結 血 漿 90 .0 µ L を 添 加 し 撹 拌 し た
後 , 新 鮮 凍 結 血 漿 に て 希 釈 を 行 い , 0 .1 , 0.5, 1 .0, 5 . 0, 10 .0 , 20 .0 お よ び
40 . 0 µ g/ m L の 濃 度 溶 液 を 調 製 し た .各 試 料 中 薬 物 濃 度 の 測 定 に は ,当
該薬物のピーク面積を内部標準物質のピーク面積で補正する内部標
11
準法を用いて評価した.
【検量線】検量線の作成には,各濃度 3 点の平均値を使用し,最小 2
乗法を用いて直線性を評価した.
【再現性】日内の定量再現性は,治療濃度域を中心に各濃度につき 5
回 繰 り 返 し 測 定 す る こ と に よ っ て 評 価 し た .ま た ,同 様 の 濃 度 で 5 日
間に渡り定量することで日間再現性を評価した.精度は変動係数
(C .V.) と し て 評 価 し ,正 確 度 は ( 定 量 値 / 理 論 値 ) × 1 00% と し て 評 価
し た . な お , 判 断 基 準 は US P の 基 準
15)
を参考にした.
【 特 異 性 】特 異 性 試 験 に つ い て は ,健 常 人 よ り 得 ら れ た 新 鮮 凍 結 血 漿
に て 内 因 性 物 質 の 影 響 を 確 認 し た . ま た , 抗 て ん か ん 薬 20 種 類 , 国
内未承認の抗てんかん薬 4 種類ならびに抗てんかん薬の代謝物 4 種類
を 併 用 し た 時 の 影 響 に つ い て 精 査 し た .検 討 し た 薬 剤 名 の 詳 細 は ト ピ
ラマートの項を参照のこと.
3. 結 果
今 回 開 発 し た 測 定 法 の 妥 当 性 を 明 ら か に す る た め ,検 量 線 お よ び 直
線 性 ,定 量 再 現 性 ,な ら び に 特 異 性 試 験 に つ い て 検 討 し た 結 果 ,以 下
の成績を得た.
3-1 . ト ピ ラ マ ー ト
3-1-1 . 検 量 線 お よ び 直 線 性
濃度の異なる 9 点のトピラマート溶液を用いて検量線を作成した
結 果 , 0.1 -32.0 µ g/ m L の 濃 度 に お い て 良 好 な 直 線 性 を 示 し た . 回 帰 直
線 は , y = 0.1 9 x - 0.01 で あ り , ほ ぼ 原 点 ( 切 片 の 95 % 信 頼 区 間 ; -0 . 0 5
~ 0.02) を 通 過 し た ( Fi g. 5) . 相 関 係 数 は r = 0.99 , p < 0.01 で あ り ,
この範囲で薬物定量測定が可能と確認された.
12
3-1-2 . 定 量 再 現 性
定 量 再 現 性 は , 0.1, 0.2, 0.5, 2.0 お よ び 8.0 µ g/ m L の 濃 度 に つ い て 評
価 し た (Tabl e 1 ) . 精 度 は 日 内 再 現 性 で は 0. 8-7.1 % , 日 間 再 現 性 で は
1 . 3-9 . 3 % で あ っ た . 正 確 度 は 日 内 再 現 性 で は 99 .9 -105 % , 日 間 再 現 性
で は 99.2 -107 % で あ っ た .
ト ピ ラ マ ー ト の 定 量 下 限 値 を 0.1 µ g/ m L (S / N > 10) に 設 定 し , 0 . 1
µ g/ m L に お け る 日 内 再 現 性 お よ び 日 間 再 現 性 に つ い て 評 価 し た 結 果 ,
変 動 係 数 C .V. は 9. 3 %以 下 で あ り , 正 確 度 は 105 -107 % で あ っ た .
3-1-3 . 特 異 性 試 験
ト ピ ラ マ ー ト の ピ ー ク が 約 13.5 分 , I.S . の ピ ー ク が 約 18.8 分 に 検
出 さ れ た .ま た 健 常 人 よ り 得 ら れ た 新 鮮 凍 結 血 漿 に お い て ,内 因 性 物
質による妨害ピークは検出されなかった.
薬 物 添 加 新 鮮 凍 結 血 漿 の 結 果 を Tabl e 2 に 示 す . ゾ ニ サ ミ ド の ピ ー
ク が 約 8.2 分 に 検 出 さ れ た が , ト ピ ラ マ ー ト お よ び I.S . と も に 分 離 は
良 好 で 定 量 に 影 響 は 見 ら れ な か っ た .ゾ ニ サ ミ ド 以 外 の 薬 剤 に 関 し て
はトピラマートの定量に影響を与えるピークは見られなかった.
な お , 2009 年 6 月 か ら 2010 年 5 月 に お け る 繰 り 返 し 測 定 に お い て
カラムの劣化による分離不良は認められなかった.
3-2 . ラ モ ト リ ギ ン
3-2-1 . 検 量 線 お よ び 直 線 性
濃度の異なる 9 点のラモトリギン溶液を用いて検量線を作成した
結 果 , 0.1 -32.0 µ g/ m L の 濃 度 に お い て 良 好 な 直 線 性 を 示 し た . 回 帰 直
線 は y = 0.12x – 0.02 で あ り , ほ ぼ 原 点 ( 切 片 の 95 % 信 頼 区 間 ; -0.04 ~
0.02) を 通 過 し た ( Fi g. 6) . 相 関 係 数 は r = 0.99 , p < 0. 01 で あ り , こ
13
の範囲で定量測定が可能と確認された.
3-2-2 . 定 量 再 現 性
定 量 再 現 性 は , 0.1 , 0. 3 , 2.0, 8. 0 お よ び 16. 0 µ g/ m L の 濃 度 に つ い て
評 価 し た (Tabl e 3 ) . 精 度 は 日 内 再 現 性 で は 1.3-6.9 % , 日 間 再 現 性 で
は 1 . 7 -7. 1 % で あ っ た . 正 確 度 は 日 内 再 現 性 で は 99. 4 -10 6% , 日 間 再 現
性 で は 99.1 -10 6 % で あ っ た .
ラ モ ト リ ギ ン の 定 量 下 限 値 を 0.1 µ g/ m L (S / N > 10) に 設 定 し , 0 . 1
µ g/ m L に お け る 日 内 再 現 性 お よ び 日 間 再 現 性 に つ い て 評 価 し た 結 果 ,
変 動 係 数 C .V. は 7. 1 %以 下 で あ り , 正 確 度 は 103 -106 % で あ っ た .
3-2-3 . 特 異 性 試 験
ラ モ ト リ ギ ン の ピ ー ク が 約 5.4 分 ,I. S . の ピ ー ク が 約 1 2.8 分 に 検 出
さ れ ,健 常 人 よ り 得 ら れ た 新 鮮 凍 結 血 漿 に お い て ,内 因 性 物 質 に お け
る妨害ピークは検出されなかった.
薬 物 添 加 新 鮮 凍 結 血 漿 の 結 果 を Tab l e 4 に 示 す . 各 薬 物 の ピ ー ク が
ア セ タ ゾ ラ ミ ド 約 2.3 分 ,レ ベ チ ラ セ タ ム 約 2.4 分 ,ス ル チ ア ム 約 3 . 5
分 ,エ ト ス ク シ ミ ド 約 3.9 分 ,ゾ ニ サ ミ ド 約 4.5 分 ,プ リ ミ ド ン 約 4 . 8
分 , フ ェ ル バ メ ー ト 約 4.9 分 , p- ヒ ド ロ キ シ フ ェ ニ ト イ ン 約 6.8 分 ,
フ ェ ノ バ ル ビ タ ー ル 約 8.2 分 ,カ ル バ マ ゼ ピ ン -10, 11 - エ ポ キ シ ド 約 9 . 7
分 , オ ク ス カ ル バ ゼ ピ ン 約 11.7 分 , フ ェ ニ ト イ ン 約 18 .0 分 お よ び カ
ル バ マ ゼ ピ ン 約 20 .0 分 に 検 出 さ れ た が , ガ バ ペ ン チ ン , ク ロ ナ ゼ パ
ム ,ク ロ バ ザ ム ,N -デ ス メ チ ル ク ロ バ ザ ム ,ジ ア ゼ パ ム ,ス チ リ ペ ン
ト ー ル ,チ ア ガ ビ ン ,ト ピ ラ マ ー ト ,ニ ト ラ ゼ パ ム , バ ル プ ロ 酸 お よ
び ビ ガ バ ト リ ン に つ い て は 検 出 さ れ な か っ た .い ず れ の 薬 物 添 加 し て
も , ラ モ ト リ ギ ン お よ び I.S . と も に ピ ー ク の 分 離 は 良 好 で 定 量 に 影 響
は見られなかった.
14
な お , 2009 年 6 月 か ら 201 0 年 11 月 に お け る 繰 り 返 し 測 定 に お い
てカラムの劣化による分離不良は認められなかった.
3-3 . ス チ リ ペ ン ト ー ル
3-3-1 . 検 量 線 お よ び 直 線 性
濃度の異なる 7 点のスチリペントール溶液を用いて検量線を作成
し た 結 果 , 0. 1-4 0.0 µ g/ m L の 濃 度 に お い て 良 好 な 直 線 性 を 示 し た . 回
帰 直 線 は , y = 0.1 9x - 0.01 で あ り , ほ ぼ 原 点 ( 切 片 の 95%信 頼 区 間 ;
-0 . 0 2~ 0.07 ) を 通 過 し た ( Fi g. 7) .相 関 係 数 は r = 0.99 ,p < 0.01 で あ
り,この範囲で定量測定が可能と確認された.
3-3-2 . 定 量 再 現 性
定 量 再 現 性 は ,0. 1 , 0 .2 , 20.0 お よ び 30 .0 µ g/ m L の 濃 度 に つ い て 評 価
し た (Tabl e 5) に 示 す . 精 度 は 日 内 再 現 性 で は 2.5 -8.7 %, 日 間 再 現 性
で は 3.0 -7.8 % で あ っ た . 正 確 度 は 日 内 再 現 性 で は 97-1 04% , 日 間 再 現
性 で は 96.1 -105 % で あ っ た .
ス チ リ ペ ン ト ー ル の 定 量 下 限 値 を 0. 1 µ g/ m L (S / N > 10 ) に 設 定 し ,
0 .1 µ g/ m L に お け る 日 内 再 現 性 お よ び 日 間 再 現 性 に つ い て 評 価 し た 結
果 , 変 動 係 数 C .V. は 3.2% 以 下 で あ り , 正 確 度 は 9 6 . 1 - 1 0 4 % で あ っ た .
3-3-3 . 特 異 性 試 験
I.S . の ピ ー ク が 約 4.2 分 , ス チ リ ペ ン ト ー ル の ピ ー ク が 約 4.6 分 に
検 出 さ れ ,健 常 人 よ り 得 ら れ た 新 鮮 凍 結 血 漿 に お い て ,内 因 性 物 質 に
おける妨害ピークは検出されなかった.
薬 物 添 加 新 鮮 凍 結 血 漿 の 結 果 を Tabl e 6 に 示 す . 特 異 性 の 検 討 に お
い て も , 各 薬 物 の ピ ー ク は 注 入 後 60 分 に お い て , い ず れ も 認 め ら れ
15
ず,定量に影響は見られなかった.
な お , 2012 年 2 月 か ら 2010 年 5 月 に お け る 繰 り 返 し 測 定 に お い て
カラムの劣化による分離不良は認められなかった.
16
4 .考 察
4-1 . ト ピ ラ マ ー ト
最 初 に , HP LC に よ る 定 量 で 重 要 な ラ ベ ル 化 剤 の 選 択 を 検 討 し た .
本 研 究 で は , ア ミ ノ 基 の ラ ベ ル 化 剤 と し て ベ ン ゾ イ ル ク ロ リ ド ,o - フ
タ ル ア ル デ ヒ ド ,ク ロ ロ ぎ 酸 9- フ ル オ レ ニ ル メ チ ル ,4 -ク ロ ロ -7- ニ ト
ロ ベ ン ゾ フ ラ ザ ン ,お よ び 4-( N,N - ジ メ チ ル ア ミ ノ ス ル ホ ニ ル ) -7- フ ル
オ ロ -2,1,3 - ベ ン ゾ オ キ サ ジ ア ゾ ー ル を 用 い ,各 ラ ベ ル 化 剤 の 反 応 性 に
つ い て 検 討 し た .そ の 結 果 ,4 - ク ロ ロ -7 - ニ ト ロ ベ ン ゾ フ ラ ザ ン の 反 応
性 が 最 も 高 く 夾 雑 物 ピ ー ク が 少 な か っ た こ と か ら ,本 剤 を 用 い て 測 定
を行った.
I.S . の 選 定 に つ い て も , 従 来 第 一 ア ミ ノ 基 の ア マ ン タ ジ ン
6)
を用い
る 方 法 が 報 告 さ れ て い る が ,今 回 ト ピ ラ マ ー ト と 同 様 ,ス ル ホ ン ア ミ
ド を 有 す る 4 - エ チ ル ベ ン ゼ ン ス ル ホ ン ア ミ ド を I.S . と し て 用 い た .
ト ピ ラ マ ー ト の pK a が 8.7 で あ り pH が 低 く な る に つ れ て 解 離 型 の
比 率 が 減 少 す る こ と か ら , 酸 性 条 件 下 で 抽 出 を 行 っ た . pH 調 整 剤 と
し て 6 %過 塩 素 酸 , リ ン 酸 , 塩 酸 , 酢 酸 に つ い て 検 討 を 行 っ た が , 共
沈 が み ら れ ず 除 タ ン パ ク 処 理 も 可 能 な た め , 6 %過 塩 素 酸 に よ る 酸 性
条 件 下 で 抽 出 を 行 っ た .抽 出 溶 媒 と し て ジ ク ロ ロ メ タ ン ,ジ エ チ ル エ
ー テ ル ,ヘ キ サ ン ,酢 酸 エ チ ル ,ト ル エ ン ,ジ ク ロ ロ メ タ ン: ア セ ト
ニ ト リ ル 混 液 (4: 1 v/ v) お よ び ジ ク ロ ロ メ タ ン : 2- プ ロ パ ノ ー ル 混 液
(3: 1 v/ v) に つ い て 検 討 を 行 っ た が ,抽 出 率 お よ び 迅 速 性 と も に ジ ク ロ
ロメタンによる抽出が再現性良くトピラマートを抽出することがで
き,十分適用できるものと考えられた.
4 -ク ロ ロ -7 - ニ ト ロ ベ ン ゾ フ ラ ザ ン は ,弱 ア ル カ リ で 誘 導 化 反 応 が 進
むことが知られている
16)
.本研究では,アルカリ化剤として炭酸水
17
素 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 ,水 酸 化 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 ,ホ ウ 酸 緩 衝 液 お よ び
ト リ エ チ ル ア ミ ン に つ い て 検 討 し た 結 果 ,ト ピ ラ マ ー ト に 対 す る 反 応
性 が 高 く , 夾 雑 物 ピ ー ク の 少 な い 0. 1M 炭 酸 水 素 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 を
緩 衝 液 と し て 加 え る 方 法 を 選 択 し た .4 - ク ロ ロ -7- ニ ト ロ ベ ン ゾ フ ラ ザ
ン に よ る 誘 導 体 化 反 応 は ,約 120 分 で 完 全 に 終 了 し た .反 応 時 間 に よ
る ト ピ ラ マ ー ト や I.S . の 反 応 物 の 分 解 は 認 め ら れ な か っ た .
移 動 相 は 25 m M リ ン 酸 緩 衝 液 (p H4.6 ) / メ タ ノ ー ル / ア セ ト ニ ト
リ ル (65 : 20 : 15, v/ v/ v) に て 検 討 を 行 い , リ ン 酸 緩 衝 液 の pH を 2 . 5
に 変 更 し 分 離 を 試 み た が ,夾 雑 物 ピ ー ク が ト ピ ラ マ ー ト の 保 持 時 間 に
出 現 し た . そ の た め , 移 動 相 の 各 比 率 を 変 更 し 検 討 し た 結 果 , 25 m M
リ ン 酸 緩 衝 液 (p H 2.5) / メ タ ノ ー ル / ア セ ト ニ ト リ ル (50 : 40 : 10,
v/ v/ v) と す る こ と で ,夾 雑 物 ピ ー ク と ト ピ ラ マ ー ト の 分 離 が 可 能 で あ
った.
ラ ベ ル 化 剤 を 用 い た HP LC に よ る ト ピ ラ マ ー ト の 測 定 法 に つ い て
は ,ク ロ ロ ぎ 酸 9 - フ ル オ レ ニ ル メ チ ル を 用 い る 方 法
6)
が既に報告され
て い る .し か し ,血 漿 量 と し て 1000 µ L 以 上 の 多 量 の 試 料 が 必 要 で あ
り ,採 血 量 の 少 な い 小 児 に は 適 用 困 難 と 考 え ら れ る .本 研 究 に お い て
は,既報
6)
の 1/ 10 量 で あ る 血 漿 試 料 100 µ L と 極 め て 少 量 の 試 料 よ り
ト ピ ラ マ ー ト 濃 度 測 定 が 可 能 で あ っ た .本 研 究 に お い て ,少 量 の 試 料
で 測 定 が 可 能 で あ っ た 要 因 と し て ,① Bahr am i ら の 報 告
6)
では血漿試
料 に 対 し て 除 タ ン パ ク と pH 調 整 を 行 っ て い な い が , 本 研 究 で は 除 タ
ン パ ク 処 理 と pH 調 整 に 6 % 過 塩 素 酸 を 用 い る こ と に よ り , ト ピ ラ マ
ー ト の 血 漿 タ ン パ ク と の 結 合 に よ る 誤 差 を 減 ら せ た こ と ,ま た ,採 血
後 p H 変 動 が お こ り う る 血 漿 試 料 に 対 し , pK a が 8.7 の ト ピ ラ マ ー ト
の 抽 出 を 酸 性 領 域 で 安 定 さ せ た こ と ,② Bah ram i ら の 報 告
18
6)
ではスル
ホ ン ア ミ ド を 有 す る ト ピ ラ マ ー ト に 対 し て ,第 一 ア ミ ノ 基 を 有 す る ア
マ ン タ ジ ン を I.S . に 選 定 し た の に 対 し て , 本 研 究 で は ト ピ ラ マ ー ト と
同 様 , ス ル ホ ン ア ミ ド を 有 す る I.S . を 選 定 し , 4- ク ロ ロ -7 - ニ ト ロ ベ ン
ゾフラザンに対する反応性を可能な限りトピラマートと同一にて行
ったことが影響していると考えられる.
ま た ,本 研 究 は ラ ベ ル 化 反 応 を 利 用 し た 測 定 法 で あ る こ と か ら ,ラ
ベ ル 化 体 生 成 状 況 に つ い て 考 察 す る 必 要 が あ る . ト ピ ラ マ ー ト と 4ク ロ ロ -7 - ニ ト ロ ベ ン ゾ フ ラ ザ ン の 反 応 に 関 し て は ,Ma r t i nc ら が 2 0 1 4
年に構造を決定し,論文報告
17)
しているが,本測定法では,基質に
対 し て 大 過 剰 の ラ ベ ル 化 剤 を 加 え て お り ,検 量 線 の 濃 度 範 囲 内 に お い
て 直 線 性 が 保 た れ て い る .ま た ,同 一 試 料 を LC / MS 法 に て 再 測 定 し ,
相 関 性 を 比 較 し た 結 果 , 本 研 究 と LC / MS 法 に お い て , 相 関 係 数 は r =
0 . 9 8, p < 0.0 1 , 回 帰 直 線 は y = 1.0x - 0.1 で あ り , 高 い 相 関 関 係 ( Fi g.
8) を 認 め た . ラ ベ ル 化 反 応 開 始 後 , 24 時 間 ま で 経 時 的 に 観 察 を 行 っ
た が ,反 応 ピ ー ク の 増 減 が 認 め ら れ な か っ た こ と か ら ,ラ ベ ル 化 反 応
は平衡状態に達しており一定の割合でラベル化体が生成されたもの
と考えられる.
特 異 性 の 検 討 に お い て ,ト ピ ラ マ ー ト と 同 様 に ,ス ル ホ ン ア ミ ド を
有 す る ゾ ニ サ ミ ド の ピ ー ク が 約 8.2 分 に 検 出 さ れ た が ,他 の 薬 剤 に 関
し て は , 測 定 開 始 60 分 後 に お い て も ピ ー ク の 検 出 が 認 め ら れ ず , ト
ピ ラ マ ー ト の 定 量 に 影 響 を 与 え な か っ た .こ の 結 果 は ,ゾ ニ サ ミ ド 以
外の薬剤が酸性条件下ジクロロメタンにおいて抽出されなかったた
め , あ る い は 4 - ク ロ ロ -7- ニ ト ロ ベ ン ゾ フ ラ ザ ン の ラ ベ ル 化 に お い て
反 応 し な か っ た た め で は な い か と 推 察 さ れ る .利 尿 薬 の 多 く は ,ス ル
ホンアミドを有しているため本測定法によるトピラマートの定量に
19
影 響 を 与 え る 可 能 性 が 推 察 さ れ る .本 研 究 に お い て メ チ ク ラ ン に つ い
て 特 異 性 試 験 を 行 っ た が ,ク ロ マ ト グ ラ ム 上 に は 影 響 は 認 め ら れ な か
っ た .メ チ ク ラ ン 以 外 の 利 尿 薬 に つ い て は 隣 接 基 に ハ ロ ゲ ン が 置 換 さ
れ て お り ,反 応 性 が 低 下 す る こ と が 予 想 さ れ る .ま た ,小 児 は 電 解 質
の バ ラ ン ス が 崩 れ や す い こ と か ら ,積 極 的 な 利 尿 薬 の 投 与 が 避 け ら れ
て い る た め ,小 児 て ん か ん 患 者 に お け る ト ピ ラ マ ー ト と 利 尿 薬 が 併 用
さ れ る 可 能 性 は 低 い と 考 え ら れ る .し か し ,4- ク ロ ロ - 7-ニ ト ロ ベ ン ゾ
フ ラ ザ ン の 反 応 性 か ら ア ミ ノ 基 を 有 す る 薬 剤 ,ま た は ,そ の 代 謝 物 へ
の 影 響 に つ い て は 否 定 で き ず ,そ の 測 定 に あ た り 併 用 薬 に つ い て 注 意
する必要があると考えられる.
4-2 . ラ モ ト リ ギ ン
最 初 に , HP LC に よ る 定 量 で 重 要 な 前 処 理 方 法 に つ い て 検 討 し た .
こ れ ま で に も 血 中 ラ モ ト リ ギ ン 濃 度 測 定 法 の 報 告 さ れ て い る が ,そ の
多くは固相抽出
7)
に よ る 前 処 理 が 用 い ら れ て い る .固 相 抽 出 法 は 選 択
性 が 高 い も の の ,操 作 が 繁 雑 で 前 処 理 に 時 間 を 要 す る な ど の 問 題 点 を
抱 え て い る .本 研 究 で は ,臨 床 現 場 で 簡 易 に 実 施 で き る 除 タ ン パ ク 法
に よ る 前 処 理 に つ い て 検 討 し た .血 漿 試 料 の 除 タ ン パ ク 剤 と し て ア セ
ト ニ ト リ ル , メ タ ノ ー ル お よ び 6 %過 塩 素 酸 に つ い て 検 討 し た 結 果 ,
除 タ ン パ ク 効 果 が 高 く , I.S . を 同 時 に 添 加 し て も 安 定 性 が 高 い ア セ ト
ニトリルの等量添加法が最適と判断された.
除 タ ン パ ク 法 を 用 い た ラ モ ト リ ギ ン の 測 定 法 に つ い て は , C roci ら
8)
により既に報告されている.この測定法
8)
では内面逆相型からなる
IS R P col um n を 用 い て お り , 300 か ら 40 0 検 体 を 定 量 す る と カ ラ ム の
背 圧 が 高 く な り 繰 り 返 し 測 定 す る こ と が で き な い .一 方 ,本 測 定 法 で
20
は ,同 様 の 現 象 は 認 め ら れ ず ,繰 り 返 し 測 定 を 行 う こ と が 可 能 で あ っ
た.
ODS カ ラ ム を 用 い た 血 中 ラ モ ト リ ギ ン 濃 度 測 定 法 は P a t il ら
び R am a chandr an ら
10)
9)
およ
により既に報告されている.しかし,本研究に
お い て , 血 漿 試 料 が 100 µ L と 極 め て 少 量 の 試 料 よ り ラ モ ト リ ギ ン 濃
度 測 定 が 可 能 で あ っ た .こ の 結 果 は ,P at i l ら の 報 告
試 料 で あ り ,R am a c handran ら の 報 告
10)
10)
の 1/ 2 量 の 血 漿
の 1/ 3 量 の 血 漿 試 料 で あ っ た .
ラ モ ト リ ギ ン 測 定 法 の 定 量 下 限 値 は , P at i l ら
らの報告
9)
9)
お よ び R am ach andran
で は 0. 2 µ g/ m L で あ る の に 対 し , 本 研 究 で は 0.1 µ g/ m L で
あった.
移 動 相 は 25 m M リ ン 酸 緩 衝 液 (p H 4.6) , メ タ ノ ー ル - ア セ ト ニ ト リ
ル 混 液 (4: 3, v/ v) = 65: 35 (v/ v) を 一 定 条 件 で 送 液 す る 方 法 に つ い て 検
討 し た が ,特 異 性 の 検 討 に お い て プ リ ミ ド ン の ピ ー ク が ラ モ ト リ ギ ン
の 保 持 時 間 に 出 現 し た .そ こ で ,移 動 相 の 各 比 率 を 変 更 し 検 討 し た 結
果 ,A: 25 m M リ ン 酸 緩 衝 液 (p H4.6) ,B: メ タ ノ ー ル - ア セ ト ニ ト リ ル 混
液 (4: 3, v/ v) , 32 -37 % B (0 -23 m i n) , 3 2 % B (23 -26 m i n) , 1.0m L/ m i n で
グ ラ ジ エ ン ト 送 液 す る こ と で ,ラ モ ト リ ギ ン と プ リ ミ ド ン を 良 好 に 分
離 す る こ と が で き た .ま た ,他 の 薬 剤 を 添 加 し 特 異 性 に つ い て 検 討 し
た 結 果 ,ラ モ ト リ ギ ン 濃 度 測 定 に 何 ら 影 響 を お よ ぼ す こ と の な い こ と
を 確 認 し た . R am a chandra n ら の 報 告
10)
では,多波長での吸光度をも
とに波長間で補正計算を行うことによってラモトリギンの測定を可
能 と し て い る .こ れ に 対 し て ,本 測 定 法 は 単 一 波 長 の み で ラ モ ト リ ギ
ンの測定が可能であった.
また,本測定法の妥当性をより詳細に検討するため,同一試料を
LC / M S 法 に て 再 測 定 し , 相 関 性 を 比 較 し た 結 果 , 本 研 究 と LC / MS 法
21
と の 相 関 係 数 は r = 0.99 , p < 0.01 , 回 帰 直 線 は y = 1.1 x - 0.24 で , 高
い 相 関 関 係 が 認 め ら れ た ( Fi g. 9) .
4-3 . ス チ リ ペ ン ト ー ル
本 研 究 で は ,前 処 理 に 迅 速 な 除 タ ン パ ク 法 を 用 い 1 試 料 あ た り 保 持
時 間 は 5 分 以 内 で 分 離 可 能 で あ っ た .ま た 試 料 量 は ,Ma y ら
で は 100 µ L, Ar en ds ら
11 )
5)
の報告
の 報 告 で は 200 µ L 必 要 で あ る の に 対 し て ,
今 回 開 発 し た 測 定 法 で は 試 料 量 が 10 µ L で 済 む こ と ,さ ら に 併 用 薬 の
影響が皆無であることを示した.
最 初 に ,臨 床 現 場 で 信 頼 性 の あ る 結 果 を 提 供 す る た め に 内 部 標 準 法
に よ る 検 討 を 行 っ た . I.S . の 選 定 に 関 し て , ス チ リ ペ ン ト ー ル と 同 一
の オ キ シ ベ ン ゼ ン 基 を 有 す る サ フ ロ ー ル ,イ ソ 酪 酸 ピ ペ ロ ニ ル お よ び
キ サ ン ト ン に つ い て 検 討 し た .イ ソ 酪 酸 ピ ペ ロ ニ ル は ス チ リ ペ ン ト ー
ル と 分 離 が 不 十 分 で あ り ,サ フ ロ ー ル は ス チ リ ペ ン ト ー ル に 対 し て 保
持 時 間 が 長 い こ と か ら キ サ ン ト ン を I.S . と し て 採 用 し た .
次 に 検 出 器 の 検 討 を 行 っ た .併 用 薬 の 影 響 を 排 除 す る こ と ,な ら び
に こ れ ま で 蛍 光 検 出 器 を 用 い た 報 告 が な い こ と か ら ,選 択 性 の 高 い 蛍
光 検 出 器 を 用 い た .ま ず 初 め に ス チ リ ペ ン ト ー ル の 紫 外 可 視 吸 収 ス ペ
ク ト ル を 測 定 し た . そ の 結 果 , 210 , 266 お よ び 302 nm に 吸 収 極 大 波
長 が 観 測 さ れ た . 励 起 波 長 210 nm に お い て , 蛍 光 ス ペ ク ト ル を 測 定
し た 結 果 , 310 か ら 420 nm に 蛍 光 極 大 波 長 が 観 測 さ れ た . こ れ ま で
の報告
18)
を 考 慮 し ,臨 床 状 態 で の 血 中 ス チ リ ペ ン ト ー ル 濃 度 で あ る 4
か ら 22 µ g/ m L の 範 囲 に お い て 直 線 性 を 満 た す 波 長 を 検 索 し た . そ の
結 果 , 励 起 波 長 は 210 nm , 蛍 光 波 長 は 400 nm に お い て , 夾 雑 物 の 影
響 を 受 け る こ と な く ス チ リ ペ ン ト ー ル お よ び I.S . の 定 量 が 可 能 で あ っ
22
た .定 量 下 限 値 は Ma y ら の 報 告
告
11 )
5)
が 0.2 µ g/ m L で あ り ,Arends ら の 報
が 1.0 µ g/ m L で あ る の に 対 し て , 本 研 究 で は 0. 1 µ g/ m L ま で 定 量
が可能であった.
移 動 相 を 25 m M リ ン 酸 緩 衝 液 : ア セ ト ニ ト リ ル = 50 : 50 (v/ v) と
し , 一 定 条 件 で 送 液 し た . リ ン 酸 緩 衝 液 の pH を 2.6 , 4.8 お よ び 6 . 9
に 変 更 し 検 討 し た 結 果 , pH の 上 昇 に 伴 い 保 持 時 間 が 短 縮 す る も の の
ノ イ ズ が 検 出 さ れ た .こ れ ら の 結 果 を 踏 ま え ,移 動 相 の 比 率 を 25 m M
リ ン 酸 緩 衝 液 (pH 2.6) : ア セ ト ニ ト リ ル = 43: 57 (v/ v) と し , 1.5
m L/ m i n で 送 液 し た .
本 測 定 法 に よ る 検 出 特 異 性 に つ い て も ,ス チ リ ペ ン ト ー ル 濃 度 測 定
に関して影響がないことを確認した.
23
第 2章
患者血中濃度測定と動態特性
前章において開発した測定法の妥当性ならびに有用性を明らかに
す る た め ,患 者 検 体 を 用 い て 血 中 濃 度 測 定 を 行 い ,各 薬 物 の 動 態 特 性
について検討した.
1. 対 象 患 者
埼 玉 県 立 小 児 医 療 セ ン タ ー ま た は 国 立 病 院 機 構 静 岡・て ん か ん 神 経
医 療 セ ン タ ー に お い て ,ト ピ ラ マ ー ト ,ラ モ ト リ ギ ン ま た は ス チ リ ペ
ン ト ー ル が 処 方 さ れ て い る 難 治 性 小 児 て ん か ん 患 者 を 対 象 と し た .い
ずれかの薬物を同一量 8 日以上反復服用している患者より,内服後
2-4 時 間 に 採 血 を 行 っ た .
な お ,本 研 究 は 人 試 料 を 用 い る こ と か ら ,各 施 設 の 倫 理 委 員 会 に て
事 前 審 査 を 受 け ,承 認 を 得 た 後 ,被 験 者 お よ び 代 諾 者 の 同 意 の 下 に 実
施した.
2. 方 法
2-1 . 測 定 方 法
採 取 し た 患 者 検 体 は 定 量 ま で -25 ℃ で 保 存 し , 測 定 時 に 解 凍 融 解 し
て 測 定 に 供 し た .各 検 体 中 薬 物 濃 度 の 測 定 に は ,第 1 章 に 記 し た 方 法
12-14)
を用いて実施し,試料中の総薬物濃度を測定した.
2-2 . 解 析 方 法
【 C と D の 関 係 】各 患 者 よ り 得 た 血 中 薬 物 濃 度 (C;µ g/ m L) と 各 薬 物
の 体 重 当 た り の 1 日 投 与 量 ( D; m g/ da y/ k g) と の 相 関 関 係 に つ い て 検
討 し た .な お ,同 一 患 者 に つ い て 複 数 測 定 し た 場 合 は ,直 近 の 測 定 値
24
を 用 い た . 投 与 量 と 血 中 濃 度 の 相 関 関 係 に つ い て , Mi crosoft ® Ex cel
2010 を 用 い て 解 析 し , 線 形 近 似 , 指 数 近 似 , 対 数 近 似 お よ び 累 乗 近
似曲線にあてはめ,最も相関性の良い式を求めた.
【 C/ D 変 動 要 因 】一 部 の 薬 物 に つ い て は ,成 長 に 伴 い ク リ ア ラ ン ス が
変動
19)
す る こ と か ら ,ク リ ア ラ ン ス に 及 ぼ す 年 齢 ,体 重 ,体 表 面 積 ,
お よ び 各 種 臨 床 検 査 値( ア ル ブ ミ ン 値 ,腎 機 能 等 )の 影 響 を 明 ら か に
す る た め ,Mi croso ft ® Ex cel 2010 を 用 い て 相 関 係 数 な ら び に P 値 を 求
め た . P 値 が 0.0 5 以 下 の 場 合 に 有 意 と 判 定 し , 回 帰 分 析 を 行 っ た .
すなわち,クリアランスの変動を評価する指標として,1 日投与量に
対 す る 血 中 薬 物 濃 度 の 比 (C / D 比 ; d a y・ K g/ L) を 算 出 し ,各 種 変 動 要
因 と の 相 関 性 に つ い て 検 討 し た .な お ク リ ア ラ ン ス の 低 下 に 伴 い C が
低 下 す る こ と か ら , C/D 比 の 上 昇 は ク リ ア ラ ン ス の 低 下 を , C/D 比 の
低下はクリアランスの上昇を示す.
ク リ ア ラ ン ス に 影 響 を 及 ぼ す 要 因 を 認 め た 場 合 ,そ の 要 因 が 投 与 設
計 す る 際 の 変 動 要 因 と な り 得 る か 否 か 詳 細 に 検 討 し た .変 動 要 因 が 体
重 の 場 合 を 例 に 詳 述 す る ( Fi g. 10) . 最 初 に C / D 比 と 体 重 の 回 帰 直 線
を 求 め ,次 に 変 動 要 因 の 中 央 値 を 起 点 に ,各 患 者 と の 体 重 差 ( Δ W ) を
算 出 し た .こ れ に 回 帰 直 線 の 傾 き (S l ope) を 掛 け 合 わ せ ,各 患 者 の 体
重 増 減 に よ り 生 じ る ク リ ア ラ ン ス の 変 動 率 ( Δ W × S l ope) を 求 め た .
そ の 後 , 補 正 係 数 α = 1 + ( Δ W × S l ope) の 式 に 当 て は め , 各 患 者 の 補
正 係 数 を 算 出 し た .得 ら れ た 補 正 係 数 α は 体 重 の 増 減 に よ り ,ク リ ア
ラ ン ス が 低 下 上 昇 す る こ と を 示 唆 し て お り ,投 与 量 と 血 中 濃 度 の と の
関 係 に 影 響 す る 要 因 と 推 察 さ れ る .そ こ で ,投 与 量 を α で 補 正 し ,血
中 濃 度 と の 相 関 性 に つ い て 検 討 し た .そ の 他 の 変 動 要 因 に つ い て も 同
様に解析を行った.
25
ま た ト ピ ラ マ ー ト に つ い て は ,未 変 化 体 尿 中 排 泄 率 80 % の 薬 剤 で あ
ること
20)
から,腎排泄の指標として血清クレアチニン濃度を,肝代
謝 の 指 標 と し て 体 表 面 積 を 使 用 し , 補 正 係 数 α = 1 + 0.8K + 0.2H の 式
よ り 各 患 者 の 補 正 係 数 を 算 出 し た 後 ,投 与 量 × α と 血 中 濃 度 と の 相 関
性 に つ い て 検 討 し ,投 与 設 計 す る 際 の 変 動 要 因 と し て の 役 割 に つ い て
評 価 し た .な お ,K は 血 清 ク レ ア チ ニ ン 濃 度 に 基 づ く 変 動 率 を ,H は
体 表 面 積 に 基 づ く 変 動 率 を 示 し て お り ,先 の 変 動 率 ( Δ W × S l ope) と
同 様 に ,C / D 比 と 血 清 ク レ ア チ ニ ン 濃 度 と の 関 係 式 よ り K 値 を ,ま た
C/ D 比 と 体 表 面 積 と の 関 係 式 よ り H 値 を 求 め た .
【 相 互 作 用 】ト ピ ラ マ ー ト ま た は ラ モ ト リ ギ ン 投 与 患 者 に お け る 薬 物
相 互 作 用 に つ い て は ,各 薬 物 動 態 特 性 を 考 慮 し ,酵 素 誘 導 剤 併 用 の 有
無 に よ る 血 中 薬 物 濃 度 変 化 に つ い て 検 討 し た .評 価 に 際 し て は C / D 比
の 変 動 ,ま た ス チ リ ペ ン ト ー ル に つ い て 非 線 形 性 薬 物 動 態 解 析 を 行 っ
た . な お , C/D 比 は 平 均 ±標 準 偏 差 で 表 示 し た .
【 統 計 解 析 】 統 計 的 有 意 差 検 定 に は , Mi crosoft ® Ex cel 2010 を 用 い て
t 検定を行った.多剤併用下における薬物動態の解析には,トピラマ
ートまたはラモトリギンを投与する患者で酵素誘導剤を併用投与し
て い な い 患 者 群 よ り 得 た 値 を 基 準 と し ,併 用 患 者 群 よ り 得 た 値 と 比 較
す る こ と に よ り 評 価 し た .い ず れ も p < 0.05 を 有 意 差 あ り と 判 定 し た .
3. 結 果
3-1 . ト ピ ラ マ ー ト
3-1-1 . 投 与 量 と 血 中 濃 度 の 関 係
ト ピ ラ マ ー ト の 被 験 者 数 は 41 名 で あ り , 年 齢 分 布 ( Y.O .) ( 中 央 値 )
は , 1.0 -14.9 (9.3 ) で あ っ た .ま た ,体 重 分 布 (k g) ( 中 央 値 ) は 8.1 -7 3 . 7
26
(20.7) で あ っ た .
各患者におけるトピラマートの 1 日投与量と血中薬物濃度の関係
に つ い て 検 討 し た 結 果 ,両 者 の 間 に 良 好 な 直 線 関 係 を 認 め た .ま た 最
も 相 関 性 の 高 い 近 似 曲 線 と し て y = 1 .1x を 得 た .相 関 係 数 は r = 0.88 ,
p < 0.01 で あ っ た (Fi g. 11 ) .
3-1-2 . C/ D 比
一部の薬物では成長に伴いクリアランスが変化することから
19)
,
ク リ ア ラ ン ス に 及 ぼ す 年 齢 ,体 重 ,体 表 面 積 お よ び 各 種 臨 床 検 査 値 と
の 関 連 性 に つ い て 検 討 し た . ト ピ ラ マ ー ト の 解 析 結 果 を Fi g. 12 に 示
す .ト ピ ラ マ ー ト の C / D 比 は 年 齢 ,体 重 ,体 表 面 積 ,ク レ ア チ ニ ン 濃
度 と の 間 に 相 関 を 認 め た が ,ア ル ブ ミ ン 値 お よ び そ の 他 臨 床 検 査 値 と
の間には相関は認められなかった.
相 関 性 を 認 め た 各 項 目 に つ い て ,補 正 係 数 α を 算 出 し て 投 与 量 を 補
正し,血中濃度との関係について再検討した.しかし補正係数 α を
様 々 な 形 式 に 変 換 し ,D と C の 相 関 性 に つ い て 検 討 し た が ,補 正 係 数
を使用しない D と C の相関係数を上回る,すなわち相関性の向上を
示 す , 成 績 は 得 ら れ な か っ た ( Fi g. 1 3,14 ).
ま た ,ト ピ ラ マ ー ト は 未 変 化 体 尿 中 排 泄 率 80% の 腎 排 泄 型 薬 剤 で あ
ること
20)
から,腎排泄および肝排泄の指標を考慮した補正係数を算
出 し ,こ の 補 正 係 数 α を 用 い て D と C の 相 関 性 に つ い て 検 討 し た が ,
相 関 性 の 向 上 を 示 す 結 果 は 得 ら れ な か っ た ( Fi g. 15) .
3-1-3 . 多 剤 併 用 下 に お け る 薬 物 動 態 の 解 析
酵素誘導剤であるフェノバルビタールまたはカルバマゼピンの併
用 に よ る C/D 比 へ の 影 響 に つ い て 検 討 し た . 酵 素 誘 導 剤 非 併 用 群 の
C/ D 比 は 1.2 ± 0.4 d a y・K g/ L,フ ェ ノ バ ル ビ タ ー ル 併 用 群 で は 0.6± 0 . 3
27
da y・ K g/ L, カ ル バ マ ゼ ピ ン 併 用 群 で は 1.2 ±0.5 da y・ K g/ L で あ り ,
フ ェ ノ バ ル ビ タ ー ル 併 用 に よ る 顕 著 な 酵 素 誘 導 効 果 が 観 察 さ れ ,両 群
間 に 有 意 な 差 が 観 察 さ れ た (Tabl e 7 ) .
3-2 . ラ モ ト リ ギ ン
3-2-1 . 投 与 量 と 血 中 濃 度 の 関 係
ラ モ ト リ ギ ン の 被 験 者 数 は 51 名 で あ り , 年 齢 分 布 ( Y.O .) ( 中 央 値 )
は , 2 .5 -14.8 ( 11.6) で あ っ た .ま た ,体 重 分 布 (k g) ( 中 央 値 ) は 7.0 -6 3 . 3
(29.3) で あ っ た .
各患者におけるラモトリギンの 1 日投与量と血中薬物濃度の関係
に つ い て 検 討 し た 結 果 ,両 者 の 間 に 良 好 な 直 線 関 係 が 観 察 さ れ た .ま
た 最 も 相 関 性 の 高 い 近 似 曲 線 と し て y = 0.48x + 0.29 を 得 た . 相 関 係
数 は r = 0.80 , p < 0.01 で あ っ た ( Fi g. 16 ).
3-2-2 . C/ D 比
ラ モ ト リ ギ ン に つ い て も ト ピ ラ マ ー ト 同 様 ,年 齢 ,体 重 ,体 表 面 積
及 び 各 種 臨 床 検 査 値 と C / D 比 と の 関 係 に つ い て 検 討 し た .一 部 の 因 子
と の 間 に も 弱 い 相 関 を 認 め る も の の ,投 与 量 を 調 節 す る 変 動 要 因 と は
認 め ら れ な か っ た (Fi g. 1 7) .こ れ ら の 成 績 は ,ラ モ ト リ ギ ン の 体 内 動
態 に 及 ぼ す 年 齢 ,体 重 ,体 表 面 積 ,ア ル ブ ミ ン 濃 度 ,腎 機 能 の 影 響 が
少ないことを示唆している.
3-2-3 . 多 剤 併 用 下 に お け る 薬 物 動 態 の 解 析
酵 素 競 合 薬 剤 と し て バ ル プ ロ 酸 ,ま た 酵 素 誘 導 剤 と し て カ ル バ マ ゼ
ピ ン ,フ ェ ニ ト イ ン ,フ ェ ノ バ ル ビ タ ー ル ま た は プ リ ミ ド ン に つ い て ,
こ れ ら 薬 剤 と の 併 用 の 有 無 に よ る C / D 比 の 影 響 を 検 討 し た .酵 素 競 合
28
薬 剤 を 併 用 下 に お い て ,酵 素 誘 導 剤 非 併 用 群 で は 2.5 ± 1.1 da y・K g/ L,
酵 素 誘 導 薬 剤 併 用 群 で は 0 .9±0.5 da y・ K g/ L で あ り , 酵 素 競 合 薬 剤 非
併 用 下 に お け る 酵 素 誘 導 剤 併 用 群 で は 0.7±0.3 da y・ K g/ L で あ っ た .
酵 素 競 合 薬 剤 の 併 用 に よ り 薬 物 消 失 遅 延 が ,ま た 酵 素 誘 導 剤 の 併 用 に
より顕著な消失亢進が観察され,両者の間に有意な差が観察された
(Tabl e 8) .
3-3 . ス チ リ ペ ン ト ー ル
3-3-1 . 投 与 量 と 血 中 濃 度 の 関 係
ス チ リ ペ ン ト ー ル の 被 験 者 数 は 37 名 で あ り , 年 齢 分 布 ( Y.O.) ( 中
央 値 ) は , 7.0 -14. 8 (12.3) で あ り , 体 重 分 布 (k g) ( 中 央 値 ) は 13.5 -4 5
(20.5) で あ っ た .
各患者におけるスチリペントールの 1 日投与量と血中薬物濃度の
関 係 に つ い て 検 討 し た 結 果 ,投 与 量 の 上 昇 に 伴 い 血 中 濃 度 も 上 昇 し た
が ,上 昇 の 程 度 は 投 与 量 の 増 加 に 伴 い よ り 顕 著 に 上 昇 し ,投 与 量 と 血
中 濃 度 と の 間 に 非 線 形 性 を 示 し た .ま た 最 も 相 関 性 の 高 い 近 似 曲 線 と
し て y = 0.06x 1 . 4 を 得 た .相 関 係 数 は r = 0.8 6, p < 0.01 で あ っ た ( Fi g. 18 ) .
3-3-2 . C/ D 比
ス チ リ ペ ン ト ー ル に つ い て も ト ピ ラ マ ー ト 同 様 ,年 齢 ,体 重 及 び 各
種 臨 床 検 査 値 と C / D 比 と の 関 係 に つ い て 検 討 し た .血 清 ク レ ア チ ニ ン
と の 間 に も 弱 い 相 関 を 認 め た .ス チ リ ペ ン ト ー ル は 高 脂 溶 性 薬 物 で ア
ル ブ ミ ン と の 結 合 率 が 99 % と 高 い こ と か ら ,C / D 比 と ア ル ブ ミ ン 濃 度
と の 相 関 性 に つ い て 検 討 し た .し か し 両 者 の 間 に 相 関 性 は 観 察 さ れ な
か っ た ( Fi g. 1 9 ) .
29
3-3-3 . 非 線 形 薬 物 動 態 の 解 析
ス チ リ ペ ン ト ー ル は 非 線 形 薬 物 動 態 を 示 す こ と か ら ,ミ カ エ リ ス ・
メ ン テ ン 式 の Km ( m g/ L) お よ び Vm a x (m g/ da y/ k g) を 求 め た . 検 討 を
行 っ た 式 は ,1/ D = Km / (Vm ax × C ) + 1/ Vm ax (Fi g. 20 ) ,D = -(Km × D)/ C
+ Vm ax (Fi g. 21 ) お よ び C =(Vm ax × C )/ D – Km (Fi g. 22 ) で あ り , Km
お よ び Vm ax は , そ れ ぞ れ 56. 5 お よ び 4.6 , 56. 5 お よ び 3.5 , な ら び
に 5 4 .5 お よ び 3.0 で あ り ,い ず れ の 計 算 式 を 用 い て も 近 似 し た 値 が 得
られた.
30
4. 考 察
ト ピ ラ マ ー ト は 半 減 期 が 19 -23 時 間 , 蛋 白 結 合 率 が 13 -17% , 未 変
化 体 尿 中 排 泄 率 が 80%と 高 く ,腎 抽 出 率 の 低 い ,腎 排 泄 型 の 薬 剤 で あ
る
20)
.クリアランス変動要因として腎固有クリアランスの関与が推
察 さ れ る . ラ モ ト リ ギ ン は 半 減 期 が 24 -35 時 間 , 蛋 白 結 合 率 が 56% ,
未 変 化 体 尿 中 排 泄 率 が 10% と 低 く ,肝 抽 出 率 の 低 い ,肝 代 謝 型 の 薬 剤
である
21)
.クリアランス変動要因として肝固有クリアランスの関与
が 推 察 さ れ る .ま た ス チ リ ペ ン ト ー ル は 蛋 白 結 合 率 が 99%と 高 く ,未
変 化 体 尿 中 排 泄 率 が 25% で あ る . 肝 抽 出 率 は 約 0.25 で あ る 肝 代 謝 薬
物
22)
で,クリアランス変動要因として肝固有クリアランスと蛋白結
合 率 の 関 与 が 推 察 さ れ る .ま た い ず れ の 薬 物 も 分 布 容 積 が 大 き く ,細
胞 内 外 を 問 わ ず 広 く 分 布 す る 特 性 を 有 し て い る と 考 え ら れ る (Tabl e
9).
これら動態特性を有する薬物を反復投与した際の血中濃度推移を
シ ミ ュ レ ー ト し た グ ラ フ を Fi g. 23 に 示 す . 一 般 に , 血 中 濃 度 を モ ニ
タ ー す る 場 合 ト ラ フ 値 が 用 い ら れ る が ,今 回 投 与 し た 薬 剤 は い ず れ も
半 減 期 が 長 く ,繰 り 返 し 投 与 8 日 目 以 降 は 平 衡 状 態 に 達 し て い る こ と ,
平 衡 状 態 時 に お け る 血 中 濃 度 の 変 動 幅 が 10% 程 度 で あ る こ と ,ま た 近
似 し た 時 間 帯 に 採 血 し て い る こ と か ら ,各 患 者 か ら 得 た デ ー タ は 定 時
測 定 に よ り 得 ら れ た 値 で あ り ,薬 物 動 態 特 性 を 解 析 す る 上 で 特 に 支 障
ないものと考えられる.
一 般 に ,ク リ ア ラ ン ス が 上 昇 す る と ,血 中 濃 度 が 低 下 す る こ と か ら ,
ク リ ア ラ ン ス の 変 動 を 評 価 す る 指 標 と し て ,1 日 投 与 量 に 対 す る 血 中
薬 物 濃 度 を C / D 比 を 用 い た . な お , C/ D の 単 位 は d a y・ K g/ L と な り ,
クリアランスの逆数に相当する.
31
4-1 . ト ピ ラ マ ー ト
投 与 量 と 血 中 濃 度 の 相 関 関 係 に つ い て 検 討 し た 結 果 ,ト ピ ラ マ ー ト
の 血 中 濃 度 は 投 与 量 と 良 好 な 直 線 性 を 示 し ,そ の 薬 物 動 態 特 性 が 線 形
性 を 示 す 薬 剤 と 考 え ら れ た .ト ピ ラ マ ー ト の C / D 比 は 年 齢 ,体 表 面 積
お よ び 体 重 と の 間 に 相 関 を 認 め た こ と か ら ,こ れ ら 要 因 が 投 与 設 計 す
る 際 の 変 動 因 子 と な り 得 る か よ り 詳 細 に 検 討 し た .し か し ,い ず れ の
場合も補正係数を使用しない D と C の相関係数を上回る,すなわち
相 関 性 の 向 上 を 示 す 成 績 は 得 ら れ な か っ た ( Fi g. 13, 14 ).
次 に ,ト ピ ラ マ ー ト の 動 態 特 性 を 考 慮 し た 補 正 を 行 っ た .す な わ ち ,
ト ピ ラ マ ー ト は 未 変 化 体 尿 中 排 泄 率 が 80 % で あ る こ と
20)
から,腎排
泄 率 を 80 % , 肝 排 泄 率 を 20 % と し , そ れ ぞ れ の 補 正 係 数 を 算 出 し た .
腎 排 泄 の 指 標 は 血 清 ク レ ア チ ニ ン 濃 度 ,肝 排 泄 の 指 標 は 体 表 面 積 を 用
い た .し か し ,こ の 補 正 係 数 α を 用 い て も ,相 関 性 の 向 上 を 示 す 結 果
は 得 ら れ な か っ た (Fi g. 1 5) .
以 上 の こ と か ら ,少 な く と も 腎 機 能 が 正 常 な 小 児 に ト ピ ラ マ ー ト を
単 独 投 与 す る 場 合 ,成 人 と 同 様 ,体 重 に 基 づ い て 投 与 設 計 す れ ば よ い
と判断される.
ま た , ト ピ ラ マ ー ト は , 主 に 腎 に て 排 泄 さ れ る が , 20 % が 肝 代 謝 さ
れ る 薬 剤 で あ る . 主 に C YP 3A4 に よ り 代 謝 さ れ る こ と か ら , C YP 3A4
誘 導 剤 に よ る 薬 物 動 態 へ の 影 響 を 明 ら か に す る た め ,酵 素 誘 導 剤 併 用
に よ る C / D 比 に 関 し て 比 較 検 討 し た .本 研 究 で は ,酵 素 誘 導 剤 と し て
フ ェ ノ バ ル ビ タ ー ル ま た は カ ル バ マ ゼ ピ ン を 選 択 し た .酵 素 誘 導 剤 非
併 用 群 に 対 し ,フ ェ ノ バ ル ビ タ ー ル 併 用 群 で は 顕 著 な 酵 素 誘 導 効 果 が
観 察 さ れ , 統 計 的 に 有 意 な 差 を 認 め た (Tabl e 7) . こ の 結 果 は , Adi n
32
らの報告
23)
らの報告
23)
と 類 似 し て い た . 一 方 , カ ル バ マ ゼ ピ ン 併 用 群 で は Adi n
と異なり,有意差が認められなかった.本研究において
カ ル バ マ ゼ ピ ン 併 用 群 で 有 意 差 が 認 め ら な か っ た 要 因 と し て , Adi n
らの報告
23)
が 20 症 例 を 対 象 と し て い る の に 対 し て , 本 研 究 で は 6 症
例と少ないことが関与しているものと推察される.これらの成績は,
ト ピ ラ マ ー ト 投 与 患 児 に 併 用 薬 を 用 い る 場 合 ,相 互 作 用 の 有 無 に つ い
て 事 前 調 査 す る と 共 に ,投 与 中 も 定 期 的 に 血 中 濃 度 測 定 す る 必 要 が あ
ることを示唆している.
4-2 . ラ モ ト リ ギ ン
投 与 量 と 血 中 濃 度 の 関 係 に お い て ,ラ モ ト リ ギ ン は 良 好 な 直 線 性 が
示 し た こ と よ り , 線 形 性 を 示 す 薬 剤 と 考 え ら れ る . C/D 比 は , 年 齢 ,
体 重 ,ア ル ブ ミ ン 値 ,肝 ・ 腎 機 能 等 ,い ず れ の 因 子 と も 相 関 性 が 認 め
ら れ な か っ た こ と か ら ,肝 機 能 に 異 常 の な い 小 児 に ラ モ ト リ ギ ン を 単
独 投 与 す る 場 合 ,体 重 に 基 づ い て 投 与 量 を 設 定 す れ ば よ い と 考 え ら れ
る.
ま た ,ラ モ ト リ ギ ン は ,肝 代 謝 薬 剤 で グ ル ク ロ ン 酸 抱 合 に よ り 代 謝
さ れ る .そ の た め ,同 経 路 で 代 謝 さ れ 酵 素 競 合 薬 剤 で あ る バ ル プ ロ 酸
を 併 用 し た 時 ,あ る い は グ ル ク ロ ン 酸 抱 合 を 誘 導 す る 薬 剤 を 併 用 し た
時 に ,血 中 濃 度 へ の 影 響 が 懸 念 さ れ る .本 研 究 で は ,酵 素 競 合 薬 剤 と
し て バ ル プ ロ 酸 ,ま た 酵 素 誘 導 薬 剤 と し て カ ル バ マ ゼ ピ ン ,フ ェ ニ ト
イ ン ,フ ェ ノ バ ル ビ タ ー ル あ る い は プ リ ミ ド ン を 併 用 し た 時 の C / D 比
の 変 動 に つ い て 検 討 し た .そ の 結 果 ,酵 素 競 合 薬 剤 を 併 用 し た 群 で は ,
酵 素 誘 導 剤 併 用 群 に 比 し て ,C / D 比 は 高 値 を 示 し た (Tabl e 8).こ れ ら
の 成 績 は , 成 人 を 対 象 と し た May ら
33
24)
お よ び B at t i no ら の 報 告
25)
と
一致しており,ラモトリギンを投与する小児に併用薬を投与する際,
併用薬に起因する酵素阻害作用あるいは酵素誘導作用に注意する必
要があることを示唆している.
4-3 . ス チ リ ペ ン ト ー ル
血 中 ス チ リ ペ ン ト ー ル 濃 度 と 1 日 投 与 量 と の 関 係 に つ い て , Lev y
ら
26)
は 21 か ら 5 0 歳 の 成 人 6 例 を 対 象 に 種 々 検 討 し た 結 果 , ミ カ エ
リ ス・メ ン テ ン 型 の 非 線 形 薬 物 動 態 を 示 す こ と を 報 告 し て い る .一 方 ,
Arends ら は ,線 形 を 示 す 症 例 だ け で な く 非 線 形 を 示 す 症 例 も あ る こ と
を報告
5)
し て い る . Ar ends ら は , 年 齢 に つ い て も 検 討 し て お り , 1 2
歳 以 上 の グ ル ー プ で は , 12 歳 未 満 の グ ル ー プ よ り 1 日 投 与 量 に 対 し
て血中スチリペントール濃度が高いとを報告
5)
し て い る .本 研 究 で は ,
投与量を増すごとに血中スチリペントール濃度がより顕著に上昇す
る 曲 線 を 描 き ,回 帰 直 線 よ り 求 め た 相 関 係 数 よ り も 良 好 な 値 を 得 る こ
と が で き た .そ こ で ,ミ カ エ リ ス ・ メ ン テ ン の 式 を ,両 逆 数 プ ロ ッ ト
を は じ め 様 々 な 式 に 変 形 し , Vm ax お よ び Km を 求 め た . そ の 結 果 ,
い ず れ の 変 形 式 か ら 得 た 数 値 も Lev y ら の 報 告
26)
と近似した値を示し
た.
ま た , ス チ リ ペ ン ト ー ル は 蛋 白 結 合 率 が 99% と 非 常 に 高 い 薬 物 で ,
結合タンパクとしてアルブミンが関与しているが,アルブミン値と
C/ D 比 と の 間 に 相 関 性 は 認 め ら れ な か っ た .ス チ リ ペ ン ト ー ル は 様 々
な 酵 素 に よ り 代 謝 さ れ る が C YP 2C 19 も 関 与 し て お り , 遺 伝 子 多 型 を
はじめ様々な要因が関与しているためにアルブミン値との間に相関
性が得られなかったのではないかと推察される.
34
第 3 章
新規測定法の臨床応用
前章において得た各薬剤の薬物動態特性ならびに薬物相互作用に
関 す る 知 見 を 基 に ,血 中 濃 度 コ ン ト ロ ー ル 不 良 の 患 者 に 対 し ,今 回 開
発した測定方法を利用して薬剤学的介入を実施した.
症例 1
ト ピ ラ マ ー ト 血 中 濃 度 が 0.7 µ g/ m L と 低 値 を 示 す 患 児 (2 歳 1 0 ヶ 月 ,
女 児 , 12.0 k g) に TDM 介 入 を 行 っ た (Fi g. 2 4) . 患 児 は 2011 年 10 月
よりてんかん発作を発症した.主治医はウエスト症候群を疑い,診
断・治療ガイドラインに準拠して
27)
, ビ タ ミ ン B6 製 剤 投 与 よ り 治
療 を 開 始 し た .さ ら に グ ロ ブ リ ン 製 剤 お よ び AC TH 製 剤 を 追 加 投 与 し
た が 症 状 の 改 善 は 認 め ら れ な か っ た . 20 11 年 12 月 か ら , 脱 力 発 作 に
対 し て バ ル プ ロ 酸 ,上 肢 上 げ 発 作 に 対 し て ゾ ニ サ ミ ド の 投 与 を 開 始 し ,
適 宜 増 量 を 試 み た . 2012 年 5 月 に バ ル プ ロ 酸 は 無 効 と 判 断 し て 投 与
を 中 止 し ,ト ピ ラ マ ー ト に 変 更 し た .そ の 結 果 ,発 作 は 消 失 し た こ と
か ら ,以 降 ,ゾ ニ サ ミ ド と の 2 剤 併 用 投 与 に て 発 作 を コ ン ト ロ ー ル し
た . 2014 年 4 月 よ り 再 び 発 作 が 出 現 し た こ と か ら , ト ピ ラ マ ー ト の
血 中 濃 度 を 測 定 し た . そ の 結 果 , 0.7 µ g/ m L と 低 値 で あ っ た . 同 時 に
測 定 し た 生 化 学 検 査 の 結 果 に は ,腎 機 能 お よ び 肝 機 能 を 始 め 様 々 な 検
査 値 に 異 常 値 所 見 は 認 め ら れ な か っ た (Tabl e 10) .201 2 年 5 月 の ト ピ
ラ マ ー ト 投 与 開 始 時 よ り 投 与 量 を 変 更 し て い な い こ と か ら ,ト ピ ラ マ
ート投与量が少ないことが原因と判断し,投与量の増量を計画した.
薬 剤 投 与 開 始 時 の 年 齢 は 月 齢 7 ヶ 月 で あ り ,ト ピ ラ マ ー ト の 適 応 外
年 齢 で あ っ た こ と か ら ,発 作 が 抑 制 で き た 時 点 で の 投 与 量 を 維 持 量 と
35
し て い た .今 回 ,年 齢 の 上 昇 に 伴 い 体 重 も 増 加 し た こ と か ら 投 与 量 の
増量が必要と判断した.
血 中 濃 度 は 有 効 域 5.0 µ g/ m L を 目 標
28)
に ,先 の 動 態 特 性 の 結 果 を 踏
ま え 投 与 設 計 し た . そ の 結 果 , 投 薬 量 を 1.5 m g/ k g か ら 4. 9 m g/ k g に
増 量 す る こ と で , 血 中 濃 度 は 5.0 µ g/ m L ま で 上 昇 す る と 予 測 し た . 臨
床 医 は 代 謝 性 ア シ ド ー シ ス の 発 症 を 懸 念 し ,2 段 階 で の 増 量 を 実 施 し
た . す な わ ち , 投 薬 量 を 一 旦 1.5 m g/ kg か ら 3.0 m g/ kg に 増 量 し た と
こ ろ , 血 中 濃 度 が 2.8 µ g/ m L に 上 昇 し た が 副 作 用 の 発 現 は 観 察 さ れ な
か っ た . そ こ で さ ら に 投 与 量 を 6.0 m g/ k g に 増 量 し た 結 果 , 血 中 濃 度
は 6 . 0 µ g/ m L に 上 昇 し , て ん か ん 発 作 な ら び に 副 作 用 も 認 め ら れ な い
こ と か ら ,以 後 維 持 投 与 量 と し て 継 続 投 与 し た ( Fi g. 2 4) .現 在 ,脳 波
検 査 に 合 わ せ て 半 年 毎 に 血 中 濃 度 を 定 期 的 に モ ニ タ ー し て お り ,体 重
および血中濃度に大きな変動はなく,良好に経過している.
症例 2
ラ モ ト リ ギ ン と バ ル プ ロ 酸 の 併 用 投 与 患 児 (14 歳 10 ヶ 月 , 女 児 ,
49.3 kg) に TDM 介 入 を 行 っ た ( Fi g. 2 5). 患 児 は 2004 年 10 月 よ り 発
作 が 出 現 し た た め バ ル プ ロ 酸 の 投 与 を 開 始 し た . 2008 年 2 月 よ り カ
ル バ マ ゼ ピ ン を 追 加 投 与 し , 2011 年 9 月 よ り さ ら に ラ モ ト リ ギ ン を
併用投与し,以降 3 剤にててんかん発作をコントロールしていた.
2013 年 2 月 , て ん か ん 発 作 も 皆 無 で あ り , 妊 娠 可 能 年 齢 に な っ た こ
と か ら ,投 薬 数 の 減 数 を 検 討 し た .削 減 対 象 薬 と し て 投 与 薬 剤 中 で 有
効性が低いにもかかわらず胎児奇形発症率の高いバルプロ酸を選択
し た .第 2 章 で 得 た 成 績 よ り ,バ ル プ ロ 酸 併 用 中 止 に よ り ラ モ ト リ ギ
ン血中濃度の低下が予測されたことから,薬学的介入を行った.
36
本 患 者 に お い て バ ル プ ロ 酸 併 用 時 の ラ モ ト リ ギ ン 血 中 濃 度 は 9.1
µ g/ m L で あ っ た .同 時 測 定 し た 生 化 学 検 査 の 結 果 に は ,腎 機 能 お よ び
肝 機 能 を 含 め 異 常 値 を 示 す 検 査 所 見 は 認 め ら れ な か っ た ( Ta b l e 11 ) .
第 2 章 の 結 果 よ り ,バ ル プ ロ 酸 の 併 用 中 止 し た 場 合 ,C / D 比 0.7 da y・
Kg/ L, ピ ー ク 血 中 濃 度 は 2 .3 µ g/ m L に な る と 予 測 さ れ , 投 与 量 の 増 加
に よ り 血 中 濃 度 は 維 持 可 能 と 判 断 し た .医 師 と 協 議 し た 結 果 ,ラ モ ト
リギンは急激な増量により致死的な皮膚障害などの副作用を発症す
る こ と か ら ,バ ル プ ロ 酸 中 止 後 に 血 中 濃 度 を 測 定 し ,発 作 の 発 症 状 況
を 確 認 し た 上 で , 新 た な 血 中 濃 度 を 設 定 す る こ と に し た ( Fi g. 2 5) .
バ ル プ ロ 酸 中 止 4 ヶ 月 後 に 血 中 濃 度 を 測 定 し た 結 果 ,ラ モ ト リ ギ ン
の 血 中 濃 度 は 3.4 µ g/ m L に 低 下 し て い た . 本 症 例 で は , 最 小 有 効 濃 度
28)
ま で 血 中 濃 度 の 上 昇 を 目 指 し , 投 与 量 を 6.0 m g/ k g に 増 量 し た . そ
の 結 果 , 2 ヶ 月 後 の 血 中 濃 度 は 5.4 µ g/ m L に 上 昇 し , 目 立 っ た 発 作 が
認 め ら れ な い こ と か ら ,維 持 量 と し て 継 続 投 与 し た .本 症 例 は ,成 人
期への移行に伴い,他院へ転院した.
37
総
括
小児てんかん患者に有効かつ安全な至適薬物療法を遂行するため
に は 薬 物 血 中 濃 度 測 定 は 極 め て 重 要 で あ る .今 回 難 治 性 て ん か ん の 治
療 に 用 い ら れ て い る 3 種 の 抗 て ん か ん 薬 ( ト ピ ラ マ ー ト ,ラ モ ト リ ギ
ン ,ス チ リ ペ ン ト ー ル ) を 対 象 に ,様 々 な 処 理 条 件 を 改 良 す る こ と に
より,臨床応用可能な簡便かつ迅速に微量試料で高感度分析可能な
HP LC 測 定 法 の 開 発 を 行 っ た .
今 回 開 発 し た 分 析 法 は ,い ず れ の 薬 物 も こ れ ま で の 報 告 よ り 少 量 の
試 料 で 測 定 で き た .ま た ,極 め て 特 異 性 に 優 れ ,併 用 の 可 能 性 の あ る
薬物の影響を受けることなく良好に分離定量することができた.
今回開発した測定法を難治性小児てんかん患者試料を用いて評価
し た 結 果 ,ト ピ ラ マ ー ト お よ び ラ モ ト リ ギ ン は 投 与 量 と 血 中 濃 度 の 間
に 線 形 性 を 示 す こ と ,併 用 す る 薬 剤 に よ り 影 響 を 受 け る こ と を 認 め た .
一 方 ,ス チ リ ペ ン ト ー ル に つ い て は 非 線 形 性 を 示 し ,投 与 設 計 す る 際 ,
各薬剤の体内動態特性を十分把握した上で対処する必要があること
を認めた.
ま た ,本 測 定 法 に よ り 血 中 濃 度 を モ ニ タ リ ン グ す る こ と で ,ト ピ ラ
マートおよびラモトリギンを服用している患者の血中濃度を良好に
コントロールすることができた.
こ れ ら の 成 績 は ,今 回 開 発 し た 分 析 方 法 が 抗 て ん か ん 薬 の 血 中 濃 度
モ ニ タ リ ン グ に 極 め て 有 用 で あ り ,有 効 か つ 安 全 な 薬 物 療 法 を 遂 行 す
る上で有益なツールとなり得ることを示している.
38
謝
辞
本 研 究 の 遂 行 に 際 し ,終 始 ご 懇 意 な る ご 指 導 ,ご 鞭 撻 を 賜 り ま し た
明治薬科大学
薬物体内動態学教室
吉田久博教授に深甚なる謝意
を表します.
本 研 究 を 進 め る に あ た り ,有 益 な ご 助 言 な ら び に ご 指 導 を 賜 り ま し
た埼玉県立小児医療センターの各先生方に深謝致します.
本研究に際し,多くの知識や示唆を頂いた埼玉県立がんセンター
治験管理室
柵木信男先生に感謝の意を表します.
本 研 究 の 遂 行 に あ た り ,多 大 な る ご 尽 力 を い た だ き ま し た 国 立 病 院
機構静岡てんかん・神経医療センターの各先生方に感謝致します.
39
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42
図・表
43
Table 1. Intra- and inter-assay precision and accuracy results for plasma
samples with topiramate
Intra-assay (n = 5)
Drug
topiramate
Inter-assay (n = 5)
Added
(μg/mL) Found (mean) Precision CV Accuracy
0.1
0.2
0.5
2.0
8.0
Found (mean) Precision CV Accuracy
(μg/mL)
(%)
(%)
(μg/mL)
(%)
(%)
0.1
0.2
0.5
2.1
8.1
3.3
7.1
2.6
3.7
0.8
105
104
99
104
101
0.1
0.2
0.5
2.0
8.1
9.3
3.8
7.5
1.8
1.3
107
103
99
101
102
Table 2. List of drugs checked for topiramate method interference
Concentration
Retention time
(μg/mL)
(min)
acetazolamide
carbamazepine
20
10
N.D.
N.D.
carbamazepine-10,11epoxide
5
N.D.
Drug
clobazam
0.5
N.D.
clonazepam
0.1
N.D.
N-desmethylclobazam
5
N.D.
diazepam
0.5
N.D.
ethosuximide
100
N.D.
felbamate
100
N.D.
gabapentin
20
N.D.
p-hydroxyphenytoin
10
N.D.
lamotrigine
10
N.D.
levetiracetam
50
N.D.
10-hydroxycarbazepine
40
N.D.
I.S. (4-ethylbenzenesulfonamide)
250
18.8
N.D. ; not detected within 60 min from injection
Concentration
Retention time
(μg/mL)
(min)
nitrazepam
oxcarbazepine
0.1
10
N.D.
N.D.
phenobarbital
40
N.D.
20
1000
10
20
10
20
0.1
20
100
50
20
ー
N.D.
N.D.
N.D.
N.D.
N.D.
N.D.
N.D.
13.5
N.D.
N.D.
8.2
ー
Drug
phenytoin
potassium bromide
primidone
rufinamide
stiripentol
sultiame
tiagabine
topiramate
valproic acid
vigabatrin
zonisamide
blank plasma
Table 3. Intra- and inter-assay precision and accuracy results for plasma
samples with lamotritine
Intra-assay (n = 5)
Drug
lamotorigine
Inter-assay (n = 5)
Added
(μg/mL) Found (mean) Precision CV Accuracy
0.1
0.3
2.0
8.0
16.0
Found (mean) Precision CV Accuracy
(μg/mL)
(%)
(%)
(μg/mL)
(%)
(%)
0.1
0.3
2.0
8.1
16.6
6.9
2.2
1.3
1.8
2.2
106
105
99
102
104
0.1
0.3
2.0
8.2
16.4
7.1
6.4
3.1
2.9
1.7
103
106
99
102
102
Table 4. List of drugs checked for lamotorigine method interference
Concentration
Retention time
(μg/mL)
(min)
acetazolamide
carbamazepine
20
10
2.3
20.1
carbamazepine-10,11epoxide
5
9.7
Drug
clobazam
0.5
N.D.
clonazepam
0.1
N.D.
N-desmethylclobazam
5
N.D.
diazepam
0.5
N.D.
ethosuximide
100
3.9
felbamate
100
4.9
gabapentin
20
N.D.
p-hydroxyphenytoin
10
6.8
lamotrigine
10
5.4
levetiracetam
50
2.4
10-hydroxycarbazepine
40
N.D.
I.S. (chlorzoxazone)
20
12.8
N.D. ; not detected within 60 min from injection
Concentration
Retention time
(μg/mL)
(min)
nitrazepam
oxcarbazepine
0.1
10
N.D.
11.7
phenobarbital
40
8.2
20
1000
10
20
10
20
0.1
20
100
50
20
ー
18.0
N.D.
4.8
N.D.
N.D.
3.5
N.D.
N.D.
N.D.
N.D.
4.5
ー
Drug
phenytoin
potassium bromide
primidone
rufinamide
stiripentol
sultiame
tiagabine
topiramate
valproic acid
vigabatrin
zonisamide
blank plasma
Table 5. Intra- and inter-assay precision and accuracy results for plasma
samples with stiripentol
Intra-assay (n = 5)
Drug
stiripentol
Inter-assay (n = 5)
Added
(μg/mL) Found (mean) Precision CV Accuracy
0.1
0.2
20.0
30.0
Found (mean) Precision CV Accuracy
(μg/mL)
(%)
(%)
(μg/mL)
(%)
(%)
0.1
0.2
20.7
30.8
3.0
8.7
2.5
3.9
104
97
104
103
0.1
0.2
20.4
30.8
3.2
7.8
3.0
6.1
96
105
102
103
Table 6. List of drugs checked for stiripentol method interference
Concentration
Retention time
(μg/mL)
(min)
acetazolamide
carbamazepine
20
10
N.D.
N.D.
carbamazepine-10,11epoxide
5
N.D.
Drug
clobazam
0.5
N.D.
clonazepam
0.1
N.D.
N-desmethylclobazam
5
N.D.
diazepam
0.5
N.D.
ethosuximide
100
N.D.
felbamate
100
N.D.
gabapentin
20
N.D.
p-hydroxyphenytoin
10
N.D.
lamotrigine
10
N.D.
levetiracetam
50
N.D.
10-hydroxycarbazepine
40
N.D.
I.S. (xanthone)
200
4.2
N.D. ; not detected within 60 min from injection
Concentration
Retention time
(μg/mL)
(min)
nitrazepam
oxcarbazepine
0.1
10
N.D.
N.D.
phenobarbital
40
N.D.
20
1000
10
20
10
20
0.1
20
100
50
20
ー
N.D.
N.D.
N.D.
N.D.
4.6
N.D.
N.D.
N.D.
N.D.
N.D.
N.D.
ー
Drug
phenytoin
potassium bromide
primidone
rufinamide
stiripentol
sultiame
tiagabine
topiramate
valproic acid
vigabatrin
zonisamide
blank plasma
Table 7. Age, body weight, plasma concentrations, doses, and C/D ratio of topiramate
Treatment group
+ Other AEDs
Age
BW
Concentration
Dose
C/D ratio
(Y.O.)
(kg)
(μg/mL)
(mg/day/kg)
(day・kg/L)
26
9.4
±4.4
30.6
±19.5
5.5
±3.4
4.9
±3.0
1.2
±0.4
9
7.4
±4.1
15.6
±5.6*
4.7
±3.0
8.8
±6.0
0.6
±0.3*
6
11.7
±3.1
34.4
±17.8
4.5
±2.6
4.1
±2.2
1.2
±0.5
n
.
+ PB + Other AEDs
+ CB + Other AEDs
Means ± S.D. C/D ratio = Concentration/Dose. *p<0.05
PB; phenobarbital, CB; carbamazepine, AEDs; antiepileptic drugs.
Table 8. Age, body weight, plasma concentrations, doses, and C/D ratio of lamotrigine
Treatment group
n
Age
BW
Concentration
Dose
C/D ratio
(Y.O.)
(kg)
(μg/mL)
(mg/day/kg)
(day・kg/L)
31.1
±15.9
3.7
±3.0
1.5
±0.9
2.5
±1.1
.
20
9.9
±3.7
+ VPA + inducers
15
11.4
±2.3
30.9
±11.4
3.8
±3.2
4.5
±2.8*
0.9
±0.5*
+ inducers
16
10.8
±3.7
37.0
±16.5
3.5
±2.1
5.7
±3.0*
0.7
±0.3*
+ VPA
…
...
.
Means ± S.D. C/D ratio = Concentration/Dose. *p<0.05
Inducers; carbamazepine, phenytoin, phenobarbital, or primidone.
Table 9. トピラマート,ラモトリギンおよびスチリペントールの薬物特性
トピラマート
ラモトリギン
スチリペントール
T1/2(hr)
19-23
24-35
6.0-8.6
バイオアビラビリティ(%)
>70
97.6
-
蛋白結合率(%)
13-17
56
99
未変化体尿中排泄率(%)
80
10
25
分布容積(L/kg)
0.6-0.8
0.9-1.2
1
全身クリアランス(mL/min/kg)
0.3-0.5
0.4-0.6
3.3-6.0
抽出率
0.03-0.04 (腎) 0.03-0.04 (肝) 0.17-0.32 (肝)
消失特性
腎排泄
肝代謝
肝代謝
タンパク結合依存
クリアランス変動要因
CLintR
CLintH
CLintH, fuB
Table 10. トピラマート介入事例_検査値
症例1
TP(g/dL)
7.1
GOT(U/L)
34
UA(mg/dL)
2.0
ALB(g/dL)
4.4
GPT(U/L)
11
Ca(mg/dL)
10.1
T-BIL(mg/dL)
0.5
ALP(U/L)
674
D-BIL(mg/dL)
0.0
LD(U/L)
I-BIL(mg/dL)
0.5
CK(U/L)
CHO(mg/dL)
197
89
TG(mg/dL)
P(mg/dL)
4.8
48
Na(mEq/L)
140
3
K(mEq/L)
4.2
UN(mg/dL)
11
CL(mEq/L)
110
CRE(mg/dL)
0.27
Table 11. ラモトリギン介入事例_検査値
症例2
TP(g/dL)
7.2
GOT(U/L)
13
UA(mg/dL)
3.2
ALB(g/dL)
5.0
GPT(U/L)
11
Ca(mg/dL)
9.9
T-BIL(mg/dL)
0.5
ALP(U/L)
134
P(mg/dL)
3.7
D-BIL(mg/dL)
0.1
LD(U/L)
141
Na(mEq/L)
139
I-BIL(mg/dL)
0.4
CK(U/L)
63
K(mEq/L)
4.3
CHO(mg/dL)
130
UN(mg/dL)
13
CL(mEq/L)
103
51
CRE(mg/dL)
0.48
TG(mg/dL)
発症率
累積発症率
/
発
症
率
(
人
口
10
万
人
当
り
)
有病率
有
病
率
、
累
積
発
症
率
(
%
)
年齢
Fig. 1. てんかんの年代別発症率
topiramate
4-ethylbenzenesulfonamide
4-chloro-7-nitrobenzofurazan
Fig. 2. Chemical structures of topiramate, 4-ethylbenzenesulfonamide and
4-chloro-7-nitrobenzofurazan
lamotrigine
chlorzoxazone
Fig. 3. Chemical structures of lamotrigine and chlorzoxazone
stiripentol
xanthone
Fig. 4. Chemical structures of stiripentol and xanthone
Peak area ratio (arbitrary unit)
y = 0.19x – 0.01
r = 0.99, p < 0.01
(means of 3samples each)
Concentration (μg/mL)
Fig. 5. Calibration curve and linearity of topiramate
Peak area ratio (arbitrary unit)
y = 0.12x – 0.02
r = 0.99, p < 0.01
(means of 3samples each)
Concentration (μg/mL)
Fig. 6. Calibration curve and linearity of lamotrigine
Peak area ratio (arbitrary unit)
y = 0.11x + 0.02
r = 0.99, p < 0.01
(means of 3samples each)
Concentration (μg/mL)
Fig. 7. Calibration curve and linearity of stiripentol
LC/MS analysis (μg/mL)
y = 1.0x – 0.1
r = 0.98, p < 0.01
(n = 46)
HPLC analysis (μg/mL)
Fig. 8. Relationship of plasma topiramate concentrations of
HPLC analysis and LC/MS analysis
LC/MS analysis (μg/mL)
y = 1.1x – 0.24
r = 0.99, p < 0.01
(n = 42)
HPLC analysis (μg/mL)
Fig. 9. Relationship of plasma lamotrigine concentrations of
HPLC analysis and LC/MS analysis
Concentration / Dose
y=0.02x+0.64
r = 0.83
1
α
α
△W
△W
中央値
患者体重
患者体重
体重 (kg)
Fig. 10. 体重中央値を用いた場合のトピラマートのConcentration / Dose比補正
Concentration (μg/mL)
y = 1.1x
r = 0.88, p < 0.01
(n = 26)
Dose (mg/day/kg)
Fig. 11. Relationship between plasma concentration and dose
of topiramate
Concentration / Dose (day・kg/L)
2
y=0.06x+0.60
r = 0.66, p < 0.01
2
y=0.02x+0.64
r = 0.83, p < 0.01
2
1
1
1
0
0
0
年齢(Y.O.)
2
y=-0.14x+1.76
r = 0.12, p = 0.59
体表面積 (㎡)
体重 (kg)
y=0.006x+0.46
r = 0.32, p = 0.11
2
2
1
1
1
0
0
0
ALB (g/dL)
y=0.72x+0.42
r = 0.81, p < 0.01
eGFR (mL/min/1.73㎡)
Fig. 12. トピラマートのConcentration / Dose比
y=1.22x+0.59
r = 0.62, p < 0.01
SCr (mg/dL)
C (μg/mL)
15
y=1.24x+0.74
r = 0.84, p < 0.01
10
10
5
5
0
0
α × D(mg/kg)
1.5
logC
15
y=0.12x+0.17
r = 0.84, p < 0.01
y=0.44x+1.9
r = 0.78, p < 0.01
(1+logα) x D(mg/kg)
1.5
1.0
1.0
0.5
0.5
0
0
α × D(mg/kg)
y=0.04x+0.29
r = 0.78, p < 0.01
(1+logα) x D(mg/kg)
Fig. 13. 体重補正を行ったトピラマートの投与量と血中濃度の関係
C (μg/mL)
15.0
15
10.0
10
10.0
10
5.05
5.05
0.00
0.00
0
1.5
1.5
logC
15.0
15
y=0.96x+0.34
r = 0.86, p < 0.01
5
10
α × D(mg/kg)
15
0
1.5
1.5
y=0.09x+0.20
r = 0.79, p < 0.01
1.0
1.0
1.0
1.0
0.5
0.5
0.5
0.5
0.00
0.00
0
5
y=0.44x+1.7
r = 0.82, p < 0.01
10
α × D(mg/kg)
15
10
20
30
(1+logα) x D(mg/kg)
y=0.01x+0.23
r = 0.85, p < 0.01
0
50
(1+logα) x D(mg/kg)
Fig. 14. 体表面積補正を行ったトピラマートの投与量と血中濃度の関係
100
C (μg/mL)
15
15
y=0.52x+3.1
r = 0.49, p < 0.05
10
10
1010
55
55
00
00
0
1.5
1.5
logC
1515
5
10
α × D(mg/kg)
15
0
1.5
1.5
y=0.06x+0.38
r = 0.54, p < 0.01
1.0
1.0
1.0
1.0
0.5
0.5
0.5
0.5
0.00
0.0 0
0
5
10
α × D(mg/kg)
y=0.38x+2.3
r = 0.70, p < 0.01
15
10
20
30
(1+logα) x D(mg/kg)
y=0.04x+0.32
r = 0.72, p < 0.01
0
10
20
30
(1+logα) x D(mg/kg)
Fig. 15. 腎,肝排泄補正を行ったトピラマートの投与量と血中濃度の関係
Concentration (μg/mL)
y = 0.48x + 0.29
r = 0.80, p < 0.01
(n = 16)
Dose (mg/day/kg)
Fig. 16. Relationship between plasma concentration and dose
of lamotrigine
Concentration / Dose (day・kg/L)
1.5
1.5
1.5
1.5
y=0.03x+0.3
r = 0.33, p = 0.21
y=0.01x+0.29
r = 0.49, p = 0.052
1.5
1.5
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
0.5
0.5
0.5
0.5
0.5
0.5
0.0 0
0.00
20
0
0.0 0
0
100
0
1.5
10
年齢 (Y.O.)
y=0.35x-0.85
r = 0.38, p = 0.16
1.5
50
体重 (kg)
y=-0.02x+0.92
r = 0.26, p = 0.34
1.5
1.5
1.0
1.0
1.0
1.0
0.5
0.5
0.5
0.5
0
0
ALB (g/dL)
ALT (U/L)
y=0.39x+0.18
r = 0.48, p = 0.06
1
2
体表面積 (㎡)
y=0.70x+0.29
r = 0.48, p = 0.06
0.0 0
0.0
Fig. 17. ラモトリギンのConcentration / Dose比
0.5
1.0
SCr (mg/dL)
Concentration (μg/mL)
y = 0.06x1.4
r = 0.86, p < 0.01
(n = 37)
Dose (mg/day/kg)
Fig. 18. Relationship between plasma concentration and
dose of stiripentol
y=0.02x+0.11
r = 0.32, p = 0.06
Concentration / Dose (day・kg/L)
1.0
1.0
1.0
1.0
0.5
0.5
0.5
0.5
0.0 0
0.00
0
1.0
0
5
10
15
年齢 (Y.O.)
y=0.06x+0.02
r = 0.17, p = 0.33
y=0.003x+0.23
r = 0.13, p = 0.45
1.0
1.0
20 40 60 80
体重 (kg)
y=-0.002x+0.32
r = 0.11, p = 0.52
1.0
1.0
0.5
0.5
0.5
0.5
0.5
0
0.00
0.0 0
40
0.0
0
ALB (g/dL)
20
ALT (U/L)
y=0.27x+0.16
r = 0.41, p < 0.05
Fig. 19. スチリペントールのConcentration / Dose比
0.5 1.0 1.5
SCr (mg/dL)
1 / Dose (kg/day/mg)
y = 0.08x + 0.02
(n = 37)
Vmax = 56.5 mg/day/kg
Km = 4.6 mg/L
1 / Concentration (L/mg)
Fig. 20. Michaelis-Menten plot of Stiripentol
1/D = Km/(Vmax × C) + 1/Vmax
Dose (mg/day/kg)
y = -3.5x + 56.5
(n = 37)
Vmax = 56.5 mg/day/kg
Km = 3.5 mg/L
Dose / Concentration (L/day/kg)
Fig. 21. Michaelis-Menten plots of Stiripentol
D = -(Km × D)/C + Vmax
Concentration (mg/L)
y = 54.5x -3.0
(n = 37)
Vmax = 54.5 mg/day/kg
Km = 3.0 mg/L
Concentration / Dose (kg/day/L)
Fig. 22. Michaelis-Menten plot of Stiripentol
C =(Vmax × C)/D - Km
Concentration (μg/mL)
トピラマート
ラモトリギン
20
6
20
スチリペントール
15
15
4
10
10
2
5
0
0
上限-下限
上限-下限
13.2-15.2
4-4.6
4
8
0
0
4
5
上限-下限
15.5-16.7
8
Time (day)
Fig. 23. 反復投与シミュレーション
0
0
4
8
症例1
’11/10
部分発作
全般発作
’11/12
’12/05
//
’14/04
’14/07
’14/10
発作
介入
6.0
3.0
投薬歴
(mg/kg)
Vit.B6
1.5
トピラマート
グロブリン
製剤
ACTH製剤
トピラマート
血中濃度
(μg/mL)
バルプロ酸
ゾニサミド
有効治療域
Fig. 24. トピラマート介入事例_症例1
症例2
’04/10
部分発作
全般発作
’08/02
’11/09
//
’13/02
’13/06
’13/08
発作
介入
バルプロ酸
投薬歴
(mg/kg)
カルバマゼピン
6.0
4.0
10
ラモトリギン
血中濃度
(μg/mL)
5
0
Fig. 25. ラモトリギン介入事例_症例2
ラモトリギン
有効治療域
Fly UP