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Cefoperazone(CPZ)の前立腺組織内への移行 - 特に組織採
取部位の差について -
Author(s)
福島, 修司; 三浦, 猛; 近藤, 猪一郎; 藤井, 浩; 広川, 信; 岩崎,
晧; 石塚, 栄一; 北島, 直登
Citation
Issue Date
URL
泌尿器科紀要 (1983), 29(1): 87-93
1983-01
http://hdl.handle.net/2433/120095
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
87
総譜笥マ〕
Cefoperazone(CPZ)の前立腺組織内への移行
一特に組織採取部位の差について一
横浜市立市民病院泌尿器科
福島 修司・三浦
猛
神奈川県立成人病センター泌尿器科
近藤猪一郎・藤井
浩
藤沢市民病院泌尿器科
広川
信・岩崎
晧
横浜赤十字病院泌尿器科
石塚 栄一・北島 直登
A STUDY OF CEFOPERAZONE PROSTATIC TISSUE LEVELS:
iT.)IFFERENCE BETWEEN THE GLAND AND CAPSULE
Shuji FuKusHiMA and Takeshi MiuRA
From theエ)卿伽8漉げ∼7ro logy, Yokohama!lfunic吻♂α耽6η∫Hospital
Iichiro KoNDo and Hiroshi FuJii
From the De.bartment of Urology, Kanagawa Prefectural HosPital Center for the Adult
Makoto HrRoKAwA and Akira lwAsAKi
Frem the Department of Urology, FuJ’isawa Municipal HosPital
Eiichi lsHizuKA and Naoto KiTAJiMA
From the DePartment of Urology, Yokohama Red Cross Hospital
Prostatic tissue levels o’f Cefoperazone (CPZ) were determined in 34 patients with prostatic hyper−
trophy after the intravenous administration of 1 g of CPZ. Prostatic tissue levels of CPZ decreased
sJowly with time and the elimination half−life was 125 to 171 minutes. The CPZ concentration in
the surgical capsule was higher than that in the gland. As cornpared with the minimal inhibitory
concentrations of CPZ, the prostatic tissue levels were considered high enough for the treatment of
post−prostatectomy and bacteriat prostatitis. Neither the pathological type ofprostatic hypertrophy,
that of infiltrations, nor the weight of the removed tissue was correlated to the tissue levels of CPZ.
Key words: Cefoperazone, Prostatic tissue level
緒
言
泌尿器系疾患の中で前立腺疾患の占める比率は決し
て低いものではなく,ことに最近は高齢者の増加にと
が,前立腺肥大症の手術後にもカテーテルが留置され
るなどにともない比較的長期間抗生剤が投与されるこ
とが一般的かと思われる.
最近はつぎつぎと新しい抗生剤が出現し使用されて
もない前立腺肥大症の患者が多くなっている.また炎
いて,ときには何種類かを併用してまでも投与されて
症性疾患である前立腺炎は男性のみでは炎症性疾患の
いるのが現状である.
中でもっとも多い疾病ともなっている.
炎症性疾患には抗生剤を使用するのが普通である
このようなときにわれわれは新しい抗生剤である
Cefopenazone(CPZ)を前立腺疾患に使用して有用
88
泌尿紀要 29巻 1号 1983年
であるかどうか検討する目的で前立腺組織内濃度を測
摘出前立腺組織の大部分は病理組織検査に使用した
定してみたのでここに報告する..
が,本測定用に採取した組織はただちに凍結保存し
た.
対
象
濃度測定方法はMicrococcus luteus ATC(〕 9341株
1982年1月より1982年6月までに神奈川県立成人病
を検定菌としてMicrococcus用培地を使い薄層ペーパ
センター,藤沢市民病院,横浜赤十字病院および横浜
ーディスク法を用いて測定した.摘出し,凍結した前
市立市民病院の4病院に前立腺肥大症の診断で入院し
立腺組織は隔三七,pH7.OM/l5リン酸緩衡液を加
た36名の患者を対象としたが,手術後の病理組織診断
えてhomogenizeし,3,000回転で30分間遠沈し,そ
が癌であったものが2.名みられたので,これらを除い
の上清を分離して,血清と同様に測定した.
た34名について検討した.対象となった患者の年齢は.
結
60歳から83歳で,平均は70.2±5.6歳であった.全例腎
果
CPZ静注後の経過時間および血清濃度,組織内濃
機能,肝機能など検査値には異常はみられなかった.
度は手術方法別に一括表示した(Table 1,2)・経過時
法
方
聞の最短のものは24分であり,最長は6時間であっ
た.
CPZ 19を生理的食塩水20 mlに溶解し,ゆっく
1)血清濃度(Fig.1)
り静注した.そののち手術をおこない,前立腺組織を
検体として採取しナこ時点で静注後の経過時間とし,こ
CPZ静注後もっとも短い時間であった24分では79
のときに採血もして血清囚濃度を測定するようにし
pg/m}であったが,40分代}ζなると105μg/mlを越
える症例が5例中4例にみられ,この40分代にpcak
た.
があるものと思われた.そののちは傍聞とともに徐々
手術方法は経尿道的前立腺切除術(TUR−P)と恥骨
後式前立腺摘出術(以下ρpe11.と.称す)をおこなっ
に低下するようで,全体で時閥と濃度の相関をみると
ている.
相関係数が0.7869となり,相関が認められ,一次回帰
TUR−Pの場合にはできるだけ腺腫の中央にあたる
直線を求めるとY一一〇.2427x+96.6657となった.
と思われる部位から検体を採取しopenの場合には
これから計算する半減期は199分となった.
被膜および左右両葉の3ヵ所から検体を取っている.
2)組織内濃度
Table 1. Serum and prostatic tissue levels of CPZ and pathological findings of the
prostat’e in cases of which prostates had been resected by transurethral
method・ M: myodominant type, MG : myoglandular type, G : glandular
type. P/S;Prostatic tissue level/Serum level
Pathology
Prostatic tissue level
爲轡・ge綿臨1)
Conoentration
(#g/g)
・/・留1離 Typ,
(一)一(十十)
62 一
39
89.0
13.7
15.4
±
G
2
3
4
5
6
7
8
9
69
40
92.0
16.9
18.4
±
G ,
65
45
130.0
43.3
33.3
十
MG
68
45
105.0
24.4
23.2
十
70
75
75
120
47.0
13.1
27.9
±
46.0
10.1
22.0
十
72
128
30.0
9.2
十
64
140
74.0
15.9
十
G
G
G
G
67
145
45.0
18.4
十十
G
10
77
170
.55.0
23.1
十
11
61
240
17.5
8.26
47.2
十
12
13
14
15
16
69
286
32.0
3.52
11.0
±
69
29.5
5.76
19.5
十
73
300
300
14.0
2.70
19.3
十十
72
320
32.0
9.20
28.8
±
62
360
26.0
3.94
15.2
十
T一一 1
2.75
11.8
8.29
12.7
M
MG
MG
G
G
G
G
G
89
福島・ほか:前立腺組織内濃度
Table 2.
Serum and prostatic tissue levels of CPZ and pathological findings of the prostate in
cases of which prostates had been extirpated by retropubic prostatectomy
Pathology
Prostatic tissue level
Right lobe
爲轡・ge隔灘,
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
72 24 79.0 10.3
13.0
フ4
37.5
5Lフ
13.5
10.1
15.7
21 .6
32
89置0
33層5
72 40 105.0 14.2
60 48 125.0 19.6
65
64
70
73
74
78
67
73
65
53 71.0 16.2
55 69.0 19.6
55 90.0 29.1
55 76.0 9.6
58 60.0 19.2
59 103.0 21.6
68 87.0 14.6
85 87.0 12.5
86 54.0 10.6
9.27
round cell
ipfi11ratiQn . Type
PIS
(一)一(十十)
P/S tration
(”g/g)
P/S tration
(#g/g)
(#g/g)
O一 1
eoncen−
Concen−
Concen−
tration
Surgical eapsule
Left [obe
G
11.7
32.8
41 .5
58.1
32.8
36.9
十
9.6
13.4
12.8
十
17.3
23.0
18.4
十
MG
MG
G
22.8
12.3
17.3
±
G
28.4
10.9
15.8
±
G
32.3
21 .2
23.6
±
G
12.6
10.0
13.2
十
MG
32.0
23.1
38.5
50.8
十
G
21 .0
20.0
19.4
17.8
17.3
十
G
16.8
19.0
21 .8
21 .6.
24.8
十
14.4
13.2
15.2
12.5
14.4
十
30.5
19.6
10.4
19.3
17.8
33.0
十
MG
MG
MG
78 100 71 .0 9.0
12.7
10.3
14.5
19.3
27.2
十
G
69
79
83
76
18.2
10.8
21 .6
可8.3
36.6
±
23.4
13.1
19.6
19.3
28.8
十
M
MG
8.3
十
G
25.9
±
G
130
175
205
228
50.0
67.0
35.0
59.0
9.12
15.7
2.41
8.27
pg/m1
6.9
2.84
8.1
14.0
8.27
14.0
2,92
15.3
二
120
e一. 一
100
:一
一
一
.
;
70
.
.
.
50
一 一 t
.
.
30一
.
.
.
.
Y==一〇.2427x
十96.666
60 12e 180 240 300 360 Min.
Fig. 1.
Serum level of CPZ after the intravenous administration of lg of CPZ
i)TUR−Pの場合(Fig.2)
最短時間の39分では13.7μ9/9で,対血清比(Pts)
x十21.8809となった。これから計算すると半減期は
188分であった.
は15.4となっていた.最長時間の6時間例では3.94
ii)openの場合(Fig.3)
μg/gとわずかながら認められ,P/Sも15.2と前者と
a)右葉
同様な比率であった.
P!Sのもっとも小さいのは症例丁一7で9.2を示し
ために対して,もっとも大きかったのは症例匹llで
最短時間の24分では10.3μg/gで,PISも13.0であ
った.最長時風の3時間48分では8.27μ919.で,P/s
も14.0となっていた.
47.2と高い比率となっていた.しかし,平均すると
P/sのもっとも小さいのは症例。−17の6.9であり,
21.74±9.30となった.
もっとも大きいのは症例O−2の37。5であった.平均し
時間と濃度の相関をみると相関係数が0.6432となり
一応相関が認められ,一次直線回帰はY ・= 一〇.0580
てみると19.7i±8.27となった.
時間と濃度の相関をみると相関係数が0.5678とな
90
泌尿紀要29巻 1号 1983年
”g/g
40
30
.
20
,
10
.
Y==一〇.058x
.
× 十21.8809
60 120 180 240 300 360 Mi,,
Fig. 2. ?rostatic tissue level of CPZ after the intravenous administration of lg of CPZ.
(Prostates had been resected by transurethral method)
P/Sのもっとも小さいのは症例0−11の8.1で,最大
Surgical’ capsule : ×
”g/g
Y=一〇.0803x十27.4830
.
sq
Right lobe:○一…’ u三一〇.0714、+23.7834
Left lobe : e
Y==一〇.0939x十23.5618
は症例0−2の58.1であった.平均すると19.92±lL63
となった.
時聞と濃度の相関係数は0.7335で,相関関係がある
40
と認められ,一次直線回帰はY=一〇.0939x十23.5648
となった.これから半減期を求めると125分となっ
x9
30
た.
eX
c)被膜
最短時間の24分での濃度は32.8μg/gで,PISは
4i.5であった.最長時間の3時間48分では15.3μg/g
ヤ:r..●・。
20
隔斌 ・ x
、1;.1\二1.×
で,PISは25.9となっていた.
P/Sの最小は症例0−17の8,3であり,最大の症例
は症例O−9の50.8であった.平均すると26.91±12.06
10
となった.
\、\ミ
X」
’X.
’x.
誉
’Xh
n..
60 120 180 240 Min.
Fig. 3. Prostatic tissue level of CPZ after
the intrtivenous administration of
lg of CPZ. (Prostates had been ex−
tirpated by retropubic prostatec−
tomy)
時間と濃度の相関をみると,相関係数が0.6375で
相関が認められ,一次直線回帰はY=一〇.0803x+
27.4830となった.これから半減期を求めると171分
となった.
以上のように被膜は左右両葉と比べて,濃度および
P/s(Fig.4)ともに高い値を示している。これを推計
学的に検討してみると,左右両葉問には有意差はな
く,また被膜と左葉間にも有意差がみられなかった.
り,相関が認められ,一次直線回帰はY=一〇.0714
しかし,被膜と右葉との問には1%の危検率で有意に
x十23.7834となった.これから半減期を求めると166
被膜に高く,また左右両葉の濃度平均をとり,被膜と
分となった.
比較すると5%の危検率で有意に被膜に移行すること
b)左葉.
が認められた.
最短時間の24分では9.27μg/gで,P/SもIL7と
なっていた.最長時間の3時間48分では8.27μg/g
で,.Pls tl 14.oであった.
3) 病理組織所見と対血清比
全症例をP/sで比較してみた.まず炎症の有無を
円形細胞浸潤の程度で判断した(Fig.5)・円形細胞浸
91
福島・ほか:前立腺組織内濃度
潤のないものを(一)とし,多数認められたのを(十)
.
p/s
として,4段階に分けてみると, (一)と判定きれた
ものが1例であり,また(十)と判定されたのも2例
50
.
と少数例であったので比較しえないが, (±)と判定
.
きれたのが10例で,そのP/Sの平均は20.74±6.21で
.
40
.
s
.
30
e
:
:
.
:
璽
”
零
:
:
:
i
1
;
1
つぎに組織型をmyodominant(M型), glandular
(G型)およびmyo−glandular(MG型)の3つに分
けてみると(Fig.6), M型が2例, G型が22例, MG
s
:
20
れた方がP/sは高い値となっているが,推計学的に
は有意差は認められなかった.
t
:
あり,(+)と判定きれたのが21例で,その平均は
21.38±11.02となっていた.これでは(+)と判定さ
.
型が10例となった.これらを比較してみると,M型は
症例数が少ないので除外し,G型とMG型でみると,
.
e
.
G型のP/Sの平均は20.08±9.20であり,MG型は
:
10
21.96±10.81となってMG型がやや高い数値となっ
:
ているが,やはり推計学的には有意差があるとは認め
.
られなかった.
前立腺の大ききで濃度差が生じるかどうかをopen
TUR Open
r. L Capsule
での摘出腺腫重量とPISとを対比して相関をみたが,
(n==16) (n==±18) (n==18) (n=14)
これでは相関は認められない結果であった.
Fig. 4. Correlation between prostatic tisssue/
serum ratio and op,erations
なお術後の病理組織診断が癌であった2例は当然な
がら血清濃度はほかの症例と大差はなかったが,組織
p/s
p/s
50
50
:
.
.
40
40
.
e
.
.
30
30
亀
;
:.
.
’
20
:
:
嘩
の
:
20
亀
.
。●
書
:
塞
e
e
三
.
‘
…
.
10
:
:
:
10
o
(一) (±) (+) (一)
n暑1
n=10
n==21
n=呂2
Fig. 5. Correlation between prostatic tissue/
serum ratio and grading of round
cell in創trat三〇n
Myodominant Glandular Myog[andular
dDminant
(n=2) (n=22) (n=10)
Fig. 6. Correlation between prostatic tissue/
serum ratio and patholoRica1 types
92
泌尿紀要 29巻 1号 1983年
内濃度は癌のみの例では6.54μ9/9で,PISも9.8と
escensが19.0μg/mlとなっている. P・aeraginosaに
他の症例と大きな違いがあった.もう1例は肥大症に
ついては80%発育阻止濃度が6.25μ9/mlであってほ
癌が合併した症例で,組織内濃度は世外が25.7μg/g,
かの薬剤に比し優れていると記載されている.このよ
左葉が32.0μg/gで,PISも34.3と42.7となってい
うな阻止濃度と組織内濃度を単純に比較するならば組
て肥大症症例と同程度の値となっていた.
織内濃度はかなり長時間にわたりそれらを越える濃度
考
察
CPZ はβ一lactamaseに対して安定性が高く, P.
が維持されていることになる.P.aeruginosaの6.25μg/
mlを例にとると,腺腫内濃度は3∼4時間,被膜は4
時間を越えるまでは80%菌発育を阻止する濃度を持続
aeruginesaを含むグラム陰性桿菌に広く抗菌力があり,
する計算となっている.前立腺炎の起炎菌については
血申濃度が高く,病巣移行のすぐれていることなどの
いくつかの報告があるがMeares6)は約80%はE. coli
特徴があるとされ,臨床例にも広く使用されてい
で残りはKlebsiella, Enterobacter, ProteUS, Pseudomonas
る1).t.
などで,約15%は混合感染がみられたと報告してお
本剤の前立腺組織内濃度については宮田ら2)がすで
に報告している.それによると血申濃度は30分で
peakになり,前立腺組織内濃度は60分でpeakとな
り,その濃度は39.57±5.97 P9/9であった、われわ
り, またDrach7)はS. epidermidisが37%を占め,
E. coliは8%と第4番目に多い菌種であったとし,大
川ら8)もS.epidermidisなどの球菌が高率であったと
報告していて多少の相違がみられる.しかし,これら
れの検討ではpeakとなる時点はあきらかにしえなか
の菌の発育を阻止することができる程度に前立腺組
ったが,血清濃度は⑩朝代で130 pgfmlにまで上昇
織内濃度が持続することから前立腺炎にも有用と言え
した例があって,このあたりが最高になるものと思わ
る.
れた.いっぽう,前立腺組織内濃度は51.7μg/9とな
摘出腺腫の病理組織学的所見と濃度差についてみる
った32分での症例もあるが,60分以内での平均は
と,宮田ら2)はCPZについて,松浦ら9)はCepha−
TUR−P例が21.0士6.28μg/gであり, open例で聖
cctrileについて腺性優位型よりも筋性優位型に有意
画が19.9」=2.24 Pt9/9,厚葉が20.2土3.83 P9/9とな
に高濃度であったと報告しているが,われわれの検討
り,それぞれに差はないが被膜は25.05土3.38μg/g
では腺性優位型と筋,腺性同等型の聞には有意差は見
となっていて,腺腫内濃度よりも高値であった.われ
出しえなかった.また荒木ら10)はCeftizoximeにつ
われの検討時間は一定していないので60分以内を平均
いての移行で炎症の程度を円形細胞浸潤でみて,円形
して濃度を示したが,宮田らの報告に比べて低濃度と
細胞浸潤の増大につれCeftizoximeの組織内への移
なっている.
行も増えたとしているが,われわれの検討ではそのよ
腺腫に比し被膜に高濃度となることはすでに1955年
うな傾向はみられなかった.
Schneidcr3)が2例ながらSMとPcについての測定
三品らエDは経直腸的超音波断層法による推定前立腺
結果から3∼6倍高くなると報告している.このこと
重量で大きいものほど組織対血清比が高く出たと報告
は前立腺肥大症の手術後に有利に働くものと思われ
しているが,宮田らは摘出前立腺重量を10gを境に
る.事実藤村ら4)は前立腺摘出後前立腺風炎5例に対
して比較し,これでは移行の差はなかったとのべてい
して本剤を使用して有効率80%であったとし,検出さ
る.われわれは摘出前立腺腫重量と組織内濃度とを対
れた細菌がSerratia, P。 aeruginosa, P. morganiなどで
比してみたが相関はみられなかった.
あったところをみると,CPZの有用性が臨床例に裏
以上のように肥大症患者から摘出した前立腺組織内
付けられていると言えよう.また上由1)は男性性器感
のCPZ濃度についてのべてきたが,肥大症組織をも
染症38例で100%の有効率がえられているとし,これ
って正常前立腺と同様な結果が得られるかどうかは疑
はCPZが抗菌性のよさと,前立腺組織への移行性の
問のあるところである.しかし,炎症が加われば血流
よさであると指摘していて,前立腺の手術後ばかりで
がよくなり,正常の場合より一層高濃度となることが
なく炎症に対しても臨床上有用と思われる.
考えられるので,臨床的には1つの目安としてこのよ
CPZの抗菌力をみると,南ら5)の報告では70%の
菌発育阻止濃度はE.cloacae.(O.45 yg/ml), E. coli
うな肥大症組織の濃度測定も意義あるものと考えてい
る.そしてCPZは血清濃度が高く維持されるととも
(0.53μ9/ml), K. pneumoniae(0.6正μ9/ml)は l p9/mI
に組織内濃度も高く維持されることは臨床上有利に作
以下であ!・.&卿『らハ脚うゴ偽α伽脚光祝・r−
用するものと考えたい.
ganiな.ども3μ9/1hl.以下で,高い値であったS. marc一
福島・ほか:前立腺組織内濃度
総
括
34名の前立腺肥大症患者を対象としCPZlgを静
注し手術時に採取した前立腺組織内濃度を測定した.
4)藤村宜夫・小倉 博・黒川一男=複雑性尿路感染
症におけるCefoperazone(T−1551)の臨床的検
討.Chemotherapy 28(S−6):748∼754,1980
5)南 新三郎・松原信之・村岡拓己・倉茂達徳・三
1)組織内濃度は時間とともに徐々に低下したが
橋進:Cefoperazone(T−1551)のin vitroお
CPZの半減期は125∼171分と計算された.
よびin vivo抗菌作用について. Chemotherapy
2)腺腫内濃度よりも外科的被膜に高い濃度が示され
9S
28 (S−6): 1・v13, 1980
6) Meares EM: Prostatitis. Uro Clinic North
た.
3)CPZの菌発育阻止濃度と対比すると,肥大症術
後および細菌性前立腺炎などに治療効果が十分期待で
America 2: 3一一27, ’1975
7) Drach GW: Problems indiagnosis ofbacterialpro−
statitis:gram−negative, gra皿一positive and mixed
ぎるものと思われた.
4)病理組織所見で組織型あるいは炎症所見それに摘
infections. J Urol 111: 630tv636, 1974
出重量について組織円濃度は相関が認められなかっ
8)大川光央・島村正喜・中下英之助・三崎俊光・宮
た.
崎公臣・黒田恭一:慢性前立腺炎の臨床的検討一
分離菌を中心として一.臨泌 29:771∼776,
病理組織学的所見について横浜市立市民病院中央検査科,
永岡貞男博士に御教示いただいたことに深く感謝申し上げま
す.
1975
9)松浦 治・小野佳成:セファセトリルの前立腺臓
器内濃度の検討.日泌尿会誌72:1511,1981
献
文
1)上田 泰:cefoperazone. Jap J Ant{bio 35;
1104t−1126, 1982
10)荒木博孝・前川幹雄・三品輝男・内田 睦・渡辺
決・海法裕男:Geftizoxime(CZX)の血清およ
び前立腺組織内への移行について.泌尿紀要27:
149’一一155, 1981
2)宮田和豊・荒木 徹・村松陽右・石戸則孝・棚橋
豊子・高本 均・平野 学・大森弘之・近藤 淳
・難波克一・・片山泰弘:Cefbperazoneの前立腺
11)三晶輝男・渡辺決・大江 宏・都田慶一・荒木
博孝・藤原光文・小林徳朗・田中重喜・近藤和秀
・前川幹雄:Carbenicillin(Gripenin)59急速点
組織内移行に関する検討.西日泌尿43 :413∼
馬田の血中および前立腺内濃度.Chemotherapy
4,18, 1981
27: i80, 1979
3) Schneider HU: Konzentrationen antibiotischer
Stoffe. Zentrabl Bakt 164: 471一一480. 19J”S
,
(1982年9月2旧迅速掲載受付)
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