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5RFc-1201 終了成果報告書

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5RFc-1201 終了成果報告書
5RFc-1201-i
課題名
課題代表者名
5RFc-1201 簡 単 な 試 料 前 処 理 の み で 実 施 で き る ダ イ オ キ シ ン 土 壌 汚 染 バ イ オ ア ッ
セイキットの開発
川西優喜 (大阪府立大学大学院理学系研究科 分子細胞遺伝学研究室 助教)
研究実施期間
平 成 24~25年 度
累計予算額
本 研 究 のキー
ワード
11,202千 円 (うち25年 度 5,457千 円 )
予 算 額 は、間 接 経 費 を含 む。
ダイオキシン、バイオアッセイ、酵母、土壌汚染、簡易検出
研究体制
(1)簡 単 な 試 料 前 処 理 の み で 実 施 で き る ダ イ オ キ シ ン 土 壌 汚 染 バ イ オ ア ッ セ イ キ ッ ト の 開 発 (大 阪 府 立
大学)
【注 意 】
本報告書は一般に公開されるため、特許出願および論文公開の関係上、本文および図について一部情
報を伏せて執筆しました。
研究概要
1.はじめに(研 究 背 景 等 )
現 在 ダ イ オ キ シ ン 類 を 定 量 す る に は 、公 定 法 で は 高 分 解 能 ガ ス
ク ロ マ ト グ ラ フ /質 量 分 析 計 (HRGC/HRMS)を 用 い た 機 器 分 析 法 、
準 公 定 法 と し て 抗 体 法 (ELISA)や 動 物 細 胞 株 を 使 用 し た 生 物 検
定がある。しかしこれらはいずれも土壌からのダイオキシン類
の 抽 出 ・ 精 製 と い っ た 試 料 前 処 理 過 程 に 約 10日 を 要 し 、 分 析 終
了 ま で に 2週 間 程 度 必 要 で あ る 。ま た 分 析 に は 専 門 の 施 設 ・ 設 備
を 要 し 、特 に HRGC/HRMSは 極 め て 高 額 の た め 分 析 コ ス ト 削 減 の ネ
ッ ク で あ る (図 1)。 土 壌 汚 染 対 策 法 の 改 正 な ど 今 般 の 社 会 情 勢
は、今後ますます土壌汚染の調査・対策件数の増大を予想させ
る。しかしその調査・対策は高額な費用と多くの時間が必要な
ることが多く、企業にとって無視できない負担である。従って
本提案の社会的・経済的意義は大きい。またこの高負担が合理
的な土壌汚染リスク管理の大きな制約となっている。そこで本
提案の低コストなダイオキシン汚染土壌検出法は、安全・確実
な土壌汚染対策に貢献する。これにより土壌汚染による健康リ
スクを低減できる。
図1 研究の背景と概要
2.研 究 開 発 目 的
そ こ で 本 提 案 で は 低 コ ス ト・省 時 間 の 分 析 法 と し て 、ダ イ オ キ シ ン 汚 染 を 、簡 単 な 試 料 前 処 理 の み で
1日 で 結 果 判 定 で き る 簡 便 ・ 迅 速 ・ 低 コ ス ト の ス ク リ ー ニ ン グ キ ッ ト を 開 発 す る 。
提案者らはすでにダイオキシン受容体ジーンバッテリーを利用したダイオキシン類を検出するレ
ポ ー タ ー 酵 母 を 開 発 、 バ イ オ ア ッ セ イ キ ッ ト と し て 上 市 (96回 分 析 用 、 4万 8千 円 )し て い る (図 2)。 本
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提 案 で は 、ま ず 新 規 に 簡 便 な 試 料 前 処 理 法 を 開 発 す
る 。 こ の 前 処 理 の 簡 易 化 に 伴 い 、抽 出 度 の 低 下 お よ
び 妨 害 物 質 の 混 入 が 予 想 さ れ る 。こ れ を 補 償 す る た
め 酵 母 の 高 感 度 化 、 す な わ ち 細 胞 壁 破 壊 (プ ロ ト プ
ラ ス ト 化 )、 細 胞 膜 壁 関 連 遺 伝 子 破 壊 に よ る 改 変 を
行 う 。 様 々 な 土 壌 試 料 を 測 定 し 、ダ イ オ キ シ ン 検 出
1次 ス ク リ ー ニ ン グ 系 と し て 十 分 な 性 能 を 持 つ か 確
認 す る 。最 後 に 試 料 前 処 理 と バ イ オ ア ッ セ イ を 同 梱
したキットを試作する。
本提案の開発要素の一つは、酵母のプロトプラス
ト化・細胞膜壁関連蛋白質遺伝子改変による高感度
化である。この改良はダイオキシン検出酵母の他、
提案者らがすでに作出している多くの微量汚染物
質検出のバイオアッセイ酵母にも施すことができ、
科学的・技術的に発展性に富む要素である。
図2 先行研究で開発したバイオアッセイ酵母
3.研 究 開 発 の方 法
(1)簡単な試料前処理のみで実施できるダイオキシン土壌汚染バイオアッセイキットの開発
申請者らの開発したヒトダイオキシン受容体遺伝子全長を導入したバイオアッセイ酵母の改良から
始めた。この酵母はダイオキシン類が酵母内のヒトダイオキシン受容体に結合し、活性化すると発色
する。
酵 母 に は 分 厚 い 細 胞 壁 が あ り 、細 胞 内 へ の 被 検 剤 の 浸 透 を 阻 む 。ま た 細 胞 膜 に は タ ン パ ク 質 Bが 存 在
し、細胞内の被検剤を排出する。そこで、細胞壁の透過性を向上させ、被検剤の排出は抑制すること
で細胞内の被検剤濃度が上昇し、結果的に検出感度が向上することを企図し、細胞壁を構成するタン
パ ク 質 A遺 伝 子 1,2と 、タ ン パ ク 質 B遺 伝 子 5,10を Cre/LoxP法 に よ り 単 一 、二 重 、三 重 に 破 壊 し た 遺 伝 子
破壊型酵母を作製した。そしてこれら酵母株を宿主にアッセイ系を構築した。
一 方 、 酵 母 細 胞 壁 に は 、 タ ン パ ク 質 Aの ほ か グ ル カ ン も 多 く 含 ま れ て い る 。 そ こ で Zymolyaseで グ ル
カンを溶解、酵母をプロトプラスト化した。このプロトプラスト処理により細胞壁はさらに脆弱化、
被検剤の浸透性が一層高まると期待した。
最後に、アッセイ酵母の性能向上に伴い土壌試料の前処理法、すなわち抽出とクリーンナップをか
な り 簡 素 化 し て も 、ダ イ オ キ シ ン 類 を 検 出 で き る と 予 想 し た 。そ こ で 、 あ ら か じ め 3塩 化 ダ イ オ キ シ ン
を添加した土壌から、超音波振とう器を用いてヘキサン抽出、市販の使い捨て多層カラムと活性炭カ
ラムを用いてダイオキシン類をクリーンナップし、高感度化酵母で検出を試みた。
4.結 果 及 び考 察
(1)簡単な試料前処理のみで実施できるダイオキシン土壌汚染バイオアッセイキットの開発
予 想 通 り β -NF 100 nMの と き の 応 答 を 比 較 す る と 、 タ ン パ ク 質 A 1タ ン パ ク 質 B 5二 重 破 壊 株 と タ ン
パ ク 質 A 1タ ン パ ク 質 A 2タ ン パ ク 質 B 5三 重 破 壊 株 は 、野 生 株 に 比 べ 、10倍 以 上 の 応 答 性 向 上 を 示 し た 。
検 出 限 界 濃 度 も 改 善 し 、 5〜 100倍 の 感 度 向 上 が 見 ら れ た 。こ れ ら 2株 の プ ロ ト プ ラ ス ト を 作 製 し た 。プ
ロトプラストをアッセイに用いることで細胞増殖が不必要と思われたため、プロトプラスト用にアッ
セ イ プ ロ ト コ ル も 改 変 ・ 最 適 化 し た 。 そ の 結 果 、 従 来 法 に 比 べ ア ッ セ イ 時 間 を 15時 間 短 縮 が で き た 。
各種多環芳香族に対する応答性を確認したところ、プロトプラストでもアッセイ可能であり、検出限
界 濃 度 が 2〜 10倍 改 善 す る こ と が わ か っ た 。
次いで土壌試料の簡易前処理法を開発した。前処理には、土壌からのダイオキシン類の抽出・濃縮
と、不純物質の除去・クリーンナップの2つの目的がある。クリーンナップ性能は、カラム処理前に
は三塩化ダイオキシン以外の多環芳香族にもアッセイ酵母は応答していたのが、カラムを通すことで
多環芳香族は除去され、三塩化ダイオキシン添加土壌のみ酵母アッセイで陽性となった。
次 に 抽 出 性 能 、す な わ ち ダ イ オ キ シ ン 類 回 収 率 は 約 70%で あ っ た 。バ イ オ ア ッ セ イ の 検 量 線 を 用 い て
検 出 限 界 を 計 算 し た と こ ろ 、 0.061[ng/g]で あ っ た 。 こ の 値 は 、 環 境 基 準 が 1,000[pgTEQ/g]、 調 査 指 標
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が 250 [pg-TEQ/g]で あ る こ と を 考 え る と 、 十 分 使 い 物 に な る 性 能 と い え る 。
最後に、公定法による測定データのある実際の汚染土壌を簡易前処理、アッセイした。分析化学会
頒布の土壌認証標準物質、すなわち焼却炉ちかくの汚染森林土壌を簡易前処理しアッセイしたところ
1gの 土 壌 で も 陽 性 判 定 で き た 。酵 母 ア ッ セ イ の 検 量 線 か ら TEQを 求 め た と こ ろ 、23,000[pg/g]で あ っ た 。
こ れ は 公 定 法 で 算 出 し た 値 111[pg/g]の 約 200倍 に あ た り 、 か な り 過 大 に 評 価 す る こ と が わ か っ た 。 こ
れ は 土 壌 試 料 が 多 種 類 の ダ イ オ キ シ ン 異 性 体 を 含 ん で い る た め で 、ア ッ セ イ 酵 母 が 、 TEF・ 毒 性 係 数 の
低い異性体にも応答して、過大な評価につながったと考えている。しかし様々なダイオキシン異性体
を含む試料を陽性と判定することはむしろ一次スクリーニング法としては望ましいとも考えられ、当
初の目的通り機器分析の事前スクリーニングとして有用な方法であると結論する。
5.本 研 究 により得 られた主 な成 果
(1)科 学 的 意 義
現在ダイオキシン類の汚染は、ソックスレー抽出、硫酸クリーンナップ、多層シリカゲルカラムや
ア ル ミ ナ カ ラ ム に よ る ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー を 経 て GC/MSで 定 量 す る 公 定 法 で 調 べ ら れ て い る 。 専 用 施
設・機器を備えた検査機関への委託分析が主流であり、費用は高額で、分析結果の受領までには相応
の日数を要する。
従って、本研究開発による酵母の高感度化は、簡便な前処理方と合わせて高校理科室程度の施設を
持つ事業所で安価に簡便に迅速に、土壌のダイオキシン汚染の有無の判定に貢献する。企業は本研究
で開発するキットを汚染の一次スクリーニングに用い、陽性判定される土壌試料だけを公定法による
分析にまわせばよい。そうすることで、これまで負担していたコストと時間を大幅に削減できる。
(2)環 境 政 策 への貢 献
<行 政 が既 に活 用 した成 果 >
特に記載すべき事項はない
<行 政 が活 用 することが見 込 まれる成 果 >
平 成 24年 度 環 境 研 究 総 合 推 進 費 募 集 要 項 が 述 べ て い る よ う に 、 今 後 ま す ま す 土 壌 汚 染 対 策 法 、 ダ イ
オキシン類特別措置法に基づく汚染調査が増大する。安全確実な土壌汚染対策と健康リスク低減のた
め、低コストの土壌汚染調査法の開発が求められている。
現 在 、 土 壌 の ダ イ オ キ シ ン 類 汚 染 は 、 HRGC/HRMSを 用 い た 公 定 法 、 ELISAや 動 物 細 胞 株 を 使 用 し た 生
物 検 定 に よ る 簡 易 法 で 調 べ ら れ て い る 。こ れ ら は い ず れ も 専 用 の 施 設 ・ 分 析 機 器 を 備 え た 検 査 機 関 (公
的 機 関 ・ 民 間 の 分 析 サ ー ビ ス 会 社 )が 実 施 し て い る 。ま た 、試 料 の 前 処 理 に は 長 時 間 の ソ ッ ク ス レ ー 抽
出や、硫酸によるクリーンナップ、多層シリカゲルカラムやアルミナカラムによるクロマトグラフィ
ーが必要である。委託費用は高額で、分析結果の受領までには相応の日数を要する。
高校理科室程度の施設を持つ事業所で安価に簡便に迅速に、 土壌のダイオキシン汚染有無を判定で
きる本課題は特に中小企業にとって福音となる。このバイオアッセイキットは、まさにこの行政ニー
ズを満たす解決策の決定打である。
6.研 究 成 果 の主 な発 表 状 況
(1)主 な誌 上 発 表
<査 読 付 き論 文 >
特に記載すべき事項はない
(2)主 な口 頭 発 表 (学 会 等 )
1) ミ ネ ラ ル コ ル チ コ イ ド 受 容 体 (MR)発 現 酵 母 の 高 感 度 化 , 原 島 小 夜 子 , 川 西 優 喜 , 八 木 孝 司 , 変 異
機 構 研 究 会 ・ 第 25回 夏 の 学 校 , 2012年 6月 30-7月 1日 , 小 牧 市
2) 男 性 ホ ル モ ン 受 容 体 (AR)・黄 体 ホ ル モ ン 受 容 体 (PR)の 発 現 酵 母 の 高 感 度 化 と 有 用 性 の 評 価 , 又 野
真 実 , 原 島 小 夜 子 , 川 西 優 喜 , 八 木 孝 司 , 変 異 機 構 研 究 会 ・ 第 25回 夏 の 学 校 , 2012年 6月 30-7月 1日 ,
小牧市
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3) レ チ ノ イ ン 酸 受 容 体 ・ レ チ ノ イ ド X受 容 体 発 現 レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ 酵 母 株 の 樹 立 , 芳 川 智 哉 , 椎 崎
一 宏 , 川 西 優 喜 , 八 木 孝 司 , 変 異 機 構 研 究 会 ・ 第 25回 夏 の 学 校 , 2012年 6月 30-7月 1日 , 小 牧 市
4) ア フ リ カ ツ メ ガ エ ル の 甲 状 腺 ホ ル モ ン 受 容 体 (TR)α レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ 酵 母 株 の 樹 立 , 松 井 聡 子 ,
原 島 小 夜 子 , 川 西 優 喜 , 八 木 孝 司 , 変 異 機 構 研 究 会 ・ 第 25回 夏 の 学 校 , 2012年 6月 30-7月 1日 , 小 牧 市
5) 酵 母 レ ポ ー タ ー ジ ー ン ア ッ セ イ を 用 い た 有 機 フ ッ 素 化 合 物 の 核 内 受 容 体 リ ガ ン ド 活 性 の 評 価 , 吉
田 仁, 永吉晴奈, 川西優喜,原島 小夜子, 椎崎一宏, 八木孝司, 松田知成, 高木総吉, 安達史恵,
柿 本 健 作 , 山 口 貴 弘 , 小 西 良 昌 , 第 21回 環 境 化 学 討 論 会 , 松 山 , 2012年 7月
6) 酵 母 レ ポ ー タ ー ジ ー ン ア ッ セ イ を 用 い た 紫 外 線 吸 収 剤 の 核 内 受 容 体 リ ガ ン ド 活 性 の 評 価 , 永 吉 晴
奈 ,吉 田 仁 , 川 西 優 喜 , 原 島 小 夜 子 , 椎 崎 一 宏 , 八 木 孝 司 , 松 田 知 成 , 高 木 総 吉 , 安 達 史 恵 , 柿 本 健
作 , 山 口 貴 弘 , 小 西 良 昌 , 第 21回 環 境 化 学 討 論 会 , 松 山 , 2012年 7月
7) Detection of environmental pollutants as human receptor agonists in estuarine sediments of
Taiwan using various reporter gene assays, Chien -Hsiun Chen, Ton-Cun Liu, Masanobu Kawanishi,
Pei-Hsin Chou, SETAC Asia Pacific 2012 Meeting, Kumamoto, Japan, 2012年 9月
8) Evaluation of estrogenic, androgenic, and antiandrogenic activities in Taiwanese rivers using
yeast bioassays and liquid chromatography -tandem mass spectrometry, Tsung -Ya Tsai, Yi-Lin Lia,
Masanobu Kawanishi, Pei-Hsin Chou, SETAC Asia Pacific 2012 Meeting, Kumamoto, Japan, 2012
年 9月
9) 性 ホ ル モ ン 受 容 体 発 現 酵 母 の 高 感 度 化 と 環 境 試 料 の リ ガ ン ド 活 性 評 価 , 又 野 真 実 ,原 島 小 夜 子 ,川
西 優 喜 ,八 木 孝 司 , 第 18回 バ イ オ ア ッ セ イ 研 究 会 ・ 日 本 環 境 毒 性 学 会 合 同 研 究 発 表 会 , 2012年 9月 23
日 -24日 , 熊 本 市
10) ア フ リ カ ツ メ ガ エ ル の 甲 状 腺 ホ ル モ ン 受 容 体 レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ 酵 母 株 樹 立 と 有 用 性 評 価 , 松 井
聡 子 ,原 島 小 夜 子 ,川 西 優 喜 ,八 木 孝 司 , 第 18回 バ イ オ ア ッ セ イ 研 究 会 ・ 日 本 環 境 毒 性 学 会 合 同 研 究
発 表 会 , 2012年 9月 23日 -24日 , 熊 本 市
11) レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ 用 ミ ネ ラ ル コ ル チ コ イ ド 受 容 体 (MR)発 現 酵 母 の 改 良 と 有 用 性 評 価 , 原 島 小 夜
子 , 柿 内 康 司 , 川 西 優 喜 , 八 木 孝 司 , 第 18回 バ イ オ ア ッ セ イ 研 究 会・日 本 環 境 毒 性 学 会 合 同 研 究 発
表 会 , 2012年 9月 23日 -24日 , 熊 本 市
12) ヒ ト 副 腎 皮 質 ホ ル モ ン 受 容 体 発 現 酵 母 に よ る レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ の 改 良 と 有 用 性 評 価 , 原 島 小 夜
子 , 柿 内 康 司 , 川 西 優 喜 , 八 木 孝 司 , 日 本 環 境 変 異 原 学 会 第 41回 大 会 , 静 岡 , 2012年 11月
13) ア フ リ カ ツ メ ガ エ ル 甲 状 腺 ホ ル モ ン 受 容 体 発 現 レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ 酵 母 株 樹 立 と 有 用 性 評 価 , 松
井 聡 子 , 原 島 小 夜 子 , 川 西 優 喜 , 八 木 孝 司 , 日 本 環 境 変 異 原 学 会 第 41回 大 会 , 静 岡 , 2012年 11月
14) ヒ ト 性 ホ ル モ ン 受 容 体 ( ERα /β , PR, AR) 発 現 酵 母 の 高 感 度 化 と 有 用 性 の 評 価 , 又 野 真 実 , 原 島
小 夜 子 , 川 西 優 喜 , 八 木 孝 司 , 日 本 環 境 変 異 原 学 会 第 41回 大 会 , 静 岡 , 2012年 11月
15) レ チ ノ イ ン 酸 受 容 体・レ チ ノ イ ド X受 容 体 発 現 酵 母 の 樹 立 と 内 分 泌 攪 乱 物 質 お よ び 河 川 水 の ア ッ セ
イ , 芳 川 智 哉 , 椎 崎 一 宏 , 川 西 優 喜 , 八 木 孝 司 , 日 本 環 境 変 異 原 学 会 第 41回 大 会 , 静 岡 , 2012年 11月
16) 酵 母 レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ に よ る 府 大 池 の 水 と 底 泥 の 内 分 泌 か く 乱 活 性 の 検 出 , 松 浦 麻 衣 、 又 野 真
実 、原 島 小 夜 子 、川 西 優 喜 、中 谷 直 樹 、八 木 孝 司 , 大 阪 府 立 大 学 第 8回 キ ャ ン パ ス ビ オ ト ー プ 研 究 会 , 2013
年 4月 23日 , 堺 市
17) キ イ ロ シ ョ ウ ジ ョ ウ バ エ の エ ク ジ ソ ン 受 容 体 の リ ガ ン ド を 検 出 す る レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ 酵 母 株 の
樹 立 , 松 浦 麻 衣 , 原 島 小 夜 子 , 川 西 優 喜 , 中 川 好 秋 , 八 木 孝 司 , 変 異 機 構 研 究 会 ・ 第 26回 夏 の 学 校 ,
2013年 6月 22-23日 , 尾 張 一 宮 市
18) 昆 虫 の 脱 皮 ホ ル モ ン 受 容 体 リ ガ ン ド を 検 出 す る レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ 酵 母 の 樹 立 , 松 浦 麻 衣 , 原 島
小 夜 子 , 川 西 優 喜 , 中 川 好 秋 , 八 木 孝 司 , 日 本 農 芸 化 学 会 関 西 支 部 例 会 第 80回 講 演 会 , 2013年 7月 6日 ,
堺市
19) 昆 虫 脱 皮 ホ ル モ ン 受 容 体 発 現 レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ 酵 母 株 の 樹 立 と 有 用 性 評 価 , 松 浦 麻 衣 , 原 島 小
夜 子 , 川 西 優 喜 , 中 川 好 秋 , 八 木 孝 司 , 第 19回 日 本 環 境 毒 性 学 会 研 究 発 表 会 , 2013年 9月 7-8日 , 東 京
20) カ エ ル の 甲 状 腺 ホ ル モ ン 受 容 体 発 現 レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ 酵 母 に よ る リ ガ ン ド 活 性 物 質 の 検 出 , 松
井 聡 子 , 原 島 小 夜 子 , 川 西 優 喜 , 八 木 孝 司 , 第 19回 日 本 環 境 毒 性 学 会 研 究 発 表 会 , 2013年 9月 7-8日 ,
東京
21) 高 感 度 化 レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ 酵 母 を 用 い た ス テ ロ イ ド ホ ル モ ン 受 容 体 リ ガ ン ド 検 出 シ ス テ ム の 有
用性評価〜各種人工合成化学物質のステロイドホルモン様活性の検出〜 , 原島小夜子, 又野真実, 柿
内 康 司 , 川 西 優 喜 , 八 木 孝 司 , 第 19回 日 本 環 境 毒 性 学 会 研 究 発 表 会 , 2013年 9月 7-8日 , 東 京
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22) キ イ ロ シ ョ ウ ジ ョ ウ バ エ の エ ク ジ ソ ン 受 容 体 リ ガ ン ド 活 性 を 検 出 す る レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ 酵 母 株
の 樹 立 と 有 用 性 評 価 , 松 浦 麻 衣 , 原 島 小 夜 子 , 川 西 優 喜 , 中 川 好 秋 , 八 木 孝 司 , 第 36回 日 本 分 子 生
物 学 会 年 会 , 神 戸 , 2013年 12月
23) カ エ ル の 甲 状 腺 ホ ル モ ン 受 容 体 発 現 レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ 酵 母 株 樹 立 と 有 用 性 評 価 , 松 井 聡 子 , 原
島 小 夜 子 , 川 西 優 喜 , 八 木 孝 司 , 第 36回 日 本 分 子 生 物 学 会 年 会 , 神 戸 , 2013年 12月
24) 酵 母 レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ 法 に 基 づ く ス テ ロ イ ド ホ ル モ ン 受 容 体 リ ガ ン ド 検 出 シ ス テ ム の 確 立 ・ 改
良 と 有 用 性 評 価 , 原 島 小 夜 子 , 又 野 真 実 , 柿 内 康 司 , 川 西 優 喜 , 八 木 孝 司 , 第 36回 日 本 分 子 生 物 学 会
年 会 , 神 戸 , 2013年 12月
7.研 究 者 略 歴
課 題 代 表 者 :川 西 優 喜
京 都 大 学 工 学 部 卒 業 、博 士 (工 学 )、現 在 、大 阪 府 立 大 学 大 学 院 理 学 系 研 究 科 准 教 授
研究分担者
なし
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簡単な試料前処理のみで実施できるダイオキシン土壌汚染バイオアッセイキット
の開発
(1)簡単な試料前処理のみで実施できるダイオキシン土壌汚染バイオアッセイキットの開発
大阪府立大学
大学院理学系研究科
分子細胞遺伝学研究室
川西優喜
研究協力者
原島小夜子、森健太郎
平成24~25年度累計予算額:11,202千円
(うち、平成25年度予算額:5,457千円)
予算額は、間接経費を含む。
特許出願および論文公開の関係上、本文 および図について一部情報を伏せて執筆しました。
[要旨]
低コスト・省時間の分析法として、ダイオキシン汚染を、簡単な試料前処理のみで 1日で結果判
定できる簡便・迅速・低コストのスクリーニングキットを開発した 。ダイオキシン受容体AhRを発
現するレポーターアッセイ酵母の高感度化および改変プロトコルを用いたアッセイ短時間化を行
い、簡易カラムによる前処理と組み合わせることで、迅速・簡便なダイオキシン類検出系を 開発し
た。
野生型アッセイ酵母株に比べ、タンパク質A遺伝子1, 2、タンパク質B遺伝子5, 10を単一, 二重,
三重に破壊した遺伝子破壊型アッセイ酵母ではリガンドの与える最大活性は2.1~ 12.6倍に上昇、
検出限界濃度は~ 1/100に向上した。遺伝子破壊型酵母株の中で特に高感度化の見られた 2株
YSA172 (タンパク質A1Δ タンパク質B5Δ), YSA222 (タンパク質A1Δ タンパク質A2Δ タンパク
質B5Δ)をプロトプラストにし、アッセイプロトコルを改変することで、リガンドの検出限界濃度
は1/100に向上した。またアッセイプロトコル改変によりアッセイ時間を 40時間から25時間に短縮
した。
さらに本アッセイ酵母と、簡易ヘキサン抽出、市販の使い捨てカラムを用いた簡易精製を組み
合わせることで、土壌中のダイオキシン類を検出 できた。0.061 [ng/g土壌]のTriCDDを検出でき、
環境基準1,000 [pg/g土壌]以上のダイオキシン類を検出するには0.061gの土壌で十分であること
がわかった。複数のダイオキシン類を含む土壌 を用いた場合、毒性当量は過大に評価した 。疑陽
性率が高いと予想されるものの、土壌汚染の1次スクリーニングの優れたツールとして利用できる 。
[キーワード]
ダイオキシン、バイオアッセイ、酵母、土壌汚染
5RFc-1201-2
1.はじめに
現在ダイオキシン類を定量するには、公定法では高分解能ガスクロマトグラフ /質量分析計
(HRGC/HRMS)を用いた機器分析法、準公定法として抗体法 (ELISA)や動物細胞株を使用した生物検
定がある。しかしこれらはいずれも土壌からのダイオキシ
ン類の抽出・精製といった試料前処理過程に約10日を要し、
分析終了までに2週間程度必要である。また分析には専門
の施設・設備を要し、特にHRGC/HRMSは極めて高額のため
分析コスト削減のネックである (図(1)-1)。土壌汚染対策
法の改正など今般の社会情勢は、今後ますます土壌汚染の
調査・対策件数の増大を予想させる。
しかしその調査・対策は高額な費用と多くの時間が必要
なることが多く、企業にとって無視できない負担である。
従って本提案の社会的・経済的意義は大きい。またこの高
負担が合理的な土壌汚染リスク管理の大きな制約となっ
ている。そこで本提案の低コストなダイオキシン汚染土壌
検出法は、安全・確実な土壌汚染対策に貢献する。これに
より土壌汚染による健康リスクを低減できる。
図(1)-1 研究の背景と概要
2.研究開発目的
そこで本提案では低コスト・省時間の分析法として、ダイオキシン汚染を、簡単な試料前処理の
みで1日で結果判定できる簡便・迅速・低コストのスクリーニングキットを開発する。
提案者らはすでにダイオキシン受容体ジーンバッテリーを利用したダイオキシン類を検出す
るレポーター酵母を開発、バイオアッセイキットとして上市 (96回分析用、4万8千円)している (図
(1)-2)。本提案では、まず新規に簡便な試料前処理法を開発する。この前処理の簡易化に伴い、
抽出度の低下および妨害物質の混入が予想される。これを補償するため酵母の高感度化、すなわ
ち細胞壁破壊(プロトプラスト化)、細胞膜・壁遺伝子
破壊による改変を行う。様々な土壌試料を測定し、ダ
イオキシン検出1次スクリーニング系として十分な性
能を持つか確認する。最後に試料前処理とバイオアッ
セイを同梱したキットを試作する。
本提案の開発要素の一つは、酵母のプロトプラスト
化・細胞膜・壁遺伝子改変による高感度化である。こ
の改良はダイオキシン検出酵母の他、提案者らがすで
に作出している多くの微量汚染物質検出のバイオア
ッセイ酵母にも施すことができ、科学的・技術的に発
展性に富む要素である。
図(1)-2 先行研究で開発したバイオアッセイ酵母
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3.研究開発方法
(1)
遺伝子破壊株の作製
【使用した試薬・培地、実験機器】
試薬類は特に断りがない限り全て研究用、特級を用いた。
Glucose Medium (total volume 1L)
Dropout powder*
1.3 g
Glucose (ナカライテスク株式会社、京都) 20 g
Yeast Nitrogen Base w/o Amino acid and Ammonium Sulfate (Difco, USA)
(NH 4 ) 2 SO 4 (シグマアルドリッチジャパン株式会社、東京 )
5M NaOH (ナカライテスク株式会社、京都)
D 2W
1.7 g
5.0 g
500 µl
900 ml
*Dropout powder (標記のない試薬は全てナカライテスク株式会社製 )
Adenine (hemisulfate salt)
L-Arginine (HCl)
L-Aspartic acid
2.5 g
1.2 g
6.0 g
L-Glutamic acid (monosodium salt)
L-Histidine
1.2 g
L-Lysine (mono-HCl)
L-Methionine
L-Valine
3.0 g
22.5 g
L-Threonine
L-Tyrosine
1.8 g
1.2 g
L-Phenylalanine
L-Serine
6.0 g
12.0 g
1.8 g
9.0 g
L-Tryptophan (シグマアルドリッチジャパン株式会社、東京)
L-Leucine
1.2 g
3.6 g
Uracil (シグマアルドリッチジャパン株式会社、東京 )
1.2 g
必要に応じてL-Tryptophan, L-Leucine, Uracil, L-Phenylalanine, L-Tyrosineを取り除いたも
のを用いた。Medium類は糖類のみ別に調製し、オートクレーブによる滅菌後、混和した。 また、
糖類とは別に調製したMedium類をComplete Mediumとした。
作製した選択培地
野生株酵母用
2% Glucose Medium (total volume l L)
Complete Medium (Trp-, Ura-)
900 ml
20% Glucose (ナカライテスク株式会社、京都)
100 ml
2% Galactose Medium (total volume l L)
Complete Medium (Trp-, Ura-)
900 ml
20% Galactose (ナカライテスク株式会社、京都)
100 ml
5RFc-1201-4
遺伝子破壊株酵母用
2% Glucose Medium (total volume l L)
Complete Medium (Trp-, Ura-, Phe-, Tyr-)
900 ml
20% Glucose (ナカライテスク株式会社、京都)
100 ml
2% Galactose Medium (total volume l L)
Complete Medium (Trp-, Ura-, Phe-, Tyr-)
900 ml
20% Galactose (ナカライテスク株式会社、京都)
100 ml
上記のMediumはすべて糖類のみ別に調整し、オートクレーブにより滅菌後、混和した。
寒天培地
上述のGlucose Mediumに2 % (w/v)になるようAgar (ナカライテスク株式会社、京都)を添加し
た。
発色基質 (total volume 10ml)
標記のない試薬は全てシグマアルドリッチジャパン株式会社製
Z-Buffer
9 ml**
0.2 M Dithiothreitol (DTT; ナカライテスク株式会社、京都)
20 mg/ml O -nitrophenol-β-D-galactopyranoside (ONPG)
10% N-lauroylsarcosine sodium salt
100 µl
500 µl
400 µl
**Z-Buffer (total volume 180 ml)
NaPi Buffer (pH=7.5)***
1 M KCl
40 ml
2 ml
1 M MgSO 4
200 µl
***NaPi Buffer (pH=7.5)
1M Na 2 HPO 4 ・12H 2O
1M NaH 2PO 4 ・2H 2 O
リガンドはβ-Naphthoflavone (β-NF; ナカライテスク株式会社、京都)を用いた。
リガンドはDimethyl sulfoxide (DMSO; シグマアルドリッチジャパン株式会社、東京 )に溶解した。
Microplate Reader (Model 680; Bio-Rad Laboratories, Inc. USA)
用いたAhR発現酵母
タンパク質A1, タンパク質A2, タンパク質B5, タンパク質B10 遺伝子の単一、二重、三重破壊株
酵母あるいは野生株酵母 (W303a)を宿主として、AhR-Arnt発現プラスミド (図(1)-3)およびレポ
ータープラスミド (図(1)-4)を酢酸リチウム法にて導入したものをAhR発現酵母とした。AhR発現
酵母作製の概略は図(1)-5に示す。また、宿主に用いた遺伝子破壊株酵母の 詳細を表(1)-1に示す。
レポータープラスミドはC.A. Miller III博士に分与いただいた。
5RFc-1201-5
図 (1)-3 AhR-Arnt発現プラスミド
図 (1)-4 レポータープラスミドpTXRE5-Z
図 (1)-5 AhR-Arnt発現酵母作製の概略図
表 (1)-1 遺伝子破壊株酵母一覧
strain
YSA162
YSA164
YSA167
YSA347
YSA172
YSA195
YSA355
YSA205
YSA354
YSA222
YSA358
mutants
タンパク質A1 Δ
タンパク質A2 Δ
タンパク質B5 Δ
タンパク質B10 Δ
タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ
タンパク質A2 Δ タンパク質B5 Δ
タンパク質A1 Δ タンパク質B10 Δ
タンパク質A1 Δ タンパク質A2 Δ
タンパク質B5 Δ タンパク質B10 Δ
タンパク質A1 Δ タンパク質A2 Δ タンパク質B5 Δ
タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ タンパク質B10 Δ
酵母レポーターアッセイ
グリセロールストックされた、野生株AhR発現酵母を2% Glucose 寒天培地 (Trp-, Ura-)に、遺
5RFc-1201-6
伝子破壊株AhR発現酵母を2% Glucose寒天培地 (Trp-, Ura-, Phe-, Tyr-)に線画培養し、30℃で
48時間培養した。プレート上に現れたコロニーの うち良く増殖したものを選択し、野生株AhR発現
酵母は2% Glucose Medium (Trp-, Ura-)に、遺伝子破壊株AhR発現酵母は2% Glucose Medium (Trp-,
Ura-, Phe-, Tyr-)に植菌し、30℃で18時間振盪培養した。培養後、1.8% Galactoseと0.2% Glucose
を含む液体培地に、OD 595 =0.1になるよう菌液を加えた。
被験剤あるいはリガンドは、DMSOを用いて希釈系列を作製し、96穴プレートの各ウェルに1 µl
ずつ加えた。またDMSOのみを入れたウェルも同プレート内に作製し 、陰性対照ウェルとした。
上述のGlucose : Galactose = 1 : 9培地に懸濁した酵母を、リガンドを入れた各ウェルに100 μl
ずつ加えた。その後、30℃で22時間培養した。
菌体を十分に攪拌し、各ウェルから酵母リガンド混合液を新たな 96穴プレートに10 µlずつ分注
した。そこに発色基質 100 µlを加えて37℃でインキュベートし、一定時間 後に各ウェルのOD 405 お
よびOD 595 をMicroplate Readerにより測定した。測定した各ウェルの吸光度から、β-galactosidase
活性の増加量を以下の式を用いて計算した。
ここで、OD 405 はリガンドにより誘導されたONPGの発色度つまりβ-galactosidase活性量、OD 595 は
酵母菌体数を反映する。この式に従い、β-galactosidase活性の増加量を算出し、X軸をリガンド
濃度、Y軸をincrease of induction (活性化量)としてグラフを作成した。
また、検出限界濃度は次の2通りの方法で求めた。まず実測上の検出限界として、実験で実際に
測定したリガンド濃度のうちincrease of inductionが単調増加し始めた時の濃度を実測検出限界
濃度とした。一方3σ法による検出限界濃度も算出した。3σ法では溶媒対照のβ-galactosidase活性
量の平均値に、その標準偏差の3倍の値を加算した活性量を計算した。そしてその活性量を与える
リガンド濃度を各アッセイの濃度-応答曲線から求め、3σ法による検出限界濃度とした。
(2) 遺伝子破壊株AhR発現酵母のプロトプラスト化とプロトコル改変
【使用した試薬・培地、実験機器】
試薬類は特に断りがない限り全て研究用、特級を用いた。
酵母細胞壁溶解酵素
Zymolyase
®
-20T (ナカライテスク株式会社、京都)
浸透圧調整剤
D-sorbitol (ナカライテスク株式会社、京都)
Sodium phosphate (NaPi) buffer (pH7.5)
Na-tartrate (シグマアルドリッチジャパン株式会社、東京 )
用いた遺伝子破壊株AhR発現酵母
YSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ)
YSA222 ( タンパク質A1 Δ タンパク質A2 Δ タンパク質B5 Δ)
5RFc-1201-7
検査用生物顕微鏡 (BX41; オリンパス株式会社、東京)
紫外可視分光光度計 (UVmini-1240; 株式会社島津製作所、京都)
その他の用いた試薬・培地、実験機器は特に標記がない限り 3-(1)節に準ずる。
細胞壁溶解酵素Zymolyaseによるプロトプラスト化株の作製
グリセロールストックされた、遺伝子破壊株AhR発現酵母YSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質
B5 Δ)を2% Glucose寒天培地 (Trp-, Ura-, Phe-, Tyr-)に線画培養し、30℃で48時間培養した。プ
レート上に現れたコロニーのうち増殖の良いものを選択し、2% Glucose Medium(Trp-, Ura-, Phe-,
Tyr-)に植菌し、30℃で18時間振盪培養した。培養後、4000rpmで10分間遠心して集菌した。
次に菌体を滅菌水4mlに懸濁した後、0.067M Sodium phosphate (NaPi) buffer (pH7.5) 5mlお
よび0.1mg/ml Zymolyase 1mlを加え、ゆっくり振盪培養しながら、25℃で2時間反応した。2500rpm
で10分間遠心して集菌し、0.067M Sodium phosphate (NaPi) buffer (pH7.5) 3mlに懸濁した。一
方で、0.1mg/ml Zymolyaseの代わりに滅菌水を加えた細胞壁非消化酵母も用意した。
これらプロトプラストおよび非プロトプラスト酵母を検査用生物顕微鏡で観察した。
Zymolyaseの至適濃度、至適消化時間
YSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ)およびYSA222 ( タンパク質A1 Δ タンパク質A2 Δ タンパ
ク質B5 Δ)を、プロトプラスト化処理した。ここでは、浸透圧調整のため0.5Mになるよう D-sorbitol
を加え、0.001 ~0.1 mg/mlの範囲でZymolyaseの濃度を変化させ、0~150分間処理した。
その後、各条件下の酵母を5倍希釈し、OD 800 を紫外可視分光光度計により測定した。OD 800 は細胞
壁の溶解程度を反映し、完全溶解したときにはOD 800 が60%減少することが知られている (1) 。
浸透圧の調整に最適な化合物
YSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ)およびYSA222 ( タンパク質A1 Δ タンパク質A2 Δ タンパ
ク質B5 Δ)を、後述するリガンド曝露時間短縮によるAhR誘導量減少を補うため、1.0% Galactoseと
1.0% Glucoseを含む液体培地で前培養した。次いで至適のZymolyase濃度、反応時間でプロトプラ
スト化処理した。このときの浸透圧の調整には、0.5M D-sorbitol、0.033M Sodium phosphate (NaPi)
bufferまたは0.5M Na-tartrateを用いた (1-3) 。
各酵母プロトプラストを0.9% Galactose、0.1% Glucoseおよび先述の浸透圧調整剤を含む液体
培地に、OD 595 =1.0になるよう調整した。本手順ではリガンドの曝露時間が減少し酵母の増殖時間
が短縮するため、これまでのアッセイ手順に比べ吸光度測定時の酵母数が減少する。この減少を
補うためOD 595 =1.0に調整した。その後、前節に準じリガンド (β-NF) に5時間曝露しアッセイを
行った。曝露時間を5時間に短縮したのは、細胞壁再生による非プロトプラストの出現を防ぐため
である。
最適浸透圧調整剤の至適濃度
浸透圧調整剤に0.25~1.25Mに変化させたD-sorbitolを用いて、YSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパ
ク質B5 Δ)およびYSA222 ( タンパク質A1 Δ タンパク質A2Δ タンパク質B5 Δ)を前節に準じプロトプラ
スト化処理した。D-sorbitolをそのままの濃度に保った培地を用いて 前節に準じアッセイを行っ
5RFc-1201-8
た。
AhR発現誘導時間がレポーターアッセイに与える影響とプロトプラスト酵母の効果
前節に準じ、プレート上に現れたYSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ)およびYSA222 ( タン
パク質A1 Δ タンパク質A2 Δ タンパク質B5 Δ)のコロニーのうち増殖の良いものを選択し、
1.0%Galactose (Trp-, Ura-, Phe-, Tyr-)と1.0% Glucose (Trp-, Ura-, Phe-, Tyr-)を含む液体
培地あるいは、2.0% Glucose (Trp-, Ura-, Phe-, Tyr-)のみを含む液体培地にそれぞれ植菌し、
30℃で18時間振盪培養した。次いで、前節に準じプロトプラストを作製した。その際、非プロト
プラスト酵母も用意し、プロトプラスト酵母と比較できるようにした。 その後、各酵母株を用い
てアッセイを行った
(3) プロトプラスト化のアッセイに与える効果
【使用した試薬・培地、実験機器】
試薬類は特に断りがない限り全て研究用、特級を用いた。
リガンドはBenzo[ a ]pyrene (B[ a ]P; シグマアルドリッチジャパン株式会社、東京 )、
3-Methylcholanthrene (3-MC; シグマアルドリッチジャパン株式会社、東京)、
2,3,7-Trichlorodibenzo- p -dioxin (TriCDD; Accu Standard, Inc. USA)、Indirubin (ID) (4) を用
いた。リガンドはDMSOに溶解した。
その他の用いた試薬・培地、実験機器等は前節に準ずる。
前節で確立した改変プロトコルおよびプロトプラスト 化の至適条件で以下の実験を行った。
YSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ)とYSA222 ( タンパク質A1 Δ タンパク質A2 Δ タンパク質
B5 Δ)およびそれらのプロトプラストを用意した。
(4)土壌からのAhRリガンドの抽出と精製
【使用した試薬・培地、実験機器】
試薬類は特に断りがない限り全て研究用、特級を用いた。
スペルクリン10% AgNO 3/44%H 2 SO 4 Multilayer silica gel column (シグマアルドリッチジャパン
株式会社、東京)
スペルクリンCarboxen1000 Carbon reversible tube (シグマアルドリッチジャパン株式会社、東
京)
10mlテルモシリンジ (テルモ株式会社、東京)
50mlテルモシリンジ (テルモ株式会社、東京)
ルアーフィッティング (ジョイント; アズワン株式会社、大阪)
Toluene (ナカライテスク株式会社、京都)
Hexan (シグマアルドリッチジャパン株式会社、東京 )
赤玉土 (家庭園芸用土; コーナン商事株式会社、大阪)
その他の必要な試薬・培地、実験機器は前節に準ずる。
攪拌抽出
5RFc-1201-9
乳棒・乳鉢で粉々にしたそれぞれの赤玉土1gに、酵母アッセイにおいて最大活性値を示す濃度の
各リガンド溶液100μlあるいは陰性対照としてDMSO 100μlを添加し、1時間風乾した。1gの土壌を
Hexan 5mlに懸濁し、10分間超音波処理した。その後3,000 rpmで10分間遠心して上清を回収した。
カラム抽出
Multilayer silica gel columnとCarbon reversible tube (C1000) をこの順で縦に連結し、Hexan
10mlでカラムを平衡化した。攪拌抽出で回収した上清を Multilayer silica gel columnの上面に
注いだ後、さらに5ml/g土壌のHexanを注ぎ滴下した。Multilayer silica gel columnを取り外し、
Carbon reversible tube (C1000)を反転し、50ml テルモシリンジをルアーフィッティングを用い
て上部に連結した。シリンジにToluene 25mlを注ぎ、ダイオキシン類を溶出した。回収した Toluene
をドラフト内で終夜50℃で乾固した。乾固後、DMSO 100μlに再溶解した。
アッセイ
2-2節で確立した改変プロトコルおよびプロトプラスト化の至適条件で以下の実験を行った。
YSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ)とYSA222 ( タンパク質A1 Δ タンパク質A2 Δ タンパク質
B5 Δ)およびそれらのプロトプラストを用意した。これらの株を用いて、土壌から抽出・精製した
リガンドと、上記攪拌抽出にて土壌に添加した各種リガンドを用い、アッセイを行った。
ダイオキシン類TriCDDの回収率
ダイオキシン類TriCDDの回収率を算出するために、10 -12 ~10 -5 M TriCDD、10μM TriCDDをスパイク
した赤玉土から抽出精製したTriCDDを10倍希釈したもの、赤玉土から抽出精製した DMSOに対する
応答性を同様に確認した。2-2節で確立した改変プロトコルおよびプロトプラスト化の至適条件で
行い、YSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ)のプロトプラストを用いて、アッセイを行った。
それぞれのアッセイ結果を用いて、TriCDDの回収率を算出した。また、回収率からどれだけの
質量のTriCDDが土壌中に存在すれば検出可能か、さらに環境基準 1,000pg/g (1ng/g)以上を検出す
るにはどれだけの質量の土壌が必要か求めた。
(5) ダイオキシン標準土壌の 抽出・精製
【使用した試薬・培地、実験機器】
試薬類は特に断りがない限り全て研究用、特級を用いた。
リガンドは2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo- p -dioxin (TCDD; Accu Standard, Inc. USA) を用いた。
リガンドはDMSOに溶解した。
土壌認証標準物質 ダイオキシン類分析用 JSAC 0422 [高濃度]* (社団法人 日本分析化学会、東
京)
*ダイオキシン類成分の含有率を認証した土壌標準物質であり、ダイオキシン類を含んだ
森林土 (表層から5~10cmの深さの中層のものを採取 )である。また、含水率は 13%である。
仕様書に記載のダイオキシン類の認証値 (成分含有率)を表(1)-2に示す。
5RFc-1201-10
表 (1)-2
成分名
2,3,7,8-TeCDD
OCDD
2,3,7,8-TeCDF
OCDF
3,4,4’,5-TeCB
計
土壌認証標準物質のダイオキシン類認証値 (成分含有率)
認証値±不確
かさ (pg/g)
4.51±0.62
1721±148
35.2±4.0
221±23
31.4±3.1
-
所間標準偏
差SD (pg/g)
1.12
256
7.3
41
5.3
17.4
毒性等価
係数TEF
1
0.0003
0.1
0.0003
0.0003
-
毒性当量TEQ ( pg/g)
4.51±0.62
0.516±0.044
3.52±0.40
0.0663±0.0068
9.43±0.92×10 -3
111.4±9.6
その他の必要な試薬・培地、実験機器は前節に準ずる。
抽出・精製
リガンドやDMSOを土壌にスパイクするという点を除き、前節に準じてダイオキシン標準土壌1g,
5g, 10gを前処理した。
アッセイ
前節で確立した改変プロトコルおよびプロトプラスト 化の至適条件で以下の実験を行った。
YSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ)とYSA222 ( タンパク質A1 Δ タンパク質A2 Δ タンパク質
B5 Δ)およびそれらのプロトプラストを用意した。その後、 リガンドには先述の前処理によって抽
出・精製した化学物質を用い、アッセイを行った。
ダイオキシン類の定量
ダイオキシン類標準土壌から抽出・精製したTCDDを定量するために、10 -12 ~10 -5 M TriCDDおよび
10 -12 ~10 -6 M TCDDに対する応答性を同様に確認した。前節で確立した改変プロトコルおよびプロト
プラスト化の至適条件で行い、YSA222 ( タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ)のプロトプラストを用い
て、アッセイを行った。各土壌から抽出・精製した化学物質のアッセイプレート 1ウェル当たりの
TriCDD等価濃度を前節に準じ算出した。次いで、 10 -12 ~10 -5M TriCDDおよび10 -12 ~10 -6 M TCDDに対
する応答性の結果を用いて、TriCDD等価濃度からTCDD等価濃度を算出した。
また、アッセイプレート1ウェル当たりのTCDD等価濃度から1サンプル当たり、すなわちDMSO溶
液100μlに含まれるTCDDの質量を求め、次いでダイオキシン土壌試料 1g当たりに含まれるTCDD質量
(毒性当量値TEQ)を求めた。計算式は以下の通りである。
5RFc-1201-11
4.結果及び考察
(1)
遺伝子破壊株の作製と性能
遺伝子を破壊したAhR発現酵母のβ-NFに対する応答性を図(1)-6に示す。
40
increase of induction
35
30
25
20
15
10
5
0
0.001
-5
0.1
10
1000
β-NF concentration (nM)
図(1)-6 さまざまな遺伝子破壊AhR発現酵母のβ-NFに対する応答
YSA205 ( タンパク質A1 Δ タンパク質A2 Δ), YSA354 ( タンパク質B5 Δ タンパク質B10 Δ)を除く全
てのAhR発現酵母でβ-NF濃度依存的な活性が確認できた。β-NFに対する応答の定量的評価を表
(1)-3に示す。
野生型酵母株に比べ遺伝子破壊型酵母株では活性化量が高く、2.1~12.6倍上昇した。また、遺
伝子破壊により検出限界濃度は~1/100に、EC 50 も約1/3に向上した。
野生型酵母と比べ、細胞壁 タンパク質 遺伝子 タンパク質A1, タンパク質A2 および細胞膜 タン
パク質 遺伝子 タンパク質B5, タンパク質B10 の単一、二重、三重破壊型酵母を宿主に用いること
で、AhR発現酵母株のβ-NFに対する応答性が上がり、かつ高感度化したと考えられる。他の核内
受容体ERα/β (Estrogen receptor α/β), PXR (Pregnane X receptor), TRα/β (Thyroid hormone
receptor α/β)等でも同様の結果が得られており (5,6) 、遺伝子破壊株作製は有用であると考えられ
る。また、遺伝子破壊型酵母株の中でも特にYSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ), YSA222 ( タ
ンパク質A1 Δ タンパク質A2 Δ タンパク質B5 Δ)は野生型酵母株に対するβ-NFの相対活性値が高く、
検出限界濃度、EC 50 も低いため、アッセイ酵母に最適であると考えられる。
YSA205 ( タンパク質A1 Δ タンパク質A2 Δ), YSA354 ( タンパク質B5 Δ タンパク質B10 Δ)については、
β-NFの相対活性値が低く、検出限界濃度、EC 50 も算出できなかった。共通しているのは、同種の遺
伝子を二重に破壊していることであるため、それが何等かの原因となっていると考えられる。ま
た、YSA162 ( タンパク質A1 Δ)とYSA164 ( タンパク質A2 Δ)、YSA167 ( タンパク質B5 Δ)とYSA347 ( タ
ンパク質B10 Δ)をそれぞれ比較するとYSA162 ( タンパク質A1 Δ) 、YSA167 ( タンパク質B5 Δ)の方が、
β-NFの相対活性値が高く、検出限界濃度、EC 50 も低いことから、細胞壁 では タンパク質A1 , 細胞膜
では タンパク質B5 が主要な役割を果たしていると考えられる。それは、同様に YSA172 (タンパク
質A1Δ タンパク質B5Δ)とYSA195 ( タンパク質A2 Δ タンパク質B5 Δ), YSA355 ( タンパク質A1 Δ タン
パク質B10 Δ)それぞれの比較からも推察できる。
5RFc-1201-12
表 (1)-3 各AhR発現酵母株のβ-NFに対する応答指標
酵母株
W303a (Wt)
YSA172 ( タンパク質A1 Δ タン
パク質B5 Δ)
YSA195 ( タンパク質A2 Δ タン
パク質B5 Δ)
YSA355 ( タンパク質A1 Δ タン
パク質B10 Δ)
YSA358
( タンパク質A1 Δ タンパク質
B5 Δ タンパク質B10 Δ)
YSA222
( タンパク質A1 Δ タンパク質
A2 Δ タンパク質B5 Δ)
YSA162 ( タンパク質A1 Δ)
YSA164 ( タンパク質A2 Δ)
YSA167 ( タンパク質B5 Δ)
YSA347 ( タンパク質B10 Δ)
YSA205 ( タンパク質A1 Δ タン
パク質A2 Δ)
YSA354 ( タンパク質B5 Δ タン
パク質B10 Δ)
β-NFに対する応答
検出限界
野生株に対する
濃度 (nM)
相対活性比
(β-NF濃度: 10nM)
実測
3σ法
1.0
10
0.66
EC 50
(nM)
3.8
12.6
1.0
0.14
1.6
2.1
1.0
4.8
1.2
6.7
10
0.30
3.5
9.7
100
0.16
1.2
11.5
0.1
0.0061
3.2
3.5
2.4
5.2
4.6
1.0
1.0
1.0
1.0
0.19
0.52
0.17
0.42
1.2
2.7
1.7
2.0
1.1
N.D.
N.D.
N.D.
0.8
N.D.
N.D.
N.D.
N.D.は「検出せず」 (Not Detected)を意味し、溶媒対照と差がなかったことを示している。
しかし、この遺伝子破壊株を宿主としたアッセイ酵母の中には溶媒対照でも活性が高いものが
あった (データには示さない)。溶媒対照にも関わらず、活性が見られるのは内在性リガンドが関
係していると考えられる。
ヒト体内にはTriptophanからNiacin (ビタミンB3)を生合成するKynurenine経路がある。その経
路には中間代謝物としてKyn (Kynurenine)があり、KA (Kynurenic acid)へと代謝される。このKyn
とKAがAhRへの結合能を示すという報告がある (7,8) 。この代謝経路が酵母内でも存在し、そのため
に溶媒対照でも活性が見られるのではないかと考えられる。しかし、本研究に用いた遺伝子破壊
株酵母用生育培地はTrp-, Ura-, Phe-, Tyr-であり、Triptophan を含んでいないが、酵母の
Triptophan合成能により生産されたと考えられる (9) 。
また、Triptophan自体も芳香族であるので、報告はないが、AhRへの活性能が多少あるのかも知
れない。実際、Triptophanを含む他の芳香族、phenylalanine, tyrosineを生育培地に加えると活
性が高くなった (データには示さない)。
5RFc-1201-13
(2)
遺伝子破壊酵母株のプロトプラスト作製
検査用生物顕微鏡を用いたプロトプラスト観察結果を図(1)-7に示す。
図(1)-7 プロトプラスト化処理前の酵母 (左)と処理後の酵母 (右)
プロトプラスト化処理前には出芽中の酵母が多く見られたが、処理後にはあまり見られなかった。
また、処理前の酵母は長径約5µm楕円形でどの細胞もほぼ同じ大きさであったのに対し、処理後の
酵母は真円形をしており、大きさも直径が約5〜7.5µmと様々であった。これら特徴を 表(1)-4にま
とめた。
表 (1)-4プロトプラスト化処理前後の酵母の特徴
酵母株
非プロトプラスト酵母
プロトプラスト酵母
出芽中
多い
少ない
形状
楕円形
真円形
大きさ
一様 (5µm)
多様 (5~7.5μm)
Zymolyase消化時間を120分に固定し、Zymolyase濃度を0~0.1 (mg/ml)と変化させた時の細胞壁
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
YSA172
(◆◆◆1Δ ■■■5Δ)
0.8
OD800
OD800
消化度をOD 800 で評価した結果を図(1)-8に示す。
YSA222
(◆◆◆1Δ ◆◆◆2Δ
■■■5Δ)
0.6
0.4
0.2
Zymolyase concentration
(mg/ml)
Zymolyase concentration
(mg/ml)
図 (1)-8 Zymolyaseの至適濃度
酵母株の種類に関わらず、0~0.025 mg/mlではOD 800 に変化はあまり見られなかったが、0.025~0.1
mg/mlではZymolyase濃度依存的に低下した。
Zymolyase濃度を0.1mg/mlに固定し、Zymolyase消化時間を0~150分で変化させた時の結果を図
5RFc-1201-14
(1)-9に示す。
YSA222
(◆◆◆1Δ ◆◆◆2Δ ■■■5Δ)
0.8
0.8
0.7
0.7
0.6
0.6
OD800
OD800
YSA172
(◆◆◆1Δ ■■■5Δ)
0.5
0.4
0.3
0.5
0.4
0.3
0.2
0.2
0
60
90
120 150
0
60 90 120 150
Zymolyase消化時間 (分)
Zymolyase消化時間 (分)
図(1)-9 Zymolyaseの至適反応時間
酵母株の種類に関わらず、0~120分ではOD 800 はZymolyase消化時間依存的に低下していたが、そ
の後30分では変化がなかった。
Zymolyase
®
-20Tのプロトコルに従い、Zymolyase濃度0~0.1 mg/ml、消化時間0~150 分で条件
検討した結果、Zymolyase濃度は0.1 mg/ml、消化時間は120分が最適となった。
浸透圧調整に最適な化合物検討のためのレポーターアッセイの結果を 図(1)-10に示す。
25
20
YSA222 (◆◆◆1Δ◆◆◆2Δ■■■5Δ)
0.5 M D-sorbitol
0.33 M Napibuffer
0.5 M Na-tartrate
increase of induction
increase of induction
YSA172 (◆◆◆1Δ■■■5Δ)
15
10
5
0
0.001
-5
0.1
10
1000
β-NF concentration (nM)
25
20
0.5 M D-sorbitol
0.33 M Napibuffer
0.5 M Na-tartrate
15
10
5
0
0.001
-5
0.1
10
1000
β-NF concentration (nM)
図(1)-10 至適浸透圧調整剤
どちらの酵母株も浸透圧調整剤の種類に関わらず、 β-NF濃度依存的な活性が確認できた。
これらの図から算出したβ-NFに対する応答指標を表(1)-5に示す。浸透圧調整にD-sorbitolを用
いたとき、どの酵母株でも活性値が高かった。次いで Napi buffer、Na-tartrateの順に高かった。
またD-sorbitolを用いたときに、他の調整剤を用いたときに比べ検出限界濃度と EC 50 が1/2~
1/10となり、アッセイ酵母株として最も良い性能を示した。
以上より、浸透圧調整に最適な化合物はD-sorbitolとした。
5RFc-1201-15
表 (1)-5
様々な浸透圧調整剤を用いたときのプロトプラスト酵母の応答指標
β-NFに対する応答性
酵母株と
浸透圧調整剤
YSA172
( タンパク質A1 Δ タ
ンパク質B5 Δ)
YSA222
( タンパク質A1 Δ タ
ンパク質A2 Δ タンパ
ク質B5 Δ)
検出限界濃度
(nM)
1000nM β-NF
における活性
値
実測上
3σ法
EC 50
(nM)
21.3
17.1
14.3
20.4
15.4
10.6
1
10
10
0.01
0.1
0.1
1.3
1.9
2.5
0.75
2.2
2.0
2.4
8.4
20.7
1.9
12.3
12.4
D-sorbitol
NaPi buffer
Na-tartrate
D-sorbitol
NaPi buffer
Na-tartrate
浸透圧調整剤D-sorbitolの濃度を0.25~1.25 Mに変化させた培地でプロトプラスト化処理とレ
ポーターアッセイを行った結果を図(1)-11に示す。なお、この実験時には酵母が最大活性を示す
25
1nM β-NF
15
5
-5
protoplast YSA172
(◆◆◆1Δ ■■■5Δ)
protoplast YSA172
(◆◆◆1Δ ■■■5Δ)
increase of induction
increase of induction
濃度周辺と検出限界周辺の濃度のβ-NFを用いた。
0.25
0.5
0.75
1
1.25
D-sorbitol concentration (M)
25
15
5
-5
20
15
100pM β-NF
500pM β-NF
1nM β-NF
10
5
0
-5
0.25 0.5 0.75
1
1.25
D-sorbitol concentration (M)
0.25 0.5 0.75
1
1.25
D-sorbitol concentration (M)
protoplast YSA222
(◆◆◆1Δ ◆◆◆2Δ ■■■5Δ)
increase of induction
increase of induction
protoplast YSA222
(◆◆◆1Δ ◆◆◆2Δ ■■■5Δ)
25
100nM β-NF
1μM β-NF
25
20
100nM β-NF
1μM β-NF
15
10
5
0
-5
0.25
0.5
0.75
1
1.25
D-sorbitol concentration (M)
図(1)-11 D-sorbitolの至適濃度検討
どちらの酵母株も全てのβ-NF濃度において、0.25~0.75 MのD-sorbitolを浸透圧調整剤に用い
た時にD-sorbitol濃度依存的に活性値が高くなったが、0.75~1.25 Mでは逆に低くなった。以上
5RFc-1201-16
より、浸透圧調整には0.75 MのD-sorbitolが最適とした。
AhR発現誘導時間を変えた時、およびプロトプラスト化がレポーターアッセイ にどう影響するか
調べた結果を図(1)-12に示す。また、YSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ)株を用いたアッセ
イの様子を図(1)-13に示す。
protoplast YSA172 (◆◆◆1Δ
■■■5Δ)
23
increase of induction
increase of induction
YSA172 (◆◆◆1Δ ■■■5Δ)
AhR発現誘導23h
18
AhR発現誘導5h
13
8
3
23
AhR発現誘導23h
18
13
8
3
-20.001
1
1000
β-NF concentration (nM)
-20.001
1
1000
β-NF concentration (nM)
YSA222
protoplast YSA222 (◆◆◆1Δ
◆◆◆2Δ ■■■5Δ)
(◆◆◆1Δ
increase of induction
increase of induction
◆◆◆2Δ ■■■5Δ)
23
AhR発現誘導23h
18
AhR発現誘導5h
13
8
3
-20.001
0.1
10
1000
β-NF concentration (nM)
AhR発現誘導5h
23
AhR発現誘導23h
18
AhR発現誘導5h
13
8
3
-20.001
0.1
10
1000
β-NF concentration (nM)
図(1)-12 AhR発現誘導時間とAhR活性化量の関係、およびプロトプラスト化の効果
DMSO (溶媒対照)
AhR発現誘導23時間
AhR発現誘導5時間
β-NF concentration
図(1)-13 YSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ) のアッセイプレート
5RFc-1201-17
どちらの酵母株もAhR発現誘導時間およびプロトプラスト・非プロトプラスト酵母に関わらず、
β-NF濃度依存的な活性が確認できた。また、どちらの酵母株もプロトプラスト・非プロトプラス
ト酵母に関わらず、AhR発現誘導23時間の方が、活性値が高かった。これらの結果は肉眼でも確認
できた。AhR発現誘導23時間でのβ-NFに対する応答指標を表(1)-6にまとめた。
表 (1)-6
各酵母株およびそれらのプロトプラストの応答 指標
(AhR発現誘導時間: 23時間)
β-NFに対する応答性
YSA172
( タンパク質A1 Δ タ
ンパク質B5 Δ)
YSA222
( タンパク質A1 Δ タ
ンパク質A2 Δ タンパ
ク質B5 Δ)
検出限界
濃度 (nM)
1 μM β-NF
における
活性値
実測上
3σ法
非プロトプラスト
5.2
10
2.1
62
プロトプラスト
9.1
10
1.1
31
非プロトプラスト
15.2
1
0.31
26
プロトプラスト
18.0
0.1
0.017
23
酵母株
EC 50
(nM)
非プロトプラストに比べプロトプラスト酵母では活性値が高くなった。また、検出限界濃度と EC 50
が1/2~1/10に向上し、アッセイ酵母株としての性能が向上した。以上、遺伝子破壊株の AhR発現
酵母プロトプラストに最も適した実験条件をまとめると、表(1)-7のようになった。また従来のプ
ロトコルと今回考案した改変プロトコルを図(1)-14で比較した。
表 (1)-7
遺伝子破壊AhR発現酵母プロトプラストに最適な実験条件
項目
Zymolyase至適濃度
Zymolyase至適反応時間
最適な浸透圧調整剤
浸透圧調整剤至適濃度
GalactoseによるAhR発現誘導時間
条件
0.1mg/ml
120min
D-sorbitol
0.75M
23h
5RFc-1201-18
従来プロトコル
改変プロトコル
図(1)-14
従来プロトコルと改変プロトコルのスキーム
ア ッ セ イ 酵 母 を プ ロ ト プ ラ ス ト に す る と 様 々 な 変 化 が 見 ら れ た が 、 こ れ は Zymolyase に よ り
β1,3-glucanが溶解し、細胞壁が破砕された状態になることから始まると考えられる。それにより、
形を保てずに真円形になり、増殖も困難となる。また、浸透圧が調整されていないと、細胞内に
溶媒が流入して酵母は膨張し、その結果バーストすると考えられる。
Zymolyase濃度が0~0.025 (mg/ml)では変化が見られなかったが、これはZymolyase濃度が低く、
反応を示せる濃度に達していなかったためであると考えられる。また、 Zymolyase消化時間120~
150分の間であまり変化が見られなくなったのは、プロトプラスト形成が可能 な酵母の減少により
プロトプラスト形成が進みにくくなったからであると考えられる。
最適な浸透圧調整剤およびその至適濃度を用いることで、酵母のプロトプラスト形成が亢進し、
細胞のバーストも抑制する。その結果、リガンドの取り込みが亢進した酵母が増加し、β-NFが与
える活性化量の増加、検出限界濃度・ EC 50 の向上を促すと考えられる。
GalactoseによるAhR発現誘導5時間に比べ23時間ではβ-NFの与える活性化量が高かったのは、前
培養でもGalactoseを培地に用いることでAhRの発現が誘導され、より多くの酵母がAhRを発現した
状態でアッセイすることにより、リガンド応答性が高くなったということを示唆している。逆に
言えば、AhR発現誘導5時間つまり、前培養でGalactoseを培地に用いない場合、 AhR発現誘導は不
完全であり、23時間以上誘導させた場合でもさらに活性化量が上がるのかも知れない。
従って、遺伝子破壊型AhR発現酵母株を最適な条件でプロトプラストにし 、AhR発現誘導を長時
間与えることで、リガンド (β-NF)に対する応答性が上がり、かつ高感度化すると考えられる。
5RFc-1201-19
(3) プロトプラスト化のアッセイに与える効果
遺伝子破壊アッセイ酵母のプロトプラスト化がリガンド応答性に与える影響 を図(1)-15に示し
increase of induction
た。特許と論文公開の都合上凡例を伏せて示す。
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
1nM
5nM
increase of induction
β-NF concentration
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
500pM
1nM
5nM
10nM
increase of induction
β-NF concentration
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
increase of induction
TriCDD concentration
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
-0.2
100pM
500pM
TriCDD concentration
1.4
increase of induction
increase of induction
5RFc-1201-20
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
50nM
12
10
8
6
4
2
0
100nM
5μM
3.5
30
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
1nM
25
20
15
10
5
0
5μM
5nM
increase of induction
increase of induction
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
50nM
10μM
50μM
3-MC concentration
12
10
8
6
4
2
0
50nM
100nM
B[a]P concentration
100nM
500nM
B[a]P concentration
2.7
28
2.2
1.7
1.2
0.7
0.2
-0.3
5nM
-0.8
B[a]P concentration
10nM
increase of induction
increase of induction
3-MC concentration
-0.2
50μM
3-MC concentration
increase of induction
increase of induction
3-MC concentration
10μM
23
18
13
8
3
-2
5nM
10nM
50nM
B[a]P concentration
5RFc-1201-21
図(1)-15 各遺伝子破壊アッセイ酵母の 応答性(赤がプロトプラスト、青が対照)
全ての条件でリガンド濃度依存的な活性が確認できた。また概ねどの酵母株でも、非プロトプラ
ストに比べプロトプラスト酵母では活性値が高くなったが、 YSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質
B5 Δ)では最大活性を与えるリガンド濃度において非プロトプラスト酵母の方が活性化量の高い場
合もあった。
また、各リガンドが与える最大活性化量および検出限界活性化量はそれぞれ一様ではなかった。
各酵母株における各リガンドの検出限界濃度を 表(1)-8に示した。
表 (1)-8 各酵母株およびそのプロトプラストのリガンド検出限界濃度
酵母株
YSA172
( タンパク質A1 Δ タ
ンパク質B5 Δ)
YSA222
( タンパク質A1 Δ タ
ンパク質A2 Δ タンパ
ク質B5 Δ)
3σ法で求めたリガンドの検出限界濃度
(nM)
β-NF
TriCDD
3-MC
B[ a ]P
ID
非プロトプラスト
プロトプラスト
1.1
0.17
1.9
0.11
25
3.3
15
11
0.27
0.16
非プロトプラスト
プロトプラスト
0.18
0.01
6
1.2
0.14
3.6
0.93
91
7.1
0.23
0.11
5RFc-1201-22
リガンド・酵母株の種類に関わらず、プロトプラスト化することで検出限界濃度が 1/2~1/10に
向上した。また、各酵母株をプロトプラストにした時のリガンドの検出限界濃度低下率は YSA222
( タンパク質A1 Δ タンパク質A2 Δ タンパク質B5 Δ)の方がやや大きかった。
YSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ)に比べ、YSA222 ( タンパク質A1 Δ タンパク質A2 Δ タン
パク質B5 Δ)ではプロトプラストにした時の効果が高いことから、 YSA222 ( タンパク質A1 Δ タンパ
ク質A2 Δ タンパク質B5 Δ)ではプロトプラスト形成率が高いと考えられる。これは、破壊した遺伝
子の差であり、YSA222 ( タンパク質A1 Δ タンパク質A2 Δ タンパク質B5 Δ)では細胞壁構成成分とな
る細胞壁 タンパク質A1, タンパク質A2 を二重破壊しているため、プロトプラスト形成がしやすい
状態にあるのかも知れない。その結果、各リガンド に対する応答性が上がり、かつ高感度化する
と考えられる。また、各リガンドが与える最大活性化量および検出限界活性化量は酵母株の種類
に関わらず、それぞれ一様ではなかったが、これは各リガンドの AhRへの結合能の差であると考え
られる。
ここで、AhRタンパク質の立体構造を予測し実証したという報告がある。それによると、 AhRを
活性化する側鎖の配置は、真中がLeu309, Phe318, Ile319, Leu347, Val357の疎水性残基、末端
がThr283, Cys294, Gln317, His320, Gln377の極性残基であり、こうした側鎖と結合できる化学
物質がAhRを活性化すると述べられている (10) 。また、AhRは脂溶性 (疎水性)を認識すると述べられ
た報告もあり (11) 、よってリガンドはAhR側鎖の疎水性残基との疎水性相互作用により結合すると考
えられ、リガンドの疎水性度の違いが結合能の差になると考えられる。一方で、リガンドの分子
構造の違いがAhRへの結合能に関係しているという報告もある。それによると、AhRリガンドは全
て6.8×13.7Åの長方形に入るとされ (12) 、リガンド分子の適切な大きさ・構造がAhRへの結合に必
要であると述べられている (13) 。つまり、リガンド分子の大きさ・構造の違いが結合能の差となる
と考えられる。
5RFc-1201-23
(4) 土壌からのAhRリガンドの抽出と精製
簡易カラム処理前後の各化学物質 (リガンド)に対する各酵母株およびそれらのプロトプラス
トの応答性の結果を図(1)-16に示す。
カラム処理前
カラム処理後
increase of induction
13.5
13.5
increase of induction
11.5
11.5
9.5
7.5
5.5
3.5
1.5
-0.5
ID
B[a]P
3-MC
β-NF
TriCDD
Ligand
9.5
7.5
5.5
3.5
1.5
-0.5
DMSO
-2.5
increase of induction
increase of induction
25
20
15
10
5
B[a]P
3-MC
Ligand
図(1)-16
3-MC
β-NF TriCDD
カラム処理後
30
ID
B[a]P
Ligand
カラム処理前
0
ID
β-NF
TriCDD
30
25
20
15
10
5
0
DMSO
ID
B[a]P
3-MC
β-NF TriCDD
Ligand
カラム処理前後の各化学物質 (リガンド)に対する応答性
YSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ)とそのプロトプラストは、カラム処理前のリガンドは
全て検出したが、カラム処理するとTriCDDのみ検出した。一方、YSA222 ( タンパク質A1 Δ タンパ
ク質A2 Δ タンパク質B5 Δ)とそのプロトプラストは、TriCDDと比べ活性化量は低いがTriCDD以外も
検出した。
次いで、10 -12 ~10 -5M TriCDDに対する応答性および土壌からカラム処理後の DMSO 、10倍希釈
TriCDDに対する応答性とそれを用いたTriCDD回収率算出法を以下に示す。
5RFc-1201-24
前処理でのTriCDD回収率算出
increase of induction
25
20
15
10
5
TriCDD等価濃度
0
0.001
-5
0.01
0.1
1
10
100
1000
10000
TriCDD concentration (nM)
図(1)-17 TriCDDに対する応答性
◆: 10
-12
-5
~10 M
TriCDD、■: TriCDDスパイク土壌からの抽出・精製物質、
▲: DMSOスパイク土壌からの抽出・精製物質
図(1)-17を用いて前処理によるTriCDDの回収率を算出した。図(1)-17の活性化量について、■
はTriCDD + 土壌中の不純物 (AhRリガンド)、▲は土壌中の不純物 (AhRリガンド)を示す。TriCDD
の検量線からそれぞれのTriCDD等価濃度を算出し、差をとることで、アッセイプレート 1ウェルに
おけるTriCDDの濃度 (量)を求めた。その結果、68.6 nM TriCDDをTriCDD添加 (スパイク)土壌か
ら検出したということになる。全て回収した場合は3-1-2節の土壌にスパイクしたTriCDD濃度より
100 nMを示すので、簡易前処理法によるTriCDDの実質回収率は68.6 %となった。また、図(1)-17
から実測上と3σ法による土壌前処理後TriCDDの検出限界濃度を算出し、そこから1ウェルに含まれ
るTriCDD量を求めた。さらに、1gの土壌から検出するのに必要なTriCDD量を求め、環境基準
1,000pg/g (1ng/g)以上を検出するのに必要な土壌量を求めた。その結果を 表(1)-9にまとめた。
表 (1)-9 ダイオキシン類検出に必要な土壌量等まとめ
土壌前処理後TriCDDの検出限界濃度 (nM)
アッセイプレート1ウェル当たりに含まれるTriCDD (pg)
土壌1gから検出するのに必要なTriCDD (pg)
必要なTriCDD含有土壌 (g)
実測上
10
286
417
0.417
3σ法
1.5
42
61
0.061
YSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ)とそのプロトプラストは、カラム処理前の AhRリガンド
は全て検出し、カラム処理後のAhRリガンドはTriCDDのみ検出したが、これはダイオキシン類であ
るTriCDDはMultilayer silica gel columnを通り抜けCarbon reversible tubeに吸着したが、そ
5RFc-1201-25
れ以外のAhRリガンドは前者のカラム内で除去されたことを示唆している。一方、 YSA222 ( タンパ
ク質A1 Δ タンパク質A2 Δ タンパク質B5 Δ)とそのプロトプラストはTriCDD以外も検出したが、陰性
対照として赤玉土にスパイクしたDMSOでも検出していることから、元々土壌中に含まれる何らか
のAhRリガンドがカラム内で除去し切れず、またアッセイ酵母が高感度なために検出してしまって
いるのではないかと考えられる。しかしながら、 68.6nMのTriCDDに対し、赤玉土中の不純物濃度
は1 nM程度であったため、無視可能量であると考えられ、赤玉土には AhRリガンドになるような化
学物質はほとんど含まれていないと考えられる。
以上より、簡単な土壌前処理法と酵母レポーターアッセイ法を組み合わせることで、ダイオキ
シン類TriCDDを特異的に検出することに成功したと言える。また、YSA172 ( タンパク質A1 Δ タン
パク質B5 Δ)に比べ、YSA222 ( タンパク質A1 Δ タンパク質A2 Δ タンパク質B5 Δ)ではリガンドの与え
る検出限界、最大活性に対する性能が高いが 、前処理したダイオキシンの検出における特異性は
YSA172 ( タンパク質A1 Δ タンパク質B5 Δ)の方が優れていると考えられる。
(5) ダイオキシン標準土壌の 抽出・精製
ダイオキシン類標準土壌を前処理法にて抽出・精製した化学物質をリガンドに YSA172とYSA222、
およびそれらのプロトプラストでアッセイした結果を 図(1)-18に示す。
ダイオキシン類標準土壌
18
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
increase of induction
increase of induction
ダイオキシン類標準土壌
16
14
12
10
8
6
4
2
0
土壌1g
土壌5g
土壌10g
図(1)-168
土壌1g
土壌5g
土壌10g
ダイオキシンの検出
どちらの酵母株もプロトプラスト・非プロトプラストに関わらず、ダイオキシン類標準土壌量
依存的な活性が確認できた。また、酵母株に関わらず、非プロトプラストに比べプロトプラスト
酵母では、応答が大きかった。
アッセイプレート1ウェルに含まれるリガンドの TriCDD等価濃度の結果を表(1)-10に示す。
表 (1)-10 各アッセイプレート1ウェルに含まれるダイオキシン類のTriCDD等価濃度
ダイオキシン標準土壌量 (g)
1
5
10
TriCDD等価濃度 (nM)
2.5
8.1
25
5RFc-1201-26
ダイオキシン類標準土壌量依存的にTriCDD等価濃度が増加しており、そこにはおおよそ比例の
関係が成り立っていた。
次いで、10 -12 ~10 -5M TriCDD、10 -12 ~10 -6 M TCDD対する応答性および表 (1)-10のTriCDD等価濃度
からTCDD等価濃度を算出する例を図(1)-19に示す。その結果を表(1)-11に示す。
increase of induction
25
protoplast YSA222 (◆◆◆1Δ ◆◆◆2Δ
■■■5Δ)
TCDD
20
15
TriCDD
TriCDD, TCDD等価濃度
が与える活性化量
10
5
TriCDD等価濃度
0
0.001
0.01
0.1
1
TCDD等価濃度
10
100
1000
10000
-5
ligand concentration (nM)
図(1)-19 TCDD, TriCDDに対する応答性
表(1)-11 各アッセイプレート1ウェルに含まれるダイオキシン類のTCDD等価濃度
ダイオキシン標準土壌量 (g)
1
5
10
TCDD等価濃度 (nM)
6.2
36
78
表(1)-11からわかるように、ダイオキシン類標準土壌量依存的に TCDD等価濃度が増加しており、
そこにはおおよそ比例の関係が成り立っていた。
ダイオキシン標準土壌に含まれるTCDD毒性当量値 TEQの酵母レポーターアッセイ法による算出
値と機器分析法による認証値を表(1)-12で比較した。
表(1)-12 酵母レポーターアッセイ法と機器分析法による TCDD毒性当量値
酵母レポーター
アッセイ法 (pg/g)
20000
機器分析法
(pg/g)
111.4±9.6
TCDD毒性当量値TEQは機器分析法に比べ、酵母レポーターアッセイ法では約 200倍という非常に
高い値を示した。
ダイオキシン類標準土壌量依存的な活性が見られたが、これはダイオキシン類標準土壌から前
処理によりダイオキシン類を抽出・精製し、アッセイにより検出できたことを示唆している。ま
5RFc-1201-27
た、非プロトプラスト酵母に比べ、プロトプラスト酵母では応答が大きいことから、ダイオキシ
ン類土壌からのダイオキシン検出においてもアッセイ酵母のプロトプラスト化は有用であると考
えられる。
しかし、ダイオキシン類標準土壌中に含まれる TCDD毒性当量値の算出値は認証値に比べ非常に
高かった。これは、ダイオキシン各種異性体に対する酵母の AhR活性化係数とWHO基準の毒性等価
係数TEFが異なるからであるかも知れない。実際、WHO-TEFが0のTriCDDにおいても酵母レポーター
アッセイで活性が現れ、かつWHO-TEFが1のTCDDよりも高い活性が見られた。また、TCDDのWHO-TEQ
と酵母レポーターアッセイで求めたTEQはほぼ等しいという報告もあるが (14) 、今回用いた標準土壌
とは異なり、含まれるダイオキシン類の種類が少ないためであると考えられる。
多数のダイオキシン類で構成されるダイオキシン類標準土壌では毒性を 正確に定量することは
できなかったが、検出することはできた。本検出系はヒトに対して毒性が 0のダイオキシン類でも
検出できると考えられる。そのようなダイオキシン類が土壌に含まれる場合、 TCDDなど毒性のあ
るものも含まれると考えられるため、本検出系は土壌からのダイオキシン類検出の 1次スクリーニ
ングとして有用であると考えられる。
5.本研究により得られた成果
(1)科学的意義
現在ダイオキシン類の汚染は、ソックスレー抽出、硫酸クリーンナップ、多層シリカゲルカラ
ムやアルミナカラムによるクロマトグラフィーを経て GC/MSで定量する公定法で調べられている。
専用施設・機器を備えた検査機関への委託分析が主流であり、費用は高額で、分析結果の受領ま
でには相応の日数を要する。
従って、本研究開発による酵母の高感度化は、簡便な前処理方と合わせて高校理科室程度の施
設を持つ事業所で安価に簡便に迅速に、土壌のダイオキシン汚染の有無の判定に貢献する。企業
は本研究で開発するキットを汚染の一次スクリーニングに用い、陽性判定される土壌試料だけを
公定法による分析にまわせばよい。そうすることで、これまで負担していたコストと時間を大幅
に削減できる。
(2)環境政策への貢献
<行政が既に活用した成果>
特に記載すべき事項はない
<行政が活用することが見込まれる成果>
平成24年度環境研究総合推進費募集要項が述べているように、今後ますます土壌汚染対策法、ダ
イオキシン類特別措置法に基づく汚染調査が増大する。安全確実な土壌汚染対策と健康リスク低
減のため、低コストの土壌汚染調査法の開発が求められている。
現在、土壌のダイオキシン類汚染は、HRGC/HRMSを用いた公定法、ELISAや動物細胞株を使用し
た生物検定による簡易法で調べられている。これらはいずれも専用の施設・分析機器を備えた検
査機関(公的機関・民間の分析サービス会社)が実施している。また、試料の前処理には長時間の
5RFc-1201-28
ソックスレー抽出や、硫酸によるクリーンナップ、多層シリカゲルカラムやアルミナカラムによ
るクロマトグラフィーが必要である。委託費用は高額で、分析結果の受領までには相応の日数を
要する。
高校理科室程度の施設を持つ事業所で安価に簡便に迅速に、 土壌のダイオキシン汚染有無を判
定できる本課題は特に中小企業にとって福音となる。このバイオアッセイキットは、まさにこの
行政ニーズを満たす解決策の決定打である。
6.国際共同研究等の状況
特に記載すべき事項はない
7.研究成果の発表状況
(1)誌上発表
<論文(査読あり)>
特に記載すべき事項はない
<その他誌上発表(査読なし)>
特に記載すべき事項はない
(2)口頭発表(学会等)
1) ミネラルコルチコイド受容体(MR)発現酵母の高感度化, 原島小夜子, 川西優喜, 八木孝司,
変異機構研究会・第25回夏の学校, 2012年6月30-7月1日, 小牧市
2) 男性ホルモン受容体 (AR)・黄体ホルモン受容体 (PR)の発現酵母の高感度化と有用性の評価,
又野真実, 原島小夜子, 川西優喜, 八木孝司, 変異機構研究会・第25回夏の学校, 2012年6月
30-7月1日, 小牧市
3) レチノイン酸受容体・レチノイドX受容体発現レポーターアッセイ酵母株の樹立 , 芳川智哉,
椎崎一宏, 川西優喜, 八木孝司, 変異機構研究会・第25回夏の学校, 2012年6月30-7月1日, 小牧
市
4) アフリカツメガエルの甲状腺ホルモン受容体 (TR)αレポーターアッセイ酵母株の樹立, 松井
聡子, 原島小夜子, 川西優喜, 八木孝司, 変異機構研究会・第25回夏の学校, 2012年6月30-7月1
日, 小牧市
5) 酵母レポータージーンアッセイを用いた有機フッ素化合物の核内受容体リガンド活性の評価 ,
吉田 仁, 永吉晴奈, 川西優喜,原島 小夜子, 椎崎一宏, 八木孝司, 松田知成, 高木総吉, 安達
史恵, 柿本健作, 山口貴弘, 小西良昌, 第21回環境化学討論会, 松山, 2012年7月
6) 酵母レポータージーンアッセイを用いた紫外線吸収剤の核内受容体リガンド活性の評価 , 永
吉晴奈,吉田仁, 川西優喜, 原島小夜子, 椎崎一宏, 八木孝司, 松田知成, 高木総吉, 安達史恵,
柿本健作, 山口貴弘, 小西良昌, 第21回環境化学討論会, 松山, 2012年7月
7) Detection of environmental pollutants as human receptor agonists in estuarine sediments
of Taiwan using various reporter gene assays, Chien-Hsiun Chen, Ton-Cun Liu, Masanobu
5RFc-1201-29
Kawanishi, Pei-Hsin Chou, SETAC Asia Pacific 2012 Meeting, Kumamoto, Japan, 2012年9月
8) Evaluation of estrogenic, androgenic, and antiandrogenic activities in Taiwanese rivers
using yeast bioassays and liquid chromatography-tandem mass spectrometry, Tsung-Ya Tsai,
Yi-Lin Lia, Masanobu Kawanishi, Pei-Hsin Chou, SETAC Asia Pacific 2012 Meeting, Kumamoto,
Japan, 2012年9月
9) 性ホルモン受容体発現酵母の高感度化と環境試料のリガンド活性評価 , 又野真実,原島小夜子,
川西優喜,八木孝司, 第18回バイオアッセイ研究会・日本環境毒性学会
合同研究発表会, 2012
年9月23日-24日, 熊本市
10) アフリカツメガエルの甲状腺ホルモン受容体レポーターアッセイ酵母株樹立と有用性評価 ,
松井聡子,原島小夜子,川西優喜,八木孝司, 第18回バイオアッセイ研究会・日本環境毒性学会
合同研究発表会, 2012年9月23日-24日, 熊本市
11) レポーターアッセイ用ミネラルコルチコイド受容体 (MR)発現酵母の改良と有用性評価, 原島
小夜子, 柿内康司, 川西優喜, 八木孝司, 第18回バイオアッセイ研究会・日本環境毒性学会
合
同研究発表会, 2012年9月23日-24日, 熊本市
12) ヒト副腎皮質ホルモン受容体発現酵母によるレポーターアッセイの改良と有用性評価 , 原島
小夜子, 柿内康司, 川西優喜, 八木孝司, 日本環境変異原学会第41回大会, 静岡, 2012年11月
13) アフリカツメガエル甲状腺ホルモン受容体発現レポーターアッセイ酵母株樹立と有用性評価,
松井聡子, 原島小夜子, 川西優喜, 八木孝司, 日本環境変異原学会第41回大会, 静岡, 2012年
11月
14) ヒト性ホルモン受容体(ERα/β, PR, AR)発現酵母の高感度化と有用性の評価, 又野真実, 原
島小夜子, 川西優喜, 八木孝司, 日本環境変異原学会第41回大会, 静岡, 2012年11月
15) レチノイン酸受容体・レチノイドX受容体発現酵母の樹立と内分泌攪乱物質および河川水のア
ッセイ, 芳川智哉, 椎崎一宏, 川西優喜, 八木孝司, 日本環境変異原学会第41回大会, 静岡,
2012年11月
16) 酵母レポーターアッセイによる府大池の水と底泥の内分泌かく乱活性の検出 , 松浦麻衣、又
野真実、原島小夜子、川西優喜、中谷直樹、八木孝司, 大阪府立大学第8回キャンパスビオトープ
研究会, 2013年4月23日, 堺市
17) キイロショウジョウバエのエクジソン受容体のリガンドを検出するレポーターアッセイ酵母
株の樹立, 松浦麻衣,原島小夜子, 川西優喜, 中川好秋, 八木孝司, 変異機構研究会・第26回夏
の学校, 2013年6月22-23日, 尾張一宮市
18) 昆虫の脱皮ホルモン受容体リガンドを検出するレポーターアッセイ酵母の樹立 , 松浦麻衣,
原島小夜子, 川西優喜, 中川好秋, 八木孝司, 日本農芸化学会関西支部例会第80回講演会, 2013
年7月6日, 堺市
19) 昆虫脱皮ホルモン受容体発現レポーターアッセイ酵母株の樹立と有用性評価 , 松浦麻衣, 原
島小夜子, 川西優喜, 中川好秋, 八木孝司, 第19回日本環境毒性学会研究発表会, 2013年9月7-8
日, 東京
20) カエルの甲状腺ホルモン受容体発現レポーターアッセイ酵母によるリガンド活性物質の検出,
松井聡子, 原島小夜子, 川西優喜, 八木孝司, 第19回日本環境毒性学会研究発表会, 2013年9月
5RFc-1201-30
7-8日, 東京
21) 高感度化レポーターアッセイ酵母を用いたステロイドホルモン受容体リガンド検出システム
の有用性評価〜各種人工合成化学物質のステロイドホルモン様活性の検出〜 , 原島小夜子, 又野
真実, 柿内康司, 川西優喜, 八木孝司, 第19回日本環境毒性学会研究発表会, 2013年9月7-8日,
東京
22) キイロショウジョウバエのエクジソン受容体リガンド活性を検出するレポーターアッセイ酵
母株の樹立と有用性評価, 松浦麻衣, 原島小夜子, 川西優喜, 中川好秋, 八木 孝司, 第36回日
本分子生物学会年会, 神戸, 2013年12月
23) カエルの甲状腺ホルモン受容体発現レポーターアッセイ酵母株樹立と有用性評価, 松井聡子,
原島小夜子, 川西優喜, 八木孝司, 第36回日本分子生物学会年会, 神戸, 2013年12月
24) 酵母レポーターアッセイ法に基づくステロイドホルモン受容体リガンド検出システムの確
立・改良と有用性評価, 原島小夜子, 又野真実, 柿内康司, 川西優喜, 八木孝司, 第36回日本分
子生物学会年会, 神戸, 2013年12月
(3)出願特許
特に記載すべき事項はない
(4)シンポジウム、セミナー等の開催(主催のもの)
特に記載すべき事項はない
(5)マスコミ等への公表・報道等
特に記載すべき事項はない
(6)その他
特に記載すべき事項はない
8.引用文献
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municipal waste incineration plants. Environ Sci Pollut Res. 20: 2993-3002
5RFc-1201-32
Development of a Simple and Rapid Dioxin Bioassay System with Sample
Preparation Method
Principal Investigator: Masanobu KAWANISHI
Institution: Osaka Prefecture University
1-2 Gakuen cho, Naka ku, Sakai-city, Osaka 599-8570, JAPAN
Phone: +81-72-254-9830 /Fax: +81-72-254-9938
E-mail: [email protected]
[Abstract]
Key Words: Dioxins, Bioassay, Yeast, Soil Contamination
The emission of dioxins, consisting of polychlorinated dibenzo-p-dioxins (PCDD)
and dibenzofurans (PCDF), from industrial facilities is of great concern due to their large
potential for bioaccumulation and adverse health effects on the human beings.
Combustion processes, such as the incineration of waste materials, are a major source of
these persistent organic pollutants (POP), and world-wide attention has focused on
techniques for controlling and monitoring their emission and contamination.
High-resolution gas chromatography-mass spectrometry (HRGC/HRMS) is the standard
and conventional method for dioxin measurement. In many countries, including Japan,
governmental regulations regarding the analysis of incinerator waste and atmospheric
emissions for dioxins require the use of this method.
Although HRGC/HRMS is very accurate and sensitive, the instruments it requires
are very expensive, and highly qualified staff and continuous maintenance are required to
provide good data; thus, analyses involving this method are very expensive on a per
sample basis. Since bioassay systems are relatively simple, easy to handle, and
inexpensive, they have been used in various studies of environmental contaminants. A
recombinant yeast expressing human AhR and Arnt proteins that was developed by C. A.
Miller III are available for detection and measurement of dioxins. The recombinant
yeast possesses a LacZ (a bacterial β-galactosidase gene) reporter plasmid containing
XRE sequences in its promoter region. The level of β-galactosidase activity is therefore
correlated with the amount of dioxins in an assay sample.
In this study, we improved performance of the assay strain with
genetically-modifying components of cell wall and membrane of the yeast. We also
established an assay procedure for protoplasts of these yeasts. Such modifications
improved their detection limit with 100 times, and shortened duration of the assay with
40%.
5RFc-1201-33
The improved performance of the yeast strains allows to measure less concentrated
and less purified samples. And then, we investigated if combination of simple, rapid and
primitive procedure of sample preparation with the yeast assay functions in detection of
dioxins in contaminated soil. With hexane-extraction using a ultrasonicater and
purification using disposal multilayer silicagel and activated charcoal columns, that are
available commercially, the yeast detected 0.061 [ng/g soil] of dioxin. Therefore, the
improved assay yeast with the simple sample preparation can be an excellent tool for first
screening for detection of dioxin-contamination in soil.
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