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ロシアと東欧諸国における日本文学の出版と訳の状況

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ロシアと東欧諸国における日本文学の出版と訳の状況
ロ シア と東欧諸国 にお ける 日本文学 の出版 と翻訳 の状況
VladislavNikanorovichGOREGLIAD(ロ
シ ア 科 学 ア カ デ ミー 東 洋 学 研 究 所)
小 論 が 扱 う時期 は 、 ソ連 邦 時 代 の最 後 の 数 年 間 と、 ロ シ ア及 び 東 欧諸 国 の現 状 で あ る 。
小 論 で述 べ る の は こ れ らの 国 々 に お け る 日本 文 学 の 研 究 、 翻 訳 、 そ して 日本文 学教 育 の状 状 で
あ る。 ソ連 邦 が存 在 した 当 時 、学 術 研 究 の発 展 は国 家 と共 産 党 に よ って 統 制 され て い た 。 い う ま
で もな く、 これ は 日本研 究 に も及 ん で い た ので あ り、文 学 作 品 を翻 訳 す る にあ た って の作 品 選 択
も例 外 で は あ りえ な か った 。研 究 者 は主 と して 国立 大 学(モ
ス ク ワ大 学 、 レニ ン グ ラ ー ド大 学 、
ラ ウ ジ ヴ ォス トー クの極 東 大 学)か 、 ソ連 科 学 ア カ デ ミー付 属 の研 究 所(東 洋 学研 究 所 の モ ス ク
ワ本 部 と レニ ン グ ラ ー ド支 部 、 世 界 文 学研 究 所 等)に 勤 務 して い た。 翻 訳 に従 事 した の は主 に大
学 で 教 鞭 を執 る人 々 と、 科 学 ア カデ ミー の研 究者 で あ った が 、 日本 専 門家 は そ れ以 外 に もい た。
モ ス ク ワ と レニ ング ラ ー ドの 東 洋 学研 究 の 間 に は伝 統 的 に 勢 力範 囲が 区分 さ れ て い たが 、 そ れ
は小 論 が 扱 う10年 間の 以 前 か ら大 き く壊 れ 始 め て い た 。 か つ て は 、 モ ス ク ワ の研 究 者 は現 代 を扱
い 、 レニ ング ラ ー ドの研 究 者 は古 典 を扱 う とい う原 則 が 完 全 に守 られ て い た が 、1970年 代 に 入 る
と、 モ ス ク ワ で 「万 葉 集 」、 浄 瑠璃 本 、井 原西 鶴 と近 松 門左 衛 門 の作 品が 翻 訳 さ れ、 「源 氏 物 語 」
と 「
古 今 集 」 の研 究 書 が 出版 され た。 一 方 、 同時 期 の レニ ング ラ ー ドで は戦 後 派 の 文 学 作 品 が 翻
訳 され た 。 レニ ン グ ラー ドで は現 在 で も、文 学 研 究 の み な らず 、 歴 史 、 宗 教 、 美 術 そ して 言 語 の
研 究 にお い て も扱 う時代 が 大正 時代 以 前 に 限定 され て い る。 こ れ は学 術 研 究 が 長 年 に わた って 中
央 か ら指 導 を受 けて きた結 果 で あ る。原 因 は他 に もあ るが 、紙 面 が 限 られて い る た め、 小 論 で は
立 ち入 った 説 明 は行 わ ない 。
日本 文 学研 究 を行 って い る機 関 の 数 は この10年 間 、 ほ とん ど変 化 して い な い が 、伝 統 的 な機 関
の枠 内で 、 才 能 あ る専 門家 が 何 人 か 頭 角 を現 して い る。 現在 で も 日本研 究 家 の 数 が一 番 多 い の は
東 洋学 研 究 所 で あ る。 日本 文 学 の 専 門家 は同研 究 所 の モ ス ク ワ本部 とサ ン ク ト ・ペ テ ル ブ ル グ支
部(旧
レニ ング ラ ー ド支 部)で 古 典 及 び現 代 文 学 の研 究 と学 術 翻 訳 にあ た って い る。
研 究所 の職 員 全 員 が毎 年 年 末 に は 自分 の翌 年 の研 究 計 画 書(研 究 テ ーマ に よ って は今 後 数 年 間
の 計 画 書)を 提 出す る義 務 を負 う。テ ーマ は研 究所 自体 の 活動 方針 に沿 って い な け れ はな らな い。
た と えば 、 東 洋 学研 究所 サ ン ク ト ・ペ テ ル ブ ル グ支 部 が扱 うの は東 洋 諸 国 の古 典 文 化 の研 究 で あ
り、 世 界 文 学研 究 所 が 扱 って い る の は 、 各 国 の文 学 の特 殊 性 と文 学 の 国際 的 な 関係 性 、つ ま り文
学 の類 型 論 と互 い に与 え る影 響 で あ る。職 員 の研 究 計 画 書 は研 究 所 の 学 術協 議 会 で 承 認 され た後 、
科 学 ア カデ ミー幹 部 会 で 承 認 を受 け る。 そ れ が 、研 究 テ ー マ に対 す る予 算 給 付 の根 拠 とな る 。 そ
もそ もこの よ う な手 川頁が と られ る にい た った の は、 同 一 テ ーマ が 、 科学 ア カ デ ミー 傘 下 の複 数 の
研 究 所 で 同 時 に取 り扱 わ れ る事 態 を さ け るた め だ っ た。
研 究 計 画 はす べ て の研 究 所 で この 図 式 に沿 って 立 て られ て い る。
近年 出版 さ れ たモ ノ グ ラ フが 扱 って い る テ ーマ は 、 日本 文 学 の 全 般 的 な問 題 、 日本 文 化 にお け
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る文 学 の役 割 、 文 学 の ジ ャ ンル 分 け とい う問 題 、 日露 の 文 学 の 交 流 と影 響 、 お よ び、 個 々 の 作 家
の 作 品 研 究 で あ る 。 い くつ か 例 を挙 げ て み よ う 。N.1。CHEGODAR'著
る 人 間 と 社 会 」(1985年)、A.N.MESCHERYAKOV著
KIM,Rekho著
「日本 の 詩 学
の 儀 式 的 ・神 話 的 様 相 」(博 士 論 文 、 出 版 準 備 中)、E.S.SHTEINER著
世 文 化 の 文 脈 の お け る 独 創 的 人 物 」(1987年)、A.A.DOLIN著
年)、T.P.GRIGORYEVA著
VA著
「古 代 日本 文 化 と テ キ ス ト」(1991年)、
「ロ シ ア の 古 典 と 日 本 文 学 」(1987年)、L.M.YERMAKOVA著
的 伝 統 の 形 成:そ
休 宗 純:中
「日 本 の 戦 後 文 学 に お け
「一
「日 本 近 代 詩 論 」(1990
「日 本 の 美 し さ に は ぐ く ま れ て 」(1993年)、M.P.GERASIMO-
「美 の 実 在 。 川 端 康 成 の 作 品 に 見 る 伝 統 と現 代 」(1990年)、D.P.BUGAEVA著
「日本
文 芸 評 論 家 と 記 録 文 学 者 と し て の 田 岡 嶺 雲 」(1987年)。
この 時 期 に は論 文 集 も数 冊 出 版 され た 。 モ ス ク ワ大 学 出 版 会 刊
ナ ウ カ 出版 刊
「日本 。 そ の 思 想 、 文 化 、 文 学 」(1990年)も
L.M.YERMAKOVAの
な く と も3点
「言 葉 と イ メ ー ジ 」(1990年)、
そ うい った本 で あ る。
博 士 論 文 に は す で に 言 及 し た が 、 こ の8年
間 で 日本 文 学 を扱 った 少
の 博 士 論 文 と11点 の 博 士 候 補 論 文 が 書 か れ 、 そ れ ぞ れ 執 筆 者 に 学 位 が 授 与 さ れ た 。
こ れ ら 論 文 の テ ー マ は:M.V.TOROPYGINAは
作 品 論 、G.B.GRIGORYEVAは
「義 経 記 」、N.V.SMIRNOVAは
田山花袋の
明 治 時 代 の 政 治 小 説 だ っ た 。 日本 に お け る ッ ル ゲ ー ネ フ、 ト
ル ス ト イ 、 チ ェ ー ホ フ 、 ド ス トエ フ ス キ ー の 作 品 と い う テ ー マ(E.E.MALININA、V.1.
OZHOGIN、T.A.YURKOVA、E.B.SEMENYUTA)も
あ っ た。 こ れ ら論 文 の 内 、 何 点 か は
単 行 本 と して 出 版 さ れ 、 何 点 か は 抜 粋 の 形 で 雑 誌 や 選 集 に掲 載 さ れ た 。
再 版 さ れ た 作 品 も あ る が 、 そ の 内 特 筆 す べ き な の は 、N,1.KONRADが1920年
要 な研 究
代 に行 っ た重
「実 例 と 概 要 に 見 る 日 本 文 学 」 で あ る 。 こ の 本 に は 、 「古 事 記 」 か ら松 尾 芭 蕉 の
「
奥 の
細 道 」 に至 る まで の 、 文 学 発 展 の 各段 階 の概 要 、 個 々の 文 学 作 品の 分 析 、 お よび 文学 作 品 の 部 分
翻 訳 ・紹 介 が 盛 り込 ま れ て い る 。 再 版 さ れ た 翻 訳 作 品 に は 、 古 典 文 学(「 万 葉 集 」、 「竹 取 物 語 」、
「落 窪 物 語 」、 「枕 草 子 」、「方 丈 記 」、 「問 わ ず が た り」、「徒 然 草 」、浄 瑠 璃 本 、井 原 西 鶴 の 作 品 な ど)
と民 話 も含 ま れ て い る 。
新 た に 出 版 さ れ た 翻 訳 の 中 で 特 筆 す べ き はT.L.SOKOLOVA・DELUSINAに
「源 氏 物 語 」 ロ シ ア 語 版(1991一
一1993年)で
版 さ れ た もの に は 、V.S.SANOVICH:訳
(巻 之 一(神
よ る4巻
本の
あ る 。 モ ス ク ワ お よ び サ ン ク ト ・ペ テ ル ブ ル グ で 出
の 「百 人 一 首 」(1992年)、E.M.PINUS訳
話))(1993年)、V.N.GOREGLIAD訳
の 「古 事 記 」
の 「蜻 蛉 日記 」(1994年)が
あ る。
これ まで ロ シ ア語 に翻 訳 され た こ との なか った 森 鴎 外 と三 島 由 紀 夫 の作 品 が そ れ ぞ れ単 行 本 と
し て 出 版 さ れ た 。 森 鴎 外 の 生 涯 と作 品 を 研 究 し て い るG.D.IVANOVAは
鴎 外 の 短 編 集 を単 行
本 用 に ま とめ た。 年 内 に は刊 行 され る予 定 で あ る。
雑 誌 と選 集(最
近 出 版 さ れ る 選 集 は 、 大 部 分 が ミス テ リ ー かSF短
編 集 で あ る)へ
の掲載以外
に も 、 少 な く と も15人 の 現 代 作 家 の 中 編 お よ び 短 編 集 が 単 行 本 と し て 刊 行 さ れ た 。 翻 訳 者 の 中 に
は 経 験 豊 か な 教 授 陣 も い る が(モ
ス ク ワ 大 学 教 授V.S.GRIVNINな
な い 。 詩 集 ・歌 集 は 「万 葉 集 」 か ら戦 後 の 自 由 詩 ま で7冊
ど)、 若 手 翻 訳 者 も 少 な く
が 出版 され た。
ち な み に 偽 訳 書 が 出 版 さ れ た こ と も あ っ た 。 一 例 を挙 げ る と 、 一 昨 年 に は 、 最 近 発 見 さ れ た 日
本 の 中 世 初 期 の 歌 人 と い う ふ れ こ み の 、ル ボ コ ・シ ョ な る 作 者 の エ ロ チ ッ ク な 歌 集 が 出 版 さ れ た 。
ロ シ ア で は 古 典 文 学 の 翻 訳 は 、 文 芸 翻 訳 と 学 術 翻 訳 に伝 統 的 に 分 け ら れ て き た 。 通 常 、 学 術 翻
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訳 は詳 細 な研 究 と広 範 な解 説 付 きで 刊 行 され る。 こ うい った 出 版 に は 入念 な準 備 が必 要 な の で 、
出版 社 はい や いや なが ら と りか か っ た もの だ 。 準 備 か ら出 版 まで何 年 もか か った 。
こ の2、3年
で 状 況 は急 激 に変 わ っ た。 そ の 理 由 は コ ン ピ ュ ー ター 製 版 に よ って新 た な 可 能性
が生 まれ た か ら とい う よ り もむ しろ 、新 しい タ イ プの 出版 社 が 登 場 した か らだ ろ う。 い まで は学
術 翻 訳 を よ り速 く、高 度 な 印刷 水 準 を確 保 して、 十 分 な部 数 で 出版 す る こ とが 可 能 に な った 。
2年 ほ ど前 、熱 心 な東 洋学 研 究 者 の小 人数 の グ ル ー プが 出版 セ ンタ ー 「ペ テル ブル グの 東 洋 学
("PeterburgskoyeVostokovedenie")」
を 設 立 した 。 現 在 ま で に こ の セ ン ター は雑 誌 「ペ テ ル
ブ ル グ の 東 洋 学 」 を6号 発 行 した 。 同 誌 に掲 載 され た もの に は 、1.V.MELNIKOVA訳
秋 成 と建 部 綾 足 の作 品 、V.N.GOREGLYAD訳
の上 田
の 「太 平 記 」の 巻 之 一 、V.1.SISSAURI訳
「宇
津 保 物 語 」 の 一 部 分 、 そ して 日本 の 古 典 文 学 関係 の 論 文 数 点 も掲 載 され た 。前 述 の よ うに 、単 行
本 と して は 「蜻 蛉 日記 」 が す で に刊 行 さ れ たお り、 現 在 は森 鴎 外 選 集 と 「宇津 保 物 語 」 の 翻 訳 が
印刷 に入 っ て い る。
サ ン ク ト ・ペ テ ル ブ ル グ の 出 版 社"Shar"は
日本 文 学 の 翻 訳 を専 門 に扱 う予 定 で あ る 。 この
出 版社 は1993年 に は 「古 事 記 」 を出版 した。 今 後 シ リー ズ で古 典 文 学 と現 代 文 学 を 出版 す る予 定
で あ る。
日本 文 学教 育 に関 して は、 各 大 学 が 、 当然 な が ら、独 自の教 育計 画 を立 て て い る 。 しか しすべ
て の 大 学 に共 通 す るの は 日本 文 学 科 で 行 わ れ て い る講 義 の 形 態 で あ る 。講 義 に は 一般 講義 、 専攻
講 義 、 専 攻 セ ミナ ーの3種 類 が あ る。 サ ン ク ト ・ペ テ ル ブ ル グ大 学 で は学 生 は大 学 で の 学 習5年
間 の 中で 文 学 関 係 の講i義208時 間 、 日本文 学 関係 の専 攻 講 義748時 間 を受 講 す る。 学 生 の 自習 は学
年 末 に書 く論 文 と卒 業 論 文 の準 備 、執 筆 が 主 で あ る。 しか しなが ら、 こ こ3、4年
、大学教育の
抜 本 的改 革 が 検 討 され て い る。 もっ と も、 ロ シ ア の学 術 研 究 が 抱 え る最 大 の問 題 はす で に は っ き
りして い る 。 そ れ は 、 大学 卒 業 者 で 、学 術 研 究 に従 事 す る こ とを希 望 す る者 が ほ とん どい な い こ
とで あ る 。 だ が これ は 別 途 論 じるべ き問題 で あ る 。
旧 ソ連 で は 日本研 究 は お もに ロシ ア 共和 国 内 で行 わ れ て い た 。 周 知 の よ うに 、新 独 立 国 家 で は
日本 文 学研 究 は最優 先 課 題 と は言 えな い わ け だ が 、 そ れ で も、 日本 文 学研 究 の2、3の
例 をあ げ
る こ と は可 能 だ 。
ウ ク ラ イナ で は1970年 代 か ら現 代 日本 文 学 の ウ ク ラ イナ 語 訳 が 出 版 され て きた 。 翻 訳 の 大 部 分
は、 物 理 学 者 の1.JUBの
手 に な る。 現 在 キ エ フ 大 学 で は 日本 語 学 習 は行 わ れ て い るが 、 文 学 の
講 義 お よ び文 学 研 究 は い まの と ころ な されて い な い。 ラ トビアで は過 去 数 十 年 の 間 に現 代 日本 文
学 作 品 の ラ トビ ア語 訳 が 出 版 され て きた 。 長 年 翻 訳 を して きた の がE.KATTAIで
あ る。 氏 は
リガ に 図書 館 に司書 と して勤 務 す るか た わ ら文 学 作 品 を翻 訳 して きた。 氏 よ り若 い世 代 の翻 訳 者
た ち はモ ス ク ワ大 学 お よ び レニ ン グ ラー ド大学 の卒 業 生 で あ る。 ラ トビア大 学 で は 日本 文 学研 究
者 の 育 成 はい まの と こ ろ行 わ れ て い ない 。
10年 ほ ど前 に レニ ング ラ ー ド大 学 を卒 業 したR.RAUD教
究 の 第 一 人 者 とな った 。RAUDは
授 はエ ス トニ ア にお け る 日本 文 学研
タ リ ンの 私 立 大 学 で 日本 文 学 を含 め た 日本 学 を教 え、 国 立 タ
ル トゥー大 学 で 日本 文 学 の講 義 を受 け持 って い る。 ま た氏 は鎌 倉 時 代 の歌 論 研 究 もお こ な って お
り日本 の 古 典 ・現 代 文 学 の エ ス トニ ア語 訳 もお こ な っ て い る。 エ ス トニ ア で の 日本 文 学 研 究 は
RAUD教
授 の才 能 と精 力 的 な 活動 の お か げ で始 ま った と、筆 者 は 自信 を持 って 言 え る。
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ポ ー ラ ン ドに お け る 日本 の伝 統 文 化 、 文 学 、 日本 語 研 究 の長 老 で あ るW.R.KOTANSKI教
授 が先 日国 際交 流 基 金 賞 を受 賞 した。 この こ と自体 ポ ー ラ ン ドにお け る 日本 研 究 の水 準 の 高 さ を
証 明 して い る 。ポ ー ラ ン ドにお け る 日本 文 学 研 究 の 中 心 にな って い るの は ワル シ ャ ワ大 学 で あ る。
1986年 に は 同大 学 のKOTANSKI教
授 が 翻 訳 し、 序 文 と注 釈 も付 けた 「古 事 記 」 が 出版 さ れ た。
1993年 に は 同大 学 のYa.RODOWICZ教
授 が 翻 訳 し注 釈 も担 当 した謡 曲5作 品 が 出版 され た 。
同 じ くワル シ ャ ワ大 学 のM.MELANOWICZ教
授 は現 代 ヨー ロ ッパ に お け る も っ と も執 筆 量 の
多 い 日本研 究 者 で あ る。1994年 だ けで も、MELANOWICZ教
授 が 書 き上 げ た本 と論 文 の 総 量 は
約1500ペ ー ジ に の ぼ っ て い る。
氏 の文 学 関係 の 本 に は 「6世 紀 か ら19世 紀 半 ば ま で の 日本 文 学 」、 「20世紀 の 日本 の 散 文 」 が あ
り、谷 崎 潤 一郎 の 短編 の翻 訳 も出 してい る。
MELANOWICZ氏
は シ リー ズ 「日本 文 庫 」 の編 者 で もあ り、 同 シ リーズ で は安 部 公 房 の 小 説
を翻訳 して い る 。
チ ェコ に お け る 日本 研 究 に も長 い歴 史 が あ る 。 チ ェ コ ス ロ バ キ ア の解 体 後 、 日本 研 究 者 の 大 部
分 はチ ェ コ に残 った 。 プ ラ ハ の 日本 研 究 者 の 主 た る所 属 先 は 、 カ レル大 学 の極 東 学 部 、 最 近 設 立
され た プ ラハ の 日本 セ ン ター 、プ ラハ 言 語 学 校 、ア ジ ア ・ア フ リカ ・ア メ リ カ文化 博 物 館 で あ る。
そ れ ぞ れ が 狭 い 専 門分 野 を持 つ に もか か わ らず 、 日本研 究 者 の 多 くが 文 学 作 品 の翻 訳 をお こ な っ
て い る。
も っ と も精 力 的 な 翻 訳 者 の 一 人 、V.WINKELHOFEROVA教
授 は川 端 康 成 、 谷 崎 潤 一 郎 、
大 江 健 三 郎 そ の他 の作 家 の作 品20点 以 上 をチ ェ コ語 に翻 訳 して い る。V.WINKELHOFEROVA
教 授 の 本 来 の 専 門 は文 学作 品 の翻 訳 と、 広 義 の 日本 文 化研 究 で あ る 。上 田秋 成 、遠 藤 周 作 、井 上
靖 な どの作 品 を翻 訳 した 今 は亡 きL.BOHACKOVA教
授 は著 名 な 芸術 研 究 者 だ った 。 日本研 究
者 た ち が 精 力 的 に翻 訳 を した お か げ で。 チ ェ コ国民 の 日本 文 学 に対 す る 関心 は深 い。
カ レル大 学 で 日本研 究 を指 導 して い るK.FIALA教
究 して い る。K.KABELACOVA教
授 は言 語 学 の 視 点 か ら 「平 家 物 語 」 を研
授 は能 楽 を、Z.VASILJEVOVA教
を研 究 して い る 。V.WINKELHOFEROVA教
授 はNOVAK教
授 は プ ロ レ タ リ ア文 学
授 と共 同 で 「現 代 日本 文 学 史 」
を 出版 した 。
ス ロバ キ アの 日本 研 究 に関 して は 筆者 は 多 くを知 らな い 。 ブ ラチ ス ラ ワの コメ ンス キ大 学 で 教
え て い る 人 々 は 日本 の現 代 小 説 を翻 訳 して い る し、 「古 事 記 」 の ダ イ ジ ェ ス トの 出版 に も と りか
か って い るQ
ブル ガ リア の 日本 研 究 は比 較 的 歴 史 が 浅 い に も関 わ らず よ く発 達 して い る。 現 在 の ブ ル ガ リア
で は 日本 文 学 の研 究 は、ソ フ ィア の ク レメ ン ト ・オ フ リ ドス キ 大学 と、ブル ガ リ ア科 学 ア カ デ ミー
文 学 研 究 所 で主 に行 わ れて い る。
日本 文 学 の講 座 は ソ フ ィア大 学 に は当 然 あ る し、 ワ ル ナ 自 由大 学 に もあ る。 も っ と も精 力 的 に
翻 訳 を行 っ て い る 一 人 、N.CHALYKOVA女
られ て い る 。女 史 は 日本 の長 編 小 説6点
史 は 日本 の 歴 史 と経 済 の本 格 的 な専 門家 と して知
と短 編4点
を翻 訳 して い る し、 翻 訳 作 品 の 序 文 も頻繁 に
書 いている。
現 代 日本 文学 の ブ ル ガ リア語 訳 を行 って い る 人 の数 は多 いが 、 古 典 の 研 究 と翻 を本格 的 に行 っ
て い る人 の な か で 特 に注 目 に値 す るの は、 次 の2名
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で あ る。 まず は、Ts.KRYSTEVA教
授、
氏 は 「枕 草 子 」 と 「問 わ ず 語 り」 を ブ ル ガ リ ア 語 訳 し、 文 学 理 論 と文 学 史 を研 究 して い る。
KRYSTEVA教
授 は10∼14世 紀 の 日本 の 散 文 を論 じた本 を出 版 した 。現 在 教 授 は 日本 の 古 典 文
学 に お け る比 レgの 問題 に取 り組 み 、 「枕 草 子 」 を研 究 して い る。
も う一 人 はB.E.TSIGOVA教
授 で あ る。1988年 に 出版 され た 本 「
禅 の 美 学 と 日本 美術 の伝 統 」
は教 授 の 興 味 対 象 の 一 部 を反 映 した に す ぎ な い。TSIGOVAが
主 に取 り組 ん で い る の は 能 楽 の
研 究 で あ る。今 年 出版 され た氏 に よる世 阿弥 の 「風 姿 花 伝 」 の翻 訳 と綿 密 な研 究 が そ れ を裏 付 け
て い る。
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