Comments
Description
Transcript
10 光と電磁波
物理学 第 10 回 10 光と電磁波 もっと光を・ ・ ・(ゲーテ ) 10.1 光の干渉と回折 幾何光学においては、光は直線的に進むとされた。この光の進み方が物体 の「慣性的な運動」と類似していることから、光の本質を粒子とする説がデ カルトやニュートンによって唱えられた。一方、ホイへンスは光の波動説を 唱えた。この意味での「光の粒子説」と「光の波動説」に関しては、光の波 動説が正しい。これは光が回折、干渉という波動に固有の振る舞いを示すた めである。 光の回折 (真っ直ぐ進まないで、回り込むということ ) とは、スリット (孔) を 抜けた光が影にあたる所まで光が入り込む現象である。図に示すのは波動論を 使って、孔を抜けた後の光の進み方を予測したものである。幾何光学では「影」 となる淵のそばで、強度が振動しながら徐々に弱まっていくきながら影の部分に も光が入り込む様子が示される。 光の干渉とは 2 つ以上の経路の光がその位相によって強めあったり、弱め 合ったりする現象である。例えば 、2 つの孔を通り向けた光の位相が合って いるとき、(山と谷の位置が共通する、という意味)2 つの波は強めあうが 、位 相が逆のとき、(山と谷、谷と山が重なるときの意味) には 2 つの波は弱め あう。光の干渉では、これが周期的に生じる。図は 2 孔を通り抜けた光の干 渉であるが 、これも実験に合致している。これらの事実から光は波である。 1 光の「色」とは、光の波長の違いで生じる。赤い色は波長の長い光で、紫の 光は波長の短い光である。この人の目に見える光を「可視光」というが、その 波長は長いほう (赤色) で、700 ナノメートル (ナノとは 10;9 ) 、短いほう (紫 色) で 400 ナノメートルで、この領域を越えた光は目に見えない。この範囲 は人の個性で若干の差もあるが 、目の網膜を形作る物質でほぼ決まる。人以 外では、例えば赤外線カメラでは、可視光より波長の長い光を感じるし 、通 常のカメラで使われるフィルムでも紫外線のような可視光より波長の短い光 に反応する。ニュートンが示したように、 「白い色」とは全ての色が加わった 時にできる。劇場の照明で赤、緑、青を同時にあてると白くなる。 「黒い色」 とは光が無い時にいう。物体の色が「黒」とは、その物体が全ての色を吸収 して反射する光が無い時である。絵の具を混ぜると黒くなるのは、全ての光 が吸収されれからである。 10.2 光の偏光と横波 サングラスには「 偏光レンズ 」が使われている。また、3 次元映像を見る 時にも「偏光めがね」が使われることもある。では、この「偏光」とは何だ ろうか。 2 まず、光は「横波」である。横波とは媒質の振動面が進行方向に垂直な波 である。図の「ひもの揺れ 」で横波を表すとする。 その横波を格子に通す様を見よう。波の揺れる方向と格子の面が平衡の場 合には波を通すが 、垂直の場合には波を通さない。この格子の役をしている のが偏光レンズである。進行方向に垂直な方向は 2 つある。そこで、図のよ うに上下方向だけ揺れている光や、それと異なり左右方向だけ揺れている光 を「偏光」という。自然光は偏光ではなく、上下にも左右にも揺れているが 、 偏光レンズ (例えば図のような上下の格子) を通すとその方向に偏光した光が 得られる。これにさらに左右の格子を通すと光は通らない。このような偏光 の存在は光が横波であることを示している。 サングラスで偏光レンズが使われるというのは、反射した光は反射面に平 行な方向に偏光するためである。反射面を水面とする。例えば釣りに行った 時を想定しよう。水面から反射する光は水平に偏光しているのである。だか ら上下の偏光レンズを使えば反射光はさえぎられ見やすくなる。釣りに限ら ず、道でも、雪面でも反射面は水面に平行である。 3 次元的に物を見る、とは右眼と左眼とで少し違うように見ればよい。そ うするとものの奥行きが感じられるのである。3 次元映像のために偏光めが ねを使う、というのも例えば右眼には上下、左眼には左右の偏光レンズをあ て、送る映像も右眼用の映像は上下の偏光、左眼用の映像は左右の偏光を使 うのである。 3 10.3 電磁波とその分類 近年では、色々な場面で、電波が作られ 、発信されている。例えば携帯電 話もそうだし 、リモコンも、ワイヤレ スマイクも電波である。図に示すよう に、電波とは波長が数ミリメートルより長い電磁波である。そして光も電磁 波である。では「電磁波」って何でしょう。 電磁気学の章で、 「電磁誘導」という現象を説明した。それは磁場の時間的 変化に伴って「誘導起電力」(電場の空間変化) が生じる、というものだった。 実は同様な現象は電場の時間的な変化でも生じる。電場が時間的に変化する と、磁場が生じる。 4 電磁波の伝わる様子を図的に示した。電場と磁場とが交互に発展していく。 z 方向に電磁波が伝わる際、電場 (灰色の実線) の変化が磁場 (破線) を作る。 その磁場の変化が今度は次の電場をつくり・ ・ ・というありさまをあらわして いる。また、この電磁波は横波である。すなわち、電場の変位、磁場の変位 とも波の進行方向 (z 方向) に垂直である。 前述のように人間の目に見える可視光は波長が 700 ナノメートルから 400 ナノメートルの電磁波である。 レポート 課題 2 「電子レンジ」とは電磁波で加熱する調理器具であるが 、それで は何故、どのようにして「電子レンジ」で加熱できるのでしょう か。調べて、できるだけ詳しく答えなさい。 10.4 熱と放射 熱は温度の高い物体から温度の低い物体に移ることは以前に学んだ。この 熱の伝わり方には「伝導」、 「対流」、 「放射」がある。 「伝導」とは物質の一つの端から他の端に徐々に熱が伝わることで、物質 により熱の伝え方 (「熱伝導率」という) に大きな差異がある。金属では大き く、絶縁体では小さい。 「対流」とは温度の高い物質そのものが移動することで、水や空気は熱伝 導率が低いが対流で熱が周囲に伝わる。 それらに対して「放射」とは温度の高い物質から電磁波が熱を運ぶことを いう。例えば太陽の熱が地球に運ばれるというのは、その間は宇宙空間で真 5 空だから、伝導でも対流でもなく、放射によって熱が届いている。あの遠い 太陽からも電磁波は 8 分で届く。 熱を伝える電磁波は可視光より波長の長い赤外線 (熱線ともいう) である。 暖房装置の放熱器は眼に見えない光しか出していないが 、 「 放射冷却」という現象がある。冬の晴れた夜に冷え込む現象であるが 、 地表の熱が上空に放射され 、熱が奪われるために冷え込むのである。逆に 、 曇っていれば上空の雲で電磁波が反射されるため冷えない。 10.5 紫外線と X 線 夏の海辺や冬のスキー場では 、5 分もそこにいるだけで真っ黒に日焼けす る。これは「紫外線」という可視光より波長の短い電磁波である。大気の中 のオゾン層では、紫外線の中の波長の短いものを吸収する。この波長の短い 紫外線は生物に有害で、皮膚ガンを起こすといわれている。 さらに波長の短い電磁波は「 X 線」である。非常に透過性が強く、人体内 部の骨の写真を撮るのに使われる。骨だけではなく、例えば硫酸バリウムの ように原子番号の大きな (重い)「造影剤」をいれて臓器を見たり、するのみ も使われる。 しかし 、X 線を長い期間大量に浴びていると危険である。これを「 被爆」 というが 、X 線には物質を「電離」といって、構成している原子や分子の電 気を分けさせる作用がある。 この X 線より波長の短い電磁波は 線で、これは放射線といって、原子核 から放出される電磁波である。 6