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アナログ ・ ディ ジタル方式によるハイ ブリ ッ ドタ イマ
生産 研究 20 19巻・1号(1967・1) IMIIH重IIIIIIttlllHMt川llllllllllllltltltllllllllltlllllttlt川lltlllllllttllltllllllltllltlltllltlllllltllll川tttllllltllltllltllllllltlltlllllllltllltllllltlllllllllllllllllllttlllllllllllllllttltlllilllltllllltlltlll研究速…報 UDC 62−558−523.8:621.374.3 アナログ・ ディジタル方式によるハイブリッドタイマ Hybrid Timer composed of Analog and Digital System 山口楠雄・鈴木俊光 Kusuo YAMAGUCHI・Toshimitsu SUZUKI 1. まえがき:タイマは,ある一定の時間,あるいは 性能を一応の設計の目安とした. 遅れの指令を必要とする場合に用いられる.従来から自 動作温度範囲 一30°C∼100℃,精度 動制御,計測などに,数秒∼数百分程度の時間を指定す カウンタに誤差がないものとすれば, るためのタイマとしてモータタイマなどが多数用いられ して次のようなものがあげられる. てきたが,制御方式の高度化にともない,目標値を電気 (1)D−A変換器の誤差 的にリモートセットできるタイマが必要になってきた. (2) 比較器の誤差 このような要求を満たすものとして,アナログ・ディジ (3)ディジタル誤差 (1)および(2)については後に述べる.(3)のデ タル方式のタイマ(ハイブリッドタイマ)の研究および 0.4% タイマの誤差と 試作を行なったので,その結果をご報告する. ィジタル誤差は,時間設定のアナログ信号が,D−A変 2. ハイブリットタイマの構成:ハイブリッドタイマ 換された時間信号の最小ビットの境界にあるとき,どち は,アナログ・ディジタル両方式を組み合わせたもので らをかぞえるかによって,1ビット分の時間誤差を生じ ある.その構成図および各部の波形を図1に示す.以下 る.この誤差は桁数を増すことによって小さくできる, 4. D・A変換器:D−A変換器にはいろいろの方式が 計算機 D−A変換器 2進,10進切替スインチ あるが,ここでは定電流出力方式を用いた.目標精度と 人 クロノク ノfル ス v 押ボタン A しては一応次のように定めた. C 出力信号 比較器 2T カウンタ D−A変換器 B i 0℃∼60℃ 0.2% (a) リセットパルス −30°C∼100°C O.4% ー−2先一一一一一一一一一一一一一一一一.一一一一」 出力電流 0∼16mA 定電流方式のD−A変換器は,一種の定電流源と考え クロノクパルス t y㏄1 A られる.以下,その動作原理と回路について述べる. B y 16V FF out t out 藝 D,旨 D, リセントパルスC 冨9 t (b) D, ≧ユδω i6;一一 Ry 図1 タイマの構成と各部の波形 図8 (b) D1 R (a) その動作原理を説明する. (d) 目標値の設定は,他の計器出力,計算機出力あるいは 図2D−A変換回路 人聞による押ボタンスィッチ,ポテンショメータの設定 図2(a)を理想的な定電流源とし,その電流1は次 等により行ない,D−A変換器により,設定時間に比例 式で決まるものとする, した電圧(電流)を発生する.(図1(b)−A) 一方一定 1=Es/R Es:基準電圧 (1) 時間毎に発生するクロックパルスをカウンタで計数し, この理想定電流源に近いものとして,同図(b)のような D−A変換器を通して時間信号に比例した電圧(電流)を ベース接地トランジスタ回路を用いると,出力電流1お 発生する.(同図B)A(設定電圧または電流)とB(時 よび基準電圧Vstは, 刻に比例した階段波形の電圧または電流)を比較器で比 ・−R(Es’1+1/β)β一告 (2) 較し,両者が一致したときに出力信号を発生し,同時に リセットパルスを発生し,カウンタをリセットする, Vsノ :Esノ→−VBE (3) 3.設計目標:タイマ全体の精度はアナログ部分の精 となる.さらに,この回路に電流切替機能をもたせると 度によって決まる.また用途によってはかなり広い動作 同図(c)の回路になる.(c)図において,FF端子はカ 温度範囲を要求されることがある,アナログ方式の回路 ウンタのフリップフロップの出力端に接続される,FF として比較的簡単に実現できる限度として,次のような 端子がたとえば12Vのとき出力端に電流が流れ, FF端 1闘ll闘ll闘ll弱lmll闘ll補1闘llllLILIItlHltlLltl樋llllllllllllMH“ll川llltlltlUllllll川llllLl“lllll“tHllHIIIIIIIIItl朋111田柵IIIMIIII闘閥Illllil田llMtlllll川llllltllUIII“11川腿ltlllllllllllllllll闘ll闘LlllllHlllllllllMltlllllUl踊“川lllllllUllllllll 20 生産研究 21 19一巻・1号(1967.1) 研究速報lll川lllllltltlltltllt川lll川lllllllUlllllllHllMlllllllMltltllllll“IM ll川1111 lllllllllllllllllllllllitlllllHllMlltlltllllilll ltlllltlllll川tllltllllUllttllltlUtllllllllSllllltllllltlllUlll川lil匿 鮮器謡難藷縫謙量雲あ:P 嗣 (・v・−VISE一号) 0.5 したがって基準電圧Vsは, D1の順方向電圧降下をV■ 1 ×{ζ∼)く一x x T 一30℃覗/β〔V〕0℃ 25 T とすると 50℃ 一〇.5 Vs=Vs t−「Vl) (4) V慨〔V〕 100℃ @−1.0 となる.(2),(3),(4)式より,出力電流1は ・一幅縞確 (5) VD 1・° β》1,Vs》VBE, VDとすれば1は次のようになる. 0.5 ・一麦(Vs+Y・−VBE一穿) (6) 一30℃ 0℃ │F、/β〔V〕『0・5 (a) 1==8mA @ (・V・・ 一…一㌦一号) ま ここで,温度変化による1の変化を考える.Vsおよ _x x 25℃ 100℃ 50℃ 一1偏〔V〕一砺 一1.0 (b) びRは温度によって変化しないものを用いるものとし, ∬=0.5mA 図3 D−A変換器温度変化項および補償曲線 温度による変動を無視する.(6)式中の7D, VBE,1/β に示すように,温度による変化項をほとんど打ち消すこ について温度によって変化しない定数と変化する成分の とができる.図4にD−A変換器の回路を示す. 和として考えると 5.比較器およびカウンタ:比較器の回路を図5に示 ・一麦{(V・+V・・一・VBE・一γ・VS) す.比較すべき入力電圧が小さいことと,目標値の設定 一(VBEt−VD‘十γt「Vs)} (7) に従って入力電圧レベルが変わること,温度変化による となる.ただしγ=1/β 誤差を小さくすること等のためである。比較器は,時間 周囲温度がたとえば25CCのとき,温度による変化項 設定のアナログ信号(電圧)と,D−A変換された時間 ・をゼロとし,VS 一 YBEO+V’DO一γo Ys=Esとなるように 信号(電圧)とを比較するもので,単位時間に相当する Vsの値を定めると,図2(c)の出力電流は理想定電流源 電圧より小さい電圧の差を検出できなければならない. の1と等しくなる. D−A変換器は1桁下のものの2倍の出 FFI FF2 FF3 FF4 FF5 26 27@ 25 24 FF6 FF7 FF8 21 20 23 22 OV−19V 力電流を有する定電流源8桁で構成されて 盾浮狽 いる,下位4桁は電流が小さいので図2 (d)のような回路を用いた.4個の電流切 替回路がエミッタに接続されている.上位 Dl D2 4桁と同様に,出力電流1は, ※98 と @9 Tr1 @9 Tr2 c3 c4 ※D5 ャ頃 冨 冨 Tr3 c6 c7 ニ畠 D11 蚤蕊 y8 P2K※ i−i(Vs−v・・−VBE+脹努) nV c14 c15 Dig D21 co c18 D23 c22 ※尋圏 Dl6 VS−▽’D2−VBE+VD3 1= R(1+1/β) ぎN c13 clo ャの ぎN @曽 Tr5 Tr4 cg 護D・り │ @自 ば ※図霧 ャ9 ぎ9 Tr1・Tr2:2SC38 sr3∼Tr5:2SC267 │40V c、∼D23:SD102 u3 @※精密巻線抵抗 図4 D−A変換器 Vs》「VBE,「VD2, VD3. β》1 −÷{(V・−VD2・−V…+VD・Q一γ・VS) 48V 冨① 一(V.・,+’v’BE,一γ・3,+γ、Vs)} (8) となる.ただしγ一1/β 一30QC∼100℃の温度における温度変化項の値を図3 に示す.図3(a)をみるとVBE, V.,『V・/βの大きさは 入力1 100Ω 入 Trl Tr2 Tr1∼Tr3 2SC267 Tr5 Tr6 Tr6 Tr4:2SC268 :SD102 ZD :RD6A :リレー 24V ほぼ等しく,(7)式からもわかるようにその符号が逆 である.したがってこの関係を利用した補償が可能であ る.下位4桁も,図3(b)および(8)式から同様に温 図5 比較器回路 度補償を行なうことができる.補償は上位4桁では図 比較器の誤差は,差動増幅器の2個のトランジスタの特 2(c)のD2を2個シリーズに接続することにより,下位 性をそろえることによって非常に小さくすることができ 4桁では同図(d)のD3を3個シリーズに接続するこ る.図6にカウンタおよびそれを構成しているフリップ とによって行なうことができる.この補償によって図3 フロップ回路を示す.広範囲の温度で動作するようにシ 411111闘川IUIItlllllllllllll川川lllUlllllll“lllllll剛111111U川IIIIIIIILIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII闘lllllllllllllllllllllllllllllllllltlllltlll・llll闘lllllltllllllllllllllllll田IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII開llllllll闘llll羅1開lll闘閥llll冊llllllllllllllllllltllllllll闘1 21 22 19巻・1号(1967・ 1) 生産 研究 書1111111111EtllttllHlllllllllllll川IHI川llllllNl”IIIItlllllltl響ll田llllllllllltlllllllTll川llllHfllllllllllHlllllllllllllllllllll璽1暫llil看1川llllllllllTIIHIIIIIIII川llll喜lll置川Ill墓llMIIilllll川111川ll匪ll研 究 速 報 2 1 ロック FF FF 4 3 ※ ※ パル ス FF FF FF ※ ※ Ri FF 8 7 6 ※ ※ FF FF 5 ※ ※ ※D−A変換器FF端子へ AE 図8 D−A変換器等価回路 と,次式が成立する. 6t γβ1,VB2は通常 一24V・リセットす るときだけどちら かの端子を16Vに 接続する. Tr:2SC 269 D:SD 102 C:150PF リコントランジスタおよびシリコンダイオードを用いて いる. 6.実験結果:カウンタ,D−A変換器,比較器のお のおのについて回路を組み,特性の測定を行なった. カウンタの測定はフリップフロップ8個をカウンタ接 続し,1段目にクロックパルスを加え,8段目の出力波形 を観察するという方法で行なった.その結果を図7(a) に示す.25°C∼100°Cの温度範囲で,クロックパルスの 波高値0.2∼2.3V以内であればこのカウンタは正確に 動作する, 図7(b)に比較器の特性を示す.−30℃∼100℃の範 R,十R,=AEIAI R’》RLとすれば内部抵抗は次式で表わされる. R,=AE/AI (11) D−A変換器の各桁に対して∠1とAEを測定した結 果を図9に示す.27および26の桁は,トランジスタの コレクタ損失が小さいため2SC38を用いた。(11)式か ら内部抵抗を計算すると27の桁で約440 kΩである. 負荷抵抗を600Ωとすると,負荷抵抗による誤差は R,/R,≒O. OO13 (=0。13%) となり,単独では目安とした総合誤差より一応小さい. 図9において,27の桁がゼロになるようにYsを調整し び(d)のRに補償抵抗を接続することにより小さくす 25℃ 50℃ 埋哩経 111署} ㌦、: Vma,:クロックパ ルスの最大 波高値 Vm【r,°最小波高値 臨、r1.o 25℃⊥一ノ 10 △E一誤差電流 負荷抵抗600Ω (最小桁62.5μA) 周囲温度20℃ 凾高撃 0。l l となる.出力端電圧がAEだけ減少した場合(9)式は E−∠E=」ノ(R,+R.) (10) たため,他の桁に誤差が生じるが,これは図2(c)およ 囲で誤差はほぼ±12mVである. 100℃ の電圧で,理想定電流源の場合には瓦一〇〇従ってE== oO =1−1’とすれば,(9)(10)式より 図6 カウンタおよびフリップフロップ Vm。. Eは内部抵抗から(9)式のようにきまる等価的な電圧源 となる.出力端電圧の変動による出力電流の誤差をAI Cl IN∼1、, VHL, IN CI OV 543210 E=1(R∫十RL) (∠IE=0) (9) ,,./ 100〔kc〕 15 10 (a)カゥンタ特性 一30℃ 裟≡≡i…≡≧ 2 8 0℃ 〔〉邑淵寵 4 4 0 1 5 3 0 「 7 25℃ 10 入力電圧 T0℃ ヰ 4 100℃ 一88 払7∠− 27〆x/ 一10 23−・x 一15 レ ベル 2・一.一 一18.2 図9 一122 (b) 比較器特性 ることができる.温度による素子の特性の変化について 図7 は4節に述べたとおりである.基準電圧の変動について D−A変換器の誤差の原因として,(1)負荷抵抗によ は定電圧回路を用いて変動を極力おさえた. る出力端の電圧変動,(2)温度による素子の特性の変 以上の結果から。カウンタ,D−A変換器および比較 化,(3)基準電圧の変動等がある.D−A変換器の誤差 器を試作し,実験した結果,ほぼ目標とする精度をうる を考える上で,その定電流すなわち負荷抵抗に対する内 ことができたが,回路およびタイマ全体の総合精度につ 部抵抗の大きさが問題になる.図8のD−A変換器の定 電流源の等価回路において,出力電流1が回路に流れる いては,現在さらに測定中であり,これらの点について は次の機会にご報告したい. (1966年11月 10日受理) 川llllllllltlllSllllllllllllllllll!!llllMllllll川llllltlllLMI闘1闘IlllMIIIHIIUIIIII闘tSllllllllllltllllllllllllllllHlllllilllll1HllllllTtltllllllllllllll腿llllllLllllllllllllllllllllllllllUlllllllLllllUlllMllillllllllltll{ILIIIII川11111111111111111Mtl闘llilllll‘ 22