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《モーリス・ブルグとの出会い》
若尾 圭介
2013 年、ようやく念願が叶い、私が中学生の頃から習ってみたいと思っていた、元パリ管弦楽団首席奏者にし
てオーボエ界の重鎮、モーリス・ブルグ氏を訪ねてレッスンを受けた。彼はその時 74 歳。
「今でもリサイタルも
やってしまう 怪物 とはいえ全盛期は過ぎているだろう。会って演奏を聴いてもらって話をしたら新しく見える
ものがあるかな」という程度に思って会いに行ったのだけれども……いやはや、そんなものではなかった。レッ
スン中、彼が実際に吹いて聴かせてくれるその音色は勿論、随所にある音楽の煌めきには唸らされた。この気迫
は何処から？ 今これだけ吹けるなら現役時代は如何に？……と、想像力が膨らみ、静かに興奮した。
圧巻だったのは呼吸法。私も相当突詰めてマスターしてきた自負はあるが、彼の追求の執念ともいうべき奥深さ
には、目から鱗がボロッボロに落ちた。
「オーボエを思うがままに演奏したい、このように奏でたい」という強い思
いを叶える為に、生涯賭けて自分のものにした彼の呼吸法を見て、正直、まだ目指すべき高みはあると知った。
音楽への愛情、表現のアイディアが豊富であるからこそ、その究極である呼吸法も尋常ではないほど深まったの
だと納得させられた。まだ学ぶことがある。深めたいことがある。あのレッスンを思い出すだけで、興奮が蘇る。
オーボエ モーリス・ブルグ
Maurice Bourgue
1966 年、バーミンガムで開催された国際管楽器コンクールで、サー・ジェームズ・ゴールウェイと第１位を分け合い、
その後もミュンヘン、
プラハ、
ブダペストのコンクールで優勝。
シャルル・ミュンシュに見出され、
パリ管弦楽団首席オー
ボエ奏者に就任。1979 年、パリ管弦楽団を退団してから今日まで、ソリストとして世界各地で活躍している。世界の主
要なオーケストラ、アバド、バレンボイムなど著名な指揮者とも数多く共演している。近年では指揮者として、ヨーロッ
パを中心に数多くのオーケストラに招かれている。教育者としても名高く、パリ国立高等音楽院、ジュネーヴ音楽院、
ギルドホール音楽院、フランツ・リスト音楽アカデミーをはじめ、世界中の主要な音楽学校で教鞭をとっており、音楽祭
でもマスタークラスを行っている。
オーボエ 若尾
圭介 Keisuke Wakao
1990年よりボストン交響楽団準首席及びボストンポップスオーケストラ首席オーボエ奏者。88年、マイケル・ティルソ
ン・トーマス率いるニューワールド交響楽団首席奏者。87年マンハッタン音楽院卒業後、同校で教鞭をとる。元ニューヨー
ク・フィル首席奏者ジョゼフ・ロビンソン、新松敬久に師事。88年より「若尾圭介オーボエキャンプ」を主宰、ロンジー音楽
院、ニューイングランド音楽院で教鞭をとる。近年は、代官山ヒルサイドテラス音楽祭監督、リディーマー教会コンサート
シリーズ、日本アメリカ交流コンサートをプロデュース、開催している。日本アメリカ交流コンサートでは2009年、豊嶋
泰嗣、水谷上総、10年エマニュエル・アックス、山本正治、12年クリストフ・エッシェンバッハ、14年、15年モーリス・ブル
グ各氏との共演で好評を博す。元ボストンポップスオーケストラ音楽監督、作曲家ジョン・ウィリアムズが若尾圭介に作曲
した初のオーボエ協奏曲は11年春、ボストン・シンフォニーホールにてジョン・ウィリアムズ指揮、ボストンポップスオー
ケストラと世界初演。12年タングルウッド音楽祭「ジョン・ウィリアムズ80歳記念公演」でも同曲のソリストを務めた。
こ れ ま で 日 本 コ ロ ン ビ ア（Denon）よ り 3 枚 の ソ ロ 録 音、2014 年、ワ ー ナ ー ミ ュ ー ジ ッ ク ジ ャ パ ン よ り 最 新 盤
「Keisuke Wakao in Paris」をリリースしている。
共演：ヴィオラ
共演：ピアノ
桐朋学園大学在学中にヴィオラに転向、同大学
を首席で卒業。室谷高廣、岡田伸夫の各氏に師事。
現在東京フィルハーモニー交響楽団首席ヴィオ
ラ奏者、洗足学園大学非常勤講師。第 23 回ヴィッ
トリオ・グイ国際コンクール、第 2 回淡路島しづか
ホールなど国内外の 4 つのコンクールで第 1 位優
勝。オーケストラの他、コンテンポラリー作品の
演奏や、世界的指揮者チョン・ミョンフンと室内楽
で共演するなどソロや室内楽でも活躍。初のソロ
CD「ビオラは歌う」では多彩で豊かな音色をヴィ
オラで表現し、ヴィオラの新たなファンを増やし
ている。
1996 年パリ・エコール・ノルマル音楽院を首席で
卒業。1999 年パリ国立高等音楽院を首席で卒業し、
併せてダニエル・マーニュ賞を受賞。ヴィオッティ国
際コンクールとミュンヘン国際コンクールに入賞
後、1999 年マルタ・アルゲリッチ国際コンクールで
優勝。2001 年デュトワ指揮Ｎ響と共演して日本での
オーケストラ・デビューを果たす。その他、バイエル
ン放送響、モスクワ・フィル、読売日響ほか国内外の
オーケストラと数多く共演。
同年５枚目のCDが、フランスのレーベル「MIRARE」
初の日本人アーティストのCDとして、世界的に発売
された。最新盤は、
「バラキレフ／ピアノ作品集」
。
須田 祥子 Sachiko Suda
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