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財務諸表監査における 法令及び規則の検討

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財務諸表監査における 法令及び規則の検討
国際監査基準 250
IFAC
(本基準は有効であるが、将来発効する改訂にあわせた修正を含む)
International
Auditing
and Assurance
Standards Board
財務諸表監査における
法令及び規則の検討
Issued by the
International
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Accountants
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the cop yright of the International Federation o f Accountants (IFAC), 545
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by/under the supervision of The Japanese In stitute o f Certified Pu blic
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翻 訳 に 関 す る 国 際 会 計 士 連 盟 ( IFAC) のコピーライト 及び 承 認 について:
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す べ て の基 準 、ガ イ ド ラ イ ン 、 デ ィ ス カ ッ シ ョ ン ・ ペ ー パ ー 及 びその
他 の I FAC の 文 書 に 、 I FA C は コ ピ ー ラ イ ト を 持 つ 。
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545 Fifth Avenue, 14 t h Flo o r, New Yo rk, New Yo rk 1 0017, USA;
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いかなる部分も、電子的、機械的、写真複写、録音、その他のいかなる形態又はいか
なる方法によっても複製し、検索システムで保存し、又は転送することは認められな
い。
I FA C の 本 公 表 物 は 、日 本 公 認 会 計 士 協 会 国 際 委 員 会 に よ り 日 本 語 に 翻
訳 さ れ た も の で あ り 、I FA C の 許 可 の 下 に 複 製 さ れ る 。承 認 さ れ た す べ て
の I FA C の 文 書 の 正 文 は 、 I FA C に よ り 英 文 で 公 表 さ れ る も の で あ る 。
<注>
本 翻 訳 は 、Audit Risk Conforming Amendments と し て 2004 年 2 月 に IFAC
か ら 公 表 さ れ て い る I SA250(Conformed) で あ る 。公 表 さ れ て い る 原 文 に お い
て は 、 修 正 箇 所 が修 正 記 録 と し て 本 文 中 に記 載 さ れ て い る が 、 翻 訳 の 都 合
上 、 す べ て 修 正 箇 所 反 映 後 の原 文 を も と に 翻 訳 を作 成 し て い る 。
国際監査基準 250
財務諸表監査における法令及び規則の検討
(本基準は有効であるが、将来*発効する改訂にあわせた修正を含む)*
目次
パラグラフ
序
説 .............................................................................................................. 1−8
法令及び規則に対するコンプライアンスについての経営者の責任.......... 9−10
法令及び規則に対するコンプライアンスについての監査人の検討事項.. 11−31
非準拠性の報告 ................................................................................................. 32−38
契約の解除 ......................................................................................................... 39−40
付録:非準拠性の発生の徴候
「品
ISA250“財務諸表監査における法令及び規則の検討”は、ISA の権限や適用を定めた、
質管理、監査、保証業務及び関連サービスの国際基準に関する趣意書」とあわせて読ま
れるべきである。
*
ISA315“事業体とその環境の理解及び重要な虚偽表示リスクの評価”、ISA330“評価されたリスク
に対応する監査人の手続”、ISA500(改訂)
“監査証拠”からなる監査リスク基準の設定により、ISA250
は対応する部分の修正が生じた。これらの修正は 2004 年 12 月 15 日以降に開始する期間の財務諸
表に係る監査に対し発効する。
法令及び規則の検討(Conformed)
序
説
1.
本国際監査基準(ISA)の目的は、財務諸表の監査において法令及び規則の検討
を行う際の監査人の責任について、基準を確立し、指針を提供することにある。
2.
監査手続の設計と実施及びその結果の評価と報告を行うに際し、監査人は事業体
の法令及び規則への非準拠性が、財務諸表に重要な影響を及ぼす場合があること
を認識しなければならない。しかしながら、監査によりすべての法令及び規則へ
の非準拠性が発見されることは期待できない。非準拠性が発見された場合には、
それが重要かどうかにはかかわりなく、経営者と従業員の誠実性の問題、また、
その影響が当該監査の他の分野へ及ぶ可能性について検討することが求められ
る。
3.
本 ISA において使用される「非準拠性」という用語は、被監査事業体による、発
効中の法律又は規則に反する意図的あるいは非意図的な、不作為又は反則行為を
言及するために使用される。かかる行為は、事業体によって、又は事業体の名に
おいて、あるいは、事業体のためにその経営者又は従業員によって行われた取引
を含む。本 ISA の目的上、非準拠性は 事業体の経営者又は従業員による私的な
違法行為(事業体の事業活動には関連しない)を含まない。
4.
ある行為が非準拠性があるかどうかは、通常、監査人の職業的専門家としての能
力を超える法律上の判断である。監査人の訓練、経験及び事業体とその業種につ
いての理解は、監査人の注意を引いたある行為が、法令及び規則への非準拠であ
るかもしれないことを認識する根拠を提供するであろう。ある特定の行為が非準
拠性があるか、又は非準拠性の恐れがあるかどうかについての判断は、通常、法
律実務の資格を持った知識のある専門家の助言に基づくものであるが、究極的に
は法廷によってのみ決定し得る。
5.
法令及び規則は、財務諸表との関連において相当な多様性を持つ。ある法令又は
規則は、事業体の財務諸表の様式又は内容、あるいは財務諸表において計上すべ
き金額又は開示事項を定めている。また、経営者が遵守しなければならないもの
であったり、事業体がその事業を行うことを認可する条件を定めている法令又は
規則もある。ある事業体は厳しい規制を受ける業種(銀行、化学会社等)で事業
を行っている。また、他の事業体は事業の運営上一般に適用される(職業上の安
全及び健康並びに雇用機会均等など)多数の法令及び規則の適用を受けるのみで
ある。法令及び規則への非準拠性は、事業体に罰金、訴訟といった財政的影響を
もたらしかねない。一般に、財務諸表に通常反映される事象及び取引から内容が
隔たるほど、監査人が非準拠性に気付く可能性又は起こり得る非準拠性を認識す
る可能性は低くなる。
6.
法令及び規則は国ごとに様々である。それゆえ国内会計基準及び監査基準は、法
令及び規則と監査との関連において、より個別具体化する傾向にある。
7.
本 ISA は財務諸表の監査に適用し、監査人が特定の法令及び規則に対するコンプ
ライアンスに関して検証及び報告を別個に行うことを特別に契約している場合
には適用しない。
8.
財務諸表の監査を行う際の、不正及び誤謬の検討に関する監査人の責任の指針は、
ISA240「財務諸表監査における不正を検討する監査人の責任」に規定されている。
法令及び規則に対するコンプライアンスについての経営者の責任
9.
法令及び規則に準拠して事業体の運営をしていくことは経営者の責任である。非
準拠の防止及び発見についての責任は経営者にある。
1
法令及び規則の検討(Conformed)
10.
非準拠の防止及び発見について経営者の責任を果たすに当たり、とりわけ以下の
方針と手続が役立つであろう。
z
法的要請事項を監視し、事業運営手続が当該要請事項を満たすように設計
されていることを確立する
z
適切な内部統制組織を整備し、それを適切に運用する
z
行動規定を定め、周知させ、それに準拠する
z
従業員が当該行動規定について適切な研修を受け、理解していることを確
認すること
z
当該行動規定へのコンプライアンスの状況を監視し、かつそれを遵守して
いない従業員に遵守せるために適切に対応する
z
z
法的要請事項の監視について助言してくれる法律顧問と契約する
特定の産業において事業体が遵守すべき重要な法令集及び苦情記録を備え
る
大規模な事業体においては、以下の部門に適切な責任を割り当てることで、この
方針及び手続は補完されるであろう。
z
内部監査機能
z
監査委員会
法令及び規則に対するコンプライアンスについての監査人の検討
11.
監査人は非準拠性防止に責任を負わないし、また負い得るものではない。しかし
ながら、年次監査が実施されるという事実は抑止効果を持つであろう。
12.
監査は、たとえ ISA に準拠して適切に計画され実施されたとしても、財務諸表の
重要な虚偽の表示が発見されないという危険が不可避なものであることを前提
としている。以下のような要因による法令及び規則への非準拠性に起因する重要
な虚偽の表示に関しては、この危険はより高いといえる。
z
主に事業体の事業活動に関して、多数の法令及び規則があり、それらは通
常、財務諸表に重要な影響を及ぼすことはなく、また事業体の財務報告に関
連する情報システムでは考慮されていない
z
監査手続の有効性は内部統制に固有の限界があること及び試査によってい
ることにより影響を受ける
z
監査人が入手する監査証拠の大半は、その種類において決定的なものでは
なく、むしろ説得力のあるものである
z
非準拠性には、共謀、文書偽造、故意に取引を記録しないこと、上級経営
者の統制無視又は監査人に対して故意に虚偽の陳述を行うといった、非準
拠性それ自体を隠蔽するために計画された行為を伴う場合がある
13.
ISA200「財務諸表監査の目的及び一般原則」に従って、監査人は、事業体が法令
及び規則を遵守しているかについての疑問を抱かせるような状況又は事象が、監
査によって明らかにされる場合があることを認識し、職業的専門家としての懐疑
心を持って監査を計画し、実施しなければならない。
14.
ある特定の法律上の要件に従って、事業体が法令又は規則の特定の条項に対する
コンプライアンスに関して、財務諸表の監査の一環として報告することを監査人
が特に求められる場合がある。こうした状況においては、監査人はその法令及び
規則の条項に対するコンプライアンスを検証するための計画を立てる。
2
法令及び規則の検討(Conformed)
15.
監査の計画を立てるために、監査人は当該事業体及び業種にかかわる法令及び規
則の 体系について、また、どのように事業体がその法令体系を遵守しているか
について全般的理解を得なければならない。
16.
この全般的理解を得るに当たり、監査人は、ある種の法令及び規則が事業体の事
業活動に対して根本的な影響を及ぼすビジネスリスクを生じる場合のあること
を特に認識する。すなわち、特定の法令及び規則への非準拠性が事業体の事業活
動の停止の原因になったり、あるいは継続企業としての当該事業体の存続につい
ての問題を喚起しかねないからである。例えば、事業体が事業を行うための許認
可要件への非準拠性は、かかる影響を被る可能性があろう(例えば、銀行の資本
要件又は投資要件に対する非準拠)。
17.
法令及び規則の全般的理解を得るため、監査人は通常以下のことを行う。
z
18.
事業体の業種、規制その他の外部要因についての既存の理解を利用する
z
法令及び規則に対するコンプライアンスに関する事業体の方針及び手続に
ついて経営者に質問する
z
事業体の事業活動に根本的な影響を及ぼすと予測される法令及び規則につ
いて経営者に質問する
z
訴訟、賠償請求及び賦課金を識別し、評価し、かつ、会計処理するために
採用された方針又は手続を、経営者とディスカッションする
z
海外子会社の監査人と、法令及び規則の体系をディスカッションする(例
えば、当該子会社が親会社の証券規則を遵守するように求められている場
合)
全般的知識を得た後、監査人は、財務諸表の作成に際して考慮すべき法令及び規
則への非準拠性の事実を見付け出すことを容易にするため、特に以下の特定の追
加監査手続を実施しなければならない。
(a)
事業体の、かかる法令及び規則に対するコンプライアンスについて経営者
に質問する
(b)
関連する許認可を行う機関又は監督官庁との交換文書を査閲する
19.
さらに、監査人が財務諸表における重要な金額及び開示事項の決定に影響をもつ
と通常認識する法令及び規則に対するコンプライアンスについて、十分かつ適切
な監査証拠を入手しなければならない。計上すべき金額の決定及び開示すべき事
項に関連する主張(Assertion)を監査するに際し、監査人は法令及び規則を十分
に理解していなければならない。
20.
かかる法令及び規則は明確に制定され、かつ、事業体及び当該業種内に周知され
ている。したがって、それらは財務諸表が公表される都度、繰り返し検討される
ことになる。このような法令及び規則は、例えば、業種に固有の要件を含む財務
諸表の様式と内容、政府との契約による取引の会計処理、あるいは法人税又は年
金コストにかかわる費用の計上又は認識に関連するものが挙げられる。
21.
第 18 項、第 19 項及び第 20 項で述べられたこと以外は、財務諸表の監査の範囲
外であるため、監査人は事業体の法令及び規則に対するコンプライアンスに関す
る検証又は他の監査手続を実施しない。
22.
監査人は、財務諸表に対する意見を形成するために適用された監査手続により、
法令及び規則への非準拠と思われる事態に気付く場合があるという事実に留意
しなければならない。このような監査手続には、例えば、議事録の閲覧、訴訟、
賠償請求及び賦課に関する事業体の経営者及び法律顧問への質問、並びに取引種
類群の内容、勘定残高あるいは開示の実証的検証の実施が含まれる。
3
法令及び規則の検討(Conformed)
23.
監査人は、財務諸表作成に際し、その影響を考慮すべき法令及び規則に対する非
準拠で、現実に発生している又は可能性のあるものすべてを経営者が知る限りに
おいて監査人に開示したという文書による陳述を入手しなければならない。
24.
反論する監査証拠がない場合には、監査人は事業体がこのような法令及び規則に
対するコンプライアンスがあると推定することが許される。
非準拠性が発見された場合の監査手続
25.
本 ISA の付録に非準拠性の徴候を示すものとして、監査人の注意を引く情報の種
類を例示している。
26.
監査人が非準拠と思われる事態を示す情報に気付いたとき、監査人は行為の性質
及びそれが発生した状況を理解し、かつ財務諸表に及ぼし得る影響を評価するた
めその他の情報を十分に入手しなければならない。
27.
財務諸表に及ぼし得る影響の評価に際し、監査人は以下の項目を検討する。
z
z
z
罰金、違約金、損害賠償、資産没収の恐れ、事業活動の強制的停止及び訴
訟などの潜在的財政上の負担
潜在的財政上の負担の開示の必要性があるかどうか
潜在的財政上の負担が重大なため、財務諸表によって与えられる真実かつ
公正な概観(適正な表示)に疑問が生ずるかどうか
28.
監査人が、非準拠性が存在すると確信する場合、監査人は発見事項を文書化し、
経営者とディスカッションする。発見事項の文書化には、記録及び文書のコピー
並びに状況に応じてディスカッションの議事録を作成することが含まれる。
29.
もし経営者が実際にコンプライアンスがあるという情報を満足に提供しない場
合は、監査人はその状況に対する法令及び規則の適用と財務諸表に与え得る影響
について、事業体の顧問弁護士と相談する。事業体の顧問弁護士と相談すること
が適切でないと考えられる場合、あるいは監査人が事業体の顧問弁護士の意見に
満足できない場合には、監査人は法令又は規則への違反があるかどうか、おこり
得る法律上の結果、並びに、もしあれば、監査人が、更にどのような行動をとら
なければならないかに関して、監査人自身の弁護士と相談することを検討する。
30.
非準拠性の疑いに対して適切な情報が得られない場合、監査人は十分かつ適切な
監査証拠の不足による監査報告書への影響を検討しなければならない。
31.
監査人は、非準拠性の意味するところを監査の他の局面、特に経営者の陳述の信
頼性との関係において検討しなければならない。この点に関して、監査人は事業
体の内部統制によって検出されず、又は経営者の陳述に含まれていない非準拠性
について、危険の評価及び経営者の陳述の有効性を再検討する。監査人によって
発見された非準拠の個々の事例の意味するところは、違反の行為及び、もしあれ
ば、その隠蔽と特定の統制活動との関係、あるいはこれに関与した経営者又は従
業員の職位により異なる。
非準拠性の報告
経営者に対する報告
32.
監査人は、気付いた非準拠性に関して、実行可能な限り速やかに、統治責任者に
伝達するか、又はその事項に関し適切に報告されているという監査証拠を入手し
なければならない。しかしながら、監査人は明らかに重要性のない些細な事項に
4
法令及び規則の検討(Conformed)
ついてそのようにする必要はなく、また伝達すべき事項の内容に関しては、あら
かじめ取り決めておくことができる。
33.
監査人の判断により、非準拠が故意によるもので、かつ重大であると確信した場
合、監査人は遅滞なく発見事項を伝達しなければならない。
34.
監査人が、取締役会のメンバ−を含む上級経営者が非準拠性に関与しているので
はないかとの疑いを抱いた場合、監査人は監査委員会又は監理委員会などの当該
事業体内の上位の権威ある機関が存在すればその事実を報告しなければならな
い。さらに上位の権威ある機関が存在しない場合、又は当該監査人が報告しても
それに従って行動がなされないか、あるいは報告すべき人物が明確でないと考え
られる場合には、監査人は法律専門家の助言を求めることを検討する。
財務諸表の監査報告書の利用者への報告
35.
監査人が非準拠性が財務諸表に重要な影響を及ぼし、かつ財務諸表にそれが適切
に反映されていないと判断した場合、監査人は限定付適正意見又は不適正意見を
表明しなければならない。
36.
監査人が、財務諸表に重要な影響を及ぼし得る非準拠が発生したか、あるいは発
生した疑いがあるかどうかを判定するための、十分かつ適切な監査証拠を入手す
ることを事業体によって妨害される場合、監査人は監査範囲の制約を根拠として、
財務諸表に対し限定付適正意見を表明するか、又は意見を表明しないこととしな
ければならない。
37.
非準拠が発生したかどうかの判定が事業体によってではなく、むしろ置かれた状
況による制約により不可能な場合、監査人は監査報告書に対する影響を検討しな
ければならない。
監督官庁及び行政官庁への報告
38.
監査人の機密保持義務により、通常第三者へ非準拠性を報告することはしない。
しかしながら、特定の状況では、機密保持の義務は法令、若しくは裁判所によっ
て無効とされる(例えば、国によっては、監査人は金融機関における非準拠性を
監督機関に報告することを要求されている)。監査人はかかる状況においては、
公共の利益に対する監査人の責任に配慮し法律専門家の助言を求める必要があ
るであろう。
契約の解除
39.
監査人は状況に応じ必要であると監査人が考えた改善処置を事業体がとらない
場合は、たとえその非準拠性が財務諸表に重要ではなくとも、契約の解除が必要
であると判断する場合がある。監査人の結論に影響する要因には、経営者の陳述
の信頼性に影響を及ぼし得る事業体の最高意思決定機関の関与を示唆する事項、
並びに、当該事業体との契約を継続することが及ぼす監査人への影響が含まれる。
この結論を下すに当たり、監査人は、通常、法律専門家の助言を求める。
40.
国際会計士連盟発行の「職業会計士の倫理規程」に述べられているように、指名
された監査人からの質問を受けるに当たり、現任の監査人は指名された監査人が
その指名を受け入れるべきではない何らかの職業的理由があるかどうかを助言
しなければならない。現任の監査人がクライアントの問題について指名された監
査人とディスカッションすることのできる範囲は、それについてクライアントの
適切な承諾が得られているか否か、あるいはその開示に関して各国で適用される
法的及び倫理的要求により異なる。開示しなければならない何らかの理由、又は
5
法令及び規則の検討(Conformed)
他の事項がある場合は、現任の監査人は、法的及び倫理規定上の制約並びにクラ
イアントの承諾が必要な場合はそれを含めて考慮した上で、その情報の詳細を指
名された監査人に提供し、かつ、その指名に関連するすべての事項を指名された
監査人と自由にディスカッションする。クライアントの問題について、指名され
た監査人とディスカッションすることの承諾をクライアントが拒否した場合は、
その事実を指名された監査人に開示しなければならない。
公的部門の考慮事項
1.
多くの公的部門の業務には、法令及び規則の検討に関して追加的な監査責任を含
んでいる。監査人の責任が民間部門の監査人の責任範囲を超えない場合でも、公
的部門の監査人は、監督官庁へ非準拠の事例を報告したり、監査報告書の中でそ
れらを報告する義務が生ずることもあり、報告責任は異なっていることがある。
公的部門の事業体に関して、パブリックセクター委員会は、その研究報告3「監
督機関へのコンプライアンスに関する監査−公的部門の考慮事項」の中で本 ISA
に含まれる指針を補足している。
6
法令及び規則の検討(Conformed)
付
録
非準拠性の発生の徴候
法令または規則への非準拠性が発生したことを示すものとして、監査人の注意を
引くような情報の種類の例が以下に列挙されている。
z
政府機関による調査、又は罰金若しくは違約金の支払い
z
コンサルタント、利害関係者、従業員又は政府職員に対する詳細不明なサ
ービス又は貸付のための支払
z
事業体又はその業種にとって、あるいは実際に受けたサービスに対して、
通常よりも法外であると思われる販売手数料又は代理店報酬
z
z
市場価格よりも極端に高い、又は低い価格での仕入れ
現金又は持参人払いの銀行小切手による異常な支払い、若しくは匿名の銀
行口座への振込
z
タックスヘイブンに登記されている会社との異常な取引
z
商品又はサービスの提供国以外の国に対して行われた支払
z
適切な外国為替管理書類がない支払
z
意図的か偶然かを問わず、適切な監査証跡又は十分な証拠を提供しない会
計システムの存在
z
承認されていない取引、又は不適切に記録された取引
z
マスコミの論評
7
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