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非資金生成資産の減損 - 日本公認会計士協会

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非資金生成資産の減損 - 日本公認会計士協会
International Public
IPSAS 21
Sector Accounting
2004年12月公表
Standards Board
国際公会計基準
非資金生成資産の減損
国際会計士連盟
日本公認会計士協会
訳
本基準書は国際会計士連盟の国際公会計基準審議会により承認されたものである。
謹
告
本国際公会計基準は公的部門における非資金生成資産の減損について取り扱う。関連が認められる
場合、本基準は国際会計基準審議会(IASB)の定めた国際会計基準第36号「資産の減損」(IAS36)
を引用する。国際会計士連盟の国際公会計基準審議会の刊行物である当基準への国際会計基準第36
号からの抜粋は、国際会計基準委員会財団の許可の下に使用されている。
承認された国際財務報告基準の本文は、英語版で国際会計基準審議会から刊行されており、コピー
は直接国際会計基準委員会財団から得ることができる。国際会計基準委員会財団の連絡先は、英国
ロンドン市 EC4M6XH、キャノン通り 30 番地、国際会計基準委員会財団出版局である。
E-mail:[email protected]
Internet:http://www.iasb.org
国際会計基準委員会及び国際会計基準審議会による国際財務報告基準、国際会計基準、公開草案及
びその他の刊行物に関する著作権は国際会計基準委員会財団が有している。
「IAS」
、「IASB」、「IASC」
、「IASCF」、
「IFRS」、「International Financial Reporting Standards」及
び「International Accounting Standards」は、国際会計基準委員会財団の登録商標であり、国際
会計基準委員会財団の許可なく使用してはならない。
国際会計士連盟に関する情報及び本基準の内容は、インターネット・サイト、http://www.ifac.org.
で見ることができる。
本基準の承認された本文は英語で刊行されているものである。フランス語・スペイン語版は近日発行
予定である。
国際会計士連盟
アメリカ合衆国 10017 ニューヨーク州ニューヨーク市
5番街 545 番地 14 階
Web site:http://www.ifac.org
Copyright © December 2004 により国際会計士連盟が著作権のすべての権利を所有している。無断複
製・転写を禁ずる。大学での授業での使用、又は個人的使用に限り複写可能であるが、販売、散布は
してはならない。その場合も「Copyright © December 2004
国際会計士連盟、無断複製・転写を禁ず。
許可を得て使用」と著作権の所在を明記しなければならない。その他の場合には、法で認められた場
合を除き、この文書の複製、保存、送信には国際会計士連盟の書面による許可が必要である。
[email protected].に問い合せられたい。
IFAC COPYRIGHT AND ACKNOWLEDGEMENT FOR TRANSLATIONS:
Copyright © December 2004 by the International Federation of Accountants. All rights reserved.
Used with permission. Contact [email protected] for permission to reproduce, store or transmit
this document.
This Impairment of Non-Cash-Generating Assets of the International Public Sector Accounting
Standards Board (IPSASB), published by the International Federation of Accountants (IFAC) in
December 2004 in the English language, has been translated into Japanese by The Japanese Institute
of Certified Public Accountants in July 2005, and is used with the permission of IFAC. IFAC
assumes no responsibility for the accuracy and completeness of the translation or for actions that
may ensue as a result thereof. The approved text of all IFAC publications is that published by IFAC
in the English language.
翻訳に関する国際会計士連盟(IFAC)の著作権及び確認事項について:
Copyright © December 2004 International Federation of Accountants すべての権利はIFACが保
有しており、許可を得て使用している。この文書の再製、保存及び転送については、
[email protected]に連絡すること。
2004年12月に国際会計士連盟(IFAC)の国際公会計基準審議会によって、英語で公表され
たこの非資金生成資産の減損は、IFACの許可を得て2005年7月に日本公認会計士協会公会
計委員会によって日本語に翻訳されている。IFACは本翻訳の正確性及び完全性、あるいは
それにより起こり得る行為に対して、一切責任を負わない。承認されたすべてのIFACの文
書の原文は、IFACにより英語で公表されたものである。
序
説
公的部門の会計基準
国際会計士連盟の国際公会計基準審議会は、国際公会計基準と呼ばれる公的部門の主体のための会計
基準を作成する。国際公会計基準審議会は公的部門の法域を越えて一貫した、また比較可能な財務情
報を確保することは多大な便益があることを認識しており、その実現のために国際公会計基準が大き
な役割を果たすことを確信している。
国際公会計基準審議会は、現金主義と発生主義に基づく財務報告に適用する国際公会計基準を発行す
る。発生主義の国際公会計基準は、国際会計基準審議会が発行した国際財務報告基準の要求事項が公
的部門に適用可能である場合には、これに基づいている。また、これらの基準は、国際財務報告基準
で取り上げられていない公的部門に特有の財務報告上の問題をも取り扱う。
政府による国際公会計基準の採用は、世界中の公的部門により報告される財務情報の質と比較可能性
の向上に役立つであろう。国際公会計基準審議会は、各法域における公的部門による財務報告のため
に、政府及び国内の基準設定機関が会計基準及びガイドラインを設定する権利を有することを認めて
いる。国際公会計基準審議会は、国際公会計基準の採用及び国内的な基準と国際公会計基準との調和
を奨励するものである。財務諸表は、各々の適用可能な国際公会計基準のすべての要件に準拠してい
る場合にのみ、国際公会計基準に準拠しているということができる。
国際公会計基準第 21 号
非資金生成資産の減損
目
次
項
目
的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
範
囲 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2−13
定
義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14−17
政府系企業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
資金生成資産 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16−17
減価償却 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
減
損 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
減損している可能性のある資産の識別・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20−30
回収可能サービス価額の測定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31−46
売却費用控除後公正価値・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36−39
使用価値 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40−46
減価償却後再調達原価アプローチ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41−43
回復原価アプローチ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44
サービス構成単位アプローチ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45
アプローチの適用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46
減損損失の認識及び測定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47−53
減損損失の戻入れ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54−66
資産の区分変更・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67
開
示 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68−74
経過規定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75−76
発効日 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77−78
付
録
A.減損の兆候−例示
B.減損損失の測定−例示
C.結論の根拠
国際会計基準第36号(2004年)との比較
- 1 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
国際公会計基準第 21 号
非資金生成資産の減損
太字で記載されている基準は、通常字体で記載されている本基準書の説明パラグラフ、及び「国際
公会計基準の趣意書」と関連付けて読むことが望まれる。国際公会計基準は、重要性のない項目に
は適用されない。
目
1.
的
本基準書の目的は、主体が、非資金生成資産が減損しているかどうかを判断し、減損損失を
確実に認識するために適用する手続を規定することにある。本基準書は、また、主体が減損
損失の戻入れをしなければならない場合を特定し、開示についても規定している。
範
2.
囲
発生主義によって財務諸表を作成し、かつ表示する主体は、次に示す項目を除くすべての非
資金生成資産の減損の会計処理に本基準書を適用しなければならない。
(a)
棚卸資産(国際公会計基準第12号「棚卸資産」を参照)
(b)
工事契約から生じる資産(国際公会計基準第11号「工事契約」を参照)
(c)
国際公会計基準第15号「金融商品:開示及び表示」の範囲に含まれる金融資産
(d)
公正価値モデルで測定された投資不動産(国際公会計基準第16号「投資不動産」を参
照)
(e)
再評価額で測定された非資金生成有形固定資産(国際公会計基準17号「有形固形資産」
を参照)
(f)
他の国際公会計基準において減損の会計処理が要求されているその他の資産
3.
本基準書は、政府系企業を除くすべての公的部門の主体に適用される。
4.
第14項に定義される資金生成資産を保有する公的部門の主体は、それらの資産に対して国際
会計基準第36号「資産の減損」を適用する。非資金生成資産を保有する公的部門の主体は、
非資金生成資産に対して本基準書の要求事項を適用する。
5.
他の国際公会計基準で取り扱われている資産の減損に関しては、本基準書の範囲に含まない。
政府系企業には、国際会計基準第36号が適用されるので、本基準書の規定の対象外である。
政府系企業以外の公的部門の主体は、その資金生成資産に対して国際会計基準第36号を適用
し、非資金生成資産に対しては本基準書を適用する。第6項から第13項で、本基準書の範囲
をより詳細に説明する。
- 2 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
6.
本基準書は、非資金生成無形資産をその対象範囲に含む。非資金生成無形資産に関しては、
主体は減損損失や減損損失の戻入れを認識・測定するために本基準書の要件を適用する。
7.
本基準書は、棚卸資産及び工事契約から生じる資産には適用しない。それは、これらの資産
に適用される現行の国際公会計基準が、これらの資産を認識し、測定するための特定の要求
を既に含んでいるからである。
8.
本基準書は、国際公会計基準書第15号「金融商品:開示及び表示」の対象範囲に含まれる金
融資産には適用されない。このような資産の減損は、国際公会計基準審議会が国際会計基準
第39号「金融商品:認識及び測定」を基に策定する国際公会計基準で取り扱われる。
9.
本基準書は、国際公会計基準第16号「投資不動産」の規定に従い、公正価値を帳簿価額とす
る投資不動産に対しては、減損テストの適用を要求しない。これは、国際公会計基準第16号
の公正価値モデルによって、投資不動産は報告日の公正価値を帳簿価額としており、減損は、
評価の中で反映されるためである。
10.
本基準書は、国際公会計基準第17号「有形固定資産」による認められた代替処理により公正
価値を帳簿価額とする非資金生成資産に対しては減損テストの適用を要求しない。これは、
国際公会計基準第17号の代替処理により、資産は、報告日の公正価値と大差ない価額で帳簿
価額とすることが保証されるに足る十分な定期性をもって再評価され、減損は評価の中で反
映されるためである。さらに、資産の回収可能サービス価額を測定するために本基準書で適
用される手法は、資産の回収可能サービス価額が資産の再評価額より著しく低くなく、この
ような違いが資産の処分費用によるものであることを意味する。
11.
上記の第4項の要求と首尾一貫する形で、国際公会計基準第17号の認められる代替処理によ
って再評価される資産も含め、資金生成資産として分類される有形固定資産は、国際会計基
準第36号で取り扱われている。
12.
次に示す投資は、国際公会計基準第15号の範囲から除外されている金融資産である。
(a)
国際公会計基準第6号「連結財務諸表及び被支配主体に対する会計処理」において定
義される被支配主体
(b)
国際公会計基準第7号「関連法人に対する投資の会計処理」において定義される関連
法人
(c)
国際公会計基準第8号「ジョイント・ベンチャーに対する持分の財務報告」において
定義されるジョイント・ベンチャー
これらの投資が資金生成資産として分類される場合には、国際会計基準第36号によって処理
する。これらの資産が非資金生成資産の性質を持つものである場合には、本基準書により処
理する。
13.
国際会計基準審議会によって発行された国際財務報告基準書の趣意書によると、国際財務報
告基準書はすべての営利主体の一般目的財務諸表に適用するために設計されている。政府系
企業は、下記第14項で定義されるが、営利目的の主体であり、国際財務報告基準及び国際会
- 3 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
計基準に準拠することが要求される。
定
義
14.
以下の用語は、本基準書では次のとおり定めている。
活発な市場とは、次のすべての状況にある市場を指す。
(a)
市場内で取引される商品が同質である。
(b)
通常、自発的な売り手と買い手が常に存在している。
(c)
価格が一般に公開されている。
帳簿価額とは、財政状態報告書に計上されている当該資産の、減価償却累計額及び減損損失
累計額控除後の価額をいう。
資金生成資産とは、商業的利益を得ることを目的として保有される資産である。
処分費用とは、資産の処分が直接の原因である増分費用で、財務費用及び所得税費用を含ま
ないものをいう。
減価償却(償却)とは、資産の償却可能価額を規則的にその耐用年数にわたって体系的に配
分することをいう。
売却費用控除後公正価値とは、取引の知識がある自発的な当事者間取引による資産の売却で
得られる価額から処分費用を差し引いた額である。
政府系企業とは、次の特徴のすべてを有する主体を意味する。
(a)
自らの名義で契約を締結する権限を有する主体で、
(b)
事業を展開する財務上及び経営上の権限が付与されており、
(c)
正常な事業運営過程で、他の主体に対して利益を上乗せした価格若しくは総原価回収
額で財貨及びサービスを販売し、
(d)
継続主体となるために政府資金に依存し続けるものではなく(独立第三者取引条件に
より生産物を購入する場合を除いて)
、
(e)
公的部門の主体によって支配されている主体
減損とは、減価償却によって体系的に認識される資産の将来の経済的便益又はサービス提供
能力の損失を超えた資産の将来の経済的便益又はサービス提供能力の損失である。
非資金生成資産の減損損失とは、資産の帳簿価額がその回収可能サービス価額を超える金額
- 4 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
である。
非資金生成資産とは、資金生成資産以外の資産をいう。
回収可能サービス価額とは、非資金生成資産の売却費用控除後公正価値と使用価値のどちら
か高い金額をいう。
耐用年数とは、次のいずれかをいう。
(a)
主体によって資産が使用されると見込まれる期間、又は
(b)
主体が当該資産から得られると見込まれる生産高若しくはこれに類する単位数
非資金生成資産の使用価値とは、資産の残存サービス提供能力の現在価値をいう。
政府系企業
15.
政府系企業には、公共サービス事業を営む事業法人と金融機関のような金融法人の双方があ
る。政府系企業は、実質的には民間部門で類似の活動を行う企業と異なるものではない。政
府系企業は、一般に営利目的で運営される。ただし、地域社会に住む個人や組織に財貨やサ
ービスを無料あるいは相当低い価格で提供するという限定的な地域サービスの提供義務を負
っている場合がある。
資金生成資産
16.
資金生成資産とは、商業的利益を得るために保有される資産である。営利目的の主体と同様
に資産を活用した場合、その資産は商業的利益を生む。「商業的利益」を生むために資産を保
有するということは、その主体が資産(又はその資産が一部をなす単位)から正のキャッシ
ュ・フローを得るとともに、その資産を保有するリスクを反映した利益を得ることを示唆す
る。
17.
政府系企業に保有される資産は資金生成資産である。政府系企業以外の公的部門の主体も、
商業的利益を得る目的で資産を保有することがある。この基準の目的に照らして、非政府系
企業に保有されている資産は、その資産(又はその資産が一部をなす単位)が、外部団体に
対する財貨やサービスの提供を通じて商業的利益を生むことを目的として運営されている場
合、資金生産資産として分類される。
減価償却
18.
減価償却や償却は、その耐用年数にわたっての資産の償却可能価額の体系的な配分である。
無形資産の場合、「減価償却」の代わりに「償却」という用語が通常使用される。どちらの語
- 5 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
も同様の意味である。
減
損
19.
本基準書は、
「減損」を、減価償却によって体系的に認識される資産の将来の経済的便益又は
サービス提供能力の損失を超えた資産の将来の経済的便益又はサービス提供能力の損失であ
ると定義している。したがって、減損は、資産の効用の低下を当該資産を支配する主体に反
映するものである。例えば、ある主体がもはや使用しない専用の軍事用貯蔵施設を有してい
るとする。加えて、施設の特殊性とその所在地により、リースすることも売却することもで
きそうになく、したがって、主体は資産をリース又は処分によりキャッシュ・フローを生成
することは不可能である。当該資産は、もはや主体にサービス提供能力を提供できないので
減損したとみなされる。つまり、資産は主体にとって目的の達成に貢献する効用をほとんど
又は全く持たないからである。
減損している可能性のある資産の識別
20.
第22項から第30項は、回収可能サービス価額の算定が求められる場合を特定している。
21.
非資金生成資産は、その帳簿価額が回収可能サービス価額を超過する場合に減損している。
第23項は、減損損失の発生を疑わせる主な兆候について述べている。これらの兆候のいずれ
かが存在している場合には、主体は、回収可能サービス価額の正式な見積りを行うことが要
求される。減損損失の可能性を示す兆候が存在しない場合には、本基準書は主体に回収可能
サービス価額の正式な見積りを行うことを要求しない。
22.
主体は、各報告日現在で、資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを評価しなけ
ればならない。そのような兆候のいずれかが存在する場合には、主体は当該資産の回収可能
サービス価額を見積もらなければならない。
23.
資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを評価する場合、主体は少なくとも、次
の兆候を考慮しなければならない。
外部の情報源
(a)
当該資産によって提供されるサービスの需要又は必要性の消滅あるいはそれに近い状
態
(b)
主体が事業を行っている技術的、法的若しくは政府の政策的環境において、当期中に
主体にとって悪影響のある著しい長期的変化が発生したか、又は近い将来に発生する
と予想されること
内部の情報源
(c)
資産の物的損傷の証拠が入手できること
- 6 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
(d)
資産が使用されており又は使用されると予測される範囲若しくは方法に関して、当期
中に主体にとって悪影響のある著しい長期的変化が発生し、又は近い将来において発
生すると予測されること。これらの変化は、遊休状態になったり、資産の属する事業
の廃止若しくはリストラクチャリングの計画あるいは予定されていた期日より前に資
産を処分することになった場合を含む。
(e)
完成するか又は使用可能の状態になる前において資産の工事を中止する決定があった
こと
(f)
資産のサービス成果が予想していたより著しく悪化し又は悪化するであろうというこ
とを示す証拠が、内部報告から入手できること
24.
サービスに対する需要や必要性は時の経過に従って変動することがあり、非資金生成資産が
それらのサービスを提供するために利用される程度に影響を及ぼすことがあるが、需要の低
下が必ずしも減損の兆候になるとは限らない。当該サービスに対する需要が消滅するか、そ
れに近い状態になった場合に、それらのサービスを提供するための資産には減損が生じたと
いえる。需要が著しく低下し、主体がその需要にもはや対応しないかあるいは減損テストの
対象となっている資産を取得することなく対応するであろう場合は「消滅に近い状態」にな
ったと考えることができる。
25.
第23項の記載項目は、すべてを網羅するものではない。資産が減損している可能性の兆候は
他にもあるかもしれない。その他の兆候の存在も主体に資産の回収可能サービス価額の算定
を要求することとなる。例えば、次のどの項目も減損の兆候になり得る。
(a)
時の経過や通常の使用の結果予想される程度を超える資産の市場価値の著しい低下、
又は
(b)
資産により提供されるサービスの需要又は必要性の著しく長期的な減少(必ずしも消
滅やそれに近い状態を意味するものではない。
)
26.
資産の減損の兆候を示す事象又は環境は重大であり、そのことは、しばしば、意思決定機関、
経営者又はメディアによる議論を促すことになろう。サービスに対する需要、使用の範囲若
しくは方法、法的環境又は政府の政策環境などの要因の変化は、このような変化が重大であ
って、長期的な悪影響を与えたか、あるいは与えることが予測された場合にのみ減損の兆候
を示すものとなるであろう。技術環境の変化は資産が陳腐化している兆候であり、減損テス
トを要求する。期間中における資産の用途の変更も減損の兆候になり得る。このような例は、
例えば、学校として使用されていた建物が、その用途を変更され倉庫として使用されるよう
な場合に起こるであろう。減損が発生したかどうかを評価するに当たり、主体は、長期的な
視野でサービス提供能力の変化を査定する必要がある。このことは、変化は、資産の予測さ
れる長期的な用途という観点から判断されるということを強調する。しかし、長期的に使用
するという予測は変化することがあり、各報告日における主体の査定は、それを反映するこ
とになろう。付録Aは、第23項で言及された減損の兆候の例示を提示している。
27.
工事の中止が減損テストを必要とするものであるのかどうかを査定する際には、主体は、工
事が単に遅延しているのか又は延期されているのか、将来において工事を再開する予定があ
- 7 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
るのか、又は、工事が近い将来には完了しない事情にあるのかを考慮することになろう。工
事が特定された将来の時点まで遅延するか又は延期されるのであれば、そのプロジェクトは
なお建設中としてみなされ、中止されたとは考えられない。
28.
上記の第23項(f)で述べた内部報告から入手した資産が減損している可能性があることを示
す証拠は、当該資産により提供される財貨又はサービスの需要の減少ということよりも、財
貨又はサービスを提供する当該資産の能力に関連する。これには次のものの存在が含まれる。
(a)
当初予算に比べて、当該資産の操業若しくは維持に著しく費用がかかること、及び
(b)
稼動実績が業績不振のため、当初の期待されたものと比べ資産により提供されるサー
ビス又は生産高のレベルが著しく低いこと
資産の操業費用の著しい増加は、操業予算作成の基となった、製造者が当初設定した生産水
準において想定されたほど効率的でなく、また生産的でないことを示す。同様に維持費用の
著しい増加は、直近時に査定された標準の性能で資産の業績レベルを維持するためには、よ
り多額の費用が必要とされることを示すことになる。その他の場合では、当該資産が提供す
る予測されるサービス又は生産高レベルの著しく長期的な低下により、減損の直接的な数量
的証拠が示されることがある。
29.
資産の回収可能サービス価額を見積もる必要があるか否かを識別するに当たっては、重要性
の原則が適用される。例えば、以前の計算において、資産の回収可能サービス価額がその帳
簿価額より相当大きいことを示している場合には、当該差異を消去してしまうような事象が
起きていない限り、主体は資産の回収可能サービス価額を再度見積もることを要しない。同
様に、以前の分析において、資産の回収可能サービス価額は第23項に記載された兆候の1つ
(又はそれ以上)にさほど影響されないことを示すこともある。
30.
資産について減損損失が認識されない場合においても、資産が減損している可能性を示す兆
候がある場合には、資産の残存耐用年数、減価償却(償却)方法又は残存価値が、当該資産
に適用される国際公会計基準に基づいて再検討され、かつ、修正される必要があることを示
している場合がある。
回収可能サービス価額の測定
31.
本基準書は、回収可能サービス価額を資産の売却費用控除後公正価値と使用価値のどちらか
高い金額と定義している。第32項から第46項は、回収可能サービス価額を測定するための要
求事項を規定している。
32.
資産の売却費用控除後公正価値及び使用価値の双方を決定することは、常に必要とは限らな
い。例えば、これらの金額のどちらかが資産の帳簿価額を超過する場合には、資産は減損し
ていない。したがって、他の金額を見積もる必要はない。
33.
資産が活発な市場で取引されていない場合においても、売却費用控除後公正価値を決定する
ことは可能である。第38項は、当該資産の活発な市場が存在しない場合における売却費用控
- 8 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
除後公正価値を見積もる可能性のある代替的な基礎を規定している。しかし、場合によって
は、取引の知識がある自発的な当事者間で独立第三者間取引条件による資産の売却から得ら
れる金額の信頼し得る見積りを得る基礎がないので、売却費用控除後公正価値を決定するこ
とが不可能なこともある。このような場合には、資産の回収可能サービス価額は使用価値に
よることとなる。
34.
使用価値が売却費用控除後公正価値を著しく超過していると考える理由のない場合には、回
収可能サービス価額は売却費用控除後公正価値によることとなる。これは、処分目的で所有
されている資産の場合に多い。この理由は、処分目的で所有される資産の使用価値は、主と
して正味処分金額から構成されるであろうからである。しかし、特殊なサービスや公共財を
継続的なベースで地域社会へ提供するために保有される多くの公的部門の非資金生成資産に
ついては、当該資産の使用価値はその売却費用控除後公正価値よりも大きくなるであろう。
35.
場合によっては、見積り、平均及び簡易計算は、売却費用控除後公正価値又は使用価値を決
定するために本基準書に解説されている詳細な計算の合理的な近似値となるであろう。
売却費用控除後公正価値
36.
資産の売却費用控除後公正価値の最善の証拠となるものは、独立第三者間取引条件による拘
束力のある売買契約に基づく価格から、資産の処分に直接関連する増分費用を差し引いたも
のである。
37.
拘束力のある売買契約はないが資産が活発な市場で取引されている場合には、売却費用控除
後公正価値は処分費用を差し引いた当該資産の市場価格である。適正な市場価格は、通常は
現在の入札価格である。現在の指し値が入手できない場合には、取引日と見積りがなされた
日との間に著しい経済環境の変化がなかったことを条件として、直近の取引価格が売却費用
控除後公正価値を見積もる基礎となり得る。
38.
資産について拘束力のある売買契約又は活発な市場が存在しない場合には、売却費用控除後
公正価値は、主体が、報告日において、取引の知識がある自発的な当事者間で独立第三者間
取引条件による資産の売却について入手し得る、処分費用を控除した金額を反映する最善の
情報に基づくこととなる。この金額の決定において、主体は、同一産業内の類似資産の直近
の取引結果を考慮する。売却費用控除後公正価値は、経営者又は意思決定機関が即時の売却
を余儀なくされている場合以外は、強制された売却を反映しない。
39.
既に負債として認識された費用以外の処分費用は、売却費用控除後公正価値の決定において
控除される。それらの費用の例は、法的費用、印紙税及び類似の取引税、資産の除却費用並
びに資産を売却可能な状態にするための直接増分費用である。しかし、資産の処分に引き続
く事業の縮小及び再編成に関連する解雇給付(国際会計基準第19号「従業員給付」1において
1
国際公会計基準審議会は「従業員給付」に関する国際公会計基準の作成をその作業計画に含めている。その計画
は、国際会計基準審議会による国際会計基準第 19 号のレビューが完了後に開始される予定である。
- 9 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
定義されている。)及び費用は、資産の処分についての直接増分費用ではない。
使用価値
40.
本基準書は、非資金生成資産の使用価値を当該資産の残存サービス提供能力の現在価値であ
ると定義する。本基準書における「使用価値」は、特に断りのない限り、「非資金生成資産の
使用価値」を意味する。当該資産の残存サービス提供能力は、第41項から第45項で識別され
るアプローチのうちのいずれか1つを適宜使用して決定される。
減価償却後再調達原価アプローチ
41.
このアプローチでは、資産の残存サービス提供能力の現在価値は、資産の減価償却後の再調
達原価として算定される。資産の再調達原価は、当該資産の総サービス提供能力を再調達す
る場合の原価である。この原価は、資産の使用後の状態を反映するために減価償却される。
資産は、既存の資産の再生産(復元)によるか、又は資産の総サービス提供能力の再調達に
よるかいずれかによって取り替えられる。減価償却後の再調達原価は、既に消費又は消滅し
た当該資産のサービス提供能力を反映するために、資産の再生産又は再調達原価のどちらか
低い金額から、それを基にして算定される減価償却累計額を控除して測定される。
42.
資産の再調達原価及び再生産原価は、“最適化”ベースで決定される。その理論的根拠は、主
体は、再調達あるいは再生産される類似の資産が必要以上に設計されているものか又は過剰
生産能力を持つものであれば、資産を再調達あるいは再生産しようとしないからである。必
要以上に設計されている資産は、当該資産が提供する財貨又はサービスに対して不必要な機
能を持つ。過剰生産能力を持つ資産は、資産が提供する財貨やサービスの需要を満たすのに
必要とされるものより大きな生産能力を持つ資産である。最適化ベースによる資産の再調達
原価又は再生産原価の決定は、このように当該資産の要求されるサービス提供能力を反映す
る。
43.
ある場合には、安全上等の理由から、予備又は余剰の能力が維持されている。これは、主体
の特定の状況において、十分なサービス提供能力を提供することを確保する必要性から生じ
るものである。例えば、消防部門は、緊急時にサービスを提供するために消防車を待機させ
ておく必要がある。こうした余剰又は予備の能力は、資産の要求されるサービス提供能力の
一部分である。
回復原価アプローチ
44.
回復原価は、資産のサービス提供能力をその減損前の状態まで回復させる原価である。この
アプローチでは、当該資産の残存サービス提供能力の現在価値は、減損前の当該資産の残存
サービス提供能力を再調達する現在原価から当該資産の見積もられる回復原価を控除するこ
とによって算定される。前者の原価は、通常は、当該資産の減価償却後の再生産原価又は再
- 10 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
調達原価のいずれか低い金額で決定される。第41項及び第43項は、資産の再調達原価又は再
生産原価の決定についての追加的なガイドラインを含んでいる。
サービス構成単位アプローチ
45.
このアプローチでは、資産の残存サービス提供能力の現在価値は、減損した状態の当該資産
から得られると期待される減少したサービス構成単位に合わせるために、減損前の資産の残
存サービス提供能力の現在原価を減少させることによって決定される。回復原価アプローチ
にあるように減損前の資産の残存サービス提供能力を再調達する現在原価は、通常、減損前
の資産の減価償却後の再生産原価又は再調達原価のいずれか低い金額で決定される。
アプローチの適用
46.
使用価値を測定するための最適なアプローチの選択は、データの存在の有無と減損の性質に
よって左右される。
(a)
技術的、法的又は政府の政策環境における著しい長期的変化から識別される減損は、
一般的に減価償却後再調達原価アプローチ又はサービス構成単位アプローチにより測
定可能である。
(b)
需要の消滅あるいはそれに近い状態から判断されるものも含めて使用の範囲又は方法
における著しい長期的変化から識別される減損は、一般的に減価償却後再調達原価ア
プローチ又は適切な場合にはサービス構成単位アプローチにより測定可能である。及
び
(c)
物的損傷から識別される減損は、一般的に回復原価アプローチにより、又は適切な場
合には減価償却後再調達原価アプローチにより測定可能である。
減損損失の認識及び測定
47.
第48項から第53項は、資産に対する減損損失の認識及び測定についての要求事項を規定して
いる。本基準書において、特に断りのない限り、「減損損失」は「非資金生成資産の減損損失」
を意味する。
48.
資産の回収可能サービス価額が帳簿価額より低い場合には、その場合にのみ、当該資産の帳
簿価額をその回収可能サービス価額まで減額しなければならない。当該減少額は減損損失で
ある。
49.
第22項で述べたとおり、本基準書は潜在的な減損損失の兆候が現に存在する場合にのみ、主
体が回収可能サービス価額の正式な見積りを行うことを要求している。第23項から第29項は、
減損損失が生じている可能性のある主要な兆候を識別している。
- 11 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
50.
減損損失は、直ちに純余剰・欠損において認識しなければならない。
51.
減損損失として見積もった金額が当該資産の帳簿価額よりも大きい場合、主体は、それが他
の国際公会計基準によって要求されている場合には、その場合にのみ、負債を認識しなけれ
ばならない。
52.
見積もられた減損損失が資産の帳簿価額を超える場合、資産の帳簿価額を零に減額し、それ
に対応する金額を純余剰あるいは欠損として認識する。負債は、他の国際公会計基準がそれ
を要求している場合にのみ認識する。1つの例は、専用に建設された軍事施設がもはや使用
されておらず、使用できない場合には、法律によって主体がそのような施設を撤去すること
が要求されている場合である。主体は、国際公会計基準第19号「引当金、偶発債務及び偶発
資産」で要求されていれば、撤去費用のための引当金を設定する必要がある。
53.
減損損失を認識した後には、将来の期間にわたり、資産の改訂後の帳簿価額から(もしあれ
ば)残存価額を控除した金額を残存耐用年数にわたって規則的に配分することにより、当該
資産の減価償却費(償却費)を調整しなければならない。
減損損失の戻入れ
54.
第55項から第66項は、資産について過年度に認識した減損損失の戻入れを行う際の要件を規
定している。
55.
主体は、各報告日において、過年度中に資産について認識した減損損失がもはや存在しない
か、又は減少している可能性を示す兆候があるか否かを評価しなければならない。そのよう
な兆候が存在する場合には、主体はその資産の回収可能サービス価額の見積りをしなければ
ならない。
56.
過年度中に資産について認識した減損損失がもはや存在しないか、あるいは減少している可
能性を示す兆候があるか否かを評価する場合に、主体は少なくとも、次の兆候を考慮しなけ
ればならない。
外部の情報源
(a)
当該資産により提供されるサービスの需要又は必要性の復活
(b)
主体が事業を行っている技術的、法的若しくは政府の政策環境において、当期中に主
体にとって有利な影響のある著しい長期的変化が発生したか、又は近い将来において
発生すると予想されること
内部の情報源
(c)
当該資産が使用されており又は使用されると予測される範囲若しくは方法に関して、
当期中に主体にとって有利な影響のある著しい長期的変化が発生したか、又は近い将
来において発生すると予測されること。これらの変化は、資産の性能を改良又は向上
- 12 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
させるために、当該期間に発生した費用及び資産が所属する事業のリストラクチャリ
ングのための費用を含む。
(d)
完成するか又は使用可能の状態になる前に中止されていた工事を再開する決定があっ
たこと
(e)
当該資産のサービス成果が予測していたより著しく良好であるか、又は良好であろう
ことを示す証拠が内部報告から入手できること
57.
第56項の減損損失の減少の可能性を示す兆候は、第23項の減損損失の可能性を示す兆候と対
照をなしている。
58.
第56項の記載項目はすべてを網羅するものではない。他にも減損損失の戻入れの可能性を示
す兆候を識別する主体もあり、その場合には、当該主体は資産の回収可能サービス価額の再
見積が求められるであろう。例えば、次のものは、いずれも減損損失がその結果として戻し
入れられる可能性のある兆候となり得る。
59.
(a)
資産の市場価値の著しい増加
(b)
当該資産により提供されるサービスの需要又は必要性の著しい長期的な増加
近い将来に事業の廃止又はリストラクチャリングを実施する約束が、ある事業に対する資産
に関する減損損失の戻入れの兆候となるのは、当該約束が当該主体に望ましい影響を与える
特定の事業に対する長期的な変化をもたらすものであり、それが当該資産を使用する範囲又
は方法に係るものである場合である。このような約束が減損の戻入れの兆候となるのは、将
来の事業の廃止又はリストラクチャリングが当該資産の効用を高める機会を創出するような
ケースである。公的病院の管轄下にある診療所では使用頻度の低かったX線機器が、廃止又
はリストラクチャリングの結果、当該病院の主要な放射線部門に移転され著しく高い利用効
率となることが予想されることが1つの例として挙げられる。このような場合に、当該診療
所の事業を廃止又はリストラクチャリングする約束は、過年度の減損損失を戻し入れなけれ
ばならない可能性のある兆候となり得る。
60.
ある資産について認識した減損損失がもはや存在しないか、あるいは減損損失が減少してい
る可能性を示す兆候が存在する場合には、たとえ減損損失が当該資産について戻し入れられ
ない場合でも、残存耐用年数、減価償却(償却)方法又は残存価額を再検討し、当該資産に
適用される国際公会計基準に従って修正する場合もあり得る。
61.
過年度に認識された資産の減損損失は、減損損失が最後に認識された後、当該資産の回収可
能サービス価額を算定するために用いた見積りに変更があった場合にのみ、戻し入れなけれ
ばならない。この場合には、第64項に示す場合を除き、資産の帳簿価額をその回収可能サー
ビス価額まで増加させなければならない。その増加が減損損失の戻入れである。
62.
本基準書は、減損損失の戻入れの兆候が現に存在する場合にのみ、主体が回収可能サービス
価額の正式な見積りを行うことを要求している。第56項では、過年度において認識された資
産の減損損失がもはや存在しないか、又は減少している可能性があることを示す主要な兆候
を示している。
- 13 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
63.
減損損失の戻入れは、主体が資産の減損損失を最後に認識した日以降における、使用又は売
却のいずれかによる当該資産の見積回収可能サービス価額の増加を反映する。第72項により、
主体は、見積回収可能サービス価額の増加の原因となった見積りの変更を識別することを要
求される。見積り変更の例は、次のものがある。
(a)
回収可能サービス価額の基礎の変更(例えば、回収可能サービス価額が売却費用控除
後公正価値又は使用価値のどちらを基礎としているか)
(b)
回収可能サービス価額が使用価値を基礎とする場合には、使用価値の構成要素の見積
りにおける変更、又は
(c)
回収可能サービス価額が売却費用控除後公正価値を基礎とする場合には、売却費用控
除後公正価値の構成要素の見積りにおける変更
64.
減損損失の戻入れによって増加した資産の帳簿価額は、過年度において当該資産について認
識された減損損失がなかったとした場合の(減価償却又は償却後の)帳簿価額を超えてはな
らない。
65.
資産の減損損失の戻入れは、直ちに純余剰・欠損において認識しなければならない。
66.
減損損失の戻入れが認識された後の資産の減価償却(償却)費は、将来の期間にわたり、当
該資産の改訂後の帳簿価額から、(もしあれば)その残存価額を控除した金額を、その残存
耐用年数にわたって規則的に配分するように修正しなければならない。
資産の区分変更
67.
資金生成資産から非資金生成資産へ、又は非資金生成資産から資金生成資産への資産区分変
更は、当該変更が適当であるという明確な証拠が存在している場合にのみ生ずる。区分変更
それ自体は、必ずしも減損テスト又は減損損失の戻入れの契機となるものではない。むしろ、
減損テスト又は減損損失の戻入れの兆候は、少なくとも、区分変更後の資産に適用可能な前
記項目にある兆候から生じるものである。
開
示
68.
主体は、資産の種類ごとに、次の事項を開示しなければならない。
(a)
当期中の純余剰・欠損として認識された減損損失の金額及びこの減損損失を含んでい
る財務業績報告書の表示項目
(b)
当期中の純余剰・欠損として認識された減損損失の戻入れの金額及びこの減損損失の
戻入れを含んでいる財務業績報告書の表示項目
69.
資産の種類とは、性質及び主体の事業における使用の類似性に基づき、資産をグループ化し
たものをいう。
- 14 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
70.
第68項で要求されている情報は、資産の種類について開示される他の情報とともに表示する
ことができる。例えば、この情報は、国際公会計基準第17号「有形固定資産」の定めるとこ
ろにより、期首及び期末現在の有形固定資産の帳簿価額の調整に含めることができる。
71.
国際公会計基準第18号「セグメント別報告」に従いセグメント別情報を報告する主体は、主
体が報告する各報告セグメントについて、次の事項を開示しなければならない。
72.
(a)
当期中の純余剰・欠損で認識された減損損失の金額
(b)
当期中の純余剰・欠損で認識された減損損失の戻入れの金額
当期中に認識又は戻入れされた重要な減損損失に関して、主体は、次の事項を開示しなけれ
ばならない。
(a)
減損損失の認識又は戻入れに至った事象及び状況
(b)
認識又は戻入れされた減損損失の金額
(c)
当該資産の性質
(d)
主体が国際公会計基準第18号を適用する場合は、資産が所属するセグメント
(e)
資産の回収可能サービス価額が売却費用控除後公正価値又は使用価値のどちらである
か
(f)
回収可能サービス価額が売却費用控除後公正価値の場合には、売却費用控除後公正価
値を決定するために使用された基準(公正価値が活発な市場での価格を参照して決定
されているかどうかなど)
(g)
回収可能サービス価額が使用価値の場合には、使用価値を決定するために用いられた
アプローチ
73.
第72項に従って情報公開がなされていない期間中に認識された減損損失の合計と減損損失
の戻入れ合計について、主体は、次の情報を開示しなければならない。
(a)
減損損失の影響を受ける主な資産の種類(及び減損損失の戻入れの影響を受ける主な
資産)
、及び
(b)
74.
これらの減損損失の認識や減損損失の戻入れを認識するに至った主な事象及び状況
主体は、当期中に資産の回収可能サービス価額の決定に使用された主要な前提の開示が奨励
されている。
経過規定
75.
本基準書は、本基準書を適用した日から将来の期間にのみ適用されなければならない。本国
際公会計基準の採用によって発生した減損損失(減損損失の戻入れ)は、本基準書に基づい
- 15 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
て認識しなければならない(例えば、純余剰及び欠損など)
。
76.
本基準書の採用前、主体は、減損損失の認識及び戻入れについて会計方針を採用していたか
もしれない。本基準書の採用とともに会計方針における変更が生じることもある。会計方針
の変更の遡及的適用から生じる調整額を決定することは困難である。したがって、本基準書
の採用に当たっては、主体は、国際公会計基準第3号「期間純余剰・欠損、重大な誤謬及び
会計方針の変更」における「その他の会計方針の変更」についての標準処理又は認められる
代替処理を適用しない。
発効日
77.
本国際公会計基準は、2006年1月1日以後開始する年度から適用される。早期適用が奨励さ
れる。主体が本基準を早期に採用する場合には、その旨を公開する。
78.
主体が、財務報告目的で、発効日以後に国際会計基準で定義される発生主義を採用した場合、
本基準書は、採用日以後に開始する期間に係る主体の年次財務諸表に適用される。
- 16 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
付録A
減損の兆候−例示
本付録は、本基準書に記載されている減損の兆候の意味を明確にするための例示を提示する。本付
録は、基準書の一部を構成するものではない。
外部の情報源
(a) 資産によって提供されるサービスの需要又は必要性の消滅あるいはそれに近い状態
当該資産は、依然として同じサービス提供能力を維持しているが、そのサービスに対する需
要が消滅あるいはそれに近い状態である。この態様における減損した資産の例は、次のもの
を含む。
(ⅰ) 他の地域への人口の移動による教育サービス需要の不足により学校が閉鎖された場合。
教育サービスに対する需要に影響を与えているこの人口統計的な傾向は、近い将来に
元に戻ることは期待できない。
(ⅱ) 生徒数1,500人用に設計された学校の入学者数が近年150人であるが、代わりになり得
る一番近い学校は100㎞も離れているため、閉鎖することはできない。主体は入学者数
の増加は見込めないと予想している。設立当初の入学者は1,400人であった。仮に将来
の入学者数が150名まで落ち込むことが予想されていたならば、主体はもっと小規模な
施設を建設していたであろう。需要はほぼ消滅したと主体は判断し、学校の回収可能
サービス価額を、その帳簿価格と比較しなければならない。
(ⅲ) 鉄道が利用者の不足で廃業した場合(例えば、連年の干ばつにより地方の人口がかな
り大幅に都市部に移転し、残る人々はより安いバス路線を使用している)、及び
(ⅳ) スタジアムの主要な借主が賃貸借契約を更新せず、その結果当該施設が閉鎖されるこ
とが予想される場合
(b) 主体にとって悪影響のある技術的、法的又は主体が事業展開する政府の政策環境の著しい
長期的変化
技術環境
資産のサービスの効用は、技術がより優れた、効率的なサービスを提供する代替物を生産す
るように進歩すれば減少してくる。この態様における減損した資産の例は、次のとおりであ
- 17 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
る。
(ⅰ) より進歩した技術を備えた新型の機器がより正確な診断結果を提供するために、ほと
んど使用されなくなった医療用診断機器の場合(これは上記の兆候(a)にも該当しよ
う。)
(ⅱ) 技術的進歩のためもはや外部の納入業者からサポートされていないソフトウェアで、
主体もそのソフトウェアを維持する職員を有していない場合、及び
(ⅲ) 技術的進歩の結果、陳腐化してしまったコンピュータのハードウェアの場合
法的又は政府の政策環境
資産のサービス提供能力は、法律又は規則の変更により減少することもある。この兆候によ
り識別される減損の例には、次のものを含む。
(ⅳ) 新たな排出規制基準を満たさない自動車、又は新たな騒音規制基準を満たさない航空
機
(ⅴ) 建物材質又は非常口が新たな安全規制に適合しないため、もはや教育目的に使用でき
ない学校
(ⅵ) 新たな環境規制を満たさないため使用できない飲料水設備
内部の情報源
(c) 資産の物的損傷の証拠の存在
物的損傷が原因で、当該資産が以前には提供することができたサービス水準を提供すること
ができなくなる結果に陥ることがある。このような場合の減損した資産の例には、次のもの
を含む。
(ⅰ) 火災、洪水その他の原因で損傷した建物
(ⅱ) 構造上の欠陥の発見で閉鎖された建物
(ⅲ) 高架道路のたわみのある部分が、当初予定された耐用年数30年でなく15年で取り替え
る必要を示しているもの
(ⅳ) 構造査定の結果、放水路を狭められたダム
(ⅴ) 吸水口の閉塞が原因で性能が低下している水処理施設で、その障害の除去が経済的に
見合わないもの
(ⅵ) 構造上の欠陥の発見により重量規制されている橋
- 18 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
(ⅶ) 衝突により損傷している駆逐艦、及び
(ⅷ) 損傷した機器で、もはや修理できないないもの又は修理が経済的に見合わないもの
(d) 資産が使用されており又は使用されると予測される範囲に関して、主体にとって悪影響の
ある著しい長期的変化
資産がまだ同程度のサービス提供能力を有しているが、長期的変化が、その資産が使用され
る範囲に悪影響を及ぼす。このような資産が減損され得る状況の例には、次のものを含む。
(ⅰ) 資産が、サービスのために当初投入された時点と同じ程度で使用されていないか、又
は予想される耐用年数が当初見積もられた年数より短い場合には、当該資産は減損し
ている可能性がある。この兆候により潜在的に減損していると識別される資産の例と
しては、サーバー若しくはPC本体で稼動させるために多くのアプリケーションを転
換又は開発したために利用度の低くなっているメインフレーム・コンピュータがある。
資産のサービス能力に対する需要の著しい長期的低下は、それ自体で、当該資産が使
用される範囲に関して著しい長期的変化になると解釈される。
(ⅱ) 資産が、当初投入されたのと同様の用途では使用されていない場合、その資産は減損
している可能性がある。このような兆候から認識される減損した資産の例としては、
教育目的に使用されず、倉庫として使われている学校設備がある。
(e) 完成するか又は使用可能の状態になる前における資産工事の中止の決定
完成していない資産は、意図するサービスを提供することはできない。この態様における減
損した資産の例には、次のものを含む。
(ⅰ) 考古学上の発見又は絶滅危惧種の営巣地域などの環境上の条件によって工事が中止さ
れた場合、又は
(ⅱ) 景気後退により工事が中止された場合
工事の中止に至る状況についても検討が必要である。工事が遅れている、つまり、将来の特
定の時期まで延期されたのであれば、当該プロジェクトは、なお建設中として扱われ中止さ
れたとは考えない。
(f) 資産のサービス成果が予想していたより著しく悪化し又は悪化するであろうということを
示す証拠が、内部報告から入手できること
内部報告は、資産が予想されていたような成果を示していない、又はその成果が時とともに
悪化しているということを示すことがある。例えば、地方診療所の事業に関する保健部門の
内部報告は、当該診療所で使用されているX線機器は、その機器を維持する費用が当初予算
を大幅に超過しているために減損していることを示すことができる。
- 19 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
付録B
減損損失の測定−例示
本付録は、本基準書の規定の適用について、その意義を明確に説明するものであり、基準書の一部
を構成するものではない。これらの例示で想定した事実は、説明のためのみであり、基準書の要求
事項を修正したり制限する意図はなく、また、説明された状況又は方法について、国際公会計基準
審議会の承認を示すものでもない。本基準書の規定の適用には、ここに説明されたもの以外の事実
及び状況についての評価が必要になろう。
注:以下の例示において、減損がテストされた資産の売却費用控除後公正価値は、その使用価値よ
り低いか又は決定できないものであると想定する。したがって、当該資産の回収可能サービス価額
はその使用価値と等価になる。以下の例示においては定額法による減価償却が採用されている。
- 20 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
例示1:減価償却後再調達原価アプローチ
技術的環境において主体にとって悪影響のある著しい長期的変化−利用度の低いメインフレー
ム・コンピュータ
1999年に、Kermann市は10百万貨幣単位で新たなメインフレーム・コンピュータを購入した。Kermann
市は、当該コンピュータの耐用年数は7年で、平均して中央演算処理装置(CPU)の80パーセント
は、多様な部門によって使用されるであろうと見積もった。20パーセントの余剰CPU時間は、ピー
ク期の期限に対応する予定業務をこなすために必要と予想されていた。取得後の数か月の内に、CPU
の使用は80パーセントに達したが、2003年には、各部門の多くのアプリケーションが、デスクトッ
プ・コンピュータやサーバーを稼動するために転換されたために20パーセントに低下した。残って
いるアプリケーションを使用してメインフレーム・コンピュータの残存サービス提供能力を提供で
きるコンピュータは、市場では500,000貨幣単位で調達できる。
減損の評価
減損の兆候は、アプリケーションがメインフレームから他のコンピュータ・システムへ転換するこ
とになり、それによりメインフレームの利用度が減少したという技術的環境の著しい長期的変化で
ある(あるいは、メインフレームの使用の範囲の著しい減少が減損を示しているとも主張できる。)
。
減損損失は減価償却後再調達原価アプローチを使用して、次のように決定する。
a
b
c
d
1999 年取得原価
2003 年減価償却累計額(a×4÷7)
2003 年帳簿価額
再調達原価
減価償却累計額(c×4÷7)
回収可能サービス価額
10,000,000
5,714,286
4,285,714
500,000
285,714
214,286
減損損失(b−d)
4,071,428
- 21 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
例示2:減価償却後再調達原価アプローチ
非資金生成資産が供給するサービスに対する需要の消滅あるいはそれに近い状態−利用度の低
いメインフレーム・ソフトウェア・アプリケーション
1999年に、Kermann市は市の新しいメインフレーム・コンピュータ用のソフトウェアのライセンス
を350,000貨幣単位購入した。市は当ソフトウェアの耐用年数は7年で、その間に当ソフトウェア
のサービスの可能性や経済的便益を定額に享受すると予想した。2003年までにアプリケーションの
使用は市が当初予想した需要の15パーセントまで落ち込んだ。減損したソフトウェア・アプリケー
ションの残存するサービス提供能力に置き換えるソフトウェア・アプリケーションのライセンスは
70,000貨幣単位である。
減損の評価
減損の兆候は、メインフレーム・コンピュータの能力の喪失によってもたらされた技術の変化であ
る。
a
b
c
d
1999 年取得原価
2003 年減価償却累積額(a×4÷7)
2003 年帳簿価格
再調達原価
減価償却累積額(a×4÷7)
回収可能サービス価額
350,000
200,000
150,000
70,000
40,000
30,000
減損損失(b−d)
120,000
- 22 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
例示3:減価償却後再調達原価アプローチ
主体にとって悪影響のある資産の使用方法の著しい長期的変化−倉庫として利用される学校
1997年に、Lunden学校区は、10百万貨幣単位で小学校を建設した。見積もられた学校の耐用年数は
50年であった。2003年に、その地区の主要な雇用主の破産による人口の流出により、当該区の在籍
者の予期せぬ減少のため閉鎖された。学校は、貯蔵倉庫として使用することに転換された。そして、
Lunden学校区は、在籍者が将来増加して建物が学校の用途として再開されるようになる証拠は持っ
ていない。学校と同じ規模の倉庫の現時点の再調達価額は、4.2百万貨幣単位である。
減損の評価
建物が使用される目的が、生徒を教育する場所から倉庫施設へと著しく変化しており、このことが
近い将来に変わることは予想されないので減損が示されている。減価償却後再調達原価アプローチ
を使用した減損損失は、次のように決定される。
a
b
c
d
1997 年取得原価
2003 年減価償却累計額(a×6÷50)
2003 年帳簿価額
10,000,000
1,200,000
8,800,000
再調達原価
減価償却累計額(c×6÷50)
回収可能サービス価額
4,200,000
504,000
3,696,000
減損損失(b−d)
5,104,000
- 23 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
例示4:減価償却後再調達原価アプローチ
主体にとって悪影響のある資産の使用方法の著しい長期的変化−在籍者の減少による学校の一
部閉鎖
1983年に、Lunden学校区は、2.5百万貨幣単位で小学校を建設した。主体は、学校は、40年間は使
用されるであろうと見積もっていた。2003年において、その地区の主要な雇用主の破産による人口
の流出により、当該区の在籍者数は1,000人から200人に減少した。経営者は、3階建ての校舎の上
層の2つの階を閉鎖する決定を行った。Lunden学校区には、将来在籍者数が増加し、閉鎖した上層
階を再開するという見通しはない。1階建て校舎の現時点の再調達価額は、1.3百万貨幣単位と見
積もられる。
減損の評価
生徒数が1,000人から200人に減少した結果、学校の使用の範囲が3階から1階に変更されているの
で、減損が示されている。使用の範囲の減少は著しく、また、近い将来おいても在籍者数は、減少
したレベルにとどまることが予測される。減価償却後再調達原価アプローチを使用した減損損失は、
次のように決定される。
a
b
c
d
1983 年取得原価
2003 年減価償却累計額(a×20÷40)
2003 年帳簿価額
2,500,000
1,250,000
1,250,000
再調達原価
減価償却累計額(c×20÷40)
回収可能サービス価額
1,300,000
650,000
650,000
減損損失(b−d)
600,000
- 24 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
例示5:回復原価アプローチ
物的損傷−交通事故によるスクールバスの損傷
1998年に、北地区小学校は、ある近隣集落からの生徒が無料で通学できるように200,000貨幣単位
でバスを購入した。学校は、当該バスの耐用年数を10年と見積もった。2003年に、バスは使用可能
な状態に回復するには40,000貨幣単位を要する交通事故を被った。回復は、資産の耐用年数には影
響を与えない。2003年において、同様のサービスを提供する新しいバスの取得原価は、250,000貨
幣単位である。
減損の評価
交通事故により物的損傷を受けているので減損は示されている。回復原価アプローチを使用した減
損損失は、次のように決定される。
a
b
c
d
e
1998 年取得原価
2003 年減価償却累計額(a×5÷10)
2003 年帳簿価額
200,000
100,000
100,000
再調達原価
減価償却累計額(c×5÷10)
減価償却後の再調達原価(損傷なしの状態)
控除:回復原価
回収可能サービス価額
250,000
125,000
125,000
40,000
85,000
減損損失(b−e)
15,000
- 25 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
例示6:回復原価アプローチ
物的損傷−火災により損傷した建物
1984年に、Moorland市は50百万貨幣単位で事務所用建物を建設した。当該建物は40年にわたり使用
できるものと予想されていた。19年間の使用後の2003年において、火災が深刻な構造上の問題を生
じさせた。安全上の理由から当該事務所用建物は閉鎖され、当該事務所用建物を使用可能な状態に
戻すために、35.5百万貨幣単位の構造修復工事が行われることになっている。すべての復元費用は
資産計上されるものであると考えられる。新規の事務所用建物の再調達原価は、100百万貨幣単位
である。
減損の評価
事務所用建物が施設における火災により物理的な損傷を被っているので減損は示されている。回復
原価アプローチを使用した減損損失は、次のように決定される。
a
b
c
d
e
1984 年取得原価
2003 年減価償却累計額(a×19÷40)
2003 年帳簿価額
再調達原価(新規建物の)
減価償却累計額(c×19÷40)
減価償却後の再調達原価(損傷なしの状態)
控除:回復原価
回収可能サービス価額
減損損失(b−e)
50,000,000
23,750,000
26,250,000
100,000,000
47,500,000
52,500,000
35,500,000
17,000,000
9,250,000
- 26 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
例示7:サービス構成単位アプローチ
主体にとって悪影響のある資産の使用範囲の著しい長期的変化−近い将来まで部分的に使用さ
れない高層建物
1988年に、Ornong市議会は議会で使用するため、80百万貨幣単位でOrnong市のダウンタウンに20
階建ての事務所用建物を建設した。当該建物は、40年の耐用年数を持つものと予想されていた。2003
年に「連邦安全規制」は、一定の近い将来まで、高層建物の上層の4階部分は空室にすることを要
求した。規制発効後の2003年における当該建物の売却費用控除後公正価値は45百万貨幣単位である。
同様の20階建て建物の現時点の再調達価額は、85百万貨幣単位である。
減損の評価
新しい「連邦安全規制」の結果、事務所用建物の使用の範囲が20階から16階に変更されたため減損
が示されている。使用範囲の減少は著しいもので、かつ、近い将来まで建物の占有部分は減少した
レベル(16階)のままになると予想される。サービス構成単位アプローチを使用した減損損失は、
次のように決定される。
a
1988 年取得原価
2003 年減価償却累計額(a×15÷40)
2003 年帳簿価額
80,000,000
30,000,000
50,000,000
d
再調達原価(20 階建て建物)
減価償却累計額(c×15÷40)
残存サービス構成単位調整前の減価償却後の再調達原価
85,000,000
31,875,000
53,125,000
e
規制発効後の当該建物の使用価値(d×16÷20)
42,500,000
f
規制発効後の建物の売却費用控除後公正価値
45,000,000
g
回収可能サービス価額(eとfの高い金額)
45,000,000
b
c
減損損失(b−g)
5,000,000
- 27 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
例示8:サービス構成単位アプローチ
内部報告からの証拠−印刷機稼動の高い費用
1998年に、X地区教育部門は、40百万貨幣単位で新しい印刷機を購入した。当該部門は、印刷機の
耐用年数は小学生による使用で10年以上にわたり40百万冊の印刷ができるであろうと見積もって
いた。2003年に、印刷機の自動機能が予想されていたように稼動せず、当該資産の残存耐用年数の
5年にわたって印刷機の年間生産レベルは25パーセント減少することが報告された。2003年におい
て、新規の印刷機の再調達原価は45百万貨幣単位である。
減損の評価
印刷機のサービス性能が予想されていたより低いという内部報告からの証拠により減損が示され
ている。状況は、当該資産のサービス提供能力が著しく低下しており、それが長期的な性格のもの
であることを示唆している。サービス構成単位アプローチを使用した減損損失は、次のように決定
される。
a
1998 年取得原価
減価償却累計額(a×5÷10)
2003 年帳簿価額
40,000,000
20,000,000
20,000,000
d
再調達原価
減価償却累計額(c×5÷10)
残存サービス構成単位調整前の減価償却後の再調達原価
45,000,000
22,500,000
22,500,000
e
回収可能サービス価額(d×75%)
16,875,000
b
c
減損損失(b−e)
3,125,000
- 28 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
付録C
結論の根拠
本付録は、国際公会計基準審議会が、非資金生成資産の減損の会計処理に関係する特定の解釈につ
いて、それを支持する又は認めない理由を説明する。また、本基準書の要件が国際会計基準第36
号の要件と乖離する状況とその理由について説明する。この付録は基準の一部を構成するものでは
ない。
序
文
C1. 発生主義の国際公会計基準は、公的部門に適用できる範囲で、国際会計基準審議会が発行す
る国際財務報告基準に基づく。本基準の要件は、この方針と整合するよう作成されている。
国際会計基準第36号「資産の減損」では、資産の減損の兆候が認められる場合に、主体が資
産の回収可能価額を決定することを要求している。資産の回収可能価額は、使用価値か売却
費用控除後公正価値のどちらか高い方と定義されている。本基準も同様の定義を含んでいる。
C2.
本基準は非資金生成資産に適用され、国際会計基準第36号は資金生成資産と資金生成単位に
適用される。これにより、この2つの基準の間にあるいくつかの違いが生じることになる。
主な相違点は、次のとおりである。
(a)
本基準に則った非資金生成資産の使用価値の測定方法は、国際会計基準第36号に則っ
た資金生成資産の測定方法とは異なるものである。
(b)
本基準は、再評価されている有形固定資産については減損テストを要求しない。
(c)
本基準は、減損の最低限の兆候として「時間の経過や通常の使用による予想よりはる
かに大きな市場価値の減少」を含まない。この兆候は減損が生じている可能性のある
付加的な兆候に含まれる。
国際会計基準第36号の要件から乖離する国際公会計基準委員会の理由は、以下で説明される。
C3.
2000年に発行された「『資産の減損』に関する意見募集草案(ITC)」は、公的部門の主体の資
産の減損の会計処理に適切な範囲で国際会計基準第36号を適用するというアプローチを提案
している。公開草案第23号「資産の減損」は、ITCに対する意見を考慮の上作成され、2003
年に公表された。本基準は、公開草案第23号に対する意見を考慮の上作成されている。
資金生成資産
C4.
国際会計基準第36号は、主体が使用価値を資産又は資金生成単位の継続的使用とその耐用年
数の終了時の処分によって生じると予測される見積将来キャッシュ・フローの現在価値とし
て決定することを要求している。資金生成資産のサービス提供能力は、それらの資産による
- 29 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
将来におけるキャッシュ・フローの生成能力を反映する。国際会計基準第36号のこの要件は、
公的部門の主体により保有される資金生成資産に適用可能である。本基準は、公的部門にお
ける資金生成資産の減損の会計処理に国際会計基準第36号を適用することを求めている。
非資金生成資産
C5.
非資産生成資産に適用される使用価値概念の基礎となる原則を考慮するに当たり、国際公会
計基準審議会は、非資金生成資産の使用価値は、当該資産等の残存サービス提供能力の現在
価値を参照して測定することに同意している。これは、国際会計基準第36号で採用されたア
プローチと同じである。
使用価値の決定
C6.
非資金生成資産の使用価値(残存サービス提供能力の現在価値)の決定には多くの方法があ
ろう。国際会計基準第36号と同じである1つのアプローチは、主体がそのサービスその他の
生産物を市場で売却したと仮定した場合に生ずるであろうキャッシュ・インフローの見積り
と割引を必要とするものである。しかしながら、国際公会計基準審議会は、このアプローチ
は、サービス又はその他の生産物を評価する適正な価格の決定と適正な割引率の見積りに困
難性を伴うため、実務上は使用できないであろうという見解を持っている。
C7.
他のアプローチは、使用価値を間接的に決定するものである。この点に関して、国際公会計
基準審議会は、市場価値アプローチ、減価償却後の再調達原価を測定するアプローチを検討
しており、回復原価やサービス構成単位についても考慮した。
市場価値アプローチ
C8.
この方法によると、資産の活発な市場が存在する場合には、非資金生成資産の使用価値は当
該資産の観測可能な市場価値で測定される。当該資産の活発な市場が存在しない場合には、
主体は、市場参加者が実勢において支払うであろう資産の最大限の活用に配慮を想定して、
当該資産が取引の知識がある自発的な当事者の間で、独立第三者間取引条件により資産が交
換されるであろう利用可能な価格に関する最善の証拠を使用する。国際公会計基準審議会は、
使用価値の代用としての観測可能な市場価値は、資産の売却費用控除後公正価値(回収可能
サービス価額の見積りのもう一方の価値基準)と処分費用が異なるだけであるため不必要で
あると指摘する。したがって、市場価値は、売却費用控除後公正価値という回収可能なサー
ビス価額の基準によって効果的に捉えられる。
減価償却後再調達原価アプローチ
C9.
このアプローチによると、資産の使用価値は、通常の事業の過程で得られる当該資産が持つ
総サービス提供能力から既に消費されたサービス提供能力を控除した最低の原価として算定
される。このアプローチは、主体は資産の残存サービス提供能力が失われた場合には、それ
を再調達すると想定する。資産は、再生産(特殊な資産のように)か、又は、その総サービ
ス提供能力の再調達のいずれかによって再調達される。したがって、使用価値は、資産の再
- 30 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
生産又は再調達原価のどちらか低い原価から、当該資産の既に消費された又は消滅したサー
ビス提供能力を反映するために、そのような原価をベースにした減価償却累計額を控除した
金額として測定される。
回復原価アプローチ
C10. このアプローチは通常、減損が損傷から生じている場合に用いられる。このアプローチによ
ると、資産の使用価値は、減損前の資産の減価償却後再調達原価又は再生産原価から、当該
資産の見積もられる回復原価を差し引くことによって算定される。
サービス構成単位アプローチ
C11. このアプローチは、資産の使用価値を、減損によって減少したサービス構成単位に見合うよ
うに、減損前の資産の減価償却後再調達原価又は再生産原価を減額することにより決定され
る。
採用されたアプローチ
C12. 国際公会計基準審議会は、非資金生成資産の使用価値は、上述の減価償却後再調達原価、回
復原価又はサービス構成単位アプローチのうち適切なものを使用して測定すべきであるとい
う見解に同意した。
その他の資産
C13. 国際会計基準第36号は、無形資産の減損テストや、無形資産に関連した減損損失の認識、測
定に関する特定の要件を含む。このような要件は、国際会計基準第38号「無形資産」の要件
を補完するものである。これまでのところ、国際公会計基準審議会は無形資産に関する国際
公会計基準を策定しておらず、国際会計基準第36号の減損の要件を公的部門の非資金生成無
形資産への適用可能性について考慮したことはない。本基準書は、その範囲から非資金生成
無形資産を除外していない。そのため、本基準書はこのような資産に適用される。免許を発
行する能力を反映するような公的部門の無形資産は、資金生成部門でしばしば生じる。非資
金生成部門で生じる可能性がある無形資産は、本基準書の要件によると、減損テストをする
必要がある。
資産のグループ及び全社資産
C14. 国際会計基準第36号によると、個別資産の回収可能価額の算定が不可能な場合には、当該資
産の資金生成単位(CGU)の回収可能価額を算定するとしている。資金生成単位とは、継続的
使用からキャッシュ・インフローを生成させるものとして識別される資産グループの最小単
位で、 他の資産又は資産グループからのキャッシュ・インフローとは独立したものである。
国際公会計基準審議会は、非資金生成部門のサービス生成単位の概念を検討した。本基準書
の要求事項が個別資産に適用されるため、国際会計基準第36号の資金生成単位と相似した概
念の採用については、個別資産のサービス提供能力を識別できることから不必要であると指
- 31 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
摘した。さらに、それを採用することは、非資金生成資産の減損の会計処理を不当に複雑化
することにつながるであろう。
C15. 国際会計基準第36号によると、2つ以上の資金生成単位の将来キャッシュ・フローに貢献す
るのれんを除く資産は、
「全社資産」とみなされる。資金生成部門では、全社資産は独立した
キャッシュ・フローを生成しないので、全社資産の減損は、当該全社資産が属する資金生成
単位の減損の一部として取り扱われる。国際公会計基準審議会は、非資金生成部門において、
サービス生成単位という概念は、上記のC14項で述べたように正当化されないと認識した。さ
らに、国際公会計基準審議会は、こうした資産は多くの場合、サービス提供機能の不可分の
部分であり、その減損は、主体のその他の非資金生成資産に対するものと同様に処理すれば
よいと認識した。
有形固定資産
C16. 本基準書は、国際公会計基準第17号「有形固定資産」の認められる代替処理により帳簿価額
としている非資金生成資産に対しては、減損テストの適用を要求していない。国際公会計基
準審議会は、国際公会計基準第17号の認められる代替処理の下では、資産はそれらが報告日
における公正価値と大きく違わない金額で帳簿価額とされていることを保証するに足る十分
な定期性をもって再評価されており、減損は再評価において取り込まれるとの見解を持って
いる。そのため、資産の帳簿価額と売却費用控除後公正価値との間に生じる差は処分費用で
ある。国際公会計基準審議会は、ほとんどの場合、重要な違いはなく、現実には、資産の回
収可能サービス価額を測定し、非資金生成資産の処分費用の減損を認識する必要はないとの
見解を持っている。
C17. 本基準書と対照的に、国際会計基準第36号は、主体に再評価された有形固定資産の減損テス
トを要求している。この違いの論理的根拠は、下記C18項及びC19項に規定される要素を参照
することで説明できる。
C18. まず、本基準書の下での回収可能サービス価額の決定方法と国際会計基準第36号の下での回
収可能価額の決定方法は異なる方法である。本基準書では、「回収可能サービス価額」とは、
「非資金生成資産の売却費用控除後公正価値と使用価値のどちらか高い方」と定義される。
本基準書の下では、主体は資産の残存するサービス提供能力を代替するに要する現在原価を
決定することによって資産の使用価値を決定する。資産の残存するサービス提供能力を代替
するに要する現在原価は、減価償却後再調達価額アプローチや、回復原価アプローチ及びサ
ービス構成単位アプローチと表現されるアプローチを用いて決定される。このようなアプロ
ーチは、国際公会計基準第17号の下、公正価値を測定するのにも採用される。したがって、
使用価値は公正価値の測定方法の1つである。
「回収可能価額」は、国際会計基準第36号で「資
産の売却費用控除後公正価値と使用価値のどちらか高い方」と定義される。国際会計基準第
36号における使用価値は、資産の継続的使用と最終的な処分から生じると見込まれるキャッ
シュ・フローの現在価値を用いて決定される。国際会計基準第36号では、資産の使用価値は
公正価値と異なる場合があることを明記している。
C19. 第二に、非資金生成資産と資金生成資産を組み合わせ、資金生成単位を形成するとする国際
- 32 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
会計基準第36号の要求事項は、本基準書には取り入れていない。国際会計基準第36号の下で
は、資産がキャッシュ・インフローを生まない場合、他の資産と組み合わされて資金生成単
位を構成し、そこで使用価値が測定される。資金生成単位を構成する資産の公正価値の合計
は、資金生成単位の使用価値と異なることがある。
C20. 本基準書は、資金生成資産の減損は、国際会計基準第36号に従って処理するように義務付け
ている。国際会計基準第36号は、公正価値を帳簿価額とする有形固定資産に適用される。し
たがって、本基準書は、公正価値を帳簿価額とする資金生成有形固定資産の減損テストを免
除するものではない。
政府系企業により保有される非資金生成資産の減損
C21. 本基準書は、政府系企業によって保有されるすべての資産の減損は、国際会計基準第36号に
よって会計処理されることを義務付けている。政府系企業は営利主体であり、それらの主体
により用いられている資産は基本的に資金生成資産である。
「国際財務報告基準の趣意書」で
は、国際会計基準審議会の基準は営利主体に適用されることを明確にしている。政府系企業
は営利主体であるため、国際財務報告基準及び国際会計基準への準拠が求められる。各国際
公会計基準は、国際財務報告基準が政府系企業に適用されることを明示している。したがっ
て、政府系企業の非資金生成資産は、国際会計基準第36号に従って減損テストがなされる資
金生成単位を形成するように資金生成資産と併せて適正にグルーピングされることが求めら
れる。
減損の兆候−市場価値の変動
C22. 国際会計基準第36号は、減損の最低限の兆候として「時間の経過や通常の使用により資産の
市場価値が予想されたより著しく下がる」という事象を含む。国際公会計基準審議会は、こ
れを追加的な減損の兆候として盛り込むが、減損の最低限の兆候としてではない。国際公会
計基準審議会は、市場価値のこのような変動は必ずしも非資金生成資産が減損していること
を示すものではないという見解を持つ。これは、非資金生成資産が商業的利益を生む以外の
理由で保持され、市場価値の変動は、資産の継続的な使用によって回収するサービス量の変
動を反映しないためである。
減損の戻入額
C23. 第56項(a)は「当該資産により提供されるサービスの需要又は必要性の復活」を最低限の減損
の回復の兆候として含んでいる。一方、第58項(b)が可能性のある減損の回復の追加的な兆候
として「当該資産により提供されるサービスの需要又は必要性の著しい長期的な増加」を含
む。これら2つの兆候の言い回しは類似しているが、第56項(a)では需要が落ち込んだ結果、
減損損失を認識した需要の回復について述べていることから、両者は区別される。第58項(b)
は新たな需要に関して述べており、資産に関して認識された減損損失の理由とは無関係であ
る。
C24
第58項(a)は、減損の戻入れの追加的な兆候として「資産の市場価値の著しい増加」を含む。
- 33 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
これは、市場価格の下落は「時間の経過や通常の使用の結果見込まれるものよりはるかに大
きい」ことを求める第23項(a)の減損の兆候と対照ではない。この違いは、市場価値の値上が
りは予期されたりされなかったりすることを意味する。
C25.
第23項(c)は、減損の最低限の兆候として「資産の物的損傷の証拠が入手できること」を含
む。第56項は、減損のこの兆候と類似した減損の戻入れの兆候を含まない。国際公会計基準
審議会は、国際公会計基準第17号が、将来の経済的便益や資産の全耐用年数にわたるサービ
ス提供能力が、直近に評価された現存する資産の標準的な性能を超えて、主体に流入する可
能性があり得る場合、有形固定資産の帳簿価額に追加支出を加算することを主体に要求して
いるため、
「資産の修理」を戻入れの兆候に含まない。この要件は、国際公会計基準第16号「投
資不動産」に基づいた原価モデルを用いて測定される投資不動産にも適用される。国際公会
計基準審議会は、このような要件は、減損の兆候の物的損傷と類似する減損の戻入れの兆候
の必要性を無効にするとの見解を持つ。また、国際公会計基準審議会は、損害の回復や修理
は本国際公会計基準の第61項で規定されているように、減損後の資産の回収可能サービス価
額の見積りの変更とはならないとしている。
- 34 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
国際会計基準第 36 号(2004 年)との比較
国際公会計基準第21号「非資金生成資産の減損」は、公的部門における非資金生成資産の減損
を取り扱っている。国際公会計基準第21号と国際会計基準第36号(2004年)の主な違いは、次
のとおりである。
・
国際公会計基準第21号は、公的部門の主体の非資金生成資産の減損を取り扱っているのに
対し、国際会計基準第36号は、営利主体の資金生成資産の減損を取り扱っている。しかし、
国際公会計基準第21号は、公的部門の主体の資金生成資産は、国際会計基準第36号に従っ
て会計処理することを要求している。
・
国際公会計基準第21号は、報告日において国際公会計基準第17号「有形固定資産」の認め
られる代替処理に従い、公正価値を帳簿価額とした非資金生成資産には適用しない。国際
会計基準第36号は、報告日において公正価値を帳簿価額とする資金生成有形固定資産を除
外していない。
・
国際公会計基準第21号による非資金生成資産の使用価値の測定方法は、国際会計基準第36
号により資金生成資産に適用されるものと異なる。国際公会計基準第21号は、非資金生成
資産の使用価値を、一連のアプローチを使用することにより、当該資産の残存サービス提
供能力の現在価値として測定する。国際会計基準第36号は、資金生成資産の使用価値を当
該資産から生ずる将来キャッシュ・フローの現在価値として測定する。
・
国際公会計基準第21号は、資産の市場価値の変動をゴシック体で表示する減損の兆候とし
ては含めていない。重大で予想外の市場価値の下落は、国際会計基準第36号において、ゴ
シック体で減損の兆候の最低限の項目の一部分として表示されているが、国際公会計基準
第21号では、説明の部分で言及している。
・
国際公会計基準第21号は、完成前における資産工事の中止の決定をゴシック体で表示する
減損の兆候として、また、資産工事の再開を減損損失の戻入れの兆候として含めている。
国際会計基準第36号にはこれに対応するものは含まれていない。
・
国際会計基準第36号の範囲では、国際公会計基準第21号の範囲から除外されていないある
種の資産を除外している。これらの除外規定は、他の国際財務報告基準の下で要求される
特定の減損の対象となっている資産に関するものである。これらは国際公会計基準に同様
のものがないため、国際公会計基準第21号からは除外されていない。これらの除外には、
農業活動に関連した生物資産、繰延税金資産、繰延取得原価及び国際財務報告基準第4号
「保険契約」の範囲である保険契約に基づいた保険会社の契約上の権利から発生した無形
資産、国際財務報告基準第5号「売却又は非継続的使用目的の所有非流動資産」に従い、
売却目的所有として分類された非流動資産(又は除却グループ)を含む。
・
国際公会計基準第21号は、個別資産の減損を取り扱っている。国際公会計基準第21号には、
国際会計基準第36号に定義されているような資金生成単位に対する同等の取扱いはない。
・
国際公会計基準第21号は、「全社資産」を他の非資金生成資産と同様に取り扱っているが、
国際会計基準第36号は「全社資産」を関連する資金生成資産として取り扱っている。
・
国際公会計基準第21号は、特定の事項では、国際会計基準第36号とは別の用語を使用して
いる。最も大きく異なる例は、国際公会計基準21号の「収益(revenue)」、
「回収可能サー
ビス価額」、
「財務業績報告書」及び「財政状態報告書」である。国際会計基準第36号でこ
れらに対応する用語は、それぞれ「収益(income)
」、「回収可能価額」、
「損益計算書」及び
「貸借対照表」である。
- 35 IPSAS21「非資金生成資産の減損」
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