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タイトル - 三菱UFJ投信
May 30 2013 Vol. 2 グローバル・マーケット・ストラテジー・チーム シニアストラテジスト 石金 淳 アシスタントストラテジスト 梅田 奈穂 健全な財政基盤と堅調な 成長が共存するメキシコ 財 政は健全性を維持 メキシコでは過去の危機の教訓もあり、2006年に 財政収支の均衡を義務付ける財政責任法が施行され、例外 過 去の債務危機と通貨危機の教訓 メキシコでは、政府が1970年代の巨大油田発見 から公共投資支出を拡大させるなか、その後の原油価格の 下落等も加わり、財政赤字と対外債務が急激に拡大、1982 年に政府はついにモラトリアム(支払猶予)宣言を行い、デ フォルトに陥ります。その後、1994年には経常赤字が拡大する なか国内の政治情勢不安や米国の大幅利上げなどを契機 に資金が流出し、通貨危機(テキーラ・ショック)に至ります。 的事由を除いては、財政赤字を容認しない予算の編成が定 められています。2009年以降はリーマン・ショックを受けての 景気対策などから財政赤字は若干拡大しましたが、2012年 末の財政収支の対GDP(国内総生産、ここでは名目値)比 は▲2.6%、公的債務残高の対GDP比は34.2%と、比較的低 水準に留まっているといえます。これらの水準はユーロ加盟条 件のマーストリヒト基準をも満たすもので、今後も健全な財政 運営が維持されると考えます。 いずれの場合も、各国への波 不安材料としては、石油関連収入が政府歳入の約30%を 及を危惧したIMF(国際通貨基 金)や同国と密接な経済関係に 占めるなど石油産業への依存度が高く、原油の産出量や価 格に歳入が左右される可能性があるなか、幅広い減税措置 ある米国などが支援に乗り出し、 や脱税により税収が不安定といわれるなど構造的問題を抱え 危機は収拾に向かいました。しか ています。しかし、2012年に就任したペニャ大統領はエネル し、こうした危機の発生と収束へ 向けた支援のコンディショナリティ ギーや財政にかかる改革を掲げており、構造改革への期待 (条件設定)は、通貨暴落や緊縮 れますが、米国景気の緩やかな回復が予想されるなか、自 財政を伴い、当時のメキシコの 経済成長率を大きく押し下げるこ 動車産業などメキシコの製造業の活発化とともに今後は税収 が高まっています。また、「メキシコ経済は米国次第」ともいわ 増が期待できるとみています。 ととなりました。 財政収支と公的債務残高(対GDP比)の推移 コ ラム:海を渡ったMaruchan (%) (%) 8 40 「赤いきつね」などでお馴染みの東洋水産の人気 即席麺「マルちゃん」が、メキシコで「Maruchan」という名で 人気を集めている模様です。「Maruchan」という言葉は「簡 4 20 単にできる」「すぐできる」といった意味の動詞としても使われて 0 0 いるとのことで、現地での浸透具合がうかがえます。また、早々 に審議を打ち切った国会について現地新聞が「議会がマル ちゃんした」と記事にしたことや、サッカーワールドカップでのメ -4 キシコ代表の速攻を「マルちゃん作戦」と呼んでいたとの逸話 -8 もあるなど、日本から遠く離れたメキシコで「Maruchan」は手 軽な国民食として親しまれているようです。 -20 公的債務残高(右軸) 財政収支(左軸) -40 2007年 2008年 2009年 2010年 (出所)Datastreamのデータを基に三菱UFJ投信作成 2011年 2012年 資 本流入は順調、外貨準備高も増加、 外部ショックへの耐久性は高い 国際収支をみると、経常収支が赤字ではあるものの、資本 収支黒字が経常赤字を十分に補っています。経常収支につ 外貨準備高と輸入支払能力の推移 (億米ドル) 2,100 (月数) 8 輸入 支払能力(外 貨準備高/輸入額)(右 軸) 1,800 7 外貨 準備高(左軸 ) 1,500 6 内訳は貿易、サービス、所得収支が赤字の一方で、経常移 1,200 5 転収支が黒字となっています。これは、米国等への出稼ぎ労 900 4 働者からの送金によるもので、足下、米国雇用情勢の回復が 600 3 300 2 いては、経常赤字が対GDP比で1%程度の低水準にあり、 確認できていることから、今後もこうした送金が経常赤字の改 善に寄与する可能性があると考えます。 1 0 また、資本収支黒字の背景には、メキシコ国債購入増加等 による対内証券投資の拡大が挙げられます。これは市場の同 国財政状況に対する信頼の現れともいえ、2010年には代表 的な債券指標であるシティグループの世界国債インデックス 01/4 03/4 05/4 07/4 09/4 11/4 13/4 (出所)Bloombergのデータを基に三菱UFJ投信作成 月次データ、外貨準備高は月末値。 輸入支払能力は、各月の外貨準備高が輸入額の何倍かを算出し、何ヵ月分の支払能力が あるかを示しています。 (WGBI)の中南米唯一の採用国となりました。同じ中南米の 雄であるブラジルは海外からの債券投資に金融取引税を設 けていますが、メキシコではこうした規制はみられず海外から の投資に前向きなことがうかがえます。 対内証券投資の増加もあり、外貨準備高は順調に積み上 がっており、足下(2013年4月末時点)は2003年4月末の約3倍 の水準にあります。また、メキシコではIMFによるFCL (フレキシブル・クレジットライン、過去発動なし) 提 供 や米国との通貨スワップ協定締結など、セーフ ティーネットの構築が進んでおり、先述の低水準の財 政赤字や外貨準備高の積上げとともに、外部ショックに対 する耐久性を高めているといえます。 格 付けは投資適格級、健全な財政基 盤と底堅い成長が共存 こうしたことは、格付け会社も評価するところで、メキシコは 主要格付け会社から投資適格級を付与されています(2013 年5月30日時点)。直近、格上げを行った大手格付け会社 フィッチ・レーティングスは、財政政策にかかる柔軟性の向上 を格上げ要因の一つであるとしました(逆に財政の不安定化 は格下げ要因)。ペニャ大統領が掲げる財政などの構造改 革の進捗には不透明な部分もありますが、与野党が「メキシ コのための協約」を締結するなか、財政改革やそれらに伴う 更なる格上げへの期待が高まっているものと考えます。 以上、近年はユーロ圏債務問題を受けて財政への懸念が 国際収支の推移 世界的に高まっていますが、メキシコは底堅い成長(IMFの (億米ドル) 2013年成長率見通し:前年比+3.4%)が期待されるなか、過 去の債務危機や通貨危機を教訓に、健全な財政基盤や対 600 資本収支 経常収支 資本収支+経常収支 400 外ショックへの耐久性を備えた国であり、こうしたこともメキシ コの魅力の一つであると考えています。 200 メキシコの格付け(長期外貨建て) 0 -200 -400 2000年 2002年 2004年 2006年 2008年 2010年 2012年 会社 格付け 見通し フィッチ・レーティングス BBB+ 安定的 スタンダード・アンド・プアーズ (S&P) BBB ポジティブ ムーディーズ・インベスターズ・サービス Baa1 安定的 (出所)Datastreamのデータを基に三菱UFJ投信作成 (出所)Bloombergのデータを基に三菱UFJ投信作成 当資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資の最終決定は お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。当資料に示されたコメント等は、当資料作成日現在の見解であり、事前の 連絡なしに変更されることがあります。投資信託は株式、公社債等値動きのある証券に投資しますので、基準価額は変動しま す。したがって、金融機関の預金とは異なり元本が保証されているものではありません。投資信託は、預金保険の対象とはなり ません。金融商品取引業者以外でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象ではありません。本資料は当社が 信頼できると判断したデータにより作成しましたが、その正確性、完全性等について保証・約束するものではありません。