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ソーシャルビジネスの制度的検討について

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ソーシャルビジネスの制度的検討について
資料5
ソーシャルビジネスの制度的検討について
地域経済産業グループ
立地環境整備課
ソーシャルビジネスの現状
○ ソーシャルビジネス(SB)は、環境、医療・福祉、貧困問題など、通常では営利活動が
成立しにくい様々な社会的課題に対し、ボランティアではなく、工夫を凝らし、ビジネスの
形で解決を図っていく新しいモデルである。
○ 今後、持続可能な日本社会の実現に向け、行政・企業・市民等の新たなパートナーとして、
市場規模・雇用者数のさらなる拡大が期待されている。
SB事業者の現在の事業内容
SBの組織形態
0.0%
組合
株式会社
NPO法人
10.0%
20.0%
30.0%
地域活性化・まちづくり
その他
21%
21.4%
19.7%
産業振興
0%
20%
40%
60%
80%
100%
子育て支援
18.0%
障害者や高齢者、ホームレス等の自立支援
17.5%
観光
15.9%
13.5%
文化・芸術・芸能
SBの市場規模・雇用者数
事業者数
日本
英国
8,000
55,000
市場規模
2,400億円
5.7兆円
9.5%
他のCB・SB事業者の支援
国際交流・国際協力
雇用者数
3.2万人
77.5万人
(出典)経済産業省「ソーシャルビジネス研究会報告書」、 英国内閣府「社会的企業行動計画」 等
4.4%
スポーツ
2.7%
安全・安心(防災・防犯)
2.7%
交通
2.1%
16.3%
その他
無回答
70.0%
23.0%
環境(保護・保全)
個人事業主
60.0%
24.5%
教育・人材育成
11% 7% 14%
50.0%
60 7%
60.7%
保健・医療・福祉
47%
40.0%
合計(N=473)
0.8%
2
【参考
参考】ソーシャルビジネスが注目される社会的背景
ソーシャルビジネスが注目される社会的背景
○ 近年、企業や個人の「公益性」や「社会貢献」に対する意識に高まりが見られる。
SBは、こうした社会的背景の中で、象徴的にクローズアップされている新産業であると
いえる。
○ このため、SBを、「持続可能な日本社会の実現に向けた梃子」として位置づけながら、
企業や個人の連携・巻き込みを図りつつ、戦略的に振興していく視点が重要である。
「公益資本主義(※)について」
「国民の社会への貢献意識について」
※ 公益資本主義とは、会社は株主のものという考え方に対し「会社は社会
の公器である」という理念に基づき、「企業が市場で競争をしながら社会
への貢献を企業存続の大きな目的とする考え」(東京財団「公益資本主
義研究」より)で、財務省参与でデフタ・パートナーズグループの会長で
ある原丈人氏の提言する新しい資本主義の概念。
出所: 日本能率協会「第12回 新任役員の素顔に関する調査」報告
出所:内閣府「社会意識に関する世論調査」
3
ソーシャルビジネスの定義と制度的課題
○ 現在、SBは、「『社会性』『事業性』『革新性』の要件を満たすビジネス」として、組織形態
を問わず、緩やかな定義がなされている(下図参照)。
○ しかしながら、我が国には「社会性」と「事業性」の両立に適した法人格が必ずしも存在し
ない。このため、以下の2つの大きな制約がある。
− 外形でSBと判別・評価されにくいため、SBを展開する上で必要なリソースを獲得しにくい。
− SBそのものの社会的認知度が上がらず、新産業として成長しにくい。
○ SBのさらなる振興を図るためには、「社会性」と「事業性」を同時に満たしながら活動
できるような制度について検討し、ビジネスセクター等の幅広い参入も促すような
制度設計を行うことが重要である
制度設計を行うことが重要である。
高
ソーシャルビジネス
一般企業
社会性
社会志向型
企業
中間
組織
事業型NPO
低
慈善型NPO
低
高
領域が幅広い
事業性
※ SBに既存の法人格を当てはめた際の課題
① 営利法人型のソーシャルビジネスの課題
・社会性を認められにくく、SBとしての社会的信頼や
リソースを獲得しにくい。
② 非営利法人型のソーシャルビジネスの課題
・出資が認められず、活動資金を収集・運用しにくい。
・事業性が認められにくく、融資を受けにくい。
・中小企業支援策を受けられない。
4
【参考
参考】ソーシャルビジネスに関する他国の法制度
ソーシャルビジネスに関する他国の法制度
○ 先進諸国は、それぞれの経緯・背景で、SBが活動しやすい制度設計を行っている。
○ それらの成果や課題を参考にしつつ、我が国に合った制度設計を検討する必要がある。
英 国
イタリア
韓 国
米 国
法律名
・会社法
・会社法規則
・社会的協同組合法(第381号)
・社会的企業法(第155号)
・社会的企業育成法
内国歳入税法
(連邦税の優遇を受ける非営利セクター)
制定年
・会社法:2004年
・会社法規則:2005年
・社会的協同組合法(1991年)
・社会的企業法(2006年)
2007年
―
法人格創設
(政府による)認証
SB向けの法人格は法制上存在しない
法人格/認証 法人格創設
導入背景
・多様な社会的企業の活動展開と既
・社会的課題に対応した活動を行うアソシエーションに対 ・(特に社会的弱者に関し
存法人格であるチャリティ組織や有限
する事業基盤形成(社会的連帯協同組合)
て)雇用創出の必要性
保証会社の限界(収益活動が出来な
・組合活動の進展と地域レベルでの制度化進展
・社会的サービスの創出
い、社会貢献に係る外部説明力等)
非営利セクター向けの制度となっている。
優遇措置
無し
有り(社会的協同組合B型)(税制面)
有り(税制面)
有り(税制面)
主体名称
・コミュニティ利益会社(CIC)
社会的協同組合
社会的企業
社会的企業
非営利セクター
定義
現況
【社会的協同組合法第1条】
【内国歳入税法501条C項3号】
社会的協同組合は、人間の発達及び市民の社会参加と
3号は以下の基準に基づき内国歳入庁の審査
いう共同体全体の利益を追求する事を目的とし、以下を
が必要。同条項号に該当する団体は、公益性
【社会的企業育成法第1条】
通じてこれを行う。
が認められ、寄付金控除の対象となる特別な団
a)社会衛生サービス及び教育サービスの運営
脆弱階層に社会サービス又
体。
b)社会的弱者の労働参加を目的とする様々な活動(農業、は就労を提供し地域住民の
① 公益目的であること
生活の質を高めるなどの社
コミュニティに利益を提供する特定の 工業、商業あるいはサービス)の遂行
② 宗教、慈善、科学、文学、教育、国内・国際
会的目的を追求しながら、
目的を有した有限責任会社(limited
アマチュアスポーツ振興、児童・動物の虐待
liability company)
【社会的企業法第1条】
財貨及びサービスの生産販
防止等のうち、1つ以上を目的とすること
社会的企業の資格は一般の利益という目標の実現に向 売など営業活動を遂行する
③ 利益の分配を行わないこと
け、社会的効用のある財あるいはサービスを生産もしくは 企業として第7条によって認
④ 残余財産を社員・出資者に分配しないこと
交換することを目的に、組織化された経済活動を安定的 証を受けた者
⑤ 立法に影響を与えるような過度なロビー活
かつ主要な手段で行い、かつ2条、3条及び4条の要件を
動を行わないこと
満たす全ての民間組織が、民法第5巻で定められた機関
⑥ 政治活動に関与しないこと
を含み、これを得られるものとする。
・3053団体(2009年9月1日)
計7363団体(2005年)
・A型:4345団体 ・B型:2419団体
・A+B(複合)型:315団体
・コンソーシアム型:284団体
・200団体超(2009年)
96万団体超(2003年)
5
ソーシャルビジネスの制度設計に向けて留意すべき課題
○ 背景(今後の課題)を踏まえ制度的対応を検討に際しては、以下の課題解決を念頭に
置いておく必要がある。
制度検討に当たって留意すべき課題
① 社会性の定義及びSBの対象範囲
これまで一定の社会性が認められる営利法人と、一定の事業性が認められる非営利法人がSBとイメージされてきたが、
すべての営利法人も濃淡はあれ社会性をもった事業をしているという考え方もあり、どの部分で線を引くべきか。
② 担い手の把握。SB認証制度や新たな法人格へのニーズ
担い手がどの程度いるのか、また認証制度や新たな法人格へのニーズ調査の必要性。法人格等を得ることによるメリット
(望まれる優遇措置)の検討。
③ 担い手人材の不足
社会的課題の解決への強い思いとともに、マネジメントできる人材の附則。
④ 機運と世論形成
ビジネスを志向しないNPOの反発緩和やビジネスセクターの巻き込み。既存制度(NPO法、公益法人制度等)や
法人格からの移行をスムーズに行う必要性。
⑤ 既存制度や他の政策動向等との整理
既存の法制度(公益法人制度)や、類似の政策動向(認定NPOの要件緩和、協同組合の法制化など)との兼ね合いを
整理する必要性。
⑥ 諸外国制度の検証
諸外国の法制度の成果や課題を検証し、我が国にマッチした認証制度あるいは法人格を、支援措置と合わせて検討する
必要性。
6
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