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悪性リンパ腫治療の 最近の動向

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悪性リンパ腫治療の 最近の動向
富士フイルム株式会社
提供
第 49 回日本癌治療学会学術集会ランチョンセミナー41
本資材には国内未承認薬剤、効能・効果、用法・用例等が含まれております。記載されている医薬品のご使用にあたっては、必ず各薬剤の製品添付文書をご参照ください。
悪性リンパ腫治療の
最近の動向
演者
愛知県
がんセンター中央病院 血液・細胞療法部 部長
国立がん研究センター 副院長 血液腫瘍科・
造血幹細胞移植科 科長
木下 朝博 先生
飛内 賢正 先生
欧米人に比べ低いと考えられてきた日本人における低悪性度B細胞リン
パ腫の有病率であるが、近年、明らかにその患者数が増加している。第49回
日本癌治療学会学術集会ランチョンセミナー41において飛内賢正氏(国立
がん研究センター中央病院 副院長/血液腫瘍科・造血幹細胞移植科 科長)
は、
「悪性リンパ腫治療の最近の動向」
(座長:愛知県がんセンター中央病院
木下朝博氏)
と題し、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫およびマント
ル細胞リンパ腫の治療薬として2008年から臨床応用が開始された、
ラジオ
アイソトープ標識抗CD20抗体製剤「イットリウム
(90Y)
イブリツモマブ チ
(90Y)静注用」
ウキセタン
(遺伝子組換え)
:商品名ゼヴァリン イットリウム
を用いたラジオイムノセラピーを中心とした講演を行った。
奏 効 割 合 、完 全 奏 効 割 合を示 す 一 方
低悪性度B細胞リンパ腫における
抗CD20抗体療法の有効性と限界
で、両 群 間での抗 腫 瘍 効 果 及び 主 要
濾 胞 性リンパ 腫( F L )に 代 表され
されたR-CHOP-14のR-CHOP-21に対
(以下 90 Yイブリツモマブ)が2008年1月
に承認され、同年8月に発売となった。
評価項目としたPFSには差がなく、期待
リツキシマブ不応例にも
90
Yイブリツモマブは有効
を行わない対照群にラ
長期奏効例に関する検討も行われ、こ
ンダム化割り付けし、両
れはいずれの抗がん剤にも共通すること
群のPFSを比較する試
ではあるが、前治療レジメンの少ない例
験(FIT Study)14)が
でより奏効率が高いことが示された9)。他
行われた(図2)。その
方、高齢患者において毒性の発現増加
結果、観察期間中央値
や有効性の減弱はないことが確認されて
3.5年における90Yイブリ
10)
図1 ◎ ゼヴァリンによる長期奏効例(PFS>1y.)
とその予測因子
(米国における4つのゼヴァリン臨床試験の再解析結果)
る群とそれ以上の治療
11)
いる 。また、Witzigら は米国中心に
ツモマブ群のPFS中央
実施された4つの臨床試験を再解析し、
値は37ヶ月、対照群は
100
LTR例
(n=78)
全例
(n=161)
80
奏効率︵%︶
∼ラジオイムノセラピーを中心に
座長
固め療法として投与す
90
Yイブリツモマブ治療の
長期奏効因子はCR到達、
5cm未満、病期Ⅰ/Ⅱ期例
60
40
20
0
0
8
16
24
32
40
48
56
64
13.5ヶ月であったことか
予測因子
ら、9 0 Yイブリツモマブ
あったと報告している
(図1)。
による地固め療法が有
CR到達
Non-Bulky
(<5cm)
7.0
(3.4-14.5)
4.2
(2.2-8.6)
<0.001
<0.001
治療開始時病期:stage Ⅰ or Ⅱ
4.1
(1.3-13.0)
0.02
意にPFSを延長するこ
日本の第Ⅱ相試験でも
リツキシマブ既治療例における
有用性を確認
オッズ比(95%CI)
Witzig TE et al.: Cancer 2007;109:1804-10
とが示された(ハザード
れ、多職種によるチーム医療が必要な治
比:0.463、p<0.0001:図3)。しかしなが
90 Yイブリツモマブに関する日本国内の
ら、FIT Studyの被験者に占める初回治
療である。また、有効性を患者に享受して
第I相試験12)の結果から、第Ⅱ相試験での
療としてリツキシマブが投与された患者
もらうには、適切な患者選択が重要であ
る。なお、初回治療後の地固め療法にお
推奨用量は米国と同様の14.8MBq/kg
割合は14%に過ぎず、対照群に維持的な
に設定された。第Ⅱ相試験には全国から9
リツキシマブ投与が行われていないことか
ける90 Yイブリツモマブの有用性について
施設が参加、低悪性度B-NHLの再発・再
ら、実臨床における標準的な治療の現状
は、リツキシマブを含む寛解導入療法を
燃例において主要評価項目である全奏効
を反映していないとする向きもあるが、欧
受けた患者など、現状の実臨床に合致す
割合は83%、完全奏効割合は68%と期待
米では未治療の低悪性度B-NHLに対す
る患者群を対象とした前向き臨床試験で
R-CHOP-21群の6年PFSは41%であり、
米国におけるリツキシマブを含まない
いことから総じて発見が遅れ、約8割の
G-CSFを使用し用量強度を高めた初期
化学療法後に再発した低悪性度B-NHL
通りの有効性を示し、また安全性に関して
る初回治療後の地固め療法における90 Y
検証する必要がある。
患者が初診時に病期Ⅲ期以上の進行例
治療としてのR-CHOP-14群においても
患者を対象とした90Yイブリツモマブとリツ
は、主な有害事象は血液毒性であり、適
イブリツモマブの使用が承認されている。
文献
として診断されている。従前の平均生存
PFSの改善はなかったことから、未治療
キシマブとの比較試験 5)では、全奏効割
切に患者を選択することにより臨床的に管
以上、低悪性度B-NHLに対する治療
1)
2)
3)
4)
5)
6)
7)
8)
90
期間は10年弱とされていたが、B細胞に
例に対するR-CHOPに代わる別の治療あ
合は Yイブリツモマブ80%、リツキシマブ
理可能であることが示された。以上の結
特異的に発現している表面抗原である
るいは寛解導入後の維持療法について
56%(p=0.002)、完全奏効割合はそれぞ
果から、90Yイブリツモマブはリツキシマブに
マブによるRITを中心に概説した。 90Yイ
CD20を標的とした抗体薬リツキシマブの
検討が必要と結論づけられた。
れ34%、20%(p=0.04)
と90Yイブリツモマ
よる既治療例においても安全かつ高い有
ブリツモマブによるRITは極めて有効性
ブの抗腫瘍効果が有意に優れているこ
効性を発揮すると結論づけられた13)。
の高い治療であり、施行可能な施設も増
とが示された。また、Witzigら6)は、リツキ
米国では、未治療のFLに種々の化学
え、全国的な体制が整備されつつある。
シマブ不応例に90 Yイブリツモマブを投与
療法が施行されCRあるいはPRに到達し
他方、実施する際は、経済的な負担に関
し、74%の奏効率が得られたと報告、こ
た症例を対象に、90 Yイブリツモマブを地
する患者・家族への適切な説明が求めら
ンパ腫(MCL)
を対象とした第Ⅱ相試験
低悪性度B-NHLにおいて、R-CHOP
では、前者の奏効割合が61%、無増悪
療 法を凌 駕すると期 待される治 療 法の
れを受け米国FDAはその有用性が確認
生存期間(PFS)245日、後者ではそれぞ
一つが、ラジオアイソトープ(RI)
を標識
されたとして同剤を迅速承認した。なお、
れ46%、111日という成績が得られた。そ
した抗体薬を用いるラジオイムノセラピー
90
の後もリツキシマブと抗がん剤併用の臨
(RIT)の導入である。RITに関する検
血液毒性の発現が通常の化学療法剤よ
床 的 有 効 性を示すエビデンスが報 告さ
討は古くから行われており、候補核種に
りも遅く、投与後6∼7週時点に血小板数
はβおよびγ線を放出するヨード-131( 131I)
および好中球数が最低値となる7)点であ
期 低 悪 性 度 B - N H Lを対 象に、寛 解 導
と、β線のみ放出するイットリウム-90( 90Y)
るが、臨床的にはほとんどの患者で管理
入 療 法としての3 週のリツキシマブ併用
が挙げられ、90 Yはより飛程が長く、β線
可能である。また、懸念された二次性の
CHOP療法(R-CHOP-21)
と、G-CSFを
のみ放出するため、周 囲 への被ばくが
骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄
予防的に投与しR-CHOP療法を2週ご
問題とならず外来でも投与可能であると
性白血病(AML)
については、従来の化
とに行うR - C H O P - 1 4を比 較するランダ
考えられている。本邦においては、放射
学療法と比較して、90Yイブリツモマブによ
90
図2 ◎ FIT Study Schema
ム化第Ⅱ相試験(JCOG 0203) が行わ
線 管 理が比 較 的 容 易な Yを標 識した
る治療がそれらの発生率を増やすデータ
れた。その結 果、両 療 法ともに高い全
抗CD20抗体イブリツモマブ チウキセタン
は確認されていない8)。
Start of study
First-line therapy with
CVP, CHOP/-like,
fludarabine
combinations,
chlorambucil, or
rituximab combination
INDUCTION
Fisher RI, et al.; J Clin Oncol 2005; 23: 8447-8452
Hiddemann W, et al.; Blood 2005; 106: 3725-3732
Marcus R, et al.; J Clin Oncol 2008; 26: 4579-4586
Watanabe T, et al.; J Clin Oncol 2011; 29:3990-3998
Witzig TE, et al.; J Clin Oncol 2002; 20: 2453-2463
Witzig TE, et al.; J Clin Oncol 2002; 20: 3262-3269
Witzig TE, et al.; J Clin Oncol 2003; 21: 1263-1270
Czuczman MS, et al.; J Clin Oncol 2007; 25: 42854292
9) Emmanouilides C, et al.; Leuk Lymphoma 2006; 47:
629-636
10)Emmanouilides C, et al.; Cancer Biother Radiopharm
2007; 22: 684-691
11)Witzig TE, et al.; Cancer 2007; 109: 1804-1810
12)Watanabe T, et al.; Cancer Sci 2005; 96: 903-910
13)Tobinai K, et al.; Cancer Sci 2009; 100: 158-164
14)Morschhauser F, et al.; J Clin Oncol 2008; 26: 51565164
図3 ◎ Primary End Point of FIT Study:
Median PFS in All Patients*
Yイブリツモマブについて留意すべきは
れた 1- 3 )。日本では未 治 療の病 期Ⅲ/Ⅳ
4)
における最近の動向として、 Yイブリツモ
CR/CRu
or PR
NR
PD
R
A
N
D
O
M
I
Z
E
ZEVALIN
(n = 208)
Rituximab 250 mg/m 2 IV
day -7 and day 0 +
Zevalin 14.8 MBq/kg
(max 1184 MBq/kg) day 0
CONSOLIDATION
No further
treatment
(n = 206)
Log rank
P < 0.0001
HR 0.463
100
Proportion remaining
progression free (%)
性低悪性度B-NHLおよびマントル細胞リ
イットリウム( 90Y)
イブリツモマブ チウキセタンを
用いたラジオイムノセラピー
P*
* Fisher exact 2-tailed test
する優位性は検証されなかった。また、
リツキシマブの日本における再発・難治
88
因子はCR到達、5cm未満、病期Ⅰ/Ⅱ期で
る低 悪 性 度 B 細 胞 非ホジキンリンパ 腫
登場により、その状況は一変した。
80
PFSが1年を超える患者群の有意な予測
(B-NHL)は、発病初期には症状に乏し
90
72
期間
(月)
80
Zevalin: median 37 mo
n = 208
60
40
20
Control: median 13.5 mo
n = 206
0
CONTROL
No inclusion
0
6
12
18
24
30
36
42
48
54
60
66
PFS time from randomization (months)
*Median observation period was 3.5 years.
Morschhauser F, et al.: J Clin Oncol 2008;26:5156-64
Morschhauser F, et al.: J Clin Oncol 2008;26:5156-64
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