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松阪商人の館と旧長谷川邸 - Storyで紡ぐたび もののあはれ中南勢
し 松阪商人の館と旧長谷川邸 商人 松阪市 松阪は商人が元気な町 松阪は商人の町である。 それというのも、松阪の開祖で戦国武将・蒲生氏郷（がもううじさと） によって「松阪（当時は「松坂」という） を商業の中心 地にしよう」と先見性に富んだ政策が行われたから。商業を優遇する政策によって、三井、小津、長谷川…といった豪商 が生まれ、松阪は、 たちまち商人の町と言われるようになった。 資料館「松阪商人の館」は、江戸時代に活躍した豪商・小津清左衛門が住ん でいた「本家」を保存・公開したもの。 3代目清左衛門長弘は、江戸の紙問屋に奉公したのち、本居宣長の曽祖父に 資金援助を受け、紙店を開業、40余店を束ねた。 商売が安定すると松阪に戻り、江戸店の経営を支配人に任せ、松阪にいなが らにして店の経営を行っていたという。 松阪商人が恐れたのは…？ 「松阪商人の館」では、実際に住んでいた屋敷の一部が残されている が、 そこから当時の商人の生活を想像するのが実に面白い。 小津家同様、豪商として名をはせた長谷川治郎兵衛の邸宅にも、 「火用 例えば、手紙や長者番付などの資料が展示されている内蔵の2階には、 心」という張り紙がそれはもうアチコチに貼られていることからも、 その警 天井に鉄格子が張り巡らされている。何故か。 「上から泥棒が侵入する 戒ぶりがよく分かる。 のを防ぐためですよ」と教えてくれたのは、小津家保存会の方。なるほど、 彼らの日頃の心がけのおかげで、火事にあわずに済んだ。そして幸運なこ 当時の建物は瓦をはずせば天井から容易に侵入できてしまうから、鉄格 とに、今までそのままの形で残ってくれた （かつ保存し続けてくれた）。 子で防いでいるのだな。 実に、人々の歴史のリレーが何より愛おしい。 「松阪商人がそれ以上に恐れていたことがあるんですよ。 なんだと思いますか？」 参拝客には進んで施行（せぎょう） 伊勢街道沿いにあるこの屋敷ならではのエピソードもある。江戸時 …泥棒より怖いもの？？？ 「…それは、 『 火事』 です。当時は本当に火事が多かったので、 すべてが無く なってしまわないよう 『万両箱』 という地中に埋める形の金庫を使っていたん です」 ああそうか、 と感心していると、小津家保存会の方はニヤリと笑ってこう言っ た。 「泥棒は全部持っていかないが、火事は全部持っていってしまうから、使用人 にも火の用心を厳しく言って聞かせていたようですよ」 松阪商人の館と旧長谷川邸 代、伊勢へのおかげ参りが爆発的な流行となり、伊勢街道には、伊勢 へ向かう人、帰る人であふれ、着のみ着のまま出てきた人もいたた め、小津清左衛門の屋敷の傍にある松阪大橋の下には金もなくおな かをすかせて座り込む人たちでごった返していた。 松阪の人たちは、 もともと信心深く、伊勢まいりの人を大切にもてなし て施行に励んでいた。仏教の道ではそれが徳を積むことだとされてい るからだ。施行を求める人は、 手に柄杓を持つ人もいて、 そこに食べ物 やお金を恵んでもらう。施行されるほうもみじめさはみじんもないし、 す るほうも喜んでするのだ。 写 真 で紡ぐたび 無一文でも旅行ができるのが、 おかげ参りだったというから、 当時の日本 人の優しさには驚かされる。 小津清左衛門家も例外ではなく、松阪大橋で夜を明かす人たちに「むす び施行」を行ったとか。勝手場を見ると、飯炊き用のかまどがいくつも見ら れる。 そこで何度も米を炊き、 みんなでアツアツのおむすびをいっぱいこしらえ ていたのかな。 20もの部屋と2棟の土蔵を備え すべて残っているわけではない 広いけれど、余計なもの、華美な 旧長谷川邸は、 うだつの上がっ た旧小津清左衛門家住宅。 が、商いに使われた見世の間、 ものは一切見られない。 これが た屋根、霧除けなどなど外から 勘定場、奥座敷(奥様のいる部 松阪商人のスピリッツ！ 見てもシックで素敵。 質素で堅実な松阪商人 屋)などがある母屋と2つの土 蔵、庭園があり、往時を偲ばせる 小津家同様、松阪商人の興隆を伝える歴史的遺産として面白いのが、 佇まいだ。 うだつ （※） の上がる家として有名な「旧長谷川邸」だ。 長谷川治郎兵衛は、 いち早く江戸に進出して成功をおさめた木綿問屋。 ここは、松阪商人の館からも近いのでぜひ合わせて見てほしい コンシェルジュからのおすすめのポイント！ （※公開を行っている時以外は、内部の見学ができないので注意）。 （※） 「うだつ」とは、屋根の両端を一段と高くして、火災の類焼を防ぐため に造られた防火壁のことをいう。 松阪商人の歴史を訪ねるなら、観光協会の推奨する「三井高利コース・豪商の 道」ルートがおすすめ。松阪駅からスタートして「松阪商人の館」 「三井家発祥の 各神社ごとにそれぞれあげられた神棚、 あちこちに貼られた「火用心」の 紙、見事な大判小判のコレクション、広大な庭と池、 そしてそこにある稲荷神社…などなど、 長い歴史をかけて築きあげられてきた貴重な遺構を目にすることができる。 地」 「旧長谷川邸」 「本居宣長旧宅跡」など14スポットを徒歩で2時間でまわれま す。途中、 「松阪もめん手織りセンター」では、松阪木綿の機織り体験もできますの で、 ぜひ挑戦してみてください （２日前までに予約要。料金制）。 まち歩きに関するこ とは、JR松阪駅周辺にある松阪市観光情報センター （0598-23-7771） で情報を 収集できます。 コンシェルジュ 小津家保存会 春多常さん 豪商の邸宅といえども、 そこに華美なものは見られない。仕 事熱心で、信心深く、家訓を守って生きている主人の姿と、 スポット概要 質素堅実な暮らしぶり。 お金があってもなくても、 この人たちの生きざまはきっと変わ らなかったことだろう。松阪商人とは、 その精神を指すのかも しれないな、 とふと思った。 このStoryを 松阪商人の館と旧長谷川邸 スマートフォンでも ご覧いただくことができます。 ■スポット 松阪商人の館 ■住所 松阪市本町2195番地 ■料金など 一般：200円／6歳以上18以下：100円 （団体割引有） ■公共交通機関での JR･近鉄「松阪駅」からバス約5分「本町」下車・徒歩で約3分 歴史民俗資料館との共通割引券有 アクセス JR･近鉄「松阪駅」から徒歩で約10分 ■車でのアクセス 伊勢自動車道「松阪IC」から東へ車で約15分 Storyで紡ぐたび ∼もののあはれ中南勢ものがり∼ http://story.kankomie.or.jp/